(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153936
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】化粧料組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/98 20060101AFI20221005BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20221005BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221005BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
A61K8/98
A61K8/64
A61Q19/00
A61Q19/10
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056719
(22)【出願日】2021-03-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】500094543
【氏名又は名称】新日本製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】太田 涼介
(72)【発明者】
【氏名】松本 大志
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA071
4C083AA072
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC062
4C083AC122
4C083AC242
4C083AC302
4C083AD022
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD212
4C083AD352
4C083AD411
4C083AD412
4C083CC05
4C083CC23
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE12
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】コラーゲンが豊富に含まれたプラセンタエキスを含み、機能性に優れた化粧料組成物及び化粧料組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明を適用した化粧料組成物の一例である化粧水は、全量基準で重量比率が、精製水:30~95%、コラーゲン含有プラセンタエキス:0.05~0.8%(v/v)、多価アルコール:0.1~50%、エステル油:適量(0~5%、無配合の場合もある)、界面活性剤:適量、クエン酸:適量、カルボキシビニルポリマー:適量(下限0.1%)、水酸化ナトリウム:適量、植物エキス:適量(下限0.1%)防腐剤:適量、を含む組成を有している。また、ここで示す化粧水は、全量基準で、0.0000075~0.00012%(w/v)の濃度となる上皮細胞成長因子(EGF)を含んでいる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラセンタエキスと、
上皮細胞成長因子(EGF)を含有し、
前記プラセンタエキスは、同プラセンタエキスの総窒素濃度(w/v)あたりのヒドロキシプロリン濃度(w/v)が0.47以上である
化粧料組成物。
【請求項2】
前記プラセンタエキスの濃度が0.025v/v%~1.0v/v%の範囲内であり、
前記上皮細胞成長因子(EGF)の濃度が0.00000375w/v%~0.00015w/v%の範囲内である
請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
前記プラセンタエキスの濃度が0.2v/v%~0.8v/v%の範囲内である
請求項2に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
前記プラセンタエキスはウマ胎盤由来である
請求項1または請求項2に記載の化粧料組成物。
【請求項5】
解凍したウマ胎盤またはブタ胎盤を、前記解凍の際に出る血液と混合して、熱水で処理する熱水抽出工程と、
