(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153765
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】電力融通システム
(51)【国際特許分類】
H02J 9/00 20060101AFI20221005BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20221005BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20221005BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20221005BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20221005BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
H02J9/00 120
H02J3/32
H02J3/38 170
H02J7/34 G
H02J9/06 120
H02J7/00 302D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056455
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】瀬口 和彦
(72)【発明者】
【氏名】原田 真宏
【テーマコード(参考)】
5G015
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G015FA04
5G015GA02
5G015JA32
5G015JA59
5G015JA64
5G066HA11
5G066HB07
5G066HB09
5G066JA02
5G503AA01
5G503AA05
5G503BA01
5G503BB01
5G503DA05
5G503DA14
5G503DA17
(57)【要約】
【課題】共用部に発電装置を備えていなくとも、専有部の電力を融通することにより、停電時に当該共用部の電力負荷を長期間使用することができる電力融通システムを提供する。
【解決手段】共用部C及び専有部Hを有する施設において、前記共用部Cに設けられ、電力を充放電可能な蓄電システム36と、前記共用部Cに設けられ、前記共用部Cの電力負荷へと供給される電力の供給元を、系統電源Kと接続された共用電力分電盤34(共用分電盤)、又は、前記蓄電システム36に、停電の有無に応じて切り換え可能な共用切換盤37と、前記専有部Hに設けられ、燃料を用いて発電可能であって、非停電時に発電電力を前記専有部Hに設けられた専有分電盤42に供給すると共に、停電時に発電電力を前記蓄電システム36に供給する燃料電池44と、を具備する系統電源Kを具備する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共用部及び専有部を有する施設において、
前記共用部に設けられ、電力を充放電可能な蓄電システムと、
前記共用部に設けられ、前記共用部の電力負荷へと供給される電力の供給元を、系統電源と接続された共用分電盤、又は、前記蓄電システムに、停電の有無に応じて切り換え可能な第一切換盤と、
前記専有部に設けられ、燃料を用いて発電可能であって、非停電時に発電電力を前記専有部に設けられた専有分電盤に供給すると共に、停電時に発電電力を前記蓄電システムに供給する燃料電池と、
を具備する電力融通システム。
【請求項2】
前記専有部に設けられ、前記専有部の電力負荷へと供給される電力の供給元を、系統電源と接続された前記専有分電盤、又は、前記蓄電システムに、停電の有無に応じて切り換え可能な第二切換盤を具備する、
請求項1に記載の電力融通システム。
【請求項3】
前記第二切換盤は、前記専有部の複数の電力負荷と当該専有部の電力の供給元とを任意に接続可能に構成され、
停電時に、前記蓄電システムの充電量に応じて、前記複数のうち所定数の電力負荷と前記専有部の電力の供給元とを接続する、
請求項2に記載の電力融通システム。
【請求項4】
前記蓄電システムから前記専有部の電力負荷へ供給される電力を変換可能な変換部を具備する、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電力融通システム。
【請求項5】
前記専有部は複数設けられる、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電力融通システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を融通可能な電力融通システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、共用部及び専有部を有する施設において、電力を供給するためのシステムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、共用部及び専有部を有する施設において、電力を当該共用部や専有部の電力負荷へ適宜供給するためのシステムが開示されている。当該システムでは、例えば共用部に太陽光発電部や蓄電装置を備える。これにより、例えば停電が発生した場合、太陽光発電部や蓄電装置を活用して、共用部の電力負荷を長期間使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば特にマンション等の施設では、設置スペースの都合で、共用部に太陽光発電部(発電装置)を備えることが困難な場合がある。このような場合、共用部に蓄電装置を備えたとしても停電時に充電を行うことができないため、当該共用部の電力負荷を長期間使用することができない。
