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特開2022-153711軸受装置、スピンドル装置および間座
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153711
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】軸受装置、スピンドル装置および間座
(51)【国際特許分類】
   F16C 41/00 20060101AFI20221005BHJP
   F16C 35/12 20060101ALI20221005BHJP
   F16C 19/54 20060101ALI20221005BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
F16C41/00
F16C35/12
F16C19/54
G01L5/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056382
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 孝誌
(72)【発明者】
【氏名】福島 靖之
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 勇介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大地
【テーマコード(参考)】
2F051
3J217
3J701
【Fターム(参考)】
2F051AA11
2F051AB09
2F051AC01
2F051BA08
3J217JA02
3J217JA14
3J217JA24
3J217JA38
3J217JB17
3J217JB68
3J217JB84
3J701AA03
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA80
3J701FA41
3J701GA31
(57)【要約】
【課題】温度ドリフトが少なく、簡単な構成で軸受の予圧を測定することが可能な軸受装置を提供する。
【解決手段】軸受装置は、転動体と軌道面を有し、軸を支持する少なくとも1つの軸受と、転動体と軌道面との間に予圧を発生させる押圧力が伝達する経路上に配置される部材と、部材に固定され、押圧力に応じて抵抗値が変化する荷重センサ50と、荷重センサと接続してブリッジ回路を形成する抵抗回路60とを備える。荷重センサ50は、押圧力に応じて抵抗が変わる薄膜パターンと、薄膜パターンを絶縁保護する保護層とを含む。抵抗回路60は、荷重センサとともにブリッジ回路を構成する複数の抵抗を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受装置であって、
転動体と軌道面を有し、軸を支持する少なくとも1つの軸受と、
前記転動体と前記軌道面との間に予圧を発生させる押圧力が伝達する経路上に配置される部材と、
前記部材に固定され、前記押圧力に応じて抵抗値が変化する荷重センサと、
前記荷重センサと接続してブリッジ回路を構成する複数の抵抗を含む抵抗回路とを備え、
前記荷重センサは、
前記押圧力に応じて抵抗が変わる薄膜パターンと、
前記薄膜パターンを絶縁保護する保護層とを含む、軸受装置。
【請求項2】
前記荷重センサの抵抗変化に基づいて前記押圧力を検出する処理部をさらに備える、請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記押圧力は、前記軸の延在方向の荷重によって印加され、
前記荷重センサは、前記軸の延在方向に交差する平面における同一円周上に等間隔に配置された複数の荷重センサ素子を含む、請求項1に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記抵抗回路は、
前記複数の荷重センサ素子にそれぞれ接続され、複数の抵抗ブリッジ回路を形成する複数の抵抗回路部を含み、
前記複数の抵抗回路部の各々は、前記複数の抵抗回路部の各々とともに抵抗ブリッジ回路を形成する前記複数の荷重センサ素子のうちの1つと前記同一円周上において隣接配置される、請求項3に記載の軸受装置。
【請求項5】
前記複数の荷重センサ素子は、直列または並列に接続されて、荷重検出部を形成し、
前記荷重検出部は、前記複数の抵抗とともに前記ブリッジ回路を構成する、請求項3に記載の軸受装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの軸受は、複数の軸受であり、
前記部材は、前記複数の軸受のうちの2個の軸受の間に挿入される非回転側の間座であり、
前記荷重センサは、前記間座の端面に固定され、前記2個の軸受のうちの一方の軸受の固定輪と当接するように配置され、
前記端面からの前記抵抗回路の表面の高さは、前記端面からの前記荷重センサの表面の高さよりも低く、
前記押圧力は、前記荷重センサを介して伝達される、請求項1に記載の軸受装置。
【請求項7】
前記複数の抵抗の各々の抵抗値および抵抗温度係数は、前記荷重センサの抵抗値および抵抗温度係数と実質的に等しい、請求項1に記載の軸受装置。
【請求項8】
前記複数の抵抗の各々は、前記薄膜パターンと同じ材料で形成される、請求項1に記載の軸受装置。
【請求項9】
前記薄膜パターンは、第1の基板上に形成され、
前記複数の抵抗は、前記第1の基板とは別の第2の基板上に形成される、請求項1に記載の軸受装置。
【請求項10】
前記部材は、前記少なくとも1つの軸受に隣接配置される間座であり、
前記荷重センサは、前記間座の端面に固定され、前記軸受の端面と当接し、
前記押圧力は、前記荷重センサを介して伝達される、請求項1に記載の軸受装置。
【請求項11】
前記部材は、前記少なくとも1つの軸受に隣接配置される外輪間座を第1間座と第2間座に分割した一方の間座であり、
前記荷重センサは、前記第1間座の端面に固定され、前記第2間座の端面と当接し、
前記押圧力は、前記荷重センサを介して伝達される、請求項1に記載の軸受装置。
【請求項12】
前記第1間座および前記第2間座は、前記荷重センサを挟持し、
前記第1間座および前記第2間座は、ねじで締結され、
前記荷重センサには、前記ねじの締結力による押圧力が予め与えられている、請求項11に記載の軸受装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の軸受装置を備える、スピンドル装置。
【請求項14】
転動体と軌道面を有する軸受に隣接配置され、前記転動体と前記軌道面の間に予圧を発生する押圧力が伝達される間座であって、
前記押圧力を測定可能な荷重センサと、
前記荷重センサとともにブリッジ回路を構成する複数の抵抗を含む抵抗回路と、
前記軸受に隣接する端面に前記荷重センサおよび前記抵抗回路とが固定された外輪間座とを備える、間座。
【請求項15】
