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特開2022-153333ポリウレタン水性分散液におけるポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153333
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ポリウレタン水性分散液におけるポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体の使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20221004BHJP
   C08G 73/02 20060101ALI20221004BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20221004BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20221004BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20221004BHJP
【FI】
C08L101/00
C08G73/02
C08F8/00
C09D175/04
C09D7/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051323
(22)【出願日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】21165440
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル クロスターマン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン マリアン フォン ホーフ
(72)【発明者】
【氏名】カイ-オリヴァー フェルトマン
(72)【発明者】
【氏名】マーフィン ヤンゼン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
4J043
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AA00W
4J002AC02W
4J002BC02W
4J002BG05W
4J002CK021
4J002CM01X
4J002FD312
4J002GB00
4J002GC00
4J002GH00
4J002GJ00
4J002GL00
4J002GN00
4J002GT00
4J002HA06
4J038CB002
4J038CE012
4J038DG011
4J038DG121
4J038GA09
4J038MA10
4J038NA01
4J038NA09
4J038PB02
4J038PB04
4J038PB05
4J038PB07
4J038PB09
4J038PC02
4J038PC06
4J038PC07
4J038PC08
4J038PC10
4J043PB08
4J043PC096
4J043QA04
4J043RA08
4J043SA05
4J043SB01
4J043XA02
4J043XB27
4J043YB08
4J043YB24
4J043ZB06
4J100AD02Q
4J100AD03Q
4J100AN02P
4J100AN03P
4J100BA10H
4J100BA34H
4J100CA01
4J100CA31
4J100HA61
4J100HC27
4J100JA00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ポリウレタン水性分散液系の効率的な発泡を可能にするポリウレタン水性分散液ベースの発泡系、および発泡コーティングを製造するための添加剤を提供する。
【解決手段】多孔質ポリマーコーティングを製造するための、好ましくは多孔質ポリウレタンコーティングを製造するためのポリマー水性分散液における添加剤としてのポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体の使用が記載される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー水性分散液、好ましくはポリウレタン水性分散液における添加剤、好ましくは発泡添加剤としての、ポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体の使用。
【請求項2】
前記ポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体は、ポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンを、例えば好ましくはカルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸ハロゲン化物またはカルボン酸無水物などの少なくとも1つのアシル基供与体と反応させることによって得られ、その際、カルボン酸が特に好ましい、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記カルボン酸は、一般式R-C(O)OHに相当し、ここで、Rは、3~39個の炭素原子、好ましくは7~21個、特に好ましくは9~17個の炭素原子を有する一価の脂肪族の飽和もしくは不飽和炭化水素基であり、好ましいカルボン酸は、酪酸(ブタン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸(ノナン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、アラキジン酸(エイコサン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)、リグノセリン酸(テトラコサン酸)、パルミトレイン酸((Z)-9-ヘキサデセン酸)、オレイン酸((Z)-9-オクタデセン酸)、エライジン酸((E)-9-オクタデセン酸)、cis-バクセン酸((Z)-11-オクタデセン酸)、リノール酸((9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエン酸)、α-リノレン酸((9Z,12Z,15Z)-9,12,15-オクタデカトリエン酸)、γ-リノレン酸((6Z,9Z,12Z)-6,9,12-オクタデカトリエン酸)、ジホモ-γ-リノレン酸((8Z,11Z,14Z)-8,11,14-エイコサトリエン酸)、アラキドン酸((5Z,8Z,11Z,14Z)-5,8,11,14-エイコサテトラエン酸)、エルカ酸((Z)-13-ドコセン酸)、ネルボン酸((Z)-15-テトラコセン酸)、リシノール酸、ヒドロキシステアリン酸および/もしくはウンデシレン酸、ならびにこれらの混合物、例えば、菜種油酸、大豆脂肪酸、ヒマワリ脂肪酸、落花生脂肪酸および/もしくはトール油脂肪酸から選択され、その際、パルミチン酸およびステアリン酸ならびにこれら2つの物質の混合物が非常に特に好ましく、かつ/または多官能性ジおよび/もしくはトリカルボン酸が使用され、好ましくは2~18個の炭素原子の鎖長を有する脂肪族の直鎖もしくは分岐状のジおよび/もしくはトリカルボン酸、および/もしくは12~22個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸の接触的二量体化により得られた二量体脂肪酸が使用され、かつ/または前記一般式R-C(O)OHのカルボン酸と多官能性ジおよび/もしくはトリカルボン酸との混合物が使用される、請求項2記載の使用。
【請求項4】
前記ポリアミンは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘプタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘプタミン、スペルミン、スペルミジン、および前記化合物のN-アルキル化、N-メチル化誘導体、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミンおよび/またはアミノ基含有(コ)ポリマー、特にアリルアミンおよび/またはビニルアミンをベースとする(コ)ポリマー、ならびに前記物質の混合物から選択され、その際、ポリエチレンイミンが特に好ましい、請求項2または3記載の使用。
