(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153949
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】塞栓物装填済みカテーテルおよび塞栓物
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
A61B17/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056735
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】生野 恵理
(72)【発明者】
【氏名】柴田 秀彬
(72)【発明者】
【氏名】水田 亮
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD53
4C160DD63
(57)【要約】
【課題】塞栓物が大動脈瘤から枝分かれした分枝血管に侵入して生じる遠位塞栓を防止する。
【解決手段】本発明に係る塞栓物装填済みカテーテル20は、先端が開口し、かつ、塞栓物10を装填可能な装填用ルーメン22を含むカテーテル本体21を備え、塞栓物は、長尺かつ膨潤可能な扁平形状11を備え、扁平形状は、扁平形状の長手方向Xと交差する幅方向Yの寸法を減少させることによって装填用ルーメンに収納され、かつ、装填用ルーメンから取り出した際に扁平形状に戻るまたは扁平形状に近づくように変形可能であって、扁平形状は、長手方向に交差する幅方向の最大寸法を3mm以上に構成している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が開口し、かつ、塞栓物を装填可能な装填用ルーメンを含むカテーテル本体を備え、
前記塞栓物は、長尺かつ膨潤可能な扁平形状を備え、
前記扁平形状は、前記扁平形状の長手方向と交差する幅方向の寸法を減少させることによって前記装填用ルーメンに収納され、かつ、前記装填用ルーメンから取り出した際に前記扁平形状に戻るまたは前記扁平形状に近づくように変形可能であって、
前記扁平形状は、前記長手方向に交差する幅方向の最大寸法が3mm以上である塞栓物装填済みカテーテル。
【請求項2】
前記扁平形状は、丸めた状態において前記装填用ルーメンに収納可能である請求項1に記載の塞栓物装填済みカテーテル。
【請求項3】
前記扁平形状は、
表面に凹凸形状が形成される、
一方の面が反対側の面に対して傾斜している、または
厚さ方向に挿通する少なくとも一以上の孔部が設けられる、
のいずれかである請求項1または2に記載の塞栓物装填済みカテーテル。
【請求項4】
前記扁平形状は、ワイヤー部材と一体に構成される請求項1~3のいずれか1項に記載の塞栓物装填済みカテーテル。
【請求項5】
前記ワイヤー部材は、前記扁平形状の長手方向に略沿って延びている請求項4に記載の塞栓物装填済みカテーテル。
【請求項6】
前記ワイヤー部材は、前記扁平形状の長手方向と交差するように延びている請求項4に記載の塞栓物装填済みカテーテル。
【請求項7】
前記扁平形状は、前記長手方向および前記幅方向に交差する厚さ方向の寸法が0.5mm以下である請求項1~6のいずれか1項に記載の塞栓物装填済みカテーテル。
【請求項8】
前記扁平形状は、前記長手方向における寸法が5~100cmである請求項1~7のいずれか1項に記載の塞栓物装填済みカテーテル。
【請求項9】
長尺かつ膨潤可能な扁平形状を備え、
前記扁平形状は、外力を付与することによって前記扁平形状における長手方向と交差する幅方向の寸法が減らされた減少形状に変形可能であり、かつ、前記外力を解放することによって前記扁平形状に戻るまたは前記扁平形状に近づくように変形可能であり、
前記扁平形状は、長手方向に交差する幅方向の最大寸法が3mm以上である塞栓物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塞栓物装填済みカテーテルおよび塞栓物に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の大動脈に生じた瘤(大動脈瘤)は、瘤径の増大、破裂を防ぐ薬物的治療はなく、破裂の危険を伴う瘤径のものに対しては、一般的に外科的療法(手術)が行われる。また、大動脈瘤の手術は、従来、開腹または開胸して人工血管を移植する人工血管置換術が主流であったが、近年では、より低侵襲なステントグラフト内挿術(Endovascular Aneurysm Repair;EVAR)の適用が急速に拡大しつつある。
【0003】
一例として、腹部大動脈瘤(AAA:Abdominal aortic aneurysm)に対するステントグラフト内挿術においては、先端にステントグラフトを収納したカテーテルを患者の末梢血管から挿入し、ステントグラフトを動脈瘤患部に展開・留置することにより、動脈瘤への血流が遮断されて動脈瘤の破裂が防止され得る。
