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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153941
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20221005BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20221005BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20221005BHJP
【FI】
B01J35/04 301C
B01J35/04 301K
B01J23/42 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056726
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】後藤 知佳
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 正悟
(72)【発明者】
【氏名】青木 翼
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
4D148AA06
4D148AA13
4D148AA18
4D148AB01
4D148AB02
4D148BA03Y
4D148BA05Y
4D148BA06Y
4D148BA10Y
4D148BA23Y
4D148BA27Y
4D148BA30Y
4D148BA31Y
4D148BA33Y
4D148BA35Y
4D148BA36Y
4D148BA41Y
4D148BB02
4G169AA01
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BA13B
4G169BC75B
4G169CA03
4G169CA07
4G169CA08
4G169CA09
4G169CA13
4G169CA15
4G169DA06
4G169EA19
4G169EB12X
4G169EB12Y
4G169EB14Y
4G169EB15X
4G169EB15Y
4G169EB17X
4G169EB17Y
4G169EB18Y
4G169EB20
4G169FA01
4G169FA02
4G169FA06
(57)【要約】
【課題】隔壁に担持した触媒が剥がれ難く、且つ、浄化性能の向上を図ることが可能なハニカム構造体を提供する。
【解決手段】複数のセル2を取り囲むように配設された多孔質の隔壁1及び隔壁1の外周を囲繞するように配設された外周壁3を有する柱状のハニカム構造部4を備え、隔壁1の厚さが、50~132μmであり、隔壁1の気孔率が、40~55%であり、隔壁1の単位表面積当たりの、当該隔壁1の表面における細孔の開口率が10~15%であり、隔壁1の表面に開口した細孔の総開口面積Sallに対する、開口径が10μm以下の細孔の開口面積S0~10の比の百分率(S0~10/Sall×100%)が90%以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一端面から第二端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁、及び前記隔壁の外周を囲繞するように配設された外周壁を有する、柱状のハニカム構造部を備え、
前記隔壁の厚さが、50~132μmであり、
前記隔壁の気孔率が、40~55%であり、
前記隔壁の単位表面積当たりの、当該隔壁の表面における細孔の開口率が10~15%であり、
前記隔壁の表面に開口した細孔の総開口面積Sallに対する、開口径が10μm以下の細孔の開口面積S0~10の比の百分率(S0~10/Sall×100%)が90%以上である、ハニカム構造体。
【請求項2】
前記隔壁の表面に開口した細孔の総開口面積Sallに対する、開口径が10μm以下の細孔の開口面積S0~10の比の百分率(S0~10/Sall×100%)が94%以上である、請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記隔壁の表面に開口した細孔の総開口面積Sallに対する、開口径が10μmを超え20μm以下の細孔の開口面積S10~20の比の百分率(S10~20/Sall×100%)が6%以下である、請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記隔壁の表面に開口した細孔の総開口面積Sallに対する、開口径が20μm超える細孔の開口面積S20~MAXの比の百分率(S20~MAX/Sall×100%)が1%未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記隔壁の細孔内に排ガス浄化用の酸化触媒又は三元触媒を担持するための触媒担体である、請求項1~4のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記隔壁の細孔内に排ガス浄化用の酸化触媒又は三元触媒が担持され、細孔内の触媒の充填率が20~35%である、請求項1~4のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記隔壁の細孔内に排ガス浄化用の選択的触媒還元触媒を担持するための触媒担体である、請求項1~4のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記隔壁の細孔内に排ガス浄化用の選択的触媒還元触媒が担持され、細孔内の触媒の充填率が20~35%である、請求項1~4いずれか一項に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。更に詳しくは、排ガス浄化用の触媒を担持する触媒担体として特に好適に利用することが可能なハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、社会全体で環境問題に対する意識が高まっている。そのため、各国のガソリン車、ディーゼル車向けに、排ガス排出量が規制されており、CO,HC,NOx等の有害成分を除去する様々な技術が開発されている。こうした排ガス中の有害成分を除去する際には、触媒を用いて有害成分に化学反応を起こさせて比較的無害な別の成分に変化させることが一般的である。例えば、排ガス中の有害成分を除去するための触媒として、排ガス浄化用の酸化触媒、三元触媒、又は選択的触媒還元触媒を挙げることができる。そして、このような排ガス浄化用の触媒を担持するための触媒担体として、ハニカム構造体が用いられている。
