(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153655
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】用量調整
(51)【国際特許分類】
A61K 38/06 20060101AFI20221004BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221004BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20221004BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20221004BHJP
A61K 31/22 20060101ALI20221004BHJP
A61K 31/351 20060101ALI20221004BHJP
A61K 31/4045 20060101ALI20221004BHJP
A61K 38/13 20060101ALI20221004BHJP
A61K 31/4706 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
A61K38/06
A61K45/00
A61K31/454
A61K31/704
A61K31/22
A61K31/351
A61K31/4045
A61K38/13
A61K31/4706
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125281
(22)【出願日】2022-08-05
(62)【分割の表示】P 2019515224の分割
【原出願日】2017-09-22
(31)【優先権主張番号】62/398,724
(32)【優先日】2016-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/510,936
(32)【優先日】2017-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512212195
【氏名又は名称】アッヴィ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サンディープ・ダッタ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・コスロスキ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ・リウ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】グレカプレビル及びピブレンタスビルと併用投与される薬物の用量調整方法を提供する。
【解決手段】独立した共存症の状態を有するC型肝炎ウイルスに感染した患者を治療する方法であって、共存症の状態を治療するための併用薬と共に、グレカプレビル及びピブレンタスビルを1日1回で前記患者に併用投与することを含み、前記薬物が、有機アニオン輸送ポリペプチド、P-糖タンパク質及び乳がん耐性タンパク質の基質である薬物からなる群から選択され、さらに前記薬物の確立された用量が、前記患者にグレカプレビル及びピブレンタスビルを投与する前に用量調整される、方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立した共存症の状態を有するC型肝炎ウイルスに感染した患者を治療する方法であって、共存症の状態を治療するための併用薬と共に、グレカプレビル及びピブレンタスビルを1日1回で前記患者に併用投与することを含み、前記薬物が、有機アニオン輸送ポリペプチド、P-糖タンパク質及び乳がん耐性タンパク質の基質である薬物からなる群から選択され、さらに前記薬物の確立された用量が、前記患者にグレカプレビル及びピブレンタスビルを投与する前に用量調整される、方法。
【請求項2】
グレカプレビルが、300mgを1日1回で投与され、ピブレンタスビルが、120mgを1日1回で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
グレカプレビル及びピブレンタスビルが、8、12又は16週間の期間投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記患者のHCV遺伝子型が、1、2、3、4、5又は6型である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記患者が、治療未経験であるか、治療経験者であるか、又は肝硬変を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記薬物が、ジゴキシン、プラバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン及びシクロスポリンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ジゴキシン用量が、確立された用量から50%減量される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
