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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153695
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】ランプユニット
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/675 20180101AFI20221005BHJP
   B60Q 1/18 20060101ALI20221005BHJP
   B60Q 1/08 20060101ALI20221005BHJP
   F21S 41/25 20180101ALI20221005BHJP
   F21S 41/145 20180101ALI20221005BHJP
   F21S 41/147 20180101ALI20221005BHJP
   F21S 41/162 20180101ALI20221005BHJP
   F21V 14/04 20060101ALI20221005BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20221005BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20221005BHJP
   F21W 102/14 20180101ALN20221005BHJP
【FI】
F21S41/675
B60Q1/18
B60Q1/08
F21S41/25
F21S41/145
F21S41/147
F21S41/162
F21V14/04
F21V5/04 550
F21Y115:10
F21W102:14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056351
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀忠
(72)【発明者】
【氏名】村松 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】謝 義超
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339AA32
3K339BA01
3K339BA02
3K339BA05
3K339BA08
3K339BA26
3K339CA01
3K339CA22
3K339CA24
3K339DA01
3K339GB01
3K339HA01
3K339HA02
3K339JA23
3K339KA29
(57)【要約】
【課題】光走査を行なうランプユニットにおいて、小型でかつ可及的に広い補助照明領域を照明することが可能なランプユニットを提供する。
【解決手段】走査光源部(第1光源部)2と、走査光源部2から出射された光を反射して当該光を所定方向に走査する光走査部3と、補助光源部(第2光源部)4と、走査された光と補助光源部2から出射された光を前方に向けて投射する投射レンズ5を備えるランプユニットHiUである。補助光源部4と走査光源部2は、光走査部3での光走査方向に交差する方向の異なる位置に配設されている。補助光源部4の配設の自由度が高められ、補助光源部4により広い補助照明領域が形成できる。
【選択図】図11

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光源部と、この第1光源部から出射された光を反射して当該光を所定方向に走査する光走査部と、第2光源部と、前記走査された光と前記第2光源部から出射された光を前方に向けて投射する投射レンズを備えるランプユニットであって、前記第2光源部と前記第1光源部は、前記光走査部での光走査方向と交差する方向の異なる位置に配設されているランプユニット。
【請求項2】
前記第1光源部と前記光走査部と前記投射レンズはランプユニットの上下方向に変位して配設され、前記第1光源部は斜め上又は斜め下方向に向けて光を出射し、前記光走査部は当該光を斜め上又は斜め下方向に向けて反射して前記投射レンズに入射し、前記第2光源部は前記投射レンズの後方に配設され、前方に向けて光を出射して前記投射レンズに入射する請求項1に記載のランプユニット。
【請求項3】
前記投射レンズは前面から見て光走査方向の寸法がこれと交差する方向の寸法よりも長いレンズで形成され、その後面が前記光走査部で走査された光及び前記第2光源部の光の入射面として構成され、前記第2光源部は当該入射面の後方に配設されている請求項2に記載のランプユニット。
