(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153296
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】クラチャイダムからメトキシフラボン系化合物の製造法
(51)【国際特許分類】
C07D 311/60 20060101AFI20221004BHJP
C07D 311/62 20060101ALI20221004BHJP
A61K 36/9068 20060101ALN20221004BHJP
【FI】
C07D311/60
C07D311/62
A61K36/9068
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041470
(22)【出願日】2022-03-16
(31)【優先権主張番号】2101001853
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TH
(71)【出願人】
【識別番号】522106112
【氏名又は名称】バンコク ラボ アンド コスメティック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Bangkok Lab and Cosmetic Company Limited
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルエングリット サパッパン
【テーマコード(参考)】
4C088
【Fターム(参考)】
4C088AB81
4C088AC01
4C088BA08
4C088BA14
4C088MA02
4C088NA20
(57)【要約】
【課題】悪臭のない純粋なメトキシフラボン(methoxyflavones)エキスであって、黒色素、粘性、悪臭を除去したエキスを製造する方法を提供すること。
【解決手段】クラチャイダムのエキスを二酸化ケイ素と混合し、この混合物を、二酸化ケイ素粉を充填したカラムに添加し、次いでカラムの上部に酢酸エチルを添加してエキスを流出することを特徴とする、橙色のメトキシフラボン系化合物を製造する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のステップ ア~エを有する、クラチャイダムから橙色メトキシフラボン化合物の製造法。
ア.固形分(total solid)の質量対質量40~90%の濃縮クラチャイダムエキスを、二酸化ケイ素粉末と1:1~1:3の比率で混合する。
イ.「ア」混合物を、二酸化ケイ素粉が「ア」混合物の1~4倍充填してあるカラムに混合する。
ウ.酢酸エチルを「ア」混合物の3~7倍カラムの上部に追加してから、エキスを下に流出させ、橙色のエキスを得る。
エ.濃縮を高めるため、「ウ」混合物を真空乾式蒸発器で蒸発し、濃縮の橙色エキスを得る。
【請求項2】
次のステップ ア~エを有する、請求項1記載のクラチャイダムから橙色メトキシフラボン化合物の製造法。
ア.固形分の質量対質量70~85%の濃縮クラチャイダムエキスを、二酸化ケイ素粉末と1:1~1:2の比率で混合する。
イ.「ア」混合物を、二酸化ケイ素粉が「ア」混合物の1.3~3.0倍充填してあるカラムに混合する。
ウ.酢酸エチルを「ア」混合物の4~6倍カラムの上部に追加してから、エキスを下に流出させ、橙色のエキスを得る。
エ.濃縮を高めるため、真空乾式蒸発器を使用して、「ウ」混合物を圧力60~150mbar、温度45~65℃で蒸発し、濃縮の橙色エキスを得る。
【請求項3】
次のステップ ア~エを有する、請求項1又は2記載のクラチャイダムから橙色メトキシフラボン化合物の製造法。
ア.化学量375gの固形分の質量対質量70~75%の濃縮クラチャイダムエキスを、化学量375gの二酸化ケイ素粉末と混合する。
イ.「ア」混合物を、二酸化ケイ素粉が「ア」混合物の化学量1000g充填してあるカラムに混合する。
ウ.酢酸エチルをカラムの上部に化学量4300g追加してから、エキスを下に流出させ、橙色のエキスを得る。
エ.濃縮を高めるため、真空乾式蒸発器を使用して、「ウ」混合物を圧力80mbar、温度50℃で蒸発し、濃縮の橙色エキスを得る。
【請求項4】
前記二酸化ケイ素に代えて、酸化アルミニウム(aluminium oxide)を使用する請求項1~3のいずれか1項記載のクラチャイダムからメトキシフラボン化合物の製造法。
【請求項5】
前記酢酸エチルに代えて、ヘキサン又はベンゼンを使用する請求項1~4のいずれか1項記載のクラチャイダムからメトキシフラボン化合物の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラチャイダムからメトキシフラボン系化合物の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
