(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153520
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】懸濁組成物
(51)【国際特許分類】
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A01K 13/00 20060101ALI20221004BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20221004BHJP
A61F 13/20 20060101ALI20221004BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
A61L9/01 K
A61L9/014
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B01J20/30
A61K8/04
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A61K9/107
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A61K47/10
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A61L15/46 100
A01K13/00 M
A61F13/15 141
A61F13/20 240
A61F13/511 200
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022117238
(22)【出願日】2022-07-22
(62)【分割の表示】P 2019511479の分割
【原出願日】2017-08-11
(31)【優先権主張番号】1614458.6
(32)【優先日】2016-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】518290582
【氏名又は名称】アクドット・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】コールストン,ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】ディーク,デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ハウ,アンドリュー・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス-サンティアゴ,ホセ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】長期間にわたって懸濁状態を保つ、悪臭を抑制するために使用するククルビットウリル粒子の安定な懸濁組成物を提供する。
【解決手段】媒体中に懸濁されたククルビットウリル粒子を含む安定な懸濁組成物であって、媒体が、液体媒体、エマルション、ワックス、軟膏、ゲル、ペースト、フォームまたは液化ガスであり、好ましくは、液体媒体が極性である場合、水性または含水アルコール性であり、好ましくは、液体媒体が非極性である場合、オイル、パラフィン、長鎖アルコールまたは脂肪である、組成物とする。懸濁組成物の調製、および懸濁組成物を悪臭の発生源に施用するステップを含む、悪臭を打ち消しする方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体中に懸濁されたククルビットウリル粒子を含む安定な懸濁組成物。
【請求項2】
媒体が、液体媒体、エマルション、ワックス、軟膏、ゲル、ペースト、フォームまたは液化ガスであり、
好ましくは液体媒体が、極性または非極性であり、
好ましくは、液体媒体が極性である場合、液体媒体が、水性または含水アルコール性であり、
好ましくは、液体媒体が非極性である場合、液体媒体が、オイル、パラフィン、長鎖アルコールまたは脂肪である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
液体媒体が、水、エタノール、n-プロパノール;tert-ブタノール;2-メトキシエタノール;2-エトキシエタノール;3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール;イソプロパノール;イソブタノール(isbutanol);1,2-プロパンジオール;1,3-プロパンジオール;1,2-ブタンジオール;1,2-ペンタンジオール;1,2-ヘキサンジオール;1,2-ヘプタンジオール;1,3-ブタンジオール;1,4,-ブタンジオール;3-メチル-1,3-ブタンジオール;1,4-ブチレングリコール;2,3-ブチレングリコール;トリメチレングリコール;トリプロピレングリコール;プロピレングリコール;ジプロピレングリコール;エチレングリコール;ジエチレングリコール;ヘキシレングリコール(2-メチル-2,4-ペンタンジオール);モノおよびポリアルキレングリコールならびにこれらのエーテルおよびエステル、例えばプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル(tripopylene glycol methyl ether)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールn-ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールn-ブチルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、エチレングリコールn-ブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールn-ブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールn-ブチルエーテル;イソソルビドモノ-およびジエーテルおよびエステル、例えば、ジメチルイソソルビド;グリセリン;グリセリンカルボネート;2,3-オルトイソプロピリデングリセリン;(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メタノール;アルキルラクテート;アルキルラクタミド;アルキルカルボネート(alkyl cabonate)、PEG-4(PEG-4は、PEG-200としても公知である);PEG-8(PEG-8は、PEG-400としても公知である);PPG-14ブチルエーテル;鉱油;パラフィン、イソパラフィン、アルキルトリグリセリド等のグリセリドエステル(例えば、ココナッツ油およびヒマワリ油等);ジメチコンまたはこれらの混合物からなる群より選択される、請求項2に記載の懸濁組成物。
【請求項4】
懸濁化剤をさらに含む、請求項1から3のいずれかに記載の組成物であって、好ましくは懸濁化剤が、天然のまたは部分的に中和されたアクリル酸クロスポリマー、メタクリル酸クロスポリマー、アクリル酸-co-メタクリル酸コポリマー、アクリル酸(acry
lic acic)-co-メタクリル酸クロスコポリマー、アクリル酸および/またはメタクリル酸とアルキル(メタ)アクリレートとの架橋ポリマー、スチレン(メタ)アクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドンジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートコポリマーおよびメタクリロイルベタインアクリレートコポリマー、ビニルエーテル無水マレイン酸コポリマー;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム;疎水性ブロックおよび親水性ブロックを有するブロックおよびグラフトコポリマー;疎水性エトキシ化ポリウレタン;アラビアゴム;トラガカントゴム;アカシアゴム;キサンタンガム;ローカストビーンガム;ゲランガム;アルギネート;カラギーナン;寒天;変性セルロース、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース;微結晶セルロース;デンプンアルケニルスクシネート;デンプン;植物性繊維;ペクチン;ゼラチン;クレイ、例えば、ベントナイトおよびモンモリロナイト;ならびにこれらの混合物からなる群より選択される、組成物。
【請求項5】
液体媒体は、ククルビットウリル粒子が少なくとも約0.25μmまたは少なくとも約0.5μmの粒径を有する場合に懸濁化剤を含む、請求項2から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物の総重量を基準にして約0.01~約25重量%、特に約0.5~約10重量%、より特定すると約0.1~約5%、より特定すると約0.1~1重量%の懸濁化剤を含む、請求項4または5に記載の組成物。
【請求項7】
pHが、約2.0~約12.0、例えば約4.0~約9.0、任意選択により約5.0~約7.5である、請求項1から6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
ククルビットウリルが、CB[5]、CB[6]、CB[7]、CB[8]またはこれらの混合物から選択される、請求項1から7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
ククルビットウリル粒子が、約0.010μm~約50μm、約0.1μm~約40μm、約1μm~約20μm、約2μm~約10μm、特に約3μm~約5μmの平均直径を有する、請求項1から8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
組成物の総重量を基準にして0.1~60重量%、例えば0.1~50重量%、例えば0.1~20重量%、例えば0.1~10重量%、例えば0.1~5重量%、例えば0.2~3重量%、例えば0.5~1.5重量%のククルビットウリルを含む、請求項1から9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
組成物中のククルビットウリルの総重量を基準にして少なくとも75重量%の錯化されていないククルビットウリルを含む、請求項1から10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