前記熱水抽出工程を経た抽出処理物を、60度~70度の範囲内の温度で、パパインを用いて酵素消化する消化反応工程とを有する、プラセンタエキス製造工程と、
該プラセンタエキス製造工程で得られたプラセンタエキスであり、その総窒素濃度(w/v)あたりのヒドロキシプロリン濃度(w/v)が0.47以上であるプラセンタエキスと、上皮細胞成長因子(EGF)を混合する混合工程とを備える
化粧料組成物の製造方法。
【請求項6】
プラセンタエキスを含み、
前記プラセンタエキスは、同プラセンタエキスの総窒素濃度(w/v)あたりのヒドロキシプロリン濃度(w/v)が0.47以上であり、
前記プラセンタエキスの濃度が0.025v/v%~0.8v/v%の範囲内である
化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料組成物及び化粧料組成物の製造方法に関する。詳しくは、コラーゲンが豊富に含まれたプラセンタエキスを含み、機能性に優れた化粧料組成物及び化粧料組成物の製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧水、乳液、ジェル等の化粧料に対して、皮膚の黒化や色素沈着によるしみ、そばかす等を改善するための美白効果、また、しみやたるみの予防のための保湿効果や抗酸化効果を付与させることが行われており、種々の原料が化粧料に配合されている。
【0003】
また、皮膚は、常に外界にさらされており、加齢とともにシワ、タルミ、くすみ、色素沈着などの老化現象が生じる。特に、シワやタルミといった形態変化は、真皮マトリックスの90%以上を占めるコラーゲンによる影響が大きいと考えられている。
【0004】
このコラーゲンの量は、加齢と共に減少し、コラーゲンの減少で真皮構造の形成が不完全になるため、皮膚が衰え、シワ、タルミの大きな要因の一つとなっている。
【0005】
また、コラーゲン量の減少の原因としては、真皮の線維芽細胞によるコラーゲンの産生能の低下が挙げられ、その結果、皮膚のシワやタルミが発生する。
【0006】
そこで、コラーゲン産生を促進する素材を天然物から探索する試みがなされ、植物の抽出物やその成分の他、種々の物質にコラーゲン産生促進作用があることがこれまでに報告されている。
【0007】
また、コラーゲンそのもの、または、加水分解コラーゲンにも、線維芽細胞増殖効果や、コラーゲン産生作用があることが知られている。
【0008】
また、コラーゲン産生促進作用を有する原料の他に、化粧料に、美白効果を始め、多くの有用な機能を付与する原料として、プラセンタエキス(胎盤抽出物)が注目されている。
【0009】
このプラセンタエキスは、内分泌調整作用、強肝・解毒作用、免疫賦活作用、自律神経作用、血行促進・造血作用の効果を有している。また、美容的な側面として、抗炎症作用による肌荒れ等の改善、抗酸化作用による美白効果、新陳代謝の促進、更に肌の老化を回復させるというように、非常に多くの機能を有している。
【0010】
また、化粧料において、プラセンタエキスが有する美白効果等を向上させるために、種々の検討がなされており、例えば、特許文献1に記載のプラセンタエキスを含有した化粧料組成物が提案されている。
【0011】
この特許文献1に記載の化粧料組成物では、プラセンタエキスとハトムギをリポソームに封入した原料が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に開示された化粧料組成物をはじめ、従前のプラセンタエキスを原料とする化粧料では、プラセンタエキスそのものに含まれるコラーゲンの含量が少なく、コラーゲンに由来する線維芽細胞増殖効果や、コラーゲン産生作用を向上させる点で、更なる改良が望まれている。
【0014】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、コラーゲンが豊富に含まれたプラセンタエキスを含み、機能性に優れた化粧料組成物及び化粧料組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明の化粧料組成物は、プラセンタエキスと、上皮細胞成長因子(EGF)を含有し、前記プラセンタエキスは、同プラセンタエキスの総窒素濃度(w/v)あたりのヒドロキシプロリン濃度(w/v)が0.47以上であるように構成されている。