前記外輪間座に一体に実装され、前記荷重センサの出力を処理する処理部をさらに備える、請求項14に記載の間座。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械の主軸スピンドルなどに使用される軸受の予圧(荷重)を検出する予圧センサを備える軸受装置、スピンドル装置および間座に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械等のスピンドル装置では、加工精度および効率の向上のため、軸受の予圧管理が求められており、そのため軸受の予圧(荷重)を検出する要求がある。また、軸受に異常が起こる前にその予兆を検出して、軸受の異常を未然に防ぐ要求もある。
【0003】
特開2020-003385号公報(特許文献1)では、絶縁膜上に形成され、面圧の変化で抵抗が変化する薄膜パターンと、薄膜パターン上に形成され、薄膜パターンを保護する保護膜とを含む薄膜センサを予圧センサとして、軸受に予圧を与える部材の端面に配置することで、軸受に加わる予圧を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-003385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2020-003385号公報(特許文献1)に開示された軸受装置では、薄膜パターンからなる予圧センサと抵抗とでブリッジ回路を形成し、その後段に設けた差動アンプでブリッジ回路の出力を増幅することで予圧を検出する。
【0006】
特許文献1では、ブリッジ回路の設置場所についての説明はないが、ブリッジ回路が軸受装置の外部に設けられた場合には、予圧センサとブリッジ回路で使用する抵抗の温度環境が異なることになる。
【0007】
たとえば、ブリッジ回路の抵抗が室温環境にあって、軸受装置が温度上昇した場合、予圧センサの抵抗値は抵抗温度係数に応じて変化する。しかし、ブリッジ回路の温度は変化せず、その抵抗値は変化しないため、温度変化による差動アンプ出力の温度ドリフトが発生する。そのため、正確な予圧量を検出するには温度補正を行なう必要があり、予圧検出が煩雑になる。
【0008】
ブリッジ回路が軸受装置の内部に配置される場合、予圧センサとブリッジ回路の抵抗は同じ温度環境になるが、それぞれの抵抗温度係数が異なれば、ブリッジ回路のバランスが崩れ、温度上昇による差動アンプ出力の温度ドリフトが発生する。
【0009】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、温度ドリフトが少なく、簡単な構成で軸受の予圧を測定することが可能な軸受装置、スピンドル装置、間座を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、軸受装置に関する。軸受装置は、転動体と軌道面を有し、軸を支持する少なくとも1つの軸受と、転動体と軌道面との間に予圧を発生させる押圧力が伝達する経路上に配置される部材と、部材に固定され、押圧力に応じて抵抗値が変化する荷重センサと、荷重センサと接続してブリッジ回路を構成する複数の抵抗を含む抵抗回路とを備える。荷重センサは、押圧力に応じて抵抗が変わる薄膜パターンと、薄膜パターンを絶縁保護する保護層とを含む。
【発明の効果】
【0011】
本実施の形態の軸受装置によれば、簡単な構成で軸受の予圧を測定時の温度ドリフトを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態のスピンドル装置の概略構成を示す断面図である。
図2図1の左側主要部の拡大図である。
図3図2のIII-III断面における荷重センサ素子とブリッジ回路部の第1配置例を示す図である。
図4図2のIII-III断面における荷重センサ素子とブリッジ回路部の第2配置例を示す図である。
図5図3のX-X断面における荷重センサ素子50aの断面図である。
図6図5の荷重センサ素子50aの正面図である。
図7】荷重センサ素子の薄膜パターンの形状の変形例を示す図である。
図8】荷重センサ素子の構造の第1改良例を示す図である。
図9】荷重センサ素子の構造の第2改良例を示す図である。
図10図9の改良例である荷重センサ素子の構造を示す図である。
図11図3のY-Y断面における抵抗モジュール60aの断面図である。
図12図11の抵抗モジュール60aの正面図である。
図13】抵抗モジュール60aの基板61上に形成される回路の回路図である。
図14】荷重センサの出力を電気的に処理する処理部を外輪間座に配置した例を示す図である。
図15】荷重センサ素子の抵抗変化を検出するブリッジ回路の構成を示す図である。
図16】荷重センサ素子の出力から軸受に印加する予圧(荷重)を算出する構成を示す図である。
図17】複数の荷重センサ素子に対して1個の抵抗回路でブリッジ回路を構成した変形例を示す図である。
図18図17の構成において荷重センサ素子の抵抗変化を検出するブリッジ回路の第1構成例を示す図である。
図19図17の構成において荷重センサ素子の抵抗変化を検出するブリッジ回路の第2構成例を示す図である。
図20】荷重センサ素子の固定位置を変更した変形例を示す図である。
図21】荷重センサ素子の固定方法を変更した変形例の側面図である。
図22図21のP-O-P断面の矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0014】
図1は、本実施の形態のスピンドル装置の概略構成を示す断面図である。図2は、図1の左側主要部の拡大図である。図2には主として軸受装置30が示される。
【0015】
図1に示すスピンドル装置1は、たとえば、工作機械のビルトインモータ方式のスピンドル装置として使用される。この場合、工作機械主軸用のスピンドル装置1で支持されている主軸4の一端側にはモータ40が組み込まれ、他端側には図示しないエンドミル等の切削工具が接続される。
【0016】
図1図2を参照して、スピンドル装置1は、軸受5a,5bと、軸受5a,5bに隣接して配置される間座6と、モータ40と、モータ後方に配置される軸受16とを備える。主軸4は、外筒2の内径部に埋設されたハウジング3に設けた複数の軸受5a,5bによって回転自在に支持される。軸受5aは、内輪5iaと、外輪5gaと、転動体Taと、保持器Rtaとを含む。軸受5bは、内輪5ibと、外輪5gbと、転動体Tbと、保持器Rtbとを含む。間座6は、内輪間座6iと、外輪間座6gとを含む。
【0017】
図3は、図2のIII-III断面における荷重センサ素子とブリッジ回路部の第1配置例を示す図である。図4は、図2のIII-III断面における荷重センサ素子とブリッジ回路部の第2配置例を示す図である。なお、図3図4において、説明に不要な部品は省略した。
【0018】
外輪間座6gの一方の端面6gaまたは外輪5gaの一方の端面に、荷重センサ50と抵抗回路60とが接着等により固定される。荷重センサ50と抵抗回路60とはブリッジ回路を構成する。荷重センサ50および抵抗回路60を接着により固定する場合には、耐油性や耐熱性に優れた接着剤を使用するのが望ましい。
【0019】
たとえば、荷重センサ50の厚さ(端面からの高さ)は、抵抗回路60よりも厚く設計されており、荷重センサ50のみ押圧される構造とされる。
【0020】
なお、荷重センサ50の受圧面だけが相手側部材(この例では外輪5gaの端面)に接触することが重要であり、荷重センサ50の厚さは抵抗回路60の厚さと同じであっても、固定した部材の端面部分のベースの高さに差を付けたり、当接する相手側部材の端面部分の高さを変えたりしてもよい。
【0021】