a) 約2s-1のせん断速度で20℃の温度において約400~約1500mPasの間、例えば約800~約1000mPasの間の粘度;および
b) 約30s-1~約100s-1の間のせん断速度で20℃の温度において約10~約500mPasの間、例えば約50~約300mPasの間の粘度;および
c) 1000s-1より高いせん断速度で20℃の温度において約0.5~約5mPasの間、例えば約0.8~約2mPasの間の粘度
を有する、請求項1から11のいずれかに記載の懸濁組成物。
【請求項13】
懸濁液が、界面活性剤、殺生物剤、増粘剤、抗酸化剤、キレート化剤、湿潤剤、堆積剤
、抑泡剤、フレグランス、溶媒、染料、顔料、制汗剤およびコンディショニング剤からなる群より選択される1種または複数の添加剤をさらに含む、請求項1から12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
懸濁液が、4℃~50℃の温度で貯蔵されたときに、少なくとも3か月にわたって安定である、請求項1から13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
a) 液体状態の媒体にククルビットウリル粒子を加えるステップ;
b) 高せん断条件下において、媒体中にククルビットウリル粒子を懸濁させるステップを含み、
好ましくは、ステップa)が、媒体への懸濁化剤の添加をさらに含み、任意選択により懸濁化剤が、請求項4から6のいずれか一項に記載のとおりである、
請求項1から19のいずれか一項に記載の懸濁組成物の調製のための方法。
【請求項16】
悪臭の発生源に、請求項1から14のいずれか一項に記載の懸濁組成物を施用するステップを含む、悪臭を打ち消しする方法であって、
好ましくは組成物が、無生物表面に施用され、好ましくは無生物表面が、顆粒またはビーズであり、
好ましくは組成物が、スプレーによって施用され、
好ましくは悪臭の発生源が、人間もしくは動物の汗、便もしくは尿;濡れたペット;カビ;食品またはこれらの組合せから選択され、
好ましくは組成物が、消費者製品中に含有され、好ましくは消費者製品が、スプレー装置(例えば、フィンガースプレー)または(例えば、ベンチュリノズルまたは圧電式ノズルを使用する)噴霧器から選択される装置である、
方法。
【請求項17】
悪臭を打ち消しするための、請求項1から14のいずれか一項に記載の懸濁組成物の使用。
【請求項18】
悪臭が、窒素含有分子、硫黄含有分子または酸素含有分子である、請求項16または17に記載の方法または使用。
【請求項19】
懸濁組成物が、消費者製品中に含有され、好ましくは消費者製品が、スプレー装置(例えば、フィンガースプレー)または(例えば、ベンチュリノズルまたは圧電式ノズルを使用する)噴霧器から選択される装置である、請求項17または18に記載の使用。
【請求項20】
媒体中にククルビットウリル粒子を含む組成物をかき混ぜて、請求項1から14のいずれか一項に記載の懸濁組成物を得るステップを含む、組成物を再懸濁させる方法であって、これにより、あらゆる粒子沈降物をかき混ぜによって再懸濁させ、好ましくはかき混ぜが、機械による撹拌、手動の撹拌、機械による振とう、手動の振とうまたは加熱によるものである、方法。
【請求項21】
好ましくは、ペットケア用製品、トイレクリーナー、織物ケア用製品、洗剤、クレンジング用組成物、シャンプー、柔軟剤、柔軟剤シート、コンディショナー、リフレッシャー、エアフレッシュナー、脱臭用組成物、個人用脱臭剤、制汗剤、化粧品、ファインフレグランス、ボディミスト、キャンドル、ハードサーフェスクリーナー、クレンジングワイプまたはモップ、石けん、スタイリング用ゲル、吸湿剤、空気清浄化装置、仕上げ加工用製品、おむつまたはサニタリー製品、例えば、尿漏れ防止パッド、女性用生理用品、生理用ナプキン、靴底、義歯洗浄容器および創傷用被覆材、ならびにペットリターおよびケミカルトイレから選択される、請求項1から14のいずれか一項に記載の懸濁組成物を含む消
費者製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ククルビットウリルを含む安定な懸濁組成物に関する。より特定すると、本発明は、悪臭の打ち消しにおける使用のための、媒体中に懸濁されたククルビットウリル粒子を含む安定な懸濁組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
悪臭は、しばしば、多様な化学的性質およびにおいを有する異なる分子の複雑な混合物である。悪臭のにおいは刺激が強いものであり得、わずかな量のこのような分子でさえ、不快な印象を消費者に与える可能性がある。したがって、数多くの戦略が、悪臭を打ち消しするために提案されてきた。予防の方法は、生物静力学的作用物質(biostatic agent)である殺生物剤を施用すること、または細菌が増殖する場所の微気候条件を制御することによって、悪臭の発生の原因となる細菌を殺滅し、またはこの細菌の成長を阻害することを含む。これらの方法は例えば、人間またはペットの身体の腋窩または他の部分に使用される。除去の方法は、悪臭に結合し、悪臭を中和する、化学反応性が高い分子を使用することを包み、酸化(燃焼)およびイオン化は、除去の方法に属する。これらの方法のすべてに関する欠点は、化学的または生物学的に不活性ではないまたは環境に対して中立的ではない作用物質を含むことである。特に、殺生物剤および反応性が高い化学物質の使用は、衛生的な懸念を寄せられやすい。イオン化および燃焼の副生成物は、有毒で望ましくないものでもあり得る。
【0003】
代替的には、香水および香料は、消費者による悪臭の知覚が低減されるように、悪臭をマスキングし、または悪臭と組み合わせるために、使用されることが可能である。しかしながら、複雑な悪臭は、関与するにおいの多様性を理由にして、このような官能的方法の使用によって軽減することが困難である。
【0004】
上記予防の方法の代替的な方法は、抑制方法を含む。悪臭抑制方法は、吸収剤および吸着剤材料の使用を包む。これらの材料は、環境への負荷が少ないものであり得るが、大抵の場合、著しい臭気を有さない。悪臭分子は、これらの材料の細孔内に捕捉され、したがって、当該悪臭分子の蒸気圧が下げられる。しかしながら、これらの材料は、一般に、悪臭に対して選択的ではなく、望ましいフレグランス分子も拘束し得る。さらに、湿り気のある条件下、例えば50%超の相対湿度下に存在する水蒸気等の水蒸気は悪臭を追い出し得、次いで悪臭は大気中に再び放出される。
【0005】
ホスト分子は、各分子が、ある分布の細孔ではなく輪郭がはっきりした空洞を有することを特徴とする、特殊な種類の吸収剤材料である。ホスト-ゲスト錯体は、香料の分野において、悪臭打ち消しのために使用されてきた。例えば、US5942217は、悪臭を中和するための、より一般的に言えば環状オリゴ糖と呼ばれるシクロデキストリンの水溶液の使用を記述している。シクロデキストリンの空洞内への悪臭分子の吸収は、悪臭の効率的な軽減をもたらす。
【0006】
悪臭と香水との両方の知覚へのシクロデキストリンの作用は、系中における水の活性に強く依存する。この作用は、シクロデキストリンの空洞内への水、フレグランスおよび悪臭の包接を伴う、複雑な平衡を反映する。したがって、見かけのホスト-ゲスト結合定数は、フレグランスと悪臭との両方の場合で、系中における水の濃度に応じて変化し得る。このような本質的に非平衡の効果の不十分な予測可能性は、調香師にとっては、困難が何度も繰り返す原因である。フレグランスおよび悪臭に対するシクロデキストリンの結合および放出の不十分な選択性は、欠点である。この効果は、望ましい臭気の制御放出との関
連においては有益であり得るが、放出されたゲスト分子が悪臭である場合には、非常に不満足なものになる。
【0007】
シクロデキストリンの別の欠点は、これらの炭水化物由来材料が、低い水のレベルにおいて、または水分活性の低下によって、ねばついたものになりやすいことである。これは、例えば、望ましくない「ねばついた」感じを皮膚上にもたらすことがある。最後に、炭水化物水溶液の場合には通常の事柄であるように、シクロデキストリン水溶液は、著しい量の保存料を使用して微生物の侵入から守られなければならない。
【0008】
シクロデキストリンに伴われる欠点を鑑みると、これらの課題を克服する代替的なホスト-ゲスト系が望ましい。US6869466において、気体または揮発性分子をククルビットウリルに結合させて、包接錯体を形成するための方法、ならびに、結合した気体または揮発性化合物の少なくとも一部を放出するためのステップが、記述されている。悪臭化合物の捕捉は、用途の一例として言及される。
【0009】
しかしながら、ククルビットウリルの可溶化に伴われる困難が存在しており、これらの困難は、従来技術において公知である。例えば、US6869466は、水溶液中へのククルビットウリルの可溶度を増大させるための、可溶化剤の使用を記述している。適切な可溶化剤は、金属塩、アンモニウム塩、酸およびポリヒドロキシル化有機化合物を含むものとして、記述されている。
【0010】
WO2014/077642は、バッファー中に可溶化されたククルビット[7]ウリルを含む組成物および臭気除去における当該組成物の使用を記述している。臭気がククルビットウリルによって錯化される、ある証拠が提供されている。
【0011】
ククルビットウリルホスト-ゲスト錯体は、シクロデキストリン錯体に伴われる欠点の多くを克服するが、改善された臭気の制御をもたらす配合物に取り込まれたククルビットウリルの必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、概して、媒体中のククルビットウリル粒子の懸濁液を提供する。本組成物は悪臭を打ち消しするために使用されることが可能であり、可溶化されたククルビットウリルに比較してより良好な悪臭の捕集をもたらすことが見出された。本組成物は安定であり、ククルビットウリル粒子は、長期間の時間にわたって懸濁状態のままになる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様において、媒体中に懸濁されたククルビットウリル粒子を含む、悪臭を打ち消しするための安定な懸濁組成物が、提供される。
一実施形態において、媒体は、液体媒体、エマルション、ワックス、軟膏、ゲル、ペースト、フォームまたは液化ガスである。
【0014】
