(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153250
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用樹脂集電体、リチウムイオン電池及びリチウムイオン電池用樹脂集電体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/66 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
H01M4/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179361
(22)【出願日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2021055451
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】北場 萌
(72)【発明者】
【氏名】西村 英起
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【テーマコード(参考)】
5H017
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017BB08
5H017BB14
5H017DD06
5H017EE06
5H017EE07
5H017EE09
5H017HH01
5H017HH03
5H017HH10
(57)【要約】
【課題】十分な導電性を有し、かつ充放電を繰り返しても電気抵抗値が悪化(上昇)しにくいリチウムイオン電池用樹脂集電体を提供すること。
【解決手段】マトリックス樹脂及び導電性フィラーを含む樹脂組成物からなるリチウムイオン電池用樹脂集電体であって、前記導電性フィラーが無機金属化合物であり、前記導電性フィラーの体積抵抗率が50μΩcm~1Ωcmであることを特徴とするリチウムイオン電池用樹脂集電体。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス樹脂及び導電性フィラーを含む樹脂組成物からなるリチウムイオン電池用樹脂集電体であって、
前記導電性フィラーが無機金属化合物であり、
前記導電性フィラーの体積抵抗率が50μΩcm~1Ωcmであることを特徴とするリチウムイオン電池用樹脂集電体。
【請求項2】
前記導電性フィラーの体積平均粒子径が1~15μmである請求項1に記載のリチウムイオン電池用樹脂集電体。
【請求項3】
前記導電性フィラーの重量割合が、前記リチウムイオン電池用樹脂集電体の重量を基準として30~80重量%である請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用樹脂集電体。
【請求項4】
前記導電性フィラーが、チタン又は銅を含む無機金属化合物である請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用樹脂集電体。
【請求項5】
前記マトリックス樹脂が、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン及びキシレンからなる群より選ばれる少なくとも1種に溶解する樹脂である請求項1~4のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用樹脂集電体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用樹脂集電体を備えるリチウムイオン電池。
【請求項7】
マトリックス樹脂、導電性フィラー及び溶媒を含む樹脂組成物スラリーを基材表面に塗工する塗工工程と、
前記塗工工程の後に、前記樹脂組成物スラリーが塗工された前記基材を乾燥する乾燥工程とを有するリチウムイオン電池用樹脂集電体の製造方法であって、
前記導電性フィラーが無機金属化合物であり、
前記導電性フィラーの体積抵抗率が50μΩcm~1Ωcmであることを特徴とするリチウムイオン電池用樹脂集電体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用樹脂集電体、リチウムイオン電池及びリチウムイオン電池用樹脂集電体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、高エネルギー密度、高出力密度が達成できる二次電池として、近年様々な用途に多用されており、より高性能のリチウムイオン電池を開発するために種々の材料が検討されている。
【0003】
リチウムイオン電池は、高エネルギー密度、高出力密度であるがゆえに、電池が破損した際に火災が起こるリスクが高い。このため異常時における電池の安全性、信頼性を高める検討が種々なされてきた(特許文献1,2)。
【0004】
近年、このようなリチウムイオン電池の集電体として金属箔に代わって樹脂及び導電性フィラーを含有する樹脂集電体用材料、並びに、該樹脂集電体用材料からなる樹脂集電体が提案されている(特許文献3)。
