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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153220
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】果物野菜栽培地用敷板
(51)【国際特許分類】
   A01G 13/00 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
A01G13/00 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021083501
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】501230823
【氏名又は名称】京葉興業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 康裕
(72)【発明者】
【氏名】西谷 憲三
【テーマコード(参考)】
2B024
【Fターム(参考)】
2B024DA01
2B024DB01
2B024DB07
(57)【要約】
【課題】一方の面に光反射機能を持たせ、果物の生育を促進し、他方の面に光吸収機能を持たせ、冬場でも健全な果物を育てる果物野菜栽培地用敷板を提供する。
【解決手段】果物野菜栽培地用敷板において、一方の果物を成長させる光反射機能を持たせる面には、白色層のポリエチレンの総量に対して、ルチル型酸化チタンを2~4重量%含有させることと共に、白色層の厚みを0.5mm以上とするにことにより、太陽光の反射率を、波長域450nm~700nmで全反射率90%以上、且つ最大反射率95%以上とした。
冬場の果物を育てる黒色の面には、カーボンブラックを含有させ太陽光を吸収させる機能を持たせた。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
果物や野菜の温室などの栽培地の通路や畑地に敷く敷板であって、
一方の面に光反射機能を持つルチル型酸化チタンがポリエチレンに配合された白色層を有し、他方の面に光吸収するカーボンブラックがポリエチレンに配合された黒色層を有する二層構造のポリエチレン製の板から成り、
果物や野菜に太陽光を反射させる場合には、前記白色層が上面となるように前記通路や畑地に敷設され、地温や温室内温度を上昇させる場合には、前記黒色層が上面となるように前記通路や畑地に敷設されるものであり、
前記白色層のルチル型酸化チタンの含有量が、前記白色層のポリエチレンの総量に対して2~4重量%であり、
前記白色層の厚みが、0.5mm以上であり、
前記白色層が上面となるように前記通路や畑地に敷設されたとき、太陽光による全反射率が450nm~700nm間の波長域において90%以上、且つ同波長域における最大反射率95%以上である、ことを特徴とする果物野菜栽培地用敷板。
【請求項2】
請求項1に記載の果物野菜栽培地用敷板において、前記ポリエチレンの材料として再生ポリエチレンが使用されていることを特徴とする果物野菜栽培地用敷板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の果物野菜栽培地用敷板において、前記二層構造ポリエチレン製の板が、厚さ1mm以上であることを特徴とする果物野菜栽培地用敷板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の面に光反射機能を持ち畑地や温室内の果物や野菜の生育を促進させる白色層を備え、他方の面に光を吸収し地温や温室内の温度を上げ、冬場でも健全な果物や野菜を育てる黒色層を備える二層構造ポリエチレン製の板からなる果物野菜栽培地用敷板に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1に開示されているように、農業用の光反射フィルム及び白黒マルチフィルムは既に使用されている。
前記光反射フィルムは果樹の根元に敷くことで果物や野菜にむらなく光を当てることができ、イチゴ、トマト、リンゴ、サクランボ、ブドウなどをムラなく色づけることができている。
【0003】
前記白黒マルチフィルムは穴の開いた白黒ポリエチレンフィルムで穴から野菜の苗を出して使用するもので、夏場の高温時には白面を表にして張り地温を抑制し、冬場は黒面を表にして地温を上昇させ健全な作物を育てる。
また、野菜の苗の周りのフィルムが雑草の成長を抑えたり、地温を維持したり、害虫の飛来の防止を行うために使用されている。
【0004】
特許文献1には、果物や果菜類の着色ムラを防止できる波長550nmの散反射率が95%以上の多孔性フィルムを有する植物栽培用フィルムが開示されている。このフィルムは、反射率を上げる手段は酸化チタンではなく、多孔性フィルムにすることにより反射率を上げている。
