(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153837
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】接合体
(51)【国際特許分類】
B29C 65/08 20060101AFI20221005BHJP
F16B 5/08 20060101ALI20221005BHJP
F16B 11/00 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B29C65/08
F16B5/08 B
F16B11/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056568
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕一
【テーマコード(参考)】
3J001
3J023
4F211
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001GA06
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA08
3J001HA09
3J001JD11
3J001KB01
3J023EA03
3J023FA01
3J023GA01
4F211AD08
4F211AD24
4F211AG03
4F211AG18
4F211TA01
4F211TC03
4F211TN22
4F211TQ05
(57)【要約】
【課題】少なくとも3つの部材が積層されて一体化される接合体において、溶着リブ等の凸部の配置に制約を生じさせ難くすることが可能な接合体を提供する。
【解決手段】本発明は、少なくとも第1部材(10)、第2部材(20)、及び第3部材(30)が積層されるとともに一体的に形成される接合体(1)であって、第1部材(10)と第2部材(20)とは、振動溶着により形成される少なくとも1つの第1振動溶着部(6)で接合され、第2部材(20)と第3部材(30)とは、振動溶着により形成される少なくとも1つの第2振動溶着部(7)で接合され、第1振動溶着部(6)の少なくとも一部と第2振動溶着部(7)の少なくとも一部とは、積層方向に重なる位置に配されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1部材、第2部材、及び第3部材が積層されるとともに一体的に形成される接合体であって、
前記第1部材、前記第2部材、及び前記第3部材は、それぞれ合成樹脂により形成され、
前記第1部材と前記第2部材とは、振動溶着により形成される少なくとも1つの第1振動溶着部で接合され、
前記第2部材と前記第3部材とは、振動溶着により形成される少なくとも1つの第2振動溶着部で接合され、
前記第1振動溶着部の少なくとも一部と前記第2振動溶着部の少なくとも一部とは、積層方向に互いに重なる位置に配されている
ことを特徴とする接合体。
【請求項2】
前記第2部材は、前記第1部材に対向する上面から前記第1部材に向けて突出する少なくとも1つの凸部と、前記第3部材に対向する下面に凹設される少なくとも1つの凹部と、前記凹部内に前記凹部の内側空間の一部を埋めるように設けられる内部リブとを有する
請求項1記載の接合体。
【請求項3】
前記凹部は、前記凸部に対し、前記積層方向に重なる範囲内に配されている
請求項2記載の接合体。
【請求項4】
前記第2部材の前記凹部は、凹溝状に形成され、
1つの前記凹部に対し、複数の前記内部リブが設けられている
請求項2又は3記載の接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれが合成樹脂により形成された少なくとも第1部材、第2部材、及び第3部材が積層されるとともに一体的に形成される接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、合成樹脂により形成される2つ以上の部材(例えば、樹脂成型品)を振動溶着により接合することが知られている。振動溶着では、溶着させる2つの部材を互いに当接させ、更に加圧しながら相互に振動させることにより、2つの部材の当接している部分(当接面)を溶融させて接合することができる。例えば特開2009-262814号公報(特許文献1)には、車両のインストルメントパネルに、合成樹脂製の成形品を重ねて振動溶着することにより取り付ける車両用成形品の取付構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の振動溶着について、
