(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153842
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】ばね成形機
(51)【国際特許分類】
B21F 11/00 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
B21F11/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056575
(22)【出願日】2021-03-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000116976
【氏名又は名称】旭精機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】大林 栄次
(72)【発明者】
【氏名】深津 遼太
【テーマコード(参考)】
4E070
【Fターム(参考)】
4E070AB09
4E070AC07
4E070AD03
4E070BC12
4E070BC23
4E070BF03
4E070CA04
4E070DA02
(57)【要約】
【課題】複数のサーボモータによる可動部の位置の個別調整作業を従来より容易に行うことが可能なばね成形機を提供する。
【解決手段】本開示のばね成形機10は、昇降ベース15のサーボモータ95が個別操作された場合には、昇降ベース15の固定ベース11に対する昇降によって第1昇降機構41のスライダ53が固定ベース11に対して昇降しないようにサーボモータ91,95同士を連動させ、第1昇降機構41のサーボモータ91が個別操作された場合にはサーボモータ91,95同士を連動させない連動制御部70Bを有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平な線材送給ラインに沿って線材送給装置から送給される線材が、成形ツールに衝合して芯金を取り巻くコイルばねに成形されると共に、前記コイルばねの線材間を拡げるためのピッチツールが前記コイルばねに対して上下方向の一方側から前記コイルばねの線材間に差し込まれ、前記コイルばねを後続の線材から切り離すための切断ツールが、前記コイルばねに対して上下方向の他方側から前記コイルばねに接近及び離間するばね成形機において、
前記線材送給ラインに対して傾斜する方向に直線移動可能に支持されるスライダを有し、そのスライダに前記成形ツールが固定される成形ツール用スライド機構と、
前記芯金より上下方向の一方側で昇降可能に支持されるスライダを有し、そのスライダに前記ピッチツールが固定される第1昇降機構と、
前記芯金より上下方向の他方側で昇降可能に支持されるスライダを有し、そのスライダに前記切断ツールが固定される第2昇降機構と、
前記線材送給装置と前記成形ツール用スライド機構とが取り付けられる固定ベースと、
前記固定ベースに昇降可能に支持され、前記芯金と前記第1昇降機構と前記第2昇降機構とが取り付けられる昇降ベースと、
前記線材送給装置、前記成形ツール用スライド機構、前記第1昇降機構、前記第2昇降機構及び前記昇降ベースの各駆動源である複数のサーボモータと、
前記複数のサーボモータを制御するコントローラと、
前記コントローラに設けられ、操作部の操作に応じて各前記サーボモータを個別に駆動する個別駆動制御部と、
前記昇降ベースの前記サーボモータが個別操作された場合に、前記昇降ベースの前記固定ベースに対する昇降によって前記第1昇降機構の前記スライダが前記固定ベースに対して昇降しないように前記昇降ベース及び前記第1昇降機構の前記サーボモータ同士を連動させ、前記第1昇降機構の前記サーボモータが個別操作された場合に、前記昇降ベース及び前記第1昇降機構の前記サーボモータ同士を連動させない連動制御部と、を備えるばね成形機。
【請求項2】
前記複数のサーボモータの目標位置データのセットである目標位置データセットを複数含む動作プログラムを記憶する記憶部と、
前記コントローラに設けられ、前記動作プログラムを実行して各前記目標位置データセットを構成する前記複数の目標位置データの位置に、前記複数のサーボモータの回転軸が同時に到達するように制御するプログラム実行部と、
前記コントローラに設けられ、前記操作部の操作に応じて前記目標位置データセットを構成する複数の目標位置データを個別に変更するプログラム編集部と、