前記植物栽培用フィルムは多孔性フィルムに無孔性フィルム積層させて、多孔性フィルムの開孔率が40~70%で、その開孔率が光反射に寄与している。
全光線透過率が80%以上での前記無孔性フィルムが前記多孔性フィルムの上に積層されている。
前記植物栽培用フィルムの厚みは薄く、多孔性部分が20~200μm(0.02~0.2mm)、無孔性部分が10~200μm(0.01~0.2mm)となっている。
【0005】
特許文献2には、前記特許文献1に記載の多孔性フィルムではなく、二酸化チタンと金属微粒子を含有させることにより光反射率を上げた農業用多層マルチフィルムが開示されている。材質は、前記多層マルチフィルムのポリエチレン製などである。
しかし、前記特許文献2に記載のフィルムの厚みも10~40μmで透けて見えるほどで、光反射層の厚みが5~30μm(0.005~0.030mm)と薄く、その下にカーボンブラックを含む光吸収層があるため、二酸化チタンを10~25重量%含有させても、光反射率が波長450nmで60~80%しかならない。前記特許文献1の光反射率95%以上と比較して低い値になっている。
【0006】
ところで、フィルム、シートや板について、JISZ0108(用語)では、フィルムとは250μm未満、シートとは250μm以上と規定されており、JISK6745(硬質塩化ビニル板)ではPVC板は1.0mm以上が板と規定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8-205694号公報
【特許文献2】特許第5859997号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】株式会社アイ・エイチ・エス“白黒マルチブラック&ホワイトマルチ”[online]令和3年1月6日株式会社アイ・エイチ・エス[令和3年1月6日検索]インターネット〈URL:http://ihsagrisheet.client.jp/malti/black-white-malti.html〉
【非特許文献2】石原産業株式会社“新・タイペークニュース、Vol.1 酸化チタン顔料基礎物性編”p.6、図―5、[2014年3月改定]
【非特許文献3】高分子、1967年16巻5号“プラスチックフィルムの紫外線透過性”P592 図4、[online]、[令和3年3月15日検索]インターネット〈URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/kobunshi1952/16/5/16_5_591/_pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前期特許文献1での技術では、波長550nmで95%以上の散反射率を備え、果物の生育には効果がある。反射率を上げる手段は、主に多孔性フィルムに寄与しており、更に前記多孔性フィルムに硫酸バリウムや炭酸カルシウムなどの無機充填剤が含有させている。
前記多孔性フィルムはフィルム延伸して生産し、その延伸時に開孔率を上げ、前記開孔率が太陽光の反射率に寄与している。
前記特許文献1の技術は、白色層だけの単層シートであり黒色層はない。
【0010】
前期特許文献2の技術では、黒色層のある白黒のマルチフィルムが紹介されている。カーボンブラックを含有した光吸収層と二酸化チタンなどを含有した光反射層を備えている。前記光反射率が波長450nmで60~80%で、前記特許文献1で開示されている光反射率95%以上と比べ、満足できる数値ではない。また、前記特許文献1と同様に薄いフィルムである。
【0011】
前記特許文献2では、太陽光線の反射を最適に制御しての地温上昇抑制と害虫飛来防止に優れた農業用多層マルチフィルムを提供するとされており、この用途であれば光反射率は波長450nmで60~80%で十分と思われる。
【0012】
前記非特許文献1では、白黒のマルチフィルムが紹介されているが、白面を表にしたときは作物を夏の高温から守り、黒面を表にしたときは冬の寒さから作物を守る目的としており、太陽の光反射で果物を熟成し成長させる目的ではない。これも前記特許文献2と同様に薄いフィルムである。
【0013】
前記特許文献1、前記特許文献2、前記非特許文献1の何れも薄いフィルムで、車両の通過で簡単に破れる。また非常に薄いフィルムで、夏と冬に裏返すと泥などが付着して洗うこともできないため、裏返して使用することができない。
【課題を解決するめの手段】
【0014】
発明の課題は、果物や野菜栽培の畑や温室内の通路に敷く果物野菜栽培地用敷板で、
夏場は前記白色層を表面にして、太陽光による全反射率が450nm~700nm間の波長域において90%以上、且つ同波長域における最大反射率が95%以上で、果物や野菜の成長を促すのに対して、冬場の寒いときに光を吸収する前記黒色層を表にすることにより、太陽光を吸収し地温や温室内温度を上昇させ作物の成長を促すようにすることにある。
