(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153426
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】組織製造方法
(51)【国際特許分類】
A61L 27/24 20060101AFI20221004BHJP
A61L 27/06 20060101ALI20221004BHJP
A61L 27/14 20060101ALI20221004BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20221004BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20221004BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20221004BHJP
A61L 27/26 20060101ALI20221004BHJP
A61L 27/34 20060101ALI20221004BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20221004BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
A61L27/24
A61L27/06
A61L27/14
A61L27/16
A61L27/18
A61L27/22
A61L27/26
A61L27/34
A61L27/36 130
A61L27/36 200
A61L27/36 400
A61L27/36 410
A61L27/38
A61L27/38 111
A61L27/38 120
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022109428
(22)【出願日】2022-07-07
(62)【分割の表示】P 2020097337の分割
【原出願日】2013-09-03
(31)【優先権主張番号】61/696,479
(32)【優先日】2012-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】520169074
【氏名又は名称】セルラリティ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】モヒト ビー.ブハティア
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ジェイ. ハリリ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフガング ホフガートナー
(72)【発明者】
【氏名】ジア‐ルン ワング
(72)【発明者】
【氏名】キアン イエ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】表面上に細胞及び/又は細胞外マトリクスを沈着することを含む、インビトロ又はエクスビボにおいて組織及び器官を作製する方法、並びにそのような組織及び器官を使用する方法を提供する。
【解決手段】細胞及び細胞外マトリクス(ECM)を含む少なくとも1種の細胞組成物を表面上に沈着することを含む、3次元組織又は器官の形成方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞及び細胞外マトリクス(ECM)を含む少なくとも1種の細胞組成物を表面上に沈着する
ことを含む、3次元組織又は器官の形成方法。
【請求項2】
前記ECMが、流動性ECMを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記細胞組成物及び前記ECMが、前記表面上に印刷される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記沈着が、インクジェットプリンティングにより達成される、請求項1~3のいずれか
一項記載の方法。
【請求項5】
前記表面が、人工表面である、請求項1~4のいずれか記載の方法。
【請求項6】
前記表面が、脱細胞化された組織又は脱細胞化された器官である、請求項1~4のいずれ
か記載の方法。
【請求項7】
前記ECMが、哺乳動物ECM、軟体動物ECM、魚類ECM、及び/又は植物ECMを含む、請求項1
~6のいずれか記載の方法。
【請求項8】
前記哺乳動物ECMが、胎盤ECMである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記ECMが、テロペプチド胎盤コラーゲンを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記テロペプチド胎盤コラーゲンが、塩基処理された、界面活性剤処理されたI型テロ
ペプチド胎盤コラーゲンを含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記コラーゲンが、化学修飾されていないか又はプロテアーゼと接触されていない、請
求項9又は10記載の方法。
【請求項12】
前記胎盤ECMが、化学修飾されていないか又はプロテアーゼと接触されていない、塩基
処理された及び/又は界面活性剤処理されたI型テロペプチド胎盤コラーゲンを含み、こ
こで該ECMが、フィブロネクチン5重量%未満又はラミニン5重量%未満;I型コラーゲン25
重量%~92重量%;及び、III型コラーゲン2重量%~50重量%又はIV型コラーゲン2重量
%~50重量%を含む、請求項8記載の方法。
【請求項13】
前記胎盤ECMが、化学修飾されていないか又はプロテアーゼと接触されていない、塩基
処理され、界面活性剤処理されたI型テロペプチド胎盤コラーゲンを含み、ここで該ECMが
、フィブロネクチン1重量%未満又はラミニン1重量%未満;I型コラーゲン74重量%~92
重量%;及び、III型コラーゲン4重量%~6重量%又はIV型コラーゲン2重量%~15重量%
を含む、請求項8記載の方法。
【請求項14】
前記ECMが、前記沈着前に誘導体化されている、請求項1~13のいずれか一項記載の方法
。
【請求項15】
前記ECMが、細胞付着ペプチド、細胞付着タンパク質、サイトカイン、又はグリコサミ
ノグリカンの1種以上により誘導体化されている、請求項14記載の方法。
【請求項16】
細胞付着ペプチド、細胞付着タンパク質、サイトカイン、又はグリコサミノグリカンの
沈着を更に含む、請求項1~15のいずれか記載の方法。
【請求項17】
前記サイトカインが、血管内皮増殖因子(VEGF)、又は骨形態形成タンパク質(BMP)であ
る、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記細胞接着ペプチドが、1以上のRGDモチーフを含むペプチドである、請求項16記載の
方法。
【請求項19】
合成ポリマーの沈着を更に含む、請求項1~18のいずれか記載の方法。
【請求項20】
前記合成ポリマーが、感熱性である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記合成ポリマーが、感光性である、請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記合成ポリマーが、熱可塑性物質を含む、請求項19記載の方法。
【請求項23】
前記合成ポリマーが、ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)である、請求項22記載の
方法。
【請求項24】
前記熱可塑性物質が、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリブチレンテレフタレート、
ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、又はポリ
塩化ビニルである、請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記合成ポリマーが、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニリジン、ポリ(o-カルボキシ
フェノキシ)-p-キシレン)(ポリ(o-CPX))、ポリ(無水ラクチド)(PLAA)、n-イソプロピルア
クリルアミド、ペントエリスリトールジアクリレート、ポリメチルアクリレート、カルボ
キシメチルセルロース、又はポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)である、請求項19
記載の方法。
【請求項26】
テナシンC又はそれらの断片の沈着を更に含む、請求項1~25のいずれか記載の方法。
【請求項27】
チタン-アルミニウム-バナジウム(Ti6Al4V)組成物の沈着を更に含む、請求項1~35のい
ずれか記載の方法。
【請求項28】
前記チタン-アルミニウム-バナジウム組成物が、ファイバーの相互連結された多孔質網
の形態で沈着されている、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記組織又は器官が、前記細胞組成物の少なくとも1つの層及びECMの少なくとも1つの
層を含む、請求項1記載の方法。
【請求項30】
前記組織又は器官の少なくとも一部が、交互層中に印刷された前記細胞組成物の少なく
とも1つの層及び前記ECMの少なくとも1つの層を含む、請求項1記載の方法。
【請求項31】
前記組織又は器官の製造において、前記合成ポリマーの少なくとも一部が、互いに実質
的に平行である複数のファイバーの形態で印刷される、請求項19記載の方法。
【請求項32】
前記複数のファイバーが、互いに実質的に平行に沈着され、互いに物理的に接触しない
ように印刷されている、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記合成ポリマーが、複数回沈着されている、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記ファイバーが、前記複数回沈着されている場合、該回数の少なくとも2回は異なる
方向に印刷されている、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記ファイバーが、前記複数回沈着されている場合、該回数の各々が異なる方向に沈着
されている、請求項33記載の方法。
【請求項36】
前記組織が、前記ECMの少なくとも2つの層を含む、請求項1~35のいずれか記載の方法
。
【請求項37】
前記基板の該少なくとも2つの層の少なくとも一部が、前記細胞組成物により互いに分
離されている、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記プリンティングが、前記基板の2つの層間に接着剤を印刷することを含む、請求項3
記載の方法。
【請求項39】
前記ECM及び前記細胞組成物が、前記表面上に個別に沈着されている、請求項1~38のい
ずれか記載の方法。
【請求項40】
前記ECMの少なくとも一部が、前記細胞組成物の印刷前に、前記表面上に沈着される、
請求項1~38のいずれか記載の方法。
【請求項41】
前記細胞組成物及び前記ECMが、前記沈着の前に組み合せられる、請求項1~38のいずれ
か記載の方法。
【請求項42】
前記細胞組成物が、前記印刷時に、前記ECM上に印刷される、請求項3記載の方法。
【請求項43】
前記細胞組成物が、前記ECMの前記印刷の完了後に、該ECM上に印刷される、請求項3記
載の方法。
【請求項44】
前記ECMが、前記沈着時に、3次元構造へ形成される、請求項1~43のいずれか記載の方
法。
【請求項45】
代用骨の沈着を更に含む、請求項1~44のいずれか記載の方法。
【請求項46】
前記表面が、骨であるか又は骨を含む、請求項1~45記載の方法。
【請求項47】
前記代用骨が、前記組織の意図されたレシピエントにおける骨に対応するように印刷さ
れる、請求項45記載の方法。
【請求項48】
前記方法が、前記組織の意図されたレシピエントにおける骨の3次元マップを作製する
ことを更に含み、ここで前記代用骨が、該3次元マップに対応するように印刷される、請
求項47記載の方法。
【請求項49】
前記骨が、頭蓋骨又は顔面骨である、請求項47又は48記載の方法。
【請求項50】
前記骨が、耳の骨又は指趾骨である、請求項47又は48記載の方法。
【請求項51】
前記細胞組成物が、前記骨又は代用骨の表面を少なくとも部分的に被覆するように、該
細胞組成物が、該骨又は代用骨上に印刷される、請求項47~50のいずれか記載の方法。
【請求項52】
前記組織が、(a)内面及び外面を有する骨からなる表面、並びに(b)2種の細胞組成物を
含み、ここで該第一の細胞組成物は、該内面上に印刷される第一の型の細胞、及び該外面
上に印刷される第二の型の細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項53】
前記沈着が、3次元的に行われる、請求項1~52のいずれか記載の方法。
【請求項54】
前記組織が、3次元表面上に印刷される、請求項53記載の方法。
【請求項55】
前記インクジェットプリンティングが、複数のプリントヘッド又は複数のプリントジェ
ットを備えるプリンターを用いて実行される、請求項4記載の方法。
【請求項56】
前記プリントヘッド又はプリントジェットの各々が、個別に制御可能である、請求項55
記載の方法。
【請求項57】
前記プリントヘッド又はプリントジェットの各々が、残りのプリントヘッド又はプリン
トジェットから独立して作動する、請求項56記載の方法。
【請求項58】
前記複数のプリントヘッド又はプリントジェットの少なくとも1個が、前記細胞組成物
を印刷し、並びにその他の該複数のプリントヘッド又はプリントジェットの少なくとも1
個が、前記ECMを印刷する、請求項55~57のいずれか記載の方法。
【請求項59】
前記細胞組成物及び前記ECMが、前記印刷前に組み合せられる、請求項1記載の方法。
【請求項60】
前記細胞組成物が、骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)を含む、請求項1~59のいずれか記
載の方法。
【請求項61】
前記細胞組成物が、組織培養プラスチック接着性CD34-、CD10+、CD105+、及びCD200+胎
盤幹細胞を含む、請求項1~59のいずれか記載の方法。
【請求項62】
前記胎盤幹細胞は更に、CD45-、CD80-、CD86-、又はCD90+の1以上である、請求項61記
載の方法。
【請求項63】
前記胎盤幹細胞が、前記レシピエント内で免疫応答を抑制する、請求項61又は62記載の
方法。
【請求項64】
前記胎盤幹細胞が、前記レシピエント内で免疫応答を局所的に抑制する、請求項63記載
の方法。
【請求項65】
前記細胞組成物が、胚性幹細胞、胚性生殖細胞、人工多能性幹細胞、間葉系幹細胞、骨
髄由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系間質細胞、組織プラスチック接着性胎盤幹細胞(PDA
C)、臍帯幹細胞、羊水幹細胞、羊膜由来接着性細胞(AMDAC)、骨形成性の胎盤接着性細胞(
OPAC)、脂肪幹細胞、角膜上皮幹細胞、歯髄幹細胞、筋芽細胞、内皮前駆細胞、神経幹細
胞、脱落歯由来幹細胞、毛嚢幹細胞、真皮幹細胞、単為生殖由来幹細胞、初期化された幹
細胞、羊膜由来接着性細胞、又はサイドポピュレーション幹細胞を含む、請求項1~59の
いずれか記載の方法。
【請求項66】
前記細胞組成物が、分化した細胞である、請求項1~59のいずれか記載の方法。
【請求項67】
前記分化した細胞が、内皮細胞、上皮細胞、真皮細胞、内胚葉細胞、中胚葉細胞、線維
芽細胞、骨細胞、軟骨細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、肝細胞、膵臓細胞、又は
間質細胞を含む、請求項66記載の方法。
【請求項68】
前記分化した細胞が、
唾液腺粘液性細胞、唾液腺漿液性細胞、フォンエブネル腺細胞、乳腺細胞、涙腺細胞、
耳道腺細胞、エクリン汗腺暗調細胞、エクリン汗腺明調細胞、アポクリン汗腺細胞、モル
腺細胞、脂腺細胞、ボウマン腺細胞、ブルンネル腺細胞、精嚢細胞、前立腺細胞、尿道球
腺細胞、バルトリン腺細胞、リトレ腺細胞、子宮内膜細胞、単離された杯細胞、胃表層粘
液細胞、胃腺酵素原細胞、胃腺酸分泌細胞、膵腺房細胞、パネート細胞、II型肺胞上皮細
胞、クララ細胞、
成長ホルモン産生細胞、乳腺刺激ホルモン産生細胞、甲状腺刺激ホルモン産生細胞、性
腺刺激ホルモン産生細胞、副腎皮質刺激ホルモン産生細胞、下垂体中葉由来の細胞、巨大
細胞神経分泌細胞、腸管細胞、気道細胞、甲状腺上皮細胞、傍濾胞細胞、副甲状腺細胞、
副甲状腺主細胞、好酸性細胞、副腎腺細胞、クロム親和性細胞、ライディッヒ細胞、内卵
胞膜細胞、黄体細胞、顆粒膜黄体細胞、莢膜黄体様細胞、傍糸球体細胞、緻密斑細胞、極
周囲細胞、メサンギウム細胞、
血管及びリンパ管内皮有孔細胞、血管及びリンパ管内皮連続型細胞、血管及びリンパ管
内皮脾細胞、滑膜細胞、漿膜細胞(腹膜の、胸膜の、及び心膜腔の内壁)、扁平上皮細胞
、円柱細胞、暗調細胞、前庭膜細胞(耳の内リンパ腔内壁)、血管条基底細胞、血管条周