【請求項5】
前記ポリアルカノールアミンは、ポリジエタノールアミン、ポリジプロパノールアミン、ポリジイソプロパノールアミン、ポリトリエタノールアミン、ポリトリプロパノールアミン、ポリトリイソプロパノールアミン、ポリエーテルアミン、特に、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドコポリマーおよび/またはOH-およびアミノ基含有(コ)ポリマーをベースとするもの、特にアリルアルコール、ビニルアルコール、アリルアミンおよび/またはビニルアミンをベースとするコポリマー、ならびに前記物質の混合物から選択され、その際、特にポリトリイソプロパノールアミンが特に好ましい、請求項2から4までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
前記ポリアミンベースのカルボン酸誘導体は、少なくとも1つのポリエチレンイミンと少なくとも1つのカルボン酸との反応生成物であり、前記ポリエチレンイミンは、25,000g/mol未満、より好ましくは12,500g/mol未満、さらにより好ましくは5000g/mol未満、さらにより好ましくは2000g/mol未満の平均分子量を有し、その際、前記平均分子量は、好ましくはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定可能である、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
前記ポリアルカノールアミンは、N-(ヒドロキシアルキル)アミンの縮合によって得られ、その際、特に、一般式1
【化1】
[式中、基R~Rは、互いに独立して、2~4個の炭素原子を有する同一のまたは異なる1,2-アルキレン基を表す]のトリアルカノールアミンが好ましく、N-(ヒドロキシアルキル)アミン、特に前記一般式1のトリアルカノールアミンと、他のヒドロキシル基含有分子、例えばペンタエリスリトール、ソルビトール、グリコール、グリセロールまたはポリグリセロールとの共縮合物も好ましい、請求項2から6までのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
前記ポリアミンベースのカルボン酸誘導体は、アミノ基含有(コ)ポリマーと少なくとも1つのカルボン酸との反応生成物であり、その際、前記アミノ基含有(コ)ポリマーは、一般式2
【化2】
の少なくとも1つの繰返し単位Aおよび/または一般式3
【化3】
の少なくとも1つの繰返し単位Bを有し、ここで、基Rは、1~10個、好ましくは1~10個、特に好ましくは1~5個の炭素原子を有する同一のもしくは異なる一価の脂肪族もしくは芳香族の飽和もしくは不飽和炭化水素基、またはHであり、特に好ましくはHである、請求項1から7までのいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
前記ポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体は、アミノ-およびOH基含有(コ)ポリマーと少なくとも1つのカルボン酸との反応生成物であり、その際、前記アミノ-およびOH基含有(コ)ポリマーは、少なくとも1つの前記繰返し単位A(式2による)および/またはB(式3による)に加えてさらに、式4
【化4】
の少なくとも1つの繰返し単位Cおよび/または一般式5
【化5】
の少なくとも1つの繰返し単位Dも有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の使用。
【請求項10】
前記ポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体の製造時に、ポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンとカルボン酸とを、カルボン酸と反応するアミノ-およびOH官能基とカルボン酸とのモル比が5:1~1.5:1の範囲、より好ましくは4:1~1.7:1の範囲、さらにより好ましくは3.5:1~1.9:1の範囲、さらにより好ましくは3:1~2:1の範囲となるように反応させる、請求項1から9までのいずれか1項記載の使用。
【請求項11】
前記ポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体を、少なくとも1つのさらなる補助界面活性剤と組み合わせて、ポリマー水性分散液、好ましくはポリウレタン水性分散液における添加剤として使用し、前記補助界面活性剤は、好ましくは、脂肪アルコール、脂肪酸アミド、エチレンオキシド-プロピレンオキシドブロックコポリマー、ベタイン、例えば、アミドプロピルベタイン、アミンオキシド、第四級アンモニウム界面活性剤、アンフォアセテートアンモニウムおよび/または脂肪酸のアルカリ金属塩、アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルホスフェート、アルキルスルホスクシネート、アルキルスルホスクシナメート、アルキルサルコシネート、および/またはシリコーン系補助界面活性剤、ならびに前記物質の混合物であり、その際、好ましくは12~40個、より好ましくは14~30個、さらにより好ましくは16~24個の炭素原子を有する遊離脂肪アルコール、および12~40個、より好ましくは14~30個、さらにより好ましくは16~24個のアルキルスルフェート、ならびに前記物質の混合物が非常に特に好ましい、請求項1から10までのいずれか1項記載の使用。
【請求項12】
前記ポリマー水性分散液は、ポリスチレン水性分散液、ポリブタジエン水性分散液、ポリ(メタ)アクリレート水性分散液、ポリビニルエステル水性分散液およびポリウレタン水性分散液、特にポリウレタン水性分散液の群から選択され、その際、前記分散液の固形分は、前記分散液全体に対して好ましくは20~70重量%の範囲であり、より好ましくは25~65重量%の範囲である、請求項1から11までのいずれか1項記載の使用。
【請求項13】
前記ポリマー水性分散液の全重量に対するポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体の濃度は、0.1~20重量%の範囲であり、特に好ましくは0.2~15重量%の範囲であり、殊に好ましくは0.5~10重量%の範囲である、請求項1から12までのいずれか1項記載の使用。
【請求項14】
ポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体を含む、好ましくは請求項1から13までのいずれか1項記載のポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体を含む、ポリマー水性分散液、好ましくはポリウレタン水性分散液であって、前記分散液の固形分は、前記分散液全体に対して好ましくは20~70重量%の範囲であり、より好ましくは25~65重量%の範囲であり、前記ポリマー水性分散液の全重量に対するポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体の濃度は、0.2~20重量%の範囲であり、特に好ましくは0.4~15重量%の範囲であり、殊に好ましくは0.5~10重量%の範囲である、分散液。
【請求項15】
ポリマー水性分散液、好ましくはポリウレタン水性分散液における添加剤としてポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体を使用して、好ましくは請求項1から14までのいずれか1項記載の使用により、多孔質ポリマーコーティング、好ましくは多孔質ポリウレタンコーティングを製造する方法であって、
a)少なくとも1つのポリマー水性分散液と、本発明によるポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースの少なくとも1つのカルボン酸誘導体と、任意にさらなる添加剤とを含む混合物を準備するステップと、
