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特開2022-153687チップ搬送装置およびこれを用いた実装装置ならびに実装方法
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  • 特開-チップ搬送装置およびこれを用いた実装装置ならびに実装方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153687
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】チップ搬送装置およびこれを用いた実装装置ならびに実装方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
H01L21/52 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056340
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青木 進平
(72)【発明者】
【氏名】晴 孝志
(72)【発明者】
【氏名】濱川 健史
(72)【発明者】
【氏名】寺田 勝美
(72)【発明者】
【氏名】藤井 智也
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047FA14
5F047FA90
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ダイシングテープからチップ部品を剥離して基板に実装するのに際して、接合面を汚染せずに搬送するチップ搬送装置およびこれを用いた実装装置ならびに実装方法を提供する。
【解決手段】チップ搬送装置は、基板に実装するチップ部品Cの搬送に際して、チップ部品を浮上させる浮上手段2を備える。浮上手段2は、板状の浮上手段本体20の表面に浮上気流発生部21と外周気流発生部22を有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に実装するチップ部品を搬送するチップ搬送装置であって、
前記チップ部品を浮上させる浮上手段を備えたチップ搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載のチップ搬送装置であって、前記浮上手段が気流を発生して前記チップ部品を風圧により浮上させるチップ搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載のチップ搬送装置であって、前記浮上手段が、前記チップ部品直下から垂直上方に向けた気流と、前記チップ部品の四辺外側から対辺方向に向けた気流を発生させるチップ搬送装置。
【請求項4】
請求項1に記載のチップ搬送装置であって、前記浮上手段は超音波振動を発生し、前記チップ部品との間に空気膜を形成して前記チップ部品を浮上させるチップ搬送装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載のチップ搬送装置であって、
前記チップ部品を、接合面を下に向けた状態で、浮上させるチップ搬送装置。
【請求項6】
ダイシングテープに密着しているチップ部品を剥離してから基板に実装する実装装置であって、
前記チップ部品をダイシングテープから剥離するチップ剥離装置と、
請求項1から請求項5の何れかに記載のチップ搬送装置と、
前記チップ搬送装置により搬送された前記チップ部品を吸着保持し、前記基板に圧着するボンディングヘッドと、を備えた実装装置。
【請求項7】
前記接合面の反対側がダイシングテープに密着しているチップ部品を剥離してから前記接合面を基板に対向させて実装する実装装置であって、
前記接合面を下に向けた状態で前記チップ部品をダイシングテープから剥離するチップ剥離装置と、
請求項5に記載のチップ搬送装置と、
前記チップ搬送装置により搬送された前記チップ部品を前記接合面の反対側で吸着保持し、前記基板に圧着するボンディングヘッドと、を備えた実装装置。
【請求項8】
ダシングテープに密着しているチップ部品を剥離してから、前記チップ部品の前記ダイシングテープと密着している面と反対側を接合面として基板に実装する実装方法であって、
前記接合面を下に向けた状態で前記チップ部品を剥離するチップ剥離工程と、
前記接合面が下に向いた状態で前記チップ部品を浮上させて搬送するチップ搬送工程と、
