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特開2022-153881流路抵抗状態監視装置及び流路抵抗状態監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153881
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】流路抵抗状態監視装置及び流路抵抗状態監視方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/38 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
F22B37/38 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056640
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】香川 晴治
(72)【発明者】
【氏名】筑網 圭治
(72)【発明者】
【氏名】井上 清治
(57)【要約】
【課題】監視対象機器を通過するガスの流量が変化した場合であっても監視対象機器の流路抵抗に関する状態を適切に監視することが可能な、流路抵抗状態監視装置を提供する。
【解決手段】プラントの監視対象機器の流路抵抗に関する状態を監視するための流路抵抗状態監視装置であって、監視対象機器の前後差圧の実測値に関する値である実差圧を取得する実差圧取得部と、監視対象機器を通過するガスの流量に関する値である実ガス量を取得する実ガス量取得部と、実差圧取得部によって取得した実差圧を、実ガス量取得部によって取得した実ガス量と予め定められた計画ガス量との比を用いて補正することで、監視対象機器における計画ガス量を基準とした実差圧の換算圧力を算出する換算圧力算出部と、換算圧力算出部によって算出した実差圧の換算圧力の時系列データを出力する換算圧力出力部と、を備える。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントの監視対象機器の流路抵抗に関する状態を監視するための流路抵抗状態監視装置であって、
前記監視対象機器の前後差圧の実測値に関する値である実差圧を取得するように構成された実差圧取得部と、
前記監視対象機器を通過するガスの流量に関する値である実ガス量を取得するように構成された実ガス量取得部と、
前記実差圧取得部によって取得した前記実差圧を、前記実ガス量取得部によって取得した前記実ガス量と予め定められた計画ガス量との比を用いて補正することで、前記監視対象機器における前記計画ガス量を基準とした前記実差圧の換算圧力を算出するように構成された換算圧力算出部と、
前記換算圧力算出部によって算出した前記実差圧の換算圧力の時系列データを出力するように構成された換算圧力出力部と、
を備える、流路抵抗状態監視装置。
【請求項2】
前記換算圧力算出部は、前記実差圧取得部によって取得した前記実差圧を、前記実ガス量取得部によって取得した前記実ガス量と前記計画ガス量との比の関数で除算することで、前記監視対象機器における前記計画ガス量を基準とした前記実差圧の換算圧力を算出するように構成された、請求項1に記載の流路抵抗状態監視装置。
【請求項3】
前記換算圧力算出部は、前記実差圧取得部によって取得した前記実差圧を、前記実ガス量取得部によって取得した前記実ガス量と前記計画ガス量との比の二乗で除算することで、前記監視対象機器における前記計画ガス量を基準とした前記実差圧の換算圧力を算出するように構成された、請求項1又は2に記載の流路抵抗状態監視装置。
【請求項4】
前記計画ガス量は、前記監視対象機器の運用開始時に前記監視対象機器を通過する前記ガスの流量に関する値を計測した計測値である、請求項1乃至3の何れか1項に記載の流路抵抗状態監視装置。
【請求項5】
前記プラントは、ボイラを備えるボイラプラントであり、
前記監視対象機器は、前記ボイラの排ガスが流れる排ガスラインに設けられた熱交換器であり、
前記実差圧取得部は、前記ボイラが定格負荷で運転している期間における前記実差圧を取得するように構成され、
前記実ガス量取得部は、前記ボイラが定格負荷で運転している期間における前記実ガス量を取得するように構成された、請求項1乃至4の何れか1項に記載の流路抵抗状態監視装置。
【請求項6】
前記実差圧取得部は、前記実差圧として、前記ボイラが定格負荷で運転している期間における前記熱交換器の前後差圧の実測値の移動平均を取得するように構成され、
前記実ガス量取得部は、前記実ガス量として、前記ボイラが定格負荷で運転している期間における前記熱交換器を通過する前記ガスの流量に関する値の移動平均を取得するように構成された、請求項5に記載の流路抵抗状態監視装置。
【請求項7】
前記実差圧取得部は、前記ボイラの負荷が前記定格負荷に到達してから所定時間が経過した後の前記実差圧を取得するように構成され、
前記実ガス量取得部は、前記ボイラの負荷が前記定格負荷に到達してから所定時間が経過した後の前記実ガス量を取得するように構成された、請求項5又は6に記載の流路抵抗状態監視装置。
【請求項8】
前記実差圧取得部によって取得した前記実差圧の時系列データと、前記実ガス量取得部によって取得した前記実ガス量の時系列データと、前記換算圧力算出部によって算出した前記換算圧力の時系列データとを保存する記憶部と、
前記記憶部における前記実差圧の時系列データの保存期間及び前記実ガス量の時系列データの保存期間の各々が、前記記憶部における前記換算圧力の時系列データの保存期間よりも短くなるように、前記記憶部における前記時系列データの各々の保存期間を管理する保存期間管理部と、
を更に備える、請求項1乃至7の何れか1項に記載の流路抵抗状態監視装置。
【請求項9】
プラントの監視対象機器の流路抵抗に関する状態を監視するための流路抵抗状態監視方法であって、
前記監視対象機器の前後差圧の実測値に関する値である実差圧を取得する実差圧取得ステップと、
