(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153806
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】ワクモ忌避効果を有する飼料添加物
(51)【国際特許分類】
A23K 10/30 20160101AFI20221005BHJP
A23K 50/75 20160101ALI20221005BHJP
【FI】
A23K10/30
A23K50/75
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056526
(22)【出願日】2021-03-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼販売日 令和3年3月11日 ▲2▼ 販売した場所 有限会社熊野養鶏(愛媛県四国中央市妻鳥町2243-1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼ ウェブサイトの掲載日 2021年2月24日 ▲2▼ ウェブサイトのアドレスhttps://www.facebook.com/nikkeiren/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼ ウェブサイトの掲載日 2021年3月3日 ▲2▼ ウェブサイトのアドレス http://keimei.ne.jp/article/%E9%A3%BC%E6%96%99%E6%B7%BB%E5%8A%A0%E3%81%AE%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%A2%E5%BF%8C%E9%81%BF%E5%89%A4%EF%BC%88a%E9%A3%BC%E6%96%99%EF%BC%89%E3%80%8C%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89%E3%80%8D%E3%80%80.html ▲3▼ 公開者 株式会社鶏鳴新聞社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼ 発行日 2021年3月5日 ▲2▼ 刊行物 鶏鳴新聞 令和3年3月5日付,第5面 ▲3▼ 公開者 株式会社鶏鳴新聞社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼ウェブサイトの掲載日 2021年3月12日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス http://www.nikkeiren.jp/t_210312.html
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼ ウェブサイトの掲載日 2021年3月22日 ▲2▼ ウェブサイトのアドレス https://aska-animal.co.jp/index.html https://aska-animal.co.jp/news/pdf/0048/0.pdf https://aska-animal.co.jp/products/detail/mix/wakumo.html https://aska-animal.co.jp/products/detail/pdf/wakumo20210317.pdf
(71)【出願人】
【識別番号】521133562
【氏名又は名称】ミツハナ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122574
【弁理士】
【氏名又は名称】吉永 貴大
(72)【発明者】
【氏名】郎 劍威
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
【Fターム(参考)】
2B005DA01
2B150AA05
2B150AB02
2B150AB10
2B150AC24
2B150AE02
2B150AE27
2B150BC06
2B150BE01
2B150CA16
2B150CJ08
2B150DA43
2B150DD12
2B150DD32
2B150DD44
2B150DD57
2B150DE03
2B150DH04
(57)【要約】
【課題】家禽はもちろんのこと、人体に対しても安全で、かつ、ワクモの防除効果の高い、薬剤に代わるワクモ防除技術を提供することを目的とする。