【0003】
従来、このハニカム構造体としては、流体の流路となる複数のセルを区画する多孔質の隔壁を有するハニカム構造部を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。そして、このようなハニカム構造体に対して、上述した排ガス浄化用の触媒を担持(別言すれば、コート)して、ガソリン車やディーゼル車用の排ガス浄化装置が作製されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-194342公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、近年の厳しい排ガス排出量規制に対応するためには、ハニカム構造体に担持する触媒の量を多くする必要がある。しかしながら、従来のハニカム構造体は、担持する触媒の量を多くした場合に、以下のような問題があった。
【0006】
従来のハニカム構造体は、流体の流路となるセルが触媒で塞がれ、ハニカム構造体の圧損が上昇するという問題があった。また、セルを区画する隔壁の表面に大量の触媒が担持されると、担持された触媒が隔壁の表面から剥がれ易くなるという問題があった。
【0007】
更に、ハニカム構造体を構成する隔壁は、多孔質材料によって形成されているため、隔壁に触媒を担持した場合、隔壁の表面だけでなく、多孔質の隔壁の細孔内部にも触媒が充填される。そして、担持する触媒の量を多くために、隔壁の気孔率を高くして細孔内に触媒を充填させると、隔壁の細孔を経路としたガスの拡散性が悪くなり、触媒を有効に利用できないという問題があった。例えば、ガスの拡散性が悪くなり、触媒を有効に利用できないようになると、排ガス浄化用の触媒を担持したハニカム構造体の浄化性能が低下してしまう。以下、ハニカム構造体の隔壁の気孔率を高くすることを、「ハニカム構造体の高気孔率化」又は「隔壁の高気孔率化」ということがある。
【0008】
また、触媒担体としてのハニカム構造体に対しては、低温での浄化性能の向上に貢献するため、昇温性能の向上についての要求がある。ハニカム構造体の昇温性能の向上に対しては、例えば、隔壁の気孔率を高くしてハニカム構造体を軽量化したり、ハニカム構造体に形成されたセルの開口率を高くしたりすることが考えられる。以下、ハニカム構造体に形成されたセルの開口率を高くすることを、ハニカム構造体の「高開口率化」ということがある。しかしながら、ハニカム構造体に対して軽量化や高開口率化を行うと、ハニカム構造体自体の強度が低下するため、ハニカム構造体の軽量化や高開口率化には限定があり、昇温性能の向上についての要求に対して十分な効果が得られないことがあった。更に、ハニカム構造体に対しての軽量化は、隔壁の高気孔率化を伴うため、上述したような浄化性能の低下を招くこともある。
【0009】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明によれば、排ガス浄化用の触媒を担持する触媒担体として特に好適に利用することが可能なハニカム構造体が提供される。特に、本発明は、隔壁に担持した触媒が剥がれ難く、且つ、浄化性能の向上を図ることが可能なハニカム構造体が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、以下に示す、ハニカム構造体が提供される。
【0011】
[1] 第一端面から第二端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁、及び前記隔壁の外周を囲繞するように配設された外周壁を有する、柱状のハニカム構造部を備え、
前記隔壁の厚さが、50~132μmであり、
前記隔壁の気孔率が、40~55%であり、
前記隔壁の単位表面積当たりの、当該隔壁の表面における細孔の開口率が10~15%であり、
前記隔壁の表面に開口した細孔の総開口面積Sallに対する、開口径が10μm以下の細孔の開口面積S0~10の比の百分率(S0~10/Sall×100%)が90%以上である、ハニカム構造体。
【0012】
[2] 前記隔壁の表面に開口した細孔の総開口面積Sallに対する、開口径が10μm以下の細孔の開口面積S0~10の比の百分率(S0~10/Sall×100%)が94%以上である、前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0013】
[3] 前記隔壁の表面に開口した細孔の総開口面積Sallに対する、開口径が10μmを超え20μm以下の細孔の開口面積S10~20の比の百分率(S10~20/Sall×100%)が6%以下である、前記[1]又は[2]に記載のハニカム構造体。
【0014】
[4] 前記隔壁の表面に開口した細孔の総開口面積Sallに対する、開口径が20μm超える細孔の開口面積S20~MAXの比の百分率(S20~MAX/Sall×100%)が1%未満である、前記[1]~[3]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0015】
[5] 前記隔壁の細孔内に排ガス浄化用の酸化触媒又は三元触媒を担持するための触媒担体である、前記[1]~[4]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0016】
[6] 前記隔壁の細孔内に排ガス浄化用の酸化触媒又は三元触媒が担持され、細孔内の触媒の充填率が20~35%である、前記[1]~[4]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0017】
[7] 前記隔壁の細孔内に排ガス浄化用の選択的触媒還元触媒を担持するための触媒担体である、前記[1]~[4]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0018】
