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  • 特開-キャスター装置 図1
  • 特開-キャスター装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153832
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】キャスター装置
(51)【国際特許分類】
   B60B 33/00 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
B60B33/00 X
B60B33/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056562
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】392036223
【氏名又は名称】株式会社森山鉄工
(74)【代理人】
【識別番号】100087169
【弁理士】
【氏名又は名称】平崎 彦治
(72)【発明者】
【氏名】森山 清次
(57)【要約】
【課題】 路面に凹凸があってもその振動が椅子に伝わり難いキャスター装置の提供。
【解決手段】 キャスター1はフォーク2の脚部先端に車軸4を介して取付けられ、該フォーク2はフォーク受け3に組付けられた状態で主軸5に取付けられてネジ止めされ、上記フォーク2は両脚部9,9を傾斜背面板にて繋ぐと共に撓み変形する板バネ部7を有している。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を載せて運搬する台車の底に取付けられるキャスター装置、又は車椅子に取付けるキャスター装置において、キャスターはフォークの脚先端部に設けた軸穴に嵌めた車軸を介して取付けられ、該フォークはフォーク受けに嵌って組付けられた状態で主軸に取付けられてネジ止めされ、上記フォークは主軸が嵌る主軸穴を有す上板部と湾曲した板バネ部、傾斜背板部、そして傾斜背板部の両側には垂直に起立する脚部を設け、脚部から脚先端部が延び、そして板バネ部は複数枚の板バネが重ね合わされてネジ止めされ、傾斜背板部はキャスター外周より前方側に位置し、該傾斜背板部がキャスター外周と交わる点の高さhがキャスター半径Rより小さく成っていることを特徴とするキャスター装置。
【請求項2】
上記フォーク受けの両脚部先端には円弧状長穴を形成し、該円弧状長穴にはフォークの脚先端部の軸穴に嵌った車軸が板バネ部の撓み変形に応じて揺動出来るようにした請求項1記載のキャスター装置。













【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は台車や車椅子などに取付けられ、地面や床面に凹凸があってもスムーズに走行することが出来るキャスター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
荷物を載せて運ぶ台車には車輪(キャスター)が取付けられ、該キャスターは車軸を中心として回転することで移動することが出来る。路面は滑らかな平坦面でなく、凹凸面を有している場合も多く、その為にこれら凹凸面を有している路面又は床面であってもスムーズに移動出来るように、キャスターは板バネによって支えられ、キャスターが凸面に乗り上げる場合には、板バネは撓み変形することが出来る。
【0003】
すなわち、台車全体が路面の凹凸面に沿って上下動することなく、板バネが変形することで台車は比較的スムーズに移動することが出来る。ところが、キャスターの外径に対して1/2以上の大きな凸部が路面に存在する場合、この大きな凸部を乗り上げて移動することは容易でない。
一方、凹凸面を移動する場合、キャスターを支えている板バネは撓み変形を繰り返し、金属疲労によって該板バネには亀裂が発生し、ついには破損することもある。特に、台車に重い荷物を積載する場合、板バネの撓み変形量は大きくなり、板バネの寿命は短くなる。
【0004】
路面を移動するキャスターは台車に限らず、身体障害者、病人、歩行が困難になった人々が利用する車椅子にも取付けられている。台車に用いられるキャスターと車椅子に取付けられるキャスターは、その大きさ、形態及び構造には違いがあるが、何れのキャスターも凹凸した路面をスムーズに移動することが出来るように構成することが必要である。
