(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015335
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】マスク及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020118095
(22)【出願日】2020-07-08
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】593065110
【氏名又は名称】イイダ靴下株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 裕介
(57)【要約】
【課題】 低コストで製造でき、繰り返し使用可能であると共に、マスクとして優れた諸機能を発揮できる通気性の良いマスク及びその製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】マスクは、編立てられた筒状体の側面の対向する稜線を折り畳んで二重の平面編地でマスク本体を形成し、当該マスク本体に紐状の耳掛けを取り付けてなるマスクであって、前記マスク本体の一の平面編地が、着用者に接触する側の外側編地をプレーン編みで編成されると共に、前記二重の平面編地間に形成された内部空間側の内側編地をパイル編みで編成され、前記マスク本体の他の平面編地が、メッシュ編みで編成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
編立てられた筒状体の側面の対向する稜線を折り畳んで二重の平面編地でマスク本体を形成し、当該マスク本体に紐状の耳掛けを取り付けてなるマスクであって、
前記マスク本体の一の平面編地が、着用者に接触する側の外側編地をプレーン編みで編成されると共に、前記二重の平面編地間に形成された内部空間側の内側編地をパイル編みで編成され、
前記マスク本体の他の平面編地が、メッシュ編みで編成されることを特徴とする
マスク。
【請求項2】
請求項1に記載のマスクにおいて、
前記筒状体が丸編みで編立てられたことを特徴とする
マスク。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のマスクにおいて、
前記一及び他の平面編地が略矩形状で形成され、当該一及び他の平面編地の内側編地及び外側編地のうち少なくとも1つの編地における略矩形状の4つの角領域が平編みで編成されることを特徴とする
マスク。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のマスクにおいて、
前記一及び他の平面編地が、天然繊維由来の糸で編成された表糸と、化学繊維由来の糸で編成された裏糸と、から編成されることを特徴とする
マスク。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のマスクにおいて、
前記耳掛けが、丸編みで表側と裏側とが同じ供給量の糸で編成されてなることを特徴とする
マスク。
【請求項6】
請求項1~6のいずれかに記載のマスクにおいて、
編立てられた筒状体の側面の対向する稜線を折り畳んで二重の平面編地を形成してなる内部フィルターであって、少なくとも一の平面編地がパイル編みで編成され、前記内部空間及び/又は前記一の平面編地のうちの着用者に接触する側の外側編地に着脱可能な内部フィルターを備えることを特徴とする
マスク。
【請求項7】
編立てられた筒状体の側面の対向する稜線を折り畳んで二重の平面編地でマスク本体を形成するマスク本体製造工程であって、
当該マスク本体の一の平面編地のうち着用者に接触する側の外側編地をプレーン編みで編成すると共に当該二重の平面編地間に形成された内部空間側の内側編地をパイル編みで編成し、前記マスク本体の他の平面編地をメッシュ編みで編成するマスク本体製造工程と、
前記マスク本体に紐状の耳掛けを取り付ける耳掛け形成工程と、を含むことを特徴とする
マスク製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクとして優れた諸機能を発揮すると共に、低コストで製造でき、繰り返し使用可能で、圧迫感を軽減して着用感にも優れたマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、新型コロナウィルス(COVID-19)による感染症が世界的に流行するなかで、マスク着用の重要性が増している。マスクは、着用者の顔面と密着することでウィルスを含んだ飛沫等からの感染予防や着用者からの飛沫拡散防止の効果を発揮する。