プラバスタチン用量が、確立された用量から50%減量される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
ロスバスタチン用量が、1日に10mg以下である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
シクロスポリン用量が、1日に100mg以下である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
フルバスタチン又はピタバスタチン用量が、最低承認用量又は最低必要用量に減量される、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
グレカプレビル及びピブレンタスビルの投与が、アタザナビル、リファンピン、カルバマゼピン、ヒペリカム・ペルフォラタム、エファビレンツ、エチニルエストラジオール含有医薬品、ダルナビル、ロピナビル、リトナビル、アトルバスタチン、ロバスタチン及びシンバスタチンからなる群から選択される薬物との併用療法として推奨されないか又は禁忌である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
独立した共存症の状態を有するC型肝炎ウイルスに感染した患者を治療する方法であって、共存症の状態を治療するための併用薬と共に、グレカプレビル及びピブレンタスビルを1日1回で前記患者に併用投与することを含み、前記薬物の確立された用量が、前記患者にグレカプレビル及びピブレンタスビルを投与する前に用量調整される、方法。
【請求項14】
グレカプレビルが、300mgを1日1回で投与され、ピブレンタスビルが、120mgを1日1回で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
グレカプレビル及びピブレンタスビルが、8、12又は16週間の期間投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記患者のHCV遺伝子型が、1、2、3、4、5又は6型である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記患者が、治療未経験であるか、治療経験者であるか、又は肝硬変を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記薬物が、ジゴキシン、プラバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン及びシクロスポリンからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
ジゴキシン用量が、確立された用量から50%減量される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
プラバスタチン用量が、確立された用量から50%減量される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
ロスバスタチン用量が、1日に10mg以下である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
シクロスポリン用量が、1日に100mg以下である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
フルバスタチン又はピタバスタチン用量が、最低承認用量又は最低必要用量に減量される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
グレカプレビル及びピブレンタスビルの投与が、アタザナビル、リファンピン、カルバマゼピン、ヒペリカム・ペルフォラタム、エファビレンツ、エチニルエストラジオール含有医薬品、ダルナビル、ロピナビル、リトナビル、アトルバスタチン、ロバスタチン及びシンバスタチンからなる群から選択される薬物との併用療法として推奨されないか又は禁忌である、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
独立した共存症の状態を有するC型肝炎ウイルスに感染した患者を治療する方法であって、共存症の状態を治療するための併用薬と共に、グレカプレビル及びピブレンタスビルを1日1回で前記患者に併用投与することを含み、前記薬物の確立された用量が、前記患者にグレカプレビル及びピブレンタスビルを投与する前に用量調整され、前記薬物が、ジゴキシン、プラバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン及びシクロスポリンからなる群から選択される、方法。
【請求項26】
