(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153810
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】光検出回路及び計測装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/4861 20200101AFI20221005BHJP
G01S 17/894 20200101ALI20221005BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20221005BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
G01S7/4861
G01S17/894
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
H01L31/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056531
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】前北 和晃
(72)【発明者】
【氏名】内藤 文哉
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 勇治
(72)【発明者】
【氏名】村松 正典
【テーマコード(参考)】
2F112
5F849
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA07
2F112CA12
2F112DA04
2F112DA15
2F112DA21
2F112DA22
2F112DA25
2F112DA28
2F112EA05
2F112FA27
2F112GA01
5F849AA02
5F849AA07
5F849BA17
5F849BB07
5F849EA03
5F849KA04
5F849KA12
5F849KA13
5F849KA20
5F849LA01
5F849LA02
5F849XB01
5F849XB36
5F849XB38
5J084AA04
5J084AA05
5J084AA10
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA04
5J084BA19
5J084BA36
5J084BA39
5J084BA40
5J084BA48
5J084BB02
5J084CA03
5J084CA10
5J084CA43
5J084CA49
5J084CA70
5J084EA01
(57)【要約】
【課題】フォトダイオード間の寄生容量及び出力配線間の寄生容量のうち少なくとも一方に起因するクロストークを低減可能な光検出回路を提供する。
【解決手段】光検出回路2Aは、光パルスを検出するPD22a(1)及び22a(2)と、回路要素27(1)及び27(2)と、信号生成回路28(1)及び28(2)とを備える。回路要素27(1)及び27(2)は、一端と他端との間に容量を有する。回路要素27(1)及び27(2)の各一端は、PD22a(1)及び22a(2)の各出力端とそれぞれ電気的に接続されている。信号生成回路28(1)は、ワイヤ25(1)を通じて受けた電流と、回路要素27(2)を通じて受けた電流との差に応じた出力信号Vout1を生成する。信号生成回路28(2)は、ワイヤ25(2)を通じて受けた電流と、回路要素27(1)を通じて受けた電流との差に応じた出力信号Vout2を生成する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光パルスを検出する第1フォトダイオード及び第2フォトダイオードと、
一端と他端との間に容量を有し、前記一端が前記第1フォトダイオードの出力端と電気的に接続された第1回路要素と、
一端と他端との間に容量を有し、前記一端が前記第2フォトダイオードの出力端と電気的に接続された第2回路要素と、
前記第1フォトダイオードの出力端と第1配線を介して電気的に接続されるとともに前記第2回路要素の前記他端と電気的に接続され、前記第1配線を通じて受けた電流と前記第2回路要素を通じて受けた電流との差に応じた第1信号を生成する第1回路と、
前記第2フォトダイオードの出力端と第2配線を介して電気的に接続されるとともに前記第1回路要素の前記他端と電気的に接続され、前記第2配線を通じて受けた電流と前記第1回路要素を通じて受けた電流との差に応じた第2信号を生成する第2回路と、
を備える、光検出回路。
【請求項2】
前記第1フォトダイオード及び前記第2フォトダイオードは共通基板にモノリシックに形成されている、請求項1に記載の光検出回路。
【請求項3】
前記第1配線及び前記第2配線は互いに沿って配設された部分を有する、請求項1又は2に記載の光検出回路。
【請求項4】
前記第1回路要素及び前記第2回路要素の各容量は、前記第1フォトダイオードと前記第2フォトダイオードとの間の寄生容量、及び前記第1配線と前記第2配線との間の寄生容量の和と等しい、請求項1~3のいずれか1項に記載の光検出回路。
【請求項5】
前記第1回路要素及び前記第2回路要素の各容量は、前記第1フォトダイオードと前記第2フォトダイオードとの間の寄生容量、及び前記第1配線と前記第2配線との間の寄生容量の和の2倍よりも小さい、請求項1~3のいずれか1項に記載の光検出回路。
【請求項6】
前記第1回路要素及び前記第2回路要素の各容量は、前記第1フォトダイオードと前記第2フォトダイオードとの間の寄生容量、及び前記第1配線と前記第2配線との間の寄生容量の和の0.1倍よりも大きい、請求項1~3及び5のいずれか1項に記載の光検出回路。
【請求項7】
前記第1回路要素及び前記第2回路要素の各容量は、前記第1フォトダイオードと前記第2フォトダイオードとの間の寄生容量によって生じるクロストーク成分、及び前記第1配線と前記第2配線との間の寄生容量によって生じるクロストーク成分の和の2倍よりも小さい信号が前記第1回路又は前記第2回路において生じる大きさに設定されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の光検出回路。
【請求項8】
前記第1回路要素及び前記第2回路要素の各容量は、前記第1フォトダイオードと前記第2フォトダイオードとの間の寄生容量によって生じるクロストーク成分、及び前記第1配線と前記第2配線との間の寄生容量によって生じるクロストーク成分の和の0.1倍よりも大きい信号が前記第1回路又は前記第2回路において生じる大きさに設定されている、請求項1~3及び7のいずれか1項に記載の光検出回路。
【請求項9】
前記第1回路は、
前記第1配線を通じて受けた電流を第1電圧信号に変換する第1トランスインピーダンスアンプと、
前記第2回路要素を通じて受けた電流を第2電圧信号に変換する第2トランスインピーダンスアンプと、
前記第1電圧信号と前記第2電圧信号との差に応じた信号を生成する回路と、
を有し、
前記第2回路は、
前記第2配線を通じて受けた電流を第3電圧信号に変換する第3トランスインピーダンスアンプと、
前記第1回路要素を通じて受けた電流を第4電圧信号に変換する第4トランスインピーダンスアンプと、
前記第3電圧信号と前記第4電圧信号との差に応じた信号を生成する回路と、
を有する、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の光検出回路。
【請求項10】
一端と他端との間に容量を有する第3回路要素を更に備え、
前記第1回路は差動入力型のトランスインピーダンスアンプを含み、該トランスインピーダンスアンプの一方の入力端は前記第1配線を介して前記第1フォトダイオードと接続され、他方の入力端は前記第2回路要素の前記他端及び前記第3回路要素の前記一端と接続され、
前記第2回路は差動入力型のトランスインピーダンスアンプを含み、該トランスインピーダンスアンプの一方の入力端は前記第2配線を介して前記第2フォトダイオードと接続され、他方の入力端は前記第1回路要素の前記他端及び前記第3回路要素の前記他端と接続されている、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の光検出回路。
【請求項11】
計測対象物に対してパルス状のレーザ光を照射し、前記計測対象物からの反射光の入射位置、及び前記レーザ光の照射から前記反射光の入射までの時間差に基づいて、前記計測対象物までの距離及び方向を計測する装置であって、
前記レーザ光を出射する光出射部と、
前記反射光を検出する光検出部と、
を備え、
前記光検出部は、請求項1~10の何れか1項に記載の光検出回路を有する、計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光検出回路及び計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マルチチャネル光検出及び測距システムが開示されている。このシステムは、複数のアクティブチャネルを備える。各アクティブチャネルは、光に露光されるように配置された感光性素子と、各感光性素子からの信号を受信するアナログフロントエンド回路とを含む。更に、このシステムは、少なくとも一つの補償チャネルと、処理ユニットとを備える。補償チャネルは、光に実質的に非感受性である補償素子と、補償素子からの信号を受信するアナログフロントエンド回路とを含む。処理ユニットは、アクティブチャネル及び補償チャネルからの信号を受信し、補償チャネルから受信した信号から補償信号を導き出し、アクティブチャネルのクロストーク干渉及び/またはアナログフロントエンド回路に共通の干渉を、補償信号を用いて補償する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光パルスの入射位置及び入射タイミングを複数のフォトダイオードにおいて検出する装置として、例えばLiDAR(Light Detection And Ranging)などがある。このような装置において複数のフォトダイオードを配置する場合、隣り合うフォトダイオード間、及び隣り合う出力配線間のうち少なくとも一方において、寄生容量が生じる。或るフォトダイオードから出力されたパルス電流の一部が、この寄生容量を通って、他のフォトダイオードの出力電流を検出する回路に入力されることがある。この現象はクロストークと呼ばれる。その場合、或るフォトダイオードへの光の入射と同時に、他のフォトダイオードにも光パルスが入射したと誤って認識されるおそれがある。例えばLiDARにおいては、このような誤認識が、実際には存在しない物体の検出につながる。