【0016】
ここで、プラセンタエキスが、プラセンタエキスの総窒素濃度(w/v)あたりのヒドロキシプロリン濃度(w/v)が0.47以上であることによって、原料となるプラセンタエキスに、コラーゲンが多く含まれるものとなる。まず、ヒドロキシプロリンは、コラーゲンの主要な成分であると共に、コラーゲンに特徴的にみられるアミノ酸の一種であり、ヒドロキシプロリン量はコラーゲン含有量の指標とされている。そのため、プラセンタエキスの総窒素濃度(w/v)あたりのヒドロキシプロリンの濃度(w/v)が高ければ、プラセンタエキス中のコラーゲンの濃度が高いものと判断することができる。また、プラセンタエキスの総窒素濃度(w/v)あたりのヒドロキシプロリン濃度(w/v)が0.47以上とは、従前の市販のプラセンタエキスにおけるヒドロキシプロリンの濃度よりも高く、充分な量のコラーゲンを含んでいる。この結果、プラセンタエキスにおける、コラーゲンに由来する線維芽細胞増殖効果や、コラーゲン産生作用を高めることができる。
【0017】
また、プラセンタエキスと、上皮細胞成長因子(EGF)を含有することによって、各々の成分を単独で配合する組成と比べて、化粧料組成物における線維芽細胞増殖効果を相乗的に高めることができる。
【0018】
また、プラセンタエキスの濃度が0.025v/v%~1.0v/v%の範囲内であり、上皮細胞成長因子(EGF)の濃度が0.00000375w/v%~0.00015w/v%の範囲内である場合には、一層、化粧料組成物における線維芽細胞増殖効果を高めることができる。また、化粧料が呈色することを抑止できる。
【0019】
また、一方で、プラセンタエキスの濃度が0.025v/v%未満の場合には、化粧料組成物における線維芽細胞増殖効果は向上するものの、効果が高められる程度が小さくなる。また、プラセンタエキスの濃度が1.0v/v%を超える場合には、プラセンタエキスに由来する呈色が化粧料に表れやすくなり、化粧料の色として需要がある透明や白色の化粧料への適用を考慮した場合、原料として採用しにくくなってしまう。
【0020】
また、一方で、上皮細胞成長因子(EGF)の濃度が0.00000375w/v%未満の場合には、化粧料組成物における線維芽細胞増殖効果は向上するものの、効果が高められる程度が小さくなる。また、上皮細胞成長因子(EGF)の濃度が0.00015w/v%を超える場合には、化粧料組成物における線維芽細胞増殖効果は向上するものの、より低い濃度と比べて、効果が高められる程度が頭打ちとなり、使用する上皮細胞成長因子(EGF)のコストが上昇するため好ましくない。
【0021】
また、プラセンタエキスの濃度が0.2v/v%~0.8v/v%の範囲内である場合には、より一層顕著に、化粧料組成物における線維芽細胞増殖効果を高めることができる。
【0022】
また、プラセンタエキスはウマ胎盤由来である場合には、化粧料組成物の原料として使用しうるプラセンタエキスとすることができる。
【0023】
また、上記の目的を達成するために、本発明の化粧料組成物の製造方法は、解凍したウマ胎盤またはブタ胎盤を、前記解凍の際に出る血液と混合して、熱水で処理する熱水抽出工程と、前記熱水抽出工程を経た抽出処理物を、60度~70度の範囲内の温度で、パパインを用いて酵素消化する消化反応工程とを有する、プラセンタエキス製造工程と、該プラセンタエキス製造工程で得られたプラセンタエキスであり、その総窒素濃度(w/v)あたりのヒドロキシプロリン濃度(w/v)が0.47以上であるプラセンタエキスと、上皮細胞成長因子(EGF)を混合する混合工程とを備える。
【0024】
ここで、熱水抽出工程で、解凍したウマ胎盤またはブタ胎盤を、解凍の際に出る血液と混合して、熱水で処理することによって、ウマ胎盤またはブタ胎盤から、水溶性のコラーゲン成分を効率良く抽出することができる。即ち、後の消化反応工程で生じる、酵素抽出物と残渣との間で、酵素抽出物側に含まれるコラーゲン成分を増やし、消化効率を高めることができる。なお、ここでいう熱水とは、例えば、80℃程度の高温の水を含むものである。
【0025】
また、消化反応工程で、熱水抽出工程を経た抽出処理物を、60度~70度の範囲内の温度で、パパインを用いて酵素消化することによって、熱水抽出工程を経た抽出処理物を、酵素反応により溶かし、酵素抽出物と残渣に分けることができる。また、水溶性のコラーゲン成分を含む酵素抽出物を得ることができる。また、パパインは耐熱性のある酵素であることから、前工程の熱水抽出工程において高温で処理された抽出処理物について、温度を高く保ったまま、安定して酵素反応に供することができる。