b)前記混合物を発泡させて発泡体を形成するステップと、
c)任意に、少なくとも1つの増粘剤を添加して、湿った発泡体の粘度を調整するステップと、
d)前記発泡されたポリマー分散液、好ましくはポリウレタン分散液のコーティングを適切な支持体に施与するステップと、
e)前記コーティングを乾燥させるステップと
を含む、方法。
【請求項16】
多孔質ポリマーコーティング、好ましくは多孔質ポリウレタンコーティングであって、前記ポリマーコーティングの製造時に、ポリマー水性分散液、好ましくはポリウレタン水性分散液における添加剤としてポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体を使用することにより得られる、好ましくは請求項15記載の方法により得られる、コーティング。
【請求項17】
請求項16記載の多孔質ポリマーコーティングを含む実用品であって、好ましくは、靴、インソール、バッグ、スーツケース、ケース、衣類、自動車部品、好ましくはシートカバー、ドア部品の被覆、ダッシュボード部品、ハンドルおよび/またはレバー、ならびにギアシフトカバー、家具用品、例えば、筆記パッド、クッションまたは座席家具、電子デバイスのギャップフィラー、医療用途のパッド材および緩衝材、または粘着テープである、実用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックコーティングおよび合成皮革の分野に関する。
【0002】
本発明は特に、添加剤としてポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体を用いた、多孔質ポリマーコーティング、好ましくは多孔質ポリウレタンコーティングの製造に関する。
【0003】
例えば合成皮革などの合成材料でコーティングされたテキスタイルは、通常、テキスタイル支持体上に多孔質ポリマー層を積層し、これをさらにカバー層あるいはカバーコートで被覆したものからなる。
【0004】
多孔質ポリマー層は、好ましくは、マイクロメートル範囲の細孔を有し、空気透過性であり、したがって通気性であり、すなわち水蒸気透過性であるが、しかし耐水性である。多孔質ポリマー層は、多孔質ポリウレタンであることが多い。PUベースの合成皮革の環境にやさしい製造のため、以前からポリウレタン水性分散液、いわゆるPUDをベースとする方法が開発されていた。これらは通常、ポリウレタン微粒子を水に分散させたものからなり、固形分は通常30~60重量%の範囲にある。多孔質ポリウレタン層を製造するために、このPUDを機械的に発泡させ、支持体に施与し(層厚は、通常は300~2000μmである)、次いで高温で乾燥させる。この乾燥ステップ中にPUD系に含まれる水分が蒸発してポリウレタン粒子が皮膜化する。皮膜の機械的強度をさらに高めるために、製造プロセス中にPUD系にさらに親水性(ポリ)イソシアネートまたはカルボジイミドを添加することができ、乾燥ステップで、この親水性(ポリ)イソシアネートまたはカルボジイミドは、ポリウレタン粒子表面に存在する遊離OH基と反応することができ、このようにしてポリウレタン皮膜のさらなる架橋が生じる。
【0005】
このようにして製造されたPUDコーティングの機械的特性および触感的特性は、いずれも多孔質ポリウレタン皮膜のセル構造によって大きく左右される。さらに、多孔質ポリウレタン皮膜のセル構造は、材料の空気透過性あるいは通気性に影響を与える。ここで、セルを可能な限り微細かつ均質に分配することで、特に良好な特性を得ることができる。上記の製造プロセス中にセル構造に影響を与えるために、機械的発泡の前または間にPUD系に発泡安定剤を添加することが一般的である。このような安定剤によって、一方では発泡プロセス中に十分な量の空気をPUD系内に送ることができる。他方で、発泡安定剤は、生成される気泡の形態に直接的な影響を与える。また、気泡の安定性は、安定剤の種類によって大きく左右される。このことは、特に発泡PUDコーティングの乾燥時に重要である。なぜならば、これによりセルの粗大化や乾燥割れなどの乾燥不良を防ぐことができるためである。
【0006】
先行技術には、多孔質でPUDベースのテキスタイル複合体の製造に使用できる一連のイオン性および非イオン性界面活性剤が開示されている。特にここでは、主にステアリン酸アンモニウムをベースとするアニオン性界面活性剤が好ましく、例えば米国特許出願公開第2015/0284902号明細書または米国特許出願公開第20060079635号明細書を参照されたい。
【0007】
しかし、対応するステアリン酸アンモニウムベースの安定剤の使用は、一連の欠点を伴う。この場合の大きな欠点は、完成した合成皮革に含まれるステアリン酸アンモニウムが非常に高い移行性を有することにある。そのため、時間が経つと合成皮革の表面に界面活性剤の分子が蓄積され、皮革の表面が白く変色することがある。さらに、特に対応する材料が水と接触すると、この界面活性剤の移行によって、不快に感じられる潤滑膜が合成皮革の表面に形成されることがある。
【0008】
ステアリン酸アンモニウムのもう1つの欠点は、石灰を含む水と接触すると不溶性の石灰石鹸を形成することにある。ステアリン酸アンモニウムをベースとして製造された合成皮革が石灰を含む水と接触すると、合成皮革の表面に白色のブルーミングが発生することがあり、特に濃色に着色された皮革の場合、これは好ましくないことである。
【0009】
ステアリン酸アンモニウムベースの発泡安定剤のもう1つの欠点は、ポリウレタン水性分散液の効率的な発泡を可能にするが、しばしばかなり粗く不規則な発泡構造をもたらすことにある。これは、完成した合成皮革の視覚的および触感的な特性に悪影響を及ぼしかねない。
【0010】
ステアリン酸アンモニウムのもう1つの欠点は、生成されたPUD発泡体の安定性が不十分な場合が多いことにあり、これは、その加工に際して、特にPUD発泡体を高温で乾燥させる場合に不利になることがある。その結果、例えば、対応する発泡体を比較的穏やかにゆっくりと乾燥させる必要があり、その結果、合成皮革の製造におけるプロセス時間が長くなる。
【0011】
ステアリン酸アンモニウムのもう1つの欠点は、まずもって十分な泡安定性を達成できるようにするために、通常は他の界面活性剤と組み合わせて使用しなければならないことにあり、ここで、先行技術では、例えばスルホスクシナメートが記載されている。こうした追加成分は、適用時の複雑さを高めかねない。
【0012】
したがって本発明の課題は、先行技術で列挙されたステアリン酸アンモニウムの使用に伴う欠点を甘受することなくPUD系の効率的な発泡を可能にする、PUDベースの発泡系および発泡コーティングを製造するための添加剤を提供することであった。ステアリン酸アンモニウムベースの発泡安定剤の代替物としては、ポリオールエステルおよびポリオールエーテルが、ポリウレタン水性分散液用の効果的な発泡添加剤として過去に確認されている。これらの構造は、例えば欧州特許出願公開第3487945号明細書および国際公開第2019042696号に記載されている。驚くべきことに、ポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体の使用によって、同様に上述の課題を解決できることが判明した。
【0013】
よって本発明の主題は、ポリマー水性分散液、好ましくはポリウレタン水性分散液における、好ましくは多孔質ポリマーコーティングの製造のための、特に多孔質ポリウレタンコーティングの製造のための、添加剤、好ましくは発泡添加剤としての、ポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体の使用である。
【0014】
ここで、ポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体の本発明による使用には、驚くべきことに利点が多い。
【0015】
ポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体には、水性PUD系の発泡を特に効率的に行えるという利点がある。そのようにして製造された発泡体は、特に均質なセル分布を持つ非常に微細な細孔構造を特徴とし、これが、この発泡体をベースとして製造された多孔質ポリマーコーティングの機械的および触感的特性に非常に有利な影響を与える。さらに、これによりコーティングの空気透過性あるいは通気性が向上し得る。
