(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153451
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
G01B 17/02 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
G01B17/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111802
(22)【出願日】2022-07-12
(62)【分割の表示】P 2017517055の分割
【原出願日】2015-09-29
(31)【優先権主張番号】1417162.3
(32)【優先日】2014-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】391002306
【氏名又は名称】レニショウ パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リアム ホール
(57)【要約】 (修正有)
【課題】協働する座標位置決め装置により搬送される超音波検査装置を使用して対象物の検査を行う方法の提供。
【解決手段】超音波検査装置は、超音波トランスデューサ及び検査される前記対象物に接触して音響的に結合する結合要素を含む。結合要素は、ヒドロゲルのような自己潤滑性材料である。当該方法は、超音波測定を取得しながら、前記対象物の表面上の経路に沿って、前記超音波検査装置の前記結合モジュールをスキャンするために、前記協働する座標位置決め装置を使用することを含む。
【選択図】
図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
協働する座標位置決め装置(50)により搬送される超音波検査装置(56、330)を使用して対象物の検査を行う方法であって、
前記超音波検査装置(56、330)は、超音波トランスデューサ(92)と検査される前記対象物に接触して音響的に結合する結合要素(104)とを備え、前記結合要素(104)は自己潤滑性材料を備え、
前記方法は、スキャンするステップであって、前記超音波検査装置(56、330)の前記結合要素(104)が、超音波測定を取得しながら、前記協働する座標位置決め装置(50)により前記対象物の表面上の経路に沿ってスキャンされることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記結合要素(104)の変形は、前記スキャンするステップ中、前記対象物の前記表面上の前記超音波検査装置(56、330)の高さ(Zd)の測定を提供することを決定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記協働する座標位置決め装置(50)は、前記測定された高さ(Zd)の任意の変更に呼応して、前記スキャンするステップの間、前記対象物の前記表面に向かって、または前記対象物の前記表面から離れるように、前記超音波検査装置(56,330)を移動させるように構成されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記測定された高さ(Zd)は、前記対象物の前記表面上の前記超音波検査装置(56,330)の高さのリアルタイム調整を提供するように、前記協働する座標位置決め装置(50)の制御ループ内で使用されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記対象物の厚さを測定するために前記超音波検査装置(56,330)を使用するステップを備えることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
パルスエコーモードで前記超音波検査装置(56,330)を使用し、前記結合要素(104)が複数の異なる変形にさらされたとき、前記結合要素(104)内からの反射を分析することにより、前記結合要素(104)内の音速を測定するステップを備えることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記対象物の材料内で前記音速を測定する較正ステップを備えることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記結合要素(104)の物理的状態を入手するように、前記結合要素(104)内で反射された音響エネルギーを使用するステップを備えることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記結合要素(104)が対象物と接触したときを決定するために前記結合要素(104)からの内部反射を分析するステップを備えることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記協働する座標位置決め装置(50)は、前記超音波検査装置(56,330)を取り付けるための回転ヘッド(54)を備え、前記回転ヘッド(54)は、少なくとも2つの回転軸を含むことを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記結合要素(104)の前記自己潤滑性材料は、親水性エラストマーを含むことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記結合要素(104)の前記自己潤滑性材料は、超吸収性ポリマーヒドロゲルを含むことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記結合要素(104)は、自己潤滑性材料の球体を含むことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記超音波検査装置(56,330)は、前記超音波トランスデューサ(92)と前記結合要素(104)を含む結合モジュール(60、66、180―191、332)とを含むベースモジュール(58,621)を備えるモジュール式の構成であることを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記結合モジュール(60、66、180―191、332)を前記ベースモジュール(58、621)に接続するために、または前記結合モジュール(60,66,180-191、332)を前記ベースモジュール(58,621)から取り外すために、前記協働する座標位置決め装置(50)を使用するステップを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波検査装置に関し、特に、座標測定機(CMM)などの座標位置決め装置と共に使用するためのモジュール式超音波検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製造された対象物の寸法を測定してそれらが公差に適合することを保証することは知られている。航空宇宙用タービンブレードのような高価な部品の場合、CMMに取り付けられた表面接触プローブを使用して、対象物の外形をサブミクロンの精度で測定され得る。表面接触(例えばスキャン)プローブを備えたCMMを使用して、対象物の表面上の複数の点の位置を測定する技術の例は、特許文献1(US5189806)及び特許文献2(WO2009 / 024783)に記載されている。
【0003】
表面測定に加えて、多くの場合、対象物の内部特徴を測定することが必要である。例えば、タービンブレードは、極端な温度及び圧力での運転用に、軽量かつ強力であるために、典型的には、中空である。このような中空のタービンブレードの内部検査は、典型的には、超音波検査装置、例えば、超音波浸漬システム又は超音波厚さ測定プローブを用いて行われる。
【0004】
超音波浸漬システムは、一般に、テスト片を水浴内に完全に浸漬することを含んでいる。単一のパルスエコートランスデューサ又は一対の送信/受信トランスデューサが、コンピュータ制御のロボットアームを使用して部品に対して適切に位置決めされる。水は部品との良好な音響結合を提供するが、特に大きな部品の場合には、配置が高価で複雑である。超音波浸漬システムの例は、特許文献3(GB2440959)に記載されている。
【0005】
超音波厚さ測定プローブは、部品が水に浸されることを必要としないが、代わりに、典型的には、部品への結合剤材料(例えば、結合ゲル又は液体)の局所的な適用に頼っている。そのようなプローブは手持ち式である傾向があるが、そのようなプローブがどのようにしてCMMのクイルに取り付けられるかについては以前に記載されている。例えば、特許文献4(US2009 / 0178482)は、CMMのクイルに取り付けられた超音波プローブを記載している。特許文献4(US2009 / 0178482)の超音波プローブは、対象物との接触が確立されたとき、センサが対象物の表面法線に整列するのを許容するジンバル(gimbal)マウントを含んでいる。特許文献4(US2009 / 0178482)の段落19で説明されるように、超音波プローブと対象物との間の十分な音響結合を保証するためには、検査の前に対象物の関連領域に、ゲル又はグリースなどの結合物質が塗布されねばならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,189,806号明細書
【特許文献2】WO2009 / 024783
【特許文献3】GB2440959
【特許文献4】US2009 / 0178482
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
局在化された結合剤材料をジンバルマウントの限られた角度範囲に適用する必要があるため、このようなシステムを使用する、部品の内部特性の超音波検査は時間がかかり複雑な作業になる。ドライ結合剤層を使用する手持ち式の超音波厚さ測定プローブも知られているが、そのようなデバイスの結合効率及び性能は、特に、より高い超音波周波数での動作が要求される場合には、貧弱である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、座標位置決め装置と共に使用するための超音波検査装置が提供され、当該超音波検査装置は、
座標位置決め装置の可動部材に取り付け可能なベースモジュールであって、超音波トランスデューサ及び第1のコネクタ部分を備えているベースモジュール、及び
複数の結合モジュールであって、各結合モジュールが、ベースモジュールの第1のコネクタ部分に解放可能に取り付け可能な第2のコネクタ部分と、検査対象に接触して音響的に結合する結合要素とを備えている複数の結合モジュールを含んでいる。
【0009】
したがって、本発明は、CMMなどの座標位置決め装置と共に使用するためのモジュール式超音波検査装置を提供する。モジュール式装置は、ベースモジュールと、それに取り付け可能な複数の結合モジュールとを含んでいる。モジュール式超音波装置のベースモジュールは、それ自体が座標位置決め装置の可動部材に取り付けられ得る。例えば、ベースモジュールは、それがCMMのクイル又は回転ヘッドに取り付けられることを可能にする取り付け特徴部又は機構を備えることができる。ベースモジュールはまた、超音波トランスデューサ、例えば、高周波時間離散縦波形(以下、「L波」と呼ぶ)を送信するための圧電素子を備えているパルスエコー超音波トランスデューサを含んでいる。第1のコネクタ部分は、複数の結合モジュールのいずれか1つが、各結合モジュールに設けられている第2のコネクタ部分を介してベースモジュールに取り付けられることを可能にするべく、ベースモジュールに設けられている。複数の結合モジュールの各々はまた、検査されている対象物に接触しかつ音響的に結合するように設計された結合要素(例えば、親水性球体又は後述の他の先端部)を含んでいる。
【0010】
本発明のモジュール式超音波検査装置は、必要に応じて、異なる結合モジュールがベースモジュールに取り付けられ得るという利点を有する。結合モジュールの取り付け及び取り外しは、好ましくは、座標位置決め装置の適切なプログラミングによって自動化された方法で実行される。複数の結合モジュールは、部品の異なる内部特徴を測定するための異なる結合モジュールの範囲(例えば、異なる方向へ及び/又は発散の異なる量音を向ける)を含ことができる。複数の結合モジュールは、(例えば、軟質結合要素の磨耗又は損傷により)限られる寿命を有する同様の結合モジュールの範囲を、代替的に、又は追加的に、含むことができ、したがって、損傷、磨耗時又はある期間の使用後に置き換えられ得る。したがって、複数の結合モジュールは、ベースモジュールと比較して寿命が短い消耗品であってもよい。
【0011】
結合モジュールを交換する能力は、ある範囲の超音波測定(例えば、超音波厚さ測定)が予めプログラムされ、そして自動化された方法で行れ得ることを意味する。このような自動測定を実行する能力は、本発明の超音波装置のモジュール式特性によって提供され、また、同じ部品の表面接触測定(例えば、従来のタッチトリガープローブを使用する)に沿って厚さ測定値が取得されることを可能にする。したがって、表面接触測定に使用される自動検査プロセスは、内部厚さ測定値の取得にも拡張され得、それによって、CMMなどの座標位置決め装置によって提供される検査能力を大幅に改善する。
【0012】
したがって、本発明は、多くの異なる結合モジュールが共通のベースモジュールと共に使用されることを可能にする。したがって、シリコーンゴムなどの乾燥結合剤材料を備えている結合要素を備えている1つ以上の結合モジュールが提供されてもよい。測定前に結合材料(例えば、水又はゲル)の塗布を必要とする結合要素を備えている1つ以上の結合モジュールが提供されてもよい。1つ以上の結合要素は、低い音響減衰特性を有する、圧縮可能で容易に曲がりやすい油性熱軟化性プラスチックであることができる。
【0013】
有利には、複数の結合モジュールの少なくとも1つは、自己潤滑性材料を備えている結合要素を含んでいる。自己潤滑性材料は、好ましくは、水及び/又は油のような潤滑剤をその外面から制御された態様で放出する。 自己潤滑性材料は、親油性エラストマーであってもよい。有利には、自己潤滑性材料は親水性エラストマーからなる。例えば、親水性エラストマーは、軽く架橋された親水性ビニルエラストマー又は高吸収性ポリマーヒドロゲルのような、非圧縮性ゼラチン状親水性エラストマー材料を備えていることができる。高含水量親水性ポリマーチェーン化合物の例は、MMA:VP(すなわち、N-ビニルピロリドンとメタクリル酸メチルVP (N-vinyl pyrrolidone and methyl methacylate)のコポリマー)である。この化合物では、含水量が約35%~95%まで変動し、そして含水量が増加するにつれて引裂き強度が低下するが、優れた音響特性が呈示される。好都合なことには、自己潤滑性材料は球として提供される。したがって、好ましい実施形態は、親水性エラストマー球を備えている結合要素を備えている。
【0014】
親水性エラストマー球を備えている結合モジュールの提供には多くの利点がある。例えば、水膨潤性親水性ポリマー球は、その表面から限られた量の水を放出する(すなわち、水を「浸出させる」)。この放出された水は、超音波プローブとその対象物の粗い表面との間の空気のポケットを満たすことにより、対象物との改善された音響結合を提供する。親水性エラストマー球から放出される水の量は、ポリマー材料の化学的性質の適切な選択によって制御することができる。例えば、放出される水の量は最小限で、したがって、残留汚染物を残すことなく大気中に非常に容易に蒸発するように構成することができる。さらに、そのような親水性エラストマー球は、湾曲した検査面に対して高度の適合性を提供するために、軟らかく弾性であってもよい。このような弾性はまた、以下でより詳細に説明するように、反復可能で正確なタッチ接触測定を行うことができるので有益である。水の放出はまた、そのような球が対象物の表面上の経路に沿ってスキャンされることを可能にする潤滑剤として作用することができる。さらに、親水性材料は、本質的に低い音響減衰と、セラミックトランスデューサ摩耗板と金属部品との間の超音波伝達によく適した音響インピーダンス値を有している。
【0015】
有利には、複数の結合モジュールの少なくとも1つは遅延線(delay line)を備えている。例えば、1つ以上の結合モジュールは、遅延線としても機能する結合要素を含んでいてもよい。上記の実施形態を考慮すると、検査される対象物に接触するための突出部分を有する親水性エラストマー球を備えている、少なくとも1つの結合モジュールが提供されてもよい。親水性エラストマー球は、関連する結合モジュールがベースモードに取り付けられたときに、ベースモジュールに直接に音響的に接触することもできる。例えば、球体は、ベースモジュール内のトランスデューサの摩耗板(wear plate)に係合することができる。親水性エラストマー球は、その後、結合要素と遅延線の両者として作用することができる。
【0016】
好都合なことに、複数の結合モジュールの少なくとも1つは、結合要素に結合される遅延線を備えている。言い換えれば、結合要素とは別体である遅延線(例えば、固体プラスチック遅延線)が設けられてもよい。そのような遅延線は、好ましくは、剛性であり、例えば、ポリスチレン又はポリカーボネートから形成され得る。親水性エラストマー球は、遅延線の遠位端部に結合されてもよい。したがって、遅延線は、トランスデューサと親水性エラストマー球との間の音響経路内に配置され得る。
【0017】
有利には、複数の結合モジュールの少なくとも1つは、超音波ビーム制御要素を備えている。超音波ビーム制御要素は、好ましくは、検査される対象物に送信される、及び/又は検査対象から受信される超音波波面を操作する(例えば、屈折させる、操作する、又は焦点を合わさせる)。好ましくは、超音波ビーム制御要素としても機能する遅延線が設けられる。例えば、結合モジュールは、部品内でより発散するビームをもたらすテーパ状の遅延線を備えることができる。1つ以上の結合モジュールは、音響レンズの形態の超音波ビーム制御要素を備えることができる。例えば、球面収束された平面凹レンズが設けられてもよい。親水性エラストマー球は、凹面レンズ(例えば、球の周りでレンズが圧伸(cup)する)に結合され、屈折集束を提供して後壁反射を増加させることができる。1つ以上の結合モジュールは、屈折ウェッジの形態の超音波ビーム制御要素を備えることができる。例えば、結合モジュールは、結合された材料内の相対的な音速によって判定されるような法線方向からのある設定角度で、検査面に投射される超音波ビームを屈折させる非対称剛性ウェッジを備えることができる。これは、前壁と後壁が平行でない、より複雑な形状の内部計量測定に対して役立ち得る。音響ミラー及び他の音響コンポーネントが、必要に応じて、1つ又は複数の結合モジュールに含まれてもよい。
【0018】
