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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153785
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】燃料電池システム及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20221005BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20221005BHJP
   H01M 8/249 20160101ALI20221005BHJP
   H01M 8/04225 20160101ALI20221005BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20221005BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20221005BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20221005BHJP
   H01M 8/04664 20160101ALI20221005BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20221005BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20221005BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20221005BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/00 A
H01M8/249
H01M8/04 J
H01M8/04225
H01M8/04302
H01M8/04858
H01M8/04746
H01M8/04664
H01M8/04313
H01M8/04537
H01M8/10 101
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056484
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】山野 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】野村 正
(72)【発明者】
【氏名】柳浦 貴志
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB14
5H127AB17
5H127AC07
5H127BA02
5H127BA22
5H127BB02
5H127BB37
5H127DA01
5H127DC02
5H127DC22
5H127DC47
5H127DC96
(57)【要約】
【課題】システムを迅速に始動できると共に、システムの構成を簡素化でき、低コスト化が可能な燃料電池システムを提供すること。
【解決手段】複数の燃料電池スタックと、燃料電池スタックの各々に酸化剤ガスを分配して供給する酸化剤ガス流路と、各燃料電池スタックに設けられた送気手段と、を有する第1電力供給システムを備え、複数の燃料電池スタックのうち、少なくとも酸化剤ガス流路と最も上流側で接続される燃料電池スタックには、送気手段にバッテリが電気的に接続される、燃料電池システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックの各々に酸化剤ガスを分配して供給する酸化剤ガス流路と、各燃料電池スタックに設けられた送気手段と、を有する第1電力供給システムを備え、
複数の前記燃料電池スタックのうち、少なくとも前記酸化剤ガス流路と最も上流側で接続される燃料電池スタックには、前記送気手段にバッテリが電気的に接続される、燃料電池システム。
【請求項2】
前記第1電力供給システムと同様の構成を有する第2電力供給システムをさらに備え、
前記バッテリは、前記第2電力供給システムを構成する複数の前記燃料電池スタックのうち、少なくとも前記酸化剤ガス流路と最も上流側で接続される燃料電池スタックの前記送気手段と電気的に接続される、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料電池スタックの各々に水素ガスを供給する水素ガス流路をさらに備え、
前記酸化剤ガス流路と最も上流側で接続される燃料電池スタックは、前記水素ガス流路と最も上流側で接続される燃料電池スタックであり、
