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特開2022-153502関節疾患及び皮膚疾患の治療のためのラパマイシンとメトホルミンの併用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153502
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】関節疾患及び皮膚疾患の治療のためのラパマイシンとメトホルミンの併用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/436 20060101AFI20221004BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20221004BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20221004BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20221004BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20221004BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221004BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20221004BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20221004BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20221004BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221004BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20221004BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221004BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
A61K31/436
A61K31/155
A61P1/04
A61P9/00
A61P11/00
A61P17/00
A61P17/06
A61P19/02
A61P27/02
A61P35/00
A61P37/06
A61P43/00 121
A61P29/00
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115787
(22)【出願日】2022-07-20
(62)【分割の表示】P 2018527959の分割
【原出願日】2016-11-18
(31)【優先権主張番号】62/259,384
(32)【優先日】2015-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/318,302
(32)【優先日】2016-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/241,312
(32)【優先日】2016-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518182771
【氏名又は名称】メリン,ジェフリー エム.
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】メリン,ジェフリー エム.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ラパマイシンの投与量や投与回数を増やすことなく有効性を高める複合薬を提供する。
【解決手段】ラパマイシン及びメトホルミンの組み合わせを含み、ラパマイシンは、約0.15mg~約3.0mgの範囲で存在し、メトホルミンは、約100mg~約900mgの範囲で存在する、経口投与のための組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラパマイシン及びメトホルミンの組み合わせを含み、
前記ラパマイシンは、約0.15mg~約3.0mgの範囲で存在し、
前記メトホルミンは、約100mg~約900mgの範囲で存在する、
経口投与のための組成物。
【請求項2】
前記ラパマイシンは、約0.3mg~約2.0mgの範囲で存在し、
前記メトホルミンは、約300mg~約600mgの範囲で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ラパマイシンは、約2.0mgまでの量で存在し、
前記メトホルミンは、約800mgまでの量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ラパマイシンの量が約1mg未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記メトホルミンの量が約600mg未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、経口投与のために、錠剤、カプレット、カプセル、及び液体から選択される形態に製剤化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
それを必要とする患者における、mTORC1活性に関連する血管性、炎症性、神経性、または腫瘍性の障害の治療又は予防方法に使用するための組成物であって、
前記方法が請求項1から6のいずれか一つに記載の経口投与のための組成物を有効量投与することを含む、組成物。
【請求項8】
前記炎症性の障害が、自己免疫及び/又は免疫学的に媒介される炎症性の障害である、請求項7に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記自己免疫及び/又は免疫学的に媒介される炎症性の障害が、アトピー性皮膚炎、炎症性皮膚疾患、炎症性腸疾患、セリアック病、炎症性呼吸器疾患、自己抗体に媒介される自己免疫疾患、炎症性関節炎、神経炎症性障害、円板状エリテマトーデス、全身性エリテマトーデス(SLE)、サルコイドーシス、ブドウ膜炎、尋常性天疱瘡、腎移植、移植片対宿主病からなる群から選択される、請求項8に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記組成物は、少なくとも1つの癌免疫療法剤で治療されている患者に投与される、請求項8に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
前記血管性の障害が、酒さ、ポートワイン母斑、動静脈奇形、血管拡張症、及び皮膚血管病変から選択される、請求項7に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記腫瘍性の障害が、結節性硬化症(TSC)、乳がん、腎細胞がん、カポジ肉腫を含む肉腫、肝細胞がん、リンパ腫、及び神経内分泌腫瘍(NETs)から選択される、請求項7に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記治療又は予防方法は、mTORC1活性に関連する血管性、炎症性、又は腫瘍性の障害の進行を停止又は遅延することを含む、請求項7に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
前記治療又は予防方法は、mTORC1活性に関連する血管性、炎症性、神経性、又は腫瘍性の障害を発症するリスクがある患者又は再発するリスクがある患者に前記組成物を投与することを含む、請求項7に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
前記組成物は、経口投与のために、錠剤、カプレット、カプセル、及び液体から選択される形態に製剤化されており、
任意に、前記組成物が毎日投与される、請求項7に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2015年11月24日に出願された米国特許出願第62/259,384号「ラパマイシン及びAMPキナーゼの活性剤を組み合わせて含む組成物及び疾患治療のためのその使用」と、2016年4月5日に出願された米国特許出願第62/318,302号「ラパマイシン及びAMPキナーゼの活性剤を組み合わせて含む組成物及び疾患治療のためのその使用」との利益を主張して2016年8月19日に出願された米国特許出願第15/241,312号の優先権を主張するものであり、その全体を参照することにより、そのそれぞれをここに組み込むものである。
【0002】
本発明は、病気と病状の治療及び/又は予防において使用するための、ラパマイシンとAMPキナーゼの活性剤とを組み合わせて含んだ組成物に関する。また、本発明は、病気と病状を治療及び/又は予防する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ラパマイシン(シロリムスとして市販されている)は、バクテリアのストレプトマイセス・ヒグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)によって生成されるマクロライドである。今日、シロリムスは、免疫抑制剤として使用されるとともに、移植臓器の拒絶予防のために最もよく使われている。シロリムスには、腎移植及びリンパ脈管筋腫症(LAM)の2つの承認適応症がある。また、ラパマイシンは、結節性硬化症に伴う発病、皮膚病、脳病変、肺病変及び腎病変の治療において潜在的に有効であることが示されている。ラパマイシンは、免疫抑制剤であるため、薬の長期(習慣的)使用により、患者に重大な副作用(例えば、感染症及び肺毒性)を発現させるリスクが増大する可能性がある。これらの知見から、ラパマイシンの長期使用の適合性に関して、安全性が懸念されている。
【0004】
ラパマイシンは、mTOR複合体1(mTORC1)の阻害剤である。mTOR(mammalican target of rapamycin:ラパマイシンの哺乳類標的)は、セリンスレオニンキナーゼであり、タンパク質合成、細胞増殖、及び細胞代謝のマスターレギュレータである。過剰なmTORC1の活性は、結節性硬化症(TSC)を含む多数の病状に関与する。例えば、羊水過多症、巨脳症、及び症候性てんかん(PMSE)症候群や、乳房、結腸、腎臓、肺、前立腺、膵臓等を含む種々のがん、炎症性腸疾患、炎症性関節炎(多発性)、炎症性皮膚疾患(多発性)、全身性エリテマトーデス、及び神経変性疾患(アルツハイマー病など)に関与する。
【0005】
いくつかの研究によれば、ラパマイシンは、mTORC1経路の阻害によっていくつかの病状を治療したり予防したりするために使用することができる可能性が示されている。しかし、現在のラベリングと薬量学で承認されているラパログは、進行悪性腫瘍、臓器移植、結節性硬化症とは関与がない患者に対して使用することが不適切であると考えられており、リスクベネフィットプロファイルに関する重大な安全問題がある。
【0006】