辺細胞(耳の内リンパ腔内壁)、クラウディウス細胞、ベッチェル細胞、脈絡叢細胞、軟
膜クモ膜扁平上皮細胞、色素毛様体上皮細胞、非色素毛様体上皮細胞、角膜内皮細胞、栓
細胞、
気道線毛細胞、卵管線毛細胞、子宮内膜線毛細胞、精巣網線毛細胞、精巣輸出管線毛細
胞、線毛性上衣細胞、
表皮角化細胞、表皮基底細胞、手指爪及び足指爪の角化細胞、爪床基底細胞、毛幹の毛
髄質細胞、毛幹の毛皮質細胞、毛幹の毛小皮細胞、毛根の毛小皮鞘細胞、毛根ハックスレ
ー層の鞘細胞、毛根ヘンレ層の鞘細胞、外毛根鞘細胞、毛母細胞、
重層扁平上皮の表面上皮細胞、上皮基底細胞、泌尿器上皮細胞、
耳のコルチ器官の内有毛細胞、耳のコルチ器官の外有毛細胞、嗅上皮基底細胞、冷感受
性一次感覚ニューロン、熱感受性一次感覚ニューロン、表皮のメルケル細胞、嗅覚受容体
神経、痛み感受性一次感覚ニューロン、光受容体桿体細胞、光受容体青色感受性錐体細胞
、光受容体緑色感受性錐体細胞、光受容体赤色感受性錐体細胞、固有受容性一次感覚ニュ
ーロン、触覚感受性一次感覚ニューロン、I型頸動脈小体細胞、II型頸動脈小体細胞(血
液pHセンサ)、内耳前庭器官のI型有毛細胞(加速度及び重力)、内耳前庭器官のII型有
毛細胞、I型味蕾細胞、
コリン作動性神経細胞、アドレナリン作動性神経細胞、ペプチド作動性神経細胞、
コルチ器官の内柱細胞、コルチ器官の外柱細胞、コルチ器官の内指骨細胞、コルチ器官
の外指骨細胞、コルチ器官の境界細胞、コルチ器官のヘンゼン細胞、前庭器支持細胞、味
蕾支持細胞、嗅上皮支持細胞、シュワン細胞、サテライト細胞、腸内グリア細胞、
星状細胞、ニューロン、希突起膠細胞、紡錘形ニューロン、
前水晶体上皮細胞、クリスタリン含有水晶体線維細胞、
肝細胞、脂肪細胞、白色脂肪細胞、褐色脂肪細胞、肝臓脂肪細胞、
腎臓糸球体壁細胞、腎臓糸球体有足細胞、腎臓近位尿細管刷子縁細胞、ヘンレ係蹄の細
い部分の細胞、腎臓遠位尿細管細胞、腎臓集合管細胞、I型肺胞上皮細胞、膵管細胞、非
線条導管細胞、導管細胞、腸管刷子縁細胞、外分泌腺線条導管細胞、胆嚢上皮細胞、精巣
輸出管非線毛細胞、精巣上体主細胞、精巣上体基底細胞、
エナメル芽細胞上皮細胞、半月面上皮細胞、コルチ器官歯間上皮細胞、疎性結合組織線
維芽細胞、角膜実質細胞、腱線維芽細胞、骨髄網状組織線維芽細胞、非上皮性線維芽細胞
、周細胞、髄核細胞、セメント芽細胞/セメント細胞、象牙芽細胞、オドントサイト、ヒ
アリン軟骨細胞、線維軟骨細胞、弾性軟骨細胞、骨芽細胞、骨細胞、破骨細胞、骨前駆細
胞、硝子体細胞、星細胞(耳)、肝星細胞(伊東細胞)、膵星細胞、
赤色骨格筋細胞、白色骨格筋細胞、中間体骨格筋細胞、筋紡錘の核袋細胞、筋紡錘の核
鎖細胞、サテライト細胞、固有心筋細胞、結節性心筋細胞、プルキンエ線維細胞、平滑筋
細胞、虹彩の筋上皮細胞、外分泌腺の筋上皮細胞、
網状赤血球、巨核球、単球、結合組織マクロファージ、表皮ランゲルハンス細胞、樹状
細胞、小膠細胞、好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサ
ーT細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、
メラニン形成細胞、網膜色素上皮細胞、
卵原細胞/卵母細胞、精子細胞、精母細胞、精原細胞、精子、卵胞細胞、セルトリ細胞
、胸腺上皮細胞、及び/又は間質性腎臓細胞
を含む、請求項66記載の方法。
【請求項69】
前記組織が、人工神経導管を含む、請求項1~68のいずれか一項記載の方法。
【請求項70】
前記人工神経導管が、ポリ無水物で作製される、請求項69記載の方法。
【請求項71】
前記ポリ無水物が、ポリ(o-カルボキシフェノキシ)-p-キシレン)又はポリ(無水ラクチ
ド)である、請求項70記載の方法。
【請求項72】
前記人工神経導管が、前記ポリ無水物を用い、前記組織へ、前記インクジェットプリン
ティングにより沈着される、請求項69~71のいずれか記載の方法。
【請求項73】
前記人工神経導管が、前記プリンティング前に調製され、且つ前記組織のプリンティン
グ時に、該組織へ配置される、請求項69~71のいずれか記載の方法。
【請求項74】
前記人工神経導管を含む前記組織が、中枢神経系(CNS)の損傷領域への移植に適してい
る、請求項72又は73記載の方法。
【請求項75】
前記CNSの領域が、脊髄である、請求項74記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年9月4日に出願された米国特許仮出願第61/696,479号の優先権を主張す
るものであり、その出願の開示は、その全体が引用により本明細書中に組み込まれている
。
【0002】
(1. 緒言)
表面上に細胞及び/又は細胞外マトリクスを沈着することを含む、インビトロ又はエク
スビボにおいて組織及び器官を作製する方法、並びにそのような組織及び器官を使用する
方法が、本明細書において提供される。
【背景技術】
【0003】
(2. 背景)
バイオプリンティング(例えば、器官プリンティング)は、生体材料に沈着する、改変
されたインクジェットプリンターなどの印刷装置が関与する、研究及び設計(engineering
)の分野である。この技術は、細胞を含む液滴の迅速な作出及び放出、それに続く表面上
へのそれらの正確な沈着に関与している。バイオプリンティングにより、基本的細胞材料
を使用し設計された組織及び器官は、今日標準的な移植方策において使用されるドナー由
来の組織及び器官の有望な代替品を表している。
【発明の概要】
【0004】
(3. 概要)
一態様において、組織を形成するために、インビトロ又はエクスビボにおいて表面上に
細胞及び/又は細胞外マトリクス(ECM)を沈着することを含む、組織(例えば3次元組織)
又は器官を作製する方法が、本明細書において提供される。本明細書記載の組織(例えば
3次元組織)及び器官を作製する方法に従い使用することができる細胞は、下記4.1.1項に
説明されている。本明細書記載の組織(例えば3次元組織)及び器官を作製する方法に従
い設計することができる組織及び器官は、下記4.1.2項に説明されている。本明細書記載
の組織(例えば3次元組織)及び器官を作製する方法に従い使用することができるECMは、
下記4.1.3項に説明されている。本明細書記載の組織(例えば3次元組織)及び器官を作製
する方法に従いその上に細胞、ECM、及び/又は追加成分が沈着され得る表面は、下記4.1
.4項に説明されている。
【0005】
一実施態様において、本明細書記載の組織(例えば3次元組織)及び器官を作製する方
法に従い使用される細胞及びECMは、同じ組成物の一部として沈着される。別の実施態様
において、本明細書記載の組織(例えば3次元組織)及び器官を作製する方法に従い使用
される細胞及びECMは、異なる組成物の一部として沈着される。具体的実施態様において
、本明細書記載の組織(例えば3次元組織)及び器官を作製する方法に従い使用されるECM
は、流動性ECMを含む。別の具体的実施態様において、本明細書記載の組織(例えば3次元
組織)及び器官を作製する方法に従い使用される細胞及びECMは、異なる組成物の一部と
して沈着され、例えばここでECMは、例えば細胞の沈着前に、細胞とは別に沈着されるか
、及び/又はここでECMは、細胞の沈着に先立ち脱水される。ECMが脱水される実施態様に
おいて、これは、後に所望の時点で、例えばECM及び細胞が沈着される表面上に細胞が沈
着される時点で、再水和されてよい。
【0006】
特定の実施態様において、本明細書記載のインビボにおいて3次元組織を形成する方法
において使用される細胞及びECMは、例えば、増殖因子(類)、架橋剤(類)、重合可能
なモノマー(類)、ポリマー、ヒドロゲル(類)などの1種以上の追加成分の沈着と同時
に、その前に、又はその後に、表面上に沈着される。特定の実施態様において、その上に
該細胞及びECMが沈着される表面は、本明細書記載の方法に従いバイオプリントされてい
る表面である。
【0007】
特定の実施態様において、本明細書記載の組織(例えば3次元組織)及び器官を作製す
る方法に従い使用される細胞及び流動性ECM(並びに追加成分)は、該表面上にプリント
され、例えば細胞及びECMはバイオプリントされる。特定の実施態様において、その上に
該細胞及びECMがバイオプリントされる表面は、本明細書記載の方法に従いバイオプリン
トされている表面である。
【0008】
特定の実施態様において、本明細書記載の組織(例えば3次元組織)及び器官を作製す
る方法に従い使用される細胞及び/又は流動性ECM(並びに追加成分)は、該表面上にプ
リントされず、例えば細胞及びECMは、バイオプリントされないが、むしろバイオプリン
ティングを含まない方法により該表面へ塗布される。特定の実施態様において、表面上に
バイオプリントされない細胞及び/又は流動性ECM(並びに追加成分)は、バイオプリン
トされた表面に塗布され、例えば細胞及び/又は流動性ECM(並びに追加成分)は、足場
、例えば合成マトリクスなどの合成足場へ、塗布される。具体的実施態様において、細胞
及び/又は流動性ECM(並びに追加成分)は、足場(例えば表面)の一部のみ、例えば片
側に塗布される。別の具体的実施態様において、細胞及び/又は流動性ECM(並びに追加
成分)は、足場の全ての側に塗布され、すなわち、足場全体は、それに塗布された細胞及
び/又は流動性ECMを有する。別の具体的実施態様において、足場は、ポリカプロラクト
ン(PCL)である。
【0009】
特定の実施態様において、その上に細胞、ECM、及び/又は追加成分が本明細書記載の
組織(例えば3次元組織)及び器官を作製する方法に従い沈着され得る表面は、人工表面
、すなわち、人為的に製造された表面を含む。別の具体的実施態様において、その上に細
胞、ECM、及び/又は追加成分が本明細書記載の組織(例えば3次元組織)及び器官を作製
する方法に従い沈着され得る表面は、対象(例えばヒト対象)から摘出された組織又は器
官(又はそれらの一部分)を含む。特定の実施態様において、対象から摘出された該組織
又は器官の表面は、脱細胞化され、例えば組織又は器官の表面の全て又は一部から細胞を
除去するように処理され得る。特定の実施態様において、その上に細胞、ECM、及び/又
は追加成分が本明細書記載の組織(例えば3次元組織)及び器官を作製する方法に従い沈
着され得る表面は、2次元である。特定の実施態様において、その上に細胞、ECM、及び/
又は追加成分が本明細書記載の組織(例えば3次元組織)及び器官を作製する方法に従い
沈着され得る表面は、3次元である。具体的実施態様において、その上に細胞、ECM、及び
/又は追加成分が本明細書記載の組織(例えば3次元組織)及び器官を作製する方法に従
い沈着され得る表面は、バイオプリントされた、例えば本明細書記載の方法に従いバイオ
プリントされた表面である。具体的実施態様において、表面は、ポリカプロラクトン(PCL
)である。
【0010】
別の態様において、本明細書記載の方法を使用し作製される組織及び器官、更にはその
ような組織及び器官の使用方法が、本明細書において提供される。
【0011】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い設計される組織(例えば3次元組
織)及び器官は、植皮及び外科的移植手法を含む、移植手法に使用される。
【0012】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い設計される組織(例えば3次元組
織)及び器官は、実験的手法、例えば、薬物又は化合物の該組織又は器官に対する作用を
評価するために使用される。
【0013】
別の態様において、細胞及びECM(例えば流動性ECM)を含有する組成物が、本明細書に
おいて提供され、ここで該組成物は、本明細書記載の方法における使用に適している。同
じく、1個以上の容器、該組成物、並びに本明細書記載の1以上の方法に従う該組成物の使
用に関する指示書を含むキットも、本明細書において提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
(3.1. 図面の簡単な説明)
【
図1】
図1は、様々な角度でバイオプリントされたポリカプロラクトン(PCL)を含有する足場、及び様々な細孔サイズの足場が作製されたそのような方法を描いている。
【0015】
【
図2】
図2は、その上に細胞外マトリクス(ECM)が、足場の両側に塗布され、引き続き脱水されたバイオプリントされた足場の複数の図を描いている。
【0016】
【
図3】
図3は、細胞増殖アッセイの結果を描いている。バイオプリントされたPCL及び脱水されたECMを含むハイブリッド足場上で培養された胎盤幹細胞は、8日培養期間にわたり増殖する。
【0017】
【
図4】
図4は、細胞生存能アッセイの結果を描いている。バイオプリントされたPCL及び脱水されたECMを含むハイブリッド足場上で培養された胎盤幹細胞は、8日培養期間にわたり、増殖して生存を維持する。
【0018】
【
図5】
図5は、PCL、ECM、及び胎盤幹細胞を含み、それらのそれぞれは、層(PCL及びECM/細胞の層)としてバイオプリントされた、損傷がない3次元ハイブリッド足場を描いている。
【0019】
【
図6】
図6は、胎盤幹細胞が、7日培養期間中、3次元バイオプリントされた足場内に分散することを明らかにしている。
【0020】
【
図7】
図7は、細胞生存度アッセイの結果を描いている。ECM及びPCLにバイオプリントされて3次元ハイブリッド足場を形成する胎盤幹細胞は、7日培養期間中、増殖して生存を維持する。
【0021】
【
図8】
図8は、ECM及びPCLと共にバイオプリントされて3次元ハイブリッド足場を形成する幹細胞が、7日培養期間中、ハイブリッド足場内のECM内に広がることを明らかにしている。
【0022】
【
図9】
図9は、細胞増殖アッセイの結果を描いている。PCL、ECM、及び胎盤幹細胞のバイオプリンティングにより作製された3次元ハイブリッド足場内で培養された胎盤幹細胞は、7日培養期間中増殖する。
【0023】
【
図10】
図10は、PCL、胎盤のECM、及びインスリン-産生細胞(β-TC-6細胞)を含有するバイオプリントされた足場を描いている。
【0024】
【
図11】
図11は、細胞増殖アッセイの結果を描いている。PCL、胎盤のECM、及びインスリン-産生細胞を含有するバイオプリントされた足場内のインスリン-産生細胞(β-TC-6細胞)の数は、14日培養期間にわたって、一定であり続けた。
【0025】
【
図12】
図12は、PCL、胎盤のECM、及びインスリン-産生細胞(β-TC-6細胞)を含有するバイオプリントされた足場からのインスリン生成レベルを描いている。
【0026】
【
図13】
図13は、グルコースチャレンジへの曝露後(A)又は対照条件下(B、C)の、PCL、胎盤のECM、及びインスリン-産生細胞(β-TC-6細胞)を含有するバイオプリントされた足場からのインスリン生成レベルを描いている。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(4. 詳細な説明)
一態様において、組織を形成するために、インビトロ又はエクスビボにおいて表面上に
細胞及び細胞外マトリクス(ECM)を沈着することを含む、組織(例えば3次元組織)又は器
官を作製する方法が、本明細書において提供される。本明細書記載の組織(例えば3次元
組織)及び器官を作製する方法に従い使用することができる細胞は、下記4.1.1項に説明
されている。本明細書記載の組織(例えば3次元組織)及び器官を作製する方法に従い設
計することができる組織及び器官は、下記4.1.2項に説明されている。本明細書記載の組
織(例えば3次元組織)及び器官を作製する方法に従い使用することができるECMは、下記
4.1.3項に説明されている。本明細書記載の組織(例えば3次元組織)及び器官を作製する
方法に従いその上に細胞、ECM、及び/又は追加成分が沈着され得る表面は、下記4.1.4項
に説明されている。
【0028】
具体的実施態様において、該組織又は器官を形成するために、インビトロ又はエクスビ
ボにおいて表面上に細胞及びECMを沈着することを含む、組織(例えば3次元組織)又は器
官を作製する方法が、本明細書において提供される。
【0029】
別の具体的実施態様において、該組織又は器官を形成するために、インビトロ又はエク
スビボにおいて表面上に細胞及びECMを沈着することを含む、組織(例えば3次元組織)又
は器官を作製する方法であって、ここで該ECMは、流動性ECMを含み、且つここで該細胞及
び該流動性ECMは、同じ組成物の一部として配合される方法が、本明細書において提供さ
れる。具体的実施態様において、該細胞及び該ECMは、バイオプリンターを用いて沈着さ
れる。別の具体的実施態様において、該細胞は、単独の細胞型を含む。別の具体的実施態
様において、該細胞は、2種以上の細胞型を含む。
【0030】
別の具体的実施態様において、該組織又は器官を形成するために、インビトロ又はエク
スビボにおいて表面上に細胞及びECMを沈着することを含む、組織(例えば3次元組織)又
は器官を作製する方法であって、ここで該ECMは、流動性ECMを含み、且つここで該細胞及
び該流動性ECMは、個別の組成物の一部として配合される方法が、本明細書において提供
される。具体的実施態様において、該細胞及び該ECMは、バイオプリンターを用いて沈着
