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特開2022-153427環状アミド、環状アミン、及びアクリルアミドを有するポリマーを含有するマスカラ組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153427
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】環状アミド、環状アミン、及びアクリルアミドを有するポリマーを含有するマスカラ組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20221004BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q1/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022109684
(22)【出願日】2022-07-07
(62)【分割の表示】P 2020528301の分割
【原出願日】2018-11-26
(31)【優先権主張番号】15/825,988
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チョウ, シエンチー
(72)【発明者】
【氏名】パン, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】エバンクス, ジョディー
(72)【発明者】
【氏名】リ, チュンファ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】まつげのカールを高めることによってまつ毛に優れた外観を与えることが可能なマスカラ組成物を提供する。
【解決手段】水を含むビヒクルと、前記ビヒクル中で安定化された1種以上の膜形成ポリマーを含む膜形成ポリマー部分であって、環状アミドモノマー、環状アミンモノマー、及びアクリルアミドモノマーである膜形成主ポリマーを含む、非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーである前記膜形成ポリマー部分と、を含有するマスカラ組成物であって、前記非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーである前記膜形成主ポリマーを少なくとも約7重量%含む、前記マスカラ組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を含むビヒクルと、
前記ビヒクル中で安定化された1種以上の膜形成ポリマーを含む膜形成ポリマー部分であって、環状アミドモノマー、環状アミンモノマー、及びアクリルアミドモノマーである膜形成主ポリマーを含む、非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーである前記膜形成ポリマー部分と、
を含有するマスカラ組成物であって、
前記非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーである前記膜形成主ポリマーを少なくとも約7重量%含む、前記マスカラ組成物。
【請求項2】
前記非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーが、約10重量%~約60重量%の濃度で存在する、請求項1に記載のマスカラ組成物。
【請求項3】
前記環状アミドモノマーがビニルピロリドンである、先行請求項のいずれか1項に記載のマスカラ組成物。
【請求項4】
前記環状アミンモノマーがイミダゾールである、先行請求項のいずれか1項に記載のマスカラ組成物。
【請求項5】
前記アミドモノマーがメタクリルアミドである、先行請求項のいずれか1項に記載のマスカラ組成物。
【請求項6】
前記非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーが、N-ビニルピロリドン、メタクリルアミド、及びN-ビニルイミダゾールのコポリマーである、先行請求項のいずれか1項に記載のマスカラ組成物。
【請求項7】
少なくとも約10重量%の前記非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーを含む、先行請求項のいずれか1項に記載のマスカラ組成物。
【請求項8】
少なくとも約15重量%の前記非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーを含む、先行請求項のいずれか1項に記載のマスカラ組成物。
【請求項9】
約15重量%~約40重量%の前記非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーを含む、先行請求項のいずれか1項に記載のマスカラ組成物。
