(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153326
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】管状留置具
(51)【国際特許分類】
A61F 2/07 20130101AFI20221004BHJP
【FI】
A61F2/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050358
(22)【出願日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2021054648
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100154759
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】山本 実明
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 弘樹
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA15
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC13
4C097CC14
4C097DD07
4C097DD09
4C097DD10
4C097EE06
4C097EE08
(57)【要約】
【課題】接続部の端部の円周に沿って設けられる線材の形状を保持できる管状留置具を提供する。
【解決手段】生体管腔2内に留置される管状留置具1は、他の管状留置具3aが挿入されて当該他の管状留置具3aと接続される筒状の接続部12を備える。接続部12は、他の管状留置具3aが挿入される端部に設けられた指標部材21を有する。指標部材21は、接続部12の周方向に沿って設けられた複数の線材を有し、複数の線材は、生体管腔2内に管状留置具1が留置された状態で、全体として略環状をなすように構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体管腔内に留置される管状留置具であって、
他の管状留置具が挿入されて当該他の管状留置具と接続される筒状の接続部を備え、
前記接続部は、前記他の管状留置具が挿入される端部に設けられた指標部材を有し、
前記指標部材は、
前記接続部の周方向に沿って設けられた複数の線材を有し、前記複数の線材は、前記生体管腔内に前記管状留置具が留置された状態で、全体として略環状をなすように構成されている管状留置具。
【請求項2】
前記接続部は、
前記指標部材に対して軸方向に離間して設けられ、前記軸方向に略直交する径方向に拡縮自在な骨格部と、
当該接続部の周方向に沿って設けられた周面部と、をさらに有し、
前記指標部材と前記骨格部は、前記周面部を介して接続されてなる
請求項1に記載の管状留置具。
【請求項3】
前記接続部は、
前記骨格部を覆うように設けられた皮膜部をさらに有し、
前記皮膜部は、前記周面部を具備してなる
請求項2に記載の管状留置具。
【請求項4】
前記指標部材は、前記線材を筒状に巻回してなるコイル部材を複数有し、前記複数のコイル部材は、前記生体管腔内に前記管状留置具が留置された状態で、全体として略環状をなすように構成されている請求項1~3のいずれか一項に記載の管状留置具。
【請求項5】
筒状の本体部と、
前記本体部の一端部から分枝して延在する筒状の複数の分枝部と、をさらに備え、
前記複数の分枝部のうち、少なくとも一の分枝部は、前記接続部を具備してなる
請求項1に記載の管状留置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状留置具に関する。
【0002】
従来から、血管などの生体管腔に生じた狭窄部位又は閉塞部位などの病変部位に留置され、当該病変部位を拡径して生体管腔の開存状態を維持する管状留置具が知られている。また、例えば、左右の下肢に分枝する腹部大動脈などに留置するために、二股に分枝した形状の管状留置具も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の管状留置具は、筒状のシースに収容されて径方向内側に収縮した状態で生体管腔内に導入され、病変部位に運ばれた後にシースから放出されて留置される。また、上記の管状留置具では、分枝した血管を覆うための小径の管状留置具(リムとも称する)が本体部から分枝した分枝部の開口に挿入されて接続される。
【0005】
上記の管状留置具の留置術では、リムを分枝部に接続する際に分枝部の端部位置や開口状態を正しく把握することが重要となる。そのため、管状留置具の分枝部には、例えば、造影性を有する金属線材で形成された指標部材が分枝部の端部の円周に沿って設けられることがある。
