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特開2022-153651高カルシウム尿症及び腎結石症の治療方法及び治療用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153651
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】高カルシウム尿症及び腎結石症の治療方法及び治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/122 20060101AFI20221004BHJP
   A61P 3/14 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
A61K31/122
A61P3/14
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124960
(22)【出願日】2022-08-04
(62)【分割の表示】P 2018562172の分割
【原出願日】2017-06-01
(31)【優先権主張番号】62/344,653
(32)【優先日】2016-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518414683
【氏名又は名称】アナ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ANA PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(72)【発明者】
【氏名】カント, エドゥアルド アイ.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高カルシウム尿症を治療又は予防し、それにより腎結石症のリスクを減らし、尿中の化学と組成を正常化する方法、組成物及び製剤を提供する。
【解決手段】本発明の方法は、ビタミンK2を含有する医薬組成物又は栄養組成物の投与を含み、好ましくはカルシウムを含まず、任意に、クエン酸塩、酸化マグネシウム、重炭酸塩及びビタミンB6からなる群から選択される1種以上の治療用量と併用して投与することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物に有効量のビタミンK2を投与することを含む、哺乳動物の高カルシウム尿症の治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
【0002】
本出願は、2016年6月2日に出願された米国特許仮出願第62/344,653号の35 U.S.C.§119(e)に基づく優先権の利益を主張するものであり、この仮出願は引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、高カルシウム尿症及び関連疾患の治療と予防、並びに腎結石の再発を抑制するためのビタミンK2の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
腎結石症は、上部尿路における結晶凝集体の沈殿から生じる。高カルシウム尿症(hypercalciuria or hypercalcinuria)とは尿中の高カルシウム状態である。慢性的な高カルシウム尿症は、腎結石症、機能障害、腎石灰化症、腎不全を引き起こし得る。高カルシウム尿症の患者は、異常に高い値のカルシウムをろ過する腎臓を有する。
【0005】
腎結石症の患者の33%は高カルシウム尿症に罹患している。腎結石症の患者の突発性高カルシウム尿症に対する現在の標準的な治療は、食事におけるナトリウムとタンパク質の制限、またチアジド系利尿薬の処方箋の適応外使用である。チアジド系利尿薬には副作用が伴い、そのため、処方されることは稀である。さらに、処方される場合でも、患者が治療を順守することは稀である。
【0006】
腎結石予防のための新たな薬物療法又は栄養療法を有することが望ましい。また、高カルシウム尿症のための新たな薬物療法又は栄養療法を有することが望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Martins, M. C.et al.,Br J Urol, 1996. 78(2):p.176-180
【発明の概要】
【0008】
本発明は、少なくとも部分的に、高カルシウム尿症及び腎結石症の治療のための、新規な医薬及び栄養組成物、並びに方法の発見に基づいている。
【0009】
