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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153866
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】低粘度付加型シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20221005BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056610
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂本 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 匡志
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 怜
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP042
4J002CP062
4J002CP141
4J002EZ007
4J002FD157
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】
高熱伝導性充てん材の充てん率を上げられるように、低粘度かつ、接点不良を起こさないように、低分子量シロキサンD3-D10の発生量が少ない付加型シリコーン組成物を提供することである。
【解決手段】
一分子中にアルケニル基を少なくとも2個以上含み、23℃における粘度が10~100mPa・sである直鎖状オルガノポリシロキサン(A)を30~70質量部、オルガノ水素ポリシロキサン(B)を30~70質量部含み、オルガノ水素ポリシロキサン(B)は、23℃における粘度が0.1~100mPa・sであり、一分子中にケイ素に結合した水素基を分子中に少なくとも3個以上含むオルガノ水素ポリシロキサン(B1)、23℃における粘度が0.1~100mPa・sであり、一分子中にケイ素に結合した水素基を両末端のみに持つオルガノ水素ポリシロキサン(B2)からなり、直鎖状オルガノポリシロキサン(A)とオルガノ水素ポリシロキサン(B)の合計に対し、付加反応触媒(C)を、0.1~1000ppm含み、低分子環状シロキサンD3-D10合計の含有量が500ppm以下であり、23℃における粘度が50mPa・s以下であるシリコーン組成物を提供することである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一分子中にアルケニル基を少なくとも2個以上含み、23℃における粘度が10~100mPa・sである直鎖状オルガノポリシロキサン(A)を30~70質量部、
オルガノ水素ポリシロキサン(B)を30~70質量部含み、
オルガノ水素ポリシロキサン(B)は、23℃における粘度が0.1~100mPa・sであり、一分子中にケイ素に結合した水素基を分子中に少なくとも3個以上含むオルガノ水素ポリシロキサン(B1)、23℃における粘度が0.1~100mPa・sであり、一分子中にケイ素に結合した水素基を両末端のみに持つオルガノ水素ポリシロキサン(B2)からなり、
直鎖状オルガノポリシロキサン(A)とオルガノ水素ポリシロキサン(B)の合計に対し、付加反応触媒(C)を、0.1~1000ppm含み、
低分子環状シロキサンD3-D10合計の含有量が500ppm以下であり、23℃における粘度が50mPa・s以下であるシリコーン組成物。
【請求項2】
直鎖状オルガノポリシロキサン(A)に含まれるアルケニル基の合計1モルに対して、
オルガノ水素ポリシロキサン(B)に含まれる分子中にケイ素に結合した水素基が0.1モル以上、5モル以下であることを特徴とする請求項1に記載のシリコーン組成物。
【請求項3】
オルガノ水素ポリシロキサン(B)のうち、23℃における粘度が0.1~100mPa・sであり、一分子中にケイ素に結合した水素基を分子中に少なくとも3個以上含む、オルガノ水素ポリシロキサン(B1)/23℃における粘度が0.1~100mPa・sであり、一分子中にケイ素に結合した水素基を両末端のみに持つオルガノ水素ポリシロキサン(B2)が質量比にて、20/80~2/98の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシリコーン組成物。
【請求項4】
一分子中にアルケニル基を少なくとも2個以上含み、23℃における粘度が10~100mPa・sである直鎖状オルガノポリシロキサン(A)と、23℃における粘度が0.1~100mPa・sであり、一分子中にケイ素に結合した水素基を分子中に少なくとも3個以上含む、オルガノ水素ポリシロキサン(B1)と、23℃における粘度が0.1~100mPa・sであり、一分子中にケイ素に結合した水素基を両末端のみに持つオルガノ水素ポリシロキサン(B2)が、(A)、(B1)、(B2)が薄膜蒸留処理によって、低分子環状シロキサンD3-D10除去を行ってあることを特徴とする請求項1~3に記載のシリコーン組成物。