有利には、複数の結合モジュールの少なくとも1つは、超音波吸収シェルを備えている。超音波吸収シェルは、そうでなければ、関心のある反射波形を妨害し得るシェル壁内からの望ましくない音響反射を抑制又は減衰させる。超音波吸収シェルは、例えば、テフロン(登録商標)又はガラス充填PTFEから形成することができる。
【0019】
有利には、複数の結合モジュールを保持するためのホルダー(例えば、貯蔵トレイ)が設けられている。ホルダーは、座標位置決め装置のベッドに取り付けることができる。例えば、ホルダーは、ホルダーがCMMのベッドに固定された位置及び向きで固定されることを可能にする、1つ以上の特徴部(例えば、ねじ孔、磁石など)を含み得る。ホルダーは、1つ以上のポート又はレセプタクルを含み得、各ポート又はレセプタクルは、結合モジュールを保持するように配列されている。したがって、ホルダーは、現在使用されていない結合モジュールを格納することができる。すなわち、測定目的のためにはベースモジュールに取り付けられていない結合モジュールを、ホルダー内に格納することができる。ホルダーは、5個以上、10個以上、又は15個以上の結合モジュールを収容することができる。したがって、装置は、5つを超える、10を超える、又は15を超える結合モジュールを備えていることができる。複数の結合モジュールは、複数の異なる設計又はタイプの結合モジュールを備えることができる。複数の結合モジュールは、複数の実質的に同一の結合モジュールを備えることができる。
【0020】
上述のように、結合要素が自己潤滑性である(例えば、徐々に水を放出する)接触モジュールが提供され得る。したがって、ホルダーは、使用前に気密に封止されてもよい。これにより、結合要素(例えば、親水性球)が使用前に乾燥するのを防ぐ。ホルダーは、再シール可能であってもよい。例えば、ホルダーは、開かれ、各モジュールが取られた後に閉じられてもよく、あるいは、開かれ、次いで、一連の測定値が取得された後に閉じられてもよい。代替的には、ホルダー(及び、選択肢として自己潤滑結合要素を有する結合モジュール)は、開かれ、使用され、次いで廃棄又はリサイクルされる、使い捨て又は消耗品として提供されてもよい。ホルダーは、使用前に水和されている脱水親水性球体を備えている結合モジュールを、最初に含んでいてもよい。新しいホルダーは、必要なときに開かれてもよい。
【0021】
好ましい実施形態においては、ホルダーは、複数の結合モジュールを受け入れるための複数の凹部を備えている。好都合なことには、凹部及び結合モジュールは、凹部内に配置されたときに結合モジュールの回転を防止するように配列される。例えば、結合モジュールは、1つ以上の半径方向に突出する翼を備える中央ハブを含むことができる。次いで、ホルダーは相補的な凹部を備えてもよい。したがって、結合モジュールは、垂直(直線)方向の相対運動を使用して、凹部内に配置され、且つ凹部から引き抜かれ得る。一旦挿入されると、ホルダーに対する結合モジュールの回転は防止される。
【0022】
第1及び第2のコネクタ部分は、任意の適切なリンケージによって提供されてもよい。有利なことに、磁気接続装置が設けられてもよい。ベースモジュールと結合モジュールとの間の磁気的接続は、1つ以上の磁石(例えば、永久磁石)を備えている、第1のコネクタ部分及び第2のコネクタ部分の少なくとも1つによって実現されてもよい。このようにして、複数の結合モジュールのうちの任意の選択された1つが、ベースモジュールに取り付けられ、及びベースモジュールによって磁気的に保持されてもよい。第1及び第2のコネクタ部分はまた、取り付けられた結合モジュールを、ベースモジュールに対して特定の固定位置及び/又は向きに配置するように係合する、相補的な物理的特徴部(例えば、嵌合部品、運動学的特徴部など)を含むことができる。第1及び第2のコネクタ部分は、好ましくは、ベースモジュールに対する結合モジュールの繰り返し可能な位置決めを可能にする。これにより、結合モジュールが同じ位置及び向きでベースモジュールに繰り返し取り付けられることが可能になる。1つ以上の磁石は、好ましくは、結合モジュールをベースモジュール上に保持するのに十分なほど強力であるが、依然として必要に応じて、結合モジュールがベースモジュールから取り外されることを可能とする。
【0023】
あるいは、第1及び第2のコネクタ部分は相補的なねじ山を備えている。例えば、ベースモジュールの第1のコネクタ部分は、ベースモジュールハウジングの遠位端部の外面に設けられたねじ山(例えば、雄ねじ山コネクタ)を備えていてもよい。結合モジュールの第2のコネクタ部分は、次に、内部にねじ山が形成された表面(例えば、雌ねじ山コネクタ)を有する凹部を含むことができる。ベースモジュール及び結合モジュールが、相対的な回転運動を与えることによって、互いに係合したり離脱したりすることができるような配列であってもよい。これにより、(例えば、回転ヘッドによって保持されている)ベースモジュールが、結合モジュールとの噛み合い及び噛み合い外れに、ねじ込まれることが可能になる。結合モジュールは、取り付けプロセス中の回転を防止する、上述したタイプのホルダー内に便利に格納されてもよい。
【0024】
複数の結合モジュールのうちの1つをベースモジュールに取り付けることが、好ましくは、モジュール間の信頼性のある繰り返し可能な音響連携を確立させる。特に、第1及び第2のコネクタ部分の嵌合は、ベースモジュールのトランスデューサと結合モジュールの結合要素との間に音響的つながりを提供する。ベースモジュール内のトランスデューサは、ベースモジュールに取り付けられた結合モジュールと音響的に結合するように都合よく配置された摩耗板を備えている。例えば、摩耗板は、結合モジュールの遅延線に係合するか、結合モジュールの親水性エラストマー球に直接に係合することができる。そのような実施形態では、複数の結合モジュールのうちの1つをベースモジュールに取り付けることにより、結合モジュールの関連部品(例えば、遅延線、球体など)がベースモジュールの摩耗板に対してしっかりと保持される。
【0025】
超音波検査装置は、任意の既知の方法で超音波を励起し及び受信することができる。超音波検査装置は、高い周波数で動作することができる。例えば、動作周波数は、5MHzより大きく、10MHzより大きく、より好ましくは、15MHzより大きくすることができる。好ましい実施形態では、動作周波数は約20MHzである。圧電素子を備えているトランスデューサは、好ましくは、縦方向の音波(L波)を励起する。
【0026】
有利には、超音波トランスデューサは、パルスエコーモードで動作するように構成される。好都合なことに、超音波戻り信号は、対象物の厚さ測定が得られるのを可能にすべく解析される。そのような分析は、以下により詳細に説明される、「A-スキャン」に存在する連続的な後壁反射を分析する、「モード-3」の方法に基づくことができる。しかしながら、必要に応じて、代替の分析技術(例えば、いわゆる、「モード-1」又は「モード-2」の技術)を使用することができる。超音波検査装置はまた、複数の異なる超音波測定モードのうちのいずれか1つで動作するように構成されてもよい。厚さの測定は、(例えば、検査されている部品の材料内の音速を測定するために)実行される較正ステップを必要とすることがある。ベースモジュールは、好ましくは、超音波トランスデューサによって受信された超音波信号を分析するためのプロセッサを含んでいる。代替的に、超音波信号は、(例えば、外部界面において、又はオフラインコンピュータを用いて)オフプローブプロセッサによって分析することができる。
【0027】
本発明はまた、上記の超音波検査装置を備えた座標位置決め装置にも関する。超音波検査装置のベースモジュールは、座標位置決め装置の可動部材に取り付け可能であるか、又は取り付けられている。座標位置決め装置は、工作機械、産業用ロボット、アーム、x-yスキャナ又はクローラを含むことができる。好ましい実施形態では、座標位置決め装置は座標測定装置からなる。CMMは、CMMのデカルト(例えばブリッジタイプ)又はCMMの非デカルト(例えば、ヘキサポッド)タイプであってもよい。CMMは、好ましくは、ベースモジュールが取り付けられる可動部材を提供する回転ヘッドを備えている。回転ヘッドは、単一の回転軸、2つの回転軸又は3つの回転軸を備えることができる。有利には、回転ヘッドは少なくとも2つの回転軸を備えている。回転ヘッドは、少なくとも3つの回転軸を備えることができる。
【0028】
本発明のさらなる態様によれば、座標位置決め装置のための超音波検査装置が提供される。この装置は、超音波トランスデューサと、被検査物に接触して音響的に結合するための結合要素とを備え、結合要素は自己潤滑性材料からなる。結合要素内の音速は、結合要素が複数の異なる変形を受ける場合には、結合要素内からの反射の分析によって測定することができる。超音波検査装置は、上述のようなモジュール式設計であってもよく、又は単独の(単一又は非モジュール)構成であってもよい。この装置は、本明細書で言及された特徴のいずれかを備えていることができる。有利には、自己潤滑性材料は親水性エラストマーからなる。好都合なことには、自己潤滑性材料は超吸収性ポリマーヒドロゲルを備えている。好ましくは、結合要素は、自己潤滑性材料の球からなる。超音波検査装置は、積層造形技術を用いて作られた部品のような、部品の多孔度及び/又は密度を測定する方法に使用することができる。
【0029】
本発明はまた、上述の装置を使用して、対象物の厚さ及び/又は対象物の表面上の点を測定する方法にも及ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明は、添付の図面を参照して、単なる例として以下に説明される。
【
図1】
図1の(a)、(b)及び(c)は、種々の既知の超音波トランスデューサ配列を示す。
【
図2】
図2は、超音波厚さ測定の原理を示している。
【
図3】
図3は、CMMに取り付けられたモジュール式超音波検査装置を示している。
【
図4】
図4の(a)及び(b)は、直線状及びクランク付のモジュール式超音波プローブを示している。
【
図5】
図5の(a)~(c)は、分配トレイ及び複数の関連する結合モジュールを示している。
【
図6】
図6は、親水性エラストマー球からなる先端部を有する結合モジュールを備えた超音波プローブをより詳細に示している。
【
図7】
図7は、検査対象の表面に垂直なビーム投射を提供する結合モジュールを備えた超音波プローブを示している。
【
図8】
図8は、球面収束を伴う超音波プローブを示している。
【
図9】
図9の(a)~(c)は、モジュール式超音波プローブの結合モジュールの画像である。
【
図10】
図10の(a)及び(b)は、細長い炭素繊維チューブを備えているベースモジュールに取り付けられた結合モジュールの画像である。
【
図11】
図11は、モジュール式超音波プローブを駆動するための送信/受信回路の一例である。
【
図12】
図12は、超音波検査パートプログラムを生成するステップを示している。
【
図14】
図14は、タービンブレードをスキャンしているモジュール式超音波プローブのクランク付変形例を示している。
【
図15】
図15の(a)~(d)は、厚さ測定中に生成されたA‐スキャン波形を示す図である。
【
図16】
図16は、対象物の表面に接触状態にもたらされている親水性球状先端部を有するモジュール式超音波プローブを示している。
【
図18】
図18は、球状先端部が対象物表面に移動されるときの位置情報の変化を示している。
【
図19】
図19は、球面中心位置に対する傾斜の影響を示している。
【
図20】
図20の(a)及び(b)は、到着データの超音波反射時間の関数としての球面変位を示している。
【
図21】
図21は、起伏のある表面をスキャンするためのモジュール式超音波プローブを使用することを示している。
【
図22】
図22の(a)~(c)は、検査されるべき異なる部品に対するプローブローディングシナリオを示している。
【
図23】
図23は、直線ボアの底面を測定するように構成されたモジュール式超音波プローブを示している。
【
図24】
図24は、角度付きボアの底面を測定するように構成されたモジュール式超音波プローブを示している。
【
図25】
図25は、ボアの側壁を測定するように構成されたモジュール式超音波プローブを示している。
【
図26】
図26は、ゴム先端部を備えた超音波プローブを使用して検査中に測定された超音波波形の例を示している。
【
図27】
図27は、結合モジュール先端部のZ軸変位対反射ピーク振幅減衰の較正プロットを示している。
【
図28】
図28は、音響遅延を推定する方法の基本原理を示すブロック図である。
【
図29】
図29は、時間遅延の推定における改善された精度のために使用され得る位相変換レプリカ相関アルゴリズムの動作を示す図である。
【
図30】
図30は、組合された表面点及び厚さ測定方法のステップを示すフローチャートである。
【
図31】
図31は、XYスキャナ上でのモジュール式超音波プローブの使用を示している。
【
図32】
図32は、自己内蔵型クローラでのモジュール式超音波プローブの使用を示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1の(a)~(c)を参照するに、内部計量測定(internal metrology measurements)のための縦波(L波)トランスデューサを備えている種々の超音波プローブが示されている。このようなプローブは、検査の目的で、典型的には手持ち式検査装置として以前から使用されてきた。
【0032】
図1の(a)は、外側本体4を備えている超音波プローブ2を示す。能動圧電素子6を備えているL波トランスデューサが設けられている。比較的薄い圧電素子6が、発生される超音波の波長の約半分に等しい厚さを有して配列されており、これは、正確な立ち上がり時間励起に必要な高周波励起を可能にする。圧電素子6は、圧電素子6からのエネルギーを吸収する厚い減衰バッキング材料8によって裏打ちされ、それによって、順方向の所望の強く減衰された応答を生成する。これにより、最適なレンジ分解能が得られる。
【0033】
遅延線10は、摩耗板12を介して圧電素子6に音響的に結合されている。摩耗板12は、圧電素子6を保護する。摩耗板12は、それが整合層として作用することを可能にするために、超音波波長の1/4に等しい厚さを有する。この摩耗板の厚さは、圧電素子6において生成される波が摩耗板12内で残響する波と同相であることを確実にするので好ましい。これは、摩耗板12及び圧電素子6内の超音波の振幅が加算的であり、それ故、最大エネルギーが摩耗板12に結合された遅延線10に入ることを意味する。遅延線10の遠位端部には、検査される対象物14との音響結合を提供すべく、液体の結合剤層(図示せず)が設けられる。
図1の(a)に示す例では、遅延線10は、先細の伝播媒体を備えている。伝播媒体は、ポリカーボネート樹脂又は架橋ポリスチレンであってもよい。伝搬媒体内からの内部反射を抑制するために、伝搬媒体の側面に細い軸方向溝16が機械加工されている。
【0034】
図1の(b)は、
図1を参照して上述したプローブ2に対して多くの共通の特徴を有する超音波プローブ20を示している。しかしながら、プローブ20は、周方向の波形特徴部24を有する非先細の遅延線22を有している。
【0035】
図1の(a)及び
図1の(b)を参照して説明した遅延線10及び22のような遅延線の主な機能は、検査されている対象物14の後壁26からの初期反射から励起応答を時間的に分解するために、検査面から十分に離れた超音波励起を物理的に除去することである。好ましくは、これは、有限帯域幅励起パルスのリングダウン(ring-down)からの時間的干渉なしに達成される。したがって、遅延線は、超音波(すなわち縦波)が検査部品に入るときを制御する機能を果たすことが分かる。より高い接触圧を生成し、より多くの湾曲部分を収容するために、異なる程度の先細り(tapering)を採用することができる。このような先細りは、装置の自然な焦点距離及びビーム発散(すなわち、回折効果)にも影響を及ぼす。
【0036】
図1(a)及び
図1(b)を参照して説明した超音波プローブは、垂直入射、非近接(近視野)又は自然発散ビーム検査を提供する。表面法線から離れた角度(例えば、内部欠陥の検出及びサイジング)で超音波を投射することも可能である。
図1の(c)は、(超音波靴と呼ばれることもある)屈折角ビームウェッジ30を備えている、代替的な超音波プローブを示している。ビームウェッジ30は、
図1の(a)及び
図1の(b)を参照して説明した実施例のように、摩耗板12を介して圧電素子6に結合されている。ビームウェッジ30は、検査対象物の表面法線から軸外のビーム角度で超音波波形を投射する。このようなウェッジ形トランスデューサの場合、異なる音響インピーダンスの材料間の界面における屈折は、屈折率(すなわち、スネルの法則)に従い、モード変換の現象によって、界面に次のせん断波モード(S波)が発生する。
【0037】
図1(c)はまた、超音波プローブのビームウェッジ30から金属部品32に投射された超音波を示している。より遅いS波は、より速いL波モードよりも表面法線Nからの屈折が少ない。さらに、屈折したL波とそれに続くS波の相対的な割合は、主にS波との入射角に依存することが強調されている。また、ウェッジ内のスプリアス(偽りの)音響エネルギーを向け直す、有意な反射モードが界面において生成される(すなわち、R波が生成される)ことにも留意されたい。吸収シェル34が、このようにして、伝播するウェッジ材料の周りに結合され、この反射エネルギーを減衰させる。このシェル34は、さもなければ、ビームウェッジ30内で反射し、結合された金属部分32からの関心のある反射を妨げる、反射を防止する。
【0038】
図1の(a)~(c)を参照して上述した超音波プローブは例であり、種々の固体検査部品に対する最適な音響結合を可能にするために、超音波遅延線、ウェッジ及びレンズの異なる設計が以前に開発されていることが思い出されるべきである。
図1の(a)~(c)を参照して上に概説した実施例では、超音波プローブと検査対象物との間に追加の結合層(例えば、層ゲル又はグリース)がどのように設けられるかについて説明されている。これは、全ての実際の検査部品は、プローブと検査面との間の界面でエアポケットが捕捉されるのを生じさせる微小構造内に何らかの表面凹凸を呈するからである。そのようなエアポケットの存在は、主に、固体と空気との間の大きなインピーダンス不一致のために、音響結合効率を低下させる。したがって、ゲルなどの結合層の使用は、必要な音響結合効率が得られることを保証することができる。
【0039】
液状の水又はゲルが検査対象物(例えば、自動車の用途において)に自由に塗布できない場合、乾式結合固形物の形態の結合層が以前は使用されていた。いくつかの親水性エラストマー(例えば、Olympus社からのAqualene)及びシリコーンゴム系材料(例えば、Sonemat社からのUltracouple)が、乾式超音波非破壊テスト(DT)用途に市販されている。しかしながら、その結合性能は、より高いプローブ動作周波数(15-20MHz)でのL波減衰の増加のため、高周波数精密厚さ測定プローブには必ずしも適していない。このような材料の過剰な材料剛性はまた、より湾曲した検査面への密接な適合を制限する可能性もある。さらに、シリコーンベースの結合剤材料は、いくつかの製造環境(例えば、航空宇宙産業)内では容認できない汚染物質であると考えられている。