したがって、これら及びその他の非悪性疾患に対してラパログを利用する安全且つ効果的な治療法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本複合薬は、ラパマイシンの投与量や投与回数を増やすことなく有効性を高める。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、本発明は、病気及び病状の治療及び/又は予防に使用するための、ラパマイシンとAMPキナーゼの活性剤との組み合わせを含む組成物に関する。一実施形態において、AMPキナーゼ活性剤は、メトホルミンである。
【0009】
一実施形態において、組成物は局所製剤である。局所製剤は、ゲル、軟膏、クリーム剤、又はローションであってもよい。一実施形態において、局所製剤において、メトホルミンに対するラパマイシンのモル比は、約20:1~約1:1;約20:1~約3:1;約20:1~約4:1;約20:1~約5:1;約15:1~約1:1、約15:1~約3:1;約15:1~約4:1;約15:1~約5:1;約10:1~約3:1;約10:1~約4:1;約10:1~約5:1;約5:1~約4:1;約5:1~約3:1又は約5:1~約1:1の範囲内である。
【0010】
一態様において、本発明は、病気及び病状の治療及び/又は予防の方法に関する。
【0011】
一実施形態において、前記方法は被験体の関節疾患を治療する方法であって、前記関節疾患は炎症を特徴とする。前記方法は、関節疾患によって影響を受ける炎症を起こした又は罹患した関節の上部又は頂部に、有効量の局所製剤を直接投与することを含んでいる。局所製剤は、ラパマイシンとメトホルミンの組み合わせを含んでいる。一実施形態に置いて、局所製剤において、メトホルミンに対するラパマイシンのモル比は、約20:1~約1:1;約20:1~約3:1;約20:1~約4:1;約20:1~約5:1;約15:1~約1:1、約15:1~約3:1;約15:1~約4:1;約15:1~約5:1;約10:1~約3:1;約10:1~約4:1;約10:1~約5:1;約5:1~約4:1;約5:1~約3:1;又は約5:1~約1:1の範囲内である。
【0012】
一実施形態において、局所製剤は、ゲル、軟膏、クリーム剤、又はローションから選択することができる。
【0013】
一実施形態において、関節疾患は炎症性関節炎である。一実施形態において、炎症性関節炎は変形性関節症である。
【0014】
一実施形態において、前記方法は、被験体の炎症性皮膚疾患を治療する方法である。前記方法は、炎症性皮膚疾患がある皮膚の領域に有効量の局所製剤を直接投与することを含み、局所製剤は、ラパマイシン及びメトホルミンの組み合わせを含み、メトホルミンに対するラパマイシンのモル比は、約20:1~約4:1の範囲内である。
【0015】
一実施形態において、メトホルミンに対するラパマイシンのモル比は、約20:1~約1:1;約20:1~約3:1;約20:1~約4:1;約20:1~約5:1;約15:1~約1:1、約15:1~約3:1;約15:1~約4:1;約15:1~約5:1;約10:1~約3:1;約10:1~約4:1;約10:1~約5:1;約5:1~約4:1;約5:1~約3:1;又は約5:1~約1:1の範囲内である。
【0016】
一実施形態において、炎症性皮膚疾患は、アトピー性皮膚炎(湿疹)であってもよい。
【0017】
一実施形態において、前記方法は、自己免疫性炎症性皮膚疾患を治療する方法である。自己免疫性炎症性皮膚疾患は、全身性エリテマトーデス又は円板状エリテマトーデスと関与する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】腎臓がん細胞Caki-1において、種々の用量でラパマイシンとメトホルミンとを単独または組み合わせて用いたときのH-取り込みの阻害率を示す棒グラフであり、標準用量以下のメトホルミンが1nMのラパマイシンの薬効を高めることを示している。
図2】腎臓がん細胞Caki-1において、種々の用量でラパマイシンとメトホルミンとを単独または組み合わせて用いたときのH-取り込みの阻害率を示す棒グラフであり、標準用量以下のメトホルミンが5nMのラパマイシンの薬効を高めることを示している。
図3】腎臓がん細胞Caki-1において、種々の用量でラパマイシンとメトトレキサートとを単独または組み合わせて用いたときのH-取り込みの阻害率を示す棒グラフであり、標準用量のメトトレキサートが少量のラパマイシンの薬効を高めることを示している。
図4】乳がん細胞MCF-7において、種々の用量でラパマイシンとメトホルミンとを単独で用いたときのH-取り込みの阻害率を示す棒グラフであり、ラパマイシン及びメトホルミンが、単独では用量に比例した効果がないことを示している。
図5】乳がん細胞MCF-7において、種々の用量でラパマイシンとメトホルミンとを単独または組み合わせて用いたときのH-取り込みの阻害率を示す棒グラフであり、少量のメトホルミンと少量のラパマイシン(1.0nM)を組み合わせると、ラパマイシン(1.0nM)単独に比べて阻害が増加することを示している。
図6】乳がん細胞MCF-7において、種々の用量でラパマイシンとメトホルミンとを単独または組み合わせて用いたときのH-取り込みの阻害率を示す棒グラフであり、少量のラパマイシン(0.5nM)に少量のメトホルミンを加えると、ラパマイシン(0.5nM)単独に比べて阻害が増加することを示している。
図7】乳がん細胞MCF-7において、種々の用量でラパマイシンとメトホルミンとを単独または組み合わせて用いたときのH-取り込みの阻害率を示す棒グラフであり、極少量のラパマイシン(0.1nM)に少量のメトホルミンを加えると、ラパマイシン(0.1nM)単独に比べて阻害を悪化させることを示している。
図8】乳がん細胞MCF-7におけるH-取り込みの阻害率とラパマイシン及びメトホルミンのモル比とを比較するグラフである。H-取り込みの阻害に対する最適なモル比の範囲は、5:1から10:1の間である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で使用されるおおよその言語は、任意の定量的表現を修飾するために適用することができ、任意の定量的表現は、基本機能に変化を生じさせずに関連して変化させることができる。したがって、例えば「約」や「実質的に」などの用語で修飾された値は、特定の正確な値に限定されない場合もある。
【0020】
ラパマイシンは、mTORC1酵素経路を阻害することによって作用する。この経路は、オートファジー、HIF-1alpha、VEGF産生、細胞増殖、及び適応免疫を含む多数の疾患と関わる多くの重要な細胞過程に関与している。ラパマイシンは、腎臓移植の患者に頻繁に使用される薬であるが、標準(通常は多い)量でのラパマイシンの長期使用は、健康に著しく有害な影響を与えることがある。
【0021】
本発明の一態様では、ラパマイシンを促進剤と組み合わせると、効力を増強し、過剰量のラパマイシンを投与することによる望ましくない副作用のリスクを低下させる。本願出願人は、種々の腫瘍性及び非腫瘍性の疾患に対して単独で投与(すなわち、単独療法)されるとき、特に、標的化された組織に部位特異的な方法で局所的に又は局部的に投与されるときに、ラパマイシンの効力を増強するための代替経路を介して作用する補助剤を発見した。
【0022】
mTORC1経路の研究によれば、AMPK酵素(mTORC1が活性化する前)に関わる初期経路のうちの上流の促進が細胞内でのラパマイシンの効果を高めることが知られている。多数の化合物がAMPKを活性化することが分かっている。例えば、AICAリボシドと呼ばれるアデノシンの代謝産物は、AMPKの活性化を含む上流での一連の事象を通じて間接的にmTORC1を阻害する。メトトレキサート(MTX)は、例えば、AICAリボシド(5-アミノイミダゾール-4-カルボキシアミド リボシド)、AICAR、及びZMP(アミノイミダゾールカルボキシアミドリボヌクレオチド)のようなAMPKを活性化する分子の細胞内濃度を高める。活性化されたAMPKは、次に、少なくとも2つの別々の経路を通じてmTORC1を阻害する。
【0023】
メトホルミンは、2型糖尿病の治療における第1選択薬として広く使用されており、ミトコンドリア呼吸鎖複合体Iを阻害することにより、間接的にAMPKを活性化する。メトホルミンは、ATPの合成を阻害し、結果として、ADP及びAMP(LKB1活性化を介してAMPKの活性化を引き起こす)の細胞内濃度を高める。
【0024】
多数の付加化合物がAMPKを活性化することが分かっている。これらのうちの1つがペメトレキセドであり、非小細胞肺がん及び中皮腫の治療に適応される抗葉酸剤である。ペメトレキセドは、アミノイミダゾールカルボキシアミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼ(AICART)酵素を阻害し、続いて、AMPの蓄積、及びAMPKの活性化を引き起こす。
【0025】
特定の理論に制約されることなく、メトホルミンは、AMPK依存及びAMPK非依存の両方のメカニズムを通じてmTORC1のシグナル伝達を抑制する。この上流の一連の酵素反応のため、非標準的な(例えば通常処方されるよりも低い)用量のラパマイシンとAMPK活性剤(同様に、非標準的で、通常処方されるよりも低用量)とを組み合わせて単一製剤を作ることで、mTORC1阻害の薬効を高めることができる。
【0026】
本発明の一実施形態において、組成物は、mTORC1阻害に関する有効性を強化するためだけでなく、何らかの補助的で非冗長の有益な効果を可能にするために、ラパマイシンとメトホルミン又はAMPKについての別の活性剤(例えば、メトトレキサート)との組み合わせを含んでいる。この組み合わせは、リウマチ性、神経変異性、及び、遺伝性かつ先天的な遺伝病の治療において用いられ、特に、標的化された組織に部位特異的な方法で局所的に又は局部的に投与されるときに用いられる。
【0027】
以前から、メトトレキサートの作用機序(MOA)は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)の阻害を通じたプリン代謝の阻害によるものであるという一般的な考えがある。Teacheyら(Blood(2008)112(5):220-23)は、急性リンパ白血病の細胞系についてのマウス/生体外による非臨床試験において、メトトレキサートとラパマイシンの間での相乗効果を初めて提案した。Teacheyらは、メトトレキサートのMOAが、mTOR阻害の促進よりもむしろDHFR活性を阻害する上流の効果によるものであるという仮設を立てた。Teacheyらは、「MTXに対する抵抗性は高いDHFR発現と相関する可能性があるため、我々は、サイクリンDの代謝回転の増加によってDHFRが減少することを通じて、mTOR阻害剤がMTXに対するALLの感度を高めていると仮定した」と述べている。
【0028】
メトトレキサートがラパマイシンと共に相加的又は相乗的な薬剤となり、治療的に重要であるという発見において、mTORによる代替的な細胞内作用機序の認識は非常に重要である。単一剤形でラパマイシンとメトトレキサート(又はメトホルミン)の両方を含む複合薬は知られていない。同様に、組み合わせた薬が、薬を単独で、又は、組み合わせて安全かどうか(すなわち、長期使用で用量制限毒性が深刻にならない)のいずれかよりも、より効果的なmTORC1阻害剤として作用することは知られていない。この併用品は、特に標的化された組織に部位特異的な方法で局所的に又は局部的に投与されるときに、いずれか一方の薬単独よりも効果的であり、低用量のラパマイシンを慢性的に使用可能にすることで安全面を改善している。
【0029】