前記薬物の用量調整が、(a)ジゴキシン用量を確立された用量から50%減量すること、(b)プラバスタチン用量を確立された用量から50%減量すること、(c)ロスバスタチン用量を1日に10mg以下とすること、(d)シクロスポリン用量を1日に100mg以下とすること、及び(e)フルバスタチン又はピタバスタチン用量を最低承認用量又は最低必要用量に減量することからなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、グレカプレビル及びピブレンタスビルと併用投与される薬物の用量調整に関する。
【背景技術】
【0002】
直接作用型抗ウイルス薬(DAA)のインターフェロン不使用レジメンによる慢性C型肝炎ウイルス(HCV)感染症の治療は、新たな標準的治療となっており、従来のインターフェロン及びリバビリンに基づく治療法よりも高い有効性、より優れた忍容性及び安全性をもたらし、治療期間をより短くする。プロテアーゼ阻害剤であるグレカプレビル(
【0003】
【化1】
CAS番号1365970-03-1)及びNS5A阻害剤であるピブレンタスビル(
【0004】
【化2】
CAS番号1353900-92-1)は、強力な抗HCV薬である。リバビリン不使用のすべての経口のグレカプレビル及びピブレンタスビルの組合せは、慢性HCV治療のためのMAVYRET(登録商標)又はMAVIRET(登録商標)として、Food and Drug Agency、European Medical Agency及びHealth Canadaによって近年承認されたものである。MAVYRETの処方情報及び欧州公開医薬品審査報告書は、共にその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。治療期間は、8、12又は16週間と短い。グレカプレビル及びピブレンタスビルの組合せは、遺伝子型1、2、3、4、5及び6型を含む多くのHCV遺伝子型に対して有効であることが認められている。しかし、グレカプレビル及びピブレンタスビルの組合せが他の薬物と併用投与される場合、望ましくない薬物間相互作用を招くことによって上記他の薬物の投与調整を必要とするかどうかは、容易にはわからない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本出願は、グレカプレビル及びピブレンタスビルと併用投与される薬物の用量調整に関する。一実施形態において、本発明は、独立した共存症の状態を有するC型肝炎ウイルスに感染した患者を治療する方法を提供する。この方法において、患者は、共存症の状態を治療するための併用薬と共に、グレカプレビル及びピブレンタスビルを1日1回で併用投与される。薬物は、有機アニオン輸送ポリペプチド(OATP)、P-糖タンパク質(P-gp)及び乳がん耐性タンパク質(BRCP)の基質である薬物からなる群から選択される。この方法において、薬物の確立された用量は、患者にグレカプレビル及びピブレンタスビルを投与する前又は投与と同時に用量調整される。別の実施形態において、グレカプレビルは、300mgを1日1回で投与され、ピブレンタスビルは、120mgを1日1回で投与される。さらに、別の実施形態において、グレカプレビル及びピブレンタスビルは、8、12又は16週間の期間投与されるか、又はMAVYRET(登録商標)若しくはMAVIRET(登録商標)の処方情報に記載されているとおりに投与される。別の実施形態において、患者は、1、2、3、4、5又は6型のHCV遺伝子型を有するか、又は患者は、治療未経験であるか、治療経験者であるか、若しくは肝硬変を有する。
【0006】
別の実施形態において、前記方法では、薬物が、ジゴキシン、プラバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン及びシクロスポリンからなる群から選択されることが教示される。好ましくは、薬物の確立された用量は、ジゴキシン用量が、確立された用量から50%減量される実施形態、プラバスタチン用量が、確立された用量から50%減量される実施形態、ロスバスタチン用量が、1日に10mg以下である実施形態、シクロスポリン用量が、1日に100mg以下である実施形態、又はフルバスタチン若しくはピタバスタチン用量が、最低承認用量に減量されるか若しくはより高い用量を必要とする場合は最低必要用量に減量される実施形態の選択に個別に従うことに基づき用量調整される。さらに、好ましくは、グレカプレビル及びピブレンタスビルの組合せを投与する場合、アタザナビル、リファンピン、カルバマゼピン、ヒペリカム・ペルフォラタム(hypericum perforatum)(セントジョーンズワート)、エファビレンツ、エチニルエストラジオール含有医薬品、ダルナビル、ロピナビル、リトナビル、アトルバスタチン、ロバスタチン又はシンバスタチンのような薬物は、併用療法として個別に推奨されないか又は個別に禁忌である。
【0007】
さらに別の実施形態において、本発明は、独立した共存症の状態を有するC型肝炎ウイルスに感染した患者を治療する方法を提供する。この方法は、共存症の状態を治療するための併用薬と共に、グレカプレビル及びピブレンタスビルを1日1回で前記患者に併用投与することを含む。この方法において、薬物の確立された用量は、患者にグレカプレビル及びピブレンタスビルを投与する前又は投与と同時に用量調整される。別の実施形態において、グレカプレビルは、300mgを1日1回で投与され、ピブレンタスビルは、120mgを1日1回で投与される。さらに、別の実施形態において、グレカプレビル及びピブレンタスビルは、8、12又は16週間の期間投与されるか又はMAVYRET(登録商標)若しくはMAVIRET(登録商標)の処方情報に記載されているとおりに投与される。別の実施形態において、患者のHCV遺伝子型は、1、2、3、4、5若しくは6型であるか、又は患者は、治療未経験であるか、治療経験者であるか、若しくは肝硬変を有する。
