(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153436
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】重篤患者における死亡率の予後診断に使用するためのバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6813 20180101AFI20221004BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20221004BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20221004BHJP
C12Q 1/6837 20180101ALI20221004BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20221004BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20221004BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20221004BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20221004BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C12Q1/6813 Z
G01N33/53 M
C12N15/09 200
C12Q1/6837 Z
C12Q1/6851 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6876 Z
G01N33/68
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110659
(22)【出願日】2022-07-08
(62)【分割の表示】P 2019519961の分割
【原出願日】2017-04-25
(31)【優先権主張番号】62/354,789
(32)【優先日】2016-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLACKBERRY
2.ANDROID
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】パーベシュ カトリ
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー イー.スウィニー
(57)【要約】
【課題】重篤患者の診断、予後診断、および治療に役立つバイオマーカー、ならびにそれらの使用方法が開示される。特に、本発明は、敗血症、重度の外傷、または火傷を有する重篤患者における死亡率の予後診断のためのバイオマーカーの使用に関する。
【解決手段】本発明の実施に際して使用され得るバイオマーカーとしては、DEFA4、CD163、PER1、RGS1、HIF1A、SEPP1、C11orf74、CIT、LY86、TST、OR52R1、およびKCNJ2を含むが、これらに限定されない、遺伝子または遺伝子のRNA転写物由来のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の死亡リスクを判定するための診断補助方法であって、
a)患者から得られた生物学的試料中のDEFA4、CD163、PER1、RGS1、HIF1A、SEPP1、C11orf74、CIT、LY86、TST、OR52R1、およびKCNJ2から選択される1つ又は複数のバイオマーカーの発現レベルを測定することと、
b)前記バイオマーカーのそれぞれの基準値範囲に関連した各バイオマーカーの発現レベルを分析すること、ここで前記基準値範囲と比較した記前記1つ又は複数のバイオマーカーの差次的な発現が、前記患者が30日以内に死亡するリスクが高いことを示す、と、
c)b)の分析に基づいて死亡リスクを判定することとを含む、方法。
【請求項2】
前記患者が、敗血症、外傷、または火傷である生命を脅かす状態を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、集中治療室への入院前または入院時に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、病院への入院から7日以内に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、病院への入院から48時間以内に実施される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、病院への入院から24時間以内に実施される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、前記患者における敗血症の診断から48時間以内、前記患者における敗血症の診断から3~7日後、前記患者の火傷から3~14日後、又は前記患者の負傷から3~14日後に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記生物学的試料が、血液、軟膜、帯状核細胞、または後骨髄球を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記バイオマーカーの発現レベルの測定が、マイクロアレイ分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、等温増幅法、ノーザンブロット、または遺伝子発現連続分析(SAGE)を実施することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
各バイオマーカーのそれぞれの基準値範囲が、感染対象または非感染対象の時間一致基準値の1つ又は複数から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ又は複数バイオマーカーの発現レベルに基づいて前記患者の死亡遺伝子スコアを計算することをさらに含み、対照対象と比較した前記患者のより高い死亡遺伝子スコアが、前記患者が30日以内に死亡するリスクが高いことを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
生命を脅かす状態を有することが疑われる患者の死亡リスクの判定における使用のためのキットであって、DEFA4、CD163、PER1、RGS1、HIF1A、SEPP1、C11orf74、CIT、LY86、TST、OR52R1、およびKCNJ2から選択される1つ又は複数のバイオマーカーの発現レベルをそれぞれ測定するための複数の薬剤を含む、キット。
【請求項13】
生命を脅かす状態を有することが疑われる患者の死亡リスクの判定における使用のための、複数のインビトロ複合体を含む組成物であって、前記複数のインビトロ複合体のそれぞれが、バイオマーカーDEFA4、CD163、PER1、RGS1、HIF1A、SEPP1、C11orf74、CIT、LY86、TST、OR52R1、およびKCNJ2遺伝子配列から選択されるバイオマーカーを含む核酸にハイブリダイズされた標識プローブ、またはそれらの補体を含み、インビトロ複合体における各核酸が、生命を脅かす状態を有する患者から抽出されるか、または生命を脅かす状態を有する前記患者から抽出された前記核酸の増幅産物である、組成物。
【請求項14】
前記標識プローブが、蛍光標識、生物発光標識、化学発光標識、比色標識、または同位体標識を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
a)が、DEFA4、CD163、PER1、RGS1、HIF1A、SEPP1、C11orf74、CIT、LY86、TST、OR52R1、およびKCNJ2から選択される少なくとも3つのバイオマーカーの発現レベルを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2016年6月26日に出願された米国仮特許出願第62/354,789号の利益を主張し、この出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府支援の研究または開発に関する陳述
本発明は、国立衛生研究所により授与された規約AI057229、AI089859、AI109662、およびAI117925下で政府支援を受けてなされたものである。政府は、本発明においてある特定の権利を有する。
【0003】
本発明は、一般に、重篤患者における死亡リスクの予後診断のための方法に関する。特に、本発明は、敗血症、重度の外傷、または火傷を有する重篤患者における死亡リスクの予後診断のために使用され得るバイオマーカーの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
感染症1に対する全身応答に起因する臓器不全と新たに定義される敗血症は、米国内の全院内死亡の半分に寄与し、また、米国医療システム全体の第1位の費用でもある。2,3敗血症の転帰は、標準化された敗血症ケアの改善とともに過去10年間で改善したが、死亡率は高いままである(10~35%)4。敗血症治療は、依然として、原因制御、抗生物質、および支持療法からなる。免疫調節介入のための数十の臨床試験にもかかわらず、敗血症に特異的な治療は成功裏に市場に導入されていない5。2つのコンセンサス論文は、臨床試験の失敗が、敗血症症候群における広範囲な患者の多様性、および正確な分子プロファイリングのためのツールの欠如によるものであると主張している5,6。現在のツール、主にAPACHEおよびSOFA等の臨床的重症度スコア、ならびに血中乳酸値は、敗血症の根底にある炎症の読み出しではなく、むしろ患者の疾病の全体的なレベルでの粗雑な見方である。
【0005】
いくつかのグループは、全血の分析による免疫系のトランスクリプトーム(ゲノムワイドの発現)プロファイリングが、敗血症患者を層別化する有効な方法であり得ると仮定している7。これらの研究からの重要な見識には、好中球プロテアーゼの過剰発現、適応免疫における崩壊、および敗血症における全体的に深刻な免疫調節不全が含まれる7~12。いくつかの免疫プロファイリング技法は、転帰の差異を示すために予測的に検証されているが13,14、臨床的ツールはまだ臨床診療に移行されていない。それでも、これらの研究のほとんどは、さらなる再分析および再利用のために公開データベースに保管されている。
【0006】
したがって、改善された患者ケアおよび資源層別化の両方のための新たな分子プロファイリングツールが必要であるが、敗血症におけるより良い臨床試験のための研究ツールとしても必要である。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、重篤患者の診断、予後診断、および治療に役立つバイオマーカーの使用に関する。特に、本発明は、敗血症、重度の外傷、または火傷を有する重篤患者における死亡率の予後診断のためのバイオマーカーの使用に関する。
【0008】
本発明の実施に際して使用され得るバイオマーカーとしては、DEFA4、CD163、PER1、RGS1、HIF1A、SEPP1、C11orf74、CIT、LY86、TST、OR52R1、およびKCNJ2を含むが、これらに限定されない、遺伝子または遺伝子のRNA転写物由来のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。
【0009】
ある特定の実施形態では、バイオマーカーパネルは死亡率の予後診断に使用される。任意のサイズのバイオマーカーパネルは本発明の実施に際して使用され得る。死亡率の予後診断のためのバイオマーカーパネルは、典型的には、少なくとも3個のバイオマーカー~最大30個のバイオマーカーを含み、それらの間の任意の数のバイオマーカー、例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、または30個のバイオマーカーを含む。ある特定の実施形態では、本発明は、少なくとも3個、少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または少なくとも10個、または少なくとも11個、またはそれ以上のバイオマーカーを含むバイオマーカーパネルを含む。通常、より小さいバイオマーカーパネルがより経済的であるが、より大きいバイオマーカーパネル(すなわち、30個を超えるバイオマーカー)がより詳細な情報の提供に有利であり、本発明の実施に際しても使用され得る。
【0010】
一実施形態では、バイオマーカーパネルは、死亡率の予後診断のための複数のバイオマーカーを含み、複数のバイオマーカーとしては、DEFA4、CD163、PER1、RGS1、HIF1A、SEPP1、C11orf74、CIT、LY86、TST、OR52R1、およびKCNJ2からなる群から選択される、遺伝子または遺伝子のRNA転写物由来のヌクレオチド配列を含む1つ以上のポリヌクレオチドが挙げられる。一実施形態では、バイオマーカーパネルは、DEFA4ポリヌクレオチド、CD163ポリヌクレオチド、PER1ポリヌクレオチド、RGS1ポリヌクレオチド、HIF1Aポリヌクレオチド、SEPP1ポリヌクレオチド、C11orf74ポリヌクレオチド、CITポリヌクレオチド、LY86ポリヌクレオチド、TSTポリヌクレオチド、OR52R1ポリヌクレオチド、およびKCNJ2ポリヌクレオチドを含む。
【0011】
一態様では、本発明は、死亡リスクを判定し、生命を脅かす状態を有することが疑われる患者を治療する方法を含む。本方法は、a)患者から生物学的試料を得ることと、b)生物学的試料中のDEFA4、CD163、PER1、RGS1、HIF1A、SEPP1、C11orf74、CIT、LY86、TST、OR52R1、およびKCNJ2バイオマーカーの発現レベルを測定することと、c)バイオマーカーのそれぞれの基準値範囲に関連して各バイオマーカーの発現レベルを分析することであって、対照対象のバイオマーカーの基準値範囲と比較して、増加したDEFA4、CD163、PER1、RGS1、HIF1A、SEPP1、C11orf74、およびCITバイオマーカーの発現レベル、ならびに減少したLY86、TST、OR52R1、およびKCNJ2バイオマーカーの発現レベルが、患者が30日以内に死亡するリスクが高いことを示す、分析することと、d)患者が30日以内に死亡するリスクが高い場合、患者に集中治療室(ICU)治療を施すことと、を含む。ある特定の実施形態では、生命を脅かす状態は、敗血症、外傷、または火傷である。
【0012】
基準値範囲は、重篤な疾病を有しない1人以上の対象(例えば、健康な対象、または感染していない、もしくは負傷していない対象)の1つ以上の試料中に見られる1つ以上のバイオマーカーレベルを表し得る。代替的に、基準値は、重篤な疾病(例えば、敗血症/感染症、重度の外傷、または火傷)を有する1人以上の対象の1つ以上の試料中に見られる1つ以上のバイオマーカーレベルを表し得る。ある特定の実施形態では、バイオマーカーレベルは、非感染および感染/敗血症対象または負傷した(例えば、重度の外傷もしくは火傷)もしくは負傷していない対象の時間一致基準値範囲と比較される。
【0013】
ある特定の実施形態では、本方法は、集中治療室への入院前または入院時に実施される。本方法は、24時間、48時間、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、または14日以内等、病院への入院の14日以内に実施され得る。別の実施形態では、本方法は、患者における敗血症の診断から3~7日後に実施される。別の実施形態では、本方法は、患者の火傷から3~14日後に実施される。さらなる実施形態では、本方法は、患者の傷害から3~14日後に実施される。
【0014】
生物学的試料は、例えば、血液、軟膜、帯状核細胞、または後骨髄球を含み得る。
【0015】
バイオマーカーポリヌクレオチド(例えば、コード転写物)は、例えば、マイクロアレイ分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、ノーザンブロット、または遺伝子発現連続分析(SAGE)によって検出され得る。
【0016】
別の態様では、本発明は、生命を脅かす状態を有することが疑われる対象の死亡遺伝子スコアを判定する方法を含み、本方法は、a)対象から生物学的試料を収集することと、b)生物学的試料中の本明細書に記載される複数のバイオマーカーレベルを測定することと、c)バイオマーカーの対照基準値と比較して過剰発現している全てのバイオマーカーの発現レベルの幾何平均から、バイオマーカーの対照基準値と比較して過小発現している全てのバイオマーカーの発現レベルの幾何平均を差し引き、その差に、バイオマーカーの対照基準値と比較して過剰発現しているバイオマーカーの数と過小発現しているバイオマーカーの数との比率を乗じることによって、バイオマーカーの死亡遺伝子スコアを判定することと、を含む。
【0017】
別の実施形態では、本方法は、バイオマーカーのレベルに基づいて患者の死亡遺伝子スコアを計算することをさらに含み、対照対象と比較した患者のより高い死亡遺伝子スコアが、患者が30日以内に死亡するリスクが高いことを示す。
【0018】
ある特定の実施形態では、死亡遺伝子スコアは、DEFA4、CD163、PER1、RGS1、HIF1A、SEPP1、C11orf74、CIT、LY86、TST、OR52R1、およびKCNJ2からなる群から選択される、遺伝子または遺伝子のRNA転写物由来のヌクレオチド配列を含む1つ以上のポリヌクレオチドを含む複数のバイオマーカーの発現レベルから計算される。一実施形態では、複数のバイオマーカーは、DEFA4ポリヌクレオチド、CD163ポリヌクレオチド、PER1ポリヌクレオチド、RGS1ポリヌクレオチド、HIF1Aポリヌクレオチド、SEPP1ポリヌクレオチド、C11orf74ポリヌクレオチド、CITポリヌクレオチド、LY86ポリヌクレオチド、TSTポリヌクレオチド、OR52R1ポリヌクレオチド、およびKCNJ2ポリヌクレオチドを含む。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、死亡リスクを判定し、敗血症を有する患者を治療する方法を含み、本方法は、a)患者から生物学的試料を得ること、b)生物学的試料中のDEFA4、CD163、PER1、RGS1、HIF1A、SEPP1、C11orf74、CIT、LY86、TST、OR52R1、およびKCNJ2バイオマーカーの発現レベルを測定することと、c)バイオマーカーのレベルに基づいて患者の死亡遺伝子スコアを計算することであって、対照対象と比較した患者のより高い死亡遺伝子スコアが、患者が30日以内に死亡するリスクが高いことを示す、計算することと、d)患者が30日以内に死亡するリスクが高い場合、患者に集中治療室治療を施すことと、を含む。
【0020】
他の実施形態では、本発明は、感染症を有する患者を診断および治療する方法を含み、本方法は、a)患者から生物学的試料を得ることと、b)生物学的試料中のDEFA4、CD163、PER1、RGS1、HIF1A、SEPP1、C11orf74、CIT、LY86、TST、OR52R1、およびKCNJ2バイオマーカーの発現レベルを測定することであって、対照対象のバイオマーカーの基準値範囲と比較して、増加したDEFA4、CD163、PER1、RGS1、HIF1A、SEPP1、C11orf74、およびCITバイオマーカーの発現レベル、ならびに減少したLY86、TST、OR52R1、およびKCNJ2バイオマーカーの発現レベルが、患者が敗血症を有することを示す、測定することと、c)患者が敗血症と診断された場合、抗菌療法、支持療法、または免疫調節療法を含む敗血症治療を施すことと、を含む。別の実施形態では、本発明は、バイオマーカーのレベルに基づいて患者の死亡遺伝子スコアを計算することであって、対照対象と比較した患者のより高い死亡遺伝子スコアが、患者が30日以内に死亡するリスクが高いことを示す、計算することと、患者が30日以内に死亡するリスクが高い場合、患者に集中治療室治療を施すことと、をさらに含む。
