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特開2022-153890自動車用エンジンの吸気マニホールド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153890
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】自動車用エンジンの吸気マニホールド
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/10 20060101AFI20221005BHJP
   F02M 35/104 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
F02M35/10 101F
F02M35/10 301W
F02M35/104 A
F02M35/104 P
F02M35/10 301M
F02M35/10 301T
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056651
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】森岡 太一
(72)【発明者】
【氏名】足立 悠紀子
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 肇
(72)【発明者】
【氏名】金海 考祐
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 泰啓
(57)【要約】
【課題】ブレーキブースター用の負圧取り出しポートを備えた吸気マニホールドにおいて、負圧取り出しポートに凝縮水が付着することを防止する。
【解決手段】吸気マニホールドは第1シェル状部材1とこれに重なった第2シェル状部材2とを有している。第1シェル状部材1のうちサージタンク6の奥部前コーナー部33の箇所に、メイン段部34aを形成し、メイン段部34aに、第1隔壁35で囲われた第1準閉鎖状空間36を形成している。第2シェル状部材2にも、第2隔壁42と第2準閉鎖状空間43とが形成されている。メイン段部34aの側面39に、サージタンク6の内部に向けて膨れた湾曲部39aを形成し、湾曲部39aの箇所に段落ち状の窪み40を設けている。凝縮水は窪み40に流下して溜まり、吸気の流れによって生じた吸引作用によってサージタンク6の内部に吸い出され、霧化して気筒に排出される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの吸気入口と1つのブレーキブースター用負圧取り出しポートとが開口したサージタンクと、前記サージタンクから分岐した複数本の吸気出口通路とを有し、複数のシェル状部材を重ねて接合して中空構造に形成されている吸気マニホールドであって、
前記サージタンクの縁部に、前記2つのシェル状部材から相対向するように隔壁を突設することにより、前記吸気出口通路が開口した主室と隙間を介して区分された準閉鎖状空間を形成しており、
前記重なり合った2つのシェル状部材のうちいずれか一方に、前記準閉鎖状空間に開口するように前記負圧取り出しポートが形成されている、
自動車用エンジンの吸気マニホールド。
【請求項2】
前記準閉鎖状空間を構成する2つの隔壁は概ね上下方向に配置されており、下方に位置した隔壁の付け根部か周辺部に、前記隔壁又はその近くから伝い流れた水滴が集まり得る凹所を、前記主室に露出するようにして形成している、
請求項1に記載した自動車用エンジンの吸気マニホールド。
【請求項3】
前記吸気入口は、前記サージタンクのうちカム軸線方向から見た前後両端部のうち一端部に開口して、前記準閉鎖状空間は前記サージタンクの他端部に形成されており、
前記吸気入口から前記サージタンクに流入した吸気は、前記準閉鎖状空間が形成された他端部に向けて流れて、前記他端部で方向変換して前記各吸気出口通路に向かうように設定されており、
かつ、前記凹所が形成されているシェル状部材のうち前記方向変換した吸気の流れに晒される部位に、前記両シェル状部材の重ね合わせ向から見て前記主室に向けて膨れた湾曲部が形成されて、前記湾曲部に前記凹所が形成されている、