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、共用部に発電装置を備えていなくとも、専有部の電力を融通することにより、停電時に当該共用部の電力負荷を長期間使用することができる電力融通システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、共用部及び専有部を有する施設において、前記共用部に設けられ、電力を充放電可能な蓄電システムと、前記共用部に設けられ、前記共用部の電力負荷へと供給される電力の供給元を、系統電源と接続された共用分電盤、又は、前記蓄電システムに、停電の有無に応じて切り換え可能な第一切換盤と、前記専有部に設けられ、燃料を用いて発電可能であって、非停電時に発電電力を前記専有部に設けられた専有分電盤に供給すると共に、停電時に発電電力を前記蓄電システムに供給する燃料電池と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記専有部に設けられ、前記専有部の電力負荷へと供給される電力の供給元を、系統電源と接続された前記専有分電盤、又は、前記蓄電システムに、停電の有無に応じて切り換え可能な第二切換盤を具備するものである。
【0010】
請求項3においては、前記第二切換盤は、前記専有部の複数の電力負荷と当該専有部の電力の供給元とを任意に接続可能に構成され、停電時に、前記蓄電システムの充電量に応じて、前記複数のうち所定数の電力負荷と前記専有部の電力の供給元とを接続するものである。
【0011】
請求項4においては、前記蓄電システムから前記専有部の電力負荷へ供給される電力を変換可能な変換部を具備するものである。
【0012】
請求項5においては、前記専有部は複数設けられるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
本発明においては、共用部に発電装置を備えていなくとも、専有部の電力を融通することにより、停電時に当該共用部の電力負荷を長期間使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る電力融通システムが適用されたマンションを示した模式図。
【
図2】同じく、電力融通システムの構成を示したブロック図。
【
図4】通常(非停電)時における電力の供給態様を示したブロック図。
【
図5】停電時における電力の供給(融通)態様を示したブロック図。
【
図6】各種機器の動作の様子を示したフローチャート。
【
図7】本発明の第二実施形態に係る電力融通システムの構成において、停電時における電力の供給(融通)態様の一例を示したブロック図。
【
図8】第二実施形態に係る制御部による制御及び各種機器の動作の様子を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の第一実施形態に係る電力融通システム1について説明する。
【0017】
図1から
図3に示す電力融通システム1は、例えば共用部C及び複数の専有部Hを有したマンションMに適用される。なお、共用部Cは、マンションMの居住者が共有して使用する部分(例えば廊下や階段、エレベータホール等)である。また、専有部Hは、マンションMの居住者が専有して使用する部分(住戸)である。マンションMでは、高圧一括受電を行って、受けた電力を共用部C及び複数の専有部Hに供給することで、一括したエネルギー管理を行っている。電力融通システム1は、停電時にマンションM内(共用部C及び複数の専有部H)で電力の融通を行うものである。
【0018】
図2及び
図3に示すように、電力融通システム1は、キュービクル10、売買電メータ20、共用部Cの各種機器、専有部Hの各種機器及びEMS50を具備する。なお以下の説明において「上流側」及び「下流側」とは、系統電源Kからの電力の供給方向を基準とする。
【0019】
キュービクル10は、系統電源Kからの電力を一括して受電する高圧受電設備である。キュービクル10は、所定の配電線を介して系統電源Kと接続される。キュービクル10は、系統電源Kからの電力を降圧して共用部C及び複数の専有部Hに配電することができる。また、キュービクル10は、複数の専有部Hからの電力を系統電源Kへ供給することができる。
【0020】
売買電メータ20は、電力を検出するものである。売買電メータ20は、系統電源Kとキュービクル10との間に設けられる。売買電メータ20は、マンションMの購入電力及び売却電力を取得することができる。
【0021】
共用部Cの前記各種機器には、共用一般分電盤31、共用一般買電メータ32、共用専用回路33、共用電力分電盤34、共用動力買電メータ35、蓄電システム36、共用切換盤37及びトランス38等が含まれる。
【0022】
共用一般分電盤31は、図示せぬ一般回路へ電力を分配するものである。共用一般分電盤31は、所定の配電線を介して前記一般回路と接続される。また、共用一般分電盤31は、所定の配電線を介してキュービクル10と接続される。こうして、共用一般分電盤31は、キュービクル10から供給された電力を、前記一般回路へ供給することができる。
【0023】