【0004】
一般的に、ステントグラフト内挿術で使用されるステントグラフトは、略Y字状に分岐した分岐部を備える「主本体部」と、分岐部に装着されると共に右腸骨動脈および左腸骨動脈にそれぞれ装着される「脚部」の2種類の部材を組み立てられる構造を有している。
【0005】
そのため、ステントグラフト内挿術において、内挿したステントグラフトの密着不足によるステントグラフト周囲からの血液漏れ、動脈瘤から枝分れした細い血管(分枝血管)からの血液の逆流などにより、動脈瘤内に血流が残存する、所謂「エンドリーク」が生じることがある。この場合、動脈瘤内に浸入した血流によって動脈瘤壁に圧がかかってしまうため、動脈瘤破裂の危険性が潜在する。
【0006】
下記特許文献1には、エンドリークを起因とする大動脈瘤内への血流残存を遮断するため、圧縮した比較的細長なスポンジ(塞栓物)をその管腔内に保持可能なカテーテルと、カテーテル内に保持された塞栓物を血液で満たされた動脈瘤内に押し出すプランジャーとを備えたデバイスについて開示されている。このデバイスに使用されるスポンジは、血液に曝されると直ちに拡張するため、動脈瘤内に押し出されて瘤内の血液を吸収すると膨張(膨潤)し、その状態で動脈瘤内に留置されて血流を遮断して破裂を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の塞栓物は上述のように膨潤することによって大動脈瘤内への血流残存を遮断する。また、動脈瘤から分岐する分枝血管は、膨潤する前であって挿入直後の塞栓物より大きい場合がある。そのため、塞栓物を動脈瘤に挿入した直後から膨潤初期などの間に動脈瘤に配置された塞栓物が分枝血管に入り込んで意図しない部位を塞いでしまう、いわゆる遠位塞栓を生じさせてしまう虞がある。
【0009】
そこで本発明は、塞栓物が動脈瘤から枝分かれした分枝血管に侵入して生じる遠位塞栓の防止を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の一態様は塞栓物装填済みカテーテルである。当該塞栓物装填済みカテーテルは、先端が開口し、かつ、塞栓物を装填可能な装填用ルーメンを含むカテーテル本体を備える。塞栓物は、長尺かつ膨潤可能な扁平形状を備える。扁平形状は、扁平形状の長手方向と交差する幅方向の寸法を減少させることによって装填用ルーメンに収納され、かつ、装填用ルーメンから取り出した際に扁平形状に戻るまたは扁平形状に近づくように変形可能に構成している。扁平形状は、長手方向に交差する幅方向の最大寸法を3mm以上に構成している。
【0011】
上記目的を達成する本発明の一態様は、塞栓物である。塞栓物は、長尺かつ膨潤可能な扁平形状を備える。扁平形状は、外力を付与することによって扁平形状における長手方向と交差する幅方向の寸法が減らされた減少形状に変形可能であり、かつ、外力を解放することによって扁平形状に戻るまたは扁平形状に近づくように変形可能に構成している。扁平形状は、長手方向に交差する幅方向の最大寸法を3mm以上に構成している。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る塞栓物装填済みカテーテルおよび塞栓物は、上記のように構成しているため、塞栓物が動脈瘤から枝分かれした分枝血管に侵入して生じる遠位塞栓を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る医療器具セットおよびデリバリーシステムの構成を示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る塞栓物デリバリー医療システムの構成を示す図である。
【
図3】塞栓物装填済みカテーテルの装填用ルーメンに装填される塞栓物の扁平な状態を示す図である。
【
図4】塞栓物の扁平形状における幅方向の寸法を減少させた減少形状を示す図である。
【
図5】塞栓物を塞栓物装填済みカテーテルの装填用ルーメンに収納し、塞栓物装填済みカテーテルから送達用カテーテルを経て体内に塞栓物を吐出する様子を示す図である。
【
図6A】医療器具セットの係合部の一形態例を示した概略断面図である。
【
図6B】
図6Aの係合部の係合状態を示した概略断面図である。
【
図7A】送達用プッシャーのハンドル部近傍の部分拡大図である。
【
図7B】送達用プッシャーの挿入状態を示す部分拡大図である。
【
図8A】第1実施形態に係る塞栓物デリバリー医療システムの動作例であって、送達用カテーテルが瘤内に送達された状態を示す図である。
【
図8B】第1実施形態に係る塞栓物デリバリー医療システムの動作例であって、瘤内にステントグラフトが展開された状態を示す図である。
【
図8C】第1実施形態に係る塞栓物デリバリー医療システムの動作例であって、塞栓物装填済みカテーテルから塞栓物が押し出されている様子を示す図である。
【