【請求項4】
前記第2光源部は、前記第1光源部の前記光走査方向に沿った両側に配設された複数の光源を備える請求項3に記載のランプユニット。
【請求項5】
前記光走査部は前記第1光源部の光をランプの左右方向に走査する構成であり、前記第2光源部の光源は左右方向の2箇所に配設されている請求項4に記載のランプユニット。
【請求項6】
前記第2光源部は、前記第1光源部と前記光走査部で形成された配光パターンの左右方向の縁部にそれぞれ隣接された領域に形成される補助配光パターンを形成する請求項1ないし5のいずれかに記載のランプユニット。
【請求項7】
前記第2光源部は、前記複数の光源にそれぞれ対応した複数の集光レンズを備え、これら複数の集光レンズは前記投射レンズに一体的に設けられている請求項4ないし6のいずれかに記載のランプユニット。
【請求項8】
ハイビーム配光パターンでの光投射と、このハイビーム配光パターンに隣接した補助ハイビーム配光パターンでの光投射が可能な車両のヘッドランプに適用され、前記第1光源部と前記光走査部で当該ハイビーム配光パターンを形成し、前記第2光源部で当該ハイビーム配光パターンに隣接された領域に補助配光パターンを形成するハイビームランプユニットとして構成されている請求項1ないし7のいずれかに記載のランプユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両の照明用ランプに用いて好適なランプユニットに関し、特に光を走査して所要の配光を得るランプユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ヘッドランプのランプユニットとして、自車の前方領域に光を走査して所要の配光を得るランプユニットが提案されている。特許文献1には、LED(発光ダイオード)からなる第1光源から出射された光を回転リフレクターで反射し、その反射光を投影レンズにより自車の前方に向けて投射する光学ユニットが提案されている。回転リフレクターはブレードと称する光反射板を備えており、このブレードの反射面の角度が回転に伴って変化されると光源からの光を水平方向に偏向させながら反射して走査を行うことができる。また、この走査のタイミングに合わせて光源を点灯・消灯制御することにより、他車両を眩惑することなく自車の前方の所望の領域のみを照明することが可能になり、いわゆるADB(Adaptive Driving Beam)配光制御が実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-67523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の光学ユニットでは、第1光源は投影レンズの光軸を含む水平面上の位置あるいはこの水平面の近傍位置に配置されており、第1光源からは水平方向に向けて光が出射され、回転リフレクターはこの出射された光を水平方向に偏向させながら反射して走査を行う構成とされている。また、特許文献1の技術は、第1光源とは別に第2光源を設け、この第2光源の光を投影レンズで投射することにより、走査する照明領域の周囲領域や隣接領域に、補助的な照明のための補助照明領域を形成している。
【0005】
しかし、特許文献1の光学ユニットは、第2光源の光を第1光源と同様に水平方向に光が出射して第1光源の光とほぼ同じ平面に沿って光を入射させるため、第2光源を第1光源と同じ平面上の一箇所に配設した構成がとられている。そのため、第1光源と第2光源を配設している水平方向の寸法を低減することが難しく、光学ユニットの小型化を図ることが難しい。
【0006】
また、特許文献1では、補助照明領域を形成するために第2光源の光を集光して投影レンズに入射させるインナーレンズが設けられているが、このインナーレンズを第1光源と第2光源と同じ平面上に配設しているため、インナーレンズを配設するためのスペースを確保することが難しく光学ユニットの小型化が難しい。
【0007】
一方で、特許文献1の光学ユニットは、第2光源とインナーレンズを第1光源と同じ平面上に配置しているので、光学ユニットを小型化する場合には第2光源の水平方向の寸法を大きくすることが難しい。すなわち、第2光源を複数の発光素子で構成する場合に、複数の発光素子を水平に並べて配置することが難しくなる。そのため、第2光源によって水平方向に広い補助照明領域を照明することが難しくなるという課題も生じる。
【0008】
