(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153367
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】入浴者の監視システム、プログラムおよび監視方法
(51)【国際特許分類】
A47K 3/00 20060101AFI20221004BHJP
A47K 4/00 20060101ALI20221004BHJP
A47K 3/02 20060101ALI20221004BHJP
F24H 15/10 20220101ALI20221004BHJP
F24H 15/265 20220101ALI20221004BHJP
F24H 15/269 20220101ALI20221004BHJP
F24H 15/395 20220101ALI20221004BHJP
G08B 21/08 20060101ALI20221004BHJP
F24H 15/196 20220101ALI20221004BHJP
【FI】
A47K3/00 Z
A47K4/00
A47K3/02
F24H15/10
F24H15/265
F24H15/269
F24H15/395
G08B21/08
F24H15/196 301X
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101108
(22)【出願日】2022-06-23
(62)【分割の表示】P 2018149386の分割
【原出願日】2018-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000170130
【氏名又は名称】パーパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(74)【代理人】
【識別番号】100206933
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】影山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 雅彦
(57)【要約】
【課題】入浴環境や快適性を妨げることなく、かつ入浴者にストレスを与えることなく、入浴中、浴槽水への溺没による入浴異常の発生を発見し、入浴異常から入浴者を防護する。
【解決手段】入浴者から生体情報を取得する生体情報取得手段(センサー8)と、生体情報取得手段から生体情報を取得して入浴者の存在を判定し、第1のタイミングから第2のタイミングまでの生体情報の遷移状態を監視し、該遷移状態から入浴者の溺没状態を判定し、溺没状態の判定結果からメッセージ情報を生成し、このメッセージ情報を生成した第3のタイミングから所定時間経過後の第4のタイミングで検出される生体情報と、第2のタイミングで検出されている生体情報の比較結果から異常状態を判定する異常判定手段(異常判定部10)と、メッセージ情報を提示し、または異常状態の判定結果を表す情報を提示する情報提示手段(メッセージ報知部14、異常報知部16)とを含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室に滞在する入浴者から生体情報を取得する生体情報取得手段と、
前記生体情報取得手段から前記生体情報を取得して入浴者の存在を判定し、第1のタイミングから第2のタイミングまでの前記生体情報の遷移状態を監視し、該遷移状態から入浴者の溺没状態を判定し、前記溺没状態の判定結果からメッセージ情報を生成し、このメッセージ情報を生成した第3のタイミングから所定時間経過後の第4のタイミングで検出される前記生体情報と、前記第2のタイミングで検出されている生体情報の比較結果から異常状態を判定する異常判定手段と、
前記メッセージ情報を提示し、または前記異常状態の判定結果を表す情報を提示する情報提示手段と、
を含む、入浴者の監視システム。
【請求項2】
コンピュータに実行させるためのプログラムであって、
浴室に滞在する入浴者から生体情報を取得する生体情報取得手段から前記生体情報を取得する機能と、
前記生体情報取得手段から前記生体情報を取得して入浴者の存在を判定する機能と、
第1のタイミングから第2のタイミングまでの前記生体情報の遷移状態を監視し、該遷移状態から入浴者の溺没状態を判定する機能と、
前記溺没状態の判定結果からメッセージ情報を生成し、このメッセージ情報を生成した第3のタイミングから所定時間経過後の第4のタイミングで検出される前記生体情報と、前記第2のタイミングで検出されている生体情報の比較結果から異常状態を判定する機能と、
前記メッセージ情報、または前記異常状態の判定結果を表す情報を情報提示手段に提示させる機能と、
を前記コンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項3】
コンピュータを用いた入浴者の監視方法であって、
浴室に滞在する入浴者から生体情報を取得する生体情報取得手段から前記生体情報を取得する工程と、
前記生体情報取得手段から前記生体情報を取得して入浴者の存在を判定する工程と、
第1のタイミングから第2のタイミングまでの前記生体情報の遷移状態を監視し、該遷移状態から入浴者の溺没状態を判定する工程と、
前記溺没状態の判定結果からメッセージ情報を生成し、このメッセージ情報を生成した第3のタイミングから所定時間経過後の第4のタイミングで検出される前記生体情報と、前記第2のタイミングで検出されている生体情報の比較結果から異常状態を判定する工程と、
前記メッセージ情報、または前記異常状態の判定結果を表す情報を情報提示手段に提示させる工程と、
を含む、入浴者の監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は入浴者を監視し、入浴者の浴槽水への溺没状態を回避させる異常検知技術に関する。
【背景技術】
【0002】
入浴中、入浴者に異常を生じて浴槽水に溺没状態となった場合、当事者が浴室外に連絡することは困難を伴う。介護者などが付き添う場合は別として、通常、浴室は入浴者の自由な空間であり、入浴者のプライバシーが維持される。浴室外の人が入浴者に気遣っていても、常時、入浴者を監視することには限界がある。