前記水素ガス流路と最も上流側で接続される燃料電池スタックと他の燃料電池スタックとの間には、前記水素ガス流路を開放及び閉塞可能な第1開閉弁が設けられる、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記第1電力供給システムと同様の構成を有する第2電力供給システムをさらに備え、
前記水素ガス流路には、前記水素ガスを前記第1電力供給システムと前記第2電力供給システムとに分配する分配部が設けられ、
前記水素ガス流路における前記分配部の下流側、かつ前記第2電力供給システムの前記水素ガス流路と最も上流側で接続される燃料電池スタックの上流側には、前記水素ガス流路を開放及び閉塞可能な第2開閉弁が設けられる、請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記第1電力供給システムと同様の構成を有する第2電力供給システムをさらに備え、
前記第1電力供給システムにおける前記水素ガス流路の最も上流側に位置する燃料電池スタックと他の燃料電池スタックとの間、及び前記第2電力供給システムにおける前記水素ガス流路の最も上流側に位置する燃料電池スタックと他の燃料電池スタックとの間には、前記水素ガス流路を開放及び閉塞可能な第1開閉弁が設けられる、請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1又は2の燃料電池システムを用いた運転方法であって、
前記バッテリを用いて前記酸化剤ガス流路と最も上流側で接続される燃料電池スタックを起動するとともに、
該燃料電池スタックの発電により得られた電力を、前記燃料電池システムの他の燃料電池スタックの前記送気手段に供給して、前記他の燃料電池スタックを起動させる、燃料電池システムの運転方法。
【請求項7】
請求項2の燃料電池システムを用いた運転方法であって、
前記バッテリを用いて、前記第1電力供給システムにおける前記酸化剤ガス流路と最も上流側で接続される燃料電池スタックを起動するとともに、該燃料電池スタックの発電により得られた電力を、前記第2電力供給システムを構成する燃料電池スタックのうち、前記酸化剤ガス流路と最も上流側で接続される他の燃料電池スタックの送気手段に供給して、前記他の燃料電池スタックを起動させる、燃料電池システムの運転方法。
【請求項8】
請求項1又は2の燃料電池システムを用いた運転方法であって、
各燃料電池スタックの劣化度情報及び/又は稼働履歴を含む燃料電池スタック情報を取得するスタック情報取得手段を有し、
前記バッテリは少なくとも2以上の燃料電池スタックに設けられた前記送気手段と電気的に接続されるとともに、前記スタック情報取得手段により取得した前記劣化度情報及び/又は前記稼働履歴に基づいて、前記バッテリから電力供給を行う燃料電池スタックを決定する、燃料電池システムの運転方法。
【請求項9】
請求項3の燃料電池システムを用いた運転方法であって、
前記酸化剤ガス流路と最も上流側で接続される燃料電池スタックの起動準備完了情報を取得する起動準備情報取得手段を有し、
前記起動準備完了情報を取得することで、前記第1開閉弁は、前記水素ガス流路の閉塞状態から開放状態へと切り替えられる、燃料電池システムの運転方法。
【請求項10】
請求項3の燃料電池システムを用いた運転方法であって、
前記酸化剤ガス流路と最も上流側で接続される燃料電池スタックの発電量を取得する発電量取得手段を有し、
前記発電量が所定の条件を満たした場合に、前記第1開閉弁は、前記水素ガス流路の閉塞状態から開放状態へと切り替えられる、燃料電池システムの運転方法。
【請求項11】
請求項4の燃料電池システムを用いた運転方法であって、
前記第1電力供給システムの起動準備完了情報を取得する起動準備情報取得手段を有し、
前記起動準備完了情報を取得することで、前記第2開閉弁は、前記水素ガス流路の閉塞状態から開放状態へと切り替えられる、燃料電池システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池を用いた燃料電池システムが知られている。燃料電池システムは、例えば、数十個から数百個のセルが積層されたスタック構造を有する燃料電池スタックにより構成される。燃料電池スタックのアノード電極に反応ガスとしての水素ガスを供給し、カソード電極に反応ガスとしての酸素を含む空気を供給すると、電気化学反応により発電が行われる。
【0003】
