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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153346
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】剪断バンド構造
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/18 20060101AFI20221004BHJP
   B29D 30/02 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B60C9/18 A
B60C9/18 B
B29D30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022053828
(22)【出願日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】17/215051
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】クロード エルネ フェリス ボワ
(72)【発明者】
【氏名】フランセスコ スポルテリ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ヴィルム
【テーマコード(参考)】
3D131
4F215
【Fターム(参考)】
3D131AA32
3D131AA45
3D131AA51
3D131BB19
3D131DA62
3D131LA28
4F215AH21
4F215VA11
4F215VC06
4F215VC08
4F215VD07
4F215VD17
4F215VL01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】タイヤの性能能力をさらに高めることができる改良されたタイヤ用剪断バンドを提供する。
【解決手段】タイヤ用の剪断バンドは、タイヤの周囲で周方向に延びる、半径方向外側の環状の第1の布層21と、タイヤの周囲で周方向に延びる、半径方向内側の環状の第2の布層22と、を有する。剪断バンドは、第1のエッジを有し周方向および軸方向に螺旋状に巻かれた単一の剪断バンドストリップ10から形成されている。剪断バンドストリップの第1のエッジは、剪断バンドストリップの、対向する第2のエッジと係合する第1の延長フラップ310を有する。第1の延長フラップ310は、剪断バンドストリップの、対向する第2のエッジに沿って直線的に、対向する第2のエッジに連続的に固定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ用の剪断バンドにおいて、
前記タイヤの周囲で周方向に延びる、半径方向外側の環状の第1の布層と、前記タイヤの周囲で周方向に延びる、半径方向内側の環状の第2の布層と、を有し、
前記剪断バンドは、第1のエッジを有し周方向および軸方向に螺旋状に巻かれた単一の剪断バンドストリップから形成され、
前記剪断バンドストリップの前記第1のエッジは、前記剪断バンドストリップの、対向する第2のエッジと係合する第1の延長フラップを有し、
前記第1の延長フラップは、前記剪断バンドストリップの、対向する前記第2のエッジに沿って直線的に、対向する前記第2のエッジに連続的に固定されていることを特徴とする、タイヤ用の剪断バンド。
【請求項2】
単一の前記剪断バンドストリップの第1の平面側は、半径方向外側の前記第1の布層を含み、単一の前記剪断バンドストリップの第2の平面側は、半径方向内側の前記第2の布層を含むことを特徴とする、請求項1に記載の剪断バンド。
【請求項3】
螺旋状に巻かれた単一の前記剪断バンドストリップが、前記第1の平面側および前記第2の平面側を画定する、対向する平行な複数の環状のエッジを有するように、ブレードが、螺旋状に巻かれた前記剪断バンドストリップを切断していることを特徴とする、請求項2に記載の剪断バンド。
【請求項4】
前記第1の延長フラップは、対向する前記第2のエッジにステッチ編みによって固定されていることを特徴とする、請求項1に記載の剪断バンド。
【請求項5】
前記剪断バンドの、半径方向外側の前記第1の布層の一部分が、前記第1の延長フラップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の剪断バンド。
【請求項6】
前記剪断バンドストリップの前記第2のエッジは、前記剪断バンドストリップの、対向する前記第1のエッジに係合する第2の延長フラップを有することを特徴とする、請求項1に記載の剪断バンド。
【請求項7】
前記剪断バンドストリップの前記第2のエッジは、前記剪断バンドストリップの、対向する前記第1のエッジに係合する第2の延長フラップを有し、前記第2の延長フラップは、前記剪断バンドストリップの、対向する前記第2のエッジに沿って直線的に、対向する前記第1のエッジに連続的に固定されていることを特徴とする、請求項6に記載の剪断バンド。
【請求項8】
前記第2の延長フラップは、前記剪断バンドストリップの、対向する前記第1のエッジに沿って直線的に、対向する前記第1のエッジに連続的に固定されていることを特徴とする、請求項6に記載の剪断バンド。
【請求項9】
前記第2の延長フラップは、対向する前記第1のエッジにステッチ編みによって固定されていることを特徴とする、請求項6に記載の剪断バンド。
【請求項10】