【0021】
別の態様では、本発明は、生命を脅かす状態を有することが疑われる患者を治療する方法を含み、本方法は、a)本明細書に記載される方法に従う患者の予後診断に関する情報を受け取ることと、b)患者が30日以内に死亡するリスクが高い場合、患者に集中治療室治療を施すことと、を含む。
【0022】
ある特定の実施形態では、患者は、多変量線形判別分析(LDA)、受信者動作特性(ROC)分析、主構成要素分析(PCA)、アンサンブルデータマイニング法、マイクロアレイ細胞特異的有意性分析(csSAM)、および多次元タンパク質同定技術(MUDPIT)分析を含むが、これらに限定されない1つ以上の方法によって分析される。
【0023】
別の態様では、本発明は、対象における死亡率の予後診断のためのキットを含む。本キットは、生命を脅かす状態を有することが疑われるヒト対象から単離された生物学的試料を保持するための容器と、バイオマーカーを特異的に検出する少なくとも1つの薬剤と、その薬剤を生物学的試料または生物学的試料の一部と反応させて、生物学的試料中の少なくとも1つのバイオマーカーの存在または量を検出するための印刷された指示と、を含み得る。薬剤は、別個の容器内にパッケージされ得る。本キットは、本明細書に記載されるバイオマーカーの検出のためのPCRまたはマイクロアレイ分析を実施するための1つ以上の対照基準試料および試薬をさらに含み得る。
【0024】
ある特定の実施形態では、本キットは、死亡率の予後診断のための複数のバイオマーカーを含むバイオマーカーパネルのポリヌクレオチドを検出するための薬剤を含み、1つ以上のバイオマーカーは、DEFA4ポリヌクレオチド、CD163ポリヌクレオチド、PER1ポリヌクレオチド、RGS1ポリヌクレオチド、HIF1Aポリヌクレオチド、SEPP1ポリヌクレオチド、C11orf74ポリヌクレオチド、CITポリヌクレオチド、LY86ポリヌクレオチド、TSTポリヌクレオチド、OR52R1ポリヌクレオチド、およびKCNJ2ポリヌクレオチドからなる群から選択される。一実施形態では、本キットは、DEFA4ポリヌクレオチド、CD163ポリヌクレオチド、PER1ポリヌクレオチド、RGS1ポリヌクレオチド、HIF1Aポリヌクレオチド、SEPP1ポリヌクレオチド、C11orf74ポリヌクレオチド、CITポリヌクレオチド、LY86ポリヌクレオチド、TSTポリヌクレオチド、OR52R1ポリヌクレオチド、およびKCNJ2ポリヌクレオチドを含むバイオマーカーパネルのバイオマーカーを検出するための薬剤を含む。
【0025】
ある特定の実施形態では、本キットは、複数のバイオマーカーポリヌクレオチドの分析のためのマイクロアレイを含む。一実施形態では、本キットは、DEFA4ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、CD163ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、PER1ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、RGS1ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、HIF1Aポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、SEPP1ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、C11orf74ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、CITポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、LY86ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、TSTポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、OR52R1ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、およびKCNJ2ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含む、マイクロアレイを含む。
【0026】
別の態様では、本発明は、データを記憶するための記憶構成要素(すなわち、メモリ)であって、対象の診断を判定する指示が内部に記憶されている、記憶構成要素と、データを処理するためのコンピュータプロセッサであって、記憶構成要素に連結されており、記憶構成要素に記憶された指示を実行して、患者データを受け取り、かつアルゴリズムに従って患者データを分析するように構成されている、コンピュータプロセッサと、患者の診断に関する情報を表示するためのディスプレイ構成要素と、を備える診断システムを含む。記憶構成要素は、本明細書に記載されるように対象の死亡リスクを判定するための指示を含み得る(実施例1を参照のこと)。さらに、記憶構成要素は、死亡遺伝子スコアを計算するための指示をさらに含み得る。
【0027】
ある特定の実施形態では、本発明は、生命を脅かす状態を有することが疑われる患者の死亡リスクを判定するためのコンピュータにより実行される方法を含み、本コンピュータは、a)患者からの生物学的試料中のDEFA4、CD163、PER1、RGS1、HIF1A、SEPP1、C11orf74、CIT、LY86、TST、OR52R1、およびKCNJ2バイオマーカーの発現レベルの値を含む入力された患者データを受け取る工程と、b)各バイオマーカーレベルを分析し、各バイオマーカーのそれぞれの基準値範囲と比較する工程と、c)バイオマーカーレベルに基づいて患者の死亡遺伝子スコアを計算する工程であって、対照対象と比較した患者のより高い死亡遺伝子スコアが、患者が30日以内に死亡するリスクが高いことを示す、計算する工程と、d)患者の死亡リスクに関する情報を表示する工程と、を含む工程を実施する。
【0028】
ある特定の実施形態では、入力された患者データは、患者からの生物学的試料中の少なくとも12個のバイオマーカーレベルの値を含む。例えば、入力された患者データは、DEFA4ポリヌクレオチド、CD163ポリヌクレオチド、PER1ポリヌクレオチド、RGS1ポリヌクレオチド、HIF1Aポリヌクレオチド、SEPP1ポリヌクレオチド、C11orf74ポリヌクレオチド、CITポリヌクレオチド、LY86ポリヌクレオチド、TSTポリヌクレオチド、OR52R1ポリヌクレオチド、およびKCNJ2ポリヌクレオチドのレベルに関する値を含み得る。
【0029】
別の実施形態では、本発明は、複数のインビトロ複合体を含む組成物を含み、複数のインビトロ複合体は、バイオマーカーDEFA4、CD163、PER1、RGS1、HIF1A、SEPP1、C11orf74、CIT、LY86、TST、OR52R1、およびKCNJ2遺伝子配列を含む核酸にハイブリダイズされた標識プローブ、バイオマーカー遺伝子配列にハイブリダイズされた該標識プローブ、またはそれらの補体を含み、該核酸は、生命を脅かす状態(例えば、敗血症、重度の外傷、もしくは火傷)を有する患者から抽出されるか、または生命を脅かす状態を有する患者から抽出された核酸の増幅産物である。プローブは、蛍光標識、生物発光標識、化学発光標識、比色標識、または同位体標識(例えば、安定な微量同位体または放射性同位体)を含むが、これらに限定されない任意の種類の標識で検出可能に標識され得る。ある特定の実施形態では、本組成物は検出デバイス(すなわち、標識プローブを検出することができるデバイス)内にある。
【0030】
当業者であれば、本明細書の開示に照らして、本発明のこれらおよび他の実施形態を容易に思いつくであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】発見データセットからのサマリーROC曲線を示す。入院時の敗血症患者の死亡率予測のための12遺伝子セットの予後力を示す。
【
図3】
図2の発見データセットにおけるサマリーROC曲線のアルファおよびベータパラメータのフォレストプロットを示す。
【
図4】生存者の状態によって分けられた発見コホートにおける個々の患者の12遺伝子スコアのバイオリンプロットを示す。内側の棒は、平均および四分位範囲を示す。
【
図5】生存者の状態によって分けられた発見コホートにおける個々の患者の12遺伝子スコアのバイオリンプロットを示す。内側の棒は、平均および四分位範囲を示す。
【
図6】生存者の状態によって分けられた発見コホートにおける個々の患者の12遺伝子スコアのバイオリンプロットを示す。内側の棒は、平均および四分位範囲を示す。
【
図7】検証データセットからのサマリーROC曲線を示す。入院時の敗血症患者の死亡率予測のための12遺伝子セットの予後力を示す。
【
図8】
図7の検証データセットにおけるサマリーROC曲線のアルファおよびベータパラメータのフォレストプロットを示す。
【
図9】生存者の状態によって分けられた検証コホートにおける個々の患者の12遺伝子スコアのバイオリンプロットを示す。内棒は平均および四分位範囲を示す。
【
図10A】検証データセットGSE21802からの時系列データを示す。
図10Aは、入院してからの時間の瓶に分けられた死亡率予測のROCプロットを示す。
図10Bは、生存者の状態によって分けられた個々の患者の軌跡を示す。
【
図10B】検証データセットGSE21802からの時系列データを示す。
図10Aは、入院してからの時間の瓶に分けられた死亡率予測のROCプロットを示す。
図10Bは、生存者の状態によって分けられた個々の患者の軌跡を示す。
【
図11A】検証データセットGSE54514からの時系列データを示す。
図11Aは、入院してからの時間の瓶に分けられた死亡率予測のROCプロットを示す。
図11Bは、生存者の状態によって分けられた個々の患者の軌跡を示す。
【
図11B】検証データセットGSE54514からの時系列データを示す。
図11Aは、入院してからの時間の瓶に分けられた死亡率予測のROCプロットを示す。
図11Bは、生存者の状態によって分けられた個々の患者の軌跡を示す。
【
図12A】Glue Grant外傷-軟膜コホートからの時系列データを示す。
図12Aは、生存者の状態によって分けられた12遺伝子スコアの個々の患者の軌跡を示す。
図12Bは、生存者の状態によって分けられたMODSスコアの個々の患者の軌跡を示す。
【
図12B】Glue Grant外傷-軟膜コホートからの時系列データを示す。
図12Aは、生存者の状態によって分けられた12遺伝子スコアの個々の患者の軌跡を示す。
図12Bは、生存者の状態によって分けられたMODSスコアの個々の患者の軌跡を示す。
【
図13A】Glue Grant外傷-軟膜コホートにおける入院してからの時間の瓶に分けられた死亡率予測のROCプロットを示す。
図13Aは、診断時の6日目~10日目の時間枠における敗血症患者(N=12人の生存者、非TBI死亡1人)を示す。
図13Bは、入院してからの日数に基づいて瓶に分けられた全ての患者を示す。全死因死亡率予測を示す。0日目のN=179人の生存者および8人の非生存者;後の時点は同じ患者を示す。
【
図13B】Glue Grant外傷-軟膜コホートにおける入院してからの時間の瓶に分けられた死亡率予測のROCプロットを示す。
図13Aは、診断時の6日目~10日目の時間枠における敗血症患者(N=12人の生存者、非TBI死亡1人)を示す。
図13Bは、入院してからの日数に基づいて瓶に分けられた全ての患者を示す。全死因死亡率予測を示す。0日目のN=179人の生存者および8人の非生存者;後の時点は同じ患者を示す。
【
図14A】Glue Grant火傷-全血コホートからの時系列データを示す。
図14Aは、生存者の状態によって分けられた12遺伝子スコアの個々の患者の軌跡を示す。
図14Bは、生存者の状態によって分けられたDenverスコアの個々の患者の軌跡を示す。
【
図14B】Glue Grant火傷-全血コホートからの時系列データを示す。
図14Aは、生存者の状態によって分けられた12遺伝子スコアの個々の患者の軌跡を示す。
図14Bは、生存者の状態によって分けられたDenverスコアの個々の患者の軌跡を示す。
【
図15A】Glue Grant火傷-全血コホートにおける入院してからの時間の瓶に分けられた死亡率予測のROCプロットを示す。
図15Aは、診断時の1日目~3日目(N=63人の生存者、3人の非生存者)および3日目~7日目(N=15人の生存者、5人の非生存者)の時間枠での敗血症患者を示す。
図15Bは、入院してからの日数に基づいて瓶に分けられた全ての患者を示す。全死因死亡率予測を示す。0日目のN=212人の生存者および22人の非生存者;後の時点は同じ患者を示す。
【
図15B】Glue Grant火傷-全血コホートにおける入院してからの時間の瓶に分けられた死亡率予測のROCプロットを示す。
図15Aは、診断時の1日目~3日目(N=63人の生存者、3人の非生存者)および3日目~7日目(N=15人の生存者、5人の非生存者)の時間枠での敗血症患者を示す。
図15Bは、入院してからの日数に基づいて瓶に分けられた全ての患者を示す。全死因死亡率予測を示す。0日目のN=212人の生存者および22人の非生存者;後の時点は同じ患者を示す。
【
図16A】122遺伝子セット(
図16A)および12遺伝子セット(
図16B)の細胞型富化プロットを示す。示されるインビトロ細胞型に選別された全ての各遺伝子セットの富化のZスコアを示す。
【
図16B】122遺伝子セット(
図16A)および12遺伝子セット(
図16B)の細胞型富化プロットを示す。示されるインビトロ細胞型に選別された全ての各遺伝子セットの富化のZスコアを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施は、別途指示されない限り、当該技術分野内の薬理学、化学、生化学、組換えDNA技法、および免疫学の従来の方法を用いる。かかる技法は、文献で十分に説明されている。例えば、J.R.Brown Sepsis:Symptoms,Diagnosis and Treatment(Public Health in the 21st Century Series,Nova Science Publishers,Inc.,2013)、Sepsis and Non-infectious Systemic Inflammation:From Biology to Critical Care(J.Cavaillon,C.Adrie eds.,Wiley-Blackwell,2008)、Sepsis:Diagnosis,Management and Health Outcomes(Allergies and Infectious Diseases,N.Khardori ed.,Nova Science Pub Inc.,2014)、Handbook of Experimental Immunology,Vols.I-IV(D.M.Weir and C.C.Blackwell eds.,Blackwell Scientific Publications)、A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.,current addition)、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition,2001)、Methods In Enzymology(S.Colowick and N.Kaplan eds.,Academic Press,Inc.)を参照のこと。
【0033】
本明細書で引用される全ての出版物、特許、および特許出願は、上記または以下のものにかかわらず、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0034】
I.定義
本発明を説明する際に、以下の用語が用いられ、以下に示されるように定義されることが意図されている。
【0035】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるとき、文脈が別途明確に指示しない限り、単数形「a」、「an」、および「the」が複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「1つのバイオマーカー(a biomarker)」への言及は、2つ以上のバイオマーカーの混合物を含むといった具合である。
【0036】
「約」という用語は、特に所与の量に関して、±5パーセントの偏差を包含することが意図されている。
【0037】
「生存」という用語は、本明細書に記載されるバイオマーカーを使用して対象の死亡リスクを判定した時間から死亡するまでの時間を意味する。
【0038】
本明細書で使用される「生存者」という用語は、少なくとも30日以上生存する対象を指す。
【0039】
本明細書で使用される「非生存者」という用語は、30日以内に死亡する対象を指す。
【0040】
本発明との関連での「バイオマーカー」は、重篤な疾病または状態(例えば、敗血症、重度の外傷、または火傷)の非生存者から採取された同等の試料と比較して、生存者から採取された試料で差次的に発現されるポリヌクレオチド等の生物学的化合物を指す。バイオマーカーは、検出および/または定量化され得る核酸、核酸断片、ポリヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドであり得る。バイオマーカーとしては、DEFA4、CD163、PER1、RGS1、HIF1A、SEPP1、C11orf74、CIT、LY86、TST、OR52R1、およびKCNJ2を含むが、これらに限定されない、遺伝子または遺伝子のRNA転写物由来のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。
【0041】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指し、最小長に限定されない。したがって、ペプチド、オリゴペプチド、二量体、多量体等は、この定義内に含まれる。全長タンパク質およびその断片の両方が、この定義によって包含される。これらの用語は、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、水酸化、酸化等も含む。
【0042】
「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」、および「核酸分子」という用語は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかの任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を含むように本明細書で使用される。この用語は、分子の一次構造のみを指す。したがって、この用語は、三本鎖、二本鎖、および一本鎖DNA、ならびに三本鎖、二本鎖、および一本鎖RNAを含む。これは、メチル化および/またはキャッピング等の修飾、ならびにポリヌクレオチドの非修飾形態も含む。より具体的には、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」、および「核酸分子」という用語は、ポリデオキシリボヌクレオチド(2-デオキシ-D-リボース含有)、ポリリボヌクレオチド(D-リボース含有)、およびプリンまたはピリミジン塩基のN-またはC-グリコシドである任意の他の種類のポリヌクレオチドを含む。「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」、および「核酸分子」という用語間の長さの意図された区別はなく、これらの用語は、同義に使用される。
