(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153332
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】シリカガラスから成る管及びこの管の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 23/07 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
C03B23/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022051320
(22)【出願日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】21165574
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507332918
【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Heraeusstr.12-14, 63450 Hanau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ゼーン
(72)【発明者】
【氏名】ボリス グローマン
(72)【発明者】
【氏名】エドゥアート ヴィスノウ
【テーマコード(参考)】
4G015
【Fターム(参考)】
4G015BA01
4G015BA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】20mm以上の壁厚を有しシリカガラスから成り、且つ壁厚が厚い出発中空シリンダを、より大きい直径を有するがほぼ同じ又はさらに大きいガラス横断面積を有する管へと成形可能な方法を提供する。
【解決手段】20mm以上の壁厚を有する中空シリンダ2が、回転軸10を中心に回転しながら相対送り速度V
Cで連続的に加熱領域12に供給され、ここで領域毎に軟化された領域が、中空シリンダボア16内に印加されたガス圧の作用下で半径方向に引き伸ばされ、連続的に棒状管が形成される。引出し速度V
Tで引き出される、管22の製造方法において、ガス圧が、管外径又は管外径と相関のある形状パラメータについての、直径閉ループ制御及び/又は直径開ループ制御の調整量として使用され、ガス圧の圧力上昇段階において、より低い初期値から、より高い最終値まで漸次的に上昇し、またV
CとV
Tの比率について、次式が成り立つ:V
T=V
C±0.2V
C。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空シリンダボア(16)、外径Ca、内径Ci、及び少なくとも20mmである壁厚を有する中空シリンダ(2)の成形による、シリカガラスから成る管(22)の製造方法であって、前記中空シリンダの成形は、前記中空シリンダが、回転軸(10)を中心に回転しながら相対送り速度VCで連続的に加熱領域(12)に供給され、前記加熱領域(12)において領域毎に軟化され、軟化した領域が、前記中空シリンダボア(16)内に印加されたガス圧の作用下で半径方向に引き伸ばされ、軟化した領域から連続的に、管外径Ta、管内径Ti、及び管壁厚を有する棒状管(22)が形成され、且つ引出し速度VTで引き出されることによって行われる、方法において、前記ガス圧が、前記管外径又は前記管外径と相関のある形状パラメータについての、直径閉ループ制御(24)及び/又は直径開ループ制御の調整量として使用され、前記ガス圧の圧力上昇段階において、より低い初期値から、より高い最終値まで漸次的に上昇し、VCとVTの比率について、次式が成り立つ:
VT=VC±0.2VC
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記圧力上昇段階における前記ガス圧の前記漸次的な上昇は、前記直径閉ループ制御(24)又は直径開ループ制御に無関係に行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記直径閉ループ制御又は前記直径開ループ制御には、前記管外径及び/又は前記管内径についての直径目標値が割り当てられ、前記直径目標値には、目標ガス圧が対応付けられており、前記より低い初期値は、前記目標ガス圧の0~50%の範囲、とりわけ前記目標ガス圧の10~30%の範囲にあり、且つ前記より高い最終値は、前記目標ガス圧の70~110%の範囲、とりわけ前記目標ガス圧の90~100%の範囲であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記目標ガス圧は、2~20mbarの範囲、とりわけ3~15mbarの範囲、特に好適には4~10mbarの範囲に調整されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記圧力上昇段階は、1~120分の持続時間、とりわけ5~100分の持続時間、特に好適には10~80分の持続時間、特に15~60分の持続時間を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記圧力上昇段階における前記ガス圧は、少なくとも一時的に、時間的勾配Δpで上昇し、前記時間的勾配については次式が成り立つ:
0.01mbar/min<Δp<0.8mbar/min、
とりわけ:Δp<0.5mbar/min、
特にΔp<0.2mbar/min、
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ガス圧は、前記圧力上昇段階全体の間、平均的な時間的勾配Δpmで上昇し、前記平均的な時間的勾配Δpmについては次式が成り立つ:
0.01mbar/min<Δpm<0.5mbar/min、
とりわけ:Δpm<0.1mbar/min、
特にΔpm<0.06mbar/minであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記中空シリンダ(2)及び前記棒状管(22)について次式が成り立つ:
150mm <Ca < 300mm、
30mm <Ci < 180mm、
40mm <(Ca-Ci)/2) < 100mm、
300mm <Ta < 550mm、
250mm <Ti < 450mm、
20mm <(Ta-Ti)/2) < 60mm、
ことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記中空シリンダ(2)及び前記棒状管(22)について次式が成り立つ:
4・Ci <Ti < 8・Ci、
Ca+100mm <Ta <Ca+300mm、
ことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記管外径Taは、前記中空シリンダ外径Caの1.5~2.2倍の範囲であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
出発中空シリンダ(2)は、ガラス横断面積ACを有し、前記棒状管(22)は、ガラス横断面積ATを有し、次式が成り立つ:
AT=AC±0.15・AC、
とりわけ:0.90・AC≦AT≦1.15・AC、
特に:AC≦AT≦1.10・ACであることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ガラス横断面積AC及びATは、250~1000cm2の範囲にあることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
VCとVTの比率について次式が成り立つ:0.8・VC≦VT≦1.05・VC、特に:0.9・VC≦VT≦0.99・VC、ことを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも30kg/h、しかしながら60kg/h未満、とりわけ45kg/h未満である、溶融シリカガラスのスループットが生じるようにVCが調整されることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
管外径Ta、管内径Ti、及び管壁厚、外側被覆面及び内側被覆面を有する、シリカガラスから成る管であって、前記管は、火炎研磨された外側被覆面を有し、前記管外径Ta、前記管内径Ti及び前記管壁厚について次式が成り立つ:
300mm <Ta < 550mm、
250mm <Ti < 450mm、
20mm <(Ta-Ti)/2) < 60mm、
ことを特徴とする、シリカガラスから成る管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカガラスから成る管の製造方法に関する。特に本発明は、中空シリンダボア、外径Ca、内径Ci、及び少なくとも20mmである壁厚を有する中空シリンダの成形による、シリカガラスから成る管の製造方法に関し、中空シリンダの成形は、中空シリンダが、回転軸を中心に回転しながら相対送り速度VCで連続的に加熱領域に供給され、加熱領域において領域毎に軟化され、軟化した領域が、中空シリンダボア内に印加されたガス圧の作用下で半径方向に引き伸ばされ、軟化した領域から連続的に、管外径Ta、管内径Ti、及び管壁厚を有する棒状管が形成され、且つ引出し速度VTで引き出されることによって行われる。
【0002】
更に本発明は、管外径Ta、管内径Ti、管壁厚、外側被覆面、内側被覆面を有する、シリカガラスから成る管に関する。
【0003】
このような方法及び装置を用いて、ガラス、特にシリカガラスから成る中空シリンダが、1回以上の熱成形ステップにおいて管に成形され、この際に、半径方向の管寸法が、中空シリンダの半径方向の寸法に対して変更される。この際、長手方向軸を中心に回転する出発中空シリンダが領域毎に軟化され、半径方向外側に向けられた力の作用を受けて、管長手方向軸に対して半径方向に所定の距離を置いて配置されている成形型に向かって延伸されるか、又は成形型を用いずに成形される。半径方向外側に向けられた力は、遠心力及び/又は中空シリンダ内部ボア内の内部過圧(「ガス圧」とも称する)によるものである。
【0004】
管又は中空シリンダに関連する「内部ボア」又は「ボア」という用語は、内部ボア又はボアが穴あけ加工によって形成されていることを意味していない。
【0005】
出発中空シリンダの加熱に関して、炎による加熱領域と、電気加熱炉とを区別することができる。シリカガラスは良好な熱絶縁体であるので、表面の加熱が主に熱作用の侵入深さがわずかな再結合反応で行われる炎による加熱領域は、薄い壁厚、例えば10mm未満の壁厚を有する出発中空シリンダの成形に限定されている。これに対して、電気加熱炉では、赤外線ビームがガラス内に深く侵入することができるので、より多くの熱をより長い区間にわたり均一に投入することができる。
【0006】
基本的に、引き出された棒状管の高い寸法精度及び表面品質が達成される。高い表面品質には、成形型を用いない成形が役立つ。
【0007】
これとは反対に、寸法精度の維持は、通常は成形型の使用によって、達成することがより簡単になる。いずれの場合にも、外径、内径又は壁厚のような、棒状管の半径方向の寸法の連続的な検出及び連続的な閉ループ制御が不可欠である。そのような閉ループ制御の調整量として、ガス圧、中空シリンダと加熱領域との間の相対送り速度、及び加熱領域における温度が一般的に用いられる。
【背景技術】
【0008】