【0008】
別の実施形態において、前記方法では、薬物が、ジゴキシン、プラバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン及びシクロスポリンからなる群から選択されることが教示される。好ましくは、薬物の確立された用量は、ジゴキシン用量が、確立された用量から50%減量される実施形態、プラバスタチン用量が、確立された用量から50%減量される実施形態、ロスバスタチン用量が、1日に10mg以下である実施形態、シクロスポリン用量が、1日に100mg以下である実施形態、又はフルバスタチン又はピタバスタチン用量が、最低承認用量に減量されるか若しくはより高い用量を必要とする場合は最低必要用量に減量される実施形態の選択に個別に従うことに基づき用量調整される。さらに、好ましくは、グレカプレビル及びピブレンタスビルの組合せを投与する場合、アタザナビル、リファンピン、カルバマゼピン、ヒペリカム・ペルフォラタム(セントジョーンズワート)、エファビレンツ、エチニルエストラジオール含有医薬品、ダルナビル、ロピナビル、リトナビル、アトルバスタチン、ロバスタチン又はシンバスタチンのような薬物は、併用療法として個別に推奨されないか又は個別に禁忌である。
【0009】
本発明のさらなる実施形態は、独立した共存症の状態を有するC型肝炎ウイルスに感染した患者を治療する方法を提供する。この方法は、共存症の状態を治療するための併用薬と共に、グレカプレビル及びピブレンタスビルを1日1回で前記患者に併用投与することを含む。この方法において、薬物の確立された用量は、患者にグレカプレビル及びピブレンタスビルを投与する前又は投与と同時に用量調整される。好ましくは、この方法において、薬物は、ジゴキシン、プラバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン及びシクロスポリンからなる群から選択される。
【0010】
この方法において、薬物の用量調整は、(a)ジゴキシン用量を確立された用量から50%減量すること、(b)プラバスタチン用量を確立された用量から50%減量すること、(c)ロスバスタチン用量を1日に10mg以下とすること、(d)シクロスポリン用量を1日に100mg以下とすること、及び(e)フルバスタチン又はピタバスタチン用量を最低承認用量若しくは最低必要用量に減量することからなる群から選択される。
【0011】
この方法において、別の実施形態は、グレカプレビルが、300mgを1日1回で投与され、ピブレンタスビルが、120mgを1日1回で投与されることを提示する。さらに、別の実施形態において、グレカプレビル及びピブレンタスビルは、8、12若しくは16週間の期間投与されるか、又はMAVYRET(登録商標)若しくはMAVIRET(登録商標)の処方情報に記載されているとおりに投与される。別の実施形態において、患者のHCV遺伝子型は、1、2、3、4、5若しくは6型であるか、又は患者は、治療未経験であるか、治療経験者であるか、若しくは肝硬変を有する。
【0012】
上記の要旨及び説明並びに実施例は、例示の目的で提示されるものの、限定するものではないことは理解されるべきである。したがって、用量調整の範囲における+/-20%のような変動は、薬物の用量調整の想定範囲内である。本出願の範囲内の種々の変化及び修正は、本説明から当業者には明白となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
HCV患者は、時に、他の薬物を用いた治療を必要とする可能性のある他の共存症の状態を有する。医学分野において、共存症は、原発性疾患又は障害と同時に発生している(すなわち、共存又は同時発生)1種以上の別の疾患又は障害が存在することであり、この用語の可算的意味では、1種の共存症(複数形の共存症)は、それぞれ追加の障害又は疾患である。グレカプレビル及びピブレンタスビルが、他の併用薬と共に使用される場合、薬物間相互作用のため、他の薬物の用量調整が必要となる場合がある。用量調整は、望ましい血漿中濃度Cmax又は曲線下面積AUCが得られるように、確立された用量を、増量又は減量することを意味する。通常、望ましいCmax及びAUCは、治療を施す医師又は所定の薬物の処方情報によって決定される。したがって、例えば、ジゴキシン用量を調整するため、次の工程に従ってよい:最初に、グレカプレビル及びピブレンタスビルによる治療を開始する前に、血清ジゴキシン濃度を測定する、次に、その用量を約50%減量すること又は投与回数を変更することによってジゴキシン濃度を減少させる。いくつかの薬物は、望ましいCmax及びAUCレベルとなるように用量を調整してもよいが、アタザナビル、リファンピン、カルバマゼピン、ヒペリカム・ペルフォラタム(セントジョーンズワート)、エファビレンツ、エチニルエストラジオール含有医薬品(経口避妊薬など)、ダルナビル、ロピナビル、リトナビル、アトルバスタチン、ロバスタチン及びシンバスタチンからなる群を含む特定の他の併用薬はすべて、個別に禁忌である又は個別に推奨されない。用量調整のための確立された用量は、医師によって提示された用量又はFood and Drug Agency、European Medical Agency、若しくはHealth Canada等のような規制当局によって承認されている薬物の処方情報若しくは公開医薬品審査報告書に記載されている用量である。