【0040】
図2の(a)及び(b)を参照すると、パルスエコー厚さ測定トランスデューサの動作原理が概説されている。特に、
図2の(a)は、
図1の(b)を参照して上述した超音波プローブ20と同様の超音波プローブ40を示している。超音波プローブ40は、検査される対象物14に結合するためのドライ結合ポリマーパッド42を備えている単一要素超音波遅延線22を含んでいる。
【0041】
図2の(b)は、過渡的な高電圧励起パルスが圧電素子6に印加されることに応答してトランスデューサの能動圧電素子6によって受信される音響波形の例である。「A‐スキャン」プロットと呼ばれるこの時間領域波形は、ランダムな相関のない電子雑音を抑圧するために、より多くの場合、そのような励起パルスの列(例えば、Nが16~32の範囲にあるNパルスのシーケンス)からの時間平均応答である。
【0042】
圧電素子6によって生成された初期励起パルスは、
図2の(b)において、「Tx-パルス」としてラベル付けされている。この第1の励起パルスは検査L波を遅延線22に伝搬させ、遅延線22に沿って音速(CL)で移動する。圧電素子6に戻って受信される第1の反射ピーク(DL1)は、遅延線の先端部からの(すなわち、遅延線22とポリマーパッド42との間の界面からの)音の反射から生じる。遅延線界面の遠位端部からのこの反射(すなわち、DL1パルス)は、第1の送信パルス(Tx-パルス)が完全に弱まった後の時点で発生することが分かる。
【0043】
音響エネルギーの大部分は遅延線界面で反射され、検査部品に入ることはないが、十分な割合の音響エネルギーが、その後の厚さ測定が可能な測定可能な検査パルスとして結合部品14に伝達する。金属部品14(例えば、Z -46MRayl)及び周囲の空気(すなわち、Z = 0.000429MRayl)の間の音響インピーダンスミスマッチのために、検査用L波は、後壁界面でのいくつかの反射にわたる音響漏れに起因する非常に緩やかな減衰のみで、部品内を非常に効率的に伝搬する。遅延線22内の音速は薄い金属検査部品14内の音速に比べて低いので、部品14の後壁間の多重反射が、遅延線からの第2の反射ピーク(DL2)がトランスデューサに登録される前に生じ得る。したがって、これらの後壁反射は、
図2の(b)の「A‐スキャン」プロットで見ることができる、パルスBW1、BW2及びBW3をもたらす。したがって、第1及び第2の遅延線反射ピーク(DL1及びDL2)間のA‐スキャン内で観察される時間ウィンドウは、プローブの主な測定ウィンドウである。
【0044】
部品14の厚さは、
図2の(b)に示されるタイプのA‐スキャンデータからいくつかの方法で計算することができる。実際には、このような厚さ測定は、典型的には、測定されたA‐スキャンから時間遅延情報を抽出することができる3つの動作モードのうちの1つを含んでいる。これらの異なるモードは、典型的には、それぞれ、モード-1、モード-2及びモード-3と呼ばれる。モード-1測定では、励起パルス(t = 0)と、検査部品からの第1の後壁反射、すなわち、一次エコー(primary echo)との間で、時間遅延測定が行われる。モード-1は、通常、直接接触トランスデューサに関連付けられている。モード-2測定では、テスト部分の表面近くを表す界面エコーと第1の後壁反射との間で時間遅延測定が行われる。モード‐2は、典型的には、遅延線又は液浸トランスデューサ(immersion transducer)と共に使用される。モード-3測定では、2つ以上の連続した後壁反射間で時間遅延測定が行われる。モード-3は、典型的には、遅延線又は液浸トランスデューサで使用される。モード-3は、きれいな高SNR多重後壁エコーが観測される場合に最も効果的であり、細粒子金属、ガラス又はセラミックなどの低減衰高音響インピーダンス部品において最も実用的であることが示唆される。モード‐3はまた、後壁反射又は遅延線反射の到着の絶対時間に依存しないので、異なる結合モジュールの結合及び遅延線における可変性の影響を否定し得るという利点を有する。モード-3はまた、外部コーティング層を備えている部品を測定することを可能にする。任意の適切なモード(例えば、モード-1、モード-2又はモード-3)を必要に応じて使用することができる。異なるモード、場合によっては異なる結合モジュールを使用することも、測定プロセス中に実施することができる。
【0045】
図3を参照するに、本発明のモジュール式超音波検査装置が、座標測定機(CMM)50に取り付けられて示されている。CMM50は、互いに直交する3つの直線軸(X、Y及びZ)に沿って移動可能なクイル52を備えている。レニショー(Renishaw)社製のREVO(登録商標)アクティブヘッドのような、2軸回転ヘッド54が、CMM50のクイル52に取り付けられている。モジュール式超音波プローブ56が、順に、回転ヘッド54によって搬送される。
図3への挿入図において、拡大図で示されている超音波プローブ56は、ベースモジュール58及び取り付けられた結合モジュール60を備えている。ベースモジュール58は、必要に応じて、超音波プローブ56を2軸回転ヘッド54に着脱することができる、標準のプローブジョイントによって回転ヘッド54に取り付けられている。追加のプローブ、例えば、ルビー先端部付きスタイラスを有する従来の表面接触(スキャン)プローブ72が、超音波プローブ56との交換のために、プローブラック74に格納されてもよい。較正アーチファクト76もCMMのベッドに設けられ、この例では、固定具64によって保持されたタービンブレード62が、測定対象を提供している。
【0046】
以下でより詳細に説明するように、超音波プローブ56は、モジュール式の構成を有している。ベースモジュール58は、圧電トランスデューサ及び磨耗板を備え、一方、結合モジュール60は、音響遅延線及び測定対象物に接触するための結合要素を備えている。モジュール式超音波プローブ56が
図3に示されており、結合モジュール60がベースモジュール58に取り付けられている。超音波検査装置はまた、CMMのベッド上に置かれた貯蔵トレイ68内に保持される複数の追加の結合モジュール66を備えている。使用時には、追加の結合モジュール66のいずれか1つを結合モジュール60と交換することができる。言い換えれば、追加の結合モジュール66のいずれかをベースモジュール58に取り付けることができ、対象物の内部特性を測定するために使用することができる。ベースモジュール58に取り付けられた結合モジュールを交換するプロセスは、自動化された方法で実行される。例えば、磁石ベースの接続又はねじ山による接続を採用することができる。CMM50は、CMM動作を制御するとともに、結合モジュールの自動交換を制御するコンピュータ70を備えている。
【0047】
図4(a)~
図4(d)は、
図3を参照して上述したCMMとともに使用することができる、モジュール式超音波プローブの2つの例を示している。
【0048】
図4(a)及び
図4(b)は、
図3に概略的に示されている、モジュール式超音波プローブ56を示している。プローブ56は、標準のプローブジョイントを介して、CMM50の回転ヘッド54に取り付けることができる近位端部90を有するベースモジュール58を備えている。ベースモジュール58はまた、細長いシャフト94を備え、細長いシャフト94の遠位端部の近くに配置された摩耗板93を有する圧電トランスデューサ92を備えている。
【0049】
図4(b)は、
図4(a)に示されるモジュール式超音波プローブ56の遠位端部96の拡大図を提供している。細長いシャフト94の遠位端部はまた、第1のコネクタ部分98も備えていることが分かる。結合モジュール60は、第2のコネクタ部分100を備えている。第1のコネクタ部分98及び第2のコネクタ部分100は、結合モジュール60及びベースモジュール58の取り付け(及びその後の取り外し)を可能にするように配置されている。言い換えれば、第1のコネクタ部分98及び第2のコネクタ部分100は、解放可能に互いに連結され得る相補的なコネクタである。以下に説明するように、この接続は、ねじ山配列を使用して、又は種々の代替方法(例えば、磁気結合などを介して)によって達成され得る。結合モジュール60は、測定対象物に接触するための遅延線102及び先端部104を備えている。第1のコネクタ部分98及び第2のコネクタ部分100を介して、結合モジュール60をベースモジュール58に取り付けることにより、遅延線102が摩耗板93に係合するのを生じさせ、それにより、超音波が圧電トランスデューサ92から遅延線102に結合され、次いで、先端部104を介して対象物の中に入るのを許容している。
【0050】
図4(c)及び
図4(d)は、上述したモジュール式超音波プローブ56の変形例を示す。実質的に真っ直ぐな細長いシャフト94を備えているベースモジュールの代わりに、モジュール式超音波プローブ109は、クランク付シャフト110を備えている。これは、回転ヘッド54に対する結合モジュール60の先端部104の異なる角度方向を提供し、特定の検査プロセスにとって有利である。クランク付のモジュール式超音波プローブ109は、CMMラック(例えば、
図3を参照して説明したラック74)に格納され、必要に応じて非クランク付のモジュール式超音波プローブ56の代わりに使用されてもよい。
【0051】
本明細書に記載のモジュール式超音波プローブの提供は、異なる範囲の結合モジュールがベースモジュールに取り付けられ得るという利点を有する。これらの結合モジュールは、例えば、異なる超音波測定のために使用され得る種々の結合特性の範囲を提供することができる。
図5(a)~
図5(c)は、複数の結合モジュールがどのように構築されそして格納されるかの例を示している。
【0052】
図5(a)は、
図3を参照して上述した貯蔵トレイ68をより詳細に示す。貯蔵トレイ68は、(任意の配置又は数のスロットを設けることができるが)5×5アレイの貯蔵スロット142を備えている。各貯蔵スロット142は、半径方向に延びる2つのスロットを有する中心穴を備えている。
図5(b)は、貯蔵スロット142のいずれか1つに配置され、貯蔵スロット142によって保持され得る結合モジュールの翼付き外側シェル144を示している。結合モジュールの内面は、ねじ山146を備え、超音波プローブ(図示せず)のベースモジュールの相補的ねじ山と螺合することができるコネクタ部分を提供する。貯蔵スロット142及び外側シェル144の相補的な形状は、トレイの平面(例えば、XY平面)内の任意の挿入された結合モジュールの並進運動を制限する。さらに、外側シェル144に設けられた翼は、結合モジュールが(例えば、CMMクイルのZ方向の移動を経て)貯蔵トレイ68の平面に垂直な方向で貯蔵トレイ68に自由に挿入され、挿入された結合モジュールの回転運動を制限する。このようにして、結合モジュールは、回転(ねじ込み)動作を用いて超音波プローブの相補的ベースモジュールに取り付けられたり、取り外されたりすることができる。モジュール式超音波プローブを設けるためのこのようなねじ留め式締結具の使用は、個々の接触モジュールの遅延線とベースモジュールの摩耗板との間の一貫した高張力クランプ取り付けを提供するので好ましい。このようなねじ留め式の取り付けは、実装コストが比較的廉価である。
【0053】
使用時には、貯蔵トレイ68は、
図3に示すように、CMMのベッド上の既知の位置及び向きに配置されている。結合モジュールはまた、トレイ68内の既知の位置(すなわち、所定のスロット142)に配置されている。使用時には、CMMは、ベースモジュール(例えば、
図3のベースモジュール58)をトレイ68に向かって下方に指し、ベースモジュールに取り付けられる結合モジュールの真上に移動させる。次いで、ベースモジュールが結合モジュールに係合するまで、ベースモジュールはゆっくりと下降され、次に、ベースモジュールは、2つの結合ねじが係合し、ベースモジュールにねじ込まれるにつれ、結合モジュールがトレイから持ち上げられ始めるように、(例えば、
図3の回転ヘッド54によって与えられる回転運動を用いて)回転される。結合モジュールが完全に取り付けられ、ベースモジュールにしっかりと固定される正確な点は、例えば、操作プロセス中に生成される超音波応答を評価することによって、又は回転ヘッド54の関連する回転軸に配置されたトルク負荷を連続的に監視することによって、判定され得る。このトルク負荷は、回転ヘッド54内の回転運動サーボモータにかかる電流要求に直接的に関連付けられる。各結合モジュールがベースモジュールにしっかりと取り付けられていると解釈される回転角度も記憶することができる。回転ヘッド54は、結合モジュールが貯蔵トレイ68のスロット142に挿し戻された後、取り付けに使用されたのとは反対の回転運動によって取り外される(ねじが緩められる)ことを可能にするべく、この回転角度に戻ることができる。
【0054】
上記のねじ留め式取り付け方法は、結合モジュールをベースモジュールに取り付けることを可能にする1つの可能な方法を単に表していることに留意されたい。使用可能な多数の代替タイプのコネクタがある。例えば、接続は、ルアージョイント(Luer joint)、スナップ嵌め機構、埋め込まれた磁気固定具などによって提供され得る。磁気クランプ装置は、例えば、極性「++-」でプローブ先端部の周上に等間隔で配置された3つの強力でコンパクトな磁石のアセンブリと、貯蔵トレイに格納された各結合モジュールの周辺の極性「--+」で3つの磁石の一致する分布と、を備えていることができる。この磁気取り付けは、モジュールの変形例を結合するための簡単な取り付けを提供し、そして、取り付けの単一の可能な回転角度のみを提供する。結合モジュールをベースモジュールに取り付けることは、上述のように自動化された方法で実施することができるが、そのような取り付けは、(例えば、検査手順における多数の設定休憩内に予定することによって)オペレータによって手動で実行されることも可能であることに留意すべきである。
【0055】
次に、
図5(c)に移るに、種々の異なる結合モジュール180~191が記載されている。結合モジュールの各々は、
図5(a)のトレイ68内に収納することができるように、
図5(b)に示す外形を有する外側PTFEシェル内に収容されている。各取り付けられた結合モジュールの遅延線に物理的及び音響的に結合する、ベースモジュールの摩耗板194もまた示されている。
【0056】
結合モジュール180は、Rexolite遅延線及び親水性ビニルエラストマー先端部を有する外側PTFEシェルを備えている。結合モジュール181は、Rexolite遅延線と球状熱可塑性先端部とを有する外側PTFEシェルを備えている。結合モジュール182は、Rexolite遅延線と湾曲した熱可塑性先端部とを備えた先細の外側PTFEシェルを備えている。結合モジュール183は、Rexolite遅延線及び薄いラテックスゴム先端部を有する外側PTFEシェルを備えている。結合モジュール184は、親水性 - ビニル - エラストマー遅延線及び先端部を有する外側PTFEシェルを備えている。親水性ビニルエラストマーボールを先端部として使用する利点は、以下でより詳細に説明される。結合モジュール185は、Rexolite遅延線と親水性ビニルエラストマー先端部とを備えた先細の外側PTFEシェルを備えている。結合モジュール186は、親水性ビニルエラストマー先端部が取り付けられた角度付き遠位端部を有するRexolite遅延線を備えた外側PTFEシェルを備えている。結合モジュール187は、熱可塑性の先端部が取り付けられた角度付き遠位端部を有するRexolite遅延線を備えた外側PTFEシェルを備えている。結合モジュール188は、熱可塑性の先端部を備えている角度の付いた遠位端部を有するRexolite遅延線を備えた先細の外側PTFEシェルを備えている。結合モジュール189は、熱可塑性の先端部を有する外側PTFEシェルを備えている。結合モジュール190は、遅延線としても機能する歪んだ親水性ビニルエラストマー球の先端部を保持するための段付き先端部を有する外側PTFEシェルを備えている。結合モジュール191は、外側PTFEシェル、Rexolite遅延線、及び対象物接触先端部を提供する熱可塑性材料を備えている。
【0057】
図6は、単一の親水性エラストマー球を備えている超音波プローブの好ましい実施形態が、どのように実施され得るかを模式的に示している。以下により詳細に説明するように、そのような配列は、有利には、モジュール式超音波プローブの一部として提供される。
【0058】
図6に示される超音波プローブ200は、単一の親水性エラストマー球208を備えている。親水性エラストマー球208は、例えば、架橋親水性ビニルエラストマー、高吸収性ポリマー又はヒドロゲルの合成及び水和によって製造することができる。親水性エラストマー球208は、(例えば、PTFEから機械加工された)音響吸収性シェル212内に収容されている。球208は、プローブが表面に負荷かけ(load)されたときに、摩耗板214と検査される対象物218の表面216との間で均一に変形される。
【0059】
能動圧電素子を備えているトランスデューサ210は、高電圧インパルス励起パルス、例えば、50~150Vの間で持続時間l / 2fの負の遷移(NGT)パルスの列によって駆動されるときに、L波を生成する。球208(すなわち、「結合要素」)の特性音響インピーダンスは、マッチング層として作用するトランスデューサ摩耗板214からそれへの音響エネルギーの十分な伝達があるようにされている。接触媒体(すなわち、球体208、検査部品218及び周囲空気)間の相対インピーダンスは、プローブと検査対象との間の界面における音響伝達割合(T)及び反射量(R)を、式(1a),(1b)にしたがって決定する。
R = ((Z2 - Z1)/(Z2 + Z1))2 (1a)
T = 1 - R (1b)
【0060】
ほとんどの薄い金属部品では、このような音響インピーダンス整合の問題は、結合媒質及び検査部品を組み合わせた固有の音響減衰よりも、実際に帰還反射エコー信号の振幅に大きな影響を及ぼす。これは、任意の媒体を通って伝搬する間に超音波を減衰させる固有の音響吸収が周波数依存性であり、媒体の温度及び固有の粒子構造などの多数の要因に依存するからである。
【0061】
図6に示す例では、親水性球208と対象物218との相互作用を鋼板の形態で示すと、第1の音響エネルギーの大部分(例えば、>80%)は、球208のヒドロゲル材料(例えば1~3.5MRayls)と隣接する鋼(例えば、約46MRayls)の対象物218との間の音響インピーダンスの有意差のせいで、検査部品218に入らずに反射される。しかしながら、部品218に伝播するエネルギーの割合に対しては、有意な音響漏れ(すなわち、第1の後壁反射からの送信エネルギーの約1.3%のみがトランスデューサに戻される)なしに、そして、反復される後壁反射の信号振幅レベルにおける制限された低下で、前壁と後壁の界面における多重反射が生じる。