【0003】
しかし、マスクを長時間着用する場合には、着用者の口元が圧迫され、その密着性から息苦しさの原因となり、着用感を低下させている。特に、気温の上昇する夏場では、マスクを長時間着用することで、マスク内に暑さと湿度が籠もり、熱中症の原因ともなり、著しく着用感を低下させるものとなる。
【0004】
その一方で、現在では、マスクは、不織布を用いて多層化する等の高機能化が進んだ結果、複雑な製造工程が必要とされ、製造コストが嵩んで高額化している。また、マスクは、従来から使い捨て型(ディスポーザブルタイプ)が主流であるため、購入者の経済的負担が大きく、また大量に廃棄される使い捨てマスクが環境に与える負荷も大きいものとなっている。
【0005】
そのため、低コストで製造でき、繰り返し使用可能であると共に、マスクとして優れた諸機能を発揮できる通気性の良いマスクが望まれている。従来のマスクでは、通気性を向上させる目的で、メリヤス生地を用いたマスクが提案されている。
【0006】
このような従来のマスクとしては、例えば、マスク本体を丸編み機を用いて筒状にメリヤス編成すると共に、該マスク本体の中央部においてシリンダの略半周にあるニードルを非編成レベルに置き、残る略半周のニードルにてシリンダの正逆往復回転により減らし目次いで増やし目を行いながら編成することで立体形状に構成したマスクが開示されている(特許文献1参照)。
【0007】
この他にも、従来のマスクとしては、例えば、ニット生地を用いたマスクであって、ニット生地には、ブラックシリカの微粉末を含有する鉱物含有繊維が、マスクの表側および裏側のうち裏側に相当する面だけにプレーティング編みされたマスクが開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3153416号公報
【特許文献2】特開2010-162209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来のマスクでは、例えば、特許文献1のように、マスク本体を丸編み機を用いて筒状にメリヤス編成し、立体形状に構成したマスクも提案されているが、単層のメリヤス生地では、通気性や飛沫吸収等のフィルターとしてのマスクの諸機能を同時にすべて兼ね備えてはおらず、機能的には不織布マスクに劣るものにとどまっている。
【0010】
また、従来のマスクとして、例えば、特許文献2のように、ブラックシリカの微粉末等の天然鉱石を練り込んで、天然鉱石による健康的な作用を享受しようとするものがあるが、天然鉱石が練り込まれた状態を維持するために洗濯できないことから、繰り返し使用できず、実質的には使い捨て型マスクにとどまり、購入者の経済的負担が大きいものとなっている。
【0011】
このようなことから、低コストで製造でき、繰り返し使用可能であると共に、マスクとして優れた諸機能を発揮できる通気性の良いマスクが望まれているものの、そのような需要者のニーズをすべて満たすような使い勝手の良い優れたマスクは現在のところ見当たらない。
【0012】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、低コストで製造でき、繰り返し使用可能であると共に、マスクとして優れた諸機能を発揮できる通気性の良いマスク及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るマスクは、編立てられた筒状体の側面の対向する稜線を折り畳んで二重の平面編地でマスク本体を形成し、当該マスク本体に紐状の耳掛けを取り付けてなるマスクであって、
前記マスク本体の一の平面編地が、着用者に接触する側の外側編地をプレーン編みで編成されると共に、前記二重の平面編地間に形成された内部空間側の内側編地をパイル編みで編成され、前記マスク本体の他の平面編地が、メッシュ編みで編成されるものである。このように、一の平面編地が、着用者に接触する側の外側編地をプレーン編みで編成されると共に、前記二重の平面編地間に形成された内部空間側の内側編地をパイル編みで編成され、他の平面編地が、メッシュ編みで編成されることから、前記一の平面編地のうち着用者に接触する内側編地がプレーン編みで編成されて着用者への肌触りが優しいものとなり、一の平面編地のうち前記内部空間側に位置する外側編地がパイル編みで編成されて飛沫等の空気中の浮遊物が確実に吸収されると共に高い膨出効果が得られ、さらに、外部に接する編地である他の平面編地がメッシュ編みで編成されて高い通気性と立体形状が形成されるという多層構造が簡素な製法で編立てにより形成されることとなり、マスクとしての高度なフィルター機能と快適な通気性を両立すると共に、洗濯により繰り返し使用することが可能となり、さらに、簡素な製法により製造コストを抑えて大量生産できるマスクが実現される。