【0014】
グレカプレビル及びピブレンタスビルは、P-糖タンパク質(P-gp)、乳がん耐性タンパク質(BCRP)、及び有機アニオン輸送ポリペプチド(OATP)1B1/3の阻害剤である。グレカプレビル及びピブレンタスビルの併用投与は、P-gp、BCRP、OATP1B1又はOATP1B3の基質である薬物の血漿中濃度を増加させる可能性がある。グレカプレビル及びピブレンタスビルは、チトクロームP450(CYP)3A、CYP1A2及びウリジングルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)1A1の弱い阻害剤である。組合せを、CYP3A、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、UGT1A1又はUGT1A4の基質と併用投与する場合には、顕著な相互作用は予想されない。
【0015】
グレカプレビル及びピブレンタスビルは、P-gp及び/又はBCRPの基質である。グレカプレビルは、OATP1B1/3の基質である。グレカプレビル及びピブレンタスビルと、肝臓P-gp、BCRP又はOATP1B1/3を阻害する薬物との併用投与は、グレカプレビル及び/又はピブレンタスビルの血漿濃度を増加させることがある。
【0016】
グレカプレビル及びピブレンタスビルと、P-gp/CYP3Aを誘導する他の併用薬との併用投与は、グレカプレビル及びピブレンタスビルの血漿濃度を減少させることがある。
【0017】
一実施形態において、本発明は、HCVに感染した患者を治療する方法であって、患者が、ジゴキシンでも治療される、方法を特徴とする。本方法は、患者にグレカプレビル及びピブレンタスビルを1日1回で投与することを含み、この方法において、ジゴキシン用量は50%減量される。
【0018】
本明細書で用いる場合、グレカプレビル及びピブレンタスビルを併用投与する際、薬物におけるいずれの用量の減量も、グレカプレビル及びピブレンタスビルを併用投与することなく通常投与されるその用量と比較して測定される。例えば、患者が、グレカプレビル及びピブレンタスビルの組合せ療法を開始する前に、ジゴキシン300mcgを1日1回(QD)で服用している場合、グレカプレビル及びピブレンタスビルを併用投与するためには、ジゴキシン用量を1日1回300mcgから50%減量する必要がある。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、HCVに感染した患者を治療する方法であって、患者が、ジゴキシンでも治療される、方法を特徴とする。本方法は、患者にグレカプレビル300mg及びピブレンタスビル120mgを1日1回で投与することを含み、この方法において、ジゴキシン用量は50%減量される。
【0020】
さらに別の実施形態において、本発明は、HCVに感染した患者を治療する方法であって、患者が、プラバスタチンでも治療される、方法を特徴とする。本方法は、患者にグレカプレビル及びピブレンタスビルを1日1回で投与することを含み、この方法において、プラバスタチン用量は50%減量される。
【0021】
さらに別の実施形態において、本発明は、HCVに感染した患者を治療する方法であって、患者が、プラバスタチンでも治療される、方法を特徴とする。本方法は、患者にグレカプレビル300mg及びピブレンタスビル120mgを1日1回で投与することを含み、この方法において、プラバスタチン用量は50%減量される。
【0022】
さらに別の実施形態において、本発明は、HCVに感染した患者を治療する方法であって、患者が、ロスバスタチンでも治療され、またグレカプレビル及びピブレンタスビルを併用投与しない場合、1日に10mgを超える用量のロスバスタチンを用いて治療される、方法を特徴とする。本方法は、患者にグレカプレビル及びピブレンタスビルを1日1回で投与することを含み、この方法において、ロスバスタチン用量は1日に10mg以下である。
【0023】
さらに別の実施形態において、本発明は、HCVに感染した患者を治療する方法であって、患者が、ロスバスタチンでも治療され、またグレカプレビル及びピブレンタスビルを併用投与しない場合、1日に10mgを超える用量のロスバスタチンを用いて治療される、方法を特徴とする。本方法は、患者にグレカプレビル300mg及びピブレンタスビル120mgを1日1回で投与することを含み、この方法において、ロスバスタチン用量は1日に10mg以下である。
【0024】