【0006】
上記の指標部材を分枝部に設ける場合、生体管腔への導入時には指標部材の円周が収縮するように管状留置具がシースに収納されるので、放出後には指標部材を収縮前の形状に復元することが求められる。しかしながら、放出後に収縮前の形状を保持するように、金属線材の指標部材を安定して変形させることは実際には困難である。
【0007】
そこで、本発明は上記の状況に鑑みてなされたものであって、接続部の端部の円周に沿って設けられる線材の形状を保持できる管状留置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、生体管腔内に留置される管状留置具であって、他の管状留置具が挿入されて当該他の管状留置具と接続される筒状の接続部を備える。接続部は、他の管状留置具が挿入される端部に設けられた指標部材を有する。指標部材は、接続部の周方向に沿って設けられた複数の線材を有し、複数の線材は、生体管腔内に管状留置具が留置された状態で、全体として略環状をなすように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、接続部の端部の円周に沿って設けられる線材の形状を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態のステントグラフトの構成例を示す図である。
【
図2】ステントグラフトが血管内に留置された状態を模式的に示す図である。
【
図3】第1の分枝部を他端側からみた斜視図である。
【
図4】第1の分枝部の他端側の周面を示す図である。
【
図5】第1の分枝部の他端側の横断面を示す模式図である。
【
図6】皮膜部を縫製する前のシートの形状を示す図である。
【
図7】第1の変形例における第1の分枝部を他端側からみた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る管状留置具の構成例について説明する。
ここで、図面における各部の形状、寸法等は模式的に示したもので、実際の形状や寸法等を示すものではない。図面において、部材の軸方向Axを必要に応じて矢印で示す。また、軸方向Axと略直交する方向を径方向と定義する。なお、図面において部材の一端側を必要に応じて符号Fで示し、一端側と対向する他端側を必要に応じて符号Bで示す。
【0012】
図1は、本実施形態のステントグラフト1の構成例を示す図であり、
図2は、ステントグラフト1が血管2内に留置された状態を模式的に示す図である。
【0013】
本実施形態の管状留置具は、生体管腔の一例である血管の病変部位(例えば、血管で瘤が生じている部位)に留置され、病変部位への血流を遮断させるために適用されるステントグラフト1である。本実施形態でのステントグラフト1は、
図2に示すように、左右の下肢に分枝する腹部大動脈などの血管2に留置される。
【0014】
ステントグラフト1の全体形状は、他端側が二股に分枝する筒状をなしている。ステントグラフト1は、一端側が開口する筒状の本体部11と、本体部11の他端から分枝して延在する筒状の第1および第2の分枝部12,13とを有する。第1および第2の分枝部12,13は接続部の一例である。
【0015】
第1および第2の分枝部12,13の他端側はそれぞれ開口されている。本体部11の開口と第1および第2の分枝部12,13の開口とは互いに連通し、留置状態のステントグラフト1は、患者の血液が通過する管状流路をその内部に形成する。
また、第1および第2の分枝部12,13の径は、本体部11の径よりも小さい。第1の分枝部12の軸方向長さは、第2の分枝部13の軸方向長さよりも短い。
【0016】
また、本体部11の一端側には金属骨格からなるベア部14が設けられている。ベア部14は、本体部11の一端側の開口から外側に向けて突出している。ベア部14は、ステントグラフト1の留置時に血管2の内壁との間で摩擦を生じさせ、ステントグラフト1の位置ずれ(マイグレーション)を抑制する機能を担う。
【0017】
ここで、本実施形態のステントグラフト1は、図示しないカテーテルを用いて、径方向内側に収縮された状態(不図示)で血管2内に導入される。ステントグラフト1は、血管2内の病変部位2aに運ばれた後にカテーテルのシースから放出され、径方向外側に拡張する。
なお、カテーテルから放出されたステントグラフト1を、内側からバルーン(不図示)を拡張させて押圧することで径方向外側に拡張させてもよい。ステントグラフト1の留置により、分枝する血管2に形成された病変部位2aへの血流が遮断される。
【0018】
ステントグラフト1が留置された後、ステントグラフト1における第1および第2の分枝部12,13には、