たとえば、ホテルの浴室内の異常検出では、浴室の洗面カウンタの下側に人体を検出する複数のセンサーが備えられ、複数のセンサーの中の1個または2個が入浴者を検出したときには正常と判断し、3個以上が所定時間以上連続して検出状態となるときには異常事態が発生したと判断することが知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、浴室内を複数箇所から映像監視をすれば、異常か正常かの判断精度が高くなるであろう。しかしながら、浴室の自由な空間として、入浴の環境性を妨げ、自由度やプライバシーを制限することは、入浴に求められるべき快適さが損なわれ、入浴者を不快にするという課題がある。監視状態にあることを入浴者に感得させることは、入浴者にストレスを与え、入浴効果を低下させてしまうという課題もある。しかし、入浴中、浴槽水に溺没するという不測の事態は回避することが不可欠である。
斯かる課題について、特許文献1には開示や示唆はなく、特許文献1に開示された構成では斯かる課題を解決することができない。
そこで、本発明の目的は上記課題に鑑み、入浴環境や快適性を妨げることなく、かつ入浴者にストレスを与えることなく、入浴中、浴槽水への溺没による入浴異常の発生を発見し、その入浴異常から入浴者を防護することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の入浴者の監視システムの一側面によれば、浴室に滞在する入浴者から生体情報を取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段から前記生体情報を取得して入浴者の存在を判定し、第1のタイミングから第2のタイミングまでの前記生体情報の遷移状態を監視し、該遷移状態から入浴者の溺没状態を判定し、前記溺没状態の判定結果からメッセージ情報を生成し、このメッセージ情報を生成した第3のタイミングから所定時間経過後の第4のタイミングで検出される前記生体情報と、前記第2のタイミングで検出されている生体情報の比較結果から異常状態を判定する異常判定手段と、前記メッセージ情報を提示し、または前記異常状態の判定結果を表す情報を提示する情報提示手段とを含む。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のプログラムの一側面によれば、コンピュータに実行させるためのプログラムであって、浴室に滞在する入浴者から生体情報を取得する生体情報取得手段から前記生体情報を取得する機能と、前記生体情報取得手段から前記生体情報を取得して入浴者の存在を判定する機能と、第1のタイミングから第2のタイミングまでの前記生体情報の遷移状態を監視し、該遷移状態から入浴者の溺没状態を判定する機能と、前記溺没状態の判定結果からメッセージ情報を生成し、このメッセージ情報を生成した第3のタイミングから所定時間経過後の第4のタイミングで検出される前記生体情報と、前記第2のタイミングで検出されている生体情報の比較結果から異常状態を判定する機能と、前記メッセージ情報、または前記異常状態の判定結果を表す情報を情報提示手段に提示させる機能とを前記コンピュータに実行させる。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の入浴者の監視方法の一側面によれば、コンピュータを用いた入浴者の監視方法であって、浴室に滞在する入浴者から生体情報を取得する生体情報取得手段から前記生体情報を取得する工程と、前記生体情報取得手段から前記生体情報を取得して入浴者の存在を判定する工程と、第1のタイミングから第2のタイミングまでの前記生体情報の遷移状態を監視し、該遷移状態から入浴者の溺没状態を判定する工程と、前記溺没状態の判定結果からメッセージ情報を生成し、このメッセージ情報を生成した第3のタイミングから所定時間経過後の第4のタイミングで検出される前記生体情報と、前記第2のタイミングで検出されている生体情報の比較結果から異常状態を判定する工程と、前記メッセージ情報、または前記異常状態の判定結果を表す情報を情報提示手段に提示させる工程とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、次のいずれかの効果が得られる。
(1) 検出した生体状態から入浴者が溺没状態などの入浴者異常を把握し、その情報を提示することにより、長時間の溺没状態などの入浴者異常から入浴者を防護できる。
(2) 入浴者異常を監視し、早急に浴槽排水などを行うことができ、入浴者事故などの不測の事態を回避できる。
(3) 入浴者の生体情報を検出して利用することで、入浴中か否かの監視や入浴者の身体状態などを監視することができ、浴室内に多数のセンサーを用いる必要がなく、部品数の削減や、検出処理の迅速化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施の形態に係る浴室異常検知システムを示す図である。
【
図2】Aはセンサーにより浴槽水への溺没による異常入浴状態の検出状態の一例を示す図であり、Bは溺没による異常入浴状態に対して排水処理を実行した状態例を示す図である。
【
図3】検出した生体情報に基づく溺没状態の判定処理の一例を示す図である。
【
図4】入浴モニタリング処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】第2の実施の形態に係る浴室異常検知システムを示す図である。
【
図6】Aは入浴の検出状態を示す図、Bはセンサーにより浴槽水への溺没による異常入浴状態の検出状態の一例を示す図であり、Cは溺没による異常入浴状態に対して排水処理を実行した状態例を示す図である。
【
図7】入浴モニタリング処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】第3の実施の形態に係る浴室異常検知システムであり、Aは人の存在および入浴の検出状態を示す図、Bはセンサーにより浴槽水への溺没による異常入浴状態の検出状態の一例を示す図であり、Cは溺没による異常入浴状態に対して排水処理を実行した状態例を示す図である。
【