主軸4には、軸方向に離隔した軸受5aの内輪5iaおよび軸受5bの内輪5ibが締まり嵌め状態(圧入状態)で嵌合されている。内輪5ia-5ib間には内輪間座6iが配置され、外輪5ga-5gb間には外輪間座6gが配置される。
【0022】
軸受5aは、内輪5iaと外輪5gaの間に複数の転動体Taを配置した転がり軸受である。これら転動体Taは、保持器Rtaによって間隔が保持されている。軸受5bは、内輪5ibと外輪5gbの間に複数の転動体Tbを配置した転がり軸受である。これら転動体Tbは、保持器Rtbによって間隔が保持されている。
【0023】
軸受5a,5bは、軸方向の力で予圧を付与することが可能な軸受であり、アンギュラ玉軸受、深溝玉軸受、またはテーパころ軸受等を用いることができる。図2に示す軸受装置30にはアンギュラ玉軸受が用いられ、2個の軸受5a,5bが背面組み合わせ(DB組み合わせ)で設置されている。
【0024】
ここでは、3つの軸受5a,5b,16で主軸4を支持する構造を例示して説明するが、3つ以上の軸受で主軸4を支持する構造であってもよい。
【0025】
単列の転がり軸受16は、円筒ころ軸受である。アンギュラ玉軸受である軸受5a,5bにより、スピンドル装置1に作用するラジアル方向の荷重およびアキシアル方向の荷重が支持される。円筒ころ軸受である単列の軸受16により、工作機械主軸用のスピンドル装置1に作用するラジアル方向の荷重が支持される。
【0026】
ハウジング3には冷却媒体流路Gが形成される。ハウジング3と外筒2との間に冷却媒体を流すことにより、軸受5a,5bを冷却することができる。軸受5a,5bとしてグリース潤滑の軸受を用いた場合には潤滑油供給路は不要であるが、エアオイル等の潤滑が必要な場合には、外輪間座6gに潤滑油供給路が設けられる。なお、ここでは潤滑油供給路は図示しない。
【0027】
組立時には、初めに主軸4に対して軸受5a、間座6、軸受5b、間座9が順に挿入され、ナット10を締めることによって初期予圧が与えられる。その後、図2における軸受5bの外輪5gbの右側がハウジング3に設けた段差部3aに当たるまで、軸受5a,5bが取り付けられた主軸4がハウジング3に挿入される。最後に、前蓋12によって、左側の軸受5aの外輪5gaを押すことで主軸4がハウジング3に固定される。
【0028】
ナット10を締め付けることにより間座9を介して軸受5bの内輪5ibの端面に力が作用し、内輪5ibが内輪間座6iに向けて押される。この力は、内輪5ib、転動体Tb、外輪5gbと伝わり内輪5ibおよび外輪5gbの軌道面と転動体Tbの間に予圧を与えるとともに、外輪5gbから外輪間座6gにも伝わる。右側の外輪5gbから外輪間座6gに押す力が作用し、荷重センサ50にも力が伝わる。
【0029】
この押圧力は、軸受5aにおいて、外輪5ga、転動体Ta、内輪5iaへと伝わり、左側の軸受5aの内輪5iaおよび外輪5gaの軌道面と転動体Taの間にも予圧を与える。軸受5a,5bに付与される予圧は、たとえば外輪間座6gと荷重センサ50を合わせた幅と、内輪間座6iの幅との寸法差によって制限されるナット10の移動量によって定まる。
【0030】
また、図1に示す単列の軸受16については、主軸4の外周に嵌合した筒状部材15と内輪押さえ19とにより軸方向に内輪16aが位置決めされている。内輪押さえ19は、主軸4に螺着したナット20により抜け止めされている。軸受16の外輪16bは、端部材17に固定された位置決め部材21と、端部材17に固定された位置決め部材18とに挟まれている。内輪16aは主軸4の伸縮に応じて一体的に端部材17に対して摺動するようになっている。
【0031】
主軸4と外筒2との間に形成される空間部22における軸受5bと単列の軸受16とで挟まれた軸方向の中間位置には、主軸4を駆動するモータ40が配置されている。モータ40のロータ14は主軸4の外周に嵌合した筒状部材15に固定され、モータ40のステータ13は外筒2の内周部に固定されている。
【0032】
なお、モータ40を冷却するための冷却媒体流路は、ここでは図示しない。
軸受5(5a,5b)の予圧(荷重)を測定する荷重センサ50は、スピンドル装置1の予圧を発生させる押圧力を伝達する経路に実装される。図2に示すように、荷重センサ50は、外輪間座6gの端面6gaに接着等で固定され、軸受5aの外輪5gaの端面と当接し、軸受5(5a,5b)に印加される予圧荷重を測定する。
【0033】
スピンドル装置1の組立時に荷重センサ50の出力を観測すれば、予め設定した予圧になっているかを確認でき、組立工数を削減できる。また、工作機械の運転時に荷重センサ50の出力を観測すれば、運転時の発熱による熱膨張で増加した予圧量を知ることができる。運転時の予圧変化を観測することによって、切削性能の低下や軸受5の焼付きを事前に防止することができる。
【0034】
荷重センサ50は、薄膜パターン(薄膜抵抗体)からなる感圧センサを含む。たとえば、電気抵抗の変化から荷重(予圧)を測定する荷重センサ50は、予圧を発生させる押圧力が伝達される経路上に配置される。
【0035】
荷重センサ50の電気抵抗の変化から荷重を検出する方法については後述するが、検出された荷重値は、たとえばケーブルCBを用いて外部に送信される。ケーブルCBは、ハウジング3と前蓋12に設けた溝3b,12aを経由してスピンドル装置1の外部に引き出される。なお、荷重出力をワイヤレスで外部機器に送信する場合、ケーブルCBや溝3b、12aは設けなくても良い。
【0036】
荷重センサ50は、複数の荷重センサ素子を含む。抵抗回路60は、複数の抵抗モジュールを含む。図3には、外輪間座6gの端面6gaに実装された荷重センサ素子50a~50dと抵抗モジュール60a~60dの第1配置例が示される。ここでは、外輪間座6gの周方向に90度の等間隔で荷重センサ素子50a~50dが配置され、その近傍には抵抗モジュール60a~60dが配置される。
【0037】
荷重センサ素子50a~50dと抵抗モジュール60a~60dをそれぞれ接続して、4つのブリッジ回路を形成することによって、荷重センサ素子50a~50dの各々の抵抗変化を検出する。なお、抵抗モジュール60a~60dの詳細は後述する。
【0038】
図4の例では、荷重センサ素子50a~50cが外輪間座6gの周方向に120度の等間隔で配置される。また、抵抗モジュール60a~60cが外輪間座6gの周方向に120度の等間隔で配置される。
【0039】
荷重センサ50に含まれる複数の荷重センサ素子の数は、複数の荷重センサ素子を介して外輪5gaの端面が均等にバランス良く押されればよく、3個以上が好ましい。また、ほぼ同一円周上に等間隔に複数の荷重センサ素子を配置するのが好ましい。
【0040】
図3図4に示した配置例では、抵抗回路60の数は、荷重センサ50の荷重センサ素子の数に等しい。
【0041】
次に、図5図6を用いて、荷重センサ素子の構造を説明する。図5は、図3のX-X断面における荷重センサ素子50aの断面図である。また、図6は、図5の荷重センサ素子50aの正面図である。なお、荷重センサ素子50b~50dも同様な構造である。
【0042】
荷重センサ素子50aは、たとえば絶縁性を有する基板51と、基板51上に配置され、面圧の変化で抵抗が変化する薄膜パターン(薄膜抵抗体)52と、薄膜パターン52につながる電極53と、薄膜パターン52を保護する絶縁性を有する保護層54とを含む。保護層54は、電極53上には形成しないため、電極53に直接、配線を接続できる。