【0062】
この実施例は、モード‐3の超音波検査のための結合部材(すなわち、この例では球208)の選択が、妥協状態に到達するのを引き起こすことを示している。妥協状態では、結合が非常に効率的で、第1の後壁反射からの反射エネルギーが部品から逃げすぎないように、十分なエネルギーが部品に伝達される。これは、後続の後壁エコーのために低いSNRをもたらすからである。また、部品に入ることのない音響エネルギーの大部分(すなわち、親水性球内でただ跳ね返る超音波エネルギー)もまた測定され、その周囲内の球体の物理的状態に関する何かを推測するように、又はそれが他の固体、ゼラチン状又は液体の本体と相互作用するように解釈され得ることも判明している。以下でより詳細に説明するように、球内の反射に関連する音響スペクトルの遅延線ピークの分析もまた、球と対象物との間の接触を確立させるために用いることができる。これはまた、表面位置情報を得るために、座標位置決め装置を用いての自動スキャン中に有効に活用することができる。これは、従来の超音波遅延線トランスデューサからのA‐スキャン信号の利用とは対照的であり、このような内部遅延線反射は、より一般的には無視されているか、時間的に完全に排除されている。
【0063】
図6に示す親水性球体208の配置は、効率的かつ柔軟な点検測定の両方を可能にするなどの多くの性能上の利点を有し、高精度かつ限定された機械的動力を有するプラットフォームを用いて、複雑な形状検査面にわたっての連続的なスキャンを許容する。例えば、水性(親水性)球体208は無視できる程度の音響減衰を示し、それらがどのような大きさであってもよいことを示唆する。さらに、それらの音響インピーダンス値は、金属部品への超音波伝達によく適している。加えて、非圧縮性、変形性及びほぼゼラチン状の球体は、非常に軟らかく弾性があり、合理的に湾曲された検査面に自然に適合するようになっている。また、完全球形は、局所的な平面検査面に対する点接触測定の位置精度を保持しながら、十分な結合を達成するのに理想的である。
【0064】
親水性球体配置はまた、プローブの有効自然音響焦点距離を潜在的に変える接触先端部へのある程度の有用な先細り効果又は集中効果を提供するように、適合させることもできる。換言すれば、弾性親水性球は、検査面上へのプローブの装填(ローディング)及び配向の正確な操作を通じて、部品へ投射された超音波のビーム発散及び方向に対するある管理水準を提供することができる。さらに、球状要素は、回転楕円体が平面摩耗面と検査面との間で圧縮されているときの負荷応力の均一な分布による短期間の使用に際して機械的完全性を保持しながら、このような壊れ易い固体材料が検査面への負荷によって繰り返される弾性変形を受けるのを許容するのに最適な、構造形状を提供する。非圧縮性の球体は、好ましくは、シェル内にかなりゆるやかに存在し、負荷の下で完全に球体に戻るたびに、負荷の下で何度も弾性変形することができることに留意されたい。要素が崩壊するのは、球面上で何らかの裂け目又は割れ目が生じるときだけである。
【0065】
図6に示す親水性球208の配置はまた、親水性ポリマー球の水膨潤化学特性が、それらが外部表面から制御された量の水を放出することができるという重要な利点を有する。放出される水の量は、典型的には、大気中で容易に蒸発する量である。この微妙な水の放出は、水がプローブと表面の粗い微細構造との間に閉じ込められる不要なエアポケットを移動させるので、すべての検査面での音響結合を大幅に改善する。これは、明白な残留液体又は混入物質を全く残すことなくなされ、ゲル化剤を部品に塗布する必要性が除去される。さらに、この排水は、公知の有機合成方法によって制御することができ、したがって、接触を失うことなく検査表面をわたって超音波プローブを連続的にスキャンすることが可能であるという、さらなる利点を提供する。より具体的には、検査表面(F)を横切るスキャンプローブの任意の横方向運動によって導入された接線方向の力は、結合部材が完全に乾燥していれば、移動するプローブの位置精度を潜在的に損なう可能性がある、又は時期尚早の機械的な故障の原因となる、接触球における重要な摩擦抵抗力(N)を誘発するであろう。しかしながら、親水性球体の制御された水発汗特性により、球体から十分な液体が放出され、自然かつ有効な潤滑剤として作用し、ほとんどの表面にわたるあらゆる方向での円滑な連続スキャン運動を促進する。
【0066】
したがって、
図6を参照して説明した親水性球に基づく配置は、効率的な点検及び連続自動スキャンの用途に関して多くの利点を提供することが分かる。特定のジオメトリ(例えば、平行でない前後の壁を含む及び/又はアクセスが制限されている場所)については、常には実用的ではない、すなわち、ある表面に対するプローブの再配向によって必要とされる屈折角単独で検査面にL波ビーム屈折を誘発することにより、このような部分を測定することが物理的に可能であっても、である。さらに、表面に対するアパーチャ及びプローブの配向によって生成される自然の焦点距離及び屈折ビーム角度にかかわらず、投射ビームは本質的に発散的であり、アパーチャのサイズ及び動作周波数の結果として、明瞭な近接場屈折集束もなく自然に集束されるだけである。さらに、これらの固定具からの水の放出は制御することができ、極めて控えめであるが、いくつかの用途(例えば、自動車アセンブリの検査)では、水を含んでいる液体残留物がないことが必要となることがある。したがって、対象物接触先端部を形成する適切な軟質結合層に接合されている、剛性プラスチックの屈折レンズ又は角度ビームウェッジの材料(例えば、アクリル又はポリスチレン)を備えている結合モジュールを代替的又は追加的に提供することが有利である。結合モジュールのこの「化合物クラス」は、選択的かつ強固に固定された音響ビームパターンが超音波プローブによって生成されることを可能にする。
【0067】
図7を参照するに、結合モジュールの複合設計の例が示されている。再び、この例は、基本的な動作原理を示しており、上述のモジュール式超音波検査装置で実施することができる。
図7の超音波プローブは、垂直に入射するテーパ状の遅延線250に結合された圧電素子248を備え、圧電素子248は、突出して対象物接触先端部を提供する薄い軟結合層252に接合されているか又は緩く結合されている。この例における結合層252は、例えば手術用手袋又は同様の物品を作製するために使用されるラテックスゴムの薄層である。あるいは、結合層252は、圧縮可能な油性熱可塑性プラスチックによって提供されてもよい。ラテックスゴムと油性熱可塑性樹脂の両者は、変形から残留物を生成しないので、検査中に液体汚染を生じさせない。検査面にしっかりと装填(ローディング)され、音響的に結合されると、法線入射複合超音波プローブは、部品254内に固定された既知の自然なビーム発散256を生成する。しかしながら、より複雑な内部形状に対応するために、法線からの設定角度でL波を屈折させる(すなわちステアする)ために、剛性の屈折要素を非対称に特別に成形することができる。これは、Snellの屈折の法則に従うものであり、方法は、より遅いせん断波モードをフィルタリングするためにも使用され得る。
【0068】
図8は、結合モジュールの複合設計のさらなる例を示す。再び、この例は、基本的な動作原理を示しており、上述のモジュール式超音波検査装置で実施することができる。
図8の超音波プローブは、圧電素子260と剛性の屈折素子を形成するプラスチック平凹レンズ262とを備えている。レンズ262の平坦面264はトランスデューサ摩耗板266に結合され、球凹面268は親水性エラストマー球270に対して結合されている(すなわち、「まわりに圧伸(cup)されている」)。屈折素子(すなわち、平凹レンズ262)は、代替的に、L波音響波面を近接場のある点でその部品内に集中させる、又は集束させるために、任意の必要なタイプの音響レンズとして成形されてもよい。
図8の超音波プローブは、各媒体内での相対的な音速が与えられると、L波が部品272内で集束されることを可能にする。例えば、L波は、部品272の後壁の点Pに集束され得る。この配列は、液浸システムの球状に集束されるプローブを用いて得られるものと同様のA‐スキャン応答を提供し、親水性エラストマー球270が、プローブが水没される水に置き換えている。
【0069】
図9(a)、
図9(b)、
図9(c)、
図10(a)及び
図10(b)は、親水性エラストマー球の形態の結合要素を有する結合モジュールを備えている、上記のタイプのモジュール式超音波プローブの構成要素の種々の設計イメージ及び写真である。
【0070】
上述したように、上述のモジュール式超音波検査装置は、共通のベースモジュールに取り付けることができる複数の結合モジュールを備えている。
図9(a)は、ベースモジュール290の遠位端部の設計イメージを示している。ベースモジュールの円筒形本体は、その外面にねじ式コネクタ部分292を含んでいる。以下に説明するように、ねじ式コネクタ部分292は、適切に配置された相補的結合モジュール(例えば、
図9(b)及び
図9(c)に示すように)がベースモジュールにねじ込まれるのを可能にする。
【0071】
結合モジュールに目を向けると、検査される部品及び任意の必要な遅延線(例えば、通常の遅延媒体又は屈折遅延媒質)に接触する結合要素(例えば、親水性エラストマー球)は、好ましくは、音響吸収性シェル内に保持される。このように強い吸収性のシェルを設けることは、厚さ測定に使用される投射されたL波が他の波(例えば、結合要素の側面からの反射波)を支配し得ることを意味する。これは、例えば、よりコンパクトな屈折ウェッジの設計を可能にする。親水性エラストマー球を収容するための吸収性シェルの例が、
図9(b)及び
図9(c)を参照して説明されるが、同様の吸収性シェルもまた種々のタイプの結合要素に用いられ得ることも留意されるべきである。
【0072】
図9(b)は、
図9(a)に示された設計に作られ、音響吸収性シェル294を備えている結合モジュール295に取り付けられた、ベースモジュール293を示している。 シェル294は、内部音響反射を抑制し、親水性エラストマー球296を保持する。この例では、シェル294はガラス充填PTFE(例えば、Teflon(登録商標)ブランドで販売されているPTFE)である。代替的に、純粋なPTFE又は他の適切な無響のポリマーを使用することもできる。また、高周波数音響反射の無響吸収のために特別に設計された一連の音響ポリマーが市販されていることにも留意すべきである。例えば、Precision Acoustics社のAptflex F28は、液浸システム内のテストタンクライニングに使用される高周波数無響音吸収材であり、不要な内部超音波エコーに対して非常に良好な音響減衰特性を提供する、吸収材シェルに適した材質である。しかしながら、PTFEは、拘束シェルの内面に付着する傾向がなく、親水性球体が表面の荷重下で圧縮されるとき、シェル内で自由に動くことを可能にするのに理想的な低摩擦材料であるという利点を有している。内部のねじ山(
図9(b)には見えない)は、結合モジュール295の取り付けを可能にする第2のコネクタ部分を形成している。
【0073】
図9(c)は、遅延線304を包み、親水性エラストマー球306を保持するシェル302から形成された複合結合モジュール300を示している。シェル302は、
図9(b)に示すシェル294と同様に、精密加工されたガラス充填PTFEから形成されている。内部ねじ山308は、ベースモジュール290上に形成された相補ねじ山292を備えている第1のコネクタ部分に、結合モジュール300を取り付けることを可能にする第2のコネクタ部分を形成している。
【0074】
図9(a)及び
図9(b)に示すように、PTFEシェル294及び302は、各結合モジュールの大部分を、検査面に直接に接触させるために、シェルの端部から突出する結合要素をもたらす、親水性エラストマー球296及び306の一部のみと共に囲む。
図9(c)の複合結合モジュール300の場合には、遅延線304の突出した軟質超弾性結合材料の近傍及び周辺でのPTFEシェル302の詳細な形状が、軟結合要素306が構造内に閉じ込められたときの効果的な圧縮拘束により達成される結合性能に影響を及ぼす。また、この拘束が軟質結合材料を横切る応力集中プロファイルを生じさせる場合には、親水性エラストマー球306を引き裂く可能性が高まるため、消耗品の起こり得る寿命に影響を及ぼす。また、PTFEシェルは、軟らかく傷つきやすい結合材料に対していくつかの有用な一般的な保護を提供することにも留意されたい。
【0075】
図9(b)及び9(c)のシェル294及び302を形成するためのガラス充填PTFEの使用はまた、それぞれ、結合モジュールの各々を関連するベースモジュールに取り付けるのを助ける。特に、PTFEは、各結合モジュールとベースモジュールとの間の円滑で自動化されたねじ締結を可能にする。したがって、機械的ねじ締め組立体が、連結部品間の滑らかな相互作用を促進する材料(例えば、結合モジュール用のPTFEシェル及びベースモジュール用の鋼材)を用いて設計され得る。さらに、結合モジュールの寸法は、ねじ込み式アセンブリが締め付けられたときに、ベースモジュール内の平坦な摩耗面又は摩耗板が、結合モジュールの内側結合材料との適切なクランプ張力との一貫した接触をもたらすように設定され得る。このようなPTFEシェルの使用は、反射を抑制するためにマイクロマシン溝を必要とせずに遅延線を形成することを可能にし、より安価な大量射出成形又は真空鋳造製造方法を採用することを可能にする。
【0076】
図10(a)及び
図10(b)を参照すると、超音波プローブ330の一実施形態の写真が提供されている。
図10(a)及び
図10(b)に示される超音波プローブ330は、CMMの可動式クイルに順に取り付けられた回転ヘッドに取り付けられるように構成されている。特に、
図10(a)及び10(b)に示されるモジュール式超音波プローブは、2軸回転ヘッド(例えば、
図3を参照して上述したタイプのREVO(登録商標)ヘッド)に取り付けるように配列されている。もちろん、このような超音波プローブを他の測定システムに取り付けることは可能である。
【0077】
超音波プローブ330は、圧電超音波トランスデューサを駆動し、そして、そのような励振への音響応答をデジタル記録するのに必要な全ての送受信(Tx-Rx)電子機器を包含する本体部分321を含むベースモジュールを備えている。CMMに取り付けられるプローブ330の近位端部に設けられている本体部分321は、送信 - 受信の電子回路を保護するための任意的な電磁遮蔽を備えている。本体321はまた、プローブに電力を供給し、制御データ及び起動コマンドをプローブに伝える(例えば、超音波測定をスケジュールする)ために必要なすべての電子機器を備えていてもよい。超音波データ及び厚さ測定結果を含む、電力及び/又は制御データは、回転ヘッド通信チャネルを通して渡されてもよい。
【0078】
本体321はまた、プローブの軸方向の長さに沿って延びる薄くて細長い剛性の炭素繊維チューブ323を備えている。チューブ323の遠位端部は、超音波トランスデューサと、結合モジュールに取り付けるための第1のコネクタ部分322とを担持している。
図10(a)は結合モジュールが取り付けられていないベースモジュールを示し、一方、拡大
図10(b)は第1のコネクタ部分322に取り付けられた(すなわちねじ込まれた)結合モジュール332を示している。本体321内のTx-Rx電子機器を先端付近に設けられたトランスデューサに電気的に接続するために、高周波の及びシールドされた同軸ケーブル(図示せず)が炭素繊維チューブ323に沿って内部に延在している。これは、音響波形を生成すべくTxパルサー電子機器からトランスデューサに高電圧パルスを送信し、そしてまた、デジタル化されて記録されるべくトランスデューサから測定されたアナログ電圧信号をRx電子機器に送り戻す。プローブの物理的形態は、電子モジュールがコンパクトで、CMMの測定ヘッドに近い本体内に収容されるように有利に選択されるが、全体の長さは、トランスデューサモジュールとプローブ先端部が到達困難な部品形状にアクセスできるように、炭素繊維チューブの長さ及び/又はクランク角度を変えることによって、特に選択され得る。
【0079】
図11を参照して、
図10(a)及び10(b)を参照して説明された超音波プローブ330の本体321内に含まれる送受信(Tx-Rx)電子機器が説明される。
【0080】
図11は、超音波プローブ内に設けられ得るアナログ及びデジタル電子モジュールの一実施形態を示す。高電圧(50~150V)交流のアナログ信号(例えば、 NGTパルス)の繰り返し列を生成することができるアナログ「パルサー」回路350が設けられている。パルサー350が設けられているが、代わりに、より洗練されたデジタル波形シンセサイザを使用して、より減衰する環境でピエゾを駆動するべく、周波数又は振幅変調波形を生成することでもよい。パルサー350によって生成された高電圧パルスは、プローブのトランスデューサ内の圧電能動素子356を効果的に駆動し、かかる薄くて壊れ易い圧電素子の最大電圧を超えることなく、必要とされる超音波波形358を出力する。各パルスの活性化は、FPGA352又は同等のプロセッサから「パルサー」回路350に送られるイネイブル信号によって起動され、時間的に正確に制御されてもよい。全ての活性化について、高速T / Rスイッチ354は、装置が送信モードと長時間の受信モードとの間で瞬間的に切り替えることを可能にし、その間、システムは、往復圧電素子356によって測定された送信パルスに対しての音響応答を取得してデジタル的に記録する。
【0081】
関心のある受信信号の振幅レベルは大幅に変化し得るので、デジタル取得前に信号を増幅するために、取得されたA‐スキャン応答にわたってのSNR利得を誘発するべく、可変利得増幅器(VGA)360が選択肢として設けられている。さらに、いくつかの材料による伝搬損失又は減衰による各A‐スキャン応答内の変動性を等化するために、距離振幅補正(DAC)として知られている自動利得制御(AGC)の一形態が実装されてもよい。増幅されたA‐スキャンは、適切に広いダイナミックレンジ(例えば、12ビット)のアナログ - デジタルコンバータ(ADC)362を用いてデジタル化される。ここでは、サンプリングレートは測定システムの時間的解像度に基本的に影響し、したがって厚さ測定の精度、例えば、125MHz以上のサンプリングレートが20MHzのトランスデューサに適している可能性があるので、ナイキストレート(Nyquist rate)を上回る、十分なオーバーサンプリングレートが提供されている。ADC362からの符号化されたデジタル波形は、デジタルフィルタ、例えば、トランスデューサの動作周波数に一致する通過帯域を有する低次FIRを使用する帯域通過フィルタリングを必要とすることもある。Tx-Rx電子機器は、個々のA‐スキャン内で観察される可能性がある、全ての電子ノイズ源を最小限に抑えるように設計されている。このような補正されていないノイズは、N回の連続的なA‐スキャン測定(すなわち、理論的なN SNRゲインを提供する)にわたって平均することによって、最も効果的に抑制される。