またさらに別の実施形態において、本発明は、HCVに感染した患者を治療する方法であって、患者が、シクロスポリンでも治療される、方法を特徴とする。本方法は、1日に100mg以下の安定した用量のシクロスポリンを服用している患者に、グレカプレビル及びピブレンタスビルを1日1回のみ投与することを含む。
【0025】
またさらに別の実施形態において、本発明は、HCVに感染した患者を治療する方法であって、患者が、シクロスポリンでも治療される、方法を特徴とする。本方法は、1日に100mg以下の安定した用量のシクロスポリンを服用している患者に、グレカプレビル300mg及びピブレンタスビル120mgを1日1回のみ投与することを含む。
【0026】
一実施形態において、本発明は、独立した共存症の状態を有するC型肝炎ウイルスに感染した患者を治療する方法を提供する。この方法において、患者は、共存症の状態を治療するための併用薬と共に、グレカプレビル及びピブレンタスビルを1日1回で併用投与される。薬物は、有機アニオン輸送ポリペプチド(OATP)、P-糖タンパク質(P-gp)及び乳がん耐性タンパク質(BRCP)の基質である薬物からなる群から選択される。この方法において、薬物の確立された用量は、患者にグレカプレビル及びピブレンタスビルを投与する前又は投与と同時に用量調整される。別の実施形態において、グレカプレビルは、300mgを1日1回で投与され、ピブレンタスビルは、120mgを1日1回で投与される。さらに、別の実施形態において、グレカプレビル及びピブレンタスビルは、8、12又は16週間の期間投与される又はMAVYRET(登録商標)若しくはMAVIRET(登録商標)の処方情報に記載されているとおりに投与される。別の実施形態において、患者のHCV遺伝子型は、1、2、3、4、5又は6型であるか、又は患者は、治療未経験であるか、治療経験者であるか、若しくは肝硬変を有する。
【0027】
別の実施形態において、前記方法では、薬物が、ジゴキシン、プラバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン及びシクロスポリンからなる群から選択されることが教示される。好ましくは、薬物の確立された用量は、ジゴキシン用量が、確立された用量から50%減量される実施形態、プラバスタチン用量が、確立された用量から50%減量される実施形態、ロスバスタチン用量が、1日に10mg以下である実施形態、シクロスポリン用量が、1日に100mg以下である実施形態、又はフルバスタチン又はピタバスタチン用量が、最低承認用量に減量されるか若しくはより高い用量を必要とする場合は最低必要用量に減量される実施形態の選択に、個別に従うことに基づき用量調整される。さらに、好ましくは、グレカプレビル及びピブレンタスビルの組合せを投与する場合、アタザナビル、リファンピン、カルバマゼピン、ヒペリカム・ペルフォラタム(セントジョーンズワート)、エファビレンツ、エチニルエストラジオール含有医薬品、ダルナビル、ロピナビル、リトナビル、アトルバスタチン、ロバスタチン又はシンバスタチンのような薬物は、併用療法として個別に推奨されないか又は個別に禁忌である。
【0028】
さらに別の実施形態において、本発明は、独立した共存症の状態を有するC型肝炎ウイルスに感染した患者を治療する方法を提供する。この方法は、共存症の状態を治療するための併用薬と共に、グレカプレビル及びピブレンタスビルを1日1回で前記患者に併用投与することを含む。この方法において、薬物の確立された用量は、患者にグレカプレビル及びピブレンタスビルを投与する前又は投与と同時に用量調整される。別の実施形態において、グレカプレビルは、300mgを1日1回で投与され、ピブレンタスビルは、120mgを1日1回で投与される。さらに、別の実施形態において、グレカプレビル及びピブレンタスビルは、8、12又は16週間の期間投与される又はMAVYRET(登録商標)若しくはMAVIRET(登録商標)の処方情報に記載されているとおりに投与される。別の実施形態において、患者のHCV遺伝子型は、1、2、3、4、5又は6型であるか、又は患者は、治療未経験であるか、治療経験者であるか、若しくは肝硬変を有する。
【0029】
別の実施形態において、前記方法では、薬物が、ジゴキシン、プラバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン及びシクロスポリンからなる群から選択されることが教示される。好ましくは、薬物の確立された用量は、ジゴキシン用量が、確立された用量から50%減量される実施形態、プラバスタチン用量が、確立された用量から50%減量される実施形態、ロスバスタチン用量が、1日に10mg以下である実施形態、シクロスポリン用量が、1日に100mg以下である実施形態、又はフルバスタチン又はピタバスタチン用量が、最低承認用量に減量されるか若しくはより高い用量を必要とする場合は最低必要用量に減量される実施形態の選択に個別に従うことに基づき用量調整される。さらに、好ましくは、グレカプレビル及びピブレンタスビルの組合せを投与する場合、アタザナビル、リファンピン、カルバマゼピン、ヒペリカム・ペルフォラタム(セントジョーンズワート)、エファビレンツ、エチニルエストラジオール含有医薬品、ダルナビル、ロピナビル、リトナビル、アトルバスタチン、ロバスタチン又はシンバスタチンのような薬物は、併用療法として個別に推奨されないか又は個別に禁忌である。
