(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153757
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/02 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056445
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩原 英司
(72)【発明者】
【氏名】刀根 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】桃枝 理彰
(72)【発明者】
【氏名】江崎 一也
(72)【発明者】
【氏名】森 真樹
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AD00
(57)【要約】
【課題】磁力を低下させずに、便器本体とパネル部材の段差を減少させることで、意匠性の向上を図る。
【解決手段】実施形態に係る水洗大便器は、汚物を受けるボウル部を有する便器本体と、便器本体の後方に設けられた機能部と、機能部の側面を覆うパネル部材と、パネル部材、または便器本体の一方に設けられる磁石と、パネル部材、または便器本体の他方に設けられる磁性体と、を備え、パネル部材、便器本体のうち少なくとも一方は、磁石または磁性体を取り付けるための凹部を有する取付部を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚物を受けるボウル部を有する便器本体と、
前記便器本体の後方に設けられた機能部と、
前記機能部の側面を覆うパネル部材と、
前記パネル部材、または前記便器本体の一方に設けられる磁石と、
前記パネル部材、または前記便器本体の他方に設けられる磁性体と、を備え、
前記パネル部材、前記便器本体のうち少なくとも一方は、前記磁石または前記磁性体を取り付けるための凹部を有する取付部を備えることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
前記便器本体は、前記磁石または前記磁性体を取り付けるための便器本体側凹部を有する便器本体側取付部を備え、
前記便器本体側取付部は、前記便器本体側凹部を形成し、前記磁石または前記磁性体よりも下方に設けられる下方支持面を有することを特徴とする請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
前記下方支持面の前記パネル部材側の先端は、前記便器本体側取付部に設けられる前記磁石または前記磁性体よりも前記パネル部材側に突出する請求項2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
前記便器本体側取付部は、前記便器本体側凹部を形成し、前記磁石または前記磁性体よりも上方に設けられる上方支持面を有し、
前記便器本体側取付部に取り付けられた前記磁石または前記磁性体は、前記下方支持面の前記パネル部材側の先端より前記パネル部材に向かう突出量が小さく、且つ、前記上方支持面の前記パネル部材側の先端より前記パネル部材に向かう突出量が小さいことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の水洗大便器。
【請求項5】
前記パネル部材側に取り付けられる前記磁石または前記磁性体の一部は、前記便器本体側凹部に収容されることを特徴とする請求項4に記載の水洗大便器。
【請求項6】
前記パネル部材は、前記磁石または前記磁性体を取り付けるためのパネル部材側凹部を有するパネル部材側取付部を備え、
前記パネル部材側凹部を形成する内側面は、前記磁石または前記磁性体が取り付けられる取付面の縁から離れるにつれて、前記パネル部材の厚さが厚くなるように傾斜することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項7】
前記便器本体に前記パネル部材が取り付けられた際、前記便器本体に取り付けられた前記磁石または前記磁性体の一部が、前記パネル部材に取り付けられた前記磁石または前記磁性体の上方端より下側領域において、前記パネル部材に取り付けられた前記磁石または前記磁性体の先端より前記パネル部材側にあることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項8】
前記便器本体、又は前記パネル部材の一方に設けられた前記磁石が取り付けられ、前記磁石の周囲を覆うヨークを備え、
