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特開2022-153385ステビオール配糖体の生合成製造およびそのためのプロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153385
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ステビオール配糖体の生合成製造およびそのためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/20 20160101AFI20221004BHJP
   C07H 13/08 20060101ALI20221004BHJP
   C07H 15/256 20060101ALI20221004BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221004BHJP
   C12P 19/56 20060101ALN20221004BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20221004BHJP
   C12N 1/19 20060101ALN20221004BHJP
   C12N 1/21 20060101ALN20221004BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20221004BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20221004BHJP
【FI】
A23L33/20
C07H13/08 CSP
C07H15/256 A
A61K47/26
C12P19/56 ZNA
C12N9/10
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/54
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022105729
(22)【出願日】2022-06-30
(62)【分割の表示】P 2019520060の分割
【原出願日】2017-10-13
(31)【優先権主張番号】62/408,179
(32)【優先日】2016-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/555,809
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】516131979
【氏名又は名称】コナゲン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】マオ グオホン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィック ジェイコブ エドワード
(72)【発明者】
【氏名】バトン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ビュン デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ルオ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウー イーリン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ベイファ
(72)【発明者】
【氏名】ユー シャオダン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】甘味料組成物に有用なステビオール配糖体を提供する。
【解決手段】レバウジオシドWB1、レバウジオシドWB2、およびレバウジオシドD4から選択されるレバウジオシド化合物を含む甘味料組成物を提供する。
【選択図】図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地内で成長する形質転換細胞系によって産生される、対象のステビオール配糖体。
【請求項2】
前記形質転換細胞系が、酵母、非ステビオール配糖体産生植物、藻類および細菌からなる群から選択される、請求項1に記載の対象のステビオール配糖体。
【請求項3】
前記ステビオール配糖体が構造:
【化1】
のReb D4である、請求項1に記載の対象のステビオール配糖体。
【請求項4】
前記ステビオール配糖体がReb WB1である、請求項1に記載の対象のステビオール配糖体。
【請求項5】
前記ステビオール配糖体がReb WB2である、請求項1に記載の対象のステビオール配糖体。
【請求項6】
原料物質がステビオールである、請求項1に記載の対象のステビオール配糖体。
【請求項7】
前記細胞系が大腸菌(E.coli)である、請求項2に記載の対象のステビオール配糖体。
【請求項8】
前記ステビオール配糖体含量が少なくとも70%純粋である、請求項2に記載の対象のステビオール配糖体。
【請求項9】
甘味化量の請求項3に記載のステビオール配糖体を含む消費製品。
【請求項10】
甘味化量の請求項4に記載のステビオール配糖体を含む消費製品。
【請求項11】
甘味化量の請求項5に記載のステビオール配糖体を含む消費製品。
【請求項12】
飲料、菓子類、ベーカリー製品、クッキー、およびチューインガムからなる群から選択される、請求項9に記載の消費製品。
【請求項13】
配列番号3に対して少なくとも80%の同一性を有するDNA配列を含むCP1組換えポリペプチド。
【請求項14】
アミノ酸配列が配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有する、請求項13に記載の組換えポリペプチド。
【請求項15】
前記細胞系が細菌であり、エシェリキア属(Escherichia)、サルモネラ属(Salmonella)、バチルス属(Bacillus)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、メチロサイナス属(Methylosinus)、メチロモナス属(Methylomonas)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ロドバクター属(Rhodobacter)、シネコシスティス属(Synechocystis)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ジゴサッカロミセス属(Zygosaccharomyces)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、カンジダ属(Candida)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、デバリオミセス属(Debaryomyces)、ムコール属(Mucor)、ピキア属(Pichia)、トルロプシス属(Torulopsis)、アスペルギルス属(Aspergillus)、アルツロボトリス属(Arthrobotlys)、ブレビバクテリア属(Brevibacteria)、ミクロバクテリウム属(Microbacterium)、アルスロバクター属(Arthrobacter)、シトロバクター属(Citrobacter)、エシェリキア属(Escherichia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、パンテア属(Pantoea)、サルモネラ属(Salmonella) コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、クロストリジウム属(Clostridium);およびクロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)からなる群から選択される、請求項2に記載の対象のステビオール配糖体。
【請求項16】
対象のステビオール配糖体を製造する生合成方法であって、
a)形質転換細胞系においてCP1酵素を発現させることと、
b)前記細胞系を培地中で成長させることと、
c)対象のステビオール配糖体を産生させることと
を含む方法。
【請求項17】
組換えスクロースシンターゼを基質と共にインキュベートすることをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
組換えUDPグリコシルトランスフェラーゼUGT85C2を、前記スクロースシンターゼ、前記基質、およびCP1組換えポリペプチドと共にインキュベートすることをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
βグルコシダーゼ酵素を反応混合物に添加することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記スクロースシンターゼが、アラビドプシス属(Arabidopsis)スクロースシンターゼ1、アラビドプシス属(Arabidopsis)スクロースシンターゼ3およびビグナ・ラディアテ(Vigna radiate)スクロースシンターゼからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記スクロースシンターゼが、アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)スクロースシンターゼ1である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
産生される前記ステビオール配糖体が、Reb D4およびReb Mの混合物である、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記産生方法がさらに、i)粗産物を精製することと、ii)溶媒を真空下で除去して、濃縮産物を提供することとを含む、請求項2に記載の対象のステビオール配糖体。
【請求項24】
前記粗産物がカラムクロマトグラフィにより精製される、請求項23に記載の対象のステビオール配糖体。
【請求項25】
前記粗産物が酸-塩基抽出により精製される、請求項23に記載の対象のステビオール配糖体。
【請求項26】
前記粗産物が真空蒸留により精製される、請求項23に記載の対象のステビオール配糖体。
【請求項27】
セミ分取HPLCを用いて前記ステビオール配糖体を精製することをさらに含む、請求項23に記載の対象のステビオール配糖体。
【請求項28】
前記ステビオール配糖体がReb WB1である、請求項16に記載の方法。
【請求項29】
前記ステビオール配糖体がReb WB2である、請求項16に記載の方法。
【請求項30】
前記ステビオール配糖体がReb D4である、請求項16に記載の方法。
【請求項31】
前記ステビオール配糖体がReb Mである、請求項16に記載の方法。
【請求項32】
HV1(配列番号9)の使用をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項33】
UGT76G1(配列番号1)の使用をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
構造:
【化2】
を有するステビオール配糖体Reb D4。
【請求項35】
請求項34に記載のステビオール配糖体を含む組成物であって、該組成物中の前記ステビオール配糖体含量が少なくとも70%純粋である組成物。
【請求項36】
甘味化量の請求項34に記載のステビオール配糖体を含む消費製品。
【請求項37】
飲料、菓子類、ベーカリー製品、クッキー、およびチューインガムからなる群から選択される、請求項36に記載の消費製品。
【請求項38】
Reb D4およびReb Mの混合物を含む組成物。
【請求項39】
構造:
【化3】
を有するステビオール配糖体Reb WB1。
【請求項40】
請求項39に記載のステビオール配糖体を含む組成物であって、該組成物中の前記ステビオール配糖体含量が少なくとも70%純粋である組成物。
【請求項41】
甘味化量の請求項39に記載のステビオール配糖体を含む消費製品。
【請求項42】
飲料、菓子類、ベーカリー製品、クッキー、およびチューインガムからなる群から選択される、請求項41に記載の消費製品。
【請求項43】
構造:
【化4】
を有するステビオール配糖体Reb WB2。
【請求項44】
請求項43に記載のステビオール配糖体を含む組成物であって、該組成物中の前記ステビオール配糖体含量が少なくとも70%純粋である組成物。
【請求項45】
甘味化量の請求項43に記載のステビオール配糖体を含む消費製品。
【請求項46】
飲料、菓子類、ベーカリー製品、クッキー、およびチューインガムからなる群から選択される、請求項45に記載の消費製品。
【請求項47】
適切な成長条件下で組換え細胞を培養することを含み、前記組換え細胞がステビオール配糖体を産生する能力を示す、レバウジオシドMの製造方法であって、
前記組換え細胞と、ステビオシド、スクロースシンターゼおよびスクロースを含有する反応組成物とを接触させることを含み、
前記組換え細胞が、前記ステビオシド基質を使用してレバウジオシドEを産生することができる第1のUDP-グリコシルトランスフェラーゼ(UGT)またはその触媒活性部分を発現し、
前記組換え細胞が、前記レバウジオシドEを使用してレバウジオシドD4を産生することができる第2のUDP-グリコシルトランスフェラーゼ(UGT)またはその触媒活性部分を発現し、かつ
前記組換え細胞が、前記レバウジオシドD4を使用してレバウジオシドMを産生することができる第3のUDP-グリコシルトランスフェラーゼ(UGT)またはその触媒活性部分を発現する、前記方法。
【請求項48】
スクロースシンターゼ遺伝子またはその触媒活性部分が、前記組換え細胞内で発現されることをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記反応組成物にスクロースシンターゼが添加されることをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
請求項47に記載の方法により製造されるReb M。
【請求項51】
請求項47に記載の生合成経路を発現する組換え細胞。
【請求項52】
前記細胞が酵母細胞である、請求項51に記載の組換え細胞。
【請求項53】
前記細胞が細菌細胞である、請求項51に記載の組換え細胞。
【請求項54】
前記細胞が植物細胞である、請求項51に記載の組換え細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年10月14日に出願された米国仮特許出願第62/408,179号、および2017年9月8日に出願された米国仮特許出願第62/555,809号(これらのそれぞれの内容は参照によってその全体が本明細書中に援用される)に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明の分野は、特定のステビオール配糖体の製造において有用な方法およびプロセスに関する。より具体的には、本開示は、これまで知られていなかったレバウジオシドであるレバウジオシドD4(「Reb D4」)の製造を提供し、これは次に、酵素変換によりレバウジオシドM(「Reb M」)に変換され得る。また本開示は、これまで知られていなかったレバウジオシドであるレバウジオシドWB1(「Reb WB1」)およびレバウジオシドWB2(「Reb WB2」)の製造も提供する。
【背景技術】
【0003】
本開示は、新規のステビオシドReb D4、Reb WB1およびReb WB2の製造と、Reb D4からReb Mへの変換とに焦点が置かれている。特に、本開示は、Reb D4の合成と、Reb Mの製造におけるその結果的な使用とに関する。
【0004】
ステビオール配糖体は、ステビア・レバウジアナ(Stevia rebaudiana)の葉から単離される天然産物であり、食品、飼料および飲料における高甘味度の低カロリー甘味料として広く使用されている。天然に存在するステビオール配糖体は、同じ基本ジテルペン構造(ステビオール)を有するが、ステビオール骨格のC13位およびC19位の炭水化物残基修飾(例えば、グルコース、ラムノース、およびキシロース残基)の数および構造が異なる。既知の構造を有するステビオール配糖体には、ステビオシド、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドF、レバウジオシドMおよびズルコシドAが含まれる。商業的な利用の観点から、レバウジオシドM自体は一般に安全であると認められている(「GRAS」状態)。
【0005】
乾燥重量ベースで、ステビオシド、レバウジオシドA、レバウジオシドC、およびズルコシドAはそれぞれ、野生型ステビア属(Stevia)の葉におけるステビオール配糖体の全重量の9.1、3.8、0.6、および0.30パーセントを占めるが、Reb Mなどの他のステビオールグルコシド(steviol glucoside)は、それよりも大幅に少ない量で存在する。ステビア・レバウジアナ(Stevia rebaudiana)植物からの抽出物は市販されており、このような抽出物は、通常、主成分としてステビオシドおよびレバウジオシドAを含有する。その他の既知のステビオール配糖体は、通常、少量または微量成分としてステビア抽出物中に存在する。例えば、市販調製物中のレバウジオシドAの量は、全ステビオール配糖体含量の約20%から90%以上まで様々であり得るが、通常、レバウジオシドBの量は全ステビオール配糖体の約1~2%であり、レバウジオシドCの量は約7~15%、そしてレバウジオシドDの量は約2%であり得る。このような抽出物中に、レバウジオシドMは無視できるほど少量しか存在しない。興味深いことに、レバウジオシドEも、ステビア・レバウジアナ(Stevia rebaudiana)植物種中に存在する最も少ない量のステビオール配糖体のうちの1つであり、全配糖体の0.5%未満を占める。
【0006】
天然甘味料として、異なるステビオール配糖体は、異なる甘味度、「口当たり」、および試験される各レバウジオシド種に関連する特定の後味を有する。砂糖(すなわち、「スクロース」)と比べて、ステビオール配糖体の甘味は著しく高い。例えば、ステビオシドはスクロースよりも100~150倍甘いが、風味試験で気付かれるように苦い後味を有し、レバウジオシドAおよびEはスクロースよりも250~450倍甘く、後味はステビオシドよりもはるかに良好であるが、注目すべき後味は依然として存在する。従って、任意のステビア抽出物の風味プロファイルは抽出物中のステビオール配糖体の相対含量によって大きく影響を受け、そしてこれは、基礎となる植物が経験する環境条件および使用される抽出プロセスによって影響され得る。植物生産、気象条件および抽出条件におけるこれらの変動は、ステビア抽出物中のステビオール配糖体の一貫性のない組成をもたらし得るので、風味プロファイルは、抽出生成物のバッチによって大きく異なる。
【0007】
またステビア抽出物の風味プロファイルは、抽出プロセス後に生成物中に残存する植物由来または環境由来の汚染物質(例えば、色素、脂質、タンパク質、フェノール類および糖類など)によっても影響され得る。これらの汚染物質は、通常、消費者製品の甘味料としてステビア抽出物を使用するのに望ましくないその独自の異臭を有する。さらに、ステビア抽出物中の量が少ないステビオールレバウジオシドの個々のまたは特定の組合せを単離する費用は、コストおよびリソース面で非常に高い。いくつかの特定のステビオール配糖体の品質および有効性が限られていると仮定すると、商業的な供給は、生物変換により良好に対処することが可能であり、ここで、対象の配糖体の産生を特異的に増大させるために、必要とされる酵素を保有し、商業的に重要な発酵プロセスを使用するように、天然酵素、または特定の微生物は改変され得る。例えば、ステビオシドからReb Eへの生物変換は、改変された微生物から得られる酵素を用いて既に報告されている(例えば、PCT出願公開の国際公開第2015/065650号および国際公開第2015/171555号を参照)。あるいは、他の非生物学的合成手段を使用して、対象のステビオール配糖体を開発することができる。