【0005】
本開示は、フォトダイオード間の寄生容量及び出力配線間の寄生容量のうち少なくとも一方に起因するクロストークを低減可能な光検出回路、及びその光検出回路を備える計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態による光検出回路は、光パルスを検出する第1フォトダイオード及び第2フォトダイオードと、第1回路要素と、第2回路要素と、第1回路と、第2回路と、を備える。第1回路要素は、一端と他端との間に容量を有する。第1回路要素の一端は、第1フォトダイオードの出力端と電気的に接続されている。第2回路要素は、一端と他端との間に容量を有する。第2回路要素の一端は、第2フォトダイオードの出力端と電気的に接続されている。第1回路は、第1フォトダイオードの出力端と第1配線を介して電気的に接続されるとともに、第2回路要素の他端と電気的に接続されている。第1回路は、第1配線を通じて受けた電流と、第2回路要素を通じて受けた電流との差に応じた第1信号を生成する。第2回路は、第2フォトダイオードの出力端と第2配線を介して電気的に接続されるとともに、第1回路要素の他端と電気的に接続されている。第2回路は、第2配線を通じて受けた電流と、第1回路要素を通じて受けた電流との差に応じた第2信号を生成する。
【発明の効果】
【0007】
本開示による光検出回路及び計測装置によれば、フォトダイオード間の寄生容量及び出力配線間の寄生容量のうち少なくとも一方に起因するクロストークを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る計測装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、PDアレイ及びTIAアレイを含む光検出回路の平面図である。
【
図3】
図3は、PDアレイの断面構造を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、PDアレイのPDの個数が2である場合の光検出回路の構成を示す回路図である。
【
図5】
図5(a)~(g)は、一実施形態の光検出回路における各信号の時間波形を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、比較例の光検出回路の構成を示す回路図である。
【
図7】
図7は、比較例の光検出回路における各信号の時間波形を模式的に示す図である。
【
図8】
図8(a)及び(b)は、一実施形態及び比較例の各光検出回路の動作に関するシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図9】
図9は、PDの個数が3以上である場合の、光検出回路の構成を示す回路図である。
【
図10】
図10は、光検出回路の動作を説明するための図である。
【
図11】
図11は、一変形例に係る光検出回路の構成を示す回路図である。
【
図12】
図12は、光検出回路の動作を説明するための図である。
【
図13】
図13は、PDの個数が3以上である場合の、光検出回路の構成を示す回路図である。
【
図14】
図14は、光検出回路の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態による光検出回路は、光パルスを検出する第1フォトダイオード及び第2フォトダイオードと、第1回路要素と、第2回路要素と、第1回路と、第2回路と、を備える。第1回路要素は、一端と他端との間に容量を有する。第1回路要素の一端は、第1フォトダイオードの出力端と電気的に接続されている。第2回路要素は、一端と他端との間に容量を有する。第2回路要素の一端は、第2フォトダイオードの出力端と電気的に接続されている。第1回路は、第1フォトダイオードの出力端と第1配線を介して電気的に接続されるとともに、第2回路要素の他端と電気的に接続されている。第1回路は、第1配線を通じて受けた電流と、第2回路要素を通じて受けた電流との差に応じた第1信号を生成する。第2回路は、第2フォトダイオードの出力端と第2配線を介して電気的に接続されるとともに、第1回路要素の他端と電気的に接続されている。第2回路は、第2配線を通じて受けた電流と、第1回路要素を通じて受けた電流との差に応じた第2信号を生成する。
【0010】
この光検出回路では、第1フォトダイオードに光パルスが入射すると、第1フォトダイオードから出力された電流が第1配線を通って第1回路に入力され、第1回路において光パルスの光強度に応じた第1信号が生成される。このとき、第1配線の電位が僅かに変動するので、第1フォトダイオードと第2フォトダイオードとの間の寄生容量、及び第1配線と第2配線との間の寄生容量のうち少なくとも一方に起因して、第1フォトダイオードから出力された電流の一部が第2配線を通って第2回路に入力される。従来の光検出回路では、この第2回路に入力された一部の電流はクロストークとして検出される。しかしながら、この光検出回路では、第1フォトダイオードから出力された電流の別の一部が、第1回路要素を通じて第2回路に入力される。そして、第2配線を通じて受けたクロストークとしての電流と、第2回路要素を通じて受けた電流との差に応じた第2信号が第2回路において生成される。すなわち、第2信号において、寄生容量に起因する成分の少なくとも一部が相殺される。
【0011】
また、第2フォトダイオードに光パルスが入射すると、第2フォトダイオードから出力された電流が第2配線を通って第2回路に入力され、第2回路において光パルスの光強度に応じた第2信号が生成される。このとき、第2配線の電位が僅かに変動するので、第1フォトダイオードと第2フォトダイオードとの間の寄生容量、及び第1配線と第2配線との間の寄生容量のうち少なくとも一方に起因して、第2フォトダイオードから出力された電流の一部が第1配線を通って第1回路に入力される。従来の光検出回路では、この第1回路に入力された一部の電流はクロストークとして検出される。しかしながら、この光検出回路では、第2フォトダイオードから出力された電流の別の一部が、第2回路要素を通じて第1回路に入力される。そして、第1配線を通じて受けたクロストークとしての電流と、第1回路要素を通じて受けた電流との差に応じた第1信号が第1回路において生成される。すなわち、第1信号において、寄生容量に起因する成分の少なくとも一部が相殺される。
【0012】
このように、この光検出回路によれば、第1フォトダイオードと第2フォトダイオードとの間の寄生容量、及び第1配線と第2配線との間の寄生容量のうち少なくとも一方に起因するクロストークを低減できる。
【0013】
上記の光検出回路において、第1フォトダイオード及び第2フォトダイオードは共通基板にモノリシックに形成されてもよい。この場合、第1フォトダイオードと第2フォトダイオードとの間には寄生容量が生じ易い。従って、上記の光検出回路の構成が特に有効である。
【0014】
上記の光検出回路において、第1配線及び第2配線は互いに沿って配設された部分を有してもよい。この場合、第1配線と第2配線との間には寄生容量が生じ易い。従って、上記の光検出回路の構成が特に有効である。
【0015】
上記の光検出回路において、第1回路要素及び第2回路要素の各容量は、第1フォトダイオードと第2フォトダイオードとの間の寄生容量、及び第1配線と第2配線との間の寄生容量の和と等しくてもよい。この場合、第1回路要素を通じて受ける電流の大きさが、第1配線を通じて受けるクロストークとしての電流の大きさとほぼ等しくなる。故に、クロストークをほぼゼロに近づけることができる。
【0016】
上記の光検出回路において、第1回路要素及び第2回路要素の各容量は、第1フォトダイオードと第2フォトダイオードとの間の寄生容量、及び第1配線と第2配線との間の寄生容量の和の2倍よりも小さくてもよい。この場合、クロストークを効果的に低減することができる。
【0017】
上記の光検出回路において、第1回路要素及び第2回路要素の各容量は、第1フォトダイオードと第2フォトダイオードとの間の寄生容量、及び第1配線と第2配線との間の寄生容量の和の0.1倍よりも大きくてもよい。この場合、クロストークを効果的に低減することができる。
【0018】
なお、上記の各場合において、第1フォトダイオードと第2フォトダイオードとの間の寄生容量、及び第1配線と第2配線との間の寄生容量のいずれか一方はゼロであってもよい。
【0019】
上記の光検出回路において、第1回路要素及び第2回路要素の各容量は、第1フォトダイオードと第2フォトダイオードとの間の寄生容量によって生じるクロストーク成分、及び第1配線と第2配線との間の寄生容量によって生じるクロストーク成分の和の2倍よりも小さい信号が第1回路又は第2回路において生じる大きさに設定されてもよい。この場合、クロストークを効果的に低減することができる。
