(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153200
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】通行者誘導用路面上標示および通行者誘導用路面上標示物
(51)【国際特許分類】
E01F 9/518 20160101AFI20221004BHJP
【FI】
E01F9/518
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056315
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】502419144
【氏名又は名称】築舘 智大
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】築舘 智大
【テーマコード(参考)】
2D064
【Fターム(参考)】
2D064AA05
2D064BA11
2D064EA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】より低コストで、より一般的・汎用的に用いることができ、より簡易な方式によって、大きな交差点の横断歩道など多数の歩行者が行き交う場における円滑な通行や相互に余計な気遣いを要せずに済む通行を誘導することができる、通行者誘導用路面上標示を提供する。
【解決手段】通行者誘導用路面上標示10は、通行者19A、19C等が二つの端部17、18の間を通行するための通行領域20におけるその路面上に用いられ、通行者19Aの側から見るとその進行を誘導する標示である誘導標示2と、通行者19Aの進行を制止する標示である制止標示4と、誘導標示2と制止標示4の間に設けられる進行方向分離用の分離標示6とからなり、一方端部17から視認される誘導標示2と制止標示4は、他方端部18からは逆に視認されるように形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通行者が二つの端部の間を通行するための通行領域におけるその路面上に用いられる標示であって、
通行者の進行を誘導する標示である誘導標示と、
通行者の進行を制止する標示である制止標示と、
該誘導標示と該制止標示の間に設けられる進行方向分離用の分離標示とからなり、
一方端部から視認される該誘導標示と該制止標示は、他方端部からは逆に視認されることを特徴とする、通行者誘導用路面上標示。
【請求項2】
前記誘導標示および制止標示は、前記通行領域の両端部に亘って設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の通行者誘導用路面上標示。
【請求項3】
前記通行領域が二つの端部の間を渡るための渡り領域であることを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載の通行者誘導用路面上標示。
【請求項4】
前記誘導標示は通行者の進行を誘導する図形である誘導図形が複数用いられて構成され、前記制止標示は通行者の進行を制止する図形である制止図形が複数用いられて構成されていることを特徴とする、請求項1、2、3のいずれかに記載の通行者誘導用路面上標示。
【請求項5】
前記誘導図形は進行方向に向かって凸状をなす凸状図形であり、前記制止図形は、進行の逆方向に向かって凸状をなす凹状図形であることを特徴とする、請求項4に記載の通行者誘導用路面上標示。
【請求項6】
前記分離標示は直線または帯状図形であることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5のいずれかに記載の通行者誘導用路面上標示。
【請求項7】
前記通行領域の中心点に対して点対称に形成されていることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6のいずれかに記載の通行者誘導用路面上標示。
【請求項8】
下記<A>列挙のいずれかの形態であることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7のいずれかに記載の通行者誘導用路面上標示。
<A> 路面上への塗布による標示、路面に敷設される標示、路面上に貼付または載置される標示、路面上に投影される標示
【請求項9】
横断歩道標示として用いられることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7、8のいずれかに記載の通行者誘導用路面上標示。
【請求項10】
路面上に貼付または載置することにより、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9のいずれかに記載の通行者誘導用路面上標示として用いられることを特徴とする、通行者誘導用路面上標示物。
【請求項11】
