(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153922
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 3/04 20060101AFI20221005BHJP
F28D 9/02 20060101ALI20221005BHJP
F28F 9/22 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
F28F3/04 B
F28D9/02
F28F9/22
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056701
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 恒雄
(72)【発明者】
【氏名】多田 勝俊
(72)【発明者】
【氏名】伊東 ひとみ
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 佑太
【テーマコード(参考)】
3L065
3L103
【Fターム(参考)】
3L065DA17
3L103AA05
3L103AA18
3L103AA37
3L103DD18
3L103DD57
(57)【要約】
【課題】流路構造を変化させる構成において、熱交換効率を向上させつつ、流体の不均一な流れの発生や圧力損失を抑制する。
【解決手段】熱交換器1が、本体7と、第1流体3が流れる複数の第1流路21と、第2流体5が流れる複数の第2流路23と、を備え、各第1流路は、本体における入口25から第1の流れ方向に向けて順に連なって設けられた一体部31、緩衝部32、及び分離部33を有し、一体部には、対向配置された対をなす隔壁41、41を含む周壁によって画定される1つの第1流路スペースが形成され、緩衝部には、前記対をなす隔壁に間隔をおいて複数設けられた対をなす第1変位部45Aが互いに接近するように、第1流路スペースを変形させた1つの変形流路スペースが形成され、分離部には、対をなす第1変位部が互いに接続されるように、第1流路スペースを分離させた複数の分離流路スペースが形成される構成とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器であって、
本体と、
前記本体に設けられ、第1流体が流れる複数の第1流路と、
前記本体に設けられ、前記第1流体と熱交換する第2流体が流れる複数の第2流路と、を備え、
前記各第1流路は、前記本体における前記第1流体の入口から第1の流れ方向に向けて順に連なって設けられた一体部、緩衝部、及び分離部を有し、
前記一体部には、前記第1の流れ方向に直交または交差する断面において、対向配置された対をなす隔壁を含む周壁によって画定される1つの第1流路スペースが形成され、
前記緩衝部には、前記第1の流れ方向に直交または交差する断面において、前記対をなす隔壁に間隔をおいて複数設けられた対をなす第1変位部が互いに接近するように、前記第1流路スペースを変形させた1つの変形流路スペースが形成され、
前記分離部には、前記第1の流れ方向に直交または交差する断面において、前記対をなす第1変位部が互いに接続されるように、前記第1流路スペースを分離させた複数の分離流路スペースが形成される、熱交換器。
【請求項2】
前記本体において、前記第1の流れ方向に直交する任意断面には、前記一体部、前記緩衝部、及び前記分離部の少なくも1つが含まれ、
前記任意断面のうちの前記第1流体の前記入口により近い断面ほど、前記一体部が占める面積の割合が大きい、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記各第2流路は、前記複数の第1流路における前記対をなす隔壁における前記各第1流路とは相反する側の面同士によって画定された1つの第2流路スペースを含み、
前記第2流体は、前記本体における前記第2流路スペースに連通する前記第2流体の入口から前記第1の流れ方向に直交する第2の流れ方向に供給される、請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記本体における前記任意断面に少なくとも前記一体部及び前記緩衝部が含まれる場合、前記一体部は、前記緩衝部よりも前記第2流体の前記入口側に配置され、
前記本体における前記任意断面に前記一体部、前記緩衝部、及び前記分離部が含まれる場合、前記一体部及び前記緩衝部は、前記分離部よりも前記第2流体の前記入口側に配置される、請求項3に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記第2流体の前記入口は、前記第1の流れ方向の上流側である前記本体における前記第1流体の前記入口側に配置され、