前記プログラム編集部により前記昇降ベースの前記サーボモータの前記目標位置データが変更されたときに、その変更による前記昇降ベースの前記固定ベースに対する位置の変化によって前記第1昇降機構の前記スライダの前記固定ベースに対する位置が変化しないように前記第1昇降機構の前記サーボモータの前記目標位置データを、前記昇降ベースの前記サーボモータの前記目標位置データに連動させて変更し、前記プログラム編集部により前記第1昇降機構の前記サーボモータの前記目標位置データが変更されたときに、その変更に連動した前記昇降ベースの前記サーボモータの前記目標位置データの変更は行わない連動変更部が備えられている請求項1に記載のばね成形機。
【請求項3】
前記動作プログラムにおける前記第1昇降機構の前記サーボモータの前記目標位置データは、予め設定されたピッチツール用原点位置の位置データを基準とする変位量で特定され、
前記連動変更部は、前記プログラム編集部により前記昇降ベースの前記サーボモータの前記目標位置データが変更されたときに、その変更による前記昇降ベースの前記固定ベースに対する位置の変化によって前記第1昇降機構の前記スライダの前記固定ベースに対する位置が変化しないように前記ピッチツール用原点位置の位置データを変更する請求項2に記載のばね成形機。
【請求項4】
前記芯金の上下に配置される1対のスライダを有する1対の昇降機構が備えられ、前記1対のスライダの任意の一方と他方とに前記ピッチツールと前記切断ツールとが取り付け可能とされて、前記ピッチツールが取り付けられる前記スライダを含む前記昇降機構が前記第1昇降機構をなす一方、前記切断ツールが取り付けられる前記スライダを含む昇降機構が前記第2昇降機構をなす請求項1から3の何れか1の請求項に記載のばね成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、線材送給装置から送給される線材を成形ツールに衝合して芯金を取り巻くコイルばねに成形するばね成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のばね成形機として、成形ツールを支持するスライド機構と線材送給装置とが取り付けられる固定ベースに対し、芯金を支持する昇降ベースが昇降可能に取り付けられているものが知られている。また、このばね成形機では、コイルばねを後続の線材から切り離す切断ツールと、コイルばねの線材間を拡げるためのピッチツールとをそれぞれ昇降可能に支持する1対の昇降機構も昇降ベースに搭載されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2812432号公報(
図5,段落[0025]、[0053])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般にばね成形機では、成形ツール、ピッチツール、切断ツール、芯金等の各可動部の位置が、それらの駆動源である各サーボモータにて個別調整されることがある。しかしながら、上記した従来のばね成形機では個別調整にて芯金を移動すると、それに伴ってピッチツールも移動するので、個別調整に手間がかかっていた。そこで、本開示では、従来より個別調整を容易に行うことが可能なばね成形機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、水平な線材送給ラインに沿って線材送給装置から送給される線材が、成形ツールに衝合して芯金を取り巻くコイルばねに成形されると共に、前記コイルばねの線材間を拡げるためのピッチツールが前記コイルばねに対して上下方向の一方側から前記コイルばねの線材間に差し込まれ、前記コイルばねを後続の線材から切り離すための切断ツールが、前記コイルばねに対して上下方向の他方側から前記コイルばねに接近及び離間するばね成形機において、前記線材送給ラインに対して傾斜する方向に直線移動可能に支持されるスライダを有し、そのスライダに前記成形ツールが固定される成形ツール用スライド機構と、前記芯金より上下方向の一方側で昇降可能に支持されるスライダを有し、そのスライダに前記ピッチツールが固定される第1昇降機構と、前記芯金より上下方向の他方側で昇降可能に支持されるスライダを有し、そのスライダに前記切断ツールが固定される第2昇降機構と、前記線材送給装置と前記成形ツール用スライド機構とが取り付けられる固定ベースと、前記固定ベースに昇降可能に支持され、前記芯金と前記第1昇降機構と前記第2昇