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特開2022-153649スリットランプ顕微鏡及び眼科システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153649
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】スリットランプ顕微鏡及び眼科システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/135 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
A61B3/135
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124917
(22)【出願日】2022-08-04
(62)【分割の表示】P 2018046204の分割
【原出願日】2018-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】大森 和宏
(72)【発明者】
【氏名】福間 康文
(72)【発明者】
【氏名】山本 諭史
(57)【要約】
【課題】スリットランプ顕微鏡を効果的に利用することが可能な眼科遠隔医療技術を提供する。
【解決手段】実施形態のスリットランプ顕微鏡の照明系は、光源から出力された光からスリット光を生成するためのスリットを形成するスリット形成部を含み、被検眼の前眼部に第1方向からスリット光を投射する。第1撮影系は、スリット光が投射されている前眼部を第1方向と異なる第2方向から撮影する。第2撮影系は、第1撮影系とは別に設けられており、前眼部の撮影を行う。移動機構は、照明系のうち少なくともスリット形成部を含む可動部を移動可能である。制御部は、この可動部を移動させるための移動機構に対する第1制御と、前眼部を複数回撮影させるための第1撮影系に対する第2制御と、前眼部を複数回撮影させるための第2撮影系に対する第3制御とを並行して実行する。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出力された光からスリット光を生成するためのスリットを形成するスリット形成部を含み、被検眼の前眼部に第1方向から前記スリット光を投射する照明系と、
前記スリット光が投射されている前記前眼部を前記第1方向と異なる第2方向から撮影する第1撮影系と、
前記第1撮影系とは別に設けられた、前記前眼部を撮影する第2撮影系と、
前記照明系のうち少なくとも前記スリット形成部を含む可動部を移動可能な移動機構と、
前記可動部を移動させるための前記移動機構に対する第1制御と、前記前眼部を複数回撮影させるための前記第1撮影系に対する第2制御と、前記前眼部を複数回撮影させるための前記第2撮影系に対する第3制御とを並行して実行する制御部と
を含むスリットランプ顕微鏡。
【請求項2】
前記第2撮影系は、前記スリット光が投射されている前記前眼部を前記第2方向と異なる方向から撮影する、
ことを特徴とする請求項1に記載のスリットランプ顕微鏡。
【請求項3】
前記照明系の光路と前記第2撮影系の光路とを結合する光路結合部材を更に含み、
前記光源と前記光路結合部材との間に前記スリット形成部が配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のスリットランプ顕微鏡。
【請求項4】
前記第2撮影系は、対物レンズと撮像素子とを含み、
前記光路結合部材と前記撮像素子との間に前記対物レンズが配置されている、
ことを特徴とする請求項3に記載のスリットランプ顕微鏡。
【請求項5】
前記第2撮影系は、対物レンズと撮像素子とを含み、
前記対物レンズと前記撮像素子との間に前記光路結合部材が配置されている、
ことを特徴とする請求項3に記載のスリットランプ顕微鏡。
【請求項6】
前記第2の撮影系は、前記スリット光が投射されている前記前眼部を互いに異なる方向から撮影する2つ以上の撮影系を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のスリットランプ顕微鏡。
【請求項7】
通信路を介して接続されたスリットランプ顕微鏡と情報処理装置とを含む眼科システムであって、
前記スリットランプ顕微鏡は、
光源から出力された光からスリット光を生成するためのスリットを形成するスリット形成部を含み、被検眼の前眼部に第1方向から前記スリット光を投射する照明系と、
前記スリット光が投射されている前記前眼部を前記第1方向と異なる第2方向から撮影する第1撮影系と、
前記第1撮影系とは別に設けられた、前記前眼部を撮影する第2撮影系と、
前記照明系のうち少なくとも前記スリット形成部を含む可動部を移動可能な移動機構と、
前記可動部を移動させるための前記移動機構に対する第1制御と、前記前眼部を複数回撮影させるための前記第1撮影系に対する第2制御と、前記前眼部を複数回撮影させるための前記第2撮影系に対する第3制御とを並行して実行する制御部と、
少なくとも前記第2制御において前記撮影系により取得された複数の画像を、前記通信路を介して前記情報処理装置に送信する第1通信部と
を含み、
前記情報処理装置は、
前記第1通信部により送信された前記複数の画像を受信する第2通信部と、
前記第2通信部により受信された前記複数の画像に基づいて3次元画像を形成する3次元画像形成部と
を含む、
眼科システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリットランプ顕微鏡及び眼科システムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼科分野において画像診断は重要な位置を占める。画像診断では、各種の眼科撮影装置が用いられる。眼科撮影装置には、スリットランプ顕微鏡、眼底カメラ、走査型レーザー検眼鏡(SLO)、光干渉断層計(OCT)などがある。また、レフラクトメータ、ケラトメータ、眼圧計、スペキュラーマイクロスコープ、ウェーブフロントアナライザ、マイクロペリメータなどの各種の眼科撮影装置にも、前眼部や眼底を撮影する機能が搭載されている。
【0003】
これら様々な眼科装置のうち最も広く且つ頻繁に使用される装置の一つがスリットランプ顕微鏡である。スリットランプ顕微鏡は、スリット光で被検眼を照明し、照明された断面を斜方から顕微鏡で観察したり撮影したりするための眼科装置である。角膜や水晶体など前眼部の診断には、一般的にスリットランプ顕微鏡が用いられる。例えば、医師は、スリット光による照明野やフォーカス位置を移動させつつ診断部位全体を観察して異常の有無を判断する。また、コンタクトレンズのフィッティング状態の確認など、視力補正器具の処方において、スリットランプ顕微鏡が用いられることもある。
【0004】
ところで、近年の情報通信技術の進歩を受けて、遠隔医療技術に関する研究開発が発展を見せている。遠隔医療とは、インターネット等の情報技術を利用して、遠隔地に居る患者に対して診療を行う行為である。特許文献3、4には医療装置を遠隔地から操作するための技術が開示されており、特に特許文献4にはスリットランプ顕微鏡を遠隔地から操作するための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-159073号公報
【特許文献2】特開2016-179004号公報
【特許文献3】特開2000-116732号公報
【特許文献4】特開2008-284273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、スリットランプ顕微鏡を効果的に利用することが可能な眼科遠隔医療技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例示的な実施形態は、光源から出力された光からスリット光を生成するためのスリットを形成するスリット形成部を含み、被検眼の前眼部に第1方向から前記スリット光を投射する照明系と、前記スリット光が投射されている前記前眼部を前記第1方向と異なる第2方向から撮影する第1撮影系と、前記第1撮影系とは別に設けられた、前記前眼部を撮影する第2撮影系と、前記照明系のうち少なくとも前記スリット形成部を含む可動部を移動可能な移動機構と、前記可動部を移動させるための前記移動機構に対する第1制御と、前記前眼部を複数回撮影させるための前記第1撮影系に対する第2制御と、前記前眼部を複数回撮影させるための前記第2撮影系に対する第3制御とを並行して実行する制御部とを含むスリットランプ顕微鏡である。
【発明の効果】
【0008】
実施形態によれば、スリットランプ顕微鏡を効果的に利用することが可能な眼科遠隔医療技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】例示的な実施形態に係る眼科システムの構成の一例を表す概略図である。
図2】例示的な実施形態に係るスリットランプ顕微鏡の構成の一例を表す概略図である。
図3A】例示的な実施形態に係るスリットランプ顕微鏡の構成の一例を表す概略図である。
図3B】例示的な実施形態に係るスリットランプ顕微鏡の構成の一例を表す概略図である。
図3C】例示的な実施形態に係るスリットランプ顕微鏡の構成の一例を表す概略図である。
図4A】例示的な実施形態に係るスリットランプ顕微鏡の構成の一例を表す概略図である。
図4B】例示的な実施形態に係るスリットランプ顕微鏡の構成の一例を表す概略図である。
図5】例示的な実施形態に係るスリットランプ顕微鏡の構成の一例を表す概略図である。
図6】例示的な実施形態に係るスリットランプ顕微鏡の動作の一例を説明するための概略図である。
図7】例示的な実施形態に係るスリットランプ顕微鏡の動作の一例を説明するための概略図である。
図8A】例示的な実施形態に係るスリットランプ顕微鏡の動作の一例を説明するための概略図である。
図8B】例示的な実施形態に係るスリットランプ顕微鏡の動作の一例を説明するための概略図である。
図8C】例示的な実施形態に係るスリットランプ顕微鏡の動作の一例を説明するための概略図である。
図9】例示的な実施形態に係る管理サーバの構成の一例を表す概略図である。
図10】例示的な実施形態に係る遠隔端末の構成の一例を表す概略図である。
図11A】例示的な実施形態に係る眼科システムの使用形態の一例を表すフローチャートである。
図11B】例示的な実施形態に係る眼科システムの使用形態の一例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
例示的な実施形態に係るスリットランプ顕微鏡及び眼科システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、引用文献に開示された事項などの任意の公知技術を実施形態に組み合わせることができる。
【0011】
実施形態に係る眼科システムは、例えば、各種の施設に設置された眼科撮影装置や、可搬型の眼科撮影装置を用いた遠隔医療に用いられる。実施形態に係る遠隔医療では、少なくとも、眼科撮影装置により取得された医用画像の読影を、この眼科撮影装置が設置された施設から離れた遠隔地にいる者が実施する。この読影者は、典型的には、医師やオプトメトリストなどの専門家である。読影者は、読影を行うことで被検眼に関するレポートを作成することができる。実施形態に係る遠隔医療において、眼科撮影装置が設置された施設にて検査をアシストする者(補助者)が関与してもよい。
【0012】
眼科撮影装置が設置される施設の例として、眼鏡店、医療機関、健康診断会場、検診会場、患者の自宅、福祉施設、公共施設、検診車などがある。
【0013】
眼科撮影装置は、被検眼の撮影に用いられる任意の装置であってよく、少なくともスリットランプ顕微鏡としての機能を有する。眼科システムに含まれる複数の眼科撮影装置のいずれかは、スリットランプ顕微鏡と異なる撮影機能(例えば、眼底カメラ、SLO、OCTなどの眼科モダリティ)を含んでいてもよい。更に、眼科撮影装置は、測定データや撮影画像を解析するためのアプリケーションを備えていてもよい。
【0014】
実施形態の眼科システムは、被検眼の特性を測定するための眼科測定装置を更に含んでいてもよい。眼科測定装置の例として、視力検査装置(視標呈示装置、フォロプタ等)、眼屈折検査装置(レフラクトメータ、ケラトメータ等)、眼圧計、スペキュラーマイクロスコープ、ウェーブフロントアナライザ、視野計、マイクロペリメータなどがある。
【0015】
〈眼科システム〉
実施形態に係る眼科システムの構成の例を説明する。図1に例示された眼科システム1000は、眼科撮影が行われるN個の施設(第1施設~第N施設)のそれぞれと、管理サーバ4000と、遠隔端末5000mとを結ぶ通信路(通信回線)1100を利用して構築されている。
【0016】
各施設(第n施設:n=1~N、Nは1以上の整数)には、眼科撮影装置2000-i(i=1~K、Kは1以上の整数)が設置されている。つまり、各施設(第n施設)には、1以上の眼科撮影装置2000-iが設置されている。眼科撮影装置2000-iは、眼科システム1000の一部を構成する。なお、眼科以外の検査を実施可能な検査装置が眼科システム1000に含まれていてもよい。
【0017】
本例の眼科撮影装置2000-iは、被検眼の撮影を実施する「撮影装置」としての機能と、各種データ処理や外部装置との通信を行う「コンピュータ」としての機能の双方を備えている。前述したように、撮影装置は、少なくともスリットランプ顕微鏡を含む。他の例において、撮影装置とコンピュータとを別々に設けることが可能である。この場合、撮影装置とコンピュータとは互いに通信可能に構成されてよい。更に、撮影装置の数とコンピュータの数とはそれぞれ任意であり、例えば単一のコンピュータと複数の撮影装置とを設けることができる。
【0018】
更に、各施設(第n施設)には、補助者や被検者により使用される情報処理装置(端末3000-n)が設置されている。端末3000-nは、当該施設において使用されるコンピュータであり、例えば、タブレット端末やスマートフォン等のモバイル端末、当該施設に設置されたサーバなどであってよい。更に、端末3000-nは、無線型イヤフォン等のウェアラブルデバイスを含んでいてもよい。なお、端末3000-nは、当該施設においてその機能を使用可能なコンピュータであれば十分であり、例えば、当該施設の外に設置されたコンピュータ(クラウドサーバ等)であってもよい。
【0019】
眼科撮影装置2000-iと端末3000-nとは、第n施設内に構築されたネットワーク(施設内LAN等)や、広域ネットワーク(インターネット等)や、近距離通信技術を利用して通信を行えるように構成されてよい。
【0020】
眼科撮影装置2000-iは、サーバ等の通信機器としての機能を備えていてよい。この場合、眼科撮影装置2000-iと端末3000-nとが直接に通信を行うように構成することができる。これにより、管理サーバ4000と端末3000-nとの間の通信を眼科撮影装置2000-iを介して行うことができるので、端末3000-nと管理サーバ4000との間で通信を行う機能を設ける必要がなくなる。
【0021】
管理サーバ4000は、第1~第N施設のいずれとも異なる施設に設置され、例えば管理センタに設置されている。管理サーバ4000は、ネットワーク(LAN、広域ネットワーク等)を介して、遠隔端末5000m(m=1~M、Mは1以上の整数)と通信が可能である。更に、管理サーバ4000は、第1~第N施設に設置された眼科撮影装置2000-iの少なくとも一部と広域ネットワークを介して通信が可能である。
【0022】
管理サーバ4000は、例えば、眼科撮影装置2000-iと遠隔端末5000mとの間の通信を中継する機能と、この通信の内容を記録する機能と、眼科撮影装置2000-iにより取得されたデータや情報を記憶する機能と、遠隔端末5000mにより取得されたデータや情報を記憶する機能とを備える。また、管理サーバ4000は、データ処理機能を備えてもよい。例えば、管理サーバ4000は、眼科撮影装置2000-i(スリットランプ顕微鏡)により取得された複数の断面画像から3次元画像を形成する処理を実行するための3次元画像形成部(プロセッサ、コンピュータプログラムなどを含む)を含んでいてよい。