樹脂集電体は、短絡しても樹脂集電体自体の抵抗が大きいので短絡部位に向かって大電流が流れることはなく、急激な温度上昇が発生しないため発火も起きないという安全性のメリットがある。
しかしながら、導電性フィラーに炭素材料を用いる従来の樹脂集電体には、充放電に伴うリチウムイオンの出入りで導電性フィラーが膨潤、収縮することにより、樹脂集電体に体積変化が起きて導電パスが切断され、導電性が低下する等の劣化が生じるという課題があった。また、導電性フィラーにニッケル等の金属フィラーを用いる従来の樹脂集電体には、充電時又は時間の経過と共に金属フィラーが酸化あるいは合金化して、樹脂集電体の電気抵抗値(貫通抵抗値)が高くなることにより、電池性能を悪化させるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-150896号公報
【特許文献2】特開2013-201062号公報
【特許文献3】国際公開第2015/005116号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、十分な導電性を有し、かつ充放電を繰り返しても電気抵抗値が悪化(上昇)しにくいリチウムイオン電池用樹脂集電体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の無機金属化合物を導電性フィラーとして用いることで、前記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、マトリックス樹脂及び導電性フィラーを含む樹脂組成物からなるリチウムイオン電池用樹脂集電体であって、前記導電性フィラーが無機金属化合物であり、前記導電性フィラーの体積抵抗率が50μΩcm~1Ωcmであることを特徴とするリチウムイオン電池用樹脂集電体;前記リチウムイオン電池用樹脂集電体を備えるリチウムイオン電池;及び前記リチウムイオン電池用樹脂集電体の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、十分な導電性を有し、かつ充放電を繰り返しても電気抵抗値が悪化(上昇)しにくいリチウムイオン電池用樹脂集電体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[リチウムイオン電池用樹脂集電体]
本発明は、マトリックス樹脂及び導電性フィラーを含む樹脂組成物からなるリチウムイオン電池用樹脂集電体であって、前記導電性フィラーが無機金属化合物であり、前記導電性フィラーの体積抵抗率が50μΩcm~1Ωcmであることを特徴とするリチウムイオン電池用樹脂集電体である。
【0010】
(マトリックス樹脂)
マトリックス樹脂としては、特に制限はなく、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。
前記マトリックス樹脂は、エチレン、プロピレン、スチレンクロロエチレン、トリクロロエチレン、フッ化ビニル、塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリロニトリル、フッ化ビニリデン、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-メチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ピロメリット酸(無水物)、2-クロロ-1,4-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、テレフタロイルクロライド、2,6-ジメチルフェニレンオキサイド、スチレン、4,4-ジクロロベンゾフェノン、2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン等を単量体として重合することで得られる。
【0011】
前記マトリックス樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリロニトリルとは、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを意味し、ピロメリット酸(無水物)とは、ピロメリット酸及びピロメリット酸無水物を意味する。
【0012】
前記マトリックス樹脂は、集電体製造の観点から、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン及びキシレンからなる群より選ばれる少なくとも1種に溶解する樹脂であることが好ましい。
N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN-メチルピロリドンに溶解する樹脂としては、ポリアミド樹脂等が挙げられる。キシレンに溶解する樹脂としては、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0013】
本明細書において、樹脂が溶媒に溶解するかの判断については、140℃で溶媒100gに対して樹脂が2g以上溶解した場合に、樹脂が当該溶媒に溶解するものと判断する。