前記緩衝部は、前記本体における前記任意断面に少なくとも前記緩衝部が含まれる場合、前記任意断面のうちの前記第1流体の前記入口に近い断面ほど、前記緩衝部が前記第2流体の前記入口からより離れた側に配置される、請求項3または請求項4に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記緩衝部は、前記本体における前記第1の流れ方向に直交する方向の全体に渡って、前記第1の流れ方向に略同一の長さで形成されている、請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記第2流路スペースには、前記本体における前記第2流体の前記入口から前記第2の流れ方向の全体に渡って、前記対をなす隔壁における前記各第1流路とは相反する側の面同士によって画定された部位が含まれる、請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記本体には、第1の流れ方向において前記複数の第2流路スペースを分割するように、前記第1の流れ方向に直交または交差する1または複数の仕切り壁が設けられている、請求項3または請求項4に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記複数の仕切り壁は、前記本体における前記第1流体の入口側から第1の流れ方向に向けて長さがより短くなるように形成される、請求項8に記載の熱交換器。
【請求項10】
前記各第1流路は、前記本体における前記第1流体の出口から前記第1の流れ方向の逆方向に向けて順に設けられた他の前記一体部および他の前記緩衝部をそれぞれ有する、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項11】
前記緩衝部には、前記第1の流れ方向に直交または交差する断面において、前記対をなす隔壁に間隔をおいて複数設けられた対をなす第2変位部が互いに離間するように、前記第1流路スペースを変形させた前記1つの変形流路スペースが形成される、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項12】
前記分離流路スペースは、前記第1の流れ方向に直交または交差する断面において、矩形状をなし、
前記対をなす第1変位部および前記対をなす第2変位部は、それぞれ前記矩形における2組の対角に位置する、請求項11に記載の熱交換器。
【請求項13】
前記一体部において、前記対をなす隔壁は、前記第1の流れ方向に直交または交差する断面において、互いに平行に配置された直線状をなす、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項14】
前記本体には、第1の流れ方向において前記複数の第2流路スペースを分割するように、前記対をなす隔壁における前記各第1流路とは相反する側の面から突出する凸部が設けられている、請求項3または請求項4に記載の熱交換器。
【請求項15】
熱交換器であって、
本体と、
前記本体に設けられ、第1流体が流れる複数の第1流路と、
前記本体に設けられ、前記第1流体と熱交換する第2流体が流れる複数の第2流路と、を備え、
前記各第1流路は、前記本体における前記第1流体の出口まで第1の流れ方向とは逆に向けて順に連なって設けられた一体部、緩衝部、及び分離部を有し、
前記一体部には、前記第1の流れ方向に直交または交差する断面において、対向配置された対をなす隔壁を含む周壁によって画定される1つの第1流路スペースが形成され、
前記緩衝部には、前記第1の流れ方向に直交または交差する断面において、前記対をなす隔壁に間隔をおいて複数設けられた対をなす第1変位部が互いに接近するように、前記第1流路スペースを変形させた1つの変形流路スペースが形成され、
前記分離部には、前記第1の流れ方向に直交または交差する断面において、前記対をなす第1変位部が互いに接続されるように、前記第1流路スペースを分離させた複数の分離流路スペースが形成される、熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換される流体の流路構造が変化する熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度の異なる複数の流体間で熱を受け渡す装置として、種々の伝熱方式を用いた熱交換器が普及している。また、熱交換器の熱交換効率を高めるために、流体の流路(流体の経路)における位置に応じて流路構造(流路の形状や表面積等)を変化させたものが開発されている。
【0003】
例えば、熱交換器の熱交換効率を高めるために、低温側に伝熱面積の大きい流路及び/又はレイノルズ数を高くする流路を形成するフィンを配置し、圧損低減効果を得るために、高温側に伝熱面積の小さい流路及び/又はレイノルズ数を低くする流路を形成するフィンを配置した熱交換器が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また例えば、第1流体を流通させる複数の第1流路と、第1流体と熱交換する第2流体を流通させる複数の第2流路と、を含む複数の管状の流路を備え、それら管状の流路では、それぞれの所定方向(流路の延在方向)と直交する断面における位置および外形形状が、所定方向における位置に応じて変化する熱交換器が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-259991号公報
【特許文献2】特開2020-46161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載された従来技術のように、流体の流路における位置に応じて伝熱面積を変化させる場合、1つの流路に連通する複数に分割された流路を形成すると、それらの流路の分岐部や合流部において流れの乱れや滞留に起因する不均一な流れが生じ得る。