【0043】
基板51には、たとえばジルコニア(ZrO)またはアルミナ(Al)を主成分にしたセラミック材料を使用する。セラミック材料は高剛性で絶縁性が高く、基板51の表面平坦度を精度良く加工することができ、好都合である。基板51の厚さは、荷重センサ50の薄型化と圧縮方向の強度を確保する観点から、たとえば0.3mm以上、5mm以下とするのが好ましい。
【0044】
薄膜パターン52は、たとえばニッケルクロム(NiCr)、クロム(Cr)系材料からなり、蒸着またはスパッタリング等で成膜される。薄膜パターンの厚さは、たとえば1μm以下である。また、スパッタリング等で絶縁性材料、たとえば、アルミナ(Al)または二酸化珪素(SiO)の薄膜が保護層54として形成される。保護層54の膜厚は、たとえば2μm程度とされる。
【0045】
なお、配線との半田付けを容易にするため、電極53の表面に、たとえば、銅、銀、金などの材料の被膜を設けてもよい。
【0046】
薄膜パターン52を形成する基板51の上面は、その平坦度が1μm以下になるように研磨するとよい。また、基板51の上面と下面との平行度を1μm以下にするのが好ましい。
【0047】
薄膜パターン52の抵抗値(2つの電極53間の抵抗値)は、数十Ωから数百Ωの範囲で設定され、温度変化とともに抵抗値が変化する割合を示す抵抗温度係数(温度変化とともに抵抗値が変化する割合を示す係数)は、たとえば10ppm/℃以下に設定される。好ましくは、抵抗温度係数は1ppm/℃以下に設定される。
【0048】
抵抗温度係数が小さいほど温度変化に伴う抵抗変化量が小さく、荷重検出時の温度ドリフトを低減することができる。
【0049】
このように、外輪間座6gとは別部品である基板51に薄膜パターンを形成するため、外輪間座6gに直接薄膜パターンを形成するよりも製造が容易になる。
【0050】
前述の例では、荷重センサ素子50a~50dの各々は、外輪間座6gの端面6gaと、軸受5aの外輪5gaの端面とに挟まれて押圧される。たとえば、荷重センサ素子50a~50dの各々の基板51は外輪間座6gの端面6gaと当接し、各々の保護層54は軸受5aの外輪5gaの端面と当接し、各々の薄膜パターン52は基板51と保護層54を介して押圧される。
【0051】
荷重センサ素子50a~50dの各々の形状は、荷重センサ素子50a~50dの各々の各材料物性値を考慮して設定される。また、ここでは、荷重センサ素子50a~50dの各々の形状を四角としたが、形状はこれに限定されない。
【0052】
図7は、荷重センサ素子の薄膜パターンの形状の変形例を示す図である。薄膜パターン52は、図6の例ではU字形状としたが、図7に示す荷重センサ50a1のように薄膜パターン52を連続する矩形パターンにしてもよい。基板51上に連続する矩形パターンを形成することで、薄膜パターン52の感圧長さが長くなり、荷重を安定して検出することができる。なお、薄膜パターン52の形状は図6図7に示した形状に限定されない。
【0053】
図8は、荷重センサ素子の構造の第1改良例を示す図である。図5では、保護層54は、絶縁材料からなる蒸着またはスパッタリング等の薄膜であったが、図8に示す荷重センサ素子150aでは、たとえばジルコニア(ZrO)またはアルミナ(Al)を主成分にしたセラミック材料からなる板材が保護層54Aとして用いられる。保護層54Aは、接着剤からなる接着層55を介して基板51の表面に成膜された薄膜パターン52を覆うように接着固定される。保護層54Aの板厚は、たとえば基板51の板厚と同じ0.3mmから5mm程度とされる。
【0054】
保護層54Aとして絶縁材料からなる板材を使用すれば、薄膜パターン52の上面に絶縁材料からなる板材を保護層54Aとして接着固定するだけで済むため、スパッタリング等による保護層54の成膜に比べて製造が容易になる。また、薄膜パターン52と外輪5gaとの間の絶縁性をより高くすることができ、安定して荷重検出することができる。また、接着層55を介して薄膜パターン52を押すため、接着層55がクッション層になって薄膜パターン52を均一に押すことができるため、荷重検出精度が向上する。
【0055】
図9は、荷重センサ素子の構造の第2改良例を示す図である。図5図8では、基板51として絶縁材料を用いたが、図9に示す荷重センサ素子250aでは、基板51Aとして金属材料を用い、その表面に絶縁層58が形成される。絶縁層58は、絶縁性材料からなり、たとえば、スパッタリング等でアルミナ(Al)または二酸化珪素(SiO)の薄膜が形成される。絶縁層58の膜厚は、たとえば2μm程度とされる。
【0056】
基板51Aの金属材料としては、たとえば外輪間座6gと同じ材料、たとえば軸受鋼(SUJ2)を用いる。軸受鋼以外では、炭素鋼(S45Cなど)を用いる。これら金属材料を一定の大きさに切削加工後に熱処理し、その後、加工精度が必要な面について研磨、ラッピング加工を行ない、目標の平坦度、面粗さに仕上げる。たとえば、平坦度は1μm以下、面粗さはRa0.1以下にする。
【0057】
その後、基板51Aの一方の面に絶縁層58を成膜後、図5と同様に、面圧の変化で抵抗が変化する薄膜パターン(薄膜抵抗体)52と、それにつながる電極53とを形成し、さらに、薄膜パターン52を保護する絶縁性を有する保護層54が形成される。保護層54は、電極53上には形成しないため、電極53に直接、配線を接続できる。
【0058】
保護層54としては、たとえばスパッタリング等でアルミナ(Al)または二酸化珪素(SiO)の薄膜が形成される。これらの膜厚は、たとえば2μm程度とされる。
【0059】
基板51Aの材質が金属材料であれば、荷重により基板51Aが割れることもなく信頼性が向上する。また、外輪間座6gの端面に直接、薄膜パターン52を形成するよりも、金属小片からなる基板51Aに薄膜パターン52を形成する方が製造は容易であり、製造コストを抑えることができる。
【0060】
図10は、図9の改良例である荷重センサ素子の構造を示す図である。図9では、保護層54は、絶縁材料からなる蒸着またはスパッタリング等の薄膜であったが、図10に示す荷重センサ素子350aでは、たとえばジルコニア(ZrO)またはアルミナ(Al)を主成分にしたセラミック材料からなる板材を保護層54Aとして用いる。保護層54Aは、接着剤からなる接着層55を介して基板51の表面に成膜された薄膜パターン52を覆うように接着固定される。保護層54Aの板厚は、たとえば基板51の板厚と同じ0.3mmから5mm程度とされる。
【0061】
保護層54Aとして絶縁材料からなる板材を使用すれば、スパッタリング等による成膜に比べて製造が容易になる。また、薄膜パターン52との絶縁性をより高くすることができ、安定して荷重を検出することができる。また、接着層55を介して薄膜パターン52を押すため、接着層55がクッション層になって薄膜パターン52を均一に押すことができるため、荷重検出精度が向上する。
【0062】
なお、保護層54Aとして、金属材料からなる板材に絶縁材料からなる絶縁膜を形成し、絶縁膜が成膜された側を薄膜パターン52側に対向させてもよい。この場合、保護層54Aの割れを防止することができる。
【0063】
