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特開2022-153893補聴器、線状部材ユニット、及び、治工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153893
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】補聴器、線状部材ユニット、及び、治工具
(51)【国際特許分類】
   H04R 25/02 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
H04R25/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056658
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(74)【代理人】
【識別番号】100184712
【弁理士】
【氏名又は名称】扇原 梢伸
(72)【発明者】
【氏名】深渡瀬 智史
(72)【発明者】
【氏名】山田 新
(72)【発明者】
【氏名】高橋 浩貴
(57)【要約】
【課題】フェースプレートからシェルを取り外すことなく、容易に線状部材を交換することができる技術を提供する。
【解決手段】補聴器100は、シェル10と、フェースプレート20と、線状部材ユニット30と、Oリング70とを備えている。線状部材ユニット30は、線状部材40と、線状部材交換用土台50と、把持部60とを備えている。線状部材交換用土台50は、線状部材40が固定されており、貫通孔21に脱着可能であり、線状部材40専用の電気的要素を含んでいない土台である。このように、補聴器100では、線状部材40をフェースプレート20ではなく別のパーツ(線状部材交換用土台50)に接着して、そのパーツをフェースプレート20に脱着可能な構造で組み込んでいる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の耳内に挿入されるシェルと、
前記シェルに取り付けられ、貫通孔を有するフェースプレートと、
取り出し用の線状部材と、
前記線状部材が固定されており、前記貫通孔に脱着可能であり、前記線状部材専用の電気的要素を含んでいない土台と、
を備える補聴器。
【請求項2】
請求項1に記載の補聴器において、
前記土台は、所定形状の土台係合部を有し、
前記フェースプレートは、前記土台係合部と係合するフェースプレート係合部を有し、
前記貫通孔に前記土台を挿し込んで前記土台を回転させ、前記土台係合部と前記フェースプレート係合部とを係合させることにより前記土台を固定することを特徴とする補聴器。
【請求項3】
請求項2に記載の補聴器において、
前記貫通孔は、内側の側面に、前記フェースプレート係合部としての貫通孔突起部を有し、
前記土台は、外周の側面に、前記貫通孔突起部を受け入れる前記土台係合部としての受け部を有し、
前記貫通孔に前記土台を挿し込んで前記土台を回転させることにより前記受け部に前記貫通孔突起部を進入させ、前記貫通孔突起部と前記受け部とを係合させることにより前記土台を固定することを特徴とする補聴器。
【請求項4】
請求項3に記載の補聴器において、
前記受け部は、前記受け部の入口に配置され前記土台の軸方向における高さが所定高さの回転止め部、及び、前記受け部の奥側に配置され前記土台の軸方向における高さが前記回転止め部よりも低い窪み部を有することを特徴とする補聴器。
【請求項5】
請求項2に記載の補聴器において、
前記土台は、外周の側面に、前記土台の外側に向かって突出した前記土台係合部としての土台突起部を有し、
前記フェースプレートは、前記シェルが取り付けられる面の前記貫通孔に接続した位置に、前記土台突起部を嵌め込み可能な形状の前記フェースプレート係合部としての切り欠き部を有し、
前記貫通孔に前記土台を挿し込んで前記土台を回転させることにより前記切り欠き部に前記土台突起部を嵌め込み、前記土台突起部と前記切り欠き部とを係合させることにより前記土台を固定することを特徴とする補聴器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の補聴器において、
前記土台は、前記土台を前記貫通孔に挿入する際の挿入側の端部とは反対側の端部に、前記土台を回転させるための治工具と嵌合可能な形状の土台嵌合部を有することを特徴とする補聴器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の補聴器において、
前記土台と前記貫通孔の周囲の前記フェースプレートとの間には、前記土台と一体に成型された又は前記土台とは別体の弾性部材が配置されていることを特徴とする補聴器。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の補聴器において、
前記土台は、光透過性の部材で形成されており、
前記土台の前記線状部材とは反対側の位置には発光部材が配置されていることを特徴とする補聴器。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の補聴器において、
前記線状部材は、一本の部材又はリング状の部材であることを特徴とする補聴器。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の補聴器に脱着可能な線状部材ユニットであって、