【解決手段】植物抽出物と、ハーブ精油とを含有する、ワクモ忌避効果を有する飼料添加物であって、前記植物抽出物が、アルファルファ抽出物、甘草抽出物、ローズマリー抽出物、ヨモギギク抽出物からなる群から選択された少なくとも2種類であり、前記ハーブ精油が、タイム精油、ペパーミント精油、ユーカリ精油、コリアンダー精油、オレガノ精油、ラベンダー精油、ルリジサ精油からなる群から選択された少なくとも2種類である、飼料添加物により解決する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物抽出物と、ハーブ精油とを含有する、ワクモ忌避効果を有する飼料添加物であって、
前記植物抽出物が、アルファルファ抽出物、甘草抽出物、ローズマリー抽出物、ヨモギギク抽出物からなる群から選択された少なくとも2種類であり、
前記ハーブ精油が、タイム精油、ペパーミント精油、ユーカリ精油、コリアンダー精油、オレガノ精油、ラベンダー精油、ルリジサ精油からなる群から選択された少なくとも2種類である、
飼料添加物。
【請求項2】
さらに、リボフラビン、硝酸チアミン、塩酸ピリドキシン、ナイアシン、パントテン酸カルシウムからなる群から選択された少なくとも2種類のビタミンB群を含有する、請求項1に記載の飼料添加物。
【請求項3】
さらに、コーンコブミール、石化海藻粉末、酵母破砕物からなる群から選択された少なくと1種類の賦形剤を含有する、請求項1又は2に記載の飼料添加物。
【請求項4】
さらに、プロバイオティクス及び/又はブレバイオティクスを含有する、請求項1~3のいずれか1甲に記載の飼料添加物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の飼料添加物を含有する家禽用飼料。
【請求項6】
前記家禽が、ニワトリ、ウズラ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウからなる群から選択された少なくとも1種である、請求項5に記載の家禽用飼料。
【請求項7】
前記飼料添加物が、0.1~1.5重量%である、請求項5又は6に記載の家禽用飼料。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載の家禽用飼料を家禽に摂取させる、ワクモの忌避方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワクモ忌避効果を有する飼料添加物、該飼料添加物を含有する家禽用飼料並びにワクモの忌避方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワクモ(学名:Dermanyssus gallinae)は、ダニの一種であり、家禽や鳥類に寄生する外部寄生虫である。ワクモは日中は地面の裂け目や亀裂などに潜伏しているが、夜間に活動して休息している鳥類に付着し鳥類の血液を吸血する。ワクモによる被害は、貧血、元気消失、体重減少、死亡、産卵率の低下、飼料効率の低下、卵重の減少、汚卵の発生、病原体(鶏痘、サルモネラ等)の伝搬、免疫応答、ワクチン応答の低下など、家禽に対する直接的なものから、人への寄生、不快感、アレルギーの発生など、管理者にも悪影響を与え、管理者の嫌悪感、さらには管理者の離職などの問題にも発展している。
【0003】
従来のワクモ対策は、有機リン剤、カーバーメート剤、ピレスロイド剤などの薬剤を散布することによる駆除が主流であった。例えば、特開2009-227611号号公報には、5-メトキシ-3-(2-メトキシフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2(3H)-オンの有効量をワクモの生息場所又は寄生対象生物に施用することを特徴とするワクモの防除方法が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ワクモ対策に必要となる薬剤費や労力が経営を圧迫している。また、長期間にわたる薬剤の散布によりワクモが薬剤耐性を獲得し、薬剤の効果も低下しているという報告もある。そのため、薬剤に依存しない、ワクモの防除技術の開発が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、家禽はもちろんのこと、人体に対しても安全で、かつ、ワクモの防除効果の高い、薬剤に代わるワクモ防除技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明者らは、家禽自体にワクモ抵抗性を付与することでワクモを忌避できるとの考えのもと、家禽の餌に添加可能な天然の添加物を種々検討したところ、ハーブを主成分とする飼料添加物が本発明の目的を達成することができるとの知見を得た。
【0008】
本発明はかかる知見に基づきなされたものであり、植物抽出物と、ハーブ精油とを含有する、ワクモ忌避効果を有する飼料添加物であって、前記植物抽出物が、アルファルファ抽出物、甘草抽出物、ローズマリー抽出物、ヨモギギク抽出物からなる群から選択された少なくとも2種類、前記ハーブ精油が、タイム精油、ペパーミント精油、ユーカリ精油、コリアンダー精油、オレガノ精油、ラベンダー精油、ルリジサ精油からなる群から選択された少なくとも2種類である、飼料添加物を提供するものである。