【請求項5】
請求項1~4に記載のシリコーン組成物のいずれか100質量部に対し、熱伝導性フィラーを400質量部以上混合し、硬化することで得られる放熱部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
高熱伝導性充てん材の充てん率を上げられるように、低粘度かつ、接点不良を起こさないように、低分子量シロキサンD3-D10の発生量が少ない付加型シリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路基板の高密度・高集積化、LED照明の高輝度化、ディスプレーの高輝度・高精細化、電子部品を登載したセル式二次電池の容量増等、近年の電気・電子機器は、より多くの熱を発生するようになってきている。この熱により、電気、電子機器は誤動作を起こしてしまうため、この熱をいかに電気・電子機器の外部に効率よく放熱するかは、電気・電子機器の重要なテーマである。
【0003】
電子・電気機器から発生する熱を効率よく放熱する部材として、オルガノポリシロキサンと高熱伝導性充てん剤からなる高熱伝導性シリコーンシートが広く利用されている。高熱伝導性充てん剤の充てん率を上昇させれば上昇させるだけ、シートの熱伝導率は上昇する。
高熱伝導性充てん剤を高充てんするためには、オルガノポリシロキサンは低粘度であることが求められる。また、電子・電気機器の部品周りなので、接点不良を起こさないよう、低分子量シロキサンD3~D10の発生量が少ないオルガノポリシロキサンが求められる。
【0004】
オルガノポリシロキサン組成物の粘度を低下させる手段として、シランカップリング剤を添加する手法があるが、シランカップリング剤は揮発しやすく、揮発したガスが電気・電子機器の部品に付着し、接点不良を起こしてしまうことも予想されるので、使用しない方がよい。
【0005】
特許文献1は、電子部品含浸用硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関する公報である。溶剤が使用してあり、低分子量シロキサンとは別の、環境問題が有り、高熱伝導性シリコーンシートとして用いるには、物性に改善の余地があった。特許文献2は、光半導体素子用封止剤又は接着剤として使用することができる、硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関する公報である。低分子量シロキサン問題が有り、高熱伝導性シリコーンシートとして用いるには、物性に改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-278438
【特許文献2】特表2020-530502
【特許文献3】特開平9-169908
【特許文献4】国際公開2019/021826
【0007】
特許文献3は、電子部品含浸用オルガノポリシロキサン組成物に関する公報である。低分子量シロキサン問題が有り、反応後も液状であるので、高熱伝導性シリコーンシートとして用いるのは不向きであった。
特許文献4は、高い熱伝導率を有しながら、ギャップフィル性およびリペア性に優れ、更には保存安定性に優れる多成分硬化型熱伝導性シリコーンゲル組成物に関する公報である。
この公報は、更なる低粘度化の余地があり、段落0030と段落0038に、「接点障害防止等の見地から、低分子量のシロキサンオリゴマー(オクタメチルテトラシロキサン(D4)、デカメチルペンタシロキサン(D5))が低減ないし除去されていることが好ましい。」とあるが、除去した例は示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願の発明は、高熱伝導性充てん材の充てん率を上げられるように、低粘度かつ、接点不良を起こさないように、低分子量シロキサンD3-D10の発生量が少ない付加型シリコーン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一分子中にアルケニル基を少なくとも2個以上含み、23℃における粘度が10~100mPa・sである直鎖状オルガノポリシロキサン(A)を30~70質量部、オルガノ水素ポリシロキサン(B)を30~70質量部含み、オルガノ水素ポリシロキサン(B)は、23℃における粘度が0.1~100mPa・sであり、一分子中にケイ素に結合した水素基を分子中に少なくとも3個以上含むオルガノ水素ポリシロキサン(B1)、23℃における粘度が0.1~100mPa・sであり、一分子中にケイ素に結合した水素基を両末端のみに持つオルガノ水素ポリシロキサン(B2)からなり、直鎖状オルガノポリシロキサン(A)とオルガノ水素ポリシロキサン(B)の合計に対し、付加反応触媒(C)を、0.1~1000ppm含み、低分子環状シロキサンD3-D10合計の含有量が500ppm以下であり、23℃における粘度が50mPa・s以下であるシリコーン組成物を提供することである。