【0043】
「差次的に発現される」という句は、30日以内に死亡するリスクの低い対照対象(すなわち、生存者)と比較して、30日以内に死亡するリスクの高い、生命を脅かす状態(例えば、敗血症、重度の外傷、または火傷)を有する患者(すなわち、非生存者)から採取された試料中に存在するバイオマーカーの量および/または頻度の差異を指す。例えば、バイオマーカーは、対照対象の試料と比較して、上昇したレベルまたは低下したレベルで敗血症を有する患者の試料中に存在するポリヌクレオチドであり得る。代替的に、バイオマーカーは、対照対象の試料と比較してより高い頻度またはより低い頻度で30日以内に死亡するリスクが高い患者(すなわち、非生存者)の試料中で検出されるポリヌクレオチドであり得る。バイオマーカーは、量、頻度、またはこれらの両方の点で差次的に存在し得る。
【0044】
ポリヌクレオチドは、一方の試料中のポリヌクレオチドの量が他方の試料中のポリヌクレオチドの量とは統計的に有意に異なる場合、2つの試料間で差次的に発現される。例えば、ポリヌクレオチドは、一方が他方の試料中に存在するポリヌクレオチドを少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約150%、少なくとも約180%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約500%、少なくとも約700%、少なくとも約900%、もしくは少なくとも約1000%上回る場合、またはそれが一方の試料で検出可能であるが、他方では検出不可能である場合、2つの試料で差次的に発現される。
【0045】
代替的に、または加えて、ポリヌクレオチドは、30日以内に死亡するリスクの高い患者の試料中のポリヌクレオチドを検出する頻度が対照試料よりも統計的に有意に高いまたは低い場合、2組の試料で差次的に発現される。例えば、ポリヌクレオチドは、一方の組の試料中のポリヌクレオチドが他方の組の試料で観察される頻度よりも少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約150%、少なくとも約180%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約500%、少なくとも約700%、少なくとも約900%、または少なくとも約1000%高い頻度または低い頻度で検出される場合、2組の試料で差次的に発現される。
【0046】
「類似値」とは、比較される2つのもの間の類似性の程度を表す数である。例えば、類似値は、特異的表現型関連バイオマーカーを使用した患者の発現プロファイルと、1つ以上の対照試料または基準発現プロファイル中のバイオマーカーの基準値範囲との間の全類似性(例えば、「生存者」発現プロファイルまたは「非生存者」発現プロファイルとの類似性)を示す数であり得る。類似値は、相関係数等の類似性測定基準として表され得るか、または単に発現レベルの差異として、もしくは患者試料中のバイオマーカーレベルと対照試料もしくは基準発現プロファイル中のバイオマーカーレベルとの間の発現レベルの差異の総計として表され得る。
【0047】
「対象」、「個体」、および「患者」という用語は、本明細書で同義に使用され、診断、予後診断、治療、または療法が所望される任意の哺乳類対象、特に、ヒトを指す。他の対象としては、ウシ、イヌ、ネコ、テンジクネズミ、ウサギ、ラット、マウス、ウマ等が挙げられ得る。いくつかの場合では、本発明の方法は、実験動物、獣医学的用途、および疾患動物モデル(マウス、ラット、およびハムスターを含む齧歯類、ならびに霊長類を含むが、これらに限定されない)の開発における使用を見出す。
【0048】
本明細書で使用される、「生物学的試料」とは、例えば、血液、軟膜、血漿、血清、血球(例えば、末梢血単核細胞(PBMC)、帯状核細胞、好中球、後骨髄球、単球、またはT細胞)、糞便、尿、骨髄、胆汁、髄液、リンパ液、皮膚試料、皮膚、呼吸器、腸管、および尿生殖路の外分泌物、涙液、唾液、乳液、臓器、生検を含むが、これらに限定されない、対象から単離された組織、細胞、または体液の試料を指し、培養培地での細胞および組織の成長由来の馴化培地、例えば、組換え細胞、および細胞構成要素を含むが、これらに限定されない、インビトロ細胞培養成分の試料も指す。
【0049】
バイオマーカーの「試験量」とは、試験される試料中に存在するバイオマーカーの量を指す。試験量は、絶対量(例えば、μg/mL)または相対量(例えば、シグナルの相対強度)のいずれかであり得る。
【0050】
バイオマーカーの「診断量」とは、敗血症の診断または死亡率の予後診断と一致した対象の試料中のバイオマーカーの量を指す。診断量は、絶対量(例えば、μg/mL)または相対量(例えば、シグナルの相対強度)のいずれかであり得る。
【0051】
バイオマーカーの「対照量」は、バイオマーカーの試験量に対して比較される任意の量または量の範囲であり得る。例えば、バイオマーカーの対照量は、生命を脅かす状態を有しない個人(例えば、敗血症、重症の外傷、もしくは火傷を有しない個人)、健康な個人、または生存者のバイオマーカーの量であり得る。対照量は、絶対量(例えば、μg/mL)または相対量(例えば、シグナルの相対強度)のいずれかであり得る。
【0052】
「抗体」という用語は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体調製物、ならびにハイブリッド抗体、改変抗体、キメラ抗体、およびヒト化抗体を含む調製物、ならびにハイブリッド(キメラ)抗体分子(例えば、Winter et al.(1991)Nature 349:293-299、および米国特許第4,816,567号を参照のこと)、F(ab′)2およびF(ab)断片、Fv分子(非共有結合ヘテロ二量体、例えば、Inbar et al.(1972)Proc Natl Acad Sci USA 69:2659-2662、およびEhrlich et al.(1980)Biochem 19:4091-4096を参照のこと)、一本鎖Fv分子(sFv)(例えば、Huston et al.(1988)Proc Natl Acad Sci USA 85:5879-5883を参照のこと)、二量体および三量体抗体断片構築体、ミニボディ(例えば、Pack et al.(1992)Biochem 31:1579-1584、Cumber et al.(1992)J Immunology 149B:120-126を参照のこと)、ヒト化抗体分子(例えば、Riechmann et al.(1988)Nature 332:323-327、Verhoeyan et al.(1988)Science 239:1534-1536、および英国特許公開第GB 2,276,169号、1994年9月21日公開を参照のこと)、ならびにかかる分子から得られる任意の機能断片(かかる断片は親抗体分子の特異的結合特性を保持する)を包含する。
【0053】
本発明での使用に企図される「検出可能な部分」または「検出可能な標識」としては、放射性同位体、蛍光色素、例えば、フルオレセイン、フィコエリトリン、Cy-3、Cy-5、アロフィコシアニン、DAPI、Texas Red、ローダミン、Oregon green、Lucifer yellow等、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(DsRed)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、Cerianthus橙色蛍光タンパク質(cOFP)、アルカリホスファターゼ(AP)、ベータ-ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(neor、G418r)ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、ハイグロマイシン-B-ホスホトランスフェラーゼ(HPH)、チミジンキナーゼ(TK)、lacZ(β-ガラクトシダーゼをコードする)、およびキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT)、ベータ-グルクロニダーゼ(gus)、胎盤アルカリホスファターゼ(PLAP)、分泌胚アルカリホスファターゼ(SEAP)、または蛍もしくは細菌ルシフェラーゼ(LUC)が挙げられるが、これらに限定されない。酵素タグは、それらの同族基質とともに使用される。これらの用語には、既知の蛍光光度の色分けされたマイクロスフェア(例えば、Luminex(Austin,TXによって製造されたxMAP技術を有するマイクロスフェアを参照のこと)、量子ドットのナノ結晶を含有する、例えば、量子ドット色の異なる比率および組み合わせを含有するマイクロスフェア(例えば、Qdot nanocrystals produced by Life Technologies(Carlsbad,CA)、ガラスコーティングされた金属ナノ粒子(例えば、Nanoplex Technologies,Inc.(Mountain View,CAによって製造されたSERSナノタグ、バーコード材料(例えば、Nanoplex Technologies,Inc.によって製造されたナノバーコード等のサブミクロンサイズのストライプ状の金属ロッドを参照のこと)、着色バーコードを有するコード化微粒子(例えば、Vitra Bioscience,vitrabio.comによって製造されたCellCardを参照のこと)、およびデジタルホログラフィックコード画像を有するガラス微粒子(例えば、Illumina(San Diego,CAによって製造されたCyVeraマイクロビーズを参照のこと)も含まれる。本発明の実施に関連した多くの標準的な手順と同様に、当業者であれば、使用され得るさらなる標識を認識するであろう。
【0054】
本明細書で使用される、「診断」は、一般に、対象が所与の疾患、障害、もしくは機能不全に罹患している可能性があるかの判定を含む。当業者は、多くの場合、1つ以上の診断指標、すなわち、疾患、障害、もしくは機能不全の存在もしくは不在を示すバイオマーカー、その存在、不在、または量に基づいて診断を行う。
【0055】
本明細書で使用される、「予後診断」は、一般に、臨床状態または疾患の可能性のある経過および転帰の予測を指す。患者の予後診断は、通常、好ましいまたは好ましくない疾患経過または転帰を示す疾患の要因または症状を評価することによって行われる。「予後診断」という用語が、必ずしも状態の経過または転帰を100%の精度で予測する能力を指すわけではないことが理解される。代わりに、当業者であれば、「予後診断」という用語が、ある特定の経過または転帰が起こる確率の増加を指す、すなわち、所与の状態を呈する個体と比較して、経過または転帰がその状態を呈する患者に起こる可能性がより高いことを理解する。
【0056】
「実質的に精製された」とは、それらの天然環境から取り除かれ、単離または分離され、かつ天然に会合する他の構成要素を少なくとも約60%含まない、好ましくは約75%含まない、最も好ましくは約90%含まない核酸分子またはタンパク質を指す。
【0057】
II.本発明の実行様式
本発明を詳細に説明する前に、本発明が、言うまでもなく異なり得る特定の処方またはプロセスパラメータに限定されないことを理解されたい。本明細書で使用される専門用語が本発明の特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することが意図されていないことも理解されたい。
【0058】
本明細書に記載される方法および材料と同様または同等のいくつかの方法および材料が本発明の実施に際して使用され得るが、好ましい材料および方法が本明細書に記載されている。
【0059】
本発明は、単独で、または重篤患者の診断、予後診断、および治療に役立つ臨床パラメータとの組み合わせのいずれかでのバイオマーカーの使用に関する。特に、本発明者らは、発現プロファイルが、敗血症、重度の外傷、または火傷を有する重篤患者における死亡率の予後診断のために使用され得るバイオマーカーを発見した(実施例1を参照のこと)。
【0060】
本発明をさらに理解するために、特定されたバイオマーカー、ならびに重篤患者の診断、予後診断、および治療にそれらを使用する方法に関して、以下により詳細に考察する。
【0061】
A.バイオマーカー
本発明の実施に際して使用され得るバイオマーカーとしては、DEFA4、CD163、PER1、RGS1、HIF1A、SEPP1、C11orf74、CIT、LY86、TST、OR52R1、およびKCNJ2を含むが、これらに限定されない、遺伝子または遺伝子のRNA転写物由来のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。これらのバイオマーカーの差次的発現は、高い死亡リスク(30日以内)と関連しており、したがって、これらのバイオマーカーの発現プロファイルは、重篤患者の死亡率の予後診断に有用である。
【0062】
したがって、一態様では、本発明は、対象の死亡リスクを判定するための方法を提供し、本方法は、生命を脅かす状態を有することが疑われる対象由来の生物学的試料中の複数のバイオマーカーレベルを測定することと、バイオマーカーレベルを分析し、バイオマーカーのそれぞれの基準値範囲と比較することとを含み、対照試料中の1つ以上のバイオマーカーと比較した生物学的試料中の1つ以上のバイオマーカーの差次的発現は、対象が30日以内に死亡するリスクが高いことを示す。
【0063】
生物学的試料中のバイオマーカーレベルを分析する場合、基準値範囲は、重篤な疾病を有しない1人以上の対象(例えば、生存者、健康な対象、または感染していない、もしくは負傷していない対象)の1つ以上の試料中に見られる1つ以上のバイオマーカーレベルを表し得る。代替的に、基準値は、重篤な疾病を有する1人以上の対象(例えば、非生存者、敗血症/感染症、重度の外傷、または火傷を有する対象)の1つ以上の試料中に見られる1つ以上のバイオマーカーレベルを表し得る。ある特定の実施形態では、バイオマーカーレベルは、非感染および感染/敗血症対象または負傷した(例えば、重度の外傷もしくは火傷)もしくは負傷していない対象の時間一致基準値範囲と比較される。
【0064】
診断される対象から得られる生物学的試料は、典型的には、全血、軟膜、血漿、血清、または血球(例えば、末梢血単核細胞(PBMC)、帯状核細胞、後骨髄球、好中球、単球、またはT細胞)であるが、発現されたバイオマーカーを含有する体液、組織、または細胞由来の任意の試料であり得る。本明細書で使用される、「対照」試料とは、罹患していない体液、組織、または細胞等の生物学的試料を指す。すなわち、対照試料は、正常な対象(例えば、生命を脅かす状態を有しないことが知られている個体)、敗血症、重度の外傷、もしくは火傷を有しない個人、または生存者から得られる。生物学的試料は、従来の技法により対象から得ることができる。例えば、血液は、静脈穿刺により得ることができ、固体組織試料は、当該技術分野で周知の方法に従って外科的技法により得ることができる。
【0065】
ある特定の実施形態では、バイオマーカーパネルは死亡リスクの予後診断に使用される。任意のサイズのバイオマーカーパネルは本発明の実施に際して使用され得る。死亡率の予後診断のためのバイオマーカーパネルは、典型的には、少なくとも3個のバイオマーカー~最大30個のバイオマーカーを含み、それらの間の任意の数のバイオマーカー、例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、または30個のバイオマーカーを含む。ある特定の実施形態では、本発明は、少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個、または少なくとも6個、または少なくとも7個、または少なくとも8個、または少なくとも9個、または少なくとも10個、または少なくとも11個、またはそれ以上のバイオマーカーを含むバイオマーカーパネルを含む。通常、より小さいバイオマーカーパネルがより経済的であるが、より大きいバイオマーカーパネル(すなわち、30個を超えるバイオマーカー)がより詳細な情報の提供に有利であり、本発明の実施に際しても使用され得る。
【0066】
ある特定の実施形態では、本発明は、DEFA4、CD163、PER1、RGS1、HIF1A、SEPP1、C11orf74、CIT、LY86、TST、OR52R1、およびKCNJ2からなる群から選択される、遺伝子または遺伝子のRNA転写物由来のヌクレオチド配列を含む1つ以上のポリヌクレオチドを含む死亡リスクの予後診断のためのバイオマーカーパネルを含む。一実施形態では、バイオマーカーパネルは、DEFA4ポリヌクレオチド、CD163ポリヌクレオチド、PER1ポリヌクレオチド、RGS1ポリヌクレオチド、HIF1Aポリヌクレオチド、SEPP1ポリヌクレオチド、C11orf74ポリヌクレオチド、CITポリヌクレオチド、LY86ポリヌクレオチド、TSTポリヌクレオチド、OR52R1ポリヌクレオチド、およびKCNJ2ポリヌクレオチドを含む。
【0067】
ある特定の実施形態では、死亡遺伝子スコアは死亡リスクの予後診断に使用される。死亡遺伝子スコアは、バイオマーカーの対照基準値と比較して過剰発現している全ての測定されたバイオマーカーの発現レベルの幾何平均から、バイオマーカーの対照基準値と比較して過小発現している全ての測定されたバイオマーカーの発現レベルの幾何平均を差し引き、その差に、バイオマーカーの対照基準値と比較して過剰発現しているバイオマーカーの数と過小発現しているバイオマーカーの数との比率を乗じることによって計算される。対照対象の基準値範囲と比較してより高い対象の死亡遺伝子スコアは、対象が30日以内に死亡するリスクが高いことを示す(実施例1を参照のこと)。
【0068】
本明細書に記載される方法は、即時に集中治療を受けるべき死亡リスクの高い患者を特定するために使用され得る。例えば、本明細書に記載される方法により30日以内に死亡するリスクが高いと特定された患者は、治療のためにICUに直ちに送られ得るが、30日以内に死亡するリスクが低いと特定された患者は、通常の病棟でさらに監視され、かつ/または治療され得る。患者と臨床医の両方が、患者の意向および救命措置に関する選択肢のタイムリーな考察を可能にする、死亡リスクのより良好な推定から利益を受けることができる。患者の良好な分子表現型により、1)薬物および介入に関する患者の選択、ならびに2)対象死亡率の観察値対期待値比の評価の両方において、臨床試験における改善も可能となる。
【0069】
30日以内に死亡するリスクが高いと特定された患者のICU治療は、身体機能の継続的な監視と、正常な身体機能を回復するための生命維持装置および/または薬物の提供とを含み得る。ICU治療には、例えば、呼吸を補助するための人工呼吸器、身体機能(例えば、心臓および脈拍数、肺への空気流、血圧および血流、中心静脈圧、血液中の酸素量、および体温)を監視するための機器、ペースメーカー、除細動器、透析装置、静脈ライン、栄養チューブ、吸引ポンプ、排水管、および/もしくはカテーテルを使用すること、ならびに/または生命を脅かす状態(例えば、敗血症、重度の外傷、もしくは火傷)を治療するための様々な薬物を投与することを含み得る。ICU治療は、疼痛を低減するための1つ以上の鎮痛剤、および/または睡眠を誘導するため、もしくは不安を軽減するための鎮静剤、および/または昏睡を医学的に誘導するバルビツール酸(例えば、ペントバルビタールまたはチオペンタール)の投与をさらに含み得る。