冒頭で述べたようなシリカガラス管の製造方法は、JP2010-111557Aから公知である。この場合、200mmの外径を有する、壁厚が厚いシリカガラス中空シリンダが、連続的に、長手方向軸を水平方向に向けて4cm/minの送り速度で回転しながら加熱炉に供給され、その加熱炉において領域毎に2100℃前後の温度に軟化される。加熱炉内には、管長手方向軸に対して半径方向の距離が調整可能な、成形型として利用される水冷式グラファイトプレートが配置されている。中空シリンダ内の過圧に起因して、軟化したシリカガラスが、グラファイトプレートに吹き付けられ、その際に棒状管に成形され、この棒状管が、加熱炉から12cm/minの引出し速度で引き出される。その際、棒状管がグラファイトプレートから離れ、それによって、プロセス条件に左右される直径の変化も発生する可能性がある。これと無関係に340mmの目標値への棒状管外径の閉ループ制御を達成するために、棒状管の左横及び右横に配置されており、棒状管の左側及び右側の周縁線の画像を生成する2つのカメラが設けられている。それらの画像から、画像処理によって連続的に、棒状管の外径が閉ループ制御の閉ループ制御量として求められる。閉ループ制御の調整量として、電動式のモールドブロック追従制御部によって調整可能である、水冷式グラファイトプレートの管長手方向軸に対して半径方向の距離が利用される。
【0009】
刊行物US2017/327403A1及びJP2007-001811Aには、例えばグラファイトプレートのような成形型を使用して、直径が大きいシリカガラス管を製造するための別の方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】JP2010-111557A
【特許文献2】US2017/327403A1
【特許文献3】JP2007-001811A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
中空シリンダがその長手方向軸を中心に回転することに起因して、中空シリンダに対して間隔を置いて配置されたグラファイトプレートが、円形の「擬似開口部」を画定し、成形プロセスにおいて、軟化したシリカガラスがその擬似開口部に押し込まれる。グラファイトプレートによって、引き出されたシリカガラス管の外面に欠陥、特に螺線状の縞が生じる。
【0012】
内部過圧であるガス圧に起因して、(炉への中空シリンダの供給方向に見た)グラファイトプレートの前方では、軟性のシリカガラスから成る周面隆起部が形成される可能性がある。棒状管の引出し速度が中空シリンダの送り速度よりも遥かに速いので、周面隆起部の体積は更新メカニズムの影響を受け、この更新メカニズムでは、新たなガラスが常に堆積されて、棒状管全体にわたって同じ分だけ引き出される。この速度比は、中空シリンダの「延伸」をもたらし、これに伴って成形された管のガラス横断面積は、出発中空シリンダのガラス横断面積よりも必ず小さくなる。
【0013】
公知の方法を用いて、同じ又はより大きいガラス横断面積を有するシリカガラス管を実現しようとする試行は、これまでいずれも失敗している。このために前述の速度比を逆転させることが必要であること、即ち中空シリンダの送り速度よりも遅い棒状管の引出し速度が必要であることがこの失敗の原因であると考えられ、これは一般的に「アップセット」とも呼ばれる。アップセットの際、軟化したガラス体積が引き出されるガラス体積よりも多量に、恒久的に「擬似開口部」の前方に堆積されるので、隆起部体積の上述の更新メカニズムがもはや機能しない。中空シリンダの成形時には、軟化したガラス体積が成形型に対してこのように「押す」ことによって、成形型を短時間開放する必要が生じるか、隆起部が不規則な時間間隔で内側へと押し付けられるか、又は成形型に接着したままになるか、いずれかの結果が生じる。1番目の場合には、内径及び外径の変動が生じ、2番目の場合には、内径の変動が生じ、3番目の場合には、成形プロセスの中断が生じる。いずれの場合にも、プロセスは不安定になる。
【0014】
加熱領域が短いことに起因して、炎による加熱領域では、出発中空シリンダのアップセットは、その小さい周面では可能であるが、上述のように、成形すべき出発中空シリンダが10mm以下の薄い壁厚を有する場合にのみ実現される。
【0015】
従って、大きさもあると同時に壁厚も厚く、また表面品質も良好なシリカガラス管が必要になる。
【0016】
従って、本発明の課題は、上記に対応したシリカガラスから成る管を提供することである。
【0017】
更に、本発明の課題は、20mm以上の壁厚を有し、シリカガラスから成り、且つ壁厚が厚い出発中空シリンダを、より大きい直径を有するが、ほぼ同じ又はそれよりも大きいガラス横断面積を有する管へと成形することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この課題は、本発明によれば、方法について冒頭で述べたような方法から出発して、ガス圧が、管外径についての、又は管外径と相関のある形状パラメータについての、直径閉ループ制御及び/又は直径開ループ制御の調整量として使用され、ガス圧の圧力上昇段階において、より低い初期値から、より高い最終値まで漸次的に上昇し、またVCとVTの比率について、次式が成り立つことによって解決される:VT=VC±0.2VC。
【0019】
出発中空シリンダ、又は略して中空シリンダは、シリカガラスから成る。シリカガラスは、天然由来の原料から溶融されたものであっても良く、合成されたSiO2から形成されたものであっても良い。シリカガラスは、アンドープでも良く、1種以上のドーパントを含んでも良い。中空シリンダの壁厚は厚い。つまり、その壁厚は、例えば、20mm超、40mm超、60mm超、又は80mm超である。
【0020】