前記チップ部品の前記接合面の反対側で保持して、前記基板に圧着する接合工程と、を備えた実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ搬送装置およびこれを用いた実装装置ならびに実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ等のチップ部品を基板に実装するのに際して、チップ部品を、ダイシングテープ上のウエハを個片化した状態で供給する例が良く知られている(例えば特許文献1)。このようなチップ供給形態でチップ部品をボンディングヘッドまで搬送する過程を示したのが図12から図14である、
すなわち、図12(a)から図12(c)に示すように、チップ部品CはダイシングテープDS側からニードル202で突き上げられ、ダイシングテープDSから剥離して、ピックアップコレット210に吸着保持される。
【0003】
一般的に、チップ部品Cは、ダイシングテープDSと反対側の面に電極が形成されている。このため、基板にチップ部品Cをフェイスダウン実装するのであればピックアップコレット210を図13(a)のように上下反転させた状態でボンディングヘッドの直下に配置すればよい。しかし、ピックアップコレットをボンディングヘッド直下まで移動させようとすると機構的に複雑になるとともにスペース的な制約もあるため実施は困難である。
【0004】
そこで、図13(b)から図13(d)に示すように、ピックアップコレット210を回転させた後に、ピックアップコレット210がチップ部品Cを移載コレット220に受け渡し、さらに、図14(a)から図14(b)に示すように移載コレット220がチップ部品Cをチップスライダ31に受け渡し、チップスライダ31がボンディングヘッド直下までチップ部品を搬送している。なお、図14(b)に示すように、チップスライダ31上のチップ部品Cは電極を有する面を下側に向けているので、上側からボンディングヘッドに吸着保持されてフェイスダウン実装に供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-311329号公報
【特許文献2】特開2020-057750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体チップ等の高集積化要求に伴う微細加工が進歩しており、フェイスアップ実装における(電極を有する)接合面の汚染(異物付着や傷)が生じると実装後の製品品質に悪影響を及ぼすことは明らかである。
【0007】
一方において、図12から図14を用いた説明から判るように、ダイシングテープDSに付着した状態のチップ部品Cを実装に供しようとした場合、接合面がピックアップコレット210やチップスライダ31と接触する。このため、これらの接触に伴う、接合面への異物付着や傷の発生が懸念される。
【0008】
このため、ダイシングテープに貼り付いた状態のチップ部品を基板に実装するまでの過程において、接合面を他のものに触れさせない手法が望まれており、種々の検討が成されている。例えば、特許文献2ではベルヌーイチャックを用いてチップ部品を非接触で保持する例が示されている。しかし、数mm角から十数mm角程度の大きさのチップ部品をベルヌーイチャックで保持しようとするとチップ部品の周囲を横滑り抑制用のガイドで囲む必要があり、チップ部品とガイドの接触により接合面周囲が汚染され接合面にも異物が付着することがある。
【0009】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、ダイシングテープからチップ部品を剥離して基板に実装するのに際して、接合面を汚染せずに搬送するチップ搬送装置およびこれを用いた実装装置ならびに実装方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
基板に実装するチップ部品を搬送するチップ搬送装置であって、
前記チップ部品を浮上させる浮上手段を備えたチップ搬送装置である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のチップ搬送装置であって、
前記浮上手段が気流を発生して前記チップ部品を風圧により浮上させるチップ搬送装置である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のチップ搬送装置であって、
前記浮上手段が、前記チップ部品直下から垂直上方に向けた気流と、前記チップ部品の四辺外側から対辺方向に向けた気流を発生させるチップ搬送装置である。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のチップ搬送装置であって、
前記浮上手段は超音波振動を発生し、前記チップ部品との間に空気膜を形成して前記チップ部品を浮上させるチップ搬送装置である。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4の何れかに記載のチップ搬送装置であって、前記チップ部品を、接合面を下に向けた状態で、浮上させるチップ搬送装置である。
