(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153841
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】車両用サイドドア構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/00 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
B60J5/00 Q
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056574
(22)【出願日】2021-03-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】相馬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】平野 栄治
(72)【発明者】
【氏名】家村 侑
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来よりも車両側突時におけるドアの車室内側への変形ストロークを低減することができるサイドドア構造を提供する。
【解決手段】本発明は、長手方向の両端に開口した中空断面を有するドアビーム5と、前記ドアビーム5の前端に接合されるクランク形状の屈曲板体からなるヒンジ補強部材11と、を備える車両用サイドドア構造1であって、ヒンジ補強部材11は、前記ドアビーム5の前端の開口5bを塞ぐとともに、サイドドア2のインナパネル4の段部縦壁4bに接合される中間部11bと、前記インナパネル4の段部外横壁4aと前記ドアビーム5の外壁の延出部6aとに接合される外端部11aと、前記ドアビーム5の内壁9に接合される内端部11cと、が一体に形成されて前記クランク形状を構成していることを特徴とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の両端に開口した中空断面を有するドアビームと、
前記ドアビームの前端又は後端の一方に接合されるクランク形状の屈曲板体からなるヒンジ補強部材と、
を備える車両用サイドドア構造であって、
ヒンジ補強部材は、
前記ドアビームの前端又は後端の一方の開口を塞ぐとともに、サイドドアのインナパネルの段部縦壁に接合される中間部と、
前記インナパネルの段部外横壁と前記ドアビームの外壁とに接合される外端部と、
前記ドアビームの内壁に接合される内端部と、
が一体に形成されて前記クランク形状を構成していることを特徴とする車両用サイドドア構造。
【請求項2】
前記ドアビームは、長手方向の中央部と端部とのサイドドアの厚さ方向の深さが異なっており、長手方向に交差する前記ドアビームの断面周長は、長手方向に亘って同じに設定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用サイドドア構造。
【請求項3】
前記ヒンジ補強部材の前記内端部と、前記ドアビームの前記内壁とは、前後方向及び上下方向にオフセットする少なくとも2箇所以上で機械的に接合されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用サイドドア構造。
【請求項4】
サイドドアと車体側とを係合する係合部材と、
前記ドアビームの前端又は後端の他方に接合されるクランク形状の屈曲板体からなる、前記係合部材の補強部材と、をさらに備え、
前記係合部材の補強部材は、
前記ドアビームの前端又は後端の他方の開口を塞ぐ中間部と、
前記インナパネルの段部外横壁と前記ドアビームの外壁とに接合される外端部と、
前記ドアビームの内壁と前記インナパネルの段部内横壁とに接合される内端部と、
が一体に形成されて前記クランク形状を構成しており、
前記内端部又は前記中間部には、前記係合部材が固定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用サイドドア構造。
【請求項5】
前記係合部材の補強部材における前記内端部と、前記ドアビームの前記内壁とは、前後方向及び上下方向にオフセットする少なくとも2箇所以上で機械的に接合されていることを特徴とする請求項4に記載の車両用サイドドア構造。
【請求項6】
前記ドアビームはドアスキンに沿って湾曲し、前記ドアビームと前記ドアスキンとの間には、粘弾性部材が介在していることを特徴とする請求項1に記載の車両用サイドドア構造。