次に、図11図12図13を用いて、抵抗モジュールの構造を説明する。図11は、図3のY-Y断面における抵抗モジュール60aの断面図である。また、図12は、図11の抵抗モジュール60aの正面図である。図13は、抵抗モジュール60aの基板61上に形成される回路の回路図である。なお、抵抗モジュール60b~60dも、抵抗モジュール60aと同様な構成である。
【0064】
抵抗モジュール60aは、たとえば絶縁性を有する基板61と、基板61上に配置される薄膜パターン(薄膜抵抗体)62からなる抵抗R(R1,R2,R3)と、抵抗Rにつながる電極T(T1,T2,T3,T4)とを含む。なお、電極Tを除く薄膜パターン62の表層に保護層64を設けてもよい。
【0065】
抵抗回路60の電極T1,T2に荷重センサ素子50aを接続すれば、抵抗Rとブリッジ回路を形成することができる。
【0066】
基板61には、たとえばジルコニア(ZrO)またはアルミナ(Al)を主成分にしたセラミック材料を使用する。基板61の厚さは、たとえば0.3mm以上、5mm以下の範囲で選定する。なお、抵抗モジュール60aの厚さは、荷重センサ素子50aの厚さよりも薄く製作されるので、抵抗モジュール60aは押圧されることはない。
【0067】
荷重センサ素子50aの薄膜パターン52と抵抗モジュール60aの抵抗Rが別々の基板に設けられるため、荷重センサ素子50aが押圧された場合であっても、抵抗モジュール60aは押圧されず、基板61が変形することはないので、基板変形に伴う抵抗Rの抵抗値の変化は抑制される。
【0068】
薄膜パターン62は、たとえば荷重センサ素子50aと同じニッケルクロム(NiCr)、クロム(Cr)系材料からなり、蒸着またはスパッタリング等で成膜される。薄膜パターンの厚さは、たとえば1μm以下である。保護層64は、絶縁性材料からなり、たとえば、スパッタリング等でアルミナ(Al)または二酸化珪素(SiO)の薄膜が形成される。保護層64の膜厚は、たとえば2μm程度とされる。
【0069】
なお、保護層64としては、硬化樹脂やシリコーン系接着剤を用いてもよい。また、電極Tの表面を、たとえば、銅、銀、金などの材料で被膜して、配線との半田付けを容易としてもよい。
【0070】
荷重センサ素子50aの薄膜パターン52と同じ材料で抵抗モジュール60aの薄膜パターン62を形成すれば、抵抗R1~R3の抵抗値および抵抗温度係数と荷重センサ素子50aの抵抗値および抵抗温度係数とを揃えることが容易になる。なお、抵抗R1からR3の抵抗値にばらつきが生じた場合には、たとえばレーザトリミングにより抵抗値を調整してもよい。
【0071】
以上の構成によって、ブリッジ回路において荷重センサ素子50aの抵抗値のみが変化し、荷重を測定することができる。
【0072】
抵抗R1~R3を薄膜パターン62で形成する代わりに、基板61の表面に形成した薄膜パターン62に市販のチップ抵抗を実装してもよい。この場合、抵抗値、抵抗温度係数が荷重センサ素子50aに近いチップ抵抗を使うことが望ましい。なお、抵抗値を調整するため、図示しない可変抵抗器を抵抗R1~R3のいずれかと直列に接続してもよい。
【0073】
荷重センサ素子50aの電極53と抵抗モジュール60aの電極TにケーブルCBを接続して外部に引き出し、外部に設けた図示しない処理部に接続すれば、温度変化の影響を低減して荷重値を算出することができる。
【0074】
以上、本実施の形態では、ブリッジ回路の抵抗回路と荷重センサ素子とを別々の基板に設けた例を示した。ただし、荷重センサ素子とブリッジ回路の抵抗を同じ薄膜材料で構成し、同一基板上に配置してもよい。この場合、同一工程で一度に荷重センサ素子と抵抗を製造することができる。この構成の場合には、ブリッジ回路の抵抗は押圧されない位置に配置される。同一基板にした場合、コスト低減、小型化、部品点数削減による組立工数削減が可能になる。
【0075】
図14は、荷重センサの出力を電気的に処理する処理部を外輪間座に配置した例を示す図である。
【0076】
外輪間座6gの一方の端面6gaには、荷重センサ素子50a~50dと、抵抗モジュール60a~60dと、処理部70とが固定される。荷重センサ素子50a~50dは、端面6gaに、その周方向に等間隔で固定される。抵抗モジュール60a~60dは、端面6gaに、その周方向に等間隔で固定される。
【0077】
処理部70は、たとえば荷重センサ素子50a~50dおよび、抵抗モジュール60a~60dと干渉しない形状する。また、処理部70は、荷重センサ素子50a~50dの各々よりも表面高さが低くなるように製作して、外輪5gaと処理部70との接触を防止する。
【0078】
抵抗モジュール60a~60dの各々の厚さも、荷重センサ素子50a~50dの各々よりも薄くなるように設定するため、外輪5gaと抵抗モジュール60a~60dとは接触しない。したがって、荷重センサ素子50a~50dが押圧されても抵抗モジュール60a~60dの抵抗Rの抵抗値は変化しないため、荷重を検出することができる。
【0079】
荷重センサ素子50a~50dと抵抗モジュール60a~60dの出力は、配線71、76により処理部70に接続される。
【0080】
処理部70は、荷重センサ素子50a~50dの抵抗変化をそれぞれ検出して増幅する回路部72a~72dが実装され、抵抗変化に相当する出力値を得る。また、処理部70に演算部73を配置してもよい。演算部73では、複数の荷重センサ素子50a~50dの抵抗変化量を処理して、外輪間座6gに印加される荷重に変換してから外部に出力してもよい。
【0081】
ここでは、抵抗モジュール60a~60dを外輪間座6gの端面6gaに配置したが、抵抗モジュール60a~60dの機能を処理部70に実装してもよい。この場合、抵抗モジュール60a~60dの各々に含まれる抵抗R1,R2,R3として市販のチップ抵抗を用いることができる。チップ抵抗は、処理部70に実装される。
【0082】
このようにすれば、抵抗モジュール60a~60dを外輪間座6gの端面6gaに配置する必要がなくなり、構成と配線処理が簡略化される。
【0083】
なお、抵抗モジュール60a~60dの各抵抗値を微調整したい場合には、図13の回路を変更して抵抗R1,R2,R3を分離し、処理部70に設けた回路部72の中で、抵抗R1,R2,R3と荷重センサ素子50a~50dの中で、微調整が必要な抵抗と直列に図示しない可変抵抗器を実装し、可変抵抗器を調整することで、抵抗をバランスさせてもよい。
【0084】
図15は、荷重センサ素子の抵抗変化を検出するブリッジ回路の構成を示す図である。図15に示す回路部72は、回路部72a~72dを含む。回路部72aは、DC電源VSDCに接続される抵抗モジュール60aと、荷重センサ素子50aと差動アンプAMPaとを含む。回路部72bは、DC電源VSDCに接続される抵抗モジュール60bと、荷重センサ素子50bと差動アンプAMPbとを含む。回路部72cは、DC電源VSDCに接続される抵抗モジュール60cと、荷重センサ素子50cと差動アンプAMPcとを含む。回路部72dは、DC電源VSDCに接続される抵抗モジュール60dと、荷重センサ素子50dと差動アンプAMPdとを含む。
【0085】
抵抗モジュール60a~60dの各々は、抵抗R1~R3を含む。抵抗R1~R3と荷重センサ素子50a~50dの各々とはブリッジ回路を構成する。
【0086】