前記便器本体に前記パネル部材が取り付けられた際、前記ヨークは、前記磁性体を取り付けるための前記凹部に収容されることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パネル部材によって機能部を覆う水洗大便器において、パネル部材を水洗大便器に保持するために磁力を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、磁力によってパネル部材を保持するには、磁石の体積を大きくする必要があるため、磁石は便器本体の幅方向に大きくなる。これにより、便器本体にパネル部材を組付けた際、パネル部材が便器本体よりも幅方向に突出して段差が出来てしまい、見栄えが悪くなってしまう。
【0005】
本実施形態の一態様は、磁力を低下させずに、便器本体とパネル部材の段差を減少させることで、意匠性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係る水洗大便器は、汚物を受けるボウル部を有する便器本体と、前記便器本体の後方に設けられた機能部と、前記機能部の側面を覆うパネル部材と、前記パネル部材、または前記便器本体の一方に設けられる磁石と、前記パネル部材、または前記便器本体の他方に設けられる磁性体と、を備え、前記パネル部材、前記便器本体のうち少なくとも一方は、前記磁石または前記磁性体を取り付けるための凹部を有する取付部を備えることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、磁石、磁性体のうち少なくとも一方の一部、もしくは全部が凹部の中に収容される。これにより、磁石の大きさは変更せずに、つまり磁力を低下させずに、便器本体とパネル部材の段差を減少させることで、意匠性の向上が図れる。
【0008】
また、前記便器本体は、前記磁石または前記磁性体を取り付けるための便器本体側凹部を有する便器本体側取付部を備え、前記便器本体側取付部は、前記便器本体側凹部を形成し、前記磁石または前記磁性体よりも下方に設けられる下方支持面を有することを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、便器本体側の磁石、または磁性体を下方支持面によって支持可能である。そのため、例えばパネル部材が移動し、便器本体側の磁石、または磁性体に下向きの力が加わった際には下方支持面が便器本体側の磁石、または磁性体の脱落防止手段となる。
【0010】
また、前記下方支持面の前記パネル部材側の先端は、前記便器本体側取付部に設けられる前記磁石または前記磁性体よりも前記パネル部材側に突出する。
【0011】
このような構成によれば、パネル部材が自重により垂下したとしても、パネル部材に設けられた磁石または磁性体の下部が下方支持面に接触する。これにより、パネル部材の自重によるズレ量を抑制することができる。また、下方支持面がパネル部材の脱落防止手段となる。
【0012】
また、前記便器本体側取付部は、前記便器本体側凹部を形成し、前記磁石または前記磁性体よりも上方に設けられる上方支持面を有し、前記便器本体側取付部に取り付けられた前記磁石または前記磁性体は、前記下方支持面の前記パネル部材側の先端より前記パネル部材に向かう突出量が小さく、且つ、前記上方支持面の前記パネル部材側の先端より前記パネル部材に向かう突出量が小さいことを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、例えばパネル部材を拭き掃除する際に、パネル部材が便器本体に対して動いた場合に、便器本体側取付部の上方支持面や下方支持面に、パネル側取付部に取り付けられた磁石または磁性体が接触する。そのため、便器本体に対するパネル部材の位置ずれが抑制され、パネル部材が便器本体から脱落することがない。
【0014】
前記パネル部材側に取り付けられる前記磁石または前記磁性体の一部は、前記便器本体側凹部に収容されることを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、例えばパネル部材を拭き掃除する際に、パネル部材が便器本体に対して動いた場合に、便器本体側取付部の上方支持面や下方支持面に、パネル側取付部に取り付けられた磁石または磁性体が接触する。そのため、便器本体に対するパネル部材の位置ずれが抑制され、パネル部材が便器本体から脱落することがない。
【0016】
また、前記パネル部材は、前記磁石または前記磁性体を取り付けるためのパネル部材側凹部を有するパネル部材側取付部を備え、前記パネル部材側凹部を形成する内側面は、前記磁石または前記磁性体が取り付けられる取付面の縁から離れるにつれて、前記パネル部材の厚さが厚くなるように傾斜することを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、磁石の厚みを増すために、凹部をパネル部材に成型したとしても、成型収縮によって生じる凹みであるひけを抑制することができる。
