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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153815
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】耐火被覆補修材
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20221005BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20221005BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20221005BHJP
   C04B 14/46 20060101ALI20221005BHJP
   C04B 24/04 20060101ALI20221005BHJP
   C04B 24/08 20060101ALI20221005BHJP
   C04B 24/18 20060101ALI20221005BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20221005BHJP
   C04B 24/38 20060101ALI20221005BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20221005BHJP
   C04B 24/32 20060101ALI20221005BHJP
   C04B 111/28 20060101ALN20221005BHJP
【FI】
C04B28/02
E04B1/94 E
E04G23/02 A
C04B14/46
C04B24/04
C04B24/08
C04B24/18 Z
C04B24/12 A
C04B24/38 Z
C04B24/38 A
C04B24/26 B
C04B24/26 E
C04B24/26 F
C04B24/32
C04B111:28
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056540
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000126609
【氏名又は名称】株式会社エーアンドエーマテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤 雅史
(72)【発明者】
【氏名】山本 千奈津
(72)【発明者】
【氏名】品川 肇
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 智大
【テーマコード(参考)】
2E001
2E176
4G112
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001GA05
2E001HA01
2E001HA32
2E001HF12
2E176AA00
2E176BB01
4G112MD01
4G112PA18
4G112PB16
4G112PB18
4G112PB20
4G112PB22
4G112PB29
4G112PB31
4G112PB36
4G112PB39
4G112PB40
4G112PC01
4G112PC08
4G112PC15
(57)【要約】
【課題】吹付けロックウール耐火被覆材に対する水練り補修材であって、付着性、作業性に優れ、かつ耐火被覆性にも優れる水練り耐火被覆補修材を提供すること。
【解決手段】ロックウール55~65質量部、セメント35~45質量部、アニオン性界面活性剤0.2~2.2質量部及び増粘剤0.1~3質量部を含有する水練り耐火被覆補修材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロックウール55~65質量部、セメント35~45質量部、アニオン性界面活性剤0.2~2.2質量部及び増粘剤0.1~3質量部を含有する水練り耐火被覆補修材。
【請求項2】
アニオン性界面活性剤が、スルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、高級脂肪酸塩、エーテルカルボン酸塩及びアシルアミノ酸塩から選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載の水練り耐火被覆補修材。
【請求項3】
増粘剤が、カラギーナン、デキストリン、水溶性セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、カルボキシビニルポリマー、(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10-30))コポリマー、キサンタンガム、カルボキシメチルキチン、キトサン、及びポリエチレンオキサイドから選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載の水練り耐火被覆補修材。
【請求項4】
吹付けロックウール耐火被覆用補修材である請求項1~3のいずれかに記載の水練り耐火被覆補修材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火被覆補修材に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、建築用途向けの耐火被覆工法は大きく吹付け工法、巻付け工法、成形板工法及び塗装工法などに大別され、その中でも代表的吹付け工法である吹付けロックウールは市場シェアの7~8割を占めている。これは複雑な構造体に対して対応可能であること、ホース圧送により広範囲での連続的な施工が可能で施工効率が高いこと、コストが安いことなどによる。
一方、耐火被覆工事の後には様々な工事が行われ、これらの工事や接触等により吹付けロックウールが損傷することがある。その場合は、再度吹付けによる補修を行うことが望ましいが、既に吹付けが不可能な場所や、竣工後においては吹付けによる補修ができないことがあり、多くは、水練りの補修材等で欠損部分を塗り付けることが多い。
【0003】
吹付けロックウールに対する部分補修は、再度吹付けにより補修をするか、または水練りの補修材によって補修するしかなかった。後者の場合は、コテ塗りによって補修を行うため、コテ塗りの施工性を向上させるため、充填材や増粘材等の助剤を多く添加することが必要であった(特許文献1)。そのため、吹付けロックウールとは全く異なる材料であり、一部材一認定とされる耐火構造認定には適さないと判断されることもあった。そのため、その使用の是非については、運用上にて判断がなされてきた。