【0026】
また、混合工程で、プラセンタエキス製造工程で得られたプラセンタエキスであり、その総窒素濃度(w/v)あたりのヒドロキシプロリン濃度(w/v)が0.47以上であるプラセンタエキスと、上皮細胞成長因子(EGF)を混合することによって、コラーゲンが多く含まれるプラセンタエキスと、上皮細胞成長因子(EGF)を含有する化粧料組成物を製造することができる。
【0027】
また、上記の目的を達成するために、本発明の化粧料組成物は、プラセンタエキスを含み、前記プラセンタエキスは、同プラセンタエキスの総窒素濃度(w/v)あたりのヒドロキシプロリン濃度(w/v)が0.47以上であり、前記プラセンタエキスの濃度が0.025v/v%~0.8v/v%の範囲内であるように構成されている。
【0028】
ここで、プラセンタエキスが、プラセンタエキスの総窒素濃度(w/v)あたりのヒドロキシプロリン濃度(w/v)が0.47以上であることによって、原料となるプラセンタエキスに、コラーゲンが多く含まれるものとなる。プラセンタエキスの総窒素濃度(w/v)あたりのヒドロキシプロリン濃度(w/v)が0.47以上とは、従前の市販のプラセンタエキスにおけるヒドロキシプロリンの濃度よりも高く、充分な量のコラーゲンを含んでいる。この結果、プラセンタエキスにおける、コラーゲンに由来する線維芽細胞増殖効果や、コラーゲン産生作用を高めることができる。
【0029】
また、プラセンタエキスの濃度が0.025v/v%~0.8v/v%の範囲内であることによって、化粧料組成物における線維芽細胞増殖効果を高めることができる。また、化粧料が呈色することを抑止できる。
【0030】
なお、本明細書における「プラセンタエキスの総窒素濃度(w/v)あたり」とは、プラセンタエキスの総窒素濃度1%(w/v)を基準とした濃度(%(w/v))のことを意味する。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る化粧料組成物及び化粧料組成物の製造方法は、コラーゲンが豊富に含まれたプラセンタエキスを含み、機能性に優れた化粧料組成物を提供できるものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】プラセンタエキスにおける線維芽細胞増殖活性試験の結果を示すグラフである。
【
図2】上皮細胞成長因子(EGF)における線維芽細胞増殖活性試験の結果を示すグラフである。
【
図3】プラセンタエキス及び上皮細胞成長因子(EGF)の混合物における線維芽細胞増殖活性試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を適用した化粧料組成物の一例である化粧水の組成について説明する。
【0034】
ここで示す化粧水は、全量基準で重量比率が、精製水:30~95%、コラーゲン含有プラセンタエキス:0.05~0.8%(v/v)、多価アルコール:0.1~50%、エステル油:適量(0~5%、無配合の場合もある)、界面活性剤:適量、クエン酸:適量、カルボキシビニルポリマー:適量(下限0.1%)、水酸化ナトリウム:適量、植物エキス:適量(下限0.1%)防腐剤:適量、を含む組成を有している。また、ここで示す化粧水は、全量基準で、0.0000075~0.00012%(w/v)の濃度となる上皮細胞成長因子(EGF)を含んでいる。
【0035】
なお、コラーゲン含有プラセンタエキスとは、本願請求項における「プラセンタエキス」を意味する。なお、以下では、「コラーゲン含有プラセンタエキス」の用語を用いる。
【0036】
また、ここで示す化粧水の組成は、化粧料組成物の一例に過ぎず、その他の成分や異なる配合量を適宜設定することが可能である。例えば、上記以外に、製剤の種類、用途に合わせて、キレート剤(金属イオン封鎖剤)、収れん剤、殺菌剤、皮膚賦活剤(ビタミン類、アミノ酸及びアミノ酸誘導体)、消炎剤、美白剤(アルブチン、トラネキサム酸、ビタミンC誘導体等)を含むことが可能である。また、必要に応じて香料や着色料も配合することも可能である。
【0037】