【0014】
前記マトリックス樹脂の重量平均分子量としては、特に限定されないが、成形性及び樹脂強度の観点から、5万~100万であることが好ましく、10万~50万であることがより好ましい。
【0015】
なお、本明細書中において、重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した重量平均分子量を意味する。測定条件としては、以下の通りである。
装置:高温ゲルパーミエイションクロマトグラフ[「Alliance GPC V2000」、Waters(株)製]
溶媒:オルトジクロロベンゼン
基準物質:ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel 10μm、MIXED-B 2本直列[ポリマーラボラトリーズ(株)製]
カラム温度:135℃
【0016】
前記マトリックス樹脂を得る方法としては、特に制限はなく、上述した材料を公知の方法により重合する等により得ることができる。
【0017】
マトリックス樹脂の含有量は、集電体強度の観点から、前記リチウムイオン電池用樹脂集電体の重量を基準として、20~70重量%が好ましく、20~55重量%がより好ましく、20~40重量%が特に好ましい。
【0018】
(導電性フィラー)
本発明における導電性フィラーは、無機金属化合物であり、かつ前記導電性フィラーの体積抵抗率が50μΩcm~1Ωcmである。
前記導電性フィラーの体積抵抗率が50μΩcm未満であると電池が何らかの事情で損傷した時の安全性を担保することが困難となり、前記導電性フィラーの体積抵抗率が1Ωcmを超えると集電体として必要な導電性を維持することができなくなる。
【0019】
本明細書における無機金属化合物は、金属元素と非金属元素を含む化合物である。
金属元素としては、銅、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン、タンタル等が挙げられる。
非金属元素としては、炭素、窒素、硫黄、フッ素、リン、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
無機金属化合物の具体例としては、炭化チタン、硫化銅(I)、硫化銅(II)、炭化ジルコニウム、炭化バナジウム、窒化バナジウム、炭化ニオブ、窒化ニオブ、炭化クロム、炭化モリブデン、炭化タンタル、炭化モリブデン、窒化チタン、窒化クロム等が挙げられる。これらのうちリチウムイオン吸蔵のしにくさの観点から好ましいのは、チタン又はモリブデンを含む無機金属化合物であり、より好ましいのは炭化チタン、炭化モリブデン、窒化チタンである。
【0020】
本明細書中において、導電性フィラーの体積抵抗率は、以下の方法で測定した体積抵抗率(Ω・cm)を意味する。
Φ20の電気抵抗測定治具内に導電性フィラーを入れて20kNの荷重をかけた状態で、電気抵抗測定器(ロレスタPAシステムMCP-PD51、日東精工製)及び抵抗計(ロレスタ-GX MCP-T700、日東精工製)を用いて、導電性フィラーの体積抵抗率(Ω・cm)を測定する。
【0021】
前記導電性フィラーの体積平均粒子径は、電池の電気特性及びフィルム成型性の観点から、0.1~15μmであることが好ましく、1~15μmであることがより好ましく、1~8μmであることがさらに好ましく、1~3μmであることがよりさらに好ましい。
本明細書において、体積平均粒子径は、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。マイクロトラック法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法である。なお、体積平均粒子径の測定には、日機装(株)製のマイクロトラック等を用いることができる。
【0022】
前記導電性フィラーの重量割合は、集電体の導電性及び電池のエネルギー密度の観点から、リチウムイオン電池用樹脂集電体の重量を基準として30~80重量%であることが好ましく、45~80重量%であることがより好ましく、60~80重量%であることが特に好ましい。
【0023】
(その他の成分)
本発明のリチウムイオン電池用樹脂集電体は、必要に応じて、その他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、分散剤、着色剤、紫外線吸収剤、可塑剤(フタル酸骨格含有化合物、トリメリット酸骨格含有化合物、リン酸基含有化合物及びエポキシ骨格含有化合物等)等が挙げられる。
【0024】
分散剤としては、三洋化成工業(株)製ユーメックスシリーズ、東洋紡(株)製ハードレンシリーズ、トーヨータックシリーズ、サンノプコ社製SNスパース70等を用いることができる。
【0025】
着色剤、紫外線吸収剤及び可塑剤等は、公知のものを適宜選択して用いることができる。
【0026】
その他の成分の合計含有量は、リチウムイオン電池用樹脂集電体の重量を基準として0.001~5重量%であることが好ましい。
【0027】