[8] 前記隔壁の細孔内に排ガス浄化用の選択的触媒還元触媒が担持され、細孔内の触媒の充填率が20~35%である、前記[1]~[4]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0019】
本発明のハニカム構造体は、排ガス浄化用の触媒を担持する触媒担体として特に好適に利用することができ、隔壁に担持した触媒が剥がれ難く、且つ、浄化性能の向上を図ることができるという効果を奏する。特に、本発明のハニカム構造体は、昇温性能に優れ、低温での浄化性能の向上が期待できる。即ち、本発明のハニカム構造体は、ハニカム構造体に担持した触媒の浄化性能が発現する温度特性である「ライトオフ性能(Light-off performance)」の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた斜視図である。
図2図1に示すハニカム構造体の流入端面側からみた平面図である。
図3図2のA-A’断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0022】
(1)ハニカム構造体:
図1図3に示すように、本発明のハニカム構造体の第一実施形態は、柱状のハニカム構造部4を備えたハニカム構造体100である。ハニカム構造部4は、第一端面11から第二端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1、及びこの隔壁1の外周を囲繞するように配設された外周壁3を有する。
【0023】
図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた斜視図である。図2は、図1に示すハニカム構造体の流入端面側からみた平面図である。図3は、図2のA-A’断面を模式的に示す断面図である。
【0024】
ハニカム構造体100は、ガソリン車やディーゼル車などの自動車のエンジンから排出される排ガスを浄化するための浄化部材として好適に利用することができる。特に、ハニカム構造体100は、排ガス浄化用の触媒を担持するための触媒担体として好適に利用することができる。
【0025】
ハニカム構造体100は、ハニカム構造部4を構成する隔壁1が、以下のように構成されている。まず、隔壁1の厚さが、50~132μmであり、隔壁1の気孔率が、40~55%である。また、隔壁1の単位表面積当たりの、隔壁1の表面における細孔の開口率が10~15%である。更に、隔壁1の表面に開口した細孔の総開口面積Sallに対する、開口径が10μm以下の細孔の開口面積S0~10の比の百分率(S0~10/Sall×100%)が90%以上である。
【0026】
上述したように構成されたハニカム構造体100は、排ガス浄化用の触媒を担持する触媒担体として特に好適に利用することができ、隔壁1に担持した触媒が剥がれ難く、且つ、浄化性能の向上を図ることができるという効果を奏する。特に、本実施形態のハニカム構造体100は、昇温性能に優れ、低温での浄化性能の向上が期待できる。即ち、本実施形態のハニカム構造体100は、ハニカム構造体100に担持した触媒の浄化性能が発現する温度特性であるライトオフ性能の向上を図ることができる。
【0027】
上述したように、隔壁1の厚さは50~132μmである。隔壁1の厚さが50μm未満であると、ハニカム構造体100の機械的強度が低下してしまう。一方、隔壁1の厚さが132μmを超えると、ハニカム構造体100の昇温性能が低下してしまう。ハニカム構造体100の隔壁1の厚さは、特に限定されることはないが、60~100μmであることが好ましく、70~90μmであることが更に好ましい。隔壁1の厚さは、例えば、走査型電子顕微鏡又はマイクロスコープ(microscope)を用いて測定することができる。
【0028】
隔壁1の気孔率は、40~55%であり、47~52%であることが好ましく、48~50%であることが更に好ましい。隔壁1の気孔率は、水銀圧入法によって測定された値である。隔壁1の気孔率の測定は、例えば、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて行うことができる。気孔率の測定は、ハニカム構造体100から隔壁1の一部を切り出して試験片とし、このようにして得られた試験片を用いて行うことができる。隔壁1の気孔率が40%未満であると、ハニカム構造体100の昇温性能が低下してしまう。一方、隔壁1の気孔率が55%を超えると、ハニカム構造体100の機械的強度が低下してしまう。
【0029】
隔壁1の単位表面積当たりの、隔壁1の表面における細孔の開口率は、10~15%であり、11~14%であることが好ましく、12~13%であることが更に好ましい。隔壁1の表面における細孔の開口率は、以下の方法によって測定することができる。走査型電子顕微鏡(SEM)で隔壁1の表面の写真を撮影し、撮影した画像において、隔壁1の実体部分と細孔とを二値化ソフトで二値化して、それぞれの面積割合を算出する。隔壁1の表面の全面積に対する、細孔の面積の比の百分率(%)が、隔壁1の表面における細孔の開口率(%)となる。上述したような隔壁1の表面における細孔の開口率の測定は、ハニカム構造体100から隔壁1の一部を切り出して試験片とし、このようにして得られた試験片を用いて行うことができる。隔壁1の表面における細孔の開口率が10%未満であると、ハニカム構造体100を触媒担体として用いた際に、隔壁1の細孔内への触媒の充填率が低くなってしまう。一方、隔壁1の表面における細孔の開口率が15%を超えると、ハニカム構造体100の昇温性能が低下してしまう。
【0030】
隔壁1の表面に開口した細孔の総開口面積Sallに対する、開口径が10μm以下の細孔の開口面積S0~10の比の百分率(S0~10/Sall×100%)は、90%以上である。以下、「隔壁1の表面に開口した細孔の総開口面積Sallに対する、開口径が10μm以下の細孔の開口面積S0~10の比の百分率(S0~10/Sall×100%)」のことを、「開口径が10μm以下の細孔の開口面積率」ということがある。開口径が10μm以下の細孔の開口面積率が90%未満であると、隔壁1に担持した触媒が剥がれ難くなる。また、ハニカム構造体100の昇温性能が低下し、ハニカム構造体100に担持した触媒の浄化性能が十分に発揮されないことがある。開口径が10μm以下の細孔の開口面積率は、94%以上であることが好ましい。なお、開口径が10μm以下の細孔の開口面積率の上限値については特に制限はなく、例えば、98%以下である。このため、例えば、開口径が10μm以下の細孔の開口面積率は、90~97%であることが好ましく、94~96%であることが更に好ましいともいえる。開口径が10μm以下の細孔の開口面積率は、以下の方法で測定することができる。