精製水は、化粧水の基剤であり、上述した各種成分を含めて、化粧水の全量を100%
に調整する。
【0038】
コラーゲン含有プラセンタエキスは、特徴成分であり、化粧水に対して、線維芽細胞増殖効果、コラーゲン産生作用、コラゲナーゼ活性抑制作用、抗酸化作用、抗炎症作用、新陳代謝の促進、及び、肌の老化を回復させる機能を付与する、または、これらの好ましい作用を向上させる成分である。また、ウマ胎盤を後述する製造方法で処理して得られた生成物である。
【0039】
また、コラーゲン含有プラセンタエキスは、プラセンタエキスの総窒素濃度1%(w/v)あたりのヒドロキシプロリン濃度が0.47%(w/v)であるヒドロキシプロリンを含んでいる。ヒドロキシプロリンは、プラセンタエキス中のコラーゲンの濃度の指標であり、本組成におけるコラーゲン含有プラセンタエキスのヒドロキシプロリンの濃度は、従前の市販のプラセンタエキスにおけるヒドロキシプロリンの濃度よりも高く、充分な量のコラーゲンを含んでいる。
【0040】
上皮細胞成長因子(EGF)は、特徴成分であり、化粧水に対して、線維芽細胞増殖効果を向上させる成分である。上皮細胞成長因子(EGF)は、コラーゲン含有プラセンタエキスと組み合わせることで、線維芽細胞増殖効果を相乗的に高めることができる。
【0041】
多価アルコールは保湿剤である。多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール等を用いることができる。
【0042】
エステル油は柔軟剤(エモリエント剤)である。上記組成では、エステル油を用いたが、これ以外にも例えば、植物油等を用いることができる。
【0043】
界面活性剤は、油性成分の乳化剤または可溶化剤である。界面活性剤としては、例えば、レシチンおよびレシチン誘導体、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等を用いることができる。なお、本発明では、油性成分の乳化剤または可溶化剤の種類はこれらに限定されるものではなく、その他の界面活性剤を用いることもできる。
【0044】
クエン酸は、緩衝剤(pH調整剤)である。上記組成では、クエン酸を用いたが、これ以外にも例えば、クエン酸ナトリウム等を用いることができる。
【0045】
カルボキシビニルポリマーは増粘剤であり、化粧水に適度な粘性を付与するものとなる。上記組成では、カルボキシビニルポリマーを用いたが、これ以外にも例えば、アクリル系増粘剤、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、カラギーナン、寒天、ゼラチン等を用いることができる。
【0046】
水酸化ナトリウムは中和剤である。上記組成では、水酸化ナトリウムを用いたが、これ以外にも例えば、水酸化カリウム等を用いることができる。
【0047】
植物エキスは、化粧水に対して、皮膚に効果のある所望の機能性を付与する成分である。また、防腐剤は化粧水に防腐力を持たせる成分である。
【0048】
ここで、植物エキスとしては、例えば、以下のようなものが挙げられる。ハトムギ種子エキス、ローヤルゼリーエキス、ツボクサ葉エキス、ベルゲニアリグラタ根エキス、プラセンタエキス、メアカキンバイカルスエキス、ヒメフウロエキス、ダイズ胎座エキス、ハイブリッドローズ花エキス、ゲットウ葉エキス、ヨーロッパアキノキリンソウエキス、サッカロミセス溶解質エキス、クレアチントウビシ果皮エキス、オタネニンジン根エキス、シャクヤク根エキス、ブドウつるエキス。
【0049】
ここで、コラーゲン含有プラセンタエキスの配合量は、化粧水の全量基準で0.05~0.8%となっている。ここで必ずしも、コラーゲン含有プラセンタエキスの配合量が、化粧水の全量基準で0.05~0.8%に設定される必要はない。但し、化粧水における線維芽細胞増殖効果をより一層向上させる点から、コラーゲン含有プラセンタエキスの配合量が、化粧水の全量基準で0.025~1.0%に設定されることが好ましい。また、化粧水における線維芽細胞増殖効果をより一層向上させると共に、コラーゲン含有プラセンタエキスに由来する色が化粧水に表れることを抑止できる点から、コラーゲン含有プラセンタエキスの配合量が、化粧水の全量基準で0.2~0.8%に設定されることがさらに好ましい。
【0050】