図4及び
図5を参照しながら、合成樹脂製の第1部材71に対し、合成樹脂製の第2部材72と、合成樹脂製の第3部材73とを、2回の振動溶着工程で順番に接合して接合体70を製造する場合について説明する。
【0005】
先ず、第1部材71に第2部材72を振動溶着により接合する1回目の振動溶着工程を行う。この場合、第2部材72には、
図4に示したように、横振動による振動エネルギーを第1部材71と第2部材72の接触部分に集中させるために複数の溶着リブ72aが設けられている。1回目の振動溶着工程では、第1部材71及び第2部材72の一方(例えば第1部材71)を固定し、他方(例えば第2部材72)を一方に向けて押圧しながら横方向に振動させる。これにより、第1部材71と第2部材72の接触部分で摩擦による熱が発生し、その熱で合成樹脂を溶融させることによって第1部材71と第2部材72を溶着させることができる。
【0006】
次に、第1部材71と第2部材72が接合された一次接合体に第3部材73を振動溶着により接合する2回目の振動溶着工程を行う。第3部材73には、第2部材72と同様に、振動エネルギーを集中させるために複数の溶着リブ73aが設けられている。また2回目の振動溶着工程でも、1回目の振動溶着工程と同様に、接合させる一方の部材を固定し、他方の部材を加圧しながら振動させる。これによって、第1部材71、第2部材72、及び第3部材73が積層されて一体化された接合体70が製造される。
【0007】
しかし、上述のように2回の振動溶着工程を行って接合体70を製造する場合、第2部材72の溶着リブ72aが設けられる部分では、第2部材72の厚さが部分的に厚くなるため、第2部材72を成形する成形工程時に、第2部材72の溶着リブ72aが設けられる部分の裏面側に、
図4に示したようなヒケ(凹み)72bが発生する。
【0008】
このようなヒケ72bが形成された第2部材72の裏面に対して第3部材73を接合する場合、例えば第3部材73の溶着リブ73aを、第2部材72の裏面のヒケ72bが形成されている部分に接触させて振動溶着を行うと、ヒケ72bを含む接触部分で合成樹脂を適切に溶融させることができないため、所要の溶着強度を確保できなかった。このため、従来では、2回の振動溶着工程を行う場合、上述したヒケ72bによる不具合を防ぐために、
図5に示すように、第2部材72の溶着リブ72aと、第3部材73の溶着リブ73aとが互いに位置をずらされて配置される。これによって、2回目の振動溶着工程では、第3部材73の溶着リブ73aを第2部材72のヒケ72bが形成されていない裏面部分に接触させて振動溶着を行うことができるため、第3部材73を適切な溶着強度で第2部材72に接合できる。
【0009】
一方、このように第2部材72の溶着リブ72aの形成位置と、第3部材73の溶着リブ73aの形成位置とがずらされる場合、1つの接合体70を積層方向から見たときに、第1部材71及び第2部材72が溶着する溶着部分(溶着領域)と、第2部材72及び第3部材73が溶着する溶着部分(溶着領域)との合計の面積を1つの接合体70内で広く確保する必要がある。しかし、各部材間の溶着部分の面積を適切に確保しつつ溶着強度を適切に確保するためには、溶着リブ72a,73aの配置に制約が生じ易くなり、その結果、接合体70の設計の自由度を低下させていた。
【0010】
また例えば第2部材の溶着リブの大きさ及び形状等を調整することにより、第2部材の成形工程で第2部材の裏面にヒケが発生することを防止可能である。しかし、ヒケを生じさせない最適な大きさ及び形状で溶着リブを第2部材に設けようとすると、成形時のゲートの位置、溶着リブの配置、溶着リブの周辺の形状等も考慮すると、各溶着リブがそれぞれ異なる大きさ及び形状で形成されることになり、その結果、溶着機械の調整が困難になり、また、製造コストの増大を招く。