【0015】
請求項6に記載の発明は、 ダイシングテープに密着しているチップ部品を剥離してから基板に実装する実装装置であって、
前記チップ部品をダイシングテープから剥離するチップ剥離装置と、請求項1から請求項5の何れかに記載のチップ搬送装置と、前記チップ搬送装置により搬送された前記チップ部品を吸着保持し、前記基板に圧着するボンディングヘッドと、を備えた実装装置である。
【0016】
請求項7に記載の発明は、
前記接合面の反対側がダイシングテープに密着しているチップ部品を剥離してから前記接合面を基板に対向させて実装する実装装置であって、
前記接合面を下に向けた状態で前記チップ部品をダイシングテープから剥離するチップ剥離装置と、請求項5に記載のチップ搬送装置と、前記チップ搬送装置により搬送された前記チップ部品を前記接合面の反対側で吸着保持し、前記基板に圧着するボンディングヘッドと、を備えた実装装置である。
【0017】
請求項8に記載の発明は、
ダシングテープに密着しているチップ部品を剥離してから、前記チップ部品の前記ダイシングテープと密着している面と反対側を接合面として基板に実装する実装方法であって、
前記接合面を下に向けた状態で前記チップ部品を剥離するチップ剥離工程と、前記接合面が下に向いた状態で前記チップ部品を浮上させて搬送するチップ搬送工程と、前記チップ部品の前記接合面の反対側で保持して、前記基板に圧着する接合工程と、を備えた実装方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、ダイシングテープからチップ部品を剥離して基板に実装するのに際して、接合面を汚染せずに搬送できて、接合信頼性の高い実装を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る実装装置の構成を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る浮上手段の構成の一例を示す外観図である。
図3】本発明の実施形態に係る浮上手段について説明するもので、(a)断面図であり、(b)気流によりチップ部品を浮上させている状態を示す図であり、(c)変形例の断面図であり、(d)別の変形例の断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る浮上手段で、チップ部品の位置安定化を図ることを目的とした変形例を説明するもので、(a)進行方向の動きを規制するガイドを設けた例を示し、(b)同ガイドから気流を発生する例を示し、(c)進行方向の動きを規制するためにチップ部品前後の気流発生部自体を斜め向きにした例を示し、(d)浮上気流発生部の中央付近において吸引部を設けた例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る浮上手段で、チップ部品の位置安定化を図ることを目的とした変形例を説明するもので、(a)進行方向に対する横方向の動きを規制するために傾斜を有するガイドを設けた例を示し、(b)同ガイドから気流を発生する例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る実装装置による、チップ部品をダイシングテープから剥離してから基板に実装するまでの過程を説明する図である。
図7】本発明の実施例に係る浮上手段にチップ部品が受け渡されて搬送される過程を説明するもので、(a)ダイシングテープに密着したチップ部品と浮上手段の位置合わせを行なう状態、(b)チップ部品を剥離して浮上手段に受け渡された状態、(c)チップ部品が浮上手段に非接触で保持されて搬送される状態、を示す図である。
図8】本発明の実施例に係る浮上手段からボンディングヘッドにチップ部品を受け渡す過程を説明するもので、(a)浮上手段がボンディングヘッド直下に配置された状態、(b)浮上手段が非接触保持しているチップ部品をボンディングヘッドが吸着保持する状態、(c)ボンディングヘッドにチップ部品が保持され浮上手段が退避する状態、を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係るボンディングヘッドによりチップ部品を基板に実装する過程を説明するもので、(a)チップ部品と基板の位置合わせが完了し両者を接近させている状態、(b)ボンディングヘッドによりチップ部品と基板を密着させて加圧している状態、(c)ボンディングヘッドによる加圧が完了してチップ部品が基板に実装された状態、を示す図である。
図10】本発明の浮上手段において別の浮上原理による実施形態を説明する図である。
図11】本発明の実施形態において、非電極面を浮上手段と対向させてチップ部品を浮上させる状態を示す図である。