特定の実施形態において、媒体は、液体媒体である。液体媒体は、極性であってもよいし、または非極性であってもよい。極性の液体媒体の例は、水性および含水アルコール性のものを含む。非極性の液体媒体は、オイル、パラフィン、長鎖アルコールおよび脂肪を含む。
【0015】
一実施形態において、本組成物は、懸濁化剤をさらに含む。懸濁化剤は、媒体自体がククルビットウリル粒子を懸濁させることができない場合に必要とされ得る。液体媒体に関しては、懸濁化剤が、少なくとも約0.25μmまたは少なくとも約0.5μmの粒径を
有するククルビットウリル粒子を有する組成物のために必要とされ得る。
【0016】
懸濁化剤が存在する場合、本発明の組成物は、本組成物の総重量を基準にして約0.01~約25重量%、特に約0.1~約10重量%、より特定すると約0.5~約5重量%の懸濁化剤を含んでもよい。
【0017】
一実施形態において、本組成物は、CB[7]を含む。別の実施形態において、本組成物は、CB[6]を含む。特定の実施形態において、本組成物は、異なるサイズのククルビットウリルの混合物を含む。例えば、一実施形態において、本組成物は、CB[6]およびCB[7]を含む。別の実施形態において、本組成物は、CB[6]、CB[7]およびCB[8]を含む。別の実施形態において、本組成物は、CB[5]、CB[6]、CB[7]およびCB[8]を含む。
【0018】
ククルビットウリルは、CB[5]、CB[6]、CB[7]およびCB[8]から選択される少なくとも2種の異なるサイズのククルビットウリルの混合物として本組成物中に存在してもよい。ククルビットウリルがククルビット[n]ウリルと呼ばれる場合、本組成物は、異なるサイズのククルビット[n]ウリルの混合物を含み、式中、nが、4~20の整数である。
【0019】
一実施形態において、ククルビットウリル粒子は、約0.010μm~約50μm、約0.1μm~約40μm、約1μm~約20μm、約2μm~約10μm、より特定すると約3μm~約5μmの粒径を有する。
【0020】
一実施形態において、本組成物中のククルビットウリルの大部分は、錯化されていない。
本発明の第2の態様において、
a) 液体状態の媒体にククルビットウリル粒子を加えるステップ;および
b) 高せん断条件下において、媒体中にククルビットウリル粒子を懸濁させるステップを含む、本発明の第1の態様による懸濁組成物の調製のための方法が、提供される。
【0021】
ステップa)は、媒体への懸濁化剤の添加をさらに含んでもよく、懸濁化剤は、本明細書において後述のとおりであってよい。
本発明の第3の態様において、悪臭の発生源に、本発明の第1の態様の懸濁組成物を施用するステップを含む、悪臭を打ち消しするための方法が、提供される。
【0022】
本発明の第4の態様において、悪臭を打ち消しするための、本発明の第1の態様の懸濁組成物の使用が、提供される。
本発明の第5の態様において、媒体中にククルビットウリル粒子を含む組成物をかき混ぜて、本発明の第1の態様の懸濁組成物を得るステップを含む、組成物を再懸濁させる方法であって、これにより、沈積している可能性があるあらゆる粒子をかき混ぜによって再懸濁させる、方法が提供される。
【0023】
本発明の第6の態様において、本発明の第1の態様の懸濁組成物を含む、消費者製品が、提供される。
本発明に関する上記および他の態様および実施形態は、下記においてさらに詳細に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】光学顕微鏡法によって得られた、懸濁化剤としてポリアクリル酸を含有する水中に懸濁されたCB[n]粒子の顕微鏡写真を示す、図である。顕微鏡写真の目盛りとの比較は、CB[n]粒子の粒径が約3~5マイクロメートルであることを示している。
【
図2】せん断速度に応じた、水中のCB[n]/ポリアクリル酸懸濁液のせん断速度およびせん断応力を示す、図である。
【
図3】水中のCB[n]/ポリアクリル酸懸濁液に関する、1Hzにおけるせん断ひずみに応じた貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)を示す、図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明者らは、様々な媒体中のククルビットウリルの安定な懸濁液が、ククルビットウリルが可溶化される従来技術による配合物に比較して改善された悪臭打ち消し特性をもたらすことを見出した。いかなる特定の理論にも拘束されることは望まないが、バッファー等の可溶化剤中へのククルビットウリルの可溶化は、例えば塩による錯体の形成を起こすと考えられており、これは、悪臭との結合のために利用することが可能な錯化されていないククルビットウリルの数が少なくなることを意味する。本発明の組成物は、存在する場合、懸濁化剤が、ククルビットウリルの空洞に干渉せず、ククルビットウリルが錯化されていない状態のままになり、したがって、分子、例えば悪臭分子との錯化のためにフリーになっているという、驚くべき利点を有する。
【0026】
特に、ある分布の空洞サイズを有するククルビットウリル化合物を含む懸濁液は、2種以上の悪臭成分からなる悪臭を抑制することに関しては、これらの成分が低分子量を有し、揮発性であり、または特に刺激が強いにおいを有する場合でさえ、特に効率的である。ククルビットウリル
本発明は、悪臭分子との錯体を形成するための、ククルビットウリルの使用を提供する。
【0027】
ククルビットウリルは、キャビタンドファミリーのメンバーであり、ククルビットウリルの一般構造は、メチレン橋かけによって連結されたグリコルリルサブユニットの環状配置を主体とする。
【0028】
ククルビットウリル化合物の調製および精製は、当技術分野において十分に記述されている。例えば、Lagonaらは、ククルビットウリルファミリーの誘導体、アナログおよびコンジェナーを含めて、ククルビットウリル化合物の合成および特性を批評している。
【0029】
例えば、ククルビット[8]ウリル(CB[8];CAS259886-51-6)は、8個の繰返しグリコルリル単位および479A3の内部空洞容積を有する、バレル形のコンテナ分子である(下記の構造を参照されたい)。CB[8]は、標準的な技法を使用して容易に合成されるし、市販されてもいる(例えば、Sigma-Aldrich、MO USA)。
【0030】
【0031】
一実施形態において、ククルビットウリルは、CB[5]、CB[6]、CB[7]、
CB[8]、CB[9]、CB[10]、CB[11]、CB[12]、CB[13]またはCB[14]化合物である。
一実施形態において、ククルビットウリルは、CB[5]、CB[6]、CB[7]、CB[8]、CB[9]、CB[10]、CB[11]またはCB[12]化合物である。一実施形態において、ククルビットウリルは、CB[5]、CB[6]、CB[7]またはCB[8]化合物である。
一実施形態において、ククルビットウリルは、CB[6]化合物である。
一実施形態において、ククルビットウリルは、CB[7]化合物である。
一実施形態において、ククルビットウリルは、CB[8]化合物である。
【0032】
本発明の組成物は、単一のククルビットウリルアナログを含んでもよいし、または代替的には、CB[5]、CB[6]、CB[7]、CB[8]、CB[9]、CB[10]、CB[11]、CB[12]、CB[13]およびCB[14]からなる群より選択される2種以上の異なるサイズのククルビットウリルを含んでもよい。2種以上の異なるククルビットウリルの混合物は、CB[n]として規定される。
【0033】
一実施形態において、ククルビットウリルは、CB[n]混合物である。
CB[5]がククルビットウリル混合物中に存在する場合、CB[5]の濃度は、本組成物中のククルビットウリルの総重量を基準にして約0.1~約99重量%、より特定すると約0.5~約75重量%、より特定すると約1~約50重量%、より特定すると約2~約30重量%、より特定すると約5~約25重量%、より特定すると約10~約20重量%であってよい。
【0034】
CB[6]がククルビットウリル混合物中に存在する場合、CB[6]の濃度は、本組成物中のククルビットウリルの総重量を基準にして約0.1~約99重量%、より特定すると約1~約75重量%、より特定すると約5~約60重量%、より特定すると約20~約55重量%、より特定すると約35重量%~約55重量%であってよい。
【0035】
CB[7]がククルビットウリル混合物中に存在する場合、CB[7]の濃度は、本組成物中のククルビットウリルの総重量を基準にして約0.1~99重量%、より特定すると約5~約75重量%、より特定すると約10~約60重量%、より特定すると約20重量%~約45重量%であってよい。一実施形態において、CB[7]の濃度は、本組成物中のククルビットウリルの総重量を基準にして45重量%未満である。
【0036】
CB[8]がククルビットウリル混合物中に存在する場合、CB[8]の濃度は、本組成物中のククルビットウリルの総重量を基準にして約0.1~99重量%、より特定すると約0,5~約75重量%、より特定すると約1~約30重量%、より特定すると約5~約25重量%、より特定すると約10~約20重量%であってよい。
【0037】
本発明の組成物がCB[5]、CB[6]、CB[7]およびCB[8]から選択される少なくとも2種の異なるククルビットウリルを含む場合、CB[5]、CB[6]、CB[7]および/またはCB[8]の総濃度は、本組成物中のククルビットウリルの総重量に対して75重量%超、より特定すると約90重量%超、より特定すると約99重量%超であってよい。ククルビットウリル混合物の残りの成分は、単一のサイズのククルビットウリルまたはこれらのサイズの混合物として、CB[4]、CB[9]および/またはより高級のククルビットウリル(すなわち、CB[10]~CB[20])を含有してもよい。
【0038】
特定の実施形態において、ククルビットウリル混合物は、本組成物中のククルビットウリルの総重量を基準にして12~17重量%の間のCB[5];45~50重量%の間の
CB[6];22~27重量%の間のCB[7];12~17重量%の間のCB[8];ならびに1重量%未満のCB[9]およびより高級のククルビットウリルを含む。
【0039】
上記ククルビットウリルの重量%は、本組成物中における(すべてのサイズの)ククルビットウリルの総重量を基準にしている。
本発明の他の態様において、ククルビットウリル誘導体が提供され、本明細書において記述された方法に使用される。ククルビットウリルの誘導体は、1個、2個、3個または4個以上の置換グリコルリル単位を有する構造である。置換ククルビットウリル化合物は、下記の構造