請求項2に記載した自動車用エンジンの吸気マニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、吸気負圧で作動するブレーキブースターを備えた自動車のエンジンにおいて、ブレーキブースターへの負圧取り出しポートが形成された吸気マニホールドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車において、ブレーキペダルの踏み込み力はブレーキブースターによって増幅されており、乗用車や小型・中型トラックでは、ブレーキブースターは吸気負圧を利用していることが多い。具体的には、ブレーキブースター用の負圧取り出しポートを吸気マニホールドのサージタンクに設けて、負圧取り出しポートとブレーキブースターとをホースで接続している。
【0003】
ここで問題は、サージタンクに流入する吸気やブローバイガス、EGRガスには水分が含まれていることで、低温環境下において水分が負圧取り出しポートで凝縮して凍結すると、ブレーキブースターが作動しない不具合が発生するおそれがある。
【0004】
そこで、負圧取り出しポートに水分が侵入することを防止する手段が講じられている。その例として特許文献1には、サージタンクに、その外側に凹んだ段差部を形成して、この段差部に負圧取り出しポートを開口させることが開示されている。
【0005】
また、近年の吸気マニホールドは、複数の合成樹脂製シェル状部材を接合して中空構造に構成していることが多いが、特許文献2,3には、吸気マニホールドを構成する複数のシェル状部材のうち負圧取り出しポートを設けた1つのシェル状部材の内面に、負圧取り出しポートを囲うように隔壁を設けることが開示されている。
【0006】
更に、特許文献4には、1つのシェル状部材の内面に隆起部を形成し、隆起部の側面に負圧取り出しポートを開口させることにより、シェル状部材の内面を伝い落ちた水滴が負圧取り出しポートに入り込むことを防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-037918号公報
【特許文献2】特開2010-084641号公報
【特許文献3】特開2013-133723号公報
【特許文献4】特開2007-40142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
各特許文献では、負圧取り出しポートは段差部や隔壁等で保護されているため、負圧取り出しポートへの水分の入り込みを抑制できると云えるが、負圧取り出しポートはサージタンクの内部にダイレクトに開口しているため、吸気やブローバイガス等に含まれた水滴が負圧取り出しポートに入り込むことを的確に阻止できるには至っていないと思料される。
【0009】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明の吸気マニホールドは、
「1つの吸気入口と1つのブレーキブースター用負圧取り出しポートとが開口したサージタンクと、前記サージタンクから分岐した複数本の吸気出口通路とを有し、複数のシェル状部材を重ねて接合して中空構造に形成されている」
という基本構成において、
「前記サージタンクの縁部に、前記2つのシェル状部材から相対向するように隔壁を突設することにより、前記吸気出口通路が開口した主室と隙間を介して区分された準閉鎖状空間を形成しており、
前記重なり合った2つのシェル状部材のうちいずれか一方に、前記準閉鎖状空間に開口するように前記負圧取り出しポートが形成されている」
という特徴を有している。
【0011】
本願発明は、様々な構成を含んでいる。その例として請求項2では、
「前記準閉鎖状空間を構成する2つの隔壁は概ね上下方向に配置されており、下方に位置した隔壁の付け根部か周辺部に、前記隔壁又はその近くから伝い流れた水滴が集まり得る凹所(集水部)を、前記主室に露出するようにして形成している」
という構成になっている。
【0012】
凹所の形態は様々に選択できる。1つの例は実施形態のような窪みであるが、他にも、スリット状等の溝や、穴、リブで囲われた樋状通路なども採用できる。数と大きさは任意に設定できる。いずれにしても、凹所は少なくとも一部が吸気の流れに晒されているのが好ましい。凹所は水を集めて吸気流で放散させる機能があれば足り、必ずしも水が溜まる必要はない。
【0013】