図12】ダイシングテープ上のチップ部品を剥離させてピックアップコレットが保持する過程を説明するもので、(a)チップ部品をダイシングテープ越しにニードルで突き上げようとする状態、(b)ニードルで突き上げられてダイシングテープが剥離するチップ部品をピックアップコレットが吸着保持する状態、(c)ダイシングテープが完全に剥離してピックアップコレットにチップ部品が受け渡された状態、を示す図である。
図13】ピックアップコレットが保持したチップ部品を反転コレットに受け渡す過程を説明するもので、(a)ピックアップコレットが回転した状態、(b)ピックアップコレットが保持するチップ部品に反転コレットが接近する状態、(c)同チップ部品に反転コレットが密着した状態、(d)チップ部品が受け渡されて反転コレットが吸着保持している状態、を示す図である。
図14】反転コレットが保持したチップ部品を搬送機構に受け渡す過程を説明するもので、(a)反転コレット直下にスライダを配置した状態、(b)反転コレットによる吸着保持が解除されてチップ部品がスライダに受け渡された状態、を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について、図を用いて説明する。図1は本発明の実施形態における実装装置1の概略図である。
【0021】
実装装置1はダイシングテープに貼り付いた状態で個片化されたチップ部品を剥離して基板に実装する装置である。
【0022】
実装装置1は、図1に示すように、浮上手段2、搬送機構3、チップ剥離機構4、基板ステージ5、加圧ツール6、ボンディングヘッド7を構成され、図示しない制御部によって各構成要素は制御される。ここで、浮上手段2と搬送機構3の組み合わせによってチップ搬送装置が構成される。
【0023】
浮上手段2はチップ部品Cを表面上に浮上させる機能を有し、非接触でチップ部品Cを保持することが可能である。本実施形態において浮上手段2は気流によりチップ部品Cを浮上させて保持するものであり、図2に示すように、板状の浮上手段本体20の表面に浮上気流発生部21と外周気流発生部22を有している。浮上手段2の断面図は図3(a)のようになっており、図3(b)に示すように浮上気流発生部21は上向きの気流を発生させている。ここで、図2および図3(b)に示すように浮上気流発生部21の面形状はチップ部品Cの面形状と概ね等しい。また、外周気流発生部22は図3(b)に示すようにチップ部品C直下より外側から、浮上しているチップ部品C向けて気流を発生するものである。すなわち、外周気流発生部22は、浮上気流発生部21の外側から対辺方向上側に向けた気流を発生させている。このため、浮上手段2の上面に対して、浮上気流発生部21では気流噴出用の穴を垂直方向に設け、外周気流発生部22の気流噴出用では穴を垂直方向より対辺方向に向けて設けるのがよい。なお、図3(b)では、外周気流発生部22がチップ部品Cの外に配置されているが、図3(c)のように浮上気流発生部21をチップ部品Cより小さくして、外周気流発生部22がチップ部品Cの内側にあってもよい。また、図3(a)では浮上気流発生部21と外周気流発生部22を密接して配置しているが、図3(d)のように気流を発生しない領域を間に設けてもよい。
【0024】
浮上気流発生部21が発生する気流の流量および圧力は、浮上させるチップ部品Cの質量等によって異なるが、チップ部品Cを0.05mmから0.2mmの高さに浮上させるように調整される。また、外周気流発生部22が発生する気流はチップ部品Cが浮上気流発生部21上で横方向(XY面内)に移動するのを抑制するものであり、圧力はチップ部品Cの質量等によって異なるが、流量については浮上気流発生部21が発生する流量の20%から200%の範囲が望ましいということが実験的に判った。
【0025】
なお、浮上手段2として、以上説明した例の他に種々の変形例の採用が可能である。例えば、図4図5では、浮上するチップ部品Cが横方向にズレることを防いで位置安定化を図る例を示している。
【0026】
図4(a)は浮上手段2の進行方向(X方向)へのチップ部品Cの動きを規制するガイド20Gを設けた例であり、図4(b)はガイド20Gに外周気流発生部を設けた例である。図4(a)のガイド20Gを設けた例ではチップ部品Cの側部がガイド20Gと接触する可能性があるが、図4(b)の例では外周気流発生部22から気流を発生することでチップ部品Cの側部がガイド20Gと接触する可能性も低減できる。図4(c)の例では、ガイド20Gを設けるのではなく、浮上手段本体20の上面にテーパ状の窪みを形成して、窪んだ面から気流を発生する例であり、各面から垂直方向の気流を発生する構成となっている。更に、図4(d)の例は、浮上気流発生部21の中央付近において(外部に気流を発生するのではなく)減圧部25を配して吸引気流を発生する構成となっている。図4(d)の例では、チップ部品Cを浮上させる成分に、浮上気流発生部21の中央部に向かわせる成分が加わった浮上気流となるので、チップ部品Cの横方向の位置が安定する。