【請求項7】
前記ドアビームの前端又は後端の一方は、前記外壁のみが長手方向に延長され、前記インナパネルの前記段部外横壁との間に前記ヒンジ補強部材の外端部を挟み込んで接合していることを特徴とする請求項1に記載の車両用サイドドア構造。
【請求項8】
サイドドアと車体側とを係合する係合部材と、
前記ドアビームの又は後端の他方に接合されるクランク形状の屈曲板体からなる、前記係合部材の補強部材と、をさらに備え、
前記ドアビームの前端又は後端の他方を形成する前記ドアビームの外壁と内壁のうち、外壁のみが部分的に切り欠かれており、前記ドアビームの後端の内壁には、ボルト締結部が形成され、
前記係合部材の補強部材は、
前記ドアビームの前端又は後端の他方の開口を塞ぐ中間部と、
前記ドアビームの外壁に接合される外端部と、
前記ボルト締結部を介して前記ドアビームの内壁と前記係合部材とを接合する内端部と、が一体に形成されて前記クランク形状を構成していることを特徴とする請求項1に記載の車両用サイドドア構造。
【請求項9】
前記ドアビームは、ハイドロフォーム成形体であることを特徴とする請求項1に記載の車両用サイドドア構造。
【請求項10】
前記ドアビームは、プレス成形されたパイプ状ビーム又はプレス成型ビームであることを特徴とする請求項1に記載の車両用サイドドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サイドドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドアビームをドアスキンの内側に沿って延在するように配置した車両用サイドドア構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。このドアビームは、鋼板をロール成形した管状部材であり、長手方向に交差する断面視で上下2連の閉断面形状を有している。具体的には、ドアビームの断面は、上下に対称となる2つの直角台形同士が並ぶことで全体として一つの略等脚台形を形成している。そして、このドアビームは、等脚台形を構成する上底及び下底のうち上底側(短辺側)がドアスキンに面するように配置されている。これにより等脚台形を構成する2つの脚辺同士は、ドアスキン側に向かうほど互いの間隔を徐々に減じるように傾斜している。
このようなサイドドア構造によれば、車外側からドアに衝突荷重が入力された際に、ドアビームの傾斜した前記の台形の脚辺に対応する部分によって、ドアビームの変形が抑制されて衝突の抗力が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のサイドドア構造(例えば、特許文献1参照)は、開口するドアビームの端部や、この端部をドアパネル(インナパネル)に取り付ける、開放面を有するブラケットによってドアビームの取付強度が不十分となっている。また、ドアビームの端部に対応する位置でドアと車体との間にはクリアランスが形成されているとともに、車体側には強固な構造部材もない。
そのため、従来のサイドドア構造においては、車両側突時にドアビームの端部又はその周辺部材の損傷によって、ドアの車室内側への変形ストロークが増大する問題がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、従来よりも車両側突時におけるドアの車室内側への変形ストロークを低減することができるサイドドア構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する車両用サイドドア構造は、長手方向の両端に開口した中空断面を有するドアビームと、前記ドアビームの前端に接合されるクランク形状の屈曲板体からなるヒンジ補強部材と、を備える車両用サイドドア構造であって、ヒンジ補強部材は、前記ドアビームの前端の開口を塞ぐとともに、インナパネルの段部縦壁に接合される中間部と、前記インナパネルの段部外横壁と前記ドアビームの外壁とに接合される外端部と、前記ドアビームの内壁に接合される内端部と、が一体に形成されて前記クランク形状を構成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のサイドドア構造によれば、従来よりも車両側突時におけるドアの車室内側への変形ストロークを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用サイドドア構造を適用したサイドドアの側面図である。