前記剪断バンドの、半径方向外側の前記第2の布層の一部分が、前記第2の延長フラップを含むことを特徴とする、請求項6に記載の剪断バンド。
【請求項11】
タイヤ用の複数の剪断バンドを構成する方法において、
単一の剪断バンドストリップをそれ自体の周りに螺旋状に巻き付けて円筒構造を形成するステップと、
単一の前記剪断バンドストリップの第1のエッジを、単一の前記剪断バンドストリップの前記第1のエッジから延びる第1のフラップによって、単一の前記剪断バンドストリップの、対向する第2のエッジに固定するステップと、
前記円筒構造を複数の位置で軸方向および円周方向に切断するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記切断するステップでは、軸方向に対向する平行な面を有する複数の環状の剪断バンドを形成することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記切断するステップでは、単一の前記剪断バンドストリップの第1の平面側から、複数の前記剪断バンドの各々の、半径方向外側の第1の布層を形成することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記切断するステップでは、単一の前記剪断バンドストリップの第2の平面側から、複数の前記剪断バンドの各々の、半径方向内側の第2の布層を形成することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
単一の前記剪断バンドストリップの前記第1のエッジの前記第1のフラップを、単一の前記剪断バンドストリップの、対向する前記第2のエッジにステッチ編みによって固定するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
各々の前記剪断バンドの、半径方向外側の前記第1の布層は、単一の前記剪断バンドストリップの前記第1のエッジから延びる前記第1のフラップの一部分を含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
各々の前記剪断バンドの、半径方向内側の前記第2の布層は、単一の前記剪断バンドストリップの前記第2のエッジから延びる第2のフラップの一部分を含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
単一の前記剪断バンドストリップの前記第2のエッジの前記第2のフラップを、単一の前記剪断バンドストリップの、対向する前記第1のエッジにステッチ編みによって固定するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非空気入りタイヤ、空気入りタイヤ、および/またはその他の技術に使用するための改良された剪断バンドを提供する。
【背景技術】
【0002】
1つの従来例は、内部空気圧なしで荷重を支持する、構造的に支持された弾性タイヤに関する。この非空気入りタイヤは、接地部と、トレッド部から半径方向内側に延びて、ホイール/タイヤの回転中にホイールに固定されたままになるようにされているビード部に固定されているサイドウォール部と、を含む。補強された環状の剪断バンドが、トレッド部の半径方向内側に配置されている。この剪断バンドは、少なくとも1つの剪断層と、剪断層の半径方向内側の範囲に接合された第1の膜と、剪断層の半径方向外側の範囲に接合された第2の膜と、を含む。膜の各々は、剪断層の動的剪断弾性率よりも十分に大きい長手方向引張弾性率を有し、その結果、荷重を受けると、タイヤの接地部は、膜の長さを一定に保ちながら、剪断層の剪断歪みによって平坦な接触領域に変形する。剪断層の剪断歪みによって、膜の相対変位が実質的に生じる。
【0003】
従来の別の非空気入りタイヤは、外側の環状の剪断バンドと、剪断バンドから半径方向内側に剪断バンドを横切って横方向に延びてホイールまたはハブに固定されている複数のウェブスポークと、を含む。剪断バンドは、環状の剪断層と、剪断層の半径方向内側の範囲に接合されている第1の膜と、剪断層の半径方向外側の範囲に接合されている第2の膜と、を含んでいてよい。荷重を受けている時には、この剪断バンドは、剪断バンドの剪断変形を含む作用により、地面との接触領域において変形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10,071,603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、剪断バンドは、タイヤにおいて望ましい性能上の利益をもたらすことができる。以下に説明するように、本発明による剪断バンドは、タイヤの性能能力をさらに高めることができる。このように改良された剪断バンド用の構造は、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤ、およびその他の製品にも同様に適用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるタイヤ用の剪断バンドは、タイヤの周囲で周方向に延びる、半径方向外側の環状の第1の布層と、タイヤの周囲で周方向に延びる、半径方向内側の環状の第2の布層と、を有する。剪断バンドは、第1のエッジを有し周方向および軸方向に螺旋状に巻かれた単一の剪断バンドストリップから形成されている。剪断バンドストリップの第1のエッジは、剪断バンドストリップの、対向する第2のエッジと係合する第1の延長フラップを有する。第1の延長フラップは、剪断バンドストリップの、対向する第2のエッジに沿って直線的に、対向する第2のエッジに連続的に固定されている。
