(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153878
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】洗浄性に優れたプラスチック製螺子キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 41/34 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
B65D41/34 116
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056636
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】大岡 新治
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA04
3E084AA12
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC04
3E084CC05
3E084DA01
3E084DB03
3E084DB05
3E084DB12
3E084DC04
3E084DC05
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084GB08
3E084KA13
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】タンパーエビデントバンドを備えたプラスチック製螺子キャップにおいて、洗浄水の水抜き性を高めること。
【解決手段】天板3と、スカート壁5と、スカート壁5の下端に破断可能なブリッジにより連結され且つ内面に容器顎部53の下側に係合し得る係止突起19を有するTEバンド(タンパーエビデントバンド)とを有するプラスチック製螺子キャップ1において、TEバンド7の内面には、係止突起19よりも上方の位置に、容器顎部53の外面と当接し、容器顎部53とスカート壁5の内面との間に洗浄液の流路となる空間Xを確保する流路形成用突起30が設けられていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板と、該天板の周縁から降下しており且つ内面に容器口部の外面と螺子係合する螺条を備えているスカート壁と、該スカート壁の下端に破断可能なブリッジにより連結され且つ内面に容器顎部の下側に係合し得る係止突起を有するタンパーエビデントバンドとを有するプラスチック製螺子キャップにおいて、
前記タンパーエビデントバンドの内面には、前記係止突起よりも上方の位置に、前記容器顎部の外面と当接し、該容器顎部と該スカート壁内面との間に洗浄液の流路となる空間を確保する流路形成用突起が設けられていることを特徴とするプラスチック製螺子キャップ。
【請求項2】
前記係止突起の上面に続く部位には、上方から該係止突起上端の付け根に向かって徐々に肉厚となるような環状傾斜面又は周方向に断続的な弧状傾斜面が形成されており、前記流路形成用突起は、前記環状傾斜面又は弧状傾斜面の上方に配置されている請求項1に記載のプラスチック製螺子キャップ。
【請求項3】
前記係止突起は、周方向に一定の間隔をおいて複数形成されており、前記流路形成用突起は、隣り合う係止突起の間の上方に配置されている請求項1または2に記載のプラスチック製螺子キャップ。
【請求項4】
前記流路形成用突起は、軸方向に延びているリブ形状を有しているか、或いはブロック形状を有している請求項1乃至3に記載のプラスチック製螺子キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック製螺子キャップに関するものであり、より詳細には、改善された洗浄性を有するプラスチック製螺子キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製螺子キャップは、天板と該天板の周縁から降下したスカート壁とを有しており、スカート壁の外面には、容器口部の外面に設けられている螺条(雄螺条)と係合する螺条(雌螺条)を有しており、スカート壁の下端には、破断可能なブリッジを介してタンパーエビデントバンド(TEバンド)が設けられている。このTEバンドの内面には、容器顎部の下側に係合し得る係止突起が設けられており、このキャップを開栓方向に旋回したとき、キャップのスカート壁は、容器口部の外面に沿って上昇するが、TEバンドは、上記係止突起が容器顎部の下側と係合するため、その上昇が制限される。この結果、キャップを開栓方向に旋回していくと、該キャップのスカート壁とTEバンドとを繋いでいるブリッジが切断し、容器口部から取り外されたキャップには、TEバンドが切り離されていることとなる。即ち、TEバンドがキャップから切り離されている事実が、このキャップが容器の口部から取り除かれたことがあるという開封履歴を証明することとなり、いたずら防止や容器内容物の品質保証の機能を果たすのである。