【0031】
まず、「細孔の総開口面積Sall」及び「開口径が10μm以下の細孔の開口面積S0~10」を、以下のようにして測定する。走査型電子顕微鏡(SEM)で隔壁1の表面の写真を撮影し、撮影した画像において、隔壁1の実体部分と細孔とを二値化ソフトで二値化して、それぞれの面積割合を算出する。より詳細な測定方法については以下の通りである。
【0032】
まず、ハニカム構造体100の隔壁1表面が観察できるように、ハニカム構造体100をセル2の延びる方向に平行に切断する。次に、隔壁1表面の画像を、走査電子顕微鏡「S-3200N(商品名):HITACHI社製」の反射電子(アニュラー検出器)によって撮像する。隔壁1表面を撮像する範囲(画像処理範囲)は、撮像する面に対して垂直に立設された二枚の隔壁1相互間の隔壁1表面とする。このような隔壁1表面を、走査電子顕微鏡(以下、「SEM」ともいう)により倍率100倍、1200×1000μmの範囲で、20箇所の視野について撮像する。
【0033】
次に、得られた画像を、元画像と平滑化した画像の差分を取り、差分画像において輝度20を閾値として二値化処理を行う。このような閾値を設定した二値化処理は、動的閾値法と称されることがある。この二値化処理により、得られた画像中の細孔の開口部分(別言すれば、隔壁1表面の空隙部分)を抽出することができる。上記のようにして二値化処理を行った後の画像を「解析領域」とする。
【0034】
次に、「解析領域」に、直径10μm以下の内接円を当てはめる。この際、隔壁1の実体部分に、上記内接円が重ならないようにする。内接円が当てはめられた場合には、この内接円の位置を座標として特定する。なお、直径10μm以下の内接円を当てはめる際には、隔壁1の実体部分と内接円とが重ならないように、直径10μm以下で且つ直径が最大となる内接円を当てめる。また、この内接円(即ち、直径10μm以下で且つ直径が最大となる内接円)の直径を算出し、内接円の直径から、当該内接円の面積を算出する。内接円の位置については、画像内にX軸とY軸とを規定して、内接円の中心のX座標とY座標とを求めることが好ましい。上記内接円が当てはめられた部分(細孔)を、「開口領域内に最大直径10μm以下の内接円が描かれる細孔」とする。そして、この「開口領域内に最大直径10μm以下の内接円が描かれる細孔」を、「開口径が10μm以下の細孔」とする。
【0035】
次に、当てはめられた内接円を、「解析領域」から更に除く処理を行う。その後、解析領域(内接円が除かれた解析領域)に、再度、上述した方法と同様の方法で直径10μm以下の内接円を当てはめて、内接円が当てはめられた場合には、この内接円の位置の座標を特定し、更に、この内接円の直径から、当該内接円の面積を算出する。「直径10μm以下の内接円」が当てはめられなくなるまで繰り返す。
【0036】
以上の操作によって、画像中の気孔内に描かれる内接円のうち、直径10μm以下の内接円を全て求め、得られた内接円の面積を加算して、「直径10μm以下の内接円の面積の総和」を算出する。そして、算出した「直径10μm以下の内接円の面積の総和」が、「開口径が10μm以下の細孔の開口面積S0~10」となる。
【0037】
また、「細孔の総開口面積Sall」については、上記した二値化処理を行った画像から算出することができる。具体的には、以上説明した方法により「解析領域」中の「開口径が10μm以下の細孔の開口面積S0~10」を求めた後、その後の「解析領域」に対して、直径10μm超の内接円を当てはめる。そして、直径10μm超の内接円が当て嵌められた部分を、「開口領域内に最大直径10μm超の内接円が描かれる細孔」とし、その細孔を「開口径が10μm超の細孔」とする。直径10μm超の内接円が当てはめられた場合には、その内接円の位置の座標を特定し、更に、この内接円の直径から、当該内接円の面積を算出する。次に、当てはめられた内接円を、「解析領域」から更に除く処理を行う。その後、解析領域(内接円が除かれた解析領域)に、再度、上述した方法と同様の方法で直径10μm超の内接円を当てはめて、内接円が当てはめられた場合には、この内接円の位置の座標を特定し、更に、この内接円の直径から、当該内接円の面積を算出する。そして、「直径10μm超の内接円」が当てはめられなくなるまで繰り返し、更に、その後、その解析領域(内接円が除かれた解析領域)に対して、直径10μm以下の内接円を当てはめて、当該内接円が当てはめられなくなるまで繰り返す。以上の操作によって、画像中の気孔内に描かれる内接円を全て求め、得られた内接円の面積を加算して、「開口径が10μm超の細孔の面積の総和」を算出する。そして、算出した「直径10μm超の内接円の面積の総和」が、「開口径が10μm超の細孔の開口面積S10~MAX」となる。以上のようにして算出した「開口径が10μm以下の細孔の開口面積S0~10」と、先に算出した「開口径が10μm超の細孔の開口面積S10~MAX」との和が、「細孔の総開口面積Sall」となる。また、「細孔の総開口面積Sall」を算出する際に、上述した方法に従って、例えば、直径10μm超、20μm以下の内接円を当てはめる操作を行うことで、「開口径が10μmを超え20μm以下の細孔の開口面積S10~20」を算出することができる。更に、その後の「解析領域」に対して、20μm超の内接円を当てはめる操作を行うことで、「開口径が20μm超える細孔の開口面積S20~MAX」を算出することができる。
【0038】
ハニカム構造体100は、開口径が10μm以下の細孔の開口面積率が90%以上であるため、開口径が10μm超となる細孔の開口面積率は10%以下となる。ここで、特に限定されることはないが、隔壁1の表面に開口した細孔の総開口面積Sallに対する、開口径が10μmを超え20μm以下の細孔の開口面積S10~20の比の百分率(S10~20/Sall×100%)は、10%以下であることが好ましく、6%以下であることが更に好ましい。このように構成することによって、隔壁に担持した触媒がより剥がれ難く、且つ、浄化性能の向上をより図ることができる。以下、「隔壁1の表面に開口した細孔の総開口面積Sallに対する、開口径が10μmを超え20μm以下の細孔の開口面積S10~20の比の百分率(S10~20/Sall×100%)」のことを、「開口径が10~20μmの細孔の開口面積率」ということがある。
