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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153919
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
B41J2/14 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056694
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祥爾
(72)【発明者】
【氏名】市川 翔平
(72)【発明者】
【氏名】中野 靖大
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AK07
2C057AM17
2C057AN01
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】選択信号のラッチタイミングに起因する吐出乱れを抑制しつつ高速記録を実現する。
【解決手段】プリンタのASICは、波形信号FIRE及び選択信号SINを出力する出力回路と、波形信号FIRE及び選択信号SINをドライバICに転送する転送回路とを有する。ドライバICは、2つのD-フリップフロップを有し、吐出周期毎に、1つのD-フリップフロップにより選択信号SINをラッチ(1stラッチ)した後、もう1つのD-フリップフロップにより選択信号SINを再度ラッチ(2ndラッチ)する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルと、
前記ノズルから液体を吐出させるための圧力を付与するアクチュエータと、
前記アクチュエータの複数の駆動態様を示す波形信号、及び、前記複数の駆動態様の中から1つを選択するための選択信号を、前記ノズルから液体を吐出させる周期である吐出周期毎に出力する出力回路と、
前記出力回路が出力した前記波形信号及び前記選択信号に基づいて、前記複数の駆動態様の中から選択された駆動態様を示す駆動信号を、前記吐出周期毎に前記アクチュエータに供給する駆動回路と、
前記出力回路から受信した前記波形信号及び前記選択信号を、前記吐出周期毎に前記駆動回路に転送する転送回路と、を備え、
前記駆動回路は、
前記吐出周期毎に、前記転送回路から転送された前記選択信号をラッチする第1ラッチ回路と、
前記吐出周期毎に、前記転送回路から転送された前記選択信号を、前記第1ラッチ回路によるラッチの後にラッチする第2ラッチ回路と、を有することを特徴とする、液体吐出装置。
【請求項2】
前記駆動回路は、
前記選択信号の転送開始時点から遅延時間の経過後に前記波形信号の転送を開始させる第1遅延回路と、
前記第2ラッチ回路に前記選択信号をラッチさせるためのラッチデータを前記遅延時間に応じて遅延させる第2遅延回路と、をさらに有することを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記波形信号は、前記複数の駆動態様をそれぞれ示す複数の波形データを直列化したシリアル信号であり、
前記第2ラッチ回路に前記選択信号をラッチさせるためのラッチデータは、前記波形信号における前記複数の波形データが使用されない領域に設けられたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記波形信号は、前記複数の駆動態様をそれぞれ示す複数の波形データを直列化したシリアル信号であり、
前記第2ラッチ回路に前記選択信号をラッチさせるためのラッチデータは、前記波形信号における、前記複数の波形データのうち、当該波形データに含まれる1又は複数のパルスの最初の立上りから最後の立下りまでの時間が最も長い波形データの、前記最後の立下りの後に設けられたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記転送回路は、前記波形信号及び前記選択信号を前記駆動回路に転送する前に、前記第2ラッチ回路に前記選択信号をラッチさせるためのラッチデータを含むラッチ信号を前記駆動回路に転送し、