【0070】
ある特定の実施形態では、ウイルス感染と診断された重篤患者は、広域スペクトル抗ウイルス剤、抗ウイルスワクチン、ノイラミニダーゼ阻害剤(例えば、ザナミビル(Relenza)およびオセルタミビル(Tamiflu))、ヌクレオシド類似体(例えば、アシクロビル、ジドブジン(AZT)、およびラミブジン)、アンチセンス抗ウイルス剤(例えば、ホスホロチオエートアンチセンス抗ウイルス剤(例えば、サイトメガロウイルス網膜炎のためのホミビルセン(Vitravene)、モルホリノアンチセンス抗ウイルス剤)、ウイルス脱殻阻害剤(例えば、インフルエンザのためのアマンタジンおよびリマンタジン、ライノウイルスのためのプレコナリル)、ウイルス侵入阻害剤(例えば、HIVのためのFuzeon)、ウイルス集合阻害剤(例えば、リファンピシン)、または免疫系を刺激する抗ウイルス剤(例えば、インターフェロン)等の、治療有効量の抗ウイルス剤をさらに投与される。例示的な抗ウイルス剤としては、アバカビル、アシクロビル(Aciclovir)、アシクロビル(Acyclovir)、アデホビル、アマンタジン、アンプレナビル、Ampligen、Arbidol、アタザナビル、Atripla(固定用量薬物)、バラビル、シドフォビル、Combivir(固定用量薬物)、ドルテグラビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフビルタイド(Enfuvirtide)、エンテカビル、エコリエベル、ファムシクロビル、固定用量組み合わせ(抗レトロウイルス)、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、融合阻害剤、ガンシクロビル、イバシタビン、イムノビル、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、イノシン、インテグラーゼ阻害剤、III型インターフェロン、II型インターフェロン、I型インターフェロン、インターフェロン、ラミブジン、ロピナビル、ロビリド、マラビロク、モロキシジン、メチサゾン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネキサビル、ニタゾキサニド、ヌクレオシド類似体、ノビル、オセルタミビル(Tamiflu)、ペグインターフェロンアルファ-2a、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害剤、ラルテグラビル、逆転写酵素阻害剤、リバビリン、リマンタジン、リトナビル、ピラミジン、サキナビル、ソフォスブビル、スタブジン、相乗作用エンハンサー(抗レトロウイルス)、テラプレビル、テノホビル、テノホビルジソプロキシル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バラシクロビル(Valtrex)、バルガンシクロビル、ビクリビロク、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル(Relenza)、およびジドブジンが挙げられる。
【0071】
ある特定の実施形態では、細菌感染と診断された重篤患者は、治療有効量の抗生物質をさらに投与される。抗生物質には、広域スペクトル、殺菌性または静菌性の抗生物質が含まれ得る。例示的な抗生物質としては、アミカシン、Amikin、ゲンタマイシン、Garamycin、カナマイシン、Kantrex、ネオマイシン、Neo-Fradin、ネチルミシン、Netromycin、トブラマイシン、Nebcin、パロモマイシン、Humatin、ストレプトマイシン、スペクチノマイシン(Bs)、およびトロビシン等のアミノグリコシド;ゲルダナマイシン、ハービマイシン、リファキシミン、およびXifaxan等のアンサマイシン;ロラカルベフおよびLorabid等のカルバセフェム;エルタペネム、Invanz、ドリペネム、Doribax、イミペネム/シラスタチン、Primaxin、メロペネム、およびMerrem等のカルバペネム;セファドロキシル、Duricef、セファゾリン、Ancef、セファロチンまたはセファロチン(Cefalothin)、Keflin、セファレキシン、Keflex、Cefaclor、Distaclor、セファマンドール、Mandol、セフォキシチン、Mefoxin、セフプロジル、Cefzil、セフロキシム、Ceftin、Zinnat、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアクソン、セフェピム、Maxipime、セフタロリンフォサミル、Teflaro、セフトビプロール、およびZeftera等のセファロスポリン;クリンダマイシン、Cleocin、リンコマイシン、およびLincocin等のリンコサミド;ダプトマイシンおよびCubicin等のリポペプチド;アジスロマイシン、Zithromax、Sumamed、Xithrone、クラリスロマイシン、Biaxin、ジリスロマイシン、Dynabac、エリトロマイシン、Erythocin、Erythroped、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、Tao、テリスロマイシン、Ketek、スピラマイシン、およびRovamycine等のマクロライド;アズトレオナムおよびAzactam等のモノバクタム;フロゾリドン、Furoxone、ニトロフラントイン、Macrodantin、およびMacrobid等のニトロフラン;リネゾリド、Zyvox、VRSA、ポシゾリド、ラデゾリド、およびトレゾリド等のオキサゾリジノン;ペニシリンV、Veetids(Pen-Vee-K)、ピペラシリン、ピプラシル、ペニシリンG、Pfizerpen、テモシリン、Negaban、チカルシリン、およびTicar等のペニシリン;アモキシシリン/クラブラン酸塩、Augmentin、アンピシリン/スルバクタム、Unasyn、ピペラシリン/タゾバクタム、Zosyn、チカルシリン/クラブラン酸塩、およびTimentin等のペニシリンの組み合わせ;バシトラシン、コリスチン、Coly-Mycin-S、およびポリミキシンB等のポリペプチド;シプロフロキサシン、Cipro、Ciproxin、Ciprobay、エノキサシン、Penetrex、ガチフロキサシン、Tequin、ゲミフロキサシン、Factive、レボフロキサシン、Levaquin、ロメフロキサシン、Maxaquin、モキシフロキサシン、Avelox、ナリジクス酸、NegGram、ノルフロキサシン、Noroxin、オフロキサシン、Floxin、Ocuflox トロバフロキサシン、Trovan、グレパフロキサシン、Raxar、スパルフロキサシン、Zagam、テマフロキサシン、およびOmniflox等のキノロン/フルオロキノロン;アモキシシリン、Novamox、Amoxil、アンピシリン、Principen、アズロシリン、カルベニシリン、Geocillin、クロキサシリン、Tegopen、ジクロキサシリン、Dynapen、フルクロキサシリン、Floxapen、メズロシリン、Mezlin、メチシリン、Staphcillin、ナフシリン、Unipen、オキサシリン、Prostaphlin、ペニシリンG、Pentids、マフェニド、Sulfamylon、スルファセタミド、Sulamyd、Bleph-10、スルファジアジン、Micro-Sulfon、スルファジアジン銀、Silvadene、スルファジメトキシン Di-Methox、Albon、スルファメチゾール、Thiosulfil Forte、スルファメトキサゾール、Gantanol、スルファニルイミド、スルファサラジン、Azulfidine、スルフイソキサゾール、Gantrisin、トリメトプリム-スルファメトキサゾール(コトリモキサゾール)(TMP-SMX)、Bactrim、Septra、スルホンアミドクリソイジン、およびProntosil等のスルホンアミド;デメクロサイクリン、Declomycin、ドキシサイクリン、Vibramycin、ミノサイクリン、Minocin、オキシテトラサイクリン、Terramycin、テトラサイクリン、ならびにSumycin、Achromycin V、およびSteclin等のテトラサイクリン;クロファジミ、Lamprene、ダプソン、Avlosulfon、カプレオマイシン、Capastat、サイクロセリン、Seromycin、エタンブトール、Myambutol、エチオナミド、Trecator、イソニアジドI.N.H.、ピラジナミド、Aldinamide、リファンピシン、Rifadin、Rimactane、リファブチン、Mycobutin、リファペンチン、Priftin、およびストレプトマイシン等のマイコバクテリアに対する薬物;アルスフェナミン、Salvarsan、クロラムフェニコール、Chloromycetin、ホスホマイシン、Monurol、フシジン酸、Fucidin、メトロニダゾール、Flagyl、ムピロシン、Bactroban、プラテンシマイシン、キヌプリスチン/ダルホプリスチン、Synercid、チアンフェニコール、チゲサイクリン、Tigacyl、チニダゾール、Tindamax Fasigyn、トリメトプリム、Proloprim、ならびにTrimpexを挙げることができる。
【0072】
別の実施形態では、本発明は、感染症を有する患者を診断および治療する方法を含み、本方法は、a)患者から生物学的試料を得ることと、b)生物学的試料中のDEFA4、CD163、PER1、RGS1、HIF1A、SEPP1、C11orf74、CIT、LY86、TST、OR52R1、およびKCNJ2バイオマーカーの発現レベルを測定することであって、対照対象のバイオマーカーの基準値範囲と比較して、増加したDEFA4、CD163、PER1、RGS1、HIF1A、SEPP1、C11orf74、およびCITバイオマーカーの発現レベル、ならびに減少したLY86、TST、OR52R1、およびKCNJ2バイオマーカーの発現レベルが、患者が敗血症を有することを示す、測定することと、c)患者が敗血症と診断された場合、敗血症治療を施すことと、を含む。いくつかの実施形態では、本発明は、バイオマーカーのレベルに基づいて患者の死亡遺伝子スコアを計算することであって、対照対象と比較した患者のより高い死亡遺伝子スコアが、患者が30日以内に死亡するリスクが高いことを示す、計算することと、患者が30日以内に死亡するリスクが高い場合、患者に集中治療室治療を施すことと、をさらに含む。
【0073】
敗血症治療は、例えば、抗菌療法、支持療法、もしくは免疫調節療法、またはそれらの組み合わせを施すことを含み得る。抗菌療法には、抗菌剤の組み合わせを用いて、好ましくは広域スペクトル範囲で患者が感染する可能性のある全ての病原体(例えば、細菌および/または真菌および/またはウイルス)に対する1つ以上の薬剤の投与が含まれ得る。併用抗菌療法は、少なくとも2つの異なるクラスの抗生物質(例えば、マクロライド、フルオロキノロンまたはアミノグリコシドを含むベータ-ラクタム剤)を含み得る。広域スペクトル抗生物質は、抗真菌剤および/または抗ウイルス剤と組み合わせて投与することができる。敗血症に対する支持療法には、酸素の投与、輸血、人工換気、輸液療法(例えば、患者が血行力学的改善を示すまで晶質および/もしくはアルブミンによる流体投与が継続される)、栄養(例えば経口もしくは経腸栄養)、血糖値管理、昇圧剤療法(例えば、適切な血圧を維持するためのノルエピネフリン、エピネフリン、および/もしくはバソプレシンの投与)、変力療法(例えば、ドブタミン)、腎代替療法(例えば、透析)、重炭酸塩療法、静脈血栓塞栓症に対する薬物動態的予防(pharmacoprophylaxis)(例えば、ヘパリンもしくは間欠的空気圧迫装置を用いた治療)、ストレス潰瘍予防、鎮静、鎮痛、神経筋遮断、インスリン(例えば、安定した血糖値を維持するため)、またはコルチコステロイド(例えば、ヒドロコルチゾン)、またはそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。免疫調節療法には、活性化プロテインCの投与、免疫グロブリン療法、抗血小板療法、サイトカイン遮断療法、病原性タンパク質の透析もしくは抗生物質カートリッジを用いた透析、またはそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。
【0074】
B.バイオマーカーの検出および測定
試料中のバイオマーカーが当該技術分野で既知の任意の好適な方法によって測定され得ることが理解される。バイオマーカーの発現レベルの測定は、直接または間接であり得る。例えば、RNAまたはタンパク質の存在レベルは、直接定量化され得る。代替的に、バイオマーカーの量は、cDNA、増幅RNA、もしくはDNAの存在レベルを測定することによって、またはバイオマーカーの発現レベルを示すRNA、タンパク質、もしくは他の分子(例えば、代謝物)の量もしくは活性を測定することによって間接的に判定され得る。試料中のバイオマーカーを測定する方法は、多くの用途を有する。例えば、1つ以上のバイオマーカーを測定して、死亡リスクの予後診断を支援するか、対象に適切な治療を判定するか、治療への対象の応答を監視するか、またはインビボもしくはインビトロでバイオマーカーの発現を調節する治療化合物を特定することができる。
【0075】
バイオマーカーポリヌクレオチドの検出
一実施形態では、バイオマーカーの発現レベルは、バイオマーカーのポリヌクレオチドレベルを測定することによって判定される。特定のバイオマーカー遺伝子の転写物レベルは、生体試料中に存在するmRNAまたはそれ由来のポリヌクレオチドの量から判定され得る。ポリヌクレオチドは、マイクロアレイ分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、ノーザンブロット、および遺伝子発現連続分析(SAGE)を含むが、これらに限定されない様々な方法によって検出および定量化され得る。例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、Draghici Data Analysis Tools for DNA Microarrays,Chapman and Hall/CRC,2003、Simon et al.Design and Analysis of DNA Microarray Investigations,Springer,2004、Real-Time PCR:Current Technology and Applications,Logan,Edwards,and Saunders eds.,Caister Academic Press,2009、Bustin A-Z of Quantitative PCR(IUL Biotechnology,No.5),International University Line,2004、Velculescu et al(1995)Science 270:484-487、Matsumura et al.(2005)Cell.Microbiol.7:11-18、Serial Analysis of Gene Expression(SAGE):Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology),Humana Press,2008を参照のこと。
【0076】
一実施形態では、マイクロアレイを使用して、バイオマーカーレベルを測定する。マイクロアレイ分析の利点は、バイオマーカーの各々の発現が同時に測定され得ることであり、マイクロアレイは、特定の疾患または状態(例えば、敗血症)の診断発現プロファイルを提供するように具体的に設計され得る。
【0077】
マイクロアレイは、ポリヌクレオチド配列を含むプローブを選択し、その後、かかるプローブを固体支持体または表面に固定することによって調製される。例えば、プローブは、DNA配列、RNA配列、またはDNAおよびRNAのコポリマー配列を含み得る。プローブのポリヌクレオチド配列は、DNAおよび/もしくはRNA類似体、またはそれらの組み合わせも含み得る。例えば、プローブのポリヌクレオチド配列は、ゲノムDNAの完全または部分断片であり得る。プローブのポリヌクレオチド配列は、合成されたヌクレオチド配列、例えば、合成オリゴヌクレオチド配列でもあり得る。プローブ配列は、インビボで酵素的に、インビトロで酵素的に(例えば、PCRにより)、またはインビトロで非酵素的にのいずれかで合成され得る。
【0078】
本発明の方法で使用されるプローブは、好ましくは、多孔性または非多孔性のいずれかであり得る固体支持体に固定される。例えば、プローブは、ポリヌクレオチドの3’末端または5’末端のいずれかでニトロセルロースまたはナイロン膜またはフィルターに共有結合しているポリヌクレオチド配列であり得る。かかるハイブリダイゼーションプローブは、当該技術分野で周知である(例えば、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition,2001)を参照のこと。代替的に、固体支持体または表面は、ガラスまたはプラスチック表面であってもよい。一実施形態では、ハイブリダイゼーションレベルは、ポリヌクレオチドの集団、例えば、DNAもしくはDNA模倣物の集団、または代替的に、RNAもしくはRNA模倣物の集団に固定された表面上の固相からなるプローブのマイクロアレイに対して測定される。固相は、非多孔性材料、または任意に多孔性材料、例えば、ゲルであり得る。
【0079】
一実施形態では、マイクロアレイは、各々が本明細書に記載されるバイオマーカーのうちの1つを表す、結合(例えば、ハイブリダイゼーション)部位または「プローブ」の規則正しいアレイを有する支持体または表面を含む。好ましくは、マイクロアレイは、アドレス可能なアレイであり、より好ましくは、位置的にアドレス可能なアレイである。より具体的には、アレイの各プローブは、各プローブの同一性(すなわち、配列)がアレイにおける(すなわち、支持体または表面上の)その位置から判定され得るように、好ましくは、固体支持体上の既知の所定の位置に位置する。各プローブは、好ましくは、単一部位で固体支持体に共有結合している。
【0080】
マイクロアレイは、いくつかの方法で作製することができ、それらの方法のいくつかが以下に記載されている。それらがどのように産生されようと、マイクロアレイは、ある特定の特性を共有する。アレイは再現可能であり、所与のアレイの複数のコピーが産生され、互いに容易に比較されることを可能にする。好ましくは、マイクロアレイは、結合(例えば、核酸ハイブリダイゼーション)条件下で安定している材料から作製される。マイクロアレイは、一般に、小さく、例えば、1cm2~25cm2であるが、例えば、スクリーニングアレイでより大きいアレイを使用することもできる。好ましくは、マイクロアレイにおける所与の結合部位または固有のセットの結合部位は、細胞中の単一遺伝子の産物(例えば、特定のmRNA、またはそれ由来の特定のcDNA)に特異的に結合(例えば、ハイブリダイズ)する。しかしながら、一般に、他の関連または同様の配列が所与の結合部位に交差ハイブリダイズする。
【0081】
上記のように、特定のポリヌクレオチド分子が特異的にハイブリダイズする「プローブ」は、相補的なポリヌクレオチド配列を含む。マイクロアレイのプローブは、典型的には、1,000個以下のヌクレオチドのヌクレオチド配列からなる。いくつかの実施形態では、アレイのプローブは、10~1,000個のヌクレオチドのヌクレオチド配列からなる。一実施形態では、プローブのヌクレオチド配列は、10~200ヌクレオチド長の範囲であり、1種の生物のゲノム配列であり、これにより複数の異なるプローブが存在するようになり、配列が相補的であり、それ故に、ゲノムの全てまたは一部にわたって連続してタイルされたかかる種の生物のゲノムにハイブリダイズすることができる。他の実施形態では、プローブは、10~30ヌクレオチド長の範囲、10~40ヌクレオチド長の範囲、20~50ヌクレオチド長の範囲、40~80ヌクレオチド長の範囲、50~150ヌクレオチド長の範囲、80~120ヌクレオチド長の範囲、または60ヌクレオチド長である。