【0020】
上記の光検出回路において、第1回路要素及び第2回路要素の各容量は、第1フォトダイオードと第2フォトダイオードとの間の寄生容量によって生じるクロストーク成分、及び第1配線と第2配線との間の寄生容量によって生じるクロストーク成分の和の0.1倍よりも大きい信号が第1回路又は第2回路において生じる大きさに設定されてもよい。この場合、クロストークを効果的に低減することができる。
【0021】
なお、上記の各場合において、第1フォトダイオードと第2フォトダイオードとの間の寄生容量によって生じるクロストーク成分、及び第1配線と第2配線との間の寄生容量によって生じるクロストーク成分のいずれか一方はゼロであってもよい。
【0022】
上記の光検出回路において、第1回路は、第1配線を通じて受けた電流を第1電圧信号に変換する第1トランスインピーダンスアンプ(Transimpedance. Amplifier;TIA)と、第2回路要素を通じて受けた電流を第2電圧信号に変換する第2TIAと、第1電圧信号と第2電圧信号との差に応じた信号を生成する回路と、を有してもよい。そして、第2回路は、第2配線を通じて受けた電流を第3電圧信号に変換する第3TIAと、第1回路要素を通じて受けた電流を第4電圧信号に変換する第4TIAと、第3電圧信号と第4電圧信号との差に応じた信号を生成する回路と、を有してもよい。例えばこのような構成を第1回路及び第2回路が有することによって、第1配線を通じて受けた電流と第2回路要素を通じて受けた電流との差に応じた第1信号、及び第2配線を通じて受けた電流と第1回路要素を通じて受けた電流との差に応じた第2信号を生成することができる。
【0023】
上記の光検出回路は、一端と他端との間に容量を有する第3回路要素を更に備えてもよい。そして、第1回路は差動入力型のTIAを含み、該TIAの一方の入力端は第1配線を介して第1フォトダイオードと接続され、他方の入力端は第2回路要素の他端及び第3回路要素の一端と接続されてもよい。そして、第2回路は差動入力型のTIAを含み、該TIAの一方の入力端は第2配線を介して第2フォトダイオードと接続され、他方の入力端は第1回路要素の他端及び第3回路要素の他端と接続されてもよい。例えばこのような構成を第1回路及び第2回路が有することによって、第1配線を通じて受けた電流と第2回路要素を通じて受けた電流との差に応じた第1信号、及び第2配線を通じて受けた電流と第1回路要素を通じて受けた電流との差に応じた第2信号を生成することができる。また、差動入力型のTIAは、一方の入力端の電位変動の影響を受けて他方の入力端の電位も変動する性質を有する。例えば、第1フォトダイオードから電流が出力されたときには、第1回路のTIAの一方の入力端の電位が僅かに変動するが、その影響を受けて、第1回路のTIAの他方の入力端の電位も変動する。これにより、第2回路要素を通って、クロストーク電流が第2回路のTIAの一方の入力端に入力される。このような場合であっても、第1回路及び第2回路のTIAの他方の入力端同士が第3回路要素を介して接続されることにより、クロストーク電流の少なくとも一部を相殺することができる。
【0024】
本開示の一実施形態による計測装置は、計測対象物に対してパルス状のレーザ光を照射し、計測対象物からの反射光の入射位置、及びレーザ光の照射から反射光の入射までの時間差に基づいて、計測対象物までの距離及び方向を計測する装置である。この計測装置は、レーザ光を出射する光出射部と、反射光を検出する光検出部と、を備える。光検出部は、上記何れかの光検出回路を有する。この計測装置によれば、光検出部が上記いずれかの光検出回路を有するので、フォトダイオード間の寄生容量及び出力配線間の寄生容量のうち少なくとも一方に起因するクロストークを低減できる。したがって、実際には存在しない物体または形状を誤って検出することを低減できる。
【0025】
以下、添付図面を参照しながら本開示による光検出回路及び計測装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0026】
図1は、本開示の一実施形態に係る計測装置1の構成を模式的に示す図である。計測装置1は、計測対象物Aに対してパルス状のレーザ光PL1を照射し、計測対象物Aからの反射光PL2の入射位置、及びレーザ光PL1の照射から反射光PL2の入射までの時間差に基づいて、計測対象物Aまでの距離及び方向を計測する。
図1に示されるように、本実施形態の計測装置1は、レーザ光PL1を出射する光出射部10と、反射光PL2を検出する光検出部20と、制御器8と、を備える。
【0027】
光出射部10は、ドライバー11と、パルスレーザ12と、発光光学系13とを有する。ドライバー11は、制御器8と電気的に接続されており、制御器8からの指示信号に基づいて、パルスレーザ12へのパルス状の駆動電流を周期的に生成する。ドライバー11は、例えばトランジスタを含む電子回路によって構成される。パルスレーザ12は、ドライバー11の電流出力端と電気的に接続されており、ドライバー11から出力された駆動電流を受ける。パルスレーザ12は、この駆動電流に応じたパルス状のレーザ光PL1を周期的に出力する。レーザ光PL1の波長は例えば300nm以上1700nm以下であり、レーザ光PL1のパルス半値幅は例えば0.1nsec以上100nsec以下である。パルスレーザ12は、例えばレーザダイオードである。発光光学系13は、パルスレーザ12と光学的に結合されている。発光光学系13は、パルスレーザ12から出力されたレーザ光PL1のスキャニングを行い、広範囲にわたってレーザ光PL1を照射する。
【0028】
光検出部20は、計測対象物Aからの反射光PL2を検出する。光検出部20は、受光光学系21と、フォトダイオード(PD)アレイ22と、トランスインピーダンスアンプ(TIA)アレイ23と、A/D変換器アレイ24とを有する。受光光学系21は、反射光PL2を受け、反射光PL2の入射位置に応じて、反射光PL2をN個(Nは2以上の整数、
図1ではN=4の場合を例示)の光路のいずれかに導入する。
【0029】
PDアレイ22は、N個のPD22aを含む。各PD22aは、例えばPN型フォトダイオードまたはアバランシェフォトダイオード(APD)である。各PD22aは、受光光学系21の対応する光路と光学的に結合されている。各PD22aは、対応する光路から入力された反射光PL2の光強度に応じた電流信号を生成し、この電流信号を出力端から出力する。N個のPD22aは、所定方向(例えばレーザ光PL1のスキャン方向)に沿って一列または二列に配置されている。
【0030】
TIAアレイ23は、PDアレイ22とともに光検出回路2を構成する。TIAアレイ23は、N個のTIA23aを含む。各TIA23aの入力端は、対応するPD22aの出力端と電気的に接続されており、対応するPD22aから電流信号を受ける。各TIA23aは、対応するPD22aから受けた電流信号を電圧信号に変換し、その電圧信号を出力端から出力する。A/D変換器アレイ24は、N個のA/D変換器24aを含む。各A/D変換器24aの入力端は、対応するTIA23aの出力端と電気的に接続されている。各A/D変換器24aは、対応するTIA23aから受けた電圧信号をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号を出力端から出力する。
【0031】
制御器8は、例えばCPU及びメモリを含むコンピュータであって、メモリに記憶されたプログラムをCPUが読み込んで実行することにより種々の機能を実現する。制御器8は、ドライバー11と電気的に接続されており、ドライバー11へ指示信号を提供する。また、制御器8は、N個のA/D変換器24aの出力端と電気的に接続されており、各A/D変換器24aから出力されたデジタル信号を受ける。制御器8は、何れのA/D変換器24aからデジタル信号を受けたかに基づいて、受光光学系21における反射光PL2の入射位置を検出し、この入射位置から、計測対象物Aが存在する方向を計測する。また、制御器8は、ドライバー11へ指示信号を提供してからデジタル信号を受け取るまでの時間に基づいて、計測装置1から計測対象物Aまでの距離を算出する。
【0032】
図2は、PDアレイ22及びTIAアレイ23を含む光検出回路2の平面図である。前述したように、PDアレイ22はN個(
図2ではN=4の場合を例示)のPD22aを有する。図示例では、N個のPD22aが一列に並んで配置されている。TIAアレイ23は、PDアレイ22に対して、PD22aの並び方向と交差する方向に間隔をあけて並んで配置されている。TIAアレイ23の各TIA23aの入力端と、対応するPD22aの出力端とは、ワイヤ25を介して電気的に接続されている。N本のワイヤ25は、PD22aの並び方向に並んで配置され、PD22aの並び方向と交差する方向に沿って延びている。言い換えると、N本のワイヤ25は、互いに沿って配設されている。
【0033】
図3は、PD22aがAPDである場合の、PDアレイ22の断面構造を模式的に示す図である。
図3に示されるように、N個のPD22aは共通基板221上にモノリシックに形成されている。具体的には、PDアレイ22は、共通基板221と、共通基板221上に形成された第1導電型の半導体層222と、半導体層222内に形成された第1導電型のN個の半導体領域223と、半導体層222内に形成された第2導電型のN個の半導体領域224と、電極225と、N個の電極226と、を有する。各半導体領域224は、各半導体領域223上に配置され、各半導体領域223と接してpn接合を形成している。一例では、共通基板221は高濃度のp型であり、半導体層222は低濃度のp型であり、半導体領域223は高濃度のp型であり、半導体領域224は高濃度のn型である。一つの半導体領域223及び一つの半導体領域224からなる個々のペアは、PD22aを構成する。電極225は共通基板221の裏面上に設けられ、共通基板221の裏面とオーミック接合を成す。各電極226は各半導体領域224上に設けられ、各半導体領域224とオーミック接合を成す。
