(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153299
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】サーモグラフィック画像データのオンライン走査坪量測定への相関
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20221004BHJP
【FI】
H01M4/139
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042512
(22)【出願日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】17/216,567
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】ヒョンサン・イ
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA17
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA28
5H050GA29
(57)【要約】 (修正有)
【課題】連続シート材料の特性を決定するための測定システムを提供する。
【解決手段】動くコーティングされた金属シートの横方向の幅全体に沿った面積重量又は厚さは、サーモグラフィック画像データをオンラインの走査坪量測定に相関させることによって導出される。熱撮像カメラは、連続的な温度プロファイルを生成するために、機械方向に沿った第1の位置で、横方向に沿って、加熱された動くコーティングされた金属シート材料の熱画像を捕捉する。走査ベータゲージは、第2の位置で下流の動くコーティングされた金属シートの面積重量を測定する。赤外線温度センサもまた、第2の位置又は第2の位置の近くで、より低い温度である、動くコーティングされた金属シートの温度を測定する。横方向サーモグラフィック画像データと後者の赤外線温度との間の温度差は、坪量の関数である。ベータゲージからの坪量測定は、横方向坪量データを外挿するために使用される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械方向(MD)に動く、移動する材料のシートの形成を監視するシステムであって、
前記移動する材料のシートの連続的な温度プロファイルを生成するために、前記MDに沿った第1の位置で、横方向に沿って前記シート材料(42)の熱画像を捕捉するように構成されている熱撮像デバイス(22)と、
前記第1の位置の下流である、前記MDに沿った第2の位置で、前記移動する材料のシートの面積重量(74、76)を測定するための手段と、
第3の位置で前記材料のシートの温度を測定するように構成されている温度センサ(78)と、
横方向(CD)に沿って、前記移動する材料のシートの前記面積重量をコンピュータ処理するように構成されているコントローラ(100)と、を備える、システム。
【請求項2】
金属シートを電極材料でコーティングするためのロールツーロールシート生産システムであって、
機械方向(MD)に動く金属基板のシート(44)の連続的なソースと、
コーティングされた動くシートを形成するために、前記動く金属基板(30)上に電極材料のコーティングを塗布するように構成されているコータ(6、14)と、
前記コーティングされた動くシート(42)の連続的な温度プロファイルを生成するために、前記MDに沿った第1の位置で、横方向(CD)に沿って、前記コーティングされた動くシート(42)の熱画像を捕捉する、前記コータ(6、14)の下流に位置する、熱撮像カメラ(22)と、
前記コーティングされた動くシートの特定面積の前記コーティングされた動くシート(42)の坪量を測定するように構成されているベータゲージ(74、76)であって、前記第1の位置の下流に位置する、ベータゲージ(74、76)と、
前記特定面積又は前記特定面積の近くで、前記コーティングされた動くシートの温度を測定するように構成されている温度センサ(78)と、
CDに沿って、前記コーティングされた動くシートの前記坪量をコンピュータ処理するように構成されているプロセッサ(102)と、を備える、ロールツーロールシート生産システム。
【請求項3】
機械方向(MD)に動いている複合コーティングされたシートの単位面積当たりの重量を計算する方法であって、
(a)前記MDに沿った第1の位置で、横方向(CD)に沿って、前記複合コーティングされたシートの熱画像データを生成することと、
(b)前記第1の位置から下流にある、前記MDに沿った第2の位置に位置する尋問スポットの前記複合コーティングされたシートの単位面積当たりの前記重量を計算することと、
(c)前記尋問スポット又は前記尋問スポットの近傍で、前記複合コーティングされたシートの表面温度を測定することと、
