(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153325
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】シールド工事掘削残土処理剤及びシールド工事掘削残土処理方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/13 20060101AFI20221004BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20221004BHJP
C02F 11/00 20060101ALI20221004BHJP
C08F 220/06 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
E21D9/13 C
C09K3/00 103P
C02F11/00 101
C02F11/00 ZAB
C08F220/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050311
(22)【出願日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2021055136
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】奥山 博史
(72)【発明者】
【氏名】吉本 遼
【テーマコード(参考)】
2D054
4D059
4J100
【Fターム(参考)】
2D054AC06
2D054DA33
4D059AA09
4D059BG00
4D059BJ00
4D059DB05
4D059DB06
4D059DB08
4D059DB11
4D059DB28
4D059EB11
4D059EB20
4J100AE77R
4J100AJ02P
4J100AL67Q
4J100BA03R
4J100CA05
4J100CA23
4J100CA31
4J100DA29
4J100HA31
4J100HB39
4J100HE12
4J100JA67
(57)【要約】
【課題】処理中及び処理後の泥土の曳糸性を低減するため固化処理の作業性を向上でき、かつ処理後の泥土のコーン指数を向上できるシールド工事掘削残土処理剤を提供すること。
【解決手段】水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を必須構成単量体とし、
下記(1)及び(2)を満たす架橋重合体を含有するシールド工事掘削残土処理剤:
(1)前記架橋重合体の生理食塩水への可溶性成分量が、前記架橋重合体の重量を基準として25~50重量%である;
(2)前記架橋重合体の生理食塩水吸収量が40~100g/gである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を必須構成単量体とし、
下記(1)及び(2)を満たす架橋重合体を含有するシールド工事掘削残土処理剤:
(1)前記架橋重合体の生理食塩水への可溶性成分量が、前記架橋重合体の重量を基準として25~50重量%である;
(2)前記架橋重合体の生理食塩水吸収量が40~100g/gである。
【請求項2】
イオン交換水に前記架橋重合体を1重量%添加した混合液の25℃における粘度が、5~50Pa・sである請求項1記載のシールド工事掘削残土処理剤。
【請求項3】
前記架橋重合体が水溶性ビニルモノマー(a1)を必須構成単量体とし、前記(a1)がアニオン性ビニルモノマーであり、前記架橋重合体に含まれるアニオン性ビニルモノマーに由来する構成単位の最終的な中和度が、アニオン基及びアニオン塩基の合計モル数に基づいて70~100モル%であり、前記架橋剤(b)がアルカリ性で加水分解する架橋剤(b1)を含有し、前記架橋剤(b1)の含有量が前記水溶性ビニルモノマー(a1)及び前記ビニルモノマー(a2)の合計重量を基準として0.05~0.4重量%である請求項1又は2に記載のシールド工事掘削残土処理剤。
【請求項4】
前記架橋剤(b)が、前記アルカリ性で加水分解する架橋剤(b1)及びアルカリ性で加水分解しない架橋剤(b2)からなり、それぞれの含有量が水溶性ビニルモノマー(a1)及びビニルモノマー(a2)の合計重量を基準として0.05~1重量%であり、
(b1)の(b2)に対する重量比率[(b1)/(b2)]が1~5である請求項1~3のいずれか1項に記載のシールド工事掘削残土処理剤。
【請求項5】
さらに中性固化剤(n)を含有し、前記架橋重合体の中性固化剤(n)に対する重量比率が1/50~1/10である請求項1~4のいずれか1項に記載のシールド工事掘削残土処理剤。
【請求項6】
シールド工事で発生する泥土を請求項1~5のいずれか1項に記載の処理剤を使用して固化する工程を有するシールド工事掘削残土処理方法。
【請求項7】
前記架橋重合体の重量が前記泥土の重量を基準として0.2~0.4重量%であり、前記工程を経た泥土のコーン指数が500kN/m2以上となる請求項6に記載のシールド工事掘削残土処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工事掘削残土処理剤及びシールド工事掘削残土処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気泡シールド工法及び泥土圧シールド工法等で行われるシールド工事では、泥土状の残土(泥土)が発生する。この泥土は流動性が高くそのままでは坑外への搬出や輸送が困難となるため、通常、流動性低下処理及び固化処理した後処分されたり、更に処理を加えて再利用されたりする。
従来、泥土の固化処理方法について種々検討がなされており、特許文献1では、気泡シールド工法で発生する建設排泥に、アニオン性高分子凝集剤または天然高分子を添加混合し、造粒した後、無機系固化材を添加混合して固化することを特徴とする気泡シールド工法で発生する建設排泥の処理方法が提案されている。また、特許文献2では、泥土圧シールド工法で発生する気泡材を含む泥土に、両性高分子凝集剤を混合し、泥土を凝集させることを特徴とする、泥土の処理方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1及び2に記載の処理方法では高分子凝集剤または凝集能の高い天然高分子を使用するため、処理中及び処理後の残土(泥土)の粘性や曳糸性が高くなって機器等に付着しやすくなり、作業性や輸送性が悪くなることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-265885号公報
【特許文献2】特開2020-168629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこれらの問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、処理中及び処理後の掘削残土(泥土)の曳糸性を低減するため固化処理の作業性を向上でき、かつ処理後の泥土のコーン指数を向上できるシールド工事掘削残土処理剤を提供することである。さらに、前記処理剤を使用するシールド工事掘削残土処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を必須構成単量体とし、
下記(1)及び(2)を満たす架橋重合体を含有するシールド工事掘削残土処理剤である。
(1)前記架橋重合体の生理食塩水への可溶性成分量が、前記架橋重合体の重量を基準として25~50重量%である。
(2)前記架橋重合体の生理食塩水吸収量が40~100g/gである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のシールド工事掘削残土処理剤は、処理中及び処理後の泥土の曳糸性を低減するため固化処理の作業性を向上でき、かつ処理後の泥土のコーン指数を向上できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<架橋重合体>
本発明のシールド工事掘削残土処理剤の必須成分である架橋重合体は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を必須構成単量体とする。
【0008】
本発明において、水溶性ビニルモノマーとは、25℃の水100gに少なくとも100g溶解する性質を持つビニルモノマーを意味する。
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)としては特に限定がないが、例えば、特開2005-075982号公報に記載の水溶性ビニルモノマー及び加水分解性ビニルモノマーが挙げられる。これらの内、処理後の泥土の強度の観点から、水溶性ビニルモノマー(a1)が好ましく、更に好ましくはアニオン性ビニルモノマー、特に好ましくは炭素数3~30のビニル基含有カルボン酸(塩){不飽和モノカルボン酸(塩)[(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸及びこれらの塩等];不飽和ジカルボン酸(塩)(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸及びこれらの塩等);及び前記不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1~8)エステル(マレイン酸モノブチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸のエチルカルビトールモノエステル、フマル酸のエチルカルビトールモノエステル、シトラコン酸モノブチルエステル及びイタコン酸グリコールモノエステル等)}、とりわけ好ましくは不飽和モノカルボン酸(塩)、最も好ましくはアクリル酸(塩)である。
【0009】
本発明において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、「・・・酸(塩)」とは「・・・酸」及び/又は「・・・酸塩」を意味する。塩としては、カリウム、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、カルシウム等のアルカリ土類金属塩が含まれる。
【0010】
水溶性ビニルモノマー(a1)に由来する単位は未中和体であっても、中和体(水溶性ビニルモノマー塩の単位)であっても構わない。また、前記架橋重合体は、粘着性低減や分散性改良及び前記架橋重合体の製造上の作業性の観点から、一部又は全てが中和されていることが好ましい。
【0011】
前記架橋重合体に含まれる水溶性ビニルモノマー(a1)に由来する構成単位の中和を行う場合は、一般的に水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属、水酸化カルシウム等の水酸化アルカリ土類金属又はその水溶液を重合前のモノマー段階、あるいは重合後の含水ゲルに添加すればよい。ただし、前記架橋剤(b)が後述するアルカリ性で加水分解しない架橋剤(b2)を含有する場合、架橋剤(b2)は水溶性が乏しいため、水溶性ビニルモノマー(a1)の中和度が高い状態で重合すると、所定量の架橋剤(b2)を添加しても架橋剤(b2)がモノマー水溶液から分離し所定の架橋が行えず前記架橋重合体が得られない場合があり、水溶性ビニルモノマー(a1)の中和度を0~30モル%としておいて、架橋剤(b2)も含有させて重合を行った後、必要により含水ゲルに水酸化アルカリ金属を添加して中和度を調整する方がより好ましい。