【0007】
また、上記特許文献2に記載された従来技術のように、熱交換器において流路の形状を複雑に変化させると、流体の圧力損失が増大し得る。
【0008】
本発明は、以上の背景を鑑み、流体の流路における位置に応じて流路構造を変化させる構成において、熱交換効率を向上させつつ、流体の不均一な流れの発生や圧力損失を抑制する熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、熱交換器(1)であって、本体(7)と、前記本体に設けられ、第1流体(7)が流れる複数の第1流路(21)と、前記本体に設けられ、前記第1流体と熱交換する第2流体(5)が流れる複数の第2流路(23)と、を備え、前記各第1流路は、前記本体における前記第1流体の入口(25)から第1の流れ方向に向けて順に連なって設けられた一体部(31)、緩衝部(32)、及び分離部(33)を有し、前記一体部には、前記第1の流れ方向に直交または交差する断面において、対向配置された対をなす隔壁(41、41)を含む周壁によって画定される1つの第1流路スペースが形成され、前記緩衝部には、前記第1の流れ方向に直交または交差する断面において、前記対をなす隔壁に間隔をおいて複数設けられた対をなす第1変位部(45A)が互いに接近するように、前記第1流路スペースを変形させた1つの変形流路スペースが形成され、前記分離部には、前記第1の流れ方向に直交または交差する断面において、前記対をなす第1変位部が互いに接続されるように、前記第1流路スペースを分離させた複数の分離流路スペースが形成される構成とする。
【0010】
この態様によれば、流体の複数の流路(第1流体が流れる複数の第1流路)には、より広い流路スペース(第1流路スペース)によって圧力損失を抑制する一体部、より大きな伝熱面積によって熱交換効率を向上させる分離部、及び一体部から分離部への移行(すなわち、流路構造の変化)による不均一な流れの発生を抑制する緩衝部が形成される。これにより、当該態様によれば、流路構造を変化させる構成において、熱交換効率を向上させつつ、流体の不均一な流れの発生や圧力損失を抑制することが可能となる。
【0011】
上記の態様において、前記本体において、前記第1の流れ方向に直交する任意断面には、前記一体部、前記緩衝部、及び前記分離部の少なくも1つが含まれ、前記任意断面のうちの前記第1流体の前記入口により近い断面ほど、前記一体部が占める面積の割合が大きいとよい。
【0012】
この態様によれば、各第1流路における第1流体の入口により近い部位では、一体部によってより広い流路スペースが確保されるため、本体に対する流体(第1流体)の導入が容易となり、また、本体に対して流体をより広い範囲で均一に導入することが可能となる。
【0013】
上記の態様において、前記各第2流路は、前記複数の第1流路における前記対をなす隔壁における前記各第1流路とは相反する側の面同士によって画定された1つの第2流路スペースを含み、前記第2流体は、前記本体における前記第2流路スペースに連通する前記第2流体の入口から前記第1の流れ方向に直交する第2の流れ方向に供給されるとよい。
【0014】
この態様によれば、複数の第2流路の構造を複雑化させることなく、複数の第1流路に一体部、緩衝部、及び分離部を形成することができる。
【0015】
上記の態様において、前記本体における前記任意断面に少なくとも前記一体部及び前記緩衝部が含まれる場合、前記一体部は、前記緩衝部よりも前記第2流体の前記入口側に配置され、前記本体における前記任意断面に前記一体部、前記緩衝部、及び前記分離部が含まれる場合、前記一体部及び前記緩衝部は、前記分離部よりも前記第2流体の前記入口側に配置されるとよい。
【0016】
この態様によれば、第1流路における第2流体の入口側に位置する領域では、一体部によってより広い流路スペースが確保されるため、第1流体の円滑な流れを確保することができ、その結果、第1流体と第2流体との熱交換を促進することができる。
【0017】
上記の態様において、前記第2流体の前記入口は、前記第1の流れ方向の上流側である前記本体における前記第1流体の前記入口側に配置され、前記緩衝部は、前記本体における前記任意断面に少なくとも前記緩衝部が含まれる場合、前記任意断面のうちの前記第1流体の前記入口に近い断面ほど、前記緩衝部が前記第2流体の前記入口からより離れた側に配置されるとよい。
【0018】
この態様によれば、第2流体の入口からより離れた領域では、第1流路における第1流体の入口付近に存在する緩衝部により不均一な流れの発生が抑制され、一方で、第2流体の入口により近い領域では、第1流路における第1流体の入口からより離れた位置に存在する緩衝部によって第1流体の流れの指向性が高められるため、第1流体における乱流の発生や圧力損失を抑制することができる。
【0019】
上記の態様において、前記緩衝部は、前記本体における前記第1の流れ方向に直交する方向の全体に渡って、前記第1の流れ方向に略同一の長さで形成されているとよい。
【0020】
この態様によれば、緩衝部による効果(すなわち、第1流路における一体部から分離部への移行による不均一な流れの発生を抑制する効果)を、第1流路における第1の流れ方向に直交する方向において一様に得ることができるため、第1流体の流れの均質性が高まる。
