(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153896
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】中子用樹脂組成物および焼結体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/40 20170101AFI20221005BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20221005BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221005BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20221005BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20221005BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20221005BHJP
B22F 3/16 20060101ALI20221005BHJP
B22F 10/40 20210101ALI20221005BHJP
B22F 10/16 20210101ALI20221005BHJP
【FI】
B29C64/40
B29C64/118
B33Y10/00
B33Y70/00
B28B1/30
B22F9/00 B
B22F3/16
B22F10/40
B22F10/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056663
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】594050784
【氏名又は名称】第一セラモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】和田 誠
(72)【発明者】
【氏名】小谷 知誉
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和幸
【テーマコード(参考)】
4F213
4G052
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AA11
4F213AA13
4F213AA19
4F213AA21
4F213AB16
4F213AB23
4F213AC01
4F213AG27
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL23
4F213WL25
4F213WL62
4G052DA01
4G052DA08
4G052DB12
4G052DC06
4K017AA04
4K017AA08
4K017BA04
4K017BA06
4K017BB04
4K017BB06
4K017CA07
4K017DA07
4K018AA33
4K018AD06
4K018BA04
4K018BA17
4K018BB04
4K018BD04
(57)【要約】
【課題】焼結体の内部に空洞部を形成することができる中子用の樹脂組成物を提供する。
【解決手段】実施形態に係る中子用樹脂組成物は、無機粉末と有機バインダーを含有する焼結体用組成物を用いて3次元プリンタにより積層構造体を造形し、該積層構造体を脱脂し焼結して焼結体を製造する際に、焼結体の内部に空洞部を形成するための中子の材料として用いられる。中子用樹脂組成物は、架橋ポリマー粒子(A)と、熱可塑性樹脂(B1)を含む有機バインダー(B)と、を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粉末と有機バインダーを含有する焼結体用組成物を用いて3次元プリンタにより積層構造体を造形し、前記積層構造体を脱脂し焼結して焼結体を製造する際に、前記焼結体の内部に空洞部を形成するための中子の材料として用いられる樹脂組成物であって、
架橋ポリマー粒子(A)と、熱可塑性樹脂(B1)を含む有機バインダー(B)と、を含有する中子用樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂(B1)が、前記架橋ポリマー粒子(A)の熱分解温度よりも低い熱分解温度を持つ熱可塑性樹脂(B10)を含む、請求項1に記載の中子用樹脂組成物。
【請求項3】
前記架橋ポリマー粒子(A)が、前記焼結体用組成物の前記有機バインダーに含まれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂の熱分解温度よりも高い熱分解温度を持つ、請求項1または2に記載の中子用樹脂組成物。
【請求項4】
前記架橋ポリマー粒子(A)が、前記積層構造体を脱脂する際の最高温度よりも低い熱分解温度を持つ、請求項1~3のいずれか1項に記載の中子用樹脂組成物。
【請求項5】
前記架橋ポリマー粒子(A)と前記有機バインダー(B)との質量比が、(A)/(B)=100/35~100/105である、請求項1~4のいずれか1項に記載の中子用樹脂組成物。
【請求項6】
大気中1000℃の加熱条件での残渣が0.1質量%未満である、請求項1~5のいずれか1項に記載の中子用樹脂組成物。
【請求項7】
セラミックス、サーメットまたは金属からなる焼結体の製造方法であって、
無機粉末と有機バインダーを含有する焼結体用組成物を用いて3次元プリンタにより積層構造体を造形すること、請求項1~6のいずれか1項に記載の中子用樹脂組成物を用いて3次元プリンタにより中子を造形すること、前記積層構造体の内部に中子が配置された状態で前記積層構造体を前記中子とともに加熱して脱脂すること、および、脱脂した前記積層構造体を焼結して内部に空洞部を持つ焼結体を得ること、を含む焼結体の製造方法。