【発明の効果】
【0010】
本願の発明によれば、高熱伝導性充てん材の充てん率を上げられるように、低粘度かつ、接点不良を起こさないように、低分子量シロキサンD3~D10の発生量が少ない付加型シリコーン組成物であるので、電気・電子機器の外部に効率よく放熱し、電気、電子機器は誤動作を起こさせることなく、また電気、電子機器の低分子量シロキサンD3~D10起因の接点不良を起こさない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願の発明に係る、高熱伝導性充てん材の充てん率を上げられるように、低粘度かつ、接点不良を起こさないように、低分子量シロキサンD3~D10の発生量が少ない付加型シリコーン組成物、高熱伝導性シリコーンシートについて具体的に説明する。
【0012】
<一分子中にアルケニル基を少なくとも2個以上含み、23℃における粘度が10~100mPa・sである直鎖状オルガノポリシロキサン(A)>
一分子中にアルケニル基を少なくとも2個以上含み、23℃における粘度が10~100mPa・sである直鎖状オルガノポリシロキサン(A)は、いわゆるVi(ビニル)変性シリコーンオイルである。粘度は10~100mPa・sであり、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。以下、直鎖状オルガノポリシロキサン(A)と略記する。
直鎖状オルガノポリシロキサン(A)は、電子機器の低分子量シロキサンD3~D10起因の接点不良を防ぐために、低分子量シロキサンD3~D10を除いた方が良い。低分子量シロキサンD3~D10の除去方法としては、薄膜蒸留が挙げられる。薄膜蒸留は、処理対象物質を薄膜化し、加温高真空化にて蒸留するので、通常の蒸留にて分離しにくい成分の分離も可能となる。尚、薄膜蒸留は、バッチ処理でなく、連続処理が行われるのが一般的な方法である。
薄膜蒸留にて、除去対象となる低分子シロキサンは、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(D7)、ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン(D8)、オクタデカメチルシクロノナシロキサン(D9)、エイコサメチルシクロデカシロキサン(D10)等である。薄膜蒸留実施後の直鎖状オルガノポリシロキサン(A)は、D3~D10の合計が500ppm以下、より好適には100ppm以下であることが好ましい。
直鎖状オルガノポリシロキサン(A)の添加量としては、直鎖状オルガノポリシロキサン(A)とオルガノ水素ポリシロキサン(B)との合計100質量部のうち、30~80質量部、より好適には50~70質量部である。
【0013】
<オルガノ水素ポリシロキサン(B)>
オルガノ水素ポリシロキサン(B)の添加量は、直鎖状オルガノポリシロキサン(A)に含まれるアルケニル基の合計1モルに対して、オルガノ水素ポリシロキサン(B)に含まれるケイ素原子結合水素原子が0.1モル以上、5モル以下、より好適には0.5モル以上、2モル以下である。
【0014】
オルガノ水素ポリシロキサン(B)は、23℃における粘度が0.1~100mPa・sであり、一分子中にケイ素に結合した水素基を分子中に少なくとも3個以上含む、オルガノ水素ポリシロキサン(B1)と23℃における粘度が0.1~100mPa・sであり、一分子中にケイ素に結合した水素基を両末端のみに持つオルガノ水素ポリシロキサン(B2)を併用した方が良い。以下、オルガノ水素ポリシロキサン(B1)、オルガノ水素ポリシロキサン(B2)と略記する。
【0015】
<オルガノ水素ポリシロキサン(B1)>
オルガノ水素ポリシロキサン(B1)は、23℃における粘度が0.1~100mPa・sであり、一分子中にケイ素に結合した水素基を分子中に少なくとも3個以上含むオルガノ水素ポリシロキサンである。直鎖状オルガノポリシロキサン(A)同様、薄膜蒸留にてD3~D10を除去して用いた方が良い。D3~D10の合計が500ppm、より好適には100ppmであることが好ましい。
【0016】
<オルガノ水素ポリシロキサン(B2)>
オルガノ水素ポリシロキサン(B2)は、23℃における粘度が0.1~100mPa・sであり、一分子中にケイ素に結合した水素基を両末端のみに持つオルガノ水素ポリシロキサンである。直鎖状オルガノポリシロキサン(A)、オルガノ水素ポリシロキサン(B1)同様、薄膜蒸留にてD3~D10を除去して用いた方が良い。D3~D10の合計が500ppm、より好適には100ppmであることが好ましい。