(d)前記複合コーティングされたシートのCDに沿って、前記複合コーティングされたシートの単位面積当たりの前記重量をコンピュータ処理することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、連続シート材料の特性を決定するための測定システムに関し、より具体的には、リチウムイオン電気化学セル及びバッテリ用のアノード及びカソードを製造するために使用されるコーティングされた金属箔及び基板などのシート材料の坪量又は厚さの測定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
オンライン測定は、製造中にシート材料の特性を検出して、シート作製プロセスの促進制御を可能にし、ひいては、生産される規格外のシート材料の量を低減しながらシート品質を保証するために使用される。シート作製中のオンライン測定を行う際の主な問題のうちの1つは、シート材料の物理的特性が、通常、機械方向及び横方向において変化することである。(「機械方向」とは、製造中のシート材料の移動方向を指し、「横方向」という用語は、機械方向に垂直なシートの表面を横切る方向を指す。)
【0003】
シート材料のばらつきを検出するために、各走査に沿った坪量又はキャリパなどの選択されたシート特性の値を検出しながら、横方向にシート作製機械を横切って周期的に前後に横断する走査センサが用いられる。通常、生産されているシートは、各走査中に縁から縁まで横断する。典型的な走査に必要な時間は、概して、数メートルにもなり得る横方向の長さに応じて、約20~30秒以上である。測定読み取り値がそのようなスキャナによって提供される速度は、通常調整可能であり、典型的な速度は、50ミリ秒ごとに約1回の測定読み取り値である。
【0004】
実際には、走査センサによって提供された測定情報は、通常、各走査の後に組み立てられて、横方向で検出されたシート特性の「プロファイル」を提供する。言い換えれば、各プロファイルは、横方向の隣接する場所での一連のシート測定値で構成される。プロファイルの目的は、シート特性の横方向のばらつきを容易に検出することを可能にすることである。検出されたシート特性における検出された横方向のばらつきに基づいて、横方向と機械方向の両方のプロファイルのばらつきを低減することを目的として、適切な制御調整をシート作製機械に行うことができる。
【0005】
一定の速度でシートを周期的に横断する走査センサは、シートの長手方向縁部に正確に垂直に整列される位置で選択されたシート特性を測定することができない。シート速度のために、走査センサは、実際にシート表面を横切って斜めに移動し、結果として、連続する走査経路は、シートの長手方向縁に垂直な方向に対してジグザグパターンを有する。実際には、各走査にわたるプロファイル測定の平均を計算することが典型的である。そのような平均は、各走査が完了した後に計算されるため、「最後の」平均と呼ばれることが多い。したがって、走査速度が走査ごとに約20~30秒である場合、最後の平均は、約20~30秒ごとにしか入手できない。制御目的のために、最後の平均、並びに横方向プロファイル測定値を使用することが一般的である。
【0006】
走査センサを使用する代わりに、横方向にシートを横切るように配置された固定点センサのアレイを用いることができる。この技術は、多くの用途におけるニーズを統計的に満たすが、固定センサの数がコスト及び空間の制限によって制限されるため、シートの全幅及び長さを測定することはできない。
【0007】
リチウムイオンバッテリ用の電極の製作において、金属ロールからの金属箔は、活性材料の混合物で連続的にコーティングされる。電極の連続的なロールツーロール生産の品質を達成及び維持するために、バッテリ性能に強くリンクされる品質係数の一定のオンライン測定が必要である。重量は、活性粒子の量と最も直接的に相関し、したがって単位面積当たりの均一な重量(面積重量)は、高品質の電極の基本的な要件である。以前の走査坪量監視技術は、走査ヘッドの経路を直接測定することしかできず、したがって、完成したロールの一部分で坪量データを得ることができる。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、サーモグラフィック画像データをオンライン走査坪量測定に相関させることによって、坪量又は厚さ測定の測定された面積を増加させる必要性に対処する。
【0009】
一態様では、本発明は、機械方向(machine direction、MD)に動く、移動する材料のシートの形成を監視するシステムを対象とし、システムは、
【0010】
移動する材料のシートの連続的な温度プロファイルを生成するために、MDに沿った第1の位置で、横方向に沿ってシート材料の熱画像を捕捉するように構成されている、赤外線撮像カメラなどの熱撮像デバイスと、
【0011】
第1の位置の下流である、MDに沿った第2の位置で、移動する材料のシートの面積重量を測定するための手段と、
【0012】