【請求項8】
前記焼結体用組成物と前記中子用樹脂組成物を用いて3次元プリンタにより前記積層構造物とともに前記積層構造体の内部に配置された前記中子を造形する、請求項7に記載の焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、焼結体の内部に空洞部を形成するため中子の材料として用いられる中子用樹脂組成物、およびそれを用いた焼結体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス製品や金属製品を3次元プリンタにより製造する技術として、材料押出積層法(MEX)(熱溶融積層法:FDMとも称される。)が知られている。例えば、特許文献1には、セラミックス粉末や金属粉末などの無機粉末に有機バインダーを添加して作製した三次元プリンタ用コンパウンドを用いて、材料押出積層方式の3次元プリンタにより積層構造体を造形し、その後、脱脂、焼結することにより、焼結体を得ることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内部に空洞部を持つ焼結体を得るために材料押出積層方式の3次元プリンタで積層構造体を造形する場合、溶融材料を吐出するノズルが移動する造形パスをブリッジ(橋)状に描くことにより空洞部を形成することができる。しかしながら、その場合、重力により吐出材料の垂れ下がりが発生する。また、造形後の脱脂時に積層構造体が軟化することで空洞部において垂れ下がりが発生することがある。そのため、垂れ下がりが生じないように空洞部の形状を支える中子を用いることが考えられる。そのような中子としては、3次元プリンタにより積層構造体とともに造形され、造形後の脱脂ないし焼結工程において除去されることが望ましい。
【0005】
本発明の実施形態は、以上の点に鑑み、3次元プリンタによる積層構造体を脱脂、焼結して焼結体を製造する際に焼結体の内部に空洞部を形成することができ、脱脂に適した中子が得られる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] 無機粉末と有機バインダーを含有する焼結体用組成物を用いて3次元プリンタにより積層構造体を造形し、前記積層構造体を脱脂し焼結して焼結体を製造する際に、前記焼結体の内部に空洞部を形成するための中子の材料として用いられる樹脂組成物であって、架橋ポリマー粒子(A)と、熱可塑性樹脂(B1)を含む有機バインダー(B)と、を含有する中子用樹脂組成物。
[2] 前記熱可塑性樹脂(B1)が、前記架橋ポリマー粒子(A)の熱分解温度よりも低い熱分解温度を持つ熱可塑性樹脂(B10)を含む、[1]に記載の中子用樹脂組成物。
[3] 前記架橋ポリマー粒子(A)が、前記焼結体用組成物の前記有機バインダーに含まれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂の熱分解温度よりも高い熱分解温度を持つ、[1]または[2]に記載の中子用樹脂組成物。
[4] 前記架橋ポリマー粒子(A)が、前記積層構造体を脱脂する際の最高温度よりも低い熱分解温度を持つ、[1]~[3]のいずれか1項に記載の中子用樹脂組成物。
[5] 前記架橋ポリマー粒子(A)と前記有機バインダー(B)との質量比が、(A)/(B)=100/35~100/105である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の中子用樹脂組成物。
[6] 大気中1000℃の加熱条件での残渣が0.1質量%未満である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の中子用樹脂組成物。
[7] セラミックス、サーメットまたは金属からなる焼結体の製造方法であって、無機粉末と有機バインダーを含有する焼結体用組成物を用いて3次元プリンタにより積層構造体を造形すること、[1]~[6]のいずれか1項に記載の中子用樹脂組成物を用いて3次元プリンタにより中子を造形すること、前記積層構造体の内部に中子が配置された状態で前記積層構造体を前記中子とともに加熱して脱脂すること、および、脱脂した前記積層構造体を焼結して内部に空洞部を持つ焼結体を得ること、を含む焼結体の製造方法。
[8] 前記焼結体用組成物と前記中子用樹脂組成物を用いて3次元プリンタにより前記積層構造体とともに前記積層構造体の内部に配置された前記中子を造形する、[7]に記載の焼結体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態に係る中子用樹脂組成物であると、熱可塑性樹脂を含む有機バインダーとともに架橋ポリマー粒子を配合したことにより、脱脂時における垂れ下がりを抑えて焼結体の内部に空洞部を形成することができ、脱脂に適した中子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(A)は実施例における積層構造体の平面図であり、(B)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態に係る中子用樹脂組成物は、架橋ポリマー粒子(A)と、熱可塑性樹脂(B1)を含む有機バインダー(B)と、を含有するものであり、無機粉末と有機バインダーを含有する焼結体用組成物を用いて3次元プリンタにより積層構造体を造形し、該積層構造体を脱脂し焼結して焼結体を製造する際に、焼結体の内部に空洞部を形成するための中子の材料として用いられる。中子を設けることにより、空洞部となる積層構造体の内壁面を中子によりサポートすることができ、造形時の垂れ下がりを防ぐことができる。
【0010】