前記監視対象機器を通過するガスの流量に関する値である実ガス量を取得する実ガス量取得ステップと、
前記実差圧取得ステップで取得した前記実差圧を、前記実ガス量取得ステップで取得した前記実ガス量と予め定められた計画ガス量との比を用いて補正することで、前記監視対象機器における前記計画ガス量を基準とした前記実差圧の換算圧力を算出する換算圧力算出ステップと、
前記換算圧力算出ステップで算出した前記実差圧の換算圧力の時系列データを出力するように構成された換算圧力出力ステップと、
を備える、流路抵抗状態監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流路抵抗状態監視装置及び流路抵抗状態監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ボイラプラントにおけるボイラの排ガスが流れる流路に設けられた熱交換器について、熱交換器が備える伝熱管バンドル(監視対象機器)の前後差圧に基づいて伝熱管バンドルのスケールの生成状況(監視対象機器の流路抵抗に関する状態)を監視する監視装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-255972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ボイラプラント等のプラントにおいて、圧力損失の監視対象である監視対象機器の前後差圧に基づいて、監視対象機器への付着物の付着状況や堆積物の堆積状況といった、監視対象機器の流路抵抗に関する状態を監視する場合、監視対象機器を通過するガスの流量に応じて監視対象機器の前後差圧は変化してしまう。このため、特許文献1に記載の監視装置では、監視対象機器を通過するガスの流量が変化した場合に、監視対象機器の流路抵抗に関する状態を適切に監視することはできなかった。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、監視対象機器を通過するガスの流量が変化した場合であっても監視対象機器の流路抵抗に関する状態を適切に監視することが可能な、流路抵抗状態監視装置及び流路抵抗状態監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係る流路抵抗状態監視装置は、
プラントの監視対象機器の流路抵抗に関する状態を監視するための流路抵抗状態監視装置であって、
前記監視対象機器の前後差圧の実測値に関する値である実差圧を取得するように構成された実差圧取得部と、
前記監視対象機器を通過するガスの流量に関する値である実ガス量を取得するように構成された実ガス量取得部と、
前記実差圧取得部によって取得した前記実差圧を、前記実ガス量取得部によって取得した前記実ガス量と予め定められた計画ガス量との比を用いて補正することで、前記監視対象機器における前記計画ガス量を基準とした前記実差圧の換算圧力を算出するように構成された換算圧力算出部と、
前記換算圧力算出部によって算出した前記実差圧の換算圧力の時系列データを出力するように構成された換算圧力出力部と、
を備える。
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係る流路抵抗状態監視方法は、
プラントの監視対象機器の流路抵抗に関する状態を監視するための流路抵抗状態監視方法であって、
前記監視対象機器の前後差圧の実測値に関する値である実差圧を取得する実差圧取得ステップと、
前記監視対象機器を通過するガスの流量に関する値である実ガス量を取得する実ガス量取得ステップと、
前記実差圧取得ステップで取得した前記実差圧を、前記実ガス量取得ステップで取得した前記実ガス量と予め定められた計画ガス量との比を用いて補正することで、前記監視対象機器における前記計画ガス量を基準とした前記実差圧の換算圧力を算出する換算圧力算出ステップと、
前記換算圧力算出ステップで算出した前記実差圧の換算圧力の時系列データを出力するように構成された換算圧力出力ステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、監視対象機器を通過するガスの流量が変化した場合であっても監視対象機器の流路抵抗に関する状態を適切に監視することが可能な、流路抵抗状態監視装置及び流路抵抗状態監視方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るボイラプラント2の概略構成を示す図である。
図2図1に示した流路抵抗状態監視装置24のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図1及び図2に示した流路抵抗状態監視装置24の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図4図3に示した流路抵抗状態監視装置24を用いた監視フローの一例を示す図である。
図5】換算圧力Px1の時系列データの一例を示す図である。
図6】換算圧力Px2の時系列データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0011】
図1は、一実施形態に係るボイラプラント2の概略構成を示す図である。
図1に示すように、ボイラプラント2は、ボイラ4、脱硝装置5、空気予熱器6、ガス‐ガスヒーター(以下、「GGH」と記載する。)8、集塵装置10、誘引ファン12、湿式脱硫装置14及び煙突16、流量計18、差圧計20,22及び流路抵抗状態監視装置24を備える。GGH8は、熱回収器26及び再加熱器28を含み、熱回収器26及び再加熱器28の各々は熱交換器により構成されている。ボイラ4と煙突16とは、排ガスライン29によって接続されており、排ガスライン29には、ボイラから排出された排ガスの流れ方向において上流側から順に、脱硝装置5、空気予熱器6、熱回収器26、集塵装置10、誘引ファン12、湿式脱硫装置14及び再加熱器28が設けられている。
【0012】