成形プロセスでは、出発中空シリンダが、実質的に、その中空シリンダ長手方向軸がとりわけ水平方向に延在するように向けられている。成形方法の結果得られるのは棒状管であり、その棒状管から、所望の長さの1つ以上のシリカガラス管が切り出される。その限りにおいて、ここでは「管」と「棒状管」という用語は同義で使用される。シリカガラス管では、出発中空シリンダに比べてその外径及び内径が大きくなる。内径と外径とを明示的に区別する必要がない限り、以下では、いずれの寸法にも、「直径」又は「半径方向形状」と総称した用語を用いる。出発中空シリンダの「半径方向形状」を「出発形状」とも称し、棒状管の「半径方向形状」を「目標形状」とも称する。
【0021】
成形プロセスの目標は、出発中空シリンダのガラス横断面積とほぼ同じか、又はそれよりも大きいガラス横断面積を有するシリカガラス管である。ガラス横断面積とは、管長手方向軸に対して垂直な断面において、ガラスが占める面積を表す。
【0022】
目標形状、特に棒状管外径は、閉ループ制御又は開ループ制御の目標量である。閉ループ制御は、コンピュータ制御により、測定値に基づいて目標量を目指して行われ、開ループ制御もまた、少なくとも部分的に、読み出されたパラメータ値に基づいた手動の調整によって行うことができる。閉ループ制御と開ループ制御の組み合わせも存在し、例えば閉ループ制御においてパイロット開ループ制御を用いる組み合わせもある。明示的に除外しない限り、「閉ループ制御」又は「閉ループ制御する」という用語は、以下では、「開ループ制御」又は「開ループ制御する」及びそれらの措置の組み合わせに対する総称した用語も表す。
【0023】
本発明による成形プロセスは、少なくとも以下の3つの態様において従来の方式と異なる。
【0024】
(i)上記の理由から、成形型は使用しない。何故ならば、軟化したガラス体積を成形型の「擬似開口部」を介して「押す」ことでプロセスが不安定に成りかねず、そのような不安定なプロセスでは、軟化したガラス体積が成形型の前に堆積し続け、棒状管にうねりが生じるからである。ここで、アップセット率(引出し速度に対する送り速度の比)及び出発中空シリンダの横断面に基づく計算では特定することができない横断面積の変動が観察される。
【0025】
成形型を使用しないことによって利点が得られる:つまり、管の表面が平滑になり、且つ火炎研磨される。成形型の材料によるガラスの化学的汚染を発生させずにすむ。
【0026】
しかしながら、自由成形によって、所望の目標形状を確実且つ正確に作成できるようにするためには、棒状管直径に関する別の閉ループ制御が必要になる。従って、本発明による方法では、ガス圧が、棒状管外径、又はこの管外径と相関のある形状パラメータに関する直径閉ループ制御及び/又は直径開ループ制御の調整量として、直接的又は間接的に使用される。この意味において、例えば、調整量がガス圧ではなく、ガス圧と相関のあるパラメータ、例えば圧縮ガスの流量などである場合、間接的に使用される。この場合、引き出された棒状管の内径及び/若しくは外径が測定されるか、又は読み取られる。
【0027】
管外径と相関のある形状パラメータは、例えば、管の内径及び壁厚である。管外径を光学的に検出することができる。内径は、横断面積とアップセット率(引出し速度に対する送り速度の比)から得られる。その前提は、横断面積が変化しない安定したプロセスである。
【0028】
中空シリンダの成形は、ガス圧、回転(スピン)時の遠心力、又はそれら両方の作用に基づく。管壁における接線方向の応力σTにおけるガス圧の割合は、いわゆるバーロウの式によって表される:
σT=圧力*半径/壁厚 (1)、
但し: 圧力=ガス圧
半径=変形領域における管半径
壁厚=変形領域における壁厚
【0029】
「変形領域」においては、壁厚、直径及び温度(粘度)が連続的に変化する。例えば、軟化したガラスストランドの直径は、特に壁厚及び粘度によって決定されるガラスの変形抵抗に応じて、中空シリンダから管に向かって連続的に増大する。縦断面では、変形領域が全体として、中空シリンダと管との間に、目立つ場合も目立たない場合もあるがS字型移行部を有する漏斗形状を示し、この移行部を以下では「肩部」とも称する。実際には、変形領域は、通常の場合、数100mm、例えば200~800mm、多くは約500mmの長さを有する。
【0030】
ここでもまた、接線方向の応力によって、以下の微分方程式に従い、変形領域における管半径(r)の調整が行われる:
d半径/dt=応力*半径/粘度 (2)
但し: d半径/dt=ひずみ速度
応力=接線方向の応力
半径=変形領域における管半径
粘度=局所的な粘度についての壁厚全体での平均値
【0031】
(ii)所定のいずれのパラメータセット(出発中空シリンダ及び棒状管の半径方向形状、送り出し速度及び引出し速度、ガス圧、並びに変形領域における温度分布のようなプロセスパラメータ)についても、微分方程式(2)の解として得られる、安定した定常的な肩部形状が1つだけ存在する。この計算の基礎となる、ガス圧についての値さえ得られていれば、理想的には出発形状から始まって、またプロセスパラメータに応じて目標形状がもたらされる。
【0032】
ガス圧についてのこの値は、(ガス圧が閉ループ制御/開ループ制御の調整量として少なくとも補助的に使用される限り)公称初期値として、棒状管の半径方向形状の閉ループ制御又は開ループ制御の基礎とすることができる。しかしながら、いずれの圧力変化も、変形領域の1箇所だけに作用するのではなく、変形領域のあらゆる箇所に作用し、しかも現状での局所的な状況に応じて異なる強さで作用することが明らかになった(これは、上記式(2)からも明らかになった)。従って、いかなる圧力変化も目標形状の変動をもたらすが、その変動はかなり後の時点になって初めて、即ち極めて長いデッドタイムの後に漸く目に見えるものとなり、これはもはや補正することができない。この場合、閉ループ制御は、容易に不安定で変動する状態になり、この状態から、波状の構造を含む棒状管がもたらされる。