【0040】
【0041】
(式中、
nが、4~20の間の整数であり;
各グリコルリル単位に関しては、
各Xが、O、SまたはNR3であり、
-R1および-R2がそれぞれ、-Hならびに次の任意選択的に置換される基、すなわち、-R3、-OH、-OR3、-COOH、-COOR3、-NH2、-NHR3および-N(R3)2から独立に選択され、ここで、-R3が、C1~20アルキル、C6~20カルボアリールおよびC5~20ヘテロアリールから独立に選択され、またはここで、-R1および/もしくは-R2が、-N(R3)2であり、両方の-R3が一緒になって、C5~7複素環を形成し;または、一緒になった-R1と-R2が、ウラシル骨格と一緒になってC6~8炭素環を形成するC4~6アルキレンである。)
によって表されることが可能である。
【0042】
一実施形態において、グリコルリル単位のうちの1個は、置換グリコルリル単位である。したがって、-R1および-R2はそれぞれ独立に、n-1個のグリコルリル単位に関しては、-Hである。
【0043】
一実施形態において、nは、5、6、7、8、9、10、11または12である。
一実施形態において、nは、5、6、7または8である。
一実施形態において、各Xは、Oである。
一実施形態において、各Xは、Sである。
【0044】
一実施形態において、R1およびR2はそれぞれ、独立にHである。
一実施形態において、各単位に関しては、R1およびR2のうちの一方は、Hであり、他方は、-Hならびに次の任意選択的に置換される基、すなわち、-R3、-OH、-OR3、-COOH、-COOR3、-NH2、-NHR3および-N(R3)2から独立に選択される。一実施形態において、1個の単位に関しては、R1およびR2のうちの一方は、Hであり、他方は、-Hならびに次の任意選択的に置換される基、すなわち、-R3、-OH、-OR3、-COOH、-COOR3、-NH2、-NHR3および-N(R3)2から独立に選択される。この実施形態において、残りのグリコルリル単位は、R1およびR2がそれぞれ独立にHであるようなグリコルリル単位である。
【0045】
好ましくは-R3は、C1~20アルキル、最も好ましくはC1~6アルキルである。C1~20アルキル基は、直鎖状であってもよいし、および/または飽和していてもよい。各-R3基は、独立に無置換であってもよいし、または置換されていてもよい。好ましい置換基は、-R4、-OH、-OR4、-SH、-SR4、-COOH、-COOR4、-NH2、-NHR4および-N(R4)2から選択され、式中、-R4が、C1~20アルキル、C6~20カルボアリールおよびC5~20ヘテロアリールから選択される。置換基は、-COOHおよび-COOR4から独立に選択されてもよい。
【0046】
一部の実施形態において、-R4は、-R3と同じではない。一部の実施形態において、-R4は、好ましくは、無置換である。
-R1および/または-R2が-OR3、-NHR3または-N(R3)2である場合、-R3は、好ましくは、C1~6アルキルである。一部の実施形態において、-R3は、置換基-OR4、-NHR4または-N(R4)2によって置換されている。各-R4は、C1~6アルキルであり、各-R4自体は、好ましくは置換されている。
【0047】
一実施形態において、ククルビットウリル化合物への言及は、ククルビットウリル化合物の変種および誘導体への言及である。本発明のククルビットウリルは、天然の形態であってもよいし、または懸濁可能な度合いを改善するために、より一般的に言えば、配合および取扱いを改善するために、上記のように改質されてもよい。
錯体
本明細書において記載された組成物は、悪臭(maodour)吸収するのに有効な量の錯化されていない遊離のククルビットウリルを含む。ククルビットウリル(cucuribturil)は、単一のサイズのククルビットウリルまたは異なるサイズのククルビットウリルの混合物として存在してもよい。一実施形態において、本組成物中のククルビットウリルの大部分は、錯化されておらず、すなわち、本組成物中のククルビットウリルは、ゲスト分子を実質的に不含であり、これは、本組成物中におけるククルビットウリルの総重量を基準にして75重量%超、より特定すると90重量%超、さらにより特定すると95重量%超のククルビットウリルが、ゲスト分子を不含であり、すなわち、錯化されていないことを意味する。一実施形態において、本組成物中におけるククルビットウリルの総重量を基準にして少なくとも99%のククルビットウリルは、ゲスト分子を不含である。これは、ククルビットウリルが可溶化されており、錯化されていないククルビットウリルの量が75重量%よりはるかに低い、従来技術による配合物を上回る利点を提供する。本発明の組成物が悪臭分子と接触すると、ククルビットウリルは、悪臭の抑制を起こす悪臭-ククルビットウリル錯体を形成する。
【0048】
ククルビットウリルとの錯体を形成するとき、悪臭分子は、ククルビットウリル基質に物理的に結合される。「物理的に結合される」、「物理的な結合」および「物理的な連結」という用語は、ファンデルワールス力および他の種類の物理的な結合による結合を含む。この点について、水素結合も、物理的な結合として考えられる。悪臭との強固な物理的な結合を確立することが可能な系は、共有(化学)結合に基づく系を上回るかなりの利点を有する。
【0049】
特に、物理的な結合は、多数の化学的な構造および機能を有する多数の悪臭との錯体の形成を可能にする。反応性基を有さない悪臭分子でさえも、ククルビットウリルに物理的に結合することができる。
【0050】
ククルビットウリル-悪臭錯体は、二元または三元錯体であってもよい。したがって、ククルビットウリルは、当該ククルビットウリルの空洞内に、1個(二元)または2個の(三元)ゲスト悪臭分子を保持してもよい。ククルビットウリルが2個の悪臭分子を保持
する場合、悪臭分子は、同じであってもよいし、または異なっていてもよい。2個の悪臭分子のホストとなることが可能なククルビットウリルは、単一の悪臭との安定な二元錯体を形成することも可能である。ゲスト-ホスト三元錯体の形成は、中間体としての二元錯体を経由して進行すると考えられる。
【0051】
一実施形態において、ククルビットウリルは、三元錯体を形成することが可能である。例えば、CB[8]は、三元錯体を形成することが可能である。
一実施形態において、ククルビットウリルは、二元錯体を形成することが可能である。CB[8]は、二元錯体を形成することもできる。
【0052】
一実施形態において、ククルビットウリルは、三元および二元錯体を形成することが可能である。例えば、CB[8]は、ゲストの性質に応じて、三元または二元錯体を形成することが可能である。
【0053】
悪臭MとククルビットウリルCB[x]との二元錯体(式中、xが、整数である。)に関する結合定数Kは、質量作用に関するルシャトリエの原理に従って、
M+CB[x]⇔MCB[x]
K=[MCB[x]]/([M]*[CB[x]])]
(式中、角括弧が、mol/Lとして種の濃度を表す)
として規定される。
【0054】
本出願人は、悪臭打ち消し系として機能するために、悪臭-ククルビットウリル錯体が、好ましくは100M-1より大きい結合定数を有さなければならないことを確立した。一実施形態において、結合定数は、少なくとも1000M-1である。
【0055】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、フレグランス分子によって錯化されたククルビットウリルを含む。本組成物が悪臭の発生源に晒されると、ククルビットウリルによる悪臭の錯化は、フレグランス分子の放出を誘起する。したがって、一実施形態において、媒体中に懸濁されたククルビットウリル-フレグランス錯体の粒子を含むプロフレグランス懸濁組成物が、提供される。適切なフレグランス分子は、参照により本明細書に組み込まれるGB1602664.3において記述されている。
悪臭
「悪臭」という用語は、日常生活において頻繁に遭遇し、種々の起源を有する、不快な臭気を指す。一般的な悪臭は、制御されていない工業的な活動から出る臭気、発汗および排出等の人間およびペットの身体から出る臭気、キッチンおよび食品加工から出る臭気、タバコの煙から出る臭気ならびにカビから出る臭気を含む。人間にとって最も煩わしい悪臭のうちのいくつかは、人間もしくは動物の汗、便および尿;濡れたペット;ならびに食品および調理の臭気、特にニンニク、キャベツ、魚およびタマネギ等である。悪臭は、消費者製品、例えば石けん、洗剤、シャンプーおよびコンディショナーの中に存在する脂肪酸および脂肪酸誘導体から出ることもある。特に望ましくない悪臭の他の例は、脱毛クリーム、染毛剤および縮毛矯正剤(硫黄化合物)によって生成される悪臭である。これらの悪臭のすべてが、特に刺激が強いものである。
【0056】
ククルビットウリルは、多種多様な悪臭分子を打ち消しするために使用されることが可能である。
本発明との関連において、「悪臭打ち消し作用」または「悪臭打ち消し」という用語は、「悪臭抑制」、「悪臭軽減」または「悪臭中和」に等価なものとして考えられる。この結果は、悪臭の発生源に晒された任意の人物による、悪臭知覚の強度の著しい低下である。臭気の強度は一般に、ラベルドマグニチュードスケール(LMS:Labelled Magnitude Scale)の使用によって測定され、ラベルドマグニチュードス
ケールに関する規定は、Green BG、Shaffer GSおよびGilmore
MM 1993、Derivation and evaluation of a semantic scale of oral sensation magnitude with apparent ratio properties、Chemical Senses.18(6):683~702において見出され得る。臭気に関しては、上記スケールは、かろうじて感知可能、弱い、中等度、強い、非常に強いおよび考えられる限りで最も強いという、強度属性を包摂する。本発明との関連において、「著しい低下」は、悪臭の強度属性が、ククルビットウリルの施用後に、弱いまたはかろうじて感知可能であることを意味する。
【0057】
代替的には、例えば0(知覚される強度なし)から10(知覚される最も高い強度)にわたる、線形尺度が使用されてもよい。
臭気強度の点数は、好ましくは、数人からなるパネルによって得られる。
【0058】
一実施形態において、打ち消しすべき悪臭は、1種より多い悪臭成分を含む複雑な悪臭である。