【0009】
本発明はまた、前記の飼料添加物を含有する家禽用飼料を提供するものである。
【0010】
本発明はさらに、前記家禽用飼料を家禽に摂取させる、ワクモの忌避方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、家禽に本発明の飼料添加物を摂取させることで、薬剤を使用することなく、効果的にワクモを防除することができる。また、飼料摂取量の増加、産卵率の増加、汚卵率の減少、卵質の向上などの効果をもたらす。鶏舎の臭いも改善され、管理者のストレスが軽減されるとともに、ハエやアブ等の数も減少する。本発明は従来のワクモ対策(有機リン剤などの薬剤、ダンボールトラップなどの資材)とも併用可能であるため、より効果的にワクモの防除ができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】試用鶏舎内8カ所(A-1~D-2)におけるワクモ重量を経時観察した結果である。
【
図2】D-2区に設置した第1週目のトラップの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態について詳細に説明する。
【0014】
1.飼料添加物
本実施形態に係る飼料添加物は、植物抽出物と、ハーブ精油とを含有する、ワクモ忌避効果を有する飼料添加物であって、前記植物抽出物が、アルファルファ抽出物、甘草抽出物、ローズマリー抽出物、ヨモギギク抽出物からなる群から選択された少なくとも2種類であり、前記ハーブ精油が、タイム精油、ペパーミント精油、ユーカリ精油、コリアンダー精油、オレガノ精油、ラベンダー精油、ルリジサ精油からなる群から選択された少なくとも2種類である。
【0015】
本実施形態に係る飼料添加物は、植物抽出物を少なくとも2種類と、ハーブ精油を少なくとも2種類含有することにより、これを摂取した家禽は、本実施形態の飼料添加物由来の成分によって家禽の身体全体がマスキングされる。ワクモは家禽から発せられるニオイを目印に家禽に付着するが、身体全体がマスキングされた家禽では、その居場所をワクモが特定できなくなり、結果的にワクモが家禽に付着することを防止することができる。
【0016】
アルファルファ抽出物は、マメ科ウマゴヤシ属の多年草で、日本ではムラサキウマゴヤシと呼ばれる植物の抽出物をいい、アルファルファを収穫後ただちに細断しよく混合したのち圧搾し、得た搾汁をコーンコブに吸着し、原料に供する。アルファルファ抽出物には、カロチノイド、アルカロイドなどの成分が含まれるため、抗酸化作用、抗潰瘍作用があり、ワクモを防除するとともにワクモに吸血された部位の回復力を向上させる。本実施形態の飼料添加物における含有量は、0.1~0.6重量%であることが好ましい。
【0017】
甘草抽出物は、マメ科多年生植物である甘草の根茎に3~4%含まれる甘味成分(トリテルペノイド配糖体)を抽出・精製したもので、その主成分はグリチルリチンである。甘草抽出物は、I型コラーゲンの劣化・断片化を防ぎ、炎症症状を緩和する。本実施形態の飼料添加物における含有量は、0.5~3.0重量%であることが好ましい。
【0018】
ローズマリー抽出物は、シソ科の低木で、ローズマリーの葉や花から精製された抽出物をいう。ローズマリー抽出物は、フェノール性ジテルペノイドのカルノソールやカルノシン酸など抗酸化機能を有する化合物が含まれている。一般には天然の酸化防止剤として利用されている。ローズマリー抽出物は、他の原料精油の酸化劣化を防止するだけではなく、乳脂肪劣化臭・酸化臭の抑制、矯臭などに効果がある。本実施形態の飼料添加物における含有量は、0.03~0.3重量%であることが好ましい。
【0019】
ヨモギギク抽出物は、キク科の多年生草本であるヨモギギクの葉の抽出物をいう。一般には殺菌・防虫効果があることが知られている。本実施形態においては、ヨモギギク抽出物は、ダニやワクモといった昆虫に対し忌避活性を発揮する。本実施形態の飼料添加物における含有量は、0.01~0.15重量%であることが好ましい。
【0020】
タイム精油は、シソ科のタイムの花および葉を水蒸気蒸留法により精製した精油をいう。一般には制菌作用が強いことが知られている。本実施形態においては、鎮痙や鎮静作用があり、家禽の突きを防ぐ効果がある。本実施形態の飼料添加物における含有量は、0.1~1.0重量%であることが好ましい。
【0021】
ペパーミント精油は、シソ科のペパーミントの葉を水蒸気蒸留法により精製した精油をいう。主成分はメントール、メントン、1,8-シネオールである。本実施形態においては、鎮痛、抗菌効果を発揮させる。本実施形態の飼料添加物における含有量は、0.3~1.5重量%であることが好ましい。
【0022】