サージタンクを備えた吸気マニホールドにおいて、吸気入口の配置は様々であるが、大まかには、吸気入口がカム軸線と交叉した方向に開口しているタイプと、吸気入口がカム軸線方向に開口しているタイプとに分けられるといえる。いずれにしても、サージタンク内での吸気の流れに応じて凹所の位置や開口方向を設定したらよい。
【0014】
請求項2の展開例として、請求項3では、吸気入口がカム軸線方向に開口しているタイプに適用した好適な例を開示している。すなわち請求項3の発明は、
「前記吸気入口は、前記サージタンクのうちカム軸線方向から見た前後両端部のうち一端部に開口して、前記準閉鎖状空間は前記サージタンクの他端部に形成されており、
前記吸気入口から前記サージタンクに流入した吸気は、前記準閉鎖状空間が形成された他端部に向けて流れて、前記他端部で方向変換して前記各吸気出口通路に向かうように設定されており、
かつ、前記凹所が形成されているシェル状部材のうち前記方向変換した吸気の流れに晒される部位に、前記両シェル状部材の重ね合わせ方向から見て前記主室に向けて膨れた湾曲部が形成されて、前記湾曲部に前記凹所が形成されている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0015】
本願発明では、負圧取り出しポートはサージタンクの準閉鎖状空間に開口しているため、サージタンクに流入した吸気やブローバイガス、EGRガス等に水分が含まれていても、水分が負圧取り出しポートにダイレクトに入り込むことが隔壁によって防止される。従って、負圧取り出しポートに水分が入り込むことを防止又は大幅に抑制できる。その結果、低温環境下でもブレーキブースターの作動を確保して安全性を向上できる。
【0016】
そして、準閉鎖状空間は、サージタンクを構成する2つのシェル状部材からそれぞれ隔壁を突設することによって形成されているため、隔壁の突出高さが大きくなり過ぎることはなく、従って、隔壁を形成したことに起因した振動や騒音を防止できる。むしろ、両方のシェル状部材が隔壁によって補強されるため、吸気マニホールドの強度アップに貢献できる。
【0017】
請求項2では、隔壁やその周辺部に凝縮水が付着しても、凝縮水を凹所に集めて吸気の流れに乗せて拡散できる。すなわち、ベンチュリ効果(或いはエゼクター効果)により、凹所に溜まった水を吸気の流れによって吸い出すことができる。従って、水分が負圧取り出しポートに侵入することを的確に防止できる。
【0018】
更に、請求項3の構成を採用すると、凹所が吸気の流れに対して横向きに開口するため、当該凹所には、ベンチュリ効果(或いはエゼクター効果)による吸引作用が強く作用し、主室に向かう吸引作用(吸い出し作用)を格段に向上できる。これにより、凹所に溜まった水滴を吸い出してサージタンクの内部に拡散させることを確実化できる。従って、負圧取り出しポートに対する水分の進入防止効果の確実性を向上できる。
【0019】
この場合、凹所は湾曲部に形成されているが、湾曲部がサージタンクの主室に向けて膨れていることにより、吸気は湾曲部に強く当たって方向変換する傾向を呈するため、吸気が凹所を掠めて流れる現象が強く現れて、凹所に対するベンチュリ効果(或いはエゼクター効果)が顕著に現れる。その結果、負圧取り出しポートに対する水分の侵入防止効果の確実性を向上できる。なお、吸気に乗ってサージタンクの主室に拡散した水分は、霧化して、各吸気出口通路及び吸気ポートを経由して燃焼室(気筒)に排出される。
【0020】
請求項3では、凹所の位置を特定しているが、本願発明では、凹所の構成に代えて又はこれと併せて、準閉鎖状空間を構成する隔壁を利用して吸気を方向変換させることができる。この場合、隔壁は常に吸気の強い流れに晒されるため、凝縮水の発生を防止又は大幅に抑制できる。従って、負圧取り出しポートへの水分の進入防止効果の向上に貢献できる。また、隙間はサージタンクの主室に開口して吸気の流れに晒されているため、ブレーキブースターの作動に際しては、隙間を介して準閉鎖状空間の空気をダイレクトに吸引できる。従って、ブレーキブースターの作動の応答性を向上できると云える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態の吸気マニホールドをカム軸線と直交した斜め上方から見た図である。
図2】シリンダヘッドの側に位置した第1シェル状部材を斜め上方から見た図である。
図3】第1シェル状部材を斜め上方の側から見た斜視図である。