本発明の目的は、光走査を行なうランプユニットにおいて、小型でかつ可及的に広い補助照明領域を照明することが可能なランプユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1光源部と、この第1光源部から出射された光を反射して当該光を所定方向に走査する光走査部と、第2光源部と、走査された光と第2光源部から出射された光を前方に向けて投射する投射レンズを備えるランプユニットであり、第2光源部と第1光源部は、光走査部での光走査方向に交差する方向の異なる位置に配設されている。
【0010】
本発明の一つの形態は、第1光源部と光走査部と投射レンズはランプユニットの上下方向に変位して配設され、第1光源部は斜め上又は斜め下方向に向けて光を出射し、光走査部は当該光を斜め上又は斜め下方向に向けて反射して投射レンズに入射し、第2光源部は投射レンズの後方に配設され、前方に向けて光を出射して投射レンズに入射する構成である。
【0011】
この形態において、投射レンズは前面から見て走査方向の寸法がこれと交差する方向の寸法よりも長いレンズで形成され、その後面が光走査部で走査された光の入射面として構成される。また、第2光源部は、第1光源部の光走査方向に沿った両側に配設された複数の光源を備える構成とされる。さらに、光走査部は第1光源部の光をランプの左右方向に走査する構成であり、第2光源部の光源は左右方向の2箇所に配設される。
【0012】
本発明では、第2光源部は、第1光源部と光走査部で形成された配光パターンの左右の縁部にそれぞれ隣接された領域に形成される補助配光パターンを形成する。第2光源部は、複数の光源にそれぞれ対応した複数の集光レンズを備え、複数の集光レンズは投射レンズに一体的に設けられる
【0013】
本発明は、例えば、ハイビーム配光パターンでの光投射と、このハイビーム配光パターンに隣接した補助ハイビーム配光パターンでの光投射が可能な車両のヘッドランプに適用されており、第1光源部と光走査部でハイビーム配光パターンを形成し、第2光源部でハイビーム配光パターンに隣接された領域に補助配光パターンを形成するハイビームランプユニットとして構成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第2光源部は、第1光源部に対して光走査部での光走査方向と交差する方向の異なる位置に配設されているので、第2光源部と第1光源部を所定方向に沿って重ねた状態での配置が可能となり、ランプユニットの光走査方向の寸法を低減して小型化を図ることができる。また、第2光源部は光走査方向に複数の光源を配設することが可能になり、広い補助照明領域が形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のランプユニットを適用した自動車の正面図。
図2】右ヘッドランプの概略構成の分解斜視図。
図3】ヘッドランプの模式的な配光図。
図4A】右Hiユニットを前方から見た外観斜視図。
図4B】右Hiユニットを後方から見た外観斜視図。
図4C】右Hiユニットの概略正面図。
図5】右Hiユニットの全体の分解斜視図。
図6】右Hiユニットの一部の構成を後面側から見た分解斜視図。
図7】光走査部を除去したHiユニットを後方向から見た斜視図。
図8】補助集光レンズを後方から見た斜視図。
図9】走査光源部の光投射を説明するための縦断面図。
図10】走査光源部の光投射を説明するための模式光路図。
図11】補助光源部の光投射を説明するための縦断面図。
図12】補助光源部の光投射を説明するための模式光路図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以降の説明において、上下方向と前後方向はランプユニットの上下、前後の各方向である。左右方向については自動車を基準にして前方を見たときの方向であるが、自動車の車体の幅方向の中央に近い側を内側、車体の幅方向の両外側を外側と称することもある。
【0017】
図1は本発明のランプユニットを備える車両としての自動車の正面図である。自動車CARの車体前部の左右にそれぞれヘッドランプHLが装備されている。左ヘッドランプHL(L)と右ヘッドランプHL(R)は左右対称の構成である。各ヘッドランプHLはロービーム配光の光を照射するロービームランプユニット(以下、Loユニットと称する)LoUと、ハイビーム配光の光を照射するハイビームランプユニット(以下、Hiユニットと称する)HiUと、ターンシグナルランプのランプユニットTSUと、クリアランスランプのランプユニットCLUが内装されたコンビネーション型のヘッドランプとして構成されている。ここで、HiユニットHiUは、左ヘッドランプHL(L)では左HiユニットHiU(L)として構成され、右ヘッドランプHL(R)では右HiユニットHiU(R)として構成される。クリアランスランプは、ボジショニングランプ、デイタイムランニングランプとして構成されてもよい。
【0018】