前記線状部材と、
前記土台と、
を備える線状部材ユニット。
【請求項11】
請求項1から9のいずれかに記載の補聴器に用いる治工具であって、
筒状形状の本体部と、
前記本体部の一方の端部に形成され、前記土台の端部の形状と嵌合可能な形状の治工具嵌合部と、
を備える治工具。
【請求項12】
請求項11記載の補聴器に用いる治工具において、
前記本体部は、前記本体部の他方の端部に、開口部を有し、前記治工具嵌合部から前記開口部までが繋がった空洞となっていることを特徴とする治工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補聴器、線状部材ユニット、及び、治工具に関する。
【背景技術】
【0002】
耳あな型補聴器の取り出し用の線状部材は、耳内から補聴器を取り出す手段として広く用いられている。一般的に取り出し用の線状部材は、オーダーメイド補聴器をより小さく作製するためなどの理由でフェースプレート(FP)に直接接着されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
上記のように取り出し用の線状部材は、耳あな型補聴器(オーダーメイド補聴器を含む)の耳からの取り出しのために補聴器に取り付けられた糸状の物である。
【0004】
一般的に上述の取り出し用の線状部材は、取り出しテグス、テグス、取り出しワイヤー、取り出しコード、引っ張り紐などと呼ばれ、ナイロンなどの化学繊維製の釣り糸状もの(例えばナイロンテグス)を用いる。
【0005】
一般的な耳あな型補聴器の取り出し用の線状部材(以下、線状部材)は、片側を補聴器のフェースプレート側に埋め込み、もう片側は線状部材にビーズを取り付けたり、線状部材の先端を溶かして丸めたりして引っ掛かりを作ったりして、使用者が把持しやすいようになっている。
【0006】
一方、特許文献2の図10には、フェースプレートに着脱可能な部品を取り付け、そこに紐を取り付けることで補聴器の取り出しを容易にする方法が開示されている。
また、特許文献3や特許文献4に示すように、電池ホルダに線状部材を取り付け、電池ホルダごと交換可能な構造が知られている。
【0007】
そして、上記の特許技術のうち、線状部材がリング状になったものはリングテグスと呼ばれている。1本テグスに比べて掴みやすいと考えられており、また仮にリングテグスの片側が切れてしまったとしても、補聴器販売店へ修理依頼するまでの間は仮の1本テグスとして使用できることがメリットとしてあげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許6143343号公報
【特許文献2】特開2007-124022号公報
【特許文献3】特許4764887号公報
【特許文献4】特許6184295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
線状部材は、長期使用などにより破断する可能性がある。線状部材をオーダーメイド補聴器のフェースプレートに直接接着する場合、破断した際の修理にはフェースプレートからシェルを取り外す必要があり、医療機器の修理業の無い販売店では対応ができず、工場送付などで修理完了までに時間が掛かり、使用者は不便を強いられる。例えば、発送に1日、修理に1日、返送に1日かかるとすると、使用者は最低でも3日間、長ければ1週間程度の間、補聴器を使用することができなくなってしまう。
【0010】
特許文献2の技術は、着脱可能な線状部材構造の一例を開示しているが、同構造は使用者による使用中に簡単に外れて補聴器が耳内に残留してしまう恐れがある。
また、フェースプレートは、通常樹脂を成型して作成したプラスチック製であり、1mm程度の厚みである。このため、フェースプレートに非貫通の同構造を採用しても、補聴器引き出しのための強度担保は難しい。
【0011】
一方、電池ホルダを搭載した補聴器の場合には、特許文献3や特許文献4に示す構造により、電池ホルダに線状部材を取り付けることで、販売店での交換が可能になるが、充電式補聴器のような電池ホルダを持たない製品では採用できないため、線状部材構造や交換は、従来通りフェースプレートに埋め込む構造となっている。
【0012】
そこで本発明は、フェースプレートからシェルを取り外すことなく、容易に線状部材を交換することができる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するため以下の解決手段を採用する。なお、以下の解決手段はあくまで例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0014】
解決手段1:本解決手段の補聴器は、使用者の耳内に挿入されるシェルと、前記シェルに取り付けられ、貫通孔を有するフェースプレートと、取り出し用の線状部材と、前記線状部材が固定されており、前記貫通孔に脱着可能であり、前記線状部材専用の電気的要素を含んでいない土台と、を備える補聴器である。
【0015】
本解決手段によれば、線状部材が切れた場合、フェースプレートから土台を外して、切れた線状部材を新しい線状部材に交換することができ、フェースプレートからシェルを取り外すことなく、容易に線状部材を交換することができる。
【0016】