される。別の具体的実施態様において、該細胞は、単独の細胞型を含む。別の具体的実施
態様において、該細胞は、2種以上の細胞型を含む。
【0031】
別の具体的実施態様において、該組織又は器官を形成するために、インビトロ又はエク
スビボにおいて表面上に細胞及びECMを沈着することを含む、組織(例えば3次元組織)又
は器官を作製する方法であって、ここで該ECMは、流動性ECMを含み、且つここで該細胞及
び該流動性ECMは、個別の組成物の一部として配合される方法が、本明細書において提供
される。具体的実施態様において、該細胞及び該ECMは、バイオプリンターを用いて沈着
される。別の具体的実施態様において、該細胞は、単独の細胞型を含む。別の具体的実施
態様において、該細胞は、2種以上の細胞型を含む。
【0032】
別の具体的実施態様において、該組織又は器官を形成するために、インビトロ又はエク
スビボにおいて表面上に細胞、ECM、及び1種以上の追加成分を沈着することを含む、組織
(例えば3次元組織)又は器官を作製する方法が、本明細書において提供される。
【0033】
別の具体的実施態様において、該組織又は器官を形成するために、インビトロ又はエク
スビボにおいて表面上に細胞、ECM、及び1種以上の追加成分を沈着することを含む、組織
(例えば3次元組織)又は器官を作製する方法が、本明細書において提供される。具体的
実施態様において、該細胞、該ECM、及び該1種以上の追加成分は、バイオプリンターを用
いて沈着される。別の具体的実施態様において、該細胞は、単独の細胞型を含む。別の具
体的実施態様において、該細胞は、2種以上の細胞型を含む。別の具体的実施態様におい
て、該細胞、該ECM、及び該1種以上の追加成分は、同じ組成物の一部として配合される。
別の具体的実施態様において、該細胞、該ECM、及び該1種以上の追加成分は、個別の組成
物の一部として配合される。別の具体的実施態様において、該1種以上の追加成分は、増
殖因子、重合可能なモノマー、架橋剤、ポリマー、又はヒドロゲルである。
【0034】
特定の実施態様において、その上に細胞、ECM、及び/又は追加成分が本明細書記載の
組織(例えば3次元組織)及び器官を作製する方法に従い沈着され得る表面は、人工表面
、すなわち、人為的に製造された表面を含む。別の具体的実施態様において、その上に細
胞、ECM、及び/又は追加成分が本明細書記載の組織(例えば3次元組織)及び器官を作製
する方法に従い沈着され得る表面は、対象(例えばヒト対象)から摘出された組織又は器
官(又はそれらの一部分)を含む。特定の実施態様において、対象から摘出された該組織
又は器官の表面は、脱細胞化され、例えば、組織又は器官の表面の全て又は一部から細胞
を除去するように処理され得る。特定の実施態様において、その上に細胞、ECM、及び/
又は追加成分が本明細書記載の組織(例えば3次元組織)及び器官を作製する方法に従い
沈着され得る表面は、2次元である。特定の実施態様において、その上に細胞、ECM、及び
/又は追加成分が本明細書記載の組織(例えば3次元組織)及び器官を作製する方法に従
い沈着され得る表面は、3次元である。具体的実施態様において、その上に細胞、ECM、及
び/又は追加成分が本明細書記載の組織(例えば3次元組織)及び器官を作製する方法に
従い沈着され得る表面は、バイオプリントされた、例えば、本明細書記載の方法に従いバ
イオプリントされた表面である。具体的実施態様において、表面は、合成材料、例えば合
成ポリマーを含む。別の具体的実施態様において、合成ポリマーは、PCLである。
【0035】
特定の実施態様において、細胞及びECM(例えば流動性ECM)は、同時に印刷されないが
、層で印刷される。具体的実施態様において、細胞の層が、表面上に印刷され、それにEC
M層の印刷が続く。別の具体的実施態様において、ECM層が、表面上に印刷され、それに細
胞層の印刷が続く。特定の実施態様において、ECMの複数層が表面上に印刷され、それに
細胞の複数層の印刷が続くことができ、その逆もまたあてはまる。同様に、細胞及び/又
はECMの印刷と同時、前に又は後に印刷される追加成分は、本明細書記載の方法に従い細
胞とECMの間に層化されることができる。
【0036】
特定の実施態様において、細胞及びECM(例えば流動性ECM)は、その上に印刷される表
面が、細胞及びECMの両方により全体が被覆されるように、印刷される。他の実施態様に
おいて、細胞及びECM(例えば流動性ECM)は、その上に印刷される表面が、細胞及びECM
の両方により部分的に被覆されるように、印刷される。
【0037】
特定の実施態様において、細胞及びECM(例えば流動性ECM)は、その上に印刷される表
面が、特定の所望の領域が細胞により被覆され;並びに、特定の所望の領域がECMにより
被覆されるように、印刷され、ここでそのような特定の領域は、重なってもよく、重なら
なくともよい。
【0038】
特定の実施態様において、細胞及びECM(例えば流動性ECM)は、3次元的に表面上に印
刷されてよい。本明細書において使用される「3次元プリンティング」とは、バイオプリ
ンターのプリントヘッドが、3次元表面の下側、上側、及び周りを移動するような、例え
ばプリンターヘッドが、特定された経路に沿って回転するように、機械的に制御されるプ
リンティングプロセスをいう。本明細書において使用される3次元プリンティングは、印
刷が、平坦/平面/2次元の表面上に組織を構築するよう開始することにより実行される
、当該技術分野において公知である標準バイオプリンティング方法とは対照的である。
【0039】
一実施態様において、ECMは、インビトロ又はエクスビボにおいて表面(例えば人工装
具又は骨)上に印刷され、且つ細胞は、標準の細胞培養方策を用い、ECMを含む該表面上
に、遅れて播種される。その後そのような表面は、対象へ移植される。別の実施態様にお
いて、ECMは、インビトロ又はエクスビボにおいて表面(例えば人工装具又は骨)上に印
刷され、且つECMを含む該表面は、対象へ移植され、ここで対象の細胞は、該表面に接着
されるか及び/又は表面上で成長される。
【0040】
具体的実施態様において、該組織を形成するために、インビトロ又はエクスビボにおい
て表面上に細胞及びECMを沈着することを含む、組織を作製する方法であって、ここで該
表面が、内面及び外面を有する骨を含み、並びにここで第一の細胞型を含む第一の細胞組
成物が、該内面上に印刷され、且つ第二の細胞型を含む第二の細胞組成物が、該外面上に
印刷される方法が、本明細書において提供される。本明細書において使用される骨の「内
面」とは、間質又は筋肉組織に対して位置することが意図された骨の面を表し、並びに骨
の「外面」とは、レシピエントの体の外部に曝されることが意図された骨の面を表す。こ
の実施態様に従い、この内面は、例えば、間質細胞、脂肪組織、間葉系幹細胞、筋細胞、
又はそれらの組合せにより、部分的に又は全体が被覆されてよく、並びにこの外面は、例
えば真皮細胞により、部分的に又は全体が被覆されてよい。具体的実施態様において、該
方法は、更に1種の追加成分(例えば架橋剤)の沈着を追加的に含む。別の具体的実施態
様において、該印刷は、3次元的に実施される。
【0041】
具体的実施態様において、肝臓を形成するために、インビトロ又はエクスビボにおいて
表面上に細胞及びECMを沈着することを含み、ここで該表面は、肝臓組織を含む、該肝臓
を作製する方法が、本明細書において提供される。具体的実施態様において、肝臓組織は
、作製される肝臓が移植されることが意図されている対象から入手される。別の具体的実
施態様において、肝臓組織は、作製される肝臓が移植されることが意図された対象からは
入手されない(例えば肝臓組織は、生存ドナー又は死体ドナーから入手される)。別の具
体的実施態様において、沈着される該細胞は、肝臓細胞(例えば肝細胞)である。具体的
実施態様において、該方法は、更に1種の追加成分(例えば架橋剤)の沈着を追加的に含
む。別の具体的実施態様において、該印刷は、3次元的に実行される。
【0042】
具体的実施態様において、皮膚を形成するために、インビトロ又はエクスビボにおいて
表面上に細胞及びECMを沈着することを含み、ここで該表面は、皮膚組織を含む、該皮膚
を作製する方法が、本明細書において提供される。具体的実施態様において、皮膚組織は
、作製される皮膚が移植されることが意図された対象から入手される。別の具体的実施態
様において、皮膚組織は、作製される皮膚が移植されることが意図された対象からは入手
されない(例えば皮膚組織は、生存ドナー又は死体ドナーから入手される)。別の具体的
実施態様において、沈着される該細胞は、皮膚細胞(例えば上皮細胞)である。具体的実
施態様において、該方法は、更に1種の追加成分(例えば架橋剤)の沈着を追加的に含む
。別の具体的実施態様において、該印刷は、3次元的に実行される。
【0043】
(4.1 バイオプリンティング)
本明細書において使用される「バイオプリンティング」は一般に、例えば、インクジェ
ットプリンティング技術等の標準的又は改変された印刷技術を使用する、生細胞に加え、
他の成分(例えば、流動性ECM;合成マトリクス)の表面上への沈着をいう。ヒドロゲル
と組み合わせた細胞を含む、表面上への細胞沈着及び細胞バイオプリンティングの基本的
方法は、Warrenらの米国特許第6,986,739号、Bolandらの米国特許第7,051,654号、Yooら
の米国特許出願2009/0208466及びXuらの米国特許出願2009/0208577に記載されており、こ
れら各文献の開示はそれらの全体が引用により本明細書中に組み込まれている。加えて、
本明細書で提供される組織及び器官の製造に適したバイオプリンターは、例えばEnvision
tec社(Gladbeck、ドイツ国)製3D-Bioplotter(登録商標)、及びOrganovo社(San Diego、CA
)製NovoGen MMXバイオプリンター(登録商標)等市販されている。
【0044】
本明細書記載の方法において使用されるバイオプリンターは、例えば、プリンタードラ
イバーソフトウェア及び/又はプリンターの物理的組成(makeup)の改変により、温度、湿
度、剪断力、印刷速度、及び/又は吐出頻度(firing frequency)を制御することが可能で
ある機構及び/又はソフトウェアを含むことができる。特定の実施態様において、バイオ
プリンターのソフトウェア及び/又はハードウェアは、好ましくは、印刷時、細胞温度を
約37℃に維持するように構築及び/又は設定され得る。
【0045】
特定の実施態様において、インクジェットプリンティング装置は、2次元又は3次元プリ
ンターを含んでよい。特定の実施態様において、バイオプリンターは、DCソレノイドイン
クジェットバルブ、例えばインクジェットバルブに連結された、印刷前に例えば、流動性
組成物中の細胞などの1種以上の細胞型、及び/又はECM(例えば流動性ECM)を含むため
の1個以上の貯留器を備える。バイオプリンターは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又
はそれよりも多い貯留器、例えば本明細書記載の組織及び器官の構築に使用される各細胞
型又は各ECMについて1個を有することができる。これらの細胞は、空気圧、機械圧による
か、又は他の手段により、貯留器から、インクジェットバルブへ送達されることができる
。典型的には、バイオプリンター、例えばバイオプリンター内のプリントヘッドは、1種
以上の細胞型、及び該ECMが、予め決められたパターンで沈着されるように、コンピュー
タ-制御されている。予め決定された該パターンは、それから細胞が誘導されるか又は入
手される器官又は組織内の該1以上の細胞型の天然の配置を再現又は反復するパターンで
あるか、あるいは該1種以上の細胞型の天然の配置とは異なるパターンであることができ
る。
【0046】
特定の実施態様において、本明細書に提供される方法において使用されるバイオプリン
ターは、例えばNiklasenらの米国特許第6,537,567号を参照し、感熱式バブルインクジェ
ットプリンターであるか、又は例えば周波数最大30kHz及び12~100ワットの範囲の電源を
使用する、圧電結晶発振式プリントヘッドであることができる。バイオプリンターのプリ
ントヘッドノズルは、一部の実施態様においては、各々独立して直径0.05~200μm、又は
直径0.5~100μm、又は直径10~70μm、又は直径20~60μmである。更なる実施態様にお
いて、ノズルは、各々独立して直径約40又は50μmである。同じ又は異なる直径の複数の
ノズルを使用することができる。一部の実施態様においては、ノズルは、円形開孔部を有
し;他の実施態様においては、本発明の精神から逸脱しない、例えば楕円形、正方形、長
方形などの、その他の好適な形状が使用される。
【0047】
特定の実施態様において、バイオプリントされるべき組織又は器官の解剖学的画像は、
ソフトウェア、例えばコンピュータ-支援設計(CAD)ソフトウェアプログラムを使用し、構
築されることができる。そのような実施態様に従い、印刷されるべき組織又は器官の構造
の代表である3次元表面上の3次元プリンティングを可能にするプログラムが作製されるこ
とができる。例えば、骨を印刷することが望ましい場合、骨の解剖学的画像が構築され、
且つバイオプリンターのプリンターヘッドが、印刷時に3次元骨表面の周りを回転するよ
うに指示するプログラムが作製されてよい。
【0048】
特定の実施態様において、本明細書に提供されるバイオプリンティングの方法は、細胞
(例えば、単独の細胞を含有する組成物又は複数の細胞を含有する組成物)及び流動性細
胞外マトリクス(ECM)の個別の液滴の、表面上への送達/沈着を含む。
【0049】
特定の実施態様において、本明細書に提供されるバイオプリンティングの方法は、単独
の細胞型及び流動性ECMの表面上への沈着を含む。そのような方法に従い使用することが
できる細胞型の例は、下記4.1.1項に提供される。流動性ECMを含むECMは、下記4.1.3項に
説明される。
【0050】
他の実施態様において、本明細書に提供されるバイオプリンティングの方法は、複数の
(例えば、2、3、4、5種又はそれよりも多い)細胞型及び流動性ECMの、表面上への沈着
を含む。具体的実施態様において、複数の細胞型は、同じ組成物の一部として沈着され、
すなわち、細胞の給源は、複数の細胞型を含む単独の組成物である。別の具体的実施態様
において、複数の細胞型は、異なる組成物の一部として沈着され、すなわち、細胞の給源
は、複数の細胞型を含む個別の組成物である。別の具体的実施態様において、複数の細胞
型の一部分は、一つの組成物(例えば、2種以上の細胞型が単独の組成物中にある)の一
部として沈着され、並びに複数の型の別の一部分は、異なる組成物(例えば、1種以上の
細胞型が単独の組成物中にある)として沈着される。そのような方法に従い使用すること
ができる細胞型の例は、下記4.1.2項に提示される。
【0051】
具体的実施態様において、沈着されるべき細胞及び流動性ECMは、同じ組成物の一部と
して一緒に(例えば、同時に)表面上に沈着される。別の具体的実施態様において、沈着
されるべき細胞及び流動性ECMは、異なる組成物の一部として一緒に表面上に沈着される
。別の具体的実施態様において、沈着されるべき細胞及び流動性ECMは、個別に(例えば
異なる時点で)表面上に沈着される。
【0052】
特定の実施態様において、細胞及び流動性ECMは、1種以上の追加成分と共に沈着される
。一実施態様において、1種以上の追加成分は、これらの細胞と同じ組成物中に配合され
る。別の実施態様において、1種以上の追加成分は、ECMと同じ組成物中に配合される。別
の実施態様において、1種以上の追加成分は、細胞及びECMと同じ組成物中に配合される(
すなわち、単独の組成物が、細胞、流動性ECM、及び1種以上の追加成分を含む)。別の実
施態様において、1種以上の追加成分は、細胞及び/又はECMを含有する組成物とは個別で
ある組成物中に配合され、且つ細胞及び/又はECMの表面上への沈着と同時に、その前に
、又はその後に沈着される。具体的実施態様において、1種以上の追加成分は、細胞(類
)の生存、分化、増殖などを促進する。別の具体的実施態様において、1種以上の追加成
分は、架橋剤(4.1.3.2項参照)を含む。別の具体的実施態様において、1種以上の追加成
分は、ヒドロゲルを含む。別の具体的実施態様において、1種以上の追加成分は、合成ポ
リマーを含む。
【0053】
当業者は、細胞及び流動性ECM、並びに本明細書記載の方法に従い使用される任意の追
加成分は、形成される特定の組織又は器官に応じ、プリンターの個別のノズルから、又は
共通の組成物中でプリンターの同じノズルを通して、印刷され得ることを認識するであろ
う。当業者により、本プリンティングは、同時に若しくは連続して、又はそれらの任意の
組合せであることができ、且つ一部の成分(例えば、細胞、流動性ECM、又は架橋剤)は
、第一のパターンの形状で印刷されることができ、並びに一部の成分は、第二のパターン
の形状で印刷されることができるなどのことも、認識されるであろう。印刷の特定の組合
せ及び様式は、印刷される特定の組織又は器官によって決まるであろう。
【0054】
特定の実施態様において、細胞、ECM、及び/又は任意の他の材料(例えば、合成マト