燃料電池システムを例えば非常用の発電システムとして用いる場合、システムが迅速に始動することが要求される。燃料電池システムの始動性に関する技術として、例えば、大小異なる容量の複数の燃料電池を備える燃料電池発電装置において、小容量の燃料電池に水素を燃焼させる燃焼器を設け、燃焼ガスを利用して暖機運転を行い、低温始動時におけるシステムの起動時間を短縮させた技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-39524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術は、暖機運転のための燃焼器を必要とするため、システムの構成が複雑になる。また、複数の燃料電池により燃料電池システムを構成する場合、異なる容量を有する燃料電池により燃料電池システムを構成することは、必ずしもニーズに沿っていない場合がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、システムを迅速に始動できると共に、システムの構成を簡素化でき、低コスト化が可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明は、複数の燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックの各々に酸化剤ガスを分配して供給する酸化剤ガス流路と、各燃料電池スタックに設けられた送気手段と、を有する第1電力供給システムを備え、複数の前記燃料電池スタックのうち、少なくとも前記酸化剤ガス流路と最も上流側で接続される燃料電池スタックには、前記送気手段にバッテリが電気的に接続される、燃料電池システムに関する。
【0008】
(1)の発明によれば、システムを迅速に始動できると共に、システムの構成を簡素化でき、低コスト化が可能な燃料電池システムを提供できる。
【0009】
(2) 前記第1電力供給システムと同様の構成を有する第2電力供給システムをさらに備え、前記バッテリは、前記第2電力供給システムを構成する複数の前記燃料電池スタックのうち、少なくとも前記酸化剤ガス流路と最も上流側で接続される燃料電池スタックの前記送気手段と電気的に接続される、(1)に記載の燃料電池システム。
【0010】
(2)の発明によれば、複数の電力供給システムを単一のバッテリで始動でき、システムの構成を簡素化できる。
【0011】
(3) 前記燃料電池スタックの各々に水素ガスを供給する水素ガス流路をさらに備え、前記酸化剤ガス流路と最も上流側で接続される燃料電池スタックは、前記水素ガス流路と最も上流側で接続される燃料電池スタックであり、前記水素ガス流路と最も上流側で接続される燃料電池スタックと他の燃料電池スタックとの間には、前記水素ガス流路を開放及び閉塞可能な第1開閉弁が設けられる、(1)に記載の燃料電池システム。
【0012】
(3)の発明によれば、より迅速に燃料電池システムを起動できる。
【0013】
(4) 前記第1電力供給システムと同様の構成を有する第2電力供給システムをさらに備え、前記水素ガス流路には、前記水素ガスを前記第1電力供給システムと前記第2電力供給システムとに分配する分配部が設けられ、前記水素ガス流路における前記分配部の下流側、かつ前記第2電力供給システムの前記水素ガス流路と最も上流側で接続される燃料電池スタックの上流側には、前記水素ガス流路を開放及び閉塞可能な第2開閉弁が設けられる、(3)に記載の燃料電池システム。
【0014】
(4)の発明によれば、より迅速に燃料電池システムを起動できる。
【0015】
(5) 前記第1電力供給システムと同様の構成を有する第2電力供給システムをさらに備え、前記第1電力供給システムにおける前記水素ガス流路の最も上流側に位置する燃料電池スタックと他の燃料電池スタックとの間、及び前記第2電力供給システムにおける前記水素ガス流路の最も上流側に位置する燃料電池スタックと他の燃料電池スタックとの間には、前記水素ガス流路を開放及び閉塞可能な第1開閉弁が設けられる、(3)に記載の燃料電池システム。
【0016】
(5)の発明によれば、より迅速に燃料電池システムを起動できる。
【0017】
(6) (1)又は(2)の燃料電池システムを用いた運転方法であって、前記バッテリを用いて前記酸化剤ガス流路と最も上流側で接続される燃料電池スタックを起動するとともに、該燃料電池スタックの発電により得られた電力を、前記燃料電池システムの他の燃料電池スタックの前記送気手段に供給して、前記他の燃料電池スタックを起動させる、燃料電池システムの運転方法。
【0018】
(6)の発明によれば、燃料電池システムの構成を簡素化できる。
【0019】