【0034】
図4は、光検出回路2の一例として、PDアレイ22のPD22aの個数が2(すなわちN=2)である場合の光検出回路2Aの構成を示す回路図である。
図4に示すように、この光検出回路2Aは、2つのPD22a(1)及びPD22a(2)と、ワイヤ25(1)及びワイヤ25(2)と、寄生容量26と、回路要素27(1)及び27(2)と、2つの信号生成回路28(1)及び28(2)と、バイアス電源41とを備える。PD22a(1)及びPD22a(2)は、それぞれ本実施形態における第1フォトダイオード及び第2フォトダイオードである。ワイヤ25(1)及びワイヤ25(2)は、それぞれ本実施形態における第1配線及び第2配線である。回路要素27(1)及び回路要素27(2)は、それぞれ本実施形態における第1回路要素及び第2回路要素である。
【0035】
信号生成回路28(1)は本実施形態における第1回路であり、信号生成回路28(2)は本実施形態における第2回路である。信号生成回路28(1)は、シングルエンド入力型のTIA23a(1)及び23b(1)と、差動増幅回路28a(1)とを有する。信号生成回路28(2)は、シングルエンド入力型のTIA23a(2)及び23b(2)と、差動増幅回路28a(2)とを有する。TIA23a(1)及びTIA23b(1)は、それぞれ本実施形態における第1TIA及び第2TIAである。TIA23a(2)及びTIA23b(2)は、それぞれ本実施形態における第3TIA及び第4TIAである。
【0036】
バイアス電源41の負電極は、PD22a(1)及びPD22a(2)の各アノード(PD22a(1)及びPD22a(2)がPIN型である場合は、各カソード)に接続されている。バイアス電源41の正電極は、接地電位線(基準電位線)に接続されている。バイアス電源41は、PD22a(1)及びPD22a(2)に対して負のバイアス電圧を供給する。なお、PD22a(1)及びPD22a(2)の各アノードは、バイアス電源41との接続のための実質的に抵抗がゼロである配線を介して、互いに接続されている。PD22a(1)の出力端は、ワイヤ25(1)を介してTIA23a(1)の入力端と接続されている。PD22a(2)の出力端は、ワイヤ25(2)を介してTIA23a(2)の入力端と接続されている。
【0037】
寄生容量26は、TIA23a(1)の入力端とTIA23a(2)の入力端との間に生じる寄生容量である。寄生容量26の大きさは、PD22a(1)とPD22a(2)との間の寄生容量C1と、ワイヤ25(1)とワイヤ25(2)との間の寄生容量C2の和(C1+C2)とほぼ等しい。PD22a(1)とPD22a(2)との間の寄生容量C1は、互いに隣り合うPD22a(1)とPD22a(2)とが、
図3に示された共通基板221及び半導体層222を介して容量的に結合することによって主に生じる。ワイヤ25(1)とワイヤ25(2)との間の寄生容量C2は、互いに隣り合うワイヤ25(1)とワイヤ25(2)とが、
図2に示されたように互いに沿って(平行に)配設されることにより主に生じる。
【0038】
回路要素27(1)及び27(2)は、容量性の回路要素である。回路要素27(1)及び27(2)が有する容量は微小であり、例えば10fF~200fFの範囲内である。回路要素27(1)及び27(2)は、微小な容量を有するコンデンサ等の容量素子であってもよく、シリコン基板に作成されたシリコンキャパシタであってもよく、配線基板上において絶縁膜を挟んで配置された二枚の導電膜によって構成されてもよく、或いは、僅かな隙間を空けて隣り合う2本の導電線によって構成されてもよい。その他、微小な容量を実現可能な構成であれば、回路要素27(1)及び27(2)の構成は何ら限定されない。回路要素27(1)及び27(2)は、例えばTIAアレイ23の回路基板上に形成される。
【0039】
回路要素27(1)及び回路要素27(2)の各容量は、PD22a(1)とPD22a(2)との間の寄生容量、及びワイヤ25(1)とワイヤ25(2)との間の寄生容量の和の2倍よりも小さいことが好ましい。また、回路要素27(1)及び回路要素27(2)の各容量は、PD22a(1)とPD22a(2)との間の寄生容量、及びワイヤ25(1)とワイヤ25(2)との間の寄生容量の和の0.1倍よりも大きいことが好ましい。一例では、回路要素27(1)及び回路要素27(2)の各容量は、PD22a(1)とPD22a(2)との間の寄生容量、及びワイヤ25(1)とワイヤ25(2)との間の寄生容量の和と等しい。また、一例では、回路要素27(1)及び回路要素27(2)の各容量値は互いに等しい。
【0040】
PD22a(1)とPD22a(2)との間の寄生容量と、ワイヤ25(1)とワイヤ25(2)との間の寄生容量との和は、例えば測定により求められる。その場合、製造した個々の計測装置1毎に寄生容量を測定してもよいし、代表していくつかの計測装置1の寄生容量を測定し、その平均値を他の計測装置1に適用してもよい。
【0041】
回路要素27(1)の一端は、PD22a(1)の出力端と電気的に接続されている。図示例では、回路要素27(1)の一端はワイヤ25(1)を介してPD22a(1)の出力端と接続されているが、回路要素27(1)の一端はワイヤ25(1)を介さずにPD22a(1)の出力端と接続されてもよい。回路要素27(1)の他端は、TIA23b(2)の入力端と電気的に接続されている。
【0042】
回路要素27(2)の一端は、PD22a(2)の出力端と電気的に接続されている。図示例では、回路要素27(2)の一端はワイヤ25(2)を介してPD22a(2)の出力端と接続されているが、回路要素27(2)の一端はワイヤ25(2)を介さずにPD22a(2)の出力端と接続されてもよい。回路要素27(2)の他端は、TIA23b(1)の入力端と電気的に接続されている。
【0043】
信号生成回路28(1)は、PD22a(1)の出力端とワイヤ25(1)を介して電気的に接続されるとともに回路要素27(2)の他端と電気的に接続されている。信号生成回路28(1)は、ワイヤ25(1)を通じて受けた電流と、回路要素27(2)を通じて受けた電流との差に応じた電圧信号である出力信号Vout1(第1信号)を生成する。
【0044】
TIA23a(1)は、前述したN個のTIA23aのうちの一つである。TIA23a(1)は、ワイヤ25(1)を通じて受けた電流を、電圧信号Vtp1(第1電圧信号)に変換する。TIA23a(1)の出力端は、差動増幅回路28a(1)の正相入力端と接続されている。TIA23b(1)は、前述したN個のTIA23aとは別に設けられるTIAである。TIA23b(1)は、回路要素27(2)を通じて受けた電流を電圧信号Vtn1(第2電圧信号)に変換する。TIA23b(1)の出力端は、差動増幅回路28a(1)の逆相入力端と接続されている。差動増幅回路28a(1)は、TIA23a(1)から出力された電圧信号Vtp1と、TIA23b(1)から出力された電圧信号Vtn1との差に応じた(例えば比例する)出力信号Vout1を出力する。なお、TIA23b(1)及び差動増幅回路28a(1)は、TIAアレイ23に内蔵されてもよく、TIAアレイ23とは別個に設けられてもよい。
【0045】
信号生成回路28(2)は、PD22a(2)の出力端とワイヤ25(2)を介して電気的に接続されるとともに回路要素27(1)の他端と電気的に接続されている。信号生成回路28(2)は、ワイヤ25(2)を通じて受けた電流と、回路要素27(1)を通じて受けた電流との差に応じた電圧信号である出力信号Vout2(第2信号)を生成する。
【0046】
TIA23a(2)は、前述したN個のTIA23aのうちの他の一つである。TIA23a(2)は、ワイヤ25(2)を通じて受けた電流を、電圧信号Vtp2(第3電圧信号)に変換する。TIA23a(2)の出力端は、差動増幅回路28a(2)の正相入力端と接続されている。TIA23b(2)は、前述したN個のTIA23aとは別に設けられるTIAである。TIA23b(2)は、回路要素27(1)を通じて受けた電流を電圧信号Vtn2(第4電圧信号)に変換する。TIA23b(2)の出力端は、差動増幅回路28a(2)の逆相入力端と接続されている。差動増幅回路28a(2)は、TIA23a(2)から出力された電圧信号Vtp2と、TIA23b(2)から出力された電圧信号Vtn2との差に応じた(例えば比例する)出力信号Vout2を出力する。なお、TIA23b(2)及び差動増幅回路28a(2)は、TIAアレイ23に内蔵されてもよく、TIAアレイ23とは別個に設けられてもよい。
【0047】
図4に示された光検出回路2Aの作用効果について、比較例の光検出回路が有する課題とともに説明する。
図6は、比較例の光検出回路100の構成を示す回路図である。光検出回路100は、PD22a(1)及びPD22a(2)と、TIA23a(1)及びTIA23a(2)と、ワイヤ25(1)及びワイヤ25(2)と、寄生容量26と、バイアス電源41とを有するが、
図4に示された回路要素27(1)、回路要素27(2)、TIA23b(1)、TIA23b(2)、差動増幅回路28a(1)、及び差動増幅回路28a(2)を有していない。PD22a(1)、PD22a(2)、TIA23a(1)、TIA23a(2)、ワイヤ25(1)、ワイヤ25(2)、寄生容量26、及びバイアス電源41の接続関係は本実施形態と同様である。