【0007】
剪断バンドの別の態様によれば、単一の剪断バンドストリップの第1の平面側は、半径方向外側の第1の布層を含み、単一の剪断バンドストリップの第2の平面側は、半径方向内側の前記第2の布層を含む。
【0008】
剪断バンドのさらに別の態様によれば、螺旋状に巻かれた単一の剪断バンドストリップが、第1の平面側および第2の平面側を画定する、対向する平行な複数の環状のエッジを有するように、ブレードが、螺旋状に巻かれた剪断バンドストリップを切断している。
【0009】
剪断バンドのさらに別の態様によれば、第1の延長フラップは、対向する第2のエッジにステッチ編みによって固定されている。
【0010】
剪断バンドのさらに別の態様によれば、剪断バンドの、半径方向外側の第1の布層の一部分が、第1の延長フラップを含む。
【0011】
剪断バンドのさらに別の態様によれば、剪断バンドストリップの第2のエッジは、剪断バンドストリップの、対向する第1のエッジに係合する第2の延長フラップを有する。
【0012】
剪断バンドのさらに別の態様によれば、剪断バンドストリップの第2のエッジは、剪断バンドストリップの、対向する第1のエッジに係合する第2の延長フラップを有し、第2の延長フラップは、剪断バンドストリップの、対向する第2のエッジに沿って直線的に、対向する第1のエッジに連続的に固定されている。
【0013】
剪断バンドのさらに別の態様によれば、第2の延長フラップは、剪断バンドストリップの、対向する第1のエッジに沿って直線的に、対向する第1のエッジに連続的に固定されている。
【0014】
剪断バンドのさらに別の態様によれば、第2の延長フラップは、対向する第1のエッジにステッチ編みによって固定されている。
【0015】
剪断バンドのさらに別の態様によれば、剪断バンドの、半径方向外側の第2の布層の一部分が、第2の延長フラップを含む。
【0016】
本発明の方法は、タイヤ用の複数の剪断バンドを構成する。この方法は、単一の剪断バンドストリップをそれ自体の周りに螺旋状に巻き付けて円筒構造を形成するステップと、単一の剪断バンドストリップの第1のエッジを、単一の剪断バンドストリップの第1のエッジから延びる第1のフラップによって、単一の剪断バンドストリップの、対向する第2のエッジに固定するステップと、円筒構造を複数の位置で軸方向および円周方向に切断するステップと、を含む。
【0017】
この方法のバンドの別の態様によれば、切断するステップでは、軸方向に対向する平行な面を有する複数の環状の剪断バンドを形成する。
【0018】
この方法のバンドのさらに別の態様によれば、切断するステップでは、単一の剪断バンドストリップの第1の平面側から、複数の剪断バンドの各々の、半径方向外側の第1の布層を形成する。
【0019】
この方法のバンドのさらに別の態様によれば、切断するステップでは、単一の剪断バンドストリップの第2の平面側から、複数の剪断バンドの各々の、半径方向内側の第2の布層を形成する。
【0020】
この方法のバンドのさらに別の態様によれば、単一の剪断バンドストリップの第1のエッジの第1のフラップを、単一の剪断バンドストリップの、対向する第2のエッジにステッチ編みによって固定するステップをさらに含む。
【0021】
この方法のバンドのさらに別の態様によれば、各々の剪断バンドの、半径方向外側の第1の布層は、単一の剪断バンドストリップの第1のエッジから延びる第1のフラップの一部分を含む。
【0022】
この方法のバンドのさらに別の態様によれば、各々の剪断バンドの、半径方向内側の第2の布層は、単一の剪断バンドストリップの第2のエッジから延びる第2のフラップの一部分を含む。
【0023】
この方法のバンドのさらに別の態様によれば、単一の剪断バンドストリップの第2のエッジの第2のフラップを、単一の剪断バンドストリップの、対向する第1のエッジにステッチ編みによって固定するステップをさらに含む。
【0024】
[定義]
以下のように、本明細書および特許請求の範囲において各用語が用いられる。
「接合」は、接着剤、溶接、摩擦、機械的係合、融合、および/または他の結合方法によって、1つの物品を別の物品に結合することを意味する。
【0025】
「エイペックス」は、ビードコアの半径方向上方でプライと折り返しプライとの間に位置するエラストマーのフィラーを意味する。
【0026】
「環状」は、リングのように形成されることを意味する。
【0027】
「アラミド」および「芳香族ポリアミド」はいずれも、繊維形成物質が一般に、アミド結合の少なくとも85%が2つの芳香環に直接結合している合成芳香族ポリアミドの長鎖として認識される、製造された繊維を意味する。アラミドまたは芳香族ポリアミドの代表例は、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)である。
【0028】
「アスペクト比」は、タイヤの断面幅に対する断面高さの比を意味する。例えば、アスペクト比は、無負荷時および標準の圧力で膨張した時のタイヤサイドウォール同士の外側の間の軸方向最大距離であってよく、百分率で表するために100を掛けたものであってよい。低アスペクト比は、65以下のアスペクト比を有するタイヤを意味する場合がある。
【0029】
「ビードの断面のアスペクト比」は、ビードの断面幅に対する断面高さの比を意味する。
【0030】
「非対称トレッド」は、タイヤの中心面または赤道面(EP)を中心として対称でないトレッドパターンを有するトレッドを意味する。
