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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153820
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】化粧板
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20221005BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20221005BHJP
   B32B 13/12 20060101ALI20221005BHJP
   E04F 13/02 20060101ALI20221005BHJP
   E04F 13/14 20060101ALI20221005BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20221005BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20221005BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/18 Z
B32B13/12
E04F13/02 A
E04F13/14 102B
C09D201/00
C09D7/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056545
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000126609
【氏名又は名称】株式会社エーアンドエーマテリアル
(71)【出願人】
【識別番号】392007566
【氏名又は名称】ナトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 雅美
(72)【発明者】
【氏名】加藤 丈尚
(72)【発明者】
【氏名】白石 武士
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 利尚
【テーマコード(参考)】
2E110
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
2E110AA02
2E110AA48
2E110AA57
2E110AB04
2E110AB23
2E110BB04
2E110BB05
2E110CA03
2E110EA09
2E110GA33W
2E110GA42X
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2E110GB01X
2E110GB02X
2E110GB11X
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2E110GB32W
2E110GB32X
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2E110GB42X
2E110GB43X
2E110GB44X
2E110GB46W
2E110GB52W
2E110GB52X
2E110GB54W
2E110GB62X
4F100AE01A
4F100AG00B
4F100AG00C
4F100AG00H
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK51
4F100AK51B
4F100AK51C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
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4F100DE01C
4F100DE04B
4F100DE04C
4F100DH02A
4F100EH46
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4F100GB07
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4F100HB00C
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4F100JL10B