【0082】
図12を参照して、
図3を参照して説明されたCMM及び超音波検査装置の一連の自動移動命令をコンパイルするために使用される、検査計画ソフトウェアのための入力データ要求の例について説明する。
【0083】
表面接触(スキャン又はタッチトリガ)プローブを使用する表面接触計測において、検査部品の名目CADデータモデルを使用して、測定移動を計画及び実行する部品プログラムを自動的に生成するソフトウェアを使用することは知られている。例えば、タービンブレードの高分解能連続掃引スキャン測定は、CMMを制御するための業界標準のDMIS言語で部品プログラムを生成する、Renishaw社が販売するApexBladeソフトウェアを使用して実行することができる。同様のCNCソフトウェア、例えば、受け入れられた高レベルのCMM制御ソフトウェア言語(例えば、DMIS)を使用して、超音波プローブ検査を自動的に計画及びスケジュールすることもできる。このような検査計画は、自動又は手動のいずれで実施されようと、何らかの詳細な部品固有の検査計画又はスケジューリングを備えていることが好ましい。
【0084】
第1の要件は、超音波測定が必要とされる場所を画定することである。これは、超音波検査の前に、すべての測定ノード、直線部分(Bスキャン線)又は超音波検査測定が行われる標的検査部品にわたって画定された検査領域の位置を画定する検査計画を画定することによって達成され得る。このプロセスは、既知のタイプの表面接触測定プローブを使用して実施される検査部品の外部形状測定を使用することができる。測定ノードを画定した後、詳細な検査部品の形状と、超音波プローブを担持する自動化プラットフォームによって提供される利用可能な機械的自由度とを知って、測定に必要な超音波プローブのタイプを判定することができる。例えば、(
図4(a)及び
図4(b)を参照して説明したような)通常の軸超音波プローブのみを使用することが可能であるかもしれず、又は(例えば、
図4(c)及び4(d)を参照して説明したような)クランク角度付の超音波プローブが、いくつか又はすべての測定に必要であるかもしれない。2つ以上の超音波プローブが必要な場合は、自動プローブ交換ルーチンが必要とされるであろう。
【0085】
上に説明されたように、モジュール式超音波プローブは、交換可能な結合モジュールを備えている。
図3及び
図5(a)に示すように、結合モジュールは貯蔵トレイに格納され、したがって、必要に応じて超音波プローブのベースモジュールに自動的に取り付けられ、且つ取り外し可能である。したがって、検査計画は、検査部品内の異なる幾何学的形状にわたる測定のために最も有益に使用される1つ又は複数の結合モジュールを選択することを含むことができる。各結合モジュールはまた、寿命が限られてもよい(例えば、消耗品又は限定寿命品目であってもよい)ので、計画プロセスは、そのような結合モジュールをリフレッシュするための交換戦略を含むことができる。例えば、純粋にスケジュールされた変更戦略は、カバレージ及びスキャン性能に関して部品の各セクションに最適な結合モジュールを判定すること、且つ損傷した結合モジュールを使用する可能性を排除するために、検査内での交換の設定数をスケジューリングすることを包含する蓋然性がある。予測できる置換戦略は、損傷又は最適以下の性能が検出されたときのみに結合モジュールを交換することを包含し、これは、好ましくは、特定のジオメトリのための最適設計を判定し、そして必要な可能性のある数をカバーするのに各設計が十分に利用可能であることを保証することを包含する。予定且つ予測される置換の混合もまた採用され得る。
【0086】
測定ノード、計画された検査のための超音波プローブの変更及び結合モジュールの変更を判定した後、最適な移動経路が生成され得る。このプロセスは、好ましくは、プローブが任意の障害物(例えば、部品、固定具又は花崗岩(granite)ベッド)と衝突しないように、プローブの動きが適切にブレンドされることを保証する。予測結合モジュール変更戦略の場合、現在の結合モジュールに損傷が検出されたときにプローブが測定ボリューム内のどこに位置されているか、プローブを貯蔵トレイに戻すために安全な移動経路シーケンスを呼び出すことができるかが重要である。次に、検査面上の内壁厚さ測定ノードのリストがコンパイルされ、超音波経路が画定される。
【0087】
超音波プローブのベースモジュールをCMMの可動部材(例えば2軸回転ヘッド)に取り付けた後、圧電プローブが正確に機能していることを保証するためにテストを行うことができる。回転ヘッドに取り付けられたときのベースモジュールの軸方向の整列及び位置は、貯蔵トレイから結合モジュールを自動的に着脱するために十分な精度で一貫して固定されていると仮定することができる。これは、モジュール式超音波プローブのベースモジュールは実質的に剛体であり、確立された運動学的ジョイントを使用して、測定ヘッドに取り付けることができるからである。しかしながら、結合モジュールの結合要素(すなわち先端部)の位置の較正は、好ましくは、結合モジュールをベースモジュールに取り付けた後に実行される。これは、CMMの座標系内の検知先端部(すなわち、結合要素)の位置を正確に判定するためである。
【0088】
図13(a)及び
図13(b)は、音速較正、XY位置較正及び他の較正作業に使用することができる、例示的な汎用較正アーチファクトを示している。これは、適切な較正アーチファクトの一例に過ぎず、他の較正アーチファクト及び技法も代わりに使用することができることを覚えておかなければならない。
【0089】
図13(a)は、
図13(b)に三次元でも示されている較正ブロック400の二次元断面図を示している。較正ブロック400は、CMMのベッド上に置かれ、表面測定(スキャン又はタッチトリガ)プローブを使用して、その位置がXYZ位置及び向きに関して正確に測定(すなわち基準化)されるように、平面直交面402を組み込んだ精密機械加工品である。このブロック400はまた、表面接触(例えば、タッチトリガ又はスキャン)プローブを使用して、CMM体積内に配置され得る中心ディンプル特徴部406を備える平坦な頂部表面404を有している。較正ブロック400は、中空であり、平坦な頂部表面404に対して浅い斜角(例えば、5~10度)を有する内部円錐面408を備えている。円錐面408によって規定される円錐の頂点は、中心ディンプル特徴部406のXY座標と同心である。
【0090】
使用時において、CMMの座標系における較正ブロック400の位置及び向きは、従来の計測学データ処理によって判定される。例えば、基準点及び主軸は、従来のタッチトリガープローブを使用して、少なくとも6つの接触点(例えば、Z-平面を規定する3つの点、x-線を規定する2つの点、及び、Y-点を規定する1つの点)を取得することによって、ブロックの直交する平面区分から判定される。較正ブロックの位置がこのようにして見つけられると、CMM容積内の超音波プローブ先端部の位置を判定することができる。
【0091】
特に、CMM容積内のブロック400の位置はまた、親水性エラストマー球の形態の結合要素を備えている音響プローブを使用して取得される2組の測定値から判定することもできる。第1の測定では、音響プローブの先端の位置(したがってブロックの表面上の点の位置)が、音響プローブを較正ブロック400の頂部平面の上方の点まで下方に移動させることによってz軸上で判定される。換言すれば、プローブは、頂面法線ベクトル[0 0 1]に対向するようにヘッドをゼロにすることによって、[0 0 -1]方向に移動される。次いで、音響プローブは、CMMクイルをZ方向にゆっくりと移動させることによって、既知のZ高さにあるブロック400の頂部平面404上にロードされる。頂部平面404にプローブを繰り返し載置することにより、プローブがこの表面に接線接触するZ座標を推定することができる。これは、以下により詳細に説明するように、親水性エラストマー球からの反射から生成される音響信号の分析によって達成される。この第1の測定により、CMM容積内での先端部のZ位置を正確に判定することが可能になる。
【0092】
第2に、CMM座標系内の音響プローブの先端部のXY位置を推定するために、内部円錐形の特徴部の上方の、較正ブロック400の頂面404にわたって、超音波厚さ測定値のシーケンス(例えば、固有の解について少なくとも6つ)が行われる。再び、プローブは下方に指向するように(すなわち、プローブヘッドをゼロにすることによって)配置され、プローブのXY位置が各測定ノードで記録される。次いで、各測定点でブロック厚さを計算し、3Dで取得した一組の厚さ測定値を、例えば、Levenberg-Marquardt(LM)アルゴリズム又は任意の線形又は非線形最小二乗円錐フィッティングアルゴリズムを使用して、円錐形状に数学的に適合させる。このフィッティングプロセスは、フィッティングされた円錐の頂点のXY推定値とディンプルの実際のXY位置との間のオフセットを明らかにする。
【0093】
好ましい実施形態において、
図13(a)及び
図13(b)に示されている較正ブロック400が、検査される部品に見られるのと同じタイプ及び等級の金属材料を用いて機械加工されてもよい。ブロック400は、その後の部品測定の壁厚を推定するために、音速較正を実行するために使用されてもよい。これは、較正ブロックの周囲の既知の厚さ部分についての時間遅延を測定することによって達成することができる。あるいは、可変速度源を最小限に抑えるために、音速は、検査される部品の既知の固形部分(例えば、ブレードの根元又は翼の近く)から、直接に測定されてもよいことに留意されたい。これは、音速較正が、例えば、環境内での温度差、結晶学的方向、又は密度/多孔度の微細構造の差に起因する、厚さ測定計算内で最大の測定誤差原因となる可能性が高いためである。
【0094】
モード‐3測定は、結合要素の可変性(例えば、親水性エラストマー球を通る伝播経路の変化)によって実質的に影響を受けないので、上述のモジュール式音響プローブを用いた厚さ計算のための好ましい方法である。しかしながら、上記の較正技術は、モード‐1又はモード‐2の測定にも使用することができる。このような計測技術では、ある範囲の厚さにわたる第1の後壁反射についての絶対伝搬時間遅延が、線形補間による測定範囲内でのその後の任意の厚さ測定値を直接に得るために使用され得る。これは、例えば、可変性を低減するために、剛性の一定遅延線と非常に薄い結合要素(例えば、ラテックスゴム)とを有する結合モジュールでもって、より厚く、より減衰が大きい部品を測定するなどの、限られた数の用途を有することができる。
【0095】
検査される部品を正確に表すことができる較正ブロック400は、高度に自動化された点測定及び連続スキャンという状況において、さらなる用途を有することができる。以下に説明するように、これらの追加的な用途には、プローブ接触検出、通常のプローブ負荷推定、厚さ測定、及びウィグル運動(wiggle movement)適応が含まれる。
【0096】
プローブ接触の検出のために、較正ブロック400は、取り付けられた任意の結合モジュールを備えるプローブが、その先端部が表面に接触するときの点において、プローブのA‐スキャン波形の関連する変動を測定し、較正することができる便利な既知のジオメトリ及び同一の平面ターゲットを提供する。以下でより詳細に説明するように、この技術は、プローブ先端部の任意の固体との接触を推測するために、測定されたA‐スキャンの連続して繰り返えされる列から抽出される、結合モジュール内からの内部反射エコーの振幅、位相、微細形状、周波数及び/又は到着時間(TOA)の変化を利用している。例えば、硬質遅延線内の第2及び第3の遅延線反射(DL2及びDL3)の振幅は、固体からのプローブ先端部接触に対して極めて敏感であることが分かっている。
【0097】
通常のプローブの装填(ローディング)推定のために、このようなプローブ先端部の接触を推測するA‐スキャンの繰り返しの列から抽出された結合モジュールからの内部反射を使用することが、そのような較正ブロックを用いて、平坦な表面での、プローブの通常のローディング測定及び較正に拡大され得る。A‐スキャンを高速で連続的に記録しながら、較正ブロックにプローブをゆっくりと負荷かけ(ローディング)することにより、柔軟な結合要素が検査表面に対して変形するときの、結合モジュールの内部反射エコーからの波形の特徴が、先端部と表面の位置情報と共に抽出され且つ保管され得る。これらの特徴は、結合モジュール内の軟結合要素の物理的状態が通常の負荷条件でどのように変化するかを適切に画定し、したがって、検査面にわたって次の測定を行う際の負荷条件を推測することができる。結合モジュールの軟結合要素内での変位又はたわみを推定するためのこのような通常の負荷かけ較正は、検査面に対するプローブの正確な操作を保証するために(例えば、プローブの有効開口又は入射角を変更するために)、又は複雑な及び/又は未知の幾何形状表面にわたる操作プローブの連続スキャンのために、極めて有用である。このように、CMM及び/又は能動的ヘッドコントローラ内の位置合わせのための直接フィードバックとして、高速でのそのような推定された測定値を使用することで、未知のトポグラフィ(topography)にわたっての実質的に一定の負荷条件を達成することができる。
【0098】
厚さ測定のために、後壁反射エコー間での正確で計算上効率的な時間遅延の推定は可能である。好ましい実施形態では、この時間遅延推定プロセスは、連続する後壁反射の間での時間遅延推定を正確に鮮明にするために、測定されたA‐スキャンにわたっての後壁エコーの記憶された又は抽出されたレプリカを畳み込む(convolve)一般化された相互相関(GCC)アルゴリズムの形態の実施を含むことができる。このスペクトル技術は、エコーの到着時間、及びかくて連続するエコー間の正確な時間差を計測するために、振幅及び最も顕著には位相(例えば、位相変換事前ホワイトニングを使用する)を含んでいる、後壁反射波形の全体的な形状を利用する。このように、較正ブロック400は、検査中に使用することができる後壁エコーの代表的なレプリカ波形の延ばされた組を測定し、格納するために使用され得る。
【0099】
モード‐3測定における連続する後壁反射間の時間遅延を測定するのと同じ方法が、変形可能な結合モジュールからの内部反射エコーの精密な測定に使用できることにも留意すべきである。より具体的には、内部反射ピークの到着の正確な時間を抽出するためには、その後の検査中に使用され得る、内部反射ピークのテンプレート署名(template signature)を較正中に記憶することが有益である。
【0100】
ウィグル運動適応の場合、任意の表面への超音波結合は、最良のSNRが、通常の入射L波トランスデューサに対して利用可能な最大の力で表面に垂直に単に負荷をかけることによっては常に得られるわけではないという点で、完全には決定的ではないことが確認されている。確率論的プロセスはまた、検査面に負荷かけされているプローブについて達成されるSNRにも影響を及ぼし得る。例えば、支配的な微細構造、湿度及び温度条件は、空気がプローブと検査面との間にどのように捕捉されるかに影響を及ぼし、超音波伝達に大きな潜在的な変動性をもたらす。これらの理由から、手動及び自動の両方の超音波NDT測定(例えば、Marietta-NDT 5-550システムを使用)において、受信された信号レベルを最適化するために、プローブ先端部を表面上に静止して保持しながら、プローブの向き(例えば、ローリング及び/又はねじれ)にある微細な印加力を施すことが知られている。さらに、正確かつ無限に割り出し可能な自動化プラットフォーム(例えば、5軸能動ヘッドを備えたCMM)により、特定の検査条件に対するこのような微細なプローブ移動(例えば、ロール及びツイスト)の好都合なシーケンスを判定することが可能になる。したがって、較正ブロック400は、その後の部品検査中に採用され得るモジュール式音響プローブのために、最適で微細なウィグル運動の連続を計測するか又は(例えば、最適化、クラスタリング又は人工神経分類器を使用して)アルゴリズム的に学習することができる、そのような既知の代表的な表面を提供することがさらに強調される。
【0101】
図14は、
図3を参照して説明したタイプの5軸CMM装置と、
図4(c)及び
図4(d)に示すモジュール式音響プローブ109のクランク角度の変形例を使用して、航空宇宙ファンブレードディスク/ハブ450を測定するプロセスを示している。
【0102】
モジュール式音響プローブがCMMの2軸回転ヘッドに取り付けられ、必要な較正手順が完了した後、プローブ109を使用して、部品にわたって測定を行うことができる。プローブ109は、必要に応じて、ブレード450の検査中に、点測定441と連続スキャン測定442の両方を行うことができる。例えば、空間的に異なるノードの組(例えば、各ブレードに分散された20の位置)で測定を行い、及び/又は連続的なスキャン測定値を取得することができる(例えば、1mmピッチでの測定値を収集しながらブレードの表面上の経路に沿ってプローブを移動させることによる)。
【0103】
図14に示すように、クランク角度は、超音波トランスデューサ(したがって投射されたL波)がプローブ109の長手方向軸から一定の角度離れて配向されることを可能にする。隣接したブレードに近接して配置したにもかかわらず、このクランク付プローブの配列は、超音波エネルギーが、CMMと回転ヘッドによって提供される、5度の運動(3つの並進軸X、Y、Z及び2つの回転軸A、B)を使用して、ブレード450の表面に垂直に向けられるのを可能にする。しかしながら、シームレスの連続するスキャンのために、主たるプローブ軸の周りに更なる回転軸(C)を設けることにより、いくつかの幾何形状及びスキャン方式が恩恵を受けてもよい。
【0104】
図15を参照すると、親水性エラストマー球を備えている結合モジュールを有するモジュール式超音波プローブを用いて採取された、平らな部品の厚さ測定中に生成されたA‐スキャン波形が示されている。
【0105】
図15の(a)は、モジュール式超音波プローブ464の親水性エラストマーの球先端部462が、CMMによってその上に搭載された平面検査面466に向かって垂直に移動されている様子を示している。
図15の(a)のグラフに示されているA‐スキャンは、プローブが表面と接触する前の時間の関数として、受信された(戻された)超音波パルスエコーの振幅を示している。第1のピーク470Aは、プローブのトランスデューサによって生成された励起パルスに対応する。後のピーク470B、470Cは、非圧縮の親水性球内からの時間遅延内部反射のピークである。したがって、