図2に示すように、分枝した血管2(左右の腸骨動脈)を覆うためのステントグラフト(リム3a,3b)がそれぞれ接続される。リム3a,3bは、他の管状留置具の一例であって、第1および第2の分枝部12,13に対応する径を有する。ステントグラフト1の第1および第2の分枝部12,13にそれぞれリム3a,3bを挿入して接続することで、分枝する血管2における上流側から下流側への血液の流れを阻害することなく、病変部位2aへの血液の流入を抑制できる。
【0019】
リム3a,3bは、ステントグラフト1と同様にカテーテルを用いて血管内に導入される。例えば、第1の分枝部12にリム3aを接続する場合、第1の分枝部12にガイドワイヤ(不図示)を通し、リム3aを収容したカテーテルをガイドワイヤに沿って血管2内で進行させる。リム3aをシースから放出するときには、軸方向においてリム3aの一端部が第1の分枝部12と重なるようにカテーテルを配置し、その後シースを他端側に向けて引き抜くことでリム3aを径方向外側に拡張させる。これにより、第1の分枝部12とリム3aが接続されるとともに、分枝された血管2を内側から覆うようにリム3aが留置される。
【0020】
また、ステントグラフト1の本体部11、第1および第2の分枝部12,13は、骨格部15と皮膜部16とをそれぞれ有している。
【0021】
骨格部15は、径方向内側に収縮した収縮状態から、径方向外側に拡張した拡張状態へと変形可能に構成された自己拡張型のステント骨格である。本実施形態では、骨格部15は、ステントグラフト1の周方向に沿うようにジグザグ状に折り返される金属細線で管状に形成した複数の骨格片で構成される。骨格部15の骨格片は軸方向Axに沿って並設されている。なお、隣接する骨格片同士は、連結部材(不図示)で連結されていてもよい。
【0022】
骨格部15を形成する金属細線の材料としては、例えば、ステンレス鋼、ニッケル-チタン合金、コバルト-クロム合金、チタン合金等に代表される公知の金属又は金属合金が挙げられる。骨格部15の材料としてニッケル-チタン合金を用いる場合、各部を拡張状態の形状に整えた後、所定の熱処理を施すことにより、拡張状態の形状を骨格部15に記憶させることができる。なお、骨格部15は、金属以外の材料(例えば、セラミックや樹脂等)で形成されていてもよい。
【0023】
なお、骨格部15の構成は上記に限定されることなく、例えば、ジグザグ状に折り曲げた金属細線をらせん状に巻回させて骨格部15を形成してもよい。また、上記の各種金属からなる薄肉円筒体をレーザーカットして骨格部15を形成するようにしてもよい。
【0024】
皮膜部16は、上記の管状流路を形成する筒状の可撓性膜体であって、骨格部15の隙間部分を閉塞するように骨格部15に取り付けられている。皮膜部16の材料としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0025】
皮膜部16は、
図6(a)、(b)に示すように、本体部11、第1および第2の分枝部12,13の形状に合わせて切り出された表側のシート17aと裏側のシート17bを縫製することで、立体的な筒状体に形成されている。皮膜部16を構成する各シート17a,17bは、本体部の対応部位11a,11bに対して第1の分枝部の対応部位12a,12bと第2の分枝部の対応部位13a,13bのなす角度が開くように切り出されている。つまり、第1の分枝部の対応部位12a,12bと第2の分枝部の対応部位13a,13bは並列するように直線的には切り出されていない。第1の分枝部の対応部位12a,12bと第2の分枝部の対応部位13a,13bを直線的に切り出したシートを用いると、縫製後に第1の分枝部12と第2の分枝部13が内向きに交差しうる。一方、
図6に示すようなシート17a,17bを用いると、縫製後に第1の分枝部12と第2の分枝部13が内向きに交差することを抑制できる。
【0026】
本実施形態での皮膜部16は、骨格部15の内周側に取り付けられている。もっとも、皮膜部16は骨格部15の外周側に取り付けられていてもよく、2枚の皮膜部16を用いて骨格部15を内周側と外周側から挟み込んでもよい。なお、骨格部15に対する皮膜部16の固定方法は、例えば、糸による縫着、接着、溶着、テープ等による貼着等のいずれでもよい。
【0027】
図3は、第1の分枝部12を他端側からみた斜視図である。
図4は、第1の分枝部12の他端側の周面を示す図である。
図5は、第1の分枝部12の他端側の横断面を示す模式図である。
【0028】
第1の分枝部12の他端側の開口端には、指標部材の一例であるゲートマーカー21が設けられている。ゲートマーカー21は、造影性を有する複数の線材により構成される。ゲートマーカー21を構成する各々の線材は、第1の分枝部12の周方向に沿って配置される。本実施形態では、ゲートマーカー21は円周を3分割した3本の線材で構成される。なお、ゲートマーカー21の線材の数は2本でもよく、4本以上であってもよい。
【0029】
図3、