【
図8】第1変形例に係る車両用サイドドア構造におけるドアビームの後端部周りの部分拡大図である。
【
図9】第2変形例に係る車両用サイドドア構造におけるドアビームの後端部の部分拡大斜視図である。
【
図10】第2変形例に係る車両用サイドドア構造におけるドアビームの後端部周りの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施する形態(本実施形態)のサイドドア構造について詳細に説明する。本実施形態の車両用サイドドア構造(以下、単にサイドドア構造と称する)は、ヒンジ補強部材が中空断面(閉断面)を有するドアビームの前端部の開口を塞ぐように配置されているとともにドアビームの前端部とインナパネルのそれぞれに接合されていることを主な特徴とする。
【0010】
図1は、本実施形態に係るサイドドア構造1を適用した車両左側のサイドドア2の側面図である。
図2は、
図1のII-II断面図である。なお、本実施形態での前後上下左右の方向は、車両の前後上下左右の方向に一致している。
図1中、ドアスキン3(
図2参照)は、作図の便宜上、省略している。
以下では、車両左側のサイドドア2に適用されるサイドドア構造1についてのみ説明し、車体中心軸を挟んでこれと対称構造となる右側のサイドドア2に適用されるサイドドア構造1についての説明は省略する。
【0011】
<サイドドア>
本実施形態のサイドドア構造1が適用される
図1に示すサイドドア2は、図示は省略するが、車両側部の開口を開閉するように、車体側にヒンジを介して取り付けられている。
サイドドア2は、
図2に示すように、インナパネル4と、このインナパネル4の車幅方向外側(
図2の左側)に配置されるドアスキン3と、を備えている。
本実施形態でのドアスキン3は、インナパネル4との間に所定間隔を開けて配置される。これによりドアスキン3とインナパネル4との間には、中空部が形成されている。なお、本実施形態でのドアスキン3は、折り曲げられてインナパネル4の周縁にヘミング加工にて接合(ヘミング接合)されたものを想定している。
【0012】
インナパネル4には、インナパネル4の内面に沿って延びるようにドアビーム5が配置されている。
このドアビーム5は、
図1に示すサイドドア2の側面視で、後方に延びるほど徐々に下方に変位するように傾斜している。
ちなみに、本実施形態でのドアビーム5は、後に詳しく説明するように、サイドドア2の上下一対のヒンジ25,25のうち、上側のヒンジ25と、サイドドア2の閉時に車体と係合する係合フック26とに跨るように延びている。
【0013】
<サイドドア構造>
次に、本実施形態のサイドドア構造1(
図1参照)について説明する。
図1のII-II断面図である
図2に示すように、本実施形態のサイドドア構造1は、サイドドア2のドアスキン3とインナパネル4との間に配置されるドアビーム5を備えて構成されている。なお、
図2中、ヒンジ25は、作図の便宜上、仮想線(二点鎖線)で表している。
【0014】
ドアビーム5は、閉時のサイドドア2において、車幅方向外側(
図2の左側)に配置されるドアスキン3の内壁面に沿うように延びている。具体的には、ドアビーム5は、ドアビーム5の前後両端部を除いて、その長手方向の殆どを占める一般部5aが、ドアスキン3の外側に凸となる湾曲面の曲率に合わせて、車幅方向外側に僅かに凸となるように湾曲している。
なお、
図2に示したドアスキン3と、ドアビーム5の一般部5aとの間隔は、誇張して描いたものであり、本実施形態でのドアスキン3とドアビーム5の一般部5aとは、マスチックシーラ(図示を省略)を介して密着している。
【0015】
そして、本実施形態でのドアビーム5の前端は、後に詳しく説明するように、ヒンジ補強部材11を介してインナパネル4と接合されている。また、本実施形態でのドアビーム5の後端は、係合フック26(係合部材)の補強部材15を介してインナパネル4と接合されている。
【0016】
次に、ドアビーム5(
図2参照)についてさらに具体的に説明する。
図3Aは、
図2のIIIa-IIIa断面図である。
図3Bは、
図2のIIIb-IIIb断面図である。
図4は、ドアビーム5の端部の部分拡大斜視図である。
図3A及び