リクス、例えばPCL)は、所望の結果を得るために、特定されたパターンでバイオプリン
トされ得る。例えばバイオプリントされる材料(例えば細胞、ECM、マトリクス、及び本
明細書記載の他の成分)は、特定の細孔サイズを有する3次元構造など、特定の望ましい
パターンを作製するために、変動する角度で層状に、バイオプリントされるか、そうでな
ければ沈着される。具体的実施態様において、バイオプリントされる材料(例えば、細胞
、ECM、マトリクス、及び本明細書記載の他の成分)は、箱様に見える所望のサイズの細
孔を伴うバイオプリントされた構造を作製するために、十字交差様式で、印刷されるか、
そうでなければ沈着される。別の具体的実施態様において、バイオプリントされる材料(
例えば、細胞、ECM、マトリクス、及び本明細書記載の他の成分)は、三角形又は菱形様
に見える所望のサイズの細孔を作製するために、角度をつけて、印刷されるか、そうでな
ければ沈着される。例えば、バイオプリントされる材料(例えば、細胞、ECM、マトリク
ス、及び本明細書記載の他の成分)は、所望のパターンを作製するために、特定の角度で
、例えば角度30°、角度45°、角度60°で、印刷されるか、そうでなければ沈着される。
そのような方法に従い、所望の品質を有する構造、例えば、細胞成長及び増殖を助長する
能力を有する構造が、作製され得る。下記実施例1を参照されたい。具体的実施態様にお
いて、マトリクス、例えば合成マトリクスは、該バイオプリントされたマトリクス上の細
胞の成長及び増殖の支援に貢献する特定のパターンで、バイオプリントされる。具体的実
施態様において、合成マトリクスは、PCLである。
【0055】
(4.1.1 細胞)
真核細胞を含む、当該技術分野において公知の任意の細胞の型を、本明細書記載の方法
に従い使用することができる。
【0056】
本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、同系(すなわち、組織移植拒絶反応を最
小化するために、レシピエント対象の細胞に関して遺伝的に同一であるか又は近い)、異
系(すなわち、レシピエント対象と同じ種の遺伝的に同一でないメンバー)、又は異種(
すなわち、レシピエント対象とは異なる種のメンバー由来)であることができる。同系細
胞は、自家(すなわち、レシピエント対象由来)及び同質(isogeneic)(すなわち、遺伝
的に同一であるが異なる対象に由来、例えば同じ双子に由来)である細胞を含む。細胞は
、例えば、ドナー(生存又は死体のいずれか)から入手するか、又は樹立された細胞株若
しくは細胞系統から誘導することができる。例えば、細胞は、当該技術分野において公知
の標準の生検技術を使用し、ドナー(例えば、可能性のあるレシピエント)から収集する
ことができる。
【0057】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、流動性の生理
的に許容し得る組成物、例えば、水、緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、
など)、液体培地(例えば、0.9N食塩水、クレブス液、改変クレブス液、イーグル培地、
改変イーグル培地(MEM)、ダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)、ハンクス平衡塩溶液な
ど)などの中に含まれる。
【0058】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、1種以上の当
該技術分野において公知のプロテアーゼ、例えば、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、トリプ
シン、LIBERASEなどを使用し、組織又は器官から単離されている初代細胞を含んでよい。
器官組織は、組織をプロテアーゼで処理する前、その間、又はその後、例えば、さいの目
に切る、浸解する(macerating)、ろ過する等により物理的に分散できる。細胞は、例えば
、均一な又は実質的に均一な細胞集団を製造するため、特別な細胞型を選ぶため等に、本
明細書記載の方法で細胞を使用する前に、標準的な当分野で公知の細胞培養技術を使用し
て培養できる。
【0059】
一実施態様において、本明細書記載の方法において使用される細胞型(類)は、幹細胞
を含む。本明細書記載の方法に従い使用することができる幹細胞の非限定的例は、以下を
含む:胚性幹細胞、胚性生殖細胞、人工多能性幹細胞、間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹
細胞(BM-MSC)、組織プラスチック接着性胎盤幹細胞(PDAC)、臍帯幹細胞、羊水幹細胞、羊
膜由来接着性細胞(AMDAC)、骨形成性の胎盤接着性細胞(OPAC)、脂肪幹細胞、角膜上皮幹
細胞、歯髄幹細胞、筋芽細胞、内皮前駆細胞、神経幹細胞、脱落歯由来幹細胞、毛嚢幹細
胞、真皮幹細胞、単為生殖由来幹細胞、初期化された幹細胞、羊膜由来接着性細胞、又は
サイドポピュレーション細胞。
【0060】
具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、胎盤幹細胞(例えば、米国特許第7,
468,276号及び米国特許第8,057,788号に記載された胎盤幹細胞)の使用を含む。別の具体
的実施態様において、該胎盤幹細胞は、PDAC(登録商標)である。一実施態様において、該
PDACは、CD34-、CD10+、CD105+、及びCD200+である。別の実施態様において、該PDACは、
CD34-、CD10+、CD105+、及びCD200+であり、並びに追加的にCD45-、CD80-、CD86-、及び
/又はCD90+である。
【0061】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、AMDAC(例えば、国際公開公報
第WO10/059828号に記載のAMDAC)の使用を含む。一実施態様において、該AMDACは、Oct4-
である。別の実施態様において、該AMDACは、CD49f+である。別の実施態様において、該A
MDACは、Oct4-及びCD49f+である。
【0062】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、PDAC及びAMDACの使用を含む。
【0063】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、BM-MSCの使用を含む。
【0064】
別の実施態様において、本明細書記載の方法において使用される細胞型(類)は、分化
した細胞を含む。別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される分
化した細胞(類)は、内皮細胞、上皮細胞、真皮細胞、内胚葉細胞、中胚葉細胞、線維芽
細胞、骨細胞、軟骨細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、肝細胞、膵臓細胞、及び/
又は間質細胞を含む。別の具体的実施態様において、細胞は、インスリン-産生細胞、例
えば、膵臓細胞(例えば島細胞)、又はインスリン-産生細胞株、例えば、β-TC-6細胞で
ある。
【0065】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される分化した細胞(類
)は、唾液腺粘液性細胞、唾液腺漿液性細胞、フォンエブネル腺細胞、乳腺細胞、涙腺細
胞、耳道腺細胞、エクリン汗腺暗調細胞、エクリン汗腺明調細胞、アポクリン汗腺細胞、
モル腺細胞、脂腺細胞、ボウマン腺細胞、ブルンネル腺細胞、精嚢細胞、前立腺細胞、尿
道球腺細胞、バルトリン腺細胞、リトレ腺細胞、子宮内膜細胞、単離された杯細胞、胃表
層粘液細胞、胃腺酵素原細胞、胃腺酸分泌細胞、膵腺房細胞、パネート細胞、II型肺胞上
皮細胞、及び/又はクララ細胞を含む。
【0066】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される分化した細胞(類
)は、成長ホルモン産生細胞、乳腺刺激ホルモン産生細胞、甲状腺刺激ホルモン産生細胞
、性腺刺激ホルモン産生細胞、副腎皮質刺激ホルモン産生細胞、下垂体中葉由来の細胞、
巨大細胞神経分泌細胞、腸管細胞、気道細胞、甲状腺上皮細胞、傍濾胞細胞、副甲状腺細
胞、副甲状腺主細胞、好酸性細胞、副腎腺細胞、クロム親和性細胞、ライディッヒ細胞、
内卵胞膜細胞、黄体細胞、顆粒膜黄体細胞、莢膜黄体様細胞、傍糸球体細胞、緻密斑細胞
、極周囲細胞、及び/又はメサンギウム細胞を含む。
【0067】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される分化した細胞(類
)は、血管及びリンパ管内皮有孔細胞、血管及びリンパ管内皮連続型細胞、血管及びリン
パ管内皮脾細胞、滑膜細胞、漿膜細胞(腹膜の、胸膜の、及び心膜腔の内壁)、扁平上皮
細胞、円柱細胞、暗調細胞、前庭膜細胞(耳の内リンパ腔内壁)、血管条基底細胞、血管
条周辺細胞(耳の内リンパ腔内壁)、クラウディウス細胞、ベッチェル細胞、脈絡叢細胞
、軟膜クモ膜扁平上皮細胞、色素毛様体上皮細胞、非色素毛様体上皮細胞、角膜内皮細胞
、栓細胞、気道線毛細胞、卵管線毛細胞、子宮内膜線毛細胞、精巣網線毛細胞、精巣輸出
管線毛細胞、及び/又は線毛性上衣細胞を含む。
【0068】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される分化した細胞(類
)は、表皮角化細胞、表皮基底細胞、手指爪及び足指爪の角化細胞、爪床基底細胞、毛幹
の毛髄質細胞、毛幹の毛皮質細胞、毛幹の毛小皮細胞、毛根の毛小皮鞘細胞、毛根ハック
スレー層の鞘細胞、毛根ヘンレ層の鞘細胞、外毛根鞘細胞、毛母細胞、重層扁平上皮の表
面上皮細胞、上皮基底細胞、及び/又は泌尿器上皮細胞を含む。
【0069】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される分化した細胞(類
)は、耳のコルチ器官の内有毛細胞、耳のコルチ器官の外有毛細胞、コルチ器官の内柱細
胞、コルチ器官の外柱細胞、コルチ器官の内指骨細胞、コルチ器官の外指骨細胞、コルチ
器官の境界細胞、コルチ器官のヘンゼン細胞、前庭器支持細胞、味蕾支持細胞、嗅上皮支
持細胞、シュワン細胞、サテライト細胞、腸内グリア細胞、嗅上皮基底細胞、冷感受性一
次感覚ニューロン、熱感受性一次感覚ニューロン、表皮のメルケル細胞、嗅覚受容体神経
、痛み感受性一次感覚ニューロン、光受容体桿体細胞、光受容体青色感受性錐体細胞、光
受容体緑色感受性錐体細胞、光受容体赤色感受性錐体細胞、固有受容性一次感覚ニューロ
ン、触覚感受性一次感覚ニューロン、I型頸動脈小体細胞、II型頸動脈小体細胞(血液pH
センサ)、内耳前庭器官のI型有毛細胞(加速度及び重力)、内耳前庭器官のII型有毛細
胞、I型味蕾細胞、コリン作動性神経細胞、アドレナリン作動性神経細胞、及び/又はペ
プチド作動性神経細胞を含む。
【0070】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される分化した細胞(類
)は、星状細胞、ニューロン、希突起膠細胞、紡錘形ニューロン、前水晶体上皮細胞、ク
リスタリン含有水晶体線維細胞、肝細胞、脂肪細胞、白色脂肪細胞、褐色脂肪細胞、肝臓
脂肪細胞、腎臓糸球体壁細胞、腎臓糸球体有足細胞、腎臓近位尿細管刷子縁細胞、ヘンレ
係蹄の細い部分の細胞、腎臓遠位尿細管細胞、腎臓集合管細胞、I型肺胞上皮細胞、膵管
細胞、非線条導管細胞、導管細胞、腸管刷子縁細胞、外分泌腺線条導管細胞、胆嚢上皮細
胞、精巣輸出管非線毛細胞、精巣上体主細胞、及び/又は精巣上体基底細胞を含む。
【0071】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される分化した細胞(類
)は、エナメル芽細胞上皮細胞、半月面上皮細胞、コルチ器官歯間上皮細胞、疎性結合組
織線維芽細胞、角膜実質細胞、腱線維芽細胞、骨髄網状組織線維芽細胞、非上皮性線維芽
細胞、周細胞、髄核細胞、セメント芽細胞/セメント細胞、象牙芽細胞、オドントサイト(
odontocyte)、ヒアリン軟骨細胞、線維軟骨細胞、弾性軟骨細胞、骨芽細胞、骨細胞、破
骨細胞、骨前駆細胞、硝子体細胞、星細胞(耳)、肝星細胞(伊東細胞)、膵星細胞、赤
色骨格筋細胞、白色骨格筋細胞、中間体骨格筋細胞、筋紡錘の核袋細胞、筋紡錘の核鎖細
胞、サテライト細胞、固有心筋細胞、結節性心筋細胞、プルキンエ線維細胞、平滑筋細胞
、虹彩の筋上皮細胞、及び/又は外分泌腺の筋上皮細胞を含む。
【0072】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される分化した細胞(類
)は、網状赤血球、巨核球、単球、結合組織マクロファージ、表皮ランゲルハンス細胞、
樹状細胞、小膠細胞、好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、ヘルパーT細胞、サプレ
ッサーT細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞
、メラニン形成細胞、網膜色素上皮細胞、卵原細胞/卵母細胞、精子細胞、精母細胞、精
原細胞、精子、卵胞細胞、セルトリ細胞、胸腺上皮細胞、及び/又は間質性腎臓細胞を含
む。
【0073】
本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、組成物中に配合されることができる。特
定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、単独の細胞型のみ
を含む組成物中に配合され、すなわち、この組成物中の細胞の集団は、均一である。他の
実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、2種以上の細胞型を含
む組成物中に配合され、すなわち、この組成物中の細胞の集団は、不均一である。
【0074】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、追加的に流動
性ECMを含有する組成物中に配合される(4.1.3項参照)。あるいは、該流動性ECMは、本
明細書記載の方法に従う個別の組成物の一部として、該細胞の沈着と同時に、その前に、
又はその後に沈着されてよい。特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用
される細胞は、追加的に1種以上の合成モノマー又はポリマーを含有する組成物中に配合
される。あるいは、該合成モノマー又はポリマーは、本明細書記載の方法に従う個別の組
成物の一部として、該細胞の沈着と同時に、その前に、又はその後に沈着されてよい。特
定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、流動性ECM及び1種
以上の合成モノマー又はポリマーを追加的に含有する組成物中に配合される。特定の実施
態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、架橋剤を追加的に含有する
組成物中に配合される。あるいは、該架橋剤は、本明細書記載の方法に従う個別の組成物
の一部として、該細胞の沈着と同時に、その前に、又はその後に沈着されてよい。
【0075】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、1種以上の追
加成分、例えば細胞(類)の生存、分化、増殖などを促進する成分を追加的に含有する組
成物中に配合される。そのような成分は、栄養素、塩類、糖類、生存因子、及び増殖因子
を含むことができるが、これらに限定されるものではない。本明細書記載の方法に従い使
用することができる増殖因子の例は、インスリン-様成長因子(例えばIGF-1)、トランス
フォーミング増殖因子-β(TGF-β)、骨形態形成タンパク質、線維芽細胞増殖因子、血小
板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、結合組織増殖因子(CTGF)、塩基性線維
芽細胞増殖因子(bFGF)、上皮細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子(FGF)(1、2及び3)、オ
ステオポンチン、骨形態形成タンパク質-2、ソマトトロピンなどの成長ホルモン、細胞誘
引物質及び付着物質など、並びにそれらの混合物を含むが、これらに限定されるものでは
ない。あるいは、細胞(類)の生存、分化、増殖などを促進する1種以上の該追加成分は
、本明細書記載の方法に従う個別の組成物の一部として、該細胞の沈着と同時に、その前
に、又はその後に沈着されてよい。
【0076】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、重合可能なモ
ノマー(類)を追加的に含有する組成物中に配合される。あるいは、該重合可能なモノマ
ーは、本明細書記載の方法に従う個別の組成物の一部として、該細胞の沈着と同時に、そ
の前に、又はその後に沈着されてよい。そのような実施態様において、例えば、重合触媒