回路部72aにおいて、DC電源VSDCの正極と負極との間には、抵抗R1と抵抗R2とが直列に接続される。また、DC電源VSDCの正極と負極との間には、荷重センサ素子50aと抵抗R3とが直列に接続される。抵抗R1と抵抗R2との接続ノードには、差動アンプAMPaの一方の入力ノードが接続される。荷重センサ素子50aと抵抗R3との接続ノードには、差動アンプAMPaの他方の入力ノードが接続される。
【0087】
回路部72b~72dの各々においては、回路部72aの構成において、荷重センサ素子50aおよび差動アンプAMPaに代えて、荷重センサ素子50b~50dおよび差動アンプAMPb~AMPdが接続される。
【0088】
図15に示すブリッジ回路構成にすることによって、荷重が変化した際の荷重センサ素子50a~50dの抵抗変化を差動アンプAMPa~AMPdで検出し、出力値S(Sa,Sb,Sc,Sd)を得ることができる。
【0089】
図14に示したように、荷重センサ素子50a~50dの各々は、対応する抵抗モジュール60a~60dのいずれかと互いに近傍の位置に配置されるため、同じ環境下に置かれる。それらの抵抗温度係数を揃えておけば、温度変化があっても抵抗モジュールの抵抗値は同じように変化する。したがって、温度変化があっても抵抗モジュール60a~60dの抵抗バランスが崩れないので、温度変化による差動アンプAMPa~AMPdの出力温度ドリフトを抑えることができる。そのため、温度センサの値で荷重センサ素子50a~50dの出力補正を行なう工程を削減することも可能である。
【0090】
図14に示す構成では、荷重センサ素子50a~50dのそれぞれの近傍で回路部72b~72dの差動アンプAMPa~AMPdが電気的処理を行なうため、電気ノイズの低減を図ることができる。また、外部に引き出す配線本数を削減することができ、軸受装置30、スピンドル装置1の組立が容易になる。
【0091】
図16は、荷重センサ素子の出力から軸受に印加する予圧(荷重)を算出する構成を示す図である。ここでは、4つの荷重センサ素子50a~50dを用いた例で説明する。
【0092】
図16に示す算出回路は、荷重センサ50(荷重センサ素子50a~50d)を含むブリッジ回路の出力値S(Sa~Sd)を演算処理する演算部73と、予め測定した出力値Sと荷重の関係、あるいは近似式を保存する記憶部74を備える。演算部73は、出力値Sと記憶部74のデータから荷重を算出する。演算部73と記憶部74は、軸受装置30の外部に設けてもよいし、処理部70の内部に設けてもよい。
【0093】
外輪間座6gに印加される予圧荷重は周方向に均一ではなく、外輪間座6g、ハウジング3、前蓋12、軸受5等の寸法精度によって、検出場所による出力値の違いが発生することも想定される。また、主軸4が回転した際には、主軸4に負荷されるモーメント荷重の影響や、軸受5の転動体Ta,Tbの移動に伴って周方向の荷重分布が変動することも想定される。
【0094】
そのため、各荷重センサ素子50a~50dの出力値Sの加算値、または平均値を演算部73が処理するセンサ出力として採用してもよい。また、出力値Sが取る範囲として、最大値や最小値、最大値と最小値の差などを設定してもよい。
【0095】
なお、演算部73によって得られた予圧(荷重)の出力をローパスフィルタに通し、転動体Ta,Tbの通過やノイズによる出力変動を削減してもよい。
【0096】
スピンドル装置1に軸受装置30を実装し、モータ40で主軸4を高速回転している場合、軸受5の温度上昇、あるいは軸受5の損傷によって軸受5が発熱することにより、予圧荷重が過大になって軸受5が焼損することが想定される。これに対しては、荷重センサ50から予圧荷重を算出して監視すれば、軸受5が焼損しないよう回避策を取ることができる。
【0097】
たとえば、荷重センサ50により測定した予圧荷重が、予め設定した基準値を超えた場合には、診断部75で軸受5の異常と判定し、主軸4の回転速度を下げたり、冷却媒体の循環量を増やしたり、加工負荷を低減したりするなどの処置を施し、軸受5の焼損を防止することができる。
【0098】
また、荷重センサ50は、予圧を発生させる力の伝達経路上にある外輪間座6gに固定されるため、スピンドル装置1を組み立てる際には、荷重センサ50の出力から軸受5(5a,5b)の初期予圧を把握でき、予圧量を見ながらナット10の締め付け、あるいは前蓋12の固定ねじの取り付けを調節することもできる。
【0099】
なお、演算部73では、180度対向した荷重センサ素子50a~50dのうちの2つの出力の差分から主軸4に印加されるモーメント荷重を算出してもよい。たとえば、図14に示す荷重センサ素子50a~50dの配置では、荷重センサ素子50a,50bの差分から主軸4の上下方向のモーメント荷重の大きさと向きとを算出することができる。また、荷重センサ素子50c,50dの差分から主軸4の左右方向のモーメント荷重の大きさと向きとを算出することも可能である。なお、荷重センサ素子の数は、4つでなくてもモーメント荷重の大きさと向きは算出可能である。
【0100】
たとえば、スピンドル装置1の他端側に固定したエンドミル等の切削工具で金属ワークを切削加工している際に、切削工具にかかる負荷および負荷方向をモーメント荷重から把握することができる。また、モーメント荷重から切削工具が金属ワークに衝突したことを検出することも可能である。
【0101】
異常診断の信頼性を高めるため、予圧(荷重)の増加に加え、他のセンサ、たとえば温度センサ、熱流束センサ、加速度センサの出力をさらに考慮して総合的に判断することもできる。たとえば、熱流束センサ(図示せず)を軸受5の近傍の非回転部材(たとえば外輪間座6g)に固定し、回転部材(たとえば主軸4)に対向して配置すれば、軸受5の焼付きによる温度上昇の予兆を早期に検出することができる。
【0102】
図17は、複数の荷重センサ素子に対して1個の抵抗回路でブリッジ回路を構成した変形例を示す図である。図17に示す変形例は、図14の改良例である。図18は、図17の構成において荷重センサ素子の抵抗変化を検出するブリッジ回路の第1構成例を示す図である。図19は、図17の構成において荷重センサ素子の抵抗変化を検出するブリッジ回路の第2構成例を示す図である。図17には、図18図19の構成例のどちらか1方を用いる。
【0103】
図17に示すように、外輪間座6gの一方の端面6gaには、その周方向に等間隔で固定した複数の荷重センサ素子50a~50dと、1個の抵抗回路60と、処理部70とが固定される。たとえば荷重センサ素子50a~50dおよび抵抗回路60と干渉しない形状、かつ、荷重センサ素子50a~50dよりも厚さが薄くなるように、処理部70を製作して、外輪5gaと処理部70との接触を防止する。
【0104】
また、抵抗回路60の厚さは荷重センサ素子50a~50dよりも薄くなるように設定するため、抵抗回路60は外輪5gaとは当接せず、荷重センサ素子50a~50dが押圧されても抵抗回路60の抵抗Rの抵抗値は変化しないため、荷重を検出することができる。
【0105】
荷重センサ素子50a~50dと抵抗回路60の出力は、配線71、76により処理部70に接続される。
【0106】
処理部70には、荷重センサ素子50a~50dの抵抗変化を検出して増幅する1つの回路部172(または272)が実装される。処理部70は、荷重センサ素子50a~50dの抵抗変化に相当する出力値を得る。また、処理部70に演算部73を配置してもよい。演算部73では、荷重センサ50の抵抗変化量を処理して、外輪間座6gに印加される荷重に変換してから外部に出力する。