本発明のリチウムイオン電池用樹脂集電体の厚さは特に限定されないが、5~150μmであることが好ましく、20~100μmであることがより好ましく、30~50μmであることが特に好ましい。
【0028】
[リチウムイオン電池用樹脂集電体の製造方法]
本発明のリチウムイオン電池用樹脂集電体の製造方法は、マトリックス樹脂、導電性フィラー及び溶媒を含む樹脂組成物スラリーを基材表面に塗工する塗工工程と、前記塗工工程の後に、前記樹脂組成物スラリーが塗工された前記基材を乾燥する乾燥工程とを有するリチウムイオン電池用樹脂集電体の製造方法であって、前記導電性フィラーが無機金属化合物であり、前記導電性フィラーの体積抵抗率が50μΩcm~1Ωcmであることを特徴とする。
【0029】
前記マトリックス樹脂及び前記導電性フィラーとしては、前述した材料を使用できる。
【0030】
前記溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1-メトキシ-2-プロパノール等のセロソルブ系溶媒、ジアセトンアルコール、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、4-メチル-2-ペンタノン、シクロヘキサノン、エチルシクロヘキサノン、1、2-ジメチルシクロヘキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のケトン系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル系溶媒、2、2、3、3-テトラフルオロ-1-プロパノール、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン含有溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、1-ペンタノール、1-ブタノール等のアルコール系溶媒を挙げることができる。前記溶媒は単独であるいは2種以上併用して使用することができる。
これらのうち、製造安定性の観点から、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン又はキシレンが好ましい。
【0031】
前記基材としては、特に制限はないが、ポリエチレンテレフタレート、フッ素系樹脂、紙、金属、ガラス板、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等の表面平滑な離型性基材等が挙げられる。
【0032】
前記塗工工程は、前記基材の表面上にバーコーター、Tダイ、バー付きTダイ、ドクターナイフ、メイア・バー、ロール・コーター、ダイ・コーター等を用いて、又はスプレー、刷毛刷り、ロール、スピンコート、ディッピング等により厚さが均一になるように塗工される。また、1回の塗工で所望の膜厚が得られない場合は、繰り返し塗工することもできる。
【0033】
前記乾燥工程については、特に制限はなく一般的に用いられる方法、例えば、前記樹脂組成物スラリーが塗工された前記基材を、多数のローラーを介して乾燥炉中を通過させる方法、オーブン中で乾燥する方法等が実施できる。乾燥温度は、用いるマトリックス樹脂の融点よりも10~100℃低い温度であることが好ましく、50~80℃低い温度であることがより好ましい。また、乾燥時間は、2~10時間であることが好ましく、5~8時間であることがより好ましい。
【0034】
本発明のリチウムイオン電池用樹脂集電体は、また、以下の方法でも製造することができる。
マトリックス樹脂、導電性フィラー、及び、必要に応じてその他の成分を混合することにより、樹脂組成物を得る。
混合の方法としては、導電性フィラーのマスターバッチを得てから、さらにマトリックス樹脂と混合する方法、及び、全ての原料を一括して混合する方法等があり、その混合にはペレット状又は粉体状の成分を適切な公知の混合機、例えばニーダー、インターナルミキサー、バンバリーミキサー及びロールを用いることができる。
【0035】
混合時の各成分の添加順序には特に限定はない。得られた混合物は、さらにペレタイザーなどによりペレット化又は粉末化してもよい。
【0036】
得られた樹脂組成物を例えばフィルム状に成形することにより、リチウムイオン電池用樹脂集電体が得られる。フィルム状に成形する方法としては、Tダイ法、インフレーション法及びカレンダー法等の公知のフィルム成形法が挙げられる。なお、リチウムイオン電池用樹脂集電体は、フィルム成形以外の成形方法によっても得ることができる。
【0037】
[リチウムイオン電池]
本発明のリチウムイオン電池は、本発明のリチウムイオン電池用樹脂集電体を備える。
【0038】
本発明のリチウムイオン電池用樹脂集電体は、公知のリチウムイオン電池に適用することができる。
すなわち、正極活物質、負極活物質、電解液及びセパレータ等の材料としては、公知の材料を使用することができる。
なお、正極活物質は、正極活物質がアクリル系樹脂等の樹脂で被覆された被覆正極活物質であってもよく、負極活物質は、負極活物質がアクリル系樹脂等の樹脂で被覆された被覆負極活物質であってもよい。