【0014】
また、本発明に係るマスクは必要に応じて、前記筒状体が丸編みで編立てられたものである。このように、前記筒状体が丸編みで編立てられたことから、マスクを構成する多層構造が極めて簡易に得られると共に、着用者の呼吸に伴って生じる空気の流れに応じてさらに立体的な起伏ある動きが可能となることとなり、通気性の高さを維持しつつより着用感の高いマスクを低コストで得ることができる。
【0015】
また、本発明に係るマスクは必要に応じて、前記一及び他の平面編地が略矩形状で形成され、当該一及び他の平面編地の内側編地及び外側編地のうち少なくとも1つの編地における略矩形状の4つの角領域が平編みで編成されるものである。このように、前記一及び他の平面編地が略矩形状で形成され、当該一及び他の平面編地の内側編地及び外側編地のうち少なくとも1つの編地における略矩形状の4つの角領域が平編みで編成されることから、着用者の呼吸に伴って生じる空気の流れに応じて立体的な起伏ある動きが当該4つの角領域で編成された平編みで強固に支持されて前記一及び他の平面編地の膨出の基端となって、確実に立体成形されることとなり、通気性の高さを維持しつつより安定感のある使用感と共に着用感の高いマスクを低コストで得ることができる。
【0016】
また、本発明に係るマスクは必要に応じて、前記一及び他の平面編地が、天然繊維由来の糸で編成された表糸と、化学繊維由来の糸で編成された裏糸と、から編成されるものである。このように、前記一及び他の平面編地が、天然繊維由来の糸で編成された表糸と、化学繊維由来の糸で編成された裏糸と、から編成されることから、表糸では天然繊維由来の水分に対する親和性の高さから高い吸湿性が発揮されて空気中の飛沫を吸収しやすくなると共に、化学繊維由来の糸で編成された裏糸により速乾性や通気性の高さが得られると共に摩擦や摩耗等に対する経年的な耐久性が発揮されることから、マスクとしての高度なフィルター機能と快適な通気性を両立すると共に、洗濯を行うことで、さらに長期間にわたって繰り返し使用することが可能となる。
【0017】
また、本発明に係るマスクは必要に応じて、前記耳掛けが、丸編みで表側と裏側とが同じ供給量の糸で編成されてなるものである。このように、前記耳掛けが、丸編みで表側と裏側とが同じ供給量の糸で編成されてなることから、表側の編地が外部の円筒面にあり裏側の編地が内部の円筒面にあることで表側の編地が裏側の編地より面積(表面積)が大きい一方で表側の編地と裏側の編地とが同じ供給量の糸から形成され、表側の編地から裏側の編地に向かって内側に巻き込む方向の強い収縮力が作用して自然に丸まった形状が紐状の耳掛けとして形成されることとなり、簡易な製法で、より自然で柔らかい感触の耳掛けが形成され、通気性の高さを維持しつつ耳への優しい着け心地と共に着用感の高いマスクを低コストで得ることができる。
【0018】
また、本発明に係るマスクは必要に応じて、編立てられた筒状体の側面の対向する稜線を折り畳んで二重の平面編地を形成してなる内部フィルターであって、少なくとも一の平面編地がパイル編みで編成され、前記内部空間及び/又は前記一の平面編地のうちの着用者に接触する側の外側編地に着脱可能な内部フィルターを備えるものである。このように、編立てられた筒状体の側面の対向する稜線を折り畳んで二重の平面編地を形成してなる内部フィルターであって、少なくとも一の平面編地がパイル編みで編成され、前記内部空間及び/又は前記一の平面編地のうちの着用者に接触する側の外側編地に着脱可能な内部フィルターを備えることから、当該内部フィルターも洗濯により繰り返し使用できると共にパイル編みの編地によりさらに確実に空気中の飛沫を吸収できることとなり、同質素材の3層構造のマスクとして、当該内部フィルターをマスク本体とは別個に取り出して洗濯でき着脱可能に繰り返し使用できて利便性がさらに高められ、通気性の高さを維持しつつさらに高度なフィルター機能と共に着用感の高いマスクを低コストで得ることができる。
【0019】