が、バイオプリンティングの直前に添加されてよく、その結果一旦細胞が印刷されると、
このモノマーは重合し、細胞を捕捉するか及び/又は物理的に支持するゲルを形成する。
例えば、細胞を含有する組成物は、アクリルアミドモノマーを含むことができ、その際、
TEMED及び過硫酸アンモニウム、又はリボフラビンが、バイオプリンティングの直前に、
この組成物へ添加される。組成物中の細胞の表面上への沈着時に、アクリルアミドは重合
し、細胞を隔離し支持する。
【0077】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、接着剤を追加
的に含有する組成物中に配合される。具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従
い使用される細胞は、非限定的に、シアノアクリレートエステル、フィブリンシーラント
、及び/又はゼラチン-レゾルシノール-ホルムアルデヒド接着剤を含む、軟部組織付着剤
を追加的に含有する組成物中に配合される。別の具体的実施態様において、本明細書記載
の方法に従い使用される細胞は、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)リガンド、
細胞外タンパク質、及び/又は細胞外タンパク質類縁体を追加的に含有する組成物中に配
合される。
【0078】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、細胞が単独の
細胞として表面上に沈着され得る(すなわち、細胞は、一度に1個の細胞が沈着される)
ように、組成物中に配合される。
【0079】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、細胞が複数の
細胞を含む凝集体として、表面上に沈着され得るように、組成物中に配合される。そのよ
うな凝集体は、単独の型の細胞を含むことができるか、又は複数の細胞型、例えば、2、3
、4、5種又はそれよりも多い細胞型を含むことができる。
【0080】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、細胞が組成物
の一部として組織を形成するように、組成物中に配合され、ここで該組織は、本明細書記
載の方法を使用し、表面上に沈着され得る。そのような組織は、単独の型の細胞を含むこ
とができるか、又は複数の細胞型、例えば、2、3、4、5種又はそれよりも多い細胞型を含
むことができる。
【0081】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される細胞は、小さい容積、
例えば、0.5~500ピコリットル/液滴を有する細胞及び/又は組成物の個別の液滴として
表面上に沈着される。様々な実施態様において、細胞又は細胞を含む組成物の容積は、約
0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、20、35、40、45、50、55、60、65、
70、75、80、85、90、95若しくは100ピコリットル、又は約1~90ピコリットル、約5~85
ピコリットル、約10~75ピコリットル、約15~70ピコリットル、約20~65ピコリットル、
若しくは約25~約60ピコリットルである。
【0082】
(4.1.2 組織及び器官)
本明細書に提供される1以上の方法を用い、設計され/作製された組織及び器官が、本
明細書において提供される。
【0083】
当該技術分野において公知のいずれかの型の組織を、本明細書記載の方法を使用し作製
することができる。特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製される組織
は、単独の細胞型を含む。他の実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製される
組織は、複数の細胞型を含む。特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製
される組織は、2種以上の型の組織を含む。
【0084】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法は、表面上の細胞の沈着を含み、ここで
該表面は、対象由来の組織を含み、例えば、組織は、ドナー、レシピエント対象、死体、
又は別の給源に由来している。特定の実施態様において、本明細書記載の方法は、表面上
の細胞の沈着を含み、ここで該表面は、対象に由来しない組織を含み、例えば組織は合成
されている。
【0085】
具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製される組織は、結合組織であ
る。
【0086】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製される組織は、筋肉組織
である。本明細書記載の方法に従い作製された筋肉組織は、内臓筋(平滑筋)組織、骨格
筋組織、又は心筋組織を含むことができる。
【0087】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製される組織は、神経組織
である。本明細書記載の方法に従い作製された神経組織は、中枢神経系組織(例えば、脳
組織又は脊髄組織)又は末梢神経系組織(例えば、脳神経及び脊髄神経)を含むことがで
きる。
【0088】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製される組織は、内皮を含
む、上皮組織である。
【0089】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製される組織は、器官を設計す
るために使用することができる。特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い作
製される組織は、器官の一部分を設計するために使用することができる。
【0090】
本明細書記載の方法に従い設計される組織及び器官は、既知の哺乳動物の器官系のいず
れか、すなわち、消化器系、循環器系、内分泌系、排泄系、免疫系、外皮系、筋肉系、神
経系、生殖器系、呼吸器系、及び/又は骨格系に関連することができる。本明細書記載の
方法に従い作製又は形成され得る器官の例は、肺、肝臓、心臓、脳、腎臓、皮膚、骨、胃
、膵臓、膀胱、胆嚢、小腸、大腸、前立腺、睾丸、卵巣、脊髄、咽頭、喉頭、気管、気管
支、横隔膜、尿管、尿道、食道、結腸、胸腺、及び脾臓を含むが、これらに限定されるも
のではない。具体的実施態様において、膵臓は、本明細書記載の方法に従い作製又は形成
される。
【0091】
具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、骨を設計するために使用される。別
の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、皮膚を設計するために使用される。
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、肺組織、又は肺若しくはそれらの
一部を設計するために使用される。別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は
、肝臓組織、又は肝臓若しくはそれらの一部を設計するために使用される。別の具体的実
施態様において、本明細書記載の方法は、神経組織、又は神経若しくはそれらの一部を設
計するために使用される。
【0092】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製される組織又は器官は、該組
織又は器官の機能に有益な成分を追加的に含むことができる。特定の実施態様において、
本明細書記載の方法に従い作製される組織又は器官は、人工神経導管(nerve guidance co
nduit)、すなわち、軸索再生を導く人工的手段を追加的に含むことができる。具体的実施
態様において、人工神経導管は、ポリ無水物、例えばポリ(o-カルボキシフェノキシ)-p-
キシレン)又はポリ(無水ラクチド)で作製される。特定の実施態様において、人工神経導
管は、組織又は器官の印刷と同時に沈着される、すなわち、人工神経導管は、組織又は器
官に沿って印刷されることができる。他の実施態様において、人工神経導管は、該組織又
は器官の印刷前に調製され、且つ組織又は器官が印刷される際に、それらへ配置(例えば
、手作業で配置)されてよい。他の実施態様において、人工神経導管は、該組織又は器官
の印刷前に調製され、且つ組織又は器官が印刷された後に、それらへ配置(例えば、手作
業で配置)されてよい。
【0093】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製される組織又は器官は、血管
、例えば、対象(例えば、ドナー、レシピエント対象、若しくは死体)から得られた血管
又は本明細書記載の方法を使用し設計された血管を、追加的に含んでよい。
【0094】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製される組織及び器官は、その
天然の状態で、例えばヒト体内に現れる組織又は器官の形状である。例えば、本明細書記
載の方法に従い作製された肺は、ヒト体内に現れるヒト肺に類似してよい。
【0095】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製される組織及び器官は、その
天然の状態で現れる組織又は器官の形状ではなくともよいが、その器官が機能するのと同
じ様式又は類似の様式で機能する。例えば、本明細書記載の方法に従い作製される肺は、
ヒト体内に現れるヒト肺に類似しなくともよいが、ヒト肺の機能の一部又は全てを保持す
ることができる。そのような実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製される組
織及び器官は、球形、円柱形、棒状、又は立方形状(すなわち、立方体)を含むが、これ
らに限定されるものではない、様々な形状であることができる。
【0096】
(4.1.3 細胞外マトリクス(ECM))
本明細書記載の方法は、表面上に細胞(例えば、単独の細胞を含有する組成物及び/又
は複数の細胞を含有する組成物)及び流動性ECMを含む細胞外マトリクス(ECM)の沈着を含
む。ECMは、任意の公知のECM給源から誘導されることができ、且つ当該技術分野において
公知の任意の方法を用い流動性とされることができる。具体的実施態様において、ECMは
、流動性ECMを含む。ECMは、例えば、下記4.1.3.1項に記載の方法を用い、流動性とされ
ることができる。特定の実施態様において、ECMは、例えば、下記4.1.3.2項に記載の方法
を用い、架橋されることができる。
【0097】
本明細書記載の方法に従い使用されるECM(例えば流動性ECM)は、本明細書に提供され
る方法に従い使用するための組成物の一部として配合されることができる。
【0098】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用されるECMは、哺乳動物ECM、
植物ECM、軟体動物ECM、及び/又は魚類ECMを含む。
【0099】
具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用されるECMは、哺乳動物ECMを
含む。別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用されるECMは、哺乳
動物ECMを含み、ここで該哺乳動物ECMは、胎盤(例えばヒト胎盤)から誘導される。別の
具体的実施態様において、該胎盤由来のECMは、テロペプチドコラーゲンを含む。
【0100】
別の具体的実施態様において、該胎盤由来のECMは、化学修飾されていないか又はプロ
テアーゼと接触されていない、塩基処理された及び/又は界面活性剤処理されたI型テロ
ペプチド胎盤コラーゲンを含み、ここで該ECMは、フィブロネクチン5重量%未満又はラミ
ニン5重量%未満;I型コラーゲン25重量%~92重量%;及び、III型コラーゲン2重量%~
50重量%又はIV型コラーゲン2重量%~50重量%を含む。
【0101】
別の具体的実施態様において、該胎盤由来のECMは、化学修飾されていないか又はプロ
テアーゼと接触されていない、塩基処理され、界面活性剤処理されたI型テロペプチド胎
盤コラーゲンを含み、ここで該ECMは、フィブロネクチン1重量%未満又はラミニン1重量
%未満;I型コラーゲン74重量%~92重量%;及び、III型コラーゲン4重量%~6重量%又
はIV型コラーゲン2重量%~15重量%を含む。
【0102】
本明細書記載の方法に従い使用される胎盤ECM、例えば、胎盤テロペプチドコラーゲン
を含むECMは、当該技術分野において公知の方法を使用し調製されるか、又は下記のよう
に調製されてよい。第一に、胎盤組織(胎盤全体又はそれらの一部のいずれか)は、例え
ば無菌的に、例えば帝王切開又は正常分娩の実施直後の収集など、常法により得られる。
胎盤組織は、可溶性若しくは不溶性のいずれか又は両方の羊膜、絨毛膜、臍帯を含む胎盤
の任意の部分に由来、あるいは全胎盤に由来することができる。特定の実施態様において
、コラーゲン組成物は、臍帯を伴わないヒト胎盤全体から調製される。胎盤は、室温で、
又は温度約2℃~8℃で、更なる処理時まで貯蔵される。胎盤は、好ましくは放血され、す
なわち、娩出後残存する胎盤及び臍帯血が完全に排出される。特定の実施態様において、
妊婦は、例えば、HIV、HBV、HCV、HTLV、梅毒、CMV、及び胎盤組織に夾雑することがわか
っている他のウイルス病原体について、出産前にスクリーニングされる。
【0103】
胎盤組織は、ECMの製造前に脱細胞化されてよい。胎盤組織は、米国特許出願公開第200
40048796号及び第20030187515号に詳述されているような、当業者に公知の任意の方法に
従い脱細胞化されることができ、これらの出願の内容はそれらの全体が引用により本明細
書中に組み込まれている。
【0104】
胎盤組織は、浸透圧ショックに供されてよい。浸透圧ショックは、任意の透明化工程に
追加され得るか、又は当業者の判断に従い単独の透明化工程であることができる。浸透圧
ショックは、当業者に公知の任意の浸透圧ショック条件で実行され得る。そのような条件
は、高浸透ポテンシャル溶液中、又は低浸透ポテンシャル溶液中、又は高及び低の交互の
浸透ポテンシャル溶液中で、組織をインキュベーションすることを含む。高浸透ポテンシ
ャル溶液は、NaCl(例えば、0.2~1.0M又は0.2~2.0M)、KCl(例えば、0.2~1.0又は0.2
~2.0M)、硫酸アンモニウム、単糖、二糖(例えば20%ショ糖)、親水性ポリマー(例え
ばポリエチレングリコール)、グリセロールなどの1種以上を含有する溶液など、当業者
に公知の任意の高浸透ポテンシャル溶液であることができる。特定の実施態様において、
高浸透ポテンシャル溶液は、塩化ナトリウム溶液、例えば少なくとも0.25M、0.5M、0.75M
、11.0M、1.25M、1.5M、1.75M、2M、又は2.5M NaClである。一部の実施態様において、塩
化ナトリウム溶液は、約0.25~5M、約0.5~4M、約0.75~3M、又は約1.0~2.0M NaClであ
る。低浸透ポテンシャル溶液は、水、例えば当業者に公知の任意の方法に従い脱イオンさ
れた水など、当業者に公知の任意の低浸透ポテンシャル溶液であることができる。一部の
実施態様において、浸透圧ショック溶液は、50mM NaCl未満の浸透圧ショックポテンシャ
ルを有する水を含む。特定の実施態様において、浸透圧ショックは、塩化ナトリウム溶液
と、それに続く水溶液である。特定の実施態様において、1又は2種のNaCl溶液処理に、水
洗浄が続く。
【0105】
この浸透圧ショックから生じる組成物は、次に、特定の実施態様において、界面活性剤
と共にインキュベーションされてよい。界面活性剤は、細胞膜又はオルガネラ膜を破壊す
ることが可能である、当業者に公知の任意の界面活性剤、例えば、イオン性界面活性剤、
非イオン性界面活性剤、デオキシコール酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、TritonX100、TW
EENなどであることができる。界面活性剤処理は、約0℃~約30℃、約5℃~約25℃、約5℃
~約20℃、約5℃~約15℃、約0℃、約5℃、約10℃、約15℃、約20℃、約25℃、又は30℃
で実行することができる。界面活性剤処理は、例えば、約1~24時間、約2~20時間、約5
~15時間、約8~12時間、又は約2~5時間実行することができる。
【0106】
この界面活性剤処理から生じる組成物は、次に、特定の実施態様において、塩基性条件
下でインキュベーションされてよい。塩基性処理のための特定の塩基は、例えば濃度0.2
~1.0Mの、生体適合性塩基、揮発性塩基、又は任意の有機若しくは無機塩基を含む。特定
の実施態様において、塩基は、NH4OH、KOH及びNaOH、例えば、0.1M NaOH、0.25M NaOH、0
.5M NaOH、又は1M NaOHからなる群から選択される。この塩基処理は、例えば、0℃~30℃