特に、カルシウム腎結石症及び高カルシウム尿症に罹患していると同定されたヒトである対象への投与を含む、ヒトである対象へのビタミンK2の投与は、尿中のカルシウムを有意に減少させることが確認された。多くの患者は、本発明により治療の1ヶ月以内に尿中におけるカルシウム値の40%以上の減少を経験した。加えて、本発明によるビタミンK2の投与によってもたらされるカルシウム値の低下は、再発性腎結石症の他の危険因子を減少させることを対象とし得る他の療法によっても有意に影響され得ない。
【0010】
従って、一側面では、有効量のビタミンK2を対象に投与することを含む高カルシウム尿症の治療方法が提供される。任意に、対象は哺乳動物である。
【0011】
さらなる側面では、哺乳動物である対象における高カルシウム尿症及び/又は腎結石症の治療方法であって、有効量のビタミンK(すなわち、K1及び/又はK2)と1又はそれ以上のクエン酸塩、酸化マグネシウム、ビタミンB6、若しくは重炭酸塩を併用して対象に投与することを含む方法である。特定の実施形態では、対象は腎結石症に罹患しやすい可能性がある。任意に、哺乳動物である対象は、高カルシウム尿症を有すると同定される。
【0012】
追加の側面では、有効量のビタミンK(すなわち、K1及び/又はK2)を対象に投与することを含む、腎結石症の治療方法が提供される。
【0013】
本発明のすべての治療方法における特定の実施形態において、有効量のMK4が対象に投与される。すべての治療方法におけるさらなる実施形態では、有効量のMK7が対象に投与される。さらなる実施形態において、ビタミンK1は対象に同時投与される。
【0014】
特定の方法では、ビタミンK2を、1又はそれ以上のクエン酸塩、酸化マグネシウム、ビタミンB6、若しくは重炭酸塩と併用して対象に投与する。
【0015】
特定の方法では、比較的高含量のカリウム、例えば対象に対して1回当たり100mg以上のカリウムを対象に与えるために、ビタミンK2は1又はそれ以上のカリウム含有剤と共に投与される。カリウム源は、クエン酸カリウムやその他のような様々なカリウム含有組成物であり得る。このような方法及び関連組成物は、関連する結石を含む尿細管性アシドーシスの治療に特に有効であり得る。
【0016】
特定の好ましい方法では、1又はそれ以上のビタミンK化合物がカルシウムの実質的な非存在下で投与され、すなわち、対象に投与される治療組成物は、ついにカルシウム含有剤を実質的に含まず、すなわち、日用量中の本発明のビタミンK組成物の成分は、日用量で50mg未満、より典型的には40、30、20、10、5又は1mg未満でさえあってもよい。本明細書に開示される特定の好ましいビタミンK組成物は、カルシウム含有剤を事実上含まない。本発明の方法では、治療の対象は、本明細書に開示される治療用組成物の投与前に、任意に治療のために同定及び選択される。例えば、ヒトである対象は、尿中のカルシウム排出値に基づいて治療のために選択されてもよく、例えば、24時間当たりに200mgを超えるカルシウムを排出するヒトである対象を選択してもよく、そしてその選択された対象に本明細書に開示されている有効量の治療剤(例えば、ビタミンK2)を投与してもよい。
【0017】
加えて、特定の方法では、治療の対象を、治療過程において又は治療後に、定期的に評価することができ、例えば、投与後を含め、ビタミンK(すなわち、K1及び/又はK2)の投与と併用して、対象における尿中のカルシウム分泌を測定することができる。
【0018】
任意に、ビタミンKは経口剤形態で投与される。特定の実施形態では、投与されたビタミンKは単離され、すなわち、天然に存在する供給源から分離され単離されている。投与されたビタミンK2もまた、合成的に誘導され得る。錠剤及びカプセル剤のような経口剤形態がしばしば利用される。
【0019】
一実施形態では、対象は1又はそれ以上の高カルシウム尿症、高尿酸尿症、高シュウ酸尿症、低クエン酸尿症、若しくは低マグネシウム尿症に罹患していると同定される。
【0020】
特定の実施形態では、対象は抗凝固療法を受けておらず、かつ、骨粗しょう症又は新形成に罹患していない。関連する実施形態では、対象は抗凝固療法を受けておらず、かつ、骨粗しょう症又は新生物に罹患している又は罹患する疑いがあると同定されていない。
【0021】
治療用組成物もまた提供される。一側面では、クエン酸カリウム、クエン酸マグネシウム及びビタミンB6と組み合わせた有効量のビタミンK(すなわち、K1及び/又はK2)を含む治療用組成物が提供される。特定の実施形態では、組成物は有効量のMK4及び/又はMK7を含有する。この組成物はまた、ビタミンK1を任意に含み得る。
【0022】