【0008】
生物学的観点から、全てのステビオール配糖体は、ステビオールの一連のグリコシル化反応によって形成され、これは通常、ウリジン5’-ジホスホグルコース(UDP-グルコース)を糖部分の供与体として用いて、UDP-グリコシルトランスフェラーゼ(UGT)酵素により触媒される。植物において、UGTは、グルコース残基をUDP-グルコースからステビオールへ転移させる非常に多様な酵素群である。これらの反応では、ステビオシドは、種々のレバウジオシド化合物の生合成における中間体であることが多い。例えば、ステビオシドのC-13-O-グルコースのC-3’のステビオシドのグリコシル化はレバウジオシドAをもたらし、ステビオシドの19-O-グルコース位置のC-2’のグリコシル化はレバウジオシドEをもたらす。
【0009】
本明細書に記載されるように、レバウジオシドEの特異的および定方向のグリコシル化(C-19-O-グルコースにおける)はレバウジオシドReb D4を生じることができ、UGT酵素によるReb D4のさらなるグリコシル化はレバウジオシドMを生じる。しかしながら、本開示までは、酵素的にD4を製造するための合成ステップは報告されていない。
【0010】
本開示によると、ステビア抽出物の風味品質を改善するための実践的なアプローチは、概してより望ましい風味特性を有するレバウジオシド化合物の収率を増大させ、そしてより生産的な合成経路によりこれを行なうことである。試験されるステビオール配糖体のうち、多くの人は、食品および飲料での使用のためにReb Mが最も望ましい風味および化学的性質を有すると考える。しかしながら、上記のように、植物には、この化合物がその葉の中に無視できるほど少量しか存在せず、従って、この配糖体の大規模製造のために、そして食品および飲料産業に代替甘味料を提供するために、代替的な生合成を開発することが必要である。
【0011】
従って、より良好でより一貫性のある風味プロファイルを有するステビオール配糖体を市販の製品として開発することが必要とされ、そしてこのような望ましい配糖体の製造が商業的にできるだけ費用効率が高くなり得るように、このようなステビオール配糖体が比較的一般的な出発基質(例えば、より大量にあるステビオール配糖体など)を出発分子として利用することが必要とされている。本開示は、これまで知られていなかったステビオール配糖体Reb D4からレバウジオシドMを製造する方法と、Reb D4、Reb WB1およびReb WB2を製造するための方法とを提供する。
【0012】
さらに、植物からの抽出プロセスは通常、ステビオール配糖体の回収のためにヘキサン、クロロホルム、およびエタノールのような溶媒を用いる固液抽出技術を使用する(Catchpole et al.,2003)。しかしながら、溶媒抽出はそれ自体がエネルギー集約的であり、毒性廃棄物処理の問題につながり、植物自体を成長させるために広大な面積を必要とし、そして微量成分を回収するためにさらなる精製を必要とする生成物をもたらす。この結果として、ステビオール配糖体の製造コストを低減し、大規模栽培および加工の環境影響を少なくするために新しい製造方法も必要とされている(Yao et al.,1994)。1つのこのような可能性のある解決法は、商業に利用可能な所望のステビオール配糖体の選択性、存在量および純度を増大させる特定の微生物種における産生を可能にする発酵生物変換技術の使用である。
【0013】
上記に加えて、消費者は、食品、飼料、フレーバーまたは薬用成分の天然の生物学的な源を良いと認め、積極的に求める一方で、ソーシング、一貫性のある風味プロファイル、および環境的に持続可能な製造についても関心がある。この状況に対して、本開示の微生物発酵および製造方法は、無機合成または現在の植物抽出技術よりも天然なやり方でそれを行ないながら、様々な産業および研究に有用な量のReb Mを提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、ヒトおよび動物の消費をさらに可能にするために経済的かつ便利にReb Mを製造する新規の方法の開発が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示の態様は、ステビオール配糖体、ステビオール配糖体を製造する方法、およびステビオール配糖体を含む組成物に関する。いくつかの態様では、本開示は、これまでに報告されていないステビオール配糖体のReb D4からReb Mを製造する方法を包含する。
【0016】
特に、本開示は、(13-[(2-O-β-D-グルコピラノシル-β-D-グルコピラノシル)オキシ]ent-カウラ-16-エン-19-酸-[(2-O-β-D-グルコピラノシル-3-O-β-D-グルコピラノシル-β-D-グルコピラノシル)エステル])として特定されるステビオール配糖体レバウジオシドD4「Reb D4」の製造と、特定のUDP-グリコシルトランスフェラーゼによるそのReb Mへの変換とを提供する(図1を参照)。また本開示は、本明細書に記載されるようなReb WB1およびReb WB2の製造も提供する。
【0017】
本明細書に記載される本方法は、合成経路を用いて特定のステビオール配糖体を合成するためのアプローチを提供する。
【0018】
代替の実施形態は、RebWB1を介する経路を利用する、レバウジオシドWからのレバウジオシドD4の製造である。
【0019】
さらなる実施形態は、レバウジオシドD4からのレバウジオシドMの製造である。
【0020】
本開示の一実施形態では、Reb WB2、Reb WB1およびReb D4を介する経路を用いてReb Mの製造を可能にする方法が提供される。
【0021】
代替の実施形態では、Reb WからReb WB1への酵素生物変換を触媒するために、βグルコシダーゼが使用される(図14を参照)。
【0022】
いくつかの態様では、本開示は、構造:
【化1】
を有するステビオール配糖体Reb D4を提供する。
【0023】
いくつかの実施形態では、本開示はReb D4を含む組成物を提供し、任意選択的に、組成物中の前記Reb D4の含量は、少なくとも70%(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)純粋である。いくつかの実施形態では、本開示は、甘味化量(sweetening amount)のReb D4を含む消費製品を提供する。いくつかの実施形態では、消費製品は、飲料、菓子類、ベーカリー製品、クッキー、およびチューインガムからなる群から選択される。
【0024】
他の態様では、本開示は、Reb D4およびReb Mの混合物を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、甘味化量のReb D4およびReb Mの混合物を含む消費製品を提供する。いくつかの実施形態では、消費製品は、飲料、菓子類、ベーカリー製品、クッキー、およびチューインガムからなる群から選択される。
【0025】
さらに他の態様では、本開示は、構造:
【化2】
を有するステビオール配糖体Reb WB1を提供する。
【0026】
いくつかの実施形態では、本開示はReb WB1を含む組成物を提供し、任意選択的に、組成物中の前記Reb WB1の含量は、少なくとも70%(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)純粋である。いくつかの実施形態では、本開示は、甘味化量のReb WB1を含む消費製品を提供する。いくつかの実施形態では、消費製品は、飲料、菓子類、ベーカリー製品、クッキー、およびチューインガムからなる群から選択される。
【0027】
さらに他の態様では、本開示は、構造:
【化3】
を有するステビオール配糖体Reb WB2を提供する。
【0028】
いくつかの実施形態では、本開示はReb WB2を含む組成物を提供し、任意選択的に、組成物中の前記Reb WB2の含量は、少なくとも70%(例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)純粋である。いくつかの実施形態では、本開示は、甘味化量のReb WB2を含む消費製品を提供する。いくつかの実施形態では、消費製品は、飲料、菓子類、ベーカリー製品、クッキー、およびチューインガムからなる群から選択される。
【0029】
いくつかの態様では、本開示は、培地内で成長する形質転換細胞系によって産生される、対象のステビオール配糖体を提供する。いくつかの実施形態では、前記形質転換細胞系は、酵母、非ステビオール配糖体産生植物、藻類および細菌からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、前記細胞系は細菌であり、エシェリキア属(Escherichia)、サルモネラ属(Salmonella)、バチルス属(Bacillus)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、メチロサイナス属(Methylosinus)、メチロモナス属(Methylomonas)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ロドバクター属(Rhodobacter)、シネコシスティス属(Synechocystis)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ジゴサッカロミセス属(Zygosaccharomyces)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、カンジダ属(Candida)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、デバリオミセス属(Debaryomyces)、ムコール属(Mucor)、ピキア属(Pichia)、トルロプシス属(Torulopsis)、アスペルギルス属(Aspergillus)、アルツロボトリス属(Arthrobotlys)、ブレビバクテリア属(Brevibacteria)、ミクロバクテリウム属(Microbacterium)、アルスロバクター属(Arthrobacter)、シトロバクター属(Citrobacter)、エシェリキア属(Escherichia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、パンテア属(Pantoea)、サルモネラ(Salmonella) コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、クロストリジウム属(Clostridium);およびクロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、前記細胞系は大腸菌(E.coli)である。いくつかの実施形態では、前記ステビオール配糖体はReb D4である。いくつかの実施形態では、前記ステビオール配糖体はReb WB1である。いくつかの実施形態では、前記ステビオール配糖体はReb WB2である。いくつかの実施形態では、原料物質はステビオールである。いくつかの実施形態では、前記ステビオール配糖体含量は少なくとも70%純粋である。いくつかの実施形態では、本製造方法はさらに、i)粗産物を精製することと、ii)溶媒を真空下で除去して、濃縮産物を提供することとを含む。いくつかの実施形態では、前記粗産物はカラムクロマトグラフィにより精製される。いくつかの実施形態では、前記粗産物は酸-塩基抽出により精製される。いくつかの実施形態では、前記粗産物は真空蒸留により精製される。いくつかの実施形態では、本製造方法はさらに、セミ分取(semi-preparative)HPLCを用いて前記ステビオール配糖体を精製することを含む。他の態様では、本開示は、甘味化量のステビオール配糖体を含む消費製品を提供する。いくつかの実施形態では、消費製品は、飲料、菓子類、ベーカリー製品、クッキー、およびチューインガムからなる群から選択される。
【0030】
他の態様では、本開示は、配列番号3に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)の同一性を有するDNA配列を含むCP1組換えポリペプチドを提供する。いくつかの実施形態では、CP1組換えポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号4に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)の同一性を有する。いくつかの実施形態では、CP1組換えポリペプチドは、表2に記載される1つまたは複数の位置において1つまたは複数の突然変異を有する。
【0031】
さらに他の態様では、本開示は、対象のステビオール配糖体を製造する生合成方法を提供し、本方法は、形質転換細胞系においてCP1酵素を発現させることと、基質を含有する培地において細胞系を成長させることと、対象のステビオール配糖体を産生させることとを含む。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、組換えスクロースシンターゼを基質と共にインキュベートすることを含む。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、組換えUDPグリコシルトランスフェラーゼUGT85C2をスクロースシンターゼ、基質、およびCP1組換えポリペプチドと共にインキュベートすることを含む。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、βグルコシダーゼ酵素を反応混合物に添加することを含む。いくつかの実施形態では、スクロースシンターゼは、アラビドプシス属(Arabidopsis)スクロースシンターゼ1、アラビドプシス属(Arabidopsis)スクロースシンターゼ3およびビグナ・ラディアテ(Vigna radiate)スクロースシンターゼからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、スクロースシンターゼは、アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)スクロースシンターゼ1である。いくつかの実施形態では、産生されるステビオール配糖体は、Reb D4およびReb Mの混合物である。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、i)粗産物を精製することと、ii)溶媒を真空下で除去して、濃縮産物を提供することとを含む。いくつかの実施形態では、前記粗産物はカラムクロマトグラフィにより精製される。いくつかの実施形態では、前記粗産物は酸-塩基抽出により精製される。いくつかの実施形態では、前記粗産物は真空蒸留により精製される。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、セミ分取HPLCを用いて前記ステビオール配糖体を精製することを含む。いくつかの実施形態では、前記ステビオール配糖体はReb WB1である。いくつかの実施形態では、前記ステビオール配糖体はReb WB2である。いくつかの実施形態では、前記ステビオール配糖体はReb D4である。いくつかの実施形態では、前記ステビオール配糖体はReb Mである。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、HV1(配列番号9)の使用を含む。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、UGT76G1(配列番号1)の使用を含む。
【0032】
他の態様では、本開示は、適切な成長条件下で組換え細胞を培養することを含み、前記組換え細胞がステビオール配糖体を産生する能力を示す、レバウジオシドMの製造方法を提供し、本方法は、前記組換え細胞と、ステビオシド、スクロースシンターゼおよびスクロースを含有する反応組成物とを接触させることを含み、前記組換え細胞は、前記ステビオシド基質を使用してレバウジオシドEを産生することができる第1のUDP-グリコシルトランスフェラーゼ(UGT)またはその触媒活性部分を発現し、前記組換え細胞は、前記レバウジオシドEを使用してレバウジオシドD4を産生することができる第2のUDP-グリコシルトランスフェラーゼ(UGT)またはその触媒活性部分を発現し、そして前記組換え細胞は、前記レバウジオシドD4を使用してレバウジオシドMを産生することができる第3のUDP-グリコシルトランスフェラーゼ(UGT)またはその触媒活性部分を発現する。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、スクロースシンターゼ遺伝子またはその触媒活性部分が前記組換え細胞内で発現されることを含む。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、反応組成物にスクロースシンターゼが添加されることを含む。
【0033】
いくつかの態様では、本開示は、上記の段落に記載される方法または本明細書中に他に開示される方法によって製造されるReb Mを提供する。
【0034】
他の態様では、本開示は、Reb Mを産生するための生合成経路(例えば、Reb D4からReb Mへの変換またはReb EからReb D4へ、そしてReb Mへの変換による)を発現する組換え細胞を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は、前記ステビオシド基質を使用してレバウジオシドEを産生することができる第1のUDP-グリコシルトランスフェラーゼ(UGT)またはその触媒活性部分、前記レバウジオシドEを使用してレバウジオシドD4を産生することができる第2のUDP-グリコシルトランスフェラーゼ(UGT)またはその触媒活性部分、および前記レバウジオシドD4を使用してレバウジオシドMを産生することができる第3のUDP-グリコシルトランスフェラーゼ(UGT)またはその触媒活性部分のうちの1つまたは複数を発現する。いくつかの実施形態では、細胞は酵母細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は細菌細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は植物細胞である。
【0035】
他の態様では、本開示は、図14に記載される酵素および基質またはそのサブセット(例えば、Reb W、Reb WB1、またはReb D4から始まり、そして/あるいはUGT76G1、CP1またはCR1を利用する)を用いてReb Mを製造する方法を提供する。いくつかの実施形態では、Reb Mは、図14に記載される酵素および基質、またはそのサブセット(例えば、Reb W、Reb WB1、またはReb D4から始まり、そして/あるいはUGT76G1、CP1またはCR1を利用する)を含有するインビトロ反応混合物を用いて製造される。いくつかの実施形態では、Reb Mは、図14に記載される酵素、またはそのサブセット(例えば、UGT76G1、CP1またはCR1)を発現する細胞においてインビボで産生され、ここで、細胞は、図14に記載される基質(例えば、Reb W、Reb WB1、またはReb D4)と共にインキュベートされる。いくつかの実施形態では、細胞は酵母細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は細菌細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は植物細胞である。