、5℃~25℃、5℃~20℃、5℃~15℃、約0℃、約5℃、約10℃、約15℃、約20℃、約25℃
、又は約30℃で、例えば、約1~24時間、約2~20時間、約5~15時間、約8~12時間、又は
約2~5時間実行することができる。
【0107】
ECMは、塩基処理をせずに製造することができ;塩基処理工程の省略は、通常、塩基処
理を含み製造されたECM組成物よりも、より多量のエラスチン、フィブロネクチン及び/
又はラミニンを含有するECM組成物を生じる。
【0108】
通常、ヒト胎盤組織に関する前述のプロセスは、化学修飾されていないか又はプロテア
ーゼと接触されていない、塩基処理された及び/又は界面活性剤処理されたI型テロペプ
チド胎盤コラーゲンを含有する、胎盤ECMの製造を生じ、ここで該ECMは、フィブロネクチ
ン5重量%未満又はラミニン5重量%未満;I型コラーゲン25重量%~92重量%;及び、III
型コラーゲン2重量%~50重量%;IV型コラーゲン2重量%~50重量%;並びに、エラスチ
ン40重量%未満を含む。より具体的実施態様において、本プロセスは、塩基処理され、界
面活性剤処理されたI型テロペプチド胎盤コラーゲンの製造を生じ、ここで該コラーゲン
は、化学修飾されていないか又はプロテアーゼと接触されておらず、並びにここで該組成
物は、フィブロネクチン1重量%未満;ラミニン1重量%未満;I型コラーゲン74重量%~9
2重量%;III型コラーゲン4重量%~6重量%;IV型コラーゲン2重量%~15重量%;及び
/又は、エラスチン12重量%未満を含有する。
【0109】
特定の実施態様において、流動性ECMを含有する本明細書において提供される組成物は
、追加的に他の成分を含有してよい。特定の実施態様において、流動性ECMを含有する本
明細書において提供される組成物は、追加的に、1種以上の細胞型、例えば上記4.1.1項に
おいて詳述された1種以上の細胞型を含有している。あるいは、該細胞は、該ECMの沈着と
同時に、その前に、又はその後に、本明細書記載の方法に従い個別の組成物の一部として
沈着されてよい。
【0110】
特定の実施態様において、流動性ECMを含有する本明細書に提供される組成物は、追加
的にヒドロゲル(例えば、感熱性ヒドロゲル及び/又は感光性ヒドロゲル)を含有する。
あるいは、ヒドロゲルは、該ECMの沈着と同時に、その前に、又はその後に、本明細書記
載の方法に従い個別の組成物の一部として沈着されてよい。
【0111】
特定の実施態様において、流動性ECMを含有する本明細書において提供される組成物は
、追加的に、1種以上の細胞型、例えば上記4.1.1項において詳述された1種以上の細胞型
、及びヒドロゲルを含有している。具体的実施態様において、流動性ECM及びヒドロゲル
(例えば、感熱性ヒドロゲル及び/又は感光性ヒドロゲル)を含有する本明細書に提供さ
れる組成物は、ECM:ヒドロゲルの比が、重量で約10:1~約1:10であるように、配合さ
れる。
【0112】
ヒドロゲルの例は、水分子を捕獲しゲルを形成する3次元開放-格子構造を作出するよう
に、共有結合、イオン結合、又は水素結合を介して架橋されることができる、有機ポリマ
ー(天然又は合成)を含むことができる。そのような組成物に好適なヒドロゲルは、RAD1
6などの自己集成ペプチドを含む。ヒドロゲル-形成材料は、イオン的に架橋されるアルギ
ン酸塩及びそれらの塩などの多糖、ペプチド、ポリホスファジン、及びポリアクリレート
、又は温度若しくはpHにより各々架橋されるポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリ
コールブロック共重合体などのブロックポリマーを含む。一部の実施態様において、ヒド
ロゲル又はマトリクスは、生分解性であってよい。
【0113】
特定の実施態様において、流動性ECMを含有する本明細書において提供される組成物は
、追加的に合成ポリマーを含む。具体的実施態様において、合成ポリマーは、ポリアクリ
ルアミド、ポリ塩化ビニリジン、ポリ(o-カルボキシフェノキシ)-p-キシレン)(ポリ(o-CP
X))、ポリ(無水ラクチド)(PLAA)、n-イソプロピルアクリルアミド、ペントエリスリトー
ルジアクリレート、ポリメチルアクリレート、カルボキシメチルセルロース、及び/又は
ポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)である。別の具体的実施態様において、合成ポ
リマーは、熱可塑性物質、例えば、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸、ポリブチレン
テレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ酢酸
ビニル、及び/又はポリ塩化ビニルを含む。あるいは、1種以上の合成ポリマーは、該ECM
の沈着と同時に、その前に、又はその後に、本明細書記載の方法に従い個別の組成物の一
部として沈着されてよい。具体的実施態様において、合成ポリマーは、PCLである。
【0114】
特定の実施態様において、流動性ECMを含有する本明細書において提供される組成物は
、追加的に、フィブロネクチンと相互作用することがわかっているヒトタンパク質である
テナシンC、又はその断片を含有する。あるいは、テナシンCは、該ECMの沈着と同時に、
その前に、又はその後に、本明細書記載の方法に従い個別の組成物の一部として沈着され
てよい。
【0115】
特定の実施態様において、流動性ECMを含有する本明細書において提供される組成物は
、追加的に、チタン-アルミニウム-バナジウム(Ti6Al4V)を含有する。あるいは、Ti6Al4V
は、該ECMの沈着と同時に、その前に、又はその後に、本明細書記載の方法に従い個別の
組成物の一部として沈着されてよい。
【0116】
特定の実施態様において、本明細書に提供される組成物中のECM及び/又は合成ポリマ
ーなどの本組成物の追加成分は、誘導体化されてよい。ECM及び合成ポリマーの誘導体化
の方法は、当該技術分野において公知であり、且つ非限定的に、細胞接着ペプチド(例え
ば、1以上のRGDモチーフを含むペプチド)を使用する誘導体化、細胞接着タンパク質を使
用する誘導体化、サイトカイン(例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)、又は骨形態形成タン
パク質(BMP))を使用する誘導体化、及びグリコサミノグリカンを使用する誘導体化を含
む。
【0117】
(4.1.3.1 流動性ECMの作製方法)
本明細書記載の方法に従い使用されるECMは、当該技術分野において公知の方法及び本
明細書記載の方法を用いて、流動性とすることができる。
【0118】
一実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用されるECMは、酸又は塩基と、例
えば該ECMを可溶化するのに十分である量の該酸又は塩基を含有する酸性又は塩基性溶液
と、ECMを接触させることにより、流動性とされる。一旦ECMが流動性とされたならば、望
ましいならば、このECM含有組成物は、当該技術分野において公知の方法を用い、中性で
あるか、又は所望のpHとされることができる。
【0119】
別の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用されるECMは、例えば、プロテ
アーゼ、例としてトリプシン、キモトリプシン、ペプシン、パパイン、及び/又はエラス
ターゼなどの酵素又は酵素の組合せと、ECMを接触させることにより、流動性とされるこ
とができる。一旦ECMが流動性とされたならば、望ましいならば、酵素は、当該技術分野
において公知の方法を用い、失活されることができる。
【0120】
別の実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用されるECMは、物理的方策を使
用し、流動性とされる。具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用される
ECMは、ECMの摩砕により、すなわち、内部結合力を克服するためのECMの研磨により、流
動性とされる。別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用されるECM
は、例えば、ブレンダー又は他の給源により、ECMを剪断することにより、流動性とされ
る。別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い使用されるECMは、ECMを切
断することにより、流動性とされる。特定の実施態様において、物理的方策の使用により
ECMがより流動性とされる場合、このECMは、凍結状態で操作されてよい(例えば、ECMは
、凍結乾燥されるか、又は液体窒素中で凍結される)。
【0121】
(4.1.3.2 ECMの架橋方法)
本明細書記載の方法に従い使用されるECMは、当該技術分野において公知の方法及び本
明細書記載の方法を使用し、架橋されることができる。
【0122】
特定の実施態様において、ECMは、表面へ塗布される前に架橋され、すなわち、ECMは、
印刷前に架橋されてよい。そのような実施態様に従い、架橋剤は、ECMを含有する組成物
中に含まれてよく、且つ必要ならばECM及び架橋剤を含有する組成物は、ECMの印刷前にEC
Mの架橋を生じる条件下で処理されてよい。
【0123】
他の実施態様において、ECMは、表面へ塗布された後に架橋され、すなわち、ECMは、印
刷後に架橋されてよい。一実施態様において、ECMは、該表面へのECMの最初の印刷により
表面に塗布された後に架橋され、引き続き該表面へ架橋剤が印刷される(すなわち、ECM
及び架橋剤は、個別の組成物として印刷される)。この実施態様に従い、必要ならば、EC
Mの架橋を生じる条件下でのECM及び架橋剤の処理により、ECMは引き続き架橋され得る。
【0124】
別の実施態様において、ECM及び架橋剤の両方を含有する組成物を表面上へ印刷し、且
つ該印刷後、ECMの架橋を生じる条件下でECM及び架橋剤を処理することにより、ECMは表
面へ塗布された後に架橋される。
【0125】
具体的実施態様において、ECMは、ECM成分であるヒアルロン酸の化学架橋により、架橋
される。ヒアルロン酸の化学架橋の手段の例は、ジビニルスルホン架橋、ビス-エポキシ
ド架橋、ベンジルエステル架橋、ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)架橋、チオ
ール修飾によるジスルフィド架橋、HAのハロアセテート修飾、HAのジヒドラジド修飾、HA
のチラミン修飾、及びヒュスゲン環化付加の使用(すなわち、「クリック化学」)を含む
が、これらに限定されるものではない。そのような方法は、当該技術分野において公知で
あり、且つ例えば、Burdick及びPrestwichの文献(2011, Adv. Mater. 23:H41-H56)に更に
記載されている。
【0126】
別の具体的実施態様において、ECMは、ECMタンパク質の化学架橋により、架橋される。
ECMタンパク質を架橋することが可能である化学の例は、グルタルアルデヒド、ヘキサメ
チレンジイソシアナート(HDMI)、ゲニピン、カルボジイミド、ポリエチレングリコール、
過酸化ベンゾイル、BioGlue(グルタルアルデヒドベースの架橋剤;Cryolife社)、ポリホ
スホエステル、及び加水分解可能なポリロタキサンを含むが、これらに限定されるもので
はない。
【0127】
別の具体的実施態様において、ECMは、例えば、メタクリル酸無水物及び/又はグリシ
ジルメタクリレートなどを使用する、ヒアルロン酸の光重合により、架橋される(例えば
、Burdick及びPrestwichの文献、2011, Adv. Mater. 23:H41-H56参照)。
【0128】
別の具体的実施態様において、ECMは、酵素の使用により、架橋される。ECMの架橋に適
した酵素は、リシルオキシダーゼ(例えば、Leventalらの文献、2009, Cell 139:891-906
参照)及び組織型トランスグルタミナーゼ(例えば、Griffinらの文献、2002, J. Bioche
m. 368:377-96参照)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0129】
それらの当業者は、架橋剤は、バイオプリントされた製品の意図された使用を基に選択
されなければならないことを認めるであろう。例えば、本明細書記載の方法が、対象へ投
与されるべき組織又は器官を作製するために使用される場合、生体適合性である、すなわ
ち、該対象に対し有害でない架橋剤を選択し使用するよう注意が払われるべきである。あ
るいは、対象へ投与されない組織又は器官、例えば診断アッセイに使用される組織又は器
官を作製するために本明細書記載の方法が使用される場合、本方法の実践者は、架橋剤の
選択に注意を払う必要はない。
【0130】
(4.1.4 表面)
いずれか好適な表面を、本明細書記載の方法に従い作製される組織及び器官を得るため
に、その上に細胞、流動性ECM、及び/又は任意の追加成分が沈着(例えば、印刷)され
得る表面として使用することができる。そのような表面は、2次元(例えば、平坦な、平
面的な表面)であるか又は3次元であることができる。
【0131】
一実施態様において、その上に細胞、流動性ECM、及び/又は任意の追加成分が沈着さ
れる表面は、人工表面、すなわち、人為的に製造された表面を含む。具体的実施態様にお
いて、該人工表面は、人工装具である。特定の実施態様において、人工表面は、対象、例
えばヒト対象における投与及び/又は移植に関するその適性を基に選択される。例えば、
免疫原性でないことがわかっている人工表面(すなわち宿主免疫応答を誘発しない表面)
は、人工表面上に沈着されるべき組織又は器官が対象に移植されることを意図して作製さ
れる場合の使用のために選択されてよい。特定の実施態様において、人工表面は、対象、
例えばヒト対象における投与及び/又は移植にそれが適した状態にするために、処理され
てよい。
【0132】
一実施態様において、その上に細胞、流動性ECM、及び/又は任意の追加成分が沈着さ
れる表面は、塑性表面を含む。その上に該細胞、ECM、及び/又は追加成分が沈着され得
る塑性表面の例証的種類は、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン
、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、
ポリカーボネート、及びポリウレタンを含むが、これらに限定されるものではない。
【0133】
一実施態様において、その上に細胞、流動性ECM、及び/又は任意の追加成分が沈着さ
れる表面は、金属表面を含む。その上に該細胞、ECM、及び/又は追加成分が沈着され得
る塑性表面の例証的種類は、アルミニウム、クロム、コバルト、銅、金、鉄、鉛、マグネ
シウム、マンガン、水銀、ニッケル、白金、銀、錫、チタン、タングステン、及び亜鉛を
含むが、これらに限定されるものではない。
【0134】
特定の実施態様において、その上に細胞、流動性ECM、及び/又は任意の追加成分が沈
着される人工表面は、それらが特定の形状を形成するように、設計される。例えば人工表
面は、対象における移植に適している骨を作製するために、骨の形状(例えば、耳の骨)
であるように設計され、並びに好適な細胞(例えば、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞及び他
の骨-関連細胞)、流動性ECM、及び/又は任意の追加成分が、該表面の上及び/又は中に
沈着されることができる。
【0135】
別の実施態様において、該表面は、対象(例えばヒト対象)由来の組織若しくは器官、
又は対象の細胞から誘導された組織若しくは器官を含む。特定の実施態様において、対象
由来の該組織又は器官の表面は、脱細胞化、例えば、組織又は器官の表面の全て又は一部
から細胞を除去するよう処理される。具体的実施態様において、それより表面組織又は表
面器官が由来する対象は、本明細書記載の方法に従い作製されるべき組織又は器官の意図
されたレシピエントである対象である。別の具体的実施態様において、それから表面組織
又は表面器官が由来する対象は、本明細書記載の方法に従い作製されるべき組織又は器官
の意図されたレシピエントである対象ではない(例えば、その上に印刷される表面組織又
は表面器官を提供する対象は、ドナー又は死体対象である。)。
【0136】
本明細書記載の方法に従い、細胞、流動性ECM、及び/又は任意の追加成分が、対象由
来の好適な組織又は器官上に沈着(例えば、上に印刷)されてよい。具体的実施態様にお
いて、印刷表面を提供する組織は、結合組織(骨を含む)、筋肉組織(内臓筋(平滑筋)
組織、骨格筋組織、及び心筋組織を含む)、神経組織(中枢神経系組織(例えば、脳組織
又は脊髄組織)又は末梢神経系組織(例えば、脳神経及び脊髄神経)又は上皮組織(内皮
を含む)である。別の具体的実施態様において、印刷表面を提供する器官は、消化器系、
循環器系、内分泌系、排泄系、免疫系、外皮系、筋肉系、神経系、生殖器系、呼吸器系、
及び/又は骨格系を含む、既知の哺乳動物の器官系のいずれかに由来している。別の具体