更に、車両の通過に耐える強度を備えており、夏冬で裏返して洗浄して使用することができる。裏返しての使用は、先行技術の前記特許文献1、前記特許文献2、前記非特許文献1にある薄いフィルムではできない。
【0015】
前記課題を解決する手段は次の通り
1.酸化チタンの選定、2.白色層の厚みの決定、3.酸化チタンの含有量、4.車両の通過に耐える厚み
【0016】
1.酸化チタンの選定について
前記白色層の添加剤として、酸化チタンがあり二酸化チタンとも呼ばれる。
二酸化チタンにはルチル型、アナターゼ型及びブルッカイト型の三種類があり、顔料として使用されているのはルチル型とアナターゼ型である。アナターゼ型はアナタース型ともいう。
前記非特許文献2には、前記ルチル型と前記アナターゼ型の反射率の研究が記載されており、前記非特許文献2より抜粋した図2には、前記ルチル型と前記アナターゼ形の反射率が示されている。450nm以下では、前記アナターゼ型の反射率が高いが、450~700nmで太陽光による反射率の高いのは前記ルチル型と記載されている。
このデータより白色顔料として前記ルチル型を採用した。
【0017】
2-1.白色層の厚みの決定について
前記非特許文献3では、ポリエチレンフィルムと光透過率の研究が記載されており、高圧法のポリエチレンフィルム(低密度ポリエチレンフィルム)は0.6mmの厚みで、波長260μmの光が透過しなくなる旨記載されている。
前記非特許文献3より抜粋した図は図3で、厚さ0.02mmのフィルムを数枚重ねて透過率を測定した結果を示している。前記フィルムを15枚重ね0.6mmの厚みになると光を透過しなくなる。
【0018】
2-2.白色層の厚みの決定について
<白色層の厚みと反射率の実験>
光の全反射率から見た透明ポリエチレン(PE)シートの厚みによる影響を実験により調べた。(図4図5図6
▲1▼:数枚重ねた透明ポリエチレン(PE)シートの全反射率
▲2▼:数枚重ねた透明ポリエチレン(PE)シートと黒色ポリエチレン(PE)板を重ねたもの全反射率
▲2▼-▲1▼:前記数枚重ねた透明ポリエチレン(PE)シートを透過した下層にある前記黒色ポリエチレン(PE)板の全反射率
【0019】
<白色層の厚みと反射率の実験 続き>
前記透明ポリエチレン(PE)シートの枚数を変えることによりシートの厚みを変化させ、その下層にある前記黒色ポリエチレン(PE)板の全反射率▲2▼-▲1▼を調べた。
その結果を図5図6に示した。前記透明ポリエチレン(PE)シートの厚みが0.48mmになると、前記透明PEシートで遮られた前記黒色ポリエチレン(PE)板の全反射率が0.08になる。この結果から前記透明ポリエチレン(PE)シートの厚みが0.48mm(約0.5mm)になると、前記黒色ポリエチレン(PE)板から前記透明ポリエチレン(PE)シートを透過する全反射率がゼロになる。
すなわち、重ねた前記透明ポリエチレン(PE)フィルムの厚みが約0.5mmになると、その下にある前記黒色ポリエチレン(PE)板の前記透明ポリエチレン(PE)フィルムを透過する全反射率がゼロになる。
【0020】
フィルム紫外線領域と可視領域の若干の差はあるが、前記非特許文献3及び前記<白色層の厚みと反射率の実験>により、
前記特許文献2に記載されている農業用多層マルチフィルムは、光反射層の厚みが0.6mmよりも大幅に薄いので、下の黒色層の光吸収の影響を受け光反射率が60~80%の低い値になったと思われる。
【0021】
3 酸化チタンの含有量の決定について
図7には前記白色層11における前記ルチル型酸化チタンの含有量を変化させて、前記白色層を上にした場合の全反射率を測定した結果を表している。
図7の21は前記ルチル型酸化チタン含有量なし、22は前記白色層のポリエチレンの総量に対して1重量%、23は1.5重量%、24は2重量%、25は3重量%、26は4重量%を表している。この結果により前記酸化チタン量は前記白色層のポリエチレンの総量に対して2~4重量%が最適であり、更に5%以上に増加しても、全反射率95%付近に収れんするので意味がないことが分かる。
【0022】
図7より、前記ルチル型酸化チタンが1.5重量%では、全反射率の最大値が95%を満足しないが、2.0重量%になると前記全反射率の最大値が95%を超えるようになる。
波長域450~700nmで、全反射率が90%以上、且つ最大95%以上になるためにはルチル型酸化チタン2重量%以上必要としていることが分かる。
これより、本発明から前記特許文献2の二酸化チタン量10~25重量%は考えられにくい。
前記特許文献2では前光反射層が薄いので、その下のカーボンブラックを含む黒色層の影響を受けていると思われる。
4 車両の通過に耐える厚みについて