【0048】
図7は、光検出回路100において(a)PD22a(1)から出力される電流Jin1、(b)TIA23a(1)から出力される出力信号Vout1、及び(c)TIA23a(2)から出力される出力信号Vout2、の時間波形を模式的に示す図である。PD22a(1)に光パルスが入射すると、PD22a(1)から出力された電流Jin1に含まれるパルスP1がワイヤ25(1)を通ってTIA23a(1)に入力され、TIA23a(1)において、光パルスの光強度に応じたパルスP3を含む出力信号Vout1が生成される。このとき、ワイヤ25(1)の電位が僅かに変動する。したがって、PD22a(1)から出力された電流Jin1の一部が寄生容量26及びワイヤ25(2)を通ってTIA23a(2)に入力され、TIA23a(2)において、クロストーク波形P6を含む出力信号Vout2が生成される。クロストーク波形P6は、例えばパルスP1の微分波形である。
【0049】
図5は、本実施形態の光検出回路2Aにおいて(a)PD22a(1)から出力される電流Jin1、(b)TIA23a(1)から出力される出力電圧Vtp1、(c)TIA23b(1)から出力される出力電圧Vtn1、(d)差動増幅回路28a(1)から出力される出力信号Vout1、(e)TIA23a(2)から出力される出力電圧Vtp2、(f)TIA23b(2)から出力される出力電圧Vtn2、及び(g)差動増幅回路28a(2)から出力される出力信号Vout2、の時間波形を模式的に示す図である。
【0050】
本実施形態の光検出回路2Aでは、PD22a(1)に光パルスが入射すると、PD22a(1)からパルスP1を含む電流Jin1が出力される(
図5の(a))。このパルスP1を含む電流Jin1は、ワイヤ25(1)を通って信号生成回路28(1)のTIA23a(1)に入力される。そして、TIA23a(1)において、光パルスの光強度に応じたパルスP2を含む電圧信号Vtp1が生成される(
図5の(b))。一方、信号生成回路28(1)のTIA23b(1)にはパルスを含む電流が入力されないので、TIA23b(1)から出力される電圧信号Vtn1にはパルスは含まれない(
図5の(c))。その結果、差動増幅回路28a(1)からは、光パルスの光強度に応じたパルスP3を含む出力信号Vout1が出力される(
図5の(d))。
【0051】
このとき、ワイヤ25(1)の電位が僅かに変動する。したがって、PD22a(1)から出力された電流Jin1の一部が寄生容量26及びワイヤ25(2)を通って信号生成回路28(2)のTIA23a(2)に入力される。そして、TIA23a(2)において、クロストーク波形P4を含む電圧信号Vtp2が生成される(
図5の(e))。一方、PD22a(1)から出力された電流の別の一部が、回路要素27(1)を通じて信号生成回路28(2)のTIA23b(2)に入力される。そして、TIA23b(2)において、擬似クロストーク波形P5を含む電圧信号Vtn2が生成される(
図5の(f))。差動増幅回路28a(2)からは、これらの電圧信号Vtp2及び電圧信号Vtn2の差に応じた出力信号Vout2が出力される(
図5の(g))。このとき、クロストーク波形P4は擬似クロストーク波形P5によって相殺又は低減され、出力信号Vout2においてクロストーク波形は生じないか又は小さくなる。
【0052】
PD22a(2)に光パルスが入射した場合も上記と同様である。すなわち、PD22a(2)に光パルスが入射すると、PD22a(2)からパルスを含む電流が出力される。この電流は、ワイヤ25(2)を通って信号生成回路28(2)のTIA23a(2)に入力される。そして、TIA23a(2)において、光パルスの光強度に応じたパルスを含む電圧信号Vtp2が生成される。一方、信号生成回路28(2)のTIA23b(2)にはパルスを含む電流が入力されないので、TIA23b(2)から出力される電圧信号Vtn2にはパルスは含まれない。その結果、差動増幅回路28a(2)からは、光パルスの光強度に応じたパルスを含む出力信号Vout2が出力される。
【0053】
このとき、ワイヤ25(2)の電位が僅かに変動する。したがって、PD22a(2)から出力された電流の一部が寄生容量26及びワイヤ25(1)を通って信号生成回路28(1)のTIA23a(1)に入力される。そして、TIA23a(1)において、クロストーク波形を含む電圧信号Vtp1が生成される。一方、PD22a(2)から出力された電流の別の一部が、回路要素27(2)を通じて信号生成回路28(1)のTIA23b(1)に入力される。そして、TIA23b(1)において、擬似クロストーク波形を含む電圧信号Vtn1が生成される。差動増幅回路28a(1)からは、これらの電圧信号Vtp1及び電圧信号Vtn1の差に応じた出力信号Vout1が出力される。このとき、クロストーク波形は擬似クロストーク波形によって相殺又は低減され、出力信号Vout1においてクロストーク波形は生じないか又は小さくなる。
【0054】
このように、本実施形態の光検出回路2Aによれば、寄生容量26に起因するクロストークを低減できる。なお、本実施形態では、寄生容量26が、PD22a(1)とPD22a(2)との間の寄生容量C1、及びワイヤ25(1)とワイヤ25(2)との間の寄生容量C2の和(C1+C2)である場合を例示した。しかしながら、例えばPD22a(1)とPD22a(2)とがモノリシックに集積されておらず別個の素子であるような場合には、寄生容量26はワイヤ25(1)とワイヤ25(2)との間の寄生容量C2のみからなってもよい。その場合、回路要素27(1)及び回路要素27(2)の各容量は、寄生容量C2の2倍よりも小さいことが好ましく、寄生容量C2の0.1倍よりも大きいことが好ましく、一例では、寄生容量C2と等しい。或いは、例えばワイヤ25(1)とワイヤ25(2)とが互いに隣り合っていない又は互いに沿っている部分が無いような場合には、寄生容量26はPD22a(1)とPD22a(2)との間の寄生容量C1のみからなってもよい。その場合、回路要素27(1)及び回路要素27(2)の各容量は、寄生容量C1の2倍よりも小さいことが好ましく、寄生容量C1の0.1倍よりも大きいことが好ましく、一例では、寄生容量C1と等しい。
【0055】
図8は、PD22a(1)に光パルスが入力された場合の、本実施形態の光検出回路2A及び比較例の光検出回路100の動作に関するシミュレーション結果を示すグラフである。
図8(a)は、光パルスに対応するパルスP3を含む出力信号Vout1の時間波形を示す。
図8(b)のグラフG1は、本実施形態の光検出回路2Aにおける出力信号Vout2の時間波形を示す。
図8(b)のグラフG2は、比較例の光検出回路100における出力信号Vout2の時間波形を示す。
図8(b)のグラフG2を参照すると、比較例の光検出回路100においては、出力信号Vout2にクロストーク波形が生じていることがわかる。これに対し、
図8(b)のグラフG1を参照すると、本実施形態の光検出回路2Aにおいては、出力信号Vout2にクロストーク波形は生じないことがわかる。
【0056】
なお、このシミュレーションでは、回路要素27(1)及び回路要素27(2)の各容量が寄生容量と等しいと仮定しているが、現実には、寄生容量の正確な大きさを知ることは難しく、また寄生容量の大きさは個々の計測装置1毎に僅かに異なる。しかしながら、回路要素27(1)及び回路要素27(2)の各容量が寄生容量と異なっていても、クロストーク波形の少なくとも一部が擬似クロストーク波形によって相殺されることで、クロストーク波形を小さくすることができる。
【0057】
本実施形態のように、PD22a(1)及びPD22a(2)は共通基板221にモノリシックに形成されてもよい。この場合、PD22a(1)とPD22a(2)との間には寄生容量が生じ易い。従って、本実施形態の光検出回路2Aの構成が特に有効である。
【0058】
本実施形態のように、ワイヤ25(1)及びワイヤ25(2)は互いに沿って配設された部分を有してもよい。この場合、ワイヤ25(1)とワイヤ25(2)との間には寄生容量が生じ易い。従って、本実施形態の光検出回路2Aの構成が特に有効である。
【0059】
本実施形態のように、回路要素27(1)及び回路要素27(2)の各容量は、PD22a(1)とPD22a(2)との間の寄生容量、及びワイヤ25(1)とワイヤ25(2)との間の寄生容量の和と等しくてもよい。この場合、回路要素27(1)を通じて受ける電流の大きさが、ワイヤ25(1)を通じて受けるクロストークとしての電流の大きさとほぼ等しくなる。故に、クロストークをほぼゼロに近づけることができる。
【0060】
本実施形態のように、回路要素27(1)及び回路要素27(2)の各容量は、PD22a(1)とPD22a(2)との間の寄生容量、及びワイヤ25(1)とワイヤ25(2)との間の寄生容量の和の2倍よりも小さくてもよい。この場合、クロストークを効果的に低減することができる。また、本実施形態のように、回路要素27(1)及び回路要素27(2)の各容量は、PD22a(1)とPD22a(2)との間の寄生容量、及びワイヤ25(1)とワイヤ25(2)との間の寄生容量の和の0.1倍よりも大きくてもよい。この場合、クロストークを効果的に低減することができる。なお、これらの各場合において、PD22a(1)とPD22a(2)との間の寄生容量、及びワイヤ25(1)とワイヤ25(2)との間の寄生容量のいずれか一方はゼロであってもよい。
【0061】