【請求項10】
前記膜形成ポリマー部分が、1種以上の繰り返し単位を含む膜形成副ポリマーを更に含み、
前記膜形成副ポリマーの前記1種以上の繰り返し単位が、アクリレート、及び、カプロラクタムとビニルピロリドンから選択される環状アミドを含む、先行請求項のいずれかに記載のマスカラ組成物。
【請求項11】
実質的にワックスを含まない、先行請求項のいずれかに記載のマスカラ組成物。
【請求項12】
先行請求項のいずれかに記載のマスカラ組成物をまつ毛の上面に直接塗布することを含む、前記まつ毛への化粧品の塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連分野の相互参照
本出願は、2017年11月29日に出願された米国特許出願第15/825,988号の優先権の利益を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ケラチン繊維などのケラチン物質のための化粧品組成物に関する。化粧品組成物は、好ましくは、まつ毛用のマスカラ組成物である。
【背景技術】
【0003】
マスカラ組成物は、まつ毛の外観を高めるために一般的に使用されている。従来のマスカラ組成物は、通常、結晶性ネットワーク構造を形成してまつ毛のカール、ボリューム、長さ、厚さ、及び/または色を高めるために、ワックスを使用する。しかしながら、大量のワックスを含むマスカラ組成物は、油及び/または皮脂に対する耐性が低くなる傾向があり、一定時間付けた後に、汚れ、剥離、及び/または色移りを引き起こす。更に、まつ毛の適度なカール形成を助けるために従来の高ワックスマスカラを使用することができるものの、マスカラの使用者は、典型的には、カールをかなりの程度まで高めるために特定のアプリケーターまたはまつ毛カーラーに頼らざるを得ない。
【0004】
本発明者らは、特定のマスカラ配合物が、従来のマスカラ配合物と比較して、まつ毛にカール効果及び持続性を誘発するのに実際に有用であることを見出した。
【0005】
したがって、本発明の一態様は、まつげのカールを高めることによってまつ毛に優れた外観を与えることが可能なマスカラ組成物である。本発明の別の態様は、まつ毛の物理的外観を高めるためのまつ毛の化粧方法に関する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の特定の実施形態によれば、マスカラ組成物は、非イオン性かつ膜形成性の水溶性または水分散性のコポリマーを少なくとも約7重量パーセント含む。非イオン性かつ膜形成性の水溶性または水分散性のコポリマーは、環状アミドモノマー、環状アミンモノマー、及びアクリルアミドモノマーを含む。特定の実施形態では、マスカラ組成物はワックスを実質的に含まない。
【0007】
本発明の特定の別の実施形態によれば、マスカラ組成物は、水を含むビヒクルと、ビヒクル中で安定化された1種以上の膜形成ポリマーを含む膜形成ポリマー部分とを含む。膜形成ポリマー部分は、環状アミドモノマー、環状アミンモノマー、及びアクリルアミドモノマーを含む非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーである膜形成ポリマーを含む。マスカラ組成物は、非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーを少なくとも約7重量パーセント含む。特定の実施形態では、マスカラ組成物はワックスを実質的に含まない。
【0008】
上述の一般的な説明及び以下の詳細な説明はどちらも例示的かつ説明的であるにすぎず、本発明を限定しないと理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
他に指示がある場合を除き、成分量及び/または反応条件を表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に示される数値パラメータは、本発明によって得られることが求められる望まれる特性に応じて変動し得る近似値である。
【0010】
本明細書で使用される「少なくとも1つ」という表現は、1つまたは複数を意味し、そのため個々の成分だけでなく混合物/組み合わせも含む。
【0011】
操作の実施例または他に指示がある場合を除き、成分量及び/または反応条件を表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されると理解されるべきであり、示されている数字の10%~15%以内を意味する。
【0012】
本明細書で使用される「マスカラ」及び「マスカラ組成物」は、ケラチン物質、好ましくはケラチン繊維、特にはまつ毛及び/または眉毛、更にはまつ毛に塗布されることが意図されている組成物を意味する。
【0013】