図3Bに示すように、ドアビーム5は、中空断面(閉断面)を有する管状体で形成されている。本実施形態でのドアビーム5は、所定の金型内に配置した原材料としてのパイプの内側に水圧を掛けながらプレス成形して得られるハイドロフォーム成型体からなるビーム、プレス成形されたパイプ状のビーム、プレス成型ビームなどを想定している。
【0017】
次に、本実施形態でのドアビーム5における閉断面徐変構造について説明する。
図3Aに示すように、ドアビーム5の長手方向(軸方向)の中央部における断面形状は、略等脚台形形状を呈している。具体的には、左右高さH1よりも上下幅W1が長い、扁平な略等脚台形形状である。そして、上底よりも長辺となる下底側が、ドアスキン3に面している。
【0018】
また、本実施形態でのドアビーム5は、長手方向(軸方向)にわたって、軸回りの周長が略同じになっている。そして、このドアビーム5の断面形状は、中央部から端部に向かうほど、その上下幅を徐々に減じていく。つまり、周長一定のドアビーム5は、ドアビーム5の長手方向の中央部よりも端部のほうが、左右高さ(サイドドア2(
図1参照)の厚さ方向の深さ)が増している。
このようなドアビーム5の端部における断面形状は、
図3Bに示すように、左右高さがH2で、上下幅がW2の略直角台形となっている。そして、ドアビーム5の中央部における断面形状との関係では、左右高さH1<H2、上下幅W1>W2の関係式を満たすようになっている。
【0019】
図4は、ドアビーム5の前端部の部分拡大斜視図である。
図4に示すように、ドアビーム5の前端部の開口5bは、
図3Bに示した断面形状と略同じ形状(略直角台形)を呈している。
ドアビーム5は、外壁6と、上壁7と、下壁8と、内壁9とを備えている。
また、外壁6は、他の上壁7、下壁8、及び内壁9よりも、前方に向けて延びる延出部6aを有している。
なお、
図1中、符号22,22のそれぞれは、次に説明するヒンジ補強部材11(
図5参照)の内端部11cと締結するボルトの挿通孔である。
このような延出部6aを有するドアビーム5の前端部の形状は、成形後に金型から取り出したドアビーム5の端部にレーザカット加工を施して形成される。
【0020】
次に、ヒンジ補強部材11(
図2参照)について説明する。
図5は、ヒンジ補強部材11の全体斜視図である。
図5に示すように、ヒンジ補強部材11は、板体がクランク形状を呈するように加工された屈曲体である。
ヒンジ補強部材11は、外端部11aと、中間部11bと、内端部11cと、を有している。
図5中、符号23,23のそれぞれは、ドアビーム5のボルトの挿通孔22,22(
図4参照)に対応するように設けられたボルトの挿通孔である。
【0021】
図6は、
図2の矢示VI部の部分拡大図である。
図6に示すように、ヒンジ補強部材11は、ドアビーム5の端部の開口5bを塞ぐように配置されているとともにインナパネル4とドアビーム5のそれぞれに接合されている。
具体的には、インナパネル4は、
図6に示すように、ドアスキン3とヘミング接合される前端からドアスキン3と並行して後方に延びる段部外横壁4aと、この段部外横壁4aの後端縁から車幅方向内側(
図6の右側)に延びる段部縦壁4bとによって、車両側部の開口(図示を省略)を形成する車体段部に向き合う段部を形成している。
【0022】
ヒンジ補強部材11の外端部11aは、インナパネル4の段部外横壁4aとドアビーム5の延出部6aとの間に挟み込まれて三枚重ねにてスポット溶接されている。
ドアビーム5の開口5bを塞ぐヒンジ補強部材11の中間部11bは、インナパネル4の段部縦壁4bと二枚重ねにてスポット溶接されている。また、この中間部11bと段部縦壁4bとの二枚重ね部分には、ヒンジ25の回動側がボルトにて締結されている。
【0023】
ヒンジ補強部材11の内端部11cは、ドアビーム5の開口5bからドアビーム5の内側に差し込まれるとともに、ドアビーム5の内壁9と重ね合わせられて、一対のボルト21にて締結される。
この際、ボルト21は、
図4に示したドアビーム5の挿通孔22と、
図5に示したヒンジ補強部材11の挿通孔23とに挿通される。
【0024】
これにより
図3Bに示すように、一対のボルト21,21のそれぞれは、ドアビーム5の内壁9とヒンジ補強部材11の内端部11cとを2箇所で接合する。具体的には、ボルト21,21のそれぞれは、
図4に示す挿通孔22及び
図5に示す挿通孔23に挿通されることで、前後方向及び上下方向にオフセットした2箇所で内壁9と内端部11cとを接合する。なお、内壁9と内端部11cとの接合は、3箇所以上とすることもできるし、ボルト締結に限定されずに、リベット接合などの他の機械的接合とすることもできる。