図15の(a)のこれらの一貫したA‐スキャン波形は、空気によってのみ取り囲まれているときの、偏向されていない結合モジュール内からの「静止状態」の状態を示している。すなわち、プローブの先端部(すなわち親水性エラストマー球462)は検査面にまだ接触していないので、球体に作用する外部の機械的力はない。このようなA‐スキャンの列は、高い反復率(例えば、1000‐2000 Hz)で実行され得る。
図2に示された遅延線トランスデューサのA‐スキャンの場合と同様に、第1のピーク470Aと第2のピーク470Bとの間に画定される時間ウィンドウが、プローブの主たる測定ウィンドウを提供することに留意されたい。しかしながら、反復率は、連続したパルス間の重大な干渉を引き起こすほどには高くはならない。
【0106】
図15の(b)は、プローブ464の親水性球先端部462が平面検査面466と最初に接触する正確な点を示している。極めて初期の接触の瞬間には球の顕著な形状の歪みはないが、測定されたA‐スキャン波形には明白で即座の変化が生じる。第1に、反射ピーク480B及び480C(すなわち、非圧縮の親水性球内からの時間遅延内部反射ピーク)が、ピーク振幅の減少を示す。これは、第2の反射ピーク480Cについてより顕著である。第2に、プローブがより有意な接触を開始するにつれて、ピークは、左に(すなわち、t = 0の励起パルス480Aに向かって)わずかにシフトし始める。第3に、親水性球462と硬い検査表面466との間の軽い接触であっても、A‐スキャンの主たる測定ウィンドウ内で、部品の連続する後壁反射からの複数の測定可能な反射ピーク482A、482B及び482Cが観察され得る。
【0107】
図15の(b)では、明瞭性のために、3つの反射ピーク482A、482B及び482Cのみが示されている(すなわち、そのような反射ピークが3つ以上ある可能性が高い)こと、及びこれらの後壁反射は親水性球の結合特性により生じることに留意すべきである。特に、親水性球に基づく超音波プローブの重要な利点は、検査面との適度なプローブ接触を必要とするだけであるが、薄い部品測定のために十分な遅延を与えることができることである。これは、親水性球の軟らかな等角の接触特性及び接触感触に対する部分的に濡れた接触特性の理由で、プローブと表面との間のエアギャップを充填する能力の直接の結果である。
【0108】
したがって、表面との接触に起因するA‐スキャンにおける変化は、超音波プローブが表面接触測定を行うことを可能にする。これについては、以下でより詳細に説明する。後壁反射482A~482Cは、モード‐3の厚さ推定を提供するのに適切であり得るが、部品との音響結合の増大を確立するためには、超音波プローブを検査表面上にさらに負荷かけさせることが好ましい。特に、さらなる負荷かけは、最適な結合接触(本明細書では、結合「スイートスポット」とも呼ばれる)が得られることを可能にし、この最適な結合は、結合モジュール内からの減少した反射ピークと増加した後壁反射ピークとの組み合わせによって明らかになる。
【0109】
図15の(c)は、モジュール式超音波プローブ464の親水性球462が検査面466上にさらに負荷かけされた結果を示している。A‐スキャンのプロットから分かるように、結合モジュールの反射ピーク490B及び490C(すなわち、非圧縮の親水性球内からの時間遅延内部反射ピーク)の振幅の減少がより顕著である。これには、厚さ測定(すなわち、ピーク492A、492B及び492C)に対する主要な関心事である後壁反射のSNRにおいて顕著な増大が付随する。また、プローブが表面にさらに負荷かけされ、そして球体が次第により変形されるにつれ、測定ウィンドウ内の内部結合モジュール反射(すなわち、ピーク490B及び490C)及び後壁反射(すなわち、ピーク492A、492B及び492C)の両方が、時間t = 0の送信パルス490Aに向かってさらにシフトされることも分かる。しかしながら、連続する後壁反射(すなわち、ピーク492A、492B及び492C)の間の遅延は不変である。
【0110】
図15(d)は、上記の「結合スイートスポット」を過ぎて、表面にプローブをさらに負荷かけすることを示している。結合モジュール反射ピーク500B及び500C(すなわち、非圧縮親水性球内からの時間遅延内部反射ピーク)の振幅のさらなる減少が観察されるが、後壁反射信号(すなわち、ピーク502A、502B及び502C)における実質的な変化は観察されない。関心のあるピークはまた、T = 0での初期送信パルス(すなわち、主励起ピーク500A)に向かってさらにシフトされていることが分かる。「結合スイートスポット」を超えての表面上へのプローブのさらなる負荷かけは、かくて、後壁反射信号のSNRにおいて、それ以上の改善をもたらさない。加えて、このようなさらなる負荷かけは、球の変形が、A‐スキャン内で関心のある送信波形と受信波形との間の時間的重なりが観察されるか、又は親水性球が損傷される状態に近づくことができることを意味する。
【0111】
図15(a)~
図15(d)に示されるA‐スキャンデータは、プローブが検査面に連続的に操作されている間に、連続的なA‐スキャンの列での変化の自動検出を可能にするため、種々の信号又はデータ処理方法に従うことができる。これらのA‐スキャンから抽出された波形情報、特に親水性球からの内部反射エコーからの過渡的波形は、超音波プローブの先端部が他の本体と接触した時を正確に検出するための、敏感で着実な方法を提供する。この表面接触情報は、いくつかの用途を有する。
【0112】
第1の検出方法は、超音波プローブの先端部が固体と接触していないことが分かっている場合に、CMM容積内の何らかの「ヌル」位置にプローブが配置された状態で、単一の基準A‐スキャンを捕捉することを含んでいる。この基準波形(
図15(a)に示す波形など)は、圧縮されていない球体からの内部反射ピークのみを含み、先端部接触なしで画定される状態を表す。重要なのは、軟らかい結合球の非常に高い弾性に主に起因して、このA‐スキャン波形形状は、任意の固体から先端部の接触荷重が取り除かれた後、一貫して戻されることが観察されている。結合モジュール反射ピーク(すなわち、親水性球からの内部反射)を包含しているA‐スキャンのセグメントは、プローブが表面接触の前に操作されるときに測定されるA‐スキャンの連続列からの同じ時間に通されたセグメントに対して抽出され、そして繰り返し比較又は差異化され得る。この方法における差異化を監視することは、対象物との先端部接触がいつ発生するかを自動的に検出するために、使用することができる。
【0113】
自動検出判定は、任意の適切な検出基準に基づいて指示され得る。プローブのいくつかのシナリオでは、高度な又は適応性のある検出器(例えば、CFAR、ベイジアン検出器)を述べることができるが、多くのシナリオにおいて、絶対的な所定の硬さ検出閾値を有する単純な二乗法エネルギー検出器で十分である。このアプローチは、測定されたA‐スキャン波形の連続列が、プローブが任意の速度で、又はCMM及び/又はヘッドが誘発することができる複雑な動きによって自由空間で操作されている間に、測定/測定の変動が無視できるほど小さいので、有効である。さらに、プローブ先端部と固体との間の接触は、親水性球からの観察された内部反射エコー全体にわたって瞬間的かつ非常に大きな変化を誘発する。プローブ内の自動接触検出アルゴリズムはまた、第1のエコーリターンを越える任意の数の反射エコーを分析することができる。例えば、第2及び第3の反射波形は、そのような接点上の最初の第1のエコーリターン(例えば、
図15(b)に見られる)よりも振幅が著しく変化することが多く、したがって、これらの波形は、タッチ接触事象の敏感な指示を提供することができる。パルス発生の繰り返し速度は、好ましくは、前のパルスからの干渉が最小になるように選択される。
【0114】
各A‐スキャンから抽出され、検出器内の入力データとして使用される結合モジュールの内部反射エコーを画定する信号の特徴は、蓄積された波形エネルギーにおける差異に、単純に関連しているかもしれない。しかしながら、使用される信号メトリック(metrics)は、堅調ではあるが敏感なリアルタイムの先端部の接触検出に影響を及ぼす能力が異なる可能性があることに留意されたい。ピーク電圧、信号の尖度(kurtosis)(すなわち,第4の統計的モーメント)、RMS、FFT及びAR係数を含んでいる他の波形メトリックも、任意の信号の特徴が検出器内での使用のために抽出されてもよいが、同様に十分に使用され得るでろう。先端部の接触事象を推測するためのA‐スキャン波形における有意義な変化を検出するためのかかるアルゴリズムは、差分プロセスに基づく比較又は検出の判定が、結合モジュールの内部エコーピークを包含している各A‐スキャン内から抽出された短い時間ゲートセグメント化されたウィンドウにわたって計算されるのみを必要とするので、実際には、最少の計算を必要としよう。したがって、実際には、プローブが先端部の接触状態を報告することができる速度は、検出器の計算よりはむしろ、A‐スキャンが生成され得る周波数によってより根本的に制限される。A‐スキャン発生速度は、結合モジュール内の媒体の厚さ及びL波音速、及び親水性エラストマー先端部からの少なくとも最初の2つの反射を記録するのに必要な通過時間に依存することに留意すべきである。比較的単純であり、検出タスクでの計算が少ないため、接触状態の情報がプローブによって報告され、周辺機器(例えば、CMM又は測定ヘッドのコントローラ)に送信される周波数は、比較的高くてよい(例えば2000Hzまで)。しかしながら、以前の反射がより顕著に減衰する前に新たな送信パルスが誘起されるように繰り返し速度を増加させると、減少する振幅の追加の予定外/擬似ノイズピークの組が連続するA‐スキャン内に急増することになる。これらは、連続する後壁反射間で所要の時間遅延を抽出するための一次信号処理方法を使用して、一次測定ウィンドウ内で効果的にフィルタリングすることができるが、これらは、送信されるパルスと第1の内部反射との間での振幅において、より重要である。
【0115】
このような高速で先端部の接触状態データを生成することは、自動検査システムが、自動化プラットフォームによって誘発される任意のタイプの移動(例えば、CMM及び/又は測定ヘッドの動き)中にプローブが予期せずに遭遇する可能性のある予定外の先端部接触事象に対し対応する、すなわち、比較的迅速に機械的に反応することを許容する。例えば、プローブが典型的なスキャン速度(例えば、100mm /秒)で線形軌道に沿って移動している間に先端部接触が検出された場合、対象物への最小の可能な移動は、移動を止めるためにCMM及びヘッドへ中断コマンドを送信する待ち時間がないと仮定すると、結合モジュールの軟結合要素における約50ミクロンのたわみと同等である。このような動きをCMM及び/又は測定ヘッドが停止させるためのコマンドに影響を与える際に、ある程度の妥当な時間の待ち時間を許容しても、結合モジュールの軟結合要素内のたわみ量は、親水性の球の先端部又は硬質のプローブに対する損傷が誘発されるであろう以内の公称最大許容変形量の大きさの程度であろう。高い時間分解能の接触状態データと軟弾性先端部によって提供される位置許容誤差との組み合わせは、プローブ先端部に対する有意な検出されない衝撃損傷の発生の可能性を低くしている。
【0116】
上述のように、敏感なタッチ接触能力は、CMM空間内のプローブのナビゲーションに非常に有用である。これは特に、プローブが剛体であり、容易に損傷する可能性がある他の感知モダリティ(modality)を持たないためである。しかしながら、非常に高速で有用な表面相互作用データを生成する超音波プローブの能力は、単純なバイナリ接触検出を超えている。以下に説明するように、検査部品の外形を記述するデカルト点群測定値を生成することができる単純で敏感なタッチプローブとして、プローブが任意の検査内で使用できるのを許容する信号及びデータ処理方法が考案されている。この基本的なタッチポイント機能は、超音波プローブによって実行される計測検査(例えば、時間の節約)に加えて、より広範な用途(例えば、従来のタッチプローブ又は光スキャンプローブでは容易に測定できなかった困難な光学的特性を備えている軟らかいゼラチン質の部品の敏感で正確な測定)に対して直接な利益を有する。さらに、検査表面に対するプローブの負荷状態は、測定されたA‐スキャン内の内部結合モジュール遅延エコーを直接利用することによって、連続的に推定することができる。これは、より制御可能なポイント測定と、超音波プローブを使用して行われる連続移動スキャン検査の両方に直接かつ重要な利点を有する。
【0117】
タッチ能力は、操作中における連続的な正弦波信号で、プローブの圧電能動素子を励振することにより、さらに改良することができることに留意されたい。例えば、親水性の球の先端部は、共振周波数、例えば20MHzで連続的な正弦波励起で駆動され得る。球体が固体により接触されたときに、共振で検出された減衰(dampening)が検出され得る。
【0118】
モジュール式超音波プローブが、検査部品の外部形態にわたって有用な点群測定を行うことができる基本的なタッチトリガープローブとして使用されることを許容する処理方法を、
図16乃至
図19を参照して説明する。例えば、これは、表面の法線を推定するために、必要とされる測定ノードの周りで近接して3回のタッチ測定を行うことによって、プローブがある点での次の厚さ測定のために表面の向きを適切に調査することを可能にするであろう。上述したように、タッチ接触は、結合モジュールの親水性球からの内部反射を連続的に監視することによって、プローブで検出され得るので、較正された非接触基準状態からのこれらのエコー波形における意味のある変化(例えば、ピーク振幅、位相、到着時間変化)を検出することができる。
【0119】
図16は、プローブ先端部548が一定のZ高さに維持された状態において、X及びY座標の両方の直線運動で固体ブロック547に向かって、一定速度で移動しているモジュール式超音波プローブ546を示している。超音波プローブ546は、親水性球を備えている先端部548を有している。モジュール式超音波プローブ546は、
図3を参照して上述したように、移動のためにCMMに取り付けられている。
【0120】
CMMの座標系におけるプローブ先端部のXYZ位置(すなわち、親水性球の中心の位置)は、CMMコントローラを介して高データレート(例えば、1000-2000Hz)で集められる。この先端部の位置データは、親水性球の内部反射エコーにおける大きな摂動が存在するかどうかを示す、超音波プローブによって同じ速度で生成された適切な信号と組み合わされ、それにより球が対象物に接触したことを示す。タッチトリガープローブによって生成されるトリガ信号に類似するこの信号は、測定された各A‐スキャン内の第2の内部反射ピーク電圧(Vp)と、
図15を参照して上述したように、記憶された「非接触」の基準A‐スキャンとの間の絶対差を監視することによって生成することができる。
【0121】
超音波プローブによって検出されたタッチ事象は、したがって、プローブに、CMM動作を停止させて点測定値を記憶するために使用されるCMMへの即時の指示を(例えば、トリガ信号線の状態の変化を介して)出させる。しかしながら、プローブからCMMへの命令の送達に関連したいくつかの待ち時間が常にあり、CMM減速の期間も避けられない。CMMの動きを止めることの遅延は、超音波プローブの軟らかい先端部が固体ブロックへの変形を生じさせるので、完全な停止になるときのその位置は、接触が最初に検出された表面の点Pからかなり離れている可能性がある。
【0122】
図17(a)及び
図17(b)は、上述した作用を示している。
図17(a)は、接触が最初に検出される点Pを示し、
図17(b)は、超音波プローブが停止される前に生じる表面(すなわち点O)へのさらなる動きを示している。この点までに取得された位置及びトリガ信号の時系列を補間することにより、点Pに近似させることができる。あるいは、タッチ事象が発生したときにプローブが比較的高速で移動している場合、より遅い速度でのバックオフ運動を伴うことで、より正確な結果が達成され得る。これは、接近ベクトルとは反対の方向により遅い速度で、プローブを表面から除去することを含んでいよう。
【0123】
図18は、上述の方法で、プローブを表面へ移動させ、その後に表面から移動させる間の時間の関数として、X位置550、Y位置552、Z位置554及びトリガ信号(Vp)の状態データ556のプロットを示している。時系列プロットは、接触の時刻558及び接触が失われる時刻(560)を破線で示している。プローブは、かくて、表面と接触するように移動され、点Oで停止する。その後、より遅いバックオフの移動が開始される前に、プローブが静止している短い滞留期間(点Dで終了する)が存する。このより遅い逆方向移動は、より高い密度の空間測定点が記録されること、及びVpが基準レベルに戻る時間を検出することから時間的量子化誤差を許容し、それによって接触が破壊されたことを示すことは、PのXYZ位置(すなわち、勾配が浅いため)を推定する際に時間的量子化誤差にほとんど影響を与えない。より遅い線形バックオフ移動の間に、プローブのハードウェア内で、プローブ位置が報告されるよりも速い速度で、A‐スキャンデータからトリガ信号(例えば、Vp信号)を生成することも可能である。これは、補間によってPのより正確な推定が得られることを可能にする。球の接触変形が球面上の異なる位置で、かつ異なる放球角度で生じる場合、反射ピーク変動の微妙な差異に対応する、より洗練された補間法を採用することもできる。
【0124】
上記結合モジュールの弾性親水性球は、検査中に異なる量の水を放出するように合成されてもよい。(例えば、より粗い表面にわたる潤滑のために)より多くの量の水を放出することは、バックオフ移動中に行われるタッチ接触測定の精度を低下させることが分かっている。これは、種々のサイズの小さな水滴が、変形した球の位置の周囲に蓄積して、バックオフ移動中に球と検査面との間に一時的な物理的ブリッジを生じさせるからである。この水滴は、対象物との接触を示す超音波データがが失われたときに、変動性を導入する可能性がある。このような変動性は、タッチ測定を行うために第1のバックオフ動作を利用せず、その代わりに、タッチ位置データを取得するために、(例えば、第1のバックオフ動作の直後により遅い速度で同じベクトルに沿って)表面に第2の動作を組み込むことによって、容易に克服することができる。
【0125】
表面接触測定値も取得するための超音波プローブの使用は、従来の表面接触(例えば、スキャン又はタッチトリガ)プローブのために、超音波プローブを交換するよりも迅速であるというさらなる利点を有する。
【0126】
図19を参照するに、球の対称性のために、緯度(例えば、α及びβ)を横切る差異のみが考慮される必要があることにも留意されたい。これは、プローブの変形とX、Y又はZのプローブ位置との関係が線形であるか、又は意図的な表面接触タッチを介して較正することができる限りである。
【0127】