車両の通過に耐えるように、白色層の厚み0.5mm以上と黒色層の厚みを合わせた総厚みは1mm以上とする。
【0023】
前記課題解決より
請求項1の果物野菜栽培地用敷板では、
果物や野菜に太陽光を反射させる場合には、前記白色層が上面となるように前記通路や畑地に敷設され、地温や温室内温度を上昇させる場合には、前記黒色層が上面となるように前記通路や畑地に敷設されるものであり、
前記白色層のルチル型酸化チタンの含有量が、前記白色層のポリエチレンの総量に対して2~4重量%であり、前記白色層の厚みは約0.5mm以上であり、前記白色層が上面となるように前記通路や畑地に敷設されたとき、太陽光により全反射率が450nm~700nm間の波長域において90%以上、且つ同波長域における最大反射率95%以上である、ことを特徴とする技術的手段を講じている。
【0024】
請求項2の果物野菜栽培地用敷板では、
環境に配慮するため、前記ポリエチレン材料として再生ポリエチレンを使用することを特徴とする技術的手段を講じている。
【0025】
請求項3の果物野菜栽培地用敷板では、
車両が通過しても破れるたりしない、また裏返して水洗いで簡単に綺麗に洗えるように、前記果物野菜栽培地用敷板の厚さを1mm以上であることを特徴とする技術的手段を講じている。
【発明の効果】
【0026】
本発明の前記白色層を表面にすることにより、400nm~700nmの波長域で、全反射率90%以上、最大で95%以上とすることにより、果物や野菜の色づきの向上と、ムラなくきれいに色づかせることができる。
冬場には前記黒色層を上にすることにより、太陽の光を吸収し地温や温室内温度を上昇させ作物の成長を促すことができる。
【0027】
再生ポリエチレン樹脂の使用も可能であり、環境に配慮されている。
また、本発明は薄いフィルムではなく、車両が通過しても破れることがない約1mm以上の前記果物野菜栽培地用敷板であり、前記ルチル型酸化チタン配合で耐候性にも強く、夏場に使用し冬場に裏返すときにも簡単に裏返すことができ、汚れは水洗いにより簡単にとることができる。これまでの敷板と同様に10年以上耐える前記果物野菜栽培地用敷板とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】果物野菜栽培地用敷板
図2】ルチル型とアナタース型の反射率の比較(非特許文献2より抜粋した図)
図3】ポリエチレンフィルムの枚数と透過率(非特許文献3より抜粋した図)
図4】透明PEシート数枚重ねものと、その下に黒色PE板を重ねたもの
図5】透明PEシートとその下に黒色板を重ねた全反射率の測定結果
図6】透明PEシートの厚み変化と黒色PE板の全反射率の変化
図7】白色層におけるルチル型酸化チタンの含有量による全反射率の変化
図8】果物野菜栽培地用敷板の気温による黒色層と白色層の表面温度の変化
図9】温度差の大きい日とその表面の温度差
図10】気温変化による黒色層と白色層の表面・裏面温度
【発明を実施するための形態】
【0029】
前記果物野菜栽培地用敷板10が図1に示されている。白色層11と黒色層12で構成されている。前記白色層11には前記ルチル型酸化チタンをポリエチレンに含有させ、前記黒色層12にはカーボンブラックをポリエチレンに含有させた二層構造としている。先行技術文献のフィルムでは太陽光による反射率を上げるために、フィルム延伸して生産時に前記フィルムの開孔率を上げることにより反射率を上げているが、これに対して本発明の前記果物野菜栽培地用敷板10では、前記ルチル型酸化チタンを配合することにより、太陽光による反射率を上げている。
【0030】
前記白色層11の厚みは、下層の前記黒色層の光の吸収の影響を受けない0.5mm以上とし、前記白色層における前記ルチル型酸化チタンの含有量を前記ポリエチレンの総量に対して2~4重量%とし、400nm~700nmの波長域で全反射率90%以上、最大95%以上としている。
【0031】
また、前記黒色層を再生ポリエチレン材で実施すると、色の違うものが混在するが、カーボンブラックを入れて簡単に黒色にできるが、白色層は簡単に白色層にできない。再生材を使用しても白色再生材は多く集まらない。従って前記白色層の厚みはコスト問題もあって必要最小限の厚みとしている。
【0032】
畑や温室では、前記白色層11を上にして敷くことにより、リンゴ、ナシ、ミカン、ブドウ、トマトなどの果物や野菜の成長を促進させ、また温室に敷くことにより、トマト、イチゴなどの果物や野菜の成長させることができる。また、フィルムではなく厚さ1mm以上の敷板なので、車両などの通過でも耐える強度を有している。
【0033】
前記果物野菜栽培地用敷板10おいて、夏場に前記白色層11を表にして、果物や野菜の成長を促し、冬場は前記果物野菜栽培地用敷板10を裏返し、前記黒色層12を表にし、太陽光を吸収し地温や温室内温度の上昇につなげる。
【0034】