図4図3の要部拡大図である。
図5】第2シェル状部材を裏返して下方側から見た要部斜視図である。
図6】吸気マニホールドを吸気の流入方向から見た図である。
図7】第1シェル状部材と第2シェル状部材とを重ねた状態で吸気の流れ方向から見た破断要部斜視図である。
図8】それぞれ2つの隔壁の配置関係を示す模式的な縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、自動車用3気筒エンジンの吸気マニホールドに適用している。エンジンは、クランク軸を車幅方向に向けた横置きの姿勢でエンジンルームに搭載されている。また、エンジンは、排気側面を自動車の前進方向に向けている。従って、エンジンは、横向き・前排気タイプである。そして、シリンダボア軸線を、自動車の前進方向に向けて若干の角度だけ前傾させている。
【0023】
以下では方向を特定するため前後、外奥、上下の文言を使用するが、前後方向はカム軸線方向(クランク軸線方向)で、外奥方向はカム軸線方向と直交した略水平方向、上下方向は鉛直方向としている。前と後ろについては、エンジンにおいてタイミングチェーンが配置されている側を前、変速機が配置されている側を後ろとしている。外と奥については、シリンダヘッドに近い側を奥、シリンダヘッドから遠い側を外としている。図に、適宜方向を明示している。
【0024】
(1).吸気マニホールドの基本構造
図8に模式的に示すように、吸気マニホールドは、略上下方向に重なった第1シェル状部材1と第2シェル状部材2と第3シェル状部材3との3つのシェル状部材を備えており、隣り合ったシェル状部材を振動溶着等で接合することによって中空に形成されている。従って、各シェル状部材1~3は合成樹脂の射出成形品である。
【0025】
図2において、第1シェル状部材1の全体を表示している。本実施形態では、各シェル状部材1~3は、斜め上側方(重なり方向)から見てほぼ同じ形状になっている。図2において平行斜線(ハッチング)を施した部分は第1シェル状部材1の露出部であり、従って、図1の大部分は第3シェル状部材3で占められている。第2シェル状部材2は第3シェル状部材3によって全体が隠れている。
【0026】
図2では第1シェル状部材1のみを表示しており、第2シェル状部材2との重合面4をハッチングで表示している(従って、図2のハッチングは断面の表示ではない。図3~5も同様である。)。第2シェル状部材2及び第3シェル状部材3にも第1シェル状部材1と同じ形状の重合面4が形成されており、重なり合った重合面4を振動溶着等の溶着によって接合している。従って、第2シェル状部材2には内外の重合面4が形成されている。図2,3では、重合面4は単なる平坦面として表示しているが、実際には、図4,5に示すように、重合面4には環状溝5が形成されている。
【0027】
図2から理解できるように、第1シェル状部材1はシリンダヘッド(図示せず)と反対側(外側に)に開口しており、サージタンク6を構成するメイン凹所7が、シリンダヘッドの側に向けて膨れるように形成されている。また、第1シェル状部材1の後ろ壁8には、スロットルバルブ(図示せず)が固定される取付け座9が突設されて、取付け座9に吸気入口10が開口している。吸気入口10は後ろ向きに開口しているため、吸気は吸気入口10から前向きに噴出する。
【0028】
第1シェル状部材1のメイン凹所7は、吸気入口10よりも下方及び外方向に広がっており、第1シェル状部材1の下外部には、第1~第3の吸気出口通路11~13の入口部を形成するための第1~第3の下外溝14~16が形成されている。
【0029】
他方、第1シェル状部材1のうちメイン凹所7を挟んで下外溝14~16と反対側に位置した上奥部には、シリンダヘッドの吸気側面に重なる前後長手のフランジ17が形成されており、フランジ17に、第1~第3の3対の吸気出口穴18~20が開口している。吸気出口穴18~20はそれぞれ仕切壁18a~20aによって前後に分断されているが、これは、シリンダヘッドの吸気ポートが一対ずつに分離していることに対応させたものである。
【0030】
図1のとおり、第3シェル状部材3には、第1~第3の吸気出口通路11~13を形成するための第1~第3の外樋状部21~23が、メイン凹所7と反対側に膨れるように形成されている。
【0031】