【0027】
図5(a)は浮上手段2の進行方向に対する幅方向(Y方向)へのチップ部品Cの動きを規制する形状を示している。図5(a)の例において、テーパ形状の窪みの底部の幅をチップ部品Cの幅より狭くしており、チップ部品Cの側部は浮上手段2に接触することはあっても、電極面が浮上手段2と接触することを回避できる。更に図5(b)のように、斜面部分から気流を発生する構成とすることで、チップ部品Cの側部が浮上手段2と接触する可能性を下げることが出来る。
【0028】
搬送機構3はレール30とレールに沿って移動するスライダ31を構成要素としている。本実施形態において、スライダ31上に浮上手段2を配置しており、浮上手段2がチップ剥離機構4の下からボンディングヘッド7の間を往復移動可能な構成となっている。なお、図1において浮上手段2をスライダ31に配置した形態となっているが、スライダ31が浮上手段2の機能を備えた形態としてもよい。
【0029】
チップ剥離機構4はウエハ保持手段40とエネルギー供給手段41を基本構成としている。ウエハ保持手段40はウエハWを貼り付けたダイシングテープDSの外周を保持するものであり、図1に示す状態においてダイシングテープDS上にウエハWを個片化した多数のチップ部品Cが貼り付いた状態となっている。また、図1において、チップ部品CはダイシングテープDSのZ方向下側に配置された状態、すなわちダイシングテープDSのエネルギー供給手段41側の面と反対側の面に付着している。また、エネルギー供給手段41は、(ダイシングテープDSにチップ部品Cを貼り付けている)粘着層の粘着力を消失させるものである。このため、熱硬化によって粘着力を失う粘着層であれば、エネルギー供給手段41はスポット熱源あるいは赤外線レーザが好適であり高温のツールを密着させてもよい。一方、光硬化で粘着力を失うものであれば紫外線レーザが好適である。
【0030】
基板ステージ5は、半導体チップCを実装する基板Sを保持するとともに面内方向に位置調整するものであり、吸着テーブル50、Y方向駆動部51、X方向駆動部52を構成要素としている。吸着テーブル50は基板Sを吸着保持する機能を有しておりウ、Y方向駆動部51は吸着テーブル50をY方向にスライドさせ位置調整することが可能であり、X方向駆動部52はY方向駆動部51をX方向にスライドさせて位置調整することが可能である。
【0031】
加圧ツール6はボンディングヘッド7に連結し、ボンディングヘッド7を上下するとともに、加圧力を発生する機能を有している。
【0032】
ボンディングヘッド7はチップ部品Cを保持して、基板ステージ5が保持する基板Sに押圧するものであり、図8図9に示すようにヘッド下部71にチップ部品Cを保持するアタッチメントツール72が設けられており、アタッチメントツール72に設けた(図示しない)吸着孔を減圧することにより、チップ部品Cを吸着保持することができる。
【0033】
なお、ボンディングヘッド7は、Z方向に対する回転方向に角度調整する機能を備えていてもよい。
【0034】
以下、実装装置1が、ダイシングテープDSからチップ部品Cを剥離して基板に実装するまでの工程について、図6から図9を用いて説明する。 図6は、実装装置1の各構成要素の動作概要を示したフロー図である。
【0035】
図6の剥離工程Pdでは、まずステップS01として、図7(a)に示すようにチップ剥離機構4と浮上手段2の位置合わせを行なう。すなわち、ダイシングテープDSに付着した状態で、剥離対象のチップ部品Cの直下に浮上手段2の浮上気流発生部21を配置する。この位置合わせに際しては、図示していない上下2視野カメラを用いてもよい。
【0036】
ステップS01で位置合わせを行なった後にステップS11においてチップ剥離を行う。ステップS11では、図7(b)に示すようにダイシングテープDS越しにチップ部品Cに、(ダイシングテープDSとチップ部品Cの間の粘着層の)粘着力を消失させるエネルギーPを照射することで、チップ部品CはダイシングテープDSから剥離して、浮上手段2が発する気流により浮上状態となる。なお、ステップS11では、チップ部品Cを剥離する前に、浮上手段2上面とチップ部品C下面の垂直距離が0.1mmから2mm程度にしておくことが望ましい。2mmより離れていると、チップ部品CがダイシングテープDSから剥離した際に傾いて落下して、部分的に浮上手段2と接触する可能性がある。
【0037】