【0018】
また、前記便器本体に前記パネル部材を取り付けた際、前記便器本体に取り付けられた前記磁石または前記磁性体の一部が、前記パネル部材に取り付けられた前記磁石または前記磁性体の上方端より下側領域において、前記パネル部材に取り付けられた前記磁石または前記磁性体の先端より前記パネル部材側にあることを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、パネル部材に取り付けられた磁石または磁性体を、便器本体に取り付けられた磁石または磁性体によって支持することができる。このため、パネル部材が自重により垂下することを抑制することができる。
【0020】
また、水洗大便器は、前記便器本体、又は前記パネル部材の一方に設けられた前記磁石が取り付けられ、前記磁石の周囲を覆うヨークを備え、前記便器本体に前記パネル部材が取り付けられた際、前記ヨークは、前記磁性体を取り付けるための前記凹部に収容されることを特徴とする。
【0021】
このような構成によれば、ヨークによって磁界の指向性を高め、小型の磁石によってパネル部材を保持できる。また、ヨークが磁性体を取り付けるための取付部の内側に、入り込むよう取り付けられるため、便器本体とパネル部材の段差を減少させることができ、意匠性の向上が図れる。
【発明の効果】
【0022】
開示の実施形態の水洗大便器によれば、磁力を低下させずに、便器本体とパネル部材の段差を減少させることで、意匠性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る水洗大便器の側面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る水洗大便器のパネル部材の一部などを省略した側面図である。
【
図3】
図3は、パネル部材の内側からの側面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示してあるIV-IVの断面における磁石と板金付近の概略図である。
【
図5】
図5は、
図1に示してあるV-Vの断面における磁石と板金付近の概略図である。
【
図6】
図6は、変形例に係る水洗大便器の板金を示す断面図である。
【
図7】
図7は、変形例に係る水洗大便器において、
図4に対応する箇所の断面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る水洗大便器において、
図4に対応する箇所の断面図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る水洗大便器において、
図5に対応する箇所の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して実施形態に係る水洗大便器1の概要について説明する。
【0025】
なお、
図1を含む各図には、説明の便宜上、鉛直上向き(上方)を正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を示している場合がある。この場合、X軸の正方向を左方、X軸の負方向を右方、Y軸の正方向を前方、Y軸の負方向を後方、Z軸の正方向を上方、Z軸の負方向を下方と規定し、また、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という。
【0026】
(第1実施形態)
図1、
図2に示すように、水洗大便器1は、便器本体3と、機能部5と、衛生洗浄装置7と、パネル部材9と、便座部11とを備える。便器本体3は、陶器製である。なお、便器本体3は、陶器製に限定されず、たとえば、樹脂製のものや、陶器と樹脂とを組み合わせたものであってもよい。
図1は、第1実施形態に係る水洗大便器1の側面図である。
図2は、第1実施形態に係る水洗大便器1のパネル部材9の一部などを省略した側面図である。
【0027】
便器本体3は、ボウル部(図示せず)および排水トラップ管路13を有する。
【0028】
便器本体3の後方には、機能部5が設けられる。機能部5は、便器本体3のボウル部(図示せず)や衛生洗浄装置7に給水を行う。機能部5は、貯水タンク(図示せず)、および加圧ポンプ(図示せず)などを含む。機能部5は、給水に関し、貯水タンクに貯水された洗浄水を加圧ポンプによって加圧して、大流量でジェット吐水口(図示せず)からボウル部へ吐出させる。
【0029】