解決手段2:本解決手段の補聴器は、上述したいずれかの解決手段において、前記土台は、所定形状の土台係合部を有し、前記フェースプレートは、前記土台係合部と係合するフェースプレート係合部を有し、前記貫通孔に前記土台を挿し込んで前記土台を回転させ、前記土台係合部と前記フェースプレート係合部とを係合させることにより前記土台を固定することを特徴とする補聴器である。
【0017】
本解決手段によれば、土台係合部とフェースプレート係合部とによって簡単に土台を固定することができ、線状部材の交換時の作業性を向上させることができる。
【0018】
解決手段3:本解決手段の補聴器は、上述したいずれかの解決手段において、前記貫通孔は、内側の側面に、前記フェースプレート係合部としての貫通孔突起部を有し、前記土台は、外周の側面に、前記貫通孔突起部を受け入れる前記土台係合部としての受け部を有し、前記貫通孔に前記土台を挿し込んで前記土台を回転させることにより前記受け部に前記貫通孔突起部を進入させ、前記貫通孔突起部と前記受け部とを係合させることにより前記土台を固定することを特徴とする補聴器である。
【0019】
本解決手段によれば、貫通孔突起部と受け部とによって簡単に土台を固定することができ、線状部材の交換時の作業性を向上させることができる。
【0020】
解決手段4:本解決手段の補聴器は、上述したいずれかの解決手段において、前記受け部は、前記受け部の入口に配置され前記土台の軸方向における高さが所定高さの回転止め部、及び、前記受け部の奥側に配置され前記土台の軸方向における高さが前記回転止め部よりも低い窪み部を有することを特徴とする補聴器である。
【0021】
本解決手段によれば、貫通孔突起部を回転止め部の先にある窪み部に配置させることができ、回転止め部によって土台が不用意に回転してしまうことを防止することができる。
【0022】
解決手段5:本解決手段の補聴器は、上述したいずれかの解決手段において、前記土台は、外周の側面に、前記土台の外側に向かって突出した前記土台係合部としての土台突起部を有し、前記フェースプレートは、前記シェルが取り付けられる面の前記貫通孔に接続した位置に、前記土台突起部を嵌め込み可能な形状の前記フェースプレート係合部としての切り欠き部を有し、前記貫通孔に前記土台を挿し込んで前記土台を回転させることにより前記切り欠き部に前記土台突起部を嵌め込み、前記土台突起部と前記切り欠き部とを係合させることにより前記土台を固定することを特徴とする補聴器である。
【0023】
本解決手段によれば、土台突起部と切り欠き部とによって簡単に土台を固定することができ、線状部材の交換時の作業性を向上させることができる。
【0024】
解決手段6:本解決手段の補聴器は、上述したいずれかの解決手段において、前記土台は、前記土台を前記貫通孔に挿入する際の挿入側の端部とは反対側の端部に、前記土台を回転させるための治工具と嵌合可能な形状の土台嵌合部を有することを特徴とする補聴器である。
【0025】
本解決手段によれば、土台嵌合部が治工具と嵌合するため、治工具を利用して簡単に土台を脱着することができる。
【0026】
解決手段7:本解決手段の補聴器は、上述したいずれかの解決手段において、前記土台と前記貫通孔の周囲の前記フェースプレートとの間には、前記土台と一体に成型された又は前記土台とは別体の弾性部材が配置されていることを特徴とする補聴器である。
【0027】
本解決手段によれば、弾性部材によって、土台にはフェースプレート(貫通孔)から離れる方向に力が加わるため、弾性部材が回転止めや抜け止めの機能を果たし、土台が不用意に脱落してしまうことを防止することができる。
【0028】
解決手段8:本解決手段の補聴器は、上述したいずれかの解決手段において、前記土台は、光透過性の部材で形成されており、前記土台の前記線状部材とは反対側の位置には発光部材が配置されていることを特徴とする補聴器である。
【0029】
本解決手段によれば、土台を通して発光部材の発光を確認することができ、土台を窓部として利用することができる。
【0030】
解決手段9:本解決手段の補聴器は、上述したいずれかの解決手段において、前記線状部材は、一本の部材又はリング状の部材であることを特徴とする補聴器である。
【0031】
本解決手段によれば、線状部材が一本の部材であっても、リング状の部材であっても、線状部材が切れた場合には、フェースプレートからシェルを取り外すことなく、容易に線状部材を交換することができる。
【0032】
解決手段10:本解決手段の線状部材ユニットは、上述したいずれかの解決手段に記載の補聴器に脱着可能な線状部材ユニットであって、前記線状部材と、前記土台と、を備える線状部材ユニットである。
【0033】
本解決手段によれば、線状部材及び土台を備えた線状部材ユニットとすることができるため、上述した補聴器に適した線状部材ユニットを提供することができる。
【0034】
解決手段11:本解決手段の治工具は、上述したいずれかの解決手段に記載の補聴器に用いる治工具であって、筒状形状の本体部と、前記本体部の一方の端部に形成され、前記土台の端部の形状と嵌合可能な形状の治工具嵌合部と、を備える治工具である。
【0035】
本解決手段によれば、治工具嵌合部が土台と嵌合するため、治工具を利用して簡単に土台を脱着することができる。
【0036】
解決手段12:本解決手段の治工具は、上述したいずれかの解決手段において、前記本体部は、前記本体部の他方の端部に、開口部を有し、前記治工具嵌合部から前記開口部までが繋がった空洞となっていることを特徴とする治工具である。
【0037】