【0016】
また、ポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体により、特に安定した発泡体を製造できるという利点がある。これは、一方では加工性に有利に作用する。他方では、泡安定性が向上することで、対応する発泡体の乾燥時にセルの粗大化や乾燥割れなどの乾燥不良を回避できるという利点がある。さらに、泡安定性が向上することで、発泡体の乾燥をより迅速に行うことができ、環境面および経済面の双方の観点からプロセス上の利点がもたらされる。
【0017】
さらなる利点は、本発明によるポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体は、完成した合成皮革においてまったくまたはほとんど移行しないため、望ましくない表面変色またはブルーミングが生じないことにある。さらに、本発明による界面活性剤は、石灰含有水にまったくあるいはほとんど影響を受けない。
【0018】
本発明によるポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体のさらなる利点は、発泡した非乾燥分散液の粘度上昇を生じさせ得ることにある。これは、発泡体の加工性に有利に作用し得る。さらに、これによって、任意に発泡体の粘度を調整するための追加の増粘剤の使用を省いたり使用濃度を下げたりすることができ、経済的な利点が生じる。
【0019】
本発明によるポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体のさらなる利点は、さらなる界面活性剤を使用しなくとも、ポリマー水性分散液をベースとする発泡体が十分に安定化されることにある。これにより、使用者が適切な発泡配合物を構成する際の複雑さを軽減することができる。
【0020】
さらに、本発明によるポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体の利点は、広いpH範囲にわたって優れた加水分解安定性を特徴とし、したがって、非常に低いあるいは非常に高いpH値を有するポリマー分散液にも使用できることにある。以下、本発明を例示的にさらに説明するが、本発明はこれらの例示的な実施形態に限定されるものではない。以下に範囲、一般式または化合物のクラスが示されている場合、これらは明示されている対応する範囲または化合物群だけでなく、個々の値(範囲)または化合物を選択して得られるすべての部分範囲および部分化合物群をも包含することを意図している。本明細書において文書が引用されている場合、その内容、特にその文書が引用される文脈における事柄に関する内容は、その全体が本発明の開示内容の一部を構成するものとする。パーセンテージは、特に断りのない限り、重量パーセントで表示されている。以下に測定によって決定されたパラメータが示されている場合、特に断りのない限り、温度25℃、圧力101325Paで測定したものである。本発明において化学(組成)式が用いられている場合、示されている添え字は、絶対数だけでなく平均値も表す場合がある。高分子化合物の場合、添え字は、平均値を表すことが好ましい。本発明で示される構造および組成式は、繰返し単位の配置の違いにより考えられるすべての異性体の代表例である。
【0021】
ポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体という用語には、本発明の趣意において特に、少なくとも1つのポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンを、例えばカルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸ハロゲン化物またはカルボン酸無水物などの少なくとも1つのアシル基供与体と反応させることによって得られる化合物が包含され、その際、カルボン酸が特に好ましい。これらの反応には、必要であれば任意に、例えば有機酸または無機酸、例えばp-トルエンスルホン酸、硫酸またはメタンスルホン酸、酸塩、カルボン酸塩化物、金属または両性金属酸化物、金属アルコラートまたはカルボン酸金属塩、例えば(オルト)チタン酸テトラブチルまたは2-エチルヘキサン酸スズ(II)などの適切な触媒を使用することができる。同様に、活性炭や水分除去のためのエントレーナーなどのさらなる任意の補助物質を使用することができる。対応する反応は当業者に知られており、例えばRoempp-Chemie Lexikon(Thieme-Verlag, 1996)に記載されている。
【0022】
ポリアミンという用語には、本発明全体の趣意において特に、少なくとも2つ以上の末端アミノ基を有し、その鎖は第二級または第三級のアミノ基を有することができる、飽和または不飽和、開鎖または環状、直鎖または分岐状の有機化合物が包含される。
【0023】
ポリアルカノールアミンという用語には、本発明全体の趣意において特に、少なくとも2つ以上の末端OH基を有し、その鎖は、第二級または第三級アミノ基および/またはエーテル基で中断されていてもよい、飽和または不飽和、開鎖または環状、直鎖または分岐状の有機化合物が包含され、その際、これらの化合物は、少なくとも1つのアミノ基と少なくとも2つのOH基とを同時に含む。
【0024】
ポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体という用語には、本発明全体の趣意において、それらのアルコキシル化付加物も包含され、これは、ポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体を、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドなどのアルキレンオキシドと反応させることによって得ることができる。
【0025】
モノカルボン酸および/または多官能性ジおよび/またはトリカルボン酸の使用による本発明によるポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体の製造は、本発明の特に好ましい実施形態を示す。本発明によるポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体の製造に使用できる好ましいカルボン酸は、一般式R-C(O)OHに相当し、ここで、Rは、3~39個の炭素原子、好ましくは7~21個、特に好ましくは9~17個の炭素原子を有する一価の脂肪族の飽和または不飽和炭化水素基である。ここで特に好ましいのは、酪酸(ブタン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸(ノナン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、アラキジン酸(エイコサン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)、リグノセリン酸(テトラコサン酸)、パルミトレイン酸((Z)-9-ヘキサデセン酸)、オレイン酸((Z)-9-オクタデセン酸)、エライジン酸((E)-9-オクタデセン酸)、cis-バクセン酸((Z)-11-オクタデセン酸)、リノール酸((9Z,12Z)-9,12-オクタデカジエン酸)、α-リノレン酸((9Z,12Z,15Z)-9,12,15-オクタデカトリエン酸)、γ-リノレン酸((6Z,9Z,12Z)-6,9,12-オクタデカトリエン酸)、ジホモ-γ-リノレン酸((8Z,11Z,14Z)-8,11,14-エイコサトリエン酸)、アラキドン酸((5Z,8Z,11Z,14Z)-5,8,11,14-エイコサテトラエン酸)、エルカ酸((Z)-13-ドコセン酸)、ネルボン酸((Z)-15-テトラコセン酸)、リシノール酸、ヒドロキシステアリン酸および/またはウンデシレン酸、ならびにこれらの混合物、例えば、菜種油酸、大豆脂肪酸、ヒマワリ脂肪酸、落花生脂肪酸および/またはトール油脂肪酸から選択されるカルボン酸である。パルミチン酸および/またはステアリン酸、ならびに特にこれらの物質の混合物が非常に特に好ましい。ここで、本発明によれば、純粋な脂肪酸のみならず、鎖長分布を有するかあるいは異なる鎖長の脂肪酸の混合物を含むその工業用グレードも好ましい。また本発明によれば、部分的に硬化した脂肪酸も同様に好ましい。