【0021】
上記の態様において、前記第2流路スペースには、前記本体における前記第2流体の前記入口から前記第2の流れ方向の全体に渡って、前記対をなす隔壁における前記各第1流路とは相反する側の面同士によって画定された部位が含まれるとよい。
【0022】
この態様によれば、第2流体を入口から第2の流れ方向の全体に渡って円滑に導くことができる。
【0023】
上記の態様において、前記本体には、第1の流れ方向において前記複数の第2流路スペースを分割するように、前記第1の流れ方向に直交または交差する1または複数の仕切り壁(51-53)が設けられているとよい。
【0024】
この態様によれば、第1の流れ方向に直交または交差する方向において第2流体を均一に本体に導入することが可能となる。
【0025】
上記の態様において、前記複数の仕切り壁は、前記本体における前記第1流体の入口側から第1の流れ方向に向けて長さがより短くなるように形成されるとよい。
【0026】
この態様によれば、第1の流れ方向に直交する方向において第2流体を本体内でより均一に流通させることが可能となる。
【0027】
上記の態様において、前記各第1流路は、前記本体における前記第1流体の出口から前記第1の流れ方向の逆方向に向けて順に設けられた他の前記一体部および他の前記緩衝部をそれぞれ有するとよい。
【0028】
この態様によれば、本体からの流体(第1流体)の排出が容易となり、また、本体から流体をより広い範囲で均一に排出することが可能となる。
【0029】
上記の態様において、前記緩衝部には、前記第1の流れ方向に直交または交差する断面において、前記対をなす隔壁に間隔をおいて複数設けられた対をなす第2変位部(45B)が互いに離間するように、前記第1流路スペースを変形させた前記1つの変形流路スペースが形成されるとよい。
【0030】
この態様によれば、複数の第1流路に一体部、緩衝部、及び分離部を形成する場合に、それら各部における流路の容積の変動を抑制することができる。
【0031】
上記の態様において、前記分離流路スペースは、前記第1の流れ方向に直交または交差する断面において、矩形状をなし、前記対をなす第1変位部および前記対をなす第2変位部は、それぞれ前記矩形における2組の対角に位置するとよい。
【0032】
この態様によれば、一体部、緩衝部、及び分離部による流体流路構造の変化を容易に実現することができる。
【0033】
上記の態様において、前記一体部において、前記対をなす隔壁は、前記第1の流れ方向に直交または交差する断面において、互いに平行に配置された直線状をなすとよい。
【0034】
この態様によれば、各第1流路の一体部を簡易な構成により実現することができる。
【0035】
上記の態様において、前記本体には、第1の流れ方向において前記複数の第2流路スペースを分割するように、前記対をなす隔壁における前記各第1流路とは相反する側の面から突出する凸部が設けられているとよい。
【0036】
この態様によれば、第1の流れ方向において第2流体を均一に本体に導入することが可能となる。
【0037】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、熱交換器であって、本体と、前記本体に設けられ、第1流体が流れる複数の第1流路と、前記本体に設けられ、前記第1流体と熱交換する第2流体が流れる複数の第2流路と、を備え、前記各第1流路は、前記本体における前記第1流体の出口まで第1の流れ方向とは逆に向けて順に連なって設けられた一体部、緩衝部、及び分離部を有し、前記一体部には、前記第1の流れ方向に直交または交差する断面において、対向配置された対をなす隔壁を含む周壁によって画定される1つの第1流路スペースが形成され、前記緩衝部には、前記第1の流れ方向に直交または交差する断面において、前記対をなす隔壁に間隔をおいて複数設けられた対をなす第1変位部が互いに接近するように、前記第1流路スペースを変形させた1つの変形流路スペースが形成され、前記分離部には、前記第1の流れ方向に直交または交差する断面において、前記対をなす第1変位部が互いに接続されるように、前記第1流路スペースを分離させた複数の分離流路スペースが形成される構成とする。
【0038】
この態様によれば、流体の複数の流路(第1流体が流れる複数の第1流路)には、より広い流路スペース(第1流路スペース)によって圧力損失を抑制する一体部、より大きな伝熱面積によって熱交換効率を向上させる分離部、及び分離部から一体部への移行(すなわち、流路構造の変化)による不均一な流れの発生を抑制する緩衝部が形成される。これにより、当該態様によれば、流路構造を変化させる構成において、熱交換効率を向上させつつ、流体の不均一な流れの発生や圧力損失を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0039】
以上の構成によれば、流体の流路における位置に応じて流路構造を変化させる熱交換器において、熱交換効率を向上させつつ、流体の不均一な流れの発生や圧力損失を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図3】第1流路における流路構造の変化を示す第1の説明図
【
図4】第1流路における流路構造の変化を示す第2の説明図
【