前記第2ラッチ回路は、前記吐出周期毎に、前記複数の波形データのうち前記ラッチ信号が示す波形データに含まれる、前記ラッチ信号が示すパルスの後に、前記選択信号をラッチすることを特徴とする、請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタ(液体吐出装置)は、ノズルと、アクチュエータと、信号生成回路(出力回路)と、ドライバIC(駆動回路)と、信号送受信回路(転送回路)とを備えている。信号生成回路は、吐出周期毎に波形信号FIRE、波形選択信号SIN等を生成し、これらを信号送受信回路に出力する。信号送受信回路は、信号生成回路から受信した波形信号FIRE、波形選択信号SIN等を吐出周期毎にドライバICに転送する。ドライバICは、転送回路から転送された波形信号及び選択信号に基づいて、複数の駆動態様の中から選択された駆動態様を示す駆動信号を吐出周期毎にアクチュエータに供給する。またドライバICは、信号送受信回路から転送された選択信号をラッチするラッチ回路(第1ラッチ回路)を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-167466号公報(図3図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1の吐出周期において、波形信号の転送中に、選択信号の転送が終了して選択信号がラッチされると、ラッチされた選択信号が当該吐出周期の1つ前の吐出周期の選択信号と入れ替わり、吐出乱れが生じ得る。当該問題を抑制するため、1の吐出周期において、波形信号の転送終了時点から待機時間の経過後に、選択信号の転送が終了しかつ選択信号がラッチされる構成にすることが考えられる。待機時間は、例えば、転送回路とドライバICとの同期タイミングを考慮して設定される。
【0005】
しかしながら、上記のように待機時間を設けると、吐出周期の長さがその分長くなり、高速記録を実現することができない。
【0006】
本発明の目的は、選択信号のラッチタイミングに起因する吐出乱れを抑制しつつ高速記録を実現できる液体吐出装置を提供することにある。
【0007】
本発明に係る液体吐出装置は、ノズルと、前記ノズルから液体を吐出させるための圧力を付与するアクチュエータと、前記アクチュエータの複数の駆動態様を示す波形信号、及び、前記複数の駆動態様の中から1つを選択するための選択信号を、前記ノズルから液体を吐出させる周期である吐出周期毎に出力する出力回路と、前記出力回路が出力した前記波形信号及び前記選択信号に基づいて、前記複数の駆動態様の中から選択された駆動態様を示す駆動信号を、前記吐出周期毎に前記アクチュエータに供給する駆動回路と、前記出力回路から受信した前記波形信号及び前記選択信号を、前記吐出周期毎に前記駆動回路に転送する転送回路と、を備え、前記駆動回路は、前記吐出周期毎に、前記転送回路から転送された前記選択信号をラッチする第1ラッチ回路と、前記吐出周期毎に、前記転送回路から転送された前記選択信号を、前記第1ラッチ回路によるラッチの後にラッチする第2ラッチ回路と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1ラッチ回路により選択信号をラッチした後、第2ラッチ回路により選択信号を再度ラッチする。これにより、波形信号の転送中に選択信号の転送が終了し、第1ラッチ回路により選択信号がラッチされても、その後第2ラッチ回路により選択信号が再度ラッチされることで、上記のような吐出乱れが生じ難い。したがって、吐出乱れを抑制するために、1の吐出周期において、波形信号の転送終了時点から待機時間の経過後に、選択信号の転送が終了しかつ選択信号がラッチされる構成を採用する必要がない。つまり、待機時間を設ける必要がないため、吐出周期が長くならず、高速記録を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係るプリンタを示す平面図である。
図2】プリンタに含まれるヘッドの断面図である。
図3】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
図4】波形信号FIREに含まれる4種類の波形データを示す波形図である。
図5】ドライバIC の電気的構成を示すブロック図である。
図6】波形信号FIRE及び選択信号SINが転送回路からドライバICに転送される過程を示す説明図であり、(a)は本発明の第1実施形態、(b)は従来技術に該当する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1実施形態に係るプリンタ100は、図1に示すように、下面に複数のノズルNが形成されたヘッド10と、ヘッド10を保持するキャリッジ20と、キャリッジ20を走査方向(鉛直方向と直交する方向)に移動させる移動機構30と、用紙Pを下方から支持するプラテン40と、用紙Pを搬送方向(走査方向及び鉛直方向と直交する方向)に搬送する搬送機構50と、制御装置90とを備えている。
【0011】