【0036】
製品/商業的有用性の観点から、米国の市場にはステビオール配糖体を含有する製品が数ダース存在し、鎮痛剤から害虫忌避剤まで全てのものにおいて、そして食品においても健康補助食品としても使用することができる。ステビオール配糖体を含有する製品は、エアロゾル、液体、または顆粒剤であり得る。
【0037】
実施形態における細胞系については、いくつかの実施形態では、それは、細菌、酵母、およびこれらの組合せ、または選択された遺伝子による遺伝子形質転換と、その後の、ステビオールからの所望のステビオール配糖体の生合成製造とを可能にし得る任意の細胞系からなる群から選択される。最も好ましい微生物系において、所望のステビオール配糖体化合物を製造するために大腸菌(E.coli)が使用される。
【0038】
本開示は種々の修正および代替形態を許容できるが、その特定の実施形態が例として図面に示されており、本明細書において詳細に記載されるであろう。しかしながら、本明細書で提示される図面および詳細な説明は、本開示を開示される特定の実施形態に限定することは意図されず、反対に、本発明が、特許請求の範囲により定義される本開示の趣旨および範囲内に包含される全ての修正物、等価物、および代替物を網羅できることは理解されるべきである。
【0039】
本発明の他の特徴および利点は、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な記載において明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】レバウジオシドD4(13-[(2-O-β-D-グルコピラノシル-β-D-グルコピラノシル)オキシ]ent-カウラ-16-エン-19-酸-[(2-O-β-D-グルコピラノシル-3-O-β-D-グルコピラノシル-β-D-グルコピラノシル)エステル])の構造を示す。
図2】レバウジオシドWB1およびWB2の構造を示す。
図3】レバウジオシドWの加水分解生成物のHPLCプロファイルを示す。レバウジオシドWは、B-glu1酵素により加水分解される。A:レバウジオシドW(「W」)の標準物。B~D:1時間(B)、6時間(C)および24時間(D)でレバウジオシドWを組換えB-glu1酵素により加水分解した。
図4】UGT85C2によるレバウジオシドWB2(「WB2」)からレバウジオシドWB1(「WB1」)への生物変換のHPLCプロファイルを示す。0時間(A)、2時間(B)、6時間(C)および18時間(D)でレバウジオシドWB2をUGT85C2酵素と共にインキュベートした。
図5-1】レバウジオシドWB1およびWB2のLC-MS分析を示す。
図5-2】レバウジオシドWB1およびWB2のLC-MS分析を示す。
図6】HV1酵素によるレバウジオシドWB1からレバウジオシドD4への生物変換のHPLCプロファイルを示す。A:バウジオシドWB1(「WB1」)の標準物。B~C:2時間(B)および6時間(C)でレバウジオシドWB1をHV1酵素により変換した。
図7A】Reb D4分子の構造およびLC-MSデータを示す。
図7B】Reb D4分子の構造およびLC-MSデータを示す。
図8】UDP酵素UGT71G1の構造を示す。ヒスチジンが左側に位置し、UDPが右側に位置する標準的な配向が示される。
図9】UGT76G1酵素の構造を示し、UGT76G1構造のαヘリックスおよびベータシートが強調される。
図10】CP1およびUGT76G1酵素の比較を示す。UGT76G1の結晶構造は灰色で示され、CP1モデルは黒色で示される。
図11】UGT76G1の結晶構造およびそのCP1分子との相互作用を示す。この結晶構造は、CP1モデルにおけるベータシートの不在を強調する。UGT76G1の結晶構造は灰色で示され、CP1モデルは黒色で示される。
図12】酵素CP1の反応中心におけるレバウジオシドD4を示す。画像の下部に位置する濃灰色の分子はレバウジオシドD4である。
図13-1】組換えUGT76G1ポリペプチド、組換えCP1、および突然変異体(CR1)の組合せにより触媒される、Reb D4からのReb Mのインビトロ産生を示す。A:レバウジオシドD(「D」)およびレバウジオシドM(「M」)の標準物を示す。B:レバウジオシドD4(「D4」)の標準物を示す。Reb Mは、30分(C)および1時間(F)でUGT76G1により酵素的に産生され、Reb Mは、30分(D)および1時間(G)でCP1により酵素的に産生される。Reb Mは、30分(E)および1時間(H)でCR1により酵素的に産生される。
図13-2】組換えUGT76G1ポリペプチド、組換えCP1、および突然変異体(CR1)の組合せにより触媒される、Reb D4からのReb Mのインビトロ産生を示す。A:レバウジオシドD(「D」)およびレバウジオシドM(「M」)の標準物を示す。B:レバウジオシドD4(「D4」)の標準物を示す。Reb Mは、30分(C)および1時間(F)でUGT76G1により酵素的に産生され、Reb Mは、30分(D)および1時間(G)でCP1により酵素的に産生される。Reb Mは、30分(E)および1時間(H)でCR1により酵素的に産生される。
図14】レバウジオシドMのレバウジオシドWからの生合成経路のための合成経路を示す。
図15】Reb WB2の重要なGHMBC相関を示す。
図16】Reb WB1の重要なGHMBC相関を示す。
図17】Reb D4の重要なTOCSYおよびGHMBC相関を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本明細書中で使用される用語の説明:
ステビオール配糖体は南米の植物ステビア・レバウジアナ(Stevia rebaudiana)(キク科(Asteraceae))の葉の甘味の原因となる化合物の種類であり、食品、飼料および飲料における甘味料として使用され得る。
【0042】
定義:
「細胞系」は、異所性タンパク質の発現を提供する任意の細胞である。これには、細菌、酵母、植物細胞および動物細胞が含まれる。これには、原核細胞および真核細胞の両方が含まれる。またこれには、リボソームなどの細胞成分に基づいたタンパク質のインビトロ発現も含まれる。
【0043】
「コード配列」は、当業者にとってのその通常および慣例の意味が与えられるべきであり、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を指すために制限なく使用される。
【0044】
「細胞系を成長させる」。成長には、細胞の増殖および分裂を可能にし得る適切な培地を提供することが含まれる。また、細胞または細胞成分が組換えタンパク質を翻訳および作製できるように資源を提供することも含まれる。
【0045】
「タンパク質発現」。タンパク質の産生は遺伝子発現後に起こり得る。これは、DNAがメッセンジャーRNA(mRNA)に転写された後の段階からなる。mRNAは次にポリペプチド鎖に翻訳され、これは、最終的にタンパク質に折り畳まれる。DNAは、核酸を意図的に細胞内に導入するプロセスであるトランスフェクションを介して細胞内に存在する。この用語は、真核細胞における非ウィルス法に使用されることが多い。また、これは、他の方法および細胞型を指してもよいが、他の用語が好ましい。細菌、植物細胞を含む非動物真核細胞における非ウィルスDNA転移を説明するためには「形質転換」が使用されることが多い。動物細胞では、形質転換はこれらの細胞における癌性状態への進行(発癌)を指すためにも使用されるので、トランスフェクションが好ましい用語である。形質導入は、ウィルス媒介のDNA転移を説明するために使用されることが多い。形質転換、形質導入、およびウィルス感染は、本出願のトランスフェクションの定義に含まれる。
【0046】
「酵母」。本開示によると、本明細書で特許請求される酵母は、真菌界のメンバーに分類される真核単細胞微生物である。酵母は多細胞祖先から進化した単細胞生物であるが、本開示に有用ないくつかの種は、仮性菌糸または偽菌糸として知られている糸状の結合した出芽細胞を形成することにより、多細胞の特徴を発現する能力を有するものである。
【0047】
「UGT酵素」。本開示で使用されるUGT酵素の名前は、UGT Nomenclature Committeeにより採用された命名法(Mackenzie et al.,”The UDP glycosyltransferase gene super family:recommended nomenclature updated based on evolutionary divergence,”PHARMACOGENETICS,1997,vol.7,pp.255-269)と一致しており、これは、ファミリー番号、サブファミリーを示す文字、および個々の遺伝子の番号の組合せによりUGT遺伝子を分類する。例えば、「UGT76G1」という名前は、UGTファミリー番号76(植物由来)、サブファミリーG、および遺伝子番号1に属する遺伝子によりコードされるUGT酵素を指す。
【0048】
構造用語:
本明細書で使用される場合、単数形「a、an」および「the」は、内容が他に明白に指示しない限り、複数の指示対照を含む。
【0049】
「含む(include)」、「有する(have)」または同様の用語が説明または特許請求の範囲において使用される限りにおいて、このような用語は、「含む(comprise)」が特許請求の範囲において移行語として使用される場合に解釈されるように、「含む(comprise)」という用語と同様に包括的であることが意図される。
【0050】
「例示的」という用語は、本明細書において、「実施例、例、または例証としての役割を果たすこと」を意味するために使用される。「例示的」であると本明細書に記載される任意の実施形態は、必ずしも、他の実施形態よりも好ましいまたは有利であると解釈されるとは限らない。
【0051】
「相補的」という用語は、当業者にとってのその通常および慣例の意味が与えられるべきであり、互いにハイブリダイズすることができるヌクレオチド塩基間の関係を説明するために制限なく使用される。例えば、DNAに関しては、アデノシンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。従って、本技術は、添付の配列表において報告される完全な配列に相補的である単離核酸断片、ならびにそれらの実質的に同様の核酸配列も含む。
【0052】
「核酸」および「ヌクレオチド」という用語は、当業者にとってのそのそれぞれの通常および慣例の意味が与えられるべきであり、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、および一本鎖または二本鎖形態のいずれかのこれらのポリマーを指すために制限なく使用される。特に限定されない限り、この用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し、かつ天然に存在するヌクレオチドと同様に代謝される、天然ヌクレオチドの既知の類似体を含有する核酸を包含する。他に記載されない限り、特定の核酸配列は、その保存的に改変されたまたは縮重変異体(例えば、縮重コドン置換)および相補的配列、ならびに明確に示された配列を暗黙に包含する。
【0053】
「単離(された)」という用語は、当業者にとってのその通常および慣例の意味が与えられるべきであり、単離核酸または単離ポリペプチドとの関連で使用される場合、人の手によりその天然環境から離れて存在し、従って天然の産物ではない核酸またはポリペプチドを指すために制限なく使用される。単離された核酸またはポリペプチドは精製形態で存在することもできるし、あるいは例えば遺伝子導入宿主細胞内などの非天然環境において存在することもできる。
【0054】
「インキュベートする(incubating)」および「インキュベーション」という用語は、本明細書で使用される場合、2つ以上の化学的または生物学的実体(例えば、化合物および酵素など)を混合し、これらを、ステビオール配糖体組成物を生じさせるのに有利な条件下で相互作用させるプロセスを意味する。
【0055】
「縮重変異体」という用語は、1つまたは複数の縮重コドン置換によって参照核酸配列とは異なる残基配列を有する核酸配列を指す。縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択された(または全ての)コドンの第3の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基によって置換された配列を作成することにより達成することができる。核酸配列およびその縮重変異体の全ては、同じアミノ酸またはポリペプチドを発現するであろう。
【0056】
「ポリペプチド」、「タンパク質」、および「ペプチド」という用語は、当業者にとってのそのそれぞれの通常および慣例の意味が与えられるべきであり、3つの用語は互換的に使用されることもあり、そのサイズまたは機能に関係なく、アミノ酸、またはアミノ酸類似体のポリマーを指すために制限なく使用される。「タンパク質」は比較的大きいポリペプチドに関して使用されることが多く、「ペプチド」は小さいポリペプチドに関して使用されることが多いが、当該技術分野におけるこれらの用語の使用は重複しており、変動する。「ポリペプチド」という用語は、本明細書で使用される場合、他に言及されない限り、ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質を指す。「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」という用語は、ポリヌクレオチド産物を指す場合に、本明細書では互換的に使用される。従って、例示的なポリペプチドは、ポリヌクレオチド産物、天然に存在するタンパク質、相同体、オルソログ、パラログ、断片および他の等価物、変異体、ならびに上記のものの類似体を含む。
【0057】
「ポリペプチド断片」および「断片」という用語は、参照ポリペプチドに関して使用される場合、当業者にとってのその通常および慣例の意味が与えられるべきであり、参照ポリペプチド自体と比べてアミノ酸残基が欠失しているが、残りのアミノ酸配列は通常参照ポリペプチドにおける対応する位置と同一であるポリペプチドを指すために制限なく使用される。このような欠失は、参照ポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端、あるいは両方において起こり得る。
【0058】
ポリペプチドまたはタンパク質の「機能的断片」という用語は、全長ポリペプチドまたはタンパク質の一部分であり、そして全長ポリペプチドまたはタンパク質と実質的に同じ生物活性を有するか、あるいは実質的に同じ機能を実行する(例えば、同じ酵素反応を実行する)ペプチド断片を指す。
【0059】
互換的に使用される「変異体ポリペプチド」、「改変アミノ酸配列」、または「改変ポリペプチド」という用語は、1つまたは複数のアミノ酸によって、例えば、1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、および/または付加によって参照ポリペプチドとは異なるアミノ酸配列を指す。一態様では、変異体は、参照ポリペプチドの能力のいくらかまたは全てを保持する「機能的変異体」である。
【0060】
「機能的変異体」という用語はさらに、保存的に置換された変異体を含む。「保存的に置換された変異体」という用語は、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換によって参照ペプチドとは異なり、参照ペプチドの活性のいくらかまたは全てを保持するアミノ酸配列を有するペプチドを指す。「保存的アミノ酸置換」は、機能的に同様の残基によるアミノ酸残基の置換である。保存的置換の例としては、1つの非極性(疎水性)残基、例えばイソロイシン、バリン、ロイシンもしくはメチオニンと、別のものとの置換;1つの荷電もしくは極性(親水性)残基と、別のものとの置換、例えば、アルギニンとリジンとの間の置換、グルタミンとアスパラギンとの間の置換、スレオニンとセリンとの間の置換;1つの塩基性残基、例えばリジンもしくはアルギニンと、別のものとの置換;または1つの酸性残基、例えばアスパラギン酸もしくはグルタミン酸と、別のものとの置換;または1つの芳香族残基、例えばフェニルアラニン、チロシン、もしくはトリプトファンと、別のものとの置換が挙げられる。このような置換は、タンパク質またはポリペプチドの見かけの分子量または等電点に対してほとんどまたは全く影響を与えないことが予想される。「保存的に置換された変異体」という語句は、化学的に誘導された残基によって残基が置換されたペプチドも含むが、ただし、得られるペプチドが本明細書に記載される参照ペプチドの活性のいくらかまたは全てを保持することを条件とする。
【0061】
本技術のポリペプチドに関連する「変異体」という用語はさらに、参照ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、そしてさらに100%同一であるアミノ酸配列を有する、機能的に活性なポリペプチドを含む。
【0062】
「相同」という用語は、その文法的形態およびスペリングバリエーションの全てにおいて、「共通の進化的起源」を有するポリヌクレオチドまたはポリペプチドの間の関係を指し、スーパーファミリーからのポリヌクレオチドまたはポリペプチドと、異なる種からの相同ポリヌクレオチドまたはタンパク質とが含まれる(Reeck et al.,CELL 50:667,1987)。このようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、同一性パーセントに関するか、または保存位置における特異的アミノ酸もしくはモチーフの存在に関するかにかかわらず、その配列類似性に反映されるような配列相同性を有する。例えば、2つの相同ポリペプチドは、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも900 少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、そしてさらに100%同一であるアミノ酸配列を有することができる。
【0063】
「適切な制御配列」は、当業者にとってのその通常および慣例の意味が与えられるべきであり、コード配列の上流側(5’非コード配列)、その中、または下流側(3’非コード配列)に位置し、そして関連するコード配列の転写、RNAプロセシングもしくは安定性、または翻訳に影響するヌクレオチド配列を指すために制限なく使用される。制御配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、およびポリアデニル化認識配列を含み得る。
【0064】
「プロモーター」は、当業者にとってのその通常および慣例の意味が与えられるべきであり、コード配列または機能的RNAの発現を制御することができるDNA配列を指すために制限なく使用される。一般に、コード配列は、プロモーター配列に対して3’側に位置する。プロモーターは、その全体が天然遺伝子に由来してもよいし、あるいは天然に見出される異なるプロモーターに由来する異なる要素から構成されてもよいし、あるいはさらに、合成DNAセグメントを含んでいてもよい。異なるプロモーターは、異なる組織または細胞型において、または異なる発生段階で、または異なる環境条件に応答して遺伝子の発現を指示し得ることが当業者により理解される。ほとんどの時点でほとんどの細胞型において遺伝子を発現させるプロモーターは、一般に、「構成的プロモーター」と呼ばれる。ほとんどの場合、制御配列の正確な境界は完全には定義されていないので、異なる長さのDNA断片が同一のプロモーター活性を有し得ることは、さらに認識される。