【0012】
前記架橋重合体の水溶性ビニルモノマー(a1)として、アニオン性ビニルモノマーを使用する場合、架橋重合体に含まれるアニオン性ビニルモノマーに由来する構成単位の最終的な中和度{アニオン性ビニルモノマーのアニオン基及びアニオン塩基の合計モル数に基づく、アニオン塩基の含有量(モル%)}は、10~100モル%が好ましく、更に好ましくは40~100モル%、特に好ましくは70~100モル%、最も好ましくは80~100モル%である。この範囲であると、処理後の泥土の強度及び曳糸性低減効果が更によくなり、かつ架橋重合体の生産性の観点からも好ましい。尚、アニオン塩基とは中和されたアニオン基を意味する。
【0013】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)の合計含有量は、架橋重合体の吸収能の観点から、(a1)、(a2)及び架橋剤(b)の合計重量を基準として、98.0~99.90重量%が好ましく、更に好ましくは99.0~99.85重量%、特に好ましくは99.2~99.83重量%である。
【0014】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)は、それぞれ、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0015】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)の内、処理後の泥土の強度の観点から、(a1)単独及び(a1)と(a2)の併用が好ましく、更に好ましいのは(a1)単独である。
前記架橋重合体が、水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)の両方を構成単位とする場合、これらのビニルモノマーに由来する単位のモル比{(a1)/(a2)}は、処理後の泥土のコーン指数の観点から、75/25~99/1が好ましく、更に好ましくは85/15~99/1、最も好ましくは90/10~99/1である。
【0016】
前記架橋重合体は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解性ビニルモノマー(a2)の他に、これらと共重合可能なその他のビニルモノマー(a3)を構成単位とすることができる。その他のビニルモノマー(a3)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0017】
共重合可能なその他のビニルモノマー(a3)としては特に限定はなく、公知(例えば、特許第3648553号公報の段落[0028]~[0029]に開示されている疎水性ビニルモノマー、特開2003-165883号公報の段落[0025]及び特開2005-75982号公報の段落[0058]に開示されているビニルモノマー等)の疎水性ビニルモノマー等が使用でき、具体的には例えば下記の(i)~(iii)のビニルモノマー等が使用できる。
(i)炭素数8~30の芳香族エチレン性モノマー
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン及びヒドロキシスチレン等のスチレン類、並びにビニルナフタレン及びジクロルスチレン等のスチレンのハロゲン置換体等。
(ii)炭素数2~20の脂肪族エチレン性モノマー
アルケン(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン及びオクタデセン等);並びにアルカジエン(ブタジエン及びイソプレン等)等。
(iii)炭素数5~15の脂環式エチレン性モノマー
モノエチレン性不飽和モノマー(ピネン、リモネン及びインデン等);並びにポリエチレン性ビニルモノマー[シクロペンタジエン、ビシクロペンタジエン及びエチリデンノルボルネン等]等。
【0018】
前記架橋重合体におけるその他のビニルモノマー(a3)単位の含有量(モル%)は、架橋重合体の吸収能等の観点から、水溶性ビニルモノマー(a1)単位及び加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)単位の合計モル数に基づいて、0~5モル%が好ましく、更に好ましくは0~3モル%、特に好ましくは0~2モル%、とりわけ好ましくは0~1.5モル%であり、0モル%であることが最も好ましい。
【0019】
前記架橋重合体は、架橋剤(b)を用いて架橋する。架橋剤(b)としては、アルカリ性で加水分解する架橋剤(b1)及びアルカリ性で加水分解しない架橋剤(b2)が挙げられる。
本発明においては、前記架橋剤(b)が次の(1)及び/又は(2)を満たすことが好ましい。
(1)前記架橋剤(b)がアルカリ性で加水分解する架橋剤(b1)を含有し、前記架橋剤(b1)の含有量が前記水溶性ビニルモノマー(a1)及び前記ビニルモノマー(a2)の合計重量を基準として0.05~0.4重量%である。
(2)前記架橋剤(b)がアルカリ性で加水分解する架橋剤(b1)及びアルカリ性で加水分解しない架橋剤(b2)からなる。
上記(1)及び/又は(2)を満たすことにより、前記架橋重合体を含有する後述のシールド工事掘削残土処理剤を使用した残土処理において、より高い固化性を発揮することができる。更に曳糸性の低減効果がより向上するので好ましい。
なお、上記(1)を満たし(2)を満たさない場合、前記架橋重合体が水溶性ビニルモノマー(a1)を必須構成単量体とし、前記(a1)がアニオン性ビニルモノマーであり、前記架橋重合体に含まれるアニオン性ビニルモノマーに由来する構成単位の最終的な中和度が、アニオン基及びアニオン塩基の合計モル数に基づいて70~100モル%であることが、残土処理における固化性、曳糸性の低減及び架橋重合体の生産性の観点から好ましい。
【0020】
アルカリ性で加水分解する架橋剤(b1)において「アルカリ性で加水分解する」とは、前記架橋重合体において(b1)に由来する単位がアルカリ性条件下で加水分解する結合(以下、「加水分解性結合」と表記することがある。)を有することを意味し、加水分解性結合は、架橋剤(b1)がもともと分子内に有する結合であってもよいし{この場合の架橋剤を分子内に加水分解性結合を有する架橋剤(b11)とする}、前記架橋重合体を構成する他の単量体{(a1)又は(a2)}と架橋反応して生成する結合が加水分解するものであってもよい{この場合の架橋剤を架橋反応して生成する結合が加水分解性の架橋剤(b12)とする}。
加水分解性結合としてはエステル結合及びアミド結合等が含まれる。
【0021】
分子内に加水分解性結合を有する架橋剤(b11)としては、例えば、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びポリグリセリン(重合度3~13)ポリアクリレート等の分子内に2~10のエチレン性不飽和結合を有する共重合性の架橋剤が挙げられる。
【0022】
架橋反応して生成する結合が加水分解性の架橋剤(b12)としては、多価グリシジル化合物(エチレングリコールジグリシジルエーテル等)、多価イソシアネート化合物(4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等)、多価アミン化合物(エチレンジアミン等)及び多価アルコール化合物(グリセリン等)等に代表されるカルボン酸と反応する反応型架橋剤が挙げられる。反応型架橋剤は、(メタ)アクリル酸(塩)と反応してエステル結合又はアミド結合を形成することができる。
【0023】
アルカリ性で加水分解する架橋剤(b1)は2種以上を併用してもよい。
アルカリ性で加水分解する架橋剤(b1)の内、曳糸性低減の観点から、多価アクリルアミド化合物及び多価アクリレート化合物が好ましく、更に好ましいのはN,N’-メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びエチレングリコールジグリシジルエーテルであり、特に好ましいのはN,N’-メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びエチレングリコールジグリシジルエーテルであり、最も好ましいのはN,N’-メチレンビスアクリルアミド及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートである。
【0024】
アルカリ性で加水分解しない架橋剤(b2)は、加水分解性結合を分子内に有さず、また、架橋反応により加水分解性結合を生成しない架橋剤である。このような架橋剤(b2)としては、2個以上のビニルエーテル結合を有する架橋剤(b21)及び2個以上のアリルエーテル結合を有する架橋剤(b22)等が挙げられる。好ましくは、反応性等の観点から、2個以上のアリルエーテル結合を有する架橋剤である。
【0025】
2個以上のビニルエーテル結合を有する架橋剤(b21)としては、エチレングリコールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル(重合度2~5)、ビスフェノールAジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ソルビトールトリビニルエーテル及びポリグリセリン(重合度3~13)ポリビニルエーテル等が挙げられる。
【0026】
2個以上のアリルエーテル結合を有する架橋剤(b22)としては、分子内にアリル基を2個有しかつ水酸基を含まない架橋剤(b221)、分子内にアリル基を2個有しかつ水酸基を1~5個有する架橋剤(b222)、分子内にアリル基を3~10個有しかつ水酸基を有さない架橋剤(b223)、分子内にアリル基を3~10個有しかつ水酸基を1~3個有する架橋剤(b224)等が挙げられる。分子内に水酸基を含むと、ビニルモノマー(a1)及び/又は(a2){特に(メタ)アクリル酸(塩)}との相溶性が良く、架橋の均一性が増して前記架橋重合体及び後述のシールド工事掘削残土処理剤の長期安定性が向上する。
【0027】
分子内にアリル基を2個有しかつ水酸基を含まない架橋剤(b221)としては、1,4-シクロヘキサンジメタノールジアリルエーテル、アルキレン(炭素数2~5)グリコールジアリルエーテル及びポリアルキレン(炭素数2~6)グリコール(重量平均分子量:100~4000)ジアリルエーテル等が挙げられる。
分子内にアリル基を2個有しかつ水酸基を1~5個有する架橋剤(b222)としては、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル及びポリグリセリン(重合度2~5)ジアリルエーテル等が挙げられる。
分子内にアリル基を3~10個有しかつ水酸基を有さない架橋剤(b223)としては、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル及びテトラアリルオキシエタン等が挙げられる。