【0031】
「軸方向」および「軸方向」は、タイヤの回転軸に平行な線または方向を指す。
【0032】
「ビード」は、タイヤの、プライコードによって包まれ、フリッパ、チッパ、エイペックス、トウガード及びチェーファーのような他の補強部材を有していても有していなくてもよい、設計リムに適合するように成形された環状引張部材を含む部分を意味する。
【0033】
「ベルト構造」は、トレッドの下にあり、ビードに固定されておらず、タイヤの赤道面(EP)に対して傾斜したコードを有する、織られていても織られていなくてもよい平行コードの少なくとも2つの環状の層またはプライを意味する。ベルト構造は、また、拘束層として作用する、比較的小さい角度で傾斜した平行なコードのプライを含んでいてもよい。
【0034】
「バイアスタイヤ」(クロスプライ)は、カーカスプライ内の補強コードがタイヤの赤道面(EP)に対して約25°~65°の角度でビードからビードまでタイヤを斜めに横切って延びているタイヤを意味する。複数のプライが存在する場合、プライコードは、交互の層において互いに反対の角度に延びる。
【0035】
「編組管」は、その長さに沿って規則的な斜めのパターンを形成する通常は3つ以上の構成要素ストランドを有するコード/フィラメント/ストランド/ストリップを含む管状構造を意味する。この管状構造は、いくつかのストランドを一緒に編むかまたは織ることによって形成された、幅狭のロープ状のバンドであってよい。編むことにより、一緒に斜めに配置された交差する複数のストリップを有し、それによって管状の布の幅狭のストリップを形成する、織り合わされた布の管が形成され、それは平坦にされて、平坦な管状のストリップおよび/または層を形成してよい。
【0036】
「ブレーカ」は、タイヤの赤道面(EP)に対して、カーカスプライの平行な補強コードと同じ角度を有する平行な補強コードの少なくとも2つの環状の層またはプライを意味する。ブレーカは、通常、バイアスタイヤに関連している。
【0037】
「ケーブル」は、プライ状にされた2本以上の糸を一緒に撚ることによって形成されたコードを意味する。
【0038】
「カーカス」は、プライの上方の、ベルト構造、トレッド、アンダートレッド、およびサイドウォールゴムとは別であるが、ビードを含むタイヤ構造を意味する。
【0039】
「ケーシング」は、カーカスと、ベルト構造と、ビードと、サイドウォールと、トレッドおよびアンダートレッドを除くタイヤのその他のすべての構成要素と、を意味し、すなわちタイヤ全体を意味する。
【0040】
「チッパ」は、ビード領域を補強し、サイドウォールの、半径方向において最も内側の部分を安定させる機能を有する、ビード領域内に位置する布またはスチールコードの幅狭のバンドを指す。
【0041】
「円周方向の」および「円周方向に」は、赤道面(EP)に平行で軸方向に垂直な環状タイヤの表面の周囲に沿って延びる線または方向を意味する。これは、断面を見たときに半径がトレッドの軸方向の湾曲を画定する隣接する円曲線の組の方向を指すこともできる。
【0042】
本明細書で用いられる「複合の」は、2つ以上の層から構成されていることを意味する。
【0043】
「コード」は、タイヤの補強構造を構成する補強ストランドの1つを意味する。
【0044】
「コード角度」は、赤道面(EP)に対して、コードによって形成される、タイヤの平面図における左または右の鋭角を意味する。「コード角度」は、硬化しているが膨張していないタイヤにおいて測定される。
【0045】
「コードの撚り」は、コードの各糸(各ヤーン)が、糸の単位長さ当たりの所与の巻数(通常は1インチ当たりの巻数(TPI)または1メートル当たりの巻数(TPM)で表される)で撚り合わされた構成要素フィラメントを有することを意味する。さらに、糸は、コードの単位長さ当たりの所与の巻数で撚り合わされている。撚りの方向は、糸またはコードが垂直に保持されたときの、糸またはコードの螺旋の傾斜方向を指す。螺旋の傾斜が文字「S」の傾斜と方向が一致する場合、その撚りは「S」または「左側」と呼ばれる。螺旋の傾斜が文字「Z」の傾斜と方向が一致する場合、その撚りは「Z」または「右側」と呼ばれる。「S」または「左側」の撚り方向は、「Z」または「右側」の撚りとは逆方向であると理解される。「糸の撚り」は、糸がコードに組み入れられる前に糸に与えられる撚りを意味すると理解される。「コードの撚り」は、2本以上の糸が互いに撚り合わされてコードを形成するときにそれらに与えられる撚りを意味すると理解される。「dtex」は、糸に撚りが与えられる前の、糸の10,000メートルあたりのグラム単位の重量を意味すると理解される。
【0046】
「カットベルトプライ」はトレッド幅よりも小さい幅を有するベルトを指し、これは、タイヤのクラウン領域においてカーカスプライの上方に平坦に位置する。
【0047】
「クラウン」は、タイヤの、タイヤトレッドの近くの部分を意味する。
【0048】
「デニール」は、9000メートルあたりのグラム単位の重量(直線密度を表す単位)を意味する。「Dtex」は、10,000メートルあたりのグラム単位の重量を意味する。
【0049】
「密度」は、単位長さ当たりの重量を意味する。
【0050】
「動的剪断弾性率」は、ASTM D5992に従って測定された剪断弾性率を意味する。
【0051】
「エラストマー」は、変形後に寸法および形状を回復することができる弾性材料を意味する。
【0052】
「破断点伸び」は、ASTM D412-98aによって測定され、周囲温度ではなく100℃で生じる引張伸びを意味する。