なお、回路要素27(1)及び回路要素27(2)の各容量は、PD22a(1)とPD22a(2)との間の寄生容量によって生じるクロストーク成分、及びワイヤ25(1)とワイヤ25(2)との間の寄生容量によって生じるクロストーク成分の和(すなわち
図5(e)に示されるクロストーク波形P4)の2倍よりも小さい信号(擬似クロストーク波形P5)が差動増幅回路28a(1)又は28a(2)において生じる大きさに設定されてもよい。この場合、クロストークを効果的に低減することができる。また、回路要素27(1)及び回路要素27(2)の各容量は、上記クロストーク成分の和(クロストーク波形P4)の0.1倍よりも大きい信号(擬似クロストーク波形P5)が差動増幅回路28a(1)又は28a(2)において生じる大きさに設定されてもよい。この場合、クロストークを効果的に低減することができる。これらの各場合において、PD22a(1)とPD22a(2)との間の寄生容量によって生じるクロストーク成分、及びワイヤ25(1)とワイヤ25(2)との間の寄生容量によって生じるクロストーク成分のいずれか一方はゼロであってもよい。
【0062】
本実施形態のように、信号生成回路28(1)は、ワイヤ25(1)を通じて受けた電流を電圧信号Vtp1に変換するTIA23a(1)と、回路要素27(2)を通じて受けた電流を電圧信号Vtn1に変換するTIA23b(1)と、電圧信号Vtp1と電圧信号Vtn1との差に応じた出力信号Vout1を生成する差動増幅回路28a(1)と、を有してもよい。また、信号生成回路28(2)は、ワイヤ25(2)を通じて受けた電流を電圧信号Vtp2に変換するTIA23a(2)と、回路要素27(1)を通じて受けた電流を電圧信号Vtn2に変換するTIA23b(2)と、電圧信号Vtp2と電圧信号Vtn2との差に応じた出力信号Vout2を生成する差動増幅回路28a(2)と、を有してもよい。例えばこのような構成を信号生成回路28(1)及び28(2)が有することによって、ワイヤ25(1)を通じて受けた電流と回路要素27(2)を通じて受けた電流との差に応じた出力信号Vout1、及びワイヤ25(2)を通じて受けた電流と回路要素27(1)を通じて受けた電流との差に応じた出力信号Vout2を生成することができる。
【0063】
図9は、PD22aの個数Nが3以上(図示例ではN=4)である場合の、光検出回路2Bの構成を示す回路図である。PD22aの個数が増えても、個々のPD22aに関連する構成は
図4に示した光検出回路2Aと同様である。すなわち、この光検出回路2Bは、PD22a(1)~PD22a(N)と、ワイヤ25(1)~25(N)と、寄生容量26(1)~26(N-1)と、回路要素27(1)~27(N)と、信号生成回路28(1)~28(N)と、バイアス電源41とを備える。但し、回路要素27(2)~27(N-1)はそれぞれ2つずつ設けられている。
【0064】
PD22a(1)~PD22a(N)のうちいずれかのPDを本実施形態における第1フォトダイオードと定義すると、そのPDと隣り合うPDが第2フォトダイオードに相当する。以下、第n番目のPD22a(n)を第1フォトダイオードとして説明する。この場合、PD22a(n+1)及びPD22a(n-1)(nが1である場合はPD22a(n+1)のみ、nがNである場合はPD22a(n-1)のみ)は、本実施形態における第2フォトダイオードである。ワイヤ25(n)は本実施形態における第1配線であり、ワイヤ25(n+1)及び25(n-1)(nが1である場合はワイヤ25(n+1)のみ、nがNである場合はワイヤ25(n-1)のみ)は本実施形態における第2配線である。回路要素27(n)は本実施形態における第1回路要素であり、回路要素27(n+1)及び27(n-1)(nが1である場合は回路要素27(n+1)のみ、nがNである場合は回路要素27(n-1)のみ)は本実施形態における第2回路要素である。
【0065】
信号生成回路28(n)は本実施形態における第1回路であり、信号生成回路28(n+1)及び28(n-1)(nが1である場合は信号生成回路28(n+1)のみ、nがNである場合は信号生成回路28(n-1)のみ)は本実施形態における第2回路である。信号生成回路28(n)は、シングルエンド入力型のTIA23a(n)及び23b(n)と、差動増幅回路28a(n)とを有する。TIA23a(n)及びTIA23b(n)は、それぞれ本実施形態における第1TIA及び第2TIAである。
【0066】
バイアス電源41の負電極は、PD22a(1)~22a(N)の各アノードに接続されている。バイアス電源41の正電極は、接地電位線(基準電位線)に接続されている。バイアス電源41は、PD22a(1)~22a(N)に対して負のバイアス電圧を供給する。なお、PD22a(1)~22a(N)の各アノードは、バイアス電源41との接続のための実質的に抵抗がゼロである配線を介して、互いに接続されている。PD22a(n)の出力端は、ワイヤ25(n)を介してTIA23a(n)の入力端と接続されている。
【0067】
寄生容量26(n)は、TIA23a(n)の入力端とTIA23a(n+1)の入力端との間に生じる寄生容量である。寄生容量26(n)の大きさは、PD22a(n)とPD22a(n+1)との間の寄生容量C1と、ワイヤ25(n)とワイヤ25(n+1)との間の寄生容量C2の和(C1+C2)とほぼ等しい。PD22a(n)とPD22a(n+1)との間の寄生容量C1は、互いに隣り合うPD22a(n)とPD22a(n+1)とが、
図3に示された共通基板221及び半導体層222を介して容量的に結合することによって主に生じる。ワイヤ25(n)とワイヤ25(n+1)との間の寄生容量C2は、互いに隣り合うワイヤ25(n)とワイヤ25(n+1)とが、
図2に示されたように互いに沿って(平行に)配設されることにより主に生じる。
【0068】
回路要素27(n)は、容量性の回路要素である。回路要素27(n)の容量値及び具体的な構成は、
図4に示された回路要素27(1)及び回路要素27(2)と同様である。回路要素27(n)の一端は、PD22a(n)の出力端と電気的に接続されている。図示例では、回路要素27(n)の一端はワイヤ25(n)を介してPD22a(n)の出力端と接続されているが、回路要素27(n)の一端はワイヤ25(n)を介さずにPD22a(n)の出力端と接続されてもよい。nが1及びNの何れでもない場合、一つの回路要素27(n)の他端はTIA23b(n-1)の入力端と電気的に接続され、別の回路要素27(n)の他端はTIA23b(n+1)の入力端と電気的に接続されている。回路要素27(1)の他端はTIA23b(2)の入力端と電気的に接続されている。回路要素27(N)の他端はTIA23b(N-1)の入力端と電気的に接続されている。
【0069】
信号生成回路28(n)は、PD22a(n)の出力端とワイヤ25(n)を介して電気的に接続されるとともに、回路要素27(n-1)及び27(n+1)の各他端と電気的に接続されている。信号生成回路28(n)は、ワイヤ25(n)を通じて受けた電流と、回路要素27(n-1)を通じて受けた電流又は回路要素27(n+1)を通じて受けた電流との差に応じた出力信号Vout(n)を生成する。
【0070】
TIA23a(n)は、前述したN個のTIA23aのうちの一つである。TIA23a(n)は、ワイヤ25(n)を通じて受けた電流を、電圧信号Vtp(n)に変換する。TIA23a(n)の出力端は、差動増幅回路28a(n)の正相入力端と接続されている。TIA23b(n)は、前述したN個のTIA23aとは別に設けられるTIAである。TIA23b(n)は、回路要素27(n-1)を通じて受けた電流及び回路要素27(n+1)を通じて受けた電流を電圧信号Vtn(n)に変換する。TIA23b(n)の出力端は、差動増幅回路28a(n)の逆相入力端と接続されている。差動増幅回路28a(n)は、TIA23a(n)から出力された電圧信号Vtp(n)と、TIA23b(n)から出力された電圧信号Vtn(n)との差に応じた(例えば比例する)出力信号Vout(n)を出力する。なお、TIA23b(n)及び差動増幅回路28a(n)は、TIAアレイ23に内蔵されてもよく、TIAアレイ23とは別個に設けられてもよい。
【0071】
図10を参照しながら、光検出回路2Bの動作を説明する。光検出回路2Bでは、PD22a(n)に光パルスPLが入射すると、PD22a(n)からパルスを含む電流Jin(n)が出力される(
図10には代表して電流Jin(2)を破線で示す)。この電流Jin(n)は、ワイヤ25(n)を通って信号生成回路28(n)のTIA23a(n)に入力される。そして、TIA23a(n)において、光パルスPLの光強度に応じたパルスを含む電圧信号Vtp(n)が生成される(
図5(b))。一方、信号生成回路28(n)のTIA23b(n)にはパルスを含む電流が入力されないので、TIA23b(n)から出力される電圧信号Vtn(n)にはパルスは含まれない(
図5(c))。その結果、差動増幅回路28a(n)からは、光パルスPLの光強度に応じたパルスを含む出力信号Vout(n)が出力される(
図5(d))。
【0072】
このとき、ワイヤ25(n)の電位が僅かに変動する。したがって、nが1及びNのいずれでもない場合、PD22a(n)から出力された電流Jin(n)の一部Ja(n)が、寄生容量26(n-1)及びワイヤ25(n-1)を通って信号生成回路28(n-1)のTIA23a(n-1)に入力され、電流Jin(n)の別の一部Jb(n)が、寄生容量26(n)及びワイヤ25(n+1)を通って信号生成回路28(n+1)のTIA23a(n+1)に入力される(