第3の位置で材料のシートの温度を測定するように構成されている温度センサであって、第2の位置が、第3の位置と同位置であるか、又は第2の位置が第3の位置の近くにある、温度センサと、
【0013】
横方向(cross direction、CD)に沿って、移動する材料のシートの面積重量をコンピュータ処理するように構成されているコントローラと、を備える。
【0014】
移動するシート材料は、シートが乾燥機を出ると、不均一なシート冷却の効果を制限することによってシート全体の熱平衡を最大化するために、乾燥機のシート出口点に近いため、熱画像が撮影される第1の位置で高温である。熱画像は、温度測定に直接変換され、一連の横方向の「プロファイル」を効果的に形成する。走査ベータゲージを用いて、第2の位置での面積重量を測定することができ、赤外線温度センサを用いて、2つのセンサ間の距離に対する既知の横方向オフセットによる面積重量測定の位置に密接に対応する第3の位置での移動するシート材料の温度を測定することができる。面積重量及び温度測定値が同じスポットから取得され、2つの測定値が面積質量を温度と直接相関させることが実際に想定され得る。横方向サーモグラフィック画像データと後者の表面温度との間の温度差は、横方向坪量データを外挿するために使用される第1の位置と第2の位置との間の多項式シート冷却条件を確立する。すなわち、冷却は、多項式として表すことができる。質量対温度関係及びシート冷却多項式を使用して、サーモグラフィックカメラからのすべての温度プロファイルデータの坪量プロファイルを導出することができる。
【0015】
別の態様では、本発明は、金属シートを電極材料でコーティングするためのロールツーロールシート生産システムを対象とし、本システムは、
【0016】
機械方向(MD)に動く金属基板のシートの連続的なソースと、
【0017】
コーティングされた動くシートを形成するために、動く金属基板上に電極材料のコーティングを塗布するように構成されているコータと、
【0018】
コーティングされた動くシートの連続的な温度プロファイルを生成するために、MDに沿った第1の位置で、横方向(CD)に沿って、コーティングされた動くシートの熱画像を捕捉する、コータの下流に位置する、熱撮像カメラと、
【0019】
コーティングされた動くシートの特定面積のコーティングされた動くシートの坪量を測定するように構成されているベータゲージであって、第1の位置の下流に位置する、ベータゲージと、
【0020】
特定面積又は特定面積の近くで、コーティングされた動くシートの温度を測定するように構成されている温度センサと、
【0021】
CDに沿って、コーティングされた動くシートの坪量をコンピュータ処理するように構成されているプロセッサと、を備える。
【0022】
更なる態様では、本発明は、機械方向(MD)に動いている複合コーティングされたシートの単位面積当たりの重量を計算する方法を対象とし、方法は、
【0023】
(a)MDに沿った第1の位置で、横方向(CD)に沿って、複合コーティングされたシートの熱画像データを生成することと、
【0024】
(b)第1の位置から下流にある、MDに沿った第2の位置に位置する尋問スポットの複合コーティングされたシートの単位面積当たりの重量を計算することと、
【0025】
(c)尋問スポット又は尋問スポットの近傍で、複合コーティングされたシートの表面温度を測定することと、
【0026】
(d)複合コーティングされたシートのCDに沿って、複合コーティングされたシートの単位面積当たりの重量をコンピュータ処理することと、を含む。
【0027】
本発明は、金属ロールから金属アルミニウム又は銅箔が、それぞれ、カソード活性材料又はアノード活性材料で連続的にコーティングされているリチウムイオンバッテリ用の電極の製作における品質管理に特に適している。本技術は、プロセス条件のより良好な制御をもたらし、スクラップ率を低減する生産プロセスの初期段階での品質測定データを製造業者に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1A】アノード材料又はカソード材料で金属基材を連続的にコーティングするためのロールツーロールシート生産システムを示す。
【0029】
【
図1B】コーティングされた金属シート上のサーモグラフィック画像、温度、及び坪量測定の動作を示す平面図である。
【0030】
【
図2】坪量及び温度センサを備えるデュアル走査ヘッドを示す。
【0031】
【
図3】デュアル走査ヘッドを有するオンライン走査システムを示す。
【0032】
【
図4】動くシートのサーモグラフィック画像に由来するコーティングの横方向表面温度である。
【0033】
【
図5】コーティングされたシートの横方向表面温度プロファイルである。
【0034】
【0035】
【