移動機構30は、キャリッジ20を支持する一対のガイド31,32と、キャリッジ20に連結されたベルト33とを含む。ガイド31,32及びベルト33は、走査方向に延びている。制御装置90の制御によりキャリッジモータ30m(図3参照)が駆動されると、ベルト33が走行し、ガイド31,32に沿ってキャリッジ20が走査方向に移動する。
【0012】
プラテン40は、キャリッジ20及びヘッド10の下方に配置されている。プラテン40の上面に、用紙Pが載置される。
【0013】
搬送機構50は、2つのローラ対51,52を有する。搬送方向においてローラ対51とローラ対52との間に、ヘッド10、キャリッジ20及びプラテン40が配置されている。制御装置90の制御により搬送モータ50m(図3参照)が駆動されると、ローラ対51,52が用紙Pを挟持した状態で回転し、用紙Pが搬送方向に搬送される。
【0014】
ヘッド10は、図2に示すように、流路ユニット12と、アクチュエータユニット13とを含む。
【0015】
流路ユニット12の下面に、複数のノズルN(図1参照)が形成されている。流路ユニット12の内部には、インクタンク(図示略)に連通する共通流路12aと、ノズルN毎に個別の個別流路12bとが形成されている。個別流路12bは、共通流路12aの出口から圧力室12pを経てノズルNに至る流路である。流路ユニット12の上面には、複数の圧力室12pが開口している。
【0016】
アクチュエータユニット13は、流路ユニット12の上面に複数の圧力室12pを覆うように配置された金属製の振動板13aと、振動板13aの上面に配置された圧電層13bと、圧電層13bの上面に複数の圧力室12pのそれぞれと対向するように配置された複数の個別電極13cとを含む。
【0017】
振動板13a及び複数の個別電極13cは、ドライバIC14と電気的に接続されている。ドライバIC14は、本発明の「駆動回路」に該当し、振動板13aの電位をグランド電位に維持する一方、個別電極13cの電位を変化させる。具体的には、ドライバIC14は、制御装置90からの制御信号(後述する波形信号FIRE、選択信号SIN、クロック信号CLK等)に基づいて駆動信号を生成し、信号線14sを介して当該駆動信号を吐出周期(ノズルNからインクを吐出させる周期)毎に個別電極13cに供給する。これにより、個別電極13cの電位が所定の駆動電位とグランド電位との間で変化する。このとき、振動板13a及び圧電層13bにおいて各個別電極13cと各圧力室12pとで挟まれた部分(アクチュエータ13x)が変形することにより、圧力室12pの容積が変化し、圧力室12p内のインクに圧力が付与され、ノズルNからインクが吐出される。アクチュエータ13xは、個別電極13c毎(即ち、ノズルN毎)に設けられており、当該個別電極13cに供給される電位に応じて独立して変形可能である。
【0018】
制御装置90は、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)91と、ROM(Read Only Memory)92と、RAM(Random Access Memory)93と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)94とを含む。ROM92には、CPU91やASIC94が各種制御を行うためのプログラムやデータが格納されている。RAM93は、CPU91やASIC94がプログラムを実行する際に用いるデータを一時的に記憶する。制御装置90は、外部装置(パーソナルコンピュータ等)と通信可能に接続されており、当該外部装置や入力部(プリンタ100の筐体の外面に設けられたスイッチやボタン)から入力されたデータに基づいて、CPU91やASIC94により記録処理等を実行する。
【0019】
記録処理において、制御装置90は、外部装置から受信した記録指令に基づいて、ドライバIC14、キャリッジモータ30m及び搬送モータ50mを制御し、搬送機構50によって用紙Pを搬送方向に所定量搬送する搬送動作と、キャリッジ20を走査方向に移動させながらノズルNからインクを吐出させる走査動作とを、交互に行わせる。これにより、用紙P上に、インクのドットが形成され、画像が記録される。
【0020】
次いで、ASIC94の構成について説明する。
【0021】
ASIC94は、図3に示すように、出力回路941及び転送回路942を含む。
【0022】
出力回路941は、波形信号FIRE、選択信号SIN、クロック信号CLK等を生成し、これら信号を吐出周期毎に転送回路942に出力する。
【0023】