また、脱脂は積層構造体を加熱することにより積層構造体中の有機バインダーを熱分解させて除去する工程であり、脱脂中には積層構造体に含まれる熱可塑性樹脂が軟化することにより積層構造体は変形しやすくなる一方で、脱脂が終了に近づくにつれて積層構造体には中子がなくてもその形状を維持可能な強度が付与される。本実施形態によれば、中子に架橋ポリマー粒子(A)を用いており、架橋ポリマー粒子(A)は熱可塑性樹脂とは異なり、加熱により可塑化しないため、脱脂工程において変形しやすい積層構造体をサポートすることができ、積層構造体の変形を抑制することができる。また、中子を構成する架橋ポリマー粒子(A)および有機バインダー(B)は有機物であるため、脱脂工程ないし焼結工程において加熱分解により除去することができる。
【0011】
架橋ポリマー粒子(A)は、架橋構造を有する樹脂微粒子であり、例えば、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ウレタン樹脂粒子、架橋スチレン樹脂粒子などが挙げられ、これらはいずれか1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0012】
架橋アクリル樹脂粒子は、(メタ)アクリル酸エステル単量体を主たる構成単位(構成単位の50質量%以上。以下同じ。)として有する架橋粒子である。架橋アクリル樹脂粒子としては、例えば、架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル、架橋ポリ(メタ)アクリル酸エチル、架橋ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、架橋ポリ(メタ)アクリル酸ブチルなどの架橋ポリ(メタ)アクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数は好ましくは4以下である。)などの粒子が挙げられ、スチレンなどの他の単量体を共重合成分として含む架橋アクリルコポリマー粒子でもよい。ここで、「(メタ)アクリレート」はアクリレートまたはメタクリレートを表し、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸またはメタクリル酸を表す。
【0013】
架橋ウレタン樹脂粒子は、ウレタン結合および/またはウレア結合を有するウレタン樹脂で構成される架橋粒子である。架橋スチレン樹脂粒子は、スチレン系単量体を主たる構成単位として有する架橋粒子である。
【0014】
架橋ポリマー粒子(A)は、球状の粒子であること、すなわち架橋ポリマービーズであることが好ましく、より好ましくは真球状の粒子である。架橋ポリマー粒子(A)の平均粒子径は、特に限定されないが、1~200μmであることが好ましく、より好ましくは1~50μmであり、さらに好ましくは1~30μmである。本明細書において、平均粒子径は、コールターカウンター(例えば、ベックマン・コールター株式会社から販売されている精密粒度分布測定装置)を用いて求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
【0015】
架橋ポリマー粒子(A)は、後述する焼結体用組成物の有機バインダー(D)に含まれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂の熱分解温度よりも高い熱分解温度を持つことが好ましい。すなわち、焼結体用組成物の有機バインダー(D)には1種または複数種の熱可塑性樹脂が含まれるが、架橋ポリマー粒子(A)は、そのうちの少なくとも1種の熱可塑性樹脂よりも熱分解温度が高いことが好ましい。このように熱分解温度が高いことにより、焼結体用組成物により造形された積層構造体を脱脂する際に当該積層構造体が変形しなくなる温度までサポートすることができ、積層構造体の変形を効果的に抑えることができる。
【0016】
架橋ポリマー粒子(A)の熱分解温度は、積層構造体を脱脂する際の最高温度よりも低いことが好ましい。これにより、積層構造体の脱脂工程において架橋ポリマー粒子(A)を熱分解により除去することができる。
【0017】
架橋ポリマー粒子(A)の熱分解温度は、200~600℃であることが好ましく、より好ましくは230~550℃であり、さらに好ましくは250~500℃である。本明細書において、熱分解温度の測定方法は、示差熱分析装置 (例えば、株式会社リガクから販売されている熱重量分析/示差熱分析測定装置)を用いて、直径5mm×高さ2.5mmのアルミパンで、200mL/minの空気フロー下で、10℃/minの温度上昇で測定し、全減量の50質量%の値を熱分解温度とすることによって求めることができる。
【0018】
中子用樹脂組成物に含まれる有機バインダー(B)は、熱可塑性樹脂(B1)を含む。熱可塑性樹脂(B1)としては、例えば、アクリル系樹脂、アタクチックポリスチレン(アタクチックPS)、ポリカーボネート(PC)、アモルファスポリオレフィン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)などの非結晶性ポリマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)などの結晶性ポリマーが挙げられる。これらはいずれか1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0019】
これらの中でも、熱可塑性樹脂(B1)としては、非結晶性ポリマーおよびEVAから選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂(B11)を用いることが好ましく、当該熱可塑性樹脂(B11)を主成分として、EVAを除く結晶性ポリマーから選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂(B12)を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