【0005】
ところで、車椅子が走行する路面は一般に舗装されているが、舗装面であっても完全な平坦面ではなく小さい段差が所々に存在している。また、歩道路面には視力弱者にとって目印となる「視覚障害者誘導用ブロック」と称されるプレートが敷設されている。
すなわち、視覚障害者が足裏の触感覚で認識できるよう、突起(凸部)を表面に設けたもので、視覚障害者を安全に誘導するために路面や床面に敷設されているブロック(プレート)である。
【0006】
今日では歩道のみならず、鉄道の駅や公共施設、さらには店舗、ショッピングセンターの出入り口近くなど、多くの場所にブロックが設置が行われている。また、「エスコートゾーン」という、形状は異なるが車道の横断歩道部分にもブロックの設置がされている。
上記視覚障害者誘導ブロックに設けられている凸部は比較的小さいが、このブロック上を車椅子が通過する場合、前輪となるキャスターはその外径が小さい為に障害となる場合もある。
【0007】
すなわち、キャスターが小さい凸部や段差を乗り越える場合、車椅子の前方側を押上げなくてはならず、その為に前方へ押す力が大きくなり、また、ハンドルリムを回す為に大きな力が必要となる。特に、凸部や段差の手前でキャスターが位置して車椅子が停止している状態から動き始める際には、さらに動きにくくなる。
一方、「視覚障害者誘導用ブロック」上を車椅子が通過する場合、振動が椅子に伝わり、乗り心地が阻害される。
【0008】
実用新案登録第3220842号に係る「段差対応キャスター」は、運搬台車や介護機器等の移動器具において、キャスターの車輪径を大きくすることなく、簡単な構造で容易に段差を乗り越えることを可能としている。
そこで、キャスターのフォークに、左右一対のアシスト板を、支持軸及び連結ボルトで回転可能に連結する。アシスト板の支持軸を前方に押すことで段差にアシスト板底部が接すると接地部を支点としアシスト板を起こす様に回動し、車輪の負荷荷重が段差側に移る。同時に、アシスト板はトーションバネでストッパーに戻され初期位置を保ち、これにより段差の乗り越えが容易となる。
【0009】
特開2010-208575号に係る「キャスター」は、台車進行時や荷重負荷変化時に車輪や本体からリンク部材を介して伝わる衝撃を吸収する緩衝部材のバネ定数を小さくし、急激な衝撃を充分に緩衝し得ると共に、荷重負荷の急激な減少時の衝撃も緩衝し得るキャスターである。
そこで、進行方向に長手とした本体ケースの長手方向に沿って円筒状コイルバネと円筒状粘弾性樹脂でなる緩衝部材をボルト上に直列に設置し、一対のL型リンクの長脚側先端に車輪を軸支し、基部を本体ケース側壁に回動自在に取り付け、短脚側先端において押し駒を介して緩衝部材の後方端と連携させ、車輪の上方向移動による短脚側先端と押し駒の進行方向の移動を緩衝部材で吸収する。緩衝部材と押し駒の後方側に補助コイルバネを配置し、車輪の下方向移動による短脚側先端と押し駒の後方向移動を吸収することが出来る。
【特許文献1】実用新案登録第3220842号に係る「段差対応キャスター」
【特許文献2】特開2010-208575号に係る「キャスター」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来から色々なキャスター装置が知られている。これらキャスター装置は、路面に大きな凸部がある場合でも乗り越えることが出来、凹凸化した地面を移動するに際して衝撃や振動を緩和することが出来るようにしている。しかし、従来のキャスター装置はその構造が複雑であり、また積載する荷物の重さにバネが耐えることが出来ないといった問題がある。
本発明はこれら問題点を解決することが出来るようにしたものであり、より簡単な構造にて、路面の凹凸にて生じる振動を緩和することが出来、また路面に存在する大きな凸部を簡単に乗り上げて移動することが出来るキャスター装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るキャスター装置は、キャスター(車輪)とフォーク及びフォーク受けから成り、キャスターは上記フォークに設けている両脚部から延びる脚先端部に取付けた車軸に回転可能に軸支されている。
フォークは両脚部、傾斜背板部、上板部、脚先端部、及び板バネ部から成り、両脚部の下縁は傾斜背板部によって繋がれ、傾斜背板部と上板部は湾曲した板バネ部によって繋がれている。
そして、フォーク受けは両脚部と上板部から成り、上板部の両側に脚部が延びている。