図5に示すように、ステントグラフト1の留置状態において、複数のゲートマーカー21は全体として略環状をなす。このように、第1の分枝部12の開口端にゲートマーカー21を配置することで、第1の分枝部12の端部位置および端部形状をX線画像で外部から観察することが可能となる。
【0030】
ゲートマーカー21の材料には、例えば、タングステン、プラチナ、ステンレス鋼などの生体適合性および造影性の高い金属が適用される。しかし、ゲートマーカー21の材料は上記に限定されず、生体適合性のある金属材料を適用することが可能である。
【0031】
第1の分枝部12の端部では皮膜部16が内側から外側に折り返されており、この皮膜部16の折り返しの内側に各々のゲートマーカー21が包み込まれて配置される。
図5に示すように、第1の分枝部12の端部では、径方向において、内周側の皮膜部16と折り返された外周側の皮膜部16の間にゲートマーカー21が配置される。
【0032】
図4に示すように、第1の分枝部12の周方向に沿った外周面において、第1の分枝部12の最も他端側に位置する骨格部15はゲートマーカー21に対して軸方向に離間し、ゲートマーカー21とは重ならないように配置されている。また、第1の分枝部12の端部では、ゲートマーカー21に臨む骨格部15は、外周側の皮膜部16よりも径方向外側に位置し、皮膜部16の外側に縫合されている。また、ゲートマーカー21は、皮膜部に包み込まれた状態で、他端側に突出する骨格部15の谷部15aの先端に縫合されている。
【0033】
上記のように、ゲートマーカー21に臨む骨格部15とゲートマーカー21は、軸方向に離間した状態で皮膜部16の周面を介して間接的に接続されている。そのため、皮膜部16に包みこまれたゲートマーカー21は骨格部15に対して周方向に摺動可能である。
【0034】
次に、第1の分枝部12が拡縮するときのゲートマーカー21の動きについて説明する。
第1の分枝部12が径方向に収縮した状態では、骨格部15は、隣り合う山部15b同士および谷部15a同士が周方向に近づくように変位することで径方向に収縮する。すると、皮膜部16を介して骨格部15の谷部15aに接続されたゲートマーカー21も、骨格部15に連動して全体として径方向に収縮するように変位する。
【0035】
第1の分枝部12が収縮するときには、3本のゲートマーカー21は周方向に近づくように移動し、周方向において隣り合うゲートマーカー21が部分的に重なった状態となる。このように、各々のゲートマーカー21は周方向に移動して互いに重なることで、径方向に収縮した形状に変位する。本実施形態では、周方向においてゲートマーカー21が複数に分割されているため、収縮時のゲートマーカー21の変形しろを容易に確保できる。
【0036】
このとき、皮膜部16に包みこまれた各々のゲートマーカー21は骨格部15に対して周方向に摺動することができる。つまり、骨格部15が縮径するときには、ゲートマーカー21における骨格部15との接続位置を周方向に移動させることができる。したがって、骨格部15が縮径するときにゲートマーカー21が骨格部15に拘束されて軸方向に不規則に変形することが抑制され、ゲートマーカー21は周方向に沿って延在する形状を保持できる。
【0037】
一方、第1の分枝部12が径方向に拡張するときには、骨格部15は、隣り合う山部15b同士および谷部15a同士が周方向に離れるように変位して自己拡張する。すると、皮膜部16を介して骨格部15の谷部15aに接続されたゲートマーカー21も、骨格部15に連動して全体として径方向に拡張するように変位する。
【0038】
第1の分枝部12が拡張するときには、周方向に部分的に重なった状態のゲートマーカー21は、それぞれ周方向に離れるように移動する。収縮時のゲートマーカー21は周方向に沿って延在する形状を保持しているので、上記の移動のときに周方向に隣り合うゲートマーカー21は互いに干渉せずに移動でき、また拡張時には元の形状に容易に復元できる。以上のようにして、ゲートマーカー21は、収縮した状態から拡張した状態に安定して変形し、拡張時に全体として略環状をなす形状を保持できる。
【0039】
以下、本実施形態のステントグラフト1の効果を述べる。
本実施形態において、血管2(生体管腔)内に留置されるステントグラフト1(管状留置具)は、リム3a(他の管状留置具)が挿入されて当該リム3aと接続される筒状の第1の分枝部12(接続部)を備える。第1の分枝部12は、リム3aが挿入される端部に設けられたゲートマーカー21(指標部材)を有する。ゲートマーカー21は、第1の分枝部12の周方向に沿って設けられた複数の線材を有し、複数の線材は、血管2内にステントグラフト1が留置された状態で、全体として略環状をなすように構成されている。