本発明の一態様は、ラパマイシンとAMPキナーゼの任意の活性剤とを含む複合薬を提供する。一実施形態において、AMPキナーゼ(AMPK)活性剤は、例えば、メトトレキサート、メトホルミン、フェンホルミン、チアゾリンジオン、サリチル酸塩、植物生産物(例えば、赤ワイン由来のレスベラトール、緑茶由来のエピガロカテキン-3-ガラート、ベルベリン)、AICAリボシド、AICAR(5アミノイミダゾール-4-カルボキシアミド リボヌクレオチド)、又は、これらを2つ以上組み合わせたものなどの化合物から選択される。一実施形態において、AMPK活性剤は、メトトレキサートである。他の実施形態では、AMPK活性剤は、メトホルミンである。
【0030】
低(非標準)用量のラパマイシンとメトトレキサートの併用は、自己免疫的に、及び、免疫学的に媒介される炎症性疾患の治療に最も効果的であり、さらに、ラパマイシンとメトホルミンの併用は、糖尿病、メタボリックシンドローム、及び肥満の患者に最も効果的である。同様に、ラパマイシンとメトホルミンの併用は、アルツハイマー病及びタンパク質の蓄積に伴う他の神経変性疾患、並びに、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性症、2型糖尿病に伴う変形性関節症、慢性肝炎(非アルコール性脂肪性肝炎及び自己免疫性肝炎を含む、他の自己免疫性疾患、慢性非自己免疫性炎症疾患、高いmTORC1活性化状態に伴う遺伝性及び先天性の遺伝子疾患、悪性及び非悪性の腫瘍における一次及び二次の化学的予防、がん治療、及び炎症性疾患に伴う慢性痛に対してより効果的である。一実施形態において、慢性痛は、炎症性関節炎、例えば変形性関節症に伴うものである。
【0031】
ラパマイシンはバクテリアのストレプトマイセス・ヒグロスコピクスによって生成されるマクロライドであり、化学式を有する。
【0032】
一実施形態において、ラパマイシンの化学的類縁体は、ラパログとして知られ、ラパマイシンの代わりに用いることができる。潜在的に適切なラパログとしては、エベロリムス(Novartis,Afinitor(登録商標))及びテムシロリムス(Wyeth,Torisel(登録商標))、並びに、未承認のmTORC1阻害剤(例えばリダフォロリムス(デフォロリムス))が挙げられる。これらのラパログは、全てラパマイシンの誘導体であるが、ラパマイシンを用いることが好ましい。
【0033】
一実施形態において、新たな第2世代のラパログ(例えばトリン1,KU0063794,OSE-027)をラパマイシンの代わりに用いてもよい。これらの第2世代のラパログは、mTORC1だけでなくmTORC2もより強力に阻害する。
【0034】
他の実施形態では、薬剤は、mTORC1、mTORC2、又は、mTORC1及びmTORC2の両方の組み合わせを阻害する。さらに他の実施形態では、組成物には、例えばPI3Kなどの他のキナーゼを阻害する薬剤が挙げられ、ラパマイシンの代わりに用いることができる(例えば、NVP-BEZ235、GSK2126458、又は、PF-04691502)(総称してPI3K/mTOR二重阻害剤として知られている)。
【0035】
他の実施形態では、(例えばメトホルミンのようなAMPK活性剤の有無に関わらず)ラパログは、AKT阻害剤(例えばAZD5363、GSK690693、Perifosine、及び、GDC-0068)やPI3K阻害剤(例えばイデラリシブ、ブパリシブ、ウォルトマンニン、GSK2636771、又は、GDC-0980[RG7422])と組み合わせることができる。
【0036】
一実施形態において、複合薬は、ラパマイシンとメトホルミンを含んでいる。メトホルミンは、多嚢胞性卵巣疾患、メタボリックシンドローム、及び糖尿病予防に使用されることに加えて、2型糖尿病の治療における第1選択薬として一般に使用されることがよく知られている。
【0037】
構造式は以下である。
【0038】
上記の複合薬の使用は、いずれか一方の薬を単独で使用する場合に比べて、高いmTOR活性状態で特徴づけられる疾患の治療の成功に必要なラパマイシン及びメトホルミンの両方の量を実質的に減らすことができる。メトホルミンは、AMPKの直接的な活性化によりmTORC1を間接的に阻害することができるが、Ragulator複合体(RagGTPase)の不活性化によりmTORC1をより直接的に不活性化することもでき、REDD1(mTORC1不活性化剤)を上方に調節することができる。メトホルミンは、AMPKを活性化し、次に(Raptorをリン酸化することにより)mTORC1を直接的に不活性化し、また、TSC2((Rhebを経由した)mTORC1不活性化剤及び結節性硬化症に関連する腫瘍抑制タンパク質)を活性化する。
【0039】
また、メトホルミンは、(ATG13及びULK1/2をリン酸化する)ラパマイシンと同様にして、(Raptor-ULK1複合体をリン酸化することにより)オートファジーを直接的に促進する。AMPKを活性化することにより、メトホルミンの使用は、mTORC1の下方制御、IGF-1/AKT経路の下方制御、及びp53を介した細胞周期停止の原因となる。これらの抑制効果は、腫瘍進行の停止を可能にしたり、細胞死を誘発したりすることができる。また、メトホルミンは、AKTの活性化を抑制し、ERK1/2シグナル伝達を抑制し、チロシンキナーゼ(EGFR及びHER2)の発現を減らし、p-MAPKを減少させる。
【0040】
特定の理論に制約されることなく、悪性腫瘍(及び他の悪性疾患)におけるラパマイシンに対する忍容性は、AKTに関するIRS-1の負のフィードバックに起因して、AKT活性化の結果として生じる。メトホルミンは、AMPKを活性化することによってAKTの活性化を阻害し、次にAMPKはリン酸化し、この結果としてSer789においてIRS-1を活性化する。これら2つの薬剤(メトホルミン及びラパマイシン)を組み合わせて単一製剤(特に、いずれかの薬剤単独の標準用量よりも低い)にすることは、臨床安全性を悪化させたり、用量制限毒性を招いたりすることなくラパマイシンに対する忍容性に打ち勝つことができる。
【0041】
多剤化学療法投与計画(例えば、ドキソルビシン、パクリタキセル、及びカルボプラチン)は、重大な安全問題及び毒性に関連しており、悪性疾患のうち最も深刻なものを除く全てに対して広く使用されることはない。標準用量よりも低用量での併用は、(治療又は予防のいずれかのために)化学療法を増強したり、適切に選択された患者に対する標準的治療の好ましい代替案として利用したりすることができる。本発明の複合薬は、実質的に改善された安全プロフィールを提供し、薬に関してより良い付着性、コンプライアンス、忍容性、及び持続性を可能にするとともに、適切な腫瘍型及び亜類型を有する厳選した患者において同等の有効性を達成する。
【0042】
経口の標準用量のメトホルミン(500mgを1日2回)を静脈内(非経口)の標準用量のテムシロリムス(25mgを週に1回)に加えるというコンセプトは、第I相試験においてテストされており(様々な悪性腫瘍を含む)(MacKenzieら 進行性固形腫瘍におけるテムシロリムス及びメトホルミンの第I相試験。Invest New Drugs 2012; 30:647-652)、試験に参加した全ての患者(N=11)において重大な用量制限毒性を生じることが示されており、これらの患者においてこれらの用量での更なる薬物使用を妨げている。本発明の複合薬は、実質的に安全プロフィールを改善し、良性及び悪性の腫瘍を含むこれらに限定されない種々の疾患に対して、比較的低用量のラパマイシンとともに標準又は低用量のいずれかのメトホルミン(両方とも、経口的、局所的、局部的に投与されたり、又は単一製剤として特定の組織を標的にしたりする)を使用することで、より高い忍容性を可能にする。
【0043】
エベロリムス(ラパマイシン誘導体)を経口のMEK阻害剤トラメチニブ(GSK1120212)と一緒に投与し、進行性固形腫瘍の患者の中で第IB相試験により評価した(Tolcher AWら Annals of Oncology 2015; 26: 58-64)。この試験は、トラメチニブと「mTOR阻害剤のラパマイシンとの併用により、顕著な細胞毒性及び相乗効果が引き起こされる」という過去の生体外研究にお実証に基づくものである。トラメチニブとエベロリムスを併用投与すると、頻繁な治療関連有害事象として粘膜炎症(40%)、口内炎(25%)、疲労(54%)、下痢(42%)を含んだ、エベロリムスでは頻繁に見られるが、トラメチニブで報告されることは稀な副作用が生じた。有効性を達成するために十分な用量での両方の薬剤の許容可能な併用は達成することができなかった。これらの重大な安全性の問題のため、治験責任医師は、「現在のデータに基づいて、エベロリムスとトラメチニブとを併用する更なる研究は、固形腫瘍の患者を保証しない」と述べた。したがって、ラパログと他の薬剤(特に、シグナル伝達に影響を及ぼすもの)を併用することは、安全性や有効性を保証せず、大抵は望ましくない。
【0044】
がん幹細胞(CSCs)は、自己複製活性、発がんイニシエーション、及び腫瘍増殖が可能であり、がん細胞の中でも独特かつ重要な亜集団(≦3.5%)であると考えられている。CSCsは、転移する傾向がある。したがって、CSCsを根絶することは、がんを治療(及び制御)するために重要である。CSCsは、放射線療法及び化学療法の両方に耐性があり、そのような高用量の療法にもかかわらず増殖する。CSCsもまた、高いmTORC1活性化状態と関連し、この提案される複合薬の標的となり得る。
【0045】
タモキシフェンは、エストロゲン受容体陽性(ER+)の乳がんに対して最も広く使用されるホルモン剤である。ER+の乳がん細胞は、タモキシフェンの治療効果に感受性があるが、非常に重要な亜集団である乳がん幹細胞は、タモキシフェンに耐性があり、タモキシフェンで処置した場合にmTORC経路(及びその下流の標的)の活性化を強めることが実際に示されている(化学的予防のためのタモキシフェンホルモン療法の最終的価値には疑問がある)。mTORC1活性化は、肺、乳房、前立腺、結腸及び肝臓を含む多くの悪性腫瘍、及び、それらにおける対応するCSCsに関係がある。低用量又は非常に低用量(非標準用量)のメトホルミンと、低用量又は非常に低用量(非標準用量)のラパマイシンとを含む複合薬の使用は、悪性腫瘍の発症及び再発のリスクがある患者の一次及び二次の化学的予防として優れた治療法である可能性がある。ラパマイシンを用いる標準用量治療とは対照的に、本発明の標準用量よりも低い複合薬は、最適化された安全プロフィールを許容し、耐性細胞のCSCs集団及び非CSCs集団の両方に対処する。そのような標準用量よりも低い併用は、合理的に設計され、長期的に慢性使用される安全な治療薬と調和する。さらに、そのような併用は、ホルモン療法(ER阻害(例えばタモキシフェン)を含む)と、アロマターゼ阻害剤(例えばエキセメスタン)と、成長因子受容体拮抗薬とを含む他の化学的予防療法にもなる。また、このような併用は、三重陰性(すなわち、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、及びHER2受容体について陰性)の乳がん患者での使用が考えられる。
【0046】
一実施形態において、複合薬は、ラパマイシン及びメトトレキサートを含んでいる。メトトレキサートは、既知の薬剤であり、種々のがん、関節リウマチ、乾癬、及び他の適応症を治療するために一般的に使用されている。メトトレキサートの化学名は、N-[4-[[(2,4-ジアミノ-6-プテリジニル]メチル]メチルアミノ]ベンゾイル]L-グルタミン酸である。構造式は以下である。
【0047】