【0011】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、少なくとも3つの部材が積層されて一体化される接合体において、溶着リブ等の凸部の配置に制約を生じさせ難くすることが可能な接合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明により提供される接合体は、少なくとも第1部材、第2部材、及び第3部材が積層されるとともに一体的に形成される接合体であって、前記第1部材、前記第2部材、及び前記第3部材は、それぞれ合成樹脂により形成され、前記第1部材と前記第2部材とは、振動溶着により形成される少なくとも1つの第1振動溶着部で接合され、前記第2部材と前記第3部材とは、振動溶着により形成される少なくとも1つの第2振動溶着部で接合され、前記第1振動溶着部の少なくとも一部と前記第2振動溶着部の少なくとも一部とは、積層方向に互いに重なる位置に配されていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係る接合体において、前記第2部材は、前記第1部材に対向する上面から前記第1部材に向けて突出する少なくとも1つの凸部と、前記第3部材に対向する下面に凹設される少なくとも1つの凹部と、前記凹部内に前記凹部の内側空間の一部を埋めるように設けられる内部リブとを有することが好ましい。
【0014】
この場合、前記凹部は、前記凸部に対し、前記積層方向に重なる範囲内に配されていることが好ましい。
また、前記第2部材の前記凹部は、凹溝状に形成され、1つの前記凹部に対し、複数の前記内部リブが設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の接合体によれば、積層方向から見たときの2つの部材同士が溶着する溶着部分の面積を容易に狭くできるため、溶着リブの配置に制約を生じさせ難くすることができ、その結果、接合体の設計の自由度を高めることができる。更に、ヒケに起因する2つの部材間の溶着強度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例に係る接合体を模式的に示す断面図である。
【
図2】接合される前の第2部材の一部を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示した第2部材の下面側(裏面側)における要部を拡大して示す斜視図である。
【
図4】振動溶着で接合される前の従来の第1部材及び第2部材を模式的に示す断面図である。
【
図5】振動溶着で接合された従来の接合体を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施例に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。例えば以下の実施例では、接合体において3つの部材が積層されている部分について主に説明するが、本発明では、接合体の一部で少なくとも3つの部材が振動溶着によって接合されて積層されていればよく、接合体を形成するそれぞれの部材の大きさ、厚さ、及び形状等は特に限定されるものではない。
【実施例0018】
図1は、本実施例に係る接合体を模式的に示す断面図である。
図2は、接合される前の第2部材の一部を示す斜視図であり、
図3は、その第2部材の下面側(裏面側)における要部を拡大して示す斜視図である。
なお、本実施例では、3つの部材が積層される積層方向を上下方向とする。この場合、中央の第2部材に対し、溶着リブを備えない第1部材が配される側を上方とし、溶着リブを備えた第3部材が配される側を下方とする。
【0019】
本実施例の接合体1は、例えば自動車等の車両に用いられる外装部材又は内装部材等の部材又は部品に好適に使用される。なお、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の接合体は、自動車分野及びそれ以外の分野において、合成樹脂製の成形品が適用される様々な部材又は部品等に用いることが可能である。
【0020】
本実施例の接合体1は、振動溶着において被溶着体となる合成樹脂製の第1部材10と、振動溶着によって第1部材10に接合される合成樹脂製の第2部材20と、振動溶着によって第2部材20に接合される合成樹脂製の第3部材30とを有する。第1部材10、第2部材20、及び第3部材30は、それぞれ、従来から知られている射出成形やプレス成形等により、事前に設計された所定の形状で作製されている。
【0021】