一実施形態において、複雑な悪臭は、多様な化学的な機能を有する悪臭成分を含む。
【0059】
82Å3の空洞容積を有するCB[5]は好ましくは、アセチレン、硫化水素および二硫化炭素等の小さな気体状の悪臭を拘束する。
O-、N-およびS-ヘテロ原子を含むより大きな悪臭分子は好ましくは、より大きなククルビットウリル(例えば、CB[7]およびCB[8])に結合する。
【0060】
一実施形態において、悪臭分子は、窒素含有分子、硫黄含有分子または酸素含有分子である。
悪臭は、限定されるわけではないが、
窒素含有分子および硫黄含有分子、例えばアリルアミン;メチルアミン;エチルアミン;シクロブチルアミン(シクロブタンアミン、尿様)、シクロペンチルアミン(シクロペンタンアミン);シクロヘキシルアミン(シクロヘキサンアミン);シクロヘプチルアミン(シクロブタンアミン);イソプロピルアミン;ブチルアミン;ジブチルアミン(N-ブチル-1-ブタンアミン);ジメチルエタノールアミン(2-(ジメチルアミノ)エタノール);メチルエタノールアミン(2-(メチルアミノ)エタノール);ジエチルエタノールアミン(2-(ジエチルアミノ)エタノール);ジエチルアミン(N-メチルエタンアミン、魚様);ジプロピルアミン(N-プロピル-1-プロパンアミン);ジイソプロピルアミン(N-イソプロピル-2-プロパンアミン);ジメチルアセトアミド(N,N-ジメチルアセトアミド);エチルメチルアミン(N-メチルエタンアミン);エチルプロピルアミン(N-エチルプロパンアミド);トリメチルアミン(魚様);トリエチルアミン(魚様);エチレンジアミン(1,2-エタンジアミン、かび臭いアンモニア様);プロピレンジアミン(1,3-プロパンジアミン);テトラメチレンジアミン(1,4-ブタンジアミン、プトレシン、腐敗様);エチレンイミン(アジリジン、アンモニア様);モルホリン(魚様);エチルモルホリン(4-エチルモルホリン、酸味のある感じ);ピロリジン(精液様);メチルエチルピリジン(2-エチル-3-メチルピリジン);ピリジン(焼けたような感じ、吐き気を催すような感じ);ビニルピリジン(4-ビニルピリジン(4-vinylpyridie)、吐き気を催すような感じ);スカトール(3-メチルインドール、便様);インドール(便様);カダベリン(ペンタン-1,5-ジアミン、ひどい腐敗臭);硫化水素(腐った卵様);アリルジスルフィド(3-(アリルジスルファニル)-1-プロペン、ニンニク様);エチルイソチオシアネート(イソチオシアナトエタン;刺激が強い、マスタード様、ニンニク様);アリルイソチオシアネート(Ally isothiocyanate)(3-イソチオシアナトプロパ-1-エン、硫黄様);アリルメルカプタン(2-プロペン-1-チオール、ニンニク様、硫黄様)
;アリルスルフィド(3-(アリルスルファニル)-1-プロペン;硫黄様);ジアリルスルフィド(3-(アリルスルファニル)-1-プロペン;硫黄様);ジメチルジスルフィド((メチルスルファニル)エタン、不快なニンニク様);ジメチルトリスルフィド(ジメチルトリスルファン、腐敗様);ジエチルスルフィド((エチルスルファニル)エタン、硫黄様);ブチルスルフィド(1-(ブチルスルファニル)ブタン、ニンニク様、すみれ色);ジエチルトリスルフィド(ジエチルトリスルファン、腐敗様、ニンニク様);エチルメチルジスルフィド((メチルスルファニル)エタン、硫黄様);フェニルスルフィド(1,1’-スルファンジイルジベンゼン、硫黄様);エチルメルカプタン(1-エタンチオール、硫黄様);アミルメルカプタン(1-ペンタンチオール);イソアミルメルカプタン(3-メチルブタン-1-チオール;硫黄様、タマネギ様);ブチルメルカプタン(1-ブタンチオール、スカンク様);イソブチルメルカプタン(2-メチルプロパン-1-チオール、硫黄様、マスタード様);ドデシルメルカプタン(1-ドデカンチオール);二硫化炭素(メタンジチオン、不愉快な感じ、ほのかに甘い感じ);ジメチルトリチオカルボネート(ジメチルカルボノトリチオエート);チオフェノールメルカプタン;
酸素含有5員環分子、例えばソトロン;ノルソトロン(nor-Sotolone);
酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ吉草酸、n-吉草酸、2-メチル-酪酸、3-メチル-2-ヘキセン酸および3-メチル-3-ヒドロキシヘキサン酸等の飽和および不飽和アルキルおよびヒドロキシアルキルカルボン酸から選択され得る。
懸濁媒体
本発明の組成物は、媒体中に懸濁されたククルビットウリル粒子を含む。
【0061】
懸濁媒体は、液体媒体、エマルション、ワックス、軟膏、ゲル、ペースト、フォームまたは液化ガスからなる群より選択されてもよい。
一実施形態において、媒体は、液体媒体である。液体媒体は、極性(例えば、水性もしくは含水アルコール性)であってもよいし、または非極性であってもよい(例えば、オイル、パラフィン、長鎖アルコールまたは脂肪)。
【0062】
特に、液体媒体は、水、エタノール、n-プロパノール;tert-ブタノール;2-メトキシエタノール;2-エトキシエタノール;3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール;イソプロパノール;イソブタノール(isbutanol);1,2-プロパンジオール;1,3-プロパンジオール;1,2-ブタンジオール;1,2-ペンタンジオール;1,2-ヘキサンジオール;1,2-ヘプタンジオール;1,3-ブタンジオール;1,4,-ブタンジオール;3-メチル-1,3-ブタンジオール;1,4-ブチレングリコール;2,3-ブチレングリコール;トリメチレングリコール;トリプロピレングリコール;プロピレングリコール;ジプロピレングリコール;エチレングリコール;ジエチレングリコール;ヘキシレングリコール(2-メチル-2,4-ペンタンジオール);モノおよびポリアルキレングリコールならびにこれらのエーテルおよびエステル、例えばプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル(tripopylene glycol methyl ether)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールn-ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールn-ブチルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、エチレングリコールn-ブチルエーテルアセテート、トリエ
チレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールn-ブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールn-ブチルエーテル;ジメチルイソソルビド等のイソソルビドモノ-およびジエーテルおよびエステル;グリセリン;グリセリンカルボネート;2,3-オルトイソプロピリデングリセリン;(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メタノール;アルキルラクテート;アルキルラクタミド;アルキルカルボネート(alkyl cabonate)、PEG-4(PEG-4は、PEG-200としても公知である);PEG-8(PEG-8は、PEG-400としても公知である);PPG-14ブチルエーテル;合成由来のもしくは植物由来の炭化水素;鉱油;パラフィン、イソパラフィン、アルキルトリグリセリド等のグリセリドエステル(例えば、ココナッツ油およびヒマワリ油等);シリコーン(例えば、ジメチコン等)またはこれらの混合物からなる群より選択されてもよい。
【0063】
一実施形態において、液体媒体は、水、エタノール、メタノール、イソプロパノールまたはこれらの混合物から選択される。一実施形態において、液体媒体は、水である。
一実施形態において、媒体は、エマルション、ナノエマルション、マイクロエマルションまたはフォームである。エマルションまたはナノエマルションは、水中油型エマルション、油中水型エマルションまたは多重エマルションであってよい。マイクロエマルションは、水中油型エマルション、油中水型エマルションまたは共連続マイクロエマルションであってよい。
【0064】
媒体がエマルションまたはマイクロエマルションである場合、ククルビットウリル粒子は、混和しない液相の片方または両方の中に配置されることもあり得るし、または水/オイル界面に吸着されることもあり得る。しばしば、界面活性剤が、エマルションを安定化するために必要とされる。適切な界面活性剤は、当業者に公知である。存在する場合、界面活性剤は、構造化されてもよい相をエマルション中に形成する。例えば、界面活性剤は、液晶相、ラメラ相、立方体状の相、六角形の相、リポソームおよびベシクル等を形成し得る。このような界面活性剤相は、室温より高い融点を有し得る。
【0065】
媒体がフォームである場合、ククルビットウリル粒子は、液体連続相の中に配置されることもあり得るし、または液体/空気界面に吸着されることもあり得る。
一実施形態において、媒体は、ワックスである。ワックスは、合成由来のまたは天然由来のハードワックス、ソフトワックスまたは脂肪であってよい。ワックスは、蜜蝋、カンデリラワックス、カルナウバワックス、微結晶性ワックス、オゾケライトワックス、パラフィンワックス、セレシンワックス、大豆ワックス等の炭化水素または脂肪酸のエステルからなり得る。ククルビットウリル粒子は、ワックスの融点より高い温度において、ワックス中に添加および懸濁され、次いで、溶融したワックスが室温に冷却される。
【0066】
別の実施形態において、媒体は、軟膏である。軟膏は、軟膏基剤を含む。軟膏基剤は、炭化水素基剤、吸収基剤、水溶性基剤、乳化基剤または植物油からなる群より選択されてもよい。
【0067】
さらに別の実施形態において、媒体は、直鎖状もしくは架橋アクリル酸コポリマー、直鎖状もしくは架橋メタクリル酸コポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキシアルキレン、ポリ(エチレンオキシド-b-プロピレンオキシド)、ポリ(オキシエチレン-b-ジメチルシロキサン)コポリマーおよびポリ(オキシエチレン-graft-ジメチルシロキサン)コポリマー等のブロックコポリマー、疎水性エトキシ化ポリウレタン、ポリエーテル尿素ポリウレタン、ポリエーテルポリオール、デンプン、水溶性多糖もしくは変性多糖、例えば変性デンプン、ゴム、アルギネート、クレイおよびペクチン等、変性セルロース、ゼラチンまたはこれらの混合物等のレオロジー調整剤を使