【0025】
次に、ドアビーム5の後端部とインナパネル4との接合について説明する。
図7は、
図2の矢示VII部の部分拡大図である。
図7に示すように、ドアビーム5の後端部は、ドアビーム5の前端部と同様に、レーザカット加工が施されることによって、外壁6に延出部6aが形成されている。また、ドアビーム5の後端部は、サイドドア2(
図1参照)の係合フック26(係合部材)に対する補強部材15を介してインナパネル4に接合されている。
なお、本実施形態での係合フック26は、L字状に屈曲した厚めの鋼板にて形成されている。この係合フック26は、図示は省略するが、閉状態のサイドドア2(
図1参照)の後部から車幅方向内側(
図7の右側)に突出する部分が、例えばBピラーなどの車体側に形成された係合穴からなるキャッチャに嵌り込むようになっている。
このような係合フック26(係合部材)によれば、車両に対する側突時に、サイドドア2が中折れして車室側に侵入することが防止される。
【0026】
次に、係合フック26の補強部材15を介してのインナパネル4に対するドアビーム5の接合について説明する。
図7に示すように、補強部材15は、板体がクランク形状を呈するように加工された屈曲体である。
この補強部材15は、ヒンジ補強部材11(
図5参照)と同様に、外端部15aと、中間部15bと、内端部15cと、を有している。
【0027】
これに対して、サイドドア2の後部におけるインナパネル4は、
図7に示すように、ドアスキン3とヘミング接合される後端からドアスキン3と並行して前方に延びる段部外横壁4cと、この段部外横壁4cの前端縁から車幅方向内側(
図7の右側)に延びる途中で前方に屈曲して延びる段部内横壁4dと、を形成している。
【0028】
図7に示すように、補強部材15の外端部15aは、インナパネル4の段部外横壁4cとドアビーム5の延出部6aとの間に挟み込まれて三枚重ねにてスポット溶接されている。
補強部材15の中間部15bは、ドアビーム5の開口5bを塞ぐように配置されている。
補強部材15の内端部15cは、ドアビーム5の開口5bからドアビーム5の内側に差し込まれるとともに、この内端部15cと、ドアビーム5の内壁9と、インナパネル4の段部内横壁4dと、係合フック26との4枚が、この順番で重ねられる。そして、これらは、4枚重ねで、一対のボルト21にて締結される。一対のボルト21は、これら4枚を前後方向及び上下方向にオフセットした2箇所で接合する。なお、内壁9と内端部11cとの接合は、3箇所以上とすることもできるし、ボルト締結に限定されずに、リベット接合などの他の機械的接合とすることもできる。
【0029】
<作用効果>
次に、本実施形態に係るサイドドア構造1の奏する作用効果について説明する。
本実施形態に係るサイドドア構造1は、ヒンジ補強部材11が中空断面(閉断面)を有するドアビーム5の前端部の開口5bを塞ぐように配置されているとともにドアビーム5とインナパネル4のそれぞれに接合されている。
このようなサイドドア構造1によれば、ドアビーム5は、ヒンジ25により車体側と強固に結合されるため、車両に対する側突時に、ドアビーム5の端部が潰れたり折れることがない。これによりサイドドア構造1は、車室内側へのサイドドア2の変形ストロークを低減することができる。
【0030】
また、サイドドア構造1においては、長手方向に交差するドアビーム5の断面周長は、長手方向に亘って同じに設定されている。また、ドアビーム5は、長手方向の中央部と端部ではサイドドア2の厚さ方向の深さが異なるように形成されている。
このようなサイドドア構造によれば、側突時の曲げモーメントに対するドアビーム5の強度がより一層高められるよう設計することができる。また、このようなサイドドア構造1によれば、ドアビーム5の周長が長くならないので、強度向上を達成しつつドアビーム5の重量増加を抑制することができる。
例えば、実施例のようにドアビーム5において、長手方向の中央部よりも端部のほうがサイドドア2の厚さ方向の深さを深く設定すれば、ドアビーム5は端部の深さが中央部より深いので、側突時の曲げモーメントに対するドアビーム5の強度がより一層高められる。
【0031】
また、サイドドア構造1においては、ヒンジ補強部材11の内端部11cと、ドアビーム5の内壁9とは、前後方向及び上下方向にオフセットする少なくとも2箇所以上で機械的に接合されている。