第1の分枝部12の周方向に沿って設けられた複数の線材でゲートマーカー21を構成することで、収縮時には線材が周方向に移動して互いに重なることができる。そして、拡張時には線材が周方向に移動することで全体として略環状をなす形状に復元できる。したがって、本実施形態によれば、第1の分枝部12の端部の円周に沿って設けられるゲートマーカー21の形状を保持できる。
【0040】
本実施形態の第1の分枝部12は、ゲートマーカー21に対して軸方向に離間して設けられ、軸方向に略直交する径方向に拡縮自在な骨格部15と、第1の分枝部12の周方向に沿って設けられ、骨格部15を覆うように設けられた皮膜部16(周面部)と、をさらに有する。ゲートマーカー21と骨格部15は、皮膜部16を介して接続されている。
ゲートマーカー21と骨格部15が接続されることで、骨格部15が拡張変形するときの拡張力がゲートマーカー21に伝達され、当該骨格部15の拡張変形に連動してゲートマーカー21を変位させることができる。これにより、血管2内にステントグラフト1が留置された状態で、第1の分枝部12の端部の円周に沿って設けられるゲートマーカー21の線材の形状を保持することができる。
また、皮膜部16を介してゲートマーカー21と骨格部15が接続されることで、骨格部15に対してゲートマーカー21が摺動できる。これにより、骨格部15が縮径するときにゲートマーカー21が骨格部15に拘束されて軸方向に不規則に変形することが抑制される。その結果として、収縮時にもゲートマーカー21が周方向に沿って延在する形状を保持でき、ゲートマーカー21の安定した変形が可能となる。
【0041】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0042】
上記実施形態では、ステントグラフト1の第1の分枝部12にゲートマーカー21を設けた例を説明した。しかし、第2の分枝部13の開口端にも同様にゲートマーカー21を設けてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、ゲートマーカー21と骨格部15は、皮膜部16を介して接続されるようにしたが、ゲートマーカー21と骨格部15を接続する構成は一例であってこれに限られるものではなく、適宜任意に変更可能である。例えば、第1の分枝部12の周方向に沿って設けられた皮膜部16以外の部材(図示略)を用いて、ゲートマーカー21と骨格部15を接続してもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、管状留置具として、腹部大動脈に留置される二股状に分枝したステントグラフト1を例示したが、管状留置具の形状は一例であってこれに限られるものではなく、例えば、直筒状であってもよい。すなわち、他の管状留置具が挿入されて当該他の管状留置具と接続される筒状の接続部を具備する管状留置具であれば、如何なる形状であってもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、ゲートマーカーとして造影性を有する複数本の線材を用いる構成を示したが、管状留置具に適用されるゲートマーカーの構成はこれに限られるものではない。例えば、上記実施形態の変形例として、以下の構成のゲートマーカーを管状留置具に適用してもよい。なお、以下の変形例の説明では、上記実施形態と共通の構成には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0046】
図7は、第1の変形例における第1の分枝部12を他端側からみた斜視図である。第1の変形例のゲートマーカーは、造影性を有する線材を所定のピッチで円筒状に巻回して形成されたコイル部材22で構成されている。コイル部材22は、細径の線材を巻回して空隙を有する太径のコイルを形成する。そのため、コイル外径と同径の線材でゲートマーカーを直接形成する場合と比べて、コイル部材22はX線画像での視認性を確保しつつも金属量が少なくなり、シース内の充填率を低減できる。また、コイル部材22は、コイル外径よりも細径の線材で形成されるため、コイル外径と同径の線材でゲートマーカーを直接形成する場合と比べて屈曲しやすい。また、コイル部材22は、コイルの復元力によって、屈曲した状態から屈曲前の状態に比較的容易に移行できる。
【0047】
図7の例では、コイル部材22は、第1の分枝部12の他端側の開口端に3つ配置されている。各々のコイル部材22は、第1の分枝部12の周方向に沿って延在し、隣り合うコイル部材22が互いに重ならないように配置されている。また、各々のコイル部材22は、皮膜部16に包み込まれた状態で、他端側に突出する骨格部15の谷部15aの先端側に縫合されている。これにより、ステントグラフト1の留置状態において3つのコイル部材22は全体として略環状をなす。なお、コイル部材22の数は2本でもよく、4本以上であってもよい。
【0048】