なお、共用部Cの一般回路とは、当該共用部Cの電力負荷のうち、通常時(非停電時)に使用するものの、停電時に使用しない(使用する優先度が比較的低い)電力負荷(以下では「一般負荷」と称する)が接続される回路である。本実施形態において、一般負荷には、廊下やエレベータホールの電灯等が含まれる。
【0024】
共用一般買電メータ32は、電力を検出するものである。共用一般買電メータ32は、キュービクル10と共用一般分電盤31との間で、当該共用一般分電盤31の直ぐ上流側に設けられる。共用一般買電メータ32は、一般回路に供給される購入電力を取得することができる。
【0025】
共用専用回路33は、共用部Cの電力負荷のうち、通常時(非停電時)だけではなく停電時にも使用する(使用する優先度が比較的高い)電力負荷(以下では「共用専用負荷」と称する)が接続される回路である。本実施形態において、共用専用負荷には、
図1に示すように、給水用のポンプC1やエレベータC2等の、動力を発生させる負荷が含まれる。
【0026】
共用電力分電盤34は、共用専用回路33へ電力を分配するものである。共用電力分電盤34は、所定の配電線(以下では「第一配電線L1」及び「第二配電線L2」と称する)を介して共用専用回路33と接続される。なお、第一配電線L1と第二配電線L2との間には、後述する共用切換盤37が設けられる。また、共用電力分電盤34は、所定の配電線を介してキュービクル10と接続される。こうして、共用電力分電盤34は、キュービクル10から供給された電力を、共用切換盤37を介して共用専用回路33へ供給することができる。
【0027】
共用動力買電メータ35は、電力を検出するものである。共用動力買電メータ35は、キュービクル10と共用電力分電盤34との間で、当該共用電力分電盤34の直ぐ上流側に設けられる。共用動力買電メータ35は、共用部Cに供給される購入電力を取得することができる。
【0028】
蓄電システム36は、電力を充放電可能なシステムである。蓄電システム36は、蓄電池36a及びパワコン36bを具備する。
【0029】
蓄電池36aは、電力を充放電可能に構成されたものである。蓄電池36aは、例えばリチウムイオン電池により構成される。
【0030】
パワコン36bは、電力を適宜変換可能に構成されたものである。パワコン36bは、所定の配電線(以下では「第三配電線L3」と称する)を介して共用電力分電盤34と接続される。こうして、蓄電システム36は、パワコン36bにより共用電力分電盤34と接続される。また、パワコン36bは、第三配電線L3にかかる電圧の状態に基づいて停電の発生を検知することができる。また、パワコン36bは、蓄電池36aと接続される。パワコン36bは、蓄電池36aに関する情報(例えば充電量や運転状態等)を取得することができる。
【0031】
上述の如く構成された蓄電システム36は、連系運転及び自立運転を行う。
【0032】
蓄電システム36の連系運転とは、通常時(非停電時)に系統電源Kと連系した状態で行われる運転である。すなわち、連系運転時には、蓄電システム36は、系統電源Kと連系した状態で、共用電力分電盤34からの電力を、パワコン36bを介して蓄電池36aに充電することができる。また、蓄電システム36は、系統電源Kと連系した状態で、蓄電池36aの放電電力をパワコン36bを介して出力することができる。こうして、蓄電システム36は、例えば電力単価が比較的安価な深夜時間帯に充電を行うと共に、電力単価が比較的高価な昼間時間帯に放電を行って、放電電力を共用電力分電盤34へ出力することができる。
【0033】
蓄電システム36の自立運転とは、停電時に系統電源Kから独立した状態で行われる運転である。蓄電システム36は、停電の発生を検知した場合、連系運転から自立運転へと運転を切り換える。自立運転時には、蓄電システム36は、系統電源Kから独立した状態で、蓄電池36aの放電電力をパワコン36bを介して出力することができる。なお自立運転時には、蓄電システム36は、連系運転時の第三配電線L3とは異なる配電線(以下では「第四配電線L4」と称する)へ放電電力を出力する。蓄電システム36は、動力用の電力を供給するため三相3線式(200V)で出力を行う。蓄電システム36は、停電の終了(通常状態の復帰)を検知した場合、自立運転から連系運転へと運転を切り換える。
【0034】
なお、第四配電線L4とは、蓄電システム36(より詳細には、パワコン36b)と、後述する共用切換盤37と、後述する各専有部Hの専有切換盤45と、を互いに接続するものである。より詳細には、第四配電線L4は、接続点Pと共用部Cの共用切換盤37とを接続する第四配電線L4aと、接続点Pと蓄電システム36とを接続する第四配電線L4bと、接続点Pと各専有部Hの専有切換盤45とを接続する第四配電線L4cと、により構成される。なお、第四配電線L4cは、共用部Cと各専有部Hとに亘るように設けられる。第四配電線L4は、上述の如く通常時には使用されず、停電時にのみ使用される。
【0035】
共用切換盤37は、共用専用回路33へ供給されてくる電力の供給元を切り換えるものである。具体的には、共用切換盤37は、共用専用回路33へ供給されてくる電力の供給元として、共用電力分電盤34と蓄電システム36とを適宜切り換える。なお以下では、共用切換盤37において、電力の供給元を、共用電力分電盤34に切り換えた状態を「第一切換状態」と称し、蓄電システム36に切り換えた状態を「第二切換状態」と称する。
【0036】