【0033】
長いデッドタイムは、製法上殆ど短縮することはできない。従って、例えば成形プロセスの開始時にガス圧を公称初期値に調整するために行われる可能性があるような急激な圧力変化を伴わないようにすることが提案される。その代わりに、ガス圧を、圧力調整段階の間に、より低い初期値からより高い最終値まで漸次的に上昇させることが提案される。この場合漸次的とは、ガス圧が、(可能な限り小刻みに又は理想的には連続的に)常に上昇することを意味する。初期値は、ゼロであるか、又はガス圧最終値よりも遥かに低い圧力値であり、最終値は、目標形状の閉ループ制御/開ループ制御のための調整値の範囲にある圧力値である。圧力上昇段階の間に、成形プロセスは既に行われている。つまり、棒状管が所定の半径方向形状に未だ達していなくても、出発中空シリンダのシリカガラス材料が、連続的に、棒状管のシリカガラス材料に成形される。
【0034】
不安定で変動する状態にならないようにするために、出発形状及び目標形状のペア毎に、最大限可能な傾斜が存在する。この傾斜は微分方程式(2)を用いて計算することができる。この最大限可能な傾斜は理想値である。それよりも高い圧力上昇傾斜では、引き出し後の外径の不変性に関して劣化が生じる可能性がある、且つ/又はより大きい材料損失が生じる可能性がある。他方では、理想値よりも低い圧力上昇傾斜ならば、外径の不変性は影響を受けない。むしろ逆が成り立ち、これに関する下限を確定することはできなかった。もっとも、圧力上昇傾斜がより低ければ、所定のガス圧最終値が得られるまで、ひいては直径目標値が得られるまで長い期間がかかる結果となり、これに付随して、時間及び材料の損失が生じる。何故ならば、そこに至るまでに、管の所定の半径方向形状が得られておらず、またこの時点までに生じた管材料が、材料損失しか表さないからである。従って、圧力上昇傾斜を可能な限り大きい値に調整するという経済的な動機がある。確かに、時間損失を低減することはできないが、品質が比較的低いダミー材料から成る前端部を有する出発中空シリンダが使用されることによって、材料損失を低減することはできる。
【0035】
(iii)成形プロセスの目標の1つは、出発中空シリンダよりも大きい直径を有するが、ほぼ同じ又はそれよりも大きいガラス横断面積を有する管である。このために、棒状管の引出し速度VTと、出発中空シリンダの送り速度VCと、の比を、次式が成り立つように調整する必要がある:VT=VC±0.2VC
【0036】
従って、本発明の成形プロセスでは、引出し速度VTが、送り速度VCの範囲にあるか、又は送り速度VCよりも低くなることもある。これとは異なり、出発シリンダを棒状管に延伸する際に、加熱領域への送り速度は、加熱領域からの棒状管の引出し速度よりも遥かに低い。これによって、延伸時に、線引きプロセスについてある程度固有安定性が得られ、この固有安定性によって、棒状管の半径方向形状の調整及び閉ループ制御が容易になる。もっとも、延伸時には、出発シリンダのガラス横断面積及び棒状管のガラス横断面積は、通常は大きく異なる。延伸プロセスに与えられた固有安定性は、本発明の成形プロセスでは生じ得ない。本発明による方法は、上述の措置(i)及び(ii)に基づき、この欠点を補うことができる。
【0037】
このようにして、壁圧の厚いシリカガラス中空シリンダから、自由成形によって、20mm以上の壁厚及び出発中空シリンダのガラス横断面積以上のガラス横断面積を有する管を初めて形成することができる。
【0038】
通常、棒状管の目標形状まで閉ループ制御する場合には、低いガス圧初期値から出発して、可能な限り迅速なガス圧最終値の調整が行われることになる。もっとも、前述の理由から、これによってプロセスが不安定になり、また変動する状態をもたらす可能性がある。従って、圧力上昇段階におけるガス圧の漸次的な上昇は、好適には、直径閉ループ制御又は直径開ループ制御と無関係に行われる。
【0039】
最も簡単な場合には、目標ガス圧に到達するまで、ガス圧を手動で小さいステップで上昇させる。これに代えて、目標ガス圧に到達するまで、ガス圧を線形に、又は非線形関数に基づいて開ループ制御で上昇させる。但し有利には、通常の直径閉ループ制御と無関係に、圧力上昇段階におけるガス圧の漸次的な上昇は、同様に閉ループ制御によって行われる。
【0040】
通常の直径閉ループ制御又は直径開ループ制御には、管外径及び/又は管内径についての直径目標値が割り当てられ、この場合、直径目標値には、目標ガス圧が割り当てられている。より低い初期値が、目標ガス圧の0~50%の範囲、とりわけ目標ガス圧の10~30%の範囲にあり、且つより高い最終値が、目標ガス圧の70~110%の範囲、とりわけ目標ガス圧の90~100%の範囲である場合には有利である。
【0041】
圧力上昇段階は、実際の成形プロセスの前に置かれる。圧力上昇段階の開始時に、中空シリンダは軟化温度に到達しており、加熱領域の温度、送り速度及び引出し速度のようなプロセスパラメータは、本来の成形プロセスにおいて期待される程度に調整されている。圧力上昇段階中に、中空シリンダ内部ボア内(ひいては、棒状管内部ボア内)のガス圧は、より低い初期圧力値から始まって、最終値まで緩慢に上昇する。目標ガス圧に到達したときに初めて、目標形状を有する棒状管が形成される。そこに至るまでに成形された棒状管材料は損失となる。出発中空シリンダの最初の部分が低品質のシリカガラスから成る場合には、材料損失を低減することができる。これとは無関係に、一方では、材料損失を小さく維持するために、他方では、平坦な圧力上昇傾斜によって成形プロセスの安定した状態を達成するために、圧力上昇段階を可能な限り短く、必要なだけの長さに限定するべきである。圧力上昇傾斜が平坦であっても、圧力上昇段階を可能な限り短く維持するために、0を上回るガス圧の何らかの初期値を、目標ガス圧の約50%まで、とりわけ目標ガス圧の最大30%までとすることが有利である。