前記誘導標示と前記制止標示の間の進行方向分離用の分離標示を有しないことを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9のいずれかに記載の通行者誘導用路面上標示。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通行者誘導用路面上標示および通行者誘導用路面上標示物に係り、特に横断歩道など多数の歩行者が行き交う場における歩行・進行を円滑化することのできる、通行者誘導用路面上標示等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多数の歩行者が行き交う場、たとえば大きな交差点の横断歩道などでは、少なくとも対向する二方向の歩行者の通行がある。このような場では、特に規制がない限り、それぞれの歩行者は自身の判断にてルートを採り歩行するのだが、対向歩行者等との衝突回避にはそれなりに気を遣いつつも、回避できないことも発生する。まして近年は、携帯型の情報端末を操作しつつの歩行が増加しており、そのため、相手との不注意な接触や衝突を回避するのに要する注意力・気遣いの負担も増加している。
【0003】
このような状況における危険性は、歩行者が視覚障害者である場合、幼児・小児の手を引いている場合、犬等のペットを連れている場合、キャリーバック等の荷物を引きずっている場合などにおいて増大する。また、荷物運搬等に使用されるデリバリーロボットも、対向歩行者等を認知して採るべきルートを判断して衝突回避しつつ走行する動作を行うのに要する時間が余計にかかってしまう。このように、現今、多数の歩行者が行き交う場における円滑な通行、相互に余計な気遣いを要せずに済む通行は、容易なことではない。
【0004】
横断歩道等における通行者誘導の技術については従来、特許出願等もなされている。たとえば後掲特許文献1には、横断歩道・駅構内の通路やプラットホーム・地下街・百貨店など多数の歩行者が任意に行き交う場における異方向通行の交錯による混雑が円滑な歩行を阻害している状況の解決手段として、コンクリート・合成樹脂・石材などからなる歩行面敷設タイルの基盤の表面に、長幅の緩傾斜面と短幅の急傾斜面を有する断面略三角形状の方向指示突条を複数並行して連続的に設け、タイル基盤の表面が波形面を形成するよう構成した方向指示タイルが開示されている。
【0005】
また特許文献2には、歩行者が通路を進行する際に自然にその誘導が行える埋め込み型表示灯として、光を透過する表示パネルが路面と略同一面になるように埋設される表示部と表示パネルよりも下方に設けられた発光部を備え、表示パネルからの光により歩行者が誘導される埋め込み型表示灯において、当該埋め込み型表示灯に向かって進む方向によって歩行者から見たときの色が異なって見える表示パネルを用いるという構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】公実平3-40312号公報「方向指示タイル」
【特許文献2】特開2005-344306号公報「埋め込み型表示灯及びこれを備えた歩行者誘導用表示システム」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記文献1開示技術では、タイルの立体構造が複雑でコストがかかる上、路面への敷設工事や維持管理上も不利であり、また表面の凹凸構造が断続的に続くために歩行・走行しづらく、実用性に乏しい。また上記文献2開示技術は限定された領域内での使用は可能であるとしても、一般の交差点等に用いるには高コストであり、適さない。より低コストで、より一般的・汎用的に用いることができる、より簡易な技術によって、大きな交差点の横断歩道など多数の歩行者が行き交う場における円滑な通行や相互に余計な気遣いを要せずに済む通行を誘導できる技術が望まれる。
【0008】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点をなくし、より低コストで、より一般的・汎用的に用いることができ、より簡易な方式によって、大きな交差点の横断歩道など多数の歩行者が行き交う場における円滑な通行や相互に余計な気遣いを要せずに済む通行を誘導することができる、通行者誘導用路面上標示および通行者誘導用路面上標示物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は上記課題について検討した。その結果、<人間は、その目に訴えてくる、歩きやすい方向に向かって歩いてゆくものである>との洞察を元に、そのように訴求する単純な図形を路面上の標示として用いることによって解決できることに想到し、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0010】