用して製造された、ゲルまたはペーストである。
【0068】
さらに別の実施形態において、媒体は、メタン、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブテン、n-ペンタン、イソペンタン、ジメチルエーテル、メチルエーテル、Dymel噴射剤(Dymel propellant)またはこれらの混合物等の液化ガスである。
【0069】
媒体は、媒体中へのククルビットウリル粒子の懸濁を促進して、懸濁液を形成するための、懸濁化剤を含んでもよい。懸濁化剤は、媒体自体がククルビットウリル粒子を懸濁させることができない場合に必要とされる。
【0070】
液体媒体に関しては、ククルビットウリルの平均粒径が約0.5μm超または約0.25μm超であり、媒体が液体である場合、懸濁化剤が必要とされることもある。このしきい値が約±0.2μm、例えば±0.1μmまたは±0.05μm変化し得ることが、当業者には理解される。このしきい値より高いとき、懸濁化剤は、ククルビットウリル粒子の分散を補助して、安定な懸濁液をもたらす。約0.25~約0.5μmの粒径より低いとき、粒子のコロイド自己安定化は、粒子を懸濁状態に維持するために懸濁化剤が必要とされないことを意味する。これは、凝集しない粒子、すなわち、互いに対するアフィニティを有さない粒子によるものであり、またはアフィニティは、静電反発によって相殺される。
【0071】
存在する場合、懸濁化剤は、媒体中に可溶化されてもよいし、または懸濁化剤自体が、懸濁液として媒体中に懸濁されてもよく、例えば、クレイは、液体媒体中に懸濁液を形成することができる懸濁化剤である。
【0072】
懸濁化剤は、カルボマーまたはCarbopol(登録商標)としても公知のクロスポリマー、例えばアクリル酸クロスポリマー、メタクリル酸クロスポリマー、アクリル酸(acrylic acic)-co-メタクリル酸クロスコポリマー、ならびに、アクリル酸および/またはメタクリル酸とアルキル(メタ)アクリレートとの架橋ポリマー;スチレン(メタ)アクリレートコポリマー、ビニルアセテート(メタ)アクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドンジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートコポリマーおよびメタクリロイルベタイン(メタ)アクリレートコポリマーならびにビニルエーテル無水マレイン酸等からなる群より選択されてもよい。これらのクロスポリマーおよびコポリマーは、天然の形態で使用されてもよいし、または、ナトリウム等のアルカリ金属もしくはアンモニウムにより部分的に中和された形態で使用されてもよい。クロスポリマーは一般的に、スクロースアリルエーテル、ペンタエリトリトールアリルエーテルおよびプロピレングリコールアリルエーテル等またはこれらの混合物によって架橋されている。
【0073】
懸濁化剤は、ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリスチレンスルホン酸ナトリウム;スチレンアクリレートコポリマーおよびその塩;ポリ(オキシチレン-b-オキシプロイレン)ブロックコポリマーならびにポリ(オキシエチレン-b-ジメチルシロキサン)ブロックおよびグラフトコポリマー等の疎水性ブロックならびに親水性ブロックを有するブロックおよびグラフトコポリマー;疎水性エトキシ化ポリウレタン;アラビアゴム;トラガカントゴム;アカシアゴム;キサンタンガム;ローカストビーンガム;ゲランガム;アルギネート;カラギーナン;寒天;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の変性セルロース;微結晶セルロース;デンプンアルケニルスクシネート;デンプン;植物性繊維;ペクチン;ゼラチン;ならびにベントナイトおよびモンモリロナイト等のクレイ等;またはこれらの混合物から選択される群より選択されることも可能である。
【0074】
一実施形態において、懸濁化剤は、天然のまたは部分的に中和されたアクリル酸クロスポリマー、メタクリル酸クロスポリマー、アクリル酸-co-メタクリル酸コポリマー、アクリル酸(acrylic acic)-co-メタクリル酸クロスコポリマー、アクリル酸および/またはメタクリル酸とアルキル(メタ)アクリレートとの架橋ポリマー、スチレン(メタ)アクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドンジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートコポリマーおよびメタクリロイルベタインアクリレートコポリマー、ビニルエーテル無水マレイン酸コポリマー;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム;疎水性ブロックおよび親水性ブロックを有するブロックおよびグラフトコポリマー;疎水性エトキシ化ポリウレタン;アラビアゴム;トラガカントゴム;アカシアゴム;キサンタンガム;ローカストビーンガム;ゲランガム;アルギネート;カラギーナン;寒天;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース;微結晶セルロース等の変性セルロース;デンプンアルケニルスクシネート;デンプン;植物性繊維;ペクチン;ゼラチン;ベントナイトおよびモンモリロナイト等のクレイ;ならびにこれらの混合物からなる群より選択される。
【0075】
一実施形態において、懸濁化剤は、アクリル酸クロスポリマーまたはキサンタンガムである。特に、懸濁化剤は、架橋されたポリアクリル酸クロスポリマーまたはキサンタンガムであってよい。
【0076】
一部の実施形態において、本発明の組成物は、懸濁化剤の他にも、界面活性剤または乳化剤をさらに含んでもよい。特定の場合において、懸濁化剤の代わりに界面活性剤または乳化剤が使用されてもよいことが、当業者には理解される。界面活性剤または乳化剤は、アニオン性界面活性剤;カチオン性界面活性剤;カチオノゲン性界面活性剤;双性界面活性剤;両性界面活性剤;非イオン性界面活性剤から選択されてもよい。
【0077】
懸濁化剤は、懸濁液がせん断に応じたゲル状態(「降伏領域」とも呼ばれる)を有する程度にさえ至るまで、低せん断における媒体の粘度を大幅に増大させるが、「降伏応力」によって特徴付けられることが可能である。特定のせん断値より低いとき、懸濁液は柔らかい弾性物質として振舞い、本発明のククルビットウリル粒子を懸濁状態に維持する能力を有する。上記物質は擬塑性のものであり、降伏値より高いときにせん断変形すると、懸濁液は流動し、上記物質は、注ぐことによって取り扱われることが可能である。
【0078】
本発明の目的のために特に興味深いものは、懸濁液の降伏領域において約100~約250Paの貯蔵弾性率および好ましくは貯蔵弾性率より低い損失弾性率を達成する、懸濁化剤である。例えば、約0.01~0.1%の間のひずみおよび20℃の温度において、ひずみ掃引測定条件下においてレオロジーによって測定されたときに、約10~約90Pa(例えば、2016年8月22日に閲覧したhttp://www.tainstruments.com/pdf/literature/AAN016_V1_U_StructFluids.pdfおよびN.Koumakis、P.Ballesta、R.Besseling、W.C.K.Poon、J.F.BradyおよびG.Petekidis、AIP Conference Proceedings 1518、365
(2013)を参照されたい)。
【0079】
一実施形態において、本組成物は、本組成物の総重量を基準にして0.01~25重量%、特に0.05~10重量%、より特定すると0.1~5重量%の懸濁化剤を含む。媒体が液体媒体である実施形態において、組成物は、本組成物の総重量を基準にして0.01~10重量%、特に0.1~5%、より特定すると0.1~1重量%の懸濁化剤を含ん
でもよい。
【0080】
別の実施形態において、媒体が水性液体媒体である場合、懸濁液は、約0.5μm、特に約0.25μm未満の粒径を有するククルビットウリルから形成され、懸濁液は、静電気的な反発相互作用によって安定化されており、懸濁化剤を実質的に不含である。例えば、ククルビットウリル化合物は、-10mV未満または+10mV超のゼータ電位を有し得る。
【0081】
粒子のゼータ電位は、静電荷が拘束された粒子の領域を、静電荷が拡散された粒子の周囲の領域から分離する表面上における、静電ポテンシャルである。このようなポテンシャルは、コロイド安定性の観点において測定および解釈されることが可能であり、「Zeta Potential in Colloid Sciences」(Robert.J.Hunter;Academic Press、London 1988)において見出され得る。
【0082】
一実施形態において、本組成物は、本組成物の総重量を基準にして0.1~5重量%、より特定すると0.2~3重量%、さらにより特定すると0.5~1.5重量%のククルビットウリル粒子を含む。しかしながら、当業者は、特定の場合において、ククルビットウリル粒子の濃度がより高くてもよく、例えば、最大50重量%もしくは最大60重量%であってもよく、またはおそらくはより高くてもよいことを理解する。したがって、特定の実施形態において、本組成物は、本組成物の総重量を基準にして0.1~60重量%、例えば0.1~50重量%、例えば0.1~20重量%、例えば0.1~10重量%、例えば0.1~5重量%、より特定すると0.2~3重量%、さらにより特定すると0.5~1.5重量%のククルビットウリル粒子を含む。
悪臭打ち消し組成物
本発明の組成物中のククルビットウリル粒子は、約0.010μm~約50μm、特に約0.1μm~約40μm、より特定すると約1μm~約20μm、より特定すると約2μm~約10μm、さらにより特定すると約3μm~約5μmの粒径を有し得る。一実施形態において、粒径は、約3μm~5μmの間である。
【0083】
粒径は、粒子の平均直径を指す。粒径を測定するための方法は、当技術分野において公知である。このような方法の一つは、顕微鏡写真を使用して、粒径を測定することを含む、顕微鏡検査である。光学顕微鏡、電子顕微鏡または原子間力顕微鏡法等の多種多様な顕微鏡が、使用され得る。顕微鏡検査は通常、数平均粒径を提供し、したがって、一実施形態において、ククルビットウリル粒子の数平均粒径は、約0.01μm~約50μmの間、約0.1μm~40μmの間、1μm~約20μmの間、より特定すると約2μm~約10μmの間、より特定すると約3~約5μmの間である。1μm~約20μmの間の粒子のサイズは、光学顕微鏡法によって測定されることが可能である。