ボイラ4から排出された排ガス(以下、単に「排ガス」と記載する。)は、脱硝装置5で窒素酸化物を除去された後、空気予熱器6での熱交換によって例えば120~170℃に冷却される。空気予熱器6を通過した排ガスは、熱回収器26を構成する伝熱管を流れる熱媒体(例えば水)により熱を奪われて例えば75℃~110℃に冷却された後、集塵装置10で排ガス中の煤塵を除去され、さらに誘引ファン12で昇圧された後、湿式脱硫装置14で硫黄酸化物を除去される。このように、熱回収器26は、ボイラ4の排ガスと熱媒体との間接熱交換により熱媒体を加熱するように構成されている。
【0013】
湿式脱硫装置14を通過した排ガスは、通常、40~60℃程度まで温度が低下して水分飽和状態となっており、仮にこの排ガスをそのまま煙突16から大気中へ放出すると白煙が発生するため、再加熱器28で露点温度(例えば硫酸の露点温度)以上に昇温され、煙突16から排出される。熱回収器26と再加熱器28との間には、伝熱管により構成された熱媒体循環ライン30が設けられ、熱媒体循環ポンプ32により熱回収器26と再加熱器28との間で熱媒体循環ライン30を介して熱媒体が循環されるようになっている。このように、再加熱器28は、熱回収器26で加熱された熱媒体を用いて湿式脱硫装置14を通過後の排ガスを露点以上の温度まで加熱するように構成されている。
【0014】
流量計18は、排ガスライン29を流れる排ガスの流量を計測するように構成されている。流量計18によって計測する排ガスの流量は、熱回収器26を通過する排ガスの流量に相当し、再加熱器28を通過する排ガスの流量に相当する。差圧計20は、排ガスライン29における熱回収器26の前後差圧を計測するように構成されている。熱回収器26の前後差圧とは、排ガスライン29における熱回収器26の入口の圧力(図示する例では排ガスライン29における空気予熱器6と熱回収器26との間の圧力)から、排ガスライン29における熱回収器26の出口の圧力(図示する例では排ガスライン29における熱回収器26と集塵装置10との間の圧力)を減算した圧力を意味する。差圧計22は、排ガスライン29における再加熱器28の前後差圧を計測するように構成されている。再加熱器28の前後差圧とは、排ガスライン29における再加熱器28の入口の圧力(図示する例では排ガスライン29における湿式脱硫装置14と再加熱器28との間の圧力)から、排ガスライン29における再加熱器28の出口の圧力(図示する例では排ガスライン29における再加熱器28と煙突16との間の圧力)を減算した圧力を意味する。
【0015】
流路抵抗状態監視装置24は、流量計18の計測結果、差圧計20の計測結果及び差圧計22の計測結果に基づいて、第1監視対象機器としての熱回収器26の流路抵抗に関する状態と、第2監視対象機器としての再加熱器28の流路抵抗に関する状態とを監視するように構成されている。流路抵抗状態監視装置24の詳細構成については後述する。
【0016】
ボイラプラント2によれば、熱回収器26で排ガスの温度を低減し、排ガス中の灰にSOや重金属を吸着させ、その吸着物を集塵装置10で灰と共に除去することができ、また熱回収器26で回収された熱は、煙突16からの白煙防止のため、湿式脱硫装置14を出た水分飽和ガスの再加熱に利用することができる。
【0017】
図2は、図1に示した流路抵抗状態監視装置24のハードウェア構成の一例を示す図である。図3は、図1及び図2に示した流路抵抗状態監視装置24の機能的な構成の一例を示すブロック図である。図4は、図3に示した流路抵抗状態監視装置24を用いた監視フローの一例を示す図である。
【0018】
図2に示すように、流路抵抗状態監視装置24は、例えばプロセッサ72、RAM(Random Access Memory)74、ROM(Read Only Memory)76、HDD (Hard Disk Drive)78、入力I/F80、及び出力I/F82を含み、これらがバス84を介して互いに接続されたコンピュータを用いて構成される。なお、流路抵抗状態監視装置24のハードウェア構成は上記に限定されず、制御回路と記憶装置との組み合わせにより構成されてもよい。また流路抵抗状態監視装置24は、流路抵抗状態監視装置24の各機能を実現するプログラムをコンピュータが実行することにより構成される。以下で説明する流路抵抗状態監視装置24における各部の機能は、例えばROM76に保持されるプログラムをRAM74にロードしてプロセッサ72で実行するとともに、RAM74やROM76におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。流路抵抗状態監視装置24は、ボイラプラント2が備える分散制御システム(Distributed Control System;DCS)によって構成されていてもよい。
【0019】
図3に示すように、流路抵抗状態監視装置24は、実差圧取得部34、実ガス量取得部36、換算圧力算出部38、換算圧力出力部40、記憶部42及び保存期間管理部44を備える。以下、図3に示す流路抵抗状態監視装置24の各部の機能について、図4に示す監視フローを用いて説明する。
【0020】
S11において、実差圧取得部34は、排ガスライン29における熱回収器26の前後差圧の実測値p1に関する値である実差圧P1を取得するとともに、排ガスライン29における再加熱器28の前後差圧の実測値p2に関する値である実差圧P2を取得する。ここで、実差圧P1は、差圧計20で計測した熱回収器26の前後差圧の実測値p1そのものであってもよいし、実測値p1を用いて算出した値(例えば実測値p1の後述の移動平均等)であってもよい。また、実差圧P2は、差圧計22で計測した熱回収器26の前後差圧の実測値p2そのものであってもよいし、実測値p2を用いて算出した値(例えば実測値p2の後述の移動平均等)であってもよい。
【0021】