剥離工程PdによりダイシングテープDSから剥離したチップ部品Cは、浮上手段2の浮上気流発生部21から発せられる上向きの気流により浮上するとともに、外周気流発生部22から発せられる気流により、浮上手段2の面上における(XY面内での)位置が保持される。すなわち、搬送工程PtにおけるステップS21としている非接触保持状態となっている。
【0038】
図6の搬送工程Ptでは、ステップS21として浮上手段2にチップ部品Cが非接触保持された状態となったことから、搬送機構3によるスライダ31の移動により、ステップS22として浮上手段2に非接触保持されたチップ部品Cを移動する。
【0039】
スライダ31とともに移動した浮上手段2は、ステップS02としてボンディングヘッド7下に移動し、図8(a)のように、ボンディングヘッド7のアタッチメントツール72の直下にチップ部品Cが配置されるように位置合わせを行なう。この位置合わせに際しても、上下2視野カメラを用いてもよい。
【0040】
この後、ステップS31として、図8(b)のように、アタッチメントツール72の(図示しない)吸着孔を減圧することにより、チップ部品Cはアタッチメントツール72に吸着保持され、接合工程Pbに進む。
【0041】
ステップS31でチップ部品Cがアタッチメントツール72に保持された後に、搬送機構3により浮上手段2はチップ剥離機構4側に退避する(図8(c))。このため、基板ステージ5によりボンディングツール7の下に基板Sが配置され、ステップS32として、アタッチメントツール72が保持するチップCと基板Sの実装箇所との位置合わせが行われる(図9(a))。この位置合わせでは高精度が要求されることから、図示していない上下2視野カメラを用いることが望ましい。なお、ステップS02の位置合わせで上下2視野カメラを用いる場合は、このステップS32で用いる上下2視野カメラを兼用させてもよい。
【0042】
ステップS32で基板Sの実装箇所とチップ部品Cの位置合わせが完了したら、ステップS33として、ボンディングヘッド7を下降してチップ部品Cを基板Sに密着させて加圧する。ここで、ヘッド下部71に加熱手段を設けることにより、加圧とともに加熱を行なってもよい。
【0043】
ステップS33で所定条件の圧着を行なったら、ステップS34として、アタッチメントツール72による吸着を解除し、図9(c)のようにボンディングヘッド7を上昇させることにより当該箇所へのチップ部品Cの実装は完了する。
【0044】
基板Sの複数個所にチップ部品Cを実装する場合は、ステップS01からの工程を、ステップS32における基板S側の位置合わせ箇所を変更しながら行えばよい。
【0045】
以上のように、本実施形態の実装装置1を用いることにより、チップ部品Cの接合面のみならず、チップ部品Cの外周部も他の物体と接触することなく搬送することができる。すなわち、ダイシングテープからチップ部品を剥離して基板に実装する迄の間で接合面に汚染等のダメージを与えることがなく、接合信頼性の高い実装を行うことができる。
【0046】
ところで、本実施形態において、浮上手段2として気流によりチップ部品を浮上させる形態としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、チップ部品Cを浮上させつつ横滑りしないように保持できれば他の形態であってもよい。例えば、超音波浮上方式はチップ部品を浮上させつつ保持力も有することから本発明に利用することが可能である。その一例を示したのが図10であり、浮上手段本体20に設けた超音波発生源2Sが発生する超音波により、チップ部品Cが浮上している様子を表している。
【0047】
また、以上の説明において、チップ部品Cを電極面が下に向いた状態で浮上させる例のみを示してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、電極面を上に向けた状態でチップ部品Cを浮上させることも可能である。例えば図2(a)に示した浮上手段を用いて、図11に示すようにチップ部品Cを浮上させてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 実装装置
2 浮上手段
3 搬送機構
4 チップ剥離機構
5 基板ステージ
6 加圧ツール
7 ボンディングヘッド
20 浮上手段本体
21 浮上気流発生部
22 外周気流発生部
25 減圧部
30 レール
31 スライダ
40 ウエハ保持手段
41 エネルギー供給手段
50 吸着テーブル
51 Y方向駆動部
52 X方向駆動部
71 ヘッド下部
72 アタッチメントツール
C チップ部品
E 電極
S 基板
DS ダイシングテープ
FC 外周気流
FU 浮上気流

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14