図9】入浴モニタリング処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】浴室異常検知システムの実施例を示す図である。
【
図12】浴室異常検知システムの制御部を示す図である。
【
図13】入浴モニタリングの処理手順を示すフローチャートである。
【
図14】実施例2に係る浴室異常検知システムであり、Aは入浴者の動きおよび入浴の検出状態を示す図、Bはセンサーにより浴槽水への溺没による異常入浴状態の検出状態の一例を示す図であり、Cは溺没による異常入浴状態に対して排水処理を実行した状態例を示す図である。
【
図15】異常入浴状態の判定機能の一例を示す図である。
【
図16】入浴モニタリングの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔第1の実施形態〕
図1は、第1の実施の形態に係る浴室異常検知システムを示している。
図1に示す構成は一例であり、本発明が
図1に示す構成に限定されるものではない。
この浴室異常検知システム2は、本発明の入浴者の監視システム、プログラムまたは監視方法の一例であって、たとえば浴槽4内に居る人、すなわち入浴者の状態をモニタリング(見守り)し、入浴者の溺没による異常入浴状態を検知して、浴槽水(BW)の排水処理を行う。
この浴室異常検知システム2には、たとえば
図1に示すように、浴槽4に排水栓6やセンサー8が設置されるとともに、異常判定部10、制御部12を備える。そのほか、浴室異常検知システム2には、メッセージ報知部14や異常報知部16を備える。
【0011】
センサー8は、入浴者の生体情報を検出する本発明の生体センサーの一例であり、たとえば浴槽4内にいる入浴者の心拍数を検出する心拍センサーや、入浴者の動きの有無を検出する人感センサーなどが含まれる。またセンサー8は、たとえば心拍センサーであれば心拍波形を検出してもよく、人感センサーであれば動きのタイミングや動作の軌跡、動いた距離などを検出または測定してもよい。
異常判定部10は、たとえばコンピュータで構成され、センサー8が検出した生体情報に基づいて、入浴者の入浴状態をモニタリングし、浴槽4内の人の在・不在とともに、入浴者が浴槽水BWに溺没した異常入浴状態か否かを判定する。そのほか、異常判定部10は、たとえば心拍情報を利用する場合、入浴者の心拍数や心拍の強度などから健康状態の判定機能を備えてもよい。また異常判定部10は、たとえば入浴者の動作情報を利用する場合、動作の大きさやその動作範囲、動きの状態などから、通常状態の動きかまたは発作やその他の体調異変により暴れているかなどの健康状態の判定機能を備えてよい。
制御部12は、異常判定部10の判定結果に基づき、異常入浴状態を解消させるように制御する手段の一例である。この制御部12は、たとえば図示しない給湯器やこの給湯器のリモートコントローラ、もしくは独立した制御装置で構成されてもよい。制御部12は、異常判定部10からの判定出力を受ける。制御部12は、判定出力が異常入浴状態である場合には、排水栓6を開状態にして、浴槽水BWを浴槽4から排出させる。また、この排水栓6の開操作に際し、制御部12は、たとえばメッセージ報知部14や異常報知部16を動作させ、入浴者への呼びかけや外部への異常報知処理を実行させる。
【0012】
メッセージ報知部14は、制御部12の制御により浴室内に対してメッセージを出力する情報提示手段の一例であり、たとえば浴室リモコンのスピーカ機能などで構成される。そしてメッセージ報知部14は、異常入浴状態と判定された入浴者に対し、音声や発光信号によってメッセージを出力し、異常入浴状態と判定されたことの通知や、居眠りなどによって溺没状態となっている入浴者の覚醒を促す。 このメッセージ報知はメロディや、電子音でたとえば、「ダイジョウブデスカ」、「オボレノオソレガアリマス」、「オウトウガアリマセン」、「オキテクダサイ」、「ニュウヨクジカンガオーバーデス」などの音声出力を行う。このメッセージ報知部14はたとえば、浴槽4の近傍に設置される浴室リモコン(
図2のリモコン装置18)などに設置すればよい。そのほか、図示しない台所リモコンにおいても同様のメッセージを出力させて、入浴者に呼びかけメッセージがあったことを台所で確認可能にしてもよい。
異常報知部16は情報提示手段の一例であり、制御部12の制御により、メッセージ報知部14による呼びかけメッセージの出力後、入浴者からの反応が無い場合、浴室内や浴室外に対して異常入浴状態の発生の通知を行う手段の一例である。異常報知部16は、たとえば浴室リモコンや台所リモコンのスピーカのほか、通信機能を利用して外部の携帯電話機などの通信端末、外部サーバー装置などに通知する手段である。
【0013】
<入浴の見守り処理>
センサー8は、たとえば浴槽4の内部または浴槽4の周面、浴室内の壁やリモコン装置18などに設置されており、入浴者と接触または浴槽水BWを介して間接的に入浴者の生体情報を検出する。この実施の形態では、生体情報に基づく溺没などの異常入浴状態の監視として、センサー8は所定時間毎または連続的に心拍数を検出する。
センサー8は、たとえば
図2のAに示すように、入浴中に居眠りや意識混濁などが発生し、顔を下向きにしたことで顔面が溺没状態となっている入浴者の生体情報を収集する。このときセンサー8は、入浴者の心拍数を計測して、その結果を逐一、異常判定部10側に出力する。
異常判定部10では、たとえばセンサー8から通知される心拍数情報を監視して、浴槽4内に人が居るか否かを判断するとともに、その入浴状態を監視し、異常の判定処理を実行する。異常判定部10は、たとえば心拍数の値やその値の遷移状態に基づき、入浴者が溺没状態に陥っている、または溺没状態に陥る可能性があると判断し、異常入浴状態との判定結果を出力する。異常判定部10は、この判定結果を制御部12に通知する。
【0014】
制御部12は、たとえば異常入浴状態との判定結果を受けると、浴室内にあるリモコン装置18にあるメッセージ報知部14に対して呼びかけ処理の実行指示を出力する。また、制御部12は、たとえば
図2のBに示すように、浴槽4の排水栓6に対して動作指示を出力し、開状態にさせて、排水管20を通じて浴槽水BWの排出処理を行う。