また、コイル部材22の材料には、例えば、タングステン、プラチナ、ステンレス鋼などの生体適合性および造影性の高い金属が適用される。しかし、コイル部材22の材料は上記に限定されず、生体適合性のある金属材料を適用することが可能である。
【0049】
ここで、第1の分枝部12が径方向に収縮した状態では、骨格部15は、隣り合う山部15b同士および谷部15a同士が周方向に近づくように変位することで径方向に収縮する。すると、皮膜部16に保持されたコイル部材22は、骨格部15の変位に伴って折り畳まれるように変形し、第1の分枝部12の収縮状態に対応する。このとき、コイル部材22は、コイルの一部が屈曲の際にコイルの軸方向に伸張してもよい。なお、コイル部材22は、第1の分枝部12の周方向に複数分割することで、コイル部材22間には変形しろが確保されている。そのため、収縮の際にコイル部材22が過剰に伸びて塑性変形することは抑制される。
【0050】
一方、第1の分枝部12が径方向に拡張するときには、骨格部15は、隣り合う山部15b同士および谷部15a同士が周方向に離れるように変位して自己拡張する。すると、コイル部材22は、折り畳まれた状態からコイル部材22自身の復元力で屈曲前の状態に近づく。また、骨格部15に連動した皮膜部16の動きによって、皮膜部16に保持された各々のコイル部材22は全体として略環状をなす位置に配置される。以上のようにして、コイル部材22は、収縮した状態から拡張した状態に安定して変形し、拡張時に全体として略環状をなす形状を保持できる。
【0051】
また、第1変形例においてコイル部材22の線径とピッチ幅の組み合わせは、X線による視認性とシースの充填率を考慮して決定することが好ましい。例えば、線径を小さくするか、ピッチ幅を大きくするとシースの充填率は低くなるが、一方でX線画像での視認性は低下してしまう。また、線径を大きくするか、ピッチ幅を小さくするとX線画像での視認性は向上するが、一方でシースの充填率も高くなってしまう。
特に限定するものではないが、例えば、コイル部材22の線径は0.0075mm~0.060mm程度であることが好ましい。また、例えば、コイル部材22のピッチ幅は0.046mm~3.0mm程度であることが好ましい。
【0052】
また、第2の変形例として、図示は省略するが、第1の分枝部12の周方向に沿って複数配置されるゲートマーカーの形状を平線状に形成してもよい。第2の変形例の場合、平線化により断面短手方向の寸法(ゲートマーカーの厚さ)が小さくなるためゲートマーカーが屈曲しやすくなる。したがって、収縮時にはゲートマーカーを折り畳んだ状態にすることが容易である。また、平線化により断面長手方向の寸法(ゲートマーカーの幅)が大きくなることでX線画像でのゲートマーカーの視認性を確保することができる。さらに、平線化によりゲートマーカーの断面積を抑制することで、ゲートマーカーの金属量を抑制してシースの充填率を低下させることもできる。
なお、ゲートマーカーを平線化する場合、ゲートマーカーの材料は上記と同様の材料を用いてもよく、例えば金(Au)製の平線マーカーを使用してもよい。
また、平線状のゲートマーカーを第1の変形例と同様にコイル状に形成してもよく、これにより、X線画像の撮影時にゲートマーカーに対する撮影手段の向きの自由度を高くすることができるとともに、X線画像の視認性をより向上させることができる。
【0053】
また、第3の変形例として、図示は省略するが、第1の分枝部12の周方向に沿って複数配置されるゲートマーカーの径寸法を周方向に沿って一定間隔で変化させてもよい。例えば、骨格部15の谷部15aと対応するゲートマーカーの部位を細径とし、細径部では骨格部15の谷部15aとゲートマーカーの干渉を抑制するとともにゲートマーカーの金属量を低下させる。また、ゲートマーカーの太径部ではX線画像での視認性を確保することができる。
【0054】
また、第4の変形例として、図示は省略するが、第1の分枝部12の周方向に沿って複数配置されるゲートマーカーの形状を、骨格部の谷部15aや山部15bに沿った波線状に形成してもよい。第4の変形例では、ゲートマーカーの形状を波線状に形成することで骨格部15との干渉を避けることができる。また、第4の変形例の場合、骨格部の間にゲートマーカーを設けることも可能となる。骨格部の間にゲートマーカーを設ける場合には、ゲートマーカーを保持するための皮膜部16の折り返しが不要となるため、シースへの充填率を低下させることもできる。
【0055】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0056】
1…ステントグラフト(管状留置具)、2…血管(生体管腔)、2a…病変部位、3a,3b…リム(他の管状留置具)、11…本体部、12…第1の分枝部(接続部)、13…第2の分枝部、14…ベア部、15…骨格部、16…皮膜部、17a,17b…シート、21…ゲートマーカー(指標部材)、22…コイル部材