衛生洗浄装置7には、ボウル部の上方の使用者の局部に向けて洗浄水を噴射するノズル装置(図示せず)を含む局部洗浄装置(図示せず)が設けられる。また、衛生洗浄装置7には、局部洗浄装置に供給される洗浄水を貯水する貯水部(図示せず)、貯水部内の洗浄水を適温に温めて温水にする加熱器(図示せず)、換気ファン(図示せず)、脱臭ファン(図示せず)、温風ファン(図示せず)、およびこれら各部を制御する制御部(図示せず)などが設けられる。
【0030】
便座部11は、便器本体3の上部に配置され、使用者が水洗大便器1を使用する場合に着座するものである。便座部11は、後方側を支点として回動することで、開閉可能である。
【0031】
蓋部15は、便座部11と同様、便器本体3の前方に配置され、便器本体3のボウル部を含む上面を上方から覆うものである。蓋部15は、便座部11と同様、後方側を支点として回動することで、開閉可能である。なお、蓋部15は、閉じた状態では、便器本体3の上面を上方から覆うとともに、便座部11を上方から覆う。
【0032】
ボウル部は、汚物を受ける部位であり、凹状に形成される。ボウル部の上縁部にはリム部(図示せず)が形成される。リム部は、洗浄水を吐水するリム吐水口(図示せず)を有する。リム部は、リム吐水口から吐水された洗浄水がボウル部の上縁部に沿って流れ、ボウル部内に旋回流を形成する。なお、リム吐水口には、上流側に形成された導水路(図示せず)が接続されており、洗浄水供給装置(図示せず)からの洗浄水が導水路を介して供給される。
【0033】
便器本体3の後方、および機能部5の側面には、機能部5を外的障害や汚水侵入を防ぐためのパネル部材9が設けられている。パネル部材9は、磁石19、44と、磁力によって磁石19、44に吸着される板金17、42とによって、便器本体3、および機能部5に取り付けられる。
【0034】
次に、
図2~
図5を参照してパネル部材9と便器本体3の取付について説明する。
図3は、パネル部材9の内側からの側面図である。
図4は、
図1に示してあるIV-IVの断面における磁石19と板金17付近の概略図である。
図5は、
図1に示してあるV-Vの断面における磁石19と板金17付近の概略図である。
【0035】
便器本体3は磁力によって吸着される磁性体である板金17を備えており、パネル部材9は磁石19を備える。詳細に説明すると、板金17は、便器本体3にパネル部材9を適正に設置した際、便器本体3とパネル部材9が重なり合う境界部Aに配置される。板金17は、便器本体3の上下方向に沿って二か所配置される。磁石19は、便器本体3にパネル部材9を適正に設置した際、板金17と対応する位置に二か所配置される。詳しくはパネル部材9の内側面の前方端に、パネル部材9の上下方向に沿って二か所配置される。
【0036】
便器本体3に取り付けられる板金17について詳細に説明する。板金17の前後方向の長さは、便器本体3を側面視した際、境界部Aの前後方向の長さ以下である。例えば、板金17の前後方向の長さは、境界部Aの前後方向の長さと略等しい。
【0037】
次に、便器本体3と板金17の取付関係について説明する。
【0038】
板金17は、便器本体3に設けられる便器本体側取付部21に取り付けられる。具体的には、板金17は、便器本体側取付部21(取付部)に形成される便器本体側凹部23(凹部)に取り付けられる。便器本体側取付部21は、境界部Aに設けられる。また、境界部Aの便器本体側取付部21以外の箇所を非便器本体側取付部35と称する。板金17と便器本体側取付部21は二か所ずつある。板金17は、境界部Aにおける便器本体3の側面に取り付けられる。
【0039】
便器本体側凹部23は、境界部Aにおける便器本体3の一部が内側に窪むことによって形成される。便器本体側凹部23は、側面25と上面29と下面31とによって形成される。側面25は、前後方向に延びる面である。側面25は、板金17が取り付けられる取り付け面である。以後、便器本体側凹部23の上面29を上方支持面29、下面31を下方支持面31と称する。なお、便器本体側凹部23については、便器本体3の一部が内側に窪んでいればよい。便器本体側凹部23は、上面29、および下面31の少なくとも一方が傾斜し、上面29、および下面31の他方に接続される形状であってもよい。すなわち、便器本体側凹部23は、側面25を有さない三角形状に形成されてもよい。
【0040】
また、便器本体側凹部23は、上面29が緩やかに傾斜して側面25と連続するような形状であってもよい。例えば、上面29と側面25とは、曲面を介して接続されてもよい。また、便器本体側凹部23は、下面31が緩やかに傾斜して側面25と連続するような形状であってもよい。また、便器本体側凹部23は、椀状に形成されてもよい。例えば、便器本体側凹部23は、U字状の底部(側面)を有する形状であってもよい。