【0026】
適切な脂肪酸の供給源は、植物性または動物性の脂肪、油またはワックスであることができる。例えば、次のものを使用することができる:豚脂、牛脂、ガチョウ脂、アヒル脂、鶏脂、馬脂、鯨油、魚油、パーム油、オリーブ油、アボカド油、種子核油、ココナッツ油、パーム核油、カカオバター、綿実油、カボチャ種子油、トウモロコシ胚芽油、ヒマワリ油、麦芽油、グレープシード油、ゴマ油、アマニ油、大豆油、落花生油、ルピナス油、菜種油、カラシ油、ヒマシ油、ジャトロファ油、クルミ油、ホホバ油、レシチンであって、例えば大豆、菜種またはヒマワリをベースとするもの、骨油、牛脚油、ボラージ油、ラノリン、エミュー油、鹿脂、マーモット油、ミンク油、ボラージ油、アザミ油、麻油、カボチャ油、月見草油、トール油、およびカルナウバロウ、ミツロウ、キャンデリラロウ、オーリクリーロウ、サトウキビロウ、レタモロウ、カランダイロウ、ラフィアロウ、エスパルトロウ、アルファルファロウ、竹ロウ、麻ロウ、ダグラスファーロウ、コルクロウ、サイザルロウ、亜麻ロウ、綿ロウ、ダマールロウ、茶ロウ、コーヒーロウ、米ロウ、オレアンダーロウ、ミツロウまたは羊毛ロウ。
【0027】
さらに、本発明によるポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体の製造に多官能性ジおよび/またはトリカルボン酸が使用されると有利である場合がある。この場合に好ましいのは、2~18個の炭素原子の鎖長を有する脂肪族の直鎖または分岐状のジおよび/もしくはトリカルボン酸、ならびに/または12~22個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸の接触的二量体化により得られる(工業用)二量体脂肪酸である。対応する多官能酸の例は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、タプシア酸、タルトロン酸、酒石酸、リンゴ酸、イタコン酸および/またはクエン酸である。特に好ましくは、多官能性ジおよび/またはトリカルボン酸は、上記のような単官能性カルボン酸と組み合わせて使用することができ、それによって架橋されたポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体を得ることができる。
【0028】
本発明によるカルボン酸誘導体の製造に使用されるポリアミンは、好ましくは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘプタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘプタミン、スペルミン、スペルミジン、およびこれらの化合物のN-アルキル化、N-メチル化誘導体、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリイミノエチレンおよび/またはアミノ基含有(コ)ポリマー、特にアリルアミンおよび/またはビニルアミンをベースとする(コ)ポリマー、ならびにこれらの物質の混合物から選択され、その際、ポリエチレンイミンが特に好ましい。
【0029】
本発明によるカルボン酸誘導体の製造に使用されるポリアルカノールアミンは、好ましくは、ポリジエタノールアミン、ポリジプロパノールアミン、ポリジイソプロパノールアミン、ポリトリエタノールアミン、ポリトリプロパノールアミン、ポリトリイソプロパノールアミン、ポリエーテルアミン、特に、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドコポリマーおよび/またはOH-およびアミノ基含有(コ)ポリマーをベースとするもの、特にアリルアルコール、ビニルアルコール、アリルアミンおよびビニルアミンをベースとするコポリマー、ならびにこれらの物質の混合物から選択され、その際、特にポリトリイソプロパノールアミンが特に好ましい。
【0030】
本発明においてさらに、N-(ヒドロキシアルキル)アミンの縮合によって得られるポリアルカノールアミンが好ましく、その際、特に、一般式1
【化1】
[式中、基R~Rは、互いに独立して、2~4個の炭素原子を有する同一のまたは異なる1,2-アルキレン基を表す]のトリアルカノールアミンが好ましい。さらに、例えば欧州特許出願公開第0057398号明細書に記載されているように、N-(ヒドロキシアルキル)アミン(その際、特に一般式1のトリアルカノールアミンが好ましい)と、他のヒドロキシル基含有分子、例えばペンタエリスリトール、ソルビトール、グリコール、グリセロールまたはポリグリセロールとの共縮合によって得られるポリアルカノールアミンも好ましい。
【0031】
さらに、ポリアミンおよびポリアルカノールアミンのアルコキシル化付加物も、本発明によるカルボン酸誘導体の製造に用いることができ、これは、例えば米国特許出願公開第20100234631号明細書に記載されているように、ポリアミンおよびポリアルカノールアミンを、特に上記で詳細に説明したように、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドなどのアルキレンオキシドと反応させることによって得ることができる。
【0032】
本発明によるカルボン酸誘導体の製造にポリエチレンイミンが使用される場合、これは好ましくは、エチレンイミンの開環重合によって入手可能である。さらに、平均分子量が25,000g/mol未満、より好ましくは12,500g/mol未満、さらにより好ましくは5000g/mol未満、さらにより好ましくは2000g/mol未満であるポリエチレンイミンが特に好ましい。ここで、平均分子量は、好ましくはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。例えば、ポリスチレンに対して校正されたPCC社製GPC-System SECcurity2をこれに使用することができる。
【0033】
本発明によるポリアミンベースのカルボン酸誘導体の製造にアミノ基含有(コ)ポリマーが使用される場合、これは好ましくは、一般式2
【化2】
の少なくとも1つの繰返し単位Aおよび/または一般式3
【化3】
の少なくとも1つの繰返し単位Bを有し、ここで、基Rは、1~15個、好ましくは1~10個、特に好ましくは1~5個の炭素原子を有する同一のもしくは異なる一価の脂肪族もしくは芳香族の飽和もしくは不飽和炭化水素基、またはHであり、特に好ましくはHである。
【0034】
ポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体の製造時にOH-およびアミノ基含有コポリマーが使用される場合、繰返し単位Aおよび/またはBに加えてさらに、式4
【化4】
の少なくとも1つの繰返し単位Cおよび/または一般式5
【化5】
の少なくとも1つの繰返し単位Dも有するコポリマーが特に好ましい。
【0035】
また、さらなる変性ポリマーを得るために、本発明によるカルボン酸誘導体の製造に使用されるポリマーに、繰返し単位A~Dに加えてさらなるモノエチレン性不飽和コモノマーまたはコモノマー混合物を任意にさらに重合させることも同様に好ましい。これらは、非イオン性、カチオン性またはアニオン性のモノマーであってよい。ここで、好ましい非イオン性コモノマーは、不飽和アルコール、例えば、ビニルアルコールまたはアリルアルコール、およびそれらのアルコキシラート、不飽和ニトリル、脂肪族または芳香族オレフィン、N-ビニルラクタム、例えば、N-ビニルピロリドンまたはN-ビニルカプロラクタム、有機カルボン酸のビニルエステル、モノエチレン性不飽和カルボン酸のエステル、ならびにモノエチレン性不飽和カルボン酸のアミドである。好ましいカチオン性コモノマーは、ビニルイミダゾールおよびビニルイミダゾリン単位を含むモノマー、それらのアルキル誘導体および四級化生成物、ビニルピリジンおよびそれらの四級化生成物、エチレン性不飽和カルボン酸とアミノアルコールとの塩基性エステル、およびエチレン性不飽和カルボン酸とN,N-ジアルキルアミノアルキルアミンとの塩基性アミドである。好ましいアニオン性コモノマーは、α,β-不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、および不飽和ジカルボン酸の部分エステルである。