S12において、実ガス量取得部36は、流量計18から、熱回収器26を通過する排ガスの流量fに関する値である実ガス量Fを取得する。ここで、実ガス量Fは、熱回収器26を通過する排ガスの流量fに関する値であるとともに、再加熱器28を通過する排ガスの流量fに関する値でもある。なお、実ガス量Fは、流量計18の計測結果である排ガスの流量fそのものであってもよいし、流量fを用いて算出した値(例えば流量fの後述の移動平均等)であってもよい。
【0022】
S13において、換算圧力算出部38は、実差圧取得部34によって取得した実差圧P1を、実ガス量取得部36によって取得した実ガス量Fと予め定められた計画ガス量F0との比(F/F0)を用いて下記式(a)に示すように補正することで、熱回収器26における計画ガス量F0を基準とした実差圧P1の換算圧力Px1を算出する。
Px1=P1/g(F/F0) ・・・(a)
ここでg(F/F0)は比(F/F0)の関数である。関数g(x)としては種々の実験式を使うことができるが、実用上、下記式(b)として近似できることを見出した。
g(x)=ax ・・・(b)
ここでaは係数である。すなわち、aが1の場合には、式(a)は下記式(c)となる。
Px1=P1/(F/F0) ・・・(c)
このように、換算圧力算出部38は、実差圧取得部34によって取得した実差圧P1を、実ガス量取得部36によって取得した実ガス量Fと計画ガス量F0との比の二乗で除算することで、熱回収器26における計画ガス量F0を基準とした実差圧P1の換算圧力Px1を算出する。なお、計画ガス量F0は、記憶部42に記憶しておき、換算圧力Px1を算出する際に記憶部42から読み出してもよい。
【0023】
また、S13において、換算圧力算出部38は、実差圧取得部34によって取得した実差圧P2を、実ガス量取得部36によって取得した実ガス量Fと予め定められた計画ガス量F0との比(F/F0)を用いて下記式(d)に示すように補正することで、熱回収器26における計画ガス量F0を基準とした実差圧P2の換算圧力Px2を算出する。
Px2=P2/(F/F0) ・・・(d)
このように、換算圧力算出部38は、実差圧取得部34によって取得した実差圧P2を、実ガス量取得部36によって取得した実ガス量Fと計画ガス量F0との比の二乗で除算することで、再加熱器28における計画ガス量F0を基準とした実差圧P2の換算圧力Px2を算出する。
なお、S13で換算圧力Px1及びPx2の各々の算出に用いる計画ガス量F0は、熱回収器26(及び再加熱器28)の運用開始時にボイラ4を試運転させた際に熱回収器26(及び再加熱器28)を通過する排ガスの流量を流量計18によって計測した実測値(ボイラ4の運用開始時の試運転等で計測した初期データ)であってもよい。この計画ガス量F0は、換算圧力Px1及びPx2の各々をそれぞれ上記式(a)又は(c)、及び(d)を用いて時系列で算出する場合において、時間によらない一定値(定数)である。
【0024】
S14において、換算圧力出力部40は、S13で算出した換算圧力Px1の時系列データ(図5参照)と、S13で算出した換算圧力Px2の時系列データ(図6参照)とを、ディスプレイ等の表示装置46に出力する。ここで、熱回収器26の流路抵抗に関する状態及び再加熱器28の流路抵抗に関する状態の経時的な傾向の監視を容易とするために、換算圧力出力部40が出力する換算圧力Px1の時系列データ及び換算圧力Px2の時系列データの各々は、1日に複数のデータ点(例えば1日に10点程度のデータ)を含んでいてもよい。
【0025】
ここで、熱回収器26及び再加熱器28の各々に圧力損失の経時的な変化が起こる原因について説明する。
【0026】
熱回収器26を構成する伝熱管の外面には、排ガスライン29を流れる排ガスに含まれる灰が付着及び堆積し、排ガスに含まれる塩(塩化アンモニウム等)が付着する。この場合、その付着物及び堆積物によって熱回収器26内の流路面積が減少して排ガスライン29における熱回収器26の流路抵抗が増大するため、熱回収器26の前後差圧(圧力損失)がその分だけ大きくなってしまう。熱回収器26には、伝熱管に付着した灰を除去するための不図示の灰除去装置(スートブロワ等)が設けられているが、熱回収器26の前後差圧が予め定められた計画値よりも大きくなっている場合には、灰除去装置に故障等による動作不良が生じていると考えられる。
【0027】
また、再加熱器28を構成する伝熱管の外面には、湿式脱硫装置14が備える不図示の吸収塔からの飛散ミストに起因する溶解性塩の析出物(石膏等)が付着する。この場合、その付着物によって再加熱器28内の流路面積が減少して排ガスライン29における再加熱器28の流路抵抗が増大するため、再加熱器28の前後差圧(圧力損失)がその分だけ大きくなってしまう。
【0028】
次に、上記流路抵抗状態監視装置24が奏する効果について説明する。
上記式(c)において、計画ガス量F0を基準とした熱回収器26の実差圧P1の換算圧力Px1は、熱回収器26の流路抵抗に関する状態を示すパラメータであり、上記換算圧力Px1が高いほど熱回収器26の流路抵抗が大きいことを意味し、上記換算圧力Px1が低いほど熱回収器26の流路抵抗が小さいことを意味する。また、上記流路抵抗状態監視装置24では、熱回収器26の前後差圧の実測値p1に関する値である実差圧P1を、熱回収器26を通過する排ガスの流量fに関する値である実ガス量Fと計画ガス量F0との比の二乗で除算して補正しているため、熱回収器26を通過する排ガスの流量が変化した場合であっても、排ガスの流量の変化の影響を低減することができ、熱回収器26の流路抵抗に関する状態を経時的且つ適切に監視することができる。
【0029】
また、上記式(d)において、計画ガス量F0を基準とした再加熱器28の実差圧P2の換算圧力Px2は、再加熱器28の流路抵抗に関する状態を示すパラメータであり、上記換算圧力Px2が高いほど再加熱器28の流路抵抗が大きいことを意味し、上記換算圧力Px2が低いほど再加熱器28の流路抵抗が小さいことを意味する。また、上記流路抵抗状態監視装置24では、再加熱器28の前後差圧の実測値p2に関する値である実差圧Px2を、再加熱器28を通過する排ガスの流量fに関する値である実ガス量Fと計画ガス量F0との比の二乗で除算して補正しているため、再加熱器28を通過する排ガスの流量が変化した場合であっても、排ガスの流量の変化の影響を低減することができ、再加熱器28の流路抵抗に関する状態を経時的且つ適切に監視することができる。