【0042】
目標ガス圧は、例えば、2~20mbarの範囲、とりわけ3~15mbarの範囲、特に好適には4~10mbarの範囲である。20mbar超の特に高いガス圧は、プロセスの安定性を損ねる可能性がある。
【0043】
他方では、圧力上昇段階において、正確に目標ガス圧まで圧力を上昇させる必要は必ずしもない。何故ならば、目標ガス圧の少なくとも70%、とりわけ少なくとも90%に到達している場合、又は圧力が既に目標ガス圧よりも僅かに高い場合には、通常の直径閉ループ制御又は直径開ループ制御が、圧力調整を引き受けることができるからである。
【0044】
一方では、圧力上昇段階を可能な限り短くし、ひいては材料損失を可能な限り少なくすることと、他方では、圧力上昇傾斜を可能な限り平坦にし、ひいては直径変動を少なくして目標形状を正確に調整することと、を比較検討して選択する必要がある。圧力上昇段階が1~120分の持続時間、とりわけ5~100分の持続時間、特に好適には10~80分の持続時間、特に15~60分の持続時間を有する場合には、特に適切な妥協点であることが分かった。
【0045】
これらの検討から、圧力上昇段階における圧力上昇の時間的経過も分かる。圧力上昇を、例えば一定の傾きで(線形に)行うことができるか、又は圧力上昇が、最後に傾きが減少又は増大する非線形の変化を有することもできる。圧力上昇段階におけるガス圧が少なくとも一時的に、時間的勾配Δpで上昇する場合には、好適であることが分かった。この時間的勾配については次式が成り立つ:
0.01mbar/min<Δp<0.8mbar/min、
とりわけ:Δp<0.5mbar/min、
特にΔp<0.2mbar/min。
【0046】
圧力上昇段階における圧力上昇の時間的経過とは無関係に、圧力上昇傾斜には、圧力上昇段階全体にわたる平均値も割り当てることができる。この際、ガス圧は、圧力上昇段階全体を通じて、好適には、平均的な時間的勾配Δpmで上昇し、この平均的な時間的勾配Δpmについては次式が成り立つ:
0.01mbar/min<Δpm<0.5mbar/min、
とりわけ:Δpm<0.1mbar/min、
特にΔpm<0.06mbar/min。
【0047】
成形方法は、大容量で壁厚の厚いシリカガラス管の工業生産に特に適している。この関連で、中空シリンダ(シリンダ;C)及び棒状管(管;T)は、とりわけ以下の半径方向形状を有する。
150mm <Ca < 300mm、
30mm <Ci < 180mm、
40mm <(Ca-Ci)/2) < 100mm、
300mm <Ta < 500mm、
250mm <Ti < 450mm、
20mm <(Ta-Ti)/2) < 60mm。
【0048】
成形プロセスによって、出発中空シリンダの場合よりも大きい外径及び大きい内径を有するシリカガラス管が生じる。この場合、中空シリンダ及び棒状管について、とりわけ以下の相互関係が生じる:
4・Ci <Ti <8・Ci、
Ca+100mm <Ta <Ca+300mm。
【0049】
特に好適には、管外径Taは、中空シリンダ外径Caの1.5~2.2倍の範囲である。
【0050】
更に、成形プロセスは、大きい直径を有し、且つ出発中空シリンダとほぼ同じ又はそれよりも大きいガラス横断面積を有するシリカガラス管の製造に特に適している。この際、有利には、出発中空シリンダのガラス横断面積ACと、棒状管のガラス横断面積ATとの間に、以下の関係が存在する:
AT=AC±0.15・AC、
とりわけ:0.90・AC≦AT≦1.15・AC、
特に:AC≦AT≦1.10・AC。
【0051】
この際、ガラス横断面積AC及びATは、とりわけ250~1000cm2の範囲である。
【0052】
出発シリンダを棒状管に延伸する際に、加熱領域への送り速度は、加熱領域からの棒状管の引出し速度よりも遥かに低い。これによって、延伸時に、線引きプロセスについてある程度固有安定性が得られ、この固有安定性によって、棒状管の半径方向形状の調整及び閉ループ制御が容易になる。もっとも、出発シリンダのガラス横断面積及び棒状管のガラス横断面積は大きく異なる。これとは異なり、本発明の成形プロセスでは、棒状管の引出し速度が、送り速度の範囲にあるか、又は送り速度よりも低くなることもある。これによって、延伸プロセスにおいて与えられた固有安定性は生じ得ない。本発明による方法はこの欠点を回避し、VCとVTとの比については、とりわけ次式が成り立つ:
0.8・VC≦VT≦1.05・VC、
特に:0.9・VC≦VT≦0.99・VC
【0053】
棒状管の壁厚は、速度VCとVTとの比によって決定される。この速度比が1未満である場合、棒状管は延伸されず、堆積が生じる。
【0054】
溶融ガラスのスループットが比較的低い場合、プロセス不安定性をより容易に回避できることが分かった。これに関しては、溶融シリカガラスのスループットが少なくとも30kg/hで60kg/h未満、とりわけ45kg/h未満になるようにVCが調整される場合に実証された。
【0055】
シリカガラスから成る管との関連で、上記の課題は、本発明に従って、管が火炎研磨された外側被覆面を有し、管外径Ta、管内径Ti及び管壁厚について次式が成り立つことによって解決される:
300mm <Ta < 550mm、
250mm <Ti < 450mm、
20mm <(Ta-Ti)/2) < 60mm。
【0056】
