(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015344
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】鋼管の防食補強部材
(51)【国際特許分類】
B29C 63/34 20060101AFI20220114BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20220114BHJP
F16L 58/04 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
B29C63/34
B32B1/08 Z
F16L58/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020118111
(22)【出願日】2020-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】515179358
【氏名又は名称】衛藤 武志
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 武志
【テーマコード(参考)】
3H024
4F100
4F211
【Fターム(参考)】
3H024EA01
3H024EB01
3H024EB06
3H024EB08
3H024EC06
3H024ED04
3H024EE02
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK04
4F100AK42
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100BA04
4F100BA07
4F100DA11
4F100DA11A
4F100DA11B
4F100DA11C
4F100DA11D
4F100DG12
4F100DG12B
4F100DG12D
4F100DG15
4F100DG15A
4F100DG15B
4F100DG15D
4F100EJ82
4F100EJ82A
4F100JB02
4F100JB02A
4F100JD02
4F100JD02C
4F100JK01B
4F100JK01D
4F211AD16
4F211AG03
4F211AG08
4F211AH43
4F211SA13
4F211SC03
4F211SD04
4F211SD11
4F211SD23
4F211SP13
(57)【要約】
【課題】鋼管の防食補強部材であって、鋼管の内面にペトロタラム系防食材の付設ができ、腐食により低下した鋼管の強度を補完する補強材を一体に編成する。
【解決手段】
本発明に係る、鋼管の防食補強部材100を鋼管6の中空部に挿入して、注入口5から硬化性樹脂を気密層3の中に充填して補強層4に含侵することができる。空気を前記注入口から充填すると、膨張圧力で防食層1は前記鋼管の内面に形成される。また、前記補強層が展開して前記硬化性樹脂の硬化後には鋼管内に前記補強層が形成されることを特徴とした、鋼管の防食補強部材。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管の内面に付設する、防食材と補強材が一体に編成された被覆防食構造体であって、その部材は表層から防食層、耐圧層、気密層、補強層の4層で積層されて編成されている。鋼管の防食補強部材。
【請求項2】
前記防食層はペトロタラム系防食材を不織布に含侵して形成されている。請求項1に記載の鋼管の防食補強部材。
【請求項3】
前記耐圧層は低伸度な繊維織物またはプラスチックシートあるいは不織布で形成されている。請求項1に記載の鋼管の防食補強部材。
【請求項4】
前記気密層はガスバリア性のプラスチックフィルムで形成され、注入口が配設してある。請求項1に記載の鋼管の防食補強部材。
【請求項5】
前記補強層は高ヤング率の繊維織物または不織布で形成されている。請求項1に記載の鋼管の防食補強部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する発明は、鋼管の内部に使用する、鋼管の防食補強部材に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外に設置される鋼構造物の鋼管には亜鉛メッキによる防錆が成される。
【0003】
耐用年数を超えた亜鉛メッキは、キズやひび割れからの水の侵入による金属の腐食は不可避である。特許文献1に開示されているように、複層被覆である、ペトロラタム系防食材による鋼管の外面を防食する鋼構造物の被覆防食構造体および被覆防食方法がある。また、特許文献2には複層被膜である、ライニングクロス管なる被膜による配管内壁のライニング方法がある。
【0004】
これらの複層被覆は、鋼構造物の鋼管の外面の防食および配管内のライニングを目的としたものであり、腐食による強度の低下を補うものではない。もし、鋼管の防食と補強を兼ね備えた、鋼管の防食補強部材であれば、一体に編成されるから施工やメンテナンスが簡便になると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-178358
【特許文献2】特開2004-291605
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の背景に鑑みて本発明は、鋼管の防食補強部材であって、鋼管の内面にペトロタラム系防食材の付設ができ、腐食により低下した鋼管の強度を補完する補強材を一体に編成することで施工やメンテナンスが簡便にできることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
当課題に対して本発明は、鋼管の中空部に部材を付設して、鋼管の内面を防食するものと、腐食により低下した鋼管の強度を補完する補強材とを一体に編成した部材である。その部材は表層から防食層、耐圧層、気密層、補強層の4層で積層されて編成されている。
【0008】