本解決手段によれば、本体部の空洞に線状部材を通すことができるので、線状部材の長さが本体部の全長よりも長い場合であっても、問題なく治工具を使用することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、フェースプレートからシェルを取り外すことなく、容易に線状部材を交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】第1実施形態の補聴器100を示す斜視図である。
図2】第1実施形態のフェースプレート20、線状部材ユニット30及びOリング70を示す斜視図である。
図3】第1実施形態のフェースプレート20、線状部材ユニット30及びOリング70を示す分解斜視図である。
図4】第1実施形態の線状部材交換用土台50を示す斜視図である。
図5】第1実施形態の治工具80を示す斜視図である。
図6】第1実施形態の治工具80の使用方法を示す図である。
図7】第2実施形態のフェースプレート20-2、線状部材ユニット30-2及びOリング70を表面側から見た状態を示す分解斜視図である。
図8】第2実施形態のフェースプレート20-2、線状部材ユニット30-2及びOリング70を裏面側から見た状態を示す分解斜視図である。
図9】第2実施形態のフェースプレート20-2、線状部材ユニット30-2及びOリング70の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態の補聴器100を示す斜視図である。図2は、第1実施形態のフェースプレート20、線状部材ユニット30及びOリング70を示す斜視図である。図3は、第1実施形態のフェースプレート20、線状部材ユニット30及びOリング70を示す分解斜視図である。
図1に示すように、第1実施形態の補聴器100は、シェル10と、フェースプレート20と、線状部材ユニット30と、Oリング70とを備えている。
【0041】
シェル10は、使用者の耳内に挿入される部材である。フェースプレート20は、シェル10に取り付けられ、貫通孔21を有する部材である。貫通孔21は、線状部材取り付け用の孔である。なお、図示したフェースプレート20はいずれも充電池式補聴器で用いることを意図したフェースプレートであるため電池ホルダを備えていないが、電池交換式補聴器用で電池ホルダを備えたフェースプレートであっても良い。
【0042】
線状部材ユニット30は、線状部材40と、線状部材交換用土台50と、把持部60とを備えている。線状部材40は、使用者の耳内に挿入された補聴器100を取り出すための取り出し用の線状部材である。線状部材40は、長さ約10mmである。なお、線状部材40の長さは、これに限られず、長さの異なる線状部材40を備えた線状部材ユニット30のバリエーションを用意してもよい。その場合には工場出荷時だけでなく、後述する治工具80(図5参照)を用いることで、補聴器販売・調整現場にてすぐに線状部材ユニット30を交換することができる。
【0043】
線状部材交換用土台50は、貫通孔21に脱着可能であり、線状部材40専用の電気的要素を含んでいない樹脂製の土台である。「線状部材40専用」とは、主に、線状部材40を取り付けるために用いられるという意味である。また、「電気的要素を含んでいない」とは、電気的な配線や、電気部品、電池ホルダなどを含んでいないという意味である。線状部材交換用土台50には、線状部材40が挿入されて固定されている。線状部材交換用土台50の素材は、目立ちにくいことを鑑みてフェースプレート20と同一の素材(同色)とすることが好ましい。
【0044】
把持部60は、線状部材40の先端に配置され、補聴器100を耳内から引っ張る際に滑らずに力が十分に伝わるようにする目的で使用される。把持部60は、例えば、線状部材40の先端にビーズを付けることで実施してもよいし、線状部材40の先端を熱などで溶かして玉状にしてもよい。
【0045】
〔Oリング(弾性部材)〕
図2及び図3に示すように、Oリング70は、線状部材交換用土台50と貫通孔21の周囲のフェースプレート20との間に挟み込まれて配置された弾性部材である。Oリング70を挟み込んで固定することで、回転後の線状部材交換用土台50は、常にフェースプレート20から離れる方向に力を受ける。
【0046】
Oリング70は、フェースプレート20と線状部材交換用土台50との間のシーリングの役割も担っており、フェースプレート20の表面から電子部品などを備える補聴器100の内部に液体が侵入するのを防ぐ防水性を担保する役割と、補聴器100のシェル10の内部にあるレシーバー(イヤホン)からの音が、フェースプレート20の表面に備えられているマイクロホンに漏れ入って帰還することを防ぐ遮音性を担保する役割の両方の役割を兼ね備えている。また、Oリング70により、線状部材交換用土台50がフェースプレート20に押し付けられることで、線状部材40をひねっても、線状部材交換用土台50が回転せずフェースプレート20から脱落することを防ぐ。
【0047】
Oリング70は、ゴム製の部材である。このため、シーリングの役割を担保し続けるためには、一定期間ごと(例えば2~3年毎)にOリング70を交換することが好ましい。Oリング70は、線状部材交換用土台50とは別体としてもよく、線状部材交換用土台50と一体で成型されていてもよい。なお、Oリング70の代わりに、中心に孔の開いたゴムシートを用いてもよい。
【0048】