また、これまでの水練り補修材は、吹付けロックウールに比べかさ密度が大きく、重量が大きい。そのため、比較的脆弱な吹付けロックウールに補修材を塗り付けた場合、その重量により補修材が脱落する等の不具合が発生することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-156136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、吹付けロックウール耐火被覆材に対する水練り補修材であって、付着性、作業性に優れ、かつ耐火性能及び吹付けロックウール被覆耐火構造に対する適合適性に優れる水練り耐火被覆補修材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、前記課題を解決すべく種々検討した結果、ロックウール55~65質量部、セメント35~45質量部、アニオン性界面活性剤0.2~2.2質量部及び増粘剤0.1~3質量部を含有する組成物に水を加えて混練すれば、鏝塗り作業性及びロックウールへの付着性に優れ、補修後の被覆材の耐火性を高く維持できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の発明[1]~[4]を提供するものである。
[1]ロックウール55~65質量部、セメント35~45質量部、アニオン性界面活性剤0.2~2.2質量部及び増粘剤0.1~3質量部を含有する水練り耐火被覆補修材。
[2]アニオン性界面活性剤が、スルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、高級脂肪酸塩、エーテルカルボン酸塩及びアシルアミノ酸塩から選ばれる1種又は2種以上である[1]記載の水練り耐火被覆補修材。
[3]増粘剤が、カラギーナン、デキストリン、水溶性セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、カルボキシビニルポリマー、(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10-30))コポリマー、キサンタンガム、カルボキシメチルキチン、キトサン、及びポリエチレンオキサイドから選ばれる1種又は2種以上である[1]又は[2]記載の水練り耐火被覆補修材。
[4]吹付けロックウール耐火被覆用補修材である[1]~[3]のいずれかに記載の水練り耐火被覆補修材。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水練り耐火被覆補修材は、これまでの水練り耐火被覆補修材では実現できなかった吹付けロックウール同等のかさ密度と低熱伝導率を確保し、さらに、吹付けロックウールに対して、吹付けロックウールの母材強度以上の付着性を確保できている。また、本発明の水練り被覆補修材は、アニオン性界面活性剤と増粘剤の配合により、鏝塗りの作業性も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の水練り耐火被覆補修材は、ロックウール55~65質量部、セメント35~45質量部、アニオン性界面活性剤0.1~2.2質量部及び増粘剤0.1~3質量部を含有することを特徴とする。ここで、本発明の耐火被覆補修材の各成分の含有量は、ロックウール及びセメントの合計を100質量部とし、他の成分はその外割である。
【0010】
ロックウールは、玄武岩、鉄鋼スラグなどに石灰などを混合し、高温で溶解して製造される人造鉱物繊維であり、主成分はケイ酸(SiO)と酸化カルシウム(CaO)である。ロックウールとしては、市販されているロックウール又は粉砕ロックウールを使用することができる。
ロックウールは、通常、単繊維径3μm~10μmであり、平均繊維長は100μm~15000μmである。ロックウールの品質は、JIS A 9504「人造鉱物繊維保温材」に規定され、この基準により管理されている。
粉砕ロックウールは、ロックウールを物理的に粉砕したものであり、単繊維径はロックウールと同様3μm~10μmであり、平均繊維長は20μm~1000μmである。
【0011】
ロックウールは、本発明補修材中に55~65質量部含有する。ロックウールの含有量が55質量部未満の場合には、流動性が高くなるため、一度に塗り付けられる厚みが薄くなり、施工性が悪くなる。また、ロックウールの含有量が65質量部を超えると、鏝仕上げのときに耐火被覆補修材の表面を平坦にし難く、補修材の鏝伸びや耐火被覆補修材の打ち継ぎのなじみが劣る。好ましいロックウールの含有量は56~65質量部であり、さらに好ましくは57~64質量部である。
【0012】
本発明補修材に用いるセメントとしては、普通、早強、超早強、中庸熱、低熱ポルトランドセメント等のポルトランドセメント、白色セメント、高炉セメント、アルミナセメント、超速硬セメント、あるいは都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰等の廃棄物を原料として利用したエコセメント等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。高い初期強度が得られることから、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント又はエコセメントから選ばれる1種又は2種以上を使用することが好ましい。
【0013】
セメントは、本発明補修材中に35~45質量部含有する。セメントの含有量が35質量部未満の場合には、粘りが少なく、鉄骨下地に対してすべりが生じるので好ましくない。また、セメントの含有量が45質量部を超えると、粘りが強く、伸びや鏝離れが劣り、施工性が悪い。好ましいセメントの含有量は35~44質量部であり、さらに好ましくは35~43質量部である。
【0014】
本発明補修材に用いられるアニオン性界面活性剤としては、アルカリ環境で高い起泡性を発揮する観点から、スルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、高級脂肪酸塩、エーテルカルボン酸塩及びアシルアミノ酸塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、スルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩及びエーテルカルボン酸塩から選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
スルホン酸塩としては、アルファオレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルファスルホ脂肪酸メチルエステル塩などが好ましい。
アニオン性界面活性剤は、良好な起泡性を得る観点から、本発明補修材中に0.2~2.2質量部含有するのが好ましく、0.3~1.5質量部含有するのがより好ましい。
【0015】