【0030】
本発明のさらなる実施形態は、独立した共存症の状態を有するC型肝炎ウイルスに感染した患者を治療する方法を提供する。この方法は、共存症の状態を治療するための併用薬と共に、グレカプレビル及びピブレンタスビルを1日1回で前記患者に併用投与することを含む。この方法において、薬物の確立された用量は、患者にグレカプレビル及びピブレンタスビルを投与する前又は投与と同時に用量調整される。好ましくは、この方法において、薬物は、ジゴキシン、プラバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン及びシクロスポリンからなる群から選択される。
【0031】
この方法において、薬物の用量調整は、(a)ジゴキシン用量を確立された用量から50%減量すること、(b)プラバスタチン用量を確立された用量から50%減量すること、(c)ロスバスタチン用量を1日に10mg以下とすること、(d)シクロスポリン用量を1日に100mg以下とすること、及び(e)フルバスタチン又はピタバスタチン用量を最低承認用量又は最低必要用量に減量することからなる群から選択される。
【0032】
この方法において、別の実施形態は、グレカプレビルが、300mgを1日1回で投与され、ピブレンタスビルが、120mgを1日1回で投与されることを提示する。さらに、別の実施形態において、グレカプレビル及びピブレンタスビルは、8、12又は16週間の期間投与される又はMAVYRET(登録商標)若しくはMAVIRET(登録商標)の処方情報に記載されているとおりに投与される。別の実施形態において、患者のHCV遺伝子型は、1、2、3、4、5又は6型であるか、又は患者は、治療未経験であるか、治療経験者であるか、若しくは肝硬変を有する。
【0033】
上記の説明及び次の実施例は、例示の目的で提示されるものの、限定するものではないことは理解されるべきである。本出願の範囲内の種々の変化及び修正は、本説明から当業者には明白となる。
【実施例0034】
[実施例1] 確立された薬物相互作用及び可能性のある他の薬物相互作用
表1は、併用薬の濃度に対するグレカプレビル及びピブレンタスビルの併用投与の作用並びにグレカプレビル及びピブレンタスビルに対する併用薬の影響を提示する。
【0035】
【0036】
[実施例2] 臨床薬理:薬物相互作用試験
薬物相互作用試験を、グレカプレビル/ピブレンタスビル及び併用投与される可能性の高い他の薬物を用いて行い、また薬物動態相互作用のためのプローブとして一般的に使用される薬物を用いて行った。表2及び3は、グレカプレビル/ピブレンタスビルを、臨床的に関連する可能性のある変化を示した他の薬物と併用投与した場合の薬物動態的作用の要約である。
【0037】
【0038】
【0039】
[実施例3] ジゴキシン
この実施例では、ジゴキシンの単回投与を伴う、グレカプレビル及びピブレンタスビルの複数回投与の薬物動態、安全性及び忍容性を評価した。総合的に良好な健康状態にある成人の男性及び女性対象(N=12)をこの試験に登録した。試験計画を表4に示した。
【0040】
【0041】
グレカプレビル及びピブレンタスビルと併用投与した場合、ジゴキシンのCmax及びAUCinfは、ジゴキシン単独の場合と比較して、それぞれ72%及び48%高い。腎クリアランスの推定値及びジゴキシンの尿中排泄率は、グレカプレビル及びピブレンタスビルを用いた場合も用いなかった場合も同程度(差異は18%以下)であり、腎P-gpの限られた阻害を示唆する。グレカプレビル及びピブレンタスビルの曝露量は、ジゴキシンを用いた場合も用いなかった場合も同程度(差異は16%以下)であった。
【0042】
P-糖タンパク質(P-gp)は、腸管上皮細胞の頂端膜、腎近位尿細管細胞、脳毛細血管内皮細胞及び肝細胞の小管膜を含む種々の組織で発現される排出トランスポーターである。強心配糖体であるジゴキシンは、P-gpを介した薬物間相互作用を臨床的に評価するためのプローブ基質として利用されることが多い。グレカプレビル及びピブレンタスビルは、ジゴキシンの曝露量を増加し、グレカプレビル及びピブレンタスビルの組合せが、P-gpを阻害する可能性を示唆している。この試験結果に基づいて、ジゴキシン用量は、グレカプレビル及びピブレンタスビルと併用投与する場合、50%減量されるべきであり、患者をモニターするべきである。
【0043】
[実施例4] プラバスタチン、ロスバスタチン又はアトルバスタチン
この実施例では、プラバスタチン、ロスバスタチン又はアトルバスタチンの複数回投与を伴う、グレカプレビル及びピブレンタスビルの複数回投与の薬物動態、安全性及び忍容性を評価した。良好な健康状態にある成人の男性及び女性対象(N=12/群、N=合計36)をこの試験に登録した。試験計画を表5に示した。
【0044】
【0045】