ユーカリ精油は、フトモモ科のユーカリの葉を水蒸気蒸留した精油をいう。主成分は1,8-シネオールで、一般には抗菌作用が知られている。本実施形態においては、免疫機能を整える作用と傷口を癒やす効果がある。飼料添加物における含有量は、0.5~1.5重量%であることが好ましい。
【0023】
コリアンダー精油は、セリ科のコリアンダーの完熟果実(種子)を水蒸気蒸留法により精製した精油をいう。主成分はd-リナロール、カンファー、α-ピネン、γ-テルピネンである。本実施形態においては、食欲増進・消化促進作用など消化器系への働きかけにより、他の精油給与による膨満感を解消できる。本実施形態の飼料添加物における含有量は、0.5~2.0重量%であることが好ましい。
【0024】
オレガノ精油は、シソ科のオレガノの花および葉を水蒸気蒸留法により精製した精油をいう。主成分は、カルバクロール、p-サイメン、γ-テルピネンである。本実施形態においては、気管支炎や喘息などの呼吸器系の不調に対しても効果を発揮する。本実施形態の飼料添加物における含有量は、0.2~1.8重量%であることが好ましい。
【0025】
ラベンダー精油は、シソ科のラベンダーの花および葉を水蒸気蒸留法により精製した精油をいう。主成分はエステル類、モノテルペンアルコール類である。本実施形態においては、腸管内での殺菌・抗炎症作用を発揮する。飼料添加物における含有量は、0.5~2.0重量%であることが好ましい。
【0026】
ルリジサ精油は、ムラサキ科のルリジサの種子から得られる植物油である。主成分はリノール酸、γ-リノレン酸、オレイン酸である。本実施形態においては、ルリジサ精油に含まれる不飽和脂肪酸が家禽の皮膚の炎症を抑える効果がある。本実施形態の飼料添加物における含有量は、0.5~2.0重量%であることが好ましい。
【0027】
本実施形態に係る飼料添加物は、さらに、リボフラビン、硝酸チアミン、塩酸ピリドキシン、ナイアシン、パントテン酸カルシウムからなる群から選択された少なくとも2種類のビタミンB群を含有することが好ましい。
【0028】
これらのビタミンB群を含有することで、家禽のエネルギー代謝を高めて、先述した飼料添加物の成分を家禽の体から放出しやすくすることで、ワクモの忌避効果をより高めることができる。また、ビタミンB群の中の、B1、B2、葉酸、ナイアシンは過酸化脂質の生成を促進し、その後の反応を抑制するに対し、B12は初期反応には優位な差が無く、その後の反応を抑制する。また、B6はすべての期間において過酸化脂質の生成反応を抑制する。そのため、少なくとも2種類のビタミンB群を含有することで、家禽の腸管壁、及び皮脂のケアに役に立つ。本実施形態の飼料添加物における含有量は、0.03~1.5重量%であることが好ましい。
【0029】
本実施形態に係る飼料添加物は、さらに、コーンコブミール、石化海藻粉末、酵母破砕物からなる群から選択された少なくと1種類の賦形剤を含有することが好ましい。
【0030】
コーンコブミールは精油に対する吸着性が良好であり、石化海藻粉末は炭酸カルシウムのほかに多数のミネラル成分が含まれている。また、酵母破砕物は、鶏の免疫力向上に貢献する。そのためこれらの賦形剤を含有することで、家禽が摂取しやすい形状に飼料添加物を成形することができるとともに、家禽の健康維持も期待できる。飼料添加物における含有量は、賦形剤の種類によって適宜変更されるが、一般的に20~60重量%であることが好ましい。
【0031】
本実施形態の飼料添加物は、さらに、プロバイオティクス及び/又はブレバイオティクスを含有させることができる。
【0032】
前記プロバイオティクスとしては、例えば、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属などの乳酸菌(代謝産物として乳酸を産生する細菌を含む)、ビフィズス菌、プロピオン酸菌、酪酸菌またはこれらの混合物等を例示することができる。飼料添加物における含有量は、プロバイオティクスの種類によって適宜変更されるが、一般的に1.0~10.0重量%であることが好ましい。
【0033】
前記プレバイオティクスとしては、例えば、酪酸ナトリウム、オリゴ糖(ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルオリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、コーヒー豆マンノオリゴ糖、グルコン酸など)や食物繊維(ポリデキストロースなど)、イヌリン、アカシアガムまたはこれらの混合物からなる群から選択し得る。飼料添加物における含有量は、プレバイオティクスの種類によって適宜変更されるが、一般的に3.0~15.0重量%であることが好ましい。
【0034】