【0041】
次に、便器本体側取付部21と板金17の取付関係について説明する。便器本体側凹部23の左右方向への凹み量は、板金17の脱落を防止することが可能となる量である。なお、下方支持面31は必ずしも板金17に接触していなくてもよく、下方支持面31と板金17の間に多少隙間があったとしても、板金17の脱落防止に効果が期待できる。
【0042】
下方支持面31は側面25と滑らかにつながっているため、側面25との曲率変化は1より大きい。また、下方支持面31の先端は非便器本体側取付部35に接続する。また、下方支持面31は、詳しくは、側面25から斜め下方に向かって延びている。下方支持面31の左右方向の長さは板金17の左右方向の厚みより大きい。
【0043】
上方支持面29について詳しく説明する。上方支持面29は側面25と滑らかにつながっているため、側面25との曲率変化は1より大きい。また、上方支持面29の先端は非便器本体側取付部35に接続する。また、上方支持面29は、詳しくは、側面25から斜め上方に向かって延びている。上方支持面29の左右方向の長さは板金17の左右方向の厚みより大きい。
【0044】
便器本体側凹部23と板金17との固定方法について説明する。便器本体側凹部23内にセラミック接着剤を塗布して板金17を便器本体側凹部23内に入れることで、セラミック接着剤とはめ合いによる結合力によって板金17を固定する。
【0045】
これにより、板金17の全部が便器本体側凹部23の中に収容されるため、板金17の大きさは変更せずに、便器本体3とパネル部材9の段差を減少させることが可能なため、意匠性の向上が図れる。
【0046】
次に、パネル部材9に取り付けられる磁石19について詳細に説明する。
【0047】
磁石19の前後方向の長さは、便器本体3を側面視した際、境界部Aの前後方向の長さ以下である。例えば、板金17の前後方向の長さは、境界部Aの前後方向の長さと略等しい。
【0048】
次に、パネル部材9と磁石19の取付関係について説明する。磁石19は、パネル部材9に設けられるパネル部材側取付部37(取付部)に取り付けられる。具体的には、磁石19は、パネル部材側取付部37に形成されるパネル部材側凹部39(凹部)に取り付けられる。パネル部材側取付部37は、パネル部材9の内側面の前方に取り付けられる。
【0049】
パネル部材側凹部39は、境界部Aにおけるパネル部材9の一部がパネル部材9の外側方向に窪むことによって形成される。磁石19とパネル部材側取付部37は二か所ずつある。
【0050】
これにより、磁石19の一部がパネル部材側凹部39の中に収容される。水洗大便器1は、磁石19の大きさを小さくせずに、つまり磁力を低下させずに、便器本体3とパネル部材9の段差が減少可能となる。そのため、意匠性の向上が図れる。
【0051】
また、パネル部材側凹部39を形成するパネル部材内側面40は、磁石19が取り付けられる取付面41の縁から離れるにつれ、徐々にパネル部材9の厚さが厚くなるよう傾斜している。これにより、磁石19の厚みを増すために、パネル部材側凹部39を有するパネル部材9を成型したとしても、成型収縮によって生じるひけと呼ばれる凹みを抑制することができる。
【0052】
次に、便器本体3にパネル部材9を取り付けた際の関係について説明する。パネル部材9の磁石19を、便器本体側凹部23の板金17に取り付けた際、磁石19の一部は前面視で便器本体側凹部23の上方支持面29の先端部及び下方支持面31の先端部より内側に入る。これにより、パネル部材9が自重により垂下する際に、便器本体側取付部21の下方支持面31にパネル部材側取付部37に取り付けられた磁石19が接触する。そのため、便器本体3に対するパネル部材9の自重によるズレ量を抑制することができる。また、パネル部材9を拭き掃除する際に、パネル部材9が便器本体3に対して動く場合に、便器本体側取付部21の上方支持面29や下方支持面31に、パネル部材側取付部37に取り付けられた磁石19が接触する。そのため、パネル部材9が便器本体3から脱落することを防ぐことができる。
【0053】
また、便器本体3では、下方支持面31と上方支持面29との間の長さは、パネル部材9側となるにつれて長くなる。そのため、パネル部材9を便器本体3に取り付ける際に、パネル部材9に取り付けられた磁石19は、下方支持面31、および上方支持面29によって便器本体側凹部23へ案内される。すなわち、パネル部材9の取り付け作業が容易となる。
【0054】