【0082】
プローブは、生物のゲノムの一部に対応するDNAまたはDNA「模倣物」(例えば、誘導体および類似体)を含み得る。別の実施形態では、マイクロアレイのプローブは、相補的RNAまたはRNA模倣物である。DNA模倣物は、特異的な、DNAとのワトソン-クリック様ハイブリダイゼーション、またはRNAとの特異的ハイブリダイゼーションが可能なサブユニットからなるポリマーである。核酸は、塩基部分、糖部分、またはリン酸骨格(例えば、ホスホロチオエート)で修飾され得る。
【0083】
DNAは、例えば、ゲノムDNAまたはクローン化配列のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によって得ることができる。PCRプライマーは、好ましくは、ゲノムDNAの特定の断片の増幅をもたらすゲノムの既知の配列に基づいて選択される。Oligoバージョン5.0(National Biosciences)等の当該技術分野で周知のコンピュータプログラムが、必要な特異性および最適な増幅特性を有するプライマーの設計に有用である。典型的には、マイクロアレイの各プローブは、10塩基長~50,000塩基長であり、通常、300塩基長~1,000塩基長である。PCR法が当該技術分野で周知であり、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Innis et al.,eds.,PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications,Academic Press Inc.,San Diego,Calif.(1990)に記載されている。制御ロボットシステムが核酸の単離および増幅に有用であることが当業者に明らかであろう。
【0084】
ポリヌクレオチドプローブを生成するための代替的な好ましい手段は、合成ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの合成(例えば、N-ホスホネートまたはホスホロアミダイト化学反応を使用)(Froehler et al.,Nucleic Acid Res.14:5399-5407(1986)、McBride et al.,Tetrahedron Lett.24:246-248(1983))による手段である。合成配列は、典型的には約10~約500塩基長、より典型的には、約20~約100塩基長、最も好ましくは約40~約70塩基長である。いくつかの実施形態では、合成核酸は、イノシンを含むが、これに限定されない非天然塩基を含む。上述のように、核酸類似体は、ハイブリダイゼーションの結合部位として使用され得る。好適な核酸類似体の一例は、ペプチド核酸である(例えば、Egholm et al.,Nature 363:566-568(1993)、米国特許第5,539,083号を参照のこと)。
【0085】
プローブは、好ましくは、結合エネルギー、塩基組成、配列複雑性、交差ハイブリダイゼーション結合エネルギー、および二次構造を考慮するアルゴリズムを使用して選択される。Friend et al.,国際特許出願公開第WO01/05935号(2001年1月25日公開)、Hughes et al.,Nat.Biotech.19:342-7(2001)を参照のこと。
【0086】
当業者であれば、陽性対照プローブ、例えば、標的ポリヌクレオチド分子の配列に対して相補的であり、ハイブリダイズ可能であることで知られているプローブ、および陰性対照プローブ、例えば、標的ポリヌクレオチド分子の配列に対して相補的ではなく、ハイブリダイズ可能でないことで知られているプローブがアレイに含まれるべきであることも理解するであろう。一実施形態では、陽性対照は、アレイの周囲長に沿って合成される。別の実施形態では、陽性対照は、アレイにわたる対角ストライプで合成される。さらに別の実施形態では、各プローブの逆補体は、プローブの位置の隣に合成されて、陰性対照としての役目を果たす。なお別の実施形態では、他の種の生物由来の配列が、陰性対照または「スパイクイン」対照として使用される。
【0087】
プローブは、例えば、ガラス、プラスチック(例えば、ポリプロピレン、ナイロン)、ポリアクリルアミド、ニトロセルロース、ゲル、または他の多孔性もしくは非多孔性材料から作製され得る固体支持体または表面に結合する。核酸を表面に結合するための方法の1つは、Schena et al,Science 270:467-470(1995)によって概説されるように、ガラスプレート上に印刷することによる方法である。この方法は、cDNAのマイクロアレイを調製するのに特に有用である(DeRisi et al,Nature Genetics 14:457-460(1996)、Shalon et al.,Genome Res.6:639-645(1996)、およびSchena et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93:10539-11286(1995)を参照のこと。参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。
【0088】
マイクロアレイを作製するための第2の方法により、高密度オリゴヌクレオチドアレイが産生される。in situ合成のためのフォトリソグラフィー技術を使用して表面上の定義された位置に、定義された配列に相補的な何千のオリゴヌクレオチドを含有するアレイを産生する技法(Fodor et al.,1991,Science 251:767-773、Pease et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91:5022-5026、Lockhart et al.,1996,Nature Biotechnology 14:1675、米国特許第5,578,832号、同第5,556,752号、および同第5,510,270号を参照のこと。それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)、または定義されたオリゴヌクレオチドの迅速な合成および沈着のための他の方法(Blanchard et al.,Biosensors&Bioelectronics 11:687-690、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)が知られている。これらの方法が使用される場合、既知の配列のオリゴヌクレオチド(例えば、60量体)が、誘導体化ガラススライド等の表面上で直接合成される。通常、産生されるアレイは、冗長であり、1つのRNA当たりいくつかのオリゴヌクレオチド分子を有する。
【0089】
マイクロアレイを作製するための他の方法、例えば、マスキング(Maskos and Southern,1992,Nuc.Acids.Res.20:1679-1684、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)による方法もまた使用してもよい。原則として、任意の種類のアレイ、例えば、ナイロンハイブリダイゼーション膜上のドットブロット(Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Edition,2001を参照のこと)が使用され得る。しかしながら、当業者が認識するように、ハイブリダイゼーション体積がより小さいため、多くの場合、非常に小さいアレイが好ましい。
【0090】
マイクロアレイは、例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,028,189号(Blanchard)、Blanchard et al.,1996,Biosensors and Bioelectronics 11:687-690、Blanchard,1998,Synthetic DNA Arrays in Genetic Engineering,Vol.20,J.K.Setlow,Ed.,Plenum Press,New York(111~123貢)によって記載される方法およびシステムを使用したオリゴヌクレオチド合成のためのインクジェット印刷デバイスを用いることによっても製造され得る。具体的には、かかるマイクロアレイのオリゴヌクレオチドプローブは、個々のヌクレオチド塩基を炭酸プロピレン等の高表面張力溶媒の「微液滴」中に連続して沈着させることによって、アレイで、例えば、ガラススライド上で合成される。微液滴は、小さい体積(例えば、100pL以下、より好ましくは50pL以下)を有し、(例えば、疎水性ドメインによって)マイクロアレイ上で互いに分離されて、アレイ要素(すなわち、異なるプローブ)の位置を画定する円形の表面張力ウェルを形成する。このインクジェット法によって製造されるマイクロアレイは、典型的には、高密度のものであり、好ましくは、1cm2当たり少なくとも約2,500個の異なるプローブの密度を有する。ポリヌクレオチドプローブは、ポリヌクレオチドの3’末端または5’末端のいずれかで支持体に共有結合している。
【0091】
マイクロアレイ分析によって測定され得るバイオマーカーポリヌクレオチドは、RNAまたはそれ由来の核酸(例えば、RNAポリメラーゼプロモーターを組み込むcDNAまたはcDNA由来の増幅RNA)、例えば、天然に存在する核酸分子、ならびに合成核酸分子を発現させることができる。一実施形態では、標的ポリヌクレオチド分子は、全細胞RNA、ポリ(A)+メッセンジャーRNA(mRNA)もしくはその画分、細胞質性mRNA、またはcDNAから転写されたRNA(すなわち、cRNA、例えば、Linsley & Schelterの米国特許出願第09/411,074号(1999年10月4日出願)、または米国特許第5,545,522号、同第5,891,636号、もしくは同第5,716,785号を参照のこと)を含むが、これらに限定されないRNAを含む。全およびポリ(A)+RNAを調製するための方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition,2001)に概説されている。RNAは、チオシアン酸グアニジン溶解後のCsCl遠心分離(Chirgwin et al.,1979,Biochemistry 18:5294-5299)を使用して、シリカゲルベースのカラム(例えば、RNeasy(Qiagen、Valencia,Calif.)もしくはStrataPrep(Stratagene、La Jolla,Calif.))を使用して、またはAusubel et al.,eds.,1989,Current Protocols In Molecular Biology,Vol.III,Green Publishing Associates,Inc.,John Wiley&Sons,Inc.,New York,(pp.13.12.1-13.12.5))に記載されるフェノールおよびクロロホルムを使用して、目的の細胞から抽出され得る。ポリ(A)+RNAは、例えば、オリゴ-dTセルロースでの選択によって、または代替的に、全細胞RNAのオリゴ-dT刺激逆転写によって選択され得る。RNAは、当該技術分野で既知の方法によって、例えば、ZnCl2とインキュベートしてRNAの断片を生成することによって断片化され得る。
【0092】
一実施形態では、全RNA、mRNA、またはそれらに由来する核酸は、生命を脅かす状態(例えば、敗血症、重度の外傷、または火傷)を有することが疑われる患者から採取した試料から単離される。特定の細胞であまり良好に発現されないバイオマーカーポリヌクレオチドは、正規化技法(Bonaldo et al.,1996,Genome Res.6:791-806)を用いて富化され得る。
【0093】
上述のように、バイオマーカーポリヌクレオチドは、1つ以上のヌクレオチドで検出可能に標識され得る。当該技術分野で既知の任意の方法を使用して、標的ポリヌクレオチドを標識することができる。好ましくは、この標識は、標識をRNAの長さに沿って均一に組み込み、より好ましくは、標識は、高度の効率で行われる。例えば、ポリヌクレオチドは、オリゴ-dT刺激逆転写によって標識され得る。逆転写において、ポリヌクレオチドの全長にわたって標識されたヌクレオチドを均一に取り込むために、ランダムプライマー(例えば、9量体)を使用することができる。代替的に、ランダムプライマーをポリヌクレオチドを増幅するために、PCR法またはT7プロモーターベースのインビトロ転写法と併せて使用することができる。
【0094】
検出可能な標識は、発光標識であり得る。例えば、蛍光標識、生物発光標識、化学発光標識、および比色標識が、本発明の実施に際して使用され得る。使用され得る蛍光標識としては、フルオレセイン、蛍光体、ローダミン、またはポリメチン色素誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、FluorePrime(Amersham Pharmacia,Piscataway,N.J.)、Fluoredite(Miilipore,Bedford,Mass.)、FAM(ABI,Foster City,Calif.)、およびCy3またはCy5(Amersham Pharmacia,Piscataway,N.J.)等の蛍光ホスホロアミダイトを含むが、これらに限定されない市販の蛍光標識が使用され得る。代替的に、検出可能な標識は、放射性標識ヌクレオチドであり得る。
【0095】
一実施形態では、患者試料由来のバイオマーカーポリヌクレオチド分子は、基準試料の対応するポリヌクレオチド分子とは差次的に標識される。基準は、正常な生物学的試料(すなわち、対照試料、例えば、生存者、または敗血症/感染症、火傷、もしくは外傷を有しない対象由来の血液)または基準生物学的試料(例えば、非生存者、または敗血症/感染症、火傷、もしくは外傷を有する対象由来の血液)由来のポリヌクレオチド分子を含み得る。
【0096】
核酸ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は、標的ポリヌクレオチド分子がアレイの相補的ポリヌクレオチド配列に、好ましくは、その相補的DNAが位置する特定のアレイ部位に特異的に結合または特異的にハイブリダイズするように選択される。上に位置する二本鎖プローブDNAを含有するアレイが、好ましくは、変性条件に供されて、標的ポリヌクレオチド分子との接触前にDNAを一本鎖にする。一本鎖プローブDNA(例えば、合成オリゴデオキシリボ核酸)を含むアレイは、例えば、自己相補的配列により生じるヘアピンまたは二量体を除去するために、標的ポリヌクレオチド分子との接触前に変性される必要があり得る。
【0097】
最適なハイブリダイゼーション条件は、プローブおよび標的核酸の長さ(例えば、200塩基を超えるオリゴマー対ポリヌクレオチド)および種類(例えば、RNAまたはDNA)に依存する。当業者であれば、オリゴヌクレオチドがより短くなると、満足できるハイブリダイゼーション結果のためにそれらの長さを調整して比較的均一の溶融温度を達成しなければならない場合があることを理解する。核酸の特異的な(すなわち、ストリンジェントな)ハイブリダイゼーション条件のための一般的なパラメータについては、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition,2001)およびAusubel et al.,Current Protocols In Molecular Biology,vol.2,Current Protocols Publishing,New York(1994)に記載されている。SchenaらのcDNAマイクロアレイの典型的なハイブリダイゼーション条件は、5倍SSC+0.2%SDS中での65℃で4時間のハイブリダイゼーション、その後、25℃の低ストリンジェンシー洗浄緩衝液中での洗浄(1倍SSC+0.2%SDS)、その後、25℃の高ストリンジェンシー洗浄緩衝液中での10分間洗浄(0.1倍SSC+0.2%SDS)である(Schena et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93:10614(1993))。有用なハイブリダイゼーション条件は、例えば、Tijessen,1993,Hybridization With Nucleic Acid Probes,Elsevier Science Publishers B.V.およびKricka,1992,Nonisotopic Dna Probe Techniques,Academic Press,San Diego,Calif.にも提供されている。特に好ましいハイブリダイゼーション条件は、1M NaCl、50mM MES緩衝液(pH6.5)、0.5%サルコシンナトリウムおよび30%ホルムアミド中での、プローブの平均溶融温度またはそれに近い温度(例えば、51℃以内、より好ましくは21℃以内)でのハイブリダイゼーションを含む。
【0098】
蛍光標識された遺伝子産物が使用される場合、マイクロアレイの各部位での蛍光発光は、好ましくは、走査型共焦点レーザー顕微鏡によって検出され得る。一実施形態では、適切な励起線を使用した別個の走査が、使用される2つのフルオロフォアの各々に行われる。代替的に、2つのフルオロフォアに特異的な波長での同時標本照射を可能にするレーザーが使用されてもよく、2つのフルオロフォアからの発光が同時に分析され得る(全ての目的のために参照によりその全体が組み込まれる、Shalon et al.,1996,“A DNA microarray system for analyzing complex DNA samples using two-color fluorescent probe hybridization,”Genome Research 6:639-645を参照のこと)。アレイは、コンピュータ制御X-Yステージおよび顕微鏡対物を有するレーザー蛍光スキャナで走査され得る。2つのフルオロフォアの連続励起が多線混合ガスレーザーで達成され、発光された光が波長によって分光され、2つの光電子増倍管で検出される。蛍光レーザー走査装置は、Schena et al.,Genome Res.6:639-645(1996)および本明細書に引用された他の参考文献に記載されている。代替的に、Ferguson et al.,Nature Biotech.14:1681-1684(1996)によって記載される光ファイバー束を用いて、多数の部位でmRNA存在量レベルを同時に監視することができる。
【0099】
一実施形態では、本発明は、DEFA4ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、CD163ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、PER1ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、RGS1ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、HIF1Aポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、SEPP1ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、C11orf74ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、CITポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、LY86ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、TSTポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、OR52R1ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、およびKCNJ2ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含む、マイクロアレイを含む。