前述した精油により、ワクモが探知するニオイは軽減されるが、脂質を摂取することによって家禽に満腹感を与えるため、飼料の摂取が減少し、増体が低減した場合は、産卵率が低下する場合もある。そこで、プロバイオティクス及び/又はブレバイオティクスを含有させることにより、家禽の腸内菌叢活性化が図られ、飼料の消化、吸収が促進され、増体、産卵率が向上する。特に、乳酸菌、酪酸菌などは有機酸を産出し、腸管内の善玉菌を増殖し、家禽の食欲増進に寄与する。また、酪酸ナトリウムは腸管壁の絨毛の栄養源にもなり、消化、吸収能力を向上させる。
【0035】
本実施形態に係る飼料添加物は、本発明のワクモ防除効果を阻害しない限り、上記の原料のほか、任意の原料を含有させることができる。
【0036】
2.家禽用飼料
本実施形態に係る家禽用飼料は、先述した飼料添加物を含有するものである。
【0037】
本実施形態に係る家禽用飼料は、一般的な家禽用の配合飼料に、先述した飼料添加物を添加することにより製造することができる。配合飼料は、その種類に特に制限はなく、家禽を飼育するために、その家禽に合わせていくつかの原材料を調合してつくられた飼料を適宜選択することができる。
【0038】
飼料添加物の配合量はワクモの数等によって適宜変更されるが、0.1~3重量%であることが好ましい。0.1重量%未満ではワクモの忌避効果が薄くなる。一方、3重量%でもワクモの忌避効果に影響はないが、効果は頭打ちになる。
【0039】
3.ワクモの忌避方法
本実施形態に係るワクモの忌避方法は、先述した家禽用飼料を家禽に摂取させるものである。
【0040】
ワクモは非吸血時、集合フェロモンにより数万匹からなる集合塊を形成するように、ワクモはフェロモン様物質には敏感に反応する。先述した家禽用飼料を家禽に摂取させることで、飼料添加物の強い臭いが家禽の体から放出される。その結果、家禽から放出される飼料添加物の臭いがワクモの忌避行動を促すと考えられる。但し、家禽の肉、卵、羽毛には、飼料添加物の臭いによる影響はない。
【0041】
家禽用飼料の給餌方法は特に限定はなく、一般的な家禽用の配合飼料の給餌方法と同様であり、継続的に給餌してもよい。但し、鶏舎等にすでにワクモの存在が確認されている場合は、2~4週間は継続して家禽用飼料を家禽に摂取させることが好ましい。
【0042】
本実施形態において「家禽」とは、その肉、卵、羽毛などを利用するために飼育する鳥の総称、または野生の鳥を人間の生活に役立てるために品種改良を施し飼育しているものをいう。また、ペットとしての鳥を家禽として扱う場合がある。一般的には、肉、卵用のニワトリ、ウズラ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウなどが挙げられる。
【実施例0043】
1.飼料添加物の製造
タイム精油(Herba d.o.o.社製)0.6重量%、ユーカリ精油(Herba d.o.o.社製)1.0重量%、コリアンダー精油(Herba d.o.o.社製)1.2重量%、オレガノ精油(Herba d.o.o.社製)1.2重量%、ラベンダー精油(Herba d.o.o.社製)0.8重量%、ルリジサ精油(Sanicula Co LLC 社製)1.2重量%の油を均一に混合し、コーンコブミール(Best Cob, LLC 社製)45.0重量%に吸着させ、アルファルファ抽出物(Anderson Hay & Grain Co., Inc.社製)0.3重量%、甘草抽出物(Sanicula Co LLC 社製)1.5重量%、ヨモギギク抽出物(Sanicula Co LLC 社製)0.08重量%と均一に撹拌混合した。
【0044】
次に、リボフラビン(Shandong Xinfa社製)0.03重量%、硝酸チアミン(Shandong Xinfa社製)0.01重量%、ナイアシン(Mianyang Vanetta 社製)0.08重量%のビタミン原料を酵母破砕物(ICC Brazile 社製)25.0重量%に添加し、均一に混合した。
【0045】
さらに、プロバイオティクスとしての生菌剤(Vega Pharma社製)12.0重量%、プレバイオティクスとしての酪酸ナトリウム(Vega Pharma社製)3.0重量%を、賦形剤としての石化海藻粉末(Oceana Minerals社製)7.0重量%と均一に混合した。
【0046】
上記の3種の配合原料を回転式ミキサーを用いて30分間以上撹拌、混合させ、所望の飼料添加物(実施例1)を得た。
【0047】
比較例1として、ユーカリ精油(Herba d.o.o.社製)1.2重量%、ラベンダー精油(Herba d.o.o.社製)1.0重量%の油を均一に混合し、コーンコブミール(Best Cob, LLC 社製)45.0重量%に吸着させ、アルファルファ抽出物(Anderson Hay & Grain Co., Inc.社製)0.5重量%、と均一に撹拌混合した。ビタミンB群、プロバイオティクスの生菌剤は所定量を混和し、比較用飼料添加物(比較例1)とした。