このように、第1実施形態の補聴器100では、線状部材40をフェースプレート20ではなく別のパーツ(線状部材交換用土台50)に接着して、そのパーツをフェースプレート20に脱着可能な構造で組み込んでいる。
【0049】
〔貫通孔(フェースプレートの線状部材取り付け孔)〕
図3に示すように、フェースプレート20には、貫通孔21が形成されている。貫通孔21は、フェースプレート20の表面から裏面に貫通して形成されている。貫通孔21の形状は円形であり、貫通孔21の直径は、例えば、直径2.2mmである。線状部材交換用土台50が樹脂製であり、その肉厚を考慮すると、必要な強度を保つことや安定して生産するためには直径2.2mm程度が最小となると考えられる。貫通孔21を大きくすることは可能であるが、フェースプレート20のサイズが大きくなり、延いては補聴器100自体の大きさが大きくなることにつながってしまう。
【0050】
貫通孔21は、内側の側面(円環内部の側面)に2つの貫通孔突起部22を有する。2つの貫通孔突起部22は、貫通孔21の内部の対称となる位置に配置されている。貫通孔突起部22は、線状部材交換用土台50を固定するための突起である。貫通孔突起部22の大きさ(貫通孔21の内周面から中心に向けた突出量)は、例えば、0.3mm程度である。線状部材交換用土台50が樹脂製であり、その肉厚を考慮すると、必要な強度を保つことや安定して生産するためには0.3mm程度が最小となると考えられる。貫通孔突起部22を大きくすることは可能であるが、貫通孔21やフェースプレート20のサイズが大きくなり、延いては補聴器100自体の大きさが大きくなることにつながってしまう。なお、貫通孔突起部22の幅(貫通孔突起部22の付け根の円弧の長さ)は、例えば、0.5mm程度である。貫通孔突起部22は、後述する窪み部53(図4参照)に嵌り込む形状となっている。
【0051】
また、線状部材交換用土台50は、下段部の外周の側面に、2つの貫通孔突起部22を受け入れる2つの受け部51を有する。2つの受け部51は、それぞれ貫通孔突起部22に対応する位置に形成されている。なお、図3では、手前側の1つの受け部51だけが表示されている。
そして、貫通孔21に線状部材交換用土台50を挿し込んで線状部材交換用土台50を回転させることにより受け部51に貫通孔突起部22を進入させ、貫通孔突起部22と受け部51とを係合させることにより線状部材交換用土台50を固定する。
【0052】
線状部材交換用土台50は、所定形状の土台係合部(受け部51)を有し、フェースプレート20は、土台係合部(受け部51)と係合するフェースプレート係合部(貫通孔突起部22)を有し、貫通孔21に線状部材交換用土台50を挿し込んで線状部材交換用土台50を回転させ、土台係合部(受け部51)とフェースプレート係合部(貫通孔突起部22)とを係合させることにより線状部材交換用土台50を固定する。なお、土台係合部は、突起であっても窪みであってもよく、フェースプレート係合部も同様に、突起であっても窪みであってもよい(以下、同様)。
【0053】
〔線状部材交換用土台〕
図4は、第1実施形態の線状部材交換用土台50を示す斜視図である。
線状部材交換用土台50は、線状部材交換用土台50の下段部に設けられた受け部51と、線状部材交換用土台50の中段部に設けられた円環状部54と、線状部材交換用土台50の上段部に設けられた土台嵌合部55と、線状部材交換用土台50の中心に貫通して設けられた線状部材交換用土台貫通孔56とを備えている。
【0054】
受け部51は、回転止め部52と、窪み部53とを備えている。受け部51は、線状部材交換用土台50の側面に形成された逆L字型の突起と捉えることもでき、線状部材交換用土台50の側面に形成された窪みと捉えることもできる。
回転止め部52は、受け部51の入口に配置され線状部材交換用土台50の軸方向(図中上下方向)における高さが所定高さの部分である。
窪み部53は、受け部51の奥側に配置され線状部材交換用土台50の軸方向(図中上下方向)における高さが回転止め部52よりも低い部分である。
線状部材交換用土台50は、回転させる際に、貫通孔突起部22(図3参照)が回転止め部52を乗り越え、窪み部53に嵌り込んで固定される。
【0055】
線状部材交換用土台50は、フェースプレート20の貫通孔21(図3参照)に挿し込んで、例えば、時計回りに所定角度(例えば90度)回転させる。所定角度(回転角)は、貫通孔突起部22(図3参照)の形状やサイズによって変動する。フェースプレート20の貫通孔突起部22が、回転止め部52を乗り越える分だけ回転させる角度が最小回転角になる。このため、「最小回転角=回転止め部52の外形角θ1+窪み部53の外形角θ2(貫通孔突起部22の外形角)」となる。
【0056】
線状部材交換用土台50に回転方向の力が掛かった際には、回転止め部52の形状が、フェースプレート20の貫通孔突起部22に接触するようになり、回転止めの効果を発揮する。また、回転止め部52の形状に対して固定を解く方向の回転方向の力が掛かった際にも、フェースプレート20の貫通孔突起部22と回転止め部52の形状が干渉するようになり、回転止めの効果を発揮する。
【0057】
一方、後述する治工具80(図5参照)を用いて線状部材交換用土台50をフェースプレート20の方向に力を働かせつつ回転させると、Oリング70(図3参照)がつぶれることでフェースプレート20の貫通孔突起部22と回転止め部52の形状との干渉が無くなり、フェースプレート20と線状部材交換用土台50との固定を解くことができ、線状部材交換用土台50を外したり付け替えたりすることが可能となる。