さらなる側面において、ビタミンK2を含む高カリウム含有組成物が提供される。このような組成物は、とりわけ関連結石を含む尿細管性アシドーシスの治療に有用であり得る。好ましくは、組成物は一回及び/又は毎日の単位用量(例えば、錠剤又はカプセル剤などの経口投薬)当たり90、95、99若しくは100mg、又はそれ以上のカリウムをヒトである対象に簡便に投与できる形態である。例えば、カプセル剤又は錠剤のような経口剤形態の場合、ヒトである対象に簡便な投与を提供するため、剤形は少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、99又は100mgのカリウムを含有し得る。例えばクエン酸カリウムを含む、様々なカリウム源を利用し得る。特定の側面では、1)有効量のビタミンK(ビタミンK1及び/又はビタミンK2)、及び1)540mg又はそれ以上のクエン酸カリウムを含む錠剤若しくはカプセル剤などの経口剤形態を含む組成物が提供される。さらなる側面において、1)有効量のビタミンK2;2)7.5mgを超える量のビタミンB6;3)180mgを超える量のクエン酸マグネシウム;及び4)100又は99mgを超えない量のカリウム(クエン酸カリウムの形態など)を含む、1又はそれ以上の錠剤若しくはカプセル剤などの経口剤形態を含む組成物が提供される。本明細書での言及によってさらなる制限を伴わない場合のカリウムの量は、クエン酸カリウムのようなカリウム複合化合物の量ではなく、治療又は栄養組成物中のK又はK+の量を指す。一方、複合体の量が特定されている場合(例えば、クエン酸カリウム)、その量は、治療又は栄養組成物中のK又はK+の量だけではなく、複合体(例えば、クエン酸カリウム)を指す。
【0023】
さらに別の側面では、1)有効量のビタミンK2;2)7.5mgを超える量のビタミンB6;3)180mgを超える量のクエン酸マグネシウム;及び4)100又は99mgを超えない量のカリウム(クエン酸カリウムの形態など)を含む、錠剤若しくはカプセル剤のような経口剤形態を含む組成物が提供される。
【0024】
医薬組成物に加えて、栄養組成物は、上記で開示した成分を含む。したがって、一側面では、有効量のビタミンK(すなわち、K1及び/又はK2)を含有し、クエン酸カリウム、クエン酸マグネシウム、及びビタミンB6と組み合わせた医薬組成物が提供される。特定の実施形態では、組成物は有効量のMK4及び/又はMK7を含有する。組成物は、またビタミンK1を任意に含み得る。さらなる側面では、1)有効量のビタミンK2;2)7.5mgを超える量のビタミンB6;3)180mgを超える量のクエン酸マグネシウム;及び4)100又は99mgを超えない量のカリウム(クエン酸カリウムの形態など)を含む、錠剤若しくはカプセル剤のような経口剤形態を含む組成物が提供される。
【0025】
特定の組成物は、好ましくは、例えばカプセル剤又は錠剤のような経口剤形態である。例えばゲル剤、散剤、液剤、懸濁剤、又は乳剤のような、他の組成物製剤も同様に適している。
【0026】
さらなる実施形態では、治療用組成物は、複合成分容器(multiple component container)に包装されている。任意に、第一の容器成分は、1又はそれ以上の経口投与形態である有効量のビタミンK(すなわち、K1及び/又はK2)を含み、第二の容器成分は、1又はそれ以上のクエン酸塩、酸化マグネシウム、ビタミンB6、若しくは重炭酸塩を含む。任意に、容器の開口部は、第一及び第二の容器成分の内容物を混合する。容器は、様々な構成に適合させることができる。例えば、容器は、適切に複合成分包(multiple component sachet)とし得る。あるいは、容器は単回投与バイアルとして構成され得る。
【0027】
さらなる実施形態では、組成物は、第一の容器成分が1又はそれ以上の経口剤形態である有効量のビタミンK(すなわち、K1及び/又はK2)を含み、第二の容器成分が、1又はそれ以上の経口剤形である1又はそれ以上のクエン酸塩、酸化マグネシウム、ビタミンB6、若しくは重炭酸塩を含む、複合成分容器に包装し得る。任意に、1又はそれ以上の経口剤形態の第一の成分、及び1又はそれ以上の経口剤形態の第二の成分は、容器の開封時に共に投与される。
【0028】
また、高カルシウム尿症若しくは腎結石症の治療のための、又は正常な尿化学及び組成を促進するためのビタミンK(すなわち、K1及び/又はK2)、及びビタミンK(すなわち、K1及び/又はK2)の使用説明書を適切に含み得るキットが提供される。この使用説明書は、例えば、包装の挿入物又は製品のラベルに示されるように、典型的には書面によるものであってもよい。また、キットは、1又はそれ以上のクエン酸塩、酸化マグネシウム、ビタミンB6、若しくは重炭酸塩を適切に含有していてもよい。キットは、第一の容器成分が有効量のビタミンK2を含み、第二の容器成分が1又はそれ以上のクエン酸塩、酸化マグネシウム、ビタミンB6、若しくは重炭酸塩を含む、前述の複合成分容器を含んでいてもよい。また、キットは第一の容器成分が1又はそれ以上の経口剤形態である有効量のビタミンK2を含み、第二の容器成分が1又はそれ以上の経口剤形態である1又はそれ以上のクエン酸塩、酸化マグネシウム、ビタミンB6、若しくは重炭酸塩を含む複合成分容器からなっていてもよい。