なお、制御部12は、リモコン装置18に対する呼びかけ処理を行った後に浴槽水BWの排出処理を行ってもよく、または呼びかけ処理を行わずに異常入浴状態の判定結果を受領した際に浴槽水BWの排出処理を行ってもよい。制御部12は、たとえば、検出した生体情報の状態に基づき、溺没状態から緊急的に開放する必要があるか否かによって呼びかけ処理の実行順序や実行するか否かを決定してもよい。
【0015】
<入浴状態の判定>
図3は、検出結果から溺没による異常入浴状態の判断処理例を示している。
図3に示す処理内容、判定手順は一例である。
異常判定部10は、たとえばセンサー8が検出した心拍数の情報に基づいて入浴者の溺没状態を判断する。この判断処理では、たとえば
図3に示すように、時間経過に対する心拍数を含む生体情報の遷移状態を監視する。
異常判定部10は、たとえば時間t1において入浴者の心拍数情報αを取得した後、所定時間経過後の時間t2の心拍数情報βを取得する。異常判定部10は、心拍数情報αからβへの遷移状態を判断する。この判断では、たとえば心拍数情報αからβへの遷移が通常の入浴による心拍数の変化よりも急激に大きいなど、呼吸ができない溺没状態に特有の遷移状態となっているかを判断する。
【0016】
異常判定部10は、たとえば時間t2のときの心拍数情報βを呼びかけに対する判断基準値とする。時間t2から所定時間が経過した時間t3で呼びかけメッセージ処理を行う。そして、異常判定部10は、たとえば呼びかけから所定時間が経過した時間t4の心拍数情報を取得し、判断基準値である心拍数情報βと比較する。その結果、異常判定部10は、たとえば心拍数が心拍数情報βよりも増加した心拍数情報γとなる状態X1の場合、溺没状態と判断して異常入浴状態と判定し、減少した心拍数情報δとなる状態X2の場合、心拍数が安定化する時間t5となったときに通常の入浴状態と判定する。
【0017】
なお、この異常判定処理では、たとえば溺没による心肺停止などにより、心拍数が急激に低下したか否かで判断してもよく、そのほか単純な心拍数の増加・減少のみならず溺没状態に陥ったときに生じる特有の心拍数の変化を示すデータと比較して異常入浴状態か否かを判断してもよい。また、異常判定処理は、たとえば生体情報として入浴者の動作情報を利用する場合、急に停止状態となることや、逆に暴れた状態となった場合に、溺没状態を含む異常入浴状態と判断してもよい。
【0018】
<入浴モニタリング>
図4は入浴をモニタリングによる浴室異常検知の処理手順の一例を示している。この処理手順や処理内容は一例であり、本発明が斯かる構成に限定されない。またこの入力モニタリング処理は、浴室異常検知方法やそのプログラム処理の一例である。
異常判定部10は、センサー8から入浴者の生体情報を取得し(S11)、その生体情報に基づいて入浴状態の判断を行う(S12)。異常判定部10は、入浴者が溺没状態か否かを判定し(S13)、溺没状態で無ければ(S13のNO)、生体情報の取得(S11)と入浴状態の判断(S12)を繰り返す。
【0019】
また制御部12は、入浴者が溺没状態であると判定された場合(S13のYES)、メッセージ報知部14に指示情報を出力し、入浴者への呼びかけメッセージ処理を行う(S14)。そして、異常判定部10は、この呼びかけメッセージ処理により溺没状態から回復したかを判断する(S15)。この溺没状態からの回復判断では、たとえばセンサー8から取得した心拍数情報を参照し、溺没状態を表す状態か否かを判断すればよい。そして入浴者が溺没状態から回復した場合(S15のYES)、S11に戻って入浴モニタリングを継続する。また制御部12は、溺没状態から回復しないと異常判定部10が判定した場合(S15のNO)、排水栓6を開状態にして浴槽水(BW)の排水処理を行う(S16)とともに、異常報知部16を介して外部に対して浴槽内での溺没による異常状態が発生していることを報知する(S17)。
【0020】
<第1の実施の形態の効果>
この第1の実施の形態によれば、次の効果が得られる。
(1) 入浴者の心拍数などの生体情報に基づいて浴槽水BWへの溺没状態を迅速に把握して、浴槽水の排出処理を行うことで、入浴中の居眠りや意識レベルの低下、その他の身体異常の発生により、浴槽からの脱出や、呼吸を確保するための動作が取れない状態となっても、溺没状態から開放し、入浴者の呼吸が可能な状態にすることができる。
(2) 入浴者の溺没状態を継続的に監視し、早急に浴槽水の排水を行うことで、浴槽水への溺没による事故の発生を回避できる。
(3) 入浴者への呼びかけを契機に、心拍数情報に基づいて溺没状態からの回復を把握することで、溺没による異常入浴状態に対する早急な排水機能による安全性の向上と、浴槽水BWの無駄な排出を抑える風呂機能の利便性を両立させることができる。
(4) 生体情報を利用して、入浴中の判断および溺没による異常入浴状態の判断を行うことで、入浴者に対する監視負荷を少なくし、プライバシーが確保できるとともに、浴室内に多数のセンサーを用いる必要がなく、部品数の削減や、検出処理の迅速化が図れる。
【0021】
〔第2の実施の形態〕
図5は、第2の実施の形態に係る浴室異常検知システムを示している。
図5に示す構成は一例であり、本発明が
図5に示す構成に限定されるものではない。また
図5において、
図1と同様の構成には同一の符号を付している。
この第2の実施の形態に係る浴室異常検知システム30では、既述の検知システム2(
図1)に加えてセンサー32を備えている。
このセンサー32は、浴槽4内の湯水の水位、または水位変化のあり、なしを検出する手段の一例であり、この検出出力は、入浴か否か、入浴中の人の動きを表す。センサー32には、たとえば、水位センサーとして、浴槽内の水面を光学的に測定するものや、浴槽4内や図示しない給湯器の配管内での水圧を検出し、この水圧に応じた水位を算出するものを用いればよい。
また、その他の構成は第1の実施の形態と同一であるので、同一符号を付し、その説明を割愛する。
【0022】
<入浴の見守り処理>
浴槽水BWの水位L1は、たとえば
図6のAに示すように、入浴者が浴槽4内に入ることで水位L2に上昇する。センサー32が水位L2以上を検出すれば、入浴者の入浴状態を示す検出出力が得られる。
図6のBは、異常状態の一例として、溺没状態を示している。