図5】第2流路における流路構造を示す第1の説明図
【
図6】第2流路における流路構造を示す第2の説明図
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照して、実施形態に係る熱交換器について説明する。説明の便宜上、
図1等に矢印で示すように上下、前後、及び左右の方向を定める。ただし、実際に使用される熱交換器の配置は、それらの方向には限定されない。
【0042】
図1に示すように、熱交換器1は、温度の異なる二流体(第1流体3、第2流体5:
図2参照)が流れる本体7を備える。本実施形態では、本体7は前後方向に長い略直方体状をなす外殻を有する。
図1中に二点鎖線で示すように、本体7の前部及び後部には、第1流体3が供給される流体供給ヘッダ11および第1流体3が排出される流体排出ヘッダ13が付設され得る。また、本体7の前側上部及び後側下部には、第2流体5が供給される流体供給ヘッダ15および第1流体3が排出される流体排出ヘッダ17が付設されている。
【0043】
熱交換器1における上記構成要素の各々は、例えば、金属材料(例えば、アルミニウム)によって構成され得る。
【0044】
本体7には、第1流体3が流れる複数の第1流路21と、第1流体3と熱交換する第2流体5が流れる複数の第2流路23とが設けられている。
【0045】
本体7の前面7Cには、各第1流路21の入口25が開口する。それらの入口25は、それぞれ上下方向に延在するスリット状をなし、所定の間隔をおいて左右方向に配列される。複数の入口25は、前面7Cの略全域に配置される。図示は省略するが、本体7の後面には、各第1流路21の出口が開口する。それらの出口は、複数の入口25と略同一の構造(形状、配置等)を有する。
【0046】
図2に示すように、本体7の上面7Aには、各第2流路23の入口27が開口する。それらの入口27は、それぞれ前後方向に延在するスリット状をなし、所定の間隔をおいて左右方向に配列される。複数の入口27は、上面7Aにおける前側(第1流体3の入口25側)に偏って配置される。図示は省略するが、本体7の下面7Bには、各第2流路23の出口がそれぞれ開口する。それらの出口は、複数の入口27と略同一の構造を有する。
【0047】
詳細は後述するが、本体7の内部において、各第2流路23は、左右方向に隣接する第1流路21の間のスペースにそれぞれ配置される。
【0048】
流体供給ヘッダ11に供給される第1流体3は、
図2中に矢印付きの線で示すように、複数の入口25から本体7に導入された後、本体7内を後方に向けて移動し、本体7の後面の出口から流体排出ヘッダ13内に排出される。つまり、本体7における第1流体3の流れ方向(以下、第1の流れ方向という。)は、前方の入口25から後方の出口に向かう方向(前後方向)である。
【0049】
また、流体供給ヘッダ15に供給された第2流体5は、
図2中に矢印付きの線で示すように、複数の入口27から下方に向けて本体7に導入された後、本体7内を前方から後方に向けて(すなわち、前後方向に)流れ、本体7の下面の出口から下方に向けて流体排出ヘッダ17内に排出される。つまり、第2流体5の本体7の入口27での流れ方向(以下、第2の流れ方向という。)は、上面7Aの入口27から下方に向かう方向(上下方向)である。同様に、第2流体5の本体7の出口での流れ方向は、下面7Bの出口から下方に向かう方向(上下方向)である。
【0050】
次に、
図3及び
図4を参照して、複数の第1流路21における流路構造の変化について説明する。
【0051】
各第1流路21は、本体7における第1流体3の入口25から第1の流れ方向に(ここでは、前方から後方に)向けて順に連なって設けられた一体部31、緩衝部32、及び分離部33をそれぞれ有する(
図1参照)。
【0052】
図3(A)には、各第1流路21の一体部31を露出させた第1の流れ方向に交差する断面が示されている(
図1に示す上下方向に対して上側が後方に傾斜したIIIa-IIIa線断面を参照)。本体7には、その上壁35および下壁36の間に上下方向に延在する複数の隔壁41が形成されている。一体部31に関し、
図3(A)の断面における複数の隔壁41は、上下方向に略直線状をなし、所定の間隔をおいて左右方向に配列されている。これにより、各第1流路21の一体部31を簡易な構成により実現することができる。
【0053】
各第1流路21において一体部31には、
図3(A)の断面において、対向配置された対をなす隔壁41,41(すなわち、複数の隔壁41において隣接する隔壁)を含む周壁によって画定される1つの流路スペース(以下、第1流路スペースという。)42が形成される。第1流路スペース42は、上下方向に細長い略矩形状をなす。また、第1流路スペース42を画定する周壁を、対をなす隔壁41,41と共に構成する上壁及び下壁は、本体7の上壁35および下壁36によって構成される。ただし、周壁を構成する上壁及び下壁は、上壁35および下壁36とは別に設けられてもよい。
【0054】
一体部31は、
図1に破線で示すように、本体7の前側における略四角柱状をなす領域に設けられる。その略四角柱状をなす領域では、3つの矩形状の側面がそれぞれ本体7の上面7A、下面7B、及び前面7Cに沿って配置され、かつ2つの台形状の側面が本体7の左面7Eおよび右面7Fに沿って配置される。したがって、複数の第1流路21における一体部31の領域は、第2流体5の入口27側(本体7の上壁35側)において前後方向に広く、その入口27から離れた側(本体7の下壁36下側)において前後方向に狭い。第1流体3の入口25では、各第1流路21の全体が一体部31として構成されている。
