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  • 特開-測温装置及び加熱処理装置 図1
  • 特開-測温装置及び加熱処理装置 図2
  • 特開-測温装置及び加熱処理装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153821
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】測温装置及び加熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/26 20060101AFI20221005BHJP
   G01K 1/14 20210101ALI20221005BHJP
【FI】
G01K1/26
G01K1/14 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056547
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000152480
【氏名又は名称】株式会社日阪製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 宏太
(72)【発明者】
【氏名】堤 隆一
(72)【発明者】
【氏名】辰己 琢郎
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056CL02
(57)【要約】
【課題】処理対象物の冷却のために処理槽内を真空状態とした場合であっても、処理槽内の雰囲気温度をより正確に測定できる測温装置及びこの測温装置を備えた加熱処理装置を提供する。
【解決手段】本発明は、処理対象物を減圧下で冷却する処理槽内に配置され、減圧下における該処理槽内の温度を測定する測温装置であって、水が収容される容器と、前記容器内の水面の上方に設けられる温度センサーと、前記容器内の水の蒸発を促進する流体を供給する流体供給部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物を減圧下で冷却する処理槽内に配置され、減圧下における該処理槽内の温度を測定する測温装置であって、
水が収容される容器と、
前記容器内の水面の上方に設けられる温度センサーと、
前記容器内の水の蒸発を促進する流体を供給する流体供給部と、を備える、測温装置。
【請求項2】
前記容器内の水の蒸発を促進する流体は、蒸気である、請求項1に記載の測温装置。
【請求項3】
処理槽内に処理対象物とともに配置され、処理対象物を減圧下において冷却する際に処理槽内の温度を測定する測温装置であって、
温度センサーと、
前記温度センサーの近傍に蒸気を供給する流体供給部と、を備える、測温装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3に記載の測温装置と、
前記処理槽と、
該処理槽内の前記処理対象物を加熱するための加熱蒸気を生成する蒸気発生装置と、を備え、
前記流体供給部は、前記蒸気発生装置に接続されるとともに、該蒸気発生装置にて生成された加熱蒸気を供給する、加熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象物を減圧下において冷却処理する処理槽内の雰囲気温度を測定する測温装置及びこの測温装置を備えた加熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、食品等を加熱殺菌する際に、蒸気による加熱を行った後に真空冷却を行うことがある。このような処理を行う処理装置は、処理槽と、処理槽内に高温の蒸気を流入させる加熱機構と、処理槽内を減圧する減圧機構とを備える。この処理装置では、処理槽内に食品を配置し、真空脱気した後、処理槽内に高温の蒸気を流入させることで、食品が加熱殺菌される。さらに、食品の加熱殺菌の後に処理槽内を減圧すると、処理槽内における液体の沸点が低下するため、食品の表面や内部から水分が蒸発する。この水分が蒸発する際の気化熱により、食品は冷却される。
【0003】
この加熱殺菌及び真空冷却において、処理槽内の雰囲気温度を測定するために、例えば、処理槽内に温度センサーが配置される。しかしながら、真空冷却時に、処理槽内を減圧することによって、処理槽内から蒸気や空気が排気されるため、温度センサーの周辺に温度を検知するための媒体が減少し、温度センサーが雰囲気温度を正確に測定できなくなるといった問題がある。
【0004】