分子内にアリル基を3~10個有しかつ水酸基を1~3個有する架橋剤(b224)としては、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ジグリセリントリアリルエーテル、ソルビトールトリアリルエーテル及びポリグリセリン(重合度3~13)ポリアリルエーテル等が挙げられる。
【0028】
アルカリ性で加水分解しない架橋剤(b2)は2種以上を併用してもよい。
架橋剤(b2)の内、2個以上のアリルエーテル結合を有する架橋剤(b22)が好ましく、更に好ましくは分子内にアリル基を2個有しかつ水酸基を1~5個有する架橋剤(b222)及び分子内にアリル基を3~10個有しかつ水酸基を1~3個有する架橋剤(b224)であり、、特に好ましくは分子内にアリル基を3~10個有しかつ水酸基を1~3個有する架橋剤(b224)であり、最も好ましくはペンタエリスリトールトリアリルエーテル及びジグリセリントリアリルエーテル及びソルビトールトリアリルエーテルである。これらの架橋剤を用いると、水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)との相溶性が良く効率的な架橋が行えるので好ましい。
【0029】
前記架橋重合体中のアルカリ性で加水分解する架橋剤(b1)の含有量は、架橋剤(b1)の種類、平均重合度にもよるが、水溶性ビニルモノマー(a1)及び前記ビニルモノマー(a2)の合計重量を基準として、好ましくは0.05~1重量%、更に好ましくは0.05~0.8重量%、特に好ましくは0.05~0.5重量%、更に特に好ましくは0.05~0.4重量%、最も好ましくは0.1~0.4重量%である。
この範囲であると、曳糸性の低減効果が更に優れる。更に架橋重合体の生産性も向上する。
【0030】
前記架橋重合体中のアルカリ性で加水分解しない架橋剤(b2)の含有量は、架橋剤(b2)の種類にもよるが、水溶性ビニルモノマー(a1)及び前記ビニルモノマー(a2)の合計重量を基準として、好ましくは0~1重量%、更に好ましくは0.05~1重量%、更に好ましくは0.05~0.5重量%、特に好ましくは0.05~0.2重量%、最も好ましくは0.05~0.1重量%である。この範囲であると、泥土処理における固化性が更に優れる。更に架橋重合体の生産性も向上する。
【0031】
前記架橋剤(b)が架橋剤(b1)と架橋剤(b2)の両方を含有する場合、前記架橋重合体中の架橋剤(b1)の架橋剤(b2)に対する重量比率[(b1)/(b2)]は、好ましくは1~5、更に好ましくは1.7~4.5、特に好ましくは1.9~4である。この範囲であると、曳糸性の低減効果が更に優れる。
【0032】
架橋剤(b1)及び架橋剤(b2)の合計含有量は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び前記ビニルモノマー(a2)の合計重量に基づいて、好ましくは0.1~2.0重量%、更に好ましくは0.15~1.0重量%、特に好ましくは0.2~0.70重量%である。この範囲であると、曳糸性低減効果が更に優れる。また、残土処理における固化性が更に優れる。
【0033】
前記架橋重合体は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を含む単量体組成物を水溶液重合、懸濁重合、塊状重合、逆相懸濁重合及び乳化重合等の公知の方法で重合することにより得ることができる。
これらの重合方法の内、処理後の泥土の強度の観点から好ましいのは水溶液重合、懸濁重合、逆相懸濁重合及び乳化重合、更に好ましいのは水溶液重合、逆相懸濁重合及び乳化重合、特に好ましいのは水溶液重合及び逆相懸濁重合である。これらの重合には、公知の重合開始剤、連鎖移動剤及び/又は溶媒等が使用できる。
【0034】
水溶液重合、懸濁重合、逆相懸濁重合及び乳化重合で重合する方法は、公知の方法でよく、例えばラジカル重合開始剤を用いて重合する方法、放射線、紫外線又は電子線等を照射する方法が挙げられる。
【0035】
ラジカル重合開始剤を用いる場合、この開始剤としては、アゾ化合物[アゾビスイソバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリックアシッド)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ハイドロクロライド等]、無機過酸化物[過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等]、有機過酸化物[ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等]、レドックス開始剤[アルカリ金属塩の亜硫酸塩若しくは重亜硫酸塩、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸アンモニウム、L-アスコルビン酸等の還元剤と、アルカリ金属塩の過硫酸塩、過硫酸アンモニウム、過酸化水素水等の過酸化物の組み合わせ]等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0036】
重合温度は使用する開始剤の種類等によっても異なるが、ポリマーの重合度をより高くする観点から、好ましくは-10℃~100℃、更に好ましくは-10℃~80℃である。
開始剤の量に関しても、特に限定はないが、ビニルモノマー(a1)、(a2)、架橋剤(b)及び必要により使用するその他のモノマー(a3)の合計重量を基準として、ポリマーの重合度をより高くする観点から、0.000001~3.0重量%が好ましく、更に好ましくは0.000001~0.5重量%である。
【0037】
水溶液重合の場合、単量体の重合濃度は、他の重合条件によっても種々異なるが、水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)は、重合濃度を高くすると重合反応と並行してモノマー自体の疑似架橋(自己架橋)が起こり易く、吸収量の低下やポリマーの平均重合度の低下を招くこと、また重合時の温度コントロールも行いづらくポリマーの平均重合度の低下やオリゴマー成分の増加を招きやすいので、重合濃度は、10~40重量%が好ましく、更に好ましくは10~30重量%である。また、重合温度に関しては-10~100℃が好ましく、更に好ましくは-10~80℃である。重合時の溶存酸素量に関しては、ラジカル開始剤の添加量等にもよるが、0~2ppm(2×10-4重量%以下)が好ましく、更に好ましくは0~0.5ppm(0.5×10-4重量%以下)である。これらの範囲であると、高重合度の架橋重合体を製造することができる。
【0038】
前記アニオン性ビニルモノマーを使用する場合、重合時の酸基の中和度は、所定量の架橋剤(b1)及び(b2)がモノマー水溶液に完全に溶解できるのであれば特に限定はないが、(b1)に比べて、(b2)は水溶性が乏しく、また特に中和された酸基を有するモノマーの水溶液に対する溶解度は極めて低く所定量の(b2)を添加しても(b2)がモノマー水溶液から分離し所定の架橋が行えない場合があるので、重合時の酸基を有するモノマーの中和度は、0~30モル%で重合を行ない必要により重合後に更に中和するのが好ましく、未中和の状態で重合した後必要により重合後に中和するのがより好ましい。また、酸基を有するモノマーは、同一条件で重合を行った場合、中和度が低い方が重合度が上がりやすいため、ポリマーの重合度を大きくするためにも、中和度が低い状態で重合を行った方が好ましい。
【0039】
逆相懸濁重合法は、ヘキサン、トルエン及びキシレン等に代表される疎水性有機溶媒中でモノマーの水溶液を、分散剤の存在下、懸濁・分散して重合する重合法であるが、この重合法においても、上記同様モノマー水溶液中のモノマー濃度は10~40重量%が好ましく、更に好ましくは10~30重量%である。この範囲であると、高重合度の架橋重合体を製造することができる。
【0040】
尚、この逆相懸濁重合法に関しては、重合時に分散剤を使用してもよい。分散剤としては、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値が3~8の界面活性剤{ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアリン酸エステル等)、グリセリン脂肪酸エステル類(グリセリンモノステアリン酸エステル等)及びショ糖脂肪酸エステル類(ショ糖ジステアリン酸エステル等)等}や、分子内に親水性基(例えば水酸基、カルボキシル基及びスルホン酸基等)を有し、かつ、モノマー水溶液を分散させる溶媒に可溶な高分子分散剤(親水性基の含有割合0.1~20重量%、重量平均分子量1,000~1,000,000){エチレン/アクリル酸共重合体のマレイン化物、エチレン/酢酸ビニル共重合体のマレイン化物、スチレンスルホン酸(塩)/スチレン共重合体等}等が挙げられる。
これらの内、架橋重合体の粒子径の調整の観点から好ましいのは、モノマー水溶液を分散させる溶媒に可溶な高分子分散剤である。
尚、HLBは値が高いほど親水性が高いことを意味し、下記計算式で計算される数値である(藤本武彦著、界面活性剤入門、142頁、三洋化成工業株式会社発行)。
HLB=20×{親水基の分子量/界面活性剤の分子量}
【0041】
分散剤の使用量は、残土処理における固化性の観点から、疎水性有機溶媒の重量を基準として、0.1~20重量%が好ましく、更に好ましくは0.5~10重量%である。逆相懸濁重合におけるモノマー水溶液と疎水性有機溶媒との重量比率(W/O比率)は、0.1~2.0が好ましく、0.3~1.0が更に好ましい。これらの範囲であると、架橋重合体の粒子径が更に調整しやすい。
【0042】
本発明の架橋重合体の製造において、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を含む単量体組成物を水溶液重合、懸濁重合、塊状重合、逆相懸濁重合及び乳化重合等の公知の方法で重合する際、有機ヨウ素化合物、有機テルル化合物、有機アンチモン化合物及び有機ビスマス化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機典型元素化合物の存在下に重合してもよい。有機典型元素化合物の使用量を調整することにより、架橋重合体の生理食塩水への可溶性成分の量を調整しやすくなる。
【0043】
有機ヨウ素化合物、有機テルル化合物、有機アンチモン化合物及び有機ビスマス化合物としては、ラジカル重合のドーマント種として働く有機典型元素化合物であれば制限はなく、WO2011/016166にドーマント種として記載の有機ヨウ素化合物、WO2004/014848に記載の有機テルル化合物、WO2006/001496に記載の有機アンチモン化合物及びWO2006/062255に記載の有機ビスマス化合物等を用いることができる。なかでも反応性の観点から、下記一般式(1)で表される有機典型元素化合物が好ましい。
これら有機典型元素化合物は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0044】
【0045】