ラパマイシン及びメトトレキサートを含む複合薬の使用は、いずれか一方の薬剤を単独で使用する場合に比べ、治療の成功に必要なラパマイシン及びメトトレキサートの両方の量を減らすことができる。特定の理論に制約されることなく、ラパマイシン及びメトトレキサートの複合薬を使用すれば使用するほど、ラパマイシン活性(mTOR阻害)を可能にするために血液中に必要なラパマイシンの濃度が下がる。メトトレキサートは、細胞内でポリグルタミル化される。最大7つのグルタミン酸残基がメトトレキサートに結合することができる。高次のポリグルタミル化は、有効性の向上と相関するようであり、メトトレキサートの血中濃度とは関係がない。したがって、メトトレキサートの血中濃度が比較的低い場合でも、メトトレキサートの有効性は維持される。通常、ラパマイシンの有効性は、5~15ng/mLの血中濃度と相関する。メトトレキサートのポリグルタメート体は、細胞内に捕捉され、メトトレキサートの血中濃度が低い(かつ、ラパマイシンの血中濃度が低い)にもかかわらず、活性を維持する。このようにして、細胞内におけるメトトレキサートのポリグルタミル化は、標準用量よりも低い用量で投与された場合でも、ラパマイシンの有効性を改善することができる。
【0048】
メトトレキサートのこの薬理学的効果は、数週間から数ヶ月にわたって慢性的に併用されたときに、より低い用量のラパマイシンがより高いレベルの有効性を与えることを潜在的に可能にしている。これは、より少量のラパマイシンを投与するにも関わらず、有効性を長期間維持することに起因して、薬理学的効果の持続がもたらされているはずであり、次に、より高いレベルの全体的な有効性を伴い、より安全でより便利な投与計画をもたらすことができる。
【0049】
本発明の複合薬は、新しく開発されたクラスのがん免疫療法剤(例えば、チェックポイント阻害剤)と一緒に使用することができ、単独で使用したり、悪性腫瘍に対する他の化学療法剤と併用したりすることができる。
【0050】
また、本発明の複合薬は、NSAID及びPDE4阻害剤(例えば、アプレミラスト)のような他の抗炎症剤に添加することができる。
【0051】
ラパマイシンは、mTOR経路の阻害剤である。mTOR経路は、特定の悪性腫瘍、自己免疫疾患、神経変性疾患、及びVEGF媒介性疾患といった、遺伝性及び先天性の遺伝子疾患を含む多くの病気及び疾患に関与している。これらの病気及び疾患は、ラパマイシン及びAMPK活性剤の両方を含む複合薬を用いて、より良好に治療したり予防したりすることができる。
【0052】
mTOR経路が関与する遺伝性及び先天性の遺伝子疾患としては、自閉症スペクトラム障害、自己免疫性リンパ増殖性症候群、常染色体優性多発性嚢胞腎、Bannayan-Riley-Ruvalcaba症候群(BRRS)、Birt-Hogg-Dube症候群、青色ゴムまり様母斑症候群、COPA症候群(コートマーサブユニットアルファ(COPA)遺伝子における突然変異)、カウデン病、てんかん(発作性疾患)、血管性皮膚線維腫症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー及び他のタイプの筋ジストロフィー、筋強直性筋ジストロフィー、所定の病因による心不全、糖尿病性機能不全、心筋症、ラミノパシー、A型ラミンに関与するLMNA遺伝子における突然変異を原因とする疾患、骨格筋及び脂肪のジストロフィー、家族性大腸腺腫症(FAP)、FAPにおける悪性腫瘍の一次及び二次の化学的予防、家族性粘膜皮膚整脈奇形、先天性角化異常症及びその関連する悪性腫瘍(例えば、口腔咽頭がん)の予防及び治療、ファンコーニ貧血及びその関連する悪性腫瘍(例えば、口腔咽頭がん、骨髄異形成症候群、および急性骨髄性白血病)の予防及び治療、角化症の予防及び治療、限局性皮質異形成IIB型、ガードナー症候群、ターコっと症候群、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群、ウェルナー症候群、家族性多発性円板状線維腫、散発性血管繊維腫、肥大性心筋症、血管奇形及び血管腫(TIE2遺伝子変異に関連するものを含む)に関連する先天性の遺伝的症候群、レオパード症候群(常染色体優性PTPN11突然変異)、レルミット・ダクロス病、リンパ脈管筋腫症(LAM)、リンチ症候群、リンパ管奇形、及び他の合併症における血管異常、多発性内分泌腫瘍I型及びII型、神経線維腫症I型、神経線維腫症II型(例えば、神経鞘腫のような神経索腫瘍に関連する)、爪肥厚症(先天性)、ポイツ・ジェガース症候群、早老症、早老症様症候群、プロテウス症候群、プロテウス様症候群、若年性ポリポーシス、PTEN過誤腫症候群(PHTS)、PMSE(羊水過多症、巨脳症、及び症候性てんかん)症候群、スタージ・ウェーバー症候群、スタージ・ウェーバー症候群に関連する発作、TIE2遺伝子変異による静脈奇形、結節性硬化症(TSC)、TSCに関連する皮膚血管線維腫、TSCに関連する低色素性病変、TSCに関連するリンパ節リウマチ腫、結節性硬化症に関連する腎血管筋脂肪腫、TSCに関連する発作、TSCに関連する上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)病変、自発性静脈奇形が挙げられる。ラパマイシン(又はラパログ)およびAMPK活性剤を含む複合薬は、これらの疾患を治療または予防したり、これらの疾患における症状を治療又は予防したりするために使用することができる。
【0053】
また、進行性乳がん、膀胱がん及び尿路上皮がん、進行性腎細胞がん、進行性膵臓がん及び膵神経内分泌腫瘍、膵臓腫瘍、B細胞悪性腫瘍及びリンパ腫、眼内リンパ腫、小児星細胞腫、胆管がん、結腸がん(結腸癌のリスクを高める先天性および遺伝性の疾患を含む)、大腸がん、炎症性大腸炎に関連する結腸がん、胃腸管の任意の領域に関連するがん、口腔咽頭がん、食道がん、バレット食道、皮膚線維腫、デスモイド腫瘍、デスモイド型腫瘍、表皮(皮膚)がん、エルドハイム・チェスター病(稀な形態の非ランゲルハンス細胞組織球症)、顔面血管線維腫、血管線維腫、神経膠腫、グリア芽腫、頭頸部がん、血管腫、肝細胞がん、ヒスチオサイトーシスX、ランゲルハンス細胞組織球症、レテラー・ジーべ病、好酸球増加症候群、白血病(急性および慢性白血病を含む)、(任意のタイプの)リンパ腫、リンパ腫前の疾患(例えば、シェーグレン症候群に関連する疾患)、(任意の組織型の)肺がん、リンパ脈管筋腫症(LAM)、マントル細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、セザリー症候群及び菌状息肉腫、類乾癬、扁平苔癬、メラノーマ、非メラノーマ皮膚がん(基底細胞がんを含む)、骨髄腫、鼻咽頭がん、口腔咽頭がん、骨肉腫、ポートワイン母斑、前立腺がん、くもの巣状静脈瘤、サクランボ色血管腫、MGUS(意義不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症)を含むプラズマ細胞疾患、くすぶり型多発性骨髄腫、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、腎血管腫、腎細胞がん及び任意の組織型の悪性腫瘍、肉腫、及び正中線肉芽腫といった特定の悪性腫瘍は、mTOR経路と関連している。ラパマイシン(又はラパログ)およびAMPK活性剤を含む複合薬は、これらの疾患を治療または予防したり、これらの疾患における症状を治療又は予防したりするために使用することができる。これらの疾患(何らかの病理又は組織のタイプの良性又は悪性の腫瘍を含む)の化学的予防には、一次と二次の化学的予防の一方又は両方を含めることができる。一次予防は、疾患の発症を予防するために利用され、診断前に治療することができる。二次予防は、疾患の治療により、緩和、治癒、又はその疾患が「制御下にある」と考えられるようにするために、疾患がある又は疾患があった患者に対して利用される。二次予防は、二次性又は第二の新たな事象や再発の進行を防ぐために利用される。
【0054】
自己免疫疾患及び症候群もまたmTOR経路に関与している。自己免疫疾患及び症候群は、免疫介在性疾患、炎症性疾患、病気に関係するオートファジーを含んでいる。これらの疾患としては、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性血球減少症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性リンパ増殖症候群、アトピー性皮膚炎、強直性脊椎炎および体軸性脊椎関節炎、尋常性座瘡、気管支喘息、好酸球増加を伴う気管支喘息、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性大腸炎、セリアック病、皮膚筋炎、多発性筋炎、任意の特定の自己抗体に関連する皮膚筋炎/多発性筋炎症候群、CREST症候群、1型糖尿病、円盤状ループス、ループス脂肪織炎、水疱性エリテマトーデス、亜急性皮膚エリテマトーデス、全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚エリテマトーデス、ループス腎炎、SLEに関与する血球減少、中枢神経系SLE(CNSループス)、好酸球性食道炎、多発性血管炎に伴う好酸球性肉芽腫症(EGPA;チャーグ・ストラウス症候群)、エバンス症候群、移植片対宿主病、体液性/細胞性免疫不全症、化膿性汗腺炎、皮膚に関わる低色素沈着症、免疫性血小板減少性紫斑病(自己免疫性血小板減少性紫斑病、特発性血小板減少性紫斑病)、各種若年性特発性関節炎、ケロイド及び傷跡、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、糖尿病及びインスリン抵抗性疾患に関与する変形性関節症、乾癬、乾癬性関節炎、腎移植、関節リウマチ、SLE(全身性エリテマトーデス)、水疱性天疱瘡、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、神経脊髄炎(NMO)、重症筋無力症、多発性硬化症、ギランバ
レー症候群、CIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)、視神経炎、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化症及び冠動脈性心疾患を伴う不安定狭心症及び不安定プラーク、大動脈瘤、複数の病因のブドウ膜炎、原発性及び続発性のシェーグレン症候群、原発性胆道胆管炎(原発性胆汁性肝硬変)、中枢神経限局性血管炎、自己免疫性肝炎、末梢脱髄性多発神経炎、ベーチェット症候群、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎/側頭動脈炎、混合クリオグロブリン血症、リウマチ性多発筋痛症、特発性炎症性筋疾患/筋炎、肉芽腫症及び多発性血管炎(ウェゲナー肉芽腫症)、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、ACPA陽性の血管炎、コーガン症候群、自己免疫性感音難聴、白斑、黒皮症、炎症を特徴とする関節疾患、及び、炎症性関節炎を含む炎症性疾患に関与する慢性痛が挙げられる。ラパマイシン(又はラパログ)およびAMPK活性剤を含む複合薬は、これらの疾患を治療または予防したり、これらの疾患における症状を治療又は予防したりするために使用することができる。複合薬は、上記疾患のいずれかに対するステロイド節約剤として使用することもできる。また、複合薬は、炎症によって引き起こされる術後痛の治療にも使用することができる。
【0055】