4F100JL10C
4F100JN01
4J038DG001
4J038HA486
4J038NA01
4J038PA17
4J038PA19
4J038PB05
(57)【要約】
【課題】特殊な化粧シートを接着する、焼き付け処理などの特殊な操作をすることなく、表面硬度が十分に高く、かつ不燃性も確保した化粧板を提供すること。
【解決手段】基板の少なくとも一方の面に2以上の化粧層を有する化粧板であって、当該複数の化粧層の最表面化粧層及び/又はその直下の化粧層がガラスビーズを固形分あたり35質量%以上90質量%以下含有する塗料組成物で形成されていることを特徴とする化粧板。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の少なくとも一方の面に2以上の化粧層を有する化粧板であって、当該複数の化粧層の最表面化粧層及び/又はその直下の化粧層がガラスビーズを固形分あたり35質量%以上90質量%以下含有する塗料組成物で形成されていることを特徴とする化粧板。
【請求項2】
前記ガラスビーズの平均粒子径が5μm以上60μm以下である請求項1記載の化粧板。
【請求項3】
前記ガラスビーズの形状が球状又は不規則である請求項1又は2記載の化粧板。
【請求項4】
化粧板が、内装用化粧板である請求項1~3のいずれか1項記載の化粧板。
【請求項5】
化粧板が、窯業系化粧板である請求項1~4のいずれか1項記載の化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装用などに使用される化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物の内装仕上げとして、種々の化粧板が使用されている。化粧板としては、基板表面にウレタン樹脂系塗料、アクリル樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料などの各種塗料を塗装した化粧板やシートやフィルムを基板に接着した化粧板がある。これら化粧板は硬質な物が当たると引っかき傷や凹みが生じてしまい、この補修は困難な場合が多いことから、長期間意匠性を保つためにも表面硬度の高いことが要求されている。
一方、これら化粧板には、火災等が生じた際の安全性確保のため、建築基準法による不燃認定の基準を満たすことが求められている。
【0003】
化粧板の表面硬度を向上させる方法としては基材にシーラー層を設ける方法(特許文献1)がある。しかしながら、シーラー層を設けるのみでは十分な表面硬度を得ることは困難であった。より高硬度の表面硬度を得るために、高密度原紙と塗膜にガラスビーズを添加したトップコートを塗布する方法(特許文献2)もあるが、この方法は高密度原紙とトップコートの両方が必須であること、さらにシートを貼り合せる基材や基材とシートを貼り合せる際に用いる接着剤の種類によっては、貼り合せた後の化粧板において不燃性を確保できないという問題があった。
また、トップコートのみで高硬度の塗膜表面を得る方法(特許文献3)もあるが、この方法は焼付処理が必要であり、その時の基板温度を200~300℃に到達させるため、パルプなどの有機繊維を含有する窯業系化粧板に適用することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-210742号公報
【特許文献2】特開2000-218735号公報
【特許文献3】特開平08-183926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、特殊な化粧シートを接着する、焼き付け処理などの特殊な操作をすることなく、表面硬度が十分に高く、かつ不燃性も確保した化粧板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、不燃性を確保しながら表面硬度を高くすべく種々検討した結果、複数の化粧層のうち、最表面化粧層及び/又はその直下の化粧層を特定量のガラスビーズを含有する塗料組成物で形成することにより、表面硬度が顕著に向上し、不燃性も確保した化粧板が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の発明[1]~[5]を提供するものである。