的実施態様において、印刷表面を提供する器官は、肺、肝臓、心臓、脳、腎臓、皮膚、骨
、胃、膵臓、膀胱、胆嚢、小腸、大腸、前立腺、睾丸、卵巣、脊髄、咽頭、喉頭、気管、
気管支、横隔膜、尿管、尿道、食道、結腸、胸腺、及び脾臓の全て又は一部である。別の
具体的実施態様において、印刷表面を提供する器官は、膵臓、又はそれらの一部である。
【0137】
具体的実施態様において、細胞、流動性ECM、及び/又は追加成分は、骨を含むか又は
骨からなる表面上に沈着される(例えば、上に印刷される)。その上に印刷され得る骨の
例は、長骨、短骨、扁平骨、不規則形骨、及び種子(seismoid)骨を含む。その上に印刷す
ることができる具体的な骨は、頭蓋骨、顔面骨、耳の骨、指の骨、腕の骨、脚の骨、肋骨
、手指の骨、足及びつま先の骨、距骨、手根骨、胸の骨(例えば胸骨)などを含むが、こ
れらに限定されるものではない。
【0138】
特定の実施態様において、細胞、流動性ECM、及び/又は任意の追加成分の沈着(例え
ば、バイオプリンティングによるか又は他の手段による沈着)のための足場として働く本
明細書記載の表面は、バイオプリントされていない表面である。特定の実施態様において
、細胞、流動性ECM、及び/又は任意の追加成分の沈着(例えば、バイオプリンティング
によるか又は他の手段による沈着)のための足場として働く本明細書記載の表面は、バイ
オプリントされている表面、例えば本明細書記載の方法に従いバイオプリントされている
表面である。具体的実施態様において、バイオプリントされた表面は、合成材料を含む。
具体的実施態様において、合成材料は、PCLである。
【0139】
(4.2 組成物)
本明細書記載の方法に従い使用することができる組成物が、本明細書において提供され
る。一実施態様において、本明細書記載の方法に従う使用に適している細胞(例えば、上
記4.1.1項に記載された細胞)を含有する組成物が、本明細書において提供される。別の
実施態様において、本明細書記載の方法に従う使用に適している流動性ECM(例えば、上
記4.1.3項に記載された流動性ECM)を含有する組成物が、本明細書において提供される。
別の実施態様において、本明細書記載の方法に従う使用に適している1種以上の架橋剤(
例えば、上記4.1.3.2項に記載された架橋剤)を含有する組成物が、本明細書において提
供される。
【0140】
一実施態様において、細胞(例えば、上記4.1.1項に記載された細胞)及び流動性ECM(
例えば、上記4.1.3項に記載された流動性ECM)を含有する組成物が、本明細書において提
供される。具体的実施態様において、細胞は、幹細胞、例えば骨髄由来間葉系幹細胞(BM-
MSC)、組織プラスチック接着性胎盤幹細胞(PDAC)、及び/又は羊膜由来付着細胞(AMDAC)
を含む。別の具体的実施態様において、流動性ECMは、胎盤(例えばヒト胎盤)から誘導
される。
【0141】
別の実施態様において、流動性ECM(例えば、上記4.1.3項に記載された流動性ECM)及
び1種以上の架橋剤(例えば、上記4.1.3.2項に記載された架橋剤)を含有する組成物が、
本明細書において提供される。
【0142】
別の実施態様において、細胞(例えば、上記4.1.1項に記載された細胞)及び1種以上の
架橋剤(例えば、上記4.1.3.2項に記載された架橋剤)を含有する組成物が、本明細書に
おいて提供される。
【0143】
別の実施態様において、細胞(例えば、上記4.1.1項に記載された細胞)、流動性ECM(
例えば、上記4.1.3項に記載された流動性ECM)及び1種以上の架橋剤(例えば、上記4.1.3
.2項に記載された架橋剤)を含有する組成物が、本明細書において提供される。
【0144】
具体的実施態様において、幹細胞及び流動性ECMを含有する組成物が、本明細書におい
て提供され、ここで該幹細胞はPDACであり、並びにここで該流動性ECMは、胎盤から誘導
される。別の具体的実施態様において、幹細胞及び架橋剤を含有する組成物が、本明細書
において提供され、ここで該幹細胞はPDACである。別の具体的実施態様において、幹細胞
、流動性ECM、及び架橋剤を含有する組成物が、本明細書において提供され、ここで該幹
細胞はPDACであり、並びにここで該流動性ECMは、胎盤から誘導される。
【0145】
別の具体的実施態様において、幹細胞及び流動性ECMを含有する組成物が、本明細書に
おいて提供され、ここで該幹細胞はAMDACであり、並びにここで該流動性ECMは、胎盤から
誘導される。別の具体的実施態様において、幹細胞及び架橋剤を含有する組成物が、本明
細書において提供され、ここで該幹細胞はAMDACである。別の具体的実施態様において、
幹細胞、流動性ECM、及び架橋剤を含有する組成物が、本明細書において提供され、ここ
で該幹細胞はAMDACであり、並びにここで該流動性ECMは、胎盤から誘導される。
【0146】
別の具体的実施態様において、幹細胞及び流動性ECMを含有する組成物が、本明細書に
おいて提供され、ここで該幹細胞はBM-MSCであり、並びにここで該流動性ECMは、胎盤か
ら誘導される。別の具体的実施態様において、幹細胞及び架橋剤を含有する組成物が、本
明細書において提供され、ここで該幹細胞はBM-MSCである。別の具体的実施態様において
、幹細胞、流動性ECM、及び架橋剤を含有する組成物が、本明細書において提供され、こ
こで該幹細胞はBM-MSCであり、並びにここで該流動性ECMは、胎盤から誘導される。
【0147】
本明細書において提供される組成物は、細胞(例えば、上記4.1.1項に記載された細胞
)及び/又は流動性ECM(例えば、上記4.1.3項に記載された流動性ECM)及び/又は1種以
上の架橋剤(例えば、上記4.1.3.2項に記載された架橋剤)を含有することに加え、他の
成分を追加的に含有してよい。特定の実施態様において、本明細書において提供される組
成物は、ヒドロゲル(例えば、感熱性ヒドロゲル及び/又は感光性ヒドロゲル)を追加的
に含有する。あるいは、ヒドロゲルは、本明細書において提供される細胞及びECM含有組
成物とは別の組成物中に配合されてよい。特定の実施態様において、本明細書において提
供される組成物は、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニリジン、ポリ(o-カルボキシフェ
ノキシ)-p-キシレン)(ポリ(o-CPX))、ポリ(無水ラクチド)(PLAA)、n-イソプロピルアクリ
ルアミド、ペントエリスリトールジアクリレート、ポリメチルアクリレート、カルボキシ
メチルセルロース、ポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)、及び/又は熱可塑性物質
(例えば、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸、ポリブチレンテレフタレート、ポリエ
チレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、及び/又はポリ
塩化ビニル)などの、合成ポリマーを、追加的に含有する。あるいは、合成ポリマーは、
本明細書において提供される細胞及びECM含有組成物とは別の組成物中に配合されてよい
。特定の実施態様において、本明細書において提供される組成物は、テナシンC又はそれ
らの断片を追加的に含有する。あるいは、テナシンC又はそれらの断片は、本明細書にお
いて提供される細胞及びECM含有組成物とは別の組成物中に配合されてよい。特定の実施
態様において、チタン-アルミニウム-バナジウム(Ti6Al4V)を追加的に含有する組成物が
、本明細書において提供される。あるいは、Ti6Al4Vは、本明細書において提供される細
胞及びECM含有組成物とは別の組成物中に配合されてよい。特定の実施態様において、本
明細書において提供される組成物は、薬物(例えば小型分子薬物)を追加的に含有する。
あるいは、薬物は、本明細書において提供される細胞及びECM含有組成物とは別の組成物
中に配合されてよい。特定の実施態様において、本明細書において提供される組成物は、
抗体(例えば、治療用抗体)を追加的に含有する。あるいは、抗体は、本明細書において
提供される細胞及びECM含有組成物とは別の組成物中に配合されてよい。
【0148】
特定の実施態様において、本明細書において提供される組成物は、組成物中で使用され
る細胞(類)の生存、分化、増殖などを促進する1種以上の追加成分を追加的に含有する
。そのような成分は、栄養素、塩類、糖類、生存因子、及び増殖因子を含むことができる
が、これらに限定されるものではない。本明細書記載の方法に従い使用することができる
増殖因子の例は、インスリン-様成長因子(例えばIGF-1)、トランスフォーミング増殖因
子-β(TGF-β)、骨形態形成タンパク質、線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子(PDGF
)、血管内皮増殖因子(VEGF)、結合組織増殖因子(CTGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF
)、上皮細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子(FGF)(1、2及び3)、オステオポンチン、骨
形態形成タンパク質-2、ソマトトロピンなどの成長ホルモン、細胞誘引物質及び付着物質
など、並びにそれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。あるいは、組
成物中で使用される細胞(類)の生存、分化、増殖などを促進する1種以上の追加成分は
、本明細書において提供される細胞及びECM含有組成物とは別の組成物中に配合されてよ
い。
【0149】
(4.3 使用)
本明細書記載の方法に従い作製される組織及び器官は、いずれか好適な目的のために使
用することができる。具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製される組
織及び器官は、治療目的で使用され、例えばこれらの組織及び/又は器官は、移植におい
て使用される。別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製された器官
は、実験目的で使用され、例えば該組織又は器官に対する1種以上の化合物及び/又は外
科的手法の効果を評価するために使用される。
【0150】
(4.3.1 治療上の使用)
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製される組織及び/又は器官は
、そのような移植を必要とする対象へ移植される。個体へ移植され得る組織及び器官の例
は、4.1.2項に記載されている。グラフティング(例えば植皮)及び外科的移植手法を含
む移植方法は、当業者に周知である。
【0151】
特定の実施態様において、それから移植される組織及び/又は器官が誘導される細胞及
び/又はECMは、移植レシピエントに由来している。他の実施態様において、それから移
植される組織及び/又は器官が誘導される細胞及び/又はECMは、移植レシピエントに由
来しないが、別の対象、例えば、ドナー、死体などに由来する。
【0152】
特定の実施態様において、それから移植される組織及び/又は器官が誘導される細胞は
、移植レシピエントに由来し、且つそれから移植される組織及び/又は器官が誘導される
ECMは、移植レシピエントに由来しないが、別の給源に由来する。具体的実施態様におい
て、それから移植される組織及び/又は器官が誘導されるECMは、胎盤(例えばヒト胎盤
)に由来している。
【0153】
特定の実施態様において、それから移植される組織及び/又は器官が誘導されるECMは
、移植レシピエントに由来し、且つそれから移植される組織及び/又は器官が誘導される
細胞は、移植レシピエントに由来しないが、他の給源に由来する。
【0154】
具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、移植に適した皮膚を作製するために
使用され、且つ該皮膚は、そのような移植を必要とする対象(例えば、火傷被害者)にお
いて移植される(すなわち植皮される)。具体的実施態様において、該対象はヒトである
。
【0155】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、移植に適した骨を作製するため
に使用され、且つ該骨は、そのような移植を必要とする対象(例えば、骨粗鬆症又は骨癌
に罹患した者)において移植される(例えば、外科的に移植される)。具体的実施態様に
おいて、該対象はヒトである。
【0156】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、移植に適した肝臓又はそれらの
一部を作製するために使用され、且つ該肝臓又はそれらの一部は、そのような移植を必要
とする対象(例えば、肝臓の硬変、肝炎、又は肝臓癌に罹患した者)において移植される
(例えば、外科的に移植される)。具体的実施態様において、該対象はヒトである。
【0157】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、移植に適した肺又はそれらの一
部を作製するために使用され、且つ該肺又はそれらの一部は、そのような移植を必要とす
る対象(例えば、肺癌に罹患した者)において移植される(例えば、外科的に移植される
)。具体的実施態様において、該対象はヒトである。
【0158】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、移植に適した神経組織(例えば
、脳組織又は脊髄組織)を作製するために使用され、且つ該神経組織は、そのような移植
を必要とする対象において移植される(例えば、外科的に移植される)。具体的実施態様
において、該対象は、神経疾患(すなわち、中枢又は末梢神経系の疾患)と診断されてい
る。別の具体的実施態様において、該対象は、対象の中枢又は末梢神経系が損傷された外
傷に罹患しており、例えば対象は、外傷性脳損傷(TBI)又は脊髄損傷(SCI)に罹患している
。別の具体的実施態様において、該対象はヒトである。
【0159】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法は、移植に適した循環系組織(例え
ば、心臓組織、動脈、又は静脈)を作製するために使用され、且つ該循環系組織は、その
ような移植を必要とする対象において移植される(例えば、外科的に移植される)。具体
的実施態様において、該対象はヒトである。
【0160】
(4.3.1.1 患者集団)
本明細書記載の方法に従い作製される組織及び/又は器官は、様々な患者集団に恩恵が
あるように使用することができる。一実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製
される組織及び/又は器官は、組織及び/又は器官の移植を必要とする対象において使用
される。
【0161】
具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製される組織(類)及び/又は
器官(類)は、癌と診断された対象において、すなわち、癌に冒されている該対象の1種
以上の器官/組織の全て又は一部を置き換えるために、移植される。具体的実施態様にお
いて、本明細書記載の方法に従い作製される組織(類)及び/又は器官(類)は、骨若し
くは結合組織の肉腫、脳腫瘍、乳癌、卵巣癌、腎臓癌、膵臓癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、
肺癌(例えば、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、咽喉癌、及び中皮腫)、及び
/又は前立腺癌と診断された対象において移植される。
【0162】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製された肺組織(類)及び
/又は器官(類)は、呼吸器疾患と診断された対象、例えば喘息、慢性閉塞性肺疾患(COP
D)、気腫、肺炎、結核、肺癌及び/又は嚢胞性線維症と診断された対象において移植され
る。
【0163】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製された肝臓組織(類)及
び/又は器官(類)は、肝臓疾患と診断された対象、例えば、肝炎(例えば、A型、B型若
しくはC型肝炎)、肝臓癌、ヘモクロマトーシス、又は肝臓の硬変と診断された対象にお
いて移植される。
【0164】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製された骨組織(類)及び
/又は器官(類)は、骨疾患と診断された対象、例えば、骨癌(例えば骨肉腫)、骨壊死
、代謝性骨疾患、進行性骨化性線維形成異常、又は骨粗鬆症と診断された対象において移
植される。
【0165】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製された神経組織(類)及
び/又は器官(類)は、神経疾患(すなわち、中枢又は末梢神経系の疾患)と診断された