熱可塑性樹脂(B1)に含まれる上記熱可塑性樹脂(B11)の比率は特に限定されないが、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上である。
【0021】
上記熱可塑性樹脂(B11)としては、アクリル系樹脂、アタクチックPS、アモルファスポリオレフィン、およびEVAからなる群から選択される2種類以上を用いることが好ましい。より好ましくは、アクリル系樹脂と、アタクチックPS、アモルファスポリオレフィンおよびEVAからなる群から選択される少なくとも1種とを用いることである。
【0022】
上記熱可塑性樹脂(B12)としては、PPおよび/またはPOMを用いることが好ましい。
【0023】
中子用樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂(B1)は、後述する焼結体用組成物に用いる熱可塑性樹脂と同種であることが好ましい。そのため、焼結体用組成物の無機粉末として金属酸化物粉末などのセラミックス粉末、またはサーメット粉末を用いる場合、熱可塑性樹脂(B1)としては、アクリル系樹脂とアタクチックPSを併用することが好ましく、これにEVAおよび/またはアモルファスポリオレフィンを組み合わせてもよく、より好ましくはアクリル系樹脂、アタクチックPSおよびEVAの三者を併用することである。これらの質量比は、アクリル系樹脂100質量部に対して、アタクチックPSが20~100質量部であることが好ましく、30~80質量部であることがより好ましい。また、EVAを用いる場合、アクリル系樹脂100質量部に対して、5~200質量部であることが好ましく、10~50質量部であることがより好ましい。
【0024】
また、焼結体用組成物の無機粉末として金属粉末を用いる場合、熱可塑性樹脂(B1)としては、アクリル系樹脂とEVAを併用することが好ましく、さらにアタクチックPSおよび/またはPPを組み合わせることが好ましい。これらの質量比は、アクリル系樹脂100質量部に対して、EVAが10~200質量部であることが好ましく、より好ましくは80~150質量部であり、アタクチックPSが0~200質量部、より好ましくは50~150質量部であり、PPが0~200質量部、より好ましくは30~100質量部である。
【0025】
アクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1~8のアルコールのエステルである(メタ)アクリル酸エステルの重合体、(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体などが挙げられる。アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、例えば1万~35万程度でもよく、2万~10万程度でもよい。本明細書において、重量平均分子量の測定方法は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて求めることができる。
【0026】
(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、アルキル基の炭素数が1~8のn-アルキル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中では、メチル(メタ)アクリレートやn-ブチル(メタ)アクリレートのようなアルキル基の炭素数が1~4のn-アルキル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、およびイソブチル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体としては、例えば、特開2000-303103号公報に記載されているような、エチレン-酢酸ビニル共重合体またはエチレン-エチルアクリレート共重合体と、(メタ)アクリル酸エステル単独、または(メタ)アクリル酸エステルおよびスチレン系単量体の混合物と、重合開始剤からなる溶液を、分散剤を含む水系媒体中に分散させて懸濁重合させてなる複合アクリル系樹脂が挙げられる。
【0028】
アタクチックPSとしては、重量平均分子量(Mw)が10万~30万程度のものを用いることが好ましく、15万~25万程度のものを用いることがより好ましい。
【0029】
EVAとしては、結晶化度の低いもの(例えば、結晶化度が25%以下のもの)を使用することがより好ましい。EVAの結晶化度は、酢酸ビニル(VA)含量と相関するため、好ましいEVAとして、例えば、酢酸ビニル含量(質量百分率:JISK7192:1999)が20%~50%、より好ましくは25%~40%のEVAが挙げられる。また、重量平均分子量が3万~12万程度のものを用いることが好ましく、5万~10万程度のものを用いることがより好ましい。
【0030】
PPとしては、重量平均分子量が10万~40万程度のものを用いることが好ましく、より好ましくは20万~30万程度のものを用いることである。
【0031】
熱可塑性樹脂(B1)としては、架橋ポリマー粒子(A)の熱分解温度よりも低い熱分解温度を持つ熱可塑性樹脂(B10)を用いることが好ましい。このように架橋ポリマー粒子(A)の熱分解温度が高いことにより、積層構造体を脱脂する際に当該積層構造体が変形しなくなる温度までサポートすることができ、脱脂工程における積層構造体の変形を効果的に抑えることができる。複数種の熱可塑性樹脂(B1)を用いる場合、全ての熱可塑性樹脂(B1)が上記熱可塑性樹脂(B10)でもよいが、架橋ポリマー粒子(A)の熱分解温度以上の熱分解温度を持つ熱可塑性樹脂(B100)が一部含まれてもよい。その場合、熱可塑性樹脂(B1)の30質量%以上が上記熱可塑性樹脂(B10)であることが好ましく、より好ましくは熱可塑性樹脂(B1)の35質量%以上であり、40~70質量%が上記熱可塑性樹脂(B10)でもよい。