【0065】
「機能的に連結された」という用語は、一方の機能が他方により影響されるような、単一の核酸断片における核酸配列の関連性を指す。例えば、プロモーターは、そのコード配列の発現に影響を与えることができる場合に、コード配列と機能的に連結されている(すなわち、コード配列は、プロモーターの転写制御下にある)。コード配列は、センス方向またはアンチセンス方向に制御配列と機能的に連結され得る。
【0066】
「発現」という用語は、本明細書で使用される場合、当業者にとってのその通常および慣例の意味が与えられるべきであり、本技術の核酸断片に由来するセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定な蓄積を指すために制限なく使用される。「過剰発現」は、正常または非形質転換生物における産生レベルを超える、遺伝子導入または組換え生物における遺伝子産物の産生を指す。
【0067】
「形質転換」は、当業者にとってのその通常および慣例の意味が与えられるべきであり、ポリヌクレオチドの標的細胞内への転移(その細胞によるさらなる発現のため)を指すために制限なく使用される。転移されたポリヌクレオチドは標的細胞のゲノムまたは染色体DNA内に取り込まれ、遺伝学的に安定した遺伝をもたらすこともできるし、あるいは宿主染色体と関係なく複製することもできる。形質転換された核酸断片を含有する宿主生物は、「遺伝子導入」または「組換え」または「形質転換」生物と呼ばれる。
【0068】
「形質転換」、「遺伝子導入」、および「組換え」という用語は、本明細書において宿主細胞と関連して使用される場合、当業者にとってのそのそれぞれの通常および慣例の意味が与えられるべきであり、異種核酸分子が導入された宿主生物の細胞、例えば植物または微生物細胞を指すために制限なく使用される。核酸分子は宿主細胞のゲノム内に安定して組み込まれることもできるし、あるいは核酸分子は染色体外分子として存在することもできる。このような染色体外分子は自己複製することができる。形質転換された細胞、組織、または対象は、形質転換プロセスの最終産物だけでなく、その遺伝子導入子孫も包含することが理解される。
【0069】
「組換え」、「異種」、および「外因性」という用語は、本明細書においてポリヌクレオチドと関連して使用される場合、当業者にとってのそのそれぞれの通常および慣例の意味が与えられるべきであり、特定の宿主細胞に対して外来性である起源に由来するか、あるいは同じ起源に由来する場合はその元の形態から改変されたポリヌクレオチド(例えば、DNA配列または遺伝子)を指すために制限なく使用される。従って、宿主細胞中の異種遺伝子は、特定の宿主細胞に対して内因性であるが、例えば、部位特異的変異誘発または他の組換え技術の使用により改変された遺伝子を含む。この用語は、天然に存在するDNA配列の天然に存在しない複数コピーも含む。従って、この用語は、細胞に対して外来性または異種であるか、あるいは細胞に対して相同であるが、その要素が通常見出されない宿主細胞内の位置または形態にあるDNAセグメントを指す。
【0070】
同様に、「組換え」、「異種」および「外因性」という用語は、本明細書においてポリペプチドまたはアミノ酸配列と関連して使用される場合、特定の宿主細胞に対して外来性である起源に由来するか、あるいは同じ起源に由来する場合はその元の形態から改変されたポリペプチドまたはアミノ酸配列を意味する。従って、組換えDNAセグメントは宿主細胞において発現されて、組換えポリペプチドを生じることができる。
【0071】
「プラスミド」、「ベクター」、および「カセット」という用語は、当業者にとってのそのそれぞれの通常および慣例の意味が与えられるべきであり、細胞の中央代謝の一部ではなく、通常環状二本鎖DNA分子の形態である遺伝子を保有することが多い染色体外要素を指すために制限なく使用される。このような要素は、任意の起源に由来する自己複製配列、ゲノム組込み配列、ファージまたはヌクレオチド配列、線状または環状の一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAであってもよく、ここで、いくつかのヌクレオチド配列は、選択された遺伝子産物のためのプロモーター断片およびDNA配列を、適切な3’非翻訳配列と共に細胞内に導入することができる特有の構成に連結または組換えられている。「形質転換カセット」は、外来性遺伝子を含有し、外来性遺伝子に加えて特定の宿主細胞の形質転換を促進する要素を有する特定のベクターを指す。「発現カセット」は、外来性遺伝子を含有し、外来性遺伝子に加えて、外来性宿主におけるその遺伝子の発現の増強を可能にする要素を有する特定のベクターを指す。
【0072】
詳細な説明
本開示は、対象のステビオール配糖体Reb D4の製造と、次にUGT酵素を用いてReb D4配糖体をReb Mへ変換させることとに関する。また本開示は、他の対象のステビオール配糖体のReb WB1およびReb WB2の製造にも関する。本技術は、ステビオール配糖体を合成するために1,2-13-O-グルコースグリコシル化活性および1,3-13-O-グルコースグリコシル化活性などのUDPグリコシルトランスフェラーゼ活性を有する組換えポリペプチドを提供する。本技術の組換えポリペプチドは、ステビオール配糖体化合物の生合成のために有用である。本開示において、UDP-グリコシルトランスフェラーゼ(UGT)は、糖残基を活性化供与体分子(通常、UDP-グルコース)から受容体分子へ転移させる酵素を指す。1,3-13-O-グルコースグリコシル化活性は、糖部分をレバウジオシドD4の13-Oグルコース部分のC-3’へ転移させて、Reb Mを生じる酵素活性を指す(図14)。また本技術は、ステビオール配糖体を合成するためにβ-グルコシダーゼ活性を有する組換えポリペプチドも提供する。
【0073】
合成生物学
本明細書で使用される標準組換えDNAおよび分子クローニング技術は当該技術分野においてよく知られており、例えば、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T.MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,2nd ed.;Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,N.Y.,1989(以下、「Maniatis」);およびSilhavy,T.J.,Bennan,M.L.and Enquist,L.W.EXPERIMENTS WITH GENE FUSIONS;Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,N.Y.,1984;およびAusubel,F.M.et al.,IN CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,GREENE PUBLISHING AND WILEY-INTERSCIENCEにより出版,1987によって記載されている(これらのそれぞれの全体は、参照によって本明細書中に援用される)。
【0074】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本開示の実施または試験において、本明細書に記載されるものと類似または等価の任意の方法および材料を使用することができるが、好ましい材料および方法は以下に記載される。
【0075】
本開示は、以下の非限定的な実施例を考慮してより詳細に理解されるであろう。これらの実施例は本技術の好ましい実施形態を示しているが、単なる例証として示されることは理解されるべきである。上記の考察およびこれらの実施例から、当業者は本技術の本質的な特徴を確認することができ、その趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の使用および条件に適合させるために本技術の種々の変化および修正を行なうことができる。
【0076】
グリコシル化は、生物活性と、植物の天然産物の貯蔵とを制御する広範な反応であると考えられることが多い。小分子のグリコシル化は、今まで研究されてきたほとんどの植物種におけるトランスフェラーゼのスーパーファミリーにより触媒される。これらのグリコシルトランスフェラーゼ(GT)は60を超えるファミリーに分類されている。これらのうち、UDPグリコシルトランスフェラーゼ(UGT)としても知られているファミリー1GT酵素は、UDP-活性化糖部分を特定の受容体分子へ転移させる。これらは、ステビオール配糖体中にこのような糖部分を転移させて、種々のレバウジオシドを形成する分子である。これらのUGTのそれぞれは、その独自の活性プロファイルと、その活性化糖部分を転移させる好ましい構造位置とを有する。
【0077】
産生系
原核生物におけるタンパク質の発現は、ほとんどの場合、融合または非融合タンパク質のいずれかの発現を指示する構成的または誘導性プロモーターを含有するベクターを用いて細菌宿主細胞において実行される。融合ベクターは、その中にコードされたタンパク質、通常は組換えタンパク質のアミノ末端にいくつかのアミノ酸を付加する。このような融合ベクターは、通常、3つの目的を果たす:1)組換えタンパク質の発現を増大させること;2)組換えタンパク質の溶解度を増大させること;および3)アフィニティー精製におけるリガンドとしての役割を果たすことにより組換えタンパク質の精製を補助すること。多くの場合、融合タンパク質の精製の後に、組換えタンパク質を融合部分から分離できるようにするために、融合部分と組換えタンパク質との接合部にタンパク質分解的切断部位が導入される。このようなベクターは本開示の範囲内に含まれる。
【0078】
実施形態において、発現ベクターは、細菌細胞における組換えポリペプチドの発現のための遺伝要素を含む。細菌細胞における転写および翻訳のための要素は、プロモーター、タンパク質複合体のコード領域、および転写ターミネーターを含むことができる。
【0079】
当業者は、発現ベクターの調製に利用可能な分子生物学的技術を認識するであろう。本技術の発現ベクターへの取込みのために使用されるポリヌクレオチドは、上記のように、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの日常的な技術により調製することができる。
【0080】
相補的な付着末端を介してDNAをベクターに機能的に連結するためにいくつかの分子生物学的技術が開発されている。一実施形態では、ベクターDNAに挿入すべき核酸分子に相補的ホモポリマートラクトが付加され得る。ベクターおよび核酸分子は次に、相補的ホモポリマーのテール間の水素結合により連結されて、組換えDNA分子を形成する。
【0081】
代替の実施形態では、提供される1つまたは複数の制限部位を含有する合成リンカーを使用して、本技術のポリヌクレオチドを発現ベクターに機能的に連結する。実施形態では、ポリヌクレオチドは、制限エンドヌクレアーゼ消化により生成される。実施形態では、核酸分子は、バクテリオファージT4DNAポリメラーゼまたは大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼI(突出3’-一本鎖末端をその3’-5’-エキソヌクレアーゼ活性により除去し、陥凹3’末端をその重合活性により埋める酵素)によって処理され、それにより平滑末端DNAセグメントが生成される。平滑末端セグメントは次に、バクテリオファージT4DNAリガーゼなどの、平滑末端DNA分子の連結を触媒することができる酵素の存在下で、多量のモル過剰のリンカー分子と共にインキュベートされる。従って、反応の生成物は、高分子リンカー配列をその末端に有するポリヌクレオチドである。これらのポリヌクレオチドは次に適切な制限酵素により切断され、ポリヌクレオチドの末端に適合する末端を生じる酵素で切断された発現ベクターに連結される。
【0082】
あるいは、連結に依存しないクローニング(ligation-independent cloning)(LIC)部位を有するベクターを使用することができる。次に、制限消化または連結を伴うことなく、必要とされるPCR増幅ポリヌクレオチドがLICベクターにクローニングされ得る(Aslanidis and de Jong,NUCL.ACID.RES.18 6069-74,(1990)、Haun,et al,BIOTECHNIQUES 13,515-18(1992)(参照によって本明細書と一致する範囲で本明細書中に援用される))。
【0083】
実施形態において、選択されたプラスミド内への挿入のために、対象のポリヌクレオチドを単離および/または改変するためには、PCRを使用することが適切である。配列のPCR調製で使用するのに適切なプライマーは、必要とされる核酸分子のコード領域を単離し、制限エンドヌクレアーゼまたはLIC部位を付加し、所望のリーディングフレーム内にコード領域を配置するように設計することができる。
【0084】
実施形態において、本技術の発現ベクター内への取込みのためのポリヌクレオチドは、適切なオリゴヌクレオチドプライマーを用いるPCRの使用により調製される。コード領域は増幅され、プライマー自体は増幅配列産物内に取り込まれる。実施形態において、増幅プライマーは制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含有し、これは、増幅配列産物が適切なベクター内にクローニングされることを可能にする。
【0085】
発現ベクターは、従来の形質転換またはトランスフェクション技術により植物または微生物宿主細胞内に導入され得る。本技術の発現ベクターによる適切な細胞の形質転換は当該技術分野において既知の方法によって達成され、通常、ベクターおよび細胞のタイプの両方に依存する。適切な技術には、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、ケモポレーション(chemoporation)またはエレクトロポレーションが含まれる。
【0086】
うまく形質転換された細胞、すなわち発現ベクターを含有する細胞は、当該技術分野においてよく知られた技術により特定され得る。例えば、本技術の発現ベクターがトランスフェクトされた細胞を培養して、本明細書に記載されるポリペプチドを生成させることができる。当該技術分野においてよく知られた技術により、発現ベクターDNAの存在について細胞を検査することができる。
【0087】
宿主細胞は、既に記載された発現ベクターの単一コピー、あるいは発現ベクターの複数コピーを含有することができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、形質転換細胞は動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、藻類細胞、真菌細胞、または酵母細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、キャノーラ植物細胞、ナタネ植物細胞、ヤシ植物細胞、ヒマワリ植物細胞、綿植物細胞、コーン植物細胞、ピーナッツ植物細胞、亜麻植物細胞、ゴマ植物細胞、大豆植物細胞、およびペチュニア植物細胞からなる群から選択される植物細胞である
【0089】
微生物宿主細胞発現系、および外来性タンパク質の高レベルの発現を指示する制御配列を含有する発現ベクターは、当業者によく知られている。これらはいずれも、微生物宿主細胞における本技術の組換えポリペプチドの発現のためのベクターを構築するために使用され得る。これらのベクターは次に、本技術の組換えポリペプチドの高レベルの発現を可能にするために、形質転換により適切な微生物に導入され得る。
【0090】
適切な微生物宿主細胞の形質転換のために有用なベクターまたはカセットは当該技術分野においてよく知られている。通常、ベクターまたはカセットは、関連のポリヌクレオチドの転写および翻訳を指示する配列、選択可能なマーカー、ならびに自己複製または染色体組込みを可能にする配列を含有する。適切なベクターは、転写開始制御を含有するポリヌクレオチドの5’の領域と、転写終結を制御するDNA断片の3’の領域とを含む。両方の制御領域が形質転換宿主細胞と相同の遺伝子に由来するのが好ましいが、このような制御領域は、宿主として選択された特定の種にネイティブな遺伝子に由来する必要はないと理解されるべきである。
【0091】
所望の微生物宿主細胞における組換えポリペプチドの発現を指示するのに有用な開始制御領域またはプロモーターは多数あり、当業者によく知られている。これらの遺伝子を駆動することができるプロモーターは実質的にどれも本技術に適しており、CYCI、HIS3、GALI、GALIO、ADHI、PGK、PH05、GAPDH、ADCI、TRPI、URA3、LEU2、ENO、TPI(サッカロミセス属(Saccharomyces)における発現に有用);AOXI(ピキア属(Pichia)における発現に有用);ならびにlac、trp、JPL、IPR、T7、tac、およびtrc(大腸菌(Escherichia coli)における発現に有用)が含まれるが、これらに限定されない。
【0092】
また終結制御領域は微生物宿主にネイティブな種々の遺伝子に由来してもよい。終結部位は、任意選択的に、本明細書に記載される微生物宿主のために含まれ得る。
【0093】
植物細胞において、本技術の発現ベクターは、所望の組織において所望の発生段階で本技術の組換えポリペプチドの発現を指示することができるプロモーターに機能的に連結されたコード領域を含むことができる。便宜上、発現されるポリヌクレオチドは、同じポリヌクレオチドに由来するプロモーター配列および翻訳リーダー配列を含み得る。転写終結シグナルをコードする3’非コード配列も存在すべきである。発現ベクターは、ポリヌクレオチドの発現を促進するために1つまたは複数のイントロンも含み得る。
【0094】
植物宿主細胞の場合、本技術のベクター配列において、コード領域の発現を誘導することができる任意のプロモーターおよび任意のターミネーターの任意の組合せが使用され得る。プロモーターおよびターミネーターのいくつかの適切な例には、ノパリンシンターゼ(nos)、オクトピンシンターゼ(ocs)およびカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)遺伝子からのものが含まれる。使用され得る効率的な植物プロモーターの1つのタイプは、高レベル植物プロモーターである。本技術の発現ベクターと機能的に連結しているこのようなプロモーターは、ベクターの発現を促進できなければならない。本技術において使用され得る高レベル植物プロモーターには、例えばダイズ由来のリブロース-1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼの小サブユニットのプロモーター(Berry-Lowe et al.,J.MOLECULAR AND APP.GEN.,1:483 498(1982)、その全体は、本明細書と一致する範囲で本明細書中に援用される)、およびクロロフィル結合タンパク質のプロモーターが含まれる。これらの2つのプロモーターは植物細胞において光誘導性であることが知られている(例えば、GENETIC ENGINEERING OF PLANTS,AN AGRICULTURAL PERSPECTIVE,A.Cashmore,Plenum,N.Y.(1983)、pages 29 38;Coruzzi,G.et al.,The Journal of Biological CHEMISTRY、258:1399(1983)、およびDunsmuir,P.et al.,JOURNAL OF MOLECULAR AND APPLIED GENETICS,2:285(1983)を参照、これらはそれぞれ、参照によって本明細書と一致する範囲で本明細書中に援用される)。