(7) (2)の燃料電池システムを用いた運転方法であって、前記バッテリを用いて、前記第1電力供給システムにおける前記酸化剤ガス流路と最も上流側で接続される燃料電池スタックを起動するとともに、該燃料電池スタックの発電により得られた電力を、前記第2電力供給システムを構成する燃料電池スタックのうち、前記酸化剤ガス流路と最も上流側で接続される他の燃料電池スタックの送気手段に供給して、前記他の燃料電池スタックを起動させる、燃料電池システムの運転方法。
【0020】
(7)の発明によれば、複数の電力供給システムを単一のバッテリで始動でき、システムの構成を簡素化できる。
【0021】
(8) (1)又は(2)の燃料電池システムを用いた運転方法であって、各燃料電池スタックの劣化度情報及び/又は稼働履歴を含む燃料電池スタック情報を取得するスタック情報取得手段を有し、前記バッテリは少なくとも2以上の燃料電池スタックに設けられた前記送気手段と電気的に接続されるとともに、前記スタック情報取得手段により取得した前記劣化度情報及び/又は前記稼働履歴に基づいて、前記バッテリから電力供給を行う燃料電池スタックを決定する、燃料電池システムの運転方法。
【0022】
(8)の発明によれば、燃料電池システムの劣化状態を均一化し、燃料電池システムの耐久性を向上できる。また、燃料電池システムを迅速に起動させることができる。
【0023】
(9) (3)の燃料電池システムを用いた運転方法であって、前記酸化剤ガス流路と最も上流側で接続される燃料電池スタックの起動準備完了情報を取得する起動準備情報取得手段を有し、前記起動準備完了情報を取得することで、前記第1開閉弁は、前記水素ガス流路の閉塞状態から開放状態へと切り替えられる、燃料電池システムの運転方法。
【0024】
(9)の発明によれば、1つの燃料電池スタックを起動した後に、他の燃料電池スタックを迅速に起動させることができる。
【0025】
(10) (3)の燃料電池システムを用いた運転方法であって、前記酸化剤ガス流路と最も上流側で接続される燃料電池スタックの発電量を取得する発電量取得手段を有し、前記発電量が所定の条件を満たした場合に、前記第1開閉弁は、前記水素ガス流路の閉塞状態から開放状態へと切り替えられる、燃料電池システムの運転方法。
【0026】
(10)の発明によれば、1つの燃料電池スタックを起動した後に、他の燃料電池スタックを迅速に起動させることができる。
【0027】
(11) (4)の燃料電池システムを用いた運転方法であって、前記第1電力供給システムの起動準備完了情報を取得する起動準備情報取得手段を有し、前記起動準備完了情報を取得することで、前記第2開閉弁は、前記水素ガス流路の閉塞状態から開放状態へと切り替えられる、燃料電池システムの運転方法。
【0028】
(11)の発明によれば、より迅速に燃料電池システムを起動でき、1つの燃料電池スタックを起動した後に、他の燃料電池スタックを迅速に起動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1実施形態に係る燃料電池システムの構成を示す図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る燃料電池システムの構成を示す図である。
図3】本発明の第3実施形態に係る燃料電池システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0031】
《第1実施形態》
<燃料電池システム>
図1は、本実施形態に係る燃料電池システムの構成を模式的に示す図である。本実施形態に係る燃料電池システム1は、第1電力供給システムG1と、第2電力供給システムG2と、蓄圧水素タンク3と、により構成される。燃料電池システム1を構成する電力供給システムの数は、特に限定されず、3つ以上の電力供給システムであってもよい。
【0032】
(第1電力供給システム、第2電力供給システム)
[燃料電池スタック]
第1電力供給システムG1及び第2電力供給システムG2は、それぞれ複数の燃料電池スタックS1~S5、及びS6~S10を有して構成される。各電力供給システムを構成する燃料電池スタックの数は、上記に特に限定されない。各燃料電池スタックの構成は、特に限定されないが、例えば、数十個から数百個のセルが積層されたスタック構造を有する。各燃料電池セルは、膜電極構造体(MEA)をセパレータで挟持して構成される。膜電極構造体は、例えば、アノード電極(陰極)及びカソード電極(陽極)の2つの電極と、これら電極に挟持された固体高分子電解質膜とで構成される。アノード電極側に形成されたアノード流路に水素ガスが供給され、カソード電極側に形成されたカソード流路に酸化剤ガスとしての酸素を含んだ空気が供給されると、これらの電気化学反応により発電する。発電された電力は、外部負荷Oに対して出力される。
【0033】
[酸化剤ガス流路]