本明細書で使用される「ケラチン物質」としては、限定するものではないが、皮膚、爪、生体のケラチン繊維(頭髪、まつ毛、眉毛など)、及び非生体のケラチン繊維(見本、エクステンション、付けまつ毛など)が挙げられる。生体ケラチン繊維及び非生体ケラチン繊維には、ヒトの毛髪をなどの任意の哺乳動物の毛が含まれる。
【0014】
本明細書で使用される「パーセント」または「%」は、組成物中の成分または構成要素の濃度について言及する場合、重量パーセントを指す。特に断らない限り、特定の成分のパーセントは固形分基準であり、マスカラ組成物全体に対するものである。
【0015】
「固形分」または「活性成分基準」は、特定の成分と共に供給され得る任意の溶媒、担体、不純物などを除いた特定の成分の量を指す。
【0016】
本発明の組成物内の成分の存在を指すために本明細書で使用される「実質的に含まない」は、特定の成分が約0.5%未満、約0.25%未満、約0%などの約1%未満の重量濃度で存在することを意味する。
【0017】
本明細書で使用される「置換された」は、少なくとも1つの置換基を含むことを意味する。置換するための置換基の非限定的な例としては、酸素原子や窒素原子などの原子、並びにヒドロキシル基、エーテル基、アルコキシ基、アシルオキシアルキル基、オキシアルキレン基、ポリオキシアルキレン基、カルボン酸基、アミン基、アシルアミノ基、アミド基、ハロゲン含有基、エステル基、チオール基、スルホネート基、チオスルフェート基、シロキサン基、及びポリシロキサン基などの官能基が挙げられる。置換基(複数可)は更に置換されていてもよい。
【0018】
「自己カーリング」という用語は、本発明の組成物に関連する特性を指す。自己カーリングは、乾燥時に組成物がまつ毛にカーリングを誘発させる能力を指し、このカーリングはカーリングの誘発に特化されたアプリケーターの使用によるものではない。自己カーリングは、本明細書に記載の自己カーリング試験を用いて測定することができる。
【0019】
マスカラ組成物
本発明によれば、本発明者らは、膜形成ポリマー部分と粒子部分とを含む特定のマスカラ組成物が、自己カーリングに関連するものなどの驚くべきかつ予想外の特性を有することを見出した。これらの組成物は、環状アミドモノマー、環状アミンモノマー、及びアクリルアミドモノマーを含む非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーである膜形成主ポリマーを含む膜形成ポリマー部分を含む。マスカラ組成物は、少なくとも約7重量パーセントの、非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーを含む。
【0020】
膜形成ポリマー部分
本発明のマスカラ組成物は、1種以上の膜形成ポリマーを含む膜形成ポリマー部分を含む。当業者であれば、本明細書で使用される「膜形成ポリマー」または「膜形成剤」という用語が、例えば膜形成剤に付随する溶媒が蒸発した後、基材の中に吸収された後、及び/または基材上で若しくは基材から消散した後などに、塗布される基材上に膜(例えば連続膜)を残すポリマーまたは樹脂を意味することを容易に理解するであろう。ポリマーが膜形成ポリマーであるか否かを評価するために、Lenetaカード用紙(BYK Additives and Instruments of Geretsried,Germanyから入手可能な黒白不透明度カードチャート2812)の中央に5~10グラムの材料を置き、3milのドローダウンバードバー(同様にBykより)を使用して、材料をシート全体に塗り広げ(8インチ×3インチ)、一晩乾燥させることにより、ドローダウン試験を行うことができる。材料がコンフォーマルなコーティングを形成する場合、及び/またはかみそりの刃を使って剥離させるか削り取ることで自立膜として除去できる場合、それは膜形成性である。いずれにしても、それがカードを被覆しない場合、自立膜として適切な方法で取り除くことができない場合、及び/または指で容易にこすり取れる軽い粉末状のコーティングを形成する場合、それは膜形成剤ではない。本発明では、化粧品にまたは皮膚科学的観点から許容される膜形成ポリマーを利用することができる。本明細書で使用される「化粧品に許容される」または「皮膚科学的観点から許容される」は、組成物が、過度の毒性、非適合性、不安定性、及び/またはアレルギー応答なしに、ケラチン物質や粘膜などのヒト組織との接触における使用に適していることを意味することが意図されている。
【0021】
膜形成ポリマー部分は、環状アミドモノマー、環状アミンモノマー、及びアクリルアミドモノマーを含む非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーである膜形成ポリマーを含む膜形成ポリマー部分を含む。したがって、環状アミドモノマー、環状アミンモノマー、及びアクリルアミドモノマーを含む非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーである膜形成ポリマーは、環状アミド、環状アミン、及びアクリルアミド官能基を有する。明確にするために明記しておくと、「非イオン性かつ水溶性または水分散性」とは、コポリマーが非イオン性であることを意味する。コポリマーは、特に組成物のビヒクル全体で容易に安定化できる程度まで、水溶性または水分散性(のいずれか)でもある。