【0030】
幾つかの実施形態では、図4に示したフローにおけるS11において、実差圧取得部34が取得する実差圧P1は、ボイラ4が定格負荷で運転している期間(より好ましくはボイラ4の負荷が定格負荷に到達してから例えば1時間等の所定時間が経過した後の期間)に計測した熱回収器26の前後差圧の実測値p1であってもよく、該実測値p1を用いて算出した値であってもよい。この場合、S12において、実ガス量取得部36が取得する実ガス量Fは、ボイラ4が定格負荷で運転している期間(より好ましくはボイラ4の負荷が定格負荷に到達してから例えば1時間等の所定時間が経過した後の期間)に計測した排ガスの流量fであってもよく、該流量fを用いて算出した値であってもよい。
【0031】
これにより、ボイラプラント2における熱回収器26の流路抵抗に関する状態をボイラ4の排ガスの流量が変化しても経時的且つ適切に監視することができる。また、実差圧P1及び実ガス量Fの各々について、ボイラ4が定格負荷で運転している期間のデータのみを用いることにより、ボイラ4の運転期間の全データを用いる場合と比較して、記憶部42の記憶容量の増大(例えば記憶装置を含んだ計算機の追加)を抑制しつつ、長期間のデータの蓄積が容易となる。また、ボイラ4の負荷が上昇して定格負荷に到達した直後はオーバーシュート等も起こり得るため、上記のように定格負荷に到達してから所定時間が経過した後のデータを使用することにより、ボイラプラント2における熱回収器26の流路抵抗に関する状態を経時的且つ適切に監視することができる。なお、ボイラ4の定格負荷での運転が無い日等は、換算圧力Px1の算出及び評価の対象外としてもよい。
【0032】
幾つかの実施形態では、図4に示したフローにおけるS11において、実差圧取得部34が取得する実差圧P2は、ボイラ4が定格負荷で運転している期間(より好ましくはボイラ4の負荷が定格負荷に到達してから例えば1時間等の所定時間が経過した後の期間)に計測した再加熱器28の前後差圧の実測値p2であってもよく、該実測値p2を用いて算出した値であってもよい。この場合、S12において、実ガス量取得部36が取得する実ガス量Fは、ボイラ4が定格負荷で運転している期間(より好ましくはボイラ4の負荷が定格負荷に到達してから例えば1時間等の所定時間が経過した後の期間)に計測した排ガスの流量fであってもよく、該流量fを用いて算出した値であってもよい。
【0033】
これにより、ボイラプラント2における再加熱器28の流路抵抗に関する状態をボイラ4の排ガスの流量が変化しても経時的且つ適切に監視することができる。また、ボイラ4の負荷が上昇して定格負荷に到達した直後はオーバーシュート等も起こり得るため、上記のように定格負荷に到達してから所定時間が経過した後のデータを使用することにより、ボイラプラント2における再加熱器28の流路抵抗に関する状態を経時的且つ適切に監視することができる。なお、ボイラ4の定格負荷での運転が無い日等は、換算圧力Px2の算出及び評価の対象外としてもよい。
【0034】
幾つかの実施形態では、図4に示したフローにおけるS11において、実差圧取得部34は、実差圧P1として、ボイラ4が定格負荷で運転している期間(より好ましくはボイラ4の負荷が定格負荷に到達してから例えば1時間等の所定時間が経過した後の期間)に計測した熱回収器26の前後差圧の実測値p1の移動平均を取得してもよい。この場合、S12において、実ガス量取得部36は、実ガス量Fとして、ボイラ4が定格負荷で運転している期間(より好ましくはボイラ4の負荷が定格負荷に到達してから例えば1時間等の所定時間が経過した後の期間)に計測した排ガスの流量fの移動平均を取得してもよい。ボイラ4の定格負荷においても熱回収器26の前後差圧及びボイラ4の排ガスの流量は若干変動するため、上記のように熱回収器26の前後差圧の実測値p1及び排ガスの流量fの各々について移動平均(例えば5分間の移動平均)を取得することにより、ボイラプラント2における熱回収器26の流路抵抗に関する状態をボイラ4の排ガスの流量が変化しても適切に監視することができる。
【0035】
幾つかの実施形態では、図4に示したフローにおけるS11において、実差圧取得部34は、実差圧P2として、ボイラ4が定格負荷で運転している期間(より好ましくはボイラ4の負荷が定格負荷に到達してから例えば1時間等の所定時間が経過した後の期間)に計測した再加熱器28の前後差圧の実測値p2の移動平均を取得してもよい。この場合、S12において、実ガス量取得部36は、実ガス量Fとして、ボイラ4が定格負荷で運転している期間(より好ましくはボイラ4の負荷が定格負荷に到達してから例えば1時間等の所定時間が経過した後の期間)に計測した排ガスの流量fの移動平均を取得してもよい。ボイラ4の定格負荷においても再加熱器28の前後差圧及びボイラ4の排ガスの流量は若干変動するため、上記のように再加熱器28の前後差圧の実測値p1及び排ガスの流量fの各々について移動平均(例えば5分間の移動平均)を取得することにより、ボイラプラント2における再加熱器28の流路抵抗に関する状態をボイラ4の排ガスの流量が変化しても適切に監視することができる。
【0036】
幾つかの実施形態では、例えば図3に示す記憶部42は、実差圧取得部34によって取得した実差圧P1の時系列データと、実差圧取得部34によって取得した実差圧P2の時系列データと、実ガス量取得部36によって取得した実ガス量Fの時系列データと、換算圧力算出部38によって算出した換算圧力Px1の時系列データと、換算圧力算出部38によって算出した換算圧力Px2の時系列データと、上記計画ガス量F0とを保存してもよい。
【0037】