【0036】
さらに、本発明によるポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体の製造に、25,000g/mol未満、より好ましくは12,500g/mol未満、さらにより好ましくは5000g/mol未満、さらにより好ましくは2000g/mol未満の平均分子量を有するアミノ-ならびに/またはアミノ-およびOH基含有(コ)ポリマーが使用される場合、本発明において好ましい。ここで、平均分子量は、好ましくはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。例えば、ポリスチレンに対して校正されたPCC社製GPC-System SECcurity2をこれに使用することができる。
【0037】
本発明において、ポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンとカルボン酸とを、カルボン酸と反応するアミノ-およびOH官能基とカルボン酸とのモル比が5:1~1.5:1の範囲、より好ましくは4:1~1.7:1の範囲、さらにより好ましくは3.5:1~1.9:1の範囲、さらにより好ましくは3:1~2:1の範囲となるように反応させると好ましい。
【0038】
上述したように、本発明は、ポリマー水性分散液、好ましくはポリウレタン水性分散液における添加剤としての、先に述べたようなポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体の使用を提供する。ここで、ポリマー分散液は、ポリスチレン水性分散液、ポリブタジエン水性分散液、ポリ(メタ)アクリレート水性分散液、ポリビニルエステル水性分散液および/またはポリウレタン水性分散液の群から選択されることが好ましい。これらの分散液の固形分は、好ましくは20~70重量%の範囲であり、より好ましくは25~65重量%の範囲である。本発明によれば、ポリウレタン水性分散液の添加剤としてポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体を使用することが特に好ましい。ここで、ポリエステル-、ポリエステルアミド-、ポリカーボネート-、ポリアセタール-および/またはポリエーテル-ポリオールをベースとするポリウレタン分散液が特に好ましい。
【0039】
本発明において、ポリマー水性分散液の全重量に対するポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体の濃度は、好ましくは0.1~20重量%の範囲であり、特に好ましくは0.2~15重量%の範囲であり、殊に好ましくは0.5~10重量%の範囲である。
【0040】
好ましくは、ポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体は、ポリマー水性分散液において、分散液を発泡させるための発泡助剤あるいは発泡安定剤として、すなわち発泡添加剤として使用される。しかしさらに、これらは、乾燥助剤、流動性添加剤、湿潤剤およびレオロジー添加剤としても使用することができ、これも同様に本発明の好ましい実施形態に相当する。
【0041】
本発明によるポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体に加えて、ポリマー水性分散液は、さらにさらなる添加物質/配合成分、例えば、染料または顔料、フィラー、艶消剤、安定剤、例えば、加水分解安定剤または紫外線安定剤、酸化防止剤、吸収剤、架橋剤、流動性添加剤、増粘剤および/またはさらなる補助界面活性剤を含むことができる。
【0042】
ポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体は、水性分散液に、そのまま添加することも、適当な溶媒に混合して添加することもできる。好ましい溶媒は、これに関連して、水、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチルジグリコール、ブチルトリグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレン-、プロピレン-、ブチレン-および/またはスチレンオキシド(EO、PO、BO、SO)をベースとするポリアルキレングリコール、EO、PO、BOおよび/またはSOをベースとするアルコールアルコキシラート、ならびにこれらの物質の混合物から選択され、その際、水性希釈物または混合物が非常に特に好ましい。ポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体の混合物または希釈物中には、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、さらにより好ましくは少なくとも15重量%のポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体が含まれている。
【0043】
本発明によるポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体の水性希釈物または混合物の場合、ヒドロトロープ化合物を混合物に添加すると有利であり得る。ここで、ヒドロトロープ化合物とは、親水部および疎水部からなるが、分子量が低いため界面活性作用を発揮することができない水溶性有機化合物をいう。ヒドロトロープ化合物という用語は、当業者に知られている。本発明においてヒドロトロープ化合物として、アルカリ金属-およびアンモニウムトルエンスルホネート、アルカリ金属-およびアンモニウムキシレンスルホネート、アルカリ金属-およびアンモニウムナフタレンスルホネート、アルカリ金属-およびアンモニウムクメンスルホネート、ならびにフェノールアルコキシラート、特に最大で6個のアルコキシラート単位を有するフェノールエトキシラートが好ましい。
【0044】
さらに、ポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体をそのままではなくさらなる補助界面活性剤と組み合わせて、ポリマー水性分散液、好ましくはポリウレタン水性分散液における添加剤として使用することが有利である場合がある。これらは、例えば、系の適合性を向上させるために、または予め配合された界面活性剤混合物の場合には配合特性を向上させるために使用することができる。これに関連して、本発明により好ましい補助界面活性剤は、例えば、遊離脂肪アルコール、脂肪酸アミド、エチレンオキシド-プロピレンオキシドブロックコポリマー、ベタイン、例えば、アミドプロピルベタイン、アミンオキシド、第四級アンモニウム界面活性剤、アンフォアセテートアンモニウムおよび/または脂肪酸のアルカリ金属塩、アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルホスフェート、アルキルスルホスクシネート、アルキルスルホスクシナメートおよび/またはアルキルサルコシネート、ならびにこれらの物質の混合物であり、その際、好ましくは12~40個、より好ましくは14~30個、さらにより好ましくは16~24個の炭素原子を有する遊離脂肪アルコール、および12~40個、より好ましくは14~30個、さらにより好ましくは16~24個のアルキルスルフェート、ならびにこれらの物質の混合物が非常に特に好ましい。さらに、補助界面活性剤は、例えばトリシロキサン系界面活性剤またはポリエーテルシロキサンなどのシリコーン系界面活性剤であってよい。脂肪酸のアンモニウム塩および/またはアルカリ金属塩の場合、これらがステアリン酸塩を25重量%未満含み、特にステアリン酸塩を含まないことが好ましい。
【0045】
本発明によるポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体と、上記のようなさらなる補助界面活性剤とを組み合わせる場合、これらの組み合わせ物が、本発明によるポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体と補助界面活性剤との組み合わせ物に対して1~60重量%、好ましくは2~50重量%、より好ましくは3~40重量%、さらにより好ましくは5~30重量%の補助界面活性剤を有する場合、特に好ましい。