【0022】
本発明の膜形成ポリマーにおいて有用な環状アミド及び環状アミンモノマーとしては、1つ以上の芳香族または脂肪族の環構造を有するものが挙げられる。これらの環は、例えば約5~8個の環構成部員のサイズを有する範囲のサイズを有し得る。
【0023】
本発明の特定の実施形態では、本発明の組成物中に存在する膜形成ポリマーを形成するために有用なモノマーは、環状アミン残基または環状アミド残基を有する重合可能なエチレン性不飽和モノマーである。したがって、本発明において有用な膜形成ポリマーの環状アミドモノマーは、ラクタムなどのようなヘテロ環式の環構造であるかそれを含む環状アミド残基を含み得る。これらには、α-ラクタム、β-ラクタム、γ-ラクタム、δ-ラクタム、及びε-ラクタムが含まれ得る。注目すべき一実施形態では、環状アミドはピロリドン(γ-ラクタム)である。有用な環状アミン残基は、アゾール、ピロール、ピロリジン、カルバメートなどのような任意の様々なヘテロ環アミンを含み得る。注目すべき一実施形態では、環状アミン残基はイミダゾールである。
【0024】
別の特定の実施形態では、本発明による有用なアクリルアミドモノマーとしては、-CNO官能基を有するものが挙げられる。例としては、(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0025】
特定の実施形態では、環状アミドモノマー、環状アミンモノマー、及びアクリルアミドモノマーを含む非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーは、約10,000ダルトン~約1,000,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する。
【0026】
特定の実施形態では、環状アミドモノマー、環状アミンモノマー、及びアクリルアミドモノマーを含む非イオン性かつ水溶性または水分散性コポリマーは、Ludwigshafen,GermanyのBASF市販からされているLUVISET CLEAR AT3などの市販品の種類であってもよい。
【0027】
マスカラ中の、環状アミドモノマー、環状アミンモノマー、及びアクリルアミドモノマーを含む非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーの濃度は、約7%よりも大きい。特定の実施形態では、濃度は、約15%超などの約10%超である。特定の別の実施形態では、本発明の組成物は、約5%、10%、15%、または20%から、約20%、30%、40%、50%、または60%までの濃度(そのような範囲の全ての組み合わせを含む)で、環状アミドモノマー、環状アミンモノマー、及びアクリルアミドモノマーを含む非イオン性かつ水溶性または水分散性コポリマーを含む。
【0028】
本発明の特定の実施形態によれば、膜形成ポリマー部分は、膜形成主ポリマーを含む。「膜形成主ポリマー」とは、膜形成ポリマー部分全体の50%以上を占める膜形成ポリマーまたはその分類を意味する。特定の注目すべき実施形態によれば、環状アミドモノマー、環状アミンモノマー、及びアクリルアミドモノマーを含む非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーは、膜形成主ポリマーである。
【0029】
特定の実施形態によれば、環状アミドモノマー、環状アミンモノマー、及びアクリルアミドモノマーを含む非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーは、膜形成ポリマー部分の約70重量パーセント以上、約90重量パーセント以上などの、膜形成ポリマー部分の55重量パーセント以上を占める。
【0030】
膜形成ポリマー部分は、1種以上の膜形成副ポリマーも含み得る。膜形成「副」ポリマーとは、マスカラ組成物中のこれらの1種以上の膜形成副ポリマーの合計濃度が膜形成主ポリマーの濃度よりも低いことを意味する。1種以上の膜形成副ポリマーは、非架橋アクリレート及びアクリルコポリマー、ウレタンポリマー、ポリエステルなどのマスカラ組成物において一般的に使用されている任意のものであってもよい。適切な非架橋の膜形成副ポリマーの非限定的な例は、Philadelphia,PAのFMC Health and NutritionからPROTANAL PH 6160として入手可能なアルギン酸ナトリウムである。マスカラ組成物中に存在する膜形成副ポリマー(例えばアルギン酸ナトリウム)の量は、約0.25重量%~約2重量%の範囲などの任意の適切な量であってもよい。