【0012】
ところで、フォークはフォーク受けの内側に嵌って組み合わされ、すなわち、フォークの上板部はフォーク受け上板部の下側に重なり合って位置し、フォーク脚部はフォーク受けの脚部内側に接し、挟まれた状態と成っている。
上板部には上方から負荷(荷重)が作用し、その結果、上記板バネ部は撓み変形するが、本発明では上板部に働く上記負荷が増加した場合に耐えることが出来るように、板バネ部は複数枚の板バネを重ね合わせた構成としている。その為に、上板部にはネジを設け、複数枚の板バネは互いに重なり合って固定される構造としている。
【0013】
フォークの両脚部から延びる脚先端部には車軸が嵌る軸穴が設けられていて、フォーク受けの両脚部には長穴(円弧状長穴)を形成している。すなわち、上板部に働く荷重によって板バネ部は撓み変形するが、この撓み変形に伴って脚部及び脚先端部は上板部を基部として揺動し、キャスターを軸支している車軸は移動することが出来るように長穴(円孤状長穴)を有している。
したがって、キャスター装置は、路面や床面に凸部が存在する場合、キャスターは該凸部に乗り上げて移動することが出来る。
【0014】
しかし、該凸部が大きくキャスターが乗り上げることが出来ない場合には、傾斜背板部に凸部が当たり、フォークは揺動してキャスターは持ち上げられる。
そこで、キャスター(車輪)の軸から前方へ延びる水平線がキャスター外周と交わる交点より前方に傾斜背板部が位置している。したがって、キャスターが転がって移動する場合、キャスター外径の1/2の凸部が存在しても、該凸部は傾斜背板部に当たって乗り越えることが出来る。
そして、板バネ部が撓み変形してキャスターが上昇しても、キャスター外周が上板部に接しないように、キャスター受けを取付けている主軸はキャスターから離れて設けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るキャスター装置は、キャスターを取付けているフォークは板バネ部を有しており、したがって、台車や車椅子が段差や「視覚障害者誘導用ブロック」を比較的スムーズに通過することが出来、また、通過の際の振動が抑制される。すなわち、凸部に差し掛かった場合、台車や椅子は持ち上げられることなくフォークの板バネ部が撓み変形することで通過することが出来、台車や椅子に伝わる振動が抑えられる。台車や車椅子は持ち上がることがない為に大きな力で押す必要はない。
一方、路面に大きな凸部が存在する場合には、両脚部を繋いでいる傾斜背板部が凸部に当り、その結果、台車を押す力によってフォークの両脚部は揺動してキャスターは上昇し、凸部を容易に通過することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るキャスター装置を示す実施例で、(a)は正面図、(b)は側面図。
図2】キャスター装置を構成するフォークの具体例。
図3】金属板を裁断したフォークの展開図。
図4】キャスター装置を構成するフォーク受けの具体例。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明に係るキャスター装置を示す外観図であり、前方にある大きな凸部を乗り越える場合を示し、(a)は正面図、(b)は側面図をそれぞれ表わしている。そして、同図の1はキャスター、2はフォーク、3はフォーク受け、4は車軸である。
キャスター装置は車椅子の場合には前方側に取付けられて、キャスター1は主軸5を中心として左右に揺動し、その向きを変えることが出来、そして、キャスター1は車軸4を中心として回転して移動することが出来る。また台車の場合には、キャスター装置は底に取付けられる。
【0018】
ところで、上記フォーク2はフォーク受け3に嵌って組み合わされて上記主軸5に固定され、キャスター1を取付けている車軸4はフォーク受け3をガイドとして上下動し、路面の凹凸に応じて動くことが出来る。
図2はフォーク2を示している実施例であり、金属製のバネ板を曲げ成形して製作している。フォーク2は上板部6と板バネ部7、そして傾斜背板部8、脚部9,9、さらに脚先端部10,10を有し、その形状は概略L型を成している。
【0019】
本発明のキャスター装置は路面に小さい凹凸があっても、台車は上下振動させることはない。キャスター1を支持しているフォーク2は板バネ部7を有し、該板バネ部7が適度に撓み変形することによって、少なくとも上下振動を抑制することが出来るように機能する。