【0100】
ポリヌクレオチドは、ノーザンブロット法、ヌクレアーゼ保護アッセイ、RNAフィンガープリント法、ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応、Qベータレプリカーゼ、等温増幅法、鎖置換増幅、転写ベースの増幅系、ヌクレアーゼ保護(S1ヌクレアーゼまたはRNAse保護アッセイ)、SAGE、ならびに参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、国際特許出願公開第WO88/10315号および同第WO89/06700号、ならびに国際特許出願第PCT/US87/00880号および同第PCT/US89/01025号に開示される方法を含むが、これらに限定されない他の方法によっても分析することができる。
【0101】
標準のノーザンブロットアッセイを使用して、当業者に既知の従来のノーザンハイブリダイゼーション技法に従って、RNA転写物の大きさを解明し、択一的にスプライスされたRNA転写物および試料中のmRNAの相対量を同定することができる。ノーザンブロットでは、RNA試料が、変性条件下でアガロースゲル中での電気泳動によって最初にサイズ分離される。その後、RNAが膜に移され、交差結合され、標識プローブとハイブリダイズされる。ランダム刺激、ニック翻訳、またはPCR生成DNAプローブ、インビトロ転写RNAプローブ、およびオリゴヌクレオチドを含む非同位体または高比活性放射性標識プローブが使用され得る。加えて、部分的相同性のみを有する配列(例えば、異なる種由来のcDNAまたはエクソンを含有し得るゲノムDNA断片)がプローブとして使用され得る。全長一本鎖DNAまたはそのDNA配列の断片のいずれかを含有する標識プローブ、例えば、放射性標識cDNAは、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、または少なくとも100連続ヌクレオチド長であり得る。プローブは、当業者に既知の多くの異なる方法のうちのいずれかによって標識され得る。これらの研究に最も一般的に用いられる標識は、放射性元素、酵素、紫外線光に曝されると蛍光を発する化学物質等である。いくつかの蛍光材料が既知であり、標識として利用され得る。これらには、フルオレセイン、ローダミン、オーラミン、Texas Red、AMCA blue、およびLucifer Yellowが含まれるが、これらに限定されない。特定の検出材料は、ヤギで調製され、かつイソチオシアネートを介してフルオレセインとコンジュゲートした抗ウサギ抗体である。タンパク質も、放射性元素または酵素で標識され得る。放射性標識は、現在利用可能な計数手順のうちのいずれかによって検出され得る。使用可能な同位体には、3H、14C、32P、35S、36Cl、35Cr、57Co、58Co、59Fe、90Y、125I、131I、および186Reが含まれるが、これらに限定されない。酵素標識も同様に有用であり、現在利用されている比色、分光測光、蛍光分光測光、電流測定、またはガス測定技法のうちのいずれかによって検出され得る。酵素は、カルボジイミド、ジイソシアネート、グルタルアルデヒド等の架橋分子との反応によって選択された粒子にコンジュゲートする。当業者に既知の任意の酵素が利用され得る。かかる酵素の例としては、ペルオキシダーゼ、ベータ-D-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ+ペルオキシダーゼ、およびアルカリホスファターゼが挙げられるが、これらに限定されない。米国特許第3,654,090号、同第3,850,752号、および同第4,016,043号が、例として、代替標識材料および方法のそれらの開示について参照される。
【0102】
ヌクレアーゼ保護アッセイ(リボヌクレアーゼ保護アッセイおよびS1ヌクレアーゼアッセイの両方を含む)を使用して、特異的mRNAを検出および定量化することができる。ヌクレアーゼ保護アッセイでは、アンチセンスプローブ(例えば、放射性標識または非同位体で標識されたもの)が、溶液中でRNA試料にハイブリダイズする。ハイブリダイゼーション後、一本鎖のハイブリダイズされていないプローブおよびRNAがヌクレアーゼによって分解される。アクリルアミドゲルを使用して、残りの保護された断片を分離する。典型的には、溶液ハイブリダイゼーションが膜ベースのハイブリダイゼーションよりも効率的であり、最大20~30μgのブロットハイブリダイゼーションと比較して最大100μgの試料RNAを収容することができる。
【0103】
最も一般的な種類のヌクレアーゼ保護アッセイであるリボヌクレアーゼ保護アッセイは、RNAプローブの使用を必要とする。オリゴヌクレオチドおよび他の一本鎖DNAプローブは、S1ヌクレアーゼを含有するアッセイでのみ使用され得る。一本鎖アンチセンスプローブは、典型的には、ヌクレアーゼによる標的ハイブリッド:プローブの切断を阻止するために標的RNAと完全に相同でなければならない。
【0104】
連続分析遺伝子発現(SAGE)を使用して、細胞試料中のRNA存在量を判定することもできる。例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、Velculescu et al.,1995,Science 270:484-7、Carulli,et al.,1998,Journal of Cellular Biochemistry Supplements 30/31:286-96を参照のこと。SAGE分析は、検出に特別なデバイスを必要とせず、多数の転写産物の発現を同時に検出するための好ましい分析方法のうちの1つである。最初に、ポリA+RNAが細胞から抽出される。次に、RNAがビオチン化オリゴ(dT)プライマーを使用してcDNAに変換され、4塩基認識制限酵素(繋留酵素:AE)で処理され、それらの3’末端にビオチン基を含有するAE処理断片をもたらす。次に、AE処理断片が結合のためにストレプトアビジンとインキュベートされる。結合されたcDNAが2つの画分に分割され、その後、各画分が異なる二本鎖オリゴヌクレオチドアダプター(リンカー)AまたはBに連結する。これらのリンカーは、(1)繋留酵素の作用によって形成される突起部分の配列と相補的な配列を有する一本鎖突起部分、(2)タグ付け酵素(TE)としての役目を果たす(認識部位から20bp以下離れた所定の位置で切断する)IIS型制限酵素の5’ヌクレオチド認識配列、および(3)PCR特異的プライマーを構築するための十分な長さの追加の配列からなる。リンカー連結cDNAは、タグ付け酵素を使用して切断され、リンカー連結cDNA配列部分のみが残り、短鎖配列タグの形態で存在する。次に、2つの異なる種類のリンカーからの短鎖配列タグのプールを互いに連結し、続いてリンカーAおよびBに特異的なプライマーを用いてPCR増幅を行う。その結果、リンカーAおよびBに結合された2つの隣接配列タグ(ダイタグ)の無数の配列を含む混合物として増幅産物が得られる。増幅産物を繋留酵素で処理し、遊離ダイタグ部分を標準的な連結反応で鎖に連結する。その後、増幅産物がクローン化される。そのクローンのヌクレオチド配列の判定を使用して、一定の長さの連続したダイタグの読取値を得ることができる。その後、各タグに対応するmRNAの存在が、クローンのヌクレオチド配列および配列タグに関する情報から特定され得る。
【0105】
定量的逆転写酵素PCR(qRT-PCR)を使用して、バイオマーカーの発現プロファイルを判定することもできる(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2005/0048542A1号を参照のこと)。RT-PCRによる遺伝子発現プロファイリングの第1の工程は、RNA鋳型のcDNAへの逆転写、続いて、PCR反応におけるその指数関数的増幅である。2つの最も一般的に使用される逆転写酵素は、トリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(AMV-RT)およびモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MLV-RT)である。逆転写工程は、典型的には、発現プロファイリングの状況および目標に応じて、特異的プライマー、ランダム6量体、またはオリゴ-dTプライマーを使用して刺激される。例えば、抽出されたRNAは、製造業者の指示に従ってGeneAmp RNA PCRキット(Perkin Elmer,Calif.,USA)を使用して逆転写され得る。その後、得られたcDNAは、その後のPCR反応において鋳型として使用され得る。
【0106】
PCR工程は、様々な熱安定性DNA依存性DNAポリメラーゼを使用することができるが、典型的には、5’-3’ヌクレアーゼ活性を有するが、3’-5’プルーフリーディングエンドヌクレアーゼ活性を欠くTaq DNAポリメラーゼを用いる。したがって、TAQMAN PCRは、典型的には、TaqまたはTthポリメラーゼの5’-ヌクレアーゼ活性を利用して、その標的アンプリコンに結合したハイブリダイゼーションプローブを加水分解するが、同等の5’ヌクレアーゼ活性を有する任意の酵素が使用され得る。2つのオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、PCR反応を典型とするアンプリコンを生成する。第3のオリゴヌクレオチドまたはプローブは、これらの2つのPCRプライマー間に位置するヌクレオチド配列を検出するように設計される。プローブは、Taq DNAポリメラーゼ酵素によって伸長不可能であり、レポーター蛍光色素およびクエンチャー蛍光色素で標識される。レポーター色素からの任意のレーザー誘起発光は、これらの2つの色素がプローブ上にあるときにすぐ近くに位置する場合、消光色素によって消光される。増幅反応中、Taq DNAポリメラーゼ酵素は、プローブを鋳型依存様式で切断する。結果として生じるプローブ断片が溶液中で解離し、放出されたレポーター色素からのシグナルは、第2のフルオロフォアの消光効果を含まない。合成される各新たな分子に対して、レポーター色素の1つの分子が遊離され、消光されていないレポーター色素の検出により、データの定量的解釈の基礎が提供される。
【0107】
TAQMAN RT-PCRは、例えば、ABI PRISM 7700配列検出システム(Perkin-Elmer-Applied Biosystems,Foster City,Calif.,USA)、またはLightcycler(Roche Molecular Biochemicals,Mannheim,Germany)等の市販の機器を使用して行われ得る。好ましい実施形態では、5’ヌクレアーゼ手順が、ABI PRISM 7700配列検出システム等のリアルタイム定量PCR装置で行われる。このシステムは、熱サイクラー、レーザー、電荷結合素子(CCD)、カメラ、およびコンピュータからなる。このシステムは、器具を起動し、かつデータを分析するためのソフトウェアを含む。5’-ヌクレアーゼアッセイデータは、最初に、Ct、すなわち、閾値サイクルとして表される。蛍光値は、あらゆるサイクル中に記録され、増幅反応においてその時点まで増幅された産物の量を表す。蛍光シグナルが統計的に有意であるとして最初に記録された時点が、閾値サイクル(Ct)である。
【0108】
試料間変動の誤差および影響を最小限に抑えるために、通常、RT-PCRが内部標準を使用して実施される。理想的な内部標準は、異なる組織間で一定のレベルで発現され、実験的治療には影響されない。遺伝子発現のパターンを正規化するために最も高い頻度で使用されるRNAは、ハウスキーピング遺伝子であるグリセルアルデヒド-3-ホスフェート-デヒドロゲナーゼ(GAPDH)およびベータ-アクチンのmRNAである。
【0109】
RT-PCR技法のより最近の変形は、二重標識蛍光性プローブ(すなわち、TAQMANプローブ)によりPCR産物蓄積を測定するリアルタイム定量PCRである。リアルタイムPCRは、正規化のために各標的配列に対する内部競合配列が使用される定量競合PCRとも、試料中に含有する正規化遺伝子またはRT-PCR用のハウスキーピング遺伝子を使用した定量比較PCRとも適合する。さらなる詳細については、例えば、Held et al.,Genome Research 6:986-994(1996)を参照のこと。
【0110】
バイオマーカーデータの分析
バイオマーカーデータは、患者が30日以内に死亡するリスクにあるかを評価するために、バイオマーカーを特定し、かつ試験発現プロファイルと基準発現プロファイルとの間の観察されたバイオマーカーレベルの差異の統計的有意性を判定するための様々な方法によって分析され得る。ある特定の実施形態では、患者データは、多変量線形判別分析(LDA)、受信者動作特性(ROC)分析、主構成要素分析(PCA)、アンサンブルデータマイニング法、マイクロアレイ有意分析(SAM)、マイクロアレイ細胞特異的有意性分析(csSAM)、密度正規化事象スパニングツリー進行分析(SPADE)、および多次元タンパク質同定技術(MUDPIT)分析を含むが、これらに限定されない1つ以上の方法によって分析される。(例えば、Hilbe(2009)Logistic Regression Models,Chapman&Hall/CRC Press、McLachlan(2004)Discriminant Analysis and Statistical Pattern Recognition.Wiley Interscience、Zweig et al.(1993)Clin.Chem.39:561-577、Pepe(2003)The statistical evaluation of medical tests for classification and prediction,New York,NY:Oxford、Sing et al.(2005)Bioinformatics 21:3940-3941、Tusher et al.(2001)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.98:5116-5121、Oza(2006)Ensemble data mining,NASA Ames Research Center,Moffett Field,CA,USA、English et al.(2009)J.Biomed.Inform.42(2):287-295、Zhang(2007)Bioinformatics 8:230、Shen-Orr et al(2010)Journal of Immunology 184:144-130、Qiu et al.(2011)Nat.Biotechnol.29(10):886-891、Ru et al.(2006)J.Chromatogr.A.1111(2):166-174,Jolliffe Principal Component Analysis(Springer Series in Statistics,2nd edition,Springer,NY,2002)、Koren et al.(2004) IEEE Trans Vis Comput Graph 10:459-470を参照のこと。参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。)
【0111】
C.キット
なお別の態様では、本発明は、対象の死亡率の予後診断のためのキットを提供し、本キットを使用して、本発明のバイオマーカーを検出することができる。例えば、本キットを使用して、重篤患者の生存者および非生存者由来の試料中で差次的に発現される本明細書に記載されるバイオマーカーのうちのいずれか1つ以上を検出することができる。本キットは、バイオマーカーを検出するための1つ以上の薬剤と、生命を脅かす状態を有することが疑われるヒト対象から単離された生物学的試料を保持する容器と、薬剤を生物学的試料または生物学的試料の一部と反応させて、生物学的試料中の少なくとも1つのバイオマーカーの存在または量を検出する印刷された指示と、を含み得る。薬剤は、別個の容器内にパッケージされ得る。本キットは、免疫アッセイまたはマイクロアレイ分析を実施するための1つ以上の対照基準試料および試薬をさらに含み得る。
【0112】
ある特定の実施形態では、本キットは、目的とする少なくとも12個のバイオマーカーのレベルを測定するための薬剤を含む。例えば、本キットは、DEFA4ポリヌクレオチド、CD163ポリヌクレオチド、PER1ポリヌクレオチド、RGS1ポリヌクレオチド、HIF1Aポリヌクレオチド、SEPP1ポリヌクレオチド、C11orf74ポリヌクレオチド、CITポリヌクレオチド、LY86ポリヌクレオチド、TSTポリヌクレオチド、OR52R1ポリヌクレオチド、およびKCNJ2ポリヌクレオチドを含むパネルのバイオマーカーを検出するための薬剤を含み得る。
【0113】
ある特定の実施形態では、本キットは、複数のバイオマーカーポリヌクレオチドの分析のためのマイクロアレイを含む。本キットに含まれる例示的なマイクロアレイは、DEFA4ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、CD163ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、PER1ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、RGS1ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、HIF1Aポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、SEPP1ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、C11orf74ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、CITポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、LY86ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、TSTポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、OR52R1ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、およびKCNJ2ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含む。
【0114】
本キットは、本キットに含まれる組成物用の1つ以上の容器も含み得る。組成物は、液体形態であり得るか、または凍結乾燥され得る。組成物用の好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、および試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックを含む様々な材料から形成され得る。本キットは、敗血症を診断する方法の書面による指示を含む添付文書も含み得る。