なお、磁石19と板金17の数や配置に関しては、これに限定されるものではなく、磁力の大きさやパネル部材9の重さ等により適宜変更される。また、板金17の長さに関しては、これに限定されるものではなく、便器本体3にパネル部材9を適正位置で取り付けた際の磁石19の位置に板金17があれば、形状や数は問わない。また、磁石19が便器本体3に、磁性体である板金17がパネル部材9に備えられていても良い。また、磁性体である板金17の代替として磁石を用いて良い。また、下方支持面31、および上方支持面29は、側面25に直交するように延びてもよい。
【0055】
変形例に係る水洗大便器1の板金17は、
図6に示すように、突出部43を備える。
図6は、変形例に係る水洗大便器1の板金17を示す断面図である。
図6は、変形例に係る水洗大便器1において、
図4に対応する箇所の断面図である。板金17は、磁石19の磁石下面19aより下方に、板金17の板金側面17aに対して垂直(
図6におけるX方向)に延びる突出部43が設けられている。パネル部材9を便器本体3に取り付けた際、突出部43の上面43aが磁石19の磁石下面19aに接触する。これにより、パネル部材9が自重により下方にずれたとしても、突出部43が磁石19の磁石下面19aと接触して、磁石19が支えられ、パネル部材9のずれを抑制することができる。なお、
図6では突出部43は板金17の板金側面17aから垂直に延びているが、板金17の板金側面17aと突出部43の上面43aが曲率を有していても良い。すなわち、突出部43は湾曲するように形成されても良い。
【0056】
変形例に係る水洗大便器1の板金17の突出部43は、
図7に示すように、磁石19に挿入されてもよい。
図7は、変形例に係る水洗大便器1において、
図4に対応する箇所の断面図である。磁石19の磁石側面19bには磁石窪み部19cが設けられており、板金17は板金側面17aに突出部43が設けている。パネル部材9を便器本体3に取り付けた際、突出部43が磁石19の磁石窪み部19cに入り込み、突出部43が磁石窪み部19cの上面と接触して磁石19が支えられ、パネル部材9のずれを抑制することができる。
【0057】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る水洗大便器1について
図8~
図9を用いて説明する。ここでは、第1実施形態と異なる箇所について説明する。
図8は、第2実施形態に係る水洗大便器1において、
図4に対応する箇所の断面図である。
図9は、第2実施形態に係る水洗大便器1において、
図5に対応する箇所の断面図である。
【0058】
また、第2実施形態に係る磁石19には、ヨーク45が取り付けられる。ヨーク45は、磁石19の周囲を覆うように設けられる。具体的には、ヨーク45は、磁石下面19a、磁石側面19b、磁石上面19d、磁石前面19e、および磁石後面19fを覆うように設けられる。ヨーク45は、パネル部材9に取り付けられる。ヨーク45は、パネル部材9のパネル部材側凹部39に取り付けられる。
【0059】
ヨーク45で磁石19の周囲を覆うことで、磁気回路が構成され磁束がヨーク45から集中的に出る。ヨーク45で覆われた磁石19を便器本体3に取り付けた場合、ヨーク45は便器本体側取付部21に側面視で内包される。具体的には、ヨーク45の一部は、板金17を取り付けるための便器本体側凹部23に収容される。つまり、ヨーク45の外縁は、側面視で便器本体側凹部23より小さい。また、ヨーク45の外縁は板金17の外縁よりも大きい。また、ヨーク45は、板金17側のヨーク45の先端と磁石側面19bとが同一平面となるように設けられる。
図7は、変形例に係る水洗大便器1において、
図4に対応する箇所の断面図である。これにより、ヨーク45によって磁界の指向性を高め、小型の磁石19によってパネル部材9を保持できる。
【0060】
また、ヨーク45の一部が便器本体側凹部23に収容され、且つ磁石19の外側になるように、パネル部材側凹部39に取り付けられるため、便器本体3とパネル部材9の段差を減少させることができ、意匠性の向上が図れる。なお、磁石19とヨーク45の構造はこれに限らず、磁石側面19bを覆わず磁石下面19a、磁石側面19b、磁石上面19d、磁石前面19e、および磁石後面19fのみを覆うものや、吸着力を高めるためにヨーク45で覆われた磁石19の側面視での中心に鉄芯を通すものでもよい。また、ヨーク45の左右方向の長さが磁石側面19bより長くてもよい。なお、ヨーク45は必ずしも磁石上面19dと磁石下面19aとを覆わなくてもよく、磁石側面19bを覆い、磁石側面19bの周囲から、磁石上面19dと磁石下面19aとを覆わない形で、便器本体3側に延びるようなヨーク45でもよい。
【0061】