【0053】
「赤道面(EP)」は、タイヤの回転軸に垂直でトレッドの中心を通る平面、またはトレッドの周方向中心線を含む平面を意味する。
【0054】
「展開するトレッドパターン」は、走行面が道路に接するようになっており、路面に対するタイヤの走行に起因するトレッドの摩耗に伴って展開するトレッドパターンを意味し、その展開は、トレッドの摩耗の程度にかかわらず、タイヤの使用/摩耗の全期間において実質的に変わらない付着性および道路ハンドリング性を得るように、タイヤの設計時に予め定められている。
【0055】
「布(ファブリック)」は、撚られていてもよい、基本的に一方向に延びるコードの網状体を意味し、次に、高弾性材料の多数の(撚られていてもよい)フィラメントから構成されている。
【0056】
「繊維」は、その直径または幅の少なくとも100倍の長さを有することを特徴とする、フィラメントの基本要素を形成する、天然または人工の物質の単位である。
【0057】
「フィラメントカウント」は、糸を構成するフィラメントの数を意味する。例えば1000デニールのポリエステルは約190本のフィラメントを有する。
【0058】
「フリッパ」は、強度のために、タイヤ本体内でビードワイヤを結び付ける、ビードワイヤの周囲の補強用布を指す。
【0059】
「フットプリント」は、タイヤトレッドの接触面、すなわち速度ゼロで標準の負荷および圧力の下で平坦面と接する領域を意味する。
【0060】
「ゲージ」は、一般に測定値を指し、具体的には厚さ測定値を指す。
【0061】
「溝」は、トレッドの周囲で周方向または横方向に、直線状、曲線状、またはジグザグに延びていてよい、トレッド内の細長い空隙領域を意味する。周方向に延びる溝と横方向に延びる溝とは、共通部分を有する場合がある。「溝幅」は、トレッドの、溝または溝部分が占める表面を、その溝または溝部分の長さで割ったものであってもよく、従って、溝幅は、長さ全体における平均の幅であってもよい。溝は、タイヤ内での深さが変わっていてよい。溝の深さは、トレッドの外周の周りで変化していてもよく、または、1つの溝の深さは一定であってもよいがタイヤ内の別の溝の深さとは異なっていてもよい。このような狭いまたは広い溝が、それらが相互接続する広い周方向溝と比較して実質的に小さい深さを有する場合には、それらは、関連するトレッド領域においてリブ状の特性を維持する傾向がある「タイバー」を形成するものとみなすことができる。本明細書で用いられる場合には、溝は、タイヤの接触面すなわちフットプリント内に開口したままであるのに十分な幅を有するようになっている。
【0062】
「高張力鋼(HT)」は、フィラメントの直径が0.20mmで、少なくとも3400MPaの引張強さを有する炭素鋼を意味する。
【0063】
「ヒステリシス」は動的損失正接(例えば、最大のtanδ)を意味する。材料の動的特性は、ASTM D5992に従ってMTS 831 Elastomer Test Systemで測定される。加硫材の試料(厚さが4mmで断面が400mm2の円筒状の試験片)の、周波数10Hz、80℃で、交流の単一の正弦曲線の剪断応力を加えられたときの反応が記録される。走査は、0.1パーセントから50パーセント(外側向きサイクル)、次いで50パーセントから0.1パーセント(戻りサイクル)の変形振幅で行われる。MPa単位の最大剪断弾性率Gmaxおよび損失角正接tanδの最大値(最大のtanδ)は、外側向きサイクル中に決定される。
【0064】
「内側」はタイヤの内部に向かうことを意味し、「外側」はその外部に向かうことを意味する。
【0065】
「インナーライナー」は、チューブレスタイヤの内面を形成しかつタイヤ内の膨張流体を収容する、エラストマーまたはその他の材料の、1つまたは複数の層を意味する。
【0066】
「インボード側」は、タイヤをホイールに装着してそのホイールを乗物に装着したときに、タイヤの、その乗物に最も近い側を意味する。
【0067】
「編む」は、糸を処理してテキスタイルまたは布を作り出す方法を意味する。編むことで、縫い目と呼ばれる糸の複数のループを、1つの線または管に形成することができる。編まれた布は、互いに噛み合うループの連続する多数の列からなっていてもよい。
【0068】
「LASE」は、特定の伸びにおける荷重である。
【0069】
「横方向」は、軸方向を意味する。
【0070】
「撚り長さ」は、撚られたフィラメントまたはストランドが別のフィラメントまたはストランドの周りを360°回転するように移動する距離を意味する。
【0071】
「荷重範囲」は、タイヤ・リム協会(The Tire and Rim Association, Inc.)の表によって定義される特定のタイプの用途で用いられる所与のタイヤの荷重および膨張の限界を意味する。
【0072】
試験片の「弾性係数」は、タイヤの周方向の1%の伸びにおける引張弾性係数に試験片の有効厚さを乗じたものを意味する。
【0073】
「メガ張力鋼(MT)」は、フィラメントの直径が0.20mmで、少なくとも4500MPaの引張強さを有する炭素鋼を意味する。
【0074】
「子午面」は、タイヤの回転軸に平行で、軸から径方向外側に延びる平面を意味する。
【0075】
「正味接触面積」は、トレッドの全周の周囲で測定された、所定の境界エッジ同士の間の接地部の総面積を意味する。
【0076】
「ネット-グロス比」は、トレッドの全周の周囲のトレッドの側方のエッジ同士の間のトレッドの設置部の総面積を、側方のエッジ同士の間のトレッドの全周の総面積で割ったものを意味する。