降機構とが取り付けられる昇降ベースと、前記線材送給装置、前記成形ツール用スライド機構、前記第1昇降機構、前記第2昇降機構及び前記昇降ベースの各駆動源である複数のサーボモータと、前記複数のサーボモータを制御するコントローラと、前記コントローラに設けられ、操作部の操作に応じて各前記サーボモータを個別に駆動する個別駆動制御部と、前記昇降ベースの前記サーボモータが個別操作された場合に、前記昇降ベースの前記固定ベースに対する昇降によって前記第1昇降機構の前記スライダが前記固定ベースに対して昇降しないように前記昇降ベース及び前記第1昇降機構の前記サーボモータ同士を連動させ、前記第1昇降機構の前記サーボモータが個別操作された場合に、前記昇降ベース及び前記第1昇降機構の前記サーボモータ同士を連動させない連動制御部と、を備えるばね成形機である。
【0006】
請求項2の発明は、前記複数のサーボモータの目標位置データのセットである目標位置データセットを複数含む動作プログラムを記憶する記憶部と、前記コントローラに設けられ、前記動作プログラムを実行して各前記目標位置データセットを構成する前記複数の目標位置データの位置に、前記複数のサーボモータの回転軸が同時に到達するように制御するプログラム実行部と、前記コントローラに設けられ、前記操作部の操作に応じて前記目標位置データセットを構成する複数の目標位置データを個別に変更するプログラム編集部と、前記プログラム編集部により前記昇降ベースの前記サーボモータの前記目標位置データが変更されたときに、その変更による前記昇降ベースの前記固定ベースに対する位置の変化によって前記第1昇降機構の前記スライダの前記固定ベースに対する位置が変化しないように前記第1昇降機構の前記サーボモータの前記目標位置データを、前記昇降ベースの前記サーボモータの前記目標位置データに連動させて変更し、前記プログラム編集部により前記第1昇降機構の前記サーボモータの前記目標位置データが変更されたときに、その変更に連動した前記昇降ベースの前記サーボモータの前記目標位置データの変更は行わない連動変更部が備えられている請求項1に記載のばね成形機である。
【0007】
請求項3の発明は、前記動作プログラムにおける前記第1昇降機構の前記サーボモータの前記目標位置データは、予め設定されたピッチツール用原点位置の位置データを基準とする変位量で特定され、前記連動変更部は、前記プログラム編集部により前記昇降ベースの前記サーボモータの前記目標位置データが変更されたときに、その変更による前記昇降ベースの前記固定ベースに対する位置の変化によって前記第1昇降機構の前記スライダの前記固定ベースに対する位置が変化しないように前記ピッチツール用原点位置の位置データを変更する請求項2に記載のばね成形機である。
【0008】
請求項4の発明は、前記芯金の上下に配置される1対のスライダを有する1対の昇降機構が備えられ、前記1対のスライダの任意の一方と他方とに前記ピッチツールと前記切断ツールとが取り付け可能とされて、前記ピッチツールが取り付けられる前記スライダを含む前記昇降機構が前記第1昇降機構をなす一方、前記切断ツールが取り付けられる前記スライダを含む昇降機構が前記第2昇降機構をなす請求項1から3の何れか1の請求項に記載のばね成形機である。
【発明の効果】
【0009】
本開示のばね成形機では、成形ツール、ピッチツール等の各可動部の位置を、それらの駆動源である複数のサーボモータの個別操作により個別調整することができる。ここで、本開示のばね成形機は、芯金を支持する昇降ベースにピッチツールを支持する第1昇降機構が取り付けられているが、昇降ベースのサーボモータが個別操作された場合に、昇降ベースの固定ベースに対する昇降によって第1昇降機構のスライダが固定ベースに対して昇降しないように昇降ベース及び第1昇降機構のサーボモータ同士を連動させるので、従来の問題は生じない。また、第1昇降機構のサーボモータが個別操作された場合には、昇降ベース及び第1昇降機構のサーボモータ同士を連動させないので、ピッチツールの位置を変更すると芯金の位置までもが変更されるという問題も生じない。これらにより、本開示のばね成形機では、従来より複数のサーボモータによる可動部の位置の個別調整作業を容易に行うことが可能になる。
【0010】