【0095】
Reb D4の前駆体の合成
既に述べたように、ステビオール配糖体は、南米の植物ステビア・レバウジアナ(Stevia rebaudiana)(キク科(Asteraceae))の葉、および植物ゴショイチゴ(Rubus chingii)(バラ科(Rosaceae))における甘味の原因となる化合物である。これらの化合物はグリコシル化ジテルペンである。特に、これらの分子は、そのヒドロキシル水素原子がグルコース分子で置換されてエステルが形成され、ヒドロキシル水素がグルコースおよびラムノースの組合せで置換されてアセタールが形成されたステビオール分子と考えられる。
【0096】
本開示における対象の化合物を製造する1つの方法は、化学的に誘導されるか、あるいは細菌および/または酵母などの操作された微生物における生合成によって産生されるステビオールまたはルボスシド(rubosuside)などの一般的または安価な前駆体を使用し、既知のまたは安価な方法によってReb D4などの標的のステビオール配糖体を合成することである。
【0097】
本開示の態様は、ステビオールを産生することができる微生物系において酵素を組換えで発現させることを含む方法に関する。一般に、このような酵素は、コパリル二リン酸シンターゼ(CPS)、カウレンシンターゼ(KS)およびゲラニルゲラニル二リン酸シンターゼ(geranylgeranyl diphosphate to synthase)(GGPPS)酵素を含み得る。これは、非メバロン酸(MEP)経路またはメバロン酸経路(MVA)などの内因性イソプレノイド合成経路を発現する微生物株において起こるべきである。いくつかの実施形態では、細胞は、大腸菌(E.coli)を含む細菌細胞、またはサッカロミセス属(Saccharomyces)細胞、ピキア属(Pichia)細胞、もしくはヤロウイア(Yarrowia)細胞などの酵母細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は藻類細胞または植物細胞である。
【0098】
その後、化学合成で使用するために発酵培養物から前駆体が回収される。通常、これは、細胞培養物からのステビオール(カウレンでもあり得るが)、またはステビオール配糖体である。いくつかの実施形態では、ステビオール、カウレンおよび/またはステビオール配糖体は気相から回収されるが、他の実施形態では、細胞培養物に有機層または高分子樹脂が添加され、カウレン、ステビオールおよび/またはステビオール配糖体は、有機層または高分子樹脂から回収される。いくつかの実施形態では、ステビオール配糖体は、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドFまたはズルコシドAから選択される。いくつかの実施形態では、産生されるテルペノイドは、ステビオビオシド(steviobioside)またはステビオシドである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの酵素ステップ、例えば、1つまたは複数のグリコシル化ステップがエキソビボで実施されることも認識されるはずである。
【0099】
本発明の一部はReb D4ステビオール配糖体の製造であり、これは次に、さらなる酵素変換を受けてReb Mになる。本開示によると、微生物により産生されるステビオールを所望のステビオール配糖体(ここでは、Reb D4)に変換するための生合成は、糖部分のステビオール骨格への多段階の化学的構築を用いて、ジテルペノイドステビオールがステビオシドおよびレバウジオシドAに変換される場合に起こる。より具体的には、化学合成は、以下のステップからなる:1)ステビオールのC19COOH基がトリメチルシリル(TMS)保護されたものが、出発前駆体ステビオールから合成される。保護されたβ-Glc-β-Glc(2→1)-β-Glc(3→1)基を用いて、ステビオールのC13-OH位置におけるトリ-グルコシル化が実施される。この後、TMSの脱保護と、保護されたモノβ-Glc-Br部分のカップリングとが行われる。最終的な脱保護により保護基が全て除去され、レバウジオシドD4が生成される。
【0100】
ステビオール配糖体の生合成
本明細書に記載されるように、本技術の組換えポリペプチドはUDP-グリコシルトランスフェラーゼ活性を有し、天然源に存在しないか、あるいは通常存在量が少ないステビオール配糖体(例えば、それぞれ、レバウジオシドD4およびレバウジオシドM)を調製するための生合成方法を開発するのに有用である。本技術の組換えポリペプチドはβ-グルコシダーゼまたはUDP-グリコシルトランスフェラーゼ活性を有し、レバウジオシドD4などの新規のステビオール配糖体を調製するための生合成方法を開発するのに有用であり、そしてレバウジオシドMの製造において有用である。
【0101】
基質は、1つまたは複数のUDPグリコシルトランスフェラーゼにより触媒される反応でステビオール配糖体化合物に変換されることが可能な任意の天然または合成化合物であり得る。例えば、基質は、天然ステビア抽出物、ステビオール、ステビオール-13-O-グルコシド、ステビオール-19-O-グルコシド、ステビオール-1,2-ビオシド、ルブソシド、ステビオシド、レバウジオシドA、レバウジオシドGまたはレバウジオシドEであり得る。基質は、純粋な化合物または異なる化合物の混合物であり得る。好ましくは、基質は、ルブソシド、ステビオシド、ステビオール、レバウジオシドA、レバウジオシドEおよびこれらの組合せからなる群から選択される化合物を含む。
【0102】
また本明細書に記載される方法は、ステビオール配糖体化合物の生合成全体の効率を改善するか、または結果を改変するために、本明細書に記載される組換えペプチドを1つまたは複数の付加的な酵素と組み合わせて機能させるカップリング反応系も提供する。例えば、付加的な酵素は、グリコシル化反応で産生されるUDPを変換してUDP-グルコースに戻す(例えば、グルコース残基の供与体としてスクロースを使用して)ことにより、グリコシル化反応に必要なUDP-グルコースを再生することが可能であり、これにより、グリコシル化反応の効率が改善される。
【0103】
別の実施形態では、本技術の方法はさらに、組換えスクロースシンターゼ、基質、および本明細書に記載される組換えポリペプチドと共に、組換えUDP-グリコシルトランスフェラーゼをインキュベートすることを含む。組換えUDP-グリコシルトランスフェラーゼは、本技術の組換えポリペプチドにより触媒されるものとは異なるグリコシル化反応を触媒することができる。
【0104】
適切なUDP-グリコシルトランスフェラーゼは、ステビオール配糖体化合物の生合成において1つまたは複数の反応を触媒することができると当該技術分野において知られている任意のUGT、例えば、UGT85C2、UGT74G1、UGT76G1、またはこれらの機能的相同体を含む。
【0105】
通常、本技術のインビトロ法では、UDP-グルコースは、約0.2mM~約5mM、好ましくは約0.5mM~約2mM、より好ましくは約0.7mM~約1.5mMの濃度で緩衝液中に含まれる。実施形態において、組換えスクロースシンターゼが反応に含まれる場合、スクロースも約100mM~約500mM、好ましくは約200mM~約400mM、より好ましくは約250mM~約350mMの濃度で緩衝液中に含まれる。
【0106】
通常、本技術のインビトロ法では、組換えポリペプチド対基質の重量比は、乾燥重量ベースで、約1:100~約1:5、好ましくは約1:50~約1:10、より好ましくは約1:25~約1:15である。
【0107】
通常、インビトロ法の反応温度は約20℃~約40℃であり、適切には25℃~約37℃、より適切には28℃~約32℃である。
【0108】
当業者は、本明細書に記載される方法により製造されるステビオール配糖体組成物をさらに精製し、所望のフレーバーまたは甘味料組成物を得るために他のステビオール配糖体、フレーバー、または甘味料と混合することが可能であることを認識するであろう。例えば、本明細書に記載されるように製造されたレバウジオシドD4が強化された組成物を、主要なステビオール配糖体としてレバウジオシドAを含有する天然ステビア抽出物と、または他の合成もしくは天然ステビオール配糖体製品と混合して、所望の甘味料組成物を作ることができる。あるいは、本明細書に記載されるステビオール配糖体組成物から得られる実質的に精製されたステビオール配糖体(例えば、レバウジオシドD4)は、他の甘味料、例えば、スクロース、マルトデキストリン、アスパルテーム、スクラロース、ネオテーム、アセスルファムカリウム、およびサッカリンと組み合わせることができる。当該技術分野において知られているように、他の甘味料に対するステビオール配糖体の量を調整して、所望の風味を得ることができる。本明細書に記載されるステビオール配糖体組成物(レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドD4、レバウジオシドMまたはこれらの組合せを含む)は、食品(例えば、飲料、ソフトドリンク、アイスクリーム、乳製品、菓子類、シリアル、チューインガム、焼いた食品など)、健康補助食品、医学的栄養、および医薬品中に含まれ得る。
【0109】
当業者は、本明細書に記載される方法により製造されるステビオール配糖体組成物をさらに精製し、所望のフレーバーまたは甘味料組成物を得るために他のステビオール配糖体、フレーバー、または甘味料と混合することが可能であることを認識するであろう。例えば、本明細書に記載されるように製造されたレバウジオシドD4が強化された組成物を、主要なステビオール配糖体としてレバウジオシドAを含有する天然ステビア抽出物と、または他の合成もしくは天然ステビオール配糖体製品と混合して、所望の甘味料組成物を作ることができる。あるいは、本明細書に記載されるステビオール配糖体組成物から得られる実質的に精製されたステビオール配糖体(例えば、レバウジオシドD4)は、他の甘味料、例えば、スクロース、マルトデキストリン、アスパルテーム、スクラロース、ネオテーム、アセスルファムカリウム、およびサッカリンと組み合わせることができる。当該技術分野において知られているように、他の甘味料に対するステビオール配糖体の量を調整して、所望の風味を得ることができる。本明細書に記載されるステビオール配糖体組成物(レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドD4、レバウジオシドWB1、レバウジオシドWB2、レバウジオシドMまたはこれらの組合せを含む)は、食品(例えば、飲料、ソフトドリンク、アイスクリーム、乳製品、菓子類、シリアル、チューインガム、焼いた食品など)、健康補助食品、医学的栄養、および医薬品中に含まれ得る。
【0110】
同一性スコアリングを用いた配列類似性の分析
本明細書で使用される場合、「配列同一性」は、最適に整列された2つのポリヌクレオチドまたはペプチド配列が構成要素(例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸)のアライメントのウィンドウ全体にわたって不変である程度を指す。試験配列および参照配列の整列されたセグメントの「同一性分率」は、整列された2つの配列により共有される同一の構成要素の数を、参照配列セグメント(すなわち、参照配列全体または参照配列のより小さい画定された部分)中の構成要素の総数で割ったものである。
【0111】
本明細書で使用される場合、「配列同一性パーセント」または「同一性パーセント」という用語は、2つの配列が最適に整列された(適切なヌクレオチドの挿入、欠失、またはギャップが、比較のウィンドウにわたって、合計して参照配列の20パーセント未満である)ときに、試験(「対象」)ポリヌクレオチド分子(またはその相補鎖)と比べて、参照(「クエリ―」)ポリヌクレオチド分子(またはその相補鎖)の線状ポリヌクレオチド配列中における同一のヌクレオチドの割合を指す。比較ウィンドウを整列させるための配列の最適なアライメントは当業者に良く知られており、SmithおよびWatermanの局所相同性アルゴリズム、NeedlemanおよびWunschの相同性アライメントアルゴリズム、PearsonおよびLipmanの類似性検索法などのツールによって、好ましくは、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実行、例えば、GCG(登録商標)Wisconsin Package(登録商標)(Accelrys Inc.,Burlington,MA)の一部として利用可能なGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTAなどによって実施され得る。試験配列および参照配列の整列されたセグメントの「同一性分率」は、整列された2つの配列により共有される同一の構成要素の数を、参照配列セグメント(すなわち、参照配列全体または参照配列のより小さい画定された部分)中の構成要素の総数で割ったものである。配列同一性パーセントは、同一性分率に100を掛けたもので表される。1つまたは複数のポリヌクレオチド配列の比較は、全長ポリヌクレオチド配列もしくはその一部に対するか、またはより長いポリヌクレオチド配列に対するものであり得る。本開示の目的のために、「同一性パーセント」は、翻訳されたヌクレオチド配列についてはBLASTXバージョン2.0、そしてポリヌクレオチド配列についてはBLASTNバージョン2.0を用いて決定されてもよい。
【0112】
配列同一性のパーセントは、好ましくは、Sequence Analysis Software Package(商標)(バージョン10;Genetics Computer Group,Inc.,Madison,WI)の「Best Fit」または「Gap」プログラムを用いて決定される。「Gap」は、NeedlemanおよびWunsch(Needleman and Wunsch,JOURNAL OF MOLECULAR BIOLOGY 48:443-453,1970)のアルゴリズムを利用して、マッチの数を最大化すると共に、ギャップの数を最小化する2つの配列のアライメントを見出す。「BestFit」は、2つの配列間の類似性の最良セグメントの最適なアライメントを実施し、SmithおよびWatermanの局所相同性アルゴリズム(Smith and Waterman,ADVANCES IN APPLIED MATHEMATICS,2:482-489,1981、Smith et al.,NUCLEIC ACIDS RESEARCH 11:2205-2220,1983)を用いて、マッチの数を最大化するためにギャップを挿入する。同一性パーセントは、最も好ましくは、「Best Fit」プログラムを用いて決定される。
【0113】
配列同一性を決定するための有用な方法は、National Library of Medicine,National Institute of Health,Bethesda,Md.20894においてNational Center Biotechnology Information(NCBI)から公に入手可能なBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)プログラムにも開示されている;BLAST Manual,Altschul et al.,NCBI,NLM,NIH;Altschul et al.,J.MOL.BIOL.215:403-410(1990)を参照されたい;バージョン2.0以上のBLASTプログラムは、ギャップ(欠失および挿入)のアライメントへの導入を可能にする;ペプチド配列については、配列同一性を決定するためにBLASTXを使用することができる;そしてポリヌクレオチド配列については、配列同一性を決定するためにBLASTNを使用することができる。
【0114】
本明細書で使用される場合、「実質的な配列同一性パーセント」という用語は、少なくとも約70%の配列同一性、少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の配列同一性、またはさらにより大きい配列同一性、例えば、約98%または約99%の配列同一性である配列同一性パーセントを指す。従って、本開示の一実施形態は、本明細書に記載されるポリヌクレオチド配列との少なくとも約70%の配列同一性、少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の配列同一性、またはさらにより大きい配列同一性、例えば、約98%または約99%の配列同一性を有するポリヌクレオチド分子である。本開示のBlu1およびCP1遺伝子の活性を有するポリヌクレオチド分子は、様々なステビオール配糖体の産生を指示することができ、本明細書で提供されるポリヌクレオチド配列に対して実質的な配列同一性パーセントを有し、本開示の範囲内に包含される。
【0115】
同一性および類似性
同一性は、配列のアライメントの後に一対の配列の間で同じであるアミノ酸の分率であり(これは、配列情報または構造情報または何らかの他の情報のみを用いて行なうことができるが、通常は配列情報のみに基づく)、類似性は、いくつかの類似性マトリックスを使用するアライメントに基づいて割り当てられたスコアである。類似性インデックスは、以下のBLOSUM62、PAM250、もしくはGONNET、またはタンパク質の配列アライメントのために当業者により使用される任意のマトリックスのいずれか1つであり得る。
【0116】
同一性は、2つのサブ配列間の一致の度合いである(配列間にギャップはない)。25%以上の同一性は機能の類似性を意味し、18~25%の同一性は、構造または機能の類似性を意味する。2つの完全に無関係またはランダムな配列(残基が100を超える)が20%よりも高い同一性を有し得ることに留意する。類似性は、2つの配列が比較されたときの、これらの間の類似の度合いである。これは、その同一性に依存する。
【0117】
消費製品
別の態様では、本開示は、本明細書に記載されるレバウジオシド、例えば、Reb W1、Reb W2、Reb D4、Reb M、またはこれらの組合せ(例えば、Reb D4およびReb Mなど)を含む消費製品に関する。いくつかの実施形態では、消費製品は、甘味化量の本明細書に記載されるレバウジオシド、例えば、Reb W1、Reb W2、Reb D4、および/またはReb Mを含む。いくつかの実施形態では、消費製品は、飲料製品、食品、栄養補助食品、医薬品、健康補助食品、歯科用衛生組成物、食用ゲル組成物、化粧品および卓上香味料からなる群から選択される。
【0118】
いくつかの実施形態では、消費製品は、約1%(w/v-%)~約4%(w/v-%)のスクロース溶液に等しい甘味強度を有することができる。
【0119】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるレバウジオシド、例えば、Reb W1、Reb W2、Reb D4、Reb M、またはこれらの組合せ(例えば、Reb D4およびReb Mなど)は、経口消費製品中の唯一の甘味料である。
【0120】