このときセンサー8は、たとえば入浴中に居眠りや意識混濁などが発生し、顔面が溺没状態となっている入浴者の生体情報を収集する。この実施の形態では、センサー8として、入浴者の心拍数を計測する心拍センサーを用いており、検出した心拍数の結果を逐一、異常判定部10に出力する。
また、センサー32は、溺没状態になったことにより浴槽水BWの水位がL2からL3に上昇したことを検出し、その検出結果を異常判定部10に出力する。
異常判定部10では、たとえばセンサー8から通知される心拍数情報と、センサー32から取得した水位L3への遷移を監視して、浴槽4内に人が居るか否かを判断するとともに、その入浴状態を監視し、異常の判定処理を実行する。異常判定部10は、たとえば心拍数の値やその値の遷移状態と、水位L2からL3への上昇に基づき、入浴者が溺没状態に陥っている、または溺没状態に陥る可能性があると判断し、異常入浴状態との判定結果を出力する。異常判定部10は、この判定結果を制御部12に通知する。
【0023】
制御部12は、たとえば異常入浴状態との判定結果に基づいて、呼びかけ処理などを行うとともに排水栓6を開状態にし、浴槽水BWの排出によって水位を低下させる。
このとき制御部12は、センサー32からの検出結果を受けて浴槽4内の水位の低下を監視する。そして、浴槽4内の湯水が全部または所定の水位になるまで排出されると、制御部12が排水栓6に対して閉止指示を出力する。なお、浴槽水BWの排出後の水位は、たとえば入浴者が溺没しない状態となる水位を予め設定し、その水位になったときに排水栓6を閉止させてもよく、またはセンサー8、32の検出結果から入浴者が溺没状態から開放されたか否かを判断してもよい。
【0024】
<入浴モニタリング>
図7は入浴をモニタリングによる浴室異常検知の処理手順の一例を示している。この処理手順や処理内容は一例であり、本発明が斯かる構成に限定されない。またこの入力モニタリング処理は、浴室異常検知方法やそのプログラム処理の一例である。
異常判定部10は、センサー8から入浴者の生体情報を取得する(S21)とともに、センサー32から水位情報を取得して(S22)、入浴状態の判断を行う(S23)。異常判定部10は、心拍数の変化状態や浴槽水BWの水位変化の状態を組み合せて、入浴者が溺没状態か否かを判定し(S24)、溺没状態で無ければ(S24のNO)、生体情報の取得(S21)、に戻る。
【0025】
また制御部12は、入浴者が溺没状態であると判定された場合(S24のYES)、メッセージ報知部14に指示情報を出力し、入浴者への呼びかけメッセージ処理を行う(S25)。そして、異常判定部10は、この呼びかけメッセージ処理により溺没状態から回復したかを判断する(S26)。この溺没状態からの回復判断では、たとえばセンサー8から取得した心拍数情報やセンサー32が検出した水位の低下を参照し、溺没状態を表す状態か否かを判断すればよい。そして入浴者が溺没状態から回復した場合(S26のYES)、S21に戻って入浴モニタリングを継続する。また制御部12は、溺没状態から回復しないと異常判定部10が判定した場合(S26のNO)、排水栓6を開状態にして浴槽水(BW)の排水処理を行う(S27)とともに、異常報知部16を介して外部に対して浴槽内での溺没による異常状態が発生していることを報知する(S28)。
【0026】
<第2の実施の形態の効果>
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態に加え、次のような効果が得られる。
(1) 生体情報である心拍数に加え、水位変化の情報を組み合せることで、浴槽水BW内に体の一部が溺没し、またはそのおそれがあることの判定精度が向上し、より迅速に浴槽水への溺没状態からの回復を図ることができるので、入浴に対する安全性の向上が図れる。
(2) 入浴者の年齢や心肺機能の強弱など、個性ある生体的な特徴に対し、水位の変化を判断要素に加えることで、入浴者の溺没状態の判定精度が向上し、溺没による事故の発生を抑えることができる。
【0027】
〔第3の実施の形態〕
図8は、第3の実施の形態に係る浴室異常検知システムを示している。
図8に示す構成は一例であり、本発明が
図8に示す構成に限定されるものではない。また
図8において、
図2と同様の構成には同一の符号を付している。
この第3の実施の形態に係る浴室異常検知システム40では、既述の検知システム2(
図1)に加えてセンサー42を備えている。
このセンサー42は、浴槽4や浴室内の入浴者の在、不在を検出する本開示の人監視センサーの一例であり、たとえば光学センサーを用いればよい。センサー42で検出した入浴者の在、不在情報は異常判定部10に送信され、センサー8の生体情報と組み合せて入浴者の溺没状態の判定に利用される。
また、その他の構成は第1の実施の形態と同一であるので、同一符号を付し、その説明を割愛する。
【0028】
<入浴の見守り処理>
センサー42は、たとえば
図8のAに示すように、浴槽4や浴室の所定位置や所定高さに向けて入浴者を検出するセンサー領域が設定されている。このセンサー42は、たとえば浴室内の壁やリモコン装置18等に設置されており、所定方向および所定範囲に向けてレーザー光や赤外光などを発光している。また、人体が発する赤外光を受光する構造でもよい。センサー42は、正常な体勢で浴槽4内にいる入浴者を検出する。このように入浴者が存在しているか否かの検出情報が異常判定部10に通知される。また、このとき異常判定部10には、センサー8が検出した生体情報が通知される。
図8のBは、異常入浴状態の一例として、溺没状態を示している。
このときセンサー8は、たとえば入浴中に居眠りや意識混濁などが発生し、顔面が溺没状態となっている入浴者の生体情報を収集する。そしてセンサー8は、たとえば生体情報の一例として、入浴者の心拍数を計測し、その結果を逐一、異常判定部10に出力する。
また、センサー42は、浴槽4の近傍に設定したセンサー領域に入浴者が存在していないこと示す検出結果を取得し、その結果を異常判定部10に出力する。
【0029】
異常判定部10では、たとえばセンサー8から通知された心拍数情報により浴槽4内に入浴者が居ると判断するとともに、センサー42から入浴者が不在の検出結果により、溺没による異常入浴状態であるとの判定を行う。異常判定部10は、この判定結果を制御部12に通知する。