【0077】
「非方向性フットプリント」は、好ましい前進方向を有しておらず、トレッドパターンが好ましい進行方向に揃うことを確実にするために乗物の特定の1つまたは複数のホイール位置に位置決めされる必要がないトレッドを意味する。逆に、方向性トレッドパターンは、特定のホイールの位置決めを必要とする好ましい進行方向を有する。
【0078】
「標準荷重」は、タイヤの使用条件について適切な標準化機構によって指定された特定の設計膨張圧力および荷重を意味する。
【0079】
「標準張力鋼(NT)」は、フィラメントの直径が0.20mmで、少なくとも2800MPaの引張強さを有する炭素鋼を意味する。
【0080】
「アウトボード側」は、タイヤをホイールに装着してそのホイールを乗物に装着したときに、タイヤの、その乗物から最も遠い側を意味する。
【0081】
「プライ」は、ゴムで被覆され、半径方向に展開された、または平行なコードからなる、コード補強層を意味する。
【0082】
「径方向の」および「径方向に」は、タイヤの回転軸に径方向に向かう、またはタイヤの回転軸から径方向に離れる方向を意味する。
【0083】
「ラジアルプライ構造」は、1つ以上のカーカスプライ、または少なくとも1つのプライが、タイヤの赤道面(EP)に対して65°~90°の角度に向けられた補強コードを有するカーカスプライを意味する。
【0084】
「ラジアルプライタイヤ」は、少なくとも1つのプライがビードからビードまで延びるコードを有し、プライがタイヤの赤道面(EP)に対して65°から90°のコード角度で置かれている、ベルト付き、または周方向に拘束された空気入りタイヤを意味する。
【0085】
「リブ」は、少なくとも1つの周方向溝と、同様な第2の溝または側方のエッジとによって画定された、トレッド上の周方向に延びるゴムのストリップを意味し、このストリップは、完全な深さの溝によって横方向に分割されてはいない。
【0086】
「リベット」は、層内のコード同士の間の開放空間を意味する。
【0087】
「断面高さ」は、タイヤの赤道面(EP)における、公称リム直径からタイヤの外径までの径方向距離を意味する。
【0088】
「断面幅」は、タイヤが標準の圧力で24時間膨張させられているとき、およびその後であるが、荷重を受けていないときの、タイヤの軸に平行であって、タイヤのサイドウォールの外側同士の間の最大直線距離であって、ラベル、装飾、または保護バンドによるサイドウォールの隆起を除く距離を意味する。
【0089】
「自立ランフラット」は、タイヤを一定の時間、制限された速度で、非膨張状態で作動させた場合に、タイヤ構造だけで乗物の荷重を支えるのに十分な強度を有する構造を有するタイヤの種類を意味する。タイヤのサイドウォールおよび内面は、(例えば内部構造がない)タイヤ構造のみにより、潰れたり、それ自体の上に座屈したりすることはない。
【0090】
「サイドウォールインサート」は、タイヤのサイドウォール領域内に位置するエラストマーまたはコード補強材を意味する。インサートは、タイヤの外面を形成するカーカス補強プライおよび外側サイドウォールゴムへの追加物であってよい。
【0091】
「サイドウォール」は、タイヤの、トレッドとビードとの間の部分を意味する。
【0092】
「サイプ」または「切り込み部」は、トレッド表面を細分化して牽引力を向上させるタイヤのトレッド要素に成形された小さな長穴を意味し、サイプは、溝とは区別されるように、接触面またはフットプリント内にあるときに閉じるように構成されていてよい。
【0093】
「ばね定数」は、所与の圧力における荷重たわみ曲線の傾きで表されるタイヤの剛性を意味する。
【0094】
「剛性比」は、コードの両端部を支持し、固定された端部の間の中心の荷重で屈曲させた、固定三点曲げ試験により測定値を求めたときの、制御ベルト構造の剛性の値を他のベルト構造の剛性の値で割った値を意味する。
【0095】
「超高張力鋼(ST)」は、フィラメントの直径が0.20mmで、少なくとも3650MPaの引張強さを有する炭素鋼を意味する。
【0096】
「テナシティ」は、歪んでいない試験片の単位線密度当たりの力(gm/texまたはgm/デニール)として表される応力を意味する。
【0097】
「引張応力」は、力/断面積で表される力である。強度(psi)=12,800×比重×テナシティ(g/デニール)。
【0098】
コードの「張力」は、mN/texとして表されるコードにかかる力を意味する。
【0099】
「トウガード」は、タイヤの、各ビードの軸方向内側の、周方向に展開されたエラストマーのリムに接触する部分を指す。
【0100】
「トレッド」は、タイヤのケーシングに接着された際に、タイヤの、標準的に膨張して標準荷重を受けているときに道路に接触する部分を含む、成形されたゴム部品を意味する。
【0101】
「トレッド要素」または「牽引要素」は、リブまたはブロック要素を意味する。
【0102】
「トレッド幅」は、タイヤの回転軸を含む平面におけるトレッド表面の弧長を意味する。
【0103】
「インチ当たりの巻数」、すなわちTPIは、コードの各インチ長さに対するコードの撚りの巻数を意味する。
【0104】
「折り返し端部」は、カーカスプライの、プライが巻き付けられるビードから上方(すなわち径方向外側)に折り返される部分を意味する。
【0105】
「ウルトラ張力鋼(UT)」は、フィラメントの直径が0.20mmで、少なくとも4000MPaの引張強さを有する炭素鋼を意味する。
【0106】
「上下方向のたわみ」は、タイヤが荷重を受けてたわむ量を意味する。
【0107】