本発明に係る鋼管の防食補強部材の、防食層はペトロタラム系防食材を不織布に含侵して形成されている。耐圧層は低伸度な繊維織物またはプラスチックシートあるいは不織布で形成されている。気密層はガスバリア性のプラスチックフィルムで形成されている。補強層は高強度で低伸度な繊維織物または不織布で形成されている。
【0009】
本発明に係る鋼管の防食補強部材を、鋼管の中空部に挿入したのちに、空気を注入口から充填すると、その、膨張圧力は気密層を介して防食層を鋼管の内面に押圧することにより防食層が形成される。それと同時に補強層が展開して、含侵してある硬化性樹脂が硬化すると補強層が形成される。
【0010】
本発明に係る鋼管の防食補強部材は、気密層に注入口を配設してある。注入口から補強層に硬化性樹脂を注入することがでる。また、気密層に空気を充填することもできる。
【0011】
本発明に係る鋼管の防食補強部材は、防食層のペトロタラムの蒸発および漏出を防止する気密層が設けてある。また、その気密層は付設時には空気の膨張体として機能する。
【0012】
本発明に係る鋼管の防食補強部材は、空気の膨張圧力による防食層の変形を抑制する耐圧層が設けてある。また、その耐圧層は付設後には鋼管の線膨張による防食層の変形および剥離を抑制する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る鋼管の防食補強部材は、鋼管の内面にペトロタラム系防食材の付設ができ、腐食により低下した鋼管の強度を補完する補強材を一体に編成することで施工やメンテナンスが簡便になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】鋼管の防食補強部材100の平面図(A)とその、側面の断面図(B)。
【
図2】鋼管の防食補強部材100を鋼管の内面に固定している付設中の図(C)と、付設した図(D)。
【
図3】鋼管の防食補強部材100を鋼管に付設した図(E)と中壁のある鋼管に付設した図(F)とその、拡大図(G)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る鋼管の防食補強部材100の実施形態について、
図1(A)、(B)で示している。本実施形態の鋼管の防食補強部材は、その部材の表層から防食層1、耐圧層2、気密層3、補強層4の4層で積層されて編成されている。
【0016】
前記防食層はペトロタラム系防食材を不織布(例えばポリエチレン繊維)に含侵して形成されている。前記耐圧層は前記補強層よりも繊維の伸度が同じか、それ以下の繊維織物(例えばポリエチレン繊維)またはプラスチックシートあるいは不織布で形成されている。前記気密層はガスバリア性のプラスチックフィルム(例えば水蒸気透過度5g/m2/day以下のPET)で形成されている。前記気密層は、フィルム状の筒状より形成した袋状からなり、
図1B中の左右方向の縁部が溶着又は接着、あるいはその両方で互いに接合されている。前記補強層は高ヤング率の繊維織物(例えば超高分子量ポリエチレン繊維)または不織布で形成されている。これらの4層間は、接着やラミネートあるいは蒸着による積層によって編成されている。積層する方法は、これらに限らず様々な方法があるので、ここでは詳しく言及しない。
【0017】
図1(A)、(B)からわかるように、前記気密層には空気と硬化性樹脂といったものを充填、注入して使用するので、そのための注入口5が、
図1B中右側の縁部に設けられている。前記注入口は、シート又はプラスチック又は金属製のパイプを前記気密層の間に挟み込んで接着剤あるいは溶着あるいは、その両方で係合されている。
【0018】
図2(C)は鋼管の防食補強部材100を鋼管6の内面に固定している付設中の図である。前記鋼管の中空部に前記鋼管の防食補強部材を挿入して、前記注入口から所定の塗布量の硬化性樹脂を前記気密層の中に注入して前記補強層に含侵させることができる。あるいは、前記鋼管に前記鋼管の防食補強部材を挿入する前に、充填して含侵しておくこともできる。空気を前記注入口から充填すると、その、膨張圧力は前記気密層を介して前記防食層を前記鋼管の内面に押圧することにより前記防食層が形成される。それと同時に前記補強層が展開して、含侵してある前記硬化性樹脂が硬化すると前記補強層が形成される。前記補強層は前記防食層を恒久的に押圧するので剥離しにくくなり耐久性が向上する。また、補強層は繊維強化プラスチックの構造体を形成するので鋼管の強度を補完する効果もある。
【0019】
前記補強層の前記硬化性樹脂は常温硬化樹脂(例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂)、あるいは、紫外線硬化樹脂(例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂)をもちいることができる。また、前記常温硬化樹脂をもちいる場合は、硬化の完了まで前記注入口を封止するか、あるいは、空気を常時供給して膨張圧力を維持しておくことができる。また、前記紫外線硬化樹脂をもちいる場合は、空気の充填前に前記注入口より紫外線照射のランプをあらかじめ挿入しておき、空気を常時供給して膨張圧力を維持しながら、前記紫外線照射を開始することができる。
【0020】
図2(D)は前記鋼管の防食補強部材を鋼管の内面に付設した図である。前記補強層の硬化が完了したら、防食層および補強層の縁部より、のり代をもたせた長さの位置で前記耐圧層を切断して、その前記耐圧層の縁部よりさらに、のり代をもたせた長さの位置で前記気密層を切断することができる。前記耐圧層と前記気密層は前記鋼管と接着することができる。その接着剤は前記耐圧層と前記気密層に塗布することができる。あるいは、前記鋼管に塗布することもでき、その両方に塗布することもできる。
【0021】
図3Eは前記鋼管の防食補強部材を前記鋼管に付設した図である。
図3Fのように、中壁などの障害物のある鋼管に付設する場合は、前記鋼管の中空部ごとに前記鋼管の防食補強部材を挿入して付設することができる。
図3Gは
図3Fの鋼管中央上部の円形の一点鎖線を拡大した図であるが、このように付設面が鋭角でも前記鋼管の防食補強部材の付設ができる。
【符号の説明】
【0022】
100 鋼管の防食補強部材
1 防食層
2 耐圧層
3 気密層
4 補強層
5 注入口
6 鋼管