〔1〕 通行者が二つの端部の間を通行するための通行領域におけるその路面上に用いられる標示であって、通行者の進行を誘導する標示である誘導標示と、通行者の進行を制止する標示である制止標示と、該誘導標示と該制止標示の間に設けられる進行方向分離用の分離標示とからなり、一方端部から視認される該誘導標示と該制止標示は、他方端部からは逆に視認されることを特徴とする、通行者誘導用路面上標示。
〔2〕 前記誘導標示および制止標示は、前記通行領域の両端部に亘って設けられていることを特徴とする、〔1〕に記載の通行者誘導用路面上標示。
〔3〕 前記通行領域が二つの端部の間を渡るための渡り領域であることを特徴とする、〔1〕、〔2〕のいずれかに記載の通行者誘導用路面上標示。
〔4〕 前記誘導標示は通行者の進行を誘導する図形である誘導図形が複数用いられて構成され、前記制止標示は通行者の進行を制止する図形である制止図形が複数用いられて構成されていることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕のいずれかに記載の通行者誘導用路面上標示。
〔5〕 前記誘導図形は進行方向に向かって凸状をなす凸状図形であり、前記制止図形は、進行の逆方向に向かって凸状をなす凹状図形であることを特徴とする、〔4〕に記載の通行者誘導用路面上標示。
【0011】
〔6〕 前記分離標示は直線または帯状図形であることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕のいずれかに記載の通行者誘導用路面上標示。
〔7〕 前記通行領域の中心点に対して点対称に形成されていることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕のいずれかに記載の通行者誘導用路面上標示。
〔8〕 下記<A>列挙のいずれかの形態であることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕のいずれかに記載の通行者誘導用路面上標示。
<A> 路面上への塗布による標示、路面に敷設される標示、路面上に貼付または載置される標示、路面上に投影される標示
〔9〕 横断歩道標示として用いられることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕のいずれかに記載の通行者誘導用路面上標示。
〔10〕 路面上に貼付または載置することにより、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕、〔9〕のいずれかに記載の通行者誘導用路面上標示として用いられることを特徴とする、通行者誘導用路面上標示物。
〔11〕 前記誘導標示と前記制止標示の間の進行方向分離用の分離標示を有しないことを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕、〔9〕のいずれかに記載の通行者誘導用路面上標示。
【発明の効果】
【0012】
本発明の通行者誘導用路面上標示および通行者誘導用路面上標示物は上述のように構成されるため、これらによれば、より低コストでより一般的・汎用的に用いることができ、かつ、より簡易な方式によって、大きな交差点の横断歩道など多数の歩行者が行き交う場における円滑な通行や相互に余計な気遣いを要せずに済む通行を誘導することができる。
【0013】
すなわち本発明では、通行者の目に訴えて歩きやすい方向を示す誘導標示、逆に歩きやすい方向ではない方向を示す制止標示、これら両者が分離標示によって画定されているため、通行者は制止標示の側には歩きにくく、一方誘導標示の方には歩きやすい、という作用がある。そして誘導標示と制止標示とは、通行領域の両端部からは、相互に逆に視認されるため、各端部からの各通行者すなわち対向して進行する通行者は、各自が誘導される方向へと自然に歩き、そのことによって不用意な衝突や接触が自然に回避されやすくなる。
【0014】
本発明のかかる作用・効果により、通行者は、対向通行者やその同行者・傾向荷物等との衝突回避に対してさほどの気を遣わなくても、衝突や接触を回避することができる。そして、近年増加している携帯型の情報端末を操作しつつの歩行状況下においても、相手との不注意な接触や衝突を回避するのに要する注意力・気遣いの負担が、本発明により大きく軽減される。特に通行者が視覚障害者である場合や、幼児・小児の手を引いている通行者である場合、犬等のペットを連れている通行者である場合、キャリーバック等の荷物を引きずっている通行者である場合には、衝突・接触の危険性が高いのだが、それも本発明によって有効に防止される。
【0015】
また、荷物運搬等に使用されるデリバリーロボットも、対向歩行者等を認知して採るべきルートを判断して衝突回避しつつ走行する動作を行うのに際して、本発明によれば、かかる認知・判断・動作に要する余計な時間を要せず、短縮することができ、円滑な走行を行うことができる。このように本発明によれば、多数の歩行者が行き交う場における円滑な通行、相互に余計な気遣いを要せずに済む通行を、容易に実現することができる。以上の効果は、通行者の行き来の多い、たとえば大きな交差点などの規模の大きな通行領域であればあるほど、高いものが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明通行者誘導用路面上標示の基本構成を示す説明図である。