【0023】
遠隔端末5000mは、眼科撮影装置2000-iによって取得された被検眼の画像の読影とレポート作成とに使用可能なコンピュータを含む。
【0024】
本実施形態において、「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムやデータを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現することができる。
【0025】
〈眼科撮影装置の構成〉
眼科撮影装置2000-iの構成について説明する。前述したように、眼科撮影装置2000-iはスリットランプ顕微鏡としての機能を有する。本例では、特に言及しない限り、眼科撮影装置2000-iはスリットランプ顕微鏡である。
【0026】
ここで、以下のように方向を表すことがある。スリットランプ顕微鏡の光学系が被検眼の正面(ニュートラル位置)に配置されているときに、光学系における最も被検眼側に位置するレンズ(対物レンズ)から被検眼に向かう方向を前方向(又は、深さ方向、奥行き方向、Z方向)とし、その逆方向を後方向(-Z方向)とする。また、Z方向に直交する水平方向を左右方向(又は、横方向、±X方向)とする。更に、Z方向とX方向の双方に直交する方向を上下方向(又は、縦方向、±Y方向)とする。XYZ座標系は、例えば右手系(又は、左手系)として定義される。
【0027】
また、スリットランプ顕微鏡の観察撮影系は少なくとも水平方向に回動可能であるので、観察撮影系の光軸(観察撮影光軸)に沿う方向である動径方向をr方向とし、回転方向をθ方向とする。同様に、スリットランプ顕微鏡の照明系は回動可能であるので、照明系の光軸(照明光軸)に沿う方向である動径方向をr方向とし、回転方向をθ方向とする。例えば、動径方向の正方向は、対物レンズから被検眼に向かう方向であり、回転方向の正方向は、上方から見たときの反時計回り方向である。回転方向は、例えば、Z方向を基準として定義される(つまり、Z方向が回転角度0度として定義される)。観察撮影系がニュートラル位置に配置されているとき(つまり、θ=0度のとき)、r方向はZ方向に一致する。同様に、照明系がニュートラル位置に配置されているとき(つまり、θ=0度のとき)、r方向はZ方向に一致する。照明系及び観察撮影系の少なくとも一方は、上下方向に回動可能であってもよい。この場合においても動径方向や回転方向が同様に定義される。
【0028】
また、本実施形態のスリットランプ顕微鏡は、観察撮影系及び照明系を3次元的に平行移動可能に構成されていてよい。例えば、本実施形態において、観察撮影系と照明系とを一体的に、±X方向、±Y方向、及び±Z方向に移動可能であってよい。また、観察撮影系と照明系とを互いに独立に、±X方向、±Y方向、及び±Z方向に移動可能であってよい。
【0029】
例示的なスリットランプ顕微鏡の外観構成を図2に示す。スリットランプ顕微鏡1には、コンピュータ100が接続されている。コンピュータ100は、各種の制御処理や演算処理を行う。顕微鏡本体(光学系等を格納する筐体)とは別にコンピュータ100を設ける代わりに、顕微鏡本体に同様のコンピュータを搭載した構成を適用することも可能である。コンピュータ100の少なくとも一部と、前述した端末3000-nの少なくとも一部とが共通であってもよい。
【0030】
スリットランプ顕微鏡1はテーブル2上に載置される。基台4は、例えば、移動機構部3を介して3次元的に移動可能に構成されている。つまり、移動機構部3は、±X方向、±Y方向、及び±Z方向に、基台4を平行移動可能である。基台4は、操作ハンドル5を傾倒操作することにより移動される。或いは、移動機構部3は、電気的に制御可能なアクチュエータを含む。
【0031】
基台4の上面には、観察撮影系6及び照明系8を支持する支持部15が設けられている。支持部15には、観察撮影系6を支持する支持アーム16が左右方向に回動可能に取り付けられている。支持アーム16の上部には、照明系8を支持する支持アーム17が左右方向に回動可能に取り付けられている。支持アーム16及び17は、それぞれ独立に且つ互いに同軸で回動可能とされている。
【0032】
観察撮影系6は、支持アーム16を回動させることで移動される。照明系8は、支持アーム17を回動させることで移動される。支持アーム16及び17のそれぞれは、電気的な機構によって回動される。移動機構部3には、支持アーム16を回動させるための機構と、支持アーム17を回動させるための機構とが設けられている。なお、支持アーム16を手動で回動させることによって観察撮影系6を移動することもできる。同様に、支持アーム17を手動で回動させることによって照明系8を移動することもできる。
【0033】
照明系8は、被検眼Eに照明光を照射する。前述のように、照明系8を左右方向に回動することができる。更に、照明系8を上下方向に回動できるように構成されてもよい。つまり、照明系8の仰角や俯角を変更できるように構成されていてもよい。このような照明系8のスイング動作により、被検眼Eに対する照明光の投射方向が変更される。
【0034】
移動機構部3により、観察撮影系6及び照明系8は、±X方向、±Y方向、及び±Z方向に平行移動される。移動機構部3は、観察撮影系6と照明系8とを一体的に平行移動可能であってよい。また、移動機構部3は、観察撮影系6のみを平行移動させること、及び、照明系8のみを平行移動させることが可能であってよい。つまり、移動機構部3は、観察撮影系6と照明系8とを互いに独立に平行移動可能であってよい。
【0035】
同様に、移動機構部3により、観察撮影系6及び照明系8は、左右方向及び上下方向に回動される。移動機構部3は、観察撮影系6と照明系8とを一体的に回動可能であってよい。また、移動機構部3は、観察撮影系6のみを回動させること、及び、照明系8のみを回動させることが可能であってよい。つまり、移動機構部3は、観察撮影系6と照明系8とを互いに独立に回動可能であってよい。
【0036】
観察撮影系6は、被検眼Eに投射された照明光の戻り光を案内する左右一対の光学系を有する。この光学系は鏡筒本体9内に収納されている。鏡筒本体9の終端は接眼部9aである。検者は接眼部9aをのぞき込むことで被検眼Eを観察することができる。前述のように、支持アーム16を回動させることにより鏡筒本体9を左右方向に回動させることができる。更に、観察撮影系6を上下方向に回動できるように構成されてもよい。つまり、観察撮影系6の仰角や俯角を変更できるように構成されていてもよい。このような観察撮影系6のスイング動作により、被検眼Eを撮影する方向を変更することができる。
【0037】
鏡筒本体9に対峙する位置には顎受け台10が配置されている。顎受け台10には、被検者の顔を安定配置させるための顎受部10aと額当て10bが設けられている。
【0038】
鏡筒本体9の側面には、倍率を変更するための倍率操作ノブ11が配置されている。更に、鏡筒本体9には、被検眼Eを撮影するための撮像装置13が接続されている。撮像装置13は撮像素子を含む。撮像素子は、光を検出して画像信号(電気信号)を出力する光電変換素子である。画像信号はコンピュータ100に入力される。撮像素子としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、又は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが用いられる。
【0039】
照明系8の下方位置には、照明系8から出力される照明光束を被検眼Eに向けて反射するミラー12が配置されている。
【0040】
図2では省略されているが、ミラー12の近傍(例えば、ミラー12の下方位置又は上方位置)には、被検眼Eの前眼部を正面(又は斜方)から撮影するための前眼部カメラ70が設けられている(図3A等を参照)。
【0041】
〈光学系の構成〉
スリットランプ顕微鏡1の光学系の構成の第1の例を図3A及び図3Bに示し、その変形例を図3Cに示す。また、図5を適宜参照する。前述したように、スリットランプ顕微鏡1は、観察撮影系6と照明系8とを備えている。
【0042】
〈観察撮影系6〉
観察撮影系6は左右一対の光学系を備えている。左右の光学系は、ほぼ同様の構成を有する。検者は、この左右の光学系により被検眼Eを双眼で観察することができる。なお、図3Aには、観察撮影系6の左右の光学系の一方のみが示されている。観察撮影系6は、左右の光学系の一方のみを備えていてもよい。符号O1は、観察撮影系6の光軸を示す。
【0043】
観察撮影系6の左右の光学系のそれぞれは、対物レンズ31、変倍光学系32、ビームスプリッタ34、結像レンズ35、プリズム36、及び接眼レンズ37を含む。ここで、ビームスプリッタ34は、左右の光学系の一方又は双方に設けられる。接眼レンズ37は、接眼部9a内に設けられている。符号Pは、接眼レンズ37に導かれる光の結像位置を示す。符号Ecは被検眼Eの角膜を示す。符号Eoは検者眼を示す。
【0044】
変倍光学系32は、複数(例えば3枚)の変倍レンズ32a、32b、32cを含む。本実施形態では、観察撮影系6の光路に対して選択的に挿入可能な複数の変倍レンズ群が設けられている。これら変倍レンズ群は、それぞれ異なる倍率に対応する。観察撮影系6の光路に配置された変倍レンズ群が変倍光学系32として用いられる。このような変倍レンズ群の選択的な挿入により、被検眼Eの観察像や撮影画像の倍率(画角)を変更することができる。倍率の変更、つまり観察撮影系6の光路に配置される変倍レンズ群の切り替えは、倍率操作ノブ11を操作することにより行われる。また、電気的に制御可能なアクチュエータで変倍光学系32を駆動することで倍率を変更することもできる。
【0045】
ビームスプリッタ34は、光軸O1に沿って進む光の光路を、光軸O1の延長上に位置する光路と、光軸O1に対して直交する光路とに分割する。光軸O1の延長上に位置する光路に入射した光は、結像レンズ35、プリズム36及び接眼レンズ37を介して検者眼Eoに導かれる。プリズム36は、光の進行方向を上方に平行移動させる。
【0046】
一方、光軸O1に対して直交する光路に入射した光は、集光レンズ41及びミラー42を介して、撮像装置13の撮像素子43に導かれる。すなわち、観察撮影系6は、被検眼Eからの戻り光を撮像装置13に導く。撮像素子43は、この戻り光を検出して画像信号GSを生成する。
【0047】
観察撮影系6の左右の光学系の双方に撮像素子43が設けられていてよい。この場合、左右の撮像素子43により並行して取得される左右の画像(動画像又は静止画像)を遠隔端末5000mに提供することができる。これにより、遠隔端末5000mのユーザーは、被検眼Eを立体的に観察することが可能である。
【0048】
観察撮影系6は、そのフォーカス位置を変更するための合焦機構40を含む。合焦機構40は、光軸O1に沿って対物レンズ31を移動させる。例えば、合焦機構40は、対物レンズ31を保持する保持部材と、この保持部材を光軸O1の方向に移動させるスライド機構と、駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力をスライド機構に伝達する部材とを含む。
【0049】
対物レンズ31の移動は、自動及び/又は手動で行われる。自動で対物レンズ31を移動する場合、例えば、コンピュータ100は、公知のフォーカス調整手法(例えば、位相差検出方式、コントラスト検出方式など)を用いて、被検眼Eからの戻り光に基づきフォーカス位置を求めることができる。更に、コンピュータ100は、求められたフォーカス位置まで対物レンズ31を光軸O1に沿って移動するようにアクチュエータを制御することができる。一方、手動で対物レンズ31を移動する場合、ユーザーによる操作に応じてアクチュエータが対物レンズ31を光軸O1に沿って移動させる。この操作は、例えば、スリットランプ顕微鏡1のユーザー、端末3000-nのユーザー、又は、遠隔端末5000mのユーザーによって行われる。
【0050】
観察撮影系6は、対物レンズ31と撮像素子43との間の光軸O1上の位置に配置された第1合焦レンズを含んでもよい。この場合、合焦機構40は、第1合焦レンズを光軸O1に沿って移動させることによって観察撮影系6のフォーカス位置を変更する。例えば、合焦機構40は、第1合焦レンズを保持する保持部材と、この保持部材を光軸O1の方向に移動させるスライド機構と、駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力をスライド機構に伝達する部材とを含む。対物レンズ31を移動させる場合と同様に、合焦機構40による第1合焦レンズの移動は、自動又は手動で行われる。
【0051】
観察撮影系6の全体(又は一部)が光軸O1に沿って移動可能に構成されていてもよい。この場合、合焦機構40は、観察撮影系6の全体を光軸O1に沿って移動させることによって、観察撮影系6のフォーカス位置を変更する。例えば、合焦機構40は、観察撮影系6が搭載された可動ステージと、この可動ステージを光軸O1の方向に移動させるスライド機構と、駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力をスライド機構に伝達する部材とを含む。対物レンズ31を移動させる場合と同様に、合焦機構40による観察撮影系6の移動は、自動又は手動で行われる。
【0052】
〈照明系8〉
照明系8は、照明光源51、集光レンズ52、スリット形成部53、及び対物レンズ54を含む。符号O2は、照明系8の光軸を示す。
【0053】
照明光源51は照明光を出力する。なお、照明系8に複数の光源を設けてもよい。例えば、定常光を出力する光源(例えば、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)等)と、フラッシュ光を出力する光源(例えば、キセノンランプ、LED等)の双方を照明光源51として設けることができる。また、前眼部観察用の光源と後眼部観察用の光源とを別々に設けてもよい。例えば、照明光源51は、可視光を出力する可視光源を含む。照明光源51は、赤外光(例えば、中心波長が800nm~1000nmの光)を出力する赤外光源を含んでもよい。
【0054】
スリット形成部53は、スリット光を生成するために用いられる。スリット形成部53は、一対のスリット刃を有する。これらスリット刃の間隔(スリット幅)を変更することにより、生成されるスリット光の幅を変更することができる。
【0055】
照明系8は、スリット光のフォーカス位置を変更するための合焦機構50を含む。合焦機構50は、対物レンズ54を光軸O2に沿って移動させる。例えば、合焦機構50は、対物レンズ54を保持する保持部材と、この保持部材を光軸O1の方向に移動させるスライド機構と、駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力をスライド機構に伝達する部材とを含む。
【0056】
対物レンズ54の移動は、自動及び/又は手動で行われる。自動で対物レンズ54を移動する場合、例えば、コンピュータ100は、被検眼Eからの戻り光に基づく像が描出された画像を解析することによってフォーカス位置を求めることができる。更に、コンピュータ100は、求められたフォーカス位置まで対物レンズ54を光軸O2に沿って移動するようにアクチュエータを制御することができる。一方、手動で対物レンズ54を移動する場合、ユーザーによる操作に応じてアクチュエータが対物レンズ54を光軸O2に沿って移動させる。この操作は、例えば、スリットランプ顕微鏡1のユーザー、端末3000-nのユーザー、又は、遠隔端末5000mのユーザーによって行われる。
【0057】
照明系8は、対物レンズ54とスリット形成部53との間の光軸O2上の位置に配置された第2合焦レンズを含んでもよい。この場合、合焦機構50は、第2合焦レンズを光軸O2に沿って移動させることによって、スリット光のフォーカス位置を変更する。例えば、合焦機構50は、第2合焦レンズを保持する保持部材と、この保持部材を光軸O2の方向に移動させるスライド機構と、駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力をスライド機構に伝達する部材とを含む。対物レンズ54を移動させる場合と同様に、合焦機構50による第2合焦レンズの移動は、自動又は手動で行われる。