本実施例において、第1部材10、第2部材20、及び第3部材30は、それぞれ、振動溶着が適用可能なポリプロピレン等の熱可塑性樹脂により形成されている。この場合、第1部材10と第2部材20、また、第2部材20と第3部材30は、互いに振動溶着に相性が良い合成樹脂で形成されていることが好ましく、特に、第1部材10~第3部材30は、主成分が同じ熱可塑性樹脂で形成されていることがより好ましい。
【0022】
本実施例の第1部材10は、例えば、下面の少なくとも一部が平坦に形成された平板状の形状を有する。本発明において、第1部材の形状及び大きさは特に限定されず、接合体の用途等に応じて適宜変更することが可能である。例えば第1部材10の少なくとも一部には、湾曲部や突出部が設けられていてもよい。
【0023】
本実施例の第2部材20は、第1部材10に対面するように配される第2部材本体部21と、第2部材本体部21の上面から突出する複数の凸部22と、第2部材本体部21の下面に凹設される複数の凹部23と、各凹部23内に設けられる内部リブ24とを有する。本実施例の第2部材本体部21は、例えば、厚さが薄い平板状の形状を有する部分を含む。なお本発明において、第2部材本体部の形状及び大きさは特に限定されず、接合体の用途等に応じて適宜変更することが可能である。
【0024】
第2部材20の凸部22は、第2部材本体部21の上面から畝状に突出する第2溶着リブ22aにより形成されている。本実施例において、各第2溶着リブ22aは、第1部材10に振動溶着で接合される前の状態にて、例えば
図2に示すように、接合体1の積層方向に直交する第1方向5(例えば縦方向又は前後方向)に沿って直線的に且つ連続的に設けられている。また、複数の第2溶着リブ22aは、互いに平行に設けられている。
【0025】
各第2溶着リブ22aは、第1方向5に直交する断面が一定の形状を呈するように形成されている。例えば本実施例の場合、第2溶着リブ22aは、第1部材10に接合される前の状態にて、第1方向5に直交する断面が半円形又は半円形に近い形状を呈する形状を有する。各第2溶着リブ22aは、後述する第1振動溶着工程によって、第1部材10と第2溶着リブ22aの境界部に形成される第1振動溶着部6によって第1部材10の下面に接合されている。この場合、第2溶着リブ22aは、振動溶着時の加圧及び熱によって変形するとともにバリが発生することにより、振動溶着後の第2溶着リブ22aにおける第1方向5に直交する断面は、台形に近い形状を呈する。
【0026】
なお本発明において、第2溶着リブの形状、大きさ、配置、及び、第2部材本体部の上面からの第2溶着リブの突出高さは特に限定されず、接合体の用途等に応じて適宜変更することが可能である。また、第2部材の凸部の形態は、第2部材本体部の上面から突出して形成されていれば、直線的に連続する畝状の形状に限定されない。第2部材の凸部は、例えば第2部材の平面視において、一方の方向に間欠的に延びる形状(切れ目がある形状)や、円弧状又は波状に湾曲した形状に形成されていてもよい。
【0027】
第2部材20の凹部23は、第2部材本体部21の下面に凹設された凹溝部23aにより形成されている。本実施例において、各凹溝部23aは、第2溶着リブ22aが延びる方向と同じ方向に沿って、すなわち、上述した第1方向5に沿って、直線的に設けられている。また、複数の凹溝部23aは、互いに平行に設けられている。
【0028】
第2部材20において、各凹溝部23aは、それぞれ、第2部材20の上面側に設けた1つの第2溶着リブ22aに対応する反対側の位置に設けられている。特に、各凹溝部23aは、対応するそれぞれの第2溶着リブ22aに対し、積層方向に重なる範囲内に設けられている。すなわち、第2部材20を積層方向で見たときに、第2部材20の下面に設けられる1つの凹溝部23aの形成範囲は、第2部材20の上面側に対応して設けられる1つの第2溶着リブ22aの形成範囲の内側に配されている。
【0029】
また、凹溝部23aは、第2部材20の内部リブ24を除く部分の厚さ(第2部材本体部21及び第2溶着リブ22aの上面と、第2部材本体部21及び凹溝部23aの下面との間の間隔)が、ほぼ一定の大きさとなるように設けられている。具体的に説明すると、本実施例の第2部材20では、第2溶着リブ22aが第2部材本体部21の上面から突出しているため、凹溝部23aは、第2溶着リブ22aにより増大する第2部材20の厚さを吸収するように、第2溶着リブ22aに対応して設けられている。