【
図2】本発明に係る誘導標示および制止標示の構造例を示す説明図である。
【
図3】本発明通行者誘導用路面上標示の構成例を示す説明図である(その1)。
【
図4】本発明通行者誘導用路面上標示の構成例を示す説明図である(その2)。
【
図5】本発明通行者誘導用路面上標示の構成例を示す説明図である(その3)。
【
図6】本発明通行者誘導用路面上標示の構成例を示す説明図である(その4)。
【
図7】本発明通行者誘導用路面上標示の構成例を示す説明図である(その5)。
【
図8】本発明通行者誘導用路面上標示の適用例を示す説明図である。
【
図9】本発明通行者誘導用路面上標示の設置方式例を示す説明図である(その1)。
【
図10】本発明通行者誘導用路面上標示の設置方式例を示す説明図である(その2)。
【
図11】
図10の設置方式例(c)に係る本発明通行者誘導用路面上標示物の構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明通行者誘導用路面上標示の基本構成を示す説明図である。もっとも本図は模式的、かつ例示的な図である。図示するように本通行者誘導用路面上標示10は、通行者19A、19C等が二つの端部17、18の間を通行するための通行領域20におけるその路面上に用いられる標示であって、通行者19Aの側から見ると、その進行を誘導する標示である誘導標示2と、通行者19Aの進行を制止する標示である制止標示4と、該誘導標示2と該制止標示4の間に設けられる進行方向分離用の分離標示6とからなり、一方端部、たとえば端部17から視認される該誘導標示2と該制止標示4は、他方端部18からは逆に視認される、すなわち誘導標示2が制止標示として、該制止標示4が誘導標示として視認されるように形成されていることを、主たる構成とする。
【0018】
かかる構成の本通行者誘導用路面上標示10によれば、通行領域20の一方端部17にいる通行者19Aは、通行領域20を通行して他方端部18へと向かって進行する時、本通行者誘導用路面上標示10を構成する制止標示4の方へは向かわず、分離標示6によってこれと隔てられた誘導標示2の方へと向かうことが、自然になされる。つまり、誘導標示2による進行誘導にしたがって、通行者19Aは誘導標示2の存する路面を通り、他方端部18へと向かうことが自然になされ、制止標示4の方への進行は制止されるため、誘導されない。このような心理的な作用による、進行誘導/制止効果が生じる。
【0019】
本通行者誘導用路面上標示10による同様の誘導と制止の作用・効果が、他方端部18にいる通行者19Cにも生じる。しかし通行者19Cにとっては、端部17側から視認される誘導標示2は制止標示と視認され、制止標示4は誘導標示と視認されるため、通行者19Aにとって対向者である通行者19Cは、通行者19Aに視認される制止標示4の方を進行して端部17へと向かう。
【0020】
こうして通行者19Aは、端部17側から視認される誘導標示2のある側を進行し、一方、対向する通行者19Cは同制止標示4のある側を進行するため、両者が衝突したり接触したりすることが有効に防止され、本発明所期の目的が達成される。
【0021】
すなわち本発明では、通行者の目に訴えて進行しやすい方向を示す誘導標示2、逆に進行しにくい方向を示す制止標示4、これら両者が分離標示6によって画定されているため、通行者19A凍は制止標示4の側には進みにくく、一方誘導標示2の方には進みやすい、という作用がある。そして、誘導標示2と制止標示4とは、通行領域20の各端部17、18からは相互に逆に視認されるため、各端部17、18からの各通行者すなわち対向して進行する通行者19A、19Cは、各自が誘導される方向へと自然に歩き、そのことによって不用意な衝突や接触が自然に回避されやすくなる。
【0022】
なお、誘導標示2と制止標示4とを分離、画定する分離標示6は、これによって、対向する一対の端部17、18をそれぞれ始点とする通行者の進行する領域を、明確に分離、画定する機能を果たす。したがって、分離標示6を誘導標示2と制止標示4との間に設けることが推奨される。しかしながら、分離標示6を有せず、誘導標示2および制止標示4のみを必須要素とする通行者誘導用路面上標示であっても、本発明の範囲内とする(図示せず)。もっとも、対向して進行する通行者の通行領域に曖昧な点が生じるため、分離標示6具備の構成に比較すると効果の減衰は否めない。
【0023】
図示するように、本通行者誘導用路面標示10を構成する誘導標示2と制止標示4は、それぞれを180°回転させれば入れ替わる。つまり、本通行者誘導用路面標示10を構成するに当たって、誘導標示2と制止標示4とを別々にパターンをデザインする必要はなく、単一のパターンデザインにより、これを180°回転させたパターンを他方の標示とすればよい。