図2は右ヘッドランプHL(R)の概略構成の分解図である。ランプボディ101と透光カバー102で構成されたランプハウジング100内に前記各ランプユニットが内装されている。LoユニットLoUは、3つのLoユニットが自動車の車幅方向に並んで一体に構成された3連のLoユニットとして構成されている。HiユニットHiUは、本発明が適用された走査型のHiユニット、特にADBの一つの形態としてのハイビームを可変制御するユニットとして構成されており、LoユニットLoUの車幅方向の内側に配設されてインライン型に構成されている。
【0019】
これらLoユニットLoUとHiユニットHiUは光投射面を除く領域がエクステンション103により覆い隠されており、このエクステンション103の前側にターンシグナルランプとクリアランスランプの各ランプユニットTSU,CLUが配設されている。これらのランプユニットTSU,CLUは、光源の光を内部に導光し、自動車の前面に向けられた側面から光を出射するランプガイド(導光体)を有するランプユニットとして構成されている。
【0020】
図3は前記自動車CARのヘッドランプHLの配光を説明するための模式的な図である。右ヘッドランプHL(R)と左ヘッドランプHL(L)の配光は殆ど同じであり、3連のLoユニットLoUは、水平線Hの下側領域、すなわち自動車の前方の近傍領域を左右方向に広く照明してLo(ロービーム)配光パターンPLoを形成する。左右のHiユニットHiUは、水平線Hの上側領域、すなわち自動車の前方の遠方領域をLo配光パターンPLoよりも左右方向に狭い領域で照明してHi(ハイビーム)配光パターンPHiを形成する。また、このHiユニットHiUは、Hi配光パターンPHiの右側領域と左側領域を補助的に照明する右補助Hi配光パターンPS(R)と左補助Hi配光パターンPS(L)を形成する。
【0021】
この左右のヘッドランプHL(R),HL(L)によるLo配光パターンPLoと、Hi配光パターンPHiと、右補助Hi配光パターンPS(R)と左補助Hi配光パターンPS(L)は重畳されることにより、それぞれの配光の光度が加算されて所要の明るさ(照度)の照明が行なわれる。
【0022】
以上説明したヘッドランプHL(R),HL(L)の左右のHiユニットHiU(R),HiU(L)について説明する。両Hiユニットは左右対称の構成であるので、ここでは右HiユニットHiU(R)を説明する。図4Aは右Hiユニットを前方から見た外観斜視図、図4Bは後方から見た外観斜視図、図4Cは概略の正面図である。また、図5はその全体の分解斜視図であり、図6は一部の構成を後面側から見た分解斜視図である。
【0023】
これらの図において、右HiユニットHiU(R)は金属やセラミック等の熱伝導性の高い素材で形成されたヒートシンク1を備えている。このヒートシンク1は、上縁部が前側に向けて傾斜された板状のベース11と、このベース11の左右両側から上側にわたって枠状に一体形成されたフレーム12を備えている。このベース11の前面には、左右方向に並んで複数の放熱フィン13が一体に形成されている。また、ヒートシンク1には右HiユニットHiU(R)の光軸調整を行なうためのエイミング機構(図示せず)が係合されるエイミング連結部14が形成されているが、その詳細についての説明は省略する。
【0024】
前記ヒートシンク1には、走査光源部2と、光走査部3と、補助光源部4が組み付けられているとともに、これらの光源部2,4から出射された光を自動車の前方に向けて投射する投射レンズ5が組み付けられている。そして、走査光源部2の光を光走査部3によって走査し、投射レンズ5を透して投射することによって前記したHi配光パターンPHiが形成される。また、補助光源部4の光を、直接的に投射レンズ5を透して投射することによって前記した左右の補助Hi配光パターンPS(R),PS(L)が形成されるようになっている。
【0025】
前記走査光源部2は本発明における第1光源部であって、走査光源基板21を有しており、この走査光源基板21の表面には複数個の白色光を発光する発光素子としてLED(発光ダイオード)22が左右方向に配列した状態で搭載されている。ここでは3個のLED22を例示しているが、実際にはこれ以下あるいはこれ以上の個数のLEDが搭載されることがある。このLEDを走査LED2と称する。各走査LED22は発光面が走査光源基板21の表面と平行あるいは所要の角度を持って搭載されている。この走査光源基板21には、走査LED22の発光を制御するための配線回路23が構成されるとともに、外部電源に接続するためのコネクタ24が搭載されている。
【0026】