【0107】
図18に示す回路部172は、DC電源VSDCに接続される抵抗R1~R3および荷重センサ素子50a~50dと、差動アンプAMPとを含む。抵抗R1~R3と荷重センサ素子50a~50dとはブリッジ回路を構成する。DC電源VSDCの正極と負極との間には、抵抗R1と抵抗R2とが直列に接続される。また、DC電源VSDCの正極と負極との間には、荷重センサ素子50a~50dを直列に接続した荷重検出部SRと抵抗R3とが直列に接続される。抵抗R1と抵抗R2との接続ノードには、差動アンプAMPの一方の入力ノードが接続される。荷重検出部SRと抵抗R3との接続ノードには、差動アンプAMPの他方の入力ノードが接続される。
【0108】
抵抗R1,R2,R3の抵抗値は、荷重センサ素子50a~50dを直列に接続した直列抵抗値(合成抵抗値)と同じに設定される。
【0109】
図18に示すような構成することによって、回路部172の構成を簡略にできるため、処理部70の小型化、簡易化が可能になる。
【0110】
また、荷重センサ素子50a~50dと抵抗回路60は、それらが近傍した位置にあって同じ環境に配置される。それらの抵抗温度係数を揃えておけば、温度変化があってもブリッジ回路の抵抗バランスは崩れないので、温度変化による差動アンプAMPの出力温度ドリフトを抑えることができる。
【0111】
図19に示す構成は、図18の変更例であり、荷重センサ素子の接続方法を並列接続にしたことを除き、その他は同じである。
【0112】
図19に示す回路部272は、DC電源VSDCに接続される抵抗R1~R3および荷重センサ素子50a~50dと、差動アンプAMPとを含む。抵抗R1~R3と荷重センサ素子50a~50dとはブリッジ回路を構成する。DC電源VSDCの正極と負極との間には、抵抗R1と抵抗R2とが直列に接続される。また、DC電源VSDCの正極と負極との間には、荷重センサ素子50a~50dを並列に接続した荷重検出部PRと抵抗R3とが直列に接続される。抵抗R1と抵抗R2との接続ノードには、差動アンプAMPの一方の入力ノードが接続される。荷重検出部SRと抵抗R3との接続ノードには、差動アンプAMPの他方の入力ノードが接続される。
【0113】
抵抗R1,R2,R3の抵抗値は、荷重センサ素子50a~50dを並列に接続した並列抵抗値(合成抵抗値)と同じに設定される。
【0114】
図19に示すような構成することによって、図18と同様に、回路部272の構成を簡略にできるため、処理部70の小型化が可能になる。
【0115】
また、荷重センサ素子50a~50dと抵抗回路60は、それらが近傍した位置にあって同じ環境に配置される。それらの抵抗温度係数を揃えておけば、温度変化があってもブリッジ回路の抵抗バランスは崩れないので、温度変化による差動アンプAMPの出力温度ドリフトを抑えることができる。
【0116】
なお、図17から図19の説明では、抵抗回路60は外輪間座6gの端面6gaに配置したが、抵抗回路60の機能を処理部70に実装してもよい。この場合、抵抗回路60の抵抗R1,R2,R3として市販チップ抵抗を用い、処理部70に実装すればよい。この場合、抵抗回路60を外輪間座6gの端面6gaに配置する必要がなくなり、構成が簡略化される。
【0117】
図20は、荷重センサ素子の固定位置を変更した変形例を示す図である。図20では、外輪間座6gを軸方向に2分割した一方の間座6g1の端面6g1aに荷重センサ50と抵抗回路60を固定した。この場合、他方の間座6g2の端面6g2aは荷重センサ50に当接する。
【0118】
なお、荷重センサ素子50a~50dと抵抗回路60または抵抗モジュール60a~60dとを実装した側面図は、図3図4または図14図17と同じため、説明を省略する。
【0119】
荷重センサ50を固定する間座6g1の端面6g1a、および荷重センサ50を押圧する間座6g2の端面6g2aは、平坦度と面粗さ、およびこれら端面6g1a,6g2aの平行度を基準値以下になるよう加工する必要がある。間座6g1,6g2は、をそれぞれ単体で精度良く加工することが可能である。
【0120】
間座6g2の端面6g2aに図示しない凸面を設け、凸面は荷重センサ50のみと当接するようにしてもよい。また、間座6g1の端面6g1aに図示しない凸面を設け、凸面に荷重センサ50を固定してもよい。
【0121】
この場合、荷重センサ50の上面は、抵抗回路60の上面よりも突出する。
さらに、外輪間座6gを2分割した間座6g1,6g2の相対的な位置ずれが生じないように、図示しないピンで位置合わせしてもよい。
【0122】
この場合、機械加工精度が求められる面積を小さくできるため、加工が容易になるとともに、加工時間の短縮が可能になる。
【0123】
また、荷重センサ50の表面と抵抗回路60の表面に段差を付けてもよい。
また、荷重センサ50と間座6g2の端面6g2aとの間に、図示しない中間層(クッション層)を挿入して、荷重センサ50を押圧する構造であってもよい。
【0124】
中間層の材料としては、たとえば外輪間座6gの材料よりも剛性(縦弾性係数)の低い金属材料(たとえばアルミニウム、銅、金属合金)、あるいは樹脂材料(たとえばフッ素系樹脂など)のコーティング薄膜などが使用できる。
【0125】
外輪間座6gより剛性が低い中間層を介して押圧することで、表面の形状に沿って中間層が変形して荷重が平均化するため、荷重センサ50を安定して均一に押圧することができる。この場合、軸受装置30、30Aの剛性は低下するため、中間層として適切な材料を選定する。
【0126】
また、中間層を介して荷重センサ50を押圧する構成であれば、中間層を用いない場合に比べて、外輪間座6gの端面の加工精度(面粗さ、平坦度など)を下げることができ、加工が容易になる。
【0127】
なお、荷重センサ50と処理部70または処理部70の一部とを一体的に実装してもよい。
【0128】
図21は、荷重センサ素子の固定方法を変更した変形例の側面図である。図22は、図21のP-O-P断面の矢視図である。
【0129】
外輪間座6gを2分割した間座6g1,6g2の間に荷重センサ素子50a~50dを配置し、間座6g1,6g2をねじBで締結することによって荷重センサ素子50a~50dに予圧を印加する。なお、間座6g1,6g2と荷重センサ素子50a~50dとの当接面に接着剤を塗らなくても荷重センサ素子50a~50dは固定できるが、接着剤を併用してもよい。
【0130】
抵抗回路60(抵抗モジュール60a~60d)は、間座6g1の端面6g1aの周上に配置されるが、間座6g2の端面6g2aとは非接触とされ、押圧されない。
【0131】
荷重センサ素子50a~50dが当接する間座6g1,6g2の端面6g1a,6g2aは、表面粗さや平坦度の精度が良い加工ができるよう、端面6g1a,6g2aには突起を設けず、平研削で面精度が得られ易い構造とした。
【0132】
荷重センサ50に予圧を印加することで、荷重センサ50の出力に不感帯がなくなるとともに、ヒステリシスの低減と直線性の改善が期待できる。また、外輪間座6gを2分割した間座6g1、6g2はねじBで固定されるため、外輪間座6gの取り扱いが容易となり、スピンドル装置1の組立性が向上する。