シリカガラス管は、大きい外径を有するが、それでも、その壁厚が20mmよりも大きいという意味で壁厚が厚い。シリカガラス管は、成形型の作用なしで、即ち、火炎研磨されて、メルトフローでの成形プロセスの結果として生じた外側被覆面を有し、この外側被覆面は平滑で縞がない。シリカガラス管は、本発明による方法に従って製造可能であり、とりわけこの方法に基づいて製造される。とりわけ、管は合成シリカガラスから成る。
【0057】
有利には、管外径Ta、管内径Ti及び管壁厚(Ta-Ti)/2)について、次式が成り立つ:
330mm <Ta < 500mm、
275mm <Ti < 400mm、
25mm <(Ta-Ti)/2) < 50mm。
【0058】
実施例
以下に、実施例に基づき、図を用いて本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】シリカガラスから成る中空シリンダをシリカガラス管に成形するための装置を側面から見た概略図で示す。
【
図2】第1の比較例による成形プロセスの圧力調整段階中に加熱炉から出る際のシリカガラス管の一部の写真を示す。
【
図3】
図2の成形されたシリカガラス管の一部の外径及び壁厚のプロファイルを表すグラフを示す。
【
図4】第1の比較例において、成形プロセスの開始段階中及びその後のガス圧の時間的経過を表すグラフを示す。
【
図5】第2の比較例による成形プロセス中に加熱炉から出る際のシリカガラス管の一部の写真を示す。
【
図6】本発明の第1の実施例による成形プロセス中に加熱炉から出る際のシリカガラス管の一部の写真を示す。
【
図7】
図6の成形されたシリカガラス管の一部の外径及び壁厚のプロファイルを表すグラフを示す。
【
図8】第1の比較例において、成形プロセスの開始段階中及びその後のガス圧の時間的経過を表すグラフを示す。
【
図9】参照例における外径及び壁厚のプロファイルを表すグラフを示す。
【
図10】参照例において、成形プロセス中のガス圧の時間的経過を表すグラフを示す。
【0060】
図1は、シリカガラス中空シリンダ2を管22に成形するための装置を概略的に示す。中空シリンダ2は、アンドープの合成シリカガラスから成る。中空シリンダ2は、いわゆるOVD法(Outside Vapor Deposition)に従い、スート堆積プロセスにおいて製造される。このプロセスでは、液体又は気体の出発物質が、化学反応(加水分解又は熱分解)を受けて、気相から固体のSiO
2として、回転するマンドレルに堆積される。出発物質は、例えば、四塩化ケイ素(SiCl
4)又は塩素を含まないケイ素化合物である。中間製品として、中空シリンダの形状である多孔性のSiO
2スート体が得られ、その内部ボアは、後に取り外されるマンドレルによって成形されている。スート体をガラス化することによって、合成シリカガラス製の中空シリンダ2が得られる。
【0061】
成形すべき、シリカガラスから成る中空シリンダ2の端面には、保持管4、5が溶接され、それらの保持管は、水平方向のガラス旋盤8のチャック6に緊締され、回転軸10を中心に同期して回転する。送り方向32の前方に位置する保持管4は、栓34によって閉鎖される。他方の保持管5には、圧縮ガスを導入することができる。
【0062】
中空シリンダ2は、ガラス旋盤8によって、継続的に、且つその回転軸及び長手方向軸10を中心に回転しながら、所定の供給速度で、抵抗炉12内に押され、この抵抗炉12は、中空シリンダ2を環状に包囲し、その内部において、領域毎に2100℃前後の温度に加熱される。抵抗炉は、閉ループ制御可能な電流源26を介して、コンピュータ24に接続されている。
【0063】
ガス入口14を介して、中空シリンダ2及び管22の内部ボア16に圧縮ガスを導入し、規定のガス圧を調整することができる。ガス入口14は、閉ループ制御可能な弁18に接続されており、この制御可能な弁18は、圧縮ガス容器20、及びコンピュータ24に接続されている。
【0064】
遠心力及びガス圧によって駆動されて、シリカガラス中空シリンダ2の低粘性の塊が、シリカガラス管22の目標直径まで膨張する。生じた外径の測定のため、また外径閉ループ制御のために、棒状管22に向けられた高解像度CCDカメラ30を含む測定及び閉ループ制御装置が設けられている。カメラ30によって検出された測定データは、画像データ処理プログラムがインストールされたコンピュータ24に継続的に伝送され、この画像データ処理プログラムによって、棒状管22の現状での外径が求められる。これは、閉ループ制御量の実際値(棒状管外径)として、ガス圧を調整量とする閉ループ制御部へと供給される。ガス管路は二重線によって、電流線は実線によって、またデータ線は破線によって、概略的に表示されている。
【0065】
以下では、
図1に基づき、成形プロセスの例を説明する。
【0066】
【0067】
この比較例では、出発中空シリンダ2が、その長手方向軸10を中心に回転しながら加熱炉12内に投入され、また出発中空シリンダ2の長手方向部分が加熱炉12において均等に加熱された。その後、ガス圧が、所定の棒状管外径を達成するために式(2)に基づいて算出された値(目標ガス圧)に調整された。この場合、目標ガス圧は5.3mbarである。それと同時に、送り速度が7.5mm/minにされ、棒状管自由端が、7.4mm/minの所定の引出し速度で引き出された。
【0068】
これによって、数時間が経過すると、棒状管外径が急激に大きくなるので、ガラスが抵抗炉12の加熱管と接触することを回避するために、ガス圧を1mbarまで下げる必要があった。またこれによって、数時間が経過すると、棒状管外径が急速に縮小するので、圧力が再び4mbarまで上昇する必要があった。しかしながら、安定した状態は生じず、成形プロセスが終了するまでに、目標形状に到達することはできなかった。
【0069】
図2は、加熱炉12から出てきた棒状管22の写真を示す。外径が不均一であることが直ぐに見て取れる。
【0070】
図3のグラフは、外径及び壁厚の相応の変化を示す。y軸には、直径T