図7は光走査部3を除去したHiユニットHiUを後方向から見た斜視図であり、前記走査光源基板21は前記ヒートシンク1のベース11の斜め上方に向けられている後面に支持される。この走査光源基板21には走査LED22の発光面に対向するように走査集光レンズブロック25が配設されており、走査光源基板21と共にリテーナ27によりベース11にビス(小ねじ)201で固定支持されている。
【0027】
この走査集光レンズブロック25は透光性樹脂により複数(3個)の集光レンズ(コンデンサーレンズ)26が一体成形されている。各集光レンズ26は、対向配置されている各走査LED22の発光面から出射される光を集光し、所要の方向に向けて出射させる。ここでは各走査LED22の発光面から出射される光の左右方向の発散を抑制した上下方向に細長い光束(光ビーム、光ペンシル)として後方の斜め上方に向けて出射させる。
【0028】
前記光走査部3は、走査集光レンズブロック25で集光された走査LED2の光を反射して光走査を行なう回転リフレクターで構成されている。この回転リフレクター3はケーシング31を備えており、このケーシング31にモーター32と2枚の光反射ブレード33が内装されている。モーター32は回転軸34が前方の斜め下方に向くように前傾されており、この回転軸34に光反射ブレード33が連結されている。ケーシング31はヒートシンク1のフレーム12にビス202により固定支持されており、回転リフレクター3は走査光源基板21と走査集光レンズブロック25を覆うようにしてこれらの後方位置に対向配置されている。
【0029】
前記2枚の光反射ブレード33は、それぞれ前面が光反射面として構成された扇型に形成されており、その要の部分においてモーター32の回転軸34に連結支持され、モーター32によって回転駆動される。光反射ブレード33の光反射面は走査集光レンズブロック25の後方に配置されるとともに、走査LED22の発光面に対して所要の角度をもって傾斜した状態で対面配置されている。
【0030】
各光反射ブレード33の光反射面は、走査LED22の発光面から出射された光を前方に向けて反射するが、この光反射面は回転軸34に対する面角度が円周方向に沿って連続的に変化される構成とされている。例えば、回転リフレクター3の前面から見て反時計回りに当該面角度が小さくなる構成とされている。これにより走査LED22の光が光反射面に入射する入射角が反時計回りに沿って大きくなるように構成される。したがって、光反射ブレード33が回転されたときに、走査LED22の光は反射される方向が右方向に向けて連続的に変化される。
【0031】
前記補助光源部4は本発明における第2光源部であって、走査光源部2を左右方向に挟む両側位置において前記フレーム12に支持された一対の補助光源基板41(R),41(L)を有している。補助光源基板41(R),41(L)の基板面はほぼ鉛直に向けられており、その前面にはそれぞれ光源として白色光を発光する補助LED42(R),42(L)が発光面を前方に向けて搭載されている。各補助光源基板41(R),41(L)はそれぞれヒートシンク1のフレーム12の後面側からビス203で固定支持されている。
【0032】
各補助光源基板41(R),41(L)の前側位置にはそれぞれ補助集光レンズ43(R),43(L)が配設されており、各補助LED42(R),42(L)から出射された光を集光し、前方に向けてかつ幾分左右方向に偏向させて出射するように構成されている。図8は補助集光レンズ43(R),43(L)を後方から見た斜視図であり、各補助集光レンズ43(R),43(L)は透光性樹脂により成形されており、その一部に支持片44(R),44(Lが一体形成されている。そして、各支持片44は前記投射レンズ5の後面の左右位置に溶着あるいは接着により一体化されている。
【0033】
前記投射レンズ5は透光性樹脂により形成されている。この投射レンズ5は、図4Cに鎖線で示す正面視が円形をした平凸型の球面レンズあるいは非球面レンズを構成する基準円BCを基準とし、その下半分が除去された前面からみて円弧縁が上に向けられたほぼ半円形状のレンズを主体に形成されたレンズ部51を有している。すなわち、投射レンズ5の光軸(基準円BCの中心軸)Lxは右HiユニットHiU(R)の前後方向に向けられており、レンズ部51はこの光軸Lxを含む基準円形BCの上半分が残されて下半分が除去されたほぼ半円形状とされる。その上で、レンズ部51は左右側面及び上面の各円弧状の一部についても各一部が除去された形状とされている。このように、投射レンズ5は、レンズ部51の上下方向の寸法と左右方向の寸法がそれぞれ短縮されており、投射レンズ5の小型化及び軽量化が図られている。
【0034】