【0030】
これにより、第2部材20の内部リブ24を除く部分は、第2部材20の少なくとも第1部材10に溶着する部分及びその近傍の範囲において、ほぼ一定の薄い厚さを有することができる。このように第2部材20が薄く形成されることにより、第2部材20を成形する成形工程において、第2部材20の下面(特に、当該下面の第2溶着リブ22aに対応する部分)にヒケが発生することを抑制できる。また、後述の第1振動溶着工程(第1部材10と第2部材20とを振動溶着させる工程)において、第2部材20が溶融する部分の体積(溶融体積)にバラつきを生じさせ難くすることができる。
【0031】
なお本発明において、第2部材の凹部は、第2部材の上面側に形成される凸部に対応して設けられていれば、凹部の形状、大きさ、及び配置等は特に限定されない。例えば第2部材の凸部が、第2部材の平面視において円弧状又は波状に湾曲した形状で第2部材本体部の上面から突出して形成されている場合、第2部材の凹部も、第2部材の厚さを略一定の大きさにするため、当該凸部に対応する円弧状又は波状に湾曲した形状で第2部材本体部の下面に凹設されていることが好ましい。
【0032】
第2部材20の各凹溝部23a内には、当該凹溝部23aの内側空間の一部を埋めるように形成される少なくとも1つの内部リブ24が設けられている。本実施例の場合、複数の凹溝部23aのそれぞれに、複数の内部リブ24が設けられている。
【0033】
各内部リブ24は、凹溝部23aに交差するように、上述した第1方向5(言い換えると、凹溝部23aの長さ方向)に直交する第2方向に沿って設けられている。また、それぞれの内部リブ24の下端面は、第2部材本体部21の下面から連続的に形成されており、内部リブ24の下端面と第2部材本体部21の下面とは、その間の境界部に段差が形成されることなく、滑らかな単一の面(本実施例の場合は平面)に形成されている。
【0034】
これにより、第2部材20の滑らかに形成される下面の面積(特に本実施例の場合は、段差や凹凸等を含まない平坦面の面積)を、例えば内部リブ24が全く設けられていない場合に比べて、広く確保できる。更に本実施例では、1つの凹溝部23aに対して複数の内部リブ24が設けられているため、第2部材20の下面に凹溝部23aが凹設されていても、滑らかな下面の面積を広く確保し易くできる。これにより、第2部材20と第3部材30とを溶着する後述の第2振動溶着工程において、第3部材30の第3溶着リブ32を第2部材20の下面に安定して接触させることができ、それによって、第3部材30を第2部材20に強固に溶着させることができる。
【0035】
なお本発明において、第2部材における内部リブの形状、大きさ、及び配置等は特に限定されるものではなく、内部リブの下面が第2部材本体部の下面に対して滑らかに連続する面に形成されていれば、適宜変更することが可能である。例えば、第2部材本体部の下面が湾曲面に形成されている場合、内部リブの下面は、第2部材本体部の湾曲した下面に滑らかに連続する湾曲面に形成されていることが好ましい。
【0036】
本実施例において、複数の内部リブ24は、凹溝部23aの長さ方向(すなわち、上述した第1方向5)に一定の間隔で設けられている。この場合、内部リブ24の第1方向5における寸法(内部リブ24の厚さ)は、第1方向5に互いに隣接する内部リブ24間の間隔よりも小さく設定されている。このように内部リブ24を薄く形成することにより、第2部材20の成形工程において第2部材20の下面にヒケをより発生させ難くすることができる。
【0037】
本実施例の第3部材30は、第2部材20に対面するように配される第3部材本体部31と、第3部材本体部31の上面から突出する少なくとも1つの第3溶着リブ(凸部)32とを有する。本実施例において、第3溶着リブ32は、第2溶着リブ22aと平行に、すなわち、上述した第1方向5に沿って設けられている。
【0038】
第3溶着リブ32は、第2部材20に接合される前の状態にて、第1方向5に直交する断面が半円形又は半円形に近い形状を呈する形状を有する。また本実施例の場合、第3溶着リブ32は、第2溶着リブ22aよりも上述した長さ方向における寸法を小さくして、第3溶着リブ32の一部が第2部材20の凹溝部23a内に挿入可能に形成されている。
【0039】