【0029】
本発明の他の側面は以下に開示される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
特定の側面では、高カルシウム尿症患者の尿中のカルシウムを減少させるための方法が提供される。
【0031】
一側面において、本発明は、式1の化合物を使用して高カルシウム尿症又はカルシウム腎結石症を治療又は予防する方法を特徴とし、その式は下記のとおりである。別の側面では、カルシウム腎結石症及び1又はそれ以上の高カルシウム尿症、高尿酸血尿症、高シュウ酸尿症、低クエン酸尿症、若しくは低マグネシウム尿症を有する対象に必要な治療が、クエン酸塩、酸化マグネシウム、ビタミンB6、又は重炭酸塩と併用若しくは関連したビタミンK2を投与することを含んでいてもよい。
【0032】
本発明の方法及び組成物において使用される化合物は、1又はそれ以上のビタミンK群に属する化合物から選択され得る。前述のように、MK4及びMK7などの1又はそれ以上の形態のビタミンK2は、尿中のカルシウム排出を効率的に減少させ得ることが本明細書において見出されている。特定のビタミンK2化合物の選択的使用も有益であり得る。例えば、ビタミンK2の一形態は、患者によっては別の形態よりも好都合であり得る。したがって、様々なビタミンK2化合物(例えば、MK4及びMK7)の併用は、改良した有効性を提供し得る。
【0033】
一側面では、本発明の方法及び組成物に使用される治療用化合物は、以下の式1によって表され得る。
【0034】
【化1】
【0035】
式中、nは0~20、又は1~10の整数、又はnは3(すなわちMK4)又は6(すなわちMK7)である。
【0036】
式1の化合物は不飽和C5鎖を含み、したがって、一般的に知られているように、2-メチル-1,4-ナフトキノン及び不飽和C5鎖を含む上記化合物はビタミンK2として言及される。
【0037】
一方、ビタミンK群のうち、ビタミンK1は、脂肪族側鎖と共に2-メチル-1,4-ナフトキノンを含み、式1で表される化合物から除外することができる。
【0038】
図のように、nが3である場合、化合物は以下に示すようにMK4として言及される。
【0039】
【化2】
【0040】
nが6である場合、化合物は、以下に示されるようにMK7として言及される。
【0041】
【化3】
【0042】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、式1の化合物の混合物を含有し得る。
【0043】
上記式1で示されるビタミンK2、特にMK4は、体内の精巣、膵臓及び動脈壁やその他におけるビタミンK1の変換によって生産され得る。例えば、ビタミンK1中の脂肪族末端は代謝的に除去され、不飽和イソプレニル部分はキノン部分に結合してビタミンK2を生合成し得る。しかしながら、理論に拘束されることを望むものではないが、ビタミンK1の併用は体内の代謝経路を介してビタミンK2の内部用量を増加させ得る。
【0044】
したがって、本発明の化合物はビタミンK1と混合して、対象における化合物(ビタミンK2)の代謝量又は治療量を高めることができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、上記のように、本発明の化合物は式1で示される化合物の混合物として使用され得る。特定の実施形態では、化合物は少なくともMK4又は少なくともMK7を含み得る。特定の実施形態では、化合物は、混合比を特に制限することなしに、MK4とMK7の混合物を含み得る。例えば、MK4は、約1対150、1対100、1対9、1対4,3対7、2対3、1対1、3対2、7対3、4対1又は9対1又は100対1若しくは150対1の重量比でMK7と混合し得る。いくつかの実施形態において、MK7は、MK4よりも長い半減期及び強い生物学的利用能又は生体内安定性を有するため、MK4より多くの量又は比が、無有害作用量(NOAEL)の範囲内で混合物に含まれ得る。
【0046】
本発明によって投与される1又はそれ以上の化合物の治療上の有効量は、投与後の少なくとも24時間にかけて、対象の尿試料中のカルシウム濃度を約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上又は約80%以上低下させるのに十分な投与用の化合物の量として決定され得る。
【0047】