【0024】
また、図では、通行者19A等は左右のうち右側を通行するように誘導される構成であるが、これは逆、つまり左側通行であることとしてもよい。また、誘導標示2、制止標示4の具体的なパターン(形態)や幅、長さ、寸法などは限定されないが、誘導標示2等の具体例については後述する。
【0025】
図1に示すように本通行者誘導用路面上標示10の誘導標示2および制止標示4は、通行領域20の両端部17-18に亘って、つまり両端部17、18を繋ぐようにして設けられているものとすることができる。かかる構成により、通行者19A等は通行の目的地であるところの他方端部18等までの通行の間、誘導標示2による進行誘導作用、および制止標示4による当該領域への進行制止作用を最後まで受けて、安心して通行することができる。
【0026】
もっとも、本通行者誘導用路面上標示10の誘導標示2および制止標示4は、通行領域20の両端部17-18に亘らないで設けられる構成としてもよい。たとえば、図では5個の逆V字図形からなる誘導標示2において、端部17から3番目である中央の図形が無い構成の場合、誘導標示は2つに分離されていて両端部17-18に亘る構成とは言えない。しかしそのようなパターンであっても、本発明の範囲内である。また、同様に1番目と5番目の逆V字図形が無い3個のみの図形による誘導標示である場合も、両端部17-18に亘るとは言えない。しかしこのパターンであっても、本発明の範囲内である。
【0027】
図1に示すように、本通行者誘導用路面上標示10が設けられる通行領域20としては、二つの端部17、18の間を渡るための渡り領域を挙げることができる。たとえば、車道を歩行者が横断して反対側へと渡るための横断歩道である。しかし、通行者の進行が一般的には「渡る」行為だとは認識されないようなケース、たとえば鉄道駅構内、駅前の広場、大規模小売店舗内などにおいて本発明通行者誘導用路面上標示が用いられるケースであっても、本発明の範囲内である。
【0028】
図2は、本発明に係る誘導標示および制止標示の構造例を示す説明図である。すなわち、
図1に例示された誘導標示2、制止標示4の構造である。図示するように誘導標示2は、通行者の進行を誘導する図形である誘導図形3が複数用いられて構成され、一方、制止標示4は通行者の進行を制止する図形である制止図形5が複数用いられて構成されているものとすることができる。上述の通り誘導標示2と制止標示4とは180°回転することで得られる同一の標示として構成できるため、それらの構成要素である誘導図形3と制止図形5も、180°回転することで同一の図形となる関係のものとすることができる。
【0029】
図示するように誘導図形3は、進行方向に向かって凸状をなす凸状図形であり、一方、制止図形5は、進行の逆方向に向かって凸状をなす凹状図形とすることができる。進行方向へと向かって凸状図形が複数連続して設けられる標示の構成であれば、通行者の進行は誘導されやすく、誘導標示2に適している。一方、進行方向へと向かって凹状図形が複数連続して設けられる標示の構成であれば、通行者の進行は制止されやすく、制止標示4に適している。なお、図に例示した逆V字図形やV字図形は、それ自体単純な図形でありながら本発明に係る誘導標示2や制止標示4を十分に構成することができる。また、誘導標示や制止標示を構成する誘導図形、制止図形の使用数は限定されない。以降の図を含め、図示される使用数はあくまでも例示である。
【0030】
以下、
図3~7により、本発明通行者誘導用路面上標示の構成例をいくつか説明する。
図3に示す通行者誘導用路面上標示110は、前出
図1に示した通行者誘導用路面標示10と類似しているが、誘導標示12、制止標示14、分離標示16がそれぞれ分離している構成である。かかる構成であってもよい。
【0031】
図4に示す通行者誘導用路面上標示210(図中(a))、310(図中(b))は、
図1~
図3に示した逆V字図形/V字図形に替えて、円弧を誘導図形および制止図形として用いた構成である。かかる構成であってもよい。なお、(b)は誘導標示32、制止標示34、分離標示36が分離している構成である。
【0032】
図5に示す通行者誘導用路面上標示410(図中(a))、510(図中(b))は、
図1~
図3に示した逆V字図形/V字図形に替えて、三日月形を誘導図形および制止図形として用いた構成である。かかる構成であってもよい。なお、(b)は誘導標示52、制止標示54、分離標示56が分離している構成である。誘導図形として
図4に示す円弧を用いる場合よりも本図のように三日月形を用いる方が、2つある後方端部が徐々に細くなる形態によって、進行方向誘導効果が高い。
【0033】
図6に示す通行者誘導用路面上標示610(図中(a))、710(図中(b))は、
図1~