第3溶着リブ32は、後述する第2振動溶着工程によって、第2部材20と第3溶着リブ32の境界部に形成される第2振動溶着部7によって第2部材20の下面に接合されている。なお本発明において、第3部材の形状及び大きさ、並びに、第3溶着リブの形状、大きさ、及び配置等は特に限定されず、接合体の用途等に応じて適宜変更することが可能である。
【0040】
次に、上述した第1部材10、第2部材20、及び第3部材30に振動溶着を行うことによって、第1部材10~第3部材30が順番に積層されて一体化された接合体1を製造する方法について説明する。
本実施例では、先ず、第1部材10、第2部材20、及び第3部材30を準備する準備工程を行う。続いて、準備した第1部材10及び第2部材20を用いて、第2部材20を第1部材10に振動溶着により接合して一次接合体を形成する第1振動溶着工程を行う。その後、得られた一次接合体における第2部材20の下面に、準備した第3部材30を振動溶着により接合する第2振動溶着工程を行う。これによって、接合体1が製造される。
【0041】
準備工程では、例えば射出成形等を行うことによって、第1部材10、第2部材20、及び第3部材30を、それぞれ、事前に設計された所定の形状に成形する。このとき、第2部材20は、第2部材20の下面側に、複数の凹溝部23aが第2溶着リブ22aに対応して設けられることにより、第2部材20の内部リブ24を除く部分が、薄く、且つ、ほぼ一定の厚さで形成されるため、成形工程後に得られる第2部材20の下面に、ヒケが発生することを効果的に抑制できる。
【0042】
次に、第1振動溶着工程では、振動溶着機を用いて第1部材10と第2部材20とに振動溶着を行う。本実施例では、例えば、第1部材10を振動溶着機に固定するとともに、第2部材20を第1部材10に接触させる。このとき、第2部材20の各第2溶着リブ22aを第1部材10の下面に接触させる。更に、第2部材20を第1部材10に向けて押圧して第1部材10と第2溶着リブ22aの接触部分を加圧するとともに、第2部材20を押圧方向に対して直交する横方向に振動させる。本実施例の場合、第2部材20の振動は、第2溶着リブ22aに沿った方向(上述した第1方向5)又は第2溶着リブ22aに直交する方向(上述した第2方向)に行われる。なお本発明において、振動溶着の振動方向は、特に限定されるものではない。また本発明では、第1振動溶着工程において、第2部材20を振動溶着機に固定するとともに、第1部材10を第2部材20に向けて押圧して振動させてもよい。
【0043】
この第1振動溶着工程で上述した加圧及び振動を行うことにより、第1部材10の下面と第2部材20の第2溶着リブ22aとの接触部分を摩擦熱で溶融させることができ、その後、溶融した合成樹脂が冷却されることによって第1振動溶着部6が形成されるとともに、その第1振動溶着部6によって第1部材10と第2部材20とが接合する。このとき、溶融させる合成樹脂の体積を変えることによって、第1部材10及び第2部材20間の溶着強度を調整できる。これにより、第1部材10と第2部材20とが積層されて一体化した一次接合体(不図示)を作製できる。
【0044】
第1振動溶着工程の終了後、第1振動溶着工程で得られた一次接合体と第3部材30とを接合する第2振動溶着工程を行う。この第2振動溶着工程では、例えば、一次接合体を振動溶着機に固定するとともに、第3部材30の第3溶着リブ32を、一次接合体における第2部材20の下面に接触させる。このとき、第2部材20の下面には、
図3に示したように、凹溝部23aを横断するように設けられる複数の内部リブ24が、それぞれの凹溝部23aに一定の間隔で配置されており、それによって、第2部材20の下面に平面の面積が広く確保されている。このため、第2振動溶着工程では、第3部材30の第3溶着リブ32を第2部材20の下面に安定して接触させ易くすることができる。
【0045】
また本実施例では、第2部材20の成形時に第2部材20の下面におけるヒケの発生が抑制されている。このため、第3部材30を一次接合体に接触させるときに、第2部材20の下面と第3部材30の溶着リブとの接触部を、第1部材10及び第2部材20間に形成された第1振動溶着部6に対して積層方向に重なるように配置しても、従来の振動溶着の場合のように溶着強度の低下が生じることを防止できる。
【0046】