【0032】
有機バインダー(B)中に含まれる熱可塑性樹脂(B1)の含有割合は、特に限定されないが、3次元プリンタによる造形時における糸曳き(溶融した組成物を吐出するノズルを積層造形後に次の積層位置まで移動させる際の糸曳き)の抑制、および脱脂工程での変形抑制等の観点から、35~85質量%であることが好ましく、より好ましくは40~80質量%である。
【0033】
上記有機バインダー(B)は、中子用樹脂組成物の流動性を向上させるためにワックス(B2)を含むことが好ましい。ワックス(B2)としては、合成系でもよく、天然系でもよく、その具体例としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ミツロウ、カルナバワックス、モンタンワックス、ポリアルキレングリコール等が挙げられ、これらはいずれか1種または2種以上組み合わせて用いることができる。有機バインダー(B)中に含まれるワックス(B2)の含有割合は、特に限定されず、7~40質量%でもよく、7~35質量%でもよく、10~30質量%でもよく、15~25質量%でもよい。
【0034】
上記有機バインダー(B)は、中子用樹脂組成物の流動性を向上させるために滑剤(B3)を含んでもよい。滑剤(B3)の具体例としては、脂肪酸およびその誘導体(エステル、アミドなど)が挙げられ、これらはいずれか1種または2種以上組み合わせて用いることができる。好ましい滑剤としては、ステアリン酸及びそのエステル(例えば、モノステアリン酸ソルビタン)が挙げられる。有機バインダー(B)中に含まれる滑剤(B3)の含有割合は、特に限定されず、0~18質量%でもよく、0~16質量%でもよく、0~15質量%でもよい。
【0035】
上記有機バインダー(B)は、その他の添加剤(B4)を含んでもよい。その他の添加剤(B4)としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、紫外線吸収剤、造核剤等が挙げられる。
【0036】
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)、安息香酸グリコールエステル、リン酸エステル等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤が挙げられる。
【0037】
中子用樹脂組成物において、架橋ポリマー粒子(A)と有機バインダー(B)との質量比は、(A)/(B)=100/35~100/105であることが好ましい。架橋ポリマー粒子(A)100質量部に対して、有機バインダー(B)が35質量部以上であることにより、3次元プリンタによる積層造形時に、中子用樹脂組成物の流動性を高めることができ、また中子用樹脂組成物同士の接着性を高め、さらに中子用樹脂組成物と焼結体用組成物との接着性を高めることができ、3次元プリンタによる造形性を向上することができる。また有機バインダー(B)が105質量部以下であることにより、脱脂工程におけるサポート性を向上することができる。より好ましい質量比は(A)/(B)=100/40~100/100であり、さらに好ましくは(A)/(B)=100/45~100/95である。
【0038】
中子用樹脂組成物は、焼結工程後に残渣が残らないように、大気中1000℃の加熱条件での残渣(加熱残渣)が0.1質量%未満であることが好ましく、より好ましくは0.05質量%未満である。これにより、焼結工程後における空洞部内の残渣を低減することができる。特に空洞部として密閉空間を形成する場合、焼結後に空洞部内の残渣を除去することはできない。そのため、加熱残渣は極力少ないことが好ましい。このように加熱残渣を低減ないし無くすためには、中子用樹脂組成物に含まれる無機元素の量を低減し無機元素が含まれないようにすればよい。例えば、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)を用いた標準添加法による無機元素の含有量が0.1質量%未満であることが好ましく、より好ましくは0.05質量%未満である。ここで、無機元素とは、酸素、炭素、水素および窒素以外の元素であり、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、硫黄など、焼結後に残渣として残る元素をいう。
【0039】
中子用樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、架橋ポリマー粒子(A)と有機バインダー(B)を溶融混練して調製することができる。溶融混練に用いる混練機としては、例えば加圧型ニーダー、双腕ニーダー式混練機、バンバリー型混練機、1軸または2軸混練押出機などが挙げられる。
【0040】
中子用樹脂組成物の形状は特に限定されないが、一実施形態としてペレット状でもよく、例えば、混練後の押し出されてきた溶融物をロータリーカッターにより空気中でペレット状にカットすることでペレット化されてもよい。
【0041】
本実施形態に係る中子用樹脂組成物は、セラミックス、サーメットまたは金属などの無機材料からなる焼結体を製造するために焼結体用組成物を用いて3次元プリンタにより積層構造体を造形する際の中子の材料として用いられる。
【0042】
焼結体用組成物としては無機粉末(C)と有機バインダー(D)を含有するものが用いられ、特に限定するものではないが、一実施形態として上記特許文献1に記載のものを用いることができる。
【0043】