波形信号FIREは、アクチュエータ13xの4つの駆動態様をそれぞれ示す4つの波形データF0~F3(図4参照)を直列化したシリアル信号である。波形データF0(図4(a)参照)は、1吐出周期内におけるノズルNからのインクの吐出量が「ゼロ(吐出なし)」に対応するものであり、個別電極13cの電位をグランド電位(0V)に維持する。波形データF1(図4(b)参照)は、1吐出周期内におけるノズルNからのインクの吐出量が「小」に対応するものであり、個別電極13cの電位をグランド電位(0V)と駆動電位(VDD)との間で変化させる1つのパルスを含み、1滴のインクを吐出させる。波形データF2(図4(c)参照)は、1吐出周期内におけるノズルNからのインクの吐出量が「中」に対応するものであり、個別電極13cの電位をグランド電位(0V)と駆動電位(VDD)との間で変化させる2つのパルスを含み、2滴のインクを吐出させる。波形データF3(図4(d)参照)は、1吐出周期内におけるノズルNからのインクの吐出量が「大」に対応するものであり、個別電極13cの電位をグランド電位(0V)と駆動電位(VDD)との間で変化させる4つのパルスを含み、4滴のインクを吐出させる。
【0024】
波形信号FIREは、上記4つの波形データF0~F3(図4参照)を含むことで、全体としてアクチュエータ13xの4つの駆動態様を示すものである。
【0025】
アクチュエータ13xの駆動態様とは、個別電極13cの電位の変化に応じた上述のようなアクチュエータ13xの変形の態様のことである。アクチュエータ13xの駆動態様は、個別電極13cの電位の変化に応じて(即ち、波形データF0~F3毎に)異なる。駆動態様によって、圧力室12pの容積の変化、ノズルNに形成されるメニスカスの状態、及び、ノズルNから吐出されるインクの量(ゼロを含む。)が異なる。
【0026】
選択信号SINは、上記4つの駆動態様の中から1つを選択するための選択データを含むシリアル信号であり、記録指令に含まれる画像データに基づいて、アクチュエータ13x毎、かつ、吐出周期毎に生成される。吐出周期は、単位時間当たりのヘッド10と用紙Pとの相対位置の変化量に応じて規定され、当該変化量が大きくなるほど(例えば、キャリッジ20の走査や用紙Pの搬送が高速化するほど)、短くなる。
【0027】
クロック信号CLKは、ASIC94からドライバIC14へのデータ転送クロック信号であり、シリアル信号である。
【0028】
出力回路941による信号の生成及び出力は、CPU91の制御により、外部装置から受信した記録指令に含まれる画像データと、キャリッジモータ30mに設けられたロータリエンコーダ61からの信号と、用紙Pの搬送経路に設けられた用紙センサ62からの信号とに基づいて、実行される。CPU91は、ロータリエンコーダ61からの信号と、用紙センサ62からの信号とに基づいて、ヘッド10と用紙Pとの相対位置の変化量を検出し、当該変化量で規定される吐出周期毎に、画像データに基づいて、各アクチュエータ13xに対する選択信号SINを出力回路941に生成及び出力させる。
【0029】
転送回路942は、出力回路941から受信した波形信号FIRE、選択信号SIN、クロック信号CLK等を、吐出周期毎にドライバIC14に転送する。転送回路942は、上記各信号に対応するLVDS(Low Voltage Differential Signaling)ドライバを内蔵しており、各信号をパルス状の差動信号としてドライバIC14に転送する。LVDS方式は、2本の信号線にそれぞれ逆位相の信号(H信号及びL信号)を入力する方式であり、1本の信号線だけで信号を入力するシングルエンド方式に比べ、ノイズに強く、信号の振幅を小さくして低電圧で伝送可能という特徴がある。LVDS方式は、信号の振幅を小さくすることができるため、H信号とL信号との間の切り換えに要する時間を短くすることができ、その結果として、信号の周波数を高くして、データを高速に伝送することができる。特に、選択信号SINは、アクチュエータ13xの数(ノズルNの数)の選択データを含むため、データ量が膨大になり得る。当該信号をLVDS方式で転送することで、高速伝送が可能となっている。
【0030】
次いで、ドライバIC14の構成について説明する。
【0031】
ドライバIC14は、図5に示すように、シフトレジスタ140と、2つのD-フリップフロップ141,142と、マルチプレクサ143と、ドライブバッファ144と、2つのストローブ信号生成回路145,146と、波形信号遅延回路147と、ストローブ信号遅延回路148とを含む。ここで、D-フリップフロップ141が本発明の「第1ラッチ回路」に該当し、D-フリップフロップ142が本発明の「第2ラッチ回路」に該当し、波形信号遅延回路147が本発明の「第1遅延回路」に該当し、ストローブ信号遅延回路148が本発明の「第2遅延回路」に該当する。