【0115】
本発明のキットは、いくつかの用途を有する。例えば、本キットは、生命を脅かす状態を有することが疑われる対象の死亡リスクを判定するために使用され得る。例えば、本明細書に記載される方法により30日以内に死亡するリスクが高いと特定された対象は、治療のためにICUに直ちに送られ得るが、30日以内に死亡するリスクが低いと特定された患者は、通常の病棟でさらに監視され、かつ/または治療され得る。患者と臨床医の両方が、患者の意向および救命措置に関する選択肢のタイムリーな考察を可能にする、死亡リスクのより良好な推定から利益を受けることができる。患者の良好な分子表現型により、1)薬物および介入に関する患者選択、ならびに2)対象死亡率の観察値対期待値比の評価の両方において、臨床試験における改善も可能になる。
【0116】
D.死亡リスク判定のための診断システムおよびコンピュータ化された方法
さらなる態様では、本発明は、生命を脅かす状態を有することが疑われる患者の死亡リスクを判定するためのコンピュータにより実施される方法を含む。コンピュータは、患者からの生物学的試料中の1つ以上のバイオマーカーのレベルの値を含む入力された患者データを受け取る工程と、1つ以上のバイオマーカーレベルを分析し、バイオマーカーのそれぞれの基準値範囲と比較する工程と、バイオマーカーレベルに基づいて患者の死亡遺伝子スコアを計算する工程であって、対照対象と比較した患者のより高い死亡遺伝子スコアが、患者が30日以内に死亡するリスクが高いことを示す、計算する工程と、患者の死亡リスクに関する情報を表示する工程と、を含む工程を実施する。ある特定の実施形態では、入力された患者データは、患者由来の生物学的試料中の複数のバイオマーカーレベルの値を含む。一実施形態では、入力された患者データは、DEFA4、CD163、PER1、RGS1、HIF1A、SEPP1、C11orf74、CIT、LY86、TST、OR52R1、およびKCNJ2ポリヌクレオチドのレベルの値を含む。
【0117】
さらなる一態様では、本発明は、上述のコンピュータにより実施される方法を行うための診断システムを含む。診断システムは、プロセッサを収容するコンピュータ、記憶構成要素(すなわち、メモリ)、ディスプレイ構成要素、および汎用コンピュータに典型的に存在する他の構成要素を含み得る。記憶構成要素は、プロセッサによって実行され得る指示を含むプロセッサによってアクセス可能な情報、およびプロセッサによって読み出され得るか、操作され得るか、または記憶され得るデータを記憶する。
【0118】
記憶構成要素は、対象の死亡リスクを判定するための指示を含む。例えば、記憶構成要素は、本明細書に記載されるバイオマーカーの発現レベルに基づいて対象の死亡遺伝子スコアを計算するための指示を含む(実施例1を参照のこと)。加えて、記憶構成要素は、多変量線形判別分析(LDA)、受信者動作特性(ROC)分析、主成分分析(PCA)、アンサンブルデータマイニング法、マイクロアレイ細胞特異的有意性分析(csSAM)、または多次元タンパク質同定技術(MUDPIT)分析を行う指示をさらに含み得る。コンピュータプロセッサは、記憶構成要素に連結されており、記憶構成要素に記憶された指示を実行して、患者データを受け取り、かつ1つ以上のアルゴリズムに従って患者データを分析するように構成されている。ディスプレイ構成要素は、患者の診断および/または予後診断(例えば、死亡リスク)に関する情報を表示する。
【0119】
記憶構成要素は、ハードドライブ、メモリカード、ROM、RAM、DVD、CD-ROM、USBフラッシュドライブ、書き込み可能、および読み取り専用メモリ等のプロセッサによってアクセス可能な情報を記憶することができる任意の種類のものであり得る。プロセッサは、Intel Corporation製のプロセッサ等の任意の周知のプロセッサであり得る。代替的に、プロセッサは、ASIC等の専用コントローラであり得る。
【0120】
指示は、プロセッサにより直接(機械コード等)または間接的に(スクリプト等)実行される任意のセットの指示であり得る。その点において、「指示」、「工程」、および「プログラム」という用語は、本明細書で同義に使用され得る。指示は、プロセッサによる直接処理のためにオブジェクトコード形態で記憶され得るか、あるいはオンデマンドで解釈されるか、または事前にコンパイルされる独立ソースコードモジュールのスクリプトもしくはコレクションを含む任意の他のコンピュータ言語で記憶され得る。
【0121】
データは、指示に従ってプロセッサにより読み出され得るか、記憶され得るか、または修正され得る。例えば、診断システムは任意の特定のデータ構造によって制限されないが、データは、コンピュータレジスタ、複数の異なるフィールドおよびレコードを有する表としてリレーショナルデータベース、XML文書、またはフラットファイルに記憶され得る。データは、2進値、ASCII、またはユニコード等であるが、これらに限定されない任意のコンピュータ可読形式でも形式化され得る。さらに、データは、数字、記述文、プロプライエタリコード、ポインタ、他のメモリ(他のネットワーク位置を含む)に記憶されたデータへの参照、または関連データを計算するための関数によって使用される情報等の関連情報を特定するのに十分な任意の情報を含み得る。
【0122】
ある特定の実施形態では、プロセッサおよび記憶構成要素は、同じ物理的筐体内に格納されていても、またはされていなくてもよい複数のプロセッサおよび記憶構成要素を含むことができる。例えば、指示およびデータのうちのいくつかは、取り外し可能なCD-ROMに記憶され得、他のものは、読み取り専用コンピュータチップ内に記憶され得る。指示およびデータのうちのいくつかまたは全ては、プロセッサから物理的に遠隔しているが、依然としてプロセッサによりアクセス可能な位置に記憶されてもよい。同様に、プロセッサは、実際には、並列に動作しても、またはしなくてもよい一群のプロセッサを含み得る。
【0123】
一態様では、コンピュータは、1つ以上のクライアントコンピュータと通信しているサーバである。各クライアントコンピュータは、サーバと同様に、プロセッサ、記憶構成要素、および指示とともに構成され得る。各クライアントコンピュータは、通常パーソナルコンピュータに見られる全ての内部構成要素、例えば、中央処理装置(CPU)、ディスプレイ(例えば、プロセッサによって処理された情報を表示するモニタ)、CD-ROM、ハードドライブ、ユーザ入力デバイス(例えば、マウス、キーボード、タッチスクリーン、またはマイクロホン)、スピーカ、モデム、および/またはネットワークインターフェースデバイス(電話機、ケーブルまたは別様のもの)、ならびにこれらの要素を互いに接続し、かつそれらが互いに(直接または間接的に)通信することを可能にするために使用される全ての構成要素を有する、人による使用を目的としたパーソナルコンピュータであり得る。さらに、本明細書に記載されるシステムおよび方法によるコンピュータは、指示を処理し、かつデータを人および局部記憶能力を欠くネットワークコンピュータを含む他のコンピュータに/から送信することができる任意のデバイスを含み得る。
【0124】
クライアントコンピュータはフルサイズのパーソナルコンピュータを含み得るが、本システムおよび本方法の多くの態様は、インターネット等のネットワーク上でデータをサーバと無線交換することができるモバイルデバイスとともに使用される際に特に有利であり得る。例えば、クライアントコンピュータは、無線機器対応PDA、例えば、Blackberry phone、Apple iPhone、Android phone、または他のインターネットに接続できる携帯電話であり得る。かかる点において、ユーザは、小型キーボード、キーパッド、タッチスクリーン、または任意の他のユーザ入力手段を使用して情報を入力することができる。コンピュータは、無線信号を受信するためのアンテナを有し得る。
【0125】
サーバおよびクライアントコンピュータは、例えば、ネットワーク上で、直接的および間接的に通信することができる。ほんの数台のコンピュータのみが使用され得るが、典型的なシステムが多数の接続されたコンピュータを含んでもよく、各異なるコンピュータがネットワークの異なるノードであることを理解されたい。ネットワーク、および介在するノードは、デバイスおよび通信プロトコル、例えば、インターネット、ワールドワイドウェブ、イントラネット、仮想プライベートネットワーク、広域ネットワーク、ローカルネットワーク、携帯電話ネットワーク、1つ以上の企業専有の通信プロトコルを使用するプライベートネットワーク、イーサネット、WiFi、およびHTTPの様々な組み合わせを含み得る。かかる通信は、データを他のコンピュータに/から送信することができる任意のデバイス、例えば、モデム(例えば、ダイヤルアップまたはケーブル)、ネットワーク、および無線インターフェースによって促進され得る。サーバは、ウェブサーバであり得る。
【0126】
上述のように情報が送信または受信された場合にある特定の利点が得られるが、本システムおよび本方法の他の態様は、いかなる特定の情報送信様式にも限定されない。例えば、いくつかの態様では、情報は、ディスク、テープ、フラッシュドライブ、DVD、またはCD-ROM等の媒体を介して送信されてもよい。他の態様では、情報は、非電子形式で送信され、手動でシステムに入力されてもよい。なおさらに、いくつかの機能がサーバ上で行われ、他の機能がクライアント上で行われると示されているが、本システムおよび本方法の様々な態様は、単一のプロセッサを有する単一のコンピュータにより実施され得る。
【0127】
III.実験
以下は、本発明を行うための特定の実施形態の実施例である。これらの実施例は、例証目的のためのみに提供されており、本発明の範囲を決して限定するようには意図されていない。
【0128】
使用される数字(例えば、量、温度等)に関して正確さを確保するための努力がなされているが、言うまでもなく、多少の実験誤差および偏差が認められるべきである。
【0129】
実施例1
重篤患者における死亡率の予後診断のための方法
我々は以前、マルチコホート分析が敗血症15、ならびに臓器移植拒絶反応、ウイルス感染、および肺結核16~18を含む他の疾患における保存された遺伝子発現シグナルを見出す有効な方法であることを示した。したがって、我々は、敗血症を有する患者の転帰を検査するマルチコホート分析が、敗血症の転帰を頑強に予測し、潜在的に疾患予後診断の臨床ツールとして使用することができる保存された遺伝子セットをもたらすであろうと仮定した。
【0130】
材料および方法
研究設計
本研究の目的は、統合マルチコホートメタ分析フレームワークを使用して複数の遺伝子発現データセットを分析して、入院時に敗血症を有する患者における死亡率を予測することができる遺伝子セットを特定することであった。このフレームワークは、以前に記載されている15、16、18。
【0131】
検索
2つの公的遺伝子発現マイクロアレイリポジトリ(NIH GEO,ArrayExpress)を、以下の検索用語:敗血症、SIRS、外傷、ショック、手術、感染、肺炎、重篤、ICU、炎症性、院内のうちのいずれかと一致した全てのヒトデータセットについて検索した。健常対照または非感染性炎症(SIRS、外傷、手術、自己免疫)を有する患者のいずれかと、急性感染および/もしくは敗血症を有する患者とを比較したデータセットをさらなる研究のために保存した。SIRSまたは敗血症モデルとして内毒素注入を利用したデータセットは含めなかった。選別された細胞(PBMC、好中球等)で行われたデータセットは除外した。
【0132】
多くの場合、死亡率および重症度の表現型は公的データでは入手できなかった。これらの著者に、さらなるデータのために問い合わせた。これには、データセットE-MTAB-154812、GSE1047419、GSE2180220、GSE3270721、GSE3334122、GSE6304211、GSE6399023、GSE6609910,15,24,25、およびGSE6689026が含まれた。全ての場合において、遺伝子発現データは公的に利用可能である。これらのデータを寄稿した研究者は、以下で説明するデータ分析に参加しなかった。
【0133】
2つのコホートE-MTAB-4421およびE-MTAB-4451は、同じ研究(GaIN) 14から、同じ包含/除外基準で得られ、同じマイクロアレイで処理された。したがって、生データから再正規化した後、ComBat正規化を使用して、これらの2つのコホートを単一のコホートに共正規化し、これをE-MTAB-4421.51と称する。
【0134】
Glue Grantデータ
公的に入手可能なデータセットに加えて、我々は、Inflammation and Host Response to Injury Program(Glue Grant)外傷データセットを使用した27~29。Glue Grantデータセットには、重度の外傷で入院した患者および重度の火傷で入院した患者の2つのコホートが含まれる。外傷コホートはさらに、2つのサブコホートを含み、一方は軟膜を試料採取し、他方は選別された細胞を試料採取した。選別された細胞コホートはさらなる研究から除外された。包含基準は別の箇所に記載されている30。外傷患者は、入院の0.5日、1日、4日、7日、14日、21日、28日後に試料採取され、火傷患者は入院時、そして火傷手術時に試料採取された。Glue Grant患者を、患者が院内感染(肺炎、尿路感染、カテーテル関連血流感染等)を有したか、外科感染(表在性創傷感染を除く)を有したか、または内臓穿孔手術を受けた場合、「感染している」と分類した。感染の定義は、gluegrant.org/commonlyreferencedpubs.htmで見出すことができる。感染の診断日の+/-24時間以内に採取された試料が感染時と考えられた。Glue Grantの使用は、Glue Grant ConsortiumおよびStanford University IRBの両方に承認された(プロトコル29798)。
【0135】
遺伝子発現の正規化
全てのAffymetrixデータセットをCELファイルでダウンロードし、gcRMA(Rパッケージaffy)を使用して再正規化した。他のアレイからの出力は、正常指数バックグラウンド補正され、次いで、アレイ間分位が正規化(Rパッケージlimma)された。全ての遺伝子分析について、共通遺伝子のプローブの平均を遺伝子発現レベルとして設定した。全てのプローブ-遺伝子マッピングを、GEOの最新のSOFTファイルからダウンロードした。
【0136】
マルチコホート分析
我々は、入院から48時間以内に敗血症患者における遺伝子発現のマルチコホート分析を実施し15,16,18、30日以内に死亡した患者と死亡しなかった患者を比較した。稀であるが、30日以降に死亡した患者に関する情報があった場合、これらの患者は除外された。入力データセットを選択した後、Hedges ’gを使用してコホート内のエフェクトサイズを複合し、次いでDerSimonian-Lairdメタ分析でサマリーエフェクトを評価した。有意閾値は、0.05の誤発見率(FDR)に設定され、サマリーエフェクトサイズは1.3倍超(非ログ領域)であった。
【0137】
次に、臨床的重症度および年齢の表現型データを提供したコホートにおいてメタ回帰分析を実施した。各コホートの各遺伝子について、モデルは、臨床的重症度+年齢+遺伝子発現レベルの関数としての死亡率(依存性)に対する回帰であった。データセット間の規模を同じに保つために、(1)全ての臨床的重症度スコアを記述論文のモデルに基づいて対数オッズ死亡率に変換し、(2)全てのデータセットをメタ分析の前に一緒にComBat正規化した(この方法は各遺伝子の位置および規模をリセットするが、コホート内の差異は保存される)。メタ回帰は、Becker and Wu(2007)32によって説明されている傾き統合(synthesis-of-slopes)回帰法のモーメントの閉曲線法ランダム効果(closed-form method-of-moments random-effects)モデルのバリエーション31を用いて行った。したがって、この場合、遺伝子は、臨床的重症度および年齢とは無関係に、死亡率の予測のために全コホートにわたって統計的に保存された回帰係数(ベータ)を有する場合、有意であると考えられた。補正されていないp値<0.01は有意とみなされた。
【0138】
分析の最終工程では、標準的なマルチコホート分析およびメタ回帰の両方によって有意であるとみなされる遺伝子セットの集合を有意とした。その後、これらの遺伝子は、貪欲順方向検索が完了するまで実行され、続いて貪欲逆方向検索、次いで別の貪欲順方向検索が実行される貪欲反復検索モデルで使用された。この方法は、安定した遺伝子セットに達するまで反復された。発見データセットのみが検索に使用され、関数は加重AUCを最大化し、この加重AUCは各発見データセットのAUCをその試料サイズで乗じた合計である。
【0139】
遺伝子スコア
貪欲検索において、最終遺伝子セットを用いて、遺伝子スコアは、全ての陽性遺伝子の遺伝子発現レベルの幾何平均から全ての陰性遺伝子の遺伝子発現レベルの幾何平均を差し引き、陰性遺伝子計数に対する陽性遺伝子計数の比率を乗じたものであると定義される。これは、データセット内の各試料に関して別個に計算された。全データセットに存在しない遺伝子を除外し、個々の試料を欠いている遺伝子を1に設定した。
【0140】
ROC曲線
各々の調べたデータセットにおける目的のクラスの遺伝子スコアを比較するクラス判別力を調べた。遺伝子スコアのROC曲線をデータセット内に構築し、曲線下面積(AUC)を台形法を用いて計算した。サマリーROC曲線は、以前に記載された18、33のように、KesterおよびBuntinxの方法によって計算された。サマリー曲線は、同様の比較(すなわち、入院時の敗血症患者)からのデータを要約するためにのみ使用された。
【0141】
重症度スコアとの比較
我々は、遺伝子スコアの予後力と、この情報を含む全てのコホートにおける臨床的重症度スコアの予後力とを比較した。これらの計算を行うために、我々は最初に死亡率を予測するために臨床的重症度スコアまたは遺伝子スコアのいずれかにロジスティック回帰を実施した。次いで、複合モデル(臨床的重症度および遺伝子スコアの関数としての死亡率、相互作用項なし)を試験し、複合モデルのAUCを測定した。
【0142】
検証
主な検証では、敗血症で病院に入院した患者を調べ、各研究の元々の研究者によって判定された、生存者と最終的な非生存者とを比較した。時系列データを有するデータセットの場合、入院してから最初の24~48時間以内の患者のみがサマリーROC分析に使用された。ROCプロットは、各研究の試料採取スキーマに応じて、入院してからの日数によって瓶に分けられた、後の時点の患者について別個に構築された。
【0143】
顧客分析を使用して、Glue Grantデータセットの遺伝子セットの性能を調べた。最初に、各データセット(外傷および火傷)の全ての患者を、遺伝子スコアおよび毎日の重症度スコアの両方の負傷からの日数によってプロットした(外傷患者について、これはMODSスコアであった。火傷患者について、これはDenverスコアであった)。死亡の種類は、(1)敗血症死、(2)外傷性脳損傷(TBI)/脳死、または(3)他の死亡のいずれかの、Glue Grant著者による元の定義に従い列挙された。これらの死亡は、宿主応答によって引き起こされるのではなく、主に最初の負傷の直接的な後遺症であることが多いため、我々はTBI/脳死を分けた。火傷コホートでは、30日後であるが、研究期間中に数人の患者が死亡したことが認められ、これらの患者は除外された。次に、2種類のROC分析を実施した。最初に、最終的に死亡した敗血症に罹患した患者を調べ、敗血症に罹患したが死亡しなかった患者と比較したが、同じ時間枠内に敗血症に罹患したそれらの患者のみが含まれた。これは、地域感染型敗血症コホートにおける入院日のみを調べることに類似する。2回目のROC分析では、全ての患者を調べ、何らかの原因で死亡した患者と死亡しなかった患者とを比較した。ここで、群を入院してからの時間により瓶に分けたが、一部の患者はそれ故にこれらの群間で繰り返されたため、全死因死亡率分析に関して、異なる時間瓶は独立していない。