一般式(1)におけるR1及びR2はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~7の飽和炭化水素基又は少なくとも1つの非付加重合性二重結合若しくは少なくとも1つの非付加重合性三重結合を有する炭素数1~7の1価の基であり、R3は炭素数1~7のn価の飽和炭化水素基又は少なくとも1つの非付加重合性二重結合若しくは少なくとも1つの非付加重合性三重結合を有する炭素数2~12であるn価の基であり、但し、1分子中、R1~R3の内少なくとも一つは、前記の、対応する、非付加重合性二重結合又は少なくとも1つの非付加重合性三重結合を有する基であり、nは1~3の整数であり、nが1である場合にR1及びR2は互いに結合していてもよく、X1はテルル元素、アンチモン元素若しくはビスマス元素を有する1価の有機典型元素基又はヨード基である。
本明細書中、非付加重合性二重結合(以下、単に非重合性二重結合ともいう)及び非付加重合性三重結合(以下、単に非重合性三重結合ともいう)とは、不飽和結合の内、付加重合性不飽和結合(それぞれ、付加重合性炭素-炭素二重結合及び付加重合性炭素-炭素三重結合)を除いた結合であり、非付加重合性二重結合及び非付加重合性三重結合としては、カルボニル基に含まれる炭素-酸素二重結合、ニトリル基に含まれる炭素-窒素三重結合、芳香族炭化水素を構成する炭素-炭素二重結合及び複素芳香族化合物を構成する酸素-窒素二重結合並びに炭素-窒素二重結合等が挙げられ、なかでもカルボニル基に含まれる炭素-酸素二重結合、ニトリル基に含まれる炭素-窒素三重結合及び芳香族炭化水素を構成する炭素-炭素二重結合が好ましい。
【0046】
R1及びR2が炭素数1~7の飽和炭化水素基である場合、炭素数1~7の飽和炭化水素基としては、炭素数1~7の直鎖飽和炭化水素基(メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基及びn-ヘキシル基等)及び炭素数1~7の分岐飽和炭化水素基(i-プロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、1-メチルブチル基、イソヘキシル基、s-ヘキシル基、t-ヘキシル基、ネオヘキシル基、ヘプチル基等)が挙げられる。なかでも溶解性と重合性の観点等から好ましいのは炭素数1~5の直鎖飽和炭化水素基であり、更に好ましいのは炭素数1~3の直鎖飽和炭化水素基である。
【0047】
R1及びR2が少なくとも1つの非重合性二重結合又は少なくとも1つの非重合性三重結合を有する炭素数1~7である1価の基である場合、好ましい基としてはカルボン酸(塩)基(炭素数1、炭素-酸素二重結合)、フェニル基(炭素数6、非重合性炭素-炭素二重結合)、シアノ基(炭素数1、炭素-窒素三重結合)、シアノメチル基(炭素数2、炭素-窒素三重結合)、シアノエチル基(炭素数3、炭素-窒素三重結合)、シアノプロピル基(炭素数4、炭素-窒素三重結合)、シアノブチル基(炭素数5、炭素-窒素三重結合)、シアノペンチル基(炭素数6、炭素-窒素三重結合)、シアノヘキシル基(炭素数7、炭素-窒素三重結合)、カルボキシメチル基(炭素数2、炭素-酸素二重結合)、カルボキシエチル基(炭素数3、炭素-酸素二重結合)、カルボキシプロピル基(炭素数4、炭素-酸素二重結合)、カルボキシブチル基(炭素数5、炭素―酸素二重結合)、カルボキシペンチル基(炭素数6、炭素―酸素二重結合)、カルボキシヘキシル基(炭素数7、炭素―酸素二重結合)、ベンジル基(炭素数7、非重合性炭素-炭素二重結合)、メトキシカルボニル基(炭素数2、炭素-酸素二重結合)、エトキシカルボニル基(炭素数3、炭素-酸素二重結合)、プロピルオキシカルボニル基(炭素数4、炭素-酸素二重結合)、ブチルオキシカルボニル基(炭素数5、炭素-酸素二重結合)、ペンチルオキシカルボニル基(炭素数6、炭素-酸素二重結合)、ヘキシルオキシカルボニル基(炭素数7、炭素-酸素二重結合)、ヒドロキシエトキシカルボニル基(炭素数3、炭素-酸素二重結合)、ヒドロキシプロピルオキシカルボニル基(炭素数4、炭素-酸素二重結合)、ヒドロキシブチルオキシカルボニル基(炭素数5、炭素-酸素二重結合)、ヒドロキシペンチルオキシカルボニル基(炭素数6、炭素-酸素二重結合)及びヒドロキシヘキシルオキシカルボニル基(炭素数7、炭素-酸素二重結合)等が挙げられ、更に好ましいのは、カルボン酸(塩)基、シアノ基、カルボキシメチル基及びカルボキシエチル基である。
また、前記カルボン酸塩基の塩としては、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム及びカリウム等)塩、アルカリ土類金属(マグネシウム及びカルシウム等)塩及びアンモニウム(NH4)塩等が挙げられる。
【0048】
R3は炭素数1~7のn価の飽和炭化水素基又は少なくとも1つの非重合性二重結合若しくは少なくとも1つの非重合性三重結合を有する炭素数2~12であるn価の基であり、nは1~3の整数である。
【0049】
R3で表される炭素数1~7のn価の飽和炭化水素基の内、炭素数1~7の1価の飽和炭化水素基としては、炭素数1~7の直鎖飽和炭化水素基(メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基及びヘプチル基等)及び炭素数1~7の分岐飽和炭化水素基(i-プロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、1-メチルブチル基、イソヘキシル基、s-ヘキシル基、t-ヘキシル基、ネオヘキシル基及びイソヘプチル基等)が挙げられる。
R3で表される炭素数1~7のn価の飽和炭化水素基の内、炭素数1~7の2価の飽和炭化水素基としては、炭素数1~7の2価の直鎖飽和炭化水素基(メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンテン基、ヘキセン基及びヘプテン基等)及び炭素数1~7の2価の分岐飽和炭化水素基(イソプロピレン基、イソブチレン基、s-ブチレン基、t-ブチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、t-ペンチレン基、1-メチルブチレン基、イソヘキシレン基、s-ヘキシレン基、t-ヘキシレン基、ネオヘキシレン基及びイソヘプチレン基等)が挙げられる。
R3で表される炭素数1~7のn価の飽和炭化水素基の内、炭素数1~7の3価の飽和炭化水素基としては、メチン基等が挙げられる。
R3で表される炭素数1~7のn価の飽和炭化水素基の内、メチル基、メチレン基及びメチン基が好ましく、更に好ましいのはメチル基及びメチレン基である。
【0050】
R3が少なくとも1つの非重合性二重結合又は少なくとも1つの非重合性三重結合を有する炭素数2~12であるn価の基の内、1価の基としては、R1及びR2で例示した基と同じ基が挙げられ、好ましいものも同じである。
R3が少なくとも1つの非重合性二重結合又は少なくとも1つの非重合性三重結合を有する炭素数2~12である2価の基である場合、好ましい基としては、ベンゼンジイル基(炭素数6、非重合性炭素-炭素二重結合)、1-メトキシカルボニル-カルボニルオキシエチレンオキシカルボニル基(炭素数6、酸素-酸素二重結合)及びカルボニルオキシエチレンカルボニル基(炭素数4、酸素-酸素二重結合)等が挙げられる。
R3が少なくとも1つの非重合性二重結合又は少なくとも1つの非重合性三重結合を有する炭素数2~12である3価の基である場合、好ましいものとしては、ベンゼントリイル基(炭素数6、非重合性炭素-炭素二重結合)及び2-カルボニルオキシ-カルボニルオキシプロピレンカルボニル基(炭素数5、酸素-酸素二重結合)等が挙げられる。
【0051】
nが1である場合にR1及びR2は互いに結合していてもよく、R1及びR2が互いに結合して形成される環構造を有する基として好ましいものとしては、γ-ブチロラクトニル基及びフルオレニル基等が挙げられる。尚、R1及びR2が互いに結合して環構造を形成する基は、R1及びR2が結合した炭素原子を環構造中に含む。
【0052】
X1はテルル元素、アンチモン元素若しくはビスマス元素を有する1価の有機典型元素基又はヨード基であり、好ましいのはメチルテラニル基、ジメチルスチバニル基、ジメチルビスムタニル基及びヨード基、更に好ましいのはメチルテラニル基及びヨード基、特に好ましいのはヨード基である。
【0053】
一般式(1)で表される有機典型元素化合物の内でヨード基を有するものとしては、2-ヨードプロピオニトリル、2-メチル-2-ヨードプロピオニトリル、α-ヨードベンジルシアニド、2-ヨードプロピオン酸アミド、エチル-2-メチル-2-ヨード-プロピネート、2-メチル-ヨードプロピオン酸メチル、2-メチル-ヨードプロピオン酸プロピル、2-メチル-ヨードプロピオン酸ブチル、2-メチル-ヨードプロピオン酸ペンチル、2-メチル-ヨードプロピオン酸ヒドロキシエチル、2-メチル-2-ヨード-プロピオン酸(塩)、2-ヨードプロピオン酸(塩)、2-ヨード酢酸(塩)、2-ヨード酢酸メチル、2-ヨード酢酸エチル、2-ヨードペンタン酸エチル、2-ヨードペンタン酸メチル、2-ヨードペンタン酸(塩)、2-ヨードヘキサン酸(塩)、2-ヨードヘプタン酸(塩)、2,5-ジヨードアジピン酸ジエチル、2,5-ジヨードアジピン酸(塩)、2,6-ジヨード-ヘプタン二酸ジメチル、2,6-ジヨード-ヘプタン二酸(塩)、α-ヨード-γ-ブチロラクトン、2-ヨードアセトフェノン、ベンジルヨージド、2-ヨード-2-フェニル酢酸(塩)、2-ヨード-2-フェニル酢酸メチル、2-ヨード-2-フェニル酢酸エチル、2-ヨード-2-(4’-メチルフェニル)酢酸エチル、2-ヨード-2-フェニル酢酸-ヒドロキシエチル、2-ヨード-2-(4’-ニトロフェニル)酢酸エチル、4-ニトロベンジルヨージド、(1-ヨードエチル)ベンゼン、ヨードジフェニルメタン、9-ヨード-9H-フルオレン、p-キシリレンジヨージド、1,4-ビス(1’-ヨードエチル)ベンゼン、エチレングリコールビス(2-メチル―2-ヨード―プロピネート)、トリス(2-メチル-ヨードプロピオン酸)グリセロール、1,3,5-トリス(1’-ヨードエチルベンゼン)及びエチレングリコールビス(2-ヨード―2フェニルアセテート)等が挙げられる。
【0054】
一般式(1)で表される有機典型元素化合物の内でテルル元素を有するものとしては、2-メチルテラニルプロピオニトリル、2-メチル-2-メチルテラニルプロピオニトリル、α-メチルテラニルベンジルシアニド、2-メチルテラニルプロピオン酸アミド、エチル-2-メチル-2-メチルテラニル-プロピネート、2-メチル-メチルテラニルプロピオン酸メチル、2-メチル-メチルテラニルプロピオン酸プロピル、2-メチル-メチルテラニルプロピオン酸ブチル、2-メチル-メチルテラニルプロピオン酸ペンチル、2-メチル-メチルテラニルプロピオン酸ヒドロキシエチル、2-メチル-2-メチルテラニル-プロピオン酸(塩)、2-メチルテラニルプロピオン酸(塩)、2-メチルテラニル酢酸(塩)、2-メチルテラニル酢酸メチル、2-メチルテラニル酢酸エチル、2-メチルテラニルペンタン酸エチル、2-メチルテラニルペンタン酸メチル、2-メチルテラニルペンタン酸(塩)、2-メチルテラニルヘキサン酸(塩)、2-メチルテラニルヘプタン酸(塩)、2,5-ジメチルテラニルアジピン酸ジエチル、2,5-ジメチルテラニルアジピン酸(塩)、2,6-ジメチルテラニル-ヘプタン二酸ジメチル、2,6-ジメチルテラニル-ヘプタン二酸(塩)、α-メチルテラニル-γ-ブチロラクトン、2-メチルテラニルアセトフェノン、2-メチルテラニル-2-フェニル酢酸(塩)、2-メチルテラニル-2-フェニル酢酸メチル、2-メチルテラニル-2-フェニル酢酸エチル、2-メチルテラニル-2-(4’-メチルフェニル)酢酸エチル、2-メチルテラニル-2-フェニル酢酸-ヒドロキシエチル、2-メチルテラニル-2-(4’-ニトロフェニル)酢酸エチル、(1-メチルテラニルエチル)ベンゼン、メチルテラニルジフェニルメタン、9-メチルテラニル-9H-フルオレン、1,4-ビス(1’-メチルテラニルエチル)ベンゼン、エチレングリコールビス(2-メチル―2-メチルテラニル―プロピネート)、トリス(2-メチル-メチルテラニルプロピオン酸)グリセロール、1,3,5-トリス(1’-メチルテラニルエチルベンゼン)及びエチレングリコールビス(2-メチルテラニル―2フェニルアセテート)等が挙げられる。