【0032】
シフトレジスタ140は、ASIC94の転送回路942(図3参照)から転送されたシリアルの選択信号SINを、ASIC94の転送回路942(図3参照)から転送されたクロック信号CLKと同期して取り込み、パラレルに変換して、D-フリップフロップ141に出力する。
【0033】
D-フリップフロップ141は、ストローブ信号生成回路145から入力されたストローブ信号STBと同期して、シフトレジスタ140から入力されたパラレルの選択信号SINを吐出周期毎にラッチし、D-フリップフロップ142に出力する。
【0034】
D-フリップフロップ142は、ストローブ信号遅延回路148から入力されたストローブ信号STBと同期して、D-フリップフロップ141から入力された選択信号SINを吐出周期毎にラッチし、マルチプレクサ143に出力する。つまり、D-フリップフロップ142は、選択信号SINを、D-フリップフロップ141によるラッチの後に、再度ラッチする。
【0035】
マルチプレクサ143は、D-フリップフロップ142から入力された選択信号SINに基づいて、波形信号遅延回路147から入力された4つの波形データF0~F3(図4参照)のいずれかを選択し、当該波形データをドライブバッファ144に出力する。
【0036】
ドライブバッファ144は、マルチプレクサ143から入力された波形データを増幅して駆動信号を生成し、当該駆動信号を信号線14sを介して各個別電極13cに供給する。
【0037】
ストローブ信号生成回路145は、ASIC94の転送回路942(図3参照)から転送されたクロック信号CLKと、シフトレジスタ140に入力された選択信号SINとに基づいて(例えば、「1」のビットデータが7ビット連続してシフトレジスタ140に入力されたときに)、ストローブ信号STBを生成し、D-フリップフロップ141に出力する。
【0038】
ストローブ信号生成回路146は、ASIC94の転送回路942(図3参照)から転送されたクロック信号CLKと、ASIC94の転送回路942(図3参照)から転送されかつパラレルに変換された波形信号FIREとに基づいて(例えば、「1」のビットデータが7ビット連続して転送されたときに)、ストローブ信号STBを生成し、ストローブ信号遅延回路148に出力する。
【0039】
波形信号遅延回路147は、ASIC94の転送回路942(図3参照)から転送されかつパラレルに変換された波形信号FIREに、所定の遅延時間(図6参照)を付与したデータを生成し、マルチプレクサ143に出力する。
【0040】
ストローブ信号遅延回路148は、ストローブ信号生成回路146から入力されたストローブ信号STBに、上記遅延時間(図6(a)参照)に応じた遅延を付与したデータを生成し、D-フリップフロップ142に出力する。
【0041】
本実施形態において、D-フリップフロップ142に選択信号SINをラッチさせるためのラッチデータは、シリアルの波形信号FIREにおける波形データF0~F3が使用されない領域(未使用領域)に設けられている。ストローブ信号生成回路146は、当該ラッチデータに基づいてストローブ信号STBを生成する。ストローブ信号遅延回路148は、当該ラッチデータを、波形信号遅延回路147によって付与される遅延時間に応じて遅延させる。
【0042】
次いで、図6を参照し、各吐出周期における、転送回路942からドライバIC14への波形信号FIRE及び選択信号SINの転送、並びに、選択信号SINがラッチされるタイミングについて説明する。
【0043】
本実施形態では、図6(a)に示すように、選択信号SINの転送は、各吐出周期の最初の時点で開始される。選択信号SINの転送終了時点で、D-フリップフロップ141によって選択信号SINがラッチ(1stラッチ)される。
【0044】
波形信号FIREの転送は、選択信号SINの転送開始時点からSP変換時間(転送回路942から転送されたシリアルの波形信号FIREをパラレルに変換するのに要する時間)及び遅延時間(波形信号遅延回路147によって遅延される時間)の経過後に開始され、選択信号SINの転送終了時点以降に終了する。波形信号FIREの転送終了時点で、D-フリップフロップ142によって選択信号SINがラッチ(2ndラッチ)される。
【0045】
波形信号FIREの転送終了後、許容時間(製造バラつきを考慮して設定される時間)を経て、次の吐出周期における選択信号SINの転送が開始される。
【0046】