図7】マイクロプロセッサ及びメモリを有するコントローラを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、リチウムイオン電気化学セル及びバッテリ用の電極を製作する際に使用される金属ウェブ又はシートをコーティングするためのプロセスを示す。アノードを作製するために、電極コーティングは、黒鉛などのアノード活性材料を含み、カソードを作製するために、電極コーティングは、リチウム金属酸化物などのカソード活性材料を含む。電極は、カーボンブラック、バインダー、及び溶媒も含み得る電極スラリーでホイルの両側上にコーティングされる電流コレクタ金属箔を含む。電極スラリーを箔の側面上に塗布した後、湿式コーティングされた箔を乾燥機で加熱して溶媒を抽出して、金属箔に付着する電極材料の固体層を残す。銅箔は、好ましいアノード電流コレクタ材料であり、アルミニウム箔は、好ましいカソード電流コレクタ材料である。箔は、典型的には、9~50μmの厚さであり、電極コーティングは、箔の一方又両方の側上で厚さが75~400μmの範囲であり、その結果、両面コーティング電極は、最も典型的には厚さが約250μmである、最大850μmのキャリパを有し得る。
【0037】
図1Aに示すように、ロール2は、巻き取り機によって巻き戻され、頂面上にコーティングされる金属ウェブ又はシート30の連続シートを、テープ鋳造コーティングデバイスを含み得るコータ6によって電極スラリーの層で供給する。ロール2からの金属ウェブ30のシートの坪量、厚さ、及び他の特性は、通常知られており、電極スラリーがコータ6によって塗布される前後の坪量及び/又は厚さを測定するために、走査ベータゲージ4及び8が用いられる。
【0038】
コータ6は、シート30上に押し出されるスラリーの量を調整するためにドクターブレードを制御するアクチュエータを含む。乾燥機10は過剰な溶媒を除去し、動くコーティングされたシート32上にあるスラリーを硬化させて、シート上に電極層を形成する。走査ベータゲージ12は、乾燥機10を出る動くコーティングされたシートの坪量及び/又は厚さを測定する。その後、圧延支持体34、36は、コーティングされていない側が上にあるように可動シートの配向を逆転させ、その後、コータ14は、可動シート38の上部がコーティングされていない表面上に電極スラリーの層を塗布する。両面コーティングされたシート40の坪量及び/又は厚さは、乾燥機18に入る前にベータゲージ16で測定される。
【0039】
出射する動くコーティングされたシート42は、抵抗ヒータ20で約55~60℃の温度まで加熱することができるが、サーモカメラ22が乾燥機18の出口から約1~2メートル以内に設置されている場合、コーティングされたシートは、ヒータ20が必要とされないように十分に加熱される。サーモグラフィックカメラ22(又はカメラ)は、コーティングされたシート42の幅にわたって、頻繁な間隔で表面温度を検出して、ほぼ連続的な温度プロファイルデータを提供する。データの正確な周波数及び解像度は、カメラの性能仕様に依存する。更に下流では、走査デバイス24内の赤外線温度センサと共に収納されるベータゲージは、走査デバイス24がコーティングされたシート42を横切って前後に動くときに、コーティングされたシート42の坪量及び/又は厚さ並びに温度を測定する。巻き取り機は、両面コーティングされたシート42をロール44に取り込む。コーティング上の表面欠陥は、カメラベースのウェブ検査システム26、28によって監視される。
【0040】
本発明で両面コーティングされたシート42を監視するために、コーティングされたシート42のサーモグラフィック画像データがコーティングされたシートのオンライン坪量及び/又は厚さの測定値と相関され、補正されて、その横方向全体に沿ってコーティングされた電流コレクタにわたってより正確な坪量及び/又は厚さの計算が生成される。
【0041】
図1Bは、コーティングされたシートの全幅にわたって、すなわち、横方向に沿って縁から縁にわたって、コーティングされたシート42によって放出された放射赤外線エネルギーを測定する、静止サーモグラフィックカメラ22の動作を示す。サーモグラフィックカメラ22は、コーティングされたシート42全体の連続したサーモグラフィック画像を形成するために重ね合わせることができる一連のサーモグラフィック画像を生成する。線形トラック50及び52は、サーモグラフィックデータがサーモグラフィックカメラ22によって撮影される、コーティングされたシート42の2つの連続する細長いセクション又は領域を示す。
【0042】
カメラ22から特定の距離で下流に位置付けられているのは、コーティングされたシート42の坪量及び/又は厚さを測定するベータゲージを含む走査デバイス24である。走査デバイスは、概して一定の速度で、コーティングされたシート42を周期的に横断する。ベータゲージは、コーティングされたシート42のスポット又は面積54を測定することを示している。ベータゲージは、シートの長手方向縁部に正確に垂直に整列される位置で選択されたシート特性を測定しない。代わりに、シート速度のために、走査デバイスは、コーティングされたシート表面を横切って斜めに移動し、結果として、連続する走査経路は、コーティングされたシート42の長手方向縁に垂直な方向に対してジグザグパターンを有する。