特定の実施形態において、MK4の治療上の有効量は、約100μg/kg/日、200μg/kg/日、300μg/kg/日、400μg/kg/日、500μg/kg/日、600μg/kg/日、700μg/kg/日、800μg/kg/日、900μg/kg/日、1000μg/kg/日、2mg/kg体重/日、3mg/kg体重/日、4mg/kg体重/日、5mg/kg体重/日、6mg/kg体重/日、7mg/kg体重/日、8mg/kg体重/日、9mg/kg体重/日、10mg/kg体重/日、15mg/kg体重/日、20mg/kg体重/日、30mg/kg体重/日、4mg/kg体重/日、50mg/kg体重/日、100mg/kg体重/日、150mg/kg体重/日、200mg/kg体重/日、250mg/kg体重/日、300mg/kg体重/日、350mg/kg体重/日、400mg/kg体重/日、450mg/kg体重/日、又は500mg/kg体重/日である。いくつかの実施形態において、MK4の治療上の有効量は、無有害作用量(NOAEL)が見出される最大用量で決定され得る。
【0048】
特定の実施形態において、MK7の治療上の有効量は、約1μg/kg/日、2μg/kg/日、3μg/kg/日、4μg/kg/日、5μg/kg/日、6μg/kg/日、7μg/kg/日、8μg/kg/日、9μg/kg/日、10μg/kg/日、15μg/kg/日、20μg/kg/日、30μg/kg/日、40μg/kg/日、50μg/kg/日、60μg/kg/日、70μg/kg/日、80μg/kg/日、90μg/kg/日、100μg/kg/日であり得る。いくつかの実施形態では、MK7の治療上の有効量は、無有害作用量(NOAEL)が見出される最大用量で決定され得る。
【0049】
いくつかの実施形態において、1又はそれ以上のビタミンK2化合物は、体内の化合物の代謝量又は治療量を高めるために、ビタミンK1と混合され得る。1又はそれ以上のビタミンK2化合物とビタミンK1との混合比は、適切に広範囲に変わり得る。特定の実施形態において、MK4及び/又はMK7と併用されたビタミンK1の治療上の有効量は、約1μg/kg/日、2μg/kg/日、3μg/kg/日、4μg/kg/日、5μg/kg/日、6μg/kg/日、7μg/kg/日、8μg/kg/日、9μg/kg/日、10μg/kg/日、15μg/kg/日、20μg/kg/日、30μg/kg/日、40μg/kg/日、50μg/kg/日、60μg/kg/日、70μg/kg/日、80μg/kg/日、90μg/kg/日、100μg/kg/日であり得る。いくつかの実施形態では、ビタミンK1の治療上の有効量は、無有害作用量(NOAEL)が見出される最大用量で決定され得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、カルシウム腎結石症及び1又はそれ以上の高カルシウム尿症、高尿酸尿症、高シュウ酸尿症、低クエン酸尿症若しくは低マグネシウム尿症の治療用の使用のために、化合物は、クエン酸塩、クエン酸カリウム、クエン酸マグネシウム又はクエン酸カルシウム;酸化マグネシウム;ビタミンB6;重炭酸塩、若しくはそれらの組合せからなる群から1又はそれ以上と同時に投与され得る。
【0051】
本明細書に開示されているような1又はそれ以上の化合物を投与される対象は、適切には哺乳動物、又は特にヒトである。特定の実施形態では、治療される対象又はヒトは、高カルシウム尿症に罹患し得る。例えば、ヒトである対象は、24時間ごとに、約50mgを超えるカルシウム、約100mgを超えるカルシウム、約150mgを超えるカルシウム、又は約200mgを超えるカルシウムを排出し得る。
【0052】
したがって、いくつかの実施形態では、高カルシウム尿症を治療する方法は、高カルシウム尿症に罹患している対象で、特に24時間ごとに約50mgを超えるカルシウム、約100mgを超えるカルシウム、約150mgを超えるカルシウム、約200mgを超えるカルシウム又は約250mgを超えるカルシウムを排出する対象を選択する段階をさらに含み得る。特定の実施形態では、対象は24時間当たり約200mgのカルシウムを排出し得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、化合物の治療上の有効量は、腎結石症のリスクを低減するために、既知の抗腎結石症治療と組み合わせて投与され得る。例示的な抗腎結石症治療は、例えば激しい疝痛の痛みの軽減のための、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、任意にIM又はPRの形態のジクロフェナク、の投与;非経口モルヒネ(任意にペチジンを除く)の投与;必要であれば、制吐剤及び補水療法の投与;体外衝撃波結石破砕術(ESWL);例えばカルシウムチャネル遮断薬(例えば、ニフェジピン)若しくはα遮断薬(例えば、タムスロシン)といった薬物による排石促進療法の投与で、任意にα遮断薬が使用される場合、結石の通行を促進するためにプレドニゾロンなどのコルチコステロイドの投与を任意に含む療法;又は外科切除を含む。
【0054】