【0058】
図4に示すように、円環状部54は、受け部51の上部に配置され、受け部51や土台嵌合部55よりも外側に突出しており、下面でOリング70(図3参照)を挟み込むようになっている。
【0059】
土台嵌合部55は、円環状部54の上部に配置され(線状部材交換用土台50を貫通孔21(図3参照)に挿入する際の挿入側の端部(受け部51の底面)とは反対側の端部に配置され)、線状部材交換用土台50を回転させるための治工具80(図5参照)と嵌合可能な形状を有する。
土台嵌合部55の形状は、八角形であるが、この形状には限らない。土台嵌合部55の形状は、多角形やパスカルの三角形、楕円形や扇形のような形状などでもよい。
【0060】
線状部材交換用土台貫通孔56は、線状部材交換用土台50の中心に形成された貫通孔であり、この線状部材交換用土台貫通孔56に線状部材40(図3参照)が挿入されて固定される。線状部材交換用土台50に線状部材40を固定する際には、線状部材交換用土台貫通孔56に上から線状部材40を通し、線状部材40の下側の先端を火であぶり、丸い玉止め(玉形状)をつくり、線状部材40を上から引っ張って、玉止め付近を接着剤などで固定する。
【0061】
〔治工具〕
図5は、第1実施形態の治工具80を示す斜視図である。
治工具80は、補聴器100に用いる治工具であって、本体部81と、治工具嵌合部82とを備えている。
本体部81は、筒状形状の部材である。治工具嵌合部82は、本体部81の一方の端部(図5中、左下の端部)に形成され、線状部材交換用土台50の土台嵌合部55(図4参照)の形状と嵌合可能な形状(線状部材交換用土台の上側形状と一致する形状)を有する。例えば、線状部材交換用土台50の土台嵌合部55(図4参照)が八角形の凸型であれば、治工具嵌合部82は、その八角形形状と嵌合する凹型の形状となる。土台嵌合部55が多角形やパスカルの三角形、楕円形や扇形のような形状などである場合も同様に、治工具嵌合部82は、それらの形状と嵌合する凹型の形状とする。
【0062】
また、本体部81は、本体部81の他方の端部(図5中、右上の端部)に、開口部83(図6参照)を有し、治工具嵌合部82から開口部83までが繋がった空洞となっている。
【0063】
上述したように、線状部材40の長さはバリエーションを持たせることができるため、治工具80の他方の端部(図5中、右上の端部)は、開口部83となっていることが好ましい。これにより、治工具80の全長よりも長い線状部材40の場合にも同一の治工具80にて対応することが可能となる。治工具80は、それほど大きくないため、治工具80が線状部材交換用土台50の土台嵌合部55としっかり嵌合し、線状部材交換用土台50の脱着のために十分な力を加えられる大きさであることが必要となる。そのため、本体部81の筒形状の外面は、円筒形状でも角筒形状でもよいが、脱着のために十分な力を加えられる大きさであることが必要となる。また、本体部81の筒形状の外面に切り欠きや凹凸部が形成されていてもよい。
【0064】
図6は、第1実施形態の治工具80の使用方法を示す図である。
フェースプレート20に線状部材交換用土台50(線状部材ユニット30)を取り付ける場合、まず、図6(A)に示すように、線状部材交換用土台50とフェースプレート20との間にOリング70を挟み込みながら、フェースプレート20の貫通孔21に、線状部材交換用土台50の下段部分を挿入する。
【0065】
ついで、図6(B)に示すように、線状部材交換用土台50の土台嵌合部55に、治工具80の治工具嵌合部82を、上側から被せて嵌合させる(図中矢印X参照)。
さらに、この状態で、治工具80を時計回りに所定角度(例えば90度)回転させる(図中矢印Y参照)。この際、Oリング70を押しつぶしながら治工具80を回転させる。
【0066】
そして、このような動作によって、受け部51(図4参照)に貫通孔突起部22(図3参照)を進入させ、貫通孔突起部22と受け部51とを係合させることにより線状部材交換用土台50を固定することができる。
最後に、フェースプレート20にシェル10(図1参照)を取り付け、シェル10からはみ出しているフェースプレート20の余分な部分をカットする(削る)ことにより、フェースプレート20をシェル10の外形に沿った形状とし、図1に示す補聴器100が完成する。
【0067】
フェースプレート20に線状部材交換用土台50を取り付けるタイミングは、貫通孔21から削りカスやゴミなどが進入する可能性を考慮して、フェースプレート20の余分な部分をカットする前であることが好ましい。
【0068】
そして、補聴器100の使用中に線状部材40が切れた場合には、治工具80を用いてフェースプレート20から線状部材ユニット30を外し、新しい線状部材ユニット30に交換することができる。線状部材40が切れる場合、線状部材40の接着部は残っていることが多いことから、線状部材40だけではなく、線状部材ユニット30ごと交換する。
そして、このような構造は、フェースプレート20に対して線状部材40の容易な着脱を可能としつつ、シェルサイズやシェルモデリングへの影響は少なく、最終的な補聴器100の大きさが大きくなる懸念を少なくすることができる。
【0069】