「織り」は、2つの別個の糸(yarn)または撚り糸(thread)の組が直角に織り合わされて布または層を形成するテキスタイル作製方法を意味する。長手方向の糸または撚り糸は縦糸(warp)と呼ばれ、横方向の糸または撚り糸は横糸(weftまたはfilling)と呼ばれる。
【0108】
「ホイール」または「ハブ」は、タイヤを支持し、乗物の軸に取り付けるための構造を意味する。
【0109】
「糸」は、テキスタイルの繊維またはフィラメントの連続するストランドの総称である。糸は、以下の形態で生じる。(1)一緒に撚られた多数の繊維、(2)撚られずに一緒に置かれた多数のフィラメント、(3)ある程度撚られて一緒に置かれた多数のフィラメント、(4)撚られていても撚られていなくてもよい単一のフィラメント(モノフィラメント)、(5)撚られていても撚られていなくてもよい材料の幅狭のストリップ。
【図面の簡単な説明】
【0110】
図1】本発明で使用するための、一実施形態の剪断バンドの一部分の概略斜視図である。
図2図1の部分の概略平面図である。
図3図1の剪断バンドの概略斜視図である。
図4図1の剪断バンドの、別の概略斜視図である。
図5図1の剪断バンドの、さらに別の概略斜視図である。
図6】本発明による、螺旋に巻かれて円筒状になっている図1の剪断バンドの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0111】
本発明の実施形態の、当業者に向けられた完全かつ実施可能な開示が、添付の図面を参照しつつ明細書に記載される。図面全体を通して、同じ符号は同じ部分を指す。
【0112】
ここで、本発明の実施形態を詳細に述べ、その1つ以上の実施形態を図面に示す。これらの実施形態は、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第10,071,603号の実施例に記載されているようなタイヤに使用することができる。各実施形態は、本発明の説明のために提供されるものであり、本発明を限定することを意味するものではない。例えば、一実施形態の一部分として図示または説明される特徴は、他の実施形態とともに用いられて、さらに第3の実施形態を生じさせてもよい。本発明は、これらの実施形態と、その他の修正および変形例を含むことが意図されている。説明のために、1つ以上の図面に、本実施形態のタイヤの一部分のみが示されている場合があることに留意されたい。当業者は、本明細書に開示される教示を用いて、同一または実質的に同様の特徴が、本実施形態のタイヤの他の部分において繰り返されてもよいことを理解するであろう。
【0113】
本発明は、例えば、非空気入りタイヤ、空気入りタイヤ、および/または、他の技術を含む様々な製品に用いることができる改良された剪断バンドを提供する。一実施形態の剪断バンドは、編まれた個々の層から構成された複合体として構成されてもよく、これは、次に、好ましくは、本明細書に記載されるような特定の方法で組み合わされた場合に、個々の材料のうちの1つのみから構成された剪断バンドから得られるであろうものを超える総合的な物理的特性および性能特性をもたらす、特定の物理的特性を有する特定の材料から構成されてもよい。単なる一例として、転がり抵抗の改善とタイヤ設計の柔軟性とが得られる。
【0114】
従来の剪断バンドの材料を、本明細書に記載されるように、超軽量で、三次元の、編まれた複数の布層に置き換えてよい。他の応用例では、コンピュータ化された横糸および縦糸の機械が、物理的、熱的、および/または機械的な特性が改善された三次元のテキスタイルを開発し得る。これらのテキスタイルは、航空宇宙産業、自動車産業、地質工学産業、海洋産業、医療産業、および/または、その他の応用可能な産業において使用され得る。このテキスタイル群の中で、編まれた三次元の布地は、スペーサ層によって相互に連結されているが離れている2つの独立した上層および下層(スキンとも呼ばれる)の構造を画定することができる。このタイプの構造は、横編みまたは縦編みによって作製することができ、縦編みが最も一般的である。編むサイクルの間に、上層および下層は、二重針機械を用いて同時に編まれてもよい。
【0115】
本実施形態の編まれたマルチフィラメントの糸は上層および下層を画定することができ、一方、モノフィラメントの糸(またはパイル)は、スペーサ層を画定することができる。本実施形態の剪断バンドは、上層に固定された第1のゴム層と、下層に固定された第2のゴム層とをさらに含んでもよい。剪断バンドは、ポリウレタンまたは同様の繊維などの材料によって、間隔をおいて分割されてもよい。剪断バンドの厚さは、7.0mm~10.0mmであってよい。上層および下層のマルチフィラメントの糸と、スペーサ層のモノフィラメントの糸は、ポリエステルまたはその他の適切な材料から形成されていてよい。
【0116】
図1~2に示すように、本発明の実施形態の剪断バンドストリップ10は、上部の第1のゴム層と、上部の第1のゴム層に固定された上部の第1の布層21と、下部の第2のゴム層と、下部の第2のゴム層に固定された下部の第2の布層22と、上部の第1の布層と下部の第2の布層とを径方向に相互に接続するスペーサ層30と、を含んでいてよい。層21、22、30は、弾性ポリウレタンおよび/またはその他の適切な材料の長手方向スペーサ部40によって、均一な複数の部分に分けられていてよい。
【0117】