【0046】
上述したように、ポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体の本発明による使用は、ポリマー水性分散液から製造された多孔質ポリマーコーティングの著しい改善をもたらすため、上記で詳細に説明したように、ポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体の少なくとも1つを含むポリマー水性分散液も同様に本発明の主題である。
【0047】
本発明のさらなる主題は、上記で詳細に説明したように、ポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体を本発明により使用して得られたポリマー水性分散液から製造された多孔質ポリマー層である。
【0048】
好ましくは、本発明による多孔質ポリマーコーティングは、
a)少なくとも1つのポリマー水性分散液と、本発明によるポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースの少なくとも1つのカルボン酸誘導体と、任意にさらなる添加剤とを含む混合物を準備するステップと、
b)混合物を発泡させて発泡体を形成するステップと、
c)任意に、少なくとも1つの増粘剤を添加して、湿った発泡体の粘度を調整するステップと、
d)発泡されたポリマー分散液のコーティングを適切な支持体に施与するステップと、
e)コーティングを乾燥/硬化させるステップと
を含む方法により製造することができる。
【0049】
多孔質ポリマーコーティングは、好ましくはマイクロメートル範囲の細孔を有し、好ましくは、平均セルサイズは350μmより小さく、さらに好ましくは200μmより小さく、特に好ましくは150μmより小さく、非常に特に好ましくは100μmより小さい。平均セルサイズは、好ましくは顕微鏡により、好ましくは電子顕微鏡により測定することができる。この目的のために、多孔質ポリマーコーティングの断面を十分な倍率の顕微鏡で観察し、少なくとも25個のセルのサイズを調べる。その後、平均セルサイズが、観測されたセルまたはセルサイズの算術平均として得られる。
【0050】
好ましい実施形態に関して、特に、方法において好ましく使用することができるポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体およびポリマー分散液に関して、先の説明、および特に特許請求の範囲に示されるように、上述の好ましい実施形態も参照される。
【0051】
上記に示した本発明による方法のプロセスステップが、何ら一定の時系列に従うものではないことは明らかである。例えば、プロセスステップc)は、すでにプロセスステップa)と同時に実施することができる。
【0052】
プロセスステップb)において、高せん断力を加えてポリマー水性分散液を発泡させる場合、本発明の好ましい実施形態に相当する。この場合、発泡は、例えばディスパーメート(Dispermate)、ディゾルバー、ハンザミキサー(Hansa-Mixer)またはオークスミキサー(Oakes-Mixer)のような当業者に周知のせん断ユニットを用いて実施することができる。
【0053】
さらに、プロセスステップc)の最後に製造された湿った発泡体が、少なくとも5Pa・s、好ましくは少なくとも10Pa・s、より好ましくは少なくとも15Pa・s、さらにより好ましくは少なくとも20Pa・sでかつ最大で500Pa・s、好ましくは最大で300Pa・s、より好ましくは最大で200Pa・s、さらにより好ましくは最大で100Pa・sの粘度を有すると好ましい。ここで、発泡体の粘度は、好ましくは、スピンドルLV-4を備えたBrookfield社製LVTD型粘度計を用いて測定することができる。湿った発泡体の粘度を測定するための対応する測定方法は、当業者に知られている。
【0054】
プロセスステップb)において、発泡体が可能な限り均質でかつ微細セル状である場合、本発明の好ましい実施形態に相当する。所望の場合には、当業者は、通常の経験値に基づいて、通常は単純な直接目視検査により、肉眼で、または光学的補助具、例えば拡大鏡、顕微鏡を用いてこれを確認することができる。「微細セル状」とは、セルサイズのことである。平均セルサイズが小さいほど、発泡体はより微細なセルとなる。所望の場合には、微細セル状を、例えば光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡で判定することができる。「均質」とは、セルサイズ分布のことである。均質な発泡体は、セルサイズ分布が可能な限り狭いため、すべてのセルがほぼ同じサイズである。これも光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡で定量化することができる。
【0055】
上記のように、湿った発泡体の粘度を調整するために系に追加の増粘剤を追加することができる。
【0056】
好ましくは、本発明において有利に使用できる増粘剤は、会合性増粘剤のクラスから選択される。ここで、会合性増粘剤とは、ポリマー分散液に含まれる粒子の表面での会合により増粘効果をもたらす物質をいう。この用語は、当業者に知られている。ここで、好ましい会合性増粘剤は、ポリウレタン系増粘剤、疎水性変性ポリアクリレート系増粘剤、疎水性変性ポリエーテル系増粘剤および疎水性変性セルロースエーテル系から選択される。ポリウレタン系増粘剤が非常に特に好ましい。さらに、分散液の全組成に対する増粘剤の濃度が、0.01~10重量%の範囲、より好ましくは0.05~5重量%の範囲、非常に特に好ましくは0.1~3重量%の範囲であると本発明において好ましい。
【0057】
本発明において、プロセスステップd)において、発泡されたポリマー分散液のコーティングが、10~10000μm、好ましくは50~5000μm、より好ましくは75~3000μm、さらにより好ましくは100~2500μmの層厚で製造される場合もまた好ましい。発泡されたポリマー分散液のコーティングは、当業者に一般的な方法、例えばブレード塗布によって製造することができる。ここで、直接的なコーティングプロセスと間接的なコーティングプロセス(いわゆるトランスファーコーティング)の双方が使用可能である。
【0058】
さらに、プロセスステップe)において発泡および被覆されたポリマー分散液の乾燥が高温で行われると、本発明において好ましい。ここで、本発明によれば、乾燥温度は少なくとも50℃、好ましくは60℃、より好ましくは少なくとも70℃が好ましい。さらに、乾燥不良の発生を避けるために、発泡および被覆されたポリマー分散液を異なる温度で数段階に分けて乾燥させることも可能である。対応する乾燥技術は、当業界では一般的であり、当業者に知られている。
【0059】
すでに述べたように、プロセスステップc)~e)は、当業者に知られている一般的な方法を用いて実施することができる。その概要は、例えば“Coated and laminated Textiles”(Walter Fung, CR-Press, 2002)に記載されている。
【0060】
本発明において、平均セルサイズが350μmより小さく、好ましくは200μmより小さく、特に好ましくは150μmより小さく、非常に特に好ましくは100μmより小さい、ポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースのカルボン酸誘導体を含む多孔質ポリマーコーティングが特に好ましい。平均セルサイズは、好ましくは顕微鏡により、好ましくは電子顕微鏡により測定することができる。この目的のために、多孔質ポリマーコーティングの断面を十分な倍率の顕微鏡で観察し、少なくとも25個のセルのサイズを調べる。この評価方法で十分な統計結果を得るためには、少なくとも10×10のセルが観察視野に入るように顕微鏡の倍率を選択することが望ましい。その後、平均セルサイズが、観測されたセルまたはセルサイズの算術平均として得られる。この顕微鏡によるセルサイズの決定は、当業者には広く知られている。