また、共用切換盤37は、第一配電線L1と第二配電線L2と第四配電線L4との間に設けられる。共用切換盤37は、第一切換状態において、第二配電線L2と第一配電線L1とを接続(電力が流通可能な状態と)する。また、共用切換盤37は、第二切換状態において、第二配電線L2と第四配電線L4(より詳細には、第四配電線L4a)とを接続する。こうして、第二切換状態においては、共用専用回路33と蓄電システム36とが、第二配電線L2、第四配電線L4a及び第四配電線L4bを介して電力が流通可能な状態となる。
【0037】
また、共用切換盤37は、所定の制御装置(例えば、後述するEMS50)により制御されるのではなく、系統電源K等からの電力に応じて(すなわち、停電の有無に応じて)自発的に、切り換えの動作を行う。具体的には、共用切換盤37は、通常時において、第一切換状態となっている。また、共用切換盤37は、停電が発生した場合、第一切換状態から第二切換状態へと状態を切り換える。また、共用切換盤37は、停電が終了(通常状態に復帰)した場合、第二切換状態から第一切換状態へと状態を切り換える。なお、共用切換盤37は、上述の如く自発的に状態を切り換えるのではなく、後述するEMS50からの指示(制御)により状態を切り換えてもよい。
【0038】
トランス38は、電力を適宜変換するものである。トランス38は、第四配電線L4のうち第四配電線L4cの中途部(すなわち、第四配電線L4のうち接続点Pよりも各専有部H側)に設けられる。トランス38は、蓄電システム36が自立運転時に出力する電力を単相2線式(100V)に変換する。こうして、トランス38を介して供給された蓄電システム36の出力電力は、各専有部Hで使用することができる。
【0039】
専有部Hの前記各種機器には、専有専用回路41、専有分電盤42、専有買電メータ43、燃料電池44及び専有切換盤45等が含まれる。なお説明の便宜上、本実施形態において、マンションMは4つの専有部H(住戸)を有するものとする。また、4つの専有部Hの各種機器の構成は同一であるものとする。そこで以下では、4つの専有部Hのうち不特定の一の専有部Hを取り上げて、その各種機器について説明するものとする。
【0040】
専有専用回路41は、専有部Hの電力負荷のうち、通常時(非停電時)だけではなく停電時にも使用する(使用する優先度が比較的高い)電力負荷(以下では「専有専用負荷」と称する)が接続される回路である。なお本実施形態において、専有専用負荷には、例えばリビングの電灯や冷蔵庫、エアコン等の負荷が含まれる。
【0041】
専有分電盤42は、専有専用回路41や、図示せぬ一般回路へ電力を分配するものである。なお、専有部Hの一般回路とは、当該専有部Hの電力負荷のうち、通常時(非停電時)に使用するものの、停電時に使用しない(使用する優先度が比較的低い)電力負荷が接続される回路である。専有分電盤42は、所定の配電線を介して前記一般回路と接続される。また、専有分電盤42は、所定の配電線(以下では「第五配電線L5」及び「第六配電線L6」と称する)を介して専有専用回路41と接続される。なお、第五配電線L5と第六配電線L6との間には、後述する専有切換盤45が設けられる。また、専有分電盤42は、所定の配電線を介してキュービクル10と接続される。こうして、専有分電盤42は、キュービクル10から供給された電力を、専有切換盤45を介して専有専用回路41や前記一般回路へ分配することができる。
【0042】
専有買電メータ43は、電力を検出するものである。専有買電メータ43は、キュービクル10と専有分電盤42との間で、当該専有分電盤42の直ぐ上流側に設けられる。専有買電メータ43は、専有部Hに供給される購入電力を取得することができる。
【0043】
燃料電池44は、水素等のガス燃料を用いて発電する装置である。燃料電池44は、固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)や制御部等により構成される。また、燃料電池44には、図示せぬ貯湯タンクや発電機、及び給湯器等が設けられる。燃料電池44は、所定の配電線(以下では「第七配電線L7」と称する)を介して専有分電盤42と接続される。燃料電池44は、第七配電線L7にかかる電圧の状態に基づいて停電の発生を検知することができる。
【0044】
また、燃料電池44には、燃料電池センサ44aが設けられる。燃料電池センサ44aは、キュービクル10と専有分電盤42とを接続する所定の配電線において、専有買電メータ43と専有分電盤42との間に設けられる。燃料電池センサ44a(すなわち、燃料電池44)は、専有部Hに供給される購入電力を取得することができる。
【0045】
また、燃料電池44は、発電時に発生する熱(排熱)を用いて湯を製造すると共に、当該製造した湯を貯湯タンクに貯める。燃料電池44は、貯湯タンクの貯湯量が最大容量に達した場合(貯湯タンクがこれ以上蓄熱できない満蓄になった場合)、当該貯湯タンクから湯を排出しない限り発電を停止させる(発電を行うことができない)。貯湯タンクに貯められた湯は、浴室等の給湯需要に応じて供給することができる。
【0046】
上述の如く構成された燃料電池44は、連系運転及び自立運転を行う。
【0047】
燃料電池44の連系運転とは、通常時(非停電時)に系統電源Kと連系した状態で行われる運転である。具体的には、連系運転時には、燃料電池44は、系統電源Kと連系した状態で、燃料電池センサ44aの検出結果(すなわち、専有部Hに供給される購入電力)に基づいて発電量を調整する負荷追従運転を行う。燃料電池44の発電電力は、第七配電線L7を介して専有分電盤42に供給される。
【0048】