【0031】
本発明の特定の実施形態では、膜形成副ポリマーは、ビヒクル中で安定化され得る追加の膜形成ポリマーを含んでいてもよい。適切な追加の膜形成ポリマーとしては、マスカラ組成物において一般的に使用されている任意の様々なアクリレート及びアクリルコポリマー、ウレタンポリマー、ポリエステルなどが挙げられる。
【0032】
ワックス
本発明の組成物はワックスを含んでいてもよい。本明細書で使用される「ワックス」は、室温(約25℃)及び大気圧(760mmHg、すなわち105Pa)で固体であり、可逆的な固体/液体の状態変化をし、30℃超、いくつかの実施形態では約55℃超、最大約120℃、更には約200℃にも及ぶ融点を有する、親油性脂肪族化合物を意味することが意図されている。
【0033】
ワックスという用語には、動物由来のワックス、植物由来のワックス、鉱物由来のワックス、及び合成由来のワックスが含まれ得る。動物由来のワックスの例としては、蜜蝋、ラノリンワックス、及びイボタ蝋が挙げられる。植物由来のワックスの例としては、ライスワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、オウリカリーワックス、コルク繊維ワックス、サトウキビワックス、ジャパンワックス、ハゼロウ、及びコットンワックスが挙げられる。鉱物由来のワックスの例としては、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、及びオゾケライトが挙げられる。合成由来のワックスの例としては、例えばポリエチレンワックスなどのポリオレフィンワックス、Fischer-Tropsch合成により得られるワックス、ワックス状コポリマー及びそれらのエステル、並びにシリコーン及びフルオロワックスが挙げられる。
【0034】
ワックスという用語には、更に、動物または植物由来の高融点硬化油が含まれ得る。例としては、水添ホホバワックス、及びC~C32の直鎖または非直鎖の脂肪族鎖からなる脂肪の接触水素化によって得られる硬化油、水添ヒマワリ油、水添ヒマシ油、水添ヤシ油、水添ラノリン、及び水添パーム油が挙げられる。
【0035】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、約0.5%、2%、または4%から、約5%、10%、または20%まで(そのような範囲の全ての組み合わせを含む)などでワックスを含む。しかしながら、特定の注目すべき実施形態では、本発明の組成物はワックスを実質的に含まない。
【0036】
オイル
本発明の組成物は、オイルを含んでいてもよい。しかしながら、特定の注目すべき実施形態では、本発明の組成物はオイルを実質的に含まない。特定の具体的な実施形態では、本発明の組成物は、0.25%未満のワックス及び0.25%未満のオイルを有する。
【0037】
本明細書で使用される「オイル」とは、約30℃未満の融点を有し、通常水に不溶性であり、以下の3つの基準のうちの1つ以上を満たすものなどの疎水性部位を含む化合物を意味する:(a)少なくとも6つの炭素の炭素鎖を有し、6つの炭素のいずれもカルボニル炭素ではないか、これに直接結合している親水性部位(以下で定義)を有さない;(b)2つ以上のアルキルシロキシ基を有する;または(c)配列の中に2つ以上のオキシプロピレン基を有する。疎水性部位は、直鎖、環状、芳香族の飽和または不飽和の基を含んでいてもよい。疎水性化合物は、特定の実施形態では両親媒性ではなく、そのため、この実施形態では、サルフェート、スルホネート、カルボキシレート、ホスフェート、ホスホネート、アンモニウム(モノ-、ジ-、及びトリアルキルアンモニウム種を含む)、ピリジニウム、イミダゾリニウム、アミジニウム、ポリ(エチレンイミニウム)、アンモニオアルキルスルホネート、アンモニオアルキルカルボキシレート、アンホアセテート、及びポリ(エチレンオキシ)スルホニル部位を含む極性のアニオン性、カチオン性、双性イオン性、または非イオン性の基などの親水性部位を含まない。特定の実施形態では、オイルはヒドロキシル部位を含まない。
【0038】
オイルの化合物の適切な例としては、植物油(脂肪酸のグリセリルエステル、トリグリセリド)及び脂肪エステルが挙げられる。具体的な非限定的な例としては、限定するものではないが、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、C12~C15安息香酸アルキル、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、シリコーン油(ジメチコンやシクロペンタシロキサン等)、ペンタエリスリトールテトラオクタノエート、及び鉱油が挙げられる。オイルの他の例としては、例えば、特にオクトクリレン、サリチル酸オクチル、メトキシケイ皮酸オクチルなどのUV吸収性日焼け止めとして一般的に使用されている液体有機紫外線フィルターが挙げられる。