【0084】
一実施形態において、本発明の組成物は、
a) 約2s-1のせん断速度において約400~約1500mPasの間、より特定すると約800~約1000mPasの間の(20℃における)粘度;および
b) 約30s-1~約100s-1の間のせん断速度において約10~約500mPasの間、より特定すると約50~約300mPasの間の(20℃における)粘度;および
c) 1000s-1より高いせん断速度において約0.5~約5mPasの間、より特定すると約0.8~約2mPasの間の(20℃における)粘度
を有する。
【0085】
本発明による懸濁液の粘度および粘度のせん断速度依存性は、任意の公知の手段によっ
て、例えば、本明細書において上記で指定された異なるせん断速度においてキャピラリー粘度計、回転ディスク粘度計またはレオメータを使用することによって、行うことができる。これらの測定は例えば、Malvern Instruments Ltd、TA InstrumentsまたはBrookfield Ametek Inc.から市販のレオメータの使用によって実施されてもよい。懸濁液のレオロジーに関する導入は例えば、2016年8月12日に閲覧したhttp://www.tainstruments.com/pdf/literature/AAN016_V1_U_StructFluids.pdfで入手することができる、TA Instrumentsの技術文献参照符号AAN016「Understanding Rheology of Structured Fluids」において見出され得る。
【0086】
上記粘度値が用途に応じて適合され得ることが、当業者には理解される。組成物の粘度を変更するための方法は、当技術分野において公知である。例えば、スプレー用途に関しては、所望の粘度は、使用されるスプレーノズルおよび/またはスプレー技術の種類ならびに所望されるスプレーパターンに依存しており、組成物中における懸濁化剤の量の変更によって調節されることが可能である。
【0087】
本発明の組成物は、当業者に公知の1種または複数の添加剤をさらに含んでもよい。
一実施形態において、本明細書において記述された組成物は、界面活性剤、殺生物剤、増粘剤、抗酸化剤、キレート化剤、湿潤剤、堆積剤(deposition agent)、抑泡剤、フレグランス、溶媒、染料、顔料、制汗剤およびコンディショニング剤からなる群より選択される1種または複数の添加剤をさらに含む。
【0088】
本発明の一態様において、悪臭の発生源に、本発明の懸濁組成物を施用するステップを含む、悪臭を打ち消しする方法が、提供される。
本発明の別の態様において、悪臭を打ち消しするための、本明細書において規定された懸濁組成物の使用が、提供される。
【0089】
本発明の懸濁組成物は、テキスタイル、機能性テキスタイルおよびテキスタイル仕上げ加工用製品;空気ならびに紙、木、プラスチック、石、セラミック、金属、金属ウール、ウール、繊維、フォーム、ろ材、吸収剤、吸着剤、プラスター、塗料およびインク等の様々な材料に悪臭打ち消し特性を付与するために使用されることも可能である。
【0090】
特に、本発明の懸濁組成物は、おむつ、尿漏れ防止パッド、女性用生理用品、生理用ナプキン、靴底、義歯洗浄容器および創傷用被覆材、ならびにペットリターおよびケミカルトイレ等に悪臭打ち消し特性を付与するために使用されてもよい。
【0091】
本明細書において記述された組成物は、製品への添加の前に、香油と混合されてもよいし、または香油に組み込まれてもよい。
本発明の組成物が香油に加えられた場合、得られた混合物は後で、噴霧乾燥、スプレー造粒、マトリックス粒子形成およびコア-シェル式カプセル封入等による当技術分野に公知の任意の方法によって、マイクロカプセル封入されることが可能である。
【0092】
一実施形態において、本発明の組成物は、スプレーによって悪臭の発生源に施用される。
本発明の一態様において、本発明の懸濁組成物を含む、消費者製品が、提供される。消費者製品は、洗濯ケア、在宅ケア、パーソナルケアまたはペットケアのためのものであってよい。例えば、消費者製品は、ペットケア用製品、トイレクリーナー、織物ケア用製品、洗剤、クレンジング用組成物、シャンプー、柔軟剤、柔軟剤シート、コンディショナー、リフレッシャー、エアフレッシュナー、脱臭用組成物、個人用脱臭剤、制汗剤、化粧品
、ファインフレグランス、ボディミスト、キャンドル、ハードサーフェスクリーナー、クレンジングワイプまたはモップ、石けん、スタイリング用ゲル、吸湿剤、空気清浄化装置、仕上げ加工用製品、おむつまたは尿漏れ防止パッド、女性用生理用品、生理用ナプキン、靴底、義歯洗浄容器および創傷用被覆材等のサニタリー製品、ならびにペットリターおよびケミカルトイレ等であってよい。
【0093】
消費者製品は、粉末または顆粒、錠剤または単回用量単位、ふき取り用品またはスポンジ、圧縮気体、エアロゾルまたは液体ディスペンサー、クリーム、バルサム、磨き剤およびワックス等の形態であってよい。
【0094】
一実施形態において、消費者製品は、スプレー装置(例えば、フィンガースプレー)または(例えば、ベンチュリノズルまたは圧電式ノズルを使用する)噴霧器から選択される装置である。
【0095】
本組成物は、無生物表面、例えばキッチンまたは便所の表面に施用されてもよい。
一実施形態において、無生物表面は、顆粒またはビーズである。特に、本明細書において記述された組成物は、0.1~10ミリメートルの間、より特定すると0.5~5ミリメートルの間の平均粒径を有する顆粒化された材料に施用されてもよい。顆粒化された材料は、不規則的な形状を有する顆粒または球形ビーズ等の規則的な形状を有する顆粒から構成され得る。組成物は、スプレーすることによって、または、顆粒化された材料を本発明による懸濁液と配合することによって、施用されてもよい。施用は、スプレーコーティングまたはドラムコーティング等の当技術分野に公知の方法のいずれかによって、例えば固定層、移動層または流動層の上にある顆粒化された材料の層に直接実施されることが可能である。
【0096】
一実施形態において、本組成物のpHは、約2.0~12.0、例えば約4.0~約9.0、より特定すると約5.0~約7.5である。一実施形態において、pHは5.5~6.5であり、特にpHは5.5である。本組成物のpHが、本組成物の用途および使用される懸濁化剤に応じること、ならびに、本組成物のpHが、適宜調節されることが可能であることが、当業者には理解される。
【0097】
本発明の別の利点は、本組成物のpHが、長期間の時間にわたって実質的に無変化のままなことである。実質的に無変化は、少なくとも1日、少なくとも1週間、少なくとも1か月、少なくとも3か月または少なくとも1年の期間にわたって、±0.5、好ましくは±0.3のpHの変動のみが存在し得ることを意味する。好ましくは、pHは、少なくとも3か月にわたって実質的に無変化のままである。したがって、本発明の組成物は、一般に40℃において90日にわたる安定性を必要とする商用製品に、特に適している。
組成物の調製のための方法
本発明の一態様において、
a) 液体状態の媒体にククルビットウリル粒子を加えるステップ;
b) 高せん断条件下において、媒体中にククルビットウリル粒子を懸濁させるステップを含む、本明細書において記述された懸濁液の調製のための方法が、提供される。
【0098】
高せん断条件を達成するための適切な方法は、超音波処理および高圧による均一化である。他の適切な方法も、当技術分野において公知である。
一実施形態において、ステップa)は、懸濁化剤を媒体に加えるステップをさらに含む。懸濁化剤は、本明細書において記述されたとおりである。
【0099】
一実施形態において、ステップa)およびb)は、媒体の融点より高い温度で実施され、本組成物は後で、ワックスまたはペーストを形成するために室温に冷却される。
一実施形態において、媒体は、ゾル状態のゲル化剤を含み、媒体は、冷却、沈降および/または架橋等の当技術分野において公知の任意の手段によって、ゲルを形成することが可能である。
【0100】
一実施形態において、ゲル化は、媒体のpHの変更によって引き起こされる。
一実施形態において、ステップb)は、ローターステータ式高せん断ミキサー等の高せん断ミキサーまたは高圧ホモジナイザーの使用によって実施される。
安定な懸濁液
懸濁安定性は、元々の状態のままに留まる懸濁液の能力である。「安定な懸濁液」は当技術分野において周知の用語であり、液体に取り込まれた固体の均一な懸濁液を意味すると当業者には理解される。一部の実施形態において、本明細書において記述された媒体は、室温より高い融点を有する。このような実施形態において、安定な懸濁液は、液体に取り込まれた固体の均一な懸濁液を意味するように理解されており、液体は後で固体または半固体を形成するために室温に冷却されることが可能である。
【0101】
一実施形態において、ククルビットウリル粒子は、4℃~50℃の温度で貯蔵されたときに、少なくとも1日、少なくとも1週間、少なくとも1か月、少なくとも3か月または少なくとも1年にわたって、媒体の全体にわたって均一に懸濁された状態のままである。懸濁液は、4℃~50℃の温度で貯蔵されたときに、少なくとも3か月にわたって安定であることが、好ましい。
【0102】
一実施形態において、ククルビットウリル粒子の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%が、懸濁される。一実施形態において、ククルビットウリル粒子の100%が、懸濁される。懸濁状態のククルビットウリル粒子の百分率は、比濁法または比ろう法による懸濁液の濁度の測定によって、測定されることが可能である。測定は、懸濁状態の粒子が光を散乱させ、これにより、試料の中を通る光透過の減少が起きることに基づく。試料中の粒子数が線形ドメインとも呼ばれる特定の範囲に収まるとき、濁度は、試料中の粒子の数に比例する。このドメインにおいて、既知の粒子数を有する試料との比較は、試料中の粒子の百分率の適切な見積もりを可能にする。試料が濃縮されすぎて、線形ドメインに含まれない場合、試料は、粒子不含の懸濁媒体によって適宜希釈される。比ろう法においては、散乱光の強度が測定されるが、比濁法においては、試料の中を透過した光の強度が測定される。商用の濁度測定機器は、例えば、Hach Company、USまたはThermoFischer Scientific Company、Switzerlandから購入されることが可能である。