そして、図1に点線で示して図2に一点鎖線で示すように、第2シェル状部材2の下部には、第1シェル状部材1の下外溝14~16、及び、第3シェル状部材3における外樋状部21~23の下部に重なる第1~第3の3つの下外部連通穴24~26が形成されている。また、図示していないが、第2シェル状部材2の上奥部には、第1シェル状部材1の吸気出口穴18~19及び第3シェル状部材3における外樋状部21~23の上部に重なる3つの上奥部連通穴が形成されている。
【0032】
更に、第2シェル状部材2のうち上奥部連通穴と下外部連通穴24~26の間には、第3シェル状部材3の外樋状部21~23を内側から塞ぐ第1内樋状部27(図5参照)及び第2、第3の内樋状部が形成されている。図5では、第1内樋状部27の一部をサージタンク6の側から見た状態が表示されている。第2,第3の内樋状部は図示していない。
【0033】
図2の点線の矢印から理解できるように、吸気出口通路11~13は図2において紙面の手前側に配置されており、吸気は、紙面の状態では、吸気出口通路11~13に下から入って上から出ていく。
【0034】
図1,2に示すように、第1シェル状部材1には、吸気マニホールドをシリンダヘッドに固定するためのフランジ状部28が複数個形成されている。また、第1シェル状部材1と第2シェル状部材2との上部の重合面4に、EGRガス分配通路29が形成されている。EGRガス分配通路29は、後ろから前に向けて延びる主通路路29aと、主通路29aから分岐した2本の枝通路29b,29cとを有しており、主通路29aの終端は第1吸気出口通路11の終端部に連通し、後端に位置した枝通路29cは第3吸気出口通路13の終端部に連通し、前後中途部に位置した枝通路29bは第2吸気出口通路12の終端部に連通している。
【0035】
図2,3に示すように、第1シェル状部材1と第2シェル状部材2との上奥部の重合面4に、ブローバイガスを還流させるためのPCV還流通路30が前後長手の姿勢で形成されている。PCV通路30の出口30aは、概ねサージタンク6の前後中間部に向けて下向き開口している。他方、PCV還流通路30の入口30bは、第1シェル状部材1におけるフランジ17のうち、第1吸気出口穴18と第2吸気出口穴19との間の部位に開口している。
【0036】
PCV通路30の入口30bは、シリンダヘッドに形成されたPCV中間通路の終端と連通している。従って、シリンダヘッドに形成されたPCV中間通路は、シリンダヘッドのうちフランジ17が重なっている吸気側面に開口している。
【0037】
(2).負圧取り出しポート
図1に示すように、第2シェル状部材2のうちサージタンク6を挟んで吸気入口10と反対側に位置した前壁に、負圧式ブレーキブースターを作動させるための筒状の負圧取り出しポート32が、前向きに突出した状態に形成されている。この負圧取り出しポート32に関連した構造を、次に説明する。
【0038】
図2,3のとおり、サージタンク6(及びこれを構成するメイン凹所7)は、シェル状部材1~3の重なり方向(大まかには斜め上側方)から見て前後長手の四角形状になっており、従って、サージタンク6はシェル状部材1~3の重なり方向から見て4つのコーナー部を有しているが、図2,3のとおり、負圧取り出しポート32は、サージタンク6の奥部前コーナー部33の近傍部に向けて前から連通するように配置されている。
【0039】
そして、サージタンク6を構成する第1シェル状部材1のうち、サージタンク6の奥部前コーナー部33の箇所に、メイン段部34aと、メイン段部34aから第2シェル状部材2の側に向けて斜め上外向きに立ち上がった補助段部34bを形成し、補助段部34bに、第2シェル状部材2に向けて突出した略コ字形の第1隔壁35を一体に形成している。従って、サージタンク6は、第1隔壁35で囲われた第1準閉鎖状空間36を有している。
【0040】
第1隔壁35は、側面視では負圧取り出しポート32の出口を囲うように配置されている。また、第1隔壁35は、概ね、第1シェル状部材1の重合面4と略同じ高さになるように設定されている。また、第1隔壁35は、第1シェル状部材1の前壁の内側面37には到達していない。従って、第1隔壁35と前壁の内側面37との間には、吸気が通る隙間38が空いている。
【0041】