このサイドドア構造1では、側突時のドアビーム5は、引張方向の荷重を受けることとなる。その一方で、車体側とヒンジ補強部材11を介して接続されるドアビーム5の後端部の内壁9は、前後方向及び上下方向にオフセットする2箇所以上で機械的に接合されている。これによりサイドドア構造1は、ドアビーム5の端部に掛かる荷重を二次元的に分散させることができる。サイドドア構造1は、ドアビーム5の端部における亀裂などの発生を抑制することができる。
【0032】
また、このサイドドア構造1においては、係合フック26(係合部材)の補強部材15が、中空断面(閉断面)を有するドアビーム5の後端部の開口5bを塞ぐように配置されているとともにドアビーム5の後端部とインナパネル4のそれぞれに接合されている。
このようなサイドドア構造1によれば、ドアビーム5の後端部は、係合フック26(係合部材)により車体側と強固に結合されるため、車両に対する側突時に、ドアビーム5の後端部が潰れたり折れたりすることがない。これによりサイドドア構造1は、車室内側へのサイドドア2の変形ストロークを低減することができる。
【0033】
また、このサイドドア構造1は、係合フック26(係合部材)の補強部材15における内端部15cと、ドアビーム5の内壁9とは、前後方向及び上下方向にオフセットする少なくとも2箇所以上で機械的に接合されている。
このサイドドア構造1では、側突時のドアビーム5は、引張方向の荷重を受けることとなる。その一方で、車体側と補強部材15を介して接続されるドアビーム5の後端部の内壁9は、前後方向及び上下方向にオフセットする2箇所以上で機械的に接合されている。これによりサイドドア構造1は、ドアビーム5の後端部に掛かる荷重を二次元的に分散させることができる。サイドドア構造1は、ドアビーム5の後端部における亀裂などの発生を抑制することができる。
【0034】
また、このサイドドア構造1においては、ドアビーム5はドアスキン3に沿って湾曲し、ドアビーム5とドアスキン3との間には、マスチックシーラ(粘弾性部材)が介在している。
このようなサイドドア構造1によれば、ドアビーム5をドアスキン3に沿って形成することによって、側突時の初期から入力荷重に対する反力の立ち上がりが良好となる。また、このサイドドア構造1によれば、ドアスキン3に対向するドアビーム5の外側面の全体にマスチックシーラーを介在させることができるので、ドアスキン3の面剛性を高め、サイドドア2における制振作用を高めることができる。また、ドアビーム5とドアスキン3との間にマスチックシーラーを介在させる際のブラケットも不要となる。
【0035】
また、このサイドドア構造1においては、ドアビーム5の前端部は、外壁6のみが長手方向に延長され、インナパネル4の段部外横壁4aとの間にヒンジ補強部材11の外端部11aを挟み込んで接合している。
このようなサイドドア構造1によれば、ドアビーム5の前端部の外壁6のみが延長されているので、ドアビーム5とインナパネル4とヒンジ補強部材11との重ね合わせによる接合を容易に行うことができ。また、このようなドアビーム5の外壁6のみが延長された形状をレーザカット加工によって容易に形成することができる。
【0036】
また、このサイドドア構造1のドアビーム5は、ハイドロフォーム成形体である。
このようなサイドドア構造1によれば、閉断面徐変構造を有するドアビーム5であって、長手方向の中央部で扁平であり、両端部に向かうほど車幅方向の厚さを有する構造を容易に形成することができる。
【0037】
また、このサイドドア構造1のドアビーム5は、プレス成形体である。
このようなサイドドア構造1によれば、ドアビーム5の生産性が向上する。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
前記実施形態のサイドドア構造1では、係合部材として係合フック26を使用した例について説明したが、係合部材は、係合ピンを使用した次の構成(第1変形例)とすることもできる。
図8は、第1変形例に係るサイドドア構造1におけるドアビーム5の後端部周りの部分拡大図である。
図8に示すように、第1変形例に係るサイドドア構造1は、前記実施形態での係合フック26(
図7参照)に代えて、係合ピン27を係合部材として備えている。
この第1変形例では、