燃料電池44の自立運転とは、停電時に系統電源Kから独立した状態で行われる運転である。燃料電池44は、停電の発生を検知した場合、連系運転から自立運転へと運転を切り換える。自立運転時には、燃料電池44は、系統電源Kから独立した状態で、一定量の発電電力を出力することができる。なお、自立運転時には、燃料電池44は、連系運転時の第七配電線L7とは異なる配電線(以下では「第八配電線L8」と称する)へ発電電力を出力する。燃料電池44は、停電の終了(通常状態の復帰)を検知した場合、自立運転から連系運転へと運転を切り換える。また、燃料電池44は、自立運転時に、発電電力として直流電力を出力することができる。
【0049】
なお、第八配電線L8とは、専有部Hの燃料電池44と、共用部Cの蓄電システム36(より詳細には、パワコン36b)と、を互いに接続するものである。第八配電線L8は、共用部Cと各専有部Hとに亘るように設けられる。第八配電線L8は、上述のように、通常時には使用されず、停電時にのみ使用される。
【0050】
専有切換盤45は、専有専用回路41へ供給されてくる電力の供給元を切り換えるものである。具体的には、専有切換盤45は、専有専用回路41へ供給されてくる電力の供給元として、専有部Hの専有分電盤42と、共用部Cの蓄電システム36と、を適宜切り換える。なお以下では、専有切換盤45において、電力の供給元を、専有分電盤42に切り換えた状態を「第三切換状態」と称し、蓄電システム36に切り換えた状態を「第四切換状態」と称する。
【0051】
また、専有切換盤45は、第五配電線L5と第六配電線L6と第四配電線L4との間に設けられる。専有切換盤45は、第三切換状態において、第六配電線L6と第五配電線L5とを接続(電力が流通可能な状態と)する。また、専有切換盤45は、第四切換状態において、第六配電線L6と第四配電線L4(より詳細には、第四配電線L4c)とを接続する。こうして、第四切換状態においては、専有専用回路41と共用部Cの蓄電システム36とが、第六配電線L6、第四配電線L4c及び第四配電線L4bを介して電力が流通可能な状態となる。
【0052】
また、専有切換盤45は、所定の制御装置(例えば、後述するEMS50)により制御されるのではなく、系統電源K等からの電力に応じて(すなわち、停電の有無に応じて)自発的に、切り換えの動作を行う。具体的には、専有切換盤45は、通常時において、第三切換状態となっている。また、専有切換盤45は、停電が発生した場合、第三切換状態から第四切換状態へと状態を切り換える。また、専有切換盤45は、停電が終了(通常状態に復帰)した場合、第四切換状態から第三切換状態へと状態を切り換える。なお、専有切換盤45は、上述の如く自発的に状態を切り換えるのではなく、後述するEMS50からの指示(制御)により状態を切り換えてもよい。
【0053】
図3に示すEMS50は、電力融通システム1の動作を管理するエネルギーマネジメントシステム(Energy Management System)である。EMS50は、売買電メータ20等の各種メータと接続され、マンションM全体の購入電力及び売却電力や、共用部Cの一般回路及び共用専用回路に供給される購入電力、専有部Hの一般回路及び専有専用回路に供給される購入電力を取得することができる。
【0054】
また、EMS50は、共用部Cの蓄電システム36のパワコン36bと接続される。EMS50は、パワコン36bを介して蓄電池36aの充電量を取得することができる。また、EMS50は、共用部Cの共用切換盤37及び専有部Hの専有切換盤45とそれぞれ接続される。EMS50は、共用部Cの共用切換盤37及び専有部Hの専有切換盤45の動作をそれぞれ制御することができる。また、EMS50は、専有部Hの燃料電池44と接続される。EMS50は、燃料電池44の運転状況を取得することができる。また、EMS50は、所定の検知手段により停電の有無を取得することができる。
【0055】
以下では、
図4を用いて、上述の如く構成された電力融通システム1において、通常時である場合の電力の供給態様について説明する。
【0056】
図4は、通常時における電力の供給態様を示したブロック図である。なお、
図4においては、複数の配電線のうち、通常時に使用されない配電線(すなわち、停電時のみ使用される第四配電線L4及び第八配電線L8)を細い破線で示している。
【0057】
電力融通システム1においては、通常時である場合、マンションM内(共用部C及び複数の専有部H)で電力の融通を行うことなく、共用部C及び各専有部Hそれぞれの電力(購入電力や発電電力)を各々の電力負荷へと供給する。
【0058】
まず通常時である場合の、共用部Cの電力の供給態様について説明する。
【0059】
通常時である場合、キュービクル10から供給された電力が、共用一般分電盤31を介して一般回路へと供給される。こうして、共用部Cにおいて、一般負荷である廊下やエレベータホールの電灯を使用することができる。
【0060】
また、共用部Cの共用切換盤37は、第一切換状態(電力の供給元を共用電力分電盤34に切り換えた状態)となっている。すなわち、共用切換盤37により第二配電線L2と第一配電線L1とが接続され、これらの配電線を介して共用電力分電盤34から共用専用回路33へと電力が流通可能な状態となっている。こうして、キュービクル10から供給された電力が、共用電力分電盤34を介して共用専用回路33へと供給される。また必要があれば、蓄電システム36の出力電力(蓄電池36aの放電電力)を、共用電力分電盤34を介して共用専用回路33へ供給することもできる。こうして、共用部Cにおいては、通常時である場合、共用部C自身の購入電力を用いて、共用専用負荷である給水用のポンプC1やエレベータC2等を使用することができる。