いくつかの実施形態では、消費製品は、少なくとも1つの付加的な甘味料を有することもできる。少なくとも1つの付加的な甘味料は、例えば、天然高甘味度甘味料であり得る。付加的な甘味料は、ステビア抽出物、ステビオール配糖体、ステビオシド、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドD2、レバウジオシドE、レバウジオシドF、ズルコシドA、ルブソシド、ステビオールビオシド、スクロース、高フルクトースコーンシロップ、フルクトース、グルコース、キシロース、アラビノース、ラムノース、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、AceK、アスパルテーム、ネオテーム、スクラロース、サッカリン、ナリンギンジヒドロカルコン(NarDHC)、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン(NDHC)、ルブソシド、モグロシドIV、シアメノシドI、モグロシドV、モナチン、タウマチン、モネリン、ブラゼイン、L-アラニン、グリシン、羅漢果、ヘルナンズルチン、フィロズルチン、トリロブタイン、およびこれらの組合せから選択することができる。
【0121】
いくつかの実施形態では、消費製品は少なくとも1つの添加剤を有することもできる。添加剤は、例えば、炭水化物、ポリオール、アミノ酸またはその塩、ポリアミノ酸またはその塩、糖酸またはその塩、ヌクレオチド、有機酸、無機酸、有機塩、有機酸塩、有機塩基塩、無機塩、苦味化合物、着香剤、香味成分、収斂化合物、タンパク質、タンパク質加水分解物、界面活性剤、乳化剤、フラボノイド、アルコール、ポリマー、およびこれらの組み合わせであり得る。
【0122】
1つの態様では、本開示は、甘味化量の本明細書に記載されるレバウジオシド、例えば、Reb W1、Reb W2、Reb D4、Reb M、またはこれらの組合せ(例えば、Reb D4およびReb Mなど)を含む飲料製品に関する。
【0123】
飲料製品は、例えば、炭酸飲料製品または非炭酸飲料製品であり得る。また飲料製品は、例えば、ソフトドリンク、ファウンテン飲料、フローズン飲料、レディ・トゥ・ドリンク飲料、フローズンおよびレディ・トゥ・ドリンク飲料、コーヒー、茶、乳飲料、粉末ソフトドリンク、液体濃縮物、フレーバー・ウォーター、強化水、果実ジュース、果実ジュースフレーバードリンク、スポーツドリンク、またはエネルギードリンクであり得る。
【0124】
いくつかの実施形態では、本開示の飲料製品は、例えば、酸味料、果実ジュースおよび/または野菜ジュース、パルプなど、香味料、着色料、保存剤、ビタミン、ミネラル、電解質、エリスリトール、タガトース、グリセリン、および二酸化炭素などの1つまたは複数の飲料成分を含むことができる。このような飲料製品は、飲料濃縮物または炭酸を含むレディ・トゥ・ドリンク飲料などの任意の適切な形態で提供され得る。
【0125】
特定の実施形態では、本開示の飲料製品は、多数の異なる特定の配合または構成のいずれかを有することができる。本開示の飲料製品の配合物は、製品の意図される市場区分、その所望の栄養特性、フレーバープロファイルなどの因子に応じてある程度変動し得る。例えば、特定の実施形態では、一般に、さらなる成分を特定の飲料製品の配合物に添加することが選択肢であり得る。例えば、付加的な甘味料を添加することができ、香味料、電解質、ビタミン、果実ジュースまたは他の果実製品、味物質、マスキング剤など、フレーバー増強剤、および/または炭酸化は、通常、風味、口あたり、栄養特性などを変えるために任意のこのような配合物に添加され得る。実施形態では、飲料製品は、水、本明細書に記載されるレバウジオシド(例えば、Reb W1、Reb W2、Reb D4、Reb M、またはこれらの組合せ、例えばReb D4およびReb M)、酸味料、および香味料を含有するコーラ飲料であり得る。例示的な香味料は、例えば、コーラ香味料、シトラス香味料、およびスパイス香味料であり得る。いくつかの実施形態では、二酸化炭素の形態での炭酸化が泡立ちのために添加され得る。他の実施形態では、他の成分、製造技術、所望の貯蔵期間などに応じて保存剤を添加することができる。特定の実施形態では、カフェインを添加することができる。いくつかの実施形態では、飲料製品は、特徴的に、炭酸水、甘味料、コーラ・ナッツ抽出物および/または他の香味料、カラメル着色料、1つまたは複数の酸、および任意選択的に、他の成分を含有する、コーラ風味の炭酸飲料であり得る。
【0126】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載されるレバウジオシド(例えば、Reb W1、Reb W2、Reb D4、Reb M、またはこれらの組合せ、例えばReb D4およびReb M)を含む消費製品に関し、本消費製品は、食品、栄養補助食品、医薬品、健康補助食品、歯科用衛生組成物、食用ゲル組成物、化粧品または卓上香味料である。いくつかの実施形態では、レバウジオシドは甘味化量で存在する。
【0127】
本明細書で使用される場合、「健康補助食品」は、食事を補充し、そして食事において欠けているかまたは十分な量で消費されない可能性のある栄養分、例えば、ビタミン、ミネラル、繊維、脂肪酸、アミノ酸などを提供することを目的とした化合物を指す。当該技術分野において知られている任意の適切な健康補助食品が使用され得る。適切な健康補助食品の例は、例えば、栄養分、ビタミン、ミネラル、繊維、脂肪酸、ハーブ、ボタニカル、アミノ酸、および代謝産物であり得る。
【0128】
本明細書で使用される場合、「栄養補助食品」は、疾患または障害(例えば、疲労、不眠症、老化作用、記憶喪失、気分障害、心血管疾患および高レベルの血中コレステロール、糖尿病、骨粗鬆症、炎症、自己免疫障害など)の予防および/または処置を含む、薬用または健康上の利益を提供し得る任意の食品または食品の一部を含む化合物を指す。当該技術分野において知られている任意の適切な栄養補助食品が使用され得る。いくつかの実施形態では、栄養補助食品は、食品および飲料のサプリメントとして、ならびにカプセルもしくは錠剤などの固体製剤、または溶液もしくは懸濁液などの液体製剤であり得る、経腸または非経口用途のための医薬製剤として使用することができる。
【0129】
いくつかの実施形態では、健康補助食品および栄養補助食品はさらに、保護親水コロイド(例えば、ガム、タンパク質、加工デンプン)、結合剤、皮膜形成剤、カプセル化剤/材料、壁/殻材料、マトリックス化合物、コーティング、乳化剤、界面活性剤、可溶化剤(油、脂肪、ワックス、レシチンなど)、吸着剤、担体、充填剤、共化合物、分散剤、湿潤剤、加工助剤(溶媒)、流動化剤、風味マスキング剤、増量剤、ゼリー化剤、ゲル形成剤、酸化防止剤および抗菌剤を含有することができる。
【0130】
本明細書で使用される場合、「ゲル」は、粒子のネットワークが液体媒体の体積に広がったコロイド系を指す。ゲルは主に液体から構成され、従って液体と同様の密度を示すが、ゲルは、液体媒体に広がる粒子のネットワークのために、固体の構造コヒーレンスを有する。この理由から、ゲルは一般に、固体のゼリー様材料のように見える。ゲルは、いくつかの用途で使用することができる。例えば、ゲルは、食品、塗料、および接着剤において使用することができる。食べることができるゲルは、「食用ゲル組成物」と呼ばれる。食用ゲル組成物は、通常、軽食として、デザートとして、主食の一部として、または主食と共に食べられる。適切な食用ゲル組成物の例は、例えば、ゲルデザート、プディング、ジャム、ゼリー、ペースト、トライフル、アスピック、マシュマロ、グミキャンディなどであり得る。いくつかの実施形態では、食用ゲルミックスは一般に粉末または顆粒状の固体であり、これに流体が添加されて、食用ゲル組成物が形成され得る。適切な流体の例は、例えば、水、乳製品流体、乳製品類似流体、ジュース、アルコール、アルコール飲料、およびこれらの組み合わせであり得る。適切な乳製品流体の例は、例えば、乳、発酵乳、クリーム、流体乳清、およびこれらの混合物であり得る。適切な乳製品類似流体の例は、例えば、豆乳および乳製品ではないコーヒー用クリームであり得る。
【0131】
本明細書で使用される場合、「ゲル化成分」という用語は、液体媒体内にコロイド系を形成することができる任意の材料を指す。適切なゲル化成分の例は、例えば、ゼラチン、アルギン酸塩、カラゲナン(carageenan)、ガム、ペクチン、コンニャク、寒天、食品酸、レンネット、デンプン、デンプン誘導体、およびこれらの組み合わせであり得る。食用ゲルミックスまたは食用ゲル組成物で使用されるゲル化成分の量は、例えば、使用される特定のゲル化成分、使用される特定の流体塩基、およびゲルの所望の特性などのいくつかの因子に応じてかなり変動し得ることが当業者によく知られている。
【0132】
本開示のゲルミックスおよびゲル組成物は、当該技術分野において知られている任意の適切な方法によって調製することができる。いくつかの実施形態では、本開示の食用ゲルミックスおよび食用ゲル組成物は、ゲル化剤に加えて他の成分を用いて調製することができる。他の適切な成分の例は、例えば、食品酸、食品酸の塩、緩衝系、増量剤、捕捉剤、架橋剤、1つまたは複数のフレーバー、1つまたは複数の色、およびこれらの組み合わせであり得る。
【0133】
当該技術分野において知られている任意の適切な医薬組成物が使用され得る。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、生物学的効果を発揮する1つまたは複数の活性剤を含有する医薬品を処方するために使用することができる。従って、いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、生物学的効果を発揮する1つまたは複数の活性剤を含有することができる。適切な活性剤は、当該技術分野においてよく知られている(例えば、The Physician’s Desk Reference)。このような組成物は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,USAに記載されるように、当該技術分野においてよく知られている手順に従って調製することができる。
【0134】
本明細書に記載されるレバウジオシド(例えば、Reb W1、Reb W2、Reb D4、Reb M、またはこれらの組合せ、例えばReb D4およびReb M)は、当該技術分野において知られている任意の適切な歯科および口腔衛生組成物と共に使用することができる。適切な歯科および口腔衛生組成物の例は、例えば、練り歯磨き、歯の光沢剤、デンタルフロス、マウスウォッシュ、マウスリンス、歯磨剤、マウススプレー、マウスリフレッシャー、プラークリンス、歯科用鎮痛剤などであり得る。
【0135】
本明細書で使用される場合、「食品」は、栄養価を有し、ヒトおよび動物による消費を目的とすることができるが、そうでなくてもよい、任意の固体または液体の摂取可能な材料を指す。
【0136】
適切な食品の例は、例えば、菓子類組成物、例えば、キャンディ、ミント、果実風味のドロップ、ココア製品、チョコレートなど;香辛料、例えば、ケチャップ、マスタード、マヨネーズなど;チューインガム;シリアル組成物;焼いた食品、例えば、パン、ケーキ、パイ、クッキーなど;乳製品、例えば、乳、チーズ、クリーム、アイスクリーム、サワークリーム、ヨーグルト、シャーベットなど;卓上甘味料組成物;スープ;シチュー;インスタント食品;食肉、例えば、ハム、ベーコン、ソーセージ、ジャーキーなど;ゼラチンおよびゼラチン様製品、例えば、ジャム、ゼリー、貯蔵食料など;果実;野菜;卵製品;アイシング;糖を含むシロップ;軽食;ナッツミートおよびナッツ製品;ならびに動物飼料であり得る。
【0137】
また食品は、ハーブ、スパイスおよび調味料、天然および合成フレーバー、ならびにフレーバー増強剤、例えばグルタミン酸モノナトリウムでもあり得る。いくつかの実施形態では、食品は、例えば、調製されたパッケージ化製品、例えば、ダイエット用甘味料、液体甘味料、粒状フレーバーミックス、ペットフード、家畜飼料、タバコ、およびベーキング用途の材料、例えば、パン、クッキー、ケーキ、パンケーキ、ドーナツなどの調製のための粉末ベーキングミックスであり得る。他の実施形態では、食品は、スクロースをほとんどまたは全く含有しないダイエットおよび低カロリー食品および飲料であり得る。
【0138】
前述の実施形態のいずれかと組み合わせることができる特定の実施形態では、本明細書に記載されるレバウジオシド(例えば、Reb W1、Reb W2、Reb D4、Reb M、またはこれらの組合せ、例えばReb D4およびReb M)は唯一の甘味料であり、任意選択的に、製品は、約1%~約4%(w/v-%)のスクロース溶液に等しい甘味強度を有する。前述の実施形態のいずれかと組み合わせることができる特定の実施形態では、消費製品および飲料製品はさらに付加的な甘味料を含むことができ、任意選択的に、製品は、約1%~約10%(w/v-%)のスクロース溶液に等しい甘味強度を有する。前述の実施形態のいずれかと組み合わせることができる特定の実施形態では、製品中の全ての甘味成分は高甘味度甘味料である。前述の実施形態のいずれかと組み合わせることができる特定の実施形態では、製品中の全ての甘味成分は高甘味度甘味料であり得る。前述の実施形態のいずれかと組み合わせることができる特定の実施形態では、付加的な甘味料は、ステビア抽出物、ステビオール配糖体、ステビオシド、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドD2、レバウジオシドF、ズルコシドA、ルブソシド、ステビオールビオシド、スクロース、高フルクトースコーンシロップ、フルクトース、グルコース、キシロース、アラビノース、ラムノース、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、AceK、アスパルテーム、ネオテーム、スクラロース、サッカリン、ナリンギンジヒドロカルコン(NarDHC)、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン(NDHC)、ルブソシドモグロシドIV、シアメノシドI、モグロシドV、モナチン、タウマチン、モネリン、ブラゼイン、L-アラニン、グリシン、羅漢果、ヘルナンズルチン、フィロズルチン、トリロブタイン、およびこれらの組合せから選択される1つまたは複数の甘味料を含有する。前述の実施形態のいずれかと組み合わせることができる特定の実施形態では、消費製品および飲料製品はさらに、炭水化物、ポリオール、アミノ酸またはその塩、ポリアミノ酸またはその塩、糖酸またはその塩、ヌクレオチド、有機酸、無機酸、有機塩、有機酸塩、有機塩基塩、無機塩、苦味化合物、着香剤、香味成分、収斂化合物、タンパク質、タンパク質加水分解物、界面活性剤、乳化剤、フラボノイド、アルコール、ポリマー、およびこれらの組合せから選択される1つまたは複数の添加剤を含むことができる。前述の実施形態のいずれかと組み合わせることができる特定の実施形態では、本明細書に記載されるレバウジオシド(例えば、Reb W1、Reb W2、Reb D4、Reb M、またはこれらの組合せ、例えばReb D4およびReb M)は、製品中に添加される前、約50重量%~約100重量%の純度を有する。
【0139】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるレバウジオシド(例えば、Reb W1、Reb W2、Reb D4、Reb M、またはこれらの組合せ、例えばReb D4およびReb M)は、充填剤、増量剤および固化防止剤のうちの1つまたは複数をさらに含む組成物において提供される。適切な充填剤、増量剤および固化防止剤は、当該技術分野において知られている。
【0140】
特定の実施形態では、本明細書に記載されるレバウジオシド(例えば、Reb W1、Reb W2、Reb D4、Reb M、またはこれらの組合せ、例えばReb D4およびReb M)は、消費製品および飲料製品を甘くする、そして/あるいはその甘味を増強するのに十分な最終濃度で包含および/または添加され得る。「最終濃度」は、最終消費製品および飲料製品中に(すなわち、消費製品および飲料製品を製造するために全ての成分および/または化合物が添加された後に)存在する本明細書に記載されるレバウジオシド(例えば、Reb W1、Reb W2、Reb D4、Reb M、またはこれらの組合せ、例えばReb D4およびReb M)の濃度を指す。従って、特定の実施形態では、本明細書に記載されるレバウジオシド(例えば、Reb W1、Reb W2、Reb D4、Reb M、またはこれらの組合せ、例えばReb D4およびReb M)は、消費製品および飲料製品を調製するために使用される化合物または成分に包含および/または添加される。本明細書に記載されるレバウジオシド(例えば、Reb W1、Reb W2、Reb D4、Reb M、またはこれらの組合せ、例えばReb D4およびReb M)は、単一の化合物もしくは成分、または複数の化合物および成分中に存在し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるレバウジオシド(例えば、Reb W1、Reb W2、Reb D4、Reb M、またはこれらの組合せ、例えばReb D4およびReb M)は、消費製品および飲料製品に包含および/または添加される。
【0141】
特定の実施形態では、本明細書に記載されるレバウジオシド(例えば、Reb W1、Reb W2、Reb D4、Reb M、またはこれらの組合せ、例えばReb D4およびReb M)は、消費製品および飲料製品に包含および/または添加される唯一の甘味料である。いくつかの実施形態では、レバウジオシドを含む消費製品および飲料製品は、約1%~約4%(w/v-%)のスクロース溶液、約1%~約3%(w/v-%)のスクロース溶液、または約1%~約2%(w/v-%)のスクロース溶液に等しい甘味強度を有する。あるいは、消費製品および飲料製品は、約1%~約4%(w/v-%)のスクロース溶液、約2%~約4%(w/v-%)のスクロース溶液、約3%~約4%(w/v-%)のスクロース溶液、または約4%に等しい甘味強度を有する。例えば、消費製品および飲料製品は、約1%、約2%、約3%、または約4%(w/v-%)のスクロース溶液に等しい甘味強度を有し得る(これらの値の間の任意の範囲を含む)。
【0142】
本開示の消費製品および飲料製品は、本明細書に記載されるレバウジオシド(例えば、Reb W1、Reb W2、Reb D4、Reb M、またはこれらの組合せ、例えばReb D4およびReb M)と、本開示の1つまたは複数の甘味料との混合物を、望ましい甘味強度、栄養特性、風味プロファイル、口あたり、または他の官能因子を達成するのに十分な比率で含むことができる。
【0143】
上記の記載から明らかであるように、本開示の特定の態様は、本明細書に示される実施例の具体的な詳細によって限定されず、従って、他の修正および適用またはその等価物に当業者が気付き得ることが考えられる。従って、特許請求の範囲は、本開示の趣旨および範囲から逸脱しないこのような修正および適用の全てを包含することが意図される。
【0144】
さらに、他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本開示の実施または試験において、本明細書に記載されるものと類似または等価の任意の方法および材料を使用することができるが、好ましい方法および材料は上記に記載される。
【0145】
上記の発明は、理解を目的として例証および実施例によりいくらか詳細に記載されているが、特定の変化および修正が実施され得ることは、当業者には明らかであろう。従って、説明および実施例は、特許請求の範囲により画定される本発明の範囲を限定すると解釈されてはならない。
【実施例0146】
実施例1:Reb D4の酵素合成
Reb D4を生成する酵素法はいくつかある。Reb Wから出発する方法の1つをここで提示する。
【0147】