【0058】
照明系8の全体(又は一部)が光軸O2に沿って移動可能に構成されていてもよい。この場合、合焦機構50は、照明系8の全体を光軸O2に沿って移動させることによって、スリット光のフォーカス位置を変更する。例えば、合焦機構50は、照明系8が搭載された可動ステージと、この可動ステージを光軸O2の方向に移動させるスライド機構と、駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力をスライド機構に伝達する部材とを含む。対物レンズ54を移動させる場合と同様に、合焦機構50による照明系8の移動は、自動又は手動で行われる。
【0059】
照明系8には、可動部が設けられている。可動部は、少なくともスリット形成部53を含む。例えば、可動部は、スリット形成部53のみを含む。或いは、可動部は、スリット形成部53に加えて、照明光源51、集光レンズ52及び対物レンズ54のうちの少なくとも1つを含む。可動部は、後述の第1移動機構55により移動される。可動部の移動方向は、光軸O2に直交する方向である。典型的には、可動部の移動方向は、スリット形成部53により形成されるスリットの幅方向である(矢印A1を参照)。スリット幅方向は、例えば、スリット形成部53に含まれる一対のスリット刃の間隔が定義される方向である。
【0060】
図3A図3Cでは図示が省略されているが、照明系8から出力される照明光束を被検眼Eに向けて反射するミラー12が光軸O2上に配置されている。典型的には、照明系8とミラー12とが一体的に移動(平行移動、回動)するように構成されている。
【0061】
スリットランプ顕微鏡1は、照明系8の可動部を移動しつつ被検眼Eを複数回撮影することで複数の画像を取得することができる。これにより、前眼部の複数の断面画像(スリット画像)が得られる。
【0062】
このような制御により取得された複数の断面画像のそれぞれには、その取得位置(つまり、断面位置)を示す位置情報が関連付けられる。この位置情報は、例えば、次のいずれか1以上を含んでいてよい:照明系8の可動部の位置;前眼部カメラ70により取得された前眼部の正面画像における断面の位置;これら位置のいずれか1以上に基づき求められた情報。
【0063】
照明系8の可動部の位置は、例えば、エンコーダーなどを含む位置検出器によって検出することができる。或いは、照明系8の可動部の位置は、これを移動するための機構(後述の第1移動機構55)の制御を行うコンピュータ100によって認識可能である。また、被検眼Eの前眼部の正面画像における断面の位置は、例えば、前眼部カメラ70により取得された前眼部の正面画像と、上記の位置検出器により検出された位置とに基づいて求めることができる。詳細は後述するが、このような位置情報と複数の断面画像とに基づいて、前眼部の3次元画像を形成することができる。
【0064】
なお、照明系8の可動部を移動しつつ行われる複数回の撮影は、可動部が移動しているときに行われてもよいし、可動部が停止しているときに行われてもよい。また、可動部の移動は連続的でも断続的でもよい。
【0065】
スリットランプ顕微鏡1は、照明系8の可動部の移動に加えて被検眼Eに対する照明系8及び観察撮影系6の移動を行いつつ被検眼Eを複数回撮影することで複数の断面画像を取得してもよい。ここで、照明系8及び観察撮影系6を移動は、回動でもよいし、平行移動でもよい。
【0066】
このような制御が行われる場合、スリットランプ顕微鏡1により取得された複数の断面画像のそれぞれには、その取得位置(つまり、断面位置)を示す位置情報が関連付けられる。この位置情報は、例えば、次のいずれか1以上を含んでいてよい:照明系8の可動部の位置;照明系8の位置(回動位置、平行移動位置);観察撮影系6の位置(回動位置、平行移動位置);前眼部カメラ70により取得された前眼部の正面画像における断面の位置;これら位置のいずれか1以上に基づき求められた情報。
【0067】
照明系8の位置(つまり、位置及び/又は角度)や観察撮影系6の位置(位置及び/又は角度)は、例えば、エンコーダーなどを含む位置検出器によって検出することができる。或いは、照明系8の位置や観察撮影系6の位置は、照明系8や観察撮影系6を移動するための機構(後述の第2移動機構60)の制御を行うコンピュータ100によって認識可能である。詳細は後述するが、このような位置情報と複数の断面画像とに基づいて、前眼部の3次元画像を形成することができる。
【0068】
なお、照明系8の可動部の移動並びに照明系8及び観察撮影系6の移動とともに行われる複数回の撮影は、可動部、照明系8及び観察撮影系6の少なくとも1つが移動しているときに行われてもよいし、可動部、照明系8及び観察撮影系6の少なくとも1つが停止しているときに行われてもよい。また、可動部の移動は連続的でも断続的でもよいし、照明系8の移動は連続的でも断続的でもよいし、観察撮影系6の移動は連続的でも断続的でもよい。
【0069】
スリットランプ顕微鏡1は、被検眼Eに対するフォーカス位置を変更しつつ被検眼Eを複数回撮影して複数の画像を取得することができる。より具体的には、スリットランプ顕微鏡1は、観察撮影系6のフォーカス位置及び照明系8のフォーカス位置の少なくとも一方を変更しつつ被検眼Eを複数回撮影することで、被検眼Eの前眼部の複数の断面画像を取得することができる。
【0070】
このような制御により取得された複数の断面画像のそれぞれには、その取得位置(フォーカス位置)を示す位置情報が関連付けられる。この位置情報は、例えば、次のいずれかを含んでいてもよい:合焦機構40に対する制御内容;合焦機構50に対する制御内容;合焦機構40により移動される対象(例えば、対物レンズ31、第1合焦レンズ、又は観察撮影系6)の位置;合焦機構50により移動される対象(例えば、対物レンズ54、第2合焦レンズ、又は照明系8)の位置;これら情報(制御内容、位置)のいずれか1以上に基づき求められた情報。
【0071】
合焦機構40又は50に対する制御内容は、例えば、それを制御するコンピュータ100によって認識可能である。合焦機構40又は50により移動される対象の位置は、例えば、エンコーダーなどを含む位置検出器によって検出することができる。詳細は後述するが、このような制御内容及び/又は位置情報と複数の断面画像とに基づいて、前眼部の3次元画像を形成することができる。
【0072】
なお、フォーカス位置を変更しつつ行われる複数回の撮影は、フォーカス位置の変更と並行して行われてもよいし、フォーカス位置の移動が停止されているときに行われてもよい。また、フォーカス位置の変更は連続的でも断続的でもよい。
【0073】
上記した複数の制御を組み合わせることができる。例えば、スリットランプ顕微鏡1は、照明系8の可動部の位置、照明系8の位置、観察撮影系6の位置、照明系8のフォーカス位置、及び観察撮影系6のフォーカス位置を変更しつつ被検眼Eを複数回撮影することによって、複数の断面画像を取得することが可能である。このような制御により取得された複数の断面画像のそれぞれには、その取得位置(断面位置及びフォーカス位置)を示す位置情報が関連付けられる。
【0074】
〈前眼部カメラ70〉
前眼部カメラ70は、前眼部を正面又は斜方から撮影する。前眼部を正面から撮影可能な例は図3A及び図3Bに示され、前眼部を斜方から撮影可能な例は図3Cに示されている。なお、図3Cに示す2つの前眼部カメラ70a及び70bのそれぞれ又は双方を前眼部カメラ70と称することがある。
【0075】
前眼部カメラ70は、例えば、動画撮影が可能なビデオカメラである。前眼部カメラ70は、固定的に配置されている。或いは、前眼部カメラ70は、観察撮影系6や照明系8の移動とは独立に移動可能である。
【0076】
前眼部カメラ70は1以上の任意の個数設けられていてよい。例えば、図3A及び図3Bに示す例では、左右方向の中心位置に単一の前眼部カメラ70が設けられている。一方、図3Cに示す例では、左右方向に離間して配置された2つの前眼部カメラ70a及び70bが設けられている。
【0077】
図3Cの例のように2以上の前眼部カメラが設けられている場合、スリットランプ顕微鏡は、本出願人による特開2013-248376号公報に開示されたアライメント手法を行うことができる。このアライメント手法は、例えば次の工程を含む:2以上の前眼部カメラが前眼部を異なる方向から撮影して2以上の撮影画像を取得する工程;コンピュータ100等のプロセッサがこれら撮影画像を解析して被検眼の3次元位置を求める工程;求められた3次元位置に基づいてコンピュータ100等のプロセッサが移動機構部3を制御する工程。これにより、光学系(例えば、観察撮影系6及び/又は照明系8)が、好適なアライメント位置に配置される。
【0078】
例示的な実施形態に適用可能なアライメント手法は、このようなアライメントに限定されない。例えば、アライメント光により得られるプルキンエ像を利用したアライメント手法や、光てこを利用したアライメント手法など、被検眼と装置光学系との間のアライメントに適用可能な任意の手法であってよい。
【0079】
前眼部カメラ70で撮影を行うための照明光を前眼部に投射する前眼部照明光源が設けられていてもよい。前眼部照明光源は、例えば、赤外光源又は可視光源であってよい。前眼部照明光源は、例えば、前眼部カメラ70の近傍(例えば、前眼部カメラ70の下方位置、上方位置、又は側方位置)に配置されている。前眼部照明光源は1以上の任意の個数設けられてよい。
【0080】
〈固視系80〉
固視系80は、被検眼Eを固視させるための固視光を出力する。固視系80は、複数の可視光源(固視光源)を含む。図3A図3Cでは、5つの固視光源80a~80eが設けられている。これら固視光源80a~80eは、左右方向(X方向)に一列に並べられている。これら固視光源80a~80eは、選択的に点灯される。
【0081】
なお、固視系80に設けられる固視光源の個数は1以上の任意の数であってよい。また、固視系80は、移動可能な固視光源を備えていてもよい。或いは、固視系80は、表示画面の所望の位置に固視標を表示可能な表示装置を備えていてもよい。
【0082】
スリットランプ顕微鏡1の光学系の構成の第2の例を図4Aに示し、その変形例を図4Bに示す。
【0083】
図4Aに示す光学系は、照明系210と、前眼部撮影系220と、固視系240と、観察撮影系260と、前眼部カメラ270a及び270bとを含む。
【0084】
照明系210は、照明光源211、集光レンズ212、スリット形成部213、及び対物レンズ214を含む。図3Aに示す照明系8との関係において、照明光源211は照明光源51に、集光レンズ212は集光レンズ52に、スリット形成部213はスリット形成部53に、対物レンズ214は対物レンズ54に、それぞれ対応する。
【0085】
図3Aに示す照明系8と同様に、照明系210には、可動部が設けられている。可動部は、少なくともスリット形成部213を含む。可動部は、後述の第1移動機構55により移動される。可動部の移動方向は、照明系210の光軸に直交する方向である。典型的には、可動部の移動方向は、スリット形成部213により形成されるスリットの幅方向である(矢印A2を参照)。スリット幅方向は、例えば、スリット形成部213に含まれる一対のスリット刃の間隔が定義される方向である。
【0086】
前眼部撮影系220は、対物レンズ221と、結像レンズ222と、撮像素子223とを含む。撮像素子223は、例えば、CCDイメージセンサ、又は、CMOSイメージセンサである。
【0087】
対物レンズ221と被検眼Eとの間には、光路結合部材230が配置されている。光路結合部材230は、照明系210の光路と前眼部撮影系220の光路とを結合している。光路結合部材230は、例えば、ハーフミラー、又は、ダイクロイックミラーである。ダイクロイックミラーが採用される場合、光路結合部材230は、被検眼Eからの赤外光を透過して撮像素子223に導き、且つ、照明系8からの可視光を反射して被検眼Eに導くように構成される。
【0088】
固視系240は、可視光を出力する固視光源241と、この可視光から固視光を生成する絞り242とを含む。対物レンズ221と結像レンズ222との間には、光路結合部材250が配置されている。光路結合部材250は、固視系240の光路と前眼部撮影系220の光路とを結合している。光路結合部材250は、例えば、ハーフミラー、又は、ダイクロイックミラーである。ダイクロイックミラーが採用される場合、光路結合部材250は、被検眼Eからの赤外光を透過して撮像素子223に導き、且つ、固視系240からの可視光(固視光)を反射して被検眼Eに導くように構成される。
【0089】
観察撮影系260は、図3Aに示す観察撮影系6に相当し、結像レンズ261と、撮像素子262とを含む。なお、図示は省略するが、観察撮影系260は、図3Aに示す観察撮影系6の任意の要素に対応する要素を更に含む。
【0090】
前眼部カメラ270a及び270bは、図3Cに示す前眼部カメラ70a及び70bと同様に、特開2013-248376号公報に開示されたアライメントを実行するために利用可能である。
【0091】
図4Bに示す光学系は、図4Aに示す光学系と同様に、照明系210と、前眼部撮影系220と、固視系240と、観察撮影系260と、前眼部カメラ270a及び270bとを含む。本例では、図4Aの対物レンズ221の代わりに対物レンズ224が設けられている。また、本例では、照明系210の光路と前眼部撮影系220の光路とを結合する光路結合部材230は、対物レンズ224と光路結合部材250との間に配置されている。その余の点については、図4Aに示す光学系と同じであってよい。
【0092】
〈制御系の構成〉
スリットランプ顕微鏡1の制御系について、図5図8Cを参照しながら説明する。スリットランプ顕微鏡1の制御系の構成例を図5に示す。なお、制御系を構成する複数の要素の少なくとも一部がコンピュータ100に含まれていてもよい。
【0093】
〈制御部101〉
制御部101は、スリットランプ顕微鏡1の各部を制御する。例えば、制御部101は、観察撮影系6、照明系8、第1移動機構55、第2移動機構60、前眼部カメラ70、画像合成部120、表示部130、合焦位置検出部150、スキャン位置検出部160、通信部170などを制御する。
【0094】
第1移動機構55は、照明系8の可動部を移動する。第1移動機構55は、アクチュエータを含む。前述したように、照明系8の可動部は、少なくともスリット形成部53(又は、スリット形成部213)を含む。可動部を移動することで、被検眼Eに対するスリット光の投射位置(スリット光の照明位置、照明角度)を変更することが可能となる。
【0095】
第2移動機構60は、照明系8及び観察撮影系6を移動する。第2移動機構60は、例えば、移動機構部3と、支持アーム16及び17と、支持アーム16及び17を移動する機構とを含む。第2移動機構60は、照明系8と観察撮影系6とを互いに独立に移動することが可能であってよい。この独立的な移動は、例えば、照明系8の回動及び観察撮影系6の回動を少なくとも含む。また、この独立的な移動は、照明系8の平行移動及び観察撮影系6の平行移動の少なくとも一方を含んでいてよい。このような独立的な移動により、被検眼Eに対する照明系8の位置(照明位置、照明角度)を変更すること、及び、被検眼Eに対する観察撮影系6の位置(観察位置、観察角度、撮影位置、撮影角度)を変更することが可能となる。
【0096】
ここで、照明角度は、照明系8が所定の基準位置(ニュートラル位置)に配置されているときのその光軸(照明光軸)に対する角度として定義される。同様に、観察角度及び撮影角度は、例えば、観察撮影系6が所定の基準位置(ニュートラル位置)に配置されているときのその光軸(観察撮影光軸)に対する角度として定義される。照明角度の基準と観察角度及び撮影角度の基準とは同じであってもよいし、互いに異なってもよい。前述したように、本例では、観察角度及び撮影角度は、Z方向に対してr方向がなす角度θで表現され、照明角度は、Z方向に対してr方向がなす角度θで表現される。
【0097】