制御部12は、たとえば異常入浴状態との判定結果に基づいて、呼びかけ処理などを行うとともに排水栓6を開状態にし、浴槽水BWの排出によって水位を低下させる。
このとき制御部12は、たとえば呼びかけ処理を行った後に、センサー42の検出により入浴者が存在するとの検出結果に変った場合、排水栓6を閉状態に維持し、または排水処理の実施後であれば、排水栓6を開状態から閉状態に切替える。
【0030】
<入浴モニタリング>
図9は入浴をモニタリングによる浴室異常検知の処理手順の一例を示している。この処理手順や処理内容は一例であり、本発明が斯かる構成に限定されない。またこの入力モニタリング処理は、浴室異常検知方法やそのプログラム処理の一例である。
異常判定部10は、センサー8から入浴者の生体情報を取得する(S31)とともに、センサー42から入浴者の在、不在情報を取得して(S32)、入浴状態の判断を行う(S33)。異常判定部10は、心拍数の変化状態と入浴者の在、不在情報とを組み合せて、入浴者が溺没状態か否かを判定し(S34)、溺没状態で無ければ(S34のNO)、生体情報の取得(S31)、に戻る。
【0031】
また制御部12は、入浴者が溺没状態であると判定された場合(S34のYES)、メッセージ報知部14に指示情報を出力し、入浴者への呼びかけメッセージ処理を行う(S35)。そして、異常判定部10は、この呼びかけメッセージ処理により溺没状態から回復したかを判断する(S36)。この溺没状態からの回復判断では、たとえばセンサー8から取得した心拍数情報やセンサー42が検出した入浴者の在、不在情報を参照し、溺没状態を表す状態か否かを判断すればよい。そして入浴者が溺没状態から回復した場合(S36のYES)、S31に戻って入浴モニタリングを継続する。また制御部12は、溺没状態から回復しないと異常判定部10が判定した場合(S36のNO)、排水栓6を開状態にして浴槽水(BW)の排水処理を行う(S37)とともに、異常報知部16を介して外部に対して浴槽内での溺没による異常状態が発生していることを報知する(S38)。
【0032】
<第3の実施の形態の効果>
この第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態や第2の実施の形態に加え、次のような効果が得られる。
(1) 生体情報と、浴槽4の近傍にセンサー領域を設定して入浴者の在、不在の検出情報を組み合せることで、浴槽水BW内に入浴者が溺没している、またはそのおそれがあることの判定精度が向上し、より迅速に浴槽水への溺没状態からの回復を図ることができるので、入浴に対する安全性の向上が図れる。
(2) 入浴者の年齢や心肺機能の強弱など、個性ある生体的な特徴に対し、入浴者の在、不在を直接検出した情報を組み合せて判断要素とすることで、入浴者の溺没状態の判定精度が向上し、溺没による事故の発生を抑えることができる。
【実施例0033】
<給湯システム>
図10は、浴室異常検知システムの実施例を示している。
図10に示す構成は一例であり、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。
この実施例に係る浴室異常検知システム2は給湯システムに設置されており、給湯器50、浴室リモコン52および台所リモコン54を備える。
給湯器50には給湯制御部56、水位を検出するセンサー32などが備えられる。給湯制御部56にはプロセッサ58、音センサー回路部60、通信制御部62が備えられる。プロセッサ58は通信制御部62を通じて浴室リモコン52および台所リモコン54の連係動作などを制御する。音センサー回路部60は浴室リモコン52や台所リモコン54のマイクロフォンの音声入力を検出し、入浴者の動きあり、なしなどの判断に利用する。
さらに、給湯制御部56は、浴槽4に設置された排水栓6や生体情報を取得するセンサー8と接続されており、排水栓6の開閉による浴槽水BWの排水処理制御や入浴者の心拍数情報などの検出処理を行う。
【0034】
給湯制御部56は浴室リモコン52および台所リモコン54と伝送線64を以て接続されている。この伝送線64は制御信号の通信の他、入浴者の検知出力や音声信号を伝送する音声伝送ラインを構成する。この伝送線64は無線を以て構成してもよい。
浴室リモコン52には入浴状態を監視するセンサー42、浴室リモコン制御部66、表示部68、スピーカ70、マイクロフォン72、入浴者に対する呼びかけに対して応答させる応答ボタン74などを備える。なお、センサー42は浴槽4内の入浴者を検知できる位置としてたとえば、高所=天井に設置し、浴室リモコン52に接続してもよい。
台所リモコン54には、台所リモコン制御部76、表示部78、スピーカ80、マイクロフォン82などを備える。
台所リモコン制御部76には異常判定出力や異常報知出力を取り出す端子部84が備えられる。この端子部84は外部システム86に接続され、既述の異常入浴状態の判定出力や異常報知出力を含む情報の送受が可能である。具体的には端子部84に外部セキュリティシステムのセキュリティボックスを接続すれば、端子部84を介して既述の異常入浴状態の判定出力や異常報知出力を含む情報の送受が可能である。この端子部84は給湯制御部56や浴室リモコン制御部66に備えてもよい。
浴室リモコン52および台所リモコン54は給湯制御部56の音センサー回路部60および通信制御部62により、マイクロフォン72-スピーカ70、マイクロフォン82-スピーカ80を通してインターフォン機能を構成する。
【0035】
<給湯器50>
図11は、給湯器50の一例を示している。
図11において、
図10と同一部分には同一符号を付してある。
給水Wは給水管90を通して熱交換器92に流れるとともに、給水管90から分岐したバイパス管94を通して混合弁96に至る。温度センサー98は給水温度を検出する。熱交換器92はバーナー100で燃焼する燃料ガスGの燃焼熱を給水Wに熱交換する。この熱交換で得られた温水HWは、出湯管102に設置された混合弁96に至る。混合弁96は温水HWとバイパス管94からの給水Wを混合する。給水Wを混合した温水HWは、温度センサー104で検出される。この検出温度によって混合弁96のポートa、bの開度が調整され、給湯管106から設定温度の温水HWが得られる。