【0039】
また、隔壁1の表面に開口した細孔の総開口面積Sallに対する、開口径が20μm超える細孔の開口面積S20~MAXの比の百分率(S20~MAX/Sall×100%)が1%未満であることが好ましく、実質的な測定限界値以下の値を示すことが更に好ましい。このように構成することによって、隔壁に担持した触媒がより剥がれ難く、且つ、浄化性能の向上をより図ることができる。以下、「隔壁1の表面に開口した細孔の総開口面積Sallに対する、開口径が20μm超える細孔の開口面積S20~MAXの比の百分率(S20~MAX/Sall×100%)」のことを、「開口径が20μm超の細孔の開口面積率」ということがある。
【0040】
隔壁1の平均細孔径については特に制限はないが、例えば、隔壁1の平均細孔径は、3~12μmであることが好ましく、4~10μmであることが更に好ましく、5~8μmであることが特に好ましい。隔壁1の平均細孔径は、水銀圧入法によって測定された値である。隔壁1の平均細孔径の測定は、例えば、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて行うことができる。平均細孔径の測定は、気孔率を測定するための上記した試験片を用いて行うことができる。
【0041】
ハニカム構造部4に形成されているセル2の形状については特に制限はない。例えば、セル2の延びる方向に直交する断面における、セル2の形状としては、多角形、円形、楕円形等を挙げることができる。多角形としては、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等を挙げることができる。なお、セル2の形状は、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形であることが好ましい。また、セル2の形状については、全てのセル2の形状が同一形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。例えば、図示は省略するが、四角形のセルと八角形のセルとが混在したものであってもよい。また、セル2の大きさについては、全てのセル2の大きさが同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、図示は省略するが、複数のセルのうち、一部のセルの大きさを大きくし、他のセルの大きさを相対的に小さくしてもよい。本発明において、セル2とは、隔壁1によって取り囲まれた空間のことを意味する。
【0042】
隔壁1によって区画形成されるセル2のセル密度については特に制限はないが、例えば、ハニカム構造部4のセル密度は、31~93個/cmであることが好ましく、45~62個/cmであることが更に好ましい。セル密度が小さ過ぎると、ハニカム構造体100を触媒担体として用いた際に、浄化性能が低下することがある。一方で、セル密度が大き過ぎると、使用時における圧力損失が増大することがある。
【0043】
ハニカム構造部4の外周壁3は、隔壁1と一体的に構成されたものであってもよいし、隔壁1の外周側に外周コート材を塗工することによって形成した外周コート層であってもよい。例えば、図示は省略するが、外周コート層は、製造時において、隔壁と外周壁とを一体的に形成した後、形成された外周壁を、研削加工等の公知の方法によって除去した後、隔壁の外周側に設けることができる。
【0044】
ハニカム構造部4の形状については特に制限はない。ハニカム構造部4の形状としては、第一端面11(例えば、流入端面)及び第二端面12(例えば、流出端面)の形状が、円形、楕円形、多角形等の柱状を挙げることができる。
【0045】
ハニカム構造部4の大きさ、例えば、第一端面11から第二端面12までの長さや、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に直交する断面の大きさについては、特に制限はない。ハニカム構造体100を、排ガス浄化用のフィルタとして用いた際に、最適な浄化性能を得るように、各大きさを適宜選択すればよい。
【0046】
隔壁1の材料については特に制限はない。隔壁1の材料としては、例えば、セラミックを挙げることができる。より具体的には、隔壁1の材料として、コージェライト、ムライト、アルミナ、SiCを挙げることができる。
【0047】
ハニカム構造体100は、複数のセル2を区画形成する隔壁1に、排ガス浄化用の触媒が担持されていてもよい。隔壁1に触媒を担持するとは、隔壁1の表面及び隔壁1に形成された細孔の内壁に、触媒がコーティングされることをいう。このように構成することによって、排ガス中のCOやNOxやHCなどを触媒反応によって無害な物質にすることができる。例えば、排ガス浄化用の触媒としては、酸化触媒、選択的触媒還元触媒、三元触媒等を挙げることができる。
【0048】
酸化触媒としては、貴金属を含有する触媒を挙げることができる。酸化触媒として、具体的には、白金(Pt)、パラジウム(Pd)及びロジウム(Rh)からなる群より選択される少なくとも一種を含有するもの等を挙げることができる。隔壁1に酸化触媒が担持されている場合には、酸化触媒の担持量が、50~150g/Lであることが好ましい。ここで、触媒の担持量(g/L)とは、ハニカム構造部4の単位体積(1L)当たりに担持される触媒の量(g)のことである。
【0049】
三元触媒とは、主に炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)を浄化する触媒のことをいう。三元触媒としては、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)を含む触媒を挙げることができる。三元触媒の担持量が、150~300g/Lであることが好ましい。
【0050】