第1電力供給システムG1及び第2電力供給システムG2は、各電力供給システムを構成する複数の燃料電池スタックに対して酸化剤ガスを分配して供給する酸化剤ガス流路である、供給管路L11及びL21、並びに酸化剤ガスが排出される排出管路L12及びL22を有する。本実施形態において、供給管路L11及びL21、並びに排出管路L12及びL22は、それぞれ独立した流路である。上記供給管路及び排出管路は、図1に示すように、それぞれ複数の燃料電池スタックに連通する流路が統合されたトーナメント構造を有する。酸化剤ガスは、各燃料電池スタックに設けられる送気手段であるエアポンプ(AP)により、供給管路L11及びL21を通じて、各燃料電池スタックに供給される。各燃料電池スタック内で電気化学反応に用いられた酸化剤ガスは、排出管路L12及びL22を通じて、外部に排出される。供給管路L11及びL21の上流側には、空気浄化装置11及び21が設けられていてもよい。
【0034】
第1電力供給システムG1を構成する複数の燃料電池スタックのうち、少なくとも、酸化剤ガス流路である供給管路L11と最も上流側で接続される燃料電池スタックS1のエアポンプ12には、バッテリとしてのIPU10が電気的に接続される。IPU10とエアポンプ12との間に設けられるスイッチSW1を動作させることで、IPU10からエアポンプ12に対して電力を供給できる。これにより、IPU10を、酸化剤ガスが最も早く流れてくる燃料電池スタックS1のエアポンプ12に対して電力を供給可能に構成することで、燃料電池システム1を迅速に起動できる。IPU10又は燃料電池スタックS1は、図1に示すように、第2電力供給システムG2を構成する複数の燃料電池スタックのうち、酸化剤ガス流路である供給管路L21と最も上流側で接続される燃料電池スタックS6のエアポンプに対しても、スイッチSW2を介して電力を供給可能であってもよい。これにより、IPU10又は燃料電池スタックS1で発電された電力を用いて、第2電力供給システムG2を起動させることができる。
【0035】
燃料電池スタックS1と、第1電力供給システムG1を構成する他の燃料電池スタックS2~S5及びこれに備えられるエアポンプとは、図1中に破線で示す電気回路E1により電気的に接続されている。これにより、燃料電池スタックS1により発電された電力を、他の燃料電池スタックに備えられるエアポンプに対して供給できる。これにより、各燃料電池スタック毎にIPUを設ける必要がなくなるので、システムの構成を簡素化できる。同様に、燃料電池スタックS6と、第2電力供給システムG2を構成する他の燃料電池スタックS7~S10及びこれに備えられるエアポンプとは、電気的に接続されていてもよい。
【0036】
第1電力供給システムG1を構成する燃料電池スタックS1~S5と、第2電力供給システムG2を構成する燃料電池スタックS6~S10及びこれに備えられるエアポンプとは、図1に示すように、スイッチSW3を介して電気的に接続されていてもよい。これにより、第1電力供給システムG1を構成する各燃料電池スタックを起動させた後に、第2電力供給システムG2を構成する各燃料電池スタックを起動するといった運転方法が可能となる。
【0037】
[水素ガス流路]
第1電力供給システムG1及び第2電力供給システムG2は、各電力供給システムを構成する複数の燃料電池スタックに対して水素ガスを分配して供給する水素ガス流路L3を有する。本実施形態において、水素ガス流路L3は、分配部Cを有し、第1電力供給システムG1及び第2電力供給システムG2に対して水素ガスを供給する共通の流路である。水素ガス流路L3は、図1に示すように、それぞれ複数の燃料電池スタックに連通する流路が統合されたトーナメント構造を有する。水素ガス流路L3の上流側には、蓄圧水素タンク3が接続されている。各燃料電池スタックに対して、蓄圧水素タンク3から供給される水素ガスは、各燃料電池スタックに設けられるポンプ13により各燃料電池スタックに供給される。
【0038】
第1電力供給システムG1を構成する複数の燃料電池スタックのうち、酸化剤ガス流路である供給管路L11と最も上流側で接続される燃料電池スタックS1は、水素ガス流路L3と最も上流側で接続される燃料電池スタックでもあることが好ましい。即ち、第1電力供給システムG1を構成する複数の燃料電池スタックの1つである、燃料電池スタックS1に対して酸化剤ガス及び水素ガスが最も早く供給されることが好ましい。
【0039】