また、上皮細胞成長因子(EGF)の配合量は、化粧水の全量基準で0.0000075~0.00012%(w/v)の濃度となっている。ここで必ずしも、上皮細胞成長因子(EGF)の配合量が、化粧水の全量基準で0.0000075~0.00012%(w/v)の濃度になるように設定される必要はない。但し、化粧水における線維芽細胞増殖効果をより一層向上させると共に、効果が高められる程度が頭打ちとならないようにする点から、上皮細胞成長因子(EGF)の配合量が、化粧水の全量基準で0.00000375~0.00015%(w/v)の濃度範囲に設定されることが好ましい。
【0051】
続いて、本発明を適用した化粧料組成物の製造方法の一例を説明する。ここでは上述した化粧水を例に説明を行う。
【0052】
まず、ウマ胎盤からコラーゲン含有プラセンタエキスを製造する内容について説明する。
凍結保存していたウマ胎盤を解凍する(解凍)。解凍したウマ胎盤の肉質部と同量のドロップ液(解凍の際に生じる血液)を計量し、肉質部を細挫する(細挫・仕込)。
【0053】
また、ウマ胎盤の細挫品と、ドロップ液を混合して、80℃で約22時間、熱水抽出する(熱水抽出)。これにより、ウマ胎盤から、水溶性のコラーゲン成分を効率良く抽出することができる。即ち、次の消化反応工程で生じる、酵素抽出物と残渣との間で、酵素抽出物側に含まれるコラーゲン成分を増やし、消化効率を高めることができる。なお、本工程が、本願請求項における熱水抽出工程に該当する。
【0054】
続いて、熱水抽出処理物を、0.2%パパインを用いて、60~70℃で3時間、消化反応する(消化反応)。これにより、抽出処理物を、酵素反応により溶かし、酵素抽出物と残渣に分けることができる。また、水溶性のコラーゲン成分を含む酵素抽出物を得ることができる。なお、本工程が、本願請求項における消化反応工程に該当する。
【0055】
次に、酵素抽出物を、0.8%の活性炭を用いて、10分間の活性炭処理を行う。また、この後、90℃で30分間、加熱処理をする。さらに、必要に応じて8000rpmで5分間、遠心分離して、上澄みと沈殿物に分離する。
【0056】
また、遠心分離した上澄み液を、ろ過助剤も用いて、真空ろ過(No.2ろ紙)する。さらに、真空ろ過後の上澄み液を清澄ろ過する。
【0057】
また、清澄ろ過のろ液に、2-フェノキシエタノール1.6%を添加し、撹拌する。さらに、0.22μmフィルターを用いて、除菌ろ過する。ここまでの工程で、ウマ胎盤からコラーゲン含有プラセンタエキスを製造することができる。
【0058】
なお、上述した方法は、あくまで一例であり、各種条件や方法は、適宜変更することができる。
【0059】
また、必ずしも、熱水抽出する工程において、80℃で約22時間、熱水抽出する必要はなく、水の温度や時間は適宜変更することができる。但し、ウマ胎盤から、水溶性のコラーゲン成分を充分に効率良く抽出する点から、80℃で約22時間、熱水抽出することが好ましい。
【0060】
また、必ずしも、消化反応する工程において、0.2%パパインを用いて、60~70℃で3時間、消化反応する必要はなく、パパイン以外の耐熱性の消化酵素を採用することも可能である。また、消化反応の温度及び時間も適宜変更することができる。但し、熱水抽出した処理物から、水溶性のコラーゲン成分を多く含む酵素抽出物を得る点から、0.2%パパインを用いて、60~70℃で3時間、消化反応することが好ましい。
【0061】
また、本発明の化粧料組成物の製造方法の一例では、上記で得られたコラーゲン含有プラセンタエキスを、上皮細胞成長因子(EGF)を含む各種成分と混合して、化粧水を製造する。
【0062】
ここで、コラーゲン含有プラセンタエキスと、上皮細胞成長因子(EGF)を含む各種成分との混合の方法は、既知の化粧料の製造方法を用いることができる。
【0063】
以上のように、本発明を適用した化粧料組成物は、上述した方法によりコラーゲン含有プラセンタエキスを生成し、このコラーゲン含有プラセンタエキスを、上皮細胞成長因子(EGF)を含む各種原料と混合することで製造することができる。なお、ここで示した製造方法や条件はあくまで一例であり、原料成分や添加物の種類等に応じて適宜、設定変更可能なものであることはいうまでもない。
【0064】