a及び壁厚dがミリメートル単位でプロットされており、x軸には、引き出された棒状管の長さLがメートル単位でプロットされている。曲線Aは、外径の変化を表し、曲線Bは、壁厚の変化(直径の変動が大きかったため、連続して測定することはできなかった)を表す。
【0071】
図4のグラフは、上述のガス圧の時間的経過を示す。y軸には、圧力pがmbar単位でプロットされており、x軸には、時間tが分単位でプロットされている。
【0072】
【0073】
この比較例では、加熱炉12内に、引き出される棒状管22の外径を規定する成形型が組み込まれた。出発中空シリンダ2は、その長手方向軸10を中心に回転しながら加熱炉12内に投入され、また出発中空シリンダ2の長手方向部分が加熱炉12において均等に加熱された。送り速度が7.5mm/minにされ、棒状管自由端が、7.4mm/minの所定の引出し速度で引き出された。ガス圧は、先ず、4mbarに固定された。363mmの外径に調整された成形型に押し付けて成形しようと試行された。しかしながら、成形型との最初の接触で、シリカガラスが捻じれ始めた。続いて、圧力は、2mbarに低下された後、1mbar/h(約0.017mbar/min)の平坦な傾斜で再び上昇した。成形プロセスを安定させようと何度も試行したが、所定の目標寸法には到達せず、成形型は、溶融シリカガラスを取り出すために、最終的に開放しなければならなかった。
【0074】
図5の写真は、試行の時点まで引き出された棒状管のねじれ及び外径の不均一を示す。
【0075】
【0076】
実施例1では、出発中空シリンダ2が、その長手方向軸10を中心に回転しながら加熱炉12に投入され、初期ガス圧が1mbarに調整され、また加熱中は一定に維持された。出発中空シリンダ2の長手方向部分が加熱炉12において均等に加熱された後に、送り速度が7.5mm/minにされ、棒状管の自由端が、7.4mm/minの所定の引出し速度で引き出された。それと同時に、ガス圧の初期値が、0.06mbar/minの閉ループ制御された傾斜で、ガス圧が5.3mbarの最終値に到達するまで上昇した。それと同時に、この最終値は、式(2)に基づいて算出された目標ガス圧に正確に対応する。このようにして圧力上昇段階が終了し、棒状管22は、363mmの所望の外径を取り、且つ、この時点まで(圧力上昇段階において)、コンピュータ24による本来の直径閉ループ制御は実行されなかった。続いて、所望の範囲の形状を保持するために、外径に関する閉ループ制御が開始された。この際、ガス圧は、調整量として閉ループ制御に利用された。中空シリンダ内部ボアの最初の比較的小さい体積に空気を吹込んで、管内部ボアのより大きい体積にすることによって、管外径目標Taをもたらすガス圧を維持するためには、継続的なガス供給が必要になる。
【0077】
図6は、加熱炉から出てきた棒状管22の写真を示す。この棒状管22は、実質的に一定の外径と、上述の成形プロセスの結果生じた、火炎研磨されているので破損のない表面を備えた平滑な壁部と、を有する。
【0078】
図7のグラフは、外径と壁厚の相応の変化を示す。y軸には、直径T
a及び壁厚dがミリメートル単位でプロットされており、x軸には、引き出された棒状管の長さLがメートル単位でプロットされている。曲線Aは、外径の変化を表し、曲線Bは、壁厚の変化を表す。
【0079】
図8のグラフは、上述のガス圧の時間的経過を示す。y軸には、分単位の時間tに対する、圧力pがmbar単位でプロットされている。圧力上昇段階は、最初は一定である1mbarの圧力初期値を有する期間aと、それに続く、5.3mbarまでガス圧が緩慢に上昇する期間bと、によって規定されている。圧力上昇段階中は、直径閉ループ制御は行われない。
【0080】
引き出された棒状管22からは、363mm前後の大きい平均外径、290mmの大きい平均内径、またそれと同時に36.5mm前後の大きい平均壁厚を有する、合成シリカガラスから成り、且つ壁厚が厚い管が切り出される。それらの管は、メルトフローでの成形プロセスの結果として生じた、平滑でほぼ欠陥のない外側被覆面及び内側被覆面を特徴とする。
【0081】
【0082】
参照例は、従来技術に対応する。ここで出発シリンダとして使用される中空シリンダは、天然由来のシリカ原料をベルヌイユ法で溶解したアンドープのシリカガラスから成る。ここで、酸水素炎を使用して結晶性のシリカ粉末を溶融させることによって、大きくて細長いブロックが形成される。ダイヤモンド研磨粒子が装着されたコアドリルマシンを用いて、中心ボアが形成され、最終的に内側壁及び外側壁が機械的に平滑化される。
【0083】
この成形プロセスでは、成形型が使用され、棒状管が、その長手方向軸を中心に回転しながら加熱領域から、また軟化した溶融シリカガラスから引き出される(アップセットはされない)。出発中空シリンダ2の長手方向部分が加熱炉12において均等に加熱された後に、送り速度が12mm/minにされ、棒状管自由端が、66mm/minの所定の引出し速度で引き出された。それと同時に、ガス圧が、1mbar/minの傾斜で極めて高速に上昇し、ここでは、手動での閉ループ制御が行われた。ガラスは、そのガス圧で、343mmの外径に調整されているモールドブロックに吹き付けられる。
【0084】
図9のグラフは、(
図7と同様に)外径と壁厚の時間的経過を示す。
図10から見て取れるように、成形型の使用の結果、外径はかなり一定であり、しかもガス圧が変動するにも関わらず非常に一定であることが分かった。ガス圧の変動は、この成形プロセスでは、外径及び壁厚に明確な影響を及ぼさない。この変動は、目標外径に到達した後に、外径を所望の範囲に維持するために、ガス圧が手動でかなり大まかにしか閉ループ制御されないことが原因であると考えられる。
【外国語明細書】