第2移動機構60は、照明系8と観察撮影系6とを一体的に移動することが可能であってよい。この一体的な移動は、例えば、平行移動及び回動の少なくとも一方を含む。この一体的な平行移動は、例えば、照明角度と撮影角度とを保持しつつ前眼部をスキャンするために適用可能である。また、この一体的な回動は、例えば、照明角度と撮影角度とを(連続的に又は段階的に)変化しつつ前眼部をスキャンするために適用可能である。
【0098】
観察撮影系6に関する制御としては、変倍光学系32の制御、撮像素子43の制御、合焦機構40の制御、観察撮影系6を移動させるための第2移動機構60の制御、フォーカス位置検出部150の制御、スキャン位置検出部160の制御などがある。変倍光学系32の制御としては、倍率操作ノブ11に対する操作内容を受けて被検眼Eの肉眼観察像や撮影画像の倍率を変更する制御などがある。撮像素子43の制御としては、撮像素子43の電荷蓄積時間、感度、フレームレート等を変更する制御や、撮像素子43により得られた画像信号GSを画像合成部120に送る制御などがある。合焦機構40の制御としては、合焦機構40による観察撮影系6のフォーカス位置を変更する制御などがある。第2移動機構60の制御としては、観察撮影系6を移動(回動、平行移動)する制御などがある。フォーカス位置検出部150の制御としては、フォーカス位置検出部150により検出された位置を取得し、取得された位置を画像合成部120に送る制御などがある。スキャン位置検出部160の制御としては、スキャン位置検出部160により検出された位置を取得し、取得された位置を画像合成部120に送る制御などがある。
【0099】
照明系8に関する制御としては、照明光源51の制御、スリット形成部53の制御、合焦機構50の制御、照明系8を移動させるための第2移動機構60の制御、フォーカス位置検出部150の制御、スキャン位置検出部160の制御などがある。照明光源51の制御としては、照明光源51の点灯/消灯の切り換え、照明光の光量を変更する制御などがある。スリット形成部53の制御としては、スリット幅を変更する制御、スリットを平行移動する制御、スリットを回転する制御などがある。合焦機構50の制御としては、合焦機構50によるスリット光のフォーカス位置(照明系8のフォーカス位置)を変更する制御などがある。第2移動機構60の制御としては、照明系8を移動(回動、平行移動)する制御などがある。フォーカス位置検出部150の制御としては、フォーカス位置検出部150により検出された位置を取得し、取得された位置を画像合成部120に送る制御などがある。スキャン位置検出部160の制御としては、スキャン位置検出部160により検出された位置を取得し、取得された位置を画像合成部120に送る制御などがある。
【0100】
制御部101は、合焦制御部101Aと、スキャン制御部101Bと、記憶部102とを含む。以下、制御部101が実行可能な各種の制御について、図3A図3Cに例示された構成を参照しつつ説明する。図4A若しくは図4Bに例示された構成又はこれら以外の構成が適用される場合でも同様の制御を実行可能であることは明らかである。
【0101】
合焦制御部101Aは、観察撮影系6のフォーカス位置の制御と、照明系8のフォーカス位置の制御とを実行する
【0102】
図6を参照しつつ合焦制御部101Aの動作について説明する。図6は、被検眼Eの角膜Ecに対する観察撮影系6及び照明系8のフォーカス位置を模式的に表したものである。前述したように、符号31は観察撮影系6の対物レンズであり、符号54は照明系8の対物レンズである。符号Cfは、角膜Ecの前面を示し、符号Cbは角膜Ecの後面を示す。符号Ccは、角膜Ec(角膜前面Cf)の曲率中心位置を示す。例えば、観察撮影系6及び照明系8の回動軸は、曲率中心位置Ccに実質的に一致される。
【0103】
合焦制御部101Aは、被検眼Eの関心部位に対する深さ方向(つまり、回動動作における動径方向)のスキャン(rスキャン)を制御する。合焦制御部101Aは、合焦機構40と合焦機構50とを連係的に制御することができる。例えば、合焦制御部101Aは、合焦機構40及び合焦機構50を制御して、関心部位の深さ方向(つまり、被検眼Eにおける奥行き方向)の位置PS1、PS2、PS3の順番に観察撮影系6のフォーカス位置及び照明系8のフォーカス位置を変更する。観察撮影系6は、各フォーカス位置に対応した被写界深度で被検眼Eを撮影することができる。例えば、観察撮影系6は、位置PS1に対応した被写界深度PC1における被検眼Eの画像を取得することができる。
【0104】
合焦制御部101Aは、撮像装置13に画像を取得させる制御と上記の連係的制御とを交互に実行することができる。それにより、合焦制御部101Aは、被検眼Eの関心部位の深さ方向について複数の断面画像の取得を制御することができる。例えば、合焦制御部101Aは、位置PS1を含む断面の画像と、位置PS2を含む断面の画像と、位置PS3を含む断面の画像とを順次に取得するように制御を行うことができる。
【0105】
スキャン制御部101Bは、被検眼Eの関心部位に対するスキャン位置を水平方向(深さ方向に略直交する方向)に移動するための制御を行う。なお、詳細な説明は省略するが、水平方向と深さ方向との双方に略直交する上下方向にスキャン位置を移動するための制御についても、同じ要領で実行することができる。
【0106】
図7を参照しつつスキャン制御部101Bの動作について説明する。図7は、角膜Ecに対する観察撮影系6及び照明系8のフォーカス位置を模式的に表したものである。なお、図7において、図6と同様の要素及び箇所には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0107】
スキャン制御部101Bは、被検眼Eの関心部位に対する水平方向(つまり、回動動作における偏角方向)のスキャン(θスキャン)を制御する。スキャン制御部101Bは、例えば、照明系8の回動と観察撮影系6の回動とを連係させるように第2移動機構60を制御する。例えば、スキャン制御部101Bは、水平方向のスキャン位置PS1、PS11、PS12の順番に観察撮影系6及び照明系8を移動させる。
【0108】
スキャン制御部101Bは、撮像装置13に画像を取得させる制御と第2移動機構60の制御とを交互に実行することができる。それにより、スキャン制御部101Bは、被検眼Eの関心部位において水平方向に配列された複数の断面画像を取得するための制御を行うことができる。例えば、スキャン制御部101Bは、位置PS1を含む断面の画像と、位置PS11を含む断面の画像と、位置PS12を含む断面の画像とを順次に取得するように制御を行うことができる。
【0109】
水平方向の位置PS1、PS11、PS12のそれぞれにおいて、合焦制御部101Aは、観察撮影系6のフォーカス位置及び照明系8のフォーカス位置を深さ方向に変更することができる。それにより、位置PS1、PS2、PS3、PS11、PS21、PS31、PS12、PS22、PS32のそれぞれについて断面画像を取得することができる。
【0110】
図7では、光学系の回動によるスキャンについて説明したが、スキャン方式はこれに限定されない。例えば、照明系8の可動部の移動によるスキャンを適用することができる。或いは、照明系8の可動部の移動と光学系の平行移動との組み合わせによるスキャンを適用することも可能である。図8A及び図8Bのそれぞれは、照明系8の可動部の移動と光学系の平行移動との組み合わせによるスキャンの例を示す。
【0111】
図8Aに示すように、水晶体の前嚢FLに注目して撮影を行う場合、撮影角度θ=0度の位置(ニュートラル位置)に観察撮影系6が配置され、且つ、照明角度θ=α1≠0度の位置に照明系8が配置される。
【0112】
このような光学系の配置状態で、スキャン制御部101Bは、第1移動機構55を制御することで、少なくともスリット形成部53を含む可動部を移動する(矢印A1で示す移動)。これにより、照明系8により出力されるスリット光の前眼部に対する投射位置が移動される。本例では、スリット幅方向にスリット光が移動される。
【0113】
照明系8の可動部を移動するための第1移動機構55に対する制御に加え、スキャン制御部101Bは、第2移動機構60を制御することで、観察撮影系6と照明系8とを一体的に+X方向及び/又は-X方向に平行移動させることができる(矢印T1で示す平行移動)。なお、本例では、ニュートラル位置に実質的に一致する固視光源80cが点灯される。固視位置は、観察撮影系6及び照明系8が平行移動しても変化しない。つまり、本例の平行移動スキャンにおいて、固視位置は一定である。
【0114】
第1移動機構55及び第2移動機構60の制御と並行して、スキャン制御部101Bは、観察撮影系6に複数回撮影を実行させるための制御を行う。この撮影制御の例として、スキャン制御部101Bは、第1移動機構55及び第2移動機構60の制御と並行して、観察撮影系6に撮影トリガー信号を繰り返し送ることができる。或いは、スキャン制御部101Bは、第1移動機構55及び第2移動機構60の制御の前又はその開始の同時に、観察撮影系6に動画撮影を開始させる制御信号を送ることができる。
【0115】
これにより、前眼部に対するスリット光の投射位置を移動しながら複数回の撮影を行うことができる。図8Aに示す画像G11、G12及びG13は、本例の制御により取得される複数の画像の一部である。これら画像G11~G13に示すように、矢印A1で示す可動部の移動(及び、矢印T1で示す光学系の平行移動)に対応して、前嚢FLの描出位置が変化する。このようにして、水晶体(前嚢FL)の複数の断面(X方向に配列された複数の断面)に対応する複数の画像(断面画像、スリット画像)が取得される。
【0116】
他の例を図8Bに示す。水晶体の前嚢FL及び後嚢RLの双方に注目して撮影を行う場合、撮影角度θ=0度の位置(ニュートラル位置)に観察撮影系6が配置され、且つ、照明角度θ=α2≠0度の位置に照明系8が配置される。ここで、前嚢FL及び後嚢RLの双方に注目する場合の照明角度α2は、前嚢FLに注目する場合の照明角度α1よりも小さい(α2<α1)。
【0117】
このような光学系の配置状態で、スキャン制御部101Bは、第1移動機構55を制御することで、少なくともスリット形成部53を含む可動部を移動する(矢印A1で示す移動)。これにより、照明系8により出力されるスリット光の前眼部に対する投射位置が移動される。本例では、スリット幅方向にスリット光が移動される。
【0118】
照明系8の可動部を移動するための第1移動機構55に対する制御に加え、スキャン制御部101Bは、第2移動機構60を制御することで、観察撮影系6と照明系8とを一体的に+X方向及び/又は-X方向に平行移動させる(矢印T2で示す平行移動)。なお、本例においても、ニュートラル位置に実質的に一致する固視光源80cが適用される。
【0119】
第1移動機構55及び第2移動機構60の制御と並行して、スキャン制御部101Bは、観察撮影系6に複数回撮影を実行させるための制御を行う。この撮影制御は、前嚢FLに注目する場合と同じ要領で実行される。
【0120】
これにより、前眼部に対するスリット光の投射位置を移動しながら複数回の撮影を行うことができる。図8Bに示す画像G21、G22及びG23は、本例の制御により取得される複数の画像の一部である。これら画像G21~G23に示すように、矢印A1で示す可動部の移動(及び、矢印T2で示す光学系の平行移動)に対応して、水晶体(前嚢FL及び後嚢RL)の描出位置が変化する。このようにして、水晶体(前嚢FL及び後嚢RL)の複数の断面(X方向に配列された複数の断面)に対応する複数の画像(断面画像、スリット画像)が取得される。
【0121】
スキャンを行わずに前眼部撮影を行うことも可能である。例えば、図8Cに示すように、ニュートラル位置を挟んで反対方向に同じ角度だけ離れた位置に観察撮影系6と照明系8とを配置して撮影を行うことができる。ここで、θ=-θ、且つ、abs(θ)=abs(θ)=α3≠0である。
【0122】
このような光学系の配置状態で撮影を行うことで、被検眼Eの角膜Cの微細構造を画像化することできる。典型的には、スペキュラーマイクロスコープのように、角膜内皮細胞の画像G31を取得することが可能である。
【0123】
照明系8の可動部の移動(及び、光学系の移動)によるスキャン、つまり複数の断面画像の収集、と並行して、前眼部カメラ70による前眼部の撮影を行うことができる。この前眼部撮影は、複数回の撮影であってよく、動画撮影であってもよい。これにより、スキャン中における前眼部の動きや変化を検出することや、トラッキングを行うことが可能になる。なお、スキャンが行われていないときに前眼部の撮影を行うことも可能である。
【0124】
前眼部カメラ70により取得された前眼部の正面画像とともに、スキャン位置(断面位置)を提示することができる。例えば、スキャン位置を表す画像を正面画像上に表示することができる。ここで、例えば、前眼部カメラ70の位置(既知)と、スキャン位置検出部160からの出力とに基づいて、正面画像とスキャン位置との間の相対位置を求めることが可能である。
【0125】
記憶部102は、各種のコンピュータプログラムやデータを記憶する。コンピュータプログラムには、所定の動作モードにしたがってスリットランプ顕微鏡1を動作させるための演算プログラムや制御プログラムが含まれる。データには、各種の検査において使用されるデータが含まれる。
【0126】
このようなデータの例として、スキャン情報がある。スキャン情報は、例えば、関心部位の複数のスキャン位置に観察撮影系6及び照明系8(並びに、照明系8の可動部)を移動させるための制御情報と、各スキャン位置について1以上の深さ方向の位置に観察撮影系6及び照明系8のフォーカス位置を変更するための制御情報とを含む。これら制御情報は、事前に記憶部102に保存される。制御部101は、記憶部102に記憶されたコンピュータプログラム及びスキャン情報を用いて、スキャン制御部101Bによる水平方向のスキャン位置を制御と、合焦制御部101Aによるフォーカス位置の制御とを、個別的に又は連係的に実行することができる。
【0127】
制御部101は、プロセッサ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブ等を含む。ROMやハードディスクドライブ等の記憶装置には、制御プログラムがあらかじめ記憶されている。制御部101の動作は、制御プログラム等のソフトウェアと、プロセッサ等のハードウェアとが協働することによって実現される。制御部101は、スリットランプ顕微鏡1の本体(例えば基台4内)やコンピュータ100に配置される。
【0128】
〈画像合成部120〉
画像合成部120は、合焦制御部101A及び/又はスキャン制御部101Bが実行する上記制御にしたがって撮像装置13により取得された複数の断面画像を合成する。
【0129】
例えば、画像合成部120は、合焦機構40及び合焦機構50によりフォーカス位置を変更しつつ撮像装置13により取得された複数の断面画像を合成する。この場合、複数の断面画像は深さ方向に配列されている。換言すると、複数の断面画像がそれぞれ描写する複数の断面は、同一平面内に配置されている。このような複数の断面画像から構築される合成画像は、個々の断面画像よりも深い被写界深度の(換言すると、パンフォーカスの、又は、ディープフォーカスの)2次元断面画像である。
【0130】
画像合成部120は、断面が同一の平面内に配置されていない複数の(2次元)断面画像を合成することにより3次元画像を形成することができる。3次元画像とは、3次元座標系により画素の位置が定義された画像(画像データ)を意味する。
【0131】
3次元画像の例として、複数の断面画像のスタックデータがある。スタックデータは、複数のスキャン位置において得られた複数の断面画像を、スキャン位置の位置関係に基づいて3次元的に配置して得られる画像データである。より具体的に説明すると、スタックデータは、元々個別の2次元座標系により定義されていた複数の断面画像を、同じ3次元座標系により表現する(つまり、同じ3次元空間に埋め込む)ことにより得られる画像データである。
【0132】