請求項2のばね成形機では、動作プログラムを編集する場合に、昇降ベースのサーボモータの目標位置データが変更されたときに、その変更による昇降ベースの固定ベースに対する位置の変化によって第1昇降機構のスライダの固定ベースに対する位置が変化しないように第1昇降機構のサーボモータの目標位置データを、昇降ベースのサーボモータの目標位置データに連動させて変更する一方、第1昇降機構のサーボモータの目標位置データが変更されたときに、その変更に連動した昇降ベースのサーボモータの目標位置データの変更は行わないので、動作プログラムの編集作業が容易になる。また、請求項3のばね成形機では、動作プログラムにおける第1昇降機構のサーボモータの目標位置データは、予め設定されたピッチツール用原点位置の位置データを基準とする変位量で特定されているので、昇降ベースのサーボモータの目標位置データの変更に伴う第1昇降機構のスライダの昇降をキャンセルするデータ処理が容易になる。
【0011】
請求項4のばね成形機では、ピッチツールを芯金に対する上方と下方の任意の側に配置することができるものにおいて、上述の通り個別調整作業を容易に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の第1実施形態に係るばね成形機の正面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、
図1~
図9を参照して、本開示の一実施形態のばね成形機10について説明する。このばね成形機10は、
図1に示すように、鉛直に起立する板状の固定ベース11を備える。以下、固定ベース11の板厚方向である水平方向を「前後方向H1」といい、それと直交する水平方向を「横方向H2」といい、「固定ベース11を前方から見て左」を単に「左」、その反対側を単に「右」ということとする。
【0014】
ばね成形機10は、固定ベース11の上下方向の略中央の左側に線材送給装置12を有する。線材送給装置12は、固定ベース11の前面と平行になって横方向H2に延びる架空の線材送給ラインL1に沿って線材S(
図6参照)を送給する。線材送給装置12は、線材送給ラインL1を挟んで上下に対称配置された2対の送給ローラ13を有する。それら送給ローラ13は、固定ベース11を前後方向H1に貫通する図示しない回転シャフトの前端部に固定されている。また、上下の送給ローラ13が対称回転するように固定ベース11の後方で回転シャフト同士はギヤ連結されている。そして、送給ローラ13は、固定ベース11の後方に備えたサーボモータ90(
図7参照)から回転シャフトを介して動力を受けて回転駆動され、線材Sが線材送給ラインL1に沿って
図1の左側から右側へと送給される。また、線材Sの送給量、送給速度等は、サーボモータ90の位置制御によって任意に変更可能になっている。なお、線材Sは、送給方向と反対側に引き戻すこともできる。
【0015】
送給方向の下流側の1対の送給ローラ13の右隣には、ガイド部材14が備えられている。
図6に示すように、ガイド部材14には、送給方向の下流側に向かって突出するクイル14Aが備えられ、線材送給ラインL1に沿って延びるガイド孔14Gがクイル14Aを貫通している。そして、クイル14Aの先端部から送出される線材Sに1対の成形ツール31が衝合してコイルばねW1が成形される。
【0016】
図6に示すように、1対の成形ツール31は、例えば、角柱状をなし、線材送給ラインL1上の一点を中心にしてその一点より下流側の線材送給ラインL1を、時計回りと反時計回りとにそれぞれ略45度傾斜させた方向に延びている。また、各成形ツール31の先端面には縦溝31Mが形成されて、線材Sが各成形ツール31の縦溝31Mの内面に摺接するように衝合されて上述のようにコイルばねW1(
図6には、コイルばねW1の一部のみが示されている)が成形される。
【0017】
図1に示すように、固定ベース11の前面には、1対の成形ツール31を支持する1対の成形ツール用スライド機構40が取り付けられている。1対の成形ツール用スライド機構40は、帯板状のベース板50をそれぞれ備える。それら1対のベース板50は、上下に離されかつ、それぞれの長手方向が線材送給ラインL1に対して傾斜する姿勢にされて固定ベース11の前面に重ねて固定されている。
【0018】
また、各ベース板50のうち線材送給装置12から遠い側の一端部は、固定ベース11から張り出されて、そこにサーボモータ93,94が取り付けられている。また、各ベース板50の前面には、長手方向にスライドするスライダ53が備えられ、各スライダ53に成形ツール31が固定されている。そして、サーボモータ93,94とスライダ53とがクランク機構を介して連結され、サーボモータ93,94の位置制御により、各成形ツール31がベース板50の長手方向(線材送給ラインL1に対して傾斜する方向)の任意の位置に移動可能になっている。