【0003】
ところで、上記のようなTEバンドを備えた螺子キャップは、洗浄性に問題があり、その改善が求められている。
即ち、螺子キャップは、水等で洗浄した後、エアブローでキャップ内の洗浄水を除去した後、容器に装着されるが、キャップ内に残った洗浄水が容器顎部の上部に溜まってしまうという問題がある。容器顎部の上部に溜まった洗浄水は、徐々にTEバンドの外面に流れ出し、この結果、TEバンドの外面に施された印字等が滲んでしまうという不都合が生じてしまう。このような洗浄水の水抜きの問題は、容器内への内容物の充填及びキャッピングが高速ラインで行われる場合に顕著となる傾向がある。おそらく、洗浄後のキャップが十分に乾燥されずに容器に装着される場合が多いためではないかと考えられる。
【0004】
通常、キャップが施されている容器の顎部上に溜まった水は、容器に装着されているキャップのスカート壁とTEバンドとの間の微小な空隙からのエアブローにより除去するのであるが、TEバンドの下方には、容器顎部の下側と係合する係合突起が形成されているため、容器顎部の上側に溜まった洗浄水が流れにくく、エアブローによる除去が困難となっている。特に、最近では、キャップを容器口部から開栓して取り外す際のTEバンドのすっぽ抜けを防止するために、特許文献1には、TEバンドの内面の係止突起の上側に、逆円錐台形状の環状傾斜面を形成した螺子キャップが提案されているが、このようなキャップは、キャップの開封に際して容器顎部の外周面に環状外面が密着していくことによりTEバンドのすっぽ抜けが防止される構造となっている。このため、容器顎部の上側に溜まった洗浄水が一層排出され難くなっている。
【0005】
一方、特許文献2には、容器顎部の上側に溜まった洗浄水を流れ落ち易くするために、TEバンドの内面において、容器顎部の下側と係合する係止突起よりも上方の位置に軸方向に延びている溝を複数形成することが提案されている。しかしながら、このような溝では、TEバンドの内面に形成されるため、その深さが制限されてしまう。このため、洗浄水の水抜き性が十分とは言えず、例えば高速充填などでは、依然として洗浄水による印字の滲みが生じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6393497号
【特許文献2】特許第6373099号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、タンパーエビデントバンドを備えたプラスチック製螺子キャップにおいて、洗浄性を高め、洗浄水の残存を有効に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、天板と、該天板の周縁から降下しており且つ内面に容器口部の外面と螺子係合する螺条を備えているスカート壁と、該スカート壁の下端に破断可能なブリッジにより連結され且つ内面に容器顎部の下側に係合し得る係止突起を有するタンパーエビデントバンドとを有するプラスチック製螺子キャップにおいて、
前記タンパーエビデントバンドの内面には、前記係止突起よりも上方の位置に、前記容器顎部の外面と当接し、該容器顎部と該スカート壁内面との間に洗浄液の流路となる空間を確保する流路形成用突起が設けられていることを特徴とするプラスチック製螺子キャップが提供される。
【0009】
本発明のプラスチック製螺子キャップにおいては、
(1)前記係止突起の上面に続く部位には、上方から該係止突起上端の付け根に向かって徐々に肉厚となるような環状傾斜面又は周方向に断続的な弧状傾斜面が形成されており、前記流路形成用突起は、前記環状傾斜面又は弧状傾斜面の上方に配置されていること、
(2)前記係止突起は、周方向に一定の間隔をおいて複数形成されており、前記流路形成用突起は、隣り合う係止突起の間の上方に配置されていること、
(3)前記流路形成用突起は、軸方向に延びているリブ形状を有しているか、或いはブロック形状を有していること、
が好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のキャップにおいては、TEバンドの内面に、容器顎部と係合する係止突起よりも上方の位置に、流路形成用突起が設けられている点に新規な特徴を有するものである。即ち、キャップが容器口部に装着された状態において、この流路形成用突起は容器の顎部の外面に当接した状態にあり、これにより、流路形成用突起の周囲には、容器顎部との間に空間が形成される。しかも、開栓に際して容器顎部の下側と係合してキャップの上昇を制限する係止突起は、この状態では、容器顎部の下側から離れた状態に保持されている。即ち、流路形成用突起によって容器顎部との間に形成された空間は、係止突起によって遮蔽されておらず、容器の顎部の下側に沿って外部空間に連なっている。この結果、流路形成用突起の周囲に形成された空間は、洗浄液を排出する流路としての機能を果たし、例えば、容器顎部の上側に溜まった洗浄液は、TEバンドとスカート壁との間に形成されている空隙を通してのエアブローにより流路形成用突起の周囲と容器顎部との間に形成された空間より外部に排出することができる。