隔壁1の細孔内に排ガス浄化用の酸化触媒又は三元触媒が担持されている場合には、隔壁1の細孔内の触媒の充填率が20~35%であることが好ましく、25~30%であることが更に好ましい。ここで、隔壁1の細孔内の触媒の充填率は、以下の方法で測定することができる。走査型電子顕微鏡(SEM)で隔壁1の断面の写真を撮影し、撮影した画像において、隔壁1の実体部分と細孔と触媒とを、画像ソフトで三値化して、隔壁1の細孔内への触媒の充填面積割合を算出する。
【0051】
選択的触媒還元触媒は、被浄化成分を選択還元する触媒である。以下、選択的触媒還元触媒を「SCR触媒」ともいう。「SCR」とは、「Selective Catalytic Reduction」の略である。選択的触媒還元触媒は、ゼオライト型の選択的触媒還元触媒又はバナジウム型の選択的触媒還元触媒であることが好ましい。ゼオライト型の選択的触媒還元触媒とは、ゼオライトを含有する触媒活性成分を含む触媒のことをいう。ゼオライト型の選択的触媒還元触媒として、例えば、金属置換されたゼオライトを含む選択的触媒還元触媒を挙げることができる。ゼオライトを金属置換する金属としては、鉄(Fe)、銅(Cu)を挙げることができる。バナジウム型の選択的触媒還元触媒とは、バナジウムを含有する触媒活性成分を含む触媒のことをいう。バナジウム型の選択的触媒還元触媒としては、例えば、バナジウムやタングステンを主たる成分として含有する触媒を挙げることができる。選択的触媒還元触媒の担持量が、100~250g/Lであることが好ましい。
【0052】
隔壁1の細孔内に排ガス浄化用の選択的触媒還元触媒が担持されている場合には、隔壁1の細孔内の触媒の充填率が20~35%であることが好ましく、25~30%であることが更に好ましい。隔壁1の細孔内の触媒の充填率は、上述した測定方法によって測定することができる。
【0053】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
図1図3に示す本実施形態のハニカム構造体100の製造方法については、特に制限はなく、例えば、以下のような方法により製造することができる。まず、ハニカム構造部を作製するための可塑性の坏土を調製する。ハニカム構造部を作製するための坏土は、原料粉末として、前述のハニカム構造部の好適な材料の中から選ばれた材料に、適宜、バインダ等の添加剤、造孔材、及び水を添加することによって調製することができる。原料粉末としては、例えば、コージェライト化原料を挙げることができる。コージェライト化原料とは、焼成されることによりコージェライトになる原料のことであり、具体的には、シリカが42~56質量%、アルミナが30~45質量%、マグネシアが12~16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合された原料である。
【0054】
造孔材としては、ポリアクリル酸系のポリマー、澱粉、発泡樹脂及びポリメタクリル酸メチル樹脂(Polymethyl methacrylate:PMMA)等の高分子化合物の他、コークス(骸炭)を例示することができる。特に、造孔材としては、ポリアクリル酸系のポリマーを使用することが好適である。バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の有機バインダを例示することができる。特に、バインダとしては、メチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルセルロースを併用することが好適である。界面活性剤としては、特に限定されないが、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコールなどが挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、コージェライト化原料100質量部に対して5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、例えば、0.5~2質量部とすることができる。
【0055】
坏土の調製においては、造孔材の添加量を調節することにより、隔壁の気孔率を調整することができる。また、隔壁の表面における細孔の開口率、及び開口径が10μm以下の細孔の開口面積率を調整するために、原料のシリカの粒子径を調整することが好ましい。例えば、粒子径10μm以下のシリカを使用して坏土を調製することが好ましい。
【0056】
次に、このようにして得られた坏土を押出成形することにより、複数のセルを区画形成する隔壁、及びこの隔壁を囲繞するように配設された外周壁を有する、柱状のハニカム成形体を作製する。
【0057】
次に、得られたハニカム成形体を、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥する。次に、ハニカム成形体を焼成することにより、ハニカム構造体を製造する。焼成温度及び焼成雰囲気は原料により異なり、当業者であれば、選択された材料に最適な焼成温度及び焼成雰囲気を選択することができる。以上のようにして、本実施形態のハニカム構造体を製造することができる。
【実施例0058】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
コージェライト化原料として、タルク、カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウム、及び多孔質シリカを用意した。なお、各原料については、タルクを41質量%、カオリンを13質量%、焼カオリンを13質量%、アルミナを12質量%、水酸化アルミニウム12質量%、溶融シリカを8質量%、結晶シリカを1質量%とした。
【0060】
次に、コージェライト化原料100質量部に対して、造孔材を2.2質量部、バインダを8.0質量部、界面活性剤を1.1質量部、水を48質量部加えて坏土を調製した。造孔材としては、ポリアクリル酸系のポリマーを使用した。バインダとしては、メチルセルロースを使用した。界面活性剤としては、エチレングリコールを使用した。
【0061】
次に、得られた坏土を、押出成形機を用いて成形し、ハニカム成形体を作製した。次に、得られたハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて更に乾燥した。ハニカム成形体におけるセルの形状は、四角形とした。
【0062】