【実施例0039】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン16.3重量部を脱水したジメチルアセトアミド75重量部に溶解させ、さらにピロメリット酸無水物8.7重量部を加えて48時間攪拌し、25重量%のポリイミド前駆体溶液を作製した。
作製したポリイミド前駆体溶液63.2重量部に導電性フィラーとして炭化チタン[TiC、富士フィルム和光純薬(株)製、体積平均粒子径:6.0μm、体積抵抗率:0.002Ω・cm]を36.8重量部加え、樹脂組成物スラリーとした。
得られた樹脂組成物スラリーをガラス板上に塗布し、160℃のホットプレート上で1時間乾燥させ、溶媒を乾燥した。さらに電気炉に入れ、200℃で1時間、300℃で1時間、325℃で1時間加熱し、マトリックス樹脂がポリイミドで、厚みが35μmの樹脂集電体を得た。
【0041】
(実施例2)
導電性フィラーとして炭化チタン[TiC、富士フィルム和光純薬(株)製、体積平均粒子径:5.4μm、体積抵抗率:0.0017Ω・cm]を用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂集電体を作製した。
【0042】
(実施例3)
ポリイミド前駆体溶液90.3重量部と炭化チタン[TiC、富士フィルム和光純薬(株)製]9.7重量部を混合したものを樹脂組成物スラリーとしたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂集電体を作製した。
【0043】
(実施例4)
ポリイミド前駆体溶液80.0重量部と炭化チタン[TiC、富士フィルム和光純薬(株)製]20.0重量部を混合したものを樹脂組成物スラリーとしたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂集電体を作製した。
【0044】
(実施例5)
ポリイミド前駆体溶液50.0部と炭化チタン[TiC、富士フィルム和光純薬(株)製]50.0重量部を混合したものを樹脂組成物スラリーとしたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂集電体を作製した。
【0045】
(実施例6)
導電性フィラーとして炭化チタン[TiC、関東化学株式会社製、体積平均粒子径:0.18μm、体積抵抗率:0.0009Ω・cm]を用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂集電体を作製した。
【0046】
(実施例7)
導電性フィラーとして炭化チタン[TiC、シグマアルドリッチ社製、体積平均粒子径:20.6μm、体積抵抗率:0.012Ω・cm]を用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂集電体を作製した。
【0047】
(実施例8)
導電性フィラーとして硫化銅(I)[Cu2S、富士フィルム和光純薬(株)製、体積平均粒子径:10.1μm、体積抵抗率:0.02Ω・cm]を用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂集電体を作製した。
【0048】
(実施例9)
ポリプロピレン[商品名[サンアロマーPM900A]、サンアロマー(株)社製]25重量部、分散剤[商品名[SNスパース70]、サンノプコ社製]5重量部、導電性フィラーとして炭化チタン[TiC、富士フィルム和光純薬(株)製、体積平均粒子径:6.0μm、体積抵抗率:0.002Ω・cm]70重量部を140℃のキシレンに溶解、混合しキャスト溶液を得た。
得られたキャスト溶液を銅箔上に塗布し、110℃のホットプレートで加熱して溶媒を除去したのち80℃の減圧乾燥機で乾燥した。銅箔上に形成したフィルムを剥離し、マトリックス樹脂がポリプロピレンで、厚みが20μmの樹脂集電体を得た。
【0049】
(実施例10)
導電性フィラーとして硫化銅(I)[Cu2S、富士フィルム和光純薬(株)製、体積平均粒子径:10.1μm、体積抵抗率:0.02Ω・cm]を用いたこと以外は実施例9と同様にして、樹脂集電体を作製した。
【0050】
(実施例11)
窒素雰囲気下において、2-クロロ-1,4-フェニレンジアミン(東京化成工業株式会社製)5.8重量部と4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(東京化成工業株式会社製)19.2重量部を1-メチル-1-ピロリドン(超脱水、富士フィルム和光純薬株式会社製)75重量部に溶解し、この溶液を0℃に冷却した。
系内を窒素気流下、30℃以下に保った状態で、先に混合したジアミン溶液73.2重量部に対してテレフタロイルクロライド26.8重量部を添加して2時間攪拌を行い、芳香族ポリアミドを重合した。
得られた重合溶液90.7重量部に対して、炭酸リチウム(富士フィルム和光純薬株式会社製)8.58重量部及びジエタノールアミン(東京化成工業株式会社製)0.76重量部を加えて攪拌し、中和することで、樹脂濃度25%の芳香族ポリアミドの溶液を得た。