化合物の治療上有効な用量は、様々な投与経路によって対象に投与することができる。経口又は局所投与が典型的には好ましいが、非経口、舌下、又は埋め込み式のリザーバーを介する、他の投与プロトコールも利用し得る。いくつかの実施形態では、化合物は、カプセル剤、錠剤、ゲル剤、散剤、液剤、懸濁剤又は乳剤として投与する目的で製剤化し得る。
【0055】
論述したように、薬学的に許容される担体と共に任意に本明細書に開示される1又はそれ以上の化合物を含む治療用組成物も提供される。
【0056】
本明細書中で用いられる用語「薬学的に許容される担体」は、本発明の範囲内で、対象内で又は対象に、その意図された機能を果たし得る、有用な化合物の運搬又は輸送に関わる、液体若しくは固体充てん材、安定剤、分散剤、懸濁化剤、希釈剤、賦形剤、増粘剤、溶媒若しくは封入物質のような、薬学的に許容される物質、化合物又は担体を意味する。典型的には、そのような構築物は、ある器官又は身体の部分から、別の器官又は身体の部分に運搬又は輸送される。各担体は、本発明に有用な化合物を含む、製剤の他の成分と適合し、対象に有害でないという意味で「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として役立ち得る物質のいくつかの例には以下のものが含まれる:糖類、例えば乳糖、グルコース及びスクロース;デンプン、例えばトウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン;セルロース及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;粉末のトラガカント;麦芽;ゼラチン;滑石;賦形剤、例えばココアバター及び座剤用ワックス;油、例えば落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油;グリコール類、例えばプロピレングリコール;ポリオール類、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;エステル類、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;界面活性剤;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;並びに医薬製剤に使用される他の非毒性適合物質。
【0057】
好ましい一側面において、化合物は、投与する目的のために、カプセル剤、錠剤、ゲル剤、散剤、液剤、懸濁剤又は乳剤に製剤化し得る。しかしながら、投与方法は特に限定されない。
【0058】
いくつかの実施形態において、化合物の治療上有効な用量は、経口、非経口、口腔、舌下、又は埋め込み式のリザーバーを介して投与し得る。
【0059】
化合物は、投与のための説明書と共にキット、容器、パック、又はディスペンサーに含めることができる。例えば、キットは、高カルシウム尿症及び/又は腎結石症の予防を含む治療のための組成物の使用を開示する製品のラベル又は書面の挿入物を含み得る。本明細書に開示するビタミンKを含む栄養組成物又は栄養補給物について、製品ラベル又は挿入物は、正常な尿の化学及び組成を促進するための組成物の使用を適切に開示し得る。
【0060】
好ましい一側面において、式1の化合物を含む本発明の製剤は、1又はそれ以上の他の治療剤、若しくは栄養補助食品、若しくは栄養補給物と組み合わせて(combination)使用する又はそれらを含むことができ、任意の利便的な経路から別々に、又は組み合わされた医薬組成物若しくは栄養組成物として、連続して又は同時に、投与され得る。本明細書中で使用される場合、2以上の化合物の組合せは、個々の化合物が物理的に混合されている組成物、又は個々の化合物が物理的に分離されている組成物のどちらも指し得る。併用(combination use)とは、望ましい相加、相補又は相乗効果を生じるために、成分を別々に投与することを包含する。特定の例示的な実施形態では、化合物及び薬剤(例えば、クエン酸カリウム、クエン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ビタミンB6、クエン酸カルシウム、重炭酸塩及びこれらの組合せ)を組成物中に物理的に混合する。さらなる例示的な実施形態では、化合物及び薬剤は、組成物中で物理的に分離される。
【0061】
例示的な実施形態では、追加の生物活性剤を、本発明の化合物を含む製剤に添加し得る。あるいは、本発明の製剤は、組み合された使用と共に合併疾患の治療又は予防のための他の薬物成分をさらに含み得る。
【0062】
実施例
【0063】
以下の実施例は、本発明のアッセイ、スクリーニング及び治療方法の作成並びに使用法の完全な開示及び説明を当業者に提供するために提示されており、発明者が本発明とみなすものの範囲を限定する意図はない。