本発明の一実施形態において、複合薬は、炎症を特徴とする関節痛の治療に用いることができる。そのような疾患としては、所定の病因による炎症性関節炎があり、滑膜の炎症を特徴とする。最も効果的な治療を提供するために、ラパマイシンとメトホルミンの複合薬の局所使用は、炎症又は罹患した関節の上部又は頂部に直接行うことで、最も効果的な治療を提供することができる。
【0056】
mTOR経路は、神経変性疾患、タンパク質沈着疾患、及びオートファジー関連疾患にも関与している。これらの疾患及び病状としては、アルツハイマー病、ベータアミロイド症、認知症、頭部外傷に関連する認知症、ハンチントン病、タウオパチー、パーキンソン病、初老期認知症、アミロイド関連血管障害、前頭側頭認知症、レビー小体認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、難治性てんかんが挙げられる。ラパマイシン(又はラパログ)及びAMPK活性剤を含む複合薬は、これらの疾患を治療または予防したり、これらの疾患における症状を治療又は予防したりするために使用することができる。複合薬は、脳卒中後および頭部外傷後の神経保護を含む神経保護作用のためにも使用することができる。
【0057】
mTOR経路に関連するその他の疾患又は病気には、血管内皮増殖因子(VEGF)介在疾患、又は、VEGF及びHIF-1αに関連する疾患がある。VEGFは、脈管形成及び血管形成を刺激する細胞によって産生されるシグナルタンパク質である。HIF-1αは、VEGFを刺激し、高VEGF状態と関連する。mTORの活性化は、高いレベルのHIF-1αを引き起こす。皮膚血管病変のレーザー治療は、mTORの活性化及びVEGFの過剰産生をもたらす。VEGFの過剰産生は、加齢黄斑変性症、血管線維腫、青色ゴムまり様母斑症候群、毛細血管静脈奇形、複雑な血管腫、播種性の乳児血管腫、海綿状血管腫、線維症、類上皮型血管内皮腫、糖尿病網膜症、糖尿病性腎症、びまん性毛細血管拡張性顔面紅斑、紅斑性毛細血管拡張性酒さ、びまん性小嚢胞リンパ奇形、線維腫、クモ状静脈、血管内皮腫、クリッペル・トレノニー症候群、血管内皮腫、血管内皮腫に関連するマフッチ症候群、乳児血管腫、乳児血管腫に関連するPHASE症候群、レーザー治療後に再発する傾向がある皮膚血管病変(すなわち、特にパルス色素レーザーのようなレーザーの使用後にこれらの血管病変(例えばポートワイン母斑)の再発を予防するために我々の併用製品を使用する)、動脈内ステント(血栓症を防ぐためのステントでの使用)の合併症、カポジ肉腫(KS)(皮膚及び全身症状の両方)(臓器移植に関連するKS、HIV、又は高齢者に見られる)、カポジ型血管内皮腫、ポートワイン母斑、スタージ・ウェーバー症候群に関連するポートワイン母斑、クモ状静脈、サクランボ色血管腫、皮膚移植、毛細血管拡張症、新たに又は先天的な遺伝子変異(例えば、TIE2遺伝子変異)に関連して発症する血管奇形、酒さといった疾患及び症状の一因になる可能性がある。ラパマイシン(又はラパログ)及びAMPK活性剤を含む複合薬は、これらの疾患を治療または予防したり、これらの疾患における症状を治療又は予防したりするために使用することができる。複合薬は、上記疾患のいずれかに対するVEGF節約剤として使用することもできる。
【0058】
また、mTOR経路の阻害は、実験動物における寿命の延長及び老化の遅延に関連している。例えば、ラパマイシンと組み合わせたメトホルミン又はメトトレキサートのようなAMPK活性剤の使用は、効果的な予防的抗老化療法として、より低い用量のラパマイシンを使用することを可能にする。このような予防法は、糖尿病、心疾患、心不全、拡張機能障害、及び認知症などの関連する共存症を少なくして、生命の延長又はより健康的な老化プロセスのいずれか一方をもたらす可能性がある。このような複合薬は、特に局所投与される場合、肌の若返り及び皺の治療/予防、日焼けによる損傷及び紫外線暴露の影響の低減に使用することができる。
【0059】
本発明の態様において、複合薬は、mTOR経路に関連する遺伝性及び先天的な遺伝病、悪性腫瘍、腎移植、自己免疫及び免疫学的に媒介される炎症性疾患、神経変性疾患、及びVEGF媒介疾患などの所定の疾患を治療するために使用することができる。
【0060】
一実施形態において、複合薬は、結節性硬化症(TSC)の治療に使用することができる。TSCは、稀な病気であり、米国において25000-40000人の患者に影響を及ぼしており、世界的には200万人にのぼる患者に影響を及ぼしている。それは、1:6000の出生において発生し、過剰なmTOR複合体1(mTORC1)活性をもたらす2つのがん抑制遺伝子のいずれか一方の遺伝子変異によって引き起こされる。病気の症状は様々だが、脳、眼、皮膚、心臓、肺、及び腎臓における全身性の過誤腫(大小の腫瘍性増殖)及び認知低下に繋がるCNS病変からの難治性けいれんを含む。現状では、発作、認知低下、及び行動障害を含む疾患の経過を修正するために認可された治療薬はない。皮膚TSC疾患は、進行性の疾患であり、多臓器疾患の目に見える兆候を引き起こし、重大かつ外観を損なう皮膚疾患をもたらすことがある。
【0061】
他の実施形態では、複合薬は、羊水過多症、巨脳症、及び症候性てんかん(PMSE)症候群の治療に使用することができる。PMSE症候群は、旧メノナイトの人々の中で見られる非常に稀な神経発達障害である。それは、mTORC1の上流阻害剤であって、STRADα(擬キナーゼSTE-20関連キナーゼ受容体α)と呼ばれるタンパク質の符号化を担うLYK5/STRADA遺伝子の9から13のエクソンのホモ接合体欠失によって引き起こされる。PMSE症候群は、乳児発症性、治療抵抗性の多発性てんかん、重度の認知遅延、頭蓋顔面異形成症によって特徴づけられる。PMSE症候群の患者は、てんかんによる死亡リスクが高く、PMSE患者の38%が6歳より前に死亡する。現状では、症状の経過を変えるために認可された治療薬はない。
【0062】
一実施形態において、複合薬は初期段階のアルツハイマー病に使用することができる。Majumderら、PLoS ONE,2011;9(6):e25416によれば、ラパマイシンは、mTOR阻害によってオートファジーを誘発し、マウスでは、脳におけるプラーク及びもつれの確立前に与えられると、プラーク、もつれ、及び認知欠陥を顕著に減少させることが示されている。したがって、複合薬は、病気の進行における早期に使用すれば、ベータ-アミロイドプラークの発達をより効果的に防ぐことができる。
【0063】
一実施形態において、複合薬は、カポジ肉腫(KS)の治療に使用することができる。KSは、免疫抑制に関連するヒトヘルペスウイルス8型関連の悪性腫瘍である。それは、HIV/AIDS患者及び移植患者に最も一般的に見られる。KSには、地理的及び民族的要因がある。
【0064】
一実施形態において、炎症性皮膚疾患は、アトピー性皮膚炎(湿疹)である。
【0065】
一実施形態において、複合薬は、2つの関連する自己免疫疾患、すなわち全身性エリテマトーデス及び円板状エリテマトーデスに関連する皮膚疾患の治療に使用することができる。これらの疾患は、自己免疫性炎症性疾患であり、皮膚に影響を及ぼし、持続性の鱗状の円盤状プラークを頭皮、顔、及び耳に生成し、色素変化、瘢痕化及び脱毛を引き起こすことがある。
【0066】
一実施形態において、複合薬は、世界的に数千人に影響を及ぼしている非常に稀な常染色体優性疾患である先天性爪甲硬厚症を治療するために使用することができる。この疾患は、K6a,K6b,L6c,K16,又はK17の5つのケラチン遺伝子のうちの一つの突然変異によって引き起こされる。この病気は、局所的な掌蹠角化症、肥大性爪ジストロフィー、毛孔性角化症、及び口腔白板症を引き起こす。それは、寿命に影響しない。ラパマイシンが先天性爪肥厚症に有効であるかどうかを評価するための試験が行われている。経口ラパマイシンの全身的副作用の試験は限られている。複合薬の使用は、各用量におけるラパマイシンの用量を減少させること、投薬頻度を減少させること、又はその両方によって、これらの全身的副作用を減少させることになる。
【0067】
一実施形態において、複合薬は、カウデン症候群(CS)、レルミット・ダクロス病(LD)、Bannayan-Riley-Ruvalcaba症候群(BRRS)、変形性関節症、プロテウス症候群(PS)を含むPTEN過誤腫症候群を治療するために使用することができる。
【0068】
複合薬のいくつかの投与経路は、TSCの治療において有効である。例えば、経口又は非経口(皮下、筋肉内、または静脈内)の投与経路は、疾患の進行の治療に効果的であり、発作および認知低下などの症状を制御したり予防したりするのに有効である。皮膚のTSCを治療するために、局所的処置を使用することができる。適切な剤形及び用量は、患者の特性(年齢、体重等)に依存する。
【0069】
適切な剤形及び用量は、治療される病状に依存する。複合薬は、所望の疾患の治療に適した任意の方法で投与することができる。
【0070】
組み合わせを投与するために任意の適切な調剤設計を使用することができる。例えば、組み合わせは、経口投与のために錠剤、カプセル剤、液体製剤に組み込んだり、局所投与のためにクリーム剤、ローション、軟膏、ゲル、又はペーストに組み込んだり、非経口投与のために液体、凍結乾燥の形態、又はナノ粒子の形態に組み込んだり、関節内投与のために粘性基剤(例えば、ヒアルロン酸と一緒に)に組み込むことができる。
【0071】
上記の剤形は、必要な担体物質、賦形剤、潤滑剤、緩衝剤なども含む。
【0072】
本発明の複合薬は、医薬組成物において使用することができる。これらの医薬組成物は、個々の単一ユニットの剤形の製剤に使用することができる。医薬組成物及び剤形は、ここに記載される複合薬、又は薬学的に許容される塩若しくはその溶媒和物を含むことができる。医薬組成物及び剤形は、さらに1つ又は複数の担体、賦形剤、又は希釈剤を含んでも良い。
【0073】
可能な剤形の非限定的な例としては、錠剤、カプレット、軟質弾性ゼラチン等のカプセル、カシェー剤、トローチ、薬用キャンディー、分散液、坐薬、粉剤、エアロゾル(例えばスプレー式点鼻薬、吸入器)、ゲルのような局所製剤、クリーム剤、ローション、及び軟膏、懸濁液(例えば水性又は非水性液体懸濁液、水中油型エマルション、又は油中水型液体エマルション)を含む患者への経口又は粘膜投与に適した液体製剤、溶液、及びエリキシル剤が挙げられる。
【0074】
複合薬を含む医薬組成部は、経口投与に適しており、例えば錠剤(例えば咀嚼錠)、カプレット、カプセル及び液体(例えば味付きシロップ)のような個別の剤形として提供することができるが、これらに限られない。このような剤形は、ここに記載される所定量の活性成分を含み、当業者に周知の製薬方法によって調製することができる。
【0075】
このような剤形は、いずれかの製薬方法によって調製することができる。一般に、経口投与のための医薬組成物及び剤形は、液体担体、微粉化した固体担体、又はその両方を有効成分と均一に混合し、次いで必要に応じて生成物を所望の掲示に成形することによって提供される。
【0076】
例えば、錠剤は、圧縮又は型打ちによって調製することができる。圧縮錠は、例えば粉末や顆粒のような自由流動性の形態における活性成分を適切な機械で圧縮し、任意で賦形剤と混合することによって調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を適切な機械で型打ちすることによって製造することができる。
【0077】