この場合、保存期間管理部44は、記憶部42における実差圧P1の時系列データの保存期間及び実ガス量Fの時系列データの保存期間の各々が、記憶部42における換算圧力Px1の時系列データの保存期間よりも短くなるように、記憶部42に保存された時系列データの各々の保存期間を管理してもよい。また、保存期間管理部44は、記憶部42における実差圧P2の時系列データの保存期間及び実ガス量Fの時系列データの保存期間の各々が、記憶部42における換算圧力Px2の時系列データの保存期間よりも短くなるように、記憶部42に保存された時系列データの各々の保存期間を管理してもよい。
【0038】
例えば、保存期間管理部44は、実差圧P1,P2及び実ガス量Fの各々について、対応する保存期間が経過したデータを記憶部42から自動的に消去し、記憶部42に記憶された換算圧力Px1の時系列データと換算圧力Px2の時系列データとを、記憶部42から自動的に消去しないように構成されていてもよい。
【0039】
また、例えば、保存期間管理部44は、記憶部42における換算圧力Px1の時系列データの保存期間を1カ月以上の期間とし、記憶部42における実差圧P1の時系列データの保存期間及び実ガス量Fの時系列データの保存期間の各々を1週間から数週間程度の期間(例えば1週間以上1カ月未満の期間)としてもよい。また、保存期間管理部44は、記憶部42における換算圧力Px2の時系列データの保存期間を1カ月以上の期間とし、記憶部42における実差圧P2の時系列データの保存期間及び実ガス量Fの時系列データの保存期間の各々を1週間から数週間程度の期間(例えば1週間以上1カ月未満の期間)としてもよい。この場合、保存期間管理部44は、記憶部42における換算圧力Px1,Px2、実差圧P1,P2及び実ガス量Fの各々について、対応する保存期間が経過した場合に記憶部42から自動的に消去するように構成される。
【0040】
このように、ボイラプラント2の熱回収器26の流路抵抗に関する状態を監視するために必要な上記換算圧力Px1の時系列データの保存期間よりも、上記実差圧P1の時系列データの保存期間及び上記実ガス量Fの時系列データの保存期間の各々を短くすることにより、記憶部42の記憶容量の増大(例えば記憶装置を含んだ計算機の追加)を抑制しつつ、ボイラプラント2の熱回収器26の流路抵抗に関する状態を長期的且つ適切に監視することを可能にすることができる。このため、簡素且つ低コストの構成で熱回収器26の流路抵抗に関する状態を長期的且つ適切に監視することができる。
【0041】
また、ボイラプラント2の再加熱器28の流路抵抗に関する状態を監視するために必要な上記換算圧力Px2の時系列データの保存期間よりも、上記実差圧P2の時系列データの保存期間及び上記実ガス量Fの時系列データの保存期間の各々を短くすることにより、記憶部42の記憶容量の増大を抑制しつつ、ボイラプラント2の再加熱器28の流路抵抗に関する状態を長期的且つ適切に監視することを可能にすることができる。このため、簡素且つ低コストの構成で再加熱器28の流路抵抗に関する状態を長期的且つ適切に監視することができる。
【0042】
幾つかの実施形態では、図3に示したアラーム信号生成部48は、S13で算出した換算圧力Px1が予め定められた閾値を超えた場合に、例えば熱回収器26の灰に付着した灰を除去する作業等のメンテナンスを促すためのアラーム信号を生成してもよく、熱回収器26に付着した灰を除去するための灰除去装置(スートブロワ等)のメンテナンスを促すためのアラーム信号を生成してもよい。また、アラーム信号生成部48は、S13で算出した換算圧力Px2が予め定められた閾値を超えた場合に、例えば再加熱器28に析出した石膏等の溶解性塩の除去作業等のメンテナンスを促すためのアラーム信号を生成してもよい。これらのアラーム信号は、例えば上記メンテナンスを促す表示を表示装置46に出力するための信号であってもよいし、音声等のその他の手段を用いて上記メンテナンスを促すための信号であってもよい。上記のようにアラーム信号を生成することにより、熱回収器26及び再加熱器28について適切なタイミングでメンテナンスを行うことが可能となる。
【0043】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した実施形態では、流路抵抗に関する状態の監視対象である監視対象機器として、熱回収器26及び再加熱器28を例示した。しかしながら、監視対象機器はこれらに限らず、ボイラプラント2における例えばボイラ4の煙道や他の配管等、圧力損失が経時的に変化する可能性がある他の機器であってもよい。また、監視対象機器は、ボイラプラント2を構成する機器に限らず、化学物質等を生産する化学プラントや発電を行う発電プラント等を構成する機器であってもよい。
【0044】
また、例えば、図1に示した実施形態では、実差圧取得部34によって取得する実差圧P1及び実差圧P2は、差圧計20及び差圧計22の計測結果に基づく値であったが、他の実施形態では、実差圧P1は、排ガスライン29における熱回収器26の入口に設けた圧力計の計測結果から熱回収器26の出口に設けた圧力計の計測結果を減じることで得られる熱回収器26の前後差圧又は該前後差圧を用いて算出した値であってもよく、実差圧P2は、排ガスライン29における再加熱器28の入口に設けた圧力計の計測結果から再加熱器28の出口に設けた圧力計の計測結果を減じることで得られる再加熱器28の前後差圧又は該前後差圧を用いて算出した値であってもよい。
【0045】
また、実ガス量取得部36によって取得する実ガス量Fは、流量計18によって計測した排ガスライン29の排ガスの流量に限らず、例えばボイラ4に供給する空気(燃焼用空気)の流量であってもよいし、誘引ファン12の風量であってもよい。また、図1に示した実施形態では、流量計18は空気予熱器6と熱回収器26との間の位置に設けられていたが、流量計18は排ガスライン29における他の位置に設けられていてもよい。
【0046】