【0055】
一般式(1)で表される有機典型元素化合物の内でアンチモン元素を有するものとしては、2-ジメチルスチバニルプロピオニトリル、2-メチル-2-ジメチルスチバニルプロピオニトリル、α-ジメチルスチバニルベンジルシアニド、2-ジメチルスチバニルプロピオン酸アミド、エチル-2-メチル-2-ジメチルスチバニル-プロピネート、2-メチル-ジメチルスチバニルプロピオン酸メチル、2-メチル-ジメチルスチバニルプロピオン酸プロピル、2-メチル-ジメチルスチバニルプロピオン酸ブチル、2-メチル-ジメチルスチバニルプロピオン酸ペンチル、2-メチル-ジメチルスチバニルプロピオン酸ヒドロキシエチル、2-メチル-2-ジメチルスチバニル-プロピオン酸(塩)、2-ジメチルスチバニルプロピオン酸(塩)、2-ジメチルスチバニル酢酸(塩)、2-ジメチルスチバニル酢酸メチル、2-ジメチルスチバニル酢酸エチル、2-ジメチルスチバニルペンタン酸エチル、2-ジメチルスチバニルペンタン酸メチル、2-ジメチルスチバニルペンタン酸(塩)、2-ジメチルスチバニルヘキサン酸(塩)、2-ジメチルスチバニルヘプタン酸(塩)、2,5-ジジメチルスチバニルアジピン酸ジエチル、2,5-ジジメチルスチバニルアジピン酸(塩)、2,6-ジジメチルスチバニル-ヘプタン二酸ジメチル、2,6-ジジメチルスチバニル-ヘプタン二酸(塩)、α-ジメチルスチバニル-γ-ブチロラクトン、2-ジメチルスチバニルアセトフェノン、2-ジメチルスチバニル-2-フェニル酢酸(塩)、2-ジメチルスチバニル-2-フェニル酢酸メチル、2-ジメチルスチバニル-2-フェニル酢酸エチル、2-ジメチルスチバニル-2-(4’-メチルフェニル)酢酸エチル、2-ジメチルスチバニル-2-フェニル酢酸-ヒドロキシエチル、2-ジメチルスチバニル-2-(4’-ニトロフェニル)酢酸エチル、(1-ジメチルスチバニルエチル)ベンゼン、ジメチルスチバニルジフェニルメタン、9-ジメチルスチバニル-9H-フルオレン、1,4-ビス(1’-ジメチルスチバニルエチル)ベンゼン、エチレングリコールビス(2-メチル―2-ジメチルスチバニル―プロピネート)、トリス(2-メチル-ジメチルスチバニルプロピオン酸)グリセロール、1,3,5-トリス(1’-ジメチルスチバニルエチルベンゼン)及びエチレングリコールビス(2-ジメチルスチバニル-2フェニルアセテート)等が挙げられる。
【0056】
一般式(1)で表される有機典型元素化合物の内でビスマス元素を有するものとしては、2-ジメチルビスムタニルプロピオニトリル、2-メチル-2-ジメチルビスムタニルプロピオニトリル、α-ジメチルビスムタニルベンジルシアニド、2-ジメチルビスムタニルプロピオン酸アミド、エチル-2-メチル-2-ジメチルビスムタニルプロピネート、2-メチル-ジメチルビスムタニルプロピオン酸メチル、2-メチル-ジメチルビスムタニルプロピオン酸プロピル、2-メチル-ジメチルビスムタニルプロピオン酸ブチル、2-メチル-ジメチルビスムタニルプロピオン酸ペンチル、2-メチル-ジメチルビスムタニルプロピオン酸ヒドロキシエチル、2-メチル-2-ジメチルビスムタニルプロピオン酸(塩)、2-ジメチルビスムタニルプロピオン酸(塩)、2-ジメチルビスムタニル酢酸(塩)、2-ジメチルビスムタニル酢酸メチル、2-ジメチルビスムタニル酢酸エチル、2-ジメチルビスムタニルペンタン酸エチル、2-ジメチルビスムタニルプペンタン酸メチル、2-ジメチルビスムタニルプペンタン酸(塩)、2-ジメチルビスムタニルヘキサン酸(塩)、2-ジメチルビスムタニルヘプタン酸(塩)、2,5-ジジメチルビスムタニルアジピン酸ジエチル、2,5-ジジメチルビスムタニルアジピン酸(塩)、2,6-ジジメチルビスムタニルヘプタン二酸ジメチル、2,6-ジジメチルビスムタニルヘプタン二酸(塩)、α-ジメチルビスムタニルγ-ブチロラクトン、2-ジメチルビスムタニルアセトフェノン、2-ジメチルビスムタニル2-フェニル酢酸(塩)、2-ジメチルビスムタニル2-フェニル酢酸メチル、2-ジメチルビスムタニル2-フェニル酢酸エチル、2-ジメチルビスムタニル2-(4’-メチルフェニル)酢酸エチル、2-ジメチルビスムタニル2-フェニル酢酸-ヒドロキシエチル、2-ジメチルビスムタニル2-(4’-ニトロフェニル)酢酸エチル、(1-ジメチルビスムタニルエチル)ベンゼン、ジメチルビスムタニルジフェニルメタン、9-ジメチルビスムタニル9H-フルオレン、1,4-ビス(1’-ジメチルビスムタニルエチル)ベンゼン、エチレングリコールビス(2-メチル―2-ジメチルビスムタニルプロピネート)、トリス(2-メチル-ジメチルビスムタニルプロピオン酸)グリセロール、1,3,5-トリス(1’-ジメチルビスムタニルエチルベンゼン)及びエチレングリコールビス(2-ジメチルビスムタニル2フェニルアセテート)等が挙げられる。
【0057】
これらの内で好ましいのは、2-メチル-2-ヨードプロピオニトリル、エチル-2-メチル-2-ヨード-プロピネート、2-メチル-2-ヨード-プロピオン酸(塩)、2-ヨード酢酸(塩)、2-ヨード酢酸メチル、2,5-ジヨードアジピン酸ジエチル、2,5-ジヨードアジピン酸、エチレングリコールビス(2-メチル―2-ヨード―プロピネート)、エチレングリコールビス(2-ヨード―2フェニルアセテート)、2-メチルテラニルプロピオニトリル、エチル-2-メチル-2-メチルテラニル-プロピネート、2,5-ビスメチルテラニルアジピン酸ジエチル、エチレングリコールビス(2-メチル―2-メチルテラニル―プロピネート)、エチレングリコールビス(2-メチルテラニル―2フェニルアセテート)、2-ジメチルスチバニルプロピオニトリル、エチル-2-メチル-2-ジメチルスチバニル-プロピネート及び2-ジメチルビスムタニルプロピオニトリル及びエチル-2-メチル-2-ジメチルビスムタニルプロピネートである。
【0058】
有機典型元素化合物を使用する場合、その使用量は、上記モノマー(a1)、(a2)、架橋剤(b)及び必要により使用するその他のモノマー(a3)の重量に基づいて、好ましくは0.0005~0.1重量%、更に好ましくは0.005~0.05重量%である。この範囲であると、架橋重合体の生理食塩水への可溶性成分の量が適度な範囲に調整しやすい。
【0059】
本発明の架橋重合体の製造において、架橋剤(b)を使用しない以外は全く同じ条件で重合体を製造した場合のポリマーの平均重合度が、好ましくは5,000以上となる条件、更に好ましくは10,000以上となる条件で重合することが更に好ましい。
平均重合度が、上記範囲となる条件で重合を行うと、適量の架橋剤を使用することにより、泥土の固化性能及び曳糸性低減効果に優れる架橋重合体が得られる。平均重合度の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)によって例えば以下の条件により行うことができる。
装置:「HLC-8320」(東ソー株式会社製)
カラム:「TSK Guardcolumn PWXL」(1本)、「TSKgel G60000 PWXL、TSKgel G3000 PWXL」(1本)(いずれも東ソー株式会社製)を各1本連結したもの
移動相:0.5重量%酢酸ナトリウム水溶液/メタノール=7/3(体積比)
測定液:上述の可溶性成分量の測定方法における可溶性成分の抽出液
溶液注入量:50μl
流量:1.0ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリエチレンオキシド
【0060】
本発明において、水溶液重合又は逆相懸濁重合等により得た架橋重合体は、水を含むゲル(含水ゲル)として得られる。含水ゲルは、乾燥させて乾燥物とした後に使用する。
含水ゲルの乾燥方法に関しては、水溶液重合の場合、含水ゲルをミートチョッパーやカッター式の粗砕機でゲルをある程度細分化(細分化のレベルは0.5~20mm角程度)あるいはヌードル化し、必要により水酸化アルカリ金属水溶液等を添加して含水ゲルの中和を行った後、透気乾燥(パンチングメタルやスクリーン上に含水ゲルを積層し、強制的に50~150℃の熱風を通気させて乾燥する等)、通気乾燥(含水ゲルを容器中に入れ、熱風を通気・循環させ乾燥、ロータリーキルンの様な機械で更にゲルを細分化しながら乾燥する)及び接触乾燥(ドラムドライヤー上に含水ゲルを圧縮延伸して乾燥する)等の方法が挙げられる。これらの中で、透気乾燥が短時間で効率的な乾燥が行えるため好ましい。一方、逆相懸濁重合の場合の含水ゲルの乾燥方法は、重合した含水ゲルと有機溶媒をデカンテーション等の方法で固液分離した後、減圧乾燥(減圧度;100~50,000Pa程度)又は通気乾燥を行うのが一般的である。
【0061】
本発明において、含水ゲル乾燥時の乾燥温度は、使用する乾燥機や乾燥時間等により種々異なるが、好ましくは、50~150℃、更に好ましくは80~130℃である。乾燥温度が、150℃以下であると乾燥時の熱による熱架橋により架橋重合体の架橋度が上がることがなく、架橋重合体及び後述するシールド工事掘削残土処理剤の固化性能が低下しない。50℃以上であると乾燥に長時間を要さず効率的である。乾燥時間に関しても、使用する乾燥機の機種及び乾燥温度等により異なるが、好ましくは5~300分、更に好ましくは、5~120分である。
【0062】
このようにして得られた前記架橋重合体の乾燥物は、必要により粉砕して粉末化する。粉砕方法は、公知の方法でよく、例えば衝撃粉砕機(ピンミル、カッターミル、スキレルミル及びACMパルペライザー等)や空気粉砕機(ジェット粉砕機等)で行うことができる。
【0063】
粉末化した架橋重合体は、必要によりスクリーンを備えたフルイ機(振動フルイ機、遠心フルイ機等)を用いて、所望の粒子径の乾燥粉末を採取することができる。
【0064】
本発明の架橋重合体の重量平均粒子径は、好ましくは100~800μm、更に好ましくは200~700μm、特に好ましくは300~500μmである。
重量平均粒子径がこの範囲であると、残土処理における架橋重合体及び後述するシールド工事掘削残土処理剤のハンドリング性が良好になり、残土処理の作業工程が簡便になる。
【0065】