また、本発明に係るマスク製造方法は、編立てられた筒状体の側面の対向する稜線を折り畳んで二重の平面編地でマスク本体を形成するマスク本体製造工程であって、当該マスク本体の一の平面編地のうち着用者に接触する側の外側編地をプレーン編みで編成すると共に当該二重の平面編地間に形成された内部空間側の内側編地をパイル編みで編成し、前記マスク本体の他の平面編地をメッシュ編みで編成するマスク本体製造工程と、前記マスク本体に紐状の耳掛けを取り付ける耳掛け形成工程と、を含むものである。このように、編立てられた筒状体の側面の対向する稜線を折り畳んで二重の平面編地でマスク本体を形成するマスク本体製造工程であって、当該マスク本体の一の平面編地のうち着用者に接触する側の外側編地をプレーン編みで編成すると共に当該二重の平面編地間に形成された内部空間側の内側編地をパイル編みで編成し、前記マスク本体の他の平面編地をメッシュ編みで編成するマスク本体製造工程と、前記マスク本体に紐状の耳掛けを取り付ける耳掛け形成工程と、を含むことから、前記一の平面編地のうち着用者に接触する内側編地がプレーン編みで編成されて着用者への肌触りが優しいものとなり、一の平面編地のうち前記内部空間側に位置する外側編地がパイル編みで編成されて飛沫等の空気中の浮遊物が確実に吸収されると共に高い膨出効果が得られ、さらに、外部に接する編地である他の平面編地がメッシュ編みで編成されて高い通気性と立体形状が形成されるという多層構造のマスクが簡素な製法で編立てにより形成されることとなり、マスクとしての高度なフィルター機能と快適な通気性を両立すると共に洗濯により繰り返し使用可能なマスクが、簡素な製法によって製造コストを抑えて大量生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るマスクの構成を説明する説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るマスクの製造過程を示す説明図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るマスクの構成を説明する説明図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係るマスクの構成を説明する説明図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係るマスクの構成を説明する説明図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係るマスクの着用状態を説明する説明図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態に係るマスクの耳掛けの製造過程を説明する説明図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態に係るマスクの着用状態を説明する説明図である。
【
図9】本発明の第4の実施形態に係るマスクの内部フィルターの製造過程を説明する説明図である。
【
図10】本発明の第4の実施形態に係るマスクの内部フィルターの使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係るマスクを上記
図1~
図3に基づいて説明する。
【0022】
本実施形態に係るマスクは、
図1に示すように、編立てられた筒状体の側面の対向する稜線(一の稜線1a及び他の稜線1b)を折り畳んで二重の平面編地でマスク本体1を形成し、このマスク本体1に紐状の耳掛け2を取り付けてなるマスクであって、このマスク本体1の一の平面編地11が、着用者に接触する側の外側編地11aをプレーン編みで編成されると共に、このマスク本体1の二重の平面編地間に形成された内部空間B側の内側編地11bをパイル編みで編成され、他の平面編地12が、メッシュ編みで編成される構成である。
【0023】
このマスク本体1を構成する筒状体の編立ての種類については、筒状体が編立てられれば特に限定されず、平編みでも丸編みでも可能であり、より好ましくは丸編みとすることであり、より立体感に富んだマスクを作成することができ、発話時や呼吸時に息苦しくない良好な着心地が得られる。
【0024】
また、この一の平面編地11及び他の平面編地12に用いる糸の材質は、特に限定されないが、より好ましくは、この一の平面編地11及び他の平面編地12が、天然繊維由来の糸で編成された表糸と、化学繊維由来の糸で編成された裏糸と、から編成されるものである。