【0039】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、約0.5%、2%、または4%から、約5%、10%、または20%まで(そのような範囲の全ての組み合わせを含む)などでオイルを含む。しかしながら、特定の注目すべき実施形態では、本発明の組成物はオイルを実質的に含まない。
【0040】
界面活性剤および分散剤
膜形成ポリマー部分は、分散剤または懸濁剤の必要性なくすようにビヒクルを十分に増粘させることができる。しかしながら、本発明の特定の実施形態によれば、マスカラ組成物は、主に粒子部分の濡れまたは分散を助けるために、任意選択的に界面活性剤または分散剤を更に含んでいてもよい。界面活性剤が化粧品にまたは皮膚科学的観点から許容される限り、アニオン性、非イオン性、両性、及びカチオン性の界面活性剤を含む任意の界面活性剤を本発明において使用することができる。界面活性剤は、単独で使用されても、その2種以上の組み合わせで使用されてもよい。一実施形態では、マスカラ組成物は、ラウレス硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤/分散剤を含んでいてもよい。
【0041】
存在する場合、界面活性剤または分散剤の量は、約0.1~約5重量%であってもよい。特定の別の実施形態では、分散剤及び界面活性剤の濃度は、約0.5%未満、約0.1%未満などの1%未満に制限される。
【0042】
着色剤及び粒子
本発明のマスカラ組成物は、任意選択的に少なくとも1種の着色剤を含んでいてもよい。例えば、可視の着色剤を含まない組成物は、その上に別のマスカラ組成物、好ましくは着色マスカラ組成物が塗布され得る下塗りマスカラ組成物であってもよい。適切な着色剤としては、限定するものではないが、色または光学効果を付与する無機粒子及び有機顔料が挙げられる。粒子状材料は、一般的には組成物のビヒクルに不溶性であるが、そうでない場合には均質に安定化されている(懸濁または分散されている)微粉化粒子である。1種以上の粒子状材料は、典型的には、使用中に化学的に「自己融合」することができず、それ自体は膜形成性ではない材料である。
【0043】
適切な無機粒子材料としては、シリカ、アルミナ、カーボンなどの任意の様々な多孔質、半多孔質、非多孔質、または中空の被覆または未被覆の非水溶性無機粒子、及び任意の様々な酸化物、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、窒化物、炭化物、炭酸塩などが挙げられる。特定の実施形態では、無機粒子は、カーボンブラック、シリカ、及び酸化鉄から選択される。他の微粒子、例えば、レーキ顔料などの有機顔料;ナイロン粒子、アクリレート粒子(例えばPMMA)、シリコーンエラストマー粒子などを含むポリマー粒子などの他の有機粒子も使用することができる。
【0044】
任意の様々な親油性または水溶性の染料も同様に使用することができる。典型的には、組成物が着色剤を含む場合、組成物はマスカラ組成物として使用することができる。あるいは、組成物が着色剤を含まない場合、これはマスカラ組成物をケラチン物質に塗布する前(または後)にベースコート(またはトップコート)として使用できる、澄んだまたは透明な組成物である。着色剤を含まない組成物は、(追加の別個のベースコートまたはトップコートなしで)単独のコーティングとしても使用することができる。しかしながら、トップコートもしくはベースコートが着色剤を含み得ること、及び/またはマスカラ組成物が着色剤をほとんどまたは全く含み得ないことが可能である。
【0045】
ビヒクル
まつ毛に塗布し易くするために、本発明のマスカラは、通常、中で膜形成ポリマー部分を安定化する(すなわち、溶解、分散、または懸濁する)ビヒクルを含む。ビヒクルは、通常、水を含むか、水からなるか、本質的に水からなる。本発明の特定の実施形態では、本発明のマスカラ組成物は、約40%~約90%、約45%~約85%などの少なくとも約30%の水を含む。
【0046】
追加の成分
本発明のマスカラ組成物は、化粧品組成物または皮膚科学的組成物において望ましく使用される様々な添加剤を更に含んでいてもよい。例えば、水、増粘剤、分散剤、酸化防止剤、pH調整剤、防腐剤、中和剤、香料、フィラー、共溶媒、可塑剤、化粧品及び皮膚科用の活性剤(皮膚軟化剤、保湿剤、ビタミン、UVフィルター、及び日焼け止め等)、並びにそれらの混合物が添加されてもよい。そのような成分の非網羅的なリストは、CTFA International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,Fourteenth Edition(2012)の中で見ることができ、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