架橋重合体の重量平均粒子径は、ロータップ試験篩振とう機及び標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いて、ペリーズ・ケミカル・エンジニアーズ・ハンドブック第6版(マックグローヒル・ブック・カンバニー、1984、21頁)に記載の方法で測定される。すなわち、JIS標準ふるいを、上から1000μm、850μm、710μm、500μm、425μm、355μm、250μm、150μm、125μm、75μm及び45μm、並びに受け皿、の順等に組み合わせる。最上段のふるいに測定粒子の約50gを入れ、ロータップ試験篩振とう機で5分間振とうさせる。各ふるい及び受け皿上の測定粒子の重量を秤量し、その合計を100重量%として各ふるい上の粒子の重量分率を求め、この値を対数確率紙[横軸がふるいの目開き(粒子径)、縦軸が重量分率]にプロットした後、各点を結ぶ線を引き、重量分率が50重量%に対応する粒子径を求め、これを重量平均粒子径とする。
【0066】
前記架橋重合体の生理食塩水(0.9w/v%の塩化ナトリウム水溶液)への可溶性成分量は、前記架橋重合体の重量を基準として25~50重量%であり、好ましくは30~50重量%、更に好ましくは30~45重量%である。
可溶性成分量がこの範囲であると、架橋重合体及び後述するシールド工事掘削残土処理剤を使用した残土処理において処理中及び処理後の掘削残土(泥土)の曳糸性を低減するため固化処理の作業性を向上でき、かつ処理後の泥土のコーン指数を向上できる。可溶性成分量が50重量%を超えると残土処理において橋重合体及び後述するシールド工事掘削残土処理剤を使用した際に掘削残土の曳糸性が高くなり作業性が悪化する。可溶性成分量が25重量%に満たない場合は架橋重合体及び後述するシールド工事掘削残土処理剤の固化性能が低下するため、処理後の泥土のコーン指数が十分に向上しない。
【0067】
本発明の架橋重合体の生理食塩水への可溶性成分量は、以下の方法で測定することができる。
[架橋重合体の生理食塩水への可溶性成分量の測定方法]
架橋重合体1gを精秤し(精秤値をS0とする)、生理食塩水(塩化ナトリウムを0.9w/v%含有する食塩水)250mlに添加して3時間撹拌した後に、膨潤したゲルをろ紙(アドバンテック社製Filter Paper 1号定性ろ紙)にて取り除く。ゲルを取り除いた後に得られるろ液を可溶性成分の抽出液とする。
上記の方法によって得られた可溶性成分の抽出液約25mlを容量50mlのナス型フラスコに入れてエバポレーターを用いて減圧下に水を留去する。ナス型フラスコに抽出液を約25ml追加して減圧下に水を留去する操作を繰り返して抽出液全量について水を留去する。次に残留物の入ったナス型フラスコを130℃の循風乾燥機中で90分間静置後、デシケーター中で15分間静置してナス型フラスコを室温まで冷却する。冷却後にナス型フラスコ中の残留物の重量(S1)を測定する。
次に、生理食塩水250mlについて上記抽出液と同様に水の留去及び静置を行い、冷却後の残留物の重量(S2)を測定する。尚、冷却後の残留物の重量は、冷却後の残留物が入ったナス型フラスコの重量から予め測定しておいたナス型フラスコの重量を引くことにより求める。
上記で得られたS0、S1及びS2を用いて次式から可溶性成分量を算出する。
可溶性成分量(%)=(S1-S2)÷S0×100
【0068】
前記架橋重合体の生理食塩水吸収量(生理食塩水の重量/架橋重合体の重量)は、40~100g/gである。
生理食塩水吸収量がこの範囲であると、架橋重合体及び後述するシールド工事掘削残土処理剤を使用した残土処理において処理中及び処理後の掘削残土(泥土)の曳糸性を低減するため固化処理の作業性を向上でき、かつ処理後の泥土のコーン指数を向上できる。生理食塩水吸収量が100g/gを超えると処理中及び処理後の泥土の曳糸性が高くなり作業性が悪化する。生理食塩水吸収量が40g/gに満たない場合は架橋重合体及び後述するシールド工事掘削残土処理剤の固化性能が低下するため、処理後の泥土のコーン指数が悪化する。
【0069】
前記架橋重合体の生理食塩水吸収量は、以下の方法で測定することができる。
[架橋重合体の生理食塩水吸収量の測定方法]
目開き63μm(JIS Z8801-1:2006)のナイロン網で作製したティーバッグ(縦20cm、横10cm)に架橋重合体1.00gを入れ、生理食塩水1,000ml中に無撹拌下、1時間浸漬した後、15分間吊るして過剰の生理食塩水を除去し、ティーバッグの重量(h1)を測定する。尚、使用する生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃とする。測定試料を用いない以外は上記と同様にして、遠心脱水後のティーバッグの重量(h2)を測定し、下記式から生理食塩水吸収量を算出する。
生理食塩水吸収量(g/g)=(h1)-(h2)
【0070】
イオン交換水に本発明の架橋重合体を1重量%添加した混合液の25℃における粘度は、架橋重合体及び後述するシールド工事掘削残土処理剤の固化性能の観点から5~50Pa・sであることが好ましい。更に好ましくは10~45Pa・sである。
【0071】
イオン交換水に架橋重合体を1重量%添加した混合液の粘度は以下の方法で測定される。
[イオン交換水に架橋重合体を1重量%添加した混合液の粘度の測定方法]
イオン交換水99重量部及び架橋重合体1重量部を均一になるまで撹拌混合して25℃で2時間放置した後の混合液を測定試料とし、デジタルB型粘度計(TOKIMEC社製)を用いて、測定温度25℃で、JIS7117-1:1999に準拠して測定する。尚、ローターNo.4を使用し、回転数3rpmで測定する。
【0072】
本発明の架橋重合体は、処理中及び処理後の泥土の曳糸性を低下するため固化処理の作業性を向上でき、かつ処理後の泥土のコーン指数を向上できるため、シールド工事掘削残土(泥土)処理用として好適に使用できる。
【0073】
<シールド工事掘削残土処理剤>
本発明のシールド工事掘削残土処理剤は、前記架橋重合体を必須成分として含有する。また前記処理剤は、さらに中性固化剤(n)を含有することが好ましい。
前記処理剤において、前記架橋重合体の中性固化剤(n)に対する重量比率[(架橋重合体の重量)/(中性固化剤(n)の重量)]は、処理対象泥土の含水量や有機物の含量等にもよるが、処理後の泥土のコーン指数の観点から、好ましくは1/50~1/10であり、更に好ましくは1/40~1/15であり、特に好ましくは1/30~1/15である。
前記架橋重合体と中性固化剤(n)とを併用することで、処理中及び処理後の泥土が曳糸性を低減するため固化処理の作業性を向上できることに加え、処理後の泥土のコーン指数を更に向上できる。
【0074】
本発明における「中性固化剤」とは、「処理後の土のpHが中性領域(5~9、好ましくは5.8~8.6)に維持できる無機固化剤」を意味し、「固化剤」とは、土粒子を取り込んで硬化する性質を有する物質を意味する。
中性固化剤(n)は、作業性、処理後の泥土の強度及び土壌に含まれる有害金属の補足能の観点から、マグネシウム化合物(酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム及びこれらを含有する物質等)を含有することが好ましく、酸化マグネシウム及び/又は酸化マグネシウム含有物質を含有することが更に好ましい。酸化マグネシウム含有物質としては、軽焼マグネシア及び軽焼マグネシアの部分水和物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
尚、マグネシウム化合物は粉末状のものを用いることが好ましい。
【0075】
中和固化剤(n)は、pH調整等の観点から、必要に応じて固化助剤を含有する。固化助剤としては、アルミニウム化合物(硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム及びアルミン酸ナトリウム等)、鉄化合物(ポリ塩化第二鉄、硫酸第一鉄、ポリ硫酸第二鉄及びポリシリカ鉄等)、酸性硫酸ナトリウム、スルファミン酸、リン酸及び水溶液のPH値が7以下のリン化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0076】
中性固化剤(n)としては、前記マグネシウム化合物及び前記マグネシウム化合物と前記固化助剤との併用以外に、石膏系(半水石膏等)の固化剤等を使用することもできる。
【0077】
本発明のシールド工事掘削残土処理剤が、前記架橋重合体以外に中性固化剤(n)及び必要により他の添加剤を含有する場合、各成分をあらかじめ混合した一剤型の処理剤としてもよいし、使用時に混合して使用する二剤以上の多剤型の処理剤としてもよい。
処理剤の形態については特に限定されないが、一剤型の処理剤の場合、粉末状の各成分をドライブレンドした粉末型及び各成分を分散媒に分散させた分散液型等が挙げられる。二剤以上の多剤型の処理剤の場合、全成分を粉末状で混合する型、全成分を分散させた分散液とする型及び一部成分の分散液と一部の粉末状成分を混合する型等が挙げられる。
また前記処理剤が中性固化剤(n)等を含有しない場合も、粉末状の架橋重合体を分散媒に分散させた分散液型としてもよい。
処理剤の形態は処理対象残土の含水量や有機物の含量等により、当業者が適宜選択できる。
【0078】
処理剤の形態を分散液型とする場合、分散媒への分散性の観点から、前記架橋重合体を公知の方法でさらに粉砕し、微粉末化したものを使用してもよい。
【0079】
処理剤の形態を分散液型とする場合の分散媒としては、-10℃~50℃で液状であり、前記架橋重合体を膨潤あるいは溶解せず、かつ架橋重合体と反応しないものであれば、多価アルコール類、多価アルコール類と低級脂肪酸とのエステル、多価アルコール類と低級アルコールとのエーテル及び植物油等親水性、疎水性のいずれでもよい。例をあげて説明すると、多価アルコール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどが、多価アルコール類と低級脂肪酸とのエステルとしては、上記に例示した多価アルコール類と酢酸等低級脂肪酸とのエステル(例えば、エチレングリコールジアセテート)が、多価アルコール類と低級アルコールとのエーテルとしては、上記に例示した多価アルコール類とメチルアルコール等低級アルコールとのエーテル(例えば、エチレングリコールジメチルエーテル)が、植物油としてはなたね油等があげられる。分散性や安全性の観点から好ましくは、ポリエチレングリコールである。分散媒の使用量は、分散安定性の観点から、架橋重合体の濃度が分散液の重量に基づいて0.1~90重量%となる量が好ましく、更に好ましくは10~80重量%、特に好ましくは20~60重量%となる量である。
【0080】
処理剤の形態を分散液型とする場合、必要に応じて分散安定剤を添加してもよい。分散安定剤としては特に限定はなく公知のものを使用することができ、分散媒に可溶な高分子、無機粉末(有機ベントナイト、炭酸カルシウム粉末、リン酸カルシウム粉末、ハイドロキシアパタイト粉末及びシリカ粉末等)、界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びラウリル硫酸ナトリウム等)等が挙げられる。分散安定剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。分散安定剤の添加量は、分散安定性の観点から、前記架橋重合体の重量に対し0.01~100重量%が好ましく、更に好ましくは0.02~50重量%であり、特に好ましくは0.03~30重量%である。