【0133】
また、荷重センサ素子50a~50dの近傍にそれぞれ抵抗モジュール60a~60dを配置し、それらの抵抗温度係数を揃えれば、温度変化があってもブリッジ回路の抵抗バランスは崩れないので、温度変化による差動アンプAMP出力の温度ドリフトを抑えることができる。そのため、温度センサの値で荷重センサ素子50a~50dの出力補正を行なう工程を削減することも可能である。
【0134】
前述の例では、ケーブルCBを用いて荷重センサ50とブリッジ回路部の出力、あるいはこれらを電気処理した出力を外部に送信しているが、自己発電とワイヤレス通信を追加で実装して無線通信することも可能である。
【0135】
(まとめ)
再び、図を参照して、本実施の形態について総括する。
【0136】
本開示は、軸受装置30に関する。軸受装置30は、転動体と軌道面を有し、軸を支持する少なくとも1つの軸受5と、転動体と軌道面との間に予圧を発生させる押圧力が伝達する経路上に配置される部材と、部材に固定され、押圧力に応じて抵抗値が変化する荷重センサ50と、荷重センサと接続してブリッジ回路を構成する複数の抵抗R1~R3を含む抵抗回路60とを備える。荷重センサ50は、押圧力に応じて抵抗が変わる薄膜パターン52と、薄膜パターン52を絶縁保護する保護層54とを含む。
【0137】
好ましくは、軸受装置30は、荷重センサ50の抵抗変化に基づいて押圧力を検出する処理部をさらに備える。
【0138】
押圧力は、主軸4の延在方向の荷重によって印加され、荷重センサ50は、主軸4の延在方向に交差する平面における同一円周上に等間隔に配置された複数の荷重センサ素子50a~50dを含む。
【0139】
抵抗回路60は、複数の荷重センサ素子50a~50dにそれぞれ接続され、複数の抵抗ブリッジ回路を形成する複数の抵抗モジュール60a~60dを含み、複数の抵抗モジュール60a~60dの各々は、抵抗モジュール60a~60dの各々とともに抵抗ブリッジ回路を形成する複数の荷重センサ素子50a~50dのうちの1つと同一円周上において隣接配置される。
【0140】
複数の荷重センサ素子50a~50dは、直列または並列に接続されて、荷重検出部SRまたはPRを形成する。荷重検出部SRまたはPRは、複数の抵抗R1~R3とともにブリッジ回路を構成する。
【0141】
少なくとも1つの軸受5は、複数の軸受5a,5bである。部材は、複数の軸受のうちの2個の軸受5a,5bの間に挿入される非回転側の外輪間座6gである。荷重センサ50は、外輪間座6gの端面6gaに固定され、2個の軸受5a,5bのうちの一方の軸受5aの固定輪である外輪5gaと当接するように配置される。端面6gaからの抵抗回路60の表面の高さは、端面から6gaの荷重センサ50の表面の高さよりも低い。押圧力は、荷重センサ50を介して伝達される。
【0142】
好ましくは、複数の抵抗R1~R3の各々の抵抗値および抵抗温度係数は、荷重センサ50の抵抗値および抵抗温度係数と実質的に等しい。
【0143】
好ましくは、複数の抵抗R1~R3の各々は、薄膜パターン52と同じ材料で形成される。
【0144】
図5図7に示すように、薄膜パターンは52、基板51上に形成され、図11図12に示すように、複数の抵抗R1~R3は、基板51とは別の基板61上に形成される。
【0145】
図1図2に示すように、部材は、少なくとも1つの軸受5aに隣接配置される外輪間座6gであり、荷重センサ50は、外輪間座6gの端面6gaに固定され、軸受5aの端面と当接し、押圧力は、荷重センサ50を介して伝達される。
【0146】
好ましくは、図20に示すように、部材は、少なくとも1つの軸受5aに隣接配置される外輪間座6gを第1間座6g1と第2間座6g2に分割した一方の間座である。荷重センサ50は、第1間座6g1の端面6g1aに固定され、第2間座6g2の端面6g2aと当接し、押圧力は、荷重センサ50を介して伝達される。
【0147】
より好ましくは、図21図22に示すように、第1間座6g1および第2間座6g2は、荷重センサ50を挟持し、第1間座6g1および第2間座6g2は、ねじBで締結され、荷重センサ50には、ねじBの締結力による押圧力が予め与えられている。
【0148】
本実施の形態は、他の局面では、上記いずれの軸受装置を備える、スピンドル装置1に関する。
【0149】
本実施の形態は、さらに他の局面では、転動体と軌道面を有する軸受5aに隣接配置され、転動体と軌道面の間に予圧を発生する押圧力が伝達される間座6に関する。間座6は、押圧力を測定可能な荷重センサ50と、荷重センサ50とともにブリッジ回路を構成する複数の抵抗R1~R3を含む抵抗回路60と、軸受5aに隣接する端面6gaに荷重センサ50および抵抗回路60とが固定された外輪間座6gとを備える。
【0150】
好ましくは、間座6は、外輪間座6gに一体に実装され、荷重センサ50の出力を処理する処理部70をさらに備える。
【0151】
以上説明した実施の形態の軸受装置によれば、次のような効果が得られる。
本実施の形態では、軸受に予圧(荷重)が印加される荷重経路上に荷重を測定することが可能な薄膜抵抗体を形成した荷重センサ素子と、その近傍に抵抗回路を配置し、これらでブリッジ回路を形成した。荷重センサ素子と抵抗回路は、同じ温度環境に配置されるため、それらの抵抗温度係数を揃える、あるいは抵抗温度係数を小さく設定すれば、温度変化があってもブリッジ回路のバランスは保たれる。したがって、荷重センサ素子の信号を電気処理して得られる出力の温度ドリフトを抑えることが可能になる。
【0152】
たとえば、荷重センサ素子と同じ材料で抵抗回路の薄膜パターン(抵抗)を形成すれば、抵抗値と抵抗温度係数(温度変化とともに抵抗値が変化する割合)を揃えることができ、温度変化に伴う増幅器の出力ドリフトをより低減することができる。この場合、温度補正を簡略化、あるいは省略することも期待できる。
【0153】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0154】
1 スピンドル装置、2 外筒、3 ハウジング、3a 段差部、3b,12a 溝、4 主軸、5,5a,5b,16 軸受、5ga,5gb,16b 外輪、5ia,5ib,16a 内輪、6,6g1,6g2,9 間座、6g 外輪間座、6g1a,6g2a,6ga 端面、6i 内輪間座、10,20 ナット、12 前蓋、13 ステータ、14 ロータ、15 筒状部材、17 端部材、18,21 位置決め部材、19 内輪押さえ、22 空間部、30 軸受装置、40 モータ、50,50a1 荷重センサ、50a~50d,150a,250a,350a 荷重センサ素子、51,51A,61 基板、52,62 薄膜パターン、53,T,T1 電極、54,54A,64 保護層、55 接着層、58 絶縁層、60 抵抗回路、60a~60d 抵抗モジュール、70 処理部、71 配線、72,72a~72d,172,272 回路部、73 演算部、74 記憶部、75 診断部、AMP,AMPa~AMPd 差動アンプ、B ねじ、CB ケーブル、G 流路、PR,SR 荷重検出部、R,R1,R2,R3 抵抗、Rta,Rtb 保持器、Ta,Tb 転動体、VSDC 電源。
図1
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