また、上述した実施形態では、流路抵抗状態監視装置24は、熱回収器26の流路抵抗に関する状態及び再加熱器28の流路抵抗に関する状態の監視を行うように構成されていたが、流路抵抗状態監視装置24は、再加熱器28の流路抵抗に関する状態の監視を行わずに熱回収器26の流路抵抗に関する状態のみの監視を行ってもよいし、熱回収器26の流路抵抗に関する状態の監視を行わずに再加熱器28の流路抵抗に関する状態のみの監視を行ってもよい。
【0047】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0048】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る流路抵抗状態監視装置(例えば上述の流路抵抗状態監視装置24)は、
プラント(例えば上述のボイラプラント2)の監視対象機器(例えば上述の熱回収器26又は再加熱器28)の流路抵抗に関する状態を監視するための流路抵抗状態監視装置であって、
前記監視対象機器の前後差圧の実測値(例えば上述の実測値p1又は実測値p2)に関する値である実差圧(例えば上述の実差圧P1又は実差圧P2)を取得するように構成された実差圧取得部(例えば上述の実差圧取得部34)と、
前記監視対象機器を通過するガスの流量(例えば上述の流量f)に関する値である実ガス量(例えば上述の実ガス量F)を取得するように構成された実ガス量取得部(例えば上述の実ガス量取得部36)と、
前記実差圧取得部によって取得した前記実差圧を、前記実ガス量取得部によって取得した前記実ガス量と予め定められた計画ガス量(例えば上述の計画ガス量F0)との比を用いて補正することで、前記監視対象機器における前記計画ガス量を基準とした前記実差圧の換算圧力(例えば上述の換算圧力Px1又は換算圧力Px2)を算出するように構成された換算圧力算出部(例えば上述の換算圧力算出部38)と、
前記換算圧力算出部によって算出した前記実差圧の換算圧力の時系列データを出力するように構成された換算圧力出力部(例えば上述の換算圧力出力部40)と、
を備える。
【0049】
上記(1)に記載の流路抵抗状態監視装置において、計画ガス量を基準とした監視対象機器の上記実差圧の換算圧力は、監視対象機器の流路抵抗に関する状態を示すパラメータであり、上記換算圧力が高いほど監視対象機器の流路抵抗が大きいことを意味し、上記換算圧力が低いほど監視対象機器の流路抵抗が小さいことを意味する。また、上記流路抵抗状態監視装置では、監視対象機器の前後差圧の実測値に関する値である実差圧を、監視対象機器を通過するガスの流量に関する値である実ガス量と計画ガス量との比を用いて補正しているため、監視対象機器を通過するガスの流量が変化した場合であっても、ガスの流量の変化の影響を低減することができ、監視対象機器の流路抵抗に関する状態を経時的且つ適切に監視することができる。
【0050】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の流路抵抗状態監視装置において、
前記換算圧力算出部は、前記実差圧取得部によって取得した前記実差圧を、前記実ガス量取得部によって取得した前記実ガス量と前記計画ガス量との比の関数で除算することで、前記監視対象機器における前記計画ガス量を基準とした前記実差圧の換算圧力を算出するように構成される。
【0051】
上記(2)に記載の流路抵抗状態監視装置によれば、監視対象機器の前後差圧の実測値に関する値である実差圧を、監視対象機器を通過するガスの流量に関する値である実ガス量と計画ガス量との比の関数で除算して補正しているため、監視対象機器を通過するガスの流量が変化した場合であっても、ガスの流量の変化の影響を低減することができ、監視対象機器の流路抵抗に関する状態を経時的且つ適切に監視することができる。
【0052】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の流路抵抗状態監視装置において、
前記換算圧力算出部は、前記実差圧取得部によって取得した前記実差圧を、前記実ガス量取得部によって取得した前記実ガス量と前記計画ガス量との比の二乗で除算することで、前記監視対象機器における前記計画ガス量を基準とした前記実差圧の換算圧力を算出するように構成される。
【0053】
上記(3)に記載の流路抵抗状態監視装置によれば、監視対象機器の前後差圧の実測値に関する値である実差圧を、監視対象機器を通過するガスの流量に関する値である実ガス量と計画ガス量との比の二乗で除算して補正しているため、監視対象機器を通過するガスの流量が変化した場合であっても、ガスの流量の変化の影響を低減することができ、監視対象機器の流路抵抗に関する状態を経時的且つ適切に監視することができる。
【0054】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかに記載の流路抵抗状態監視装置において、
前記計画ガス量は、前記監視対象機器の運用開始時に前記監視対象機器を通過する前記ガスの流量に関する値を計測した実測値である。
【0055】
上記(4)に記載の流路抵抗状態監視装置によれば、監視対象機器の運用開始時のガスの流量を基準とした実差圧の換算圧力を算出して出力することができる。このため、監視対象機器の流路抵抗に関する状態の運用開始時からの変化を適切に監視することが容易となる。
【0056】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかに記載の流路抵抗状態監視装置において、
前記プラントは、ボイラ(例えば上述のボイラ4)を備えるボイラプラント(例えば上述のボイラプラント2)であり、
前記監視対象機器は、前記ボイラの排ガスが流れる排ガスライン(例えば上述の排ガスライン29)に設けられた熱交換器(例えば上述の熱回収器26又は再加熱器28)であり、
前記実差圧取得部は、前記ボイラが定格負荷で運転している期間における前記実差圧を取得するように構成され、
前記実ガス量取得部は、前記ボイラが定格負荷で運転している期間における前記実ガス量を取得するように構成される。
【0057】