オルガノ水素ポリシロキサン(B1)とオルガノ水素ポリシロキサン(B2)の比率は、質量比にて20/80~2/98、より好適には25/75~3/97である。
【0017】
<付加反応触媒(C)>
付加反応触媒(C)は、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物、白金-オレフィン錯体、白金-ビニル基含有シロキサン錯体,ロジウム錯体,ルテニウム錯体などが挙げられる。添加量としては、直鎖状オルガノポリシロキサン(A)とオルガノ水素ポリシロキサン(B)の合計100質量部に対し、付加反応触媒(C)を、0.1~1000ppm、より好適には1.0~50ppmである。
【0018】
<反応制御剤>
反応制御剤は、低粘度付加型シリコーン組成物が、加熱硬化の前に、増粘やゲル化をおこさないようにするために添加するものである。具体例としては、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロヘキサノール、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ブチン、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ペンチン、3,5-ジメチル-3-トリメチルシロキシ-1-ヘキシン、1-エチニル-1-トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2-ジメチル-3-ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサンなどが挙げられる同様の効果を示す別のものを使用しても良い。
添加量としては、直鎖状オルガノポリシロキサン(A)とオルガノ水素ポリシロキサン(B)の合計に対し、0~10000ppm、より好適には10~1000ppmである。
【実施例0019】
次に、本願の低粘度付加型シリコーン組成物およびこれを用いた放熱シートについて、実施例及び比較例により詳細に説明する。
【0020】
<粘度測定>
シリコーン材料、および低粘度付加型シリコーン組成物の23℃における粘度を、TAインスツルメンツ社製、DHR-2レオメータを用い、直径35mmのパラレルプレートを用い、ギャップ30μm、シェアレイト0.5(1/s)の条件で120秒後の値を測定した。
尚、本願の低粘度付加型シリコーン組成物はニュートン流体に近似した挙動を示し、レオメータ、コーンプレート型、ブルックフィールド型等の機種間差、同じ機種間の型番の差は、基本的には受けない。只、本稿で言う粘度測定は、上記条件を基本とする。
【0021】
<薄膜蒸留>
柴田化学社製、製品名:MS-300を用いて薄膜蒸留を行った。
【0022】
<鎖状ジメチルビニルポリシロキサン(A1)>
一分子中にアルケニル基を少なくとも2個以上含む直鎖状オルガノポリシロキサンとして、末端をビニル基にて封止され、23℃における粘度20mPa・sの直鎖状ジメチルビニルポリシロキサン(A1)を準備した。
【0023】
<低分子量シロキサンD3~D10測定方法>
Agilent社製のガスクロマトグラフィー、製品名:HP7890を用い、D3~D10をそれぞれ検量線法にて定量した。
【0024】
<直鎖状ジメチルビニルポリシロキサン(A1)の低分子量シロキサンD3~D10を除去した(A1‘)>
鎖状ジメチルビニルポリシロキサン(A1)を薄膜蒸留器にて処理を行って、低分子量シロキサンD3~D10を除去した(A1‘)を得た。23℃における粘度は、30mPa・s、であった。D3~D10の合計は、50ppmであった。
薄膜蒸留は、低分子量シロキサンD3~D10を取り除くため、薄膜蒸留前後で、粘度は上昇傾向にある。尚、(A1‘)は、一分子中にアルケニル基を少なくとも2個以上含み、23℃における粘度が10~100mPa・sである直鎖状オルガノポリシロキサン(A)に相当する。
【0025】
<側鎖にヒドロキシシリル基を有するジメチル水素ポリシロキサン(B10)、および低分子量シロキサンD3~D10を除去した(B1‘)>
1分子中に少なくとも3個のSiH基を含有するオルガノ水素ポリシロキサンとして、両末端と側鎖にヒドロキシシリル基を有し、水素原子含有量が2.5mmol/gのジメチル水素ポリシロキサン(B10)を準備した。23℃における粘度は、30mPa・sであった。
薄膜蒸留器にて処理を行って、低分子量シロキサンD3~D10を除去した(B1‘)を得た。23℃における粘度は、40mPa・sであった。D3~D10の合計は、650ppmであった。尚、(B1‘)は、23℃における粘度が0.1~100mPa・sであり、一分子中にケイ素に結合した水素基を分子中に少なくとも3個以上含むオルガノ水素ポリシロキサン(B1)に相当する。
【0026】