【0144】
細胞型富化試験
以前に記載したように15、以前に調べたインビトロ免疫細胞プロファイルにおいて、遺伝子セットを富化について評価した。簡潔に、GEOを関連免疫細胞型の臨床試料の遺伝子発現プロファイルについて検索した。全て同じ細胞型に対応する複数の試料について、試料の平均を最終値とみなし、それ故に各細胞型の単一ベクターを創出した。上述のように得られた細胞型ベクターにおいて各遺伝子セットの遺伝子スコアを計算した。その後、これらのスコアが群平均からの標準偏差の数を表すように、スコアを全ての細胞型にわたって標準化する。したがって、これは、他の試験細胞型と比較して所与の遺伝子セットが所与の細胞型においてどの程度富化されるかを表す。
【0145】
2つの遺伝子セットをこの様式で試験し、これらはいずれも、マルチコホート/メタ回帰分析後に全遺伝子セットが有意であることが見出され、反復貪欲検索後に遺伝子のサブセットが最も診断に適していることが見出された。得られたプロットは、各細胞亜型におけるZ-スコア(所与の遺伝子セットについての富化)(黒色の点)、ならびにZ-スコアの全体分布のボックスプロット(赤色で示される)を示す。
【0146】
統計量およびR
全ての算定および計算を統計学的算定のためにR言語で行った(バージョン3.2.0)。p値の有意性レベルを0.05と設定し、分析は、別途特定されない限り、両側分析であった。
【0147】
結果
分析の概要
我々の系統的検索は、包含/除外基準と一致する19のコホートを明らかにした
9、11、12、14、15、19~23、26、34~38。これらのうち、我々は、検証コホートとしてGSE54514およびE-MTAB-4421.51の2つのデータセットを予め特定した。他の検証データセット(GSE21802、GSE33341、GSE63990)は、分析が完了した後に表現型データを利用可能にしただけであった。したがって、残りのデータセットでは、病院へのまたはICUへの入院時に敗血症患者を具体的に調べた全データセットを取得し、合計490人の生存者および160人の非生存者の、12のコホートを得た(表1)。我々は、死亡率に有意に関連する遺伝子を発見するために、2つの分析方法を適用した(
図1)。最初に、入院時に生存者と非生存者との間で異なる遺伝子発現についてのマルチコホートメタ分析を実施し、FDR<0.05およびエフェクトサイズ>1.3倍で有意な96個の遺伝子を得た。第2の分析では、臨床的重症度、年齢、および遺伝子発現のロジスティック関数として、死亡率の傾き統合ランダム効果メタ回帰を実施した。これによりp<0.01で有意な35個の遺伝子が得られた。注目すべきことに、メタ回帰における上位3つの最も有意な遺伝子は、全て同じ経路、すなわち好中球アズール性顆粒:DEFA4、CTSG、およびMPO由来であった。メタ分析およびメタ回帰遺伝子セットの集合は122個の遺伝子であり、これを我々の「有意な」遺伝子リストとした。
【0148】
12遺伝子セットの発見
我々は次に、122遺伝子リストを用いて12の発見データセットに対して反復貪欲検索を実施し、加重AUCによって測定されるように、診断性能を最大にする遺伝子リストを見出すことを試みた。簡潔に述べると、アルゴリズムは、遺伝子リストに収束するまで、順方向および逆方向の貪欲検索の間を反復する。このアルゴリズムは、単純な順方向検索よりも大域的な最大値に近い最大値を見出すように設計されている。アルゴリズムが完了し、12遺伝子セットをもたらした。死亡率を有する患者において上方調節された遺伝子は、DEFA4、CD163、PER1、RGS1、HIF1A、SEPP1、C11orf74、およびCITであり、下方調節された遺伝子は、LY86、TST、OR52R1、およびKCNJ2であった。この12遺伝子セットは、平均発見AUCが0.847+/-0.081であり、サマリーAUCは0.85であった(
図2~6)。加えて、発見コホートにおける死亡遺伝子スコアと臨床的重症度スコアとを比較すると、全ての場合において、臨床的重症度のみを用いた死亡率の予測により遺伝子スコアが改善されることが示された(臨床的重症度が死亡率を完全に分離した2つの場合を除く;表2)。最後に、1つのコホート(GSE63042)のみが血中乳酸値を含んだ。この群では、血中乳酸AUCは0.72であり、一方、12遺伝子スコアAUCは0.78であった。
【0149】
入院時の敗血症患者における直接検証
次に、入院時に敗血症患者を調べた5つの検証データセットにおける12遺伝子スコアの予後力を調べた(表3)。縦断的試料(GSE21802およびGSE54514)を有した2つのコホートについて、分析中にいずれの患者も繰り返さずに、それぞれ、入院後の最初の48時間または24時間のみを調べた。これにより、合計415人の生存者および136人の非生存者が得られた。これら5つのコホートにわたって、12遺伝子スコアは、0.84(95%CI 0.58~0.96;
図7~9)のサマリーAUCを示した。注目すべきことに、AUCはE-MTAB-4421.51において最も低かった。このコホートは、患者が入院後5日目までの枠に登録されることを可能にし、おそらく結果を偏らせた。縦断的試料採取による2つの検証コホート(GSE21802、GSE54514)の分析において、後期時点における生存者偏りがAUCの低下を引き起こすまで、同様の傾向、すなわち時間の経過とともに大まかに保存されたAUCが見られた(
図10~11)。加えて、両方のコホートにおいて、12遺伝子スコアは、時間の経過とともに減少する一般的傾向を示し、敗血症診断の5日後に採取された試料が、1日目に採取された試料よりも低い予想スコアを有するであろうことを意味する。このような知見は、E-MTAB-4421.51の試料採取技法による下方への偏りを支持し得る。加えて、GSE21802およびGSE54514の両方には入院重症度スコアが含まれた。我々は再び予後力を単独で、そして12遺伝子スコアと組み合わせて比較し、両方の場合において、わずかな上昇(0.02~0.05)が示された。
【0150】
Glue Grantにおける検証
我々は次に、Glue Grant外傷(軟膜)および火傷(全血)患者を調べた(表3)。外傷コホートについて、12遺伝子スコアおよび臨床的重症度スコアの両方について、全患者の軌跡を最初にプロットし(
図12)、死亡例における高い遺伝子スコアの明確な傾向が示された。このコホートにおける1つの定義された敗血症の死において、患者の12遺伝子スコアは、4つの時点のうち3つの時点での他の全てのスコアよりも高い。我々はまた、診断時の敗血症患者および入院してからの全患者の両方について、ROC曲線を用いた予後力を調べた。診断時に一致した敗血症患者は1人の死亡しか示さなかったが、これは他の12人の患者と比較して完全に予測された(
図13A)。12遺伝子スコアはまた、経時的な全患者の全死因死亡率に適度な予後力を示した(AUC 0.75~0.86、
図13B)。Glue Grant火傷コホートでは、同様の転帰で同じ種類の分析を実施した。死亡した患者の遺伝子スコアの軌跡は一般に、生存した患者と分離可能であったが、再度、臨床的重症度の軌跡は、同様にこれらの患者の特定に貢献した(
図14)。敗血症の時間一致患者を調べ、診断を予測すると、入院後1日目~3日目では12遺伝子スコアの力は不良であった(AUC0.63)が、3日目~7日目の力は非常に高かった(AUC0.85)。これら2つの時間瓶は、重複する患者を含まなかった(
図15A)。全死因死亡率の予測を縦断的に調べると、火傷データは、入院してからの時間の経過とともに増加を示す、AUCの範囲(0.63~0.82)を示し、特に火傷してから最初の24時間では性能の低下を示した(
図15B)。
【0151】
細胞型特異的発現
最後に、これらの遺伝子の生物学についてのいくつかの見識を得るために、以前に記載されたように、122個の有意な遺伝子、ならびに予後12遺伝子セットの両方のインシリコ細胞型発現分析を実施した(
図16)。ここでの仮説は、特定の免疫細胞型内のシグナルの増加が、全血中のこれらの遺伝子の発現の変化が、実際には、細胞内転写産物レベルでの変化の代わりに(または変化に加えて)細胞型シフトの検出を示す可能性があることを示唆し得ることである。興味深いことに、122遺伝子セットは、帯および後骨髄球において有意な富化を示し、未成熟好中球が、他の群によるいくつかの先行提案に沿って、敗血症死亡率に特異的に関連し得ることを示した。しかしながら、12遺伝子セットは、いずれの細胞型においてもいかなる有意な過剰富化を示さなかった。これらの細胞型は有意な量で血液中に存在しないため、中心細胞に見出される陰性シグナルは生物学的に関連性があるとは考えにくい。
【0152】
考察
敗血症は、患者の状態、併存疾患、急性重症度、感染してからの時間、および根底にある免疫状態の幅広い可能性のある範囲を含む、非常に異質な症候群である。以前は、免疫系の分子プロファイルが敗血症の転帰を予測することができると多くが仮定していた。しかしながら、転帰を予測するための最良の臨床ツールは、依然として血中乳酸および臨床的重症度スコアであり、その両方ともいくつかの制限がある。ここでは、敗血症患者の死亡率を予測することができるわずか12個の遺伝子のセットを定義するために、大量のデータ(12のコホート、650人の患者)を複合した。我々は、551人の患者の5つのコホートで直接このスコアを検証し、サマリーROC AUCは0.84であった。加えて、我々は、重度の外傷または火傷で入院した追加の421人の患者において、12遺伝子スコアが、敗血症患者の死亡率の予測力、ならびに非常に広いコホートにおいて全死因死亡率を予測する能力を保持していることを示した。
【0153】
敗血症における宿主応答の重症度のこの分子定義はいくつかの理由により重要である。第1に、より良好な敗血症の予後診断は、患者と資源を正確に一致させることによって臨床ケアを改善することができる。より重症の患者は、最大介入のICUに回され、一方、死亡する可能性の低い患者は病院の病棟で安全に監視することができる。第2に、患者と臨床医の両方が予後診断のより正確な推定から利益を受けることができ、患者の意向および介入の選択についてのより良好な考察が可能になる。最後に、敗血症患者のより良好な分子表現型は、(1)薬物および介入について患者の選択および予後的富化、および(2)死亡率の観察値対期待値比のより良好な評価の両方を通して、臨床試験における大幅な改善を可能にし得る5,6。
【0154】
我々が敗血症の死亡率と関連していると特定した遺伝子は、重要な根本的生物学も示し得る。例えば、臨床的重症度に関係なく死亡率に関連する上位3つの遺伝子は、アズール性顆粒プロテアーゼであり、血液中に非常に未成熟の好中球(後骨髄球)が存在することを示す。これらのプロテアーゼ自体が有害であるか、または有害な細胞型シフトのマーカーであるかは、依然として確認されなければならない。いくつかのグループは、後期敗血症の死亡は、主に適応免疫系に影響を及ぼす「免疫麻痺」によることを示した。したがって、ここに示されたトランスクリプトーム変化は、適応免疫崩壊の誘導を介して間接的に死亡率に関連する事象のカスケードの一部であり得る。したがって、これらの遺伝子は、単に敗血症の重症度のマーカーであることに加えて、直接治療標的であり得る。より多くの研究が必要である。
【0155】
我々の分析にはいくつかの弱点がある。最も顕著には、最も大きい検証データセットであるE-MTAB-4421.51が、全てのデータセットの中で最低の性能を示すことである。この説明には少なくとも3つの可能性が考えられる。記載されるように、第1に、このコホートは、入院してから5日目までの包含を可能にしたが、どの日が公表された表現型ファイルのどの患者に関連していたかを含まなかった。敗血症で入院した患者ではスコアは時間の経過とともに低下するため、またより重度の患者が後に登録されたという偏りがあった可能性があるため(入院時に非常に重度の患者を登録することは困難なことが多いため)、これは下方への偏りをもたらし得る。第2に、このコホートが他のコホートよりも「重度の」可能性があるが、平均APACHEスコア18~23は、例えば、我々の診断力が確認されたGSE54514とほぼ同じである。最後に、当然のことながら、遺伝子セットが、単に、そのサイズのため、または未知のいくつかの他の臨床的要因のいずれかのために、このコホートではうまく機能しなかった可能性がある。16の他の発見および検証コホートにおいて、最も低いAUCが0.72(GSE10474、N=33)であることを考えると、これはあまりないように思われる。いずれの場合でも、臨床応用の前にさらなる前向きな確認が必要である。
【0156】
全体として、敗血症における利用可能なトランスクリプトームデータの統合分析により、我々は、5つのコホートからの551人の独立した患者にわたって確認して、レベルが敗血症患者の短期(30日)死亡率を予測するために使用することができる12個の遺伝子のセットを導き出した。これらの知見は、全血トランスクリプトームが最終的な死亡についての早期シグナルを有することを示す。それらはまた、重度の敗血症におけるさらなる機序研究または治療研究のための標的のセットも図解する。最後に、12遺伝子セットは予後試験として直接的に使用される可能性があるが、さらなる前向きな確認が必要である。
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【0157】
本発明の好ましい実施形態が図解および記載されているが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくそれらに様々な変化が加えられ得ることが理解されよう。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象を評価するための方法であって、
該方法は、30日以内に死亡するリスクを判定するための死亡遺伝子スコアを計算することを含み、
前記スコアは、少なくとも3個のmRNAバイオマーカーの発現レベルを含む式により判定され、かつ少なくとも1つの発見コホートから得られ、
前記式の受信者動作特性曲線下平均面積(AUC)は、前記少なくとも1つの発見コホートとは完全に独立した2つの外部検証コホートで少なくとも0.84である、
方法。
【請求項2】
前記完全に独立した少なくとも2つの検証コホートは、少なくとも3つの完全に独立したコホートを含み、少なくとも80個の組み合わせた試料を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記完全に独立した少なくとも2つの検証コホートは、少なくとも5つの完全に独立したコホートを含み、少なくとも500個の組み合わせた試料を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも2つの検証コホートは、遺伝子発現オムニバス(GEO)データセットGSE28102、GEOデータセットGSE33342、GEOデータセットGSE4514、GEOデータセットGSE63990、Array ExpressデータセットE-MTAB-4421、およびArray ExpressデータセットE-MTAB-4451から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの検証コホートは縦断的試料を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの発見コホートは少なくとも2つの独立したコホートを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒト対象は、敗血症、外傷、もしくは火傷である生命を脅かす状態を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも3個のmRNAバイオマーカーは、DEFA4、CD163、PER1、RGS1、HIF1A、SEPP1、C11orf74、CIT、LY86、TST、OR52R1,及びKCNJ2から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒト対象から生物学的試料を得ることと、
前記少なくとも3個のmRNAバイオマーカーの発現レベルを検出することと、
前記少なくとも3個のmRNAバイオマーカーの発現レベルをそれぞれの基準値と比較することと、
を更に含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
それぞれの基準値に対し、少なくとも1つのmRNAバイオマーカーの発現レベルは増加し、少なくとも1つのmRNAバイオマーカーの発現レベルは減少する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記式は、
(a)それぞれの基準値と比較して発現が増加した少なくとも3個のmRNAバイオマーカー全ての発現レベルの幾何平均から、それぞれの基準値と比較して発現が減少した少なくとも3個のmRNAバイオマーカー全ての発現レベルの幾何平均を差し引くことと、
(b)工程(a)で得られた値に、発現が増加したバイオマーカーの数と発現が減少したバイオマーカーの数との比率を乗じることと、
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも3個のmRNAバイオマーカーの発現レベルの検出が、マイクロアレイ分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、等温増幅法、ノーザンブロット、または遺伝子発現連続分析(SAGE)を実施することを含む、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記試料は、全血、軟膜、血漿、血清、末梢血単核細胞(PBMC)、帯状核細胞、好中球、単球、T細胞、又はそれらの組み合わせを含む、請求項9~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも3個のmRNAバイオマーカーは、重篤患者における生存者と非生存者との間で差次的に発現される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも3個のmRNAバイオマーカーは、最大30個のバイオマーカーを含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
(a)前記ヒト対象の生物学的試料から核酸を抽出することと、
(b)前記少なくとも3個のmRNAバイオマーカーの発現レベルを検出するために前記核酸を処理することと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
(a)前記スコアに基づき前記ヒト対象が30日以内に死亡するリスクが高い場合、前記ヒト対象に集中治療室治療を施すことと、
(b)前記スコアに基づき前記ヒト対象が30日以内に死亡するリスクが高くない場合、前記ヒト対象に集中治療室治療を施さないことと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、入院から48時間以内に実施される、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、入院から24時間以内に実施される、請求項18に記載の方法。