このように、本発明のキャップは洗浄性(水抜き性)に優れており、キャップ内に溜まった洗浄液に起因するTEバンド外面の印字の滲みなどが有効に防止されている。
【0011】
尚、特許文献2のように、軸方向に延びている溝をTEバンドに形成し、この溝を流路として機能させようとすると、溝の幅を大きくし、しかも溝を深く形成しなければならないが、そうするとTEバンドの強度が大きく低下してしまい、TEバンドが変形し易くなってしまい、開栓に際して容器顎部を乗り越えてしまうという不都合を生じてしまう。即ち、溝の幅や深さが大きく制限され、洗浄液の排出流路として十分な機能を果たさなくなってしまう。しかるに、本発明では、溝ではなく突起により流路を形成しているため、このような不都合を生じることがなく、例えば高速充填機におけるキャッピングにも十分適用して水抜き性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のプラスチックキャップを容器口部と共に示す部分側断面図。
【
図3】本発明における流路形成用突起の機能を説明するための図。
【
図4】本発明のプラスチックキャップにおけるTEバンドの部分展開図。
【
図5】本発明における流路形成用突起の他の形態の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照して、本発明のプラスチック製螺子キャップ(以下、単にキャップと呼ぶことがある)は、全体として1で示されている。このキャップ1は、螺合により容器口部50に装着される。この容器口部50の外面に螺条(雄螺子)51が形成されており、螺条51の下方に、螺条51よりも径の大きい顎部(ビード)53が形成されており、顎部53の下側には、持ち運びや位置決め等のためにさらに大径のサポートリング55が形成されている。
【0014】
本発明において、キャップ1は、天板3と、天板3の周縁から降下しているスカート壁5と有しており、スカート壁5の下端には、破断可能な複数のブリッジ(図では省略)によりTEバンド(タンパーエビデントバンド)7が連結されており、このスカート壁5の下端とTEバンド7の上端との間には、微小な空隙であるスリット9が形成されている。
【0015】
スカート壁5の内面には、容器口部50に設けられている螺条51と螺合する螺条(雌螺子)11が形成されている。
一方、天板3の内面には、スカート壁5とは間隔をおいて下方に延びているインナーリング13が設けられており、インナーリング13の外側には、外方に向かって傾斜している短い補助突起15が周状に形成されており、さらにインナーリング13と補助突起15との間には、偏平状の小さな小突起17が周状に形成されている。
また、TEバンド7の内面には、フック形状を有する係止突起19が形成されている。
【0016】
即ち、このキャップ1は、容器口部50に被せて閉栓方向に旋回していくことにより、キャップ1の螺条11と容器口部50の螺条51とが螺合して降下していく。これにより、容器口部50は、その上端が天板3の内面に形成されているインナーリング13と補助突起15との間の空間に入り込み、容器口部50の上端面は、偏平状の小突起17の平坦な面に当接し、これにより、容器口部50の密封が確保される。このとき、TEバンド7の係止突起19が顎部53を乗り越え、この顎部53の下側に位置している。
【0017】
尚、TEバンド7の内面に設けられている係止突起19の上側には、上方から下方の係止突起19の上端付け根に向かって徐々に肉厚となるような傾斜面21が形成されている。この傾斜面21については、例えば前述した特許文献1に詳述されている。
【0018】
即ち、閉栓状態にあるキャップ1を開栓方向に旋回していくと、螺条11と螺条51との螺合が解除されていき、スカート壁5は上昇していくが、TEバンド7は、係止突起19が上昇して顎部53の下側に係合することとなる。このため、TEバンド7の上昇が制限され、この結果、スカート壁5とTEバンド7とを繋いでいる破断可能なブリッジ(図では省略されている)に応力が集中し、該ブリッジが破断してTEバンド7は、スカート壁5から切り離される。このとき、旋回方向への回転によりTEバンド7が一気に上昇してしまうと、係止突起19が顎部23を乗り越えてしまい、TEバンド7がスカート壁5に連結されたまま容器口部50からすっぽ抜けてしまうおそれがあるが、上記のような傾斜面21を形成しておくと、TEバンド7が徐々に上昇して係止突起19と顎部53とが係合するため、TEバンド7がすっぽ抜けるという不都合が有効に解消される。