【0019】
なお、成形ツール31が取り付けられた1対の成形ツール用スライド機構40の動力伝達機構は、後述する第1昇降機構41、第2昇降機構42と同じであるので、それらの駆動源であるサーボモータの符号以外は、同じ符号を付して動力伝達機構に係る説明は、第1昇降機構41に関してのみ後に説明する。
【0020】
図3に示すように、コイルばねW1を後続の線材Sから切り離すために、コイルばねW1の内側には芯金32が配置され、その芯金32の上方には芯金32と協働して線材Sを切断する切断ツール34が備えられている。また、芯金32の下方には、コイルばねW1の線材S間のピッチを任意に変更するためのピッチツール33が備えられている。そして、これら芯金32とピッチツール33と切断ツール34とを支持する機構が、固定ベース11の前面に昇降可能に設けられた昇降ベース15に取り付けられている。
【0021】
図1に示すように、昇降ベース15は、上下方向に延びた板状をなし、固定ベース11の前面に重ねられている。その昇降ベース15を支持するために、固定ベース11の前面には、線材送給ラインL1を挟んで上下に1対ずつのガイドレール56が固定されている。各ガイドレール56は、固定ベース11の上下の両端部から固定ベース11の上下方向の中央近傍まで延び、例えば、クイル14Aの前端部を通過する鉛直線(図示せず)を挟んだ両側に配置されている。そして、昇降ベース15の上下方向の両端部の後面において、横方向H2の両端部に固定されたスライダ56Sがガイドレール56にスライド可能に係合している。
【0022】
なお、昇降ベース15の左側部は、送給ローラ13及びガイド部材14と干渉を避けるために上下方向の両端部を除く全体が除去されている。また、
図5に示すように昇降ベース15の後面のうち横方向H2の両端部には、上下方向に延びる段差部15Aが陥没形成されて、それら段差部15Aにスライダ56Sが受容されている。
【0023】
図1に示すように、固定ベース11は、複数の支持脚11Kによって下方から支持されて、それにより形成された固定ベース11の下方空間に昇降ベース15を昇降するための駆動部が設けられている。具体的には、
図2に示すように、昇降ベース15の下端部から下方にボールネジ60が延び、そのボールネジ60に螺合する図示しないボールナットを内蔵するボールナットユニット61が固定ベース11から垂下されたブラケット11Fに固定されている。ボールナットユニット61内でそのボールナットはボールナットユニット61内で回転可能に支持され、外面にギヤ部を有する。そして、そのギヤ部に噛合するウォームギヤ62の端部がボールナットユニット61の外面に突出し、そこにブラケット11Fに支持されたサーボモータ95の回転出力部が連結されている。これにより、昇降ベース15が上下方向の任意の位置に移動される。
【0024】
図2及び
図4に示すように、固定ベース11のうち昇降ベース15に前方から覆われた部分には、固定ベース11を前後方向H1に貫通しかつ上下方向に延びた長孔11Aが形成されている。また、昇降ベース15の上下方向の略中央には、前後方向H1に貫通する貫通孔15Bが形成されている。そして、支持スリーブ64が、貫通孔15Bを貫通しかつ昇降ベース15の前方に突出した状態にされて昇降ベース15に固定されている。支持スリーブ64内には、スライダ65が前後方向H1に移動可能に収容され、芯金32がスライダ65に固定されてその前方に突出している。
【0025】
また、
図4に示すように、スライダ65の後端部は、昇降ベース15の後方に張り出し、そこには横方向H2に延びるピン65Pが備えられている。さらには、昇降ベース15の後面から長孔11Aを通過して固定ベース11の後方位置までブラケット64Fが張り出し、そこに取り付けられた減速機96G付きのサーボモータ96の回転出力部にクランク部材66が固定されている。そして、クランク部材66のうちその回転中心からオフセットした位置に設けられたクランクシャフト66Sとスライダ65のピン65Pとがリンクバー67で連結されてクランク機構が形成されている。これにより、サーボモータ96の位置制御により、芯金32が前後方向H1の任意の位置に移動可能になっている。また、上述の如く、昇降ベース15がサーボモータ95により上下方向に駆動されることで、芯金32は上下方向においても任意の位置に移動される。即ち、芯金32は、サーボモータ95,96により、上下方向と前後方向H1とにそれぞれ位置制御されるようになっている。