【0103】
経時的なククルビットウリル粒子の懸濁液の発生は、この懸濁液の安定性を評価するための適切な方法である。この発生は、試料の垂直軸に沿った濁度を経時的に測定すること、例えば、ガラス管内の試料を上方および下方から経時的に走査することによって、モニタリングされてもよい。この種類の測定を実施する機器は、Formulaction SA、Franceから入手可能なTurbiscanの名称で公知である。
【0104】
一実施形態において、本発明のククルビットウリル粒子は、固体ワックス中に懸濁され、または、恒久的に強く化学的に架橋されたゲル中に懸濁され、これにより、長期間の時間、例えば1か月超、3か月超または1年超にわたって安定な懸濁液を形成する。
【0105】
一実施形態において、本発明のククルビットウリル粒子は、本明細書の上記に規定された任意選択により懸濁化剤を含む液体媒体中に懸濁される。
本発明の組成物中のククルビットウリル粒子は、液体媒体または物理的に弱く架橋されたゲル中に懸濁された場合、長い時間をかけて沈降し、媒体中に沈積物を形成することが
ある。本発明の組成物は十分に安定化されており、この結果、沈降した系は、かき混ぜによって容易に再懸濁する。沈降した系は、外観上の分離によって識別されることが可能である。ククルビットウリル粒子が完全に懸濁されたとき、懸濁液は、半透明または不透明なように見える。
【0106】
したがって、本発明の一態様において、媒体中にククルビットウリル粒子を含む組成物をかき混ぜによって、例えば機械または手動の安定化によって再懸濁させるための方法であって、これにより、あらゆる粒子沈降物をかき混ぜによって再懸濁させる、方法が提供される。
【0107】
一実施形態において、安定化は、機械による撹拌、手動の撹拌、機械による振とう、手動の振とうまたは加熱によるものである。
次に、本発明の特定の態様および実施形態が、上記図面を参照しながら例示のために説明される。
実験および結果
例1:ポリアクリル酸(PAA)(懸濁化剤)と一緒に水に取り込まれたCB[n]懸濁液。
1.1 CB[n]懸濁配合物
安定なCB[n]懸濁液を、ポリアクリル酸(PAA)クロスポリマーゲル中に配合した。様々なpHおよびPAA濃度を有する組成物を配合した。CB[n]混合物は、ククルビットウリルの総量を基準にして15重量%のCB[5]、48重量%のCB[6]、25重量%のCB[7]および12重量%のCB[8]から構成された。
【0108】
配合手順:1%重量のPAA(Carbopol(商標)940)ストック溶液を、オーバーヘッド撹拌器によって混合しながらPAAを水に加えることによって調製した。別個の容器の中で、2%重量の濃度になるまでCB[n]を水に加え、次いで、PAAおよびCB[n]の最終濃度がそれぞれ0.5重量%および1重量%である系になるように、混合物をPAA溶液に1:1比で加えた。CB[n]濃度は、1%重量に一定に保持し、PAAをさらに希釈して、組成物の総重量を基準にした1つの系列のPAA濃度を有する試料を得た。PAA/CB[n]混合物を、Silversonホモジナイザー(モデルL5M)によって5000rpmで5分撹拌した。次いで、所望のpHになるまでNaOH(7M溶液)によってpHを調節した。次いで、混合物を、ホモジナイザーによって5000rpmで10分さらに撹拌した。この結果は、スプレーできるCB[n]の半透明な均一懸濁液だった。
【0109】
【0110】
【0111】
CB[n]がPAAゲル中にうまく懸濁され得ることは、目視による観察から明らかである。
1.2 CB[n]/PAA懸濁液のpH安定性
37℃に保持されたCB[n]/PAA懸濁液のpHを、28日間モニタリングした。表1は、セクション1.1に列記された組成物のpHを示している。
【0112】
【0113】
表3は、懸濁安定性を提示するすべての組成物の著しいpHの変化を示していない。
1.3 CB[n]/PAA懸濁液のスプレー能力
スプレーできる系に取り込まれたCB[n]/PAA組成物の適用性を測定するために、粒径およびレオロジーの測定を実施した。
【0114】
粒径:光学顕微鏡法を使用して、懸濁状態のCB[n]粒子のサイズを測定する。CB[n]粒子は、1~20μmの範囲であり、粒子の大部分は、5μm未満のサイズを有し(
図1)、これにより、CB[n]懸濁液は、スプレーできる系に適したものになる。
【0115】
レオロジー測定:主要な測定は、2つの方式のものだったが、これらの方式は両方とも、せん断の増大と、後続するせん断の減少とを伴う。第1の方式は、堅調な、すなわち、連続的なせん断速度によるものだった。粘度は、20℃の温度において0.1s-1~100(または500)の範囲で0.1s-1に戻るまでの間にわたって、せん断速度の10進当たり10の対数により間隔を空けられた隔たりにおいて、測定された。各速度における最長時間は、2分だった。第2の測定方式は、1Hzの周波数において、振動せん断であるが、振動振幅は、せん断応力の10進当たり20の対数により間隔を空けられた増分において、最初に増大し、次いで減少した。最小応力は、物質の応答が線形で粘弾性の様式であるように設定されており(すなわち、測定されたパラメータは、せん断に対して独立であり、ひずみは、一般的に1%未満だった)、最大応力は、降伏(一般的に100%超のひずみ)より著しく後にある点に設定された。
【0116】
次のレオロジーデータは、例1.1から得た、pH5.5における0.35重量%のPAA/1重量%のCB[n]試料に関する。せん断速度掃引は、調査した範囲全体にわたるシニング挙動を示す(
図2)。本組成物は、Cambrian製のFlairosolディスペンサー(Neck30Bayonet)が付いたスプレーボトルを使用した場合、許容されるスプレー可能度のパターンを示した。振動流におけるせん断-振幅掃引は最初に、1Hzにおけるせん断ひずみの増大に応じた貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)として、提示されている(
図3)。低い振幅においては、試料は、主に弾性が高いもの(およそ100PaのG’>G”)であるが、応力が0.744Paより高いときには(2.48%のひずみデータ)、G’の値が低下し、試料が主に粘性が高い状態(G”>G’)になるのに応じた、(0.807Paにおいて25.4%に至るまでの)大幅
なひずみの増大がある。この急激な特性の変化は、この試料に関しては、およそ0.75Paの降伏応力において起きる。挙動は、過渡的な網目構造の挙動に典型的なものである。沈降に対する例1.1において得られた懸濁液の安定性は、この過渡的な網目構造の存在に起因する。
1.4. 従来技術(WO2014/077642)による可溶化された対照(可溶化は、リン酸緩衝生理食塩水錠剤によって実施された)に対比させた、PAA系中に懸濁されたCB[n]およびCB[7]の悪臭抑制性能。
【0117】
悪臭の組成物は、次のとおりである:魚様のもの(それぞれがジプロピレングリコール(DPG)溶液中の1.5重量%である、アンモニア、トリメチルアミンおよびジメチルアミン)、および、米国政府の規格による0.02%の便所様の悪臭を伴う便所様のもの。
【0118】
CB[n]懸濁液の調製は、例1.1において記述されたとおりである。選択された試料は、pH5.5において、0.35重量%のPAAおよび1%のCB[n]を含有していた。同じ手順に、CB[7]懸濁済みの試料の場合にも従った。1重量%のCB[n]およびCB[7]可溶化済みの試料に関しては、100mL当たり1グラムのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)錠剤を使用した。
【0119】
CB[n]またはCB[7]悪臭混合物の抑制性能を、盲検方式の臭気特徴付け試験を用いて調査された。訓練を受けた6人のパネルが、(1~10の尺度を使用し、10が最も強烈である)臭気強度の観点において、このような組成物の臭気を特徴付けた。実験は、ホイルの中に包まれた1リットルガラスジャーの中において、80μLの魚様の悪臭または100μLの便所様の悪臭である悪臭を内包した小さなバイアルを用いて実施された。次いで、ジャーには、2.3gのCB[n]またはCB[7]懸濁液または溶液をスプレーした。次いで、臭気特徴付けが、直後ならびに1時間後および24時間後に実施された。この結果は、表4および表5に報告されている。
【0120】
【0121】
魚様および便所様の悪臭を抑制するCB[n]の能力は、可溶化された場合との対比で、CB[n]が懸濁された場合の方がより良好であることが、表4のデータから明らかである。
【0122】
【0123】
便所様の悪臭を抑制するCB[7]の能力は、可溶化された場合との対比で、CB[7]が懸濁された場合の方がより良好であることが、表5のデータから明らかである。
例2:キサンタンガム(XG)ゲル(懸濁化剤)と一緒に水に取り込まれたCB[n]懸濁液。
【0124】
安定なCB[n]懸濁液を、次の手順の実施によってキサンタンガム(XG)ゲル中に配合した。
1重量%のXGストック溶液を、オーバーヘッド撹拌器によって混合しながらXGを水に加えることによって調製した。別個の容器の中で、2重量%の濃度になるまでCB[n]を水に加え、次いで、XG and CB[n]の最終濃度がそれぞれ0.5重量%および1重量%である系になるように、混合物をXG溶液に1:1比で加えた。XG/CB[n]混合物を、オーバーヘッドミキサーを用いて撹拌した。次いで、NaOH(7M溶液)によってpHを7.0に調節した。この結果は、安定でスプレーできる半透明なCB[n]の均一懸濁液だった。
【0125】
CB[n]/XG組成物の安定性を、例1.2に記載のようにモニタリングした。
例3:含水アルコール性系に取り込まれたCB[n]懸濁液。
安定なCB[n]懸濁液を、PAAと一緒にして、次の手順の実施によって含水アルコール性媒体中に配合した。
3種の異なる含水アルコール性媒体(それぞれ10重量%のエタノール、メタノールおよびイソプロパノールを含有する水性組成物)を、オーバーヘッド撹拌器によって混合しながらセクション1.1に記載の第1のCB[n]/PAA試料にアルコールを加えることによって配合した。
【0126】
含水アルコール性媒体中におけるCB[n]/PAA組成物の安定性を、例1.2に記載のようにモニタリングした。
【外国語明細書】