【0055】
図3(B)及び
図3(C)には、それぞれ各第1流路21の緩衝部32を露出させた第1の流れ方向に交差する断面が示されている(
図1に示す上下方向に対して上側が後方に傾斜したIIIb-IIIb線断面、IIIc-IIIc線断面をそれぞれ参照)。各第1流路21の緩衝部32は、それぞれ対応する一体部31の後方に連なる。
図3(B)は、緩衝部32において一体部31により近い部位を示し、
図3(C)は、緩衝部32において一体部31からより離れた部位を示している。
【0056】
各第1流路21において緩衝部32には、
図3(B)の断面において、
図3(A)に示した一体部31の第1流路スペース42を変形させた1つの変形流路スペース43が形成される。変形流路スペース43では、対をなす隔壁41,41の長手方向(略上下方向)に所定の間隔をおいて対をなす第1変位部45Aが複数設けられており、その対をなす第1変位部45Aが一体部31の状態から左右方向に互いに接近するように変位している。また、変形流路スペース43では、対をなす隔壁41,41の長手方向に所定間隔をおいて対をなす第2変位部45Bが複数設けられており、その対をなす第2変位部45Bが一体部31の状態から左右方向に互いに離間するように変位している。このように変形流路スペース43は、第1流路スペース42および後述する分離流路スペース44の中間的な形状を有する。
【0057】
第1変位部45Aおよび第2変位部45Bは、各隔壁41の長手方向(略上下方向)に交互に配置されている。これにより、緩衝部32において、各隔壁41は、略鋸刃形状をなす。また、変形流路スペース43は、
図3(A)に示した一体部31の第1流路スペース42の一部が拡幅され、かつ一部が縮幅された形状をなす。
【0058】
緩衝部32において、第1変位部45Aおよび第2変位部45Bの変位の大きさは、一体部31に連なる部位から分離部33に連なる部位にかけて徐々に変化する。
図3(C)に示す部位では、
図3(B)に示す部位と比べてより分離部33に近いため、対をなす第1変位部45Aは、
図3(B)に示された状態よりも互いに接近している。同様に、対をなす第2変位部45Bは、
図3(B)に示された状態よりも互いに離間している。
【0059】
緩衝部32は、
図1に破線で示すように、本体7の前側に設けられた一体部31の後方において、上面が下面よりもより後方に位置するように配置された略平行六面体状をなす領域に設けられる。したがって、緩衝部32は、本体7の上下方向の全体に渡って左右方向に略同一の長さで形成されている。これにより、緩衝部32による効果(すなわち、第1流路21における一体部31から分離部33への移行による不均一な流れの発生を抑制する効果)を、第1流路21における第1の流れ方向に直交する方向(上下方向)において一様に得ることができるため、第1流体3の流れの均質性が高まる。
【0060】
図3(D)には、各第1流路21の分離部33を露出させた第1の流れ方向に交差する断面が示されている(
図1に示す上下方向に対して上側が後方に傾斜したIIId-IIId線断面を参照)。
【0061】
各第1流路21において分離部33には、
図3(D)の断面において、一体部31の第1流路スペース42を分離させた複数の分離流路スペース44が形成される。分離流路スペース44では、対をなす第1変位部45Aが、緩衝部32の状態から更に変位することにより、互いに接続されている。また、分離流路スペース44では、対をなす第2変位部45Bが、緩衝部32の状態から更に変位することにより、隣接する他の対をなす隔壁41,41における一方の第2変位部45Bと接続されている。
【0062】
各分離流路スペース44は、一方の対角線を略上下方向に沿って配置した矩形状(または正方形状)をなす。対をなす第1変位部45Aおよび対をなす第2変位部45Bは、その矩形における2組の対角に位置する。複数の分離流路スペース44は、それぞれの四隅が隔壁41を介して相互に接続されることにより格子状をなす。
【0063】
分離部33は、
図1に二点鎖線で示すように、本体7の前側に設けられた緩衝部32の後方において、上面が下面よりもより後方に位置するように配置された略平行六面体状をなす領域に設けられる。
【0064】
このように、熱交換器1では、第1流体3が流れる複数の第1流路21において、より広い第1流路スペース42により圧力損失を抑制する一体部31、より大きな伝熱面積により熱交換効率を向上させる分離部33、及び一体部31から分離部33への移行(すなわち、流路構造の変化)による不均一な流れの発生を抑制する緩衝部32が形成される。特に、第1流体3の流量が比較的大きい場合(すなわち、大流量の場合)に圧力損失を抑制する効果が顕著である。これにより、熱交換器1は、流体流路構造を変化させる構成において、熱交換効率を向上させつつ、流体の不均一な流れの発生や圧力損失を抑制することが可能となる。また。熱交換器1の小型化や軽量化を実現できる。
【0065】