図3に示した逆V字図形/V字図形と類似しているが、両端部を誘導方向/制止方向と平行になるよう切り落とした形態の図形を誘導図形および制止図形として用いた構成である。かかる構成であってもよい。誘導図形として
図1等に示す逆V字図形を用いる場合よりも、2つある後方端部の切り落とし形態によって、進行方向誘導効果が高い。
【0034】
(a)、(b)ともに誘導標示62等、制止標示64等、分離標示66等が分離している構成である。なお、(b)は、通行領域の端部にいる通行者からの路面の見え方を考慮して、(a)を進行方向に引き伸ばした形態である。
【0035】
図7に示す通行者誘導用路面上標示810は、
図1~
図6に示した各例とは異なり、複数の誘導図形83からなる誘導標示82と、複数の制止図形85からなる制止標示84は、180°回転しても同一のパターンとはならない。つまり本例810は、誘導標示82と制止標示84とが異なる図形パターンにより構成されるパターンの例である。このようなパターンも本発明の範囲内である。なお、
図7以外の前出各図に示した通行者誘導用路面上標示例はいずれも、通行領域の中心点に対して点対称に形成されている例である。
【0036】
また、以上の各図に示した通り、本通行者誘導用路面上標示を構成する分離標示としては、直線または帯状図形を公的に用いることができる。実線である直線に替えて破線でもよく、また同様に、帯上図形の途中が不連続になっている破線的な帯状の形態であってもよい。
【0037】
図8は、本発明通行者誘導用路面上標示の適用例を示す説明図である。図示するように、直行する2本の車道R、Rの交差点がスクランブル交差点である場合、各街区B、B間を通行領域(渡り領域)として、たとえば
図1~3で示した通行者誘導用路面上標示10を用いることができる。なお、このように複数の通行者誘導用路面上標示10から構成されて交差点全体をカバーする集合体30も、それ自体が一つの通行者誘導用路面上標示(30)であると把握することもできる。
【0038】
その他、鉄道駅構内、駅前広場、大型小売店内、遊園地等、イベント会場、駅構内の自由通路等の長い通路など、本発明を適用して通行者の通行を円滑化することができる。
【0039】
図9、10は、本発明通行者誘導用路面上標示の設置方式例を示す説明図である。これらに示すように本通行者誘導用路面上標示は、路面上への塗布による標示910a(
図9中(a))、路面に敷設される標示910b(
図9中(b))、路面上に貼付または載置される標示910c(
図10中(c))、路面上に投影手段Pによって投影される標示910d(
図10中(d))といった様々な方式によって、実現することができる。このうち、路面上に貼付または載置される標示910cは、通行者誘導用路面上標示物950cを用いる方式である。特に載置して用いる場合は、設置も撤去も簡単であり、特にイベント会場や歩行者天国が行われる街路など、臨時的な用途において便利である。
【0040】
図11は、
図10の設置方式例(c)に係る本発明通行者誘導用路面上標示物の構成例を示す説明図である。図では、
図1~3に例示した通行者誘導用路面上標示10を枠部40内に収めた形の通行者誘導用路面上標示物50が示されている。これは、路面上に貼付または載置することによってこれまで述べた通行者誘導用路面上標示として用いることができる。材質や厚さ等の仕様は特に限定されないが、たとえば、道路に敷設して段差を設けることで車両運転者に注意喚起するために従来から使用されている合成樹脂製等のマット型注意喚起用具(商品名:ピタリング(登録商標))に準じて、厚さ等の仕様や材質を設計することができる。本通行者誘導用路面上標示物は上述の通り、特に臨時的な用途に適している。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の通行者誘導用路面上標示および通行者誘導用路面上標示物によれば、従来よりも実用性が高く、かつ、より簡易な方式によって、多数の歩行者が行き交う場における円滑な通行や相互に余計な気遣いを要せずに済む通行を誘導することができる。したがって、都市整備分野を初めとする広範な分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0042】
2、12、22、32、42、52、62、72、82…誘導標示
3、13、23、33、43、53、63、73、83…誘導図形
4、14、24、34、44、54、64、74、84…制止標示
5、15、25、35、45、55、65、75、85…制止図形
6、16、26、36、46、56、66、76、86…分離標示
10、110、210、310、410、510、610、710、810、910a、910b、910c、910d…通行者誘導用路面上標示
17、18…端部
19A、19C…通行者
20…通行領域
30…通行者誘導用路面上標示(通行者誘導用路面上標示集合体)
40…枠部
50、950c…通行者誘導用路面上標示物
B…街区
G…路盤
P…投影手段
R…車道