当業者であれば、想定される添加によって本発明によるマスカラ組成物の有利な特性が悪影響を受けないように、あるいは実質的に悪影響を受けないように、任意選択的な追加の添加剤及び/またはその量を注意深く選択するであろう。
【0048】
これらの物質は、例えば稠度やテクスチャーなどの望まれる特性を有する組成物を調製するために、当業者により多様に選択され得る。
【0049】
特定の実施形態によれば、本発明のマスカラは、多価アルコール(グリセリン等)またはグリコール(プロピレン、ブチレン、またはヘキシレングリコール等)を実質的に含まない。
【0050】
特定の実施形態によれば、本発明のマスカラ組成物は、水溶液または分散液の形態であり、環状アミドモノマー、環状アミンモノマー、及びアクリルアミドモノマーと1種以上の他の成分とを含む非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーは、水を含むビヒクルに溶解または分散された状態で存在する。
特定の実施形態によれば、本発明のマスカラ組成物は、例えばNew Castle, DelawareのTA Instrumentsから入手可能なAR-G2磁気ベアリングレオメーターを使用して1s-1のせん断速度で測定した場合に、約0.01kPa・s、0.1kPa・s、または0.3kPa・sから、約0.6kPa・s、10kPa・s、または50kPa・sまで(そのような範囲の全ての組み合わせを含む)の粘度を有する。マスカラ配合物の粘度を調整するために、1種以上の粘度調整剤が使用されてもよい。本発明の特定の別の実施形態によれば、マスカラは、約5~約8のpHを有し得る。
【0051】
本発明のマスカラ組成物は、ケラチン繊維などのケラチン物質、特にまつ毛または眉毛に塗布することが意図されている。特定の注目すべき実施形態では、マスカラは、凹形の湾曲形態をとることが望まれるケラチン表面の一部に塗布される。特に、本発明者らは、本発明の組成物が自己カーリングに有用であることを見出した。これに関して使用される場合、マスカラは上まつ毛の上面に塗布され、乾燥される。まつ毛の上面のみに塗布することにより、乾燥後にまつ毛が上向きにカールする。
【0052】
上述したように、本発明の一態様によれば、マスカラ組成物は、例えば、増加したボリューム特性、増加した自己カール特性、増加した自己カール保持特性、増加した長さ特性などの改善された化粧品特性を有する。
【0053】
方法
本発明のマスカラ組成物は、環状アミドモノマー、環状アミンモノマー、及びアクリルアミドモノマーを含む少なくとも1種の非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーを、溶解するまで水中で混合することによって製造することができる。このポリマー及び他の水溶性成分は、任意選択的にスターラー、マグネチックスターラー、シェーカー、ホモジナイザー、または化粧品組成物を混合するために適切に使用される任意の他の方法を用いて、撹拌、振とう、粉砕、またはビーティングによって混合することができる。混合は、成分の加熱または冷却をしながら行ってもせずに行ってもよい。その後、分散される粒子及び他の成分が混合されながら添加されることで、均質な混合物が形成される。
【0054】
本発明の一実施形態は、ケラチン物質のカールの改善方法を提供する。下塗りマスカラ組成物(その上に別のマスカラ組成物を塗布できる)またはマスカラ組成物(下塗り剤なし)などの上述したマスカラ組成物は、ケラチン物質の上に塗布される。ケラチン物質は、好ましくはケラチン繊維、特にまつ毛及び眉毛であるが、特にまつ毛である。マスカラ組成物は、ケラチン物質のカールを改善するのに十分な量でケラチン物質の上に塗布される。マスカラ組成物は、ケラチン繊維のカールを改善するために、カール、並びにケラチン繊維のボリューム及び/または長さを増加させるのに十分な量でケラチン繊維に塗布することができる。マスカラは、上まつ毛の上面など、凹形の湾曲形態をとることが望まれるケラチン表面の一部に塗布され、乾燥される。したがって、マスカラ組成物は、上まつ毛の下面ではなく、主に上まつ毛の上面に塗布するように、注意しながらまつ毛にブラッシングまたは塗布することができる。
【0055】
マスカラ組成物をケラチン物質に塗布する方法は限定されない。好ましくは、マスカラ組成物は、ブラシ、ワンド、または櫛によってケラチン繊維の上に塗布される。
【0056】
組成物は、必要に応じてまつ毛に好ましくは1日1回または2回、より好ましくは1日1回塗布され、その後好ましくは衣類または他の物体などと触れる前に乾燥される。
【0057】
特に好ましい実施形態は以下を含む:
【0058】