図7に示す前記実施形態での係合フック26を省略したことで、補強部材15の内端部15cは、ドアビーム5の内壁9と、インナパネル4の段部内横壁4dとの3枚重ねとなっている。そして、この3枚重ねの部分は、前記実施形態でのボルト締結に代えて、3枚重ねのスポット溶接が施されている。
そして、補強部材15の外端部15aは、前記実施形態と同様に、インナパネル4の段部外横壁4cとドアビーム5の延出部6aとの間に挟み込まれて三枚重ねにてスポット溶接されている。
補強部材15の中間部15bは、ドアビーム5の開口5bを塞ぐように配置されている。
【0039】
係合ピン27は、インナパネル4の段部外横壁4cと段部内横壁4dとの間を車幅方向(
図8の左右方向)に延びる段部縦壁4eを貫通するとともに、補強部材15の中間部15bを貫通するように延びている。
この係合ピン27は、図示は省略するが、閉状態のサイドドア2の後部から後方に突出した先端の頭部27aが、例えばBピラーなどの車体側に設けられたキャッチャブラケットに係止されて頭部27aの前方への変位が禁止される。
このような係合ピン27(係合部材)を有するサイドドア構造1によれば、車両に対する側突時に、サイドドア2が中折れして車室側に侵入することが、より確実に防止される。
【0040】
次に、第2変形例のサイドドア構造1のドアビーム5について説明する。
図9は、第2変形例に係るドアビーム5の後端部の部分拡大斜視図である。
図10は、第2変形例に係るドアビーム5の後端部周りの部分拡大図である。
図9に示すように、第2変形例に係るドアビーム5の外壁6は、前記実施形態における延出部6a(
図7参照)を有するドアビーム5(
図7参照)と異なって、外壁6に切欠部6bを有している。このような切欠部6bを有するドアビーム5の後端部は、ドアビーム5の前端部と同様に、レーザカット加工が施されることによって形成される。
第2変形例におけるドアビーム5の後端部は、外壁6の後縁が、他の上壁7、下壁8及び内壁9の後縁よりも前方にシフトしている。これにより内壁9に形成されたボルトの挿通孔22,22のそれぞれは、切欠部6bを介してユーザが視認可能となっている。
【0041】
そして、
図10に示すように、補強部材15は、
図7に示す補強部材15の向きとは前後方向逆向きとなるように配置されて、中間部15bがドアビーム5の開口5bを塞いでいる。
補強部材15の外端部15aは、ドアビーム5の開口5bからドアビーム5内に差し込まれてドアビーム5の外壁6と二枚重ねにてスポット溶接されている。
補強部材15の内端部15cには、ドアビーム5の内壁9と、インナパネル4の段部内横壁4dと、係合フック26とが、この順番で重ねられる。そして、これらは4枚重ねで、一対のボルト21にて締結されている。また、図示は省略するが、これら4枚は、前後方向及び上下方向にオフセットした2箇所以上でボルト締結などにて機械的に接合することもできる。
【0042】
このようなサイドドア構造1によれば、ドアビーム5の外壁6に切欠部6bを有しているので、ボルト21によるドアビーム5に対する係合フック26(係合部材)の取り付けが容易となる。また、このようなドアビーム5の外壁6に切欠部6bを有する形状は、レーザカット加工によって容易に形成することができる。
【0043】
また、前記実施形態及び変形例に係るサイドドア構造1は、
図1に示すように、サイドドア2の前側にヒンジ25を有する後端開きの回動ドアを想定している。ただし、サイドドア構造1は、図示は省略するが、観音開きの一対のサイドドア2を有するものにも適用が可能である。このような観音開きの一対のサイドドア2のうち、前端開きとなる後側のサイドドア2と、後端開きとなる前側のサイドドア2とは、前後方向に対称構造となる。
したがって、前端開きとなる後側のサイドドア2においては、ヒンジ補強部材11は、ドアビーム5の後端に接合されるとともに、その中間部11bは、ドアビーム5の後側の開口を塞ぐこととなる。そして、係合部材(係合フック26、係合ピン27)の補強部材15は、ドアビーム5の前端に接合されるとともに、その中間部15bは、ドアビーム5の前端の開口を塞ぐこととなる。
【符号の説明】
【0044】
1 車両用サイドドア構造
2 サイドドア
3 ドアスキン
4 インナパネル
5 ドアビーム
9 ドアビームの内壁
11 ヒンジ補強部材
11a 外端部
11b 中間部
11c 内端部
15 係合部材の補強部材
15a 外端部
15b 中間部
15c 内端部
26 係合フック(係合部材)
27 係合ピン(係合部材)