【0081】
本発明のシールド工事掘削残土処理剤は、処理中及び処理後の泥土の曳糸性を低下するため固化処理の作業性を向上でき、かつ処理後の泥土のコーン指数を向上できるため、シールド工事掘削残土(泥土)処理用として好適に使用できる。
【0082】
<シールド工事掘削残土処理方法>
本発明のシールド工事掘削残土処理方法は、シールド工事で発生する泥土を本発明のシールド工事掘削残土処理剤を使用して固化する工程を有する処理方法である。本発明において、「泥土を固化する」とは、「泥土のコーン指数を向上させる」ことを意味する。固化処理後の泥土のコーン指数が400kN/m2以上であると取扱いや運搬が容易となるため好ましく、500kN/m2以上であると更に好ましい。
【0083】
本発明処理方法の処理対象は、シールド工事で発生する泥土である。シールド工事で使用される気泡剤等の掘削添加剤を含有する泥土にも好適に適用できる。
【0084】
前記工程では、前記処理剤を処理対象の泥土に混ぜ合わせることで泥土を固化する。処理剤を泥土に混ぜ合わせる方法は特に限定されないが、例えばバックホウや各種ミキサー系混練機などを用いて混合することができる。
【0085】
前記工程で使用される前記処理剤の量は特に限定されず、処理対象泥土の含水量や有機物の含量等を考慮して適宜設定すればよいが、例えば前記処理剤に含まれる本発明の架橋重合体の重量が処理対象の泥土の重量を基準として0.2~0.4重量%となる量を使用するのが、処理後の泥土のコーン指数と処理の経済性の観点から好ましい。
【0086】
本発明の処理方法は前記工程を2回以上有してもよく、例えば2回の前記工程を有する場合、1回目で泥土の流動性がなくなる程度に固化させてから、2回目で泥土の強度(コーン指数)を更に大きくすることができる。
【0087】
本発明のシールド工事掘削残土処理方法では、本発明の効果を阻害しない範囲で、本発明のシールド工事掘削残土処理剤以外の固化剤を併用してもよい。併用できる固化剤としては、吸水剤(高吸水性樹脂、古紙、繊維状物質、活性炭及びゼオライト等)、セメント系固化剤、石灰系固化剤等が挙げられる。
【0088】
本発明のシールド工事掘削残土処理方法では、本発明の効果を阻害しない範囲で、掘削残土の腐敗を防止するための各種殺菌剤や防腐剤等、必要に応じてその他の添加剤を併用することができる。
【実施例0089】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、イオン交換水は電気伝導率1.0μS/cm以下の水を示す。
【0090】
<製造例1:架橋重合体(A-1)の合成>
3リットルの断熱重合槽に、アクリル酸500g、トリメチロールプロパントリアクリレート1.00g(対アクリル酸0.20重量%)、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル0.25g(対アクリル酸0.05重量%)及びイオン交換水1600gを入れて撹拌混合してモノマー水溶液を調製した後、アクリル酸水溶液を3℃に冷却した。冷却後、アクリル酸水溶液中に窒素を流量5L/minで通気して、アクリル酸水溶液中の溶存酸素濃度を0.10ppm以下とした。溶存酸素濃度は、隔膜電極法に基づく酸素濃度計(ORBISPHERE 510、HACH ULTRA社製)を用いて測定した。アクリル酸水溶液が3℃であることを確認した後に、窒素通気を継続しながら断熱重合槽に重合開始剤として、濃度10重量%の2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ハイドロクロライド(和光純薬工業株式会社製、商品名:V-50)水溶液15.00g、濃度1.0重量%の過酸化水素水1.50g、濃度1.0重量%のL-アスコルビン酸水溶液1.50g、濃度0.1重量%の硫酸鉄(III)水溶液0.75gを添加した。重合開始剤添加後25分間窒素通気を継続した後に窒素通気を停止し、16時間静置して重合反応を行った。16時間静置後に、重合反応によって得られる含水ゲルを重合反応槽から取り出した。
取り出した含水ゲルを、小型ミートチョッパー(ローヤル社製)を用いて3~10mmの太さのヌードル状になるように細分化し、細分化した含水ゲルに49重量%水酸化ナトリウム(試薬特級)水溶液408.14gを加えた後に前記小型ミートチョッパーを用いて含水ゲルに均一混練して中和した。
中和した含水ゲルを目開き850μmのSUS製のスクリ-ンの上に厚さ5cmで積層し、小型透気乾燥機(井上金属株式会社製)を用いて150℃の熱風を1時間含水ゲルに透気させて含水ゲル中の水分を蒸発させ、乾燥ゲルを得た。乾燥ゲルをジューサーミキサー(Oster社製OSTERIZER BLENDER)にて粉砕した後、ふるい分けして、目開き150~710μmの粒子径範囲に調整して、本発明の架橋重合体(A-1)を得た。
【0091】
<製造例2:架橋重合体(A-2)の合成>
製造例1のペンタエリスリトールトリアリルエーテルの仕込み量を0.25g(対アクリル酸0.05重量%)から0.50g(対アクリル酸0.10重量%)へ変更する以外は製造例1と同様にして、本発明の架橋重合体(A-2)を得た。
【0092】
<製造例3:架橋重合体(A-3)の合成>
製造例1のトリメチロールプロパントリアクリレートの仕込み量を1.00g(対アクリル酸0.20重量%)から0.50g(対アクリル酸0.10重量%)へ変更する以外は製造例1と同様にして、本発明の架橋重合体(A-3)を得た。
【0093】
<製造例4:架橋重合体(A-4)の合成>
製造例1のトリメチロールプロパントリアクリレートの仕込み量を1.00g(対アクリル酸0.20重量%)から0.50g(対アクリル酸0.10重量%)へ、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルの仕込み量を0.25g(対アクリル酸0.05重量%)から0.50g(対アクリル酸0.10重量%)へ変更する以外は製造例1と同様にして、本発明の架橋重合体(A-4)を得た。
【0094】
<製造例5:架橋重合体(A-5)の合成>
製造例1のトリメチロールプロパントリアクリレートの仕込み量を1.00g(対アクリル酸0.20重量%)から0.25g(対アクリル酸0.05重量%)へ変更する以外は製造例1と同様にして、本発明の架橋重合体(A-5)を得た。
【0095】
<製造例6:架橋重合体(A-6)の合成>
製造例1のトリメチロールプロパントリアクリレートの仕込み量を1.00g(対アクリル酸0.20重量%)から1.25g(対アクリル酸0.25重量%)へ変更する以外は製造例1と同様にして、本発明の架橋重合体(A-6)を得た。
【0096】
<製造例7:架橋重合体(A-7)の合成>
製造例1のトリメチロールプロパントリアクリレートの仕込み量を1.00g(対アクリル酸0.20重量%)から0.05g(対アクリル酸0.01重量%)へ変更する以外は製造例1と同様にして、本発明の架橋重合体(A-7)を得た。
【0097】
<製造例8:架橋重合体(A-8)の合成>
製造例1のペンタエリスリトールトリアリルエーテルの仕込み量を0.25g(対アクリル酸0.05重量%)から0.00g(対アクリル酸0.00重量%)へ、49重量%水酸化ナトリウム(試薬特級)水溶液の仕込み量を408.14g(中和度72モル%)から538.51g(中和度95モル%)へ変更する以外は製造例1と同様にして、本発明の架橋重合体(A-8)を得た。
【0098】
<製造例9:架橋重合体(A-9)の合成>
製造例1のトリメチロールプロパントリアクリレートの仕込み量を1.00g(対アクリル酸0.20重量%)から1.75g(対アクリル酸0.35重量%)へ、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルの仕込み量を0.25g(対アクリル酸0.05重量%)から0.00g(対アクリル酸0.00重量%)へ、49重量%水酸化ナトリウム(試薬特級)水溶液の仕込み量を408.14g(中和度72モル%)から538.51g(中和度95モル%)へ変更する以外は製造例1と同様にして、本発明の架橋重合体(A-9)を得た。
【0099】
<製造例10:架橋重合体(A-10)の合成>
製造例1のトリメチロールプロパントリアクリレートの仕込み量を1.00g(対アクリル酸0.20重量%)から1.50g(対アクリル酸0.30重量%)へ、49重量%水酸化ナトリウム(試薬特級)水溶液の仕込み量を408.14g(中和度72モル%)から538.51g(中和度95モル%)へ変更する以外は製造例1と同様にして、本発明の架橋重合体(A-10)を得た。
【0100】
<製造例11:架橋重合体(A-11)の合成>
製造例1のペンタエリスリトールトリアリルエーテルの仕込み量を0.25g(対アクリル酸0.05重量%)から0.00g(対アクリル酸0.00重量%)へ、49重量%水酸化ナトリウム(試薬特級)水溶液の仕込み量を408.14g(中和度72モル%)から453.49g(中和度80モル%)へ変更する以外は製造例1と同様にして、本発明の架橋重合体(A-10)を得た。
【0101】
<製造例12:架橋重合体(A-12)の合成>
製造例1の49重量%水酸化ナトリウム(試薬特級)水溶液の仕込み量を408.14g(中和度72モル%)から453.49g(中和度80モル%)へ変更する以外は製造例1と同様にして、本発明の架橋重合体(A-12)を得た。
【0102】
<製造例13:架橋重合体(A-13)の合成>
製造例1のトリメチロールプロパントリアクリレートの仕込み量を1.00g(対アクリル酸0.20重量%)から0.25g(対アクリル酸0.05重量%)へ、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルの仕込み量を0.25g(対アクリル酸0.05重量%)から0.00g(対アクリル酸0.00重量%)へ、49重量%水酸化ナトリウム(試薬特級)水溶液の仕込み量を408.14g(中和度72モル%)から453.49g(中和度80モル%)へ変更する以外は製造例1と同様にして、本発明の架橋重合体(A-13)を得た。
【0103】
<製造例13:架橋重合体(A-14)の合成>
製造例1のトリメチロールプロパントリアクリレートの仕込み量を1.00g(対アクリル酸0.20重量%)から0.75g(対アクリル酸0.15重量%)へ、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルの仕込み量を0.25g(対アクリル酸0.05重量%)から0.00g(対アクリル酸0.00重量%)へ、49重量%水酸化ナトリウム(試薬特級)水溶液の仕込み量を408.14g(中和度72モル%)から538.51g(中和度95モル%)へ変更する以外は製造例1と同様にして、本発明の架橋重合体(A-14)を得た。
【0104】
<比較製造例1:比較の架橋重合体(A’-1)の合成>