【0025】
天然繊維由来の糸としては、例えば、綿、絹、麻等を用いることができ、このうち例えば、綿を用いることができる。化学繊維由来の糸としては、ナイロン等を用いることができる。
【0026】
このように、この一の平面編地11及び他の平面編地12が、天然繊維由来の糸で編成された表糸と、化学繊維由来の糸で編成された裏糸と、から編成されることから、表糸では天然繊維由来の水分に対する親和性の高さから高い吸湿性が発揮されて空気中の飛沫を吸収しやすくなると共に、化学繊維由来の糸で編成された裏糸により速乾性や通気性の高さが得られると共に摩擦や摩耗等に対する経年的な耐久性が発揮されることから、マスクとしての高度なフィルター機能と快適な通気性を両立すると共に、使用後に洗濯を適宜行うことで、さらに長期間にわたって繰り返し使用することが可能となる。
【0027】
図1(a)に示すように、一の平面編地11は、着用者に接触する側の編地となり、他の平面編地12は、外気に接する側の編地となる。また、
図1(a)に示すように、上述した筒状体の側面の対向する稜線のうち、一の稜線1aがマスク本体1の上端を形成し、他の稜線1bがマスク本体1の下端を形成する。
【0028】
本実施形態に係るマスクは、耳掛け2を縫製する耳掛け縫合部21がこの二重の平面編地の膨出の基端となって、この一の平面編地11と、着用者の口元周辺との間に広い口元空間(口元領域C)が確実に形成される。
【0029】
図1(b)に示すように、この一の平面編地11及び他の平面編地12は、各々、内側と外側の両面に編地を有しており、すなわち、各々、外側編地11a及び内側編地11b、並びに外側編地12a及び内側編地12bを有するように編立てられる。
【0030】
この一の平面編地11については、着用者に接触する側の外側編地11aがプレーン編みで編成されると共に、この二重の平面編地間に形成された内部空間B側の内側編地11bがパイル編みで編成される。
【0031】
着用者に接触する側の外側編地11aがプレーン編みで編成されることから、着用者がマスクを着用してマスクに接触した際に柔らかく優しい肌触りとなる。また、外側編地11bがパイル編みで編成されることから、タオル生地と同様に優れた吸水性を発揮するので、確実に空気中を浮遊する飛沫を吸収できる。
【0032】
この他の平面編地12については、外側編地12a及び内側編地12b共にメッシュ編みで編成される。このように、メッシュ編みによる編成によって、この他の平面編地12は高い通気性が実現される。
【0033】
この耳掛け2は、紐状の形状であれば特に限定されないが、綿等の天然繊維を糸に用いることで、耳への肌触り感を向上することが可能である。
【0034】
次に、このマスクの製造方法について以下説明する。
【0035】
(マスク本体製造工程)
マスク本体製造工程では、編立てられた筒状体の側面の対向する稜線を折り畳んで二重の平面編地でマスク本体1を形成する(
図2の工程:S11~S17)。
【0036】
先ず、このマスク本体1を構成する筒状体は、
図2に示すように、丸編みによって、開始位置から袋編みで開口状の一の端部1cが編立てられ(S11)、引き続いて編立られて筒状に形成され(S12~S13)、編立ての末端部では袋編みでルーズコースによるかがり縫いで開口状の他の端部1dが編立てられる(S14)。すなわち、マスク自体が連続した一連の編立て工程で、一気通貫に筒状体を形成して作成されるので、従来のような複数工程で多層構造を形成する製法と比べても、簡易且つ大量に製造することが可能である。
【0037】
編立てられた筒状体について、
図2に示すように、筒状体の側面の任意の対向する稜線(一の稜線1a及び他の稜線1b)を折り畳むことで(折り畳み方向A)(S15)、二重の平面編地である一の平面編地11及び他の平面編地12が形成される(S16)。この一の稜線1a及び他の稜線1bは、筒状体の側面にある任意の対向する稜線であれば特にその位置は限定されない。
【0038】
このように、この筒状体が折り畳まれることで、
図2に示すように、この二重の平面編地間(一の平面編地11及び他の平面編地12間)に内部空間Bが形成され、この二重の平面編地から構成される多層構造を有する平面状のマスク本体1が簡易な製法で形成される(S17)。
【0039】
(耳掛け形成工程)
次に、耳掛け形成工程では、上記のマスク本体製造工程で得られたマスク本体1に紐状の耳掛け2を取り付ける(
図2の工程:S21)。