以前に、我々は、Reb WのReb Vからの製造を実証した(国際公開第2016054540号)。ここで、我々は、Reb Wをピキア・パストリス(Pichia pastoris)からのβ-グルコシダーゼ(B-glu1、配列番号5)により加水分解して、「レバウジオシドWB1」と呼ばれる新規のステビオール配糖体が生成され得ることを見出した。生成したレバウジオシドWB1を、次にB-glu1により加水分解して、レバウジオシドWB2を生成することができる(図14を参照)。
【0148】
より具体的には、B-glu1(配列番号6)遺伝子の全長DNA断片を合成した。具体的には、大腸菌(E.coli)発現のためにcDNAをコドン最適化した(Genscript,Piscataway,NJ)。合成したDNAを、細菌発現ベクターpETite N-His SUMO Kanベクター(Lucigen)にクローニングした。B-glu1(配列番号5を参照)をコードするヌクレオチド配列(配列番号6)をフレームに挿入した。
【0149】
発現構築物を大腸菌(E.coli)BL21(DE3)に形質転換させ、続いてこれを、0.8~1.0のOD600に到達するまで、50μg/mLのカナマイシンを含有するLB培地中37℃で成長させた。1mMのイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加によりタンパク質発現を誘導し、培養物を16℃で22時間、さらに成長させた。遠心分離(3,000xg;10分;4℃)により細胞を回収した。細胞ペレットを捕集し、直ちに使用するか、あるいは-80℃で貯蔵した。
【0150】
細胞ペレットを溶解緩衝液(50mMのリン酸カリウム緩衝液、pH7.2、25μg/mlのリゾチーム、5μg/mlのデオキシリボヌクレアーゼI、20mMのイミダゾール、500mMのNaCl、10%のグリセロール、および0.4%のTRITON X-100)中に再懸濁させた。4℃で超音波処理により細胞を破壊し、遠心分離(18,000xg;30分)により細胞片を浄化した。上清を平衡化(平衡化緩衝液:50mMのリン酸カリウム緩衝液、pH7.2、20mMのイミダゾール、500mMのNaCl、10%のグリセロール)Ni-NTA(Qiagen)アフィニティカラムにロードした。タンパク質サンプルをロードした後、カラムを平衡化緩衝液で洗浄して、非結合汚染物質タンパク質を除去した。Hisタグ化B-glu1組換えポリペプチドを、250mMのイミダゾールを含有する平衡化緩衝液により溶出させた。
【0151】
組換えB-glu1(10μg)を200μLのインビトロ反応系に添加した。反応系は、50mMのリン酸カリウム緩衝液、pH7.2、および基質としての1mg/mlのレバウジオシドWを含有した。反応を37℃で実施し、200μLの1-ブタノールの添加により終結させた。サンプルを200μLの1-ブタノールで3回抽出した。プールした画分を乾燥させ、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)分析のために70μLの80%のメタノール中に溶解させた。
【0152】
HPLC分析は、クォータナリポンプ、温度制御されたカラムコンパートメント、オートサンプラーおよびUV吸光度検出器を含むDionex UPLC ultimate 3000システム(Sunnyvale,CA)を用いて実施した。ステビオール配糖体のキャラクタリゼーションのためにガードカラムを有するSynergi Hydro-RPカラムを使用した。HPLC分析における溶出のために水中のアセトニトリルを使用した。検出波長は210nmであった。
【0153】
図3に示されるように、B-glu1は1時間でレバウジオシドW基質を加水分解して、レバウジオシドWB1を生成した(図3B)。生成したレバウジオシドWB1は、その後の反応時点において、さらにレバウジオシドWB2に変換され得る(図3Cおよび3D)。
【0154】
結論として、レバウジオシドWがB-glu1により加水分解されて、WB1が生成され、生成したWB1はさらにB-glu1により加水分解されて、WB2が生成された。
【0155】
上記の中間体レバウジオシドWB2は、UGT85C2酵素とインキュベートすることにより変換されて、レバウジオシドWB1に戻ることができる(図4)。組換えUGT85C2酵素(10μg)を200μLのインビトロ反応系で試験した。反応系は、50mMのリン酸カリウム緩衝液、pH7.2、3mMのMgCl2、0.5mg/mlのレバウジオシドWB2基質、および3mMのUDP-グルコースを含有した。図3に示されるように、レバウジオシドWB2は、UGT85C2(配列番号7、図4)によってレバウジオシドWB1に変換させることができる。UGT85C2酵素は、C4カルボキシルのC-13にグルコースを付加させてステビオールからステビオール-13-モノシドを形成する活性を有する。これらの結果は、B-glu1がレバウジオシドWB1のC13位からグルコースを加水分解して、レバウジオシドWB2を生じることを示した。レバウジオシドWB1およびレバウジオシドWB2の予想構造は図2に示される。構造は、LC-MS分析により確認された(図5)。
【0156】
上記の中間体Reb WB1は、HV1UGT酵素とインキュベートすることによりReb D4に変換させることができる(国際公開第2015/065650号)。組換えHV1(10μg)を200μLのインビトロ反応系で試験した。反応系は、50mMのリン酸カリウム緩衝液、pH7.2、3mMのMgCl2、0.5mg/mlのレバウジオシドWB1基質、および3mMのUDP-グルコースを含有した。図4に示されるように、レバウジオシドWB1は、HV1により6時間で完全にレバウジオシドD4に変換させることができる(図6C)。
【0157】
上記の酵素反応に従って、D4の構造は、(13-[(2-O-β-D-グルコピラノシル-β-D-グルコピラノシル)オキシ]ent-カウラ-16-エン-19-酸-[(2-O-β-D-グルコピラノシル-3-O-β-D-グルコピラノシル-β-D-グルコピラノシル)エステル]であると予想された(図7A)。Reb D4の構造は、LC-MSにより確認された(図7B)。質量スペクトル分析により、予想構造と同じ質量[(M+Na)1151.47m/z]が示された。
【0158】
実施例2:野生型酵素によるReb D4からReb Mへの変換
我々は、Reb D4がUGT76G1によりさらにReb Mに変換され得ることを発見した。UGT76G1(配列番号2)の全長DNA断片を合成した。大腸菌(E.coli)発現のためにcDNAをコドン最適化した(Genscript)。合成したDNAを、細菌発現ベクターpETite N-His SUMO Kanベクター(Lucigen)にクローニングした。76G1をコードするヌクレオチド配列をフレームに挿入した。
【0159】
発現構築物を大腸菌(E.coli)BL21(DE3)に形質転換させ、続いてこれを、0.8~1.0のOD600に到達するまで、50μg/mLのカナマイシンを含有するLB培地中37℃で成長させた。0.5mMのIPTGの添加によりタンパク質発現を誘導し、培養物を16℃で22時間、さらに成長させた。遠心分離(3,000xg;10分;4℃)により細胞を回収した。細胞ペレットを捕集し、直ちに使用するか、あるいは-80℃で貯蔵した。
【0160】
細胞ペレットを上記の溶解緩衝液中に再懸濁させた。4℃で超音波処理により細胞を破壊し、遠心分離(18,000xg;30分)により細胞片を浄化した。上清を上記の平衡化Ni-NTA(Qiagen)アフィニティカラムにロードした。タンパク質サンプルをロードした後、カラムを平衡化緩衝液で洗浄して、非結合汚染物質タンパク質を除去した。Hisタグ化76G1組換えポリペプチドを、250mMのイミダゾールを含有する平衡化緩衝液により溶出させた。
【0161】
組換えUGT76G1(10μg)を200μLのインビトロ反応系に添加した。反応系は、50mMのリン酸カリウム緩衝液、pH7.2、補助因子としての1mMのUDPG、および基質としての1mg/mlのReb D4を含有した。反応を37℃で実施し、200μLの1-ブタノールの添加により終結させた。サンプルを200μLの1-ブタノールで3回抽出した。プールした画分を乾燥させ、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)分析のために70μLの80%のメタノール中に溶解させた。
【0162】
HPLC分析は、クォータナリポンプ、温度制御されたカラムコンパートメント、オートサンプラーおよびUV吸光度検出器を含むDionex UPLC ultimate 3000システムを用いて実施した。ステビオール配糖体のキャラクタリゼーションのためにガードカラムを有するSynergi Hydro-RPカラムを使用した。HPLC分析における溶出のために水中のアセトニトリルを使用した。検出波長は210nmであった。
【0163】
図13に示されるように、UGT76G1は、Reb D4をReb Mに変換させることができる(図13CおよびF)。
【0164】
実施例3:Reb D4をReb Mへ触媒するUGT酵素の反応中心の解明
UDP-グルコシルトランスフェラーゼの化学プロセスより効率的に決定するために、我々は、野生型ステビオールUDP-グルコシルトランスフェラーゼUGT76G1の結晶構造を得た。この酵素は、ステビオール配糖体の生物変換を実行する最初に報告された酵素である。Reb D4からReb Mへの変換のための酵素を設計してそれをより完全に理解し、そしてその後、この知識を用いてReb D4からReb Mへの生物変換において有用であり得る酵素をより効率的に見出すまたは設計するために、我々は反応中心の構造情報および基質結合部位を取得しなければならない。
【0165】
セレノメチオニン(SeMet)置換されたタンパク質の産生のために、大腸菌(Escherichia coli)BL21(DE3)細胞をpET-28a-UGT76G1ベクターで形質転換し、50ugmL-1のカナマイシンを含有するSeMetを補充したM9最小培地(Doublie,2007)において、37℃(250rpm)でA600nm~0.8まで成長させた。イソプロピル1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド(0.8mM最終)の添加によりタンパク質発現を誘導し、細胞を一晩成長させた(16℃)。遠心分離(10,000xg;10分)により細胞ペレットを回収し、溶解緩衝液(50mMのTris、pH8.0、500mMのNaCl、20mMのイミダゾール、1mMのβ-メルカプトエタノール(β-ME)、10%(v/v)のグリセロール、および1%(v/v)のTween-20)中に懸濁させた。超音波処理による溶解の後、遠心分離(30,000xg;45分)により細胞片を除去し、上清を、洗浄緩衝液(溶解緩衝液からTween-20を除いたもの)で平衡化したNi2+-ニトリロ酢酸(NTA;Qiagen)カラムに通過させた。ロードした後、10カラム体積の洗浄緩衝液でカラムを洗浄した。結合した融合タンパク質を溶出緩衝液(250mMのイミダゾールを含む洗浄緩衝液)で溶出させて捕集した。さらなる精製のために、50mMのTris、pH8.0、25mMのNaCl、1mMのtris(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)で平衡化したSuperdex-200 26/60 HiLoad FPLCカラムにおいて、サイズ排除クロマトグラフィを実施した。ピーク画分を捕集し、遠心濃縮器(Amicon)を用いて濃縮し、標準物としてウシ血清アルブミンを用いるBradfordアッセイを使用してタンパク質濃度を決定した。精製したタンパク質を液体窒素中で急速冷凍し、-80℃で貯蔵した。
【0166】
精製UGT761を10mgmL-1まで濃縮し、2μlドロップ(1:1濃縮タンパク質および結晶化条件)によるハンギングドロップ蒸気拡散法を用いて結晶化した。4℃において20%(w/v)のPEG-4000、20%の2-プロパノール(v/v)、および100mMの三塩基性クエン酸ナトリウム二水和物緩衝液(pH5.6)を用いて、回折品質の結晶を得た。抗凍結剤として25%グリセロールを含有する母液を用いて個々の結晶を液体窒素中で急速冷凍した。Argonne National Laboratory Advanced Photon Source 19-IDビームライン(λ=0.98Å)において回折データ(100K)を収集した。HKL3000(Otwinowski & Minor,1997)を使用して、回折データをインデックス化し、積分し、スケール化した。単波長異常回折(single-wavelength anomalous diffraction)(SAD)位相化(phasing)により、SeMet置換されたUGT76G1の構造を決定した。SHELX(Sheldrick,2008)を用いてSeMet部分を決定し、ピーク波長データセットから初期位相を推定した。MLPHARE(Terwilliger,2000)を用いてSeMet部分およびパラメータの精密化を実施した。ARP/wARP(Morris et al.,2003)で実行される密度修正を用いるソルベントフラッタニング(solvent flattening)を使用して、初期モデルを構築した。トランスレーション-ライブレーション-スクリーンパラメータ(translation-libration-screen parameter)の精密化を含む、マニュアルモデルの構築および精密化のその後の反復ラウンドは、COOT(Emsley et al.,2010)およびPHENIX(Adams et al.,2007)をそれぞれ使用した。データ収集および精密化データは表1に要約される。
【0167】
【表1】
【0168】
UGT71G1の構造は同様のRossmann型フォールドを有するN末端ドメインおよびC末端ドメインからなり、予想どおりに、GT-Bフォールドに属する(図8)。UGT76G1結晶構造の標準的な配向は図8に示される。N末端ドメインは、8個のαヘリックスに隣接された中心の7本の鎖の平行βシートを含有する。またこのドメインは、触媒ヒスチジンも含有する。C末端ドメインは、7個のαヘリックスに隣接された6本の鎖のβシートを含有する(図9)。2つのドメインは非常に密に詰まっており、UDP分子が結合された深い割れ目(cleft)を形成する。
【0169】
実施例4:突然変異体の合理的設計
UGT76G1の構造に基づいて、我々は、循環置換(circular permutation)(PLoS computational Biology,2012,8(3)e1002445;BIOINFORMATICS,2015,(3))および一連の突然変異を設計することができた。循環置換分析は、有用なまたは価値のある酵素を開発するための強力な手段である。循環置換のいくつかのバージョンの試験の後、我々は、非常に高い活性を有する循環置換(circular mutation)の1つのバージョン「循環置換1」(「CP1」)が最高の活性を有することを見出した。本開示に従って、我々は、CP1(配列番号3)酵素の活性およびReb D4からReb Mへの変換を補助するその能力を調べた。
【0170】
UGT76G1およびCP1の構造は図10において比較される。UGT76G1結晶構造の構造特徴の大部分はUGTとCP1との間で類似しているが、CP1は、その構造の「ベータシート」部分において著しく異なる配列および構造を有する(図11)。
【0171】
我々の酵素の触媒活性を予測するために、我々は、Reb D4をCP1の反応中心にドッキングさせた。我々は反応中心を強調して、酵素とReb D4との相互作用に焦点を置いた。ドッキングされたレバウジオシドD4リガンドは、触媒ヒスチジンおよび結合UDPに対して好ましい位置にある(図12)。このドッキング実験に基づいて、我々は、変異誘発研究により活性を試験する価値のある特定の残基を見出すことができた。
【0172】
CP1のモデリング分析に基づいて、我々は、酵素活性を増大させるためにCP1の複数の突然変異部位を選択および試験した。最後に、我々は、レバウジオシドD4からレバウジオシドMへの生物変換に関連するいくつかの突然変異部位を見出した(表2)。CR1は、表2の少なくとも1つの突然変異部位を含む一種のCP1突然変異体である。
【0173】
表2. CP1の突然変異部位の要約
【表2】
【0174】
実施例5:突然変異体UGTの使用によるReb D4からReb Mへの変換
この例では、Reb D4からレバウジオシドMへのインビトロでの変換を確認するために、ステビオール配糖体基質としてReb D4を用いて、UGT76G1、CP1および酵素突然変異体をアッセイした。組換えポリペプチド(10μg)を200μLのインビトロ反応系で試験した。反応系は、50mMのリン酸カリウム緩衝液、pH7.2、3mMのMgCl2、1mg/mlのステビオール配糖体基質、および1mMのUDP-グルコースを含有した。反応を30℃で実施し、200μLの1-ブタノールの添加により終結させた。サンプルを200μLの1-ブタノールで3回抽出した。プールした画分を乾燥させ、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)分析のために70μLの80%のメタノール中に溶解させた。レバウジオシドD4を基質として使用した。HPLC分析は、クォータナリポンプ、温度制御されたカラムコンパートメント、オートサンプラーおよびUV吸光度検出器を含むDionex UPLC ultimate 3000システム(Sunnyvale,CA)を用いて実施した。ステビオール配糖体のキャラクタリゼーションのためにガードカラムを有するSynergi Hydro-RPカラムを使用した。HPLC分析における溶出のために水中のアセトニトリルを使用した。検出波長は210nmであった。
【0175】
図13に示されるように、UGT76G1、CP1およびCR1突然変異体は、1つのグルコース分子をReb D4へ転移させてReb Mを形成することができる。しかしながら、CP1およびCR1は、UGT76G1酵素よりも著しく高い酵素活性を有する。
【0176】
実施例6:NMRにより分析されたReb WB2の構造
Reb WB2のキャラクタリゼーションに使用した材料は、Reb Wの酵素変換を用いて生成させ、HPLCにより精製した。NMRスペクトルは、標準パルスシーケンスを用いてAgilent VNMRS 500MHz機器機器において取得した。1D(1Hおよび13C)および2D(TOCSY、ASAPHMQC、GCOSYおよびGHMBC)NMRスペクトルをCD3OD中で実施した。
【0177】
Reb WB2の分子式は、m/z827.3671において[M+Na]+に対応する付加生成物イオンを示したそのポジティブ高分解能(HR)質量スペクトルに基づいて、C386018と推定されており、この組成は、NMRスペクトルデータにより支持された。
【0178】
Reb WB2のNMRスペクトルデータにより、ent-カウランジテルペノイドの基本骨格が明らかにされ、GHMBC、COSYおよびTOCSY実験によりさらに確認された。APT試験を用いて炭素多重度を確認した。13CNMRは、3つのアノマー炭素(δ102.8、101.7、および92.46)と、δ62.2、61.14および60.88における3つの-CH2OHシグナルとを示し、3つの糖単位が確認された。また、δ177.1における1つのカルボニル共鳴と、δ152.2および104.4における2つのアルケン炭素とが存在した。H21からC19へのGHMBC相関は、糖のジテルペノイドコア構造への接続点を確認した。δ79.4におけるC13のケミカルシフトは、この炭素に接続した酸素を示す。Reb WB2の1Hおよび13CNMR値はTOCSY、HMQCおよびHMBCデータに基づいて帰属され、表3に示される。
【0179】