【0064】
[実施例1]ビタミンK2を単独又は他の治療法と併用で使用した高カルシウム尿症の治療
【0065】
抗凝固剤を使用していない高カルシウム尿症の患者は、定期的にビタミンK2の補給を推奨された。24時間をベースラインとする尿検査で、他のいずれの結石危険因子を伴う又は伴わないに関わらず、高カルシウム尿症(>200mg/24時間)が見出された腎結石症の患者8名が、ビタミンK2の市販形態の1つであるMK7のサプリメントを摂取した。すべての患者はまた、このワークアップにおいて見出された他の結石の危険因子に対して標準的な治療を受けた。当該患者は、治療に対する反応を評価するために、ルーチンとして、24時間毎の尿検査を反復するよう求められた。8名の患者のうち、7名が尿中におけるカルシウム排出の平均49%の低下を示した。このことは、チアジド系利尿薬が処方された場合に想定されるカルシウムの30~50%低下と、好意的に比較された。Martins, M. C.et al.,Br J Urol, 1996. 78(2):p.176-180を参照されたい。さらに、ビタミンK2のカルシウム低減効果は、他の結石の危険因子における存在及び治療とは無関係であった。比較として、ビタミンK1が高カルシウム尿症である対象の尿中カルシウムを減少させる能力について評価された研究では、対象の60%のみが尿中カルシウムの減少を有し、本明細書に記載のビタミンK2を処置された集団と類似する高カルシウム尿症治療前の数値を示した患者における尿中カルシウムの平均減少量は15%未満であった。
【0066】
表1は、以前に腎結石症予防療法を受けていない患者、及び安定した腎結石症予防治療の背景を有する患者における、MK7単独の形態又は他の腎結石症治療を加えたビタミンK2の、24時間における尿中カルシウムの測定への影響を示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に示すように、少なくとも3週間にわたる、MK7(100~150μg/日又は1日2回(bid))の摂取は、24時間の尿中カルシウムの著しい減少という結果となった。8名の患者のうち5名が約50%を超える尿中カルシウムの減少を示した。8名すべての患者における尿中カルシウムの平均減少は約43%であった。尿中カルシウムの有意な増加を示した患者はおらず、1名の患者のみが反応を示さなかった(2%増加)。(表1)
【0069】
特に、ビタミンKが他の薬剤と共に投与された場合、例えば、症例1、2及び3において、尿中のカルシウム排出が50%を下回った。症例2及び3のように、低い値のクエン酸カリウムの補給が尿中のカルシウムを減少させることは期待できないので、尿中カルシウムの著しい減少はおそらくビタミンK2の作用のためであろう。症例1のように、アロプリノール、及びクエン酸カルシウムは、尿中カルシウムを増加させたことが示されているため、これらの使用ではビタミンK2を添加して観察される尿中カルシウムの減少は説明されない。残りの症例では、安定した背景レジメンにビタミンK2が追加された。
【0070】
[実施例2]MK4及びMK7の併用
【0071】
表2は、ビタミンK2の療法において、日々低用量のMK7から日々高用量のMK4への変更による、24時間における尿中カルシウムの効果を示す。1名の患者は、ビタミンK2の用量を、1日120μgの用量でMK7を服用することから、1日15mgの用量でMK4を服用することに変更し、24時間の尿中カルシウムにおけるカルシウム排出の、約40%の有意に付加的な低下が示された。
【0072】
【表2】
【0073】
[比較例]
表3は、例えば、ビタミンK2の補充のない、腎結石症の予防治療に変化のない対照患者の群における2回の24時間の尿中カルシウム測定間の正常変動の大きさを示す。特に、8%の中央値及び24%の患者間の標準偏差で、平均では24時間における尿中カルシウムが約4%減少した。2回の採取における最大の差異は31%だった。
【0074】
【表3】
【0075】
このように、ビタミンKを用いた治療について上記で観察された結果は、対象における尿中カルシウム値の典型的な日差変動の範囲外であった。
【0076】
前述の説明から、様々な用途及び条件に適用するため、本明細書に記載された本発明に変更及び修正を加え得ることは明らかであろう。そのような実施形態もまた、以下の請求の範囲内にある。
【0077】
本明細書における変数の任意の定義における要素のリストの列挙は、列挙された要素の任意の単一の要素又は組合せ(若しくは部分的組合せ)としてのその変数の定義を含む。本明細書における実施形態の列挙は、任意の単一の実施形態、又は任意の他の実施形態若しくはその一部と組み合わせた実施形態を含む。
【0078】
本明細書で言及される全ての文書は、参照により本明細書に組み込まれる。