【0040】
すなわち、
図2の下段に示すように、このマスク本体1の両端に構成された一の端部1c及び他の端部1dに各々紐状の耳掛け2が耳掛け縫合部21で縫製されてマスクが完成する。すなわち、すべての工程のうちで縫製が必要なのは、この紐状の耳掛け2の耳掛け縫合部21での縫製のみという極めて簡素な製法となる。
【0041】
このような製法によって、高い通気性と立体形状が形成される多層構造のマスクが簡素な製法で編立てにより形成されることとなり、マスクとしての高度なフィルター機能と快適な通気性を両立すると共に洗濯により繰り返し使用可能なマスクが、簡素な製法によって製造コストを抑えて大量生産することができる。
【0042】
このようにして得られたマスクを着用者が着用した状態については、
図3(a)に示すように、着用者が外部に接する側(外部から見える側)の編地としてメッシュ編みで編成された他の平面編地12が外部に露出するものとなる。
【0043】
また、着用者側から見たマスクの外観は、
図3(b)に示すように、この一の平面編地11のうち、プレーン編みで編成された外側編地11aが露出する。外部に接する側(外部から見える側)から見たマスクの外観は、
図3(c)に示すように、この他の平面編地12のうち、メッシュ編みで編成された外側編地12aが露出する。このように、本実施形態に係るマスクは、着用者側では、プレーン編みで編成される外側編地11aによって着用感を高めると同時に、外部から見える側では、メッシュ編みで編成された他の平面編地12によって、外観上の涼感も高めることができる。
【0044】
このように、本実施形態に係るマスクは、この一の平面編地11のうち着用者に接触する外側編地11aがプレーン編みで編成されて着用者への肌触りが優しいものとなり、一の平面編地11のうちこの内部空間B側に位置する内側編地11bがパイル編みで編成されて飛沫等の空気中の浮遊物が確実に吸収されると共に高い膨出効果が得られ、さらに、外部に接する編地である他の平面編地12がメッシュ編みで編成されて高い通気性と立体形状が形成されるという多層構造が簡素な製法で編立てにより形成されることとなり、マスクとしての高度なフィルター機能と快適な通気性を両立すると共に、涼しげな外観も得られ、洗濯により繰り返し使用することが可能となり、さらに、簡素な製法により製造コストを抑えて大量生産できるマスクが実現される。
【0045】
また、上述したように、筒状体の編立ては、特に限定されないが、より好ましくは丸編みで編立てられることである。このように、この筒状体が丸編みで編立てられることから、マスクを構成する筒状体が一連の編立て動作で極めて簡易に得られ、またマスクの多層構造が折り畳むのみという極めて簡易に得られると共に、マスク本体1の立体的な膨出形状を形成しやすくなることとなり、通気性の高さを維持しつつより着用感の高いマスクを低コストで得ることができる。
【0046】
(本発明の第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係るマスクを上記
図4~
図7に基づいて説明する
【0047】
本発明の第2の実施形態に係るマスクは、上記の第1の実施形態と同じく、前記マスク本体1と、前記一の平面編地11と、前記他の平面編地12と、前記耳掛け2と、を備え、さらに、この一の平面編地11及び他の平面編地12が略矩形状で形成され、この一の平面編地11及び他の平面編地12の内側編地(内側編地11b及び内側編地12b)及び外側編地(外側編地11a及び外側編地12a)のうち少なくとも1つの編地における略矩形状の4つの角領域13が平編みで編成される構成である。
【0048】
略矩形状とは、正方形や長方形のみならず、正方形や長方形の4つの角領域13における角が尖った形状のみならず丸みを帯びた形状や、ほぼ正方形や長方形とみなせる形状(例えば略楕円形状)も含まれる。
【0049】
この一の平面編地11及び他の平面編地12の内側編地(内側編地11b及び内側編地12b)及び外側編地(外側編地11a及び外側編地12a)のうち少なくとも1つの編地における略矩形状の4つの角領域13が平編みで編成される構成である。
【0050】
4つの角領域13とは、上記の略矩形状の4つの角を含む周辺領域を示し、例えば、この一の平面編地11の内側編地11bを平編みとして、一の平面編地11の外側編地11aを鹿の子編みとして編成することができる。この他にも、例えば、一の平面編地11の内側編地11bを鹿の子編みとして、一の平面編地11の外側編地11aを平編みとすることもできる。また、この他にも、他の平面編地12について、少なくともいずれかの編地(内側編地12b及び外側編地12a)を平編みとして編成することもできる。