前記投射レンズ5は、レンズ部51の周縁部に一体形成されている取付フランジ52によりヒートシンク1のフレーム12に支持されている。ここでは取付フランジ52の3箇所においてフレーム12の前面側からビス204で固定支持されている。このように投射レンズ5をフレーム12に固定支持すると、これと同時に投射レンズ5に一体化されている前記補助集光レンズ43(R),43(L)もフレーム12に固定支持される。
【0035】
以上説明した走査光源部2、光走査部3、補助光源部4、投射レンズ5の相対位置関係とこれに関係する構成について補充説明する。走査光源部2の走査光源基板21は、投射レンズ5の後方でかつ光軸Lxを含む領域の直下位置に配設されている。特にここでは、走査光源基板21に搭載された3つの走査LED22のうち、中央の走査LEDは当該光軸Lxの直下位置ないしその近傍に配設されている。
【0036】
光走査部(回転リフレクター)3は、モーター32の回転軸34が走査LED22に対して左右方向に変位された位置に配設されている。ここでは、回転軸34は左側、すなわち車幅方向の内側に変位されており、この変位により、2枚の光反射ブレード33は走査LED22の発光面及び走査集光レンズブロック25に対面する位置に回転され、対面されたときには走査LED22の後側上方に位置されることになる。したがって、走査LED22から出射された光を前方の斜め上方に向けて反射し、投射レンズ5の後面、すなわち入射面に入射させることが可能とされている。
【0037】
補助光源部4の補助光源基板41(R),41(L)は、回転リフレクター3で反射された走査LED22の光が投射レンズ5の入射面に入射することを妨げない左右方向の位置、すなわち走査光源基板21の左右方向の両側に配設されている。また、各補助光源基板41(R),41(L)は走査光源部2よりも上側位置の投射レンズ5の入射面とほぼ同じ高さ位置に配設され、補助LED42(R),42(L)から出射されかつ補助集光レンズ43(R),43(L)で集光された光が投射レンズ5の入射面に入射されるように配設されている。その一方で、左右の補助LED42(R),412L)の光は、左右方向についてはそれぞれ投射レンズ5の光軸Lxに対して所定の角度をもって入射されるように配設されている。
【0038】
以上の構成の右HiユニットによるHi配光パターンを形成するための光投射作用を説明する。図9は走査光源部2の光投射を説明するための縦断面図であり、図10はその模式光路図である。走査光源部2の走査LED22が発光すると、各走査LED22の発光面から出射された光は走査集光レンズブロック25により光の発散が抑制され、平行光に近い光束とされて後方斜め上方に向けて出射される。このとき、走査集光レンズブロック25から出射される光は左右方向よりも上下方向に長い細幅の光束として出射される。出射された光は回転リフレクター3の光反射ブレード33に斜め下方から投射され、ここで前方斜め上方に向けて反射される。この反射により、走査LED22の虚像、すなわち虚光源としての走査LED像22iが回転リフレクター3の後方位置に形成され、反射光は等価的にこの走査LED像22iから出射された光になる。走査LED22と回転リフレクター3の相対位置を調整することにより、走査LED像22iは投射レンズ5の入射面側の焦点Fの近傍位置に形成される。例えば、焦点Fよりも投射レンズ5側の近傍位置に形成される。
【0039】
投射レンズ5の入射面に入射される光は、走査LED像22iからの光が入射されたと等価であるので、投射レンズ5の前面(出射面)からは幾分発散された光束の光として前方に向けて投射される。投射された3つの走査LED22の光は、図10に示すように左右方向に所要の間隔をおいた上下方向に長い細帯状の3つの配光パターンP1,P2,P3として投射される。
【0040】
そして、回転リフレクター3が駆動されて光反射ブレード33が時計回りに回転されると、投射されている走査LED22の光に対する光反射ブレード33の位置が円周方向に変化されて面角度が変化される。これにより、光反射ブレード33における光の入射角が車幅方向の外側方向に変化され、反射光も同じ方向に偏向される。したがって、各走査LED22による細帯状の配光パターンP1~P3は、図10の右方向に移動され、光走査が行われる。光反射ブレード33が半回転すると、今度は他方の光反射ブレードにより同様の光走査が行われる。光反射ブレード33の連続した回転により、この光走査が繰り返し行われることによりHi配光パターンPHiの光投射が実現される。
【0041】
この光走査でHi配光パターンPHiを形成する際に、走査光源部2では、3つの走査LED22の発光のタイミングを制御することにより、Hi配光パターンPHi内に光投射されない遮光領域を形成することができ、前記したADBが実現される。