合焦機構40及び合焦機構50によりフォーカス位置を変更しつつ撮像装置13により取得された複数の断面画像からスタックデータを形成するとき、これら断面画像のそれぞれをZ方向に沿う断面に投影することができる。例えば、照明角度θ≠0度で撮影された断面画像を、Z方向に沿う断面(例えば、XZ断面又はYZ断面)に投影することができる。これにより、互いに平行な複数の投影画像が得られる。各投影画像の位置は、対応する断面画像に基づき決定される。例えば、対応する断面画像の所定位置(例えば、中心位置)と投影画像の所定位置(例えば、中心位置)とが一致するように、投影画像の位置を決定することができる。このようにしてそれぞれの位置が決定された複数の投影画像を同じ3次元空間に埋め込むことで、スタックデータを形成することが可能である。
【0133】
3次元画像の他の例としてボリュームデータ(ボクセルデータとも呼ばれる)がある。ボリュームデータは、3次元的な画素であるボクセルが3次元的に配列された画像データである。ボリュームデータは、例えば、スタックデータに補間処理を施し、画素を3次元化(ボクセル化)することによって形成される。
【0134】
このような画像合成処理を実行するために、画像合成部120は、配列処理部121と合成処理部122とを含む。
【0135】
配列処理部121は、rスキャン、θスキャン(光学系の回動)、又はこれらの組み合わせにより取得された複数の断面画像の配列を、これら断面画像に関連付けられた位置情報(例えば、フォーカス位置、断面位置)に基づき特定し、特定された配列にしたがって複数の断面画像を配置することができる。或いは、配列処理部121は、rスキャン、θスキャン(光学系の回動)、又はこれらの組み合わせにより取得された複数の断面画像に基づく複数の投影画像の配列を、これら投影画像に関連付けられた位置情報(例えば、フォーカス位置、断面位置)に基づき特定し、特定された配列にしたがって複数の投影画像を配置することができる。
【0136】
また、配列処理部121は、照明系8の可動部の移動により取得された複数の断面画像の配列を、対応する断面位置に基づき特定し、特定された配列にしたがって複数の断面画像を配置する。或いは、配列処理部121は、照明系8の可動部の移動により取得された複数の断面画像に基づく複数の投影画像の配列を、これら投影画像に関連付けられた位置情報(例えば、断面位置)に基づき特定し、特定された配列にしたがって複数の投影画像を配置することができる。
【0137】
また、配列処理部121は、照明系8の可動部の移動とrスキャン及び光学系の平行移動の一方又は双方との組み合わせにより取得された複数の断面画像の配列を、これら断面画像に関連付けられた位置情報(例えば、フォーカス位置、断面位置)に基づき特定し、特定された配列にしたがって複数の断面画像を配置する。或いは、配列処理部121は、照明系8の可動部の移動とrスキャン及び光学系の平行移動の一方又は双方との組み合わせにより取得された複数の断面画像に基づく複数の投影画像の配列を、これら投影画像に関連付けられた位置情報(例えば、フォーカス位置、断面位置)に基づき特定し、特定された配列にしたがって複数の投影画像を配置することができる。
【0138】
また、配列処理部121は、rスキャンと光学系の平行移動との組み合わせにより取得された複数の断面画像の配列を、これら断面画像に関連付けられた位置情報(例えば、フォーカス位置、断面位置)に基づき特定し、特定された配列にしたがって複数の断面画像を配置する。或いは、配列処理部121は、rスキャンと光学系の平行移動との組み合わせにより取得された複数の断面画像に基づく複数の投影画像の配列を、これら投影画像に関連付けられた位置情報(例えば、フォーカス位置、断面位置)に基づき特定し、特定された配列にしたがって複数の投影画像を配置することができる。
【0139】
例えば、配列処理部121は、フォーカス位置検出部150により検出されたスリット光のフォーカス位置(例えば、前述した位置情報)を制御部101から受けて、複数の断面画像(又は、複数の投影画像)を配列することができる。また、配列処理部121は、スキャン位置検出部160により検出された照明系8の可動部の位置並びに観察撮影系6及び照明系8の位置(例えば、前述した位置情報)を制御部101から受けて、複数の断面画像(又は、複数の投影画像)を配列することができる。
【0140】
合成処理部122は、配列処理部121により配列された複数の断面画像を合成する。この画像合成処理は、例えば、スタックデータを形成する処理を含んでよく、ボリュームデータを形成する処理を更に含んでよい。
【0141】
このような一連の処理を実行することにより、画像合成部120は、被検眼Eの前眼部の複数の断面画像に基づく3次元画像や2次元画像を形成することができる。
【0142】
他の例において、画像合成部120は、前述した位置情報を用いることなく複数の断面画像を合成することができる。例えば、画像合成部120は、異なる2以上の断面画像において共通の部位を描出している画像領域(共通領域)を画像解析によって特定し、特定された共通領域が重なるようにこれら断面画像を貼り合わせることができる。このような画像解析が適用される場合、フォーカス位置検出部150やスキャン位置検出部160が設けられる必要はない。ただし、フォーカス位置検出部150やスキャン位置検出部160により得られた情報を「画像の位置の粗調整」に利用し、その後に画像解析による「画像の位置の微調整」を行うようにしてもよい。
【0143】
画像合成部120の機能の少なくとも一部が、スリットランプ顕微鏡1と異なる装置に設けられていてもよい。例えば、スリットランプ顕微鏡1との間で通信が可能なコンピュータに、画像合成部120の機能の少なくとも一部を設けることができる。その具体例として、スリットランプ顕微鏡1が設置されている施設に設けられたコンピュータ(例えば、端末3000-n、サーバなど)に、画像合成部120の機能の少なくとも一部を設けることができる。或いは、管理サーバ4000又はこれとの間で通信が可能なコンピュータに、画像合成部120の機能の少なくとも一部を設けることができる。他の例として、遠隔端末5000m又はこれとの間で通信が可能なコンピュータに、画像合成部120の機能の少なくとも一部を設けることができる。
【0144】
〈フォーカス位置検出部150〉
フォーカス位置検出部150は、例えば、観察撮影系6のフォーカス位置を検出する第1フォーカス位置検出部と、照明系8のフォーカス位置を検出する第2フォーカス位置検出部とを含む。第1フォーカス位置検出部及び/又は第2フォーカス位置検出部は、例えば、エンコーダーやポテンショメーターなどの位置センサーを含んでよい。
【0145】
或いは、第1フォーカス位置検出部は、合焦制御部101Aが観察撮影系6に対して実行した制御の内容(つまり、制御の履歴)に基づいて観察撮影系6のフォーカス位置を求めるプロセッサを含んでもよい。同様に、第2フォーカス位置検出部は、合焦制御部101Aが照明系8に対して実行した制御の内容(つまり、制御の履歴)に基づいて照明系8のフォーカス位置を求めるプロセッサを含んでもよい。
【0146】
〈スキャン位置検出部160〉
スキャン位置検出部160は、例えば、観察撮影系6の位置を検出する第1位置検出部と、照明系8の位置を検出する第2位置検出部と、照明系8の可動部の位置を検出する第3位置検出部とを含む。
【0147】
第1位置検出部及び/又は第2位置検出部は、例えば、基台4の位置を検出するための位置センサーと、支持アーム16及び17の位置を検出するための回動角度センサーとを含む。或いは、第1位置検出部は、スキャン制御部101Bが観察撮影系6に対して実行した制御の内容(つまり、制御の履歴)に基づいて観察撮影系6の位置を求めるプロセッサを含んでもよい。同様に、第2位置検出部は、スキャン制御部101Bが照明系8に対して実行した制御の内容(つまり、制御の履歴)に基づいて照明系8の位置を求めるプロセッサを含んでもよい。
【0148】
第3位置検出部は、例えば、ユニットとして構成された可動部(前述したように、可動部は、照明系8に含まれる複数の要素のうち、少なくともスリット形成部53を含む)の位置を検出するための位置センサーを含む。或いは、第3位置検出部は、可動部に含まれるそれぞれの要素の位置を検出するための位置センサーを含む。他の例として、第3位置検出部は、スキャン制御部101Bが可動部(第1移動機構55)に対して実行した制御の内容(つまり、制御の履歴)に基づいて可動部の位置(又は、可動部に含まれるそれぞれの要素の位置)を求めるプロセッサを含んでもよい。
【0149】
〈表示部130〉
表示部130は、制御部101の制御を受けて各種の情報を表示する。例えば、表示部130は、液晶ディスプレイ(LCD)などのフラットパネルディスプレイを含む。表示部130は、スリットランプ顕微鏡1の本体に設けられていてもよいし、コンピュータ100に設けられていてもよい。
【0150】
〈操作部140〉
操作部140は、スリットランプ顕微鏡1を操作するための操作デバイスや、情報を入力するための入力デバイスを含む。操作部140には、スリットランプ顕微鏡1に設けられたボタンやスイッチ(例えば、操作ハンドル5、倍率操作ノブ11など)や、コンピュータ100に設けられた操作デバイス(例えば、マウス、キーボードなど)が含まれる。また、操作部140は、トラックボール、操作パネル、スイッチ、ボタン、ダイアルなど、任意の操作デバイスや入力デバイスを含んでいてよい。
【0151】
図5では、表示部130と操作部140とを別々に表しているが、表示部130の少なくとも一部と操作部140の少なくとも一部とが同じデバイスであってもよい。その具体例として、タッチスクリーンがある。
【0152】
〈通信部170〉
通信部170は、スリットランプ顕微鏡1と他の装置との間におけるデータ通信を行う。データ通信の方式は任意である。例えば、通信部170は、インターネットに準拠した通信インターフェイス、専用線に準拠した通信インターフェイス、LANに準拠した通信インターフェイス、近距離通信に準拠した通信インターフェイスなどを含む。データ通信は有線通信でも無線通信でもよい。
【0153】
通信部170により送受信されるデータは暗号化されていてよい。その場合、例えば、制御部101は、送信データを暗号化する暗号化処理部と、受信データを復号化する復号化処理部とを含む。
【0154】
〈管理サーバ4000〉
管理サーバ4000の構成について説明する。図9に例示された管理サーバ4000は、制御部4010と、通信確立部4100と、通信部4200とを備える。
【0155】
〈制御部4010〉
制御部4010は、管理サーバ4000の各部の制御を実行する。制御部4010は、その他の演算処理を実行可能であってよい。制御部4010はプロセッサを含む。制御部4010は、更に、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブなどを含んでいてよい。
【0156】
制御部4010は、通信制御部4011と転送制御部4012とを含む。
【0157】
通信制御部4011は、複数の眼科撮影装置2000-iと複数の端末3000-nと複数の遠隔端末5000mとを含む複数の装置の間における通信の確立に関する制御を実行する。例えば、通信制御部4011は、眼科システム1000に含まれる複数の装置のうちから後述の選択部4120によって選択された2以上の装置のそれぞれに向けて、通信を確立するための制御信号を送る。
【0158】
転送制御部4012は、通信確立部4100(及び通信制御部4011)により通信が確立された2以上の装置の間における情報のやりとりに関する制御を行う。例えば、転送制御部4012は、通信確立部4100(及び通信制御部4011)により通信が確立された少なくとも2つの装置のうちの一方の装置から送信された情報を他の装置に転送するように機能する。
【0159】
具体例として、眼科撮影装置2000-iと遠隔端末5000mとの間の通信が確立された場合、転送制御部4012は、眼科撮影装置2000-iから送信された情報(例えば、眼科撮影装置2000-iにより取得された画像、眼科撮影装置2000-iに入力された情報など)を遠隔端末5000mに転送することができる。逆に、転送制御部4012は、遠隔端末5000mから送信された情報(例えば、眼科撮影装置2000-iの動作モードの指定結果)を眼科撮影装置2000-iに転送することができる。
【0160】
転送制御部4012は、送信元の装置から受信した情報を加工する機能を有していてもよい。この場合、転送制御部4012は、受信した情報と、加工処理により得られた情報との少なくとも一方を転送先の装置に送信することができる。
【0161】
例えば、転送制御部4012は、眼科撮影装置2000-i等から送信された情報の一部を抽出して遠隔端末5000m等に送信することができる。また、眼科撮影装置2000-i等から送信された情報(例えば、被検眼Eの画像)を管理サーバ4000又は他の装置によって解析し、その解析結果(及び元の情報)を遠隔端末5000m等に送信するようにしてもよい。
【0162】
スリットランプ顕微鏡1(眼科撮影装置2000-i)から複数の断面画像が送信された場合、管理サーバ4000又は他の装置が、これら断面画像から3次元画像(例えば、スタックデータ又はボリュームデータ)を構築し、転送制御部4012が、構築された3次元画像を遠隔端末5000mに送信するように構成することが可能である。
【0163】
また、スリットランプ顕微鏡1(眼科撮影装置2000-i)からスタックデータが送信された場合、管理サーバ4000又は他の装置が、このスタックデータからボリュームデータを構築し、転送制御部4012が、構築されたボリュームデータを遠隔端末5000mに送信するように構成することが可能である。
【0164】
管理サーバ4000又は他の装置により実行可能なデータ加工処理は、上記した例には限定されず、任意のデータ処理を含んでいてよい。
【0165】
〈通信確立部4100〉
通信確立部4100は、複数の眼科撮影装置2000-iと複数の端末3000-nと複数の遠隔端末5000mとを含む複数の装置のうちから選択された少なくとも2つの装置の間における通信を確立するための処理を実行する。本実施形態において「通信の確立」とは、例えば、(1)通信が切断された状態から一方向通信を確立すること、(2)通信が切断された状態から双方向通信を確立すること、(3)受信のみが可能な状態から送信も可能な状態に切り替えること、(4)送信のみが可能な状態から受信も可能な状態に切り替えること、のうちの少なくとも1つを含む概念である。
【0166】
更に、通信確立部4100は、確立されている通信を切断する処理を実行可能である。本実施形態において「通信の切断」とは、例えば、(1)一方向通信が確立された状態から通信を切断すること、(2)双方向通信が確立された状態から通信を切断すること、(3)双方向通信が確立された状態から一方向通信に切り替えること、(4)送信及び受信が可能な状態から受信のみが可能な状態に切り替えること、(5)送信及び受信が可能な状態から送信のみが可能な状態に切り替えること、のうちの少なくとも1つを含む概念である。
【0167】
眼科撮影装置2000-i、端末3000-n、及び遠隔端末5000mのそれぞれは、他の装置(そのユーザー)を呼び出すための通信要求(呼び出し要求)と、他の2つの装置の間の通信に割り込むための通信要求(割り込み要求)とのうちの少なくとも一方を管理サーバ4000に送信することができる。呼び出し要求及び割り込み要求は、手動又は自動で発信される。管理サーバ4000(通信部4200)は、眼科撮影装置2000-i、端末3000-n、又は遠隔端末5000mから送信された通信要求を受信する。
【0168】
本実施形態において、通信確立部4100は選択部4120を含んでいてよい。選択部4120は、例えば、眼科撮影装置2000-i、端末3000-n、又は遠隔端末5000mから送信された通信要求に基づいて、眼科撮影装置2000-i、端末3000-n、及び遠隔端末5000mのうちから、当該通信要求を送信した装置以外の1以上の装置を選択する。
【0169】
選択部4120が実行する処理の具体例を説明する。眼科撮影装置2000-i又は端末3000-nからの通信要求(例えば、眼科撮影装置2000-iにより取得された画像の読影の要求)を受けた場合、選択部4120は、例えば、複数の遠隔端末5000mのうちのいずれかを選択する。通信確立部4100は、選択された遠隔端末5000mと、眼科撮影装置2000-i及び端末3000-nの少なくとも一方との間の通信を確立する。