超音波プローブのA‐スキャンを解析して、表面接触が最初に達成されたときを確立することに加えて、プローブの装填(ローディング)、したがって検査中の結合状態を推定するための信号及びデータ処理アルゴリズムもプローブに含めることができる。簡単にするために、プローブが一般にどのように使用されるかに最も関連するため、プローブが名目上法線方向から検査面に装填(ローディング)されるシナリオについて説明する。しかしながら、L波の進行方向(すなわち、トランスデューサの軸方向)から離れた角度でプローブを負荷かけ(ローディング)する場合にも、同じ原理及び方法を適用することができる。
【0128】
図15を参照して既に説明したように、表面に対して親水性の球状先端部を有する超音波プローブを負荷かけ(ローディング)することは、球内の正常な変形又はZ変位に関するA‐スキャン内の内部反射エコーに対する測定可能な変化を誘発する。上述したように、第1及び第2の内部球エコーのピーク振幅(Vp)及び/又は到着時間(TOA)を監視することによって負荷かけ(ローディング)を評価することができる。場合によっては、内部反射エコーに関連する単一の組合されたメトリック(metric:測定基準)は、較正データからの接触検出及び負荷変形推定(例えば、より高次の反射ピークの比を使用する)の両方に対しての敏感性及び堅調性であり得ることに留意されたい。
【0129】
図20(a)及び20(b)は、プローブが一定の遅い速度で検査面に垂直に徐々に垂直に装填(ローディング)される(すなわち、親水性球体の法線方向の変形が徐々に増加する)につれて、超音波プローブの親水性球からの第1及び第2の内部反射ピークそれぞれのTOA及びVpが、どのように変化し得るかの例を示している。
図20(a)及び20(b)のグラフから、軟球のZ-変形(又はZ-たわみ)と第1及び第2の反射ピークのTOA及びVpとの関係は、実質的に線形であることが分かる。
【0130】
A‐スキャン内の内部球反射エコーの形状及び/又は位置を規定するメトリクスとプローブの装填(ローディング)によって誘発される球の変形の量との間の、この一貫した再現可能な関係は、較正中に有効にコンパイルされる。換言すれば、
図20(a)及び
図20(b)のプロットに示されるようなデータは、適切な較正アーチファクト、例えば、
図13を参照して上述したアーチファクトから得られるプローブ負荷測定値によって生成することができる。このような既知の(すなわち、較正による)関係は、各測定されたA‐スキャン内の関連するピーク(例えば、TOA、ピーク振幅)から同じ信号特徴を抽出することによって、プローブの変形又は負荷状態を推定するために、その後の如何なる検査中にも直接に使用することができる。例えば、プローブの先端部を表面に対して設定された角度の範囲、かつ表面上の直線的な到着角度の範囲(すなわち、異なるグレージング角度)に設定した状態で、較正ブロックを使用して、包括的な較正負荷測定を行うことができる。このような包括的な負荷較正は、負荷ベクトルと選ばれた内部反射ピーク特徴との間のコンパイルされた関係が、プローブの初期の軸回転とは無関係に同じであるので、対称プローブに対して実用的である。球の変形に関連する較正データの組を備えており、A‐スキャン測定からの任意の新しい反射ピークの組は、変形変位を推定するべく、補間(線形又は非線形曲線当てはめ)又は単純にユークリッド最近隣分類器のいずれかにより分類され得る。
【0131】
そのような負荷状態を計測する際に達成される精度は様々であり得ることに留意されたい。軟らかで等角の先端部(mm単位)の変形に関するプローブの負荷の最も堅調で正確な推定は、典型的には、L波がプローブ軸に沿って検査面に垂直に投射されるところで達成される。幸いにも、これは、部品が平行な前後の壁を有する場合の最も典型的な厚さ測定のシナリオである。
【0132】
個々の測定値を取得することに加えて、例えば、平行な前部及び後部の壁を有する連続的な固体形のような単純な形状にわたっての、連続的な音響スキャン検査も可能である。このような連続スキャンは、好ましくは、表面に垂直な方向に検査表面に対して負荷される親水性エラストマー球を備えている超音波プローブを用いて行われる。このような連続スキャンは、親水性球体の自己潤滑作用と、内部反射エコーの分析によって提供される負荷評価を使用する能力の故に可能である。
【0133】
図21は、親水性球602の先端部からなる先端部を有するモジュール式超音波プローブ600が、未知の波状の検査面604にわたってスキャンされるスキャンシナリオを示している。プローブは、A‐スキャン測定値を連続的に取得し、そして各A‐スキャンからミクロン単位のZ変形(Zd)を推定する。これは、図示のように、負荷条件における如何なる突然の変化もZd時間プロット内で直ちに明らかになるように、比較的高速で実行される。
【0134】
図21に示すように、プローブは、開始点606から終了点608まで表面にわたって横方向に移動される。プローブは、最初は水平面上の一定の高さ(すなわち、一定のz-高さ)にあり、一定のZ変形(Zd)又は一定の球の先端部の変位に対応する「結合スイートスポット」領域内の一定のレベルで負荷かけされる。プローブが、最初に、増加されたZ高さを有する起伏領域610に到達すると、Zd推定は、プローブのZ位置においていかなる逸脱もなく最初に増加する。しかしながら、Zd推定データは、Zdにおいて測定された変化に応答してプローブの高さを変更するために、CMMシステムの制御ループ内で直接に使用され得ることが強調される。
図21の下側のグラフに示されるように、CMMは、Zd測定に応答してプローブの高さ(すなわち、Z位置)のリアルタイム調整を提供するように適合されてもよい。この例では、これは、Zdにおいての増加に比例してプローブを上方に移動させることによって行われる。プローブのこの後退(Z方向)は、結果として、Zd値がその平均(最適)負荷状態に迅速に復帰する結果となる。同様に、プローブが減少された高さ表面に達すると、Zdにおいての減少は、プローブを表面に向かって下方に戻すために、CMMによって直ちに補償され得る。
【0135】
したがって、この技術は、親水性球の軟質結合層内からの内部反射エコーを直接的に、ほぼリアルタイムで、最適な音響結合状態を確保するために使用している。そのような直接的なリアルタイム推定、したがって、結合モジュール内の反射されたL波を解釈することによって、検査面に対してのプローブの負荷状態を制御する(すなわち、自動化プラットフォームにフィードバック制御を使用する)ことは、プローブの位置決め及びスキャンに利益をもたらすだけでなく、有用な厚さ測定が行われる送信されたL波に根本的に影響を与える。高度に弾力性で適合性のある結合要素はまた、音響回折と屈折の両方の基本的な法則にしたがって、通常の負荷変位の制御された変化又は検査面の法線から離れた軸方向のプローブベクトルの再配向のいずれかによって、部品に入る投射されたL波ビームを変更及び/又は正確に制御する固有の能力も提供することも留意されたい。この積極的なビーム操作は、プローブが、
図3を参照して説明したCMMなどの高精度自動化プラットフォームに取り付けられる場合に、最も実用的で効果的である。
【0136】
図22(a)~
図22(c)は、親水性の球状先端部を有する超音波プローブが投射されるL波の対象物へのより正確な制御を誘発べく使用される方法のいくつかを示している。特に、そのようなプローブは、より正確に較正されたプローブの法線方向への負荷かけ(すなわち、アパーチャサイズの変更)による回折ビームの発散制御、又はトランスデューサ軸の精密な再配向による屈折ビームのステアリング制御のいずれかによって、超音波による、より複雑な内部形状の探査を可能にしている。
【0137】
図22(a)及び
図22(b)は、親水性球状先端部622を備える超音波プローブ620の増大された負荷が、どのようにして、自然に発散するビーム幅を減少させるコリメート効果を生成する、より広径のアパーチャを検査面に誘発させることができるかを示している。
図22(b)に示すように、より狭いビームは、さもなければ関心の測定値と干渉する偽の反射エコーをもたらす可能性がある、検査対象物の内部特徴部624を回避するので、有益である。
【0138】
図22(c)を参照すると、非平行な前壁及び後壁を有する対象物は、表面法線から離したプローブ620の再配向によって、測定され得る。このようなビーム操縦は、モード変換効果を低減するために小さな屈折角に限定されてもよい。このような小さい角度に対しては、より遅いせん断波モードはあまり重要ではないか、又はA‐スキャンからタイムゲート(time-gate)されてもよい。
【0139】
上述の超音波プローブに対する多種多様な変形が可能である。例えば、複数(例えば、15~20)の親水性球をカスケード接続して、対応する長い吸収性シェル内に接触球の連続したチェーンを形成することができる。第1の球は、トランスデューサ摩耗板と接触するようにシェル内に配置することができ、チェーン内の最終の球は検査面に接触するように、シェルから突き出ることができる。このようなプローブ設計は、トランスデューサのプローブ先端部を検査部品の測定ノードの近くに配置することが望ましくない、又は物理的に不可能な場合に、より遠隔の検査状況を可能にする。そのような変形設計の有用な適用は、そのような親水性媒体成分で観察される極めて低いL波減衰特性のために可能である。この結果、トランスデューサから結合モジュール先端部までの伝搬損失は無視できる程度になる。
【0140】
検査用L波に対して非常に効率的な音響導波管を提供するこのような構造に加えて、結合モジュール内で投射されたL波を操作することもまた可能である。特に、(例えば、狭い空間での測定のために)通常のプローブ軸以外の軸に沿ってL波検査を実施する必要がある場合がある。例えば、音響反射の法則(すなわち、入射角は反射角に等しい)に沿って、L-波を何らかの既知の方向に単純に向け直す親水性球のチェーン内に、音響反射鏡を埋め込むことも可能であろう。そのような反射鏡は、設定された角度で取り付けられるだけの(例えば、高い音響インピーダンスを有する)平らな音響反射面である。
【0141】
図23~
図25は、親水性エラストマー球のカスケードチェーンを有効に適用することができる、種々のシナリオの選択を示す。
【0142】
図23は、親水性エラストマー球640のカスケードチェーンを使用して、細長い穴の底部を検査する方法を示す。図示されたA‐スキャンによって示されるように、このような球のチェーンを備えているプローブの一次の測定ウィンドウは、チェーン内の球の数にしたがってシフトされることに留意されたい。しかしながら、A‐スキャン内で結果として生じる後壁の反射は測定可能であり、単一の球で達成されることに近づいているSNRを有している。
【0143】
図24は、球が球体650のテーパ状のチェーンを形成するようにサイズ付けられることができることを示している。球のチェーン660は、弱い回折効果を使用して軸外に累積的に曲げることもできる。再び、A‐スキャン内の結果として得られる後壁の反射は測定可能であり、単一の球で達成されることに近づいているSNRを有している。
【0144】
図25は、プローブ/トランスデューサの軸に垂直な検査のための反射ミラー672を備えている、親水性球670のチェーンを示している。このような超音波プローブは、チューブ及び/又は容器内の包括的な計測検査に有用であり、プローブは囲いの周囲を回転することができる。
【0145】
超音波プローブには、適合する吸収性シェル内に水和された親水性エラストマーの異なる形状(非球形)が設けられてもよい。記載された基本的な球形に加えて、水和されるときに必要とされる、例えば、外側吸収シェルの内側に完全に収まるようにする、実質的に任意の閉形連続形状に成長させるために、高含水率(例えば、典型的には75~95%)を有する超吸収性ポリマー又は軽く架橋されたビニルエラストマーが合成されてもよい。適合するPTFEシェル内の連続親水性エラストマー材料の種々の特注(例えば、より長い及び/又はより薄い角柱形状)の形状は、複雑な幾何学的形状部品を収容するように設計することができる。そのような結合要素からのA‐スキャンを観察することによって、後壁反射は、はるかに広い第1の測定ウィンドウに存在することが明らかである。また、結合モジュール内の内部反射エコーが負荷変位又は接触状態を推定するために処理される、種々の方法もまた、そのような代替設計に対しても保持されることに留意されたい。
【0146】
上述のように、親水性球を備えない化合物クラスの結合モジュールが提供されてもよい。
図26は、例えば、
図7を参照して上述したような化合物クラスの結合モジュールを備える超音波プローブから生成されたA‐スキャンを示している。
図26と
図15とを比較すると分かるように、化合物クラスの結合モジュールで生成される信号には相違があり、したがって、A‐スキャンを解釈し、接触の検出、負荷、スキャン、及び正確な厚さ測定プロセスに有用な情報を抽出するために使用され得る、異なる処理が存する。
【0147】
図26は、簡単な検査面に負荷かけされるラテックスゴム先端部702を備えている、通常のビーム化合物結合モジュールを備えた超音波プローブ700を示している。
【0148】
図26(a)は、表面に接近しているプローブ700を示す。表面との接触の前に、A‐スキャンは、最初のTx-パルス(不図示)の後の、硬質プラスチックの遅延線要素704からの均一な間隔の繰り返し反射(すなわち、第1、第2及び第3の遅延線反射ピーク701、703及び705)のみを組み込んでいることが分かる。これらの反射は、プローブがCMM容積内の自由空間を移動している間は、測定のばらつきに対して無視できる測定値を示す。
【0149】
図26(b)を参照するに、ラテックスゴムプローブ先端部702が表面と接触するとき、測定されたA‐スキャン応答には即時の変化が存する。この最初の接線接触は、内部反射エコーの到着時間に目に見えるシフトを誘発しないが、第2及び第3の反射エコー振幅(すなわち、ピーク710及び712)の明らかな減少を誘発する。結合性能(例えば、軟結合の表面仕上げ及び部品の幾何学的形状によって画定される)に依存して、この反射エネルギーの減少は、部品に伝達されたエネルギーからの後壁反射波形714の増加と関連して生じる。
【0150】
図26(c)を参照すると、プローブ700がさらに表面に負荷かけされるにつれ、軟質結合層(すなわち、ラテックスゴム先端部)が変形し、剛性の平面状の遅延要素が表面とより等角に接触する。第2及び第3の反射エコー(すなわち、ピーク720及び722)の振幅はさらに減少し、連続する後方壁反射(すなわち、ピーク724)の振幅が増加する。しかしながら、遅延線ピーク信号(すなわち、ピーク720及び722)のピーク振幅のこの減少は、到着時間(TOA)又はこれらの反射ピークの位相の変化を伴わない。さらに、
図26(d)に示すように、プローブを表面から完全に引き離すと、遅延線のピークが同じレベルに戻り、表面接触が行われる前と同じ形状になる。
【0151】
図27は、
図26を参照して説明した、プローブの第1及び第2遅延線反射ピークの到着時間及びピーク振幅が、プローブが検査面に直線的に負荷されるにつれ、どのように進展するかを示している。特に、
図27は、硬質遅延媒体からの反射ピークが、A‐スキャン内のT = 0励起に対して、時間的に固定されたままであることを示している。したがって、負荷較正は、負荷条件(例えば、2次又は3次ピーク電圧Vpの比)が増大された状態で剛性遅延媒体から漏れることができる音響エネルギーの割合を定量化する波形特徴を用いると、より効果的である。しかしながら、そのようなプロットは、(例えば、硬い閾値エネルギー検出器を介して)接触を自動的に検出するため、又は(例えば、プロットからの線形又は多項式補間、又は他の計算上効率的な分類器を介して)負荷条件を分類するために、較正手順中に有効にコンパイルされ、使用され得ることが強調される。
【0152】
次に、測定ウィンドウ内の測定されたA‐スキャンから、厚さ測定値を生成するための信号処理方法について説明する。そのような信号処理アルゴリズムは、好ましくは堅調であり、そして、第1、第2、及び場合によっては第3の後壁反射間の正確な時間遅延を抽出するための、一般化された相互(cross)相関、又はレプリカ(replica)相関の形式に基づくことができる。第3の後壁反射を越えて、波形の分散が、戻りの細かい形状の摂動により、時間差推定精度に影響を与え始める可能性があることに留意すべきである。
【0153】
好ましい信号処理アプローチは、レプリカ相関処理の一形式を使用する。この技術は、堅調で、計算上効率的で正確な時間遅延推定を可能にする。特に、スペクトル事前ホワイトニングを用いた相互相関アルゴリズムは、従来の振幅閾値到達時間法よりも精度を保持する。レプリカ相関プロセスは好ましいが、他の技術も使用できることに留意されたい。例えば、反射ピークが、波形強度又は振幅がある設定された閾値を超える点で検出されると仮定される、平方法振幅閾値検出器を使用することができる。1次元のエッジ検出器又はウェーブレット分解技術(wavelet decomposition technique)は、ノイズを平滑化しながら、必要な時間精度が維持されるのを許容するので、使用することもできる。しかしながら、相互相関アルゴリズムは、高周波リアルタイム実施により適している。
【0154】
図28を参照するに、レプリカ相関器の機能が概略的に示されており、連続する後壁反射間の絶対時間遅延は、デジタル収集システムによって提供される基本的測定分解能に近似する精度で推定され得る(例えば、ADCサンプルレートの逆数に等しい時間)。レプリカ相関器は、出力が測定されたA‐スキャンと後壁反射の遅延レプリカとの間の相互相関から計算される、整合フィルタの一形態である。
【0155】
特に、
図28は、レプリカ相関プロセスが、時間ウィンドウされたA‐スキャン応答y(n)を、格納又は抽出された後壁反射波形x(n)の1つ又はバンクと相関させるのを、どのように包含しているかを示している。この相関プロセスは、第1及び第2のDFTアルゴリズム750及び752をそれぞれ用いて、入力波形x(n)及びy(n)を周波数領域に変換することによって実現される。第1及び第2のDFTアルゴリズム750及び752は、周知のFFTアルゴリズムの任意の適切な形態を備えることができる。次いで、乗算器754は、変換された信号上の周波数領域において、逐次乗算演算を実行する。乗算器754の出力は、第3のDFTアルゴリズム758によって時間領域に戻され、そして、ピーク検出器760がデータを遅延推定器762に出力する。一般化相互相関(GCC-PHAT)アルゴリズムの好ましい位相変換バージョンを使用する場合、信号位相情報のみが、クロススペクトルがその大きさで除算された後に保存される。理想的には、このプロセッサは、付加的なノイズなしで、正確な時間遅延推定に中心付けられたデルタ関数に近づく。
【0156】