【0061】
次に通常時である場合の、専有部Hの電力の供給態様について説明する。
【0062】
通常時である場合、専有部Hの専有切換盤45は、第三切換状態(電力の供給元を専有分電盤42に切り換えた状態)となっている。すなわち、専有切換盤45により第六配電線L6と第五配電線L5とが接続され、これらの配電線を介して専有分電盤42から専有専用回路41へと電力が流通可能な状態となっている。また、専有分電盤42には、前記一般回路も接続されている。こうして、キュービクル10から供給された電力が、専有切換盤45を介して専有専用回路41や前記一般回路へと供給される。
【0063】
また、通常時である場合、燃料電池センサ44aの検出結果に応じて、燃料電池44の電力(発電電力)も専有分電盤42を介して専有専用回路41や前記一般回路へ供給される(
図1の破線参照)。こうして、専有部Hにおいては、通常時である場合、専有部H自身の購入電力や発電電力を用いて、専有専用負荷であるリビングの電灯や冷蔵庫、エアコンや前記一般負荷等を使用することができる。
【0064】
ここで、共用部Cには、専有部Hの燃料電池44のように、自ら電力を発生させる機器(発電装置)が設けられていない。例えば(本発明に係る電力融通システム1が適用されていない)従来のマンションにおいて、このように共用部に発電装置が設けられていない場合、停電が発生した場合(キュービクルから電力が供給されない場合)に、使用できる電力が蓄電システムの充電電力のみとなるため、当該共用部の電力負荷を長期間使用できない、という不都合が生じる。
【0065】
これに対して、本発明に係る電力融通システム1が適用されたマンションMにおいては、停電が発生した場合に、マンションM内(共用部C及び複数の専有部H)で電力の融通を行うことにより、当該共用部Cの電力負荷を長期間使用できるようにしている。
【0066】
以下では、
図5及び
図6を用いて、上述の如く構成された電力融通システム1において、停電時である場合の電力の供給(融通)態様について説明する。
【0067】
図5は、停電時における電力の供給態様を示したブロック図である。なお、
図5においては、複数の配電線のうち、停電時に使用されない配電線(すなわち、通常時のみ使用される、系統電源Kと連系した配電線)を細い破線で示している。また、
図6は、各種機器(燃料電池44及び蓄電システム36)の動作の様子を示したフローチャートである。
【0068】
上述の如く、停電が発生した場合、共用部Cの共用切換盤37及び専有部Hの専有切換盤45は、それぞれ自身の状態を通常時とは異なる状態に切り換える。
【0069】
具体的には、停電が発生した場合、共用部Cの共用切換盤37は、第一切換状態から第二切換状態(電力の供給元を蓄電システム36に切り換えた状態)へ状態を切り換える。すなわち、共用切換盤37により第二配電線L2と第四配電線L4(より詳細には、第四配電線L4a)とが接続され、これらの配電線を介して蓄電システム36から共用専用回路33(ひいては、共用専用負荷)へと電力が流通可能な状態となる。
【0070】
また、停電が発生した場合、専有部Hの専有切換盤45は、第三切換状態から第四切換状態(電力の供給元を蓄電システム36に切り換えた状態)へ状態を切り換える。すなわち、専有切換盤45により第六配電線L6と第四配電線L4(より詳細には、第四配電線L4c)とが接続され、これらの配電線を介して蓄電システム36から専有専用回路41(ひいては、専有専用負荷)へと(すなわち、共用部Cから専有部Hに亘るように)電力が流通可能な状態となる。
【0071】
このように、停電が発生した場合、共用部Cの共用切換盤37及び専有部Hの専有切換盤45がそれぞれ状態を切り換えることにより、共用部Cの共用専用回路33及び専有部Hの専有専用回路41の電力の供給元は、共用部Cにある同一の機器(蓄電システム36)となる。
【0072】
また、停電が発生した場合、共用部Cの蓄電システム36及び専有部Hの燃料電池44は、それぞれ自立運転を開始する(
図6のステップS13、ステップS14)。
【0073】
共用部Cの蓄電システム36が自立運転を開始すると、蓄電池36aの放電電力が第四配電線L4に出力される。こうして、蓄電システム36の出力電力が、共用切換盤37を介して共用専用回路33に供給される。すなわち、蓄電システム36の出力電力を用いて、共用専用負荷である給水用のポンプC1やエレベータC2等を使用することができる。また、蓄電システム36の出力電力は、第四配電線L4(第四配電線L4b及び第四配電線L4c)により専有部Hへと流通し、専有切換盤45を介して専有専用回路41に供給される。
【0074】
この際、蓄電システム36の出力電力は、トランス38により単相2線式(100V)に変換される(
図6のステップS15)。こうして、専有部Hにおいては、蓄電システム36の出力電力を用いて、専有専用負荷であるリビングの電灯や冷蔵庫を使用することができる。
【0075】
また、専有部Hの燃料電池44が自立運転を開始すると、当該燃料電池44の(自立運転時の)発電電力が第八配電線L8に出力される。こうして、燃料電池44の発電電力が、第八配電線L8により共用部Cへと流通し、蓄電システム36に供給される。蓄電システム36は、燃料電池44の発電電力を蓄電池36aに充電することができる。また、蓄電システム36は、燃料電池44の発電電力を蓄電池36aに充電しながら、放電電力を出力し、出力電力を共用専用回路33や専有専用回路41(専有部H)へ供給することもできる(
図6のステップS16)。
【0076】