【0061】
本発明によるポリアミンおよび/またはポリアルカノールアミンベースの少なくとも1つのカルボン酸誘導体と、任意にさらなる添加剤とを含む本発明による多孔質ポリマー層(またはポリマーコーティング)は、例えば、テキスタイル産業、例えば合成皮革材料、建築産業、電子産業、スポーツ産業または自動車産業において使用することが可能である。本発明による多孔質ポリマーコーティングをベースとして、実用品、例えば、靴、インソール、バッグ、スーツケース、ケース、衣類、自動車部品、好ましくはシートカバー、ドア部品の被覆、ダッシュボード部品、ハンドルおよび/またはレバー、ならびにギアシフトカバー、家具用品、例えば、筆記パッド、クッションまたは座席家具、電子デバイスのギャップフィラー、医療用途のパッド材および緩衝材、または粘着テープを製造することが可能である。これらの実用品は、本発明のもう1つの主題である。
【0062】
実施例:
物質:
IMPRANIL(登録商標)DLU:Covestro社製脂肪族ポリカーボネートエステルポリエーテルポリウレタン分散液
REGEL(登録商標)WX 151:Cromogenia社製ポリウレタン水性分散液
CROMELASTIC(登録商標)PC 287 PRG:Cromogenia社製ポリウレタン水性分散液
STOKAL(登録商標)STA:Bozetto社製ステアリン酸アンモニウム(HO中約30%)
STOKAL(登録商標)SR:Bozetto社製獣脂系ナトリウムスルホスクシナメート(HO中約35%)
ECO Pigment Black:Cromogenia社製顔料水性分散液(黒色)
TEGOWET(登録商標)250:Evonik社製ポリエーテルシロキサン系流動添加剤
ORTEGOL(登録商標)PV 301:Evonik社製ポリウレタン系会合性増粘剤
REGEL(登録商標)TH 27:Cromogenia社製イソシアネート系架橋剤
【0063】
粘度測定:
いずれの粘度測定も、スピンドル#64を備えたBrookfield社製LVTD型粘度計を用いて、12rpmの一定回転数で行った。粘度測定のために、測定用スピンドルを所定の深さまで浸した100mlのガラスに試料を充填した。粘度計が一定の測定値を示すまで、常に待機した。
【0064】
酸価の測定方法:
酸価の適切な測定方法は、特にDGF C-V 2、DIN EN ISO 2114、Ph.Eur.2.5.1、ISO 3682およびASTM D 974に準拠している。
【0065】
アミン価の測定方法:
適当な初期重量を50mLのテトラヒドロフランに溶解させ、溶解後に50mLの酢酸(無水、99~100%)を添加する。次に、自動滴定装置を用いて、0.1Mの過塩素酸のジオキサン溶液に対して試料を滴定する。
【0066】
実施例1:6.90当量のパルミチン酸を用いたポリエチレンイミンパルミトイルアミドの合成
パルミチン酸(108.5g、0.423mol、6.90当量、C16≧99%)とポリエチレンイミン(49.05g、0.0613mol、800g/mol、1.00当量、BASF社製Lupasol(登録商標)FG)との混合物を撹拌しながらN流下で170℃に加熱し、その際、酸価3.2mgKOH/gおよびアミン価226mgKOH/gが得られるまで、生成した水を連続的に蒸留により除去した。
【0067】
実施例2:8.30当量のパルミチン酸を用いたポリエチレンイミンパルミトイルアミドの合成
パルミチン酸(114.9g、0.448mol、8.30当量、C16≧99%)とポリエチレンイミン(43.2g、0.0540mol、800g/mol、1.00当量、BASF社製Lupasol(登録商標)FG)との混合物を撹拌しながらN流下で175℃に加熱し、その際、酸価2.1mgKOH/gおよびアミン価173mgKOH/gが得られるまで、生成した水を連続的に蒸留により除去した。
【0068】
実施例3:10.3当量のパルミチン酸を用いたポリエチレンイミンパルミトイルアミドの合成
パルミチン酸(121.9g、0.475mol、10.3当量、C16≧99%)とポリエチレンイミン(36.7g、0.0459mol、800g/mol、1.00当量、BASF社製Lupasol(登録商標)FG)との混合物を撹拌しながらN流下で175℃に加熱し、その際、酸価14.2mgKOH/gおよびアミン価158mgKOH/gが得られるまで、生成した水を連続的に蒸留により除去した。
【0069】
実施例4:本発明による界面活性剤の混合
実施例1~3で得られた本発明による界面活性剤を表1に示す組成に従って混合し、次いで80℃で均質化させた。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例5:発泡実験
本発明による添加剤の組み合わせの有効性を検証するために、一連の発泡実験を行った。このために、第1のステップでは、Covestro社製ポリウレタン分散液IMPRANIL(登録商標)DLUを使用した。発泡安定剤として、本発明による界面活性剤配合物1~3(表1参照)、および比較物としての2つの界面活性剤Stokal(登録商標)STA(ステアリン酸アンモニウム)とStokal(登録商標)SR(ナトリウムスルホスクシナメート)との組み合わせを使用した。表2に、各実験の組成の概要を示す。
【0072】
発泡実験はすべてハンドテストで行った。このため、まずポリウレタン分散液および界面活性剤を500mlのプラスチックカップに装入し、分散ディスク(直径6cm)を装着したディゾルバーで1000rpmにて3分間均質化した。次いで、混合物を発泡させるために回転数を2000rpmまで上げ、その際、ディゾルバーディスクが常に分散液に十分浸かっており、十分な渦が形成されるように留意した。この速度で、混合物を約425mlの体積まで発泡させた。その後、混合物を1000rpmでさらに15分間せん断した。このステップでは、ディゾルバーディスクを混合物の中に深く沈め、それ以上空気が系内に入らないがそれでも全体積が動くようにした。
【0073】
【表2】
【0074】
いずれの場合も、この発泡過程の最後には、微細で均質な発泡体が得られた。本発明による界面活性剤1~3を用いて製造された発泡体が、より高い粘度を有することが顕著に示された(表2参照)。これらの発泡体を、ボックス型ブレード(ブレード厚=800μm)を備えたフィルムアプリケータ(TQC社製AB3220型)を用いてシリコーン処理済みのポリエステルフィルム上に流延し、次いで60℃で5分、120℃でさらに5分乾燥させた。
【0075】
試料No.4と比較して、本発明による乾燥試料No.1~No.3は、より均質な巨視的外観だけでなく、よりビロードのような感触が特徴的であった。また、電子顕微鏡で観察したところ、より微細な細孔構造を認めることができた。
【0076】
実施例6:移行性試験:
本発明による界面活性剤の表面移行性を評価するために、以下の方法で合成皮革材料を作製した。まず、シリコーン処理済みのポリエステルフィルムにトップコートコーティングを施与した(層厚100μm)。次に、これを100℃で3分間乾燥させた。次に、乾燥したトップコート層上に発泡体層をコーティングし(層厚800μm)、60℃で5分、120℃で5分乾燥させた。乾燥した発泡体層に、最後のステップで、水性接着剤層(層厚100μm)を施与し、次いで、まだ湿っている接着剤層にテキスタイル支持体を積層した。完成した積層体を再び120℃で5分乾燥させた後、ポリエステルフィルムから剥離した。
【0077】
ここで、コーティングおよび乾燥の過程はすべて、Mathis AG社製Labcoater LTE-Sで行った。ここで、トップコート層および接着剤層を、表3に示す組成に従って配合し、発泡体層として表2に示す発泡体配合を用い、これを実施例5に記載の方法で発泡させた。
【0078】
【表3】
【0079】
界面活性剤の移行性を評価するために、合成皮革試料を製造後に100℃の熱水中に30分間入れ、その後室温で一晩乾燥させた。この処理後、界面活性剤Stokal(登録商標)STA/SRを用いて製造した比較試料(発泡体配合物No.4、表2)は、合成皮革の表面上に明らかに視認可能な白色の斑点を示したが、本発明による界面活性剤を用いて製造した試料(発泡体配合物No.1~No.3、表2)ではこれらの表面変色は観察されなかった。