[1]基板の少なくとも一方の面に2以上の化粧層を有する化粧板であって、当該複数の化粧層の最表面化粧層及び/又はその直下の化粧層がガラスビーズを固形分あたり35質量%以上90質量%以下含有する塗料組成物で形成されていることを特徴とする化粧板。
[2]前記ガラスビーズの平均粒子径が5μm以上60μm以下である[1]記載の化粧板。
[3]前記ガラスビーズの形状が球状又は不規則である[1]又は[2]記載の化粧板。
[4]化粧板が、内装用化粧板である[1]~[3]のいずれかに記載の化粧板。
[5]化粧板が、窯業系化粧板である[1]~[4]のいずれかに記載の化粧板。
【発明の効果】
【0008】
本発明の化粧板は、引っかき傷や凹みを生じにくい十分に高い表面硬度を有し、かつ不燃性能を有していることから内装用化粧板として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の化粧板は、基板の少なくとも一方の面に2以上の化粧層を有する化粧板であって、当該複数の化粧層の最表面化粧層及び/又はその直下の化粧層がガラスビーズを固形分あたり35質量%以上90質量%以下含有する塗料組成物で形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の化粧板の基板としては、内装用化粧板の基板、特に不燃性能を有する点から窯業系化粧板の基板が好ましい。
窯業系化粧板の基板としては、住宅等の壁面を形成する繊維強化セメント板(けい酸カルシウム板を含む)、木質系セメント板、木毛セメント積層板、火山性ガラス質複層板、押し出し成形セメント板、スラグせっこう板、軽量気泡コンクリート板、ガラス板、セラミックス板等が挙げられる。
これらの基板のうち、繊維強化セメント板がより好ましい。
【0011】
これらの基板は、例えばマトリックスを形成するための主原料としてポルトランドセメント等の水硬性セメントを使用し、繊維原料として石綿以外の繊維を使用するとともに、必要に応じてワラストナイトや炭酸カルシウム粉末等の混和材を原料として使用する基板であるのが好ましく、具体的にはJIS A 5430に規定された繊維強化セメント板等の基板が好ましい。特に、マトリックスを形成するための原料として、石灰質原料とけい酸質原料とを用い、養生工程においてオートクレーブ養生を行ってなる繊維強化セメント板の一種である0.8けい酸カルシウム板や1.0けい酸カルシウム板は、柔軟性に優れた基板であり、強度が高く吸水による長さ変化率が小さいので、本発明の窯業系化粧板の基板として好適である。
【0012】
前記繊維原料としては、例えばパルプ、合成パルプ、ポリプロピレン繊維、レーヨン繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維等の有機繊維、鋼繊維(スチール線繊維)、アモルファス金属繊維等の金属繊維、ガラス繊維、炭素繊維(カーボンファイバー)、ロックウール繊維、ウィスカー等の無機繊維などが挙げられるが、本発明では、前記のオートクレーブ養生を採用した場合であっても、化粧板の補強性及び靭性を向上できるという観点から、パルプを使用する場合が好ましい。なお、ここでいうパルプとは、木材などの植物原料を機械的または化学的に処理してセルロースを取り出した状態のものであり、いわゆるセルロースパルプを指す。
繊維強化セメント板中の繊維、特にパルプ等の有機繊維の含有比率は、マトリックスによっても異なるが、強度及び不燃性の確保の点から、5~9質量%であることが好ましく、6~8質量%であるのがさらに好ましい。パルプ等の有機繊維の含有比率が少ないと化粧板の機械的強度が低下し、熱負荷、乾燥、炭酸化や衝撃による割れを発生しやすくなる。逆にパルプ等の有機繊維の含有率が多いと、不燃性を維持することが困難となる。
【0013】
水硬性セメントとしては、当業界で一般的に用いられているものであればよく、例えばポルトランドセメントが挙げられる。
必要に応じて用いられる各種添加材としては、当業界で一般的に用いられているものが挙げられ、とくに制限されないが、例えばワラストナイト、マイカ、炭酸カルシウム等の粉末、繊維強化セメント板やせっこうボードの廃材粉末等が挙げられる。なお、オートクレーブ養生を行う場合は、セメント中の石灰との水熱反応硬化によりさらに強度を上げる点から、けい酸質原料、例えば粉末硅石等の結晶質シリカ、フライアッシュ等の非晶質シリカ等を添加するとともに、必要に応じて石灰質原料、例えば生石灰、消石灰等も追加して、マトリックス成分のCaO/SiO2のモル比が0.7~1.2となるように調整して用いるのが好ましい。