得られた芳香族ポリアミド溶液57.2重量部に対して分散剤[商品名[SNスパース70]、サンノプコ社製]2.8重量部、及び導電性フィラーとして炭化チタン[TiC、富士フィルム和光純薬(株)製、体積平均粒子径:6.0μm、体積抵抗率:0.002Ω・cm]40.0重量部を加えて攪拌し、樹脂組成物スラリーとした。
得られた樹脂組成物スラリーをガラス板上に塗布し、110℃のホットプレートで加熱して溶媒を除去したのち80℃の減圧乾燥機で乾燥した。銅箔上に形成したフィルムを剥離し、マトリックス樹脂がポリアミドで厚みが30μmの樹脂集電体を得た。
【0051】
(実施例12)
導電性フィラーとして硫化銅(I)[Cu2S、富士フィルム和光純薬(株)製、体積平均粒子径:10.1μm、体積抵抗率:0.02Ω・cm]を用いたこと以外は実施例11と同様にして、樹脂集電体を作製した。
【0052】
(実施例13)
導電性フィラーとして炭化タンタル[TaC、富士フィルム和光純薬(株)製、体積平均粒子径:1.5μm、体積抵抗率:0.0029Ω・cm]を用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂集電体を作製した。
【0053】
(実施例14)
導電性フィラーとして炭化モリブデン[Mo2C、富士フィルム和光純薬(株)製、体積平均粒子径:5.9μm、体積抵抗率:0.0007Ω・cm]を用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂集電体を作製した。
【0054】
(実施例15)
導電性フィラーとして窒化チタン[TiN、富士フィルム和光純薬(株)製、体積平均粒子径:2.7μm、体積抵抗率:0.0015Ω・cm]を用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂集電体を作製した。
【0055】
(実施例16)
導電性フィラーとして窒化クロム[CrN、富士フィルム和光純薬(株)製、体積平均粒子径:4.7μm、体積抵抗率:0.24Ω・cm]を用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂集電体を作製した。
【0056】
(実施例17)
厚みを50μmになるように調整したこと以外は実施例7と同様にして、樹脂集電体を作製した。
【0057】
(比較例1)
導電性フィラーとしてアセチレンブラック[デンカ(株)製 デンカブラック(登録商標)、体積平均粒子径:35μm、体積抵抗率:0.1Ω・cm]を用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂集電体を作製した。
【0058】
(比較例2)
導電性フィラーとしてアセチレンブラック[デンカ(株)製 デンカブラック(登録商標)、体積平均粒子径:35μm、体積抵抗率:0.1Ω・cm]を用いたこと以外は実施例9と同様にして、樹脂集電体を作製した。
【0059】
(比較例3)
導電性フィラーとしてアセチレンブラック[デンカ(株)製 デンカブラック(登録商標)、体積平均粒子径:35μm、体積抵抗率:0.1Ω・cm]を用いたこと以外は実施例11と同様にして、樹脂集電体を作製した。
【0060】
(比較例4)
導電性フィラーとして炭化ケイ素[SiC、(株)高純度化学研究所製、体積平均粒子径:8.5μm、体積抵抗率:1.0×105Ω・cm超]を用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂集電体を作製した。
【0061】
<集電体の体積抵抗値の測定>
各実施例及び比較例で得た樹脂集電体をそれぞれφ15mmの試験片に裁断し、電気抵抗測定器[井元製作所社製、型番:IMC-0240]を用いて各樹脂集電体の抵抗値を測定した。
電気抵抗測定器に2.16kgの荷重をかけた状態での樹脂集電体の抵抗値を測定し、荷重をかけてから60秒後の値をその集電体の貫通抵抗値とした。
サンプル厚みの差異を考慮するため、下記の式に示すように、測定した貫通抵抗値をサンプル厚みで割り、抵抗測定時の治具の接触表面の面積(1.77cm2)をかけた値を体積抵抗値として算出した。
体積抵抗値(Ω・cm)
=貫通抵抗値(Ω)÷サンプル厚み(cm)×1.77(cm2)
結果は、表1に記した。
【0062】
<電解液の作製>
エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(体積比率1:1)にLiN(FSO2)2を2.0mol/Lの割合で溶解させて電解液を作製した。
【0063】
<サイクリックボルタンメトリー(CV)評価用セル(還元電位側)の作製>
正極側から、銅箔[商品名「電解銅箔(厚み0.2mm)」、古川電機工業(株)製]、リチウム金属箔(4.0cm2)[商品名「リチウムフォイル(厚み0.5mm)」、本城金属((株))製]、セパレータ[商品名#3501]、セルガード社製]、実施例及び比較例で作製した樹脂集電体、銅箔をこの順に重ね合わせ、電解液を注入したのち酸素が入らないように真空ラミネートし、還元電位側CV評価用セルを作製した。