そのような高速畳み込みプロセスは、スペクトルのスミアリング(smearing)及び漏れのせいで、結果を時間領域に戻すときに不正確さを被る可能性がある。したがって、時間遅延推定プロセスの時間的精度及びSNR堅調性を改善するために、プレホワイトニングフィルタ756が実装される。位相変換の事前ホワイトニングは、マルチパス残響に対する支配的遅延のSNR及び時間精度を最大にするように、クロススペクトル(Pxy)位相を等化する効果を有する。それは、プローブで測定されたA‐スキャンについての事前ホワイトニングの最も有効な形態であり得るが、そのような相関法(例えば、 Knapp及びCarter)のいずれも使用することができる。例えば、位相変換方法は、低SNR環境に対して効果が少なくなる可能性がある。
【0157】
次に
図29を参照すると、位相変換レプリカ相関器アルゴリズムの原理が示されている。特に、この図は、信号処理ステージに提示される測定ウィンドウからの測定された後壁応答を示す。
【0158】
測定ウィンドウ内の反復した後壁反射(すなわち、ピーク780)は、繰り返される形状に関して、特にその位相の点で、強い相関を示す。信号レベルは、第1の反射エコー780から第3の反射エコー782まで減衰するが、SNRはまだ比較的高い。図示されているように、測定ウィンドウ応答は、相互相関器(GCC-PHAT)の位相変換バージョンを使用して、後壁反射エコーの格納されたレプリカと相関させることができる。これは、ある程度の雑音抑圧(すなわち、相関プロセスがいくらかのSNR利得を誘発する)及び最大位相相関を備える正確な時間サンプルでの各エコーを表す波形の有効な鮮鋭化を伴う相関応答784を生成する。これから、単純な最大ピーク検出器が各エコーの時間サンプルを計測することができ、これらのピーク間の時間差(t1及びt2)は、厚さ推定が行われ得る時間遅延を表す。レプリカ波形は、較正中に測定することができるが、A‐スキャン自体から直接に、又はアルゴリズムの自己相関バージョンによって後壁波形を抽出することで、同じアルゴリズムが有効であることも示されている。
【0159】
一般に、(例えば、硬い閾値検出器によって)先端部接触を単に検出するために測定されたすべての入力A‐スキャンを評価し、及び/又は最適な結合を保証するために、軟結合モジュールにおける変形を定量化(例えば、Zd)するべく用いられるデータ処理は、結合された部品の厚さを測定するのに必要とされる後続の信号処理よりも少ない計算量しか必要としない。したがって、プローブの実用的な特徴は、1つ以上の自動化された動作モードで機能することができることである。
【0160】
図30は、プローブと周辺ハードウェアとの間の可能な動作モード、制御及びデータの流れを示すフローチャートを示している。図示されているように、超音波A‐スキャンが同時に高速で生成されている状態で、プローブ移動コマンドがCMM /ヘッドコントローラを介して、プローブ制御ソフトウェアから誘発され得る。当然のことながら、基本的な処理は、測定されたすべてのA‐スキャンについて超音波反射ピーク特徴を抽出し、硬い閾値検出器を介して、先端部が任意の対象物と接触しているか否かを評価することであろう。接触が検出されない場合、CMM /ヘッドコントローラを介して、プローブコントローラによって誘発された動きは、より多くのA‐スキャンが取得される状態で継続できるが、プローブ上で実行される他の処理はない。
【0161】
接触が検出された場合には、CMM/ヘッド制御装置には、接触時のプローブ位置を報告し、及び/又は何らかの割込み移動動作を誘発するべく直ちに警告が与えられてもよい。この接触検出は、検査表面に対する超音波プローブの結合変形を定量化する(すなわち、「結合スイートスポット」に関連させる)べく、プローブが超音波反射エコーの処理を開始することも可能にする。結合接触(すなわち、結合Z-変形)が「結合スイートスポット」内すなわち結合変形公差内にあるとみなされるまで、計算上の集中的な厚さ測定信号処理がまだ活性化されていなくても、さらに高速で、より多くのA‐スキャンを生成し続けることができる。この許容可能な結合状態は、主に軟らかな結合要素(例えば、親水性球)の評価に関係するので、主に説明された方法によって計測されるが、測定ウィンドウにおける後壁反射の基本評価(例えば、尖度(kurtosis)又はピーク振幅などの単純メトリクス)を含む可能性がある。
【0162】
プローブ結合が十分であるか又は最適化されている自動化された認定に続いて、A‐スキャンの主要測定ウィンドウ内の連続する後壁反射を抽出し、それらの時間遅延を測定すべく、より計算量の多い時間処理信号処理アルゴリズムがプローブ内で作動される。多くのシナリオ、例えば、部品にわたる連続スキャンについては、実際には、プローブが、測定されたA‐スキャン毎に、厚さ測定処理アルゴリズムを連続的に実行する必要があるかもしれない。このようにして、計算上効率的かつ正確な時間遅延推定方法は、重要な運用上の利益をもたらす。
【0163】
したがって、
図30は、処理の大部分が超音波プローブそれ自体内の処理ユニット(例えば、FPGA、DSP、CISP)によって達成される、プローブの1つのアーキテクチャを表している。この分散処理アーキテクチャは、プローブ上のローカルメモリ記憶のため、装置の測定ヘッド及びスコープを通る通信チャネル帯域幅が制限され得るCMM上に展開するのに利点を有している。しかしながら、A‐スキャンデータを処理するためには、他の可能なアーキテクチャ及び方法があることに留意されたい。例えば、ある場合には、接触検出及び最適な結合を「オンザフライ(on the fly)」で行うための基本的(rudimentary)な処理のすべてに影響を及ぼすが、A‐スキャンの拡張されたバッチを、バッチ移送及び他のプロセッサ(例えば、ラップトップやPCなど)での厚さ測定の後処理のために、メモリに局所的に記録することは可能であろう。処理アーキテクチャにかかわらず、モード‐3測定を介して時間遅延を推定するためにここに示された基本的な信号処理は、堅調で正確なままである。
【0164】
接触部品の厚さを直接に推定することができる正確な時間遅延情報を計測するために、スペクトル相関法(例えば、GCC)を適用するときのプローブ又は装置の測定分解能は、受信機エレクトロニクス(すなわち、ADC)内のデジタル化サンプリング周波数によって、典型的には、制限されることが留意されるべきである。注目する反射波形が、有意な確率的過渡成分(例えば、帯域制限)を伴わない滑らかな予測可能な高SNR信号である状況では、相関器を適用する前に、生の測定されたA-スキャン応答とレプリカとの規則的な補間的なアップサンプリング(up-sampling)によって、人為的に有効なシステム分解能を高めることが可能であることが判明した。さらに、測定されたA‐スキャンのSNR及び雑音統計に応じて、より正確な厚さ測定を行うために、信号処理内に異なるプレホワイトニングフィルタ(すなわち、周波数領域における重み付け関数)の選択を適用することができる。そのようなプレホワイトニングフィルタには、平滑化されたコヒーレンス変換、Rothフィルタ、又はHannah及びThompsonフィルタが含まれる。
【0165】
また、上述したGCCアルゴリズムの位相変換バージョンは、単独で使用される場合、より低いSNR状況に対して常に最適であるとは限らないことにも留意されたい。例えば、後壁反射及び/又は関心のある内部遅延線反射信号を包含する装置で測定されたA‐スキャンは、測定システムからのより高いレベルの電子ノイズ(例えば、A‐スキャン全体にわたっての平均化が適用されない、すなわち、より低コストの機器が用いられている場合)か、又は検知システムの測定帯内に、より高い音響バックグラウンドノイズ(例えば、高音響ノイズ資産又は以下に説明するクローラプラットフォームのような高ノイズ自動化プラットフォームを使用して測定が行われる場合)を包含する。したがって、当業者であれば、最も適切な信号解析技術が種々の用途に対してどのように異なるかを理解するであろう。
【0166】
本明細書に記載された超音波システムの実施形態及び関連する自動検査のコンセプトは、上述したものよりも高度に減衰し、はるかに厚い金属及び非金属部品内の内部計量(metrology)測定に有用である。特に、超音波装置は、積層造形製造(AM)方法(例えば、選択的レーザー溶融装置を使用)を使用して製造された特定の高価値の安全性の高い金属部品(例えば、医療用インプラント)を測定するために使用されてもよい。このような部品は、部品全体にわたって示される多孔度が要求される公差内にあることを保証するために、内部計量測定及び非破壊測定の両方を必要とすることがある。このタイプの多孔度測定は、かかるAM技術が部品全体にわたる種々の多孔度を特別に設計することができるので、より重要になってきている。既知又は測定された幾何学的形状のAM固体部品にわたるそのような多孔度分布推定が、部品にわたる音速分布の直接推定によって適切に達成され得ることが強調される。これは、縦方向の音速と多孔度との間に、強い線形で容易に較正される関係が存在するためである。せん断波速度と多孔度との間にはまた、線形関係が存在する。これはまた、場合によっては使用することもできよう。
【0167】
本明細書に記載されるモジュール式超音波装置はまた、(例えば、球面収束された平面凹レンズを有する結合モジュールを使用して)部品内で、既知の深さ又は角度に投射された超音波を集束させることもできる。したがって、この装置は、検査部品内の内部欠陥及び空洞の自動検出、位置及びサイジングに使用することができる。
【0168】
上述のモジュール式超音波プローブは、軟質材料部品の寸法形状測定のために有利に使用されるかもしれない。例えば、軟らかい固体ゼラチン状、有機又は非金属の部品は、そのようなより軟らかい部品への表面相互作用が、プローブスタイラスを一貫した方法で機械的に撓ませることができないので(例えば、機械的ヒステリシス作用のために)及び/又はそのような接触は、検査中に軟らかい部品に望ましくないくぼみを誘発することが考えられるので、従来の接触式プローブには本来的に適さない。そのような部品には、軟らかい弾性又はプラスチックのポリマー膜、布地及び皮革、食料品、さらには有機膜及びヒトの組織が含まれる。
【0169】
そのような軟質計測の課題は、検査される対象物又は材料よりも軟らかくなるように特に選択された、プローブ内の軟らかな結合要素を包含していることである。これは、検査されている部品内に撓みを誘発する前に、結合要素が測定可能な量だけ撓むようにするためである。かくて、非常に高い含水率(例えば、95%)を有する非常に軟らかい親水性ビニルポリマーが、超音波プローブの結合要素として、提供され得る。そのような結合モジュールは、一組の結合モジュールのうちの1つとして提供され得る。
【0170】
上述のモジュール式超音波プローブは、高品質表面仕上げ部品の寸法形状測定に有利に使用することができる。特に、複雑な形状を有するが、極めて高品質の滑らかに研磨された表面仕上げを有するいくつかの他の精密加工された剛性部品は、自動寸法測定を必要とすることがあることにさらに留意されたい。しかしながら、硬いルビーボールのスタイラスプローブとこのような研磨された検査表面との間の接触相互作用は、そのような相互作用が潜在的に表面にいくらかの傷又は衝撃損傷を誘発する可能性があるので、理想的ではない可能性がある。さらに、代替の非接触光学測定プローブ(例えば、レーザスキャンプローブ)は、検査面の非導電性光学特性(例えば、光学的に透明な音響凹面鏡又は凸面レンズ又は放物面鏡)のために、適切でないことがある。
【0171】
上述した超音波検査装置のモジュール性、具体的には、特定の検査条件に適合するように異なる結合モジュール設計を自動的に変更し調整する固有の能力は、複雑な幾何学的形状部品の測定中に特に有益である。さらに、特定の結合モジュールを選択することは、しばしば、出力測定値(例えば、各測定ノードの両端の厚さの値)を生成するために、使用される特定の測定方法を指示する。
【0172】
例えば、典型的な中空の航空宇宙翼の検査中に、より包括的な範囲の検査のために、異なる結合モジュール設計及び関連する測定方法の選択が連続して採用され得る。具体的には、部品のバルク外面の大部分は、内部後壁面に平行であるかもしれない。そのようなバルク「表皮厚」の測定のためには、親水性球を備えている結合モジュールが超音波プローブに取り付けられ、プローブが検査面に対して実質的に垂直な向きを保持しながら、ブレードにわたって横方向に連続的にスキャンされることができる。このようなプローブが検査面から離れることがない垂直入射連続スキャンは、前述したように、このタイプの軟らかな等角のかつ弾性の親水性結合モジュールの自己潤滑特性を利用する。したがって、各ノードでの堅調な時間遅延推定のために、上述のレプリカ相関法を用いたモード‐3測定法により、検査面にわたっての非常に高い密度の測定点を容易にする。
【0173】
しかしながら、バルクスキンの厚さを測定する方法は、ブレード全体にわたる検査に必ずしも適切ではないことに留意されたい。例えば、ブレード翼の前縁及び後縁の近傍では、外側前壁及び内側後壁は、しばしば、このような平行ジオメトリから逸脱している。この場合、屈折結合モジュールを使用して、超音波L波を内部後壁に向かって必要な方向に投射することができる。これには、適切な屈折ウェッジ角を有する固定された剛性遅延線を有する結合モジュールを使用することが含まれる。あるいは、適切な較正を用いて、親水性球を有するが、プローブが表面法線から適切な角度に配向された結合モジュールを使用して、屈折検査の課題が達成され得る。いずれの場合も、モード‐3の検査は、非平行な前壁面及び後壁面が連続的な後壁反射をプローブに戻さないので、問題となる。第1の遅延線又は結合モジュールからの内部反射ピークと後壁との間の時間遅延が推定されるモード-2測定も、このような屈折角では強い内部反射ピークが存在しないので、適切ではない。したがって、この場合、(第1の励起パルスとそれに続く後壁反射との間の絶対時間遅延が推定される)モード-1測定は、代わりに、有利に実施され得る。
【0174】
可能な限り最高のモード‐1の厚さ測定精度を得るためには、検査部品と同じ材料から機械加工された屈折較正ブロックにわたってある範囲の屈折測定が行われ、そして、1つ以上の後壁を検査部品と同じ前壁及び後壁の向きに組み入れる、さらなる較正手順が要求されるかもしれない。このようなモード-1の較正手順と同じように、検査部品と同じ材料を較正ブロックに使用することにより、音速較正がこの屈折角較正に統合されるのを可能にする。すなわち、別の音速較正手順は不要になる可能性がある。なぜなら、較正の間に取られた既知の屈折厚さに対する後方壁時間遅延の範囲は、検査中にプローブで測定されるさらなる時間遅延が、線形補間によって未知の厚さを直接に推論できることを意味するからである。
【0175】
結合モジュールの軟結合要素内の音速を計測することも可能である。このような音速測定は必ずしも必須ではない(例えば、モード‐3の方法を使用して機体外板及び平行中空ブレードのような平行な偏心部品の正確な厚さ検査のためには必要とされない)が、いくつかの利点を有する。例えば、取付けられた結合モジュール内の結合層の音速は、大気温度変化によってわずかに影響され、そして非平行の前壁及び後壁の検査部品の法線軸外れ検査のような特定のプローブ機能については、検査中の個々の結合モジュールの音速を較正(すなわち、測定)するのが有益である。より具体的には、結合媒体の音速は、スネルの屈折の法則(Snell's Law of Refraction)にしたがって、検査部品への超音波波形の投射角度に直接に影響を与える。したがって、均一な等方性結合媒質内のこの絶対音速のより正確で較正された尺度は、内部反射面の正確な位置及び向きを構築し及び投射するのに有益であり得る。
【0176】
結合要素の音速の測定には、代替の用途もあり得る。例えば、結合要素と相互作用する未知の液体試料を分類することである。結合モジュールの音速(CL)は、モード‐1、モード‐2、又はモード‐3の方法を介しての、結合媒体の長手方向寸法(d)の直接測定と飛行時間(t)の往復時間の推定(すなわち、CL = 2 * d / tの関係を用いて)導かれる。あるいは、プローブを既知の平坦な表面上に高度に制御された正確な方法で直線的に負荷かけ(ローディング)する方法を使用することができる。より具体的には、プローブが平坦な表面上に負荷かけされているときの、結合層からの第1の内部反射波形の到着時間(TOA)の変化の測定は、このTOAと結合層の変形(すなわち、線形荷重変位)との間の線形関係がコンパイルされるのを可能にすることが判明している。この線形関係(すなわち、非圧縮性結合層について)のプロットから、音速は、勾配として直接に計算することができる。換言すれば、TOA(t)対Z-変形又は負荷(r)の間の絶対勾配は、関係r =(CL * t)/ 2から、音速(CL)の半分に等しい。この方法は正確であることが判明しており、結合層の音速を計算するために、結合層の正確なヒューリスティックな縦方向寸法の潜在的に不正確な推定を必要としないことを保証している。
【0177】
ブリッジ型のCMMに超音波装置がどのように設置され得るかについて上に説明したが、他の装置と併用され得ることにも留意すべきである。
【0178】
図31は、上述した超音波プローブ802をx-yスキャナ800にどのように取り付けることができるかを示している。
【0179】
図32は、上述した超音波プローブ802が、薄い航空宇宙構造(例えば、胴体の外板)内の内部亀裂及び腐食を測定する、超音波クローラシステム810にいかに搭載され得るかを示している。そのような実施形態においては、後壁反射間のA‐スキャンで生じる強い反射エコーが、内部空隙又は亀裂として分類され得る部品容積内の追加の望ましくない界面として検出され得る。
【0180】
そのような実施形態では、クローラ車両810は、構造体の皮膚(例えば、航空宇宙構造体又は風力タービンブレード)の内部厚さを測定するために、大きな湾曲構造にわたって連続的なスキャンを実施することができる。しかしながら、部品の曲率及びそれとクローラのホイールとの相互作用が、超音波プローブが取り付けられる可動プラットフォームと検査面との間の正確なクリアランスに、ある程度の変動を引き起こす可能性がある。軟らかな結合先端部における現在のたわみ(Zd)の高分解能推定値によって、変形クリアランスを補償するために部品に沿ってプローブが移動する際に、プラットフォームに対するプローブのZ位置を適合させることが可能であり、かくて、プローブの変形を設定された許容公差(すなわち、「結合スイートスポット」)の範囲内に保持する。その最も単純な形態では、軟らかな結合要素の変形の変化に応答してプラットフォームに対するプローブの高さの適合が、プラットフォームに取り付けられた単純なリニアエンコーダを備え、プローブのZ高さが検査中にリアルタイムで変化するのを許容するリニアステージモータを使用して実施することができる。より精巧な実施形態では、第2の回転モータ及びエンコーダが組み込まれ、表面法線の変化に応答して表面に対する入射角を変えるように、プローブがその運動面に残りながら回転されるのが許容されてもよい。