【0043】
ジグザグパターンなどの例は、走査デバイス24が前後の連続走査中にシートの表面を横断するときにベータゲージによってトレースされる走査経路56及び58である。真の横方向に対する走査経路の各々の角度は、走査デバイスの横方向速度、及び既知のコーティングされたシート42の機械方向速度に依存する。ジグザグパターンは、コーティングされたシート42表面の比較的小さい部分を覆う。
【0044】
ベータゲージに加えて、走査デバイス24はまた、コーティングされたシート42の温度スポット又は面積55を測定する赤外線温度センサを収納する。すなわち、走査デバイスが、動くコーティングされたシート42の上を前後に横断すると、ベータゲージ及びIR温度センサは、それぞれ、互いに隣接する位置54及び55を監視する。すなわち、スポット55及びスポット54からCDに横方向にオフセットされている。したがって、スポット55は、走査デバイス24が前後の連続走査中にシートの表面を横断するときに、温度センサによってトレースされるジグザグパターン走査経路53及び57を画定する。ジグザグパターン57及び58は、MDオフセット62によって分離され、MDオフセットの距離は、スポット54と55との間の分離、走査デバイスの横方向速度、及びコーティングされたシート42の機械方向速度に依存する。
【0045】
領域60は、走査デバイス24を通過して動いたコーティングされたシート42上の部分を表す。機械方向に動くコーティングされたシート42の速度が制御され、フレーム14とフレーム16との間の距離が固定されているので、コーティングされたシート42がサーモグラフィックカメラ22及び走査デバイス24から移動するのに必要な時間をコンピュータ処理することができる。したがって、走査パターン58及び57に沿った領域60内で、走査デバイス24は、(i)ベータゲージによる坪量及び/又は厚み、並びに(ii)IR温度センサを用いて表面温度を監視している。この情報は、領域60のサーモグラフィック画像データと共に使用され、領域の坪量及び/又は厚さ分布を導出する。
【0046】
走査デバイス24(
図1B)は、
図2に示すように、それぞれ、放射線源74及び放射線検出器76を囲む又は収納する走査ヘッド70、72を含む。放射線源74は、機械方向に動いているコーティングされたシート42上の面積54に向けられた放射線80を放出する。コーティングされたシートを通って透過される放射線82の強度は、放射線検出器76によって感知される。検出器は、材料の坪量の直接指標を与える、コーティングされたシートによって吸収された放射線の量を感知する。放射線源74は、好ましくは、坪量又は厚さの測定のためにベータ放射線を放出する。スキャナヘッド70はまた、CDに適切な解像度を有するシート温度プロファイルを提供するために、好ましくは6mmより小さいスポットサイズ及び100ミリ秒未満の応答時間を有し、1kHzを超えるデータ速度を有する赤外線センサ78を収納する。
図1Bに示すように、シート温度がIRセンサ78によって測定される面積(
図2)は、走査のCD方向に応じて、プラス(+)又はマイナス(-)MD方向にオフセットされる。
【0047】
ベータゲージは、ベータ光線を放出する核測定デバイスである。典型的には、単層金属箔又は電極層などの単層組成物は、既知のベータ線吸収係数及び既知の密度を有する。ベータゲージを使用して、例えば、単層箔の単位面積当たりの質量を決定することができる。すなわち、ベータゲージの生の出力に既知の吸着係数を乗算することによって、測定される箔上の各点について単位面積当たりの質量を計算することができる。同様に、そのような各点における厚さは、単位面積当たりの質量を既知の密度で割ったものに対応する。しかしながら、ベータゲージを使用して、コーティングされた金属基板などの多層フィルム又は複合シートの質量及び厚さを測定する場合、各層の吸着係数及び密度並びに各層の分数組成は、多層フィルム又は複合シートの公称複合吸着係数を導出する際に考慮されなければならない。
【0048】
図3に示すように、デュアルスキャナヘッド70、72の動作面は、MDに動くコーティングされたシート42を収容する測定ギャップを画定する。デュアル走査ヘッドの横方向の動きは、それらが互いに整列するように、速度及び方向に関して同期される。コーティングされたシート42は、横方向に垂直なMDに移動しているため、デュアルヘッドスキャナヘッドによって行われた測定は、コーティングされたシート42の長さに沿って小さい面積のみをカバーする。
【0049】
図1A及び
図1Bに示されるコーティングプロセスの動作中、コーティングされたシート42が乾燥機18を出るとき、コーティングされたシート42のサーモグラフィック画像はカメラ22によって連続的に捕捉される。例えば、動くコーティングされたシート42の連続するセクション50、52のサーモグラフィック画像データを記録する。