以上説明したように、第1実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)第1実施形態によれば、フェースプレート20に線状部材40を取り付ける形状の補聴器(オーダーメイド補聴器を含む)において、フェースプレート20からシェル10を取り外すことなく線状部材40の交換が容易に可能であり、かつ、弾性部材(Oリング70)による防水性・遮音性を備えた構造を実現することができる。
【0070】
(2)第1実施形態によれば、別途用意する治工具80により少し力を加えて押し込んで回転させるだけで交換が可能で作業性もよいため、線状部材40の破断の修理が販売店で対応可能となり、工場に送るなどの修理時間を大幅に短縮できる。また、線状部材40の長さ変更なども、販売店で容易に対応できるようになる。なお、フェースプレート20から線状部材交換用土台50(線状部材ユニット30)を取り外す場合には、取り付け手順と逆の手順で行うことができる。
【0071】
(3)第1実施形態によれば、フェースプレート20を貫通させる貫通孔21を採用しているため、貫通孔21からの汗の侵入などに対する防水性の懸念や、シェル10の内部からの音漏れによるハウリングの発生に対する遮音性の懸念も生じるが、線状部材交換用土台50及びOリング70によって、線状部材40を簡単に交換可能な構造と防水性・遮音性とを両立させることができる。
【0072】
(4)第1実施形態によれば、線状部材40が切れた場合、フェースプレート20から線状部材ユニット30を外して、切れた線状部材40を新しい線状部材40に交換することができ、フェースプレート20からシェル10を取り外すことなく、容易に線状部材40を交換することができる。
【0073】
(5)第1実施形態によれば、貫通孔突起部22と受け部51とによって簡単に線状部材交換用土台50を固定することができ、線状部材40の交換時の作業性を向上させることができる。
【0074】
(6)第1実施形態によれば、土台係合部(受け部51)とフェースプレート係合部(貫通孔突起部22)とによって簡単に線状部材交換用土台50を固定することができ、線状部材40の交換時の作業性を向上させることができる。
【0075】
(7)第1実施形態によれば、貫通孔突起部22を回転止め部52の先にある窪み部53に配置させることができ、回転止め部52によって線状部材交換用土台50が不用意に回転してしまうことを防止することができる。
【0076】
(8)第1実施形態によれば、土台嵌合部55が治工具80と嵌合するため、治工具80を利用して簡単に線状部材交換用土台50を脱着することができる。
【0077】
(9)第1実施形態によれば、Oリング70によって、線状部材交換用土台50にはフェースプレート20から離れる方向に力が加わるため、Oリング70が回転止めや抜け止めの機能を果たし、線状部材交換用土台50が不用意に脱落してしまうことを防止することができる。
【0078】
(10)第1実施形態によれば、線状部材40及び線状部材交換用土台50を備えた線状部材ユニット30とすることができるため、補聴器100に適した線状部材ユニット30を提供することができる。
【0079】
(11)第1実施形態によれば、治工具嵌合部82が線状部材交換用土台50と嵌合するため、治工具80を利用して簡単に線状部材交換用土台50を脱着することができる。
【0080】
(12)第1実施形態によれば、本体部81の空洞に線状部材40を通すことができるので、線状部材40の長さが本体部81の全長よりも長い場合であっても、問題なく治工具80を使用することができる。
【0081】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、第1実施形態と同様の内容については説明を省略する。図7は、第2実施形態のフェースプレート20-2、線状部材ユニット30-2及びOリング70を表面側から見た状態を示す分解斜視図である。図8は、第2実施形態のフェースプレート20-2、線状部材ユニット30-2及びOリング70を裏面側から見た状態を示す分解斜視図である。図9は、第2実施形態のフェースプレート20-2、線状部材ユニット30-2及びOリング70の断面図である。なお、図8及び図9のフェースプレート裏面側に位置する電池や電池切片など及びその他の溝や突起などは、本発明の説明に特化するために省略した。
【0082】
第1実施形態と第2実施形態との異なる点は、主に、線状部材交換用土台50-2の下段部の形状が異なる点と、フェースプレート20-2の貫通孔21-2の形状が異なる点である。
図7に示すように、第2実施形態の線状部材交換用土台50-2は、下段部の外周の側面に、線状部材交換用土台50-2の外側に向かって突出した2つの土台突起部57を有する。2つの土台突起部57は、線状部材交換用土台50-2の外周の側面の対称となる位置に形成されている。
【0083】
また、第2実施形態の貫通孔21-2は、2つの土台突起部57を通過させられるように、1つの円形状と1つの棒形状とを重ねた形状となっている。土台突起部57の上面の形状は、後述する切り欠き部23(図8参照)の内面の形状に沿った形状となっている。
なお、第2実施形態の貫通孔21-2の内側の側面には、第1実施形態のような貫通孔突起部22(図3参照)が形成されていない。
【0084】