メイン段部34aは、メイン凹所7の奥部前コーナー部を概ね斜めにカットするような姿勢に形成されている。このため、吸気入口10から噴出して前向きに流れた吸気は、メイン段部34aの側面39にガイドされて下外部に向かうように方向変換するが、メイン段部34aの側面39に、側面視で概ねメイン凹所7の対角方向に向けて膨れた湾曲部39aを形成している。従って、吸気は湾曲部39aに対して強く当たる。
【0042】
そして、メイン段部34aのうち湾曲部39aに対応した部位に、請求項に記載した凹所の一例として、メイン凹所7の対角方向と上方とに開口した窪み(段落ち状凹部)40を形成している。窪み40は第1隔壁35の付け根まで至っている。図4に明示するように、第1隔壁35は鉛直線方向(上下方向)と交叉した斜め方向に突出している。従って、第1隔壁35の外面に付着した水滴41を窪み40に溜めることができる。図4に明示するように、窪み40には上段部40aを形成している。従って、窪み40は2段式になっている。
【0043】
なお、既述のとおり、エンジンは排気側が前傾するように傾斜姿勢でエンジンルームに配置されており、かつ、シリンダヘッドのうち吸気マニホールドのフランジ17が固定される吸気側面は、上に行くに従ってシリンダボアに近づくように傾斜している。このため、図2,3は斜め上から見た状態になり、図4は側面視に近い方向から見た斜視図になっている。
【0044】
図5に示すように、第2シェル状部材2のうちサージタンク6の奥部前コーナー部33の箇所に、第2隔壁42が形成されており、これにより、第2準閉鎖状空間43が形成されている。第2隔壁42は第2シェル状部材2における交叉した2つの内側面44a,44bに繋がっている。従って、第2準閉鎖状空間43は、略下方のみ(第1準閉鎖状空間36の方向)のみに開口している。負圧取り出しポート32は第2準閉鎖状空間43に開口しているが、図5のとおり、負圧取り出しポート32の開口縁は、側壁の内側面44aから突設したトンネル状の囲い32aで囲われている。
【0045】
本実施形態では、第2隔壁42は、第1隔壁35よりもサージタンク6の内部方向にずれて配置されており、かつ、図6,7から理解できるように、第2隔壁42で第1隔壁35が内側から覆われている。従って、図8(A)のラビリンス態様になっている。そして、図7にも示すように、2つの隔壁35,42の間には吸気が通る隙間45が空いている。第1準閉鎖状空間36と第2準閉鎖状空間43とにより、請求項に記載した準閉鎖状空間が形成されている。また、サージタンク6のうち準閉鎖状空間36,43を除いた部位は主室になっている。従って、メイン凹所7がほぼ主室になっていると云える。
【0046】
第1隔壁35と第2隔壁42との関係は、図8(B)に示すように、第2隔壁42と第1隔壁36とを対向させたり、図8(C)に示すように、第1隔壁35を第2隔壁42よりもサージタンク6の中央部側に寄せたりすることができる。図8(A)(C)のように2つの隔壁35,42をずらした場合、いずれにおいても、(A)のように一方の隔壁で他方の隔壁を覆うこともできるし、(C)のように同じ高さに設定することもできる。
【0047】
既述のとおり、各シェル状部材1~3はそれぞれ射出成形品であり、隔壁35,42はシェル状部材1,2の型抜き方向に突出している。従って、製造するにおいて特段の問題はない。
【0048】
(3).まとめ
本実施形態は以上の構成であり、図3に矢印46で示すように、吸気の主流は、サージタンク6の内部を後ろから前に向けて流れるが、奥部前コーナー部33に、当該奥部前コーナー部33を斜めにカットするような姿勢でメイン段部34aと隔壁35,42とが配置されているため、吸気はメイン段部34a及び隔壁35,42によって方向変換して、各吸気出口通路11~12の入口に向かう。また、吸気の一部は、図3に点線の矢印47で示すように、主流46から分岐して第2吸気出口通路12及び第3吸気出口通路13の入口にも向かう。
【0049】
そして、ブレーキブースターに連通した負圧取り出しポート32は、隔壁35,42で区分された準閉鎖状空間36,43に開口しているため、吸気やブローバイガスに水分が含まれていても、水分が負圧取り出しポート32にダイレクトに入り込むことはない。
【0050】
この場合、負圧取り出しポート32が直接に開口している第2準閉鎖状空間43は、下方のみに開口していると共に第1準閉鎖状空間36の上に位置しているため、第1準閉鎖状空間36に水分を含んだ吸気が侵入しても、第2準閉鎖状空間43には入り難くなっている。従って、水分が負圧取り出しポート32に飛来して水滴化することを、防止又は著しく抑制できる。