詳細には、無機粉末(C)としては、例えば、金属粉末、セラミックス粉末、サーメット粉末が挙げられる。金属粉末の具体例としては、純鉄、鉄-ニッケル、鉄-コバルト、鉄-シリコン、ステンレススチールなどの鉄系合金、タングステン、アルミニウム合金、銅、銅合金などの粉末が挙げられる。セラミックス粉末としては、Al2O3、BeO、ZrO2などの酸化物、TiC、ZrC、B4C、炭化タングステン(WC)などの炭化物、CrB、ZrB2などのホウ化物、TiN、ZrNなどの窒化物などの粉末が挙げられる。サーメット粉末としては、超硬合金(WC-Co系合金など)、Al2O3-Fe系、TiC-Ni系、TiC-Co系、B4C-Fe系などの粉末が挙げられる。これらはいずれか1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0044】
無機粉末(C)の平均粒子径は、特に限定されず、例えば0.05~30μmでもよく、0.1~10μmでもよい。本明細書において、無機粉末(C)の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法(マイクロトラック粒子径測定装置:MT3100II)を用いて求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
【0045】
有機バインダー(D)は、熱可塑性樹脂(D1)を含み、さらにワックス(D2)、滑剤(D3)、その他の添加剤(D4)を含んでもよい。焼結体用組成物からなる積層構造体と中子用樹脂組成物からなる中子との脱脂パターンを合わせるために、焼結体用組成物の有機バインダー(D)と中子用樹脂組成物の有機バインダー(B)は同じ成分からなることが好ましい。
【0046】
熱可塑性樹脂(D1)としては、中子用樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂(B1)と同様、例えば、アクリル系樹脂、アタクチックPS、PC、アモルファスポリオレフィン、ABSなどの非結晶性ポリマー、EVA、PE、PP、POM、PA、PBT、PET、PLAなどの結晶性ポリマーが挙げられる。上記のように、焼結体用組成物に用いる熱可塑性樹脂(D1)と中子用樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂(B1)は同じ成分であることが好ましく、そのため、熱可塑性樹脂(D1)として好ましい樹脂、その組合せは、熱可塑性樹脂(B1)について説明したとおりである。
【0047】
一例として、無機粉末(C)として金属酸化物粉末などのセラミックス粉末、またはサーメット粉末を用いる場合、熱可塑性樹脂(D1)としては、アクリル系樹脂とアタクチックPSを併用することが好ましく、これにEVAおよび/またはアモルファスポリオレフィンを組み合わせてもよく、より好ましくはアクリル系樹脂、アタクチックPSおよびEVAの三者を併用することである。これらの質量比は、アクリル系樹脂100質量部に対して、アタクチックPSが20~100質量部であることが好ましく、30~80質量部であることがより好ましい。また、EVAを用いる場合、アクリル系樹脂100質量部に対して、5~200質量部であることが好ましく、7~100質量部であることがより好ましく、10~50質量部であることが更に好ましい。
【0048】
また、無機粉末(C)として金属粉末を用いる場合、熱可塑性樹脂(D1)としては、アクリル系樹脂とEVAを併用することが好ましく、さらにアタクチックPSおよび/またはPPを組み合わせることが好ましい。これらの質量比は、アクリル系樹脂100質量部に対して、EVAが30~200質量部であることが好ましく、より好ましくは80~150質量部であり、アタクチックPSが0~200質量部、より好ましくは50~150質量部であり、PPが0~200質量部、より好ましくは30~100質量部である。
【0049】
ワックス(D2)、滑剤(D3)およびその他の添加剤(D4)についても、その具体例および含有割合などは、中子用樹脂組成物に用いるワックス(B2)、滑剤(B3)およびその他の添加剤(B4)について説明したとおりである。
【0050】
焼結体用組成物において、無機粉末(C)と有機バインダー(D)の質量比は、(C)/(D)=100/3~100/30であることが好ましい。例えば、無機粉末(A)がセラミックス粉末である場合、該質量比は、(A)/(B)=100/10~100/25であることが好ましく、より好ましくは100/12~100/20である。無機粉末(A)が金属粉末またはサーメット粉末である場合、該質量比は、(A)/(B)=100/3~100/13であることが好ましく、より好ましくは100/4~100/10である。
【0051】
実施形態に係る中子用樹脂組成物は、焼結体用組成物を用いて3次元プリンタにより積層構造体を造形する際に、3次元プリンタにより空洞形成用の中子を造形するために用いられる。そのため、実施形態に係る焼結体の製造方法は、焼結体用組成物を用いて3次元プリンタにより積層構造体を造形すること、中子用樹脂組成物を用いて3次元プリンタにより中子を造形すること、積層構造体の内部に中子が配置された状態で積層構造体を中子とともに加熱して脱脂すること、および、脱脂した積層構造体を焼結して内部に空洞部を持つ焼結体を得ること、を含んでもよい。
【0052】
好ましくは、中子は、積層構造体の内部に配置されるように3次元プリンタにより積層構造体とともに造形され、造形後の脱脂ないし焼結工程において加熱分解される加熱分解型の中子であり、焼結体の内部に空洞部を形成することができる。従って、好ましい一実施形態に係る焼結体の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)上記の中子用樹脂組成物と焼結体用組成物を用いて、3次元プリンタにより中子とともに積層構造体を造形する工程、
(2)積層構造体を中子とともに加熱して脱脂する工程、および、
(3)脱脂した積層構造体を焼結する工程。
【0053】