クラチャイダム(Kaempferia parviflora:Wall. Ex Baker)は、ラオス人民民主共和国とウタラディット県、ペッチャブーン県、ルーイ県などタイ北部と北東部の高地においてよく見られる。クラチャイダムは、山岳民族が体に栄養を与えるため、数百年前から飲み続けられているハーブである。近年、臨床と実験室規模の研究により、クラチャイダムは、偏旁冠脚が防止できるという効果だけでなく、炎症も抑制でき、面皰と歯周病が起きる原因菌に対する抗菌作用、萎縮症の防止、癌細胞の破壊、関節炎を治して骨を維持し、糖尿病・肥満症・血栓症の治療、肌をきれいにする作用を有し、細胞の老化、細胞の延命をすることがわかってきた。それは、クラチャイダムに含まれる化合物の効果であり、メトキシフラボン系化合物(methoxyflavones)の合計[5,7-ジメトキシフラボン(5,7-dimethoxyflavone)、5,7,4-トリメトキシフラボン(5,7,4´-trimethoxyflavone)、及び3,5,7,3´4´-ペンタメトキシフラボン(3,5,7,3´4´-pentamethoxyflavone)]である。
【0003】
クラチャイダムからメトキシフラボン系化合物を合成する方法が知られている。クラチャイダムからフラボノイド(flavonoid)を高含有しているエキスを合成する方法と製品発明に関するタイ小特許第4048号(特許文献1)には、次の方法が記載されている。8L/kgのエタノールと乾燥したクラチャイダムの比率でエタノール95%を使用して抽出し、4日間発酵して、そのエキスをろ過する。また、クラチャイダムを8Lのエタノールと4日間で発酵し、エキスをろ過する。出来上がったエキスをろ過し、エタノールを抜くため、真空乾式蒸発器を使用して粘性のエキスまで蒸発する。
また、タイ小特許第14963号(特許文献2)には、メトキシフラボン化合物を高含有するクラチャイダムから合成する方法を開示する。メトキシフラボン化合物を高含有するクラチャイダムから合成する方法は、エタノール95%、水、乾燥したクラチャイダムの根をパーコレーターの中で1日間発酵してからエキスをろ過する。それから、発酵不純物と混ぜたエタノールと残余のクラチャイダムをパーコレーターの中で1日間混合する。その後、その2つのエキスを混合し、真空乾式蒸発器で粘性のエキスまで蒸発する。
また、効率的に山奈の根からエキスを製造する方法(Method for efficiently preparing rhizoma kaempferiae extract)に関するCN111166842A(特許文献3)には、次の記載がある。山奈(Kaempferia galanga L.)の根を抽出する方法は、その根を50~80Meshに熟して、温度50~60℃、圧力15~30メガパスカル(MPa)の二酸化炭素で抽出し、メタノールを加えて、エタノールのエキスになるまで60~100分抽出する。そして、活性炭を追加して、色素除去のために還流(reflux)する。それから、エキスを濃くするため、酢酸エチル(ethyl acetate)で結晶化する。エタノールの中に結晶を溶かして、高速向流クロマトグラフィー(high-speed counter-current chromatography)で分別し、各画分を分離し、減圧乾燥する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】タイ小特許第4048号
【特許文献2】タイ小特許第14963号
【特許文献3】中国特許出願公開第111166842号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者が報告した前記のタイにおける小特許により、メトキシフラボン化合物を高含有するエキスが製造できたが、得られたエキスは、色が黒く、粘性・悪臭がある。化粧品を製造するには、使いづらい色であり、匂いもする。従って、本発明は、悪臭のない純粋なメトキシフラボン(methoxyflavones)エキスであって、黒色素、粘性、悪臭を除去したエキスを製造する方法を提供することを目的とする。
また、前記の山奈の根からエキスを製造する方法に関する中国特許出願では、少量の物質が分離できず、時間もかかりプロセスも複雑で値段も高い二酸化炭素抽出機と高速向流クロマトグラフィー機器を使用するという問題がある。従って、本発明は、短時間で、色、粘着性のあるゴム及び臭いを改善したクラチャイダムエキスを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、前記目的を達成するため種々検討した結果、クラチャイダムのエキスを二酸化ケイ素と混合し、この混合物を、二酸化ケイ素粉を充填したカラムに添加し、次いでカラムの上部に酢酸エチルを添加してエキスを溶出することにより、高濃度で、臭い、粘着樹脂、黒色素が除去された橙色クラチャイダムエキスが得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、クラチャイダムのエキスを二酸化ケイ素と混合し、この混合物を、二酸化ケイ素粉を充填したカラムに添加し、次いでカラムの上部に酢酸エチルを添加してエキスを流出することを特徴とする、橙色のメトキシフラボン系化合物を製造する方法を提供するものである。
さらに本発明は、次のステップ、ア~エを有する、クラチャイダムから橙色メトキシフラボン系化合物の製造法を提供する。
ア.固形分(total solid)の質量対質量40~90%の濃縮クラチャイダムエキスを、二酸化ケイ素粉末と1:1~1:3の比率で混合する。
イ.「ア」混合物を、二酸化ケイ素粉が「ア」混合物の1~4倍混合してあるカラムに混合する。
ウ.酢酸エチルを「ア」混合物の3~7倍カラムの上部に追加してから、エキスを下に流出させ、橙色のエキスを得る。