【0026】
図2に示すように、昇降ベース15の下端部には、前後方向H1に貫通する貫通孔15Cが形成されている。そして、減速機51付のサーボモータ91が貫通孔15Cと長孔11Aとを貫通した状態にされて昇降ベース15に固定されている。また、サーボモータ91の前端の回転出力部にはクランク部材52が固定されている。さらに、昇降ベース15の前面には、下端寄り位置から支持スリーブ64に対する下側近傍位置に亘って延びるガイドレール55が固定され、そのガイドレール55にスライダ53がスライド可能に係合している。そして、スライダ53に取り付けられたピン53Pと、クランク部材52のうちその回転中心からオフセットした位置に設けられたクランクシャフト52Sとがリンクバー54で連結されてクランク機構を含んだ第1昇降機構41が形成されている。
【0027】
また、昇降ベース15のうち支持スリーブ64より上側には、第1昇降機構41と同じ構造をなした第2昇降機構42が、第1昇降機構41と対称的に設けられている。そして、第1昇降機構41のスライダ53の上端部にピッチツール33が固定されて上方に向かって突出し、第2昇降機構42のスライダ53の下端部に切断ツール34が固定されて下方に向かって突出している。そして、第1昇降機構41の駆動源であるサーボモータ91により、ピッチツール33が上下方向の任意の位置に移動可能になっていると共に、第2昇降機構42の駆動源であるサーボモータ92により、切断ツール34が上下方向の任意の位置に移動可能になっている。
【0028】
図6に示すように、芯金32は、例えば角柱体の先端から断面半円形の半円柱体が延びた構造をなし、その半円柱体の平坦な側面がクイル14A側を向くように配置されている。また、切断ツール34は、角柱の先端部を上下方向に対して傾斜するようにカットした形状をなしている。そして、切断ツール34が降下したときに、切断ツール34のうち斜面と反対側の面が芯金32の半円柱体の平面な側面と重なるように配置されている。これにより、芯金32と切断ツール34との間で線材Sが挟まれて切断され、コイルばねW1が後続の線材Sから切り離される。
【0029】
また、ピッチツール33は、断面長方形の角柱の先端部を上下方向に対して傾斜するようにカットし、そのカットされた斜辺に沿った縁部を断面楔状になるようにさらにカットした構造をなしている。本実施形態では、ピッチツール33は、そのカットされた傾斜面がクイル14Aと反対を向くように配置されている。そして、コイルばねW1における線材S同士の間のピッチを拡げる。また、ピッチは、ピッチツール33がコイルばねW1の線材S同士の間に差し込まれる量によって変更される。
【0030】
図7には、ばね成形機10のコントローラ70が概念的に示されている。コントローラ70には、上述した複数のサーボモータ90~96のサーボアンプ90A~96Aと、それらサーボアンプ90A~96Aに指令値を付与する制御部71と、制御部71に接続されたコンソール72とを有する。制御部71には、マイコン71Aと記憶部71Bとが備えられている。また、記憶部71Bには、諸元が異なる複数のコイルばねW1を製造するための複数の動作ブログラムが記憶されていて、任意の動作プログラムが、「プログラム実行部」としてのマイコン71Aによって実行されてコイルばねW1が成形される。
【0031】
具体的には、各動作プログラムには、サーボモータ90~96用の複数の目標位置データが含まれていて、それら目標位置データで特定される位置に送給ローラ13、昇降ベース15、成形ツール31、芯金32、ピッチツール33、切断ツール34(以下、これらを纏めて「成形可動部」という)の位置が変わるようにサーボモータ90~96が駆動される。また、コントローラ70は、連続運転モードとマニュアル操作モードとに切り替え可能になっていて、連続運転モードで動作プログラムがマイコン71Aにより繰り返して実行されることで、複数のコイルばねW1が連続して成形される。また、コントローラ70をマニュアル操作モードにして、マイコン71Aに動作プログラムを実行させてコイルばねW1を成形中の任意の状態で停止することもできる。
【0032】