このようにして、容器口部50から取り外されたキャップ1からTEバンド7が切り離されていることにより開封履歴が明示されることとなる。
【0019】
上記のようなTEバンド7を備えているキャップ1において、本発明では、
図1に示されているように、TEバンド7の内面には、係止突起19の上側に、流路形成用突起30が設けられている。このような流路形成用突起30は、顎部53の対面に位置し、該顎部53に当接するように設けられている。
即ち、
図2(
図1のA-A断面図)に示されているように、この流路形成用突起30の周囲には、TEバンド7の内面と顎部53の外面との間に空隙Xが形成されることとなる。
【0020】
上記の流路形成用突起30の機能を説明するための
図3を参照されたい。この流路形成用突起30が形成されていない従来のキャップでは、
図3(a)に示されている様に、TEバンド7の内面と顎部53の外面とが接触した状態にある。このため、顎部53の上側に洗浄水の液滴Yが溜まっていた場合、スリット9を介して液滴Yにエアーを吹き付けても、顎部53の下方に液滴Yの流路は形成されていないため、スリット9から抜け出てTEバンド7の外面に付着してしまう。この結果、インクジェット印刷等によりTEバンド7の外面に施されている印字等が滲んでしまうという不都合が生じることとなる。
【0021】
一方、本発明にしたがい、TEバンド7の内面に流路形成用突起30が設けられている場合には、流路形成用突起30の周囲には、TEバンド7の内面と顎部53の外面との間に空隙Xが形成されており、しかも、係止突起19は、顎部53の下面との間には隙間が形成されている。従って、
図3(b)に示されている様に、顎部53の上側に洗浄水の液滴Yが溜まっていた場合、スリット9を介して液滴Yにエアーを吹き付ければ、顎部53の下方に通じるように流路が形成されているため、液滴Yは、顎部53の下方に流れ落ちて、TEバンド7の外面に付着することなく排出されるわけである。
【0022】
このように、本発明によれば、洗浄水の水抜きが良好であり、洗浄水がキャップ1内に残存することにより生じる印字の滲みなどを有効に防止することができる。
【0023】
本発明において、上述した流路形成用突起30による水抜き効果を最大限に発揮させるためには、
図4のTEバンド7の部分展開図に示されているように、係止突起19を周方向に間隔を置いて複数形成し、隣り合う係止突起19の間の部分のそれぞれに、該係止突起19よりも上方の位置に形成することが好ましい。例えば、キャップ1の大きさにもよるが、キャップ呼び径28mmの場合、係止突起19を3~9個程度形成し、係止突起19間の間隔のトータルが、概ねTEバンド7の周長の1~50%程度とすることが望ましい。これにより、流路形成用突起30の周りに十分な空隙Xを形成することができ、エアブローによる洗浄水の水抜きを効果的に行うことができる。
図5の如く、流路形成用突起30は係止突起19よりも上方であれば、係止突起19の周方向両端に軸方向に重なっていてもよい。
【0024】
また、
図4の例では、流路形成用突起30は、軸方向に延びているリブ形状を有しているが、
図5に示している様に、ブロック形状とすることも可能である。何れにしろ、流路形成用突起30の形状や高さ、係止突起19との位置関係などは、キャップ成形時の型抜き性を考慮して、水抜き性が最大限に発揮されるように設定すればよい。例えば、流路形成用突起30の高さは0.05~0.30mm程度が好適である。また、
図4の例では隣り合う係止突起19の間の部分1箇所につき1つの流路形成用突起30が配設されているが、複数の流路形成用突起が配設されていてもよい。
【0025】
尚、特許文献1に示されている様に、TEバンド7の内面の係止突起19より上の位置に形成される傾斜面21には、これに重ねて微小なリブが形成されることがある。このリブは、TEバンド7がキャップ1から切り離されたとき、切り離されたTEバンド7が顎部53の外面に止まることなく速やかに落下するように設けられるものである。即ち、このようなリブは、洗浄水の水抜き用の流路形成のために設けられるものではないため、その高さは著しく低いし、本発明における流路形成用突起30よりも低い位置に形成され、水抜き機能はほとんど示さない。
【0026】
上述した本発明のキャップ1は、熱可塑性樹脂、例えばポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィン系樹脂を用いての射出成形又は型押し成形により容易に製造することができる。
【符号の説明】
【0027】
1:キャップ
3:天板
5:スカート壁
7:TEバンド
9:スリット
13:インナーリング
19:係止突起
30:流路形成用突起
50:容器口部
53:顎部
X:空隙
Y:洗浄水の液滴