【0014】
本発明において、基板の厚さは、耐衝撃性、軽量性、施工性の点から、3~12mmが好ましく、4~8mmであるのがさらに好ましい。
【0015】
また本発明において、基板のかさ密度は、軽量性、機械的強度、施工性の点から、0.6~1.8g/cm3が好ましく、0.6~1.2g/cm3であるのがさらに好ましい。
【0016】
また本発明において、基板の総発熱量は、不燃性の点から、5MJ/m2以下であるのが好ましく、4.7MJ/m2以下であるのがさらに好ましい。
【0017】
なお、本発明において、基板又は化粧板の厚さは、JIS A 5430:2013、9.2.2項b)に従い測定した値である。かさ密度は、JIS A 5430:2013、9.5項に従い測定した値である。
基板の総発熱量は、JIS A 5430:2013、附属書JAに従い測定した値である。
【0018】
本発明の化粧板は、基板の少なくとも一方の面に2以上の化粧層を有する。
内装用化粧板、特に窯業系化粧板の場合、当該化粧層としては、通常、基板表面からシーラー層、下塗り層、着色層、クリア層などが施される。ここで、着色層の上にクリア層を設ける場合もあるが、着色層として、顔料を含むエナメル塗料を採用し、その表面にクリア層を設けない場合もある。
本発明では、当該複数の化粧層の最表面化粧層及び/又はその直下の化粧層がガラスビーズを固形分あたり35質量%以上90質量%以下含有する塗料組成物で形成されていることを特徴とすることから、本発明の最表面化粧層は、通常、前記の着色層又はクリア層に相当する。また、その直下の化粧層は、通常、着色層又は下塗り層に相当する。具体的には、下塗り層及び/又は着色層に前記ガラスビーズを含有する塗料組成物で形成する場合、着色層及び/又はクリア層に前記ガラスビーズを含有する塗料組成物で形成する場合がある。ただし、後述する着色層とクリア層の間に印刷層を設けた場合、該印刷層は直下の化粧層には当たらないものとする。
さらに、着色層の上に着色層を重ね塗りすることもでき、この場合は基材側となる着色層と表面側となる着色層のどちらかの着色層、又は基材側となる着色層と表面側となる着色層の双方に前記ガラスビーズを含有する塗料組成物を用いればよい。さらに前記ガラスビーズを含む塗料組成物で形成された着色層の上に前記ガラスビーズの含有の有無を問わない塗料組成物で形成されたクリア層を設けることも可能である。
塗料組成物中のガラスビーズの含有量は、前記各層の形成に用いられる塗料組成物固形分当たりのガラスビーズの含有量である。
【0019】
次に、化粧層である、シーラー層、下塗り層、着色層、クリア層について説明する。
化粧板の基板と下塗り層との間には、シーラー層を設けることが好ましい。シーラー層を設けることにより、基板の表層が強化されるとともに、表面へのアルカリの溶出が防止でき、その上層となる下塗り層との密着性も向上する。
シーラー層は、公知のシーラーを用いて形成させることができ、例えば湿気硬化型ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等の硬化性樹脂を用い、基板の表面に塗布し硬化させることにより行われる。シーラーは基板への含浸性が良く、高不揮発分であり、かつ、基板中の水分や雰囲気の湿気と反応して三次元架橋し、耐水性能等が良いポリイソシアネート又はポリイソシアネートとポリオールとの反応生成物である遊離イソシアネート基を有するプレポリマー及び酢酸ブチルのような溶剤を主成分とする湿気硬化型ウレタン系のものが好適である。また、化粧板としての黄変が問題となる場合には、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)等の脂肪族イソシアネート、IPDI(イソホロンジイソシアネート)等の脂環族イソシアネートを使用することが好ましい。なお、昨今のVOC対策の観点から溶剤を含んでいない無溶剤シーラーまたは水系シーラーを使用することや、ケイ酸リチウムあるいはケイ酸ナトリウムなどのケイ酸塩系シーラー等の無機シーラーや、テトラエトキシシランやテトラメトキシシランなどを主成分とするシラン化合物系シーラーも使用できる。
シーラー層の形成は、例えば繊維強化セメント板の表面温度を50~60℃に加熱し、公知のロールコーター、スプレー等の方法でシーラーを塗布し、次いで硬化することにより行うことができる。含浸シーラーの粘度は、使用する含浸シーラーの種類、塗装方法を勘案して適宜決めることができ、硬化は、例えば加熱乾燥することにより行うことができる。