【0036】
浴槽4への注湯時、温水HWが給湯管106から分岐した注湯管108および追焚管110を通して浴槽4に供給される。注湯管108に供給する温水HWは、開閉弁112により調整される。
追焚管110には浴槽水BWを熱交換器114に流す戻り管110-1、熱交換器114から浴槽水BWを浴槽4に戻す往き管110-2が備えられる。熱交換器114はバーナー116で燃焼する燃料ガスGの燃焼熱を浴槽水BWに熱交換する。
戻り管110-1に設置された循環ポンプ118は、追焚時または注湯時に駆動し、浴槽水BWまたは温水HWを、追焚管110を通して浴槽4に循環させる。
温度センサー120は循環する浴槽水BWの温度を検出する。また、センサー32は浴槽水位を検出する。
【0037】
<制御部130>
図12は、浴室異常検知システム2の制御部130を示している。この制御部130は給湯制御部56、浴室リモコン制御部66および台所リモコン制御部76を含み、給湯システムの水位検出機能や音声出力機能などを活用し、入浴中のモニタリングとともに入浴中に入浴者に生じる異常入浴状態の判定および浴槽水BWの排水処理を行う。
給湯制御部56にはコンピュータが搭載され、プロセッサ58、メモリ部132、入出力部(I/O)134、システム通信部136が備えられる。プロセッサ58はメモリ部132にあるOS(Operating System)や異常検知プログラムを実行する。メモリ部132にはROM(Read-Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory )、RAM(Random-Access Memory)などの記憶素子が備えられ、OSや異常検知プログラムが格納される。
【0038】
I/O134にはプロセッサ58の制御により、(生体)センサー8、(水位)センサー32、温度センサー98、104、120などの検出素子の検出出力が取り込まれ、浴槽4の排水栓6、混合弁96、開閉弁112、循環ポンプ118、バーナー燃焼制御部137などの機能部に対する制御出力が得られる。
システム通信部136は既述の通信制御部62の一例であり、プロセッサ58の制御により、浴室リモコン制御部66、台所リモコン制御部76と連係される。(水位)センサー32の検出出力はシステム通信部136から浴室リモコン制御部66に伝送される。
【0039】
浴室リモコン制御部66にはコンピュータが搭載され、プロセッサ138、メモリ部140、I/O142、システム通信部144、音声変復調部146が備えられる。プロセッサ138はメモリ部140にあるOSをベースに給湯制御部56と連係して入浴異常検知プログラムを実行する。つまり、プロセッサ138は既述の異常判定部10として機能する。メモリ部140にはROM、EEPROM、RAMなどの記憶素子が備えられ、OSや異常検知プログラムが格納される。メモリ部140は、プロセッサ138との協調によりタイマー機能を実現してもよい。
I/O142にはプロセッサ138の制御により、センサー42の検出出力、応答ボタン74、スイッチ(SW)158のON、OFF入力、音声変復調部146、156からの音声入力、音声変復調部146、156への音声出力、表示部68に対する表示出力、LED(Light Emitting Diode)160の制御出力の入出力が行われる。
【0040】
システム通信部144は、プロセッサ138の制御により、給湯制御部56、台所リモコン制御部76が無線または有線により接続が可能であるとともに、インターネット回線などとの通信接続、公衆回線を通じて携帯電話やスマートフォンなどの通信端末とのデータ通信が可能である。
音声変復調部146は音声による搬送信号の変調や、搬送信号から音声信号の復調を行う。この音声変復調部146にはI/O142が接続され、マイクロフォン72からの音声入力が取り込まれ、スピーカ70に対する音声出力が得られる。この音声変復調部146に接続されるスピーカ70は、既述のメッセージ報知部14および異常報知部16の一例であり、メッセージ報知や異常報知に用いられる。
【0041】
台所リモコン制御部76にはコンピュータが搭載され、プロセッサ148、メモリ部150、システム通信部152、I/O154、音声変復調部156が備えられる。プロセッサ148はメモリ部150にあるOSをベースに給湯制御部56と連係して異常検知プログラムを実行する。メモリ部150にはROM、EEPROM、RAMなどの記憶素子が備えられ、OSや異常検知プログラムが格納される。
I/O154にはプロセッサ148の制御により、SW162のON、OFF入力、音声変復調部146、156からの入力などが取り込まれ、音声変復調部146、156への音声出力、表示部78に対する表示出力、外部システム86への判定出力または異常検知出力、LED164の制御出力が得られる。
【0042】
システム通信部152には給湯制御部56、浴室リモコン制御部66が無線または有線により接続され、これらはプロセッサ148により制御される。
音声変復調部156は、既述の音声変復調部146と同様に、音声による搬送信号の変調や、搬送信号から音声信号の復調を行う。この音声変復調部156にはI/O154が接続され、マイクロフォン82からの音声入力が取り込まれ、スピーカ80に対する音声出力が得られる。この音声変復調部156に接続されるスピーカ80は、既述のメッセージ報知部14および異常報知部16の一例であり、メッセージ報知や異常報知に用いられる。
【0043】
<入浴モニタリングの処理手順>
図13は、実施例に係る入浴をモニタリングし、浴室異常検知の処理手順を示している。この処理手順は、異常判定部10におけるコンピュータ処理の一例である。
【0044】
入浴モニタリングの開始に先立ち、初期化を実行する(S41)。この初期化の後、(生体)センサー8、(水位)センサー32、(人監視)センサー42の検出情報を取り込み(S42)、入浴者の生体情報から浴槽水への溺没の可能性を判断する(S43)。この溺没の可能性判断では、第1の実施の形態で示すように、心拍数の変化の状態などを監視し、心拍数の急激な上昇、または急激な低下もしくは心停止の状態から判断すればよい。