この問題に対して、従来、処理槽内に配置され且つ水を収容した容器と、容器内の水面に近接した位置に配置した温度センサーと、を備えた測温装置が提案されている(特許文献1参照)。この測温装置では、容器内の水面付近に水蒸気が発生する。そのため、温度センサーが発生した水蒸気と接触することで、温度センサーの温度は処理槽内の雰囲気温度の変化に追従する。これにより、温度センサーは、処理槽内の雰囲気温度を正確に測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4810324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記測温装置では、真空冷却時に処理槽内の減圧が進み、容器内の水が蒸発し、それに伴い容器内の水が冷えて、蒸発が起きにくくなり、容器内の水面近傍の水蒸気が極めて少なくなり、これにより、温度センサーが処理槽内の雰囲気温度を測定することができなくなる場合があった。
【0007】
本発明は、処理対象物の冷却のために処理槽内を真空状態とした場合であっても、処理槽内の雰囲気温度をより正確に測定できる測温装置及びこの測温装置を備えた加熱処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の測温装置は、処理対象物を減圧下で冷却する処理槽内に配置され、減圧下における該処理槽内の温度を測定する測温装置であって、水が収容される容器と、前記容器内の水面の上方に設けられる温度センサーと、前記容器内の水の蒸発を促進する流体を供給する流体供給部と、を備える。
【0009】
かかる構成によれば、流体供給部による水の蒸発を促進する流体の供給により容器内の水の沸騰が続くため、温度センサーが、継続的に容器内から蒸発する蒸気と接触し処理槽内の雰囲気温度の変化に追従してより正確な温度測定が可能となる。
【0010】
また、前記測温装置では、前記容器内の水の蒸発を促進する流体は、蒸気であってもよい。
【0011】
かかる構成によれば、流体供給部が、蒸気の熱によって容器内の水の沸騰を継続させると同時に、蒸気の凝縮により生じた水が容器内に供給され、容器内の水が枯渇しにくくなる。
【0012】
前記測温装置では、処理槽内に処理対象物とともに配置され、処理対象物を減圧下において冷却する際に処理槽内の温度を測定する測温装置であって、温度センサーと、前記温度センサーの近傍に蒸気を供給する流体供給部と、を備えてもよい。
【0013】
かかる構成によれば、温度センサーが、流体供給部から供給される蒸気と接触し処理槽内の雰囲気温度の変化に追従してより正確な温度測定が可能となる。
【0014】
本発明の加熱処理装置は、前記測温装置と、前記処理槽と、該処理槽内の前記処理対象物を加熱するための加熱蒸気を生成する蒸気発生装置と、を備え、前記流体供給部は、前記蒸気発生装置に接続されるとともに、該蒸気発生装置にて生成された加熱蒸気を供給する。
【0015】
かかる構成によれば、加熱殺菌するための蒸気を供給する蒸気発生装置を利用して、容器内に熱と水を供給することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上より、本発明によれば、処理対象物の冷却のために処理槽内を真空状態とした場合であっても、処理槽内の雰囲気温度をより正確に測定できる測温装置及びこの測温装置を備えた加熱処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本実施形態に係る加熱処理装置の模式図である。
図2図2は、前記加熱処理装置の測温装置周辺の拡大断面図である。
図3図3は、別の実施形態に係る加熱処理装置の測温装置周辺の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第一の実施形態について、図1及び図2を参照しつつ説明する。本実施形態に係る測温装置1は、図1に示すように、処理対象物7を減圧下で冷却する処理槽6内に配置され、減圧下における該処理槽6内の温度を測定する。この測温装置1は、例えば、加熱処理装置10に設置される。具体的に、測温装置1は、脱気工程、及び、該脱気工程に続く蒸気殺菌工程、及び、真空冷却工程を、株式会社日阪製作所製、短時間調理殺菌装置RICにより行う場合に用いられる。また、測温装置1は、これらの工程において、処理槽6内の温度を測定する。
【0019】
加熱処理装置10は、測温装置1と、処理槽6と、処理槽6内の処理対象物7を加熱するための加熱蒸気を生成する蒸気発生装置8と、を備える。
【0020】
処理槽6は、例えば、一つの測温装置1と、複数の処理対象物7と、を収容可能である。本実施形態の処理槽6は、蒸気発生装置8と、処理槽6内を脱気して真空状態とする減圧装置等とともに加熱処理装置10を構成する。
【0021】
処理対象物7は、例えば、米飯のような食品と、食品を収容するパック容器である。パック容器は、例えば、樹脂製の容器である。