含浸シーラーの成分中の有機固形分量は、基板の単位面積(m2)当たり3~50gとなるように設定するのが好ましい。
【0020】
化粧板は、通常、シーラー層表面上に下塗り層を有する。下塗り層を形成することにより、基板の表面に存在する大小の凹凸部や、空隙部が塗料により充填され、凹凸感、塗料の吸い込み斑による光沢・色のばらつき感が抑制される。また、化粧板にピンホールのような不良が生じる可能性も減じられる。
【0021】
下塗り層の膜厚は、5~100μmであるのが、化粧板の表面平滑性及びその上下の塗膜との密着性、形成性、防水性、基材成分の析出防止性、塗膜ピンホールの防止、塗膜硬化性、表面異物埋没性、膜厚管理の容易性の点で好ましい。より好ましい膜厚は、20~90μmであり、さらに好ましくは25~70μmである。
本明細書において、ガラスビーズを含有する塗料組成物で形成された塗膜層の膜厚は、ガラスビーズの粒子により形成される凸部の影響を受けない、表面が平らな領域の厚さである。
【0022】
下塗り層を形成するための塗料組成物は、表面平滑性、耐薬品性、塗膜密着性、研磨加工性、塗膜硬度、塗装容易性、クラック防止性の点から、不飽和ポリエステル系塗料及び/またはアクリレート系塗料が好ましく、具体的にはエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、フタル酸ジアリルエステルなどのアリル系不飽和ポリエステル、無水マレイン酸やフマル酸などの不飽和二塩基酸とグリコール類との重縮合によるマレイン酸系不飽和ポリエステル、官能基としてカルボキシル基や水酸基を持つポリエステルモノアクリレート、アクリル酸と2塩基酸と2価アルコールから得られるポリエステルジアクリレート、3価以上の多価アルコールと2塩基酸とアクリル酸から得られるポリエステルポリアクリレート等のポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートオリゴマー、エポキシオリゴマー等のオリゴマー類、アクリルポリエーテル、ポリエーテルアクリレート等が挙げられる。また、下塗り層を形成するための塗料組成物は紫外線硬化型塗料とすることが、塗布容易性や、塗膜の硬化速度が早い点、塗膜の被研削性や耐久性、基板や上塗り塗料との密着性に優れることから好ましい。
【0023】
下塗り塗料組成物の塗布方法は、ロールコーターやフローコーター等を用いる方法が挙げられ、中でも、基板表面に存在する大小の凹凸部や、空隙部を塗料により充填する効果を考慮すると、ロールコーターが適している。また、塗料を均一に塗布するという観点からは、フローコーターが適している。
【0024】
本発明においては、下塗り層に含まれる有機固形分量は、基板の単位面積(m2)当たり3~70gが好ましく、10~65gがより好ましく、さらに好ましくは13~60gに設定するのがよい。
本明細書において、塗膜層に含まれる有機固形分量は、塗布量(g/m)×塗料組成物固形分量(%)×塗料組成物固形分中の有機成分量(%)で求めることができる。
【0025】
下塗り層を形成するための下塗り塗装は、1回で所定の膜厚の下塗り層を形成することもできるし、2回以上行って所定の膜厚の下塗り層を形成することもできる。例えば、下塗り塗装を2回行って所定の膜厚の下塗り層を形成する場合は、まず1回目の下塗り塗装をやや粘度の高い下塗り塗料(200~600dPa・s)で行い、紫外線の照射量を加減して完全には硬化しないように紫外線照射し、次にやや粘度の低い下塗り塗料(20~60dPa・s)で2回目の下塗り塗装を行った後に再度紫外線を照射して、下塗り塗料全体を完全に硬化させると良い。こうすることで1回目の下塗り塗装で基板表面に存在する大小の凹凸部や空隙部を塗料により充填する効果が得られ、2回目の下塗り塗装ではセルフレベリング効果により平滑な下塗り層の塗膜表面が得られることから、効率よく良好な下塗り層を形成することができる。また、下塗り塗料を完全に硬化させた後、ベルトサンダー等で研磨を行うことにより、さらに平滑な表面を有する下塗り層とすることもできる。
【0026】
下塗り層の表面上には、着色層を有する。着色層の膜厚は5~70μmが好ましく、10~65μmがより好ましく、15~60μmがさらに好ましい。
【0027】