また、マニュアル操作モードでは、コンソール72により各サーボモータ90~96を個別操作して目標位置データをティーチングにて作成することができる。即ち、各サーボモータ90~96の個別操作により送給ローラ13、成形ツール31、芯金32、ピッチツール33、切断ツール34を任意に位置に移動して停止したところでコンソール72の記憶ボタンをオンすることで、その停止位置における複数のサーボモータ90~96の回転位置センサの検出位置を、目標位置データセットを構成する複数の目標位置データとして記憶(ティーチング)することができる。そして、目標位置データセットによって特定されるティーチングポイントに移動するための速度・加速度を、コンソール72を使用したプログラム編集によって設定することで動作プログラムを作成することができる。
【0033】
動作プログラムが作成された後は、実際にその動作プログラムをマニュアル操作モードで実行してコイルばねW1を成形し、そのコイルばねW1と仕様との差異が許容値に収まるようにプログラム編集が行われる。具体的には、例えば、動作プログラムにて任意の目標位置データセットを選択し、その目標位置データセットの任意の目標位置データをコンソール72を使用した具体的な数値入力によって変更して、実際に成形されるコイルばねW1と仕様との差異が許容値に収まるようにプログラム編集を行う。また、既存の動作プログラムをコピーしてから任意の目標位置データを変更して新たな目標位置データセットにする等して、コイル径が異なる別の動作プログラムを作成することもできる。
【0034】
ここで、上述の通りサーボモータ90~96が個別操作されるときには、コントローラ70は、
図8のブロック図で示した個別駆動制御部70Aとして機能し、プログラム編集が行われるときには、コントローラ70は
図9のブロック図で示したプログラム編集部70Eとして機能する。
【0035】
図8に示すように、個別駆動制御部70Aは、任意の成形可動部がコンソール72の選択操作部72Aの操作により選択され、その動作方向を指定するコンソール72の移動操作ボタン72Bが押されると、その移動操作ボタン72Bが押されている間、指定された方向に予め設定された所定速度で選択された成形可動部が移動するように駆動指令部70Cがサーボモータ90~96を駆動する。例えば、成形可動部としてピッチツール33を選択してその駆動源であるサーボモータ91を個別操作する場合には、コンソール72に備えたモニタ72Gを見ながら選択操作部72Aにてピッチツール33を選択して上方又は下方への移動操作ボタン72Bを押圧操作する。すると、その移動操作ボタン72Bが押圧されている間だけ所定速度で第1昇降機構41のスライダ53と共にピッチツール33が上方に移動するようにサーボモータ91が駆動されるように駆動指令部70Cからサーボアンプ91Aに指令が付与される。また、ピッチツール33を移動するためのサーボモータ91が駆動されている間は、他のサーボモータ90,92~96は停止状態に維持される。そして、昇降ベース15のサーボモータ95以外の他の成形可動部のサーボモータ90,92,93,94,96を個別操作する場合も同様に制御される。
【0036】
これに対し、芯金32の上下方向の位置を変更するために昇降ベース15のサーボモータ95を個別操作する場合には、昇降ベース15のサーボモータ95の動作自体に関してはピッチツール33のサーボモータ91が個別操作された場合と同じように制御される。それに加えて、個別駆動制御部70Aが有する連動制御部70Bが、ピッチツール33が昇降ベース15と共に固定ベース11に対して移動しないようにするために、昇降ベース15の上方又は下方の所定速度の移動と逆向きの所定速度でピッチツール33が昇降ベース15に対して移動するように、ピッチツール33の駆動源であるサーボモータ91を昇降ベース15の駆動源であるサーボモータ95に連動させる。
【0037】
即ち、本実施形態の連動制御部70Bは、昇降ベース15のサーボモータ95が個別操作された場合には、昇降ベース15の固定ベース11に対する昇降によって第1昇降機構41のスライダ53が固定ベース11に対して昇降しないようにサーボモータ91,95同士を連動させ、第1昇降機構41のサーボモータ91が個別操作された場合にはサーボモータ91,95同士を連動させないように構成されている。この連動制御部70Bを備えたことで本実施形態のばね成形機10では、複数のサーボモータ90~96による成形可動部の個別調整作業を容易に行うことが可能になる。
【0038】