【0064】
<還元電位側CV測定による集電体へのリチウム吸蔵有無の評価>
作製したハーフセルを用い、電位領域0~1.5V(vs.Li/Li+)、電位掃引速度35mV/sでサイクリックボルタンメトリー測定を行い、観測される電流変化を調べた。
測定結果から、以下の基準により集電体へのリチウム吸蔵の有無を評価した。
〇:電位0Vにおける単位面積当たりの還元電流値が5μAcm-2 未満、かつ電位1Vにおける単位面積当たりの酸化電流値が1μAcm-2 未満
×:電位0Vにおける単位面積当たりの還元電流値が5μAcm-2以上、もしくは電位1Vにおける単位面積当たりの酸化電流値が1μAcm-2以上
結果は、表1に記した。
表1に記載の通り、実施例で作製した集電体の全てにおいて、集電体へのリチウム吸蔵が起こらず、耐還元電位性があることを確認した。
【0065】
【0066】
<被覆用正極高分子化合物の作製>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口コルベンに、ラウリルメタクリレート95重量部、メタクリル酸4.6重量部、1、6-ヘキサンジオールジメタクリレート0.4重量部及びトルエン390重量部を仕込み75℃に昇温した。トルエン10重量部及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.200重量部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.200重量部を混合した。得られた単量体混合液をコルベン内に窒素を吹き込みながら、滴下ロートで4時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.800重量部をトルエン12.4重量部に溶解した溶液を滴下ロートを用いて、重合を開始してから6~8時間目にかけて連続的に追加した。さらに重合を2時間継続し、トルエンを488部加えて樹脂濃度30重量%の共重合体溶液(被覆用正極高分子化合物溶液)を得た。
【0067】
<被覆用負極高分子化合物の作製>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF150重量部を仕込み、65℃に昇温した。次いで、アクリル酸90重量部及びメタクリル酸メチル10重量部をDMF50重量部に溶解させた単量体組成物と、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.1重量部をDMF30重量部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、70℃に昇温して反応を2時間継続した。次いで、80℃に昇温して反応を2時間継続し、樹脂濃度30重量%の共重合体溶液(被覆用負極高分子化合物溶液)を得た。
【0068】
<リチウムイオン電池用被覆正極活物質の作製>
正極活物質粒子(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末、体積平均粒子径4μm)87.5重量部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、被覆用正極高分子化合物溶液9.4重量部を2分かけて滴下し、さらに5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電助剤であるアセチレンブラック[デンカ(株)製 デンカブラック(登録商標)]3.1重量部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。
その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。
得られた粉体を目開き200μmの篩いで分級し、リチウムイオン電池用被覆正極活物質を作製した。
【0069】
<リチウムイオン電池用被覆負極活物質の作製>
難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)((株)クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン製 カーボトロン(登録商標)PS(F))80重量部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[(株)アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、被覆用負極高分子化合物溶液11重量部を2分かけて滴下し、さらに5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電助剤であるアセチレンブラック[デンカ(株)製 デンカブラック(登録商標)]9重量部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。