本発明補修材に用いられる増粘剤としては、アニオン性界面活性剤と水の混練により発生した泡を保持させ、鏝による作業性を良好にする観点から、水溶性増粘剤が好ましく、カラギーナン、デキストリン、水溶性セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、カルボキシビニルポリマー、(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10-30))コポリマー、キサンタンガム、カルボキシメチルキチン、キトサン、及びポリエチレンオキサイドから選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。さらには、カラギーナン、デキストリン、水溶性セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、カルボキシビニルポリマー、(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10-30))コポリマー、キサンタンガム及びポリエチレンオキサイドから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
ここで、水溶性セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース。ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロースなどが挙げられる。また、ポリエチレンオキサイドとしては、分子量6万から700万のポリエチレンオキサイドが好ましい。
増粘剤は、泡安定性及び鏝作業性向上効果の観点から、本発明補修材中に0.1~3質量部含有するのが好ましく、0.1~2質量部含有するのがより好ましい。
【0016】
本発明補修材には、前記成分のほか、防錆剤、防カビ剤、着色顔料、水溶性高分子樹脂エマルションなどの接着性向上成分などを含有させることができる。
【0017】
本発明補修材は、ミキサーで各材料を乾式で予め混合しておくのが良い。好ましくは、予め工場で原料を均一に混合し、一定量ごとに袋詰めして製品化したものを現場に搬入して使用する。水を加える前に前記材料を予め混合しておくことで、耐火性能や鏝仕上げ性能等のばらつきが少なくなる。前記材料を混合したものに水を加えて混練し、柔らかいモルタル状にして使用する。混練時にはモルタルミキサー、左官ミキサー、ハンドミキサー、コンクリートミキサー等のミキサーを用いて混練することが均質となるので好ましい。混練した補修材は、鏝を用いて耐火被覆材の欠損箇所等に塗り付ける。この塗り付ける方法は、一般の左官モルタル、特に補修用の左官モルタルの塗り付ける方法を適用できる。耐火被覆材の欠損箇所等に塗り付ける場合は、塗り付ける欠損部分に、予め水または水溶性高分子樹脂エマルションを塗布しておくことが、欠損部分の耐火被覆材と本発明補修材との接着力が増すので好ましい。
【0018】
本発明の補修材の対象となる耐火被覆としては、吹付けロックウールが最適である。吹付けロックウール耐火被覆を補修することにより、吹付けロックウール同等のかさ密度と低熱伝導率を確保し、さらに、吹付けロックウールに対して、吹付けロックウールの母材強度以上の付着性を確保できる。
【実施例0019】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0020】
実施例1
(方法)
ロックウール(太平洋マテリアル(株)製)1268.5gを計量し、ビニル袋にいれる。このビニル袋にセメント(太平洋セメント(株)製)713.5g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(90EMP-4000、松本油脂製薬(株)製)8.0g、ポリエチレンオキサイド(アルコックスE-60、明成化学工業(株)製)2.0g、アルファオレフィン(C14-C18)スルホン酸ナトリウム(ライオンスペシャリティケミカルズ(株)製)8.0gを投入し、材料が均一になるように振り混ぜる。ソイルミキサーに混合物を投入し、低速(160r.p.m)で撹拌しながら混練水2.4Lを投入する。混練水の投入完了時点から撹拌時間の測定を開始する。低速(160r.p.m)で30秒撹拌後、高速(330r.p.m)で90秒撹拌する。容積既知の容器にスラリーを詰め、重量を計測し、スラリー密度を算出する。
セメント水和水15%と水比より、推定かさ密度を算出する。推定かさ密度が0.28g/cm程度であれば撹拌を終了する。
【0021】
【数1】
【0022】
実施例2~7及び比較例1~4については、各成分を表1及び2に記載の量を使用して、上記実施例1と同様にして実施した。
得られたスラリーをモルタル供試体成形用型に詰め、表面を削り取って上面を平滑にし、室内で養生して成形供試体を作製した。この供試体を用いて、JIS A 1476:2016 建築材料の含水率測定方法8.4項に規定される乾燥密度の測定方法に準じてかさ密度を測定した。
【0023】
付着力の測定
本発明補修材を吹付けロックウールの上に塗り付けて試験体を作製した。次に、試験体の上面に鉄板を接着した後、鉄板にプッシュプルゲージを繋いで垂直に引張り、破断荷重を測定した。破断荷重と破断面積から、次式を用いて付着強度を算出した。
【0024】
【数2】
【0025】
熱伝導率の測定
JIS A 1412-2:1999 熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法-第2部:熱流計法(HFM法)を用い、測定温度は、中心温度が20℃、温度差は20℃に設定して測定した。
【0026】
鏝作業性の評価
本発明補修材を鉄板に鏝塗りし、その際の作業性(鏝伸び、鏝離れ、鏝切れ)について評価した。鏝伸びとは、補修材を塗り広げた場合に材料が切れずになめらかに広がる程度を評価したものである。鏝離れとは、補修材を上下左右に塗り広げた場合の鏝への粘着力(べたつき)の程度を評価したものである。鏝切れとは、補修材を塗り広げた後、鏝を補修材から離した場合の鏝への付着量の少なさ(鏝残り)を評価したものである。これらを総合的に判断し、4段階(◎:大変良好、〇:良好、△:普通、×:不良)で評価した。
【0027】
(結果)
実施例1~7及び比較例1~4の組成と試験結果を表1及び2に示す。表中-の欄は、作業性が悪いので、試験をしなかった。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
表1及び表2より、ロックウール55~65質量部、セメント35~45質量部、アニオン性界面活性剤0.2~2.2質量部及び増粘剤0.1~3質量部を含有する水練り耐火被覆補修材を用いて吹付けロックウール耐火被覆を補修すれば、吹付けロックウール同等のかさ密度と低熱伝導率を確保し、さらに、吹付けロックウールに対して、吹付けロックウールの母材強度以上の付着性を確保できることがわかる。