典型的な経口剤形は、慣用的な医薬配合技術にしたがって、活性成分を少なくとも1種の賦形剤との混合物中で混ぜ合わせることによって調製される。賦形剤には、投与のために所望される製剤の剤形に応じて多種多様な剤形を用いることができる。経口液剤又はエアロゾル剤形での使用に適した賦形剤の非限定的な例としては、水、グリコール、油、アルコール、香料添加剤、防腐剤及び着色剤が挙げられる。固体の経口剤形(例えば、粉剤、錠剤、カプセル及びカプレット)での使用に適した賦形剤の非限定的な例としては、デンプン、砂糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、及び崩壊剤が挙げられる。
【0078】
経口剤形で使用することができる賦形剤の非限定的な例としては、結合剤、充填剤、崩壊剤および潤滑剤が挙げられる医薬組成物及び剤形での使用に適した結合剤の非限定的な例としては、コーンスターチ、片栗粉、又は他のデンプン、ゼラチン、アカシアのような天然又は合成のゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、又はその他のアルギン酸塩、粉末のトラガカント、グァーガム、セルロース及びその誘導体(例えばエチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、アルファデンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えばNo.2208,2906,2910)、微結晶性セルロース、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0079】
微結晶性セルロースの適切な剤形の非限定的な例には、AVICEL(登録商標)(微結晶性セルロース)PH-101、AVICEL(登録商標)(微結晶性セルロース)PH-103、AVICEL RC-581(登録商標)(結晶性セルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウム)、AVICEL(登録商標)(微結晶性セルロース)PH-105(FMC Corporation,American Viscose Division,Avicel Sales,Marcus Hook,ペンシルベニア州から入手可能)、及びこれらの混合物として販売されている材料が挙げられるが、これらに限られない。特定の結合剤は、AVICEL RC-581(登録商標)(結晶性セルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウム)として販売されている微結晶性セルロースとカルボキシメチルセルロースナトリウムの混合物である。無水又は低水分の適切な賦形剤又は添加剤には、AVICEL-PH-103(登録商標)(微結晶性セルロース) PH-103及びStarch 1500(登録商標)LM(アルファデンプン)が挙げられる。
【0080】
ここに開示される医薬組成物及び剤形での使用に適した充填剤の非限定的な例としては、タルク、炭酸カルシウム(例えば顆粒又は粉末)、微結晶性セルロース、粉末セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファデンプン及びそれらの混合物が挙げられる。医薬組成物中の結合剤又は充填剤は、典型的に、医薬組成物又は剤形において約50~約99重量%で存在する。
【0081】
崩壊剤は、水性環境にさらされたときに崩壊する錠剤を提供するための組成物中に使用される。使用される崩壊剤の量は、製剤のタイプに基づいて変化し、当業者には容易に認識できる。典型的な医薬組成物は、約0.5~約15重量%の崩壊剤、約1~約10重量%、又は、約1~約5重量%の崩壊剤を含む。
【0082】
医薬組成物及び剤形に使用できる崩壊剤の非限定的な例としては、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモ又はタピオカのでんぷん、その他のデンプン、アルファデンプン、その他のデンプン、粘土、その他のアルギン、その他のセルロース、ゴム、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0083】
医薬組成物及び剤形に使用できる潤滑剤の非限定的な例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイル、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、その他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、硬化植物油(例えば、落花生油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天、及びそれらの混合物が挙げられる。存在する場合、潤滑剤は、医薬組成物又は剤形の約1重量%未満の量で使用することができる。
【0084】
投与する用量は、患者の年齢、体重及び疾患だけでなく、投与経路、剤形及び処方、及び所望する結果にも従って注意深く調節しなければならない。
【0085】
一実施形態において、複合薬は、経口投与又は舌下投与のために製剤化することができる。一実施形態において、複合薬は、ラパマイシン及びメトトレキサートを約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、又は約1:4の比率で含むことができる。一実施形態において、ラパマイシンは、約0.5mg、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、又はさらに約9mgの量で存在することができる。メトトレキサートは、約6mg、約9mg、約12mg、約15mg、約18mg、約21mg、約24mg、又はさらに約27mgの量で存在することができる。また、メトトレキサートは、約25mgまで、約2.5mgの倍数で与えられてもよい(約2.5mg、約5.0mg、約7.5mg、約10mg、約12.5mg、約15mg、約17.5mg、約20mg、約22.5mg、約25mg)。
【0086】
一実施形態において、ラパマイシンは、約0.5mgから約10mgの範囲内の量で存在し、メトトレキサートは、同じ経口剤形で約3mgから約30mgの範囲内で存在することができる。他の実施形態では、ラパマイシンは、約0.5mgから約8mgの範囲内の量で存在し、メトトレキサートは、同じ経口剤形で約5mgから約25mgの範囲内で存在することができる。ここでは、明細書及び特許請求の範囲の他の部分と同様に、範囲を組み合わせて開示されていない新たな範囲を形成することができる。
【0087】
一実施形態において、ラパマイシンは、約0.5mg、約1mg、約2.0mg、約2.5mg、約3.0mg、約3.5mg、約4.0mg、約4.5mg、又は約5.0mgの量で存在することができる。メトトレキサートは、約7.5mg、約8.0mg、約8.5mg、約9.0mg、約9.5mg、又は約10.0mgの量で存在することがで
きる。
【0088】
他の実施形態では、複合薬は、遺伝性及び先天性の遺伝子疾患を治療するために使用することができる。ラパマイシンに比べ、メトトレキサートの投与量が低い又は高い場合、これらの疾患を治療又は予防するのに適している。ラパマイシン及びメトトレキサートの組み合わせの比は、約2:1(メトトレキサートに対するラパマイシン)、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、又は約1:4とすることができる。
【0089】
複合薬は、経口で1日1錠まで投与することができる。薬剤、特にメトトレキサートの潜在的な副作用のため、より少ない頻度で複合薬を投与することが好ましい。一実施形態において、複合薬は、週1回の用量で投与される。他の実施形態では、複合薬は、週2回半分の用量で投与され、2回目の投与は1回目の投与の24時間後に行われる。
【0090】
複合薬は、経口で1日1錠まで投与することができる。舌下投与は、増強された吸収のため、より低い用量の薬剤によって複合薬の血中濃度をより高くすることを実現する。したがって、舌下剤を週1回投与することが好ましい。
【0091】
添加剤又は相乗剤(例えばメトトレキサートなどのAMPK活性剤)をラパマイシンと併用すると、有効性が強化され、ラパマイシンの必要用量を低下及び/又は薬剤投与の頻度を減らすことができる。一実施形態において、複合薬は、週1回のパルス療法で投与することができる。この投与計画は、ラパマイシン、メトトレキサート、又はその両方の使用により、望ましくない免疫抑制、口内炎、高脂血症、高血糖、及び血球減少を含む潜在的な副作用を緩和することができる。
【0092】
一実施形態において、複合薬は、特に幼児及び小児の治療のための肛門坐薬として製剤される。経口投与と同じ一般的な投薬計画が、肛門坐薬に適用される。
【0093】
一実施形態において、複合薬は、関節内投与のために製剤化されてもよい。この製剤は、炎症を特徴とする関節疾患を治療するために使用してもよい。一実施形態において、関節疾患は、変形性関節症(例えば、膝関節の変形性関節症)又は特定関節を含む炎症性関節炎である。複合薬は、塩基(例えば、ヒアルロン酸)としての関節内補充薬を含むことができる。ヒアルロン酸は、複合薬が添加される媒体として機能することができる。一実施形態において、ラパマイシン及びメトトレキサートの複合薬を、ヒアルロン酸を含む媒体に添加する。ラパマイシンは、約0.5mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約2.5mg、さらには約5.0mgの量で添加することができる。メトトレキサートは、約4.0mg、約4.5mg、約5.0mg、約5.5mg、約6.0mg、さらには約8.0mgの量で添加することができる。この製剤は、2~3ヶ月毎で1年に3回まで、関節(例えば、膝関節)への関節内投与によって投与することができる。他の実施形態において、複合薬は、ラパマイシンと、メトホルミン又は他の任意のAMPK活性剤を含むことができる。他の実施形態において、複合薬は、ラパマイシン、メトトレキサート及び他のAMPK活性剤を含むことができる。
【0094】
様々なサイズの錠剤、例えば総重量で約2mg~2000mgの錠剤を調製することができる。これらの錠剤は、上記範囲内において活性物質の両方を含有しており、残りは、許容される医薬的実施に従って他の物質の生理学的に許容される担体である。もちろん、これらの錠剤は、部分用量を提供するために分割することができる。ゼラチンカプセルも同様に調合することができる。ユニークなカラーコーティングとマーキングを使用することにより、患者の識別を容易にし、安全性とコンプライアンスを強化し、ブランディングを創出することができる。
【0095】
一実施形態において、複合薬は液体製剤であってもよい。液体製剤は、1~2杯分において所望量を投与することができるように、医薬投与で許容される従来の液体媒体中に、有効成分の組み合わせを溶解又は懸濁させることによって調製することができる。そのような剤形は、1日あたり1~2回の投与計画において患者に投与することができる。コンプライアンスを強化してブランディングを創出するために、特別な着色とフレーバーを加えてもよい。
【0096】