また、本体7の内部構造は、回転対称の構造を有する。より詳細には、本体7の内部構造は、本体7の中心(重心)を通る左右方向の軸まわりに180°回転させても実質的に同一の構造を有する。したがって、本体7は、第1流体3の出口から第1の流れ方向の逆方向に(すなわち、後方から前方に)向けて順に連なって設けられた他の一体部および他の緩衝部(共に図示せず)をそれぞれ有する。なお、分離部33は、本体7の前後方向の中央に配置され、前側の緩衝部32および後側の他の緩衝部の双方に連なる。このような構成により、本体7からの第1流体3の排出が容易となり、また、本体7から第1流体3をより広い範囲で均一に本体7から排出することが可能となる。
【0066】
本体7では、第1の流れ方向(前後方向)に直交する任意断面(以下、縦断面という。)において、一体部31、緩衝部32、及び分離部33の少なくも1つが含まれる。また、上述のように、一体部31、緩衝部32、及び分離部33は、本体7における略四角柱状または略平行六面体状の領域に設けられるため、縦断面の位置によっては、一体部31、緩衝部32、及び分離部33が上下方向に互いに重なるように配置される。
【0067】
図4(A)-(D)には、それぞれ異なる位置の縦断面における各第1流路21の流路構造の一部が示されている(
図2におけるIVa-IVa線断面~IVd-IVd断面を参照)。
【0068】
図4(A)の縦断面では、上下方向の全ての領域に分離部33(分離流路スペース44)が配置されている。
【0069】
より前側に位置する
図4(B)の縦断面では、上側の一部の領域に緩衝部32(変形流路スペース43)が配置されている。さらに前側の
図4(C)に示す縦断面では、形状が変化した緩衝部32(変形流路スペース43)が配置されている。
【0070】
このように、本体7における縦断面に少なくとも緩衝部32が含まれる場合、
図1に示した略平行六面体状をなす緩衝部32の領域からも明らかなように、縦断面のうちの第1流体3の入口25に近い断面ほど、緩衝部32は、第2流体5の入口27からより離れた側に配置される。これにより、第1流体3の入口25に近く、かつ第2流体5の入口27からより離れた領域では、第1流路21における第1流体3の入口25付近に存在する緩衝部32により、第1流体3の不均一な流れの発生が抑制される。一方で、第1流体3の入口25に近く、かつ第2流体5の入口27により近い領域では、第1流路21における第1流体3の入口25からより離れた位置に存在する緩衝部32によって第1流体3の流れの指向性が高められるため、第1流体3における乱流の発生や圧力損失を抑制することができる。
【0071】
さらに前側の
図4(D)に示す縦断面では、上側の一部の領域に一体部31(第1流路スペース42)が配置され、その一体部31の下方に緩衝部32(破線で囲んだ部分を参照)が配置されている。
【0072】
このように、本体7における縦断面に少なくとも一体部31及び緩衝部32が含まれる場合、一体部31は、緩衝部32よりも第2流体5の入口27側(上側)に配置される。また、本体7における縦断面に一体部31、緩衝部32、及び分離部33が含まれる場合、一体部31及び緩衝部32は、分離部33よりも第2流体5の入口27側に配置される。これにより、第1流路21における第2流体5の入口27側に位置する領域では、一体部31によってより広い第1流路スペース42が確保されるため、第1流体3の円滑な流れを確保することができ、その結果、第1流体3と第2流体5との熱交換を促進することができる。
【0073】
図示は省略するが、
図4(D)に示す縦断面よりも更に前側の縦断面では、一体部31の占める面積の割合が更に大きくなり、最終的に本体7の入口25付近では、全ての領域に一体部31のみが配置される。つまり、縦断面(任意断面)のうち第1流体3の入口25により近い断面ほど、一体部31が占める面積の割合が大きい。これにより、各第1流路21における第1流体3の入口25により近い部位では、一体部31によってより広い第1流路スペース42が確保されるため、本体7に対する第1流体3の導入が容易となり、また、本体7に対して第1流体3をより広い範囲で均一に導入することが可能となる。
【0074】
また、複数の第2流路23は、
図4(A)-(D)に示すように、複数の第1流路21をそれぞれ画成する対をなす隔壁41,41における各第1流路21とは相反する側の面同士によって画定された複数の流路スペース(以下、第2流路スペースという。)48を含む。第2流体5は、本体7における第2流路スペース48に連通する前記第2流体の入口27から第1の流れ方向に直交する第2の流れ方向に供給される。これにより、複数の第2流路23の構造を複雑化させることなく、複数の第1流路21に一体部31、緩衝部32、及び分離部33を形成することができる。
【0075】
また、第2流路スペース48には、本体7における第2流体5の入口27から前記第2の流れ方向(上下方向)の全体に渡って延在する部位が含まれるとよい。これにより、第2流体5を入口27から第2の流れ方向の全体に渡って円滑に導くことができる。
【0076】
次に、
図5及び
図6を参照して、複数の第2流路23の流路構造について説明する。
図5(A)-(C)は、それぞれ本体7における第2の流れ方向に直交する断面を示している。それらの断面には、本体7の第2流体5の入口27付近における第2流路23の流路構造が示されている。