着色層を形成する塗料組成物に含まれる無機系の着色顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、黄土、酸化クロム緑、紺青、カーボンブラック、鉄黒などが挙げられ、これらのうちから選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いるのがより好ましい。また、必要に応じ有機顔料を併用することもできる。
着色層を形成する塗料組成物としては、有機溶剤系塗料または水系塗料を用いることができ、前記の着色顔料を有する、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂等の樹脂を含有する塗料を用いるのが好ましく、中でもアクリルウレタン樹脂塗料が好適であり、2液硬化型アクリルウレタン樹脂塗料を用いるのがより好ましい。また、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、塩化ビニル樹脂塗料、塩化ビニリデン樹脂塗料、アクリルシリコーン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料等の塗料を用いてもよい。
【0028】
着色層の形成方法は、特に限定されるものではなく、スプレー法、ロールコーター法、フローコーター法等、通常の塗装において使用される公知の方法から選定でき、中でもロールコーターまたはフローコーターによる塗布が適しており、2回以上に分けて重ね塗りする場合にはこれらを適宜組み合わせて用いてもよい。
【0029】
本発明においては、着色層の成分中の有機固形分量は、基板の単位面積(m2)当たり5~40gとなるように設定するのが好ましく、10~35gがより好ましく、10~30gとするのがさらに好ましい。
【0030】
化粧板は、着色層の表面上にクリア層を設けてもよい。クリア層の膜厚は、1~70μmが好ましく、1~65μmがより好ましく、3~60μmがさらに好ましい。
【0031】
クリア層を形成するための塗料組成物は、有機溶剤系塗料または水系塗料を用いることができ、例えば、アクリルシリコーン系、ウレタン系、アクリル系、アクリルウレタン系等の2液硬化型樹脂、熱硬化型樹脂等からなる無色透明樹脂と、他の添加剤として例えば湿潤分散剤、沈降防止剤、消泡剤、レベリング剤等、溶剤として例えば酢酸ブチル、酢酸エチル等を含むものが挙げられる。中でも耐候性や耐汚染性に優れるアクリルシリコーン系やアクリルウレタン系の樹脂を使用したクリア塗料とするのが好ましい。
【0032】
クリア層を形成するための塗布方法は、フローコーター、ロールコーター、スプレーコーター等の既存の方法が適用できる。クリア層の乾燥塗膜での塗布量は、基板の単位面積(m2)当たり、1~160gが好ましく、2~140gがより好ましい。また、クリア層中の有機固形分量は、不燃性確保の点から、基板の単位面積(m2)当たり、1~45gが好ましく、2~35gがより好ましく、3~30gがさらに好ましい。
【0033】
本発明では、当該複数の化粧層の最表面化粧層及び/又はその直下の化粧層がガラスビーズを固形分あたり35質量%以上90質量%以下含有する塗料組成物で形成されていることを特徴とする。具体的には、前述のように、下塗り層及び/又は着色層をガラスビーズを含有する塗料組成物で形成する場合、着色層及び/又はクリア層をガラスビーズを含有する塗料組成物で形成する場合がある。
このうち、化粧板塗膜のより優れた硬度を維持するためには、着色層及び/又はクリア層をガラスビーズを含有する塗料組成物で形成するのがより好ましく、着色層及びクリア層をガラスビーズを含有する塗料組成物で形成するのがさらに好ましい。
また、既存のガラスビーズを含まない塗料組成物で形成された着色層の上に、ガラスビーズを含有する塗料組成物で着色層やクリア層を形成することで既存のガラスビーズを含まない塗料組成物で形成された着色層よりも、表面硬度を向上させることができる。
【0034】
これらの化粧層の形成に用いられる塗料組成物に含有させるガラスビーズとしては、ケイ酸ガラスのビーズであればよく、形状は球状であってもよく、不規則状であってもよい。これらのガラスビーズはフィラー用のみでなく、道路標示塗料用、ブラスト用、粉砕・分散用等、どのタイプでもよく、二種類以上のものを併用してもよい。