【0051】
また、低温環境下の運転において、例えば図4に示すように、吸気やブローバイガスに含まれていた水分が第1隔壁36の側面に当たって凝縮し、水滴41に成長することが有り得るが、この場合、水滴41は窪み40に流下し、窪み40に溜まる。
【0052】
そして、吸気は第1シェル状部材1における段部33の側面39に当たって方向変換して外側に流れるが、吸気の強い流れが窪み40の開口縁を通るため、ベンチュリ効果(或いはエゼクター効果)によって窪み40に対して吸引力が作用し、これにより、溜まっていた水が吸い出される。吸い出された水は、サージタンク6の内面との衝突等によって微細に霧化し、吸気出口通路11~13及び吸気ポートを経由して気筒に送られる。従って、水が負圧取り出しポート32に入り込むことを防止して、凍結によって負圧取り出しポート32が塞がれてブレーキブースターの作動が不完全になるという不具合を防止できる。
【0053】
特に、メイン段部34aの側面39に湾曲部39aを形成してこの湾曲部39aの箇所に窪み40を形成しているため、吸気が湾曲部39aに強く当たって窪み40に対する吸引効果も高くなっており、このため、水の吸い出し効果を向上させて、負圧取り出しポート32に対する水かかり防止効果を大幅に向上できる。
【0054】
ブレーキブースターの作動時には、図8に矢印で示すように、負圧取り出しポート32から空気が吸い出されるが、吸気の流れは隔壁35,42の間の隙間45も掠めて流れるため、負圧取り出しポート32に対する高い吸い出し効果を発揮する。従って、ブレーキブースターの応答性にも優れている。
【0055】
本実施形態のように、PCV還流通路30の出口30aをサージタンク6の前後中間部に配置すると、ブローバイガスは吸気の主流46に乗ってメイン段部34aの側面39や隔壁35,42に衝突するため、吸気に対するブローバガスの分散性を向上できる利点がある。
【0056】
図4に一点鎖線で示すように、メイン段部34aのうち第1隔壁35よりも下の箇所に、請求項に記載した凹所の例としてスリット34cを設けることも可能である。この場合も、水滴41をスリット34cに集めて、吸気の流れによって吸い出すことができる。なお、スリット34cは窪み40に代えて形成してもよいし、窪み40とスリット34cとを併設してもよい。
【0057】
また、本実施形態では、第1隔壁35と前壁の内側面37との間に隙間38が空いているが、このように隙間38を設けると、第1準閉鎖状空間36で発生した水滴41を隙間38から落とすことできる利点がある。すなわち、隙間38を水滴吸引空間として利用できる利点がある。
【0058】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、実施形態は3パーツ方式であったが、2パーツ方式であってもよい。また、実施形態の場合、負圧取り出しポートを第1シェル状部材に形成することも可能である。
【0059】
凹所の例としては、例えば、図4に示すメイン段部34aのうち第1隔壁35の下方の部位に、前壁の内側面37と平行なリブを形成し、リブと内側面37との間の樋状通路を集水用の凹所と成すことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本願発明は、自動車用エンジンの吸気マニホールドに具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 第1シェル状部材
2 第2シェル状部材
3 第3シェル状部材
4 重合面
6 サージタンク
7 メイン凹所
8 後ろ壁
9 スロットルボデー取付け座
10 吸気入口
11~13 吸気出口通路(枝通路)
21~23 吸気出口通路を構成する外樋状部
29 EGRガス分配通路
30 PCV還流通路
32 負圧取り出しポート
33 奥部前コーナー部
34a メイン段部
34b 補助段部
35 第1隔壁
36 第1準閉鎖状空間
39 段部の側面
39a 湾曲部
40 凹所の一例として窪み
42 第2隔壁
43 第2準閉鎖状空間
45 請求項の隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8