図10には代表して一部Ja(2)及びJb(2)を破線で示す)。そして、TIA23a(n-1)において、クロストーク波形を含む電圧信号Vtp(n-1)が生成され、TIA23a(n+1)において、クロストーク波形を含む電圧信号Vtp(n+1)が生成される(
図5(e))。また、PD22a(n)から出力された電流Jin(n)の更に別の一部Jc(n)が、2つの回路要素27(n)のうち一方を通じて信号生成回路28(n-1)のTIA23b(n-1)に入力され、電流Jin(n)の更に別の一部Jd(n)が、2つの回路要素27(n)のうち他方を通じて信号生成回路28(n+1)のTIA23b(n+1)に入力される(
図10には代表して一部Jc(2)及びJd(2)を破線で示す)。そして、TIA23b(n-1)において、擬似クロストーク波形を含む電圧信号Vtn(n-1)が生成され、TIA23b(n+1)において、擬似クロストーク波形を含む電圧信号Vtn(n+1)が生成される(
図5(f))。そして、差動増幅回路28a(n-1)からは、電圧信号Vtp(n-1)と電圧信号Vtn(n-1)との差に応じた出力信号Vout(n-1)が出力され、差動増幅回路28a(n+1)からは、電圧信号Vtp(n+1)と電圧信号Vtn(n+1)との差に応じた出力信号Vout(n+1)が出力される(
図5(g))。このとき、クロストーク波形は擬似クロストーク波形によって相殺又は低減され、出力信号Vout(n-1)及びVout(n+1)においてクロストーク波形は生じないか又は小さくなる。なお、n=1である場合には、上記の動作のうち信号生成回路28(n+1)に関する動作のみ行われ、n=Nである場合には、上記の動作のうち信号生成回路28(n-1)に関する動作のみ行われる。このように、光検出回路2Bによれば、寄生容量26(1)~26(N-1)に起因するクロストークを低減できる。
【0073】
なお、
図10に示すように、寄生容量26(2)は寄生容量26(3)と直列に繋がっているので、電流Jin(2)の一部Jb(2)が寄生容量26(2)を通ったのち、更にその一部Je(2)が寄生容量26(3)及びワイヤ25(4)を通ってTIA23a(4)に入力される。また、回路要素27(2)は回路要素27(4)と直列に繋がっているので、電流Jin(2)の一部Jd(2)が回路要素27(2)を通ったのち、更にその一部Jf(2)が回路要素27(4)を通ってTIA23a(4)に入力される。しかしながら、寄生容量26(2)及び回路要素27(2)のインピーダンスはTIA23a(4)の入力インピーダンスよりも格段に大きいので、一部Je(2)及びJf(2)は微小となり、無視できる。直列に繋がっている他の寄生容量、及び直列に繋がっている他の回路要素についても同様である。
【0074】
図9に示された光検出回路2Bにおいても、PD22a(1)~22a(N)は共通基板221にモノリシックに形成されてもよい。この場合、隣り合うPD間には寄生容量が生じ易い。従って、光検出回路2Bの構成が特に有効である。また、ワイヤ25(1)~25(N)は互いに沿って配設された部分を有してもよい。この場合、隣り合うワイヤ間には寄生容量が生じ易い。従って、光検出回路2Bの構成が特に有効である。
(変形例)
【0075】
図11は、上記実施形態の一変形例に係る光検出回路2Cの構成を示す回路図である。この光検出回路2Cは、上記実施形態の信号生成回路28(1)及び28(2)に代えて、信号生成回路29(1)及び29(2)を備える。また、この光検出回路2Cは、上記実施形態の他の構成に加えて、更に回路要素30を備える。その他の構成については上記実施形態の
図4と同様なので、詳細な説明を省略する。
【0076】
信号生成回路29(1)及び29(2)は、それぞれ本実施形態における第1回路及び第2回路である。信号生成回路29(1)は、PD22a(1)の出力端とワイヤ25(1)を介して電気的に接続されるとともに、回路要素27(1)の一端と電気的に接続されている。また、信号生成回路29(1)は、回路要素27(2)の他端と電気的に接続されるとともに、回路要素30の一端と電気的に接続されている。信号生成回路29(1)は、ワイヤ25(1)を流れる電流と回路要素27(1)を流れる電流との合計と、回路要素27(2)を流れる電流と回路要素30を流れる電流との合計との差に応じた出力信号Vout1(第1信号)を生成する。
【0077】
本変形例において、信号生成回路29(1)はTIA23c(1)を含み、信号生成回路29(2)はTIA23c(2)を含む。TIA23c(1)及び23c(2)は差動入力型のTIAである。TIA23c(1)及び23c(2)は、
図4に示されたTIA23a(1)及び23a(2)に代えて、TIAアレイ23を構成する。TIA23c(1)の正相入力端は、ワイヤ25(1)を介してPD22a(1)と接続されている。TIA23c(1)の逆相入力端は、回路要素27(2)の他端と接続されている。TIA23c(2)の正相入力端は、ワイヤ25(2)を介してPD22a(2)と接続されている。TIA23c(2)の逆相入力端は、回路要素27(1)の他端と接続されている。
【0078】
回路要素30は、本変形例における第3回路要素である。回路要素30は、容量性の回路要素である。回路要素30が有する容量は、回路要素27(1)及び27(2)が有する容量と同様に微小であり、例えば10fF~200fFの範囲内である。回路要素30は、微小な容量を有するコンデンサ等の容量素子であってもよく、シリコン基板に作成されたシリコンキャパシタであってもよく、配線基板上において絶縁膜を挟んで配置された二枚の導電膜によって構成されてもよく、或いは、僅かな隙間を空けて隣り合う2本の導電線によって構成されてもよい。その他、微小な容量を実現可能な構成であれば、回路要素30の構成は何ら限定されない。回路要素30は、例えばTIAアレイ23の回路基板上に形成される。
【0079】
回路要素30の容量は、回路要素27(1)及び27(2)の容量の2倍よりも小さいことが好ましい。また、回路要素30の容量は、回路要素27(1)及び27(2)の容量の0.1倍よりも大きいことが好ましい。一例では、回路要素30の容量は、回路要素27(1)及び27(2)の一方又は双方の容量と等しい。回路要素30の一端は、回路要素27(2)の他端とともに、TIA23c(1)の逆相入力端と電気的に接続されている。回路要素30の他端は、回路要素27(1)の他端とともに、TIA23c(2)の逆相入力端と電気的に接続されている。
【0080】
図12を参照しながら、光検出回路2Cの動作を説明する。光検出回路2Cにおいて、PD22a(1)に光パルスが入射すると、PD22a(1)からパルスを含む電流Jin1が出力される。この電流Jin1は、ワイヤ25(1)を通ってTIA23c(1)の正相入力端に入力される。一方、TIA23c(1)の逆相入力端にはパルスを含む電流は入力されない。したがって、TIA23c(1)からは、光パルスの光強度に応じたパルスを含む出力信号Vout1が出力される。
【0081】
このとき、ワイヤ25(1)の電位が僅かに変動する。したがって、PD22a(1)から出力された電流Jin1の一部Ja1が寄生容量26及びワイヤ25(2)を通ってTIA23c(2)の正相入力端に入力される。また、PD22a(1)から出力された電流の別の一部Jc1が、回路要素27(1)を通じてTIA23c(2)の逆相入力端に入力される。TIA23c(2)からは、一部Ja1及びJc1の差に応じた出力信号Vout2が出力される。このとき、一部Ja1に含まれるクロストーク波形は、一部Jc1に含まれる擬似クロストーク波形によって相殺又は低減される。したがって、出力信号Vout2においてクロストーク波形は生じないか又は小さくなる。
【0082】
PD22a(2)に光パルスが入射した場合も上記と同様である。すなわち、PD22a(2)に光パルスが入射すると、PD22a(2)からパルスを含む電流が出力される。この電流は、ワイヤ25(2)を通ってTIA23c(2)の正相入力端に入力される。一方、TIA23c(2)の逆相入力端にはパルスを含む電流は入力されない。したがって、TIA23c(2)からは、光パルスの光強度に応じたパルスを含む出力信号Vout2が出力される。
【0083】
このとき、ワイヤ25(2)の電位が僅かに変動する。したがって、PD22a(2)から出力された電流の一部が寄生容量26及びワイヤ25(1)を通ってTIA23c(1)の正相入力端に入力される。また、PD22a(2)から出力された電流の別の一部が、回路要素27(2)を通じてTIA23c(1)の逆相入力端に入力される。TIA23c(1)からは、これらの電流の差に応じた出力信号Vout1が出力される。このとき、TIA23c(1)の正相入力端に入力された電流に含まれるクロストーク波形は、TIA23c(1)の逆相入力端に入力された電流に含まれる擬似クロストーク波形によって相殺又は低減される。したがって、出力信号Vout1においてクロストーク波形は生じないか又は小さくなる。
【0084】
このように、本変形例の光検出回路2Cによれば、寄生容量26に起因するクロストークを低減できる。
【0085】