【0042】
この光投射において、投射レンズ5に入射される3つの走査LED22の光は、図9に示したように、それぞれ光束が入射面の光軸Lxよりも上方の領域において斜め上方に向けて入射されるので、この光軸Lxよりも上側の部分のみが実質的なレンズとして使用される。すなわち、投射レンズ5の光軸Lxよりも下側の部分を削除しても投射レンズとして機能する。したがって、この実施形態では前記したように投射レンズ5を正面視で半円形を基準にした形状にし、投射レンズ5の上下寸法を短縮している。
【0043】
また、Hi配光パターンPHiの左右方向の領域は光反射ブレード33の面角度の構成、すなわち光反射ブレード33において反射される光が左右方向に偏向されて投射レンズ5の入射面に入射する領域により決められる。したがって、投射レンズ5の左右方向についてみると、入射された光が出射面から出射されてHi配光パターンPHiを形成するための部位が存在していればよい。そこで、ここでは投射レンズ5の左右の各一部を除去している。これにより、投射レンズ5のさらなる小型化、軽量化を図る上で有利になる。
【0044】
一方、図11は補助光源部4の光投射を説明するための縦断面図であり、図12はその模式光路図である。補助光源部4では、一対の補助光源基板41(R),41(L)の各補助LED42(R),42(L)が発光されると、出射された光は補助集光レンズ43(R),43(L)で集光され、投射レンズ5の入射面に入射される。各補助LED42(R),42(L)からの光は、それぞれ投射レンズ5の光軸Lxを挟んだ左右方向の両側位置に入射される。入射された光は投射レンズ5により屈折されて左右方向に偏向されて前方領域に照射される。
【0045】
この照射により、左側の補助LED42(L)の光はHi配光パターンPHiの右側領域に照射されて右補助Hi配光パターンPS(R)が形成される。また、右側の補助LED42(R)の光はHi配光パターンPHiの左側領域に照射されて左補助Hi配光パターンPS(L)が形成される。
【0046】
この光投射においても、投射レンズ5に入射される2つの補助LED42(R),42(L)の光は、光軸Lxよりも上方の領域に入射されるので、投射レンズ5は正面視で半円形状を基準にした形状であってもよい。また、投射レンズ5の左右方向についは各補助LED42(R),42(L)が入射されればよいので、投射レンズ5の左右の各一部が除去されてもよい。
【0047】
左ヘッドランプHL(L)に配設されている左HiユニットHiU(L)は、以上説明した右HiユニットHiU(R)とは左右が対称の構成である。しかし、回転リフレクター3による走査光源部2の光走査の方向は右Hiユニットと同じ方向となるように構成されている。なお、左Hiユニットは右Hiユニットと同じ構成であってもよい。
【0048】
以上のように、実施形態のHiユニットHiUでは、走査光源部2と光走査部3、すなわち走査LED22と回転リフレクター3が前後方向に配設されており、走査LED22から出射された光は後方の斜め上に向けて出射されて回転リフレクター3に入射される。また、回転リフレクター3で前方斜め上に向けて反射されるとともに左右方向に偏向されて走査が行われる。走査された光は投射レンズ5に対して上向きに入射され、この投射レンズ5で左右方向に走査されながら屈折されて投射される。
【0049】
したがって、走査光源部2と光走査部3は前後方向に配置されるので、これら走査光源部2と光走査部3を合わせた左右方向の寸法を短くし、幅寸法の小さいHiユニットが得られる。また、走査光源部2から出射された光は後方斜め上に向けられ、回転リフレクター3によっては前方斜め上に向けて反射されて投射レンズ5に入射される。これにより、走査光源部2から投射レンズ5に至る光の光路を前後方向及び上下方向の両方向について稼ぐことができ、光源の出射光軸が水平あるいは鉛直方向に向けられた構成に比較して走査光源部2と光走査部3を合わせた前後方向の寸法を短くでき、奥行き寸法の小さいHiユニットが得られる。
【0050】
また、投射レンズ5は光走査方向に長いレンズ、すなわち円形の下半分を除去した左右方向に長い半円形状のレンズを基準として構成することができ、投射レンズ5の上下方向の寸法を低減した薄型化ができる。これにより、HiユニットHiUをLoユニットLoUとともにハウジング100に組み込んでインライン型のヘッドランプHLを構成したときに、LoユニットLoUに比較してHiユニットHiUの高さ寸法が顕著に大きくなることが防止でき、LoユニットLoUとHiユニットHiUのデザインの統一性を図り、ヘッドランプHLの意匠的な効果を高めることができる。
【0051】