<末端にヒドロキシシリル基を有するジメチル水素ポリシロキサン(B20)と低分子量シロキサンD3~D10を除去した(B2‘)>
末端にヒドロキシシリル基を有し、水素原子含有量が1.0mmol/gのジメチル水素ポリシロキサン(B20)を準備した。23℃における粘度は、20mPa・sであった。
薄膜蒸留器にて処理を行って、低分子量シロキサンD3~D10を除去した(B2‘)を得た。23℃における粘度は、30mPa・sであった。D3~D10の合計は、検出下限値以下であった。尚、(B2‘)は、23℃における粘度が0.1~100mPa・sであり、一分子中にケイ素に結合した水素基を両末端のみに持つオルガノ水素ポリシロキサン(B2)に相当する。
【0027】
<実施例1の組成物作製>
直鎖状ジメチルビニルポリシロキサン(A1)の低分子量シロキサンD3~D10を除去した(A1‘)を69g、側鎖にヒドロキシシリル基を有するジメチル水素ポリシロキサンの低分子量シロキサンD3~D10を除去した(B1‘)を4g、側鎖にヒドロキシシリル基を有するジメチル水素ポリシロキサンの低分子量シロキサンD3~D10を除去した(B2‘)を27g、付加反応触媒(C)である白金-ビニルダイマー錯体を5ppm、反応制御剤として1-エチニルシクロヘキサノールを500ppm秤取り、均一になるまで撹拌して、実施例1の組成物を得た。
【0028】
<実施例2、比較例1~3の組成物作製>
表1に示す割合で、各種材料を秤取り、均一になるまで撹拌し、実施例2、比較例1~3の組成物をえた。尚、(A2)は、炭素-炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する高粘度の直鎖状オルガノポリシロキサンで、末端ビニル基で封止され粘度1000mPa・sを、薄膜蒸留器にて180℃、9Paで低分子環状シロキサンを除去したものである。
直鎖状オルガノポリシロキサン(A)に含まれるアルケニル基の合計数(Vi)と、オルガノ水素ポリシロキサン(B)に含まれるケイ素原子結合水素原子のモル数(H)の比(H)/(Vi)を表1上段、23℃における粘度、D3~D10の合計量を表2に示す。
23℃における粘度は、50mPa・s以下は合格、50mPa・s超過は不合格である。D3~D10の合計量は、500ppm以下は合格、500ppm超過は不合格である。
【0029】
<アルミナ配合品の皮膜物性>
実施例1~2、比較例1~3の組成物を10g、昭和電工社製のアルミナ、製品名:アルナビーズCB-10を90g秤取り、均一になるまで撹拌し、脱泡処理を行った。尚、比較例3の組成物は、均一な成分は得られなかった。
実施例1~2、比較例1~2の液を、2mm厚に塗布し、120℃にて1時間硬化させた。硬化皮膜を、60mm×10mm×2mmに裁断した。
得られた皮膜を、インストロン社製の一軸試験機である製品名:5966を用いて測定した。引っ張り速度は、100mm/minで、環境温度は23±2℃である。結果を表3に示す。
皮膜の伸び率が、50%以上は合格、50%未満は不合格である。
【0030】
一分子中にアルケニル基を少なくとも2個以上含み、23℃における粘度が10~100mPa・sである直鎖状オルガノポリシロキサン(A)を30~70質量部、オルガノ水素ポリシロキサン(B)を30~70質量部含み、オルガノ水素ポリシロキサン(B)は、23℃における粘度が0.1~100mPa・sであり、一分子中にケイ素に結合した水素基を分子中に少なくとも3個以上含むオルガノ水素ポリシロキサン(B1)、23℃における粘度が0.1~100mPa・sであり、一分子中にケイ素に結合した水素基を両末端のみに持つオルガノ水素ポリシロキサン(B2)からなり、直鎖状オルガノポリシロキサン(A)とオルガノ水素ポリシロキサン(B)の合計に対し、付加反応触媒(C)を、0.1~1000ppm含み、低分子環状シロキサンD3-D10合計の含有量が500ppm以下であり、23℃における粘度が50mPa・s以下であるシリコーン組成物である実施例1~2は、粘度、D3~D10の合計量、皮膜の伸び率、全て合格となった。
【0031】
比較例1は、D3~D10の合計量が100ppm超過で不合格であった。23℃における粘度が0.1~100mPa・sであり、一分子中にケイ素に結合した水素基を両末端のみに持つオルガノ水素ポリシロキサン(B2)を添加していない比較例2は、アルミナ配合品の皮膜物性の伸び率が不合格と成った。炭素-炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する高粘度の直鎖状オルガノポリシロキサンで、末端ビニル基で封止され粘度1000mPa・sを、薄膜蒸留器にて180℃、9Paで低分子環状シロキサンを除去した(A2)を使用した比較例3は、均一なアルミナ配合品を得ることができなかった。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】