【0170】
通信要求に応じた装置の選択は、例えば、予め設定された属性に基づいて実行される。この属性の例として、検査の種別(例えば、撮影モダリティの種別、画像の種別、疾患の種別、候補疾患の種別など)や、要求される専門度・熟練度や、言語の種別などがある。本例に係る処理を実現するために、通信確立部4100は、予め作成された属性情報が記憶された記憶部411を含んでいてよい。属性情報には、遠隔端末5000m及び/又はその使用者(医師)の属性が記録されている。
【0171】
医師の識別は、例えば、事前に割り当てられた医師IDによって行われる。また、遠隔端末5000mの識別は、例えば、事前に割り当てられた装置IDやネットワークアドレスによって行われる。典型的な例において、属性情報は、各医師の属性として、専門分野(例えば、診療科、専門とする疾患など)、専門度・熟練度、使用可能な言語の種別などを含む。
【0172】
選択部4120が属性情報を参照する場合、眼科撮影装置2000-i、端末3000-n、又は遠隔端末5000mから送信される通信要求は、属性に関する情報を含んでいてよい。例えば、眼科撮影装置2000-iから送信される読影要求(つまり、診断要求)は、次のいずれかの情報を含んでいてよい:(1)撮影モダリティの種別を示す情報;(2)画像の種別を示す情報;(3)疾患名や候補疾患名を示す情報;(4)読影の難易度を示す情報;(5)眼科撮影装置2000-i及び/又は端末3000-nのユーザーの使用言語を示す情報。
【0173】
このような読影要求を受信した場合、選択部4120は、この読影要求と記憶部4110に記憶された属性情報とに基づいて、いずれかの遠隔端末5000mを選択することができる。このとき、選択部4120は、読影要求に含まれる属性に関する情報と、記憶部4110に記憶された属性情報に記録された情報とを照合する。それにより、選択部4120は、例えば、次のいずれかの属性に該当する医師に対応する遠隔端末5000mを選択する:(1)当該撮影モダリティを専門とする医師;(2)当該画像種別を専門とする医師;(3)当該疾患(当該候補疾患)を専門とする医師;(4)当該難易度の読影が可能な医師;(5)当該言語を使用可能な医師。
【0174】
なお、医師と遠隔端末5000mとの間の対応付けは、例えば、遠隔端末5000m(又は眼科システム1000)へのログイン時に入力された医師IDによってなされる。
【0175】
〈通信部4200〉
通信部4200は、他の装置(例えば、眼科撮影装置2000-i、端末3000-n、及び遠隔端末5000mのいずれか)との間でデータ通信を行う。データ通信の方式や暗号化については、眼科撮影装置2000-iの通信部170と同様であってよい。
【0176】
〈遠隔端末5000m〉
遠隔端末5000mの構成について説明する。図10に例示された遠隔端末5000mは、制御部5010と、データ処理部5100と、通信部5200と、操作部5300とを備える。
【0177】
〈制御部5010〉
制御部5010は、遠隔端末5000mの各部の制御を実行する。制御部5010は、その他の演算処理を実行可能であってよい。制御部5010は、プロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブなどを含む。
【0178】
制御部5010は表示制御部5011を含む。表示制御部5011は、表示装置6000mを制御する。表示装置6000mは、遠隔端末5000mに含まれてもよいし、遠隔端末5000mに接続された周辺機器であってもよい。表示制御部5011は、被検眼Eの前眼部の画像を表示装置6000mに表示させる。前眼部の画像としては、3次元画像のレンダリング画像、正面画像(又は、斜方画像)、OCT画像、解析結果を表す画像、スリット画像などがある。
【0179】
制御部5010はレポート作成制御部5012を含む。レポート作成制御部5012は、表示制御部5011により表示された情報に関するレポートを作成するための各種の制御を実行する。例えば、レポート作成制御部5012は、レポートを作成するための画面やグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)を表示装置6000mに表示させる。また、レポート作成制御部5012は、ユーザーが入力した情報や、前眼部の画像や、画像の解析データなどを、所定のレポートテンプレートに入力する。
【0180】
〈データ処理部5100〉
データ処理部5100は、各種のデータ処理を実行する。
【0181】
例えば、データ処理部5100は、スリットランプ顕微鏡1(眼科撮影装置2000-i)から送信された複数の断面画像から3次元画像(例えば、スタックデータ又はボリュームデータ)を構築することができる。また、データ処理部5100は、スリットランプ顕微鏡1(眼科撮影装置2000-i)から送信されたスタックデータからボリュームデータを構築することができる。
【0182】
データ処理部5100は、レジストレーション部5105と、部分領域指定部5110と、レンダリング部5120と、解析部5130とを含む。
【0183】
レジストレーション部5105は、前眼部の正面画像と3次元画像との間のレジストレーションを行う。前述したように、前眼部カメラ70の位置(既知)と、スキャン位置検出部160からの出力とに基づいて、前眼部カメラ70により取得された正面画像と、3次元画像を取得するためのスキャンが適用された位置(スキャン位置)との間の相対位置を求めることが可能である。レジストレーション部5105は、この相対位置に基づいて、前眼部の正面画像と3次元画像との間のレジストレーションを行うことができる。
【0184】
他の例において、レジストレーション部5105は、前眼部の3次元画像をZ方向に投影して正面画像(プロジェクション画像)を構築し、前眼部カメラ70により取得された正面画像とプロジェクション画像との間のレジストレーションを行うことができる。本例のレジストレーション部5105は、前眼部カメラ70により取得された正面画像中の特徴点を特定する処理と、プロジェクション画像中の特徴点を特定する処理とを実行し、互いの特徴点の位置が合致するように正面画像とプロジェクション画像との間のレジストレーションを行う。本例によれば、スキャン位置の検出を行う必要がない。
【0185】
部分領域指定部5110は、眼科撮影装置2000-iから送信された画像又はそれに基づき表示された画像について、その部分領域を指定する。
【0186】
部分領域指定部5110により実行可能な処理の例を説明する。スリットランプ顕微鏡1(眼科撮影装置2000-i)を用いて被検眼Eの前眼部の複数の断面画像が得られた場合、スリットランプ顕微鏡1、管理サーバ4000、遠隔端末5000m、又は他の装置によって、被検眼Eの前眼部の3次元画像が形成される。このような3次元画像が遠隔端末5000mに入力されたとする。制御部5010は、前述したハードディスクドライブ又はソリッドステートドライブ等の記憶装置に3次元画像を保存する。
【0187】
表示制御部5011は、この3次元画像に基づく画像を表示装置6000mに表示させることができる。例えば、制御部5010は、3次元画像(例えば、スタックデータ又はボリュームデータ)をレンダリング部5120に送る。レンダリング部5120は、3次元画像をレンダリングして画像を形成する。表示制御部5011は、レンダリング部5120により形成された画像を表示装置6000mに表示させる。
【0188】
遠隔端末5000mのユーザー(医師)は、表示装置6000mに表示された画像の部分領域を指定することができる。この指定操作は操作部5300を用いて行われる。例えば、ユーザーは、ポインティングデバイスを用いて表示画像の所望の範囲を指定することができる。
【0189】
部分領域指定部5110は、ユーザーにより指定された表示画像の部分領域に対応する3次元画像の部分領域を特定する。ここで、表示画像は3次元画像をレンダリングして得られた画像である。したがって、表示画像の部分領域に対応する3次元画像の部分領域は、このレンダリングの処理内容に基づき容易に特定される。
【0190】
他の例を説明する。被検眼Eの他の画像(参照画像と呼ぶ)が過去に取得された場合、この参照画像を利用して3次元画像の部分領域を指定することができる。参照画像は、例えば、前眼部カメラ70により取得された正面画像であってよい。或いは、前眼部のOCT画像を参照画像とすることも可能である。
【0191】
参照画像の少なくとも一部と3次元画像の少なくとも一部とが被検眼Eの同じ部位を描出していてよい。或いは、参照画像の少なくとも一部が描出している部位と3次元画像の少なくとも一部が描出している部位との双方を描出した広域画像を更に利用することも可能である。このような画像を利用することで、レジストレーション部5105は、参照画像と3次元画像との間のレジストレーションを行うことができる。
【0192】
表示制御部5011は、参照画像(又は広域画像)を表示装置6000mに表示させることができる。ユーザーは、操作部5300を用いて、参照画像(又は広域画像)の部分領域を指定することができる。部分領域指定部5110は、ユーザーにより指定された参照画像(又は広域画像)の部分領域と、レジストレーションの結果とに基づいて、3次元画像の部分領域を指定することができる。
【0193】
以上、ユーザーの操作に基づいて3次元画像の部分領域を指定する場合の例を説明したが、手動での指定はこれらに限定されない。一方、ユーザーの操作によらず、部分領域指定部5110が自動で3次元画像の部分領域を指定するようにしてもよい。人工知能プロセッサを用いてこのような自動指定を行ってもよい。
【0194】
一例において、部分領域指定部5110は、前眼部の正面画像を解析することにより、又は、3次元画像及びそれに基づく表示画像の少なくとも一方を解析することにより、3次元画像の部分領域を指定することができる。例えば、部分領域指定部5110は、3次元画像又は表示画像にセグメンテーションを適用して被検眼Eの所定の組織に相当する画像領域を特定し、特定された画像領域に基づいて部分領域を指定することができる。被検眼Eの所定の組織は、例えば、任意の条件にしたがって決定される。この条件の例として、撮影モダリティの種別、画像の種別、(候補)疾患名などがある。
【0195】
レンダリング部5120は、画像に対してレンダリングを適用する。例えば、レンダリング部5120は、部分領域指定部5110により指定された3次元画像の部分領域に基づいて、この3次元画像をレンダリングする。
【0196】
レンダリングは任意の処理であってよく、例えば3次元コンピュータグラフィクスを含む。3次元コンピュータグラフィクスは、3次元座標系により定義された3次元空間内の仮想的な立体物(スタックデータ、ボリュームデータなどの3次元画像)を2次元情報に変換することにより立体感のある画像を作成する演算手法である。
【0197】
レンダリングの例として、ボリュームレンダリング法、最大値投影法(MIP)、最小値投影法(MinIP)、サーフェスレンダリング法、多断面再構成法(MPR)、プロジェクション画像形成、シャドウグラム形成などがある。レンダリングの更なる例として、スリットランプ顕微鏡1で得られた断面画像の再現、シャインプルーフ画像の形成などがある。また、レンダリング部5120は、このようなレンダリングとともに適用される任意の処理を実行可能であってよい。
【0198】
解析部5130は、被検眼Eの前眼部の3次元画像、そのレンダリング画像、正面画像などを解析する。
【0199】
レンダリング部5120は、前眼部の3次元画像において角膜に相当する領域(角膜領域)を特定することができる。例えば、レンダリング部5120は、角膜の表面(前面)に相当する領域(角膜表面領域)を特定することができる。また、レンダリング部5120は、角膜の裏面(後面)に相当する領域(角膜裏面領域)を特定することができる。このような画像領域特定は、例えば、セグメンテーション、エッジ検出、閾値処理など、公知の画像処理を含む。
【0200】
レンダリング部5120が角膜表面領域を特定した場合、解析部5130は、この角膜表面領域を解析して角膜曲率半径を求めることができる。例えば、解析部5130は、角膜の1以上の代表点(角膜頂点など)における曲率半径を算出することができる。レポート作成制御部5012は、解析部5130により求められた角膜曲率半径及びこれに基づく情報の少なくとも一方を、レポートテンプレートに入力することができる。ここで、角膜曲率半径に基づく情報の例として、コンタクトレンズの識別情報(型番など)がある。
【0201】
解析部5130は、レンダリング部5120により特定された角膜表面領域に基づいて、角膜の多数の位置における曲率半径を算出してもよい。つまり、解析部5130は、角膜曲率半径分布を求めてもよい。更に、解析部5130は、予め設定された標準分布からの角膜曲率半径分布の偏差を表す偏差分布を求めることができる。この処理は、角膜曲率半径分布と標準分布との間のレジストレーションと、対応位置の値同士の比較(差分など)とを含む。レポート作成制御部5012は、解析部5130により求められた偏差分布及びこれに基づく情報の少なくとも一方を、レポートテンプレートに入力することができる。ここで、偏差分布に基づく情報の例として、コンタクトレンズの識別情報(型番など)がある。
【0202】
表示制御部5011は、解析部5130により求められた偏差分布を表示装置6000mに表示させることができる。このとき、標準値に対する偏差の大きさを色で表すことができる。これにより、角膜曲率半径の偏差分布を表すカラーマップが表示される。レポート作成制御部5012は、このようなカラーマップをレポートに入力することが可能である。
【0203】
前述したように、レジストレーション部5105は、前眼部カメラ70により取得された正面画像とスキャンに基づく3次元画像との間のレジストレーションを行うことができる。表示制御部5011は、この正面画像を表示装置6000mに表示させることができる。ユーザーは、操作部5300等のユーザーインターフェイスを用いて、表示された正面画像中の注目領域を指定することができる。注目領域は、例えば、断面を表す線分、又は、3次元領域を表すエリアである。レンダリング部5120は、指定された注目領域に対応する3次元画像の部分領域を、正面画像と3次元画像との間のレジストレーションの結果に基づいて特定する。更に、レンダリング部5120は、特定された部分領域に対応するレンダリング画像を形成する。例えば、正面画像に対して線分が指定された場合、レンダリング部5120は、この線分を含む平面(断面)を表す断面画像を形成する。また、正面画像に対して2次元エリアが指定された場合、レンダリング部5120は、この2次元エリアを含む3次元領域を表すレンダリング画像(例えば、ボリュームレンダリング画像)を形成する。
【0204】
ユーザーが指定した注目領域に対応する3次元画像の部分領域をレンダリング部5120が特定した場合、表示制御部5011は、この部分領域に対応するレンダリング画像と、前眼部カメラ70により取得された正面画像とを、表示装置6000mに表示させることができる。更に、表示制御部5011は、このレンダリング画像に対応する領域を表す画像(レンダリング領域画像)を、正面画像上に表示させることができる。レンダリング領域画像は、例えば、ユーザーが正面画像に対して指定した位置を表す画像であり、典型的には、線分の位置を示す画像、又は、前述した2次元エリアの位置を示す画像である。
【0205】
レンダリング部5120は、スキャンに基づく3次元画像から立体画像を形成することができる。立体画像は、例えば、ボリュームレンダリング画像、サーフェスレンダリング画像、セグメンテーションで特定された3次元領域を表現した画像などであってよい。表示制御部5011は、レンダリング部5120により形成された立体画像を表示装置6000mに表示させることができる。ユーザーは、操作部5300等のユーザーインターフェイスを用いて、表示装置6000mに表示されている立体画像を操作することができる。この操作の例として、回転、拡大/縮小などがある。回転操作は、例えば、ドラッグ操作であってよい。拡大/縮小操作は、例えば、GUI(ウィジェット)に対する操作、スクロールホイールの操作であってよい。また、立体画像の不透明度(アルファ値)を操作することも可能である。例えば、立体画像の一部の不透明度を低く設定することで、その奥に位置する箇所を透過的に観察することができる。