3次元プリンタとしては、例えば、成形材料を加熱して流動化させ、ノズルから吐出して積層しながら3次元構造体を造形することができるものを用いることができ、材料押出積層方式(MEX)(熱溶融積層方式:FDM)の各種3次元プリンタが挙げられる。
【0054】
工程(1)では、複数のノズルを備えた3次元プリンタを用いて、焼結体用組成物と中子用樹脂組成物をそれぞれ加熱により流動化させて各ノズルから吐出しながら、焼結体用組成物により積層構造体を、中子用樹脂組成物により中子を、それぞれデータに基づいて積層造形する。これにより、積層構造体の内部において空洞部となるべき部位に中子が配置された積層構造体が得られ、造形時における積層構造体の内壁面の垂れ下がりを抑制することができる。一実施形態において、空洞部として外部から遮断された密閉空間を形成する場合、中子は積層構造体の表面に現れないように積層構造体内に埋没した状態に形成される。
【0055】
焼結体用組成物および中子用樹脂組成物を流動化させる際の加熱温度は、これら組成物を熱分解させることなく流動化させることができれば特に限定されず、例えば100~200℃でもよい。
【0056】
工程(2)では、このようにして得られた中子を有する積層構造体を加熱して脱脂する。脱脂工程は、通常、有機物を熱分解により除去する工程であるため、積層構造体に含まれる有機バインダー(D)、中子に含まれる架橋ポリマー粒子(A)および有機バインダー(B)についても熱分解により除去される。なお、架橋ポリマー粒子(A)は、その後の焼結工程において消失させることができれば、脱脂工程後に残存していてもよいが、好ましくは脱脂工程後に消失していることである。
【0057】
脱脂工程において、積層構造体に含まれる熱可塑性樹脂(D1)が軟化することにより積層構造体は変形しやすくなる。その一方で、脱脂工程が終了に近づくにつれて積層構造体には中子がなくてもその形状を維持可能な強度が付与される。本実施形態によれば、中子に用いた架橋ポリマー粒子(A)が加熱により可塑化しないため、脱脂工程において積層構造体が変形しにくくなる温度まで積層構造体の内壁面をサポートすることができ、その垂れ下がりを抑制することができる。また中子を構成する架橋ポリマー粒子(A)および有機バインダー(B)は脱脂工程ないし焼結工程において加熱分解により除去することができるので、中子の取り外し工程も不要である。
【0058】
脱脂条件は、積層構造体に含まれる無機粉末(C)の種類等に応じて適宜設定することができる。例えば、無機粉末(C)がジルコニアやアルミナなどのセラミックス粉末の場合は、大気中で昇温速度5~20℃/hで450~550℃前後まで昇温することにより脱脂を行ってもよい。無機粉末(C)が金属粉末の場合、不活性ガス雰囲気で昇温速度5~20℃/hで450~550℃前後まで昇温することにより脱脂を行ってもよい。
【0059】
工程(3)では、脱脂工程後の積層構造体を焼結する。焼結条件は、無機粉末(C)の種類等に応じて適宜設定することができる。例えば、無機粉末(C)がジルコニアやアルミなどのセラミックス粉末の場合は、大気中で昇温速度40~120℃/hで1300~1700℃まで昇温して焼結を行ってもよい。無機粉末が金属粉末やサーメット粉末の場合、不活性ガス雰囲気で昇温速度40~160℃/hで温度1300~1400℃まで昇温して焼結を行ってもよい。
【0060】
このようにして焼結が行われることにより、セラミックス、サーメットまたは金属からなる焼結体が得られる。
【0061】
本実施形態であると、上記のような中子を用いたことにより、3次元プリンタによる造形時だけでなく、脱脂時においてもサポートを行うことができる。また、焼結後には、中子が熱分解により消失することで、中子形状に対応した空洞部を焼結体の内部に形成することができる。そのため、密閉で複雑な形状の空洞部についても形成可能である。
【0062】
なお、上述した配合量や粘度をはじめとする種々の数値範囲は、それぞれそれらの上限値と下限値を任意に組み合わせることができ、それら全ての組み合わせが好ましい数値範囲として本明細書に記載されているものとする。
【実施例0063】
以下、実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
<使用原料>
実施例および比較例で使用した原料は以下のとおりである。
【0065】
[架橋ポリマー粒子]
・架橋アクリル樹脂粒子1:積水化成品工業株式会社製「MBX-20」(平均粒子径:20μm、熱分解温度:270℃)
・架橋アクリル樹脂粒子2:積水化成品工業株式会社製「MBX-30」(平均粒子径:30μm、熱分解温度:270℃)
・架橋アクリル樹脂粒子3:積水化成品工業株式会社製「SSX-102」(平均粒子径:2μm、熱分解温度:270℃)
・架橋アクリル樹脂粒子4:根上工業株式会社製「架橋アクリルビーズJ-6PF」(平均粒子径:4μm、熱分解温度:270℃)
・架橋アクリル樹脂粒子5:根上工業(株)製「架橋アクリルビーズSE-020T」(平均粒子径:20μm、熱分解温度:300℃)
・架橋ウレタン樹脂粒子:根上工業株式会社製「架橋ウレタンビーズC-400T」(平均粒子径:15μm、熱分解温度:320℃)
・架橋スチレン樹脂粒子:積水化成品工業株式会社製「SBX-12」(平均粒子径:12μm、熱分解温度:300℃)
【0066】
[熱可塑性樹脂]
・アクリル系樹脂:メタクリル酸n-ブチル、重量平均分子量5万、熱分解温度250℃
・アタクチックPS:重量平均分子量19万、熱分解温度350℃
・EVA:酢酸ビニル含量28質量%、重量平均分子量7万、熱分解温度400℃
・PP:重量平均分子量24万、熱分解温度250℃
【0067】
[ワックス]
・パラフィンワックス:分子量472、融点70℃
[滑剤]
・ステアリン酸:分子量284
[その他の添加剤]