上記実施形態の水洗大便器1では、例えば、パネル部材9は、磁石44と、磁力によって磁石44に吸着される板金42とによって、および機能部5に取り付けられているが、機能部5においても、便器本体3と同様な構成としてもよい。具体的には、上述した実施形態と同様に、板金42が取り付けられる機能部5の表面を内側に凹むように形成してもよいし、磁石44が取り付けられるパネル部材9の表面を内側に凹むように形成してもよい。すなわち、上述した実施形態は、機能部5においても同様に適用可能である。
【0062】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 水洗大便器
3 便器本体
5 機能部
7 衛生洗浄装置
9 パネル部材
11 便座部
13 排水トラップ管路
15 蓋部
17、42 板金
17a 板金側面
19、44 磁石
19a 磁石下面
19b 磁石側面
19c 磁石窪み部
21 便器本体側取付部
23 便器本体側凹部
25 側面
29 上方支持面
31 下方支持面
35 非便器本体側取付部
37 パネル部材側取付部
39 パネル部材側凹部
40 パネル部材内側面
41 取付面
43 突出部
45 ヨーク
A 境界部
【手続補正書】
【提出日】2022-09-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚物を受けるボウル部を有する便器本体と、
前記便器本体の後方に設けられた機能部と、
前記機能部の側面を覆うパネル部材と、
前記パネル部材、または前記便器本体の一方に設けられる磁石と、
前記パネル部材、または前記便器本体の他方に設けられる磁性体と、を備え、
前記便器本体は、前記磁石または前記磁性体を取り付けるための便器本体側凹部を有する便器本体側取付部を備え、
前記便器本体側取付部は、前記便器本体側凹部を形成し、前記磁石または前記磁性体よりも下方に設けられる下方支持面を有し、
前記下方支持面の前記パネル部材側の先端は、前記便器本体側取付部に設けられる前記磁石または前記磁性体よりも前記パネル部材側に突出することを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
前記便器本体側取付部は、前記便器本体側凹部を形成し、前記磁石または前記磁性体よりも上方に設けられる上方支持面を有し、
前記便器本体側取付部に取り付けられた前記磁石または前記磁性体は、前記下方支持面の前記パネル部材側の先端より前記パネル部材に向かう突出量が小さく、且つ、前記上方支持面の前記パネル部材側の先端より前記パネル部材に向かう突出量が小さいことを特徴とする請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
前記パネル部材側に取り付けられる前記磁石または前記磁性体の一部は、前記便器本体側凹部に収容されることを特徴とする請求項2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
汚物を受けるボウル部を有する便器本体と、
前記便器本体の後方に設けられた機能部と、
前記機能部の側面を覆うパネル部材と、
前記パネル部材、または前記便器本体の一方に設けられる磁石と、
前記パネル部材、または前記便器本体の他方に設けられる磁性体と、を備え、
前記パネル部材は、前記磁石または前記磁性体を取り付けるためのパネル部材側凹部を有するパネル部材側取付部を備え、
前記パネル部材側凹部を形成する内側面は、前記磁石または前記磁性体が取り付けられる取付面の縁から離れるにつれて、前記パネル部材の厚さが厚くなるように傾斜することを特徴とする水洗大便器。
【請求項5】
汚物を受けるボウル部を有する便器本体と、
前記便器本体の後方に設けられた機能部と、
前記機能部の側面を覆うパネル部材と、
前記パネル部材、または前記便器本体の一方に設けられる磁石と、
前記パネル部材、または前記便器本体の他方に設けられる磁性体と、を備え、
前記パネル部材、前記便器本体のうち少なくとも一方は、前記磁石または前記磁性体を取り付けるための凹部を有する取付部を備え、
前記便器本体に前記パネル部材が取り付けられた際、前記便器本体に取り付けられた前記磁石または前記磁性体の一部が、前記パネル部材に取り付けられた前記磁石または前記磁性体の上方端より下側領域において、前記パネル部材に取り付けられた前記磁石または前記磁性体の先端より前記パネル部材側にあることを特徴とする水洗大便器。
【請求項6】
前記便器本体、又は前記パネル部材の一方に設けられた前記磁石が取り付けられ、前記磁石の周囲を覆うヨークを備え、
前記便器本体に前記パネル部材が取り付けられた際、前記ヨークは、前記磁性体を取り付けるための凹部に収容されることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の水洗大便器。