エ.濃縮を高めるため、「ウ」混合物を真空乾式蒸発器で蒸発して、橙色の。
【発明の効果】
【0008】
本発明方法によれば、簡便な方法でクラチャイダムのエキスから臭い、粘り樹脂、黒色素を除去することができる。また、使用した溶媒は、再利用できるので、合成コストを削減して、環境も守れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、クラチャイダムのエキスを二酸化ケイ素と混合し、この混合物を、二酸化ケイ素粉を充填したカラムに添加し、次いでカラムの上部に酢酸エチルを添加してエキスを溶出することを特徴とする、橙色のメトキシフラボン系化合物を製造する方法である。
【0010】
本発明の好ましい一態様は、次のステップ、ア~エを有する、クラチャイダムから橙色メトキシフラボン系化合物の製造法である。
ア.固形分(total solid)の質量対質量40~90%の濃縮クラチャイダムエキスを、二酸化ケイ素粉末と1:1~1:3の比率で混合する。
イ.「ア」混合物を、二酸化ケイ素粉が「ア」混合物の1~4倍充填してあるカラムに混合する。
ウ.酢酸エチルを「ア」混合物の3~7倍カラムの上部に追加してから、エキスを下に流出させ、橙色のエキスを得る。
エ.濃縮を高めるため、「ウ」混合物を真空乾式蒸発器で蒸発して、濃縮の橙色エキスを得る。
【0011】
更に本発明の好ましい一態様は、次のステップ、ア~エを有する、クラチャイダムから橙色メトキシフラボン系化合物の製造法である。
ア.固形分の質量対質量70~85%の濃縮クラチャイダムエキスを、二酸化ケイ素粉末と1:1~1:2の比率で混合する。
イ.「ア」混合物を、二酸化ケイ素粉が「ア」混合物の1.3~3.0倍充填してあるカラムに混合する。
ウ.酢酸エチルを「ア」混合物の4~6倍カラムの上部に追加してから、エキスを下に流出させ、橙色のエキスを得る。
エ.濃縮を高めるため、真空乾式蒸発器を使用して、「ウ」混合物を圧力60~150mbar、温度45~65℃で蒸発して、濃縮の橙色エキスを得る。
【0012】
更に本発明の好ましい一態様は、次のステップ、ア~エを有する、クラチャイダムから橙色メトキシフラボン系化合物の製造法である。
ア.化学量375gの固形分の質量対質量70~75%の濃縮クラチャイダムエキスを、化学量375gの二酸化ケイ素粉末(1:1の比率)と混合する。
イ.「ア」混合物を、二酸化ケイ素粉が「ア」混合物の化学量1000g(ア.からの混合物の1.3333倍)充填してあるカラムに混合する。
ウ.酢酸エチルをカラムの上部に化学量4300g(ア.からの混合物の5.7333倍)追加してから、エキスを下に流出させ、橙色のエキスを得る。
エ.濃縮を高めるため、真空乾式蒸発器を使用して、「ウ」混合物を圧力80mbar、温度50℃で蒸発して、濃縮の橙色エキスを得る。
【0013】
本発明においては、二酸化ケイ素を吸収性材料として、クロマトグラフィーで分離するために使用する。この二酸化ケイ素は、酸化アルミニウム(aluminium oxideあるいは化学式Al2O3)に置き換えることができる。
また、本発明は、クロマトグラフィーで分離する際に、溶媒として酢酸エチルを使用する。この酢酸エチルは、ヘキサン(hexane)、ベンゼンのどちらに置き換えることもできる。
【実施例0014】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0015】
実施例1
クラチャイダムエキス375gは、シリカと同じように、色番号のHue203 Sat119 Lum22 Red35 Green12 Blue33に似ている。乾くまで蒸発(クラチャイダムエキスにあるエタノールが無くなった)させたら、クラチャイダムエキスの重量は、279gになり、クラチャイダムエキスにある固形分の量は、74%になっている。
クラチャイダムエキスをシリカと混合してから、ヘキサンを800gカラムの上部に、エキスを下に流出させ、無色のヘキサンが出てくる。
クラチャイダムエキスをシリカと混合してから、酢酸エチルと混合したヘキサンを400gカラムの上部に、エキスを下に流出させ、橙色の化合物が得られる。適切なのは、酢酸エチを4300g追加すると橙色のエキスが流出されるが、流出を速めるため、空気抽出器を使用することもできる。橙色エキスの量は約4Lが得られる。橙色エキスを、真空乾燥を使用して60~150mbarの圧力で、橙色エキスできるまで蒸発させる。適切なのは、80mbarである。温度は、45~65℃であるが、適切なのは、50℃である。
色は、色番号のHue6 Sat228 Lum108 Red224 Green38 Blue5に似ている。重量は、121.61gである。
エキスを乾燥粉末にしたいのであれば、180gのシリカあるいは、マルトデキストリンを混合し、温度50℃で空気加熱を5時間作用させれば、橙色の化合物が得られる。色は、色番号のHue5 Sat231 Lum126 Red251 Green47 Blue17に似ている。重量は、259gである。
薄層クロマトグラフィーでテストしたところ、移動相(mobile phase)は、ヘキサンと酢酸エチル、1:1の比率で混合し、シリカゲルF254(silica gel)系の移動相は、光の波長254nmであり、メトキシフラボン系化合物であることがわかった。