生体情報に基づいた判断により、入浴者が溺没している可能性が無ければ(S43のNO)、S41に戻り、入浴状態の監視を継続する。また、入浴者が溺没している可能性があると判断すれば(S43のYES)、(水位)センサー32、(人監視)センサー42の検出結果のいずれかまたはそれらを組み合せて、異常入浴状態を判断する(S44)。
【0045】
この溺没による異常入浴状態の判断から所定時間を計測し(S45)、呼びかけメッセージを報知する(S46)。異常入浴状態の判断後の時間計測では、たとえば一時的な計測状態の誤差や溺没状態からの回復の可能性を見るための処理であり、その計測時間は、入浴者に対する安全性と、入浴設備の利便性とを加味して設定すればよい。
呼びかけメッセージ報知の結果、反応があるかまたは各センサーの検出結果に変化があるかを判断する(S47)。入浴者の反応は、たとえば浴室リモコン52の応答ボタン74の押下やマイクロフォン72による音声の取込みから判断すればよい。
入浴者の反応またはセンサーの検出結果に変化が無い場合(S47のNO)、入浴者が溺没していると判断し、排水栓6を開状態にして(S48)、浴槽水BWの排出処理を行う。
また、入浴者の反応またはセンサーの検出結果に変化があった場合(S47のYES)、所定時間の計測(S49)の後に、溺没状態が解消したかを判断する(S50)。溺没状態の解消は、たとえば(生体)センサー8の検出情報とともに、(水位)センサー32や(人監視)センサー42の検出情報を組み合せて判断すればよい。
そして、溺没状態が解消していない(S50のNO)場合には、排水栓6を開状態にして(S48)、浴槽水BWを排出させる。また溺没状態が解消している場合(S50のYES)には、通常の入浴監視に戻る。
さらに、浴槽水BWの排水処理では、排水栓6を所定時間開状態にし、または所定量の浴槽水BWを排水したら排水栓6を閉状態にする(S51)。排水栓6の開時間や排水量は、たとえば浴槽4の容積などを考慮し、入浴者の顔が水面に出る量になるまで排水させるように設定すればよい。すなわち、浴槽4には、入浴者の体の一部に浴槽水BWの一部が残るように排水させる。
【0046】
<実施例1の効果>
この実施例1によれば、次の効果が得られる。
(1) 入浴中に居眠りや身体の異常により、浴槽水内に溺没した場合でも、早期に異常入浴状態を把握し、浴槽水BWを排出させることで、入浴者が呼吸可能な状態にすることで、入浴の安全性が高められる。
(2) 入浴者の溺没状態の可能性を把握した後、メッセージの呼びかけによる状態確認を発し、その応答状態によって溺没による異常入浴を確認して排水することで、入浴の安全性と、異常入浴状態でない場合の無駄な排水処理を行わず、利便性の確保ができる。
(3) 台所リモコン制御部76などに異常判定出力や異常報知出力を取り出す端子部84を備え、外部システム86と既述の異常判定出力や異常報知出力を含む情報の送受により、斯かる情報を共有すれば、既存のセキュリティシステムなどの外部システム86と相俟って入浴中の人の安全をより高めることができる。
(4) 浴槽水BWの排出量を制御し、入浴者が呼吸可能な状態を確保するとともに、入浴者の体が完全に外気に触れない程度の浴槽水BWを残すことで、排水後の入浴者の体温確保ができ、入浴の安全と利便性を確保することができる。
入浴者の反応または焦電センサー172やセンサー32の検出結果に変化が無い場合(S65のNO)、入浴者が溺没していると判断し、排水栓6を開状態にして(S66)、浴槽水BWの排出処理を行う。
また、入浴者の反応またはセンサーの検出結果に変化があった場合(S65のYES)、所定時間の計測(S67)の後に、溺没状態が解消したかを判断する(S68)。溺没状態の解消は、たとえば焦電センサー172の検出情報とともに、水位センサー32の検出情報を組み合せて判断すればよい。
この呼びかけメッセージ報知からの時間計測(S67)は、たとえば計測結果の誤差の峻別や一時的な回復か否かを判断するための処理であり、計測時間は、入浴者に対する安全性と、入浴設備の利便性とを加味して設定すればよい。
そして、溺没状態が解消していない(S68のNO)場合には、排水栓6を開状態にして(S66)、浴槽水BWを排出させる。また溺没状態が解消している場合(S68のYES)には、通常の入浴監視に戻る。
(1) 上記実施の形態および実施例では、入浴者の生体情報と、これに加えて水位情報や在、不在状態の監視情報により入浴者の溺没による異常入浴状態を判断したときに排水栓6を開状態として浴槽水BWの排出処理を行うことを示したがこれに限らない。浴室異常検知システム2では、たとえば入浴者が溺没状態となっていない場合でも、(生体)センサー8の検出情報により、溺没するおそれがある状態として、居眠りや身体の異常状態、心肺停止状態などの発生を異常入浴状態と判定して、浴槽水BWの一部または全部を排出させてもよい。
なお、溺没のおそれがある場合には、たとえば呼びかけメッセージ処理の回数を増やすほか、応答までの時間計測を長くとって、浴槽水BWを排出し難くするような条件を設定してもよい。
(2) 上記実施の形態および実施例では、入浴者の溺没状態の判断として、心拍センサーが検出した心拍数を利用する場合を示したがこれに限らない。入浴者の生体情報を検出するセンサー8として、たとえば入浴者の体温を検出する赤外線センサーや入浴者の脳波を検出する脳波計などを用いてもよい。
(3) 上記実施の形態では、溺没による異常入浴状態の判断として、入浴者の心拍数情報の変化のみから判断する場合を示したがこれに限らない。心拍数情報とともに、浴槽水BWの温度情報を組み合せて溺没状態を判断してもよい。つまり、湯温と入浴による心拍状態との関係を示す情報を記憶しておき、通常の入浴状態による心拍の変化か、溺没状態になったときの変化かを詳細に分析可能にしてもよい。これにより、入浴開始時の体温上昇に伴う心拍数の上昇か、入浴時の溺没や入浴時のヒートショックなどによる無呼吸状態による心拍数の上昇かの区別が明確となり、入浴者の状態をより早く正確に把握することができる。
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態等について説明した。本発明は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。