上述のように第3部材30を一次接合体に接触させた後、第3部材30を一次接合体に向けて押圧して第2部材20と第3溶着リブ32の接触部分を加圧するとともに、第3部材30を押圧方向に対して直交する横方向に振動させることによって、振動溶着を行う。本実施例の場合、第3部材30の振動は、第3溶着リブ32に沿った方向又は第3溶着リブ32に直交する方向に行われる。このとき、第1振動溶着工程と同様に、合成樹脂の溶融体積を変えることによって第2部材20及び第3部材30間の溶着強度を調整できる。
【0047】
上述した振動溶着を行うことにより、第2部材20の下面と第3部材30の第3溶着リブ32との接触部分を摩擦熱で溶融させることができ、その後、溶融した合成樹脂が冷却されることによって第2振動溶着部7が形成されるとともに、その第2振動溶着部7によって第2部材20と第3部材30とが接合する。これにより、一次接合体における第2部材20の下面と第3部材30の第3溶着リブ32の上端部とが第2振動溶着部7によって接合されて、第1部材10、第2部材20、第3部材30が積層一体化された
図1の接合体1を製造できる。なお本発明では、第2振動溶着工程において、第3部材を振動溶着機に固定するとともに、一次接合体を第3部材に向けて押圧して振動させてもよい。また本発明で振動溶着を行う順番は特に限定されず、例えば第1部材10~第3部材30の準備後、先ず、第2部材20と第3部材30を振動溶着によって接合し、その後、接合させた第2部材20及び第3部材30を、第1部材10に振動溶着によって接合してもよく、又は、第1部材10~第3部材30を同時に振動溶着によって接合してもよい。
【0048】
以上のように製造された本実施例の接合体1によれば、第2部材20の成形時(作製時)に、第2部材20の下面にヒケが発生することを抑制できるとともに、第2部材20に内部リブ24を設けたことによって、第2部材20の平坦な下面の面積を広く確保できる。このため、本実施例の接合体1は、第1部材10と第2部材20を接合させる第1振動溶着部6の少なくとも一部と、第2部材20と第3部材30を接合させる第2振動溶着部7の少なくとも一部とを、第1部材10~第3部材30の積層方向で互いに重なり合った位置関係で形成することができる。このように第1振動溶着部6と第2振動溶着部7とを積層方向で重ね合わせて接合体1が形成されることにより、溶着リブの配置に制約を生じさせ難くすることができ、それによって、接合体1の設計の自由度を高めることができる。
【0049】
また本実施例の接合体1では、例えば所要の溶着強度を確保しながら第1振動溶着部と第2振動溶着部が重なり合わないように配置される従来の場合に比べて、接合体1を積層方向から見たときにおける第1振動溶着部6と第2振動溶着部7の合計の面積を大幅に小さくし(言い換えると、第1振動溶着部6と第2振動溶着部7とが積層方向で重なる面積を大きくし)、積層方向に直交する面における第1振動溶着部6及び第2振動溶着部7の省スペース化を実現できる。このように第1振動溶着部6と第2振動溶着部7とを重ね合わせてより狭い領域に配置することが可能となることにより、接合体1の小型化を図り易くすることができる。
【0050】
更に本実施例の接合体1では、第1振動溶着部6及び第2振動溶着部7が第1部材10~第3部材30の積層方向で重なり合っていても、第2部材20の成形時に第2部材20のヒケの発生を抑制できる。このため、従来の振動溶着で3つの部材を積層して一体化する場合のように、積層方向の中央に配される第2部材のヒケに起因して接合体の溶着強度が低下することも効果的に抑制できる。
【0051】
なお、上述した実施例では、第1部材10~第3部材30の3つの部材が順番に積層されて接合体1が製造されているが、本発明は、4つ以上の部材が順番に積層されて接合体が製造されていてもよい。例えば第1部材~第4部材の4つの部材が順番に積層されて接合体が製造される場合、2つの部材間に挟まれて接合される第2部材と第3部材とに、それぞれ、実施例で説明したような凸部(溶着リブ)と、凸部に対応する凹部(凹溝部)と、凹部内に設けられる内部リブとを設けることによって、第2部材及び第3部材に各部材の成形工程でヒケが発生することを抑制できる。また、第2部材~第4部材における溶着リブの配置に制約を生じさせ難くし、その結果、接合体の設計の自由度の拡大、及び接合体の小型化を図り易くすることができる。更に本発明では、上述したように振動溶着を行う順番は限定されず、また、4つ以上の全ての部材を同時に振動溶着によって接合してもよい。