図6には、各第2流路23の入口27を露出させた第1の流れ方向に交差する断面(上下方向に対して上側が後方に傾斜した断面)が示されている。
【0077】
図5(A)の断面の位置は、例えば
図4(A)に示した分離部33(分離流路スペース44)の上部における対をなす第1変位部45Aの位置に概ね相当する。
図5(B)、(C)の断面の位置は、それぞれ例えば
図4(A)に示した分離部33(分離流路スペース44)の上部における対をなす第1変位部45Aと、それらと上下方向に隣接する対をなす第2変位部45Bとの間の位置に概ね相当する。ただし、
図5(C)の断面は、
図5(B)の断面と比べて、対をなす第2変位部45Bのより近くに位置する。
【0078】
本体7の前側の上部には、
図2、
図5(A)-(C)、及び
図6に示すように、第2流路23の入口25から第2の流れ方向に向けて延在する複数(ここでは、3枚)の仕切り壁51-53が設けられている。これにより、第2流路23の入口25は、仕切り壁51-53によって前後方向に分割された複数の入口開口25A-25Dを有する。これにより、第1の流れ方向(ここでは、前後方向)において第2流体5を均一に本体7に導入することが可能となる。
【0079】
仕切り壁51-53は、本体7における第1流体3の入口25側から第1の流れ方向(後方)に向けて長さがより短くなる(すなわち、仕切り壁51、仕切り壁52、仕切り壁53の順で短くなる)ように形成されている。これにより、第1の流れ方向に直交する方向(上下方向)において第2流体5を本体7内で均一に流通させることが可能となる。なお、仕切り壁51-53の代わりに、第1の流れ方向において複数の第2流路スペース48を前後方向に分割するように、対をなす隔壁41,41における第1流路21とは相反する側の面から凸部が突設されてもよい。
【0080】
入口開口25Aから本体7に導入された第2流体5は、仕切り壁51及び本体7の前壁37によって前後方向への流れが制限されつつ、下方に向けて流れる。その入口開口25Aからの第2流体5は、仕切り壁51の先端(下端)を超えると、後方への移動が可能となり、その後は、本体7の後側の下部に設けられた第2流路23の出口に向けて流れる。
【0081】
入口開口25Bから本体7に導入された第2流体5は、仕切り壁51及び仕切り壁52によって前後方向への流れが制限されつつ、下方に向けて流れる。その入口開口25Bからの第2流体5は、仕切り壁52の先端(下端)を超えると、後方への移動が可能となり、その後は、本体7の後側の下部に設けられた第2流路23の出口に向けて流れる。
【0082】
入口開口25Cから本体7に導入された第2流体5は、仕切り壁52及び仕切り壁53によって前後方向への流れが制限されつつ、下方に向けて流れる。その入口開口25Cからの第2流体5は、仕切り壁53の先端(下端)を超えると、後方への移動が可能となり、その後は、本体7の後側の下部に設けられた第2流路23の出口に向けて流れる。
【0083】
入口開口25Dから本体7に導入された第2流体5は、仕切り壁53によって前方への移動が制限される一方、後方への移動は制限されない。その入口開口25Dからの第2流体5は、本体7への導入直後から後方に広がりつつ、本体7の後側の下部に設けられた第2流路23の出口に向けて流れる。
【0084】
上述のような構成を有する熱交換器1の製造では、少なくとも本体7を、公知の3Dプリンティング技術による積層造形(Additive Manufacturing)に基づき一体成形することが可能である。積層造形に用いられる加工方式については、上述のような構造を実現可能な限りにおいて特に限定されない。例えば、熱交換器1は、金属粉末およびレーザ(または電子ビーム)を造形部位に同時に照射し、溶融した金属粉末を上述のような形状に積層することによって成形される。
【0085】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。
【0086】
例えば、熱交換器1の本体7の外形(外殻)については、上述のような直方体状に限らず、他の形状(例えば、円筒状)を採用することが可能である。また、熱交換器1では、第2流体5が上述の第2流路23の出口側から入口27側に向けて流れる構成としてもよい。第1流路21および第2流路23の数は、適宜変更することが可能である。また、第1及び第2流路スペース、変形流路スペース、及び分離流路スペースの形状は、上述の例に限らず、種々の変更が可能である。例えば、分離部流路スペースは星形や六角形であってもよい。熱交換器1の用途としては、例えば、EGRクーラーなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0087】
1 :熱交換器
3 :第1流体
5 :第2流体
7 :本体
7A :前面
7B :上面
11 :流体供給ヘッダ
13 :流体排出ヘッダ
15 :流体供給ヘッダ
17 :流体排出ヘッダ
21 :第1流路
23 :第2流路
25 :第1流体の入口
27 :第2流体の入口
31 :一体部
32 :緩衝部
33 :分離部
35 :上壁
36 :下壁
37 :前壁
41 :隔壁
42 :第1流路スペース
43 :変形流路スペース
44 :分離流路スペース
45A:第1変位部
45B:第2変位部
48 :第2流路スペース
51-53:仕切り壁