また、蓄電システム36においては、満充電である場合、第八配電線L8を介して供給された燃料電池44の発電電力を、バイパスして(すなわち、蓄電池36aに充電させることなく)第四配電線L4に出力することもできる。こうして、蓄電システム36が満充電である場合には、蓄電システム36に供給された燃料電池44の発電電力は、蓄電システム36で使用(充電)することなく、専有部Hに戻すこともできる。
【0077】
このように、電力融通システム1においては、共用部Cに例えば太陽光発電部のような発電装置を備えていなくとも、専有部Hの電力を融通することにより、停電時に当該共用部Cの共用専用負荷を長期間使用することができる。
【0078】
以下では、本発明の第二実施形態に係る電力融通システム1について説明する。
【0079】
第二実施形態に係る電力融通システム1において、第一実施形態に係る電力融通システム1と異なる点は、専有部Hの専有専用回路が複数(本実施形態においては、2つ)設けられる点と、専有部Hの専有切換盤45の動作をEMS50が制御する点である。以下では、
図7及び
図8を用いて、これらの異なる点について主に説明し、第一実施形態に係る電力融通システム1と同一の構成については説明を省略する。
【0080】
図7は、第二実施形態に係る電力融通システム1の構成において、停電時における電力の供給(融通)態様の一例を示したブロック図である。
図7においては、
図5と同様に、複数の配電線のうち、停電時に使用されない配電線を細い破線で示している。なお、
図7においては、一例として後述するステップS29の処理が実行された場合の、電力の供給(融通)態様を示している。
【0081】
専有部Hの前記各種機器には、第一実施形態に係る電力融通システム1の専有専用回路41の変わりに、第一専有専用回路41a及び第二専有専用回路41bが含まれる。
【0082】
第一専有専用回路41a及び第二専有専用回路41bは、専有部Hの電力負荷のうち、通常時(非停電時)だけではなく停電時にも使用する電力負荷が接続される回路である。また、第一専有専用回路41aは、停電時において、第二専有専用回路41bよりも使用する優先度が比較的高い電力負荷が接続される。第一専有専用回路41aは、第六配電線L6を介して専有切換盤45と接続される。また、第二専有専用回路41bは、第九配電線L9を介して専有切換盤45と接続される。
【0083】
専有切換盤45は、第五配電線L5と第六配電線L6と第四配電線L4と第九配電線L9との間に設けられる。専有切換盤45は、第三切換状態において、第六配電線L6と第五配電線L5とを接続(電力が流通可能な状態と)する。
【0084】
また、専有切換盤45は、第四切換状態において、第四配電線L4と第六配電線L6とを接続するか、又は、第四配電線L4と第六配電線L6及び第九配電線L9の両方とを接続する。専有切換盤45が接続する配電線はEMS50により決定され、当該専有切換盤45の動作が当該EMS50により制御される。こうして、第四切換状態においては、共用部Cの蓄電システム36が、第一専有専用回路41aと、又は、第一専有専用回路41a及び第二専有専用回路41bの両方と、所定の配電線を介して電力を流通可能な状態となる。
【0085】
次に、
図8のフローチャートを用いて、EMS50により実行される専有切換盤45の制御について説明する。
【0086】
図8は、EMS50による制御及び各種機器の動作の様子を示したフローチャートである。EMS50による制御は、所定の間隔(例えば、1分間隔)で実行される。なお以下の説明では、
図6のフローチャートと同様の箇所についての説明を省略し、異なる箇所についての説明を行う。具体的には、EMS50による制御では、
図6のステップS13の前に、ステップS21及びステップS22の処理を実行する。また、
図6のステップS16の後に、ステップS27~ステップS29の処理を実行する。
【0087】
ステップS21において、EMS50は、停電が発生したか否かを判定する。EMS50は、停電が発生していないと判断した場合(ステップS21でNO)、フローから一旦抜ける。一方、EMS50は、停電が発生していると判断した場合(ステップS21でYES)、ステップS22へ移行する。
【0088】
ステップS22において、EMS50は、燃料電池44が自立運転時の発電電力(直流電力)を出力しているか否かを判定する。EMS50は、燃料電池44が直流電力を出力していないと判断した場合(ステップS22でNO)、フローから一旦抜ける。一方、EMS50は、燃料電池44が直流電力を出力していると判断した場合(ステップS22でYES)、ステップS13へ移行する。
【0089】
その後、蓄電システム36が燃料電池44の発電電力を蓄電池36aに充電しながら放電電力を出力し、当該出力電力が専有部Hへ供給されると(ステップS16)、EMS50は、ステップS27の処理を実行する。
【0090】
すなわち、ステップS27において、EMS50は、蓄電システム36の蓄電池36aが満充電であるか否かを判定する。EMS50は、蓄電システム36の蓄電池36aが満充電ではないと判断した場合(ステップS27でNO)、ステップS28へ移行する。一方、EMS50は、蓄電システム36の蓄電池36aが満充電であると判断した場合(ステップS27でYES)、ステップS29へ移行する。
【0091】
ステップS28において、EMS50は、専有切換盤45の動作を制御することにより、第六配電線L6と第四配電線L4とを接続する。こうして、共用部Cの蓄電システム36が、専有切換盤45を介して第一専有専用回路41aと電力を流通可能な状態となる。EMS50は、ステップS28の後、フローから一旦抜ける。