以上に述べたように、本実施形態において、ドライバIC14は、D-フリップフロップ141により選択信号SINをラッチ(1stラッチ)した後、D-フリップフロップ142により選択信号SINを再度ラッチ(2ndラッチ)する(図5及び図6(a)参照)。これにより、波形信号FIREの転送中に、選択信号SINの転送が終了してD-フリップフロップ141により選択信号SINがラッチ(1stラッチ)された場合でも、その後D-フリップフロップ142により選択信号SINが再度ラッチ(2ndラッチ)されることで、吐出乱れ(1stラッチされた選択信号SINが1つ前の吐出周期の選択信号SINと入れ替わることで吐出が乱れる現象)が生じ難い。したがって、吐出乱れを抑制するために、図6(b)に示すような構成(1の吐出周期において、波形信号FIREの転送終了時点から待機時間の経過後に、選択信号SINの転送が終了しかつ選択信号SINがラッチされる構成)を採用する必要がない。本実施形態に係る図6(a)では、図6(b)の待機時間がない分、吐出周期が短くなり、高速記録を実現できる。つまり本実施形態によれば、選択信号SINのラッチタイミングに起因する吐出乱れを抑制しつつ、高速記録を実現できる。
【0047】
ドライバIC14は、波形信号遅延回路147と、ストローブ信号遅延回路148とを有する。図6(a)のように、選択信号SINの転送開始時点から遅延時間の経過後に波形信号FIREの転送を開始させる場合、D-フリップフロップ142に選択信号SIN をラッチ(2ndラッチ)させるためのラッチデータを、遅延時間に応じて遅延させる必要がある。この場合において、当該ラッチデータを遅延させるための信号をASIC94からドライバIC14に転送する場合、遅延時間の分だけASIC94が転送する信号にロスが生じ得る。これに対し、本実施形態によれば、ドライバIC14の内部において(ストローブ信号遅延回路148によって)ラッチデータを遅延時間に応じて遅延させることで、ASIC94からドライバIC14にラッチデータを遅延させるための信号を転送する必要がなく、上記のようなロスを抑制できる。
【0048】
波形信号FIREは、4つの波形データF0~F3(図4参照)を直列化したシリアル信号であり、D-フリップフロップ142に選択信号SINをラッチさせるためのラッチデータは、波形信号FIREにおける波形データF0~F3が使用されない領域(未使用領域)に設けられている。この場合、ラッチデータを含む別の信号をASIC94からドライバIC14に転送する必要がなく、電気的構成を簡素化できる。また、後述の第2実施形態では、最も長い波形データF3の後にラッチデータが設けられており、ドライバIC14がラッチデータを受信するまでに時間がかかる。これに対し、本実施形態では、波形信号FIREにおける波形データF0~F3が使用されない領域にラッチデータが設けられているため、ドライバIC14がラッチデータを受信するまでに時間がかからず、高速記録をより実効的に実現できる。
【0049】
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。
【0050】
第1実施形態では、D-フリップフロップ142に選択信号SINをラッチさせるためのラッチデータが、波形信号FIREにおける波形データF0~F3が使用されない領域(未使用領域)に設けられている。これに対し、第2実施形態では、当該ラッチデータが、波形信号FIREにおける波形データF3(4つの波形データF0~F3のうち、当該波形データに含まれる1又は複数のパルスの最初の立上りから最後の立下りまでの時間が最も長い波形データF3:図4(d)参照)の最後の立下りの後に設けられている。
【0051】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様、ラッチデータを含む別の信号をASIC94からドライバIC14に転送する必要がなく、電気的構成を簡素化できる。また、前述の第1実施形態では、波形データF0~F3が使用されない領域にラッチデータが設けられているため、仮に波形データの数が増えて、当該領域に波形データを使用することになると、ASIC94からドライバIC14にラッチデータを送るための信号線を別途設ける必要等が生じ得る。これに対し、本実施形態では、波形データF3内にラッチデータを設けているため、波形データの数が増えたとしても、信号線を別途設けることなく、ASIC94からドライバIC14にラッチデータを送ることができる。したがって、ドライバIC14がラッチデータを受信するまでに時間がかからず、高速記録をより実効的に実現できる。
【0052】
続いて、本発明の第3実施形態について説明する。