【0022】
測温装置1は、図2に示すように、水2が収容される容器3と、容器3内の水面20の上方に設けられる温度センサー4と、容器3内の水2の蒸発を促進する流体を供給する流体供給部5と、を備える。本実施形態では、測温装置1は、処理槽6の内壁に取り付けられたブラケット60に載置されている。
【0023】
例えば、容器3は、金属製の容器や樹脂製の容器等である。本実施形態では、容器3は、ステンレス製の容器である。容器3は、上方が開放した形状であり、例えば、有底筒状である。なお、容器3内の水の高さは、例えば、20mm~40mmである。
【0024】
なお、容器3には、容器3の開放部(上方に設けられた開放部)を覆う蓋が設けられていてもよい。また、容器3と処理対象物7との間に、板状等のカバーが設けられていてもよい。これにより、流体供給部5による流体供給等により容器3内の水2が突沸しても、水2が処理対象物7にかかることを防ぐことができる。
【0025】
温度センサー4は、水蒸気や空気等の媒体に接触することで、温度センサー4が配置された雰囲気の温度を測定可能なセンサーである。本実施形態では、温度センサー4は、熱電対、サーミスタ、測温抵抗体等である。また、温度センサー4は、水面20よりも、例えば、5mm~15mm上方に配置されている。
【0026】
流体供給部5は、例えば、容器3に収容された水2内に、容器3内の水2の蒸発を促進する流体を供給する部材である。容器内の水の蒸発を促進する流体は、処理槽6内の温度よりも温度の高い流体であり、好ましくは、水を含む高温の流体である。本実施形態では、この容器内の水の蒸発を促進する流体は、蒸気である。
【0027】
具体的に、流体供給部5は、蒸気発生装置8に接続されるとともに、蒸気発生装置8にて生成された加熱蒸気を供給する。より具体的に、流体供給部5は、蒸気発生装置8のメイン配管から分岐して延びるサブ配管であってもよい。この場合、流体供給部5は、メイン配管のバルブが閉じられた状態であっても、容器3内の水2に加熱蒸気を供給することができる。
【0028】
流体供給部5は、処理対象物7を減圧下で冷却する工程において、蒸気を継続的に供給する。また、流体供給部5による蒸気の供給量は、予め設定された値(例えば、蒸気の最大供給量に対する供給量の割合)に応じて変化させる。なお、流体供給部5による蒸気の供給量は、予め設定された値の代わりに、処理槽6内の気圧に応じて、適宜変化させてもよい。蒸気の供給量は、例えば、サブ配管に設けられたバルブ(具体的には、自動バルブ)の開度を変化させることで調整する。
【0029】
以上の測温装置1によれば、流体供給部5による水の蒸発を促進する流体の供給により、容器3内の水2の沸騰が続くため、温度センサー4が、継続的に容器内3から蒸発する蒸気と接触し、温度センサー4の温度は、処理槽6内の雰囲気温度の変化に追従する。これにより、温度センサー4は、より正確な温度測定が可能となる。
【0030】
本実施形態の測温装置1では、流体供給部が、蒸気の熱によって容器内の水の沸騰を継続させると同時に、蒸気の凝縮により生じた水が容器内に供給され、容器内の水が枯渇しにくくなる。
【0031】
また、この加熱処理装置10によれば、加熱殺菌するための蒸気を供給する蒸気発生装置8を利用して、容器3内に熱と水を供給することができる。
【0032】
なお、測温装置1は、容器3の水2に浸かった状態で容器3内に収容され多孔質材料で構成される多孔質材、及び、容器内3の水を攪拌する攪拌材の少なくとも一方を備えてもよい。多孔質材は、例えば、沸騰石である。攪拌材は、例えば、マグネティックスターラーである。このような構成では、多孔質材や攪拌材が容器3内の水2の突沸を防ぐことができる。
【0033】
次に、第二の実施形態について説明する。第二の実施形態に係る測温装置1は、図3に示すように、温度センサー4と、温度センサー4の近傍に蒸気を供給する流体供給部5と、を備える。そのため、温度センサー4が、流体供給部5から供給される蒸気と接触し、温度センサー4の温度が処理槽6内の雰囲気温度の変化に追従する。これにより、温度センサー4は、正確な温度測定が可能となる。
【0034】
なお、本発明の測温装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0035】
上記実施形態の処理対象物7は、食品であったが、医薬品等であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…測温装置、2…水、3…容器、4…温度センサー、5…流体供給部、6…処理槽、7…処理対象物、8…蒸気発生装置、10…加熱処理装置、20…水面、60…ブラケット
図1
図2
図3