図8に示すように、第2実施形態のフェースプレート20-2は、シェル10(図1参照)が取り付けられる面Sの貫通孔21-2に接続した位置に、土台突起部57(図7参照)を嵌め込み可能な形状の切り欠き部23を有する。第2実施形態の貫通孔21-2及び切り欠き部23を裏面から見ると、1つの円形状と交差した2つの棒形状とを重ねた形状となっている。
【0085】
そして、図9に示すように、貫通孔21-2に線状部材交換用土台50-2を挿し込んで線状部材交換用土台50-2を回転させることにより切り欠き部23に土台突起部57を嵌め込み、土台突起部57と切り欠き部23とを係合させることにより線状部材交換用土台50-2を固定する。
【0086】
線状部材交換用土台50-2は、所定形状の土台係合部(土台突起部57)を有し、フェースプレート20-2は、土台係合部(土台突起部57)と係合するフェースプレート係合部(切り欠き部23)を有し、貫通孔21-2に線状部材交換用土台50-2を挿し込んで線状部材交換用土台50-2を回転させ、土台係合部(土台突起部57)とフェースプレート係合部(切り欠き部23)とを係合させることにより線状部材交換用土台50-2を固定する。
【0087】
このように、第2実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、土台突起部57と切り欠き部23とによって簡単に線状部材交換用土台50-2を固定することができ、線状部材40の交換時の作業性を向上させることができるという効果がある。
また、第2実施形態によれば、土台係合部(土台突起部57)とフェースプレート係合部(切り欠き部23)とによって簡単に線状部材交換用土台50-2を固定することができ、線状部材40の交換時の作業性を向上させることができるという効果がある。
【0088】
本発明は、上述した各実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することができる。
(1)線状部材交換用土台を光透過性の部材で形成し、線状部材交換用土台の線状部材とは反対側の位置に(線状部材交換用土台の下や、フェースプレートの内部などに)、LED(発光部材)を配置してもよい。このようにすれば、線状部材交換用土台を通してLEDの発光を確認することができ、線状部材交換用土台をLED用の窓部として利用することができる。
例えば、充電池式の補聴器で特定の状態を知らせるLEDインジケーターがフェースプレートの内部に備わっている場合には、光透過性の線状部材交換用土台を通じてLEDインジケーターの発光状態を視認することが可能となる。
【0089】
(2)線状部材は、一本テグス(一本の部材)であってもよく、リングテグス(リング状の部材)であってもよい。一本テグスであってもリングテグスであっても、線状部材交換用土台に連結することにより、線状部材が切れた場合には、フェースプレートからシェルを取り外すことなく、容易に線状部材を交換することができる。なお、リングテグスの場合、線状部材交換用土台は、一本テグスよりも若干大きいサイズにすることができる。また、リングテグスの場合、大きさを大きくした1つの線状部材交換用土台貫通孔を形成してもよく、大きさを維持した2つの交換用土台貫通孔を形成してもよい。
【0090】
(3)第1実施形態の貫通孔突起部22は、安定して抜け止めとして機能させるためには、2箇所以上必要になると考えられる。ただし、大きな貫通孔突起部22であれば(例えば、貫通孔21の内周面の半分以上を占める突起部であれば)、1箇所であってもよい。
【0091】
(4)第2実施形態の貫通孔21-2は、円形状でなくてもよい。第2実施形態の貫通孔21-2は、線状部材交換用土台50-2を取り付けて固定でき、かつ、線状部材40を引っ張り、補聴器100を耳から繰り返し取り外すことに対して十分な強度を備えていればよい。例えば、第2実施形態の貫通孔21-2は、多角形やパスカルの三角形、楕円形や扇形のような形状でもよい。その場合には、貫通孔の形状に挿入可能な形状を備え、かつ、土台突起部や線状部材交換用土台自体の形状によって固定可能な形状を備えた線状部材交換用土台を用いることができる。
【0092】
(5)各実施形態の補聴器には、線状部材を設けない土台を用いることもできる。例えば出力が大きい大型の補聴器などの線状部材が無くても耳から取り外すことが容易な耳あな型補聴器の場合には、補聴器の使用者の好みにより線状部材を設けない土台を用いることができる。
【0093】
(6)線状部材交換用土台は、上述した治工具を用いずに、その他の工具(例えばペンチ)で回転させてもよい。ただし、その他の工具で回転させることにより、樹脂製の線状部材交換用土台が破損してしまう恐れがある場合には、上述した治工具を用いることが好ましい。
【0094】
(7)補聴器、線状部材ユニット、治工具は、それぞれ単独で販売してもよく、いずれか2つを組み合わせて販売してもよく、全てを組み合わせて販売してもよい。
【符号の説明】
【0095】
10 シェル
20 フェースプレート
20-2 フェースプレート
21 貫通孔
21-2 貫通孔
23 切り欠き部
30 線状部材ユニット
40 線状部材
50 線状部材交換用土台
50-2 線状部材交換用土台
51 受け部
52 貫通孔突起部
53 窪み部
54 円環状部
55 土台嵌合部
56 線状部材交換用土台貫通孔
60 把持部
70 Oリング
80 治工具
81 本体部
82 治工具嵌合部
83 開口部
100 補聴器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9