市販のガラスビーズとしては、CF0002、CF0003、CF00017、CF0018、CF0027、CF00033、CF0093(以上、タカラスタンダード(株)製)、GB301S、GB731、GB210、EGB063Z、EGB731、EGB210、EMB-20、EMB-10(以上、ポッターズ・バロティーニ(株)製)、UBS-0020L、UBS-0030L、UBS-02L、UBS-0010E、UBS-0020E、UBS-0030E、UB-02E(以上、ユニチカ(株)製)等が挙げられ、これらのガラスビーズの表面をアミノシラン、グリシドキシシラン、アクリルシラン等のシランカップリング剤で表面処理を施したものを使用してもよい。
また、ガラスビーズの平均粒子径は、化粧板塗膜の硬度向上効果の点から、5μm以上60μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましく、5μm以上45μm以下がさらに好ましく、10μm以上40μm以下がよりさらに好ましい。
ここで、ガラスビーズの平均粒子径は、例えば、電子顕微鏡の画像による画像解析を利用する計測方法、ふるい分け法、コールター・カウンター法、電気的検知帯法、沈降法等を採用することによって測定した平均粒子径である。
なお、本明細書において、ガラスビーズの平均粒子径(一次粒径)は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察により特定した。具体的には、ランダムに選んだ50個のガラスビーズを走査型電子顕微鏡で観察し、その最大径をガラスビーズの粒子径とし、これらの平均値を平均粒子径とした。上記最大径は、SEM画像におけるガラスビーズの外周上の任意の2点を結ぶ直線を引き、その直線の長さが最大となる箇所を特定し、当該箇所の直線の長さを測定し最大径とした。
【0035】
最表面化粧層又はその直下の化粧層を形成する塗料組成物中のガラスビーズの固形分あたりの含有量は、化粧板の塗膜硬度を向上させる点から、35質量%以上90質量%以下とする。35質量%未満では充分な塗膜硬度の向上効果が得られず、90質量%を超えると化粧層の形成が困難になる。各化粧層を形成する塗料組成物中の好ましいガラスビーズの固形分あたりの含有量は37質量%以上85質量%以下であり、より好ましくは40質量%以上85質量%以下であり、さらに好ましくは45質量%以上85質量%以下であり、よりさらに好ましくは50質量%以上80質量%以下である。
より具体的には、着色層を形成する塗料組成物にガラスビーズを含有させる場合の好ましい量は、ガラスビーズの固形分あたりの含有量が、35質量%以上70質量%以下であり、さらに好ましくは45質量%以上60質量%以下であり、よりさらに好ましくは50質量%以上55質量%以下である。クリア層を形成する塗料組成物にガラスビーズを含有させる場合の、ガラスビーズの固形分あたりの好ましい含有量は、50質量%以上90質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以上85質量%以下であり、よりさらに好ましくは65質量%以上80質量%以下である。
また、最表面化粧層及びその直下の化粧層の両層を形成する塗料組成物中のガラスビーズの固形分あたりの合計含有量は、化粧板の塗膜硬度を向上させる点から、30質量%以上85質量%以下が好ましく、30質量%以上80質量%以下がより好ましく、30質量%以上75質量%以下がさらに好ましく、30質量%以上70質量%以下がよりさらに好ましい
【0036】
また、本発明の化粧板においては、着色層とクリア層の間に印刷層を設けることもできる。印刷層を設けることにより、化粧板に木目調あるいは石目調といった模様を付与することができる。印刷を施す方法としては、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、凸版式印刷、パット印刷等既存の方法を適用することができる。
【0037】
本発明の化粧板は、コーンカロリーメーター発熱性試験による総発熱量が8MJ/m2以下であるのが好ましい。この要件を満たすことにより、JIS A 5430:2013、附属書JAで規定する発熱性1級(加熱時間20分)を満たし、高い不燃性を示す。さらに好ましい総発熱量は、7.2MJ/m2以下である。
【実施例0038】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0039】
[使用材料]
(1)ガラスビーズ(ケイ酸ガラス) 平均粒子径10μm、20μm及び40μm