フォーク2の上部には四角形をした上板部6が設けられ、上板部6の縁から板バネ部7が円弧状に湾曲して延び、そして板バネ部7には傾斜背板部8が延びている。そして、傾斜背板部8の両側には上方へ垂直に起立する脚部9,9が設けられ、脚部9,9の先端から脚先端部10,10が延びている。
【0020】
上記板バネ部7は湾曲していて、上板部6に上方から負荷(荷重)が作用するならば、該板バネ部7は撓み変形するが、負荷される荷重の大きさに対して板バネ部7の撓み変形量を規制する為に、複数枚の板バネが重なり合って構成している。各板バネは薄い為に、自由に撓み変形することが可能であり、台車であれば積載することが出来る荷物の重さに応じて、すなわち台車の規格に応じて板バネの枚数を選定することが出来る。
上板部6には、両側に穴11,11を設けていて、該穴11,11にネジを挿通することで、規格に適した複数枚の板バネを重ね合わせて固定することが出来る。
【0021】
両脚部9,9は傾斜背板部8の両側に垂直に起立して形成されている。したがって、脚部9,9の曲げ剛性は高く、傾斜背板部8と一体化されて曲げ変形することはない。脚先端部10,10の先端に形成した軸穴12,12には上記車軸4が挿通し、車軸4には脚先端部10,10に挟まれてキャスター1が取付けられる。
キャスター1は両脚先端部10,10に挟まれて取付けられることで、脚先端部10,10の間に傾斜背板部8は存在していない。
【0022】
図3はフォーク2の展開図であり、バネ板を同図に示す形状に裁断し、裁断したバネ板を前記図2に示すように曲げ成形してフォーク2が製作される。
図3において、6は上板部、7は板バネ部、8は傾斜背板部、9,9は脚部、10,10は脚先端部を表し、上板部6の中央には主軸穴13を設け、該主軸穴13に主軸5が挿通して取付けられる。
ここで、フォーク2を曲げ成形する為のバネ板を裁断する具体的な方法は限定せず、例えばワイヤーカット、レーザー加工、時には金型を用いて打ち抜き加工することも出来る。
【0023】
図4がフォーク受け3を表している実施例である。フォーク受け3は四角形をした上板部14とその両側にはL形をした脚部15,15を設け、両脚部15,15は上板部14に対して垂直下方に延び、互いに平行を成している。そして、脚部15,15の先端には円弧状長穴16,16を形成している。
フォーク受け3は金属板を所定の形状に裁断し、これを曲げ成形して作ることが出来る。フォーク受け3の板厚はフォーク2より厚く、その為に剛性は高い。
【0024】
そして、フォーク2はフォーク受け3の内側に嵌って組み合わされ、上板部6と上板部14は互いに重なり合って固定される。すなわち、両脚部15,15の間にフォーク2が嵌り、上板部6は上板部14の下側に配置して固定される。
円弧状長穴16,16には脚先端部10,10に設けた軸穴12,12から突出した車軸4が嵌り、路面の凹凸を移動することでキャスター1が上下動する際に板バネ部7は撓み変形し、それに伴って車軸4は円弧状長穴16に沿って移動することが出来る。
【0025】
図1は路面17に凸部18が存在し、該凸部18をキャスター1が乗り越える場合を示している。
該実施例では、キャスター1の半径はR、凸部18の高さをHとした場合、R>Hである場合には、従来の一般的なキャスター装置であっても凸部18に乗り上げることが出来る。しかし、H>Rの関係にある場合には、台車を前方へ押しても凸部18の乗り上げて越えることは出来ない。
【0026】
ところが、本発明に係るキャスター装置は、キャスター1の前方にフォーク2を有している。したがって、図1に示しているように、フォーク2の傾斜背板部8が凸部18の角19に衝突し、さらにキャスター装置が矢印(←)に示すように前進するならば、フォーク2は揺動して押し上げられる。そして、キャスター1は上昇して凸部18を乗り上げることが出来る。
凸部18の高さHが傾斜背板部8とキャスター1の外周に交わる点より低い場合(hより低い場合)には、凸部18の角19はキャスター1の外周に当り、該凸部18を簡単に乗り上げることが出来る。
【符号の説明】
【0027】
1 キャスター
2 フォーク
3 フォーク受け
4 車軸
5 主軸
6 上板部
7 板バネ部
8 傾斜背板部
9 脚部
10 脚先端部
11 穴
12 軸穴
13 主軸穴
14 上板部
15 脚部
16 円弧状長穴
17 路面
18 凸部
19 角














図1
図2
図3
図4