グレカプレビル及びピブレンタスビルと併用投与した場合、プラバスタチンのCmax及びAUC24は、それぞれ、プラバスタチン単独の場合の2.2倍及び2.3倍であった。グレカプレビルの曝露量は、グレカプレビル及びピブレンタスビルをプラバスタチンと併用投与した場合、グレカプレビル及びピブレンタスビル単独の場合よりも高く(59%のCmaxの上昇、44%のAUC24の上昇)、これに対して、ピブレンタスビルの曝露量は同程度(差異は24%以下)であった。プラバスタチンは、有機アニオン輸送ポリペプチド(OATP)1B1及び1B3の基質であり、グレカプレビルは、OATP1B1/3の阻害剤である。グレカプレビル及びピブレンタスビルとの併用投与後、プラバスタチンの曝露量の増加は、併用投与されたプラバスタチンをクラリスロマイシンと併用投与した場合に認められる増加(Cmaxの2.1倍までの上昇、AUCの2.3倍までの上昇)と同程度であった。プラバスタチンをグレカプレビル及びピブレンタスビルと共に投与する場合、プラバスタチンの用量は、50%減量されるべきである。
【0046】
グレカプレビル及びピブレンタスビルと併用投与した場合、ロスバスタチンのCmax及びAUC24は、それぞれ、ロスバスタチン単独の場合の5.6倍及び2.2倍であった。グレカプレビル及びピブレンタスビルの曝露量は、ロスバスタチンを用いた場合も用いなかった場合も同程度(差異25%以下)であった。ロスバスタチンは、乳がん耐性タンパク質(BCRP)及びOATP1B1/3の基質である。グレカプレビル及びピブレンタスビルはBCRPの阻害剤であり、グレカプレビルはOATP1B1/3の阻害剤である。グレカプレビル及びピブレンタスビルと併用投与する場合、ロスバスタチンの曝露量の増加は、ロスバスタチンをロピナビル/リトナビルと併用投与した場合に認められる増加と同程度であった(Cmaxの5倍の上昇、AUC2.1倍)。処方情報に従って、ロスバスタチン用量は、ロピナビル/リトナビルと併用投与する場合、10mgQDを超えるべきではない。同様に、ロスバスタチンをグレカプレビル及びピブレンタスビルと併用投与する場合、成人患者に対するロスバスタチンの用量は、10mgQDに限定されるべきである。
【0047】
[実施例5] シクロスポリン
シクロスポリンを、薬物間相互作用試験において、100mg及び400mgで評価した。これらの試験結果に基づくと、1日に100mg以下の安定した用量のシクロスポリンを投与中の対象にのみ、グレカプレビル及びピブレンタスビルの組合せ療法を開始するべきであり、その後、シクロスポリン用量を、通常の治療モニタリングに従って調整することができる(例えば、1日に100mgを超えてよい)。
【0048】
[実施例6] 国外対象における薬物間相互作用の評価
グレカプレビル及びピブレンタスビルの薬物間相互作用(DDI)を、国外対象における第I相臨床試験から特徴付けられた。
【0049】
DDIを、グレカプレビル及びピブレンタスビルと、薬物トランスポーター、CYPプローブ(CYP3A4、CYP1A2、CYP2D6、CYP2C9及びCYP2C19)、並びに抗レトロウイルス薬(ARV)、カルシウムチャネル遮断薬(CCB)、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)、オピオイド及びタクロリムスを含むHCV感染対象に使用される併用療法の間で評価した。安全性及び忍容性を、試験全体を通して評価した。
【0050】
グレカプレビル及びピブレンタスビルと併用投与する場合、臨床的に関連する変化は、CCB、ARB、オピオイド、ARV及びCYPプローブ基質において認められなかった。グレカプレビル及びピブレンタスビルは、タクロリムス(約45%のAUCの上昇)、プラバスタチン(2.3倍のAUCの上昇)、ロスバスタチン(2.2倍のAUCの上昇)、ダビガトラン(2.4倍のAUCの上昇)及びジゴキシン(48%のAUCの上昇)の曝露量を増加させた。GLE/PIBの曝露量において、臨床的に有意な変化は認められなかった。これらの薬物との併用による重篤な有害事象は報告されなかった。
【0051】
全般的に、グレカプレビル及びピブレンタスビルと、CYP及びUGT酵素との臨床的な相互作用はわずかであるが、GLE/PIBと共に使用する場合、OATP、P-gp及びBCRP基質の曝露量は増加することがある。CCB、ARB、オピオイド、タクロリムス及び評価されたARVに対する用量調整は推奨されていない。GLE/PIBと併用投与する場合、OATP、P-gp及び/又はBCRPの感度が高い基質に対する用量調整が推奨されている。「評価されたARV」には、レジメンを含む、アバカビル、コビシスタット、ドルテグラビル、エルビテグラビル、エムトリシタビン、ラミブジン、ラルテグラビル、リルピビリン、又はテノホビルアラフェナミドが含まれる。
【0052】
選択された実施例を含む本発明の上記の説明は、例示及び説明を提供するが、すべてを網羅すること又は本発明を開示された正にそのものに限定することを意図するものではない。上記の教示を考慮に入れた修正及び変形は可能であり、又は本発明の実施から得られることがある。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びそれらの等価物によって定義されることがわかる。