【0051】
また、4つの角領域13の形状は特に限定されない。例えば、
図4(a)に示すように、その角領域13を曲線(例えばテーパー形状のなだらかな曲線)で仕切られた領域とすることや、
図4(b)に示すように、その角領域13を直線で仕切られた領域(略三角形状)とすることや、
図4(c)に示すように、その4つの角領域13がすべて連結した楕円形状とすることも可能である。
【0052】
図5に示すように、筒状体のこの4つの角領域13が平編みで編成されることで、
図6に示すように、マスク本体の4つの角領域13がしっかり固定されて一の平面編地11及び他の平面編地12の膨出の基端となり、マスク本体の中央領域を占める生地の膨出した立体成形を安定的且つ確実に形成することができる。
【0053】
このように、この一及び他の平面編地12が略矩形状で形成され、この略矩形状の4つの角領域13が平編みで編成されることから、着用者の呼吸に伴って生じる空気の流れに応じて立体的な起伏ある動きがこの4つの角領域13で編成された平編みによって強固に支持されて一の平面編地11及び他の平面編地12の膨出の基端となって確実に立体成形されることとなり、通気性の高さを維持しつつより安定感のある使用感と共に、息苦しくなく着用感の高いマスクを低コストで得ることができる。
【0054】
(本発明の第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係るマスクを上記
図7及び
図8に基づいて説明する。
【0055】
本発明の第3の実施形態に係るマスクは、上記の第1の実施形態と同じく、前記マスク本体1と、前記一の平面編地11と、前記他の平面編地12と、前記耳掛け2と、を備え、さらに、前記耳掛け2が、丸編みで表側と裏側とが同じ供給量の糸で編成されてなる構成である。
【0056】
この耳掛け2は、
図7に示すように、先ず、丸編みで表側(表側生地2a)と裏側(裏側生地2b)とが同じ供給量の糸で編成された筒状体から編成される。この表側生地2aが筒状体の外側にあり、裏側生地2bが筒状体の内側にあることから、この表側生地2aが裏側生地2bより面積(表面積)が大きいこととなる。糸の種類は、特に限定されないが、例えば、30/30FTYの1種類の糸を用いることができる。
【0057】
その一方で、
図7の上から1段目に示すように、この表側生地2aと裏側生地2bとが同じ供給量の糸から形成されることから、この表側生地2aから裏側生地2bに向かって内側に巻き込む方向の強い収縮力Fが作用し、開口形状の両端部から内向きの方向に向かって生地がロール状に巻かれる。この収縮力Fによって、
図7の上から2段目に示すように、自然に丸まった形状が上下方向から各1つずつ形成され、合わせて2層の丸みを帯びた紐状の輪っかが形成される。
【0058】
図7の上から3段目に示すように、この紐状の輪っかの一部を任意の位置Gで切断することによって、紐状の耳掛け2が極めて簡易に形成される。形成された紐状の耳掛け2は、
図7の上から4段目に示すように、マスク本体の両端の開口部である一の端部1c及び他の端部1dの各々に縫製される。
【0059】
この耳掛け2は、上述の製法で得られた2段の丸みを帯びた紐状の輪っかから形成されることから、
図8(a)に示すように、着用者の耳に掛けられた耳掛け2は、
図8(b)に示すように、この2段のロール状に巻かれた丸み構造により着用者に柔らかい感触が与えられ、心地良い着用感が提供される。
【0060】
このように、この筒状体の端部の開口部に、丸編みで表側と裏側とが同じ供給量の糸で編成された紐状の耳掛け2が配設されたことから、表側の生地が外部の円筒面にあり裏側の生地が内部の円筒面にあることで表側の生地が裏側の生地より面積(表面積)が大きい一方で表側の生地と裏側の生地とが同じ供給量の糸から形成され、表側の生地から裏側の生地に向かって内側に巻き込む方向の強い収縮力Fが作用して自然に2段の丸まった形状を有する紐状の耳掛け2として形成されることとなり、簡易な製法で、より自然で柔らかい感触の耳掛け2が形成され、通気性の高さを維持しつつ耳への優しい着け心地を与える着用感の高いマスクを低コストで得ることができる。
【0061】
(本発明の第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態に係るマスクを上記