図9に示すように、プログラム編集部70Eでは、動作プログラム及びその動作プログラムに含まれる任意の目標位置データセットがコンソール72のファイル・データ選択部72Eの操作により選択されると、データ取込部70Hが、その選択された目標位置データセットをデータセットテーブル70Tに取り込むと共に目標位置データセットを構成する複数の目標位置データをモニタ72Gに表示する。そして、選択操作部72Aにて任意の成形可動部の駆動源であるサーボモータ90~96の目標位置データが選択されて、数値入力部72Dにて数値データが入力されると、データ更新部70Pにより入力された数値データに目標位置データが変更されて記憶部71Bに記憶される。
【0039】
ここで、昇降ベース15のサーボモータ95以外の他の成形可動部のサーボモータ90,91,92,93,94,96の目標位置データが選択されて変更された場合には、その選択された目標位置データのみが変更される。これに対し、芯金32の上下方向の位置を変更するために昇降ベース15のサーボモータ95の目標位置データが選択されて変更された場合は、サーボモータ95の目標位置データの変更に加え、その目標位置データの変更によって固定ベース11に対して昇降ベース15の位置が変更されることで、昇降ベース15に搭載されているピッチツール33の固定ベース11に対する位置が変更されないようにするようにするために、連動変更部70Fが、第1昇降機構41のサーボモータ91の目標位置データを、昇降ベース15のサーボモータ95の目標位置データに連動させて変更する。この連動変更部70Fを備えることで、本実施形態のばね成形機10では、動作プログラムの編集作業が容易になる。
【0040】
なお、本実施形態のばね成形機10では、成形ツール31及び芯金32を線材送給ラインL1の下側に配置すると共に、上記した第1昇降機構41に切断ツール34を取り付けかつ、第2昇降機構42にピッチツール33を取り付けて、コイルばねW1の巻回方向を逆向きにすることもできる。これにより成形可能なコイルばねW1の種類のバリエーションが増える。また、上記した第1昇降機構41に切断ツール34を取り付け、第2昇降機構42にピッチツール33を取り付けた場合には、ピッチツール33が取り付けられた符号42の昇降機構を「第1昇降機構」とし、切断ツール34が取り付けられた符号41の昇降機構を「第2昇降機構」として上述した制御が行われる。
【0041】
[第2実施形態]
本実施形態のばね成形機10では、動作プログラムには、各成形可動部に原点位置データが設定されていて、各成形可動部の目標位置データが、原点位置データを基準とする変位量で特定されるようになっている。これにより、プログラム編集部70Eにて任意の原点位置データを変更することで、原点位置データを基準とする動作プログラム中の全ての目標位置データにて特定される位置が一度に変更される。そして、芯金32の上下方向の位置を変更するために昇降ベース15のサーボモータ95の目標位置データの基準とする芯金32用の原点位置データが変更されたときに、その変更による昇降ベース15の固定ベース11に対する位置の変化によって第1昇降機構41のスライダ53と共にピッチツール33の固定ベース11に対する位置が変化しないように連動変更部70Fがピッチツール33用の原点位置の位置データを変更するようになっている。
【0042】
[他の実施形態]
(1)前記第1実施形態のばね成形機10は、1対の成形ツール31を使用するために1対の成形ツール用スライド機構40を備えていたが、1つの成形ツール31のみを使用し、1つの成形ツール用スライド機構40のみを備えていてもよい。
【0043】
(2)第1実施形態で説明したサーボモータの回転出力を直線運動に変換する機構は、上述のクランク機構やボールネジ機構に限定されるものではなく、例えば、カム機構やラックアンドピニオン機構など適宜変更してもよい。
【0044】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0045】
10 ばね成形機
11 固定ベース
12 線材送給装置
15 昇降ベース
31 成形ツール
32 芯金
33 ピッチツール
34 切断ツール
40 成形ツール用スライド機構
41 第1昇降機構
42 第2昇降機構
53 スライダ
70 コントローラ
70A 個別駆動制御部
70B 連動制御部
70E プログラム編集部
70F 連動変更部
90~96 サーボモータ
L1 線材送給ライン
S 線材
W1 コイルばね