水を含むビヒクルと、前記ビヒクル中で安定化された1種以上の膜形成ポリマーを含む膜形成ポリマー部分とを含有するマスカラ組成物であって、環状アミドモノマー、環状アミンモノマー、及びアクリルアミドモノマーを含む非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーである膜形成主ポリマーを前記膜形成ポリマー部分が含み、前記非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーを少なくとも約7重量%含む、マスカラ組成物;
【0059】
前記非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーが、重量基準で約10パーセント~約60パーセントの濃度で存在する、先行実施形態のマスカラ組成物;
【0060】
前記環状アミドモノマーがビニルピロリドンである、先行実施形態のいずれかに記載のマスカラ組成物;
【0061】
前記環状アミンモノマーがイミダゾールである、先行実施形態のいずれかに記載のマスカラ組成物;
【0062】
前記アミドモノマーがメタクリルアミドである、先行実施形態のいずれかに記載のマスカラ組成物;
【0063】
前記非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーが、N-ビニルピロリドン、メタクリルアミド、及びN-ビニルイミダゾールのコポリマーである、先行実施形態のいずれかに記載のマスカラ組成物;
【0064】
少なくとも約10重量パーセントの前記非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーを含む、先行実施形態のいずれかに記載のマスカラ組成物;
【0065】
少なくとも約15重量パーセントの前記非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーを含む、先行実施形態のいずれかに記載のマスカラ組成物;
【0066】
約15重量パーセント~約40重量パーセントの前記非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーを含む、先行実施形態のいずれかに記載のマスカラ組成物;
【0067】
前記膜形成ポリマー部分が、1種以上の繰り返し単位を含む膜形成副ポリマーを更に含み、前記膜形成副ポリマーの前記1種以上の繰り返し単位が、アクリレートと、カプロラクタム及びビニルピロリドンから選択される環状アミドとを含む、先行実施形態のいずれかに記載のマスカラ組成物;
【0068】
実質的にワックスを含まない、先行実施形態のいずれかに記載のマスカラ組成物;並びに
【0069】
先行請求項のいずれかに記載のマスカラ組成物をまつ毛の上面に直接塗布することを含む、前記まつ毛への化粧品の塗布方法。
【0070】
本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるものの、具体的な実施例に示されている数値はできる限り正確に報告されている。しかしながら、いずれの数値にも、それぞれの測定で見られる標準偏差から必然的に得られる誤差が本質的に含まれている。
【実施例0071】
マスカラ組成物
本発明の実施例1及び比較例1のマスカラ組成物は、表1に示される様々な量のLUVISET CLEAR AT3を、固定量のSIMULGEL600(Fairfield,NJのSeppic,Inc)、PROTANAL PH 6160、カーボンブラック、及び水(適量)を含む配合物の中に溶解させることにより調製した。
【0072】
様々な組成物で以下の自己カーリング試験を行った。平らな鉄を使用して、金属プレート間に固定された長さ12mmの髪の繊維ストランド(人工まつ毛)(Pourcieux,FranceのSP Equationから入手可能)を、繊維をまっすぐにするのに十分な時間、450°Fに設定した市販のストレートヘアアイロンを使用して優しく撫でてまっすぐに伸ばした。舌圧子を使用して、試験する様々な組成物を人工まつ毛に塗布し、模擬まつ毛の片側を10回撫でた。これにより約2mg~10mgの組成物が付着する。処理したまつ毛を湿度チャンバー(25%RH及び32℃)の中に5分間入れた。その後、まつ毛の近くに分度器を配置し、人工まつ毛が中で固定されている金属板の水平面に対するカールの角度を視覚的に見積もることにより、カール測定を行った。
【0073】
結果は初期カールとして記録した。次に、サンプルを2つ目の湿度チャンバー(60%、RH32C)の中に20分間入れ、上述したカールに別の評価を行った。結果はカール保持として記録した。結果を表3に示す:
【0074】
結果は、環状アミドモノマー、環状アミンモノマー、及びアクリルアミドモノマーを含む非イオン性かつ水溶性または水分散性のコポリマーを含む組成物が、驚くほど良好な性能を有することを示している。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の一発明。
【外国語明細書】