また、本発明を適用した化粧料組成物の種類は、上述した化粧水に限定されず、例えば、乳液・クリーム系の化粧料、ジェル、洗浄料(シャンプー)、洗浄料(洗顔)等に適用しうる。また、その製造方法は、生成したコラーゲン含有プラセンタエキスを、上皮細胞成長因子(EGF)を含む各種の化粧料の原料と、化粧料の種類に応じた既知の方法で混合する方法が採用しうる。
【0065】
以上のとおり、本発明を適用した化粧料組成物は、コラーゲンが豊富に含まれたプラセンタエキスを含み、機能性に優れた化粧料組成物を提供できるものとなっている。
また、本発明を適用した化粧料組成物の製造方法は、コラーゲンが豊富に含まれたプラセンタエキスを含み、機能性に優れた化粧料組成物を提供できる方法となっている。
【実施例0066】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0067】
まず、本発明の化粧料組成物に含まれるコラーゲン含有プラセンタエキスに関して、以下の評価を行った。
【0068】
上述したコラーゲン含有プラセンタエキスの製造方法で製造したコラーゲン含有プラセンタエキスと、2種類の市販のプラセンタエキスA及びプラセンタエキスB(いずれもウマ胎盤由来)について、ヒドロキシプロリン含量の測定を行った。
【0069】
なお、プラセンタエキスA及びプラセンタエキスBは、原料となるウマ胎盤を低温下で凍結、浸漬をくり返して、細胞組織を破砕し、そのプロトプラズマを抽出し、除タン白、限外漏過して、調製したものである。なお、プラセンタエキスA及びプラセンタエキスBの調製方法は、既知の方法を採用することができる。例えば、凍結融解に加えて、酵素抽出の工程を組み合わせることもできる。
【0070】
(1)ヒドロキシプロリン含量の測定
コラーゲン含有プラセンタエキスと、プラセンタエキスA及びプラセンタエキスBの各試料溶液に終濃度6Mとなるよう塩酸を添加し、110℃で24時間加水分解を行った。加水分解後の各試料に対し、オルトフタルアルデヒド標識によるポストカラム法にてアミノ酸分析を行った。また、試料中の総窒素濃度を別途測定しておき、試料の総窒素濃度1%(w/v)あたりのヒドロキシプロリンの濃度(%(w/v))を比較した。
各試料におけるヒドロキシプロリン含量を表1に示す。
【0071】
【0072】
表1に示すように、本発明の化粧料組成物に含まれるコラーゲン含有プラセンタエキスには、市販のプラセンタエキスA及びプラセンタエキスBよりも多くのヒドロキシプロリンが含有されていることが明らかとなった。即ち、コラーゲン含有プラセンタエキスには、プラセンタエキスA及びプラセンタエキスBよりも多くのコラーゲンが含まれることが明らかとなった。なお、原料の由来が異なるウマ胎盤に基づき、同様に、コラーゲン含有プラセンタエキスの製造方法によりコラーゲン含有プラセンタエキスを調製して、試料の総窒素濃度1%(w/v)あたりのヒドロキシプロリンの濃度を測定したところ、0.59(%(w/v))の結果を示すこともあった。
【0073】
(2)線維芽細胞増殖活性試験
次に、コラーゲン含有プラセンタエキスと、プラセンタエキスA及びプラセンタエキスBの各試料について、線維芽細胞増殖活性試験を行った。
ここで、線維芽細胞とは、皮膚の真皮にありコラーゲンを産生する細胞である。この線維芽細胞の増殖を促進する作用(増殖活性)が高いものを、コラーゲン産生促進作用に優れる試料として評価した。
【0074】
(試験方法)
ヒト新生児由来皮膚線維芽細胞を2×104個/ウェルとなるように96ウェルプレートに播種し、0.5%のウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum,略称FBS)を含有するDMEM培地(Dulbecco's Modified Eagle Medium)にて一晩培養した。コラーゲン含有プラセンタエキス、プラセンタエキスA及びプラセンタエキスBについて、それぞれ総窒素量を合わせた濃度を添加した培地に交換し、37℃、5%CO2インキュベーター内で24時間培養した。リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate-buffered saline,略称PBS)で細胞を洗浄し、市販の細胞増殖アッセイキット(株式会社同人化学研究所社製:Cell Counting Kit-8)を10%含有するDMEMを添加し、37℃、5%CO2インキュベーター内で4時間培養した。培養後、450nmの吸光度を測定した。