表3. Reb WB2の1Hおよび13CNMRスペクトルデータ(ケミカルシフトおよびカップリング定数)a~ca帰属はTOCSY、ASAPHMQC、およびGHMBC相関に基づく;bケミカルシフト値はδ(ppm)で表す;cカップリング定数はHzで表す。
【表3】
【0180】
H33とC25の間、H27とC24の間の重要なGHMBC相関により、3個の糖分子の結合性が確認された。観察された全ての2D相関およびケミカルシフトシグナルに基づいて、Reb WB2の構造は図15に示されるものであった。Reb WB2の構造は、13-ヒドロキシ-ent-カウラ-16-エン-19-酸-[(2-O-β-D-グルコピラノシル-3-O-β-D-グルコピラノシル-β-D-グルコピラノシル)エステルであると推定された。
【0181】
実施例7:NMRにより分析されたReb WB1の構造
Reb WB1のキャラクタリゼーションに使用した材料は、Reb Wの酵素変換を用いて生成させ、HPLCにより精製した。NMRスペクトルは、標準パルスシーケンスを用いてAgilent VNMRS 500MHz機器機器において取得した。1D(1Hおよび13C)および2D(TOCSY、ASAPHMQC、GCOSYおよびGHMBC)NMRスペクトルを80%のCD3OD-20%のD2O中で実施した。
【0182】
Reb WB1の分子式は、m/z989.4206において[M+Na]+に対応する付加生成物イオンを示したそのポジティブ高分解能(HR)質量スペクトルに基づいて、C447023と推定されており、この組成は、NMRスペクトルデータにより支持された。
【0183】
Reb WB1のNMRスペクトルデータにより、ent-カウランジテルペノイドの基本骨格が明らかにされ、GHMBC、COSYおよびTOCSY実験によりさらに確認された。APT試験を用いて炭素多重度を確認した。13CNMRは、4つのアノマー炭素(δ102.6、101.6 97.6および92.61)と、δ62.0、61.1、61.0および60.8における4つの-CH2OHシグナルとを示し、4つの糖単位が確認された。また、δ177.0における1つのカルボニル共鳴と、δ152.5および104.4における2つのアルケン炭素とが存在した。H21からC19へ、およびH39からC13へのGHMBC相関は、糖のジテルペノイドコア構造への接続点を確認した。Reb WB1の1Hおよび13CNMR値はTOCSY、HMQCおよびHMBCデータに基づいて帰属され、表4に示される。
【0184】
表4. Reb WB1の1Hおよび13CNMRスペクトルデータ(ケミカルシフトおよびカップリング定数)a~ca帰属はTOCSY、ASAPHMQC、およびGHMBC相関に基づく;bケミカルシフト値はδ(ppm)で表す;cカップリング定数はHzで表す。
【表4】


【0185】
H33とC25の間、H27とC24の間(逆も同様)の他の重要なGHMBC相関により、糖分子のうちの3個の連結が確認された。観察された全ての2D相関およびケミカルシフトシグナルに基づいて、Reb WB1の構造は図16に示されるものであった。Reb WB1の構造は、13-β-D-グルコピラノシルオキシent-カウラ-16-エン-19-酸-[(2-O-β-D-グルコピラノシル-3-O-β-D-グルコピラノシル-β-D-グルコピラノシル)エステルであると推定された。
【0186】
実施例8:NMRにより分析されたReb D4の構造
Reb D4のキャラクタリゼーションに使用した材料は、Reb WB1の酵素変換を用いて生成させ、HPLCにより精製した。NMRスペクトルは、標準パルスシーケンスを用いてAgilent VNMRS 500MHz機器機器において取得した。1D(1Hおよび13C)および2D(TOCSY、ASAPHMQC、GCOSYおよびGHMBC)NMRスペクトルを80%のCD3ODおよび20%のD2O中で実施した。
【0187】
Reb D4の分子式は、m/z1151.4728において[M+Na]+に対応する付加生成物イオンを示したそのポジティブ高分解能(HR)質量スペクトルに基づいて、C508028と推定されており、この組成は、NMRスペクトルデータにより支持された。
【0188】
Reb D4の1HNMRスペクトルデータにより、δ1.24および0.92における2つのメチル一重線、環外二重結合のδ5.20および4.86における一重線としての2つのオレフィンプロトンの存在が示された。ent-カウランジテルペノイドの基本骨格は、GHMBC、COSYおよびTOCSY実験により支持された。APT試験を用いて炭素多重度を確認した。13CNMRは5つのアノマー炭素(δ103.5、102.5、101.8、95.6および92.8)を示し、5つの糖単位、δ177.1における1つのカルボニル、ならびにδ152.2および104.4における2つのアルケン炭素が確認された。H40からC12へ、およびH22からC19へのGHMBC相関は、糖のジテルペノイドコア構造への接続点を確認した。Reb D4の1Hおよび13CNMR値はTOCSY、HMQCおよびHMBCデータに基づいて帰属され、表5に示される。
【0189】
表5. Reb D4の1Hおよび13CNMRスペクトルデータ(ケミカルシフトおよびカップリング定数)a~ca帰属はTOCSY、ASAPHMQC、およびGHMBC相関に基づく;bケミカルシフト値はδ(ppm)で表す;cカップリング定数はHzで表す。
【表5】


【0190】
H45とC46の間、H28とC27の間、およびH26とC34の間(逆も同様)の重要なGHMBC相関により、5個の糖分子の結合性が確認された。観察された全ての2D相関およびケミカルシフトシグナルに基づいて、Reb D4の構造は図17に示されるものであった。Reb D4の構造は、13-[(2-O-β-D-グルコピラノシル-β-D-グルコピラノシル)オキシ]ent-カウラ-16-エン-19-酸-[(2-O-β-D-グルコピラノシル-3-O-β-D-グルコピラノシル-β-D-グルコピラノシル)エステルであると推定された。
【0191】
実施例9:レバウジオシドの風味試験
レバウジオシドの官能評価は、スクロースを対照として用いて実施した。スクロースサンプルをSigma-Aldrichから購入し、室温において、ボトルウォーター中1.0%、3.0%、および6.0%のスクロース(w/v)の3つの異なる濃度の対照サンプルを調製するために使用した。レバウジオシドは、官能評価のために、対応する質量を1000mLのボトルウォーターに添加することにより300ppmで調製した。混合物を室温で攪拌し、次に、13人のヒトボランティア対象のパネルにより、1.0%、3.0%、および6.0%のいくつかの対照スクロースサンプルに対してステビオール配糖体サンプルを評価した。官能評価の結果は表6に示される。
【0192】
表6. スクロースと比較したReb W1、Reb W2およびReb D4の官能評価
【表6】
【0193】
産業上の利用可能性/技術分野の記述
本開示は、食品、飼料、飲料、および薬理学的な産業における適用性を有する。本開示は、一般に、改変された微生物株によるステビオール配糖体の生合成製造法に関する。
【0194】
引用及び参照により組み込まれた文献:
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【0195】
対象の配列:
UGT76G1配列:
アミノ酸配列:(配列番号1)
DNA配列:(配列番号2)
【0196】
CP1配列:
アミノ酸:(配列番号3)
DNA配列:(配列番号4)
【0197】
B-glu1配列:
アミノ酸:(配列番号5)
DNA:(配列番号6)

【0198】
UGT85C2配列:
アミノ酸:(配列番号7)
DNA(配列番号8)
【0199】
HV1配列:
アミノ酸配列:(配列番号9)
DNA配列:(配列番号10)
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13-1】
図13-2】
図14
図15
図16
図17
【配列表】
2022153385000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-07-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造:

を有するレバウジオシドWB1;
構造:

を有するレバウジオシドWB2;及び
構造:

を有するレバウジオシドD4
から選択されるレバウジオシド化合物を含む甘味料組成物。
【請求項2】
前記レバウジオシド化合物がレバウジオシドWB2又はレバウジオシドD4である、請求項1に記載の甘味料組成物。
【請求項3】
構造:

を有するレバウジオシドWB2。
【請求項4】
構造:

を有するレバウジオシドD4。
【請求項5】
甘味化量の、構造:

を有するレバウジオシドWB1;
構造:

を有するレバウジオシドWB2;及び
構造:

を有するレバウジオシドD4
から選択されるレバウジオシド化合物を含む経口消費製品。
【請求項6】
飲料製品である、請求項5に記載の経口消費製品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
他の態様では、本開示は、配列番号3に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むCP1組換えポリペプチドを提供する。いくつかの実施形態では、CP1組換えポリペプチドをコードするDNA配列は、配列番号4に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)の同一性を有する。いくつかの実施形態では、CP1組換えポリペプチドは、表2に記載される1つまたは複数の位置において1つまたは複数の突然変異を有する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0193
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0193】
産業上の利用可能性/技術分野の記述
本開示は、食品、飼料、飲料、および薬理学的な産業における適用性を有する。本開示は、一般に、改変された微生物株によるステビオール配糖体の生合成製造法に関する。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕培地内で成長する形質転換細胞系によって産生される、対象のステビオール配糖体。
〔2〕前記形質転換細胞系が、酵母、非ステビオール配糖体産生植物、藻類および細菌からなる群から選択される、前記〔1〕に記載の対象のステビオール配糖体。
〔3〕前記ステビオール配糖体が構造:
のReb D4である、前記〔1〕に記載の対象のステビオール配糖体。
〔4〕前記ステビオール配糖体がReb WB1である、前記〔1〕に記載の対象のステビオール配糖体。
〔5〕前記ステビオール配糖体がReb WB2である、前記〔1〕に記載の対象のステビオール配糖体。
〔6〕原料物質がステビオールである、前記〔1〕に記載の対象のステビオール配糖体。
〔7〕前記細胞系が大腸菌(E.coli)である、前記〔2〕に記載の対象のステビオール配糖体。
〔8〕前記ステビオール配糖体含量が少なくとも70%純粋である、前記〔2〕に記載の対象のステビオール配糖体。
〔9〕甘味化量の前記〔3〕に記載のステビオール配糖体を含む消費製品。
〔10〕甘味化量の前記〔4〕に記載のステビオール配糖体を含む消費製品。
〔11〕甘味化量の前記〔5〕に記載のステビオール配糖体を含む消費製品。
〔12〕飲料、菓子類、ベーカリー製品、クッキー、およびチューインガムからなる群から選択される、前記〔9〕に記載の消費製品。
〔13〕配列番号3に対して少なくとも80%の同一性を有するDNA配列を含むCP1組換えポリペプチド。
〔14〕アミノ酸配列が配列番号4に対して少なくとも80%の同一性を有する、前記〔13〕に記載の組換えポリペプチド。
〔15〕前記細胞系が細菌であり、エシェリキア属(Escherichia)、サルモネラ属(Salmonella)、バチルス属(Bacillus)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、メチロサイナス属(Methylosinus)、メチロモナス属(Methylomonas)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ロドバクター属(Rhodobacter)、シネコシスティス属(Synechocystis)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ジゴサッカロミセス属(Zygosaccharomyces)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、カンジダ属(Candida)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、デバリオミセス属(Debaryomyces)、ムコール属(Mucor)、ピキア属(Pichia)、トルロプシス属(Torulopsis)、アスペルギルス属(Aspergillus)、アルツロボトリス属(Arthrobotlys)、ブレビバクテリア属(Brevibacteria)、ミクロバクテリウム属(Microbacterium)、アルスロバクター属(Arthrobacter)、シトロバクター属(Citrobacter)、エシェリキア属(Escherichia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、パンテア属(Pantoea)、サルモネラ属(Salmonella) コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、クロストリジウム属(Clostridium);およびクロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)からなる群から選択される、前記〔2〕に記載の対象のステビオール配糖体。
〔16〕対象のステビオール配糖体を製造する生合成方法であって、
a)形質転換細胞系においてCP1酵素を発現させることと、
b)前記細胞系を培地中で成長させることと、
c)対象のステビオール配糖体を産生させることと
を含む方法。
〔17〕組換えスクロースシンターゼを基質と共にインキュベートすることをさらに含む、前記〔16〕に記載の方法。
〔18〕組換えUDPグリコシルトランスフェラーゼUGT85C2を、前記スクロースシンターゼ、前記基質、およびCP1組換えポリペプチドと共にインキュベートすることをさらに含む、前記〔17〕に記載の方法。
〔19〕βグルコシダーゼ酵素を反応混合物に添加することをさらに含む、前記〔18〕に記載の方法。
〔20〕前記スクロースシンターゼが、アラビドプシス属(Arabidopsis)スクロースシンターゼ1、アラビドプシス属(Arabidopsis)スクロースシンターゼ3およびビグナ・ラディアテ(Vigna radiate)スクロースシンターゼからなる群から選択される、前記〔17〕に記載の方法。
〔21〕前記スクロースシンターゼが、アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)スクロースシンターゼ1である、前記〔17〕に記載の方法。
〔22〕産生される前記ステビオール配糖体が、Reb D4およびReb Mの混合物である、前記〔16〕に記載の方法。
〔23〕前記産生方法がさらに、i)粗産物を精製することと、ii)溶媒を真空下で除去して、濃縮産物を提供することとを含む、前記〔2〕に記載の対象のステビオール配糖体。
〔24〕前記粗産物がカラムクロマトグラフィにより精製される、前記〔23〕に記載の対象のステビオール配糖体。
〔25〕前記粗産物が酸-塩基抽出により精製される、前記〔23〕に記載の対象のステビオール配糖体。
〔26〕前記粗産物が真空蒸留により精製される、前記〔23〕に記載の対象のステビオール配糖体。
〔27〕セミ分取HPLCを用いて前記ステビオール配糖体を精製することをさらに含む、前記〔23〕に記載の対象のステビオール配糖体。
〔28〕前記ステビオール配糖体がReb WB1である、前記〔16〕に記載の方法。
〔29〕前記ステビオール配糖体がReb WB2である、前記〔16〕に記載の方法。
〔30〕前記ステビオール配糖体がReb D4である、前記〔16〕に記載の方法。
〔31〕前記ステビオール配糖体がReb Mである、前記〔16〕に記載の方法。
〔32〕HV1(配列番号9)の使用をさらに含む、前記〔16〕に記載の方法。
〔33〕UGT76G1(配列番号1)の使用をさらに含む、前記〔32〕に記載の方法。
〔34〕構造:
を有するステビオール配糖体Reb D4。
〔35〕前記〔34〕に記載のステビオール配糖体を含む組成物であって、該組成物中の前記ステビオール配糖体含量が少なくとも70%純粋である組成物。
〔36〕甘味化量の前記〔34〕に記載のステビオール配糖体を含む消費製品。
〔37〕飲料、菓子類、ベーカリー製品、クッキー、およびチューインガムからなる群から選択される、前記〔36〕に記載の消費製品。
〔38〕Reb D4およびReb Mの混合物を含む組成物。
〔39〕構造:
を有するステビオール配糖体Reb WB1。
〔40〕前記〔39〕に記載のステビオール配糖体を含む組成物であって、該組成物中の前記ステビオール配糖体含量が少なくとも70%純粋である組成物。
〔41〕甘味化量の前記〔39〕に記載のステビオール配糖体を含む消費製品。
〔42〕飲料、菓子類、ベーカリー製品、クッキー、およびチューインガムからなる群から選択される、前記〔41〕に記載の消費製品。
〔43〕構造:
を有するステビオール配糖体Reb WB2。
〔44〕前記〔43〕に記載のステビオール配糖体を含む組成物であって、該組成物中の前記ステビオール配糖体含量が少なくとも70%純粋である組成物。
〔45〕甘味化量の前記〔43〕に記載のステビオール配糖体を含む消費製品。
〔46〕飲料、菓子類、ベーカリー製品、クッキー、およびチューインガムからなる群から選択される、前記〔45〕に記載の消費製品。
〔47〕適切な成長条件下で組換え細胞を培養することを含み、前記組換え細胞がステビオール配糖体を産生する能力を示す、レバウジオシドMの製造方法であって、
前記組換え細胞と、ステビオシド、スクロースシンターゼおよびスクロースを含有する反応組成物とを接触させることを含み、
前記組換え細胞が、前記ステビオシド基質を使用してレバウジオシドEを産生することができる第1のUDP-グリコシルトランスフェラーゼ(UGT)またはその触媒活性部分を発現し、
前記組換え細胞が、前記レバウジオシドEを使用してレバウジオシドD4を産生することができる第2のUDP-グリコシルトランスフェラーゼ(UGT)またはその触媒活性部分を発現し、かつ
前記組換え細胞が、前記レバウジオシドD4を使用してレバウジオシドMを産生することができる第3のUDP-グリコシルトランスフェラーゼ(UGT)またはその触媒活性部分を発現する、前記方法。
〔48〕スクロースシンターゼ遺伝子またはその触媒活性部分が、前記組換え細胞内で発現されることをさらに含む、前記〔47〕に記載の方法。
〔49〕前記反応組成物にスクロースシンターゼが添加されることをさらに含む、前記〔47〕に記載の方法。
〔50〕前記〔47〕に記載の方法により製造されるReb M。
〔51〕前記〔47〕に記載の生合成経路を発現する組換え細胞。
〔52〕前記細胞が酵母細胞である、前記〔51〕に記載の組換え細胞。
〔53〕前記細胞が細菌細胞である、前記〔51〕に記載の組換え細胞。
〔54〕前記細胞が植物細胞である、前記〔51〕に記載の組換え細胞。
【外国語明細書】