図9及び
図10に基づいて説明する。
【0062】
本発明の第3の実施形態に係るマスクは、前記第1の実施形態と同じく、前記マスク本体1と、前記一の平面編地11と、前記他の平面編地12と、前記耳掛け2と、を備え、さらに、
図9に示すように、編立てられた筒状体の側面の対向する稜線を折り畳んで二重の平面編地を形成してなる内部フィルター3であって、少なくとも一の平面編地31がパイル編みで編成され、前記マスク本体1の内部空間B及び/又は前記一の平面編地11のうちの着用者に接触する側の外側編地11aに着脱可能な内部フィルター3を備える構成である。
【0063】
この内部フィルター3を構成する筒状体の編立ての種類については、この筒状体が編立てられれば特に限定されず、平編みでも丸編みでも可能である。
【0064】
上述のように、二重の平面編地のうち少なくとも一の平面編地31がパイル編みで編成される。二重の平面編地のうち他の平面編地32の編地は、特に限定されず、プレーン編みでもパイル編みでも可能である。
【0065】
この内部フィルター3は、第1の実施形態で示したマスク本体1の筒状体を編成するのと同様の手順で編立てられる。すなわち、この内部フィルター3を構成する筒状体は、
図9に示すように、開始位置から袋編みで開口状の一の端部3cが編立てられ(S1)、引き続いて編立られて筒状に形成され(S2~S3)、編立ての末端部では袋編みでルーズコースによるかがり縫いで開口状の他の端部3dが編立てられる(S4)。
【0066】
編立てられた筒状体について、
図9の中段に示すように、筒状体の側面の任意の対向する稜線(一の稜線3a及び他の稜線3b)を折り畳み方向Aで折り畳むことで(S5)、二重の平面編地である一の平面編地31及び他の平面編地32が形成される(S6)。
【0067】
この一の稜線3a及び他の稜線3bは、筒状体の側面にある任意の対向する稜線であれば特にその位置は限定されない。
図9の下段に示すように、この筒状体が折り畳まれて、この二重の平面編地が(一の平面編地31及び他の平面編地32間)が平面状となり、この二重の平面編地から構成される多層構造を有する内部フィルター3が形成される(S7)。すなわち、この内部フィルター3も、前記マスク本体1と同様に、連続した一連の編立て動作で簡易且つ大量に製造することが可能である。
【0068】
このように編成された内部フィルター3は、
図10(a)に示すように、マスク本体1の内部空間Bに着脱可能に挿入することができ、これにより、マスク本体とは別個に洗濯可能で、繰り返し使用が可能となる。
【0069】
また、この内部フィルター3は、
図10(a)に示すように、マスク本体1に形成された内部空間Bに対して、
図10(b)に示すように、着脱可能に挿入することができ、これにより、マスク本体1とは別個に洗濯可能で、繰り返し使用が可能となる。
【0070】
この他にも、この内部フィルター3は、
図10(c)に示すように、この一の平面編地11のうちの着用者に接触する側の外側編地11aに、当接させて用いることも可能である。この場合も、マスク本体1とは別個に洗濯可能で、繰り返し使用が可能となる。また、この内部フィルター3は、内部空間Bに収納しつつ、この一の平面編地11のうちの着用者に接触する側の外側編地11aに当接させて用いることも可能である。この場合も、マスク本体1とは別個に洗濯可能で、繰り返し使用が可能となる。
【0071】
このように、この内部フィルター3も洗濯により繰り返し使用できると共にパイル編みの生地によりさらに確実に空気中の飛沫を吸収できることとなり、同質素材の3層構造のマスクとして、この内部フィルター3をマスク本体とは別個に取り出して洗濯でき着脱可能に繰り返し使用できて利便性がさらに高められ、通気性の高さを維持しつつさらに高度なフィルター機能と共に着用感の高いマスクを低コストで得ることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 マスク本体
1a 一の稜線
1b 他の稜線
1c 一の端部
1d 他の端部
11 一の平面編地
11a 外側編地
11b 内側編地
12 他の平面編地
12a 外側編地
12b 内側編地
13 角領域
2 耳掛け
21 耳掛け縫合部
2a 表側生地
2b 裏側生地
3 内部フィルター
3a 一の稜線
3b 他の稜線
3c 一の端部
3d 他の端部
31 一の平面編地
31 他の平面編地