【0206】
レンダリング部5120は、スキャンに基づく3次元画像中の水晶体領域を特定することができる。この処理は、例えばセグメンテーション、エッジ検出などを含む。解析部5130は、レンダリング部5120により特定された水晶体領域を解析して混濁分布を求めることができる。この処理は、例えば、閾値処理などを含む。水晶体の混濁は、白内障眼などにおいて見られる。レポート作成制御部5012は、求められた混濁分布及びこれに基づく情報の少なくとも一方を、レポートテンプレートに入力することができる。混濁分布は、例えば、マップとして表現される。混濁分布を表すマップは、混濁の強さを色で表現したカラーマップであってもよい。表示制御部5011は、このような混濁分布(マップ)を表示装置6000mに表示させることができる。また、水晶体領域を任意に回転して観察することや、水晶体領域の任意のスライスを観察することなどが可能である。また、水晶体領域に対して任意の解析(例えば、厚み測定、体積測定など)を適用することも可能である。
【0207】
レンダリング部5120は、スキャンに基づく3次元画像中の硝子体領域を特定することができる。この処理は、例えばセグメンテーション、エッジ検出などを含む。硝子体領域を任意に回転して観察することや、硝子体領域の任意のスライスを観察することなどが可能である。また、硝子体領域に対して任意の解析(例えば、後部硝子体皮質前ポケットの測定など)を適用することも可能である。
【0208】
〈通信部5200〉
通信部5200は、他の装置(例えば、眼科撮影装置2000-i、端末3000-n、及び管理サーバ4000のいずれか)との間でデータ通信を行う。データ通信の方式や暗号化については、眼科撮影装置2000-iの通信部170と同様であってよい。
【0209】
〈操作部5300〉
操作部5300は、遠隔端末5000mの操作、遠隔端末5000mへの情報入力などに使用される。本実施形態では、操作部5300はレポートの作成に使用される。操作部5300は、操作デバイスや入力デバイスを含む。操作部5300は、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、操作パネル、スイッチ、ボタン、ダイアルなどを含む。操作部5300は、タッチスクリーンを含んでもよい。
【0210】
スリットランプ顕微鏡1の動作モードを指定するために操作部5300を用いることができる。スリットランプ顕微鏡1については、1以上の動作モードが予め設けられている。本実施形態では、3次元撮影モードを設けることができる。3次元撮影モードは、被検眼の3次元画像を取得するための動作モードである。3次元撮影モードにおいて、スリットランプ顕微鏡1の制御部101は、照明系8と観察撮影系6と第1移動機構55と第2移動機構60と合焦機構40及び50とを連係的に制御することにより、被検眼Eの前眼部の複数の断面画像を撮像装置13に取得させる。
【0211】
スリットランプ顕微鏡1の動作モードは3次元撮影モードに限定されない。例えば、前嚢撮影モード、前嚢後嚢撮影モード、角膜内皮細胞撮影モードなど、撮影部位や撮影手法に対応する動作モードを設けることができる。
【0212】
前嚢撮影モードが指定されると、その指定結果を示す信号が、遠隔端末5000mから(管理サーバ4000を介して)スリットランプ顕微鏡1に送信される。スリットランプ顕微鏡1の制御部101(例えば、スキャン制御部101B)は、観察撮影系6、照明系8、及び照明系8の可動部を図8Aに示す状態に配置するように第1移動機構55及び第2移動機構60を制御する。これにより、観察撮影系6、照明系8、及び照明系8の可動部が、それぞれ図8Aに示す初期位置に配置される。遠隔端末5000mのユーザー又はスリットランプ顕微鏡1のユーザーは、例えば、この状態で取得される画像を参照することで、観察撮影系6の位置、照明系8の位置、及び照明系8の可動部の位置のうち所望の位置を調整することができる。
【0213】
前嚢後嚢撮影モードが指定されると、その指定結果を示す信号が、遠隔端末5000mから(管理サーバ4000を介して)スリットランプ顕微鏡1に送信される。スリットランプ顕微鏡1の制御部101(例えば、スキャン制御部101B)は、観察撮影系6、照明系8、及び照明系8の可動部を図8Bに示す状態に配置するように第1移動機構55及び第2移動機構60を制御する。これにより、観察撮影系6、照明系8、及び照明系8の可動部が、それぞれ図8Bに示す初期位置に配置される。遠隔端末5000mのユーザー又はスリットランプ顕微鏡1のユーザーは、例えば、この状態で取得される画像を参照することで、観察撮影系6の位置、照明系8の位置、及び照明系8の可動部の位置のうち所望の位置を調整することができる。
【0214】
角膜内皮細胞撮影モードが指定されると、その指定結果を示す信号が、遠隔端末5000mから(管理サーバ4000を介して)スリットランプ顕微鏡1に送信される。スリットランプ顕微鏡1の制御部101(例えば、スキャン制御部101B)は、観察撮影系6、照明系8、及び照明系8の可動部を図8Cに示す状態に配置するように第1移動機構55及び第2移動機構60を制御する。これにより、観察撮影系6、照明系8、及び照明系8の可動部が、それぞれ図8Cに示す初期位置に配置される。遠隔端末5000mのユーザー又はスリットランプ顕微鏡1のユーザーは、例えば、この状態で取得される画像を参照することで、観察撮影系6の位置、照明系8の位置、及び照明系8の可動部の位置のうち所望の位置を調整することができる。
【0215】
このような動作モードを実現するために、例えば、スリットランプ顕微鏡1の記憶部102は、照明系8の可動部の初期位置と観察撮影系6の初期位置と照明系8の初期位置とが記録された初期位置情報を予め記憶している。制御部101(スキャン制御部101B)は、この初期位置情報に基づき第1移動機構55及び第2移動機構60を制御することで、観察撮影系6、照明系8、及び照明系8の可動部をそれぞれの初期位置に配置させる。なお、例示的な実施形態において、初期位置情報には、少なくとも照明系8の可動部の初期位置が記録される。制御部101(スキャン制御部101B)は、この初期位置情報に基づき少なくとも第1移動機構55を制御することで、少なくとも照明系8の可動部を初期位置に配置させる。
【0216】
本実施形態では、例えば、記憶部102は、前嚢撮影モードに対応する初期位置情報と、前嚢後嚢撮影モードに対応する初期位置情報と、角膜内皮細胞撮影モードに対応する初期位置情報とを予め記憶している。制御部101は、指定された動作モードに対応する初期位置情報を選択して参照する。
【0217】
遠隔端末5000m又は管理サーバ4000に初期位置情報を予め記憶してもよい。遠隔端末5000mに初期位置情報が記憶されている場合、遠隔端末5000mは、ユーザーが指定した動作モードに対応する初期位置情報を選択し、選択された初期位置情報をスリットランプ顕微鏡1に送ることができる。管理サーバ4000に初期位置情報が記憶されている場合、遠隔端末5000mは、ユーザーによる動作モードの指定結果を示す信号を管理サーバ4000に送る。管理サーバ4000は、この信号に対応する初期位置情報を選択し、選択された初期位置情報をスリットランプ顕微鏡1に送ることができる。
【0218】
動作モードの指定に用いられるデバイスは、操作部5300に限定されない。例えば、スリットランプ顕微鏡1の操作部140又は端末3000-nを用いて動作モードを指定することができる。動作モードの指定態様はこのような手動指定に限定されない。例えば、当該被検者に対して過去に適用された動作モードを電子カルテ等から取得し、これを指定することができる。また、特定疾患に予め対応付けられた動作モードを自動で指定することができる。また、検査の種別(例えば、スクリーニング、検診、健康診断、一般診療など)に予め対応付けられた動作モードを自動で指定することができる。
【0219】
〈使用形態〉
本実施形態に係る眼科システム1000の使用形態について説明する。図11A及び図11Bは、眼科システム1000の使用形態の例を示す。本例において、眼科撮影装置2000-iはスリットランプ顕微鏡1であるとする。以下、眼科システム1000を用いて実現可能な使用形態について、図3A図3Cに例示された構成を参照しつつ説明する。図4A若しくは図4Bに例示された構成又はこれら以外の構成が適用される場合でも同様の使用形態を実現可能であることは明らかである。
【0220】
スリットランプ顕微鏡1(及び/又は端末3000-n)と管理サーバ4000との間における通信は、既に確立されているとする。或いは、図11AのステップS1からステップS11までの期間における任意のタイミングで、スリットランプ顕微鏡1(及び/又は端末3000-n)と管理サーバ4000との間における通信を確立してもよい。また、管理サーバ4000と遠隔端末5000mとの間における通信は、既に確立されているか、或いは、図11AのステップS1から図11BのステップS13までの期間における任意のタイミングで確立される。
【0221】
撮影の準備として、スリットランプ顕微鏡1(又は端末3000-n)に被検者情報が入力される。入力された被検者情報は、記憶部102に保存される。スリットランプ顕微鏡1(及び/又は端末3000-n)と管理サーバ4000との間における通信が既に確立されている場合、入力された被検者情報をこの段階で管理サーバ4000に送信してもよい。被検者情報は、例えば、被検者IDと背景情報とを含む。管理サーバ4000は、被検者情報を受信した後の任意のタイミングで、遠隔端末5000mの選択を行うことができる。
【0222】
被検者IDは、例えば、医療施設におけるID(患者ID)、検診におけるID、健康診断におけるIDなどがある。これらは例示であって、被検者IDはこれらに限定されない。
【0223】
背景情報は、被検者に関する任意の情報であって、その例として、被検者の問診情報、所定のシートに被検者が記入した情報、被検者の電子カルテの任意の項目に記録された情報、被検者のアカウントに保存された画像などがある。典型的には、背景情報は、性別、年齢、身長、体重、疾患名、候補疾患名、検査結果(視力値、眼屈折力値、眼圧値など)、画像(前眼部のOCT画像など)、屈折矯正具(眼鏡、コンタクトレンズなど)の装用歴や度数、検査歴、治療歴などがある。これらは例示であって、背景情報はこれらに限定されない。
【0224】
例えば、スリットランプ顕微鏡1(又は端末3000-n)のユーザーは、操作部140を用いて被検者情報を入力することができる。また、制御部101及び通信部170は、当該施設に設置された情報処理システム(例えば、顧客管理システム、電子カルテシステム、医用画像アーカイビングシステム等)に通信路を介してアクセスして被検者情報を取得することができる。また、データリーダを用いて、記録媒体に記録された被検者情報を読み出すことができる。これらは例示であって、被検者情報の入力方法はこれらに限定されない。
【0225】
(S1:可動部と光学系を初期位置に移動する)
まず、スリットランプ顕微鏡1の制御部101は、照明系8の可動部を初期位置に配置させるように第1移動機構55を制御し、且つ、観察撮影系6及び照明系8をそれぞれの初期位置に配置させるように第2移動機構60を制御する。例えば、スリットランプ顕微鏡1に電源が投入されたことに対応して、照明系8の可動部、観察撮影系6、及び照明系8が、それぞれの初期位置に移動される。或いは、被検者ID等の入力に対応して、照明系8の可動部、観察撮影系6、及び照明系8が、それぞれの初期位置に移動される。又は、動作モードの指定に対応して、照明系8の可動部、観察撮影系6、及び照明系8が、それぞれの初期位置に移動される。
【0226】
(S2:固視を開始)
次に、制御部101は、固視系80に固視光を出力させる。例えば、制御部101は、ユーザーが指定した固視位置に対応する固視光源を点灯させる。或いは、制御部101は、動作モードの指定結果を受け、この動作モードに予め対応付けられた固視光源を点灯させる。
【0227】
(S3:前眼部の正面撮影を開始)
次に、制御部101は、前眼部カメラ70による正面からの前眼部撮影を開始する。例えば、前眼部カメラ70は動画撮影を開始する。図3Cに示す構成が適用される場合、前眼部カメラ70a及び70bの少なくとも一方による斜方からの前眼部撮影を開始する。
【0228】
(S4:アライメントを実行)
次に、スリットランプ顕微鏡1は、前述したいずれかの要領で、被検眼Eに対する観察撮影系6及び照明系8のアライメントを行う。
【0229】
(S5:スリット光で前眼部を撮影)
制御部101は、照明系8を制御してスリット光を前眼部に投射させる。ここで、照明系8の可動部(少なくともスリット形成部53を含む)は、例えば、ステップS1で設定された初期位置、又はこの初期位置からユーザーが調整した位置に配置されている。観察撮影系6は、スリット光が投射されている前眼部を撮影する。これにより、前眼部の断面画像が得られる。
【0230】
(S6:スキャン終了か?)
スリット光によるスキャンが終了したら(S6:Yes)、ステップS8に移行する。スキャン終了でない場合(S6:No)、ステップS7に移行する。
【0231】
例えば、スキャンは、予め設定された回数の撮影からなる。或いは、スキャンが適用される範囲が予め設定されている。制御部101は、このような既定の情報を参照してスキャン終了か否か判定することができる。他の例として、制御部101は、ユーザーの指示に基づいて、スキャン終了か否か判定することができる。
【0232】
(S7:可動部・光学系を移動)
ステップS6で「No」と判定された場合、制御部101は、照明系8の可動部を移動するための第1移動機構55の制御、及び/又は、光学系を移動するための第2移動機構60の制御を実行する。
【0233】
典型的には、例えば図8A及び図8Bに示すように、照明系8の可動部(スリット形成部53)が移動される。この可動部の移動は、例えば、所定の単位距離の平行移動である。また、観察撮影系6及び照明系8が移動されてもよい。この光学系の移動は、例えば、所定の単位距離の平行移動、又は、所定の単位角度の回動である。
【0234】
例えば、照明系8の可動部を所定の可動範囲において移動させた後に、観察撮影系6及び照明系8を移動させることができる。更に、所定の可動範囲における照明系8の可動部の移動(1回以上の移動)と、観察撮影系6及び照明系8の移動とを、交互に行うようにしてもよい。
【0235】
可動部及び/又は光学系が移動されたら、スリット光を用いた前眼部撮影(S5)が行われる。ステップS6で「Yes」と判定されるまで、光学系の移動(S7)と前眼部撮影(S5)とが繰り返し実行される。これにより、前眼部の複数の断面に対応する複数の断面画像(スリット画像)が得られる。
【0236】
なお、照明系8の可動部の移動は、このような段階的移動には限定されない。他の例として、可動部を連続的に移動しつつ所定間隔で撮影を繰り返すように制御を行うことが可能である。
【0237】
同様に、光学系の移動についても、このような段階的移動には限定されない。他の例として、光学系を連続的に移動しつつ所定間隔で撮影を繰り返すように制御を行うことが可能である。
【0238】
(S8:スリット画像と正面画像を対応付け)
本例では、ステップS3で開始された前眼部の動画撮影と並行して、スリット光によるスキャンが行われる。これにより、前眼部の複数の正面画像(フレーム)と、複数のスリット画像とが得られる。制御部101は、例えば、動画撮影のフレームレート(撮影タイミング)と、スリット光を用いた撮影のタイミングとに基づいて、正面画像とスリット画像とを対応付けることができる。
【0239】
なお、制御部101は、スリット光を用いた撮影と正面画像の取得とを同期的に実行するようにしてもよい。例えば、スリット光を用いた撮影と実質的に同じタイミングで前眼部カメラ70による撮影を行うことができる。
【0240】
(S9:両眼の撮影終了か?)