対象、例えば、脳腫瘍、脳炎、髄膜炎、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中、又
は多発性硬化症と診断された対象において移植される。
【0166】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製された表皮(例えば皮膚
)組織(類)は、皮膚疾患(すなわち、皮膚が冒される疾患)と診断された対象、例えば
、皮膚癌、湿疹、座瘡、乾癬、帯状疱疹、角化症と診断された対象;又は、瘢痕を有する
対象において移植される。
【0167】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製された神経組織(類)及
び/又は器官(類)は、対象の中枢又は末梢神経系が損傷された外傷を受けた対象、例え
ば、外傷性脳損傷(TBI)又は脊髄損傷(SCI)に罹患した対象において移植される。
【0168】
別の具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製された循環系組織(類)
及び/又は器官(類)は、循環系の疾患と診断された対象、例えば、冠動脈性心臓病、心
筋症(例えば内因性又は外因性心筋症)、心臓麻痺、心臓発作、炎症性心疾患、高血圧性
心疾患、又は心臓弁膜症と診断された対象において移植される。
【0169】
一部の実施態様において、それに対し本明細書記載の方法に従い作製される組織又は器
官が移植される対象は、動物である。特定の実施態様において、動物は鳥類である。特定
の実施態様において、動物はイヌである。特定の実施態様において、動物はネコである。
特定の実施態様において、動物はウマである。特定の実施態様において、動物はウシであ
る。特定の実施態様において、動物は哺乳動物、例えばウマ、ブタ、マウス、又は霊長類
、好ましくはヒトである。具体的実施態様において、それに対し本明細書記載の方法に従
い作製される組織又は器官が移植される対象は、ヒトである。
【0170】
特定の実施態様において、それに対し本明細書記載の方法に従い作製される組織又は器
官が移植される対象は、成人である。特定の実施態様において、それに対し本明細書記載
の方法に従い作製される組織又は器官が移植される対象は、乳児である。特定の実施態様
において、それに対し本明細書記載の方法に従い作製される組織又は器官が移植される対
象は、小児である。
【0171】
(4.3.2 実験的使用)
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製される組織及び/又は器官は
、実験目的で使用される。
【0172】
具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製される組織及び/又は器官は
、該組織及び/又は器官に対する薬物効果のスクリーニングに使用される。そのような方
法に従い、本明細書記載の方法に従い作製される組織又は器官は、所与の薬物(例えば、
評価されるべき薬物)及び対照(例えば、該薬物を含有しない組成物)に曝露され、且つ
組織又は器官に対する薬物の効果が、当業者に公知の方法を用い(例えば、対照と比較し
薬物の毒性;対照と比較し、ある結果を引き起こす薬物の有効性などを評価することによ
り)評価されることができる。
【0173】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製される組織及び/又は器官は
、非ヒト動物へ移植されてよく、非ヒト動物における該組織又は器官に対する薬物の効果
は、そのような移植を受けた第一の非ヒト動物へ薬物を投与し、及びそのような移植を受
けた第二の非ヒト動物へ対照(例えば、該薬物を含有しない組成物)を投与し、それらの
結果を比較することにより、評価することができる。
【0174】
特定の実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製される組織及び/又は器官は
、非ヒト動物に移植されてよく、且つ非ヒト動物における該組織又は器官に対する外科的
手法の効果は、そのような移植を受けた第一の非ヒト動物へ移植された組織/器官に対し
外科的手法を実行し、及びそのような移植を受けた第二の非ヒト動物に対し外科的手法を
実行せずに、それらの結果を比較することにより、評価することができる。
【0175】
具体的実施態様において、本明細書記載の方法に従い作製される組織及び/又は器官は
、体外目的で使用される。例えば、本明細書記載の方法に従い作製される組織又は器官は
、対象の体の外側に配置されるが、依然それから対象が恩恵を受ける機能を果たし、例え
ば、組織又は器官は、対象の体の内側に配置されている組織又は器官により通常果たされ
る機能を果たす。
【0176】
(4.4 キット)
本明細書記載の組成物の1種以上の構成成分が充填された1個以上の容器を備える、医薬
用パック又はキットが、本明細書において提供される。任意にそのような容器(類)に関
連して、作製業者を規制する政府の規制機関により規定された形式での、医薬品又は生物
学的製品の使用又は販売の注意書が存在することができ、その注意書は、製造、ヒト投与
に関する使用又は販売の規制当局による承認を反映している。
【0177】
具体的実施態様において、本明細書において提供されるキットは、本明細書記載の細胞
及び本明細書記載の流動性ECMを含有する組成物を備える。そのようなキットは、1種以上
の追加成分(例えば、架橋剤)を含有する組成物を任意に備えてよい。別の具体的実施態
様において、本明細書に提供されるキットは、本明細書記載の細胞、本明細書記載の流動
性ECM、及び本明細書記載の1種以上の架橋剤を含有する組成物を備える。本明細書に包含
されるキットは、本明細書記載の方法に従い使用することができる。
【実施例0178】
(5. 実施例)
(5.1 実施例1:胎盤幹細胞の接着及び成長を支援するバイオプリントされた足場)
この実施例は、制御されたファイバー直径及び細孔サイズの足場を製造するために、合
成材料を、バイオプリントすることができること、並びにそのような足場は、細胞外マト
リクス(ECM)の塗布に適した基板を提供することを明らかにしている。この実施例は、バ
イオプリントされた合成材料及びECMを含む足場(ハイブリッド足場)は、胎盤幹細胞な
どの胎盤細胞を含む細胞の接着及び成長に適した基板を表していることを更に明らかにし
ている。
【0179】
(5.1.1 方法)
合成材料及びECMを含有するハイブリッド足場を組み立てるために、ポリカプロラクト
ン(PCL)(Mn 45,000、Sigma社)を、バイオプリンター(EnvisionTEC、Gladbeck社、独国)を
用い、足場(54×54×0.64mm)へ最初に印刷した。印刷条件は、下記であった:温度90℃、
印刷圧力3~5.5bar、印刷速度2~6mm/秒、好適なサイズの針使用。ECMを、先に説明した
ようにヒト胎盤から単離した(例えば、Bhatia MBの文献、Wounds 20, 29, 2008参照)。
単離されたECMを、バイオプリントされたPCL足場の両側に塗布し、且つ乾燥(脱水)させ
、PCL及びECMを含有するハイブリッド足場を作製した。得られたハイブリッドPCL-ECM足
場を、直径10mmの円盤に打ち抜き、培地により一晩予め湿潤させ、本明細書記載の方法に
従い調製した胎盤幹細胞(例えば、4.1.1項参照)を12,500個細胞/cm2で播種した。細胞
を、8日間培養した。カルセイン染色及びMTS増殖アッセイを、標準プロトコールに従い、
異なる時点で行い(n=3)、細胞生存能及び増殖を決定した。
【0180】
(5.1.2 結果)
印刷条件を最適化することにより、異なるファイバーサイズ、細孔サイズ及び細孔構造
のPCL足場を、作製した(
図1)。印刷したファイバーは、PCL及びECMを含有するハイブリ
ッド足場の作製のための安定した網状構造を形成した。更に、ファイバーサイズ及び細孔
構造を変動する印刷は、様々な比率を含むハイブリッド足場を製造することを可能にした
。
【0181】
バイオプリントされたPCL足場の両側上のECMの脱水は、ハイブリッド足場の作製を生じ
た。PCLとECMの間に、良好な一体化が認められ;ハイブリッド足場が、再水和を含む足場
の処理又は培養により操作された場合は、PCLとECMの間の分離は認められなかった(
図2
)。
【0182】
胎盤幹細胞は、経時的にハイブリッド足場の表面上に拡散され、且つ培養6日目には、
ハイブリッド足場の表面の大部分を被覆した。MTS細胞増殖アッセイは、細胞数は、経時
的に有意に増加したことを明らかにした(
図3)。加えてハイブリッド足場上に播種され
た胎盤幹細胞は、カルセイン染色により指摘されるように(
図4)、8日の培養期間にわた
り良好な生存能を明らかにした。まとめるとこれらのデータは、PCL-ECMハイブリッド足
場は、細胞の接着、生存、及び成長を支援することを指摘している。
【0183】
(5.1.3 結論)
この実験は、ECM及び合成材料(PCL)を含有するハイブリッド足場は、バイオプリンティ
ングを含む方法により作製することができること、並びに細胞はそのような足場へ付着す
るのみではなく、そのような足場上で培養された場合、生存及び増殖することを明らかに
している。
【0184】
(5.2 実施例2:胎盤幹細胞の接着及び成長を支援するバイオプリントされた足場)
合成材料、及び例えば胎盤幹細胞などの胎盤細胞のような細胞を含むECMは、同時にバ
イオプリントされ、ハイブリッド足場を製造することができることを明らかにしている。
この実施例により明らかにされたように、このバイオプリントされた細胞は、バイオプリ
ンティングプロセスを生き残るのみではなく、ハイブリッド足場との培養において経時的
に増殖する。
【0185】
(5.2.1 方法)
ECMを、実施例1に説明したように調製し、且つ100万個/mlの胎盤幹細胞を含有する0.5
%アルギン酸ヒドロゲルと混合した。次にPCL及び細胞-含有ECMを、層状にバイオプリン
トし、PCL及びECMを含むハイブリッド足場を作製した。足場の各層内に、PCLを最初に印
刷し、次にECM/細胞成分を、PCL線の間の間隙を充填するように印刷した。そのような層
を2又は5個印刷し、CaCl2溶液により架橋させ、ハイブリッド足場を作製した。バイオプ
リントされた細胞-含有足場(細胞/ECM/PCL)を、7日間培養し、且つ細胞増殖及び生存
を、カルセイン染色及びMTS増殖アッセイにより様々な時点で評価した。
【0186】
(5.2.2 結果)
このバイオプリントされた足場は、細胞培養期間を通じて、損傷がない構造を維持した
(
図5)。PCLは、ECMヒドロゲルについて良好な構造上の支持体を提供し、これは3次元構
造体の作製を可能にした。バイオプリンティング及び最後までの培養後、細胞は、3次元
構造体全体に良好に分布し;細胞は、培養時に足場の深さを通じて認められた(
図6)。
【0187】
カルセイン染色により証明されるように(
図7)、胎盤幹細胞は、バイオプリンティン
グプロセスを生き残り、且つ培養を通して3次元バイオプリントされたハイブリッド足場
において増殖し続けた。
図8に示されたように、ほとんどの細胞は、ハイブリッド足場内
のECMの全域に拡散されることが認められ、このことは、ECMは細胞接着及びECMヒドロゲ
ル中の拡散を増強したことを指摘している。これは、アルギン酸単独中の細胞の配置と、
本足場中の細胞の配置を比べることにより、確認された。加えて
図9に示されるように、M
TS細胞増殖アッセイは、2層及び5層の両方の足場について、細胞数の増加を明らかにし、
このことは、これらのハイブリッド足場は細胞増殖を支援したことを示している。
【0188】
(5.2.3 結論)
この実施例は、ECM及び合成材料(PCL)を含有するハイブリッド足場は、ECM及びPCLの同
時バイオプリンティングを含む方法により、作製することができることを明らかにしてい
る。また細胞は、ハイブリッド足場の成分(ECM及びPCL)に沿って、バイオプリントされ得
るという事実、並びに細胞は、このバイオプリンティングプロセスで生き残るという事実
が、この実施例により明らかにされる。更にハイブリッド足場の成分に沿ってバイオプリ
ントされた細胞は、そのような足場の上で培養される場合に、増殖し、且つ細胞マトリク
ス(アルギン酸)単独中で培養される場合よりもより良く足場全体に点在する。
【0189】
(5.3 実施例3:機能性バイオプリントされた足場)
この実施例は、合成材料及び細胞を含有するECMは、バイオプリントされ、機能性足場
を製造することができることを明らかにしている。
【0190】
インスリン産生細胞株であるβ-TC-6細胞は、ヒト胎盤から誘導された細胞外マトリク
ス(ECM)と共に、バイオプリントされた足場へバイオプリントされた。この足場は、寸法1
5×15×2.5mmであり、5層を含んだ。各層において、ポリカプロラクトン(PCL)を最初に印
刷し、引き続きPCL線間に、アルギン酸-ECMヒドロゲル(1%アルギン酸及び12%ECM)中1
500万個細胞/mlで混合したβ-TC-6細胞を印刷した。足場全体は、1%塩化カルシウム溶液
中に浸漬させ、20分間架橋させた。その後足場を、6ウェルプレート(1個のウェルにつき
培地3~5ml)において、細胞培養インキュベーター内で、15%ウシ胎仔血清を含有するDM
EM培地中で培養した。異なる時点で、足場を、カルセイン染色及びMTS増殖アッセイのた
めに収集し、各々、細胞生存能及び細胞増殖を特徴付けた。
図10は、バイオプリンティン
グされた足場の構造を示している。
【0191】
カルセイン染色は、β-TC-6細胞は、プリンティングプロセスを生き残り、且つ培養時
に生存し続けたことを明らかにした。足場の横断面図は、細胞は、足場全体に均等に分布
されたこと、及び各層において生存し続けたことを示した(
図10参照)。MTSアッセイは
、インスリン産生β-TC-6細胞は、最大3週間生存し続け、生存細胞の総数は一定に維持さ
れた(
図11参照)ことを確認した。
【0192】
このβ-TC-6細胞が、バイオプリントされた足場において機能することができるかどう
かを決定するために、これらの細胞によるインスリン生成を測定した。インスリン生成を
測定するために、バイオプリンティングされた足場を、新鮮な成長培地(6-ウェルプレー
ト中3ml/ウェル)に2時間に曝し、各足場からの上清のアリコートを、マウスインスリンE
LISAキット(Millipore社)を使用し、インスリン濃度について測定した。生成されたイン
スリンの最高レベルを、0日目に検出した(
図12参照)。分泌されたインスリンのレベル
は、その後の培養時に減少した(3日目及び6日目)が、この培養物中3日目から6日目まで
は、安定し続けた(
図12参照)。従ってこのβ-TC-6細胞は、バイオプリントされた後、
インスリンを生成し且つ分泌する能力を維持した。
【0193】
膵臓におけるインスリン産生細胞の重要な機能は、血液中の上昇したグルコースレベル
に反応してインスリンを生成することである。従ってPCL、ECM、及びβ-TC-6細胞を含む
バイオプリントされた足場は、グルコース糖チャレンジに足場を曝すことにより、この機
能を保持するかどうかを試験した(
図13参照)。1個の足場(
図13の“A”)を、グルコー
ス飢餓条件(グルコース非含有IMDM培地、10%FCS)に2日間曝し、その後インスリン生成
条件(50mMグルコース/1mM IBMX)によりチャレンジした。対照としてのバイオプリント
された足場は、安定したグルコースレベルで、通常の培養培地において維持した(
図13の
“B”及び“C”)。これらの対照においては、培地を、インスリン生成条件によるチャレ
ンジを被験足場(すなわち、
図13のA)について行うと同時に交換した。各培養物からの
上清(A、B、及びC)を、30分毎に採取し、各上清からインスリン濃度をELISAにより測定
した。
図13は、異なる時点での各培養物からのインスリン生成のレベルを示し、且つグル
コース飢餓条件に曝され、その後インスリン生成条件によりチャレンジされたバイオプリ
ントされた足場(すなわち、
図13のA)は、チャレンジ後0.5時間でのそのインスリン生成
レベルと比較し、チャレンジ後3時間で、80倍より多くのインスリンを生成したのに対し
、対照(すなわち、
図13のB及びC)は、はるかに少ないインスリンを生成した(培地交換
後0.5時間でのインスリン生成レベルと比べ、培地交換の3時間後にわずかに約2倍多いイ
ンスリン)ことを明らかにしている。
【0194】
この実施例は、合成材料、細胞、及びECMを含有するバイオプリントされた足場が作製
され得ること、並びにバイオプリントされた足場の細胞は、生存能及び機能の両方を維持
していることを明らかにしている。
【0195】
本明細書に明らかにされた組成物及び方法は、本明細書記載の具体的実施態様により範
囲が限定されるものではない。実際、記載された組成物及び方法に加え、組成物及び方法
の様々な改変が、前述の説明及び添付図面から、当業者には明らかになるであろう。その
ような改変は、添付された特許請求の範囲内に収まることが意図されている。
【0196】
様々な出版物、特許及び特許出願が本明細書に挙げられており、これら文献の開示はそ
れらの全体が引用により本明細書中に組み込まれている。