一方、補助光源部4の光源は2個の補助LED42(R),42(L)で構成されており、これら補助LED42(R),42(L)を搭載している2枚の補助光源基板41(R),41(L)は投射レンズ5の光軸Lxを左右に挟む位置に分離して配設されている。また、各補助光源基板41(R),41(L)は投射レンズ5の入射面に対面する位置に配設されているが、走査光源部2の光源基板21とは上下方向の異なる位置に配設されている。したがって、走査光源部2の光源基板21や回転リフレクター3によって2枚の補助光源基板41(R),41(L)の配設位置が制約を受けることは少ない。
【0052】
また、2個の補助LED42(R),42(L)がそれぞれ搭載されている2枚の補助光源基板41(R),41(L)は独立した構成であるので、これらの補助光源基板41(R),41(L)及び補助LED42(R),42(L)の配設位置には自由度がある。したがって、特許文献1のように1枚の基板に複数のLEDが搭載された構成に比較すると、補助LED42(R),42(L)の光により照明する補助Hi配光パターンPS(R),PS(L)の位置や面積等を設定する際の自由度も高められ、可及的に広い補助照明領域が実現できる。
【0053】
さらに、各補助LED42(R),42(L)の光は補助集光レンズ43(R),43(L)により投射レンズ5の入射面の左右位置に入射され、投射レンズ5により屈折されて各補助Hi配光パターンPS(R),PS(L)に投射される。このとき、補助LED42(R),42(L)の光は、走査光源部2の走査LED22の光と重畳されて投射レンズ5に入射されてもよい。したがって、投射レンズ5は走査LED42(R),42(L)の光を走査するのに必要な上下方向及び左右方向の寸法が確保されていればよく、補助Hi配光パターンPS(R),PS(L)を形成するために投射レンズ5の上下方向及び左右方向の寸法がそれぞれ大きくなることもない。
【0054】
補助光源部4の補助集光レンズ43(R),43(L)は投射レンズ5に一体化されている。したがって、この一体化の際に補助集光レンズ43(R),43(L)と投射レンズ5の相互の位置決めを行っておけば、投射レンズ5をヒートシンク1に固定支持すれば、自動的に補助集光レンズ43(R),43(L)の位置決めが行われる。したがって、補助光源基板41(R),41(L)をヒートシンク1に組み付ける際には、この位置決めされた補助集光レンズ43(R),43(L)に対して補助光源基板41(R),41(L)を位置決めするだけでよく、組み付け作業が容易になる。また、補助光源基板41(R),41(L)はヒートシンク1の後方から固定支持しているので、その作業も容易である。
【0055】
実施形態では、走査光源部2は後方の斜め上に向けて光を出射し、光走査部3は前方の斜め上に向けて光を反射しているが、上下方向は反対であってもよい。すなわち、走査光源部2は後方の斜め下に向けて光を出射し、光走査部3は前方の斜め下に向けて光を反射する構成としてもよい。この場合には、走査光源部2と光走査部3と投射レンズ5の上下方向の位置関係は実施形態とは上下が逆の構成になる。
【0056】
補助光源部4の左右に配設されている光源、すなわち補助LED42(R),42(L)は、それぞれ1つ以上のLEDであればよく、例えば2つずつのLEDで構成されていてもよい。この場合、それぞれのLEDは左右方向に並んで配設されることが好ましいが、投射レンズの上下方向の寸法が増大しないのであれば上下方向に並んで配設されてもよい。
【0057】
補助集光レンズ43(R),43(L)は補助光源基板41(R),41(L)に一体的に設けた構成としてもよい。この場合には、補助光源基板41(R),41(L)をヒートシンク1に固定支持すれば、補助集光レンズ43(R),43(L)も同時にヒートシンク1に固定支持されることになる。
【符号の説明】
【0058】
HL,HL(R),HL(L) ヘッドランプ
HiU,HiU(R),HiU(L) ハイビームランプユニット
LoU ロービームランプユニット
PLo ロービーム配光パターン
PHi ハイビーム配光パターン
PS(R),PS(L) 補助ハイビーム配光パターン
1 ヒートシンク
2 走査光源部(第1光源部)
3 光走査部(回転リフレクター)
4 補助光源部(第2光源部)
5 投射レンズ
21 走査光源基板
22 走査LED
25 走査集光レンズブロック
32 モーター
33 光反射ブレード
41(R),41(L) 補助光源基板
42(R),42(L) 補助LED
43(R),43(L) 補助集光レンズ
51 レンズ部

図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12