上記(5)に記載の流路抵抗状態監視装置によれば、ボイラプラントにおける熱交換器の流路抵抗に関する状態をボイラの排ガスの流量が変化しても経時的且つ適切に監視することができる。
【0058】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)に記載の流路抵抗状態監視装置において、
前記実差圧取得部は、前記実差圧として、前記ボイラが定格負荷で運転している期間における前記熱交換器の前後差圧の実測値の移動平均を取得するように構成され、
前記実ガス量取得部は、前記実ガス量として、前記ボイラが定格負荷で運転している期間における前記熱交換器を通過する前記排ガスの流量に関する値の移動平均を取得するように構成される。
【0059】
ボイラの定格負荷においても熱交換器の前後差圧及びボイラの排ガスの流量は若干変動するため、上記(6)に記載のように上記前後差圧及び排ガスの流量の各々について移動平均を取得することにより、ボイラプラントにおける熱交換器の流路抵抗に関する状態をボイラの排ガスの流量が変化しても適切に監視することができる。
【0060】
(7)幾つかの実施形態では、上記(5)又は(6)に記載の流路抵抗状態監視装置において、
前記実差圧取得部は、前記ボイラの負荷が前記定格負荷に到達してから所定時間が経過した後の前記実差圧を取得するように構成され、
前記実ガス量取得部は、前記ボイラの負荷が前記定格負荷に到達してから所定時間が経過した後の前記実ガス量を取得するように構成される。
【0061】
上記(7)に記載の流路抵抗状態監視装置によれば、ボイラの負荷が上昇して定格負荷に到達した直後はオーバーシュート等も起こり得るため、上記(7)に記載のように定格負荷に到達してから所定時間が経過した後のデータを使用することにより、ボイラプラントにおける熱交換器の流路抵抗に関する状態を経時的且つ適切に監視することができる。
【0062】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかに記載の流路抵抗状態監視装置において、
前記実差圧取得部によって取得した前記実差圧の時系列データと、前記実ガス量取得部によって取得した前記実ガス量の時系列データと、前記換算圧力算出部によって算出した前記換算圧力の時系列データとを保存する記憶部(例えば上述の記憶部42)と、
前記記憶部における前記実差圧の時系列データの保存期間及び前記実ガス量の時系列データの保存期間の各々が、前記記憶部における前記換算圧力の時系列データの保存期間よりも短くなるように、前記記憶部における前記時系列データの各々の保存期間を管理する保存期間管理部(例えば上述の保存期間管理部44)と、
を更に備える。
【0063】
上記(8)に記載の流路抵抗状態監視装置によれば、プラントの監視対象機器の流路抵抗に関する状態を監視するために必要な上記換算圧力の時系列データの保存期間よりも、上記実差圧の時系列データの保存期間及び上記実ガス量の時系列データの保存期間の各々を短くすることにより、記憶部の記憶容量の増大を抑制しつつ、プラントの監視対象機器の流路抵抗に関する状態を長期的且つ適切に監視することを可能にすることができる。このため、簡素且つ低コストの構成で監視対象機器の流路抵抗に関する状態を長期的且つ適切に監視することができる。
【0064】
(9)本開示の少なくとも一実施形態に係る流路抵抗状態監視方法は、
プラント(例えば上述のボイラプラント2)の監視対象機器(例えば上述の熱回収器26又は再加熱器28)の流路抵抗に関する状態を監視するための流路抵抗状態監視方法であって、
前記監視対象機器の前後差圧の実測値(例えば上述の実測値p1又は実測値p2)に関する値である実差圧(例えば上述の実差圧P1又は実差圧P2)を取得する実差圧取得ステップと、
前記監視対象機器を通過するガスの流量に関する値(例えば上述の流量f)である実ガス量(例えば上述の実ガス量F)を取得する実ガス量取得ステップと、
前記実差圧取得ステップで取得した前記実差圧を、前記実ガス量取得ステップで取得した前記実ガス量と予め定められた計画ガス量(例えば上述の計画ガス量F0)との比を用いて補正することで、前記監視対象機器における前記計画ガス量を基準とした前記実差圧の換算圧力(例えば上述の換算圧力Px1又は換算圧力Px2)を算出する換算圧力算出ステップと、
前記換算圧力算出ステップで算出した前記実差圧の換算圧力の時系列データを出力するように構成された換算圧力出力ステップと、
を備える。
【0065】
上記(9)に記載の流路抵抗状態監視方法によれば、計画ガス量を基準とした監視対象機器の上記実差圧の換算圧力は、監視対象機器の流路抵抗に関する状態を示すパラメータであり、上記換算圧力が高いほど監視対象機器の流路抵抗が大きいことを意味し、上記換算圧力が低いほど監視対象機器の流路抵抗が小さいことを意味する。また、上記流路抵抗状態監視方法では、監視対象機器の前後差圧の実測値に関する値である実差圧を、監視対象機器を通過するガスの流量に関する値である実ガス量と計画ガス量との比を用いて補正しているため、監視対象機器を通過するガスの流量が変化した場合であっても、ガスの流量の変化の影響を低減することができ、監視対象機器の流路抵抗に関する状態を経時的且つ適切に監視することができる。
【符号の説明】
【0066】
2 ボイラプラント
4 ボイラ
5 脱硝装置
6 空気予熱器
10 集塵装置
12 誘引ファン
14 湿式脱硫装置
16 煙突
18 流量計
20,22 差圧計
24 流路抵抗状態監視装置
26 熱回収器
28 再加熱器
29 排ガスライン
30 熱媒体循環ライン
32 熱媒体循環ポンプ
34 実差圧取得部
36 実ガス量取得部
38 換算圧力算出部
40 換算圧力出力部
42 記憶部
44 保存期間管理部
46 表示装置
48 アラーム信号生成部
72 プロセッサ
74 RAM
76 ROM
78 HDD
80 入力I/F
82 出力I/F
84 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6