ここで、差動入力型のTIAは、正相入力端に電流が入力されると正相入力端の電位が変動するが、それに加えて逆相入力端の電位も変動するという性質を有する。すなわち、PD22a(1)から電流が出力されたときには、TIA23c(1)の正相入力端の電位が僅かに変動するが、これに加えてTIA23c(1)の逆相入力端の電位も変動する。これにより、回路要素27(2)を通って、クロストーク電流Jg1がTIA23c(2)の正相入力端に入力される。しかしながら本変形例では、TIA23c(1)の逆相入力端とTIA23c(2)の逆相入力端との間に、回路要素30が接続されている。この回路要素30を通って、擬似クロストーク電流Ji1がTIA23c(2)の逆相入力端に入力される。したがって、TIA23c(2)において、クロストーク電流Jg1は擬似クロストーク電流Ji1によって相殺又は低減されるので、出力信号Vout2においてクロストーク波形は生じないか又は小さくなる。PD22a(2)から電流が出力されたときも同様である。このように、TIA23c(1)の逆相入力端とTIA23c(2)の逆相入力端との間に回路要素30が接続されることにより、回路要素27(1)及び27(2)に起因するクロストーク電流の少なくとも一部を相殺することができる。
【0086】
図13は、PD22aの個数Nが3以上(図示例ではN=4)である場合の、光検出回路2Dの構成を示す回路図である。PD22aの個数が増えても、個々のPD22aに関連する構成は
図11に示した光検出回路2Cと同様である。すなわち、この光検出回路2Dは、PD22a(1)~PD22a(N)と、ワイヤ25(1)~25(N)と、寄生容量26(1)~26(N-1)と、回路要素27(1)~27(N)と、回路要素30(1)~30(N-1)と、信号生成回路29(1)~29(N)と、バイアス電源41とを備える。但し、回路要素27(2)~27(N-1)はそれぞれ2つずつ設けられている。以下、前述した光検出回路2B(
図9)との相違点を主に説明する。
【0087】
第n番目のPD22a(n)を第1フォトダイオードと定義すると、信号生成回路29(n)は本変形例における第1回路であり、信号生成回路29(n-1)及び29(n+1)は本変形例における第2回路である。信号生成回路29(n)は、PD22a(n)の出力端とワイヤ25(n)を介して電気的に接続されるとともに、回路要素27(n-1)及び27(n+1)の各他端と電気的に接続されている。信号生成回路29(n)は、ワイヤ25(n)を通じて受けた電流と、回路要素27(n-1)又は27(n+1)を通じて受けた電流との差に応じた出力信号Vout(n)を生成する。
【0088】
信号生成回路29(1)~29(N)は、TIA23c(1)~23c(N)をそれぞれ含む。TIA23c(1)~23c(N)は差動入力型のTIAである。TIA23c(1)~23c(N)は、
図9に示されたTIA23a(1)~23a(N)に代えて、TIAアレイ23を構成する。TIA23c(n)の正相入力端は、ワイヤ25(n)を介してPD22a(n)と接続されている。nが1及びNの何れでもない場合、TIA23c(n)の逆相入力端は、回路要素27(n-1)及び27(n+1)の各他端と接続されている。TIA23c(1)の逆相入力端は回路要素27(2)の他端と接続されている。TIA23c(N)の逆相入力端は回路要素27(N-1)の他端と接続されている。
【0089】
回路要素30(1)~30(N)は、本変形例における第3回路要素である。回路要素30(1)~30(N)の容量値及び具体的構成は、前述した回路要素30と同様である。回路要素30(n)の一端は、TIA23c(n)の逆相入力端と電気的に接続されている。回路要素30(n)の他端は、TIA23c(n+1)の逆相入力端と電気的に接続されている。
【0090】
図14を参照しながら、光検出回路2Dの動作を説明する。PD22a(n)に光パルスが入射すると、PD22a(n)からパルスを含む電流Jin(n)が出力される(
図14には代表して電流Jin(2)を破線で示す)。この電流Jin(n)は、ワイヤ25(n)を通ってTIA23c(n)の正相入力端に入力される。一方、TIA23c(n)の逆相入力端にはパルスを含む電流は入力されない。したがって、TIA23c(n)からは、光パルスの光強度に応じたパルスを含む出力信号Vout(n)が出力される。
【0091】
このとき、ワイヤ25(n)の電位が僅かに変動する。したがって、PD22a(n)から出力された電流Jin(n)の一部Ja(n)が寄生容量26(n-1)及びワイヤ25(n-1)を通ってTIA23c(n-1)の正相入力端に入力される。また、PD22a(n)から出力された電流Jin(n)の別の一部Jb(n)が寄生容量26(n)及びワイヤ25(n+1)を通ってTIA23c(n+1)の正相入力端に入力される。なお、
図14には代表して一部Ja(2)及びJb(2)を破線で示す。
【0092】
また、nが1及びNのいずれでもない場合、PD22a(n)から出力された電流Jin(n)の更に別の一部Jc(n)が、2つの回路要素27(n)の一方を通じてTIA23c(n-1)の逆相入力端に入力され、電流Jin(n)の更に別の一部Jd(n)が、2つの回路要素27(n)の他方を通じてTIA23c(n+1)の逆相入力端に入力される(
図14には代表して一部Jc(2)及びJd(2)を破線で示す)。TIA23c(n-1)からは、一部Ja(n)と一部Jc(n)との差に応じた出力信号Vout(n-1)が出力される。TIA23c(n+1)からは、一部Jb(n)と一部Jd(n)との差に応じた出力信号Vout(n+1)が出力される。このとき、一部Ja(n)及びJb(n)に含まれるクロストーク波形は、一部Jc(n)及びJd(n)に含まれる擬似クロストーク波形によってそれぞれ相殺又は低減される。したがって、出力信号Vout(n-1)及びVout(n+1)においてクロストーク波形は生じないか又は小さくなる。なお、n=1である場合には、上記の動作のうちTIA23c(n+1)に関する動作のみ行われ、n=Nである場合には、上記の動作のうちTIA23c(n-1)に関する動作のみ行われる。このように、光検出回路2Dによれば、寄生容量26(1)~26(N-1)に起因するクロストークを低減できる。
【0093】
また、前述したように、差動入力型のTIAは、一方の入力端の電位変動の影響を受けて他方の入力端の電位が変動する性質を有する。すなわち、PD22a(n)から電流Jin(n)が出力されたときには、TIA23c(n)の正相入力端の電位が僅かに変動するが、その影響を受けて、TIA23c(n)の逆相入力端の電位も変動する。これにより、回路要素27(n-1)を通って、クロストーク電流Jg(n)がTIA23c(n-1)の正相入力端に入力され、また、回路要素27(n+1)を通って、クロストーク電流Jh(n)がTIA23c(n+1)の正相入力端に入力される。しかしながら本変形例では、TIA23c(n-1)の逆相入力端とTIA23c(n)の逆相入力端との間に回路要素30(n-1)が接続され、TIA23c(n)の逆相入力端とTIA23c(n+1)の逆相入力端との間に回路要素30(n)が接続されている。したがって、回路要素30(n-1)を通って、擬似クロストーク電流Ji(n)がTIA23c(n-1)の逆相入力端に入力され、回路要素30(n)を通って、擬似クロストーク電流Jj(n)がTIA23c(n+1)の逆相入力端に入力される。故に、TIA23c(n-1)においてクロストーク電流Jg(n)は擬似クロストーク電流Ji(n)によって相殺又は低減され、TIA23c(n+1)においてクロストーク電流Jh(n)は擬似クロストーク電流Jj(n)によって相殺又は低減される。故に、出力信号Vout(n-1)及びVout(n+1)において、回路要素30(n-1)及び30(n)に起因するクロストーク波形は生じないか又は小さくなる。なお、n=1である場合には、上記の動作のうちTIA23c(n+1)に関する動作のみ行われ、n=Nである場合には、上記の動作のうちTIA23c(n-1)に関する動作のみ行われる。このように、TIA23c(n)の逆相入力端とTIA23c(n-1)及び23c(n+1)の各逆相入力端との間に回路要素30(n-1)及び30(n)がそれぞれ接続されることにより、回路要素27(n-1)及び27(n+1)に起因するクロストーク電流の少なくとも一部を相殺することができる。
【0094】
本開示による光検出回路及び計測装置は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、信号生成回路は、上記実施形態及び変形例において説明された構成に限定されず、或る電流と別の電流との差に応じた出力信号を生成できるものであれば、他に様々な構成を採用できる。
【0095】
また、上記実施形態では電圧信号Vtp(n)と電圧信号Vtn(n)との差を示す電圧信号を差動増幅回路28a(n)によって生成しているが、電圧信号Vtp(n)及びVtn(n)をA/D変換してデジタル化したのち、制御器8または他のデジタルデバイスにおいて差を演算してもよい。
【符号の説明】
【0096】
1…計測装置、2…光検出回路、2A~2D…光検出回路、8…制御器、10…光出射部、11…ドライバー、12…パルスレーザ、13…発光光学系、20…光検出部、21…受光光学系、22…PDアレイ、23…TIAアレイ、23a,23a(1)~23a(N)…TIA、23b(1)~23b(N)…TIA、23c(1)~23c(N)…TIA、24…A/D変換器アレイ、24a…A/D変換器、25,25(1)~25(N)…ワイヤ、26,26(1)~26(N-1)…寄生容量、27(1)~27(N)…回路要素、28(1)~28(N),29(1)~29(N)…信号生成回路、28a(1)~28a(N)…差動増幅回路、30,30(1)~30(N)…回路要素、41…バイアス電源、100…光検出回路、221…共通基板、222…半導体層、223,224…半導体領域、225,226…電極、A…計測対象物、PL…光パルス、PL1…レーザ光、PL2…反射光、Vout1,Vout2,Vout(1)~Vout(N)…出力信号、Vtp1,Vtn1,Vtp2,Vtn2,Vtp(1)~Vtp(N),Vtn(1)~Vtn(N)…電圧信号。