一実施形態において、複合薬は、非経口投与のために製剤化することができる。経口製剤と同様に、複合薬は、ラパマイシン及びメトトレキサートを、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4や約1:4.5の比で含むことができる。一実施形態において、ラパマイシンは、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、さらには約9mgの量で存在することができる。メトトレキサートは、約9mg、約12mg、約15mg、約18mg、約21mg、約24mg、さらには約27mg、約7.5mg、約10mg、約12.5mg、約15mg、約17.5mg、約20mg、約22.5mg、約25mgや約27.5mgの量で存在することができる。
【0097】
一実施形態において、ラパマイシンは、約0.5mgから約10mgの範囲内の量で存在し、メトトレキサートは、同じ経口剤形で約2.5mgから約30mgの範囲内で存在することができる。他の実施形態において、ラパマイシンは、約0.5mgから約8mgの範囲内の量で存在し、メトトレキサートは、同じ経口剤形で約5mgから約25mgの範囲内で存在することができる。
【0098】
一実施形態において、ラパマイシンは、約0.5mg、約1mg、約1.5mg、約2mg、約2.5mg、約3.0mg、約3.5mg、約4.0mg、約4.5mg又は約5.0mgの量で存在することができる。メトトレキサートは、約5.0mg、約7.5mg、約8.0mg、約9.0mg又は約10.0mgの量で存在することができる。
【0099】
他の実施形態において、複合薬は、遺伝性又は先天性の遺伝子疾患を治療するために使用することができる。ラパマイシンと比較して、メトトレキサートの投与量がより低い又はより高い場合には、これらの疾患を治療又は予防するのに適している。ラパマイシン及びメトトレキサートの組み合わせの比は、約2:1(メトトレキサートに対するラパマイシン)、約1:2、約1:3、約1:4又は約1:5とすることができる。
【0100】
一実施形態において、複合薬の非経口(皮下)製剤は、自己注射を含む注射によって週1回投与することができる。他の実施形態において、非経口製剤は、週2回において半分の用量を投与することができ、第1の半分の用量の投与後24時間において、第2の半分の用量を投与することができる。
【0101】
組成物を製剤する際に、上記量の活性物質は、生理学的に許容される媒体、担体、賦形剤、結合剤、保存剤、安定剤、風味剤などを特定のタイプの単位用量で用いて、許容される薬学的実務に従って作られる。
【0102】
錠剤に組み込むことができる賦形剤の例としては、以下のものがある。トラガカントゴム、アカシア、トウモロコシデンプン又はゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウム又はセルロースなどの賦形剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸又はステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;スクロース、アスパルテーム、ラクトース又はサッカリンなどの甘味剤;オレンジ、ペパーミント、ウィンターグリーン又はチェリーの油などの香味剤。投薬単位形態がカプセルである場合、上記タイプの物質に加えて、脂肪油などの液体担体を含有してもよい。様々な他の物質が、コーティングとして、又は他の方法で投与単位の物理的形態を改変するために存在してもよい。例えば、錠剤又はカプセル剤は、シェラック、糖又は、これらの両方でコーティングすることができる。エリキシルのシロップは、担体としての活性化合物、水、アルコールなどと、可溶化剤としてのグリセロールと、甘味剤としてのショ糖と、防腐剤としてのメチル及びプロピルパラベンと、色素と、チェリー又はオレンジなどの香味料とを含むことができる。
【0103】
このような製剤の徐放性形態を使用することができ、そのような量を隔週、毎週、毎月などに投与することができる。最小限の利益を得るためには、少なくとも1~2週間の投薬期間が必要である。
【0104】
一実施形態において、複合薬は、局所(皮膚)、局在、組織標的又は部位特異的の投与のために製剤化することができる。そのような製剤は、軟膏、クリーム剤、ローション、ゲル又はペーストの形態とすることができる。局所製剤には、点眼薬及び鼻腔用スプレーも含まれる。このような投薬量には、ラパマイシンの重量として、約0.01%、約0.025%、約0.05%、約0.75%、約0.1%、約0.25%、約0.5%、約0.75%、約1.0%、約1.5%、2.0%、約2.5%、約3.0%、約3.5%又は約4.0%の量のラパマイシンを含む。一実施形態において、ラパマイシンの用量は、約0.01重量%~約4.0重量%、約0.1重量%~約3.5重量%;約0.25~約3.0重量%;約0.5重量%~約2.5重量%;約0.75重量%~約2.0重量%;約1.0重量%~約2.5重量%の範囲内である。メトホルミン(又はメトトレキサート)は、メトホルミン(又はメトトレキサート)の重量として、約0.1%、約0.2%、約0.5%、約1.0%、約1.5%、約2.0%又は約2.5%の量で存在することができる。
【0105】
一実施形態において、複合薬の製剤において、メトホルミンに対するラパマイシンのモル比は、約20:1~約1:1;約20:1~約3:1;約20:1~約4:1;約20:1~約5:1;約15:1~約1:1、約15:1~約3:1;約15:1~約4:1;約15:1~約5:1;約10:1~約3:1;約10:1~約4:1;約10:1~約5:1;約5:1~約4:1;約5:1~約3:1又は約5:1~約1:1の範囲内である。一実施形態において、製剤は局所製剤である。
【0106】
一実施形態において、複合薬の製剤は、4.0グラムまでの量のラパマイシンを含むことができる。他の実施形態において、製剤は、約0.01~約4.0グラム;約0.1グラム~約3.5グラム;約0.25~約3.0グラム;約0.5~約2.5グラム;約0.7~約2.0グラム;又は約1.0~約2.5グラムの範囲内のラパマイシンを含むことができる。また、一実施形態において、薬剤の製剤は、0.7グラムまでの量のメトホルミンを含むことができる。また、他の実施形態において、薬剤の製剤は、約0.7グラム~0.0007グラム、約0.7グラム~約0.0007グラム、約0.7グラム~約0.007グラム、約0.7グラム~約0.45グラム、約0.7グラム~約0.028グラム、約0.6グラム~約0.02グラム、又は約0.6グラム~約0.01グラムの範囲内のメトホルミンを含むことができる。一実施形態において、製剤は局所製剤である。
【0107】
一実施形態において、局所製剤は、ラパマイシンと、メトトレキサート又はメトホルミンなどのAMPキナーゼの活性剤とを含むゲルである。一実施形態において、ゲルは、有効成分としてのラパマイシン及びメトホルミンの組み合わせと、少なくとも1つの賦形剤を含む。
【0108】
一実施形態において、ゲル製剤中におけるメトホルミンに対するラパマイシンのモル比は、約20:1~約1:1;約20:1~約3:1;約20:1~約4:1;約20:1~約5:1;約15:1~約1:1、約15:1~約3:1;約15:1~約4:1;約15:1~約5:1;約10:1~約3:1;約10:1~約4:1;約10:1~約5:1;約5:1~約4:1;約5:1~約3:1;又は約5:1~約1:1の範囲内である。一実施形態において、ゲル製剤は、約0.1グラム~約4.0グラムの範囲内のラパマイシンと、約0.00007グラム~約0.60グラムの範囲内のメトホルミンとを含む。他の実施形態において、ゲル製剤は、約1.0グラム~約3.0グラムの範囲内のラパマイシンと、約0.007グラム~約0.42グラムの範囲内のメトホルミンとを含む。
【0109】
ゲル製剤は賦形剤を含む。好適な賦形剤としては、乳化剤、有機ゲル化剤及び皮膚軟化剤が挙げられる。乳化剤には、ポリエチレングリコールステアレート、グリコールステアレート、グリセリルステアレート、セテアリルアルコール、セテアレス20、メチルセルロース、セトマクロゴール1000及びレシチンが含まれる。好適な有機ゲル化剤には、4-tertブチル-1-アリールシクロヘキサノール誘導体、ポリマー(例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリカーボネート、ポリエステル及びポリ(アルキレン))、ジェミニゲル化剤(例えば、N-ラウロイル-L-リジンエチルエステル)、Boc-Ala(1)-Aib(2)-β-Ala(3)-OMe(合成トリペプチド)及び低分子量ゲル化剤(例えば、脂肪酸及びn-アルカン)が含まれる。好適な皮膚軟化剤には、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、パルミチン酸イソプロピル、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、PPG-2ミリスチルエーテルプロピオン酸、ジメチコン、メチコン、ペトロラタム、ラノリン及びミネラルオイルが含まれる。
【0110】
必要に応じて、界面活性剤、浸透増強剤、防腐剤、粘度調整剤及び乳化安定剤を含む他の添加剤を、マンニトール組成物に含めることができる。好適な界面活性剤には、ラウリル硫酸ナトリウム、セトステアリルアルコール、セテアレス12、セテアレス20、セテアリルアルコール、セトマクロゴール1000、ステアリン酸、及びポロキサマーが含まれる。好適な浸透増強剤には、プロピレングリコールが含まれる。好適な防腐剤には、メチルパラベン、プロピルパラベン、エチルヘキシルグリセリン、フェノキシエタノール、クロロクレゾール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、ブロノポール、メチルクロロイソチアゾリノン及びメチルイソチアゾリノンが含まれる。好適な粘度調整剤には、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、アクリレートクロスポリマー及びカルボマーが含まれる。好適な乳化安定剤には、キサンタンゴム、グリセリルステアレート及びカルボマーが含まれる。
【0111】
その他の添加剤、例えば芳香剤、防腐剤、着色剤を添加してもよい。
【0112】
一実施形態において、複合薬の局所製剤は、ラパマイシン及び少なくとも2つのAMPK活性剤を含むことができる。一実施形態において、複合薬の局所製剤は、ラパマイシン、メトトレキサート及び、サリチル酸の0.5重量%の単位において、約0.5%から約27.0%のサリチル酸を含む。
【0113】
一実施形態において、局所製剤は、局所ラパマイシン及び局所メトホルミンを含むことができる。ラパマイシンは、約0.1%から約2.5%の範囲内の濃度で使用され、メトホルミンは、約0.02%から約1.5%の範囲内の濃度で使用される。これらの範囲は、多くの異なる適応症についてこれらの薬剤の局所投与を可能にする。
【0114】
また、複合薬は、硝子体内又は結膜下注射によって、又は局所的に投与することができる。硝子体内又は結膜下注射の場合、メトトレキサートの用量は、0.1mLあたり約200mcg又は0.1mLあたり約400mcgである。硝子体内又は結膜下注射の場合、ラパマイシンの用量は、約50pg/mLから約200mcg/mLである。組み合わせの硝子体内注射には、必要に応じて2ヶ月ごとに約350mcgから約450mcgの用量のラパマイシンを含んだり、0,60及び120日目に約1300mcgの用量のラパマイシンの結膜下注射を含んだりすることができる。局所眼科投与の場合、ラパマイシンの用量は約50pg/mLから約50mcg/mLであり、メトトレキサートの用量は、就寝時及び1日中に適用することができる製剤中の0.1mLあたり約200mcgである。局所製剤は、溶液、懸濁液、乳濁液であってもよく、点眼剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤又は、眼及び/又は眼瞼に注射可能な形態で投与してもよい。また、ラパマイシンを含有する組み合わせは、複合薬の徐放を可能にするために、強膜の壁に埋め込まれて縫合されるか、又はリポソームなどの担体系内に含まれる拡散可能な壁のリザーバーに含有することができる外科的インプラントとしてミリグラム量で投与することができる。