・可塑剤:4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)、分子量394
【0068】
[無機粉末]
・アルミナ粉末:BET比表面積は6m2/g、平均粒子径D50は0.52μm
・ジルコニア粉末:Y2O3を3モル%含むイットリア部分安定化ジルコニア粉末、BET比表面積は15m2/g、平均粒子径D50は0.15μm
・ステンレス粉末:SUS316L、平均粒子径D50は7.1μm、タップ密度4.6g/cm3)
・WC-Co粉末:平均粒子径D50は1.4μm
【0069】
<焼結体用組成物の調製>
下記表1に記載の配合(質量部)に従い、焼結体用組成物を調製した。詳細には、加圧型ニーダーを用いて表1に記載の成分を170℃で溶融混練し、得られた溶融物からペレタイザー型プランジャー押出機を用いてペレットを作製した。
【0070】
【0071】
<中子用樹脂組成物の調製>
下記表2に記載の配合(質量部)に従い、中子用樹脂組成物を調製した。詳細には、加圧型ニーダーを用いて表2に記載の成分を170℃で溶融混練し、得られた溶融物からペレタイザー型プランジャー押出機を用いてペレットを作製した。
【0072】
得られた中子用樹脂組成物について、加熱残渣を測定した。加熱残渣は、中子用樹脂組成物を、大気中1000℃で2時間加熱し、加熱前の質量に対する加熱後の質量の比を加熱残渣(質量%)として算出した。
【0073】
<3次元プリンタによる積層構造体の造形>
空洞部(流路)を設けた焼結体を作製するために、上記で作製した焼結体用組成物と中子用樹脂組成物の各ペレットを用いて、
図1に示す内部に中子を配置した積層構造体を3次元プリンタにより造形した。
【0074】
詳細には、ペレット投入口として第1投入口と第2投入口を有する押出装置を備えたMEX方式の3次元プリンタ(エス.ラボ株式会社製CERA#P3 造形範囲X150mm×Y150mm×Z150mm、スクリュー径φ20mm)を使用し、第1投入口には焼結体用組成物、第2投入口には中子用樹脂組成物を投入した。焼結体用組成物と中子用樹脂組成物をそれぞれノズルから吐出しながら、焼結体用組成物からなる積層構造体と中子用樹脂組成物からなる中子とを含む3次元構造体を積層造形した。作製した3次元構造体は、
図1に示す50mm×50mm×厚さ6mmの積層構造体の内部に幅10mm×高さ2mmの十字状の中子が一体となったものである。ノズル径:1.0mm、ノズル温度:150~190℃、積層ピッチ0.2mm、造形速度:2000mm/minとした。焼結体用組成物と中子用樹脂組成物との組合せは表2に示すとおりである。
【0075】
中子用樹脂組成物の評価として積層造形時の接着性を評価した。接着性の評価は、積層造形時に中子用樹脂組成物同士で接着性があるかないか、また、中子用樹脂組成物が焼結体用組成物に対して接着性があるかないか、について行った。判定基準は以下のとおりである。
○:中子用樹脂組成物同士の接着性、および中子用樹脂組成物と焼結体用組成物との接着性がともに良好である。
△:中子用樹脂組成物が焼結体用組成物に対して接着不良が起きる。
×:中子用樹脂組成物同士で接着不良が起きる
【0076】
<積層構造体の脱脂>
上記で得られた中子を備える3次元構造体について、脱脂を行った。その際、積層構造体の無機粉末としてアルミナ粉末、ジルコニア粉末を用いたものについては大気中で昇温速度10℃/hで500℃まで昇温して脱脂を行った。積層構造体の無機粉末としてSUS粉末、WC-Co粉末を用いたものについては窒素ガス雰囲気中で昇温速度10℃/hで500℃まで昇温して脱脂を行った。
【0077】
<積層造形体の焼結>
上記の積層構造体の脱脂後に焼結を行った。積層構造体の無機粉末としてアルミナ粉末を用いたものについては、大気中で昇温速度100℃/hで最高温度1600℃まで昇温し、1600℃で2時間キープするパターンで焼成した。ジルコニア粉末を用いたものについては、大気中で昇温速度100℃/hで最高温度1350℃まで昇温し、1350℃で2時間キープするパターンで焼成した。積層構造体の無機粉末としてSUS粉末を用いたものについては、真空中で昇温速度150℃/hで1000℃まで昇温し、1000℃からはアルゴン雰囲気下で昇温速度150℃/hで1350℃まで昇温し、1350℃で2時間キープするパターンで焼成した。WC-Co粉末を用いたものについては、真空中で昇温速度150℃/hで1000℃まで昇温し、1000℃からはアルゴン雰囲気下で昇温速度150℃/hで1390℃まで昇温し、1390℃で2時間キープするパターンで焼成した。
【0078】
中子によるサポート性の評価として、焼結後に空洞部が正確に形成されているか否かを評価した。評価は、脱脂前の形状から空洞部の上壁が下方にどれだけ変形したかを測定した。判定基準は以下のとおりである。
○:焼結後の変形が0.5mm以下である。
△:焼結後に0.5mm超2mm未満の変形が見られる。
×:焼結後に空洞部の上壁が底面についており2mm以上の変形が見られる。
【0079】
脱脂後に中子用樹脂組成物の残渣量を測定し、脱脂前の中子用樹脂組成物に対する残渣分の質量比を求めた。
【0080】
【0081】
結果は表2に示すとおりであり、中子用樹脂組成物に架橋ポリマー粒子を配合していない比較例1,2であると、脱脂・焼結時における中子によるサポート性が損なわれており、空洞部に変形が見られた。これに対し、中子用樹脂組成物に架橋ポリマー粒子と有機バインダーを配合した実施例1~10であると、積層造形時における接着性に優れるとともに、脱脂・焼結時における中子によるサポート性に優れており、内部に空洞部を有する焼結体を製造することができた。また、実施例1~10であると、脱脂後の残渣分が少なく、優れた消滅性となる中子を製造することができた。
【0082】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。