図8は、白色層11を上向きにしたものと、黒色層12を上向きにしたものを、太陽光が良く当たるように地面上に平行に置き、白色層と黒色層の表面温度を測定した結果を示した。
2020年6月3日~10月22日の間、前記果物野菜栽培地用敷板10で、前記ルチル型酸化チタンを2重量%配合した前記白色層11と前記黒色層12の表面温度の測定結果を示している。
気温変化は31、白色層の温度変化は32、黒色層の温度変化は33で表した。
図9は、図8より、特に前記黒色層12と前期白色面11での温度差が大きかった日を抜粋して表にした。
【0035】
図9を見ると、夏場気温31が30℃超えた日は黒色層と白色層の温度差が20℃以上となることが分かる。前記白色層における前記20℃の温度差は、太陽による光反射率アップに貢献しているとも思われる。
前記白色層11を表にして使用すると、果物や野菜の成長を促すと同時に、周りの環境温度を抑えることができる。
【0036】
図10には、前記果物野菜栽培地用敷板10の白色層11と黒色層12を表面(上面)にした場合の各々の表面(42、44)と裏面温度(41、43)示している。
気温21℃付近では、前記黒色層12を表面にしたときの前記裏面温度43は、前記白色層11を表面にしたときの前記裏面温度41に比べて、約10℃の温度差がある。またその時の表面温度(44と43との差)は約15℃の温度差がある。
前記黒色層12の前記裏面温度43が高いのは、畑では地温を高め、前記黒色層12の前記表面温度44が高いのは、温室内の保温につながる。気温が20℃での実験ではあるが、冬場でも同じ傾向が得られると考えられる。
【0037】
また、気温が32℃の時期では、前記白色層11を表面にしたときの表面温度42は、前記黒色層12を表面にしたときの表面温度44に比べ、約20℃低い温度になっており、夏場の温室内の温度低下に寄与しており、光を反射させて、果実や野菜の成長に結びついている。
【0038】
前記果物野菜栽培地用敷板10に使用されるポリエチレン材料は、再生材料でもバージン材料でも良い。ポリエチレン材料には、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンなどが挙げられる。
【0039】
前記白色層の添加剤は主にルチル型酸化チタンを使用するが、炭酸カルシウム、硫酸バリウムやアルミニウム金属粉末等の無機充填剤を含有させると更に光反射率の効果が期待できる。
【0040】
前記果物野菜栽培地用敷板は二層構造ポリエチレン製の板からなり、車両が通過しても破れないように厚みは1mm以上で、望ましくはトラックの通過に支障がない厚みとして6~8mm程度が良い。
【0041】
白色層の厚みは、光の透過により下の黒色層による光の反射率の低下につながる光の吸収の影響を受けない0.5mm以上としているが、実用上前記白色層は1~3mmが最適と思われる。
【0042】
前記果物野菜栽培地用敷板は前記二層構造ポリエチレン製の板からなり、その生産は、白色層と黒色層をTダイを通して同時押出成型しており、白色層と黒色層は完全に一体化している。射出成型やプレス成型により生産も可能であるが、完全な一体化は難しい。
また、白色層11と黒色層12を別々に成型して、接着や熱融着などにより貼り合わせても良いが、接着や融着部分で剥がれやすい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
農業関連で夏場での果樹園や温室内での果物や野菜の育成の育成などに利用できる。
特に、イチゴ、リンゴ、サクランボ、ブドウなどをムラなく色づけることができる。
イチゴなどの栽培の温室では、通路に本発明の果物野菜栽培地用敷板を敷き、畝には白色シートを張ることにより、温室内は高い光反射率を持たすことができ、強い光を必要とする作物や果樹(イチゴ、トマト、リンゴ など)に効果的である。
【0044】
冬場は、果物野菜栽培地用敷板を裏返し黒い面を出せば、温室内では保温になったり、畑地では地温を維持したり害虫の飛来の防止にも役立つ。
裏返すことにより汚れた面も簡単に水洗いができる。
車の通行でも破損することがないので10年以上使用で、使用できなくなればリサイクルが可能で、再生すれば新しく敷板として生まれ変わる。
【符号の説明】
【0045】
10 果物野菜栽培地用敷板
11 白色層
12 黒色層
21 酸化チタンを含有していない
22 ルチル型酸化チタンを1重量%含有
23 ルチル型酸化チタンを1.5重量%含有
24 ルチル型酸化チタンを2重量%含有
25 ルチル型酸化チタンを3重量%含有
26 ルチル型酸化チタンを4重量%含有
31 気温
32 白色層の表面温度
33 黒色層の表面温度
41 白色層の裏面温度
42 白色層の表面温度
43 黒色層の裏面温度
44 黒色層の表面温度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10