【0115】
一実施形態において、複合薬は、ラパマイシン及びメトホルミンを含むことができる。この組み合わせは、糖尿病、メタボリックシンドローム、高脂血症、及び/又はメトトレキサート不耐性の患者に好適なだけでなく、悪性腫瘍及び非悪性新生物の両方の化学予防、非腫瘍性疾患、アルツハイマー病などの神経変性疾患、多発性自己免疫及び慢性炎症性障害にも好適である。メトホルミンは、約100mg~約1000mg、又は約300mg~約900mgの範囲内の用量で投与される。メトホルミンは、約150mg、約300mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg又は約1000mgの量で存在することができる。メトホルミンは、約166mg、約333mg、約666mg、約1200mg、又は約200mg、約400mg、約800mg、又は約1200mgの量で存在することができる。ラパマイシンは、約0.15mg、約0.3mg、約0.4mg、約0.5mg、約0.6mg、約0.7mg、約0.8mg、約0.9mg、約1.0mg、約1.1mg、約1.2mg、約1.3mg、約1.4mg、1.5mg、約2.0mg、約2.5mg、約3.0mgの用量で投与される。この製剤は、1日1回の錠剤として経口投与することができる。他の投薬計画は、異なる適応症に適している可能性がある。
【0116】
本発明の一態様では・BR>A治療を必要とする患者は、併用薬剤による治療が有効であるかどうかを判断するためにコンパニオン診断で評価することができる。この方法は、患者のベースラインmTOR活性化状態(mTORC1下流経路成分の活性化状態を含む)を判別することを含む。高いmTOR活性化状態の発見は、成功の可能性がより高いことを示す。正常又は低いmTOR活性状態の発見は、成功の可能性がより低いことを示す。数週間の治療後、患者のmTOR活性化状態の変化は、投与した用量が正しい用量であるか否かを判断するのに役立つ。mTOR活性が低下していない場合は、用量を増やす必要があるかもしれない。薬剤耐性が疑われる場合は、治療を中止することができる。この応答の薬理学バイオマーカーは、治療の指針となる。組織特異的mTOR活性化状態は、バイオマーカー(例えば、滑膜炎の有無を判定するためのMRI又は超音波などのイメージングバイオマーカー)、免疫組織化学(生検組織を用いる)、又は、局所化、唾液分泌、未だ決定されていない血液バイオマーカーを用いて推定してもよい。
【0117】
mTOR活性化状態のベースラインからの変化(例えば、第2週、第4週又は第6週)は、後の時点(例えば、24-48-52週)における将来の結果(成功)を予測するために使用することができる。これは応答の予測的バイオマーカーである。
【0118】
mTORC1(例えば、p70S6リボソームキナーゼ;S6タンパク質;4E-BP1及びeIF4B)及びmTOR自体(ホスホ-mTOR)によってリン酸化される下流活性化タンパク質のリン酸化状態は、(生検組織の免疫組織化学手法又は、循環リンパ球又は他の形成された要素のFACS(蛍光活性化細胞選別)によって)分析することにより、高いmTOR活性化状態を判断することができる。ラパマイシンは、mTORC1及び下流タンパク質のリン酸化を阻害するが、これらのタンパク質の全レベルには変化が生じないであろう。
【0119】
mTORC1の阻害は、オートファジーを促進する。不十分なオートファジーは、提案された複合薬によって標的とされる多くの疾患及び状態に関連する。これらの複合薬についてのコンパニオン診断は、オートファジーのベースラインのレベル/状態及びそのようなレベルの後処理に対する効果を決定する。オートファジーの特定のバイオマーカーを用いたオートファジーのレベル/状態の決定は、ベースライン時及び早期治療時の両方において、複合薬から恩恵を受けたり受けなかったりする患者のプロファイリングをより良好にできる。長期応答の予測は、そのようなオートファジーバイオマーカーの潜在的な結果だけでなく、適切な投与を誘導するためのオートファジーバイオマーカーの使用となる。
【実施例0120】
H-チミジン取り込み試験
腎細胞癌
ヒト腎臓明細胞癌細胞株Caki-I(HTB-46)を用いたパイロットプレート試験。DNA合成/複製の阻害を評価するために、様々な用量のラパマイシン、メトトレキサート及びメトホルミンに細胞を曝露した(用量は以下の表を参照)。培地中において、0.1%DMSOの試験物質溶媒をコントロールとした。
【0121】
30,000細胞/ウェルの濃度、1mLの総培地容量(RPMI1640+10%FBS+抗生物質)における24ウェルプレート上に細胞を継代した。次に、細胞を付着させ、処理の24時間前から培養した。次に、様々な濃度の処理物質を用いて、細胞を3回処理した。
【0122】
H-チミジン(1mCi/mL)を5μLの培地(RPMI1640+10%FBS+抗生物質)において1μCiに希釈した後、24時間後及び42時間後のそれぞれの時点において、処理の18時間後又は42時間後の各ウェルに添加した。
【0123】
その後、処理の24時間後又は48時間後において、1MLのDPBSを用いて細胞を3回洗浄して、取り込まれていないH-チミジンを除去した。次に、各ウェルの細胞を0.5mLの0.5NのNaOH+0.5%SDS中で溶解した。次に、可溶化液をカウントするために、1mLを含むシンチレーションチューブに溶解物を移した(3分/サンプル)。
【0124】
パイロットプレート試験の結果を以下にまとめる。
【表1】
【0125】
48時間の取り込みは24時間の取り込みよりも低く、細胞が成長を停止していたこと、又はウェルが過剰成長して脱落していることが示唆された。
【0126】
実験の次の段階では、Caki-1細胞を以下の処理物質で試験し、処理の24時間後に評価した。
・ラパマイシン:10nM,5nM,1nM
・メトトレキサート:100nm
・メトホルミン:5nm,1nm,0.5nm
・ラパマイシン+メトトレキサート:5nm+100nm,1nm+100nm
・ラパマイシン+メトホルミン:5nM+5nM,5nM+1nM,5nM+0.5nM,1nM+5nM,1nM+1nM,1nM+0.5nM
・コントロール:0.1%DMSO+培地
【0127】
処理の結果を、表2及び図1~3にまとめている。
【表2】
【0128】
ラパマイシン+メトホルミン又は、ラパマイシン+メトホルミンのいずれかの組み合わせで処理した細胞は、取り込みがラパマイシン単独よりもわずかに高い、1nM+5nMのラパマイシン+メトホルミンを明らかに除いて、個々の処理と比較してチミジン取り込みが低かった。
【0129】
結果は、ラパマイシン及びメトホルミンの組み合わせによる併用治療のための相乗効果を示す。ラパマイシン及びメトトレキサートの併用について相加性が観察された。
【0130】
フェーズ2の結果によれば、メトホルミン単独では、5nM,1nM又は0.5nMでのH-チミジンの取り込みの阻害に効果が無かったことを示した。しかしながら、ラパマイシンと組み合わせて使用する場合、メトホルミンは、ラパマイシン単独に対して約30%だけラパマイシンの阻害応答を増加させた。これは予想外のことであり、相乗効果を示す。
【0131】
乳癌ヒト細胞株
ラパマイシン、メトトレキサート及びメトホルミンの単独又は組み合わせでの様々な用量において、ヒト乳癌細胞株(MCF-7(HTB-22)細胞を曝露して、DNA合成/複製の阻害を評価した。培地中の試験物質溶媒である0.1%DMSOをコントロールとした。
【0132】
非常に低いが臨床的に関連する用量でのラパマイシンの阻害効果の可能な増強について、メトホルミンを標準用量のラパマイシンよりも低く添加することによって評価して、H-チミジン取り込みの阻害に対する効果を試験した。
【0133】
50,000細胞/ウェルの濃度で、1mLの総培地容量(DMEM+10%FES+0.01mg/mLインスリン+抗生物質)において、細胞を24ウェルプレートに継代した。次に、細胞を付着させ、処理の24時間前から培養した。次に、種々の濃度の処理物質を用いて細胞を三重に処理した。
【0134】
H-チミジン(1mCi/mL)を5μLの培地(DMEM+10%FBS+0.01mg/mLのインスリン+抗生物質)で1μCiに希釈した後、処理の18時間後に各ウェルに添加した。
【0135】
その後、処理の24時間後又は48時間後において、1MLのDPBSを用いて細胞を3回洗浄して、取り込まれていないH-チミジンを除去した。次に、各ウェルの細胞を0.5mLの0.5NのNaOH+0.5%SDS中で溶解した。次に、可溶化液をカウントするために、1mLを含むシンチレーションチューブに溶解物を移した(3分/サンプル)。
【0136】
細胞を以下の処理物質を用いて試験し、処理の24時間後に評価した。
・ラパマイシン:1nM,0.5nM,0.1nM
・メトホルミン:0.5nM,0.1nM,0.05nM
・ラパマイシン+メトホルミン:0.1nM+0.5nM,0.5nM+0.5nM,0.1nM+0.5nM,1nM+0.1nM,0.5nM+0.1nM,0.1nM+0.1nM,1nM+0.05nM,0.5nM+0.05nM,0.1nM+0.05nM
【0137】
表3及び図4~7は、結果をまとめたものである。
【表3】
【0138】
現在の使用について、臨床的に関連すると考えられるラパマイシンの標準的な治療的血清トラフ濃度は、5~20ng/mLである。メトホルミンの標準用量の治療用血清Cmaxは、1~2マイクログラム/mLではるかに高い。上記表3から分かるように、これらの試験において、ラパマイシン及びメトホルミンの両方について使用される用量は、これらの濃度より十分に低い。
【0139】
ラパマイシン及びメトホルミンの両方について、これらのより低い用量では、ラパマイシン及びメトホルミンだけの効果は用量に比例しない。
【0140】
低量のメトホルミンは、ラパマイシン単独に対して、ラパマイシン(1.0nM)の阻害効果を増強する。効果的な量のメトホルミン(0.1nM)は、1.0nM(64%対32%)及び0.5nM(65%対25%)でのラパマイシンの阻害効果を2倍以上増加させる(図5及び図6参照)。
【0141】
図4~7は、各濃度についてのH取り込みの阻害パーセントを表す棒グラフを示す。このデータは、メトホルミンに対するラパマイシンの比が低すぎる場合(例えば、5:1未満)、この組み合わせは有効性を失うことを示している(図7及び図8参照)。したがって、Hチミジン取り込み(例えば、DNA合成)の阻害パーセントは、用量には依存せず、比に依存する(表4)。
【表4】
【0142】
本発明について、様々な例示的な実施形態に言及して説明してきたが、当業者にとっては改変が可能であることは理解でき、本願は、このような改変及び本発明の精神に含まれる発明を包含するものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8