その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を140℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。
得られた粉体を目開き200μmの篩いで分級し、リチウムイオン電池用被覆負極活物質を作製した。
【0070】
<リチウムイオン電池用正極の作製>
電解液42重量部と炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm]4.2部とを遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて2000rpmで5分間混合し、続いて上記電解液30重量部と上記リチウムイオン電池用被覆正極活物質206重量部を追加した後、更にあわとり練太郎で2000rpmで2分間混合し、上記電解液20重量部を更に追加した後、あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1分間行い、更に上記電解液を2.3重量部更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで2分間混合して、正極活物質層用スラリーを作製した。得られた正極活物質層用スラリーを目付量が100mg/cm2となるよう、上記樹脂集電体の片面に塗布し、1.4MPaの圧力で約10秒プレスし、厚さが420μmのリチウムイオン電池用正極(16.2cm×16.2cm)を作製した。
【0071】
<リチウムイオン電池用負極の作製>
電解液42重量部と炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm]4.2重量部とを遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて2000rpmで5分間混合し、続いて上記電解液30重量部と上記リチウムイオン電池用被覆負極活物質206重量部を追加した後、更にあわとり練太郎で2000rpmで2分間混合し、上記電解液を20重量部を更に追加した後、あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1分間行い、更に上記電解液を2.3重量部更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで2分間混合して、負極活物質層用スラリーを作製した。得られた負極活物質層用スラリーを目付量が48mg/cm2となるよう、上記樹脂集電体の片面に塗布し、1.4MPaの圧力で約10秒プレスし、厚さが580μmのリチウムイオン電池用負極(17.0cm×17.0cm)を作製した。
【0072】
<評価用電池の作製>
正極側から、カーボンコートアルミ箔[商品名「カーボンコートアルミ箔」、東洋アルミニウム(株)製]、正極、セパレータ[商品名#3501]、セルガード社製]、負極、実施例及び比較例で作製した樹脂集電体、銅箔をこの順に重ね合わせ、電解液を注入したのち酸素が入らないように真空ラミネートし、充放電評価用電池を作製した。
評価用電池の正極、負極及び集電体はφ15mm(1.77cm2)に打ち抜いて使用した。
【0073】
<充放電による集電体機能の確認>
集電体機能の確認のため、作製した評価用電池を用い、25℃下、充放電測定装置「HJ-SD8」[北斗電工(株)製]を用いて、以下の方法によりリチウムイオン電池の初回性能の評価を行った。
定電流定電圧充電方式(CCCVモードともいう)で0.05Cの電流で4.2Vまで充電した後4.2Vを維持した状態で電流値が初期電流値の5%に低下するまで充電した。10分間の休止後、0.05Cの電流で1.5Vまで放電した。
このとき充電した容量を[初回充電容量(mAh)]、放電した容量を[初回放電容量(mAh)]とした。
上記の測定で得られた初回充電容量と初回放電容量を用い、以下の式で初回クーロン効率を算出した。
[初回クーロン効率(%)]=[初回放電容量]÷[初回充電容量]×100
また、放電開始からの10秒間の電圧降下から、以下の式で電気抵抗値(10sDCR)を算出した。
[10sDCR(Ω・cm2)]=([放電開始前の電圧(V)]-[放電開始後10秒経過時の電圧(V)])/[放電時電流値(A)]×1.77(1.77cm2)
【0074】
結果は、表2に記した。
表2の通り、実施例で作製した集電体を用いて作製した電池の全てにおいて、4.2Vまでの充放電が可能であり、実施例で作製した樹脂集電体が集電体機能を持つことを確認した。
また、実施例で作製した樹脂集電体の全てにおいて、初回クーロン効率及び10sDCRの値が、集電体として銅箔を用いた場合(クーロン効率:70.8%、10sDCR:18.2Ω・cm)と同等であることを確認した。
なお、比較例1~3で作製した集電体を用いて作製した電池は実施例で作製した樹脂集電体を用いた電池と比較して初回クーロン効率が低くなっていた。
【0075】
本発明のリチウムイオン電池用樹脂集電体は、特に、定置用電源、携帯電話、パーソナルコンピューター及びハイブリッド自動車、電気自動車用に用いられるリチウムイオン電池用等の集電体として有用である。