次に、ハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。次に、乾燥したハニカム成形体を、脱脂し、焼成して、実施例1のハニカム構造体を製造した。
【0063】
実施例1のハニカム構造体は、ハニカム構造部の端面の直径が266.7mmであり、セルの延びる方向の全長が101.6mmであった。ハニカム構造部の直径及び全長を表1に示す。また、ハニカム構造体のハニカム構造部は、隔壁の厚さが0.114mmであり、セル密度が62.0個/cmであった。また、隔壁の気孔率は45%であった。各結果を表1に示す。なお、隔壁の気孔率の測定は、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて行った。気孔率の測定においては、ハニカム構造体から隔壁の一部を切り出して試験片とし、得られた試験片を用いて気孔率の測定を行った。試験片は、縦、横、高さのそれぞれの長さが、約10mm、約10mm、約20mmの直方体のものとした。試験片の採取箇所については、ハニカム構造部の軸方向の中心付近とした。
【0064】
実施例1のハニカム構造体について、以下の方法で、隔壁の単位表面積当たりの隔壁の表面における細孔の開口率を測定した。隔壁の表面における細孔の開口率は、13.2%であった。結果を表1の「細孔の開口率(%)」の欄に示す。
【0065】
[隔壁の表面における細孔の開口率(%)]
走査型電子顕微鏡(SEM)で隔壁の表面の写真を撮影し、撮影した画像において、隔壁の実体部分と細孔とを二値化ソフトで二値化して、それぞれの面積割合を算出した。隔壁の表面の全面積に対する、細孔の面積の比の百分率(%)を、隔壁の表面における細孔の開口率(%)とした。
【0066】
実施例1のハニカム構造体について、以下の方法で、「開口径が10μm以下の細孔の開口面積率」、「開口径が10~20μmの細孔の開口面積率」、及び「開口径が20μm超の細孔の開口面積率」を測定した。各結果を、表1に示す。
【0067】
[開口径が10μm以下の細孔の開口面積率(%)、開口径が10~20μmの細孔の開口面積率(%)、開口径が20μm超の細孔の開口面積率(%)]
走査型電子顕微鏡(SEM)で隔壁の表面の写真を撮影し、撮影した画像において、隔壁の実体部分と細孔とを二値化ソフトで二値化して、それぞれの面積割合を算出した。開口径が10μm以下の細孔、開口径が10~20μmの細孔、及び開口径が20μm超の細孔の面積については、画像解析において、各開口径に対応する直径の内接円を当てはめて、それぞれの内接円の直径から、当該内接円の面積を算出することによって算出した。具体的には、上述した実施形態にて説明したように、まず、得られた画像を、元画像と平滑化した画像の差分を取り、差分画像において輝度20を閾値として二値化処理を行って解析領域を得た。このようにして得られた解析領域に、直径10μm以下の内接円、直径10μm超、20μm以下の内接円、及び直径20μm超の内接円をそれぞれ順次当てはめて、それぞれの内接円の直径から、各内接円の面積を算出した。そして、開口径が10μm以下の細孔の開口面積、開口径が10~20μmの細孔の開口面積、及び、開口径が20μm超の細孔の開口面積をそれぞれ求め、それらの比率(開口面積率(%))を算出した。
【0068】
【表1】
【0069】
実施例1のハニカム構造体の隔壁に、以下の方法で触媒を担持した。まず、酸化触媒を含む触媒スラリーを調製した。具体的には、アルミナ粉末にPt含有硝酸溶液を加え混ぜた後、炉で400℃で焼き付けした。その後、得られた粉末に水とアルミナゾルとを加え触媒スラリーを調製した。次に、得られた触媒スラリーを、ハニカム構造体に対して、乾燥後の単位体積当たりの担持量が100g/Lとなるように担持した。触媒の担持においては、ハニカム構造体をディッピング(Dipping)して、余分な触媒スラリーを空気にて吹き飛ばして、含浸させた。そして150℃の温度で乾燥させ、さらに400℃、2時間の熱処理を行うことにより、触媒を担持した触媒担持ハニカム構造体を得た。実施例1のハニカム構造体に担持した触媒の担持量は、100g/Lである。
【0070】
触媒担持ハニカム構造体について、触媒の担持状態をSEMで確認した。隔壁に対する触媒の担持状態が基材の上に存在している場合を、表2の「触媒の担持状態」の欄において「On-wall」と記す。また、更に、隔壁に対する触媒の担持状態が細孔の中に存在している場合を、表2の「触媒の担持状態」の欄において「IN-wall」と記す。
【0071】
また、触媒担持ハニカム構造体の隔壁の触媒充填率(%)を、SEM写真を元に、触媒、基材、細孔を三値化により面積を求め、触媒面積/細孔面積として測定した。測定結果を表2に示す。
【0072】
触媒担持ハニカム構造体について、「アイソスタティック強度(MPa)」、「HC浄化性能(%)」、「ライトオフ性能(1)」、「ライトオフ性能(2)」、「PD」、「HVT後浄化性能(%)」、「HVT後質量(%)」、及び「触媒剥がれ有無」の評価を行った。各評価方法を以下の通りである。各結果を表2に示す。
【0073】
[アイソスタティック強度(MPa)]
アイソスタティック(Isostatic)強度の測定は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格(JASO規格)のM505-87で規定されているアイソスタティック破壊強度試験に基づいて行った。アイソスタティック破壊強度試験は、ゴムの筒状容器に、ハニカム構造体を入れてアルミ製板で蓋をし、水中で等方加圧圧縮を行う試験である。すなわち、アイソスタティック破壊強度試験は、缶体に、ハニカム構造体が外周面把持される場合の圧縮負荷加重を模擬した試験である。このアイソスタティック破壊強度試験によって測定されるアイソスタティック強度は、ハニカム構造体が破壊したときの加圧圧力値(MPa)で示される。アイソスタティック強度の評価においては、1.0MPa以上である場合を合格とする。
【0074】
[HC浄化性能(%)]