図4は、サーモグラフィック画像データから導出されるセクション50の代表的な表面温度プロファイルである。グラフは、コーティングされたシート42の一方の縁から横方向に沿ったもう一方の縁までの表面温度を示す。縁から縁までのCD距離は、0~100から任意に指定される。同じセクション50が走査デバイス24を通過するとき、ベータゲージは、坪量及び/又は厚さを測定し、IR温度センサは、ジグザグパターンに沿って、コーティングされたシート42の隣接する又は同位置の位置で表面温度を測定する。
【0050】
図5は、
図4に示されるコーティングされたシートのセクション50(
図1B)の同じ断面の代表的な表面温度プロファイルである。
図5のグラフは、走査デバイス24内のIR温度センサによって横方向に沿った特定の場所で測定された表面温度を使用し、2つの表面温度間の温度差を計算することによって導出される。例えば、下流IR温度センサが、横方向に沿った中間点でコーティングされたシートを測定する場合、その温度は、より高い温度にある
図4に示される中間点の温度と比較される。
図5のグラフは、前のグラフの温度が中間点で測定された温度差によって下げられることを除いて、
図4のグラフと同じ一般的なプロファイルを有する。
図4及び
図5はまた、シートの外側境界におけるより高い冷却速度のために、可動シートの各端部で温度がより低いという点でエッジ効果を示す。
【0051】
図6は、ベータゲージ測定から導出され、測定値をスケール
図5に適用する代表的な坪量プロファイルである。言い換えれば、坪量プロファイルは、
図6に示す温度グラフと同じ一般的なプロファイルを有するが、横方向に沿った単一スポットのベータゲージ測定を使用して、残りのプロファイルをスケーリングする。更に、より正確な坪量プロファイルを得るためにエッジ効果が考慮されている。エッジにおける冷却効果を定量化する方法は、既知の厚さの基板で作製されたコーティングされたシート又は標準を使用し、その上に既知の厚さのコーティングを塗布してシミュレーションを実行することである。これらの標準を乾燥機で加熱し、続いてサーモグラフィック撮像、IR検出、及びベータゲージ測定を受ける。標準は、例えば、乾燥機温度、周囲温度、可動シートの速度、IRサーモグラフィックカメラと下流走査デバイスとの間の距離、及び他の動作条件を含む、異なる条件下で試験される。これらの標準を使用して生成された横方向温度プロファイルは、異なる動作条件下でのエッジ冷却の影響の分析を可能にする。エッジ冷却の影響をモデル化する数学的関係を開発することができる。あるいは、様々な条件下で動作する異なる標準を使用する実験結果からなるライブラリを使用して、較正曲線又はルックアップテーブルとして編成することができる。いずれの場合も、坪量横方向プロファイルが横方向温度プロファイルから生成されるとき、エッジ効果を補償して、より正確な坪量プロファイルを生成することができる。
図6に示すように、坪量横方向プロファイルは、エッジ効果が考慮される場合、より均一性を示す。
【0052】
図7は、走査デバイス(すべての走査の終了後)及びサーモグラフィックカメラからの温度プロファイル(例えば、毎秒)からの坪量(又は厚さ)及び対応する温度プロファイルを連続的に測定することによって、電極の製造を制御するためのプロセスを示す。デジタル化された信号は、コンピュータ102に供給される。メモリ104は、坪量又は厚さを計算する際のエッジ冷却効果を補償するために使用される較正曲線又はルックアップテーブルのライブラリを含む。
【0053】
コントローラ100は、
図1A及び
図1Bに示されるコーティングプロセスにおける測定を実行するための、任意のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの組み合わせを含む。コントローラ100は、例えば、プロセッサによって使用、生成、及び収集される命令及びデータを記憶するマイクロプロセッサ102及びメモリ104を含むことができる。コントローラ100は、所望の仕様を達成するために、CD坪量に応答してコータ6、14(
図1A)を調節する。
【0054】
本発明は、コーティングされた金属シートの特性を測定する際に例示されてきたが、本発明は、紙及びプラスチックウェブ又はシートを含むがこれらに限定されない、一般に監視された可動シートであり得ることが理解される。シートが金属基板を含まない場合、核ゲージを使用する代わりに、坪量又は厚さを走査赤外線センサによって測定することができる。
【0055】
上記は、本発明の原理、好ましい実施形態、及び動作モードを説明してきた。しかしながら、本発明は、考察される特定の実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。したがって、上述の実施形態は、限定的ではなく例示的なものとしてみなされるべきであり、以下の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によってそれらの実施形態において変形が行われ得ることを理解されたい。