なお、測定結果は、コラーゲン含有プラセンタエキス、プラセンタエキスA及びプラセンタエキスBを添加しなかった場合の増殖活性を100%とした場合の相対値で示した。また、細胞増殖活性は、下記の式1に示す計算式で算出した。
(式1)
細胞増殖活性(%)={(試料添加群の450nmの吸光度)/(試料無添加群の450nmの吸光度)}×100
線維芽細胞増殖活性試験の結果を表2に示す。
【0075】
【0076】
表2に示すように、本発明の化粧料組成物に含まれるコラーゲン含有プラセンタエキスには、市販のプラセンタエキスA及びプラセンタエキスBに比べて、線維芽細胞増殖活性が著しく向上している結果を示した。
【0077】
続いて、本発明を適用した化粧料組成物の製造方法で製造した化粧料組成物の実施例及び比較例を作製し、線維芽細胞増殖活性試験の評価を行った。
(3)試料の原料成分
まず、表3~表6に示す組成となるように原料成分を添加して、実施例1~15及び比較例1~9の各試料を作製した。なお、以下表3~6に示す各成分の数値は、コラーゲン含有プラセンタエキスは、全量を基準にした体積比率(%(v/v))を示したものであり、上皮細胞成長因子(EGF)は重量体積比率(%(w/v))を示したものである。
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
また、線維芽細胞増殖活性試験については、以下の内容で行った。
(試験方法)
ヒト新生児由来皮膚線維芽細胞を2×104個/ウェルとなるように96ウェルプレートに播種し、0.5%のウシ胎児血清(FBS)を含有するDMEM培地にて一晩培養した。コラーゲン含有プラセンタエキス、上皮細胞成長因子(EGF)、及び、コラーゲン含有プラセンタエキスと上皮細胞成長因子(EGF)の混合物をそれぞれ、表3~5に示す量を添加した培地に交換し、37℃、5%CO2インキュベーター内で24時間培養した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で細胞を洗浄し、市販の細胞増殖アッセイキット(株式会社同人化学研究所社製:Cell Counting Kit-8)を10%含有するDMEMを添加し、37℃、5%CO2インキュベーター内で4時間培養した。培養後、450nmの吸光度を測定した。
なお、測定結果は、コラーゲン含有プラセンタエキス、上皮細胞成長因子(EGF)、及び、コラーゲン含有プラセンタエキスと上皮細胞成長因子(EGF)の混合物を添加しなかった場合の増殖活性を100%とした場合の相対値で示した。また、細胞増殖活性は、下記の式1に示す計算式で算出した。
(式1)
細胞増殖活性(%)={(試料添加群の450nmの吸光度)/(試料無添加群の450nmの吸光度)}×100
なお、比較例1、8及び9は、コラーゲン含有プラセンタエキス、上皮細胞成長因子(EGF)、及び、コラーゲン含有プラセンタエキスと上皮細胞成長因子(EGF)の混合物を添加しなかった場合の増殖活性を示している。
【0083】
線維芽細胞増殖活性試験の結果を
図1~
図3及び表3~表6に示す。なお、
図1は表3に示す数値をグラフ化し、
図2は表4に示す数値をグラフ化し、
図3は表5及び表6に示す数値をグラフ化している。
【0084】
実施例1~実施例6、及び、実施例7~15では、線維芽細胞増殖活性が向上している結果を示した。特に、実施例7~実施例14では、比較例2~4、6、7と比べても、線維芽細胞増殖活性が著しく向上している結果を示した。
【0085】
また、以下では、本発明を適用した化粧料組成物の製造方法で製造した各種化粧料の一例を示す。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
また、上述した各種の化粧料では、その他の成分や異なる配合量を適宜設定することが可能である。例えば、上記以外に、製剤の種類、用途に合わせて、キレート剤(金属イオン封鎖剤)、収れん剤、殺菌剤、皮膚賦活剤(ビタミン類、アミノ酸及びアミノ酸誘導体)、消炎剤、美白剤(アルブチン、トラネキサム酸、ビタミンC誘導体等)を含むことが可能である。また、必要に応じて香料や着色料も配合することも可能である。
本発明は化粧料組成物の製造方法に関する。詳しくは、コラーゲンが豊富に含まれたプラセンタエキスを含み、機能性に優れた化粧料組成物の製造方法に係るものである。