(2)ガラスビーズ(ケイ酸ガラス、アミノシラン表面処理) 平均粒子径10μm
(3)基板
0.8けい酸カルシウム板
【0040】
(4)塗料
ア.ウレタン系シーラー(含浸シーラー)
イ.アクリルエポキシ系UV硬化型塗料(UV下塗り塗料)
ウ.エナメル塗料(着色層を形成)
エナメル塗料は、2液硬化型アクリルウレタン系塗料。
エ.クリア塗料(クリア層を形成)
クリア塗料は、2液硬化型アクリルウレタン系塗料。
【0041】
[化粧層の形成方法]
実施例1
基板の表面を、ベルトサンダーを用いて研磨し平滑にしたのち、ロールコーターを用いて含浸シーラーを約30g/m塗布した。
含浸シーラー層の上に、ロールコーターを用いて下塗り塗料約120g/mを2回に分けて塗布し、紫外線照射により硬化させてからベルトサンダーを用いて研磨し、平滑な下塗り層を形成した。
下塗り層の上に、フローコーターを用いてガラスビーズを含むエナメル塗料を約100g/m塗布したのち、90℃雰囲気の乾燥機で20分乾燥し硬化させて着色層を形成し、化粧板を得た。
【0042】
実施例2
実施例1と同様の工程により下塗り層を形成したのち、該下塗り層の上に、フローコーターを用いてガラスビーズを含まないエナメル塗料を約100g/m塗布したのち、90℃雰囲気の乾燥機で20分乾燥し硬化させて着色層を形成し、さらに前記着色層と同様の工程によりガラスビーズを含む着色層を形成し、化粧板を得た。
【0043】
実施例4
実施例1と同様の工程により下塗り層を形成したのち、該下塗り層の上に、フローコーターを用いてガラスビーズを含むエナメル塗料を約100g/m塗布し、90℃雰囲気の乾燥機で20分乾燥し硬化させ着色層を形成したのち、フローコーターを用いてガラスビーズを含まないクリア塗料を約75g/m塗布し、90℃雰囲気の乾燥機で20分乾燥し硬化させてクリア層を形成し、化粧板を得た。
【0044】
実施例11
実施例1と同様の工程により下塗り層を形成したのち、該下塗り層の上に、フローコーターを用いてガラスビーズを含むエナメル塗料を約100g/m塗布し、90℃雰囲気の乾燥機で20分乾燥し硬化させ着色層を形成したのち、ロールコーターを用いてガラスビーズを含まないクリア塗料を約10g/m塗布し、90℃雰囲気の乾燥機で20分乾燥し硬化させてクリア層を形成し、化粧板を得た。
【0045】
実施例3、5~10、12~17及び比較例1
前述した実施例1、2及び4と同様の工程によりガラスビーズの種類や含有量および含有の有無と、塗料の種類や塗布量を調整して化粧板を得た。
【0046】
[試験方法]
「JIS K 5400 鉛筆引っかき試験」に従って、塗膜表面の硬度を測定した。 なお、硬度は、7H以上を合格とした。
「JIS A 5430:2013、附属書JA」で規定する発熱性試験(コーンカロリーメーター発熱性試験)に従って、加熱時間20分時の総発熱量を測定した。
外観は、最表面化粧層を1mはなれた距離で正対してムラやスジなどの状態を肉眼で観察した。良好な場合を〇と評価し、使用上問題ないがやや気になる場合を△とした。
【0047】
[結果]
測定結果を表1及び2に示す。表中のガラスビーズ含有量は各塗膜を形成する塗料組成物中の固形分中あたりのガラスビーズ含有量(質量%)を示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
表1より、比較例1のようにガラスビーズを添加しない塗料組成物を用いた場合、化粧板の塗膜の硬度が3Hであるのに対し、最表面化粧層(クリア層)及び/又はその直下の化粧層層(着色層)をガラスビーズ(平均粒子径20μm)を35~90質量%含有する塗料組成物で形成すると、化粧板の塗膜の硬度は7H以上となり、顕著に向上することがわかる。
また、表2より、含有するガラスビーズの平均粒子径は10~40μmであれば同様の効果が得られる。ガラスビーズの平均粒子径が40μmであれば化粧板の塗膜の硬度は9Hとなるものの、粒子径が大きいことにより、やや外観の美麗さに欠ける。
さらに、着色層及びクリア層の両方をガラスビーズを含有する塗料組成物で形成すると、化粧板の塗膜の硬度は向上し、より顕著に向上した実施例では塗膜の硬度9Hが得られていることがわかる。
発熱性試験結果については、有機固形分量が最も多い実施例8においても6.6MJ/m程度であり、それよりも有機固形分量の少ない実施例についても同様に発熱性1級を十分に満たしている。