被検者の左右両眼の撮影が終了したら(S9:Yes)、ステップS11に移行する。左右いずれか一方の眼についてのみ撮影が終了した場合(S9:No)、ステップS10に移行する。
【0241】
(S10:僚眼の撮影に移行)
ステップS9で「No」と判定された場合、既に撮影が終了した眼の反対の眼(僚眼)の撮影に移行する。そして、僚眼に対してステップS1~S8を実行する。
【0242】
(S11:撮影データを管理サーバに送信)
ステップS9で「Yes」と判定されると、制御部101は、通信部170を制御して、撮影により取得されたデータ(撮影データ)を管理サーバ4000に向けて送信する。撮影データは、被検者情報、複数のスリット画像、複数の正面画像、スリット画像と正面画像との対応関係、当該施設の識別情報(施設ID)などを含む。
【0243】
(S12:3次元画像を構築)
管理サーバ4000の通信部4200は、ステップS6でスリットランプ顕微鏡1が送信した撮影データを受信する。管理サーバ4000は、この撮影データに含まれる複数のスリット画像から3次元画像を構築する。
【0244】
なお、スリットランプ顕微鏡1の画像合成部120が3次元画像を構築する場合、この3次元画像を含む撮影データがスリットランプ顕微鏡1から管理サーバ4000に送られる。他の装置が3次元画像を構築する場合にも同様の処理が実行される。
【0245】
管理サーバ4000の制御部4010は、ハードディスクドライブ又はソリッドステートドライブ等の記憶装置、又は、外部のデータベースなどに、撮影データを保存する。データは、例えば被検者IDや施設IDなどに基づき検索可能に格納される。
【0246】
(S13:3次元画像等を遠隔端末に送信)
選択部4120は、複数の遠隔端末5000mのうちのいずれかを選択する。前述したように、検査の種別(例えば、撮影モダリティの種別、画像の種別、疾患の種別、候補疾患の種別など)や、要求される専門度・熟練度や、言語の種別など、各種の属性を参照して遠隔端末5000mの選択を行うことも可能である。
【0247】
選択部4120は、それぞれの遠隔端末5000mの稼動状態(通信の確立情報)を監視する機能を備えていてよい。選択部4120は、この監視機能により、現在稼働していない遠隔端末5000m(読影等に現在使用されていない端末、読影等を現在行っているがスケジュールに余裕のある端末、使用の予約が入っていない端末など)のいずれかを選択することができる。それにより、他の被検者に関する読影等に現在使用されていない遠隔端末5000mを選択することができる。
【0248】
なお、上記監視機能は、例えば、定期的又は非定期的に遠隔端末5000mから入力される情報や、遠隔端末5000mに送信した情報に対する反応などに基づいて、各遠隔端末5000mの稼動状態をフラグ等で管理することにより実現可能である。
【0249】
管理サーバ4000の制御部4010は、通信部4200を制御して、ステップS12で構築された3次元画像、背景情報、正面画像などを、選択された遠隔端末5000mに向けて送信する。
【0250】
(S14:読影を実施)
遠隔端末5000mの通信部5200は、ステップS13で管理サーバ4000が送信したデータを受信する。制御部5010は、受信されたデータを前述の記憶部に保存する。遠隔端末5000mのユーザー(例えば、医師、オプトメトリストなど)は、所望のタイミングで読影を行うことができる。ユーザーは、前眼部の正面画像や、3次元画像の所望のレンダリング画像を観察する。
【0251】
(S15:レポートを作成)
読影を行いつつ又は読影が終了したら、ユーザーは、操作部5300を使用して、読影で得た情報や診断結果などを入力する。レポート作成制御部5012は、ユーザーが入力した情報やユーザーが選択した情報に基づきレポートを作成する。
【0252】
(S16:管理サーバにレポートを送信)
遠隔端末5000mの制御部5010は、通信部5200を制御して、ステップS15で作成されたレポートを管理サーバ4000に向けて送信する。
【0253】
(S17:施設にレポートを送信)
管理サーバ4000の通信部4200は、ステップS16で遠隔端末5000mが送信したレポートを受信する。制御部4010は、ハードディスクドライブ又はソリッドステートドライブ等の記憶装置、又は、外部のデータベースなどにレポートを保存する。レポートは、例えば被検者IDや施設IDなどに基づき検索可能に格納される。
【0254】
制御部4010は、例えば検索IDを参照することで、当該被検者の前眼部撮影を行った施設を検索する。制御部4010は、通信部4200を制御して、検索された施設に向けてレポートを送信する。典型的には、検索された施設に設置された端末3000-nに向けてレポートが送信される。
【0255】
端末3000-nは、管理サーバ4000が送信したレポートを受信し、図示しない表示装置に表示させる。端末3000-nのユーザーは、表示されたレポートを参照しつつ、読影結果、診断結果、治療方針、屈折矯正具の要否・選択などについて、被検者に説明を行う。以上で、本例に係る処理は終了となる。
【0256】
〈作用・効果〉
以上に説明した実施形態の作用及び効果について説明する。
【0257】
本実施形態に係るスリットランプ顕微鏡(1)は、照明系(8、210)と、第1撮影系(観察撮影系6、260)と、第1移動機構(55)と、制御部(101)とを含む。照明系は、光源(照明光源51、211)から出力された光からスリット光を生成するためのスリットを形成するスリット形成部(53、213)を含み、被検眼の前眼部に第1方向からスリット光を投射する。第1方向は、照明系の光軸(O2)により定義される。第1撮影系は、照明系によりスリット光が投射されている前眼部を第1方向と異なる第2方向から撮影する。第2方向は、第1撮影系の光軸(O1)により定義される。第1移動機構は、照明系のうち少なくともスリット形成部を含む可動部を移動可能である。制御部は、この可動部を移動させるための第1移動機構に対する第1制御と、前眼部を複数回撮影させるための第1撮影系に対する第2制御とを並行して実行する。なお、制御部による可動部の移動方向は、典型的には、スリット形成部により形成されるスリットの幅方向である。
【0258】
このような本実施形態のスリットランプ顕微鏡によれば、照明系の可動部の移動によりスリット光を移動しながら前眼部を複数回撮影することができる。したがって、前眼部を自動でスキャンして複数のスリット画像を取得可能であり、スリットランプ顕微鏡をその場で操作する人が不要になる。これにより、遠隔医療においてスリットランプ顕微鏡を効果的に利用することが可能になる。
【0259】
更に、本実施形態によれば、スリット光を移動するために照明系や観察撮影系を移動する構成と比較して、移動される要素(可動部)が小さくなるため、比較的小規模の移動機構(55)で十分である。また、駆動音も小さくなるため、被検者に与える負担の軽減を図ることも可能となる。
【0260】
本実施形態に係るスリットランプ顕微鏡(1)は、前眼部を撮影する第2撮影系(前眼部カメラ70、前眼部撮影系220)を更に含んでいてよい。更に、制御部(101)は、前眼部を複数回撮影させるための第2撮影系に対する第3制御を、第1制御及び第2制御と並行して実行することができる。
【0261】
これにより、スリット画像が取得されたときの前眼部の状態を把握することが可能になる。
【0262】
本実施形態に係るスリットランプ顕微鏡(1)の光学系の例として、照明光路が第2撮影系の光路に結合された構成を採用することができる。例えば、本実施形態に係るスリットランプ顕微鏡(1)は、照明系(210)の光路と第2撮影系(前眼部撮影系220)の光路とを結合する光路結合部材(230)を更に含んでいてよい。更に、光源(照明光源211)と光路結合部材(230)との間にスリット形成部(213)が配置されていてよい。
【0263】
本実施形態に係るスリットランプ顕微鏡(1)の光学系の例として、第2撮影系(前眼部撮影系220)は、対物レンズ(221)と撮像素子(223)とを含んでいてよい。更に、光路結合部材(230)と撮像素子(223)との間に対物レンズ(221)が配置されていてよい。
【0264】
本実施形態に係るスリットランプ顕微鏡(1)の光学系の他の例として、(前眼部撮影系220)は、対物レンズ(224)と撮像素子(223)とを含んでいてよい。更に、対物レンズ(224)と撮像素子(223)との間に光路結合部材(230)が配置されていてよい。
【0265】
本実施形態に係るスリットランプ顕微鏡(1)は、被検眼を固視させるための固視光を出力する固視系(80、240)を更に含んでいてよい。更に、制御部(101)は、固視系に固視光を出力させつつ第1制御及び第2制御を実行するように構成されていてよい。
【0266】
これにより、被検眼を固視させつつスリット光で前眼部をスキャンすることができるので、前眼部の自動スキャンの確度や確実性が向上される。
【0267】
本実施形態に係るスリットランプ顕微鏡(1)は、照明系(8、210)及び第1撮影系(観察撮影系6、260)を移動可能な第2移動機構(60)を更に含んでいてよい。更に、制御部(101)は、照明系及び第1撮影系の少なくとも一方を移動させるための第2移動機構に対する第4制御を、第1制御及び第2制御と並行して実行するように構成されていてよい。
【0268】
これにより、スリット光を移動するために照明系の可動部の移動と照明系及び第1撮影系の移動とを組み合わせることができるので、スリット光を移動するために照明系の可動部のみが用いられる場合よりも広い範囲をスリット光でスキャンすることが可能になる。
【0269】
なお、本実施形態において、2以上の制御の並行的な実行は、2以上の制御の同時的な実行だけでなく、2以上の制御の任意の連係も含む。
【0270】
本実施形態に係るスリットランプ顕微鏡(1)は、記憶部(102)を更に含んでいてよい。記憶部には、少なくとも照明系の可動部の初期位置が記録されている。更に、制御部(101)は、この初期位置情報に基づき第1移動機構(55)を制御することで照明系の可動部を初期位置に配置させることができる。
【0271】
これにより、照明系の可動部を既定の初期位置に容易に配置することができ、操作性の向上や撮影時間の短縮を図ることが可能になる。
【0272】
なお、照明系の可動部の初期位置に加え、照明系(8)の初期位置と第1撮影系(観察撮影系6)の初期位置とが初期位置情報に記録されていてもよい。更に、制御部(101)は、この初期位置情報に基づき第1移動機構(55)及び第2移動機構(60)の一方又は双方を制御することで、照明系の可動部、照明系、及び第1撮影系を、それぞれの初期位置に配置させることが可能である。
【0273】
これにより、照明系の可動部、照明系、及び第1撮影系を、それぞれの既定の初期位置に容易に配置することができ、操作性の向上や撮影時間の短縮を図ることが可能になる。
【0274】
本実施形態のスリットランプ顕微鏡(1)は、第2制御において第1撮影系(観察撮影系6、260)により取得された複数の画像(複数のスリット画像)に基づいて3次元画像を形成する3次元画像形成部(画像合成部120)を更に含んでいてよい。
【0275】
これにより、複数のスリット画像からスタックデータやボリュームデータ等の3次元画像を構築することが可能になる。更に、3次元画像を任意にレンダリングすることも可能になる。
【0276】
本実施形態のスリットランプ顕微鏡(1)は、第2制御において第1撮影系(観察撮影系6、260)により取得された複数の画像(複数のスリット画像)を、通信路(1100)を介して情報処理装置(管理サーバ4000、遠隔端末5000m等)に送信する通信部(170)を更に含んでいてよい。
【0277】
これにより、スリットランプ顕微鏡により所得されたスリット画像を、情報処理装置で処理したり観察したりすることが可能になる。
【0278】
実施形態に係る眼科システム(1000)は、通信路(1100)を介して接続されたスリットランプ顕微鏡(1)と情報処理装置(管理サーバ4000、遠隔端末5000m等)とを含む。
【0279】
スリットランプ顕微鏡は、照明系(8、210)と、撮影系(観察撮影系6、260)と、移動機構(55)と、制御部(101)と、第1通信部(170)とを含む。照明系は、光源(照明光源51、211)から出力された光からスリット光を生成するためのスリットを形成するスリット形成部(53、213)を含み、被検眼の前眼部に第1方向からスリット光を投射する。第1方向は、照明系の光軸(O2)により定義される。撮影系は、照明系によりスリット光が投射されている前眼部を第1方向と異なる第2方向から撮影する。第2方向は、撮影系の光軸(O1)により定義される。移動機構は、照明系のうち少なくともスリット形成部を含む可動部を移動可能である。制御部は、この可動部を移動させるための移動機構に対する第1制御と、前眼部を複数回撮影させるための第1撮影系に対する第2制御とを並行して実行する。なお、制御部による可動部の移動方向は、典型的には、スリット形成部により形成されるスリットの幅方向である。第1通信部は、第2制御において撮影系により取得された複数の画像(複数のスリット画像)を、通信路を介して情報処理装置に送信する。
【0280】
情報処理装置は、第2通信部(通信部4200、通信部5300等)と、3次元画像形成部とを含む。第2通信部は、スリットランプ顕微鏡の第1通信部により送信された複数の画像を受信する。3次元画像形成部は、第2通信部により受信された複数の画像に基づいて3次元画像を形成する。
【0281】
このような本実施形態の眼科システムによれば、スリットランプ顕微鏡により、照明系の可動部の移動によりスリット光を移動しながら前眼部を複数回撮影することができる。したがって、前眼部を自動でスキャンして複数のスリット画像を取得可能であり、スリットランプ顕微鏡をその場で操作する人が不要になる。これにより、遠隔医療においてスリットランプ顕微鏡を効果的に利用することが可能になる。更に、情報処理装置により、複数のスリット画像からスタックデータやボリュームデータ等の3次元画像を構築することが可能である。更に、3次元画像を任意にレンダリングすることも可能になる。
【0282】
以上に説明した実施形態は本発明の典型的な例示に過ぎない。よって、本発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加等)を適宜に施すことが可能である。
【符号の説明】
【0283】
1 スリットランプ顕微鏡
6、260 観察撮影系
8、210 照明系
55 第1移動機構
60 第2移動機構
70、70a、70b、270a、270b 前眼部カメラ
80、240 固視系
101 制御部
120 画像合成部
170 通信部
230 光路結合部材

図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11A
図11B