【0053】
第1及び第2実施形態では、D-フリップフロップ142に選択信号SINをラッチさせるためのラッチデータが、波形信号FIREの中に設けられている。これに対し、第3実施形態では、波形信号FIRE及び選択信号SINがASIC94の転送回路942からドライバIC14に転送される前に、ラッチデータを含むラッチ信号がASIC94の転送回路942からドライバIC14に転送される。当該ラッチ信号を受信したドライバIC14において、D-フリップフロップ142は、吐出周期毎に、4つの波形データF0~F3(図4参照)のうちラッチ信号が示す波形データ(例えば、波形データF3)に含まれる、ラッチ信号が示すパルス(例えば、最後のパルス)の後に、選択信号SINをラッチする。
【0054】
本実施形態によれば、ラッチデータを含むラッチ信号を予めASIC94からドライバIC14に送り、ドライバIC14にラッチ条件を記憶させておくことで、ドライバIC14の内部で適切なタイミングで選択信号SINをラッチすることができる。
【0055】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0056】
例えば、出力回路及び/又は転送回路が、アクチュエータの群毎に設けられてもよい。
【0057】
波形信号を出力する回路と、選択信号を出力する回路とが、別々に設けられてもよい。この場合、上記2つの回路が出力回路を構成する。
【0058】
同様に、波形信号を転送する回路と、選択信号を転送する回路とが、別個に設けられてもよい。この場合、上記2つの回路が転送回路を構成する。
【0059】
転送回路は、上述の実施形態では波形信号及び選択信号を差動信号として駆動回路に転送するが、これに限定されない。
【0060】
波形信号や選択信号は、シリアルに限定されず、パラレルであってもよい。
【0061】
上述の実施形態では、アクチュエータの駆動方式として「押し打ち方式(予めアクチュエータ13xを平坦に保持しておき、所定のタイミングでアクチュエータ13xを圧力室12pに向かって凸に変形させ、圧力室12pの容積を減少させることでノズルNからインクを吐出させる方式)」を採用しているが、これに限定されず、「引き打ち方式(圧力室12pの容積を一旦増加させてから所定時間経過後に圧力室12pの容積を元に戻すことでノズルNからインクを吐出させる方式)」を採用してもよい。「引き打ち方式」では、圧力室12pの容積が増加する際に、圧力室12p内に負の圧力波が生じ、その後負の圧力波が反転して正の圧力波として圧力室12pに戻ってきたタイミングで、圧力室12pの容積を元に戻し、圧力室12p内に正の圧力波を生じさせ、これら圧力波を重畳させる。このような圧力波の重畳により、圧力室12p内のインクに大きな圧力を付与することができる。「引き打ち方式」の場合、波形データF0(図4(a)参照)は、個別電極13cの電位を駆動電位(VDD)に維持する。波形データF1~F3(図4(b)~(d)参照)は、個別電極13cの電位を、吐出周期の最初の時点で駆動電位(VDD)とし、その後駆動電位(VDD)とグランド電位(0V)との間で変化させる。
【0062】
アクチュエータは、圧電方式に限定されず、その他の方式(例えば、発熱素子を用いたサーマル方式、静電力を用いた静電方式等)であってもよい。
【0063】
ヘッドは、上述の実施形態ではシリアル式であるが、ライン式であってもよい。
【0064】
ノズルから吐出される液体は、インクに限定されず、インク以外の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってもよい。
【0065】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液体吐出装置(例えば、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液体吐出装置)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
100 プリンタ(液体吐出装置)
13x アクチュエータ
14 ドライバIC(駆動回路)
141 D-フリップフロップ(第1ラッチ回路)
142 D-フリップフロップ(第2ラッチ回路)
147 波形信号遅延回路(第1遅延回路)
148 ストローブ信号遅延回路(第2遅延回路)
941 出力回路
942 転送回路
N ノズル
FIRE 波形信号
F0~F3 波形データ
SIN 選択信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6