HC浄化性能の測定は、まず、上記した触媒を担持した触媒担持ハニカム構造体(以下、単に「触媒担持ハニカム構造体」という)に、HCを含む試験用ガスを流した。その後、この触媒担持ハニカム構造体から排出された排出ガスのNOx量をガス分析計で分析した。触媒担持ハニカム構造体に流入させる試験用ガスの温度については200℃とした。なお、触媒担持ハニカム構造体及び試験用ガスは、ヒーターにより温度調整した。ヒーターは、赤外線イメージ炉を用いた。試験用ガスは、窒素に、HC(プロピレン80%+プロパン20%)300ppm、二酸化炭素5体積%、一酸化炭素1000ppm、酸素8体積%、一酸化窒素1000ppm(体積基準)及び水5体積%を混合させたガスを用いた。この試験用ガスに関しては、水と、その他のガスを混合した混合ガスとを別々に準備しておき、試験を行う時に配管中でこれらを混合させて用いた。ガス分析計は、「HORIBA社製、MEXA9100EGR(商品名)」を用いた。また、試験用ガスが触媒担持ハニカム構造体に流入するときの空間速度は、120000(時間-1)とした。
【0075】
[ライトオフ性能(1)]
300℃の状態の触媒担持ハニカム構造体に対し、エンジンを加速して600℃になるまで排ガスを流した。その際、触媒担持ハニカム構造体内部温度が550℃に到達するまでの時間(秒)を測定し、550℃到達に要する時間(秒)をライトオフ性能(1)の評価結果とした。
【0076】
[ライトオフ性能(2)]
各実施例の触媒担持ハニカム構造体に対し、エンジンを加速して600℃になるまで排ガスを流した。その際、その内部温度(℃)を測定した。また、後述する比較例1の触媒担持ハニカム構造体に対しても、同様の方法で担体を昇温して、その内部温度(℃)を測定した。各実施例の触媒担持ハニカム構造体と、比較例1の触媒担持ハニカム構造体との温度差(℃)を算出し、算出した温度差(℃)をライトオフ性能(2)の評価結果とした。
【0077】
[PD]
PDとは、圧力損失のことである。PDの評価は、室温(25℃)条件下において11m/分の流量でエアーを触媒担持ハニカム構造体に流通させた。この状態で、エアー流入側の圧力とエアー流出側の圧力との差を測定した。この圧力の差を圧力損失として算出した。
【0078】
[HVT後浄化性能(%)]
HVTとは、過熱振動試験のことである。HVT後浄化性能の評価は、高温の燃焼ガスを触媒担持ハニカム構造体に流しながら、排ガスの流路方向に振動を与える評価である。HVT後浄化性能の評価においては、試験前後にクラック発生が無い場合を合格とする。
【0079】
[HVT後質量(%)]
HVTとは、過熱振動試験のことである。HVT後質量とは、高温の燃焼ガスを触媒担持ハニカム構造体に流しながら、排ガスの流路方向に振動を与える評価であり、試験前後で触媒剥がれによる質量変化がないことを確認する。HVT後浄化性能の評価においては、試験前後に質量差が1%以下である場合を合格とする。
【0080】
[触媒剥がれ有無]
まず、各実施例の触媒担持ハニカム構造体に対し、0.2MPaGのエアーでブローしてハニカム構造体に固着していない触媒を除去する。次に、エアーブローした後の触媒担持ハニカム構造体の質量を測定する。測定した質量を「初期質量W1」とする。次に、ビーカーに触媒担持ハニカム構造体が十分浸る程度の純水を入れ、エアーブローした触媒担持ハニカム構造体を静かに設置する。超音波洗浄機にビーカーを入れ、発振周波数38~45kHzで30分間ビーカー内の触媒担持ハニカム構造体を振動させる。次に、超音波洗浄機から触媒担持ハニカム構造体を取り出し、純水を入れたビーカー内で10秒間上下させ洗浄する。このようにして洗浄した触媒担持ハニカム構造体をビーカーから取り出し、触媒担持ハニカム構造体に付着した水分を除去した後、200℃一時間乾燥させる。その後、乾燥させた触媒担持ハニカム構造体の質量(評価後の質量)を測定した。ここで、上記した評価後の質量を「評価後質量W2」とする。そして、触媒剥がれによる触媒担持ハニカム構造体の「質量の減少率」を、式(1):質量の減少率(%)=(W1―W2)/W1×100%にて算出して、下記の評価基準により触媒剥がれの有無を確認した。質量の減少率が1.0%以上あった場合を、触媒剥がれが有るとし、表2の「触媒剥がれ有無」の欄にて「有」と記す。一方、質量の減少率が1.0%未満の状態の場合を、触媒剥がれが無しとし、表2の「触媒剥がれ有無」の欄にて「無」と記す。
【0081】
【表2】
【0082】
(実施例2~9)
実施例2~9においては、実施例1に対して原料や口金を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でハニカム構造体を製造した。
具体的には、実施例2は、隔壁の厚さを薄く0.114mmから0.089mmに変更した。
実施例3は、隔壁の厚さを厚く0.114mmから0.132mmに変更した。
実施例4は、気孔率を50%に変更した。
実施例5は、気孔率を47%に変更した。
実施例6は、隔壁の厚さを薄く0.114mmから0.064mmに変更した。
実施例7は、気孔率を47%に変更した。
実施例8は、気孔率を45%とした。
実施例9は、気孔率を50%に変更した。
【0083】
(比較例1~2)
比較例1~2においては、実施例1に対して造孔材等のレシピを変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でハニカム構造体を製造した。具体的には、比較例1は、造孔材の粒径を5μmに変更した。比較例2は、造孔材の粒径を20μmに変更した。
【0084】
実施例2~9及び比較例1~2のハニカム構造体についても、実施例1と同様の方法で、表1の各欄に示される特性についての測定を行った。各結果を表1に示す。
【0085】
実施例2~9及び比較例1~2のハニカム構造体に対して、実施例1と同様の方法で触媒を担持し、表2の各欄に示される特性についての測定及び各評価を行った。各結果を表2に示す。
【0086】
(結果)
実施例1~9のハニカム構造体は、表2に示すように、各評価において良好な結果を得ることができた。一方で、比較例1のハニカム構造体は、触媒剥がれ有無の評価において、触媒剥が確認された。比較例2のハニカム構造体は、HC浄化性能の評価において、合格基準を満たさないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のハニカム構造体は、排ガス浄化用の触媒を担持する触媒担体として利用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1:隔壁、2:セル、3:外周壁、4:ハニカム構造部、11:第一端面、12:第二端面、100:ハニカム構造体。
図1
図2
図3