製造例1のトリメチロールプロパントリアクリレートの仕込み量を1.00g(対アクリル酸0.20重量%)から0.00g(対アクリル酸0.00重量%)へ、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルの仕込み量を0.25g(対アクリル酸0.05重量%)から1.375g(対アクリル酸0.275重量%)へ変更する以外は製造例1と同様にして、比較の架橋重合体(A’-1)を得た。
【0105】
<比較製造例2:比較の架橋重合体(A’-2)の合成>
製造例1のトリメチロールプロパントリアクリレートの仕込み量を1.00g(対アクリル酸0.20重量%)から1.75g(対アクリル酸0.35重量%)へ、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルの仕込み量を0.25g(対アクリル酸0.05重量%)から1.00g(対アクリル酸0.20重量%)へ変更する以外は製造例1と同様にして、比較の架橋重合体(A’-2)を得た。
【0106】
<比較製造例3:比較の架橋重合体(A’-3)の合成>
実施例1のペンタエリスリトールトリアリルエーテルの仕込み量を0.25g(対アクリル酸0.05重量%)から1.25g(対アクリル酸0.25重量%)へ変更する以外は製造例1と同様にして、比較の架橋重合体(A’-3)を得た。
【0107】
<比較製造例4:比較の架橋重合体(A’-4)の合成>
製造例1のトリメチロールプロパントリアクリレートの仕込み量を1.00g(対アクリル酸0.20重量%)から1.75g(対アクリル酸0.35重量%)へ変更する以外は製造例1と同様にして、比較の架橋重合体(A’-4)を得た。
【0108】
<比較製造例5:比較の架橋重合体(A’-5)の合成>
製造例1のトリメチロールプロパントリアクリレートの仕込み量を1.00g(対アクリル酸0.20重量%)から0.00g(対アクリル酸0.00重量%)へ、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルの仕込み量を0.25g(対アクリル酸0.05重量%)から1.40g(対アクリル酸0.28重量%)へ、49重量%水酸化ナトリウム(試薬特級)水溶液の仕込み量を408.14g(中和度72モル%)から538.51g(中和度95モル%)へ変更する以外は製造例1と同様にして、比較の架橋重合体(A’-5)を得た。
【0109】
<比較製造例6:比較の架橋重合体(A’-6)の合成>
製造例1のトリメチロールプロパントリアクリレートの仕込み量を1.00g(対アクリル酸0.20重量%)から2.00g(対アクリル酸0.40重量%)へ、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルの仕込み量を0.25g(対アクリル酸0.05重量%)から0.00g(対アクリル酸0.00重量%)へ変更する以外は製造例1と同様にして、比較の架橋重合体(A’-6)を得た。
【0110】
<比較製造例7:比較の架橋重合体(A’-7)の合成>
製造例1のトリメチロールプロパントリアクリレートの仕込み量を1.00g(対アクリル酸0.20重量%)から2.00g(対アクリル酸0.40重量%)へ、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルの仕込み量を0.25g(対アクリル酸0.05重量%)から2.00g(対アクリル酸0.40重量%)へ変更する以外は製造例1と同様にして、比較の架橋重合体(A’-7)を得た。
【0111】
<比較製造例8:比較の架橋重合体(A’-5)の合成>
製造例1のトリメチロールプロパントリアクリレートの仕込み量を1.00g(対アクリル酸0.20重量%)から0.10g(対アクリル酸0.02重量%)へ、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルの仕込み量を0.25g(対アクリル酸0.05重量%)から0.00g(対アクリル酸0.00重量%)へ、49重量%水酸化ナトリウム(試薬特級)水溶液の仕込み量を408.14g(中和度72モル%)から538.51g(中和度95モル%)へ変更する以外は製造例1と同様にして、比較の架橋重合体(A’-8)を得た。
【0112】
<架橋重合体の評価>
製造例1~14で得られた架橋重合体(A-1)~(A-14)及び比較製造例1~8で得られた比較の架橋重合体(A’-1)~(A’-8)について、生理食塩水への可溶性成分量(重量%)、生理食塩水の吸収量(g/g)及びイオン交換水に架橋重合体を1重量%添加した混合液の粘度(Pa・s)を前述の方法で測定した結果を、架橋重合体に使用した架橋剤の含有量及び重量比率並びに架橋重合体に含まれるアニオン性ビニルモノマーに由来する構成単位の最終的な中和度と共に表1に示す。
【0113】
【0114】
<実施例1:処理剤(T-1)>
実施例1で得られた架橋重合体(A-1)をそのまま本発明の処理剤(T-1)として用いた。
【0115】
<実施例2:処理剤(T-2)の製造>
架橋重合体(A-1)3重量部と、中性固化剤としての酸化マグネシウムMG-H(協和化学工業株式会社製)50重量部とをナウターミキサーで5分混合することで本発明の処理剤(T-2)を得た。
【0116】
<実施例3~8:処理剤(T-3)~(T-8)の製造>
実施例2の架橋重合体(A-1)3重量部を、それぞれ表2に記載の架橋重合体3重量部へ変更する以外は実施例2と同様にして、本発明の処理剤(T-3)~(T-8)を得た。
【0117】
<実施例9:処理剤(T-9)の製造>
製造例1で得られた架橋重合体(A-1)をクッキングミキサーで粉砕した後、目開き45μm(330メッシュ)の篩を用いて粒子径45μm以下のものを採取して(A-1)の微粉砕品を得た。
分散媒としての平均分子量200のポリエチレングリコール(商品名:PEG-200、三洋化成工業株式会社製)607重量部に対して、上記で得られた微粉砕品333重量部と、分散安定剤としての非イオン界面活性剤(商品名:ニューポールPE-74、三洋化成工業株式会社製)30重量部及びベントナイト(商品名:オルガナイト、株式会社ホージュン製)30重量部を添加して、スリーワンモータ及びファン型攪拌翼(新東科学株式会社製)で30分間撹拌し、架橋重合体分散液を得た。
得られた架橋重合体分散液27重量部(内、架橋重合体9重量部)と、酸化マグネシウムMG-H(協和化学工業株式会社製)150重量部とを混合したものが処理剤(T-9)である。(二剤型の処理剤であり、処理時に混合する。)
【0118】
<実施例10~16:処理剤(T-10)~(T-16)の製造>
実施例2の架橋重合体(A-1)3重量部を、それぞれ表2に記載の架橋重合体3重量部へ変更する以外は実施例2と同様にして、本発明の処理剤(T-10)~(T-16)を得た。
【0119】
<比較例1:比較の処理剤(T’-1)>
比較製造例1で得られた比較の架橋重合体(A’-1)をそのまま比較の処理剤(T’-1)として用いた。
【0120】
<比較例2:比較の処理剤(T’-2)>
高分子凝集剤(商品名:サンフロックAH-4J、三洋化成工業株式会社製)をそのまま比較の処理剤(T’-2)として用いた。
【0121】
<比較例3~6:比較の処理剤(T’-3)~(T’-6)の製造>
実施例2の架橋重合体(A-1)3重量部を、それぞれ表2に記載の比較の架橋重合体3重量部へ変更する以外は実施例2と同様にして、比較の処理剤(T’-3)~(T’-6)を得た。
【0122】
<比較例7:比較の処理剤(T’-7)の製造>
実施例2の架橋重合体(A-1)3重量部を高分子凝集剤(商品名:サンフロックAH-4J、三洋化成工業株式会社製)3重量部へ変更する以外は実施例2と同様にして、比較の処理剤(T’-7)を得た。
【0123】
<比較例8~11:比較の処理剤(T’-8)~(T’-11)の製造>
実施例2の架橋重合体(A-1)3重量部を、それぞれ表2に記載の比較の架橋重合体3重量部へ変更する以外は実施例2と同様にして、比較の処理剤(T’-8)~(T’-11)を得た。
【0124】
<処理剤の評価>
実施例1~16で得られた処理剤(T-1)~(T-16)及び比較例1~11で得られた比較の処理剤(T’-1)~(T’-11)について、曳糸性(cm)及びコーン指数(kN/m2)を下記の方法で測定した結果を、処理剤に用いた架橋重合体及び架橋重合体の中性固化剤(n)に対する重量比率と共に表2に示す。
尚、下記の評価方法は実施例1と比較例1及び2について記載したものである。
実施例2~8、10~16及び比較例3~11については、曳糸性の評価では処理剤の添加量を0.3重量部から5.3重量部へ、処理後の泥土のコーン指数の測定では処理剤の添加量を9重量部から159重量部へ変更し、処理剤に含まれる架橋重合体の重量が同じ(試験土の重量を基準として0.3重量%)となるように調整した以外は同様に評価した。
また実施例9については、曳糸性の評価では処理剤の添加量を0.3重量部から5.9重量部へ、処理後の泥土のコーン指数の測定では処理剤の添加量を9重量部から177重量部へ変更し、処理剤に含まれる架橋重合体の重量が同じ(試験土の重量を基準として0.3重量%)となるように調整した以外は同様に評価した。
【0125】
【0126】
[曳糸性及びコーン指数測定用試験土の作成]
6号硅砂1920重量部、市販品の粘土(商品名:トチクレー、大竹工業株式会社製)480重量部をモルタルミキサーに投入し均一になるまで30秒の撹拌を3回実施した。さらに水600部を加えて30秒の撹拌を3回実施し、泥土を作成した。
気泡剤(商品名:レベフローSR-21、三洋化成工業株式会社製)を水で1重量%濃度に希釈し、発泡機にて発泡倍率10倍に調製した。調製した気泡剤水溶液300mlを泥土に加えた後、さらに30分撹拌することで気泡剤含有泥土を作成し、これを試験土として使用した。
【0127】
[曳糸性の評価]
試験土100重量部に処理剤0.3重量部を添加し、薬さじを用いて1分間撹拌した後、これを平滑なステンレス板上に手でかき集めることで縦5cm、横5cm、高さ1cmの直方体状に成型した。この試験片を真上から見た正方形の左辺をL0、左辺から2.5cmのラインをL1、右辺をL2とする。
上記で得られた試験片をL1に沿って手で半分に分割し、分割した一方を1cm/秒の速度で他方から離していった際に目視で糸引きが無くなったときの二片間の距離(cm)を定規で測定した。試験はn=10で実施し10回の平均値を曳糸性(cm)の値とした。
尚、曳糸性(cm)の値が「0」である場合、分割した時点で糸引きが発生せず、曳糸性を生じないことを意味する。
【0128】
[コーン指数の測定]
試験土3000重量部に処理剤9重量部を添加し、モルタルミキサーで30秒の攪拌を2回実施した。これを、ビニール袋に密閉し24時間静置した試料のコーン指数(kN/m2)をJIS A 1228に準拠して計測した。なお、供試体は、4.75mmふるいを通過した試料を内径10cmのモールドに3層に分けて投入し、2.5kgランマーで落下高さ30cm、各層25回つき固めて作成した。
また、コーン指数はコーン先端の貫入量が5cm、7.5cm及び10cmのときの貫入抵抗力の平均値から求めた。
本発明のシールド工事掘削残土処理剤は、処理中及び処理後の泥土の曳糸性を低減するため固化処理の作業性を向上でき、かつ処理後の泥土のコーン指数を向上できるため、シールド工事掘削残土(泥土)処理用として有用である。