燃料電池システム1は、上記以外に、各燃料電池スタックの劣化度情報及び/又は稼働履歴を含む燃料電池スタック情報を取得するスタック情報取得手段を有していてもよい。また、燃料電池システム1は、酸化剤ガス流路と最も上流側で接続される燃料電池スタックS1の起動準備完了情報を取得する起動準備情報取得手段を有していてもよい。起動準備完了情報は、例えば、燃料電池スタックに水素濃度センサを設け、燃料電池セル内の水素濃度を測定又は推定することにより得られる。また、燃料電池システム1は、燃料電池スタックS1の発電量を取得する発電量取得手段を有していてもよい。
【0040】
<燃料電池システムの運転方法>
燃料電池システム1の運転方法は、燃料電池スタックS1のエアポンプ12に対してIPU10から電力を供給し、燃料電池スタックS1内に酸化剤ガスを供給すると共に、水素ガス流路L3を介して燃料電池スタックS1内に水素ガスを供給し、燃料電池スタックS1を優先的かつ迅速に起動させる。次に、燃料電池スタックS1の発電により得られた電力を、他の燃料電池スタックS2~S5のエアポンプに供給して、他の燃料電池スタックS2~S5を起動させる。これにより、燃料電池システム1を迅速に起動させ、その後は必要な電力に応じて起動させる燃料電池スタック数を決定できる。
【0041】
燃料電池システム1の運転方法は、燃料電池スタックS1を起動させた後に、燃料電池スタックS1の発電により得られた電力を、第2電力供給システムG2を構成する複数の燃料電池スタックのうち、酸化剤ガス流路である供給管路L21と最も上流側で接続される燃料電池スタックS6のエアポンプに対して供給し、燃料電池スタックS6を起動させてもよい。また、燃料電池スタックS6を起動させた後に、燃料電池スタックS6の発電により得られた電力を、第2電力供給システムG2を構成する他の燃料電池スタックS7~S10のエアポンプに対して供給して、他の燃料電池スタックS7~S10を起動させてもよい。若しくは、第1電力供給システムG1を起動させた後に、第1電力供給システムの発電により得られた電力を用いて、第2電力供給システムG2を構成する各燃料電池スタックを起動させてもよい。これにより、必要な電力に応じて起動させる燃料電池スタック数を決定できる。
【0042】
《第2実施形態》
<燃料電池システム>
次に、第2実施形態に係る燃料電池システム1aについて、燃料電池システム1aの構成を模式的に示した図2を用いて説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同様の構成については、図面に同じ符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0043】
[バッテリ(IPU)]
図2に示すように、第1電力供給システムG1を構成する複数の燃料電池スタックS1~S5、及び第2電力供給システムG2を構成する複数の燃料電池スタックS6~S10のエアポンプには、バッテリとしてのIPU10aがそれぞれ電気的に接続される。IPU10aは、2以上の上記エアポンプと接続されていればよいが、全ての燃料電池スタックのエアポンプと接続されることが好ましい。IPU10aと各エアポンプとの間に設けられるスイッチSWを動作させることで、IPU10aから各エアポンプに対して電力を供給できる。燃料電池システム1aは、各燃料電池スタックの劣化度情報及び/又は稼働履歴を含む燃料電池スタック情報を取得するスタック情報取得手段(図示せず)を有することが好ましい。
【0044】
<燃料電池システムの運転方法>
燃料電池システム1aの運転方法は、スタック情報取得手段により取得した劣化度情報及び/又は稼働履歴に基づいて、IPU10aから電力供給を行う燃料電池スタックの優先順位を決定する。具体的には、例えば、記憶装置に予め記憶されている各燃料電池スタックの総発電時間に基づいて、各燃料電池スタックの劣化度及び/又は稼働履歴を比較し、最も劣化度合いが低い燃料電池スタックから順に、IPU10aから電力供給を行う燃料電池スタックの優先順位を決定する。これにより、各燃料電池スタックの劣化度合いを均一化させることができるので、燃料電池システム1の耐久性を向上できる。上記以外に、最も劣化度合いが低い燃料電池スタックをIPU10aから電力供給を行う最も優先順位の高い燃料電池スタックとしてもよい。これにより、燃料電池システム1の起動時間を最短とすることができる。
【0045】
《第3実施形態》
<燃料電池システム>
次に、第3実施形態に係る燃料電池システム1bについて、燃料電池システム1bの構成を模式的に示した図3を用いて説明する。
【0046】
[水素ガス流路]
本実施形態に係る水素ガス流路L3は、第1電力供給システムG1における水素ガス流路L3と最も上流側で接続される燃料電池スタックS1と、他の燃料電池スタックS2~S5との間に、水素ガス流路L3を開放及び閉塞可能な第1開閉弁V1が設けられる。同様に、第2電力供給システムG2における水素ガス流路L3と最も上流側で接続される燃料電池スタックS6と、他の燃料電池スタックS7~S10との間に、水素ガス流路L3を開放及び閉塞可能な第1開閉弁V2が設けられる。