【0092】
また、ステップS29において、EMS50は、専有切換盤45の動作を制御することにより、第四配電線L4と第六配電線L6及び第九配電線L9の両方とを接続する。こうして、共用部Cの蓄電システム36が、専有切換盤45を介して第一専有専用回路41a及び第二専有専用回路41bの両方と電力を流通可能な状態となる。EMS50は、ステップS29の後、フローから一旦抜ける。
【0093】
このような制御により、蓄電システム36の蓄電池36aが満充電ではない場合、すなわち共用部Cで電力がそれほど余剰していない場合には、専有部Hの専用回路(第一専有専用回路41a及び第二専有専用回路41b)のうち、第一専有専用回路41aだけに電力を供給する。これにより、共用部Cで電力がそれほど余剰していない場合であっても、専有専用負荷のうち少なくとも優先度が比較的高い専有専用負荷だけでも使用することができる。
【0094】
また、蓄電システム36の蓄電池36aが満充電である場合、すなわち共用部Cで電力が余剰している場合には、専有部Hの第一専有専用回路41a及び第二専有専用回路41bの両方に電力を供給する。これにより、共用部Cで電力が余剰している場合に、専有部Hで使用する専有専用負荷を増やすことができる。
【0095】
なお上述の如く、第二実施形態に係る電力融通システム1においては、2つの専有専用回路(第一専有専用回路41a及び第二専有専用回路41b)を設ける構成としたが、これに限定されない。すなわち、3つ以上の専有専用回路を設ける構成とし、これらの専有専用回路のうち、何れの専有専用回路が蓄電システム36と接続されるのかを、共用部Cにおける電力の余剰の程度や、専有専用回路に設定された優先度に応じて適宜切り換える構成とすることができる。
【0096】
以上の如く、本発明の一実施形態に係る電力融通システム1においては、
共用部C及び専有部Hを有する施設において、
前記共用部Cに設けられ、電力を充放電可能な蓄電システム36と、
前記共用部Cに設けられ、前記共用部Cの電力負荷へと供給される電力の供給元を、系統電源Kと接続された共用電力分電盤34(共用分電盤)、又は、前記蓄電システム36に、停電の有無に応じて切り換え可能な共用切換盤37と、
前記専有部Hに設けられ、燃料を用いて発電可能であって、非停電時に発電電力を前記専有部Hに設けられた専有分電盤42に供給すると共に、停電時に発電電力を前記蓄電システム36に供給する燃料電池44と、を具備するものである。
【0097】
このような構成により、共用部Cに例えば太陽光発電部のような発電装置を備えていなくとも、専有部Hの電力を融通することにより、停電時に当該共用部Cの共用専用負荷を長期間使用することができる。
【0098】
また、電力融通システム1においては、
前記専有部Hに設けられ、前記専有部Hの電力負荷へと供給される電力の供給元を、系統電源Kと接続された前記専有分電盤42、又は、前記蓄電システム36に、停電の有無に応じて切り換え可能な専有切換盤45を具備するものである。
【0099】
このような構成により、専有部Hの電力を共用部Cに融通したとしても、専有部Hの専有専用負荷を使用することができる。
【0100】
また、(第二実施形態に係る)電力融通システム1において、
前記専有切換盤45は、前記専有部Hの複数の電力負荷(専有専用負荷)と当該専有部Hの電力の供給元とを任意に接続可能に構成され、
停電時に、前記蓄電システム36の充電量に応じて、前記複数のうち所定数の電力負荷(専有専用負荷)と前記専有部Hの電力の供給元とを接続するものである。
【0101】
このような構成により、例えば共用部Cでの電力の余剰の程度に応じて、専有部Hの専有専用負荷へ電力を供給する(使用可能な専有専用負荷を増やす)ことができる。
【0102】
また、電力融通システム1において、
前記蓄電システム36から前記専有部Hの電力負荷へ供給される電力を変換可能なトランス38(変換部)を具備するものである。
【0103】
このような構成により、トランス38を介して供給された蓄電システム36の出力電力を、各専有部Hで使用することができる。
【0104】
また、電力融通システム1において、
前記専有部Hは複数設けられるものである。
【0105】
このような構成により、共用部Cで使用可能な電力を増加させることができる。
【0106】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0107】
例えば、電力融通システム1が適用される施設をマンションとしたが、これに限定されるものではない。オフィスビルや商業施設等、共用部及び専有部を有する施設であればよい。
【0108】
また、本実施形態において、燃料電池44は、固体高分子形燃料電池(PEFC)であるとしたが、これに限定するものではなく、例えば固体酸化物形燃料電池(SOFC : Solid Oxide Fuel Cell)等、種々の方式のものを用いることができる。
【0109】
また、本実施形態において、燃料電池44は、自立運転時に発電電力として直流電力を出力するとしたが、これに限定するものではない。すなわち、燃料電池44は、自立運転時に発電電力として交流電力を出力し、別途設けられた所定の変換部により直流電力に変更されるものでもよい。
【符号の説明】
【0110】
1 電力融通システム
34 共用電力分電盤
36 蓄電システム
37 共用切換盤
42 専有分電盤
44 燃料電池
C 共用部
H 専有部