【0048】
また、コリアンダー精油(Herba d.o.o.社製)1.8重量%、コーンコブミール(Best Cob, LLC 社製)45.0重量%に吸着させ、甘草抽出物(Sanicula Co LLC 社製)1.6重量%、ヨモギギク抽出物(Sanicula Co LLC 社製)0.12重量%と均一に撹拌混合した。ビタミンB群、プロバイオティクスの生菌剤は所定量を混和し、比較用飼料添加物(比較例2)とした。
【0049】
各飼料添加物の原料配合割合を表1に示す。
【0050】
【0051】
2.ワクモの忌避試験
(1)試験方法
1群の構成が雄1羽、雌15羽からなるタマシャモ種鶏群(14群1鶏舎)を供試鶏群とした。試験に用いたワクモ防除用家禽用飼料は、市販の成鶏用配合飼料(中部飼料社製)と上記1で調製した飼料添加物(実施例1、比較例1、比較例2)をそれぞれ飼料配合機に投入し十分撹拌することにより調製した。そして、ワクモ防除用家禽用飼料を供試鶏群に摂取させることにより、ワクモの生息数を経時的に測定した。なお、ワクモ防除用家禽用飼料は、第1週~第2週は飼料添加物を0.5重量%含むワクモ防除用家禽用飼料を給餌し、第3~第4週は飼料添加物を0.25重量%含むワクモ防除用家禽用飼料を給餌した。
【0052】
ワクモの生息数の経過観察は、試用鶏舎内8カ所(2列からなるケージの片側に2つずつ、A-1~D-2)にトラップ(近藤電子社製ワクモ集積ツールi-Trap(商標))を設置し、環境要因による誤差を測定するダミートラップもワクモのいない1カ所に設置した。そして、毎週トラップを取替え、下記式によりワクモの重量を計測することにより行った。
【0053】
ワクモ重量=(設置前後のトラップ重量の差)-(設置前後のダミートラップ重量差)
【0054】
(2)試験結果
図1は試用鶏舎内8カ所(A-1~D-2)におけるワクモ重量を経時観察した結果である。第1週~第2週は飼料添加物を0.5重量%含むワクモ防除用家禽用飼料を給餌したが、実施例1の飼料添加物が添加された飼料を給餌した場合は、給餌開始直後からワクモ重量が急激に減少した。参考として、D-2区に設置した第1週目(
図1中の1W)のトラップを
図2に示す(トラップ中の小さなツブ状のものがワクモである)。
【0055】
また、第3~第4週は飼料添加物の配合を0.25重量%に減らしたが、実施例1の飼料添加物が添加された飼料を給餌した場合は、ワクモ重量が増加することなく減少傾向を維持し、試験開始時に観察されたケージ周辺のワクモ集簇巣も試験終了時には確認されなかった。
【0056】
さらに、実施例1の飼料添加物が添加された飼料を給餌した場合は、試験期間中の鶏糞の臭気が顕著に減少したことから、飼料添加物由来のハーブの香りで鶏糞の臭気がマスキングされたと推察された。また、飼料タンク周辺にいたアメリカミズアブやハエ(タンクの下がこぼれた飼料と水分が混ざるとよく発生する)が、試験開始後からいなくなった。これらの効果は副次的な効果であるが、管理者の嫌悪感や管理者の離職などの問題を改善する効果と言える。
【0057】
一方、比較例1の飼料添加物が添加された飼料を給餌した場合は、初回測定時にはワクモ重量が減少し、一定の防除効果が認められたが、その後効果は持続せず、試験終了時には試験開始時の状態に戻っていた。また、比較例2のの飼料添加物が添加された飼料を給餌した場合は、ワクモ防除効果はほとんど認められなかった。
【0058】
3.卵の評価
前記1で調製したワクモ防除用家禽用飼料(実施例1の飼料添加物2.0重量%)を雌鶏に15日間給餌し、得られた鶏卵について目視観察を行った後に官能評価を実施した。比較対照としては、飼料添加物を添加していない市販の飼料を給餌して得られた鶏卵を用いた。
【0059】
目視観察の評価は卵殻表面のキズ、汚れの有無を目視で確認することにより行った。また、官能評価は、鍋に水の状態から卵を入れてから中火で加熱し、沸騰後弱火で10分加熱することによりゆで卵とし、健常者6名により、2点のゆで卵(飼料添加物を添加したワクモ防除用家禽用飼料を給餌して得られた卵と、飼料添加物無添加の家禽用飼料を給餌して得られた卵)をブラインドで提示し、食べて美味しいと感じるサンプルを選択することにより行った。なお、味と香りについては自由記述とした。
【0060】
結果を表2に示す。目視観察については、実施例1の飼料添加物を配合した飼料を給餌して得られた鶏卵は、対照卵と比較して汚卵率が顕著に低かった。官能評価については、ワクモ防除用家禽用飼料給与卵の方がおいしいと評価した人数が多かった(6名中4名)。また、ワクモ防除用家禽用飼料給与卵で生臭さを感じる人は6名中0名、コクがあると感じる人は6名中3名という結果となり、対照卵(生臭さを感じる:6名中3名、コクがあると感じる:6名中0名)と比較すると、ワクモ防除用家禽用飼料の給与により卵の風味が向上したことが示唆された。
【0061】