【0047】
本実施形態に係る水素ガス流路L3は、上記に加えて、水素ガス流路L3における分配部Cの下流側、かつ第2電力供給システムG2の水素ガス流路L3と最も上流側で接続される燃料電池スタックS6の上流側に、水素ガス流路L3を開放及び閉塞可能な第2開閉弁V3が設けられる。
【0048】
本実施形態に係る第1開閉弁V1及びV2、並びに第2開閉弁V3の構成は、水素ガス流路L3だけでなく、酸化剤流路である供給管路L11及びL21、並びに燃料電池スタックを冷却する冷媒が流通する冷媒流路に対しても、同様の第1開閉弁、第2開閉弁の構成を適用できる。上記酸化剤流路及び冷媒流路は、水素ガス流路L3と同様に、複数の燃料電池スタックに連通する流路が統合されたトーナメント構造を有する。
【0049】
燃料電池システム1bは、酸化剤ガス流路と最も上流側で接続される燃料電池スタックS1の起動準備完了情報を取得する起動準備情報取得手段(図示せず)、及び燃料電池スタックS1の発電量を取得する発電量取得手段(図示せず)のうち、少なくともいずれかを有していることが好ましい。
【0050】
<燃料電池システムの運転方法>
燃料電池システム1bの運転方法は、燃料電池スタックS1のエアポンプ12に対してIPU10から電力を供給し、燃料電池スタックS1内に酸化剤ガスを供給すると共に、第1開閉弁V1及びV2、並びに第2開閉弁V3を閉塞した状態で、水素ガス流路L3を介して燃料電池スタックS1内に水素ガスを供給し、燃料電池スタックS1を優先的に起動させる。これにより、他の燃料電池スタックに対する水素ガスの供給が停止されるので、燃料電池スタックS1に通じる水素ガス流路L3により迅速に水素ガスが充填される。従って、燃料電池スタックS1をより迅速に起動することができる。
【0051】
燃料電池システム1bの運転方法は、燃料電池スタックS1を起動させた後に、起動準備情報取得手段によって得られる起動準備完了情報、及び発電量取得手段によって得られる燃料電池スタックS1の発電量のうち、少なくともいずれかの情報に基づいて、第1開閉弁V1を閉塞状態から開放状態へと切り替える。具体的には、例えば、燃料電池セル内の水素濃度や燃料電池スタックS1の発電量が予め定められた閾値を超える等、所定の条件を満たした場合に、第1開閉弁V1を閉塞状態から開放状態へと切り替える。そして、他の燃料電池スタックS2~S5に対して水素ガス流路L3を介して水素ガスが供給される。これにより、燃料電池スタックS1を起動させた後に、迅速に他の燃料電池スタックS2~S5を起動させることが可能となる。
【0052】
燃料電池システム1bの運転方法は、上記以外に、第1開閉弁V1を閉塞状態から開放状態へと切り替える際の条件を、第2開閉弁V3に適用してもよい。これにより、燃料電池スタックS1を起動させた後に、迅速に第2電力供給システムにおける燃料電池スタックS6を起動させることができる。更に、その後燃料電池スタックS6の起動状態を、発電量などの情報に基づいて確認し、第1開閉弁V1及びV2を閉塞状態から開放状態へと切り替えてもよい。これにより、燃料電池スタックS1及びS6以外の他の燃料電池スタックを迅速に起動することが可能となる。
【0053】
酸化剤流路及び冷媒流路に対し、第1開閉弁、第2開閉弁が設けられる場合、酸化剤流路及び冷媒流路に設けられた第1開閉弁、第2開閉弁の動作は、水素ガス流路L3における第1開閉弁、第2開閉弁の動作と同じタイミングで動作させてもよいし、それぞれ独立させて動作させてもよい。例えば、酸化剤流路、冷媒流路に対してそれぞれ酸化剤ガス、冷媒が流通するよりも先に、水素ガス流路L3に対して水素が流通するように、第1開閉弁及び第2開閉弁を動作させることも可能である。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。例えば、第3実施形態に係る第1開閉弁及び第2開閉弁を有する水素ガス流路L3の構成を、第2実施形態に係る燃料電池システムと組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1、1a、1b 燃料電池システム
10、10a IPU(バッテリ)
12 エアポンプ(送気手段)
S1~S10 燃料電池スタック
L11、L21 供給管路(酸化剤ガス流路)
L3 水素ガス流路
G1 第1電力供給システム
G2 第2電力供給システム
V1、V2 第1開閉弁
V3 第2開閉弁
図1
図2
図3