上部の第1の布層21と下部の第2の布層22とは、適切な材料のマルチフィラメントの糸で構成されていてよい。マルチフィラメントの糸は、撚り合わせられた部分が差し込まれることによって巻かれる場合を除いて真っ直ぐに延びる平行な列に整列させられた連続的な複数のフィラメントから構成されていてよく、それにより均等で滑らかな外観を糸に付与するとともに、糸の量を多くしない。フィラメントの大部分は、必ずしもサイジングを必要としない。しかしながら、サイジングは、それらの効率をさらに15~20%改善することができる。サイジングは糸の摩擦抵抗を改善することができ、フィラメントを結合して、織る前の糸に存在する破断したフィラメント、または織る間に破断したフィラメントが剥がれることや、混ざり合うことを防止することができる。これを達成するために、フィラメントのサイズは、フィラメントを結合させるのに十分な繊維に対する接着性を有するように選択される。マルチフィラメントの糸は、重量を減らすために空隙スペース23(図1図2)を有するパターンを形成してよい。空隙スペース23は、六角形(図1~2)、正方形、直交、九角形、三角形等の任意の適切な形状であってよい。
【0118】
本実施形態のスペーサ層30は、適切な材料のモノフィラメントの糸から構成されてよい。モノフィラメントの糸は、単一の中実のフィラメントからなるものであってよい。モノフィラメントの糸は、断面が円形で中実であってよい。フィラメントの形状は、非円形のフィラメント、中空のフィラメント、および/または、その他の形状のモノフィラメントを作るように変更されてもよい。モノフィラメントの糸の直径の範囲は、100.0μm~2000.0μmであってよい。モノフィラメントの糸の例としては、釣糸、デンタルフロス、スポーツ用ラケットのストリング、歯ブラシの剛毛、および/または、その他の適切な用途のものを含む。中空のモノフィラメントは、より柔らかい縫糸の用途に使用することができ、一方、エラストマーのモノフィラメントは、スペーサ層30などの圧力層に用途を見出すことができる。スペーサ層30のモノフィラメントは、モノフィラメントを布層に直接編むまたは織るなどの任意の適切な方法で、布層21、22に取り付けてよい。
【0119】
本発明によれば、螺旋状に巻かれた環状リング構造300(図3図6)を構成するように、上部の第1の布層21の、オーバーラップする第1の延長フラップ310を、同じ上部の第1の布層21の、半径方向外側の別の第1の部分211にステッチ編みすることで、剪断バンドストリップ10によりリング構造300を形成することができる。それによって、結果として生じるリング構造300は、例えばブレード601によって軸方向および円周方向に切断され、非空気入りタイヤの剪断バンドまたは空気入りタイヤのベルト/オーバーレイ構造のような、本実施形態のタイヤ用の剪断バンドとして使用するための平行な環状リング611を形成してよい。下部の第2の布層22は、下部の第2の布層22の半径方向内側の別の第2の部分212(図6)にステッチ編みする第2の延長フラップ320をさらに有していてよい。
【0120】
半径方向内側の第2の延長フラップ320を、下部の第2の布層22の、半径方向内側の同じ第2の部分212(図6)に縫い合わせるように、ステッチ編みアーム(図示せず)が、軸方向の一方の端部から螺旋構造300の内部に入り、半径方向内側の第2の延長フラップ320に斜めに近づくように、ステッチ編みを行ってよい。半径方向外側の第1の延長フラップ310を、上部の第1の布層21の、半径方向外側の同じ第1の部分211(図6)に縫い合わせるように、ステッチ編みアームが、螺旋構造300の外部を横切って軸方向に進み、軸方向の一方の端部から斜めに、半径方向外側の第1の延長フラップ310に近づいてよい。これらのステッチ編み工程は、任意の連続した順序で行われてよい。ブレード601がリング611を分離すると、それによって、リングは、前述したように、剪断バンドおよび/またはベルト/オーバーレイ構造として用いられるように、螺旋状に固定された内部および外部の個別の環状リング611を形成してよい。
【0121】
剪断バンドストリップ10は、トレッドと、軸-ハブに接続された支持構造との間の複合材であってよい。剪断バンドストリップ10は、ゴムまたは補強ゴムのリングとして構成されてよい。剪断バンドストリップ10は、ゴム(および/または補強ゴム)とその他の材料との複合材から構成されてもよい。そのような材料の1つは、3次元に織られた材料(図1)であってよい。前述したように、剪断バンドストリップ10は、リング状の3次元布材であってよい。3次元に織られた材料は、編み針によってフィラメントを上下から、予め水平に層状にされたフィラメントの土台部分に導入できる特殊な機械上に構成できる。したがって、独立して生成される上部の布または下部の布はなくてもよく、1つの3次元構造全体が1ステップで作られる。延長フラップ310、320は、三次元でないエッジを延長することによって生成されてもよい。それにより、剪断バンドストリップ10は、2つのゴム層の間に挟まれたリング状の3次元の布を含んでいてよい。リング状の3次元の布は、トレッド層および支持構造に直接接続されてよい。
【0122】
当業者は、本明細書の開示と以下の特許請求の範囲の中に入る本発明の多数の実施形態が作られてよいことを理解するであろう。本発明は、当業者によって決定される通りに、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内に入る、本明細書に記載された実施形態に対してなされ得る様々な変更を含むことが理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】