図8D】第1実施形態に係る塞栓物デリバリー医療システムの動作例であって、塞栓物が瘤内に留置された状態を示す図である。
【
図8E】第1実施形態に係る塞栓物デリバリー医療システムの動作例であって、塞栓物が瘤内の液体を吸収して膨潤した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例および運用技術などは全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0015】
さらに、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状などについて、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0016】
なお、本明細書において、塞栓物デリバリー医療システム300を構成する各部の操作方向は、例えば送達用カテーテル40の軸方向に沿った方向であって塞栓物10が瘤内に搬送される側を「先端側(または先端部)」とし、先端側と軸方向で反対側に位置して術者が手元で操作する側(送達用カテーテル40が抜去される側)を「基端側(または基端部)」とする。なお、「先端」とは、最先端を含む軸方向の一定の範囲を意味し、「基端」とは、最基端を含む軸方向の一定の範囲を意味するものとする。
【0017】
本実施形態に係る医療器具セット100、デリバリーシステム200、および塞栓物デリバリー医療システム300は、一例として血管内に生じた瘤(例えば動脈瘤)の破裂を防止するための治療法である、腹部大動脈瘤(AAA)のステントグラフト内挿術に対するエンドリーク塞栓術に適用され得る。また、本実施形態に係る医療器具セット100、デリバリーシステム200、および塞栓物デリバリー医療システム300が適用可能な治療法としては、上記エンドリーク塞栓術に限らず、血管内に生じた瘤の破裂を防止させるための他のインターベンション治療法にも適用可能である。
【0018】
[構成]
次に、本実施形態に係る医療器具セット100、デリバリーシステム200、および塞栓物デリバリー医療システム300の構成について説明する。
図1には、本実施形態に係る医療器具セット100、デリバリーシステム200を構成する各デバイスが示されており、
図2には、本実施形態に係る塞栓物デリバリー医療システム300を構成する各デバイスが示されている。
【0019】
まず、本実施形態に係る医療器具セット100、デリバリーシステム200、および塞栓物デリバリー医療システム300で使用される塞栓物10について説明する。ここで塞栓物10を単体として図示する
図3、
図4などでは座標系を付している。Xは長尺状の塞栓物10の長手方向に相当し、長手方向Xと称する。Yは長手方向Xと交差する幅方向に相当し、幅方向Yと称する。Zは扁平な塞栓物10の厚さ方向に相当し、厚さ方向Zと称する。
【0020】
〈塞栓物〉
塞栓物10は、血管内に生じた動脈瘤のような瘤内に留置され、瘤内に流入される血液を含む液体を吸収して膨張する。塞栓物10は、塞栓物装填済みカテーテル20に装填され、塞栓物装填済みカテーテル20が送達用カテーテル40に装着された状態で送達用プッシャー30により押し出されて瘤内に留置される。
【0021】
塞栓物10は、
図3に示すように長手方向Xに長尺な扁平形状11を備える。扁平形状11は、塞栓物装填済みカテーテル20の装填用ルーメン22に収納しない状態において
図3に示すように扁平であって、本実施形態では平坦な形状に構成している。扁平形状11は、扁平な状態から変形させることによって
図5に示すように塞栓物装填済みカテーテル20の装填用ルーメン22に収納可能に構成している。扁平形状11は、また、扁平形状11は装填用ルーメン22から取り出した際に(膨張しない状態において)塞栓物10の材料の物性等に由来する復元力により扁平な状態に戻るまたは扁平な状態に近づくように構成している。
【0022】
換言すれば、扁平形状11は
図4、
図5に示すように外力を付与することによって扁平形状11において長手方向Xと交差する幅方向Yの寸法d2が減少した減少形状12に変形可能に構成している。扁平形状11は、上記とは反対に外力から解放することによって扁平形状11に戻るまたは扁平形状11に近づくように変形可能に構成している。
【0023】
塞栓物10は、本実施形態において
図3に示すように扁平形状11の厚さ方向Zから見た際に矩形状に構成し、
図4、
図5に示すように丸めることによって装填用ルーメン22に収納可能に構成している。ただし、装填用ルーメン22に収納できれば、塞栓物の厚さ方向Zから見た形状は矩形に限定されず、他の多角形または真円や楕円のような円形状などであってもよい。
【0024】
扁平形状11の状態での塞栓物10の寸法は、例示的に長手方向Xに沿う寸法d1(
図3参照)が5~100cm、幅方向Yに沿う寸法d2が3mm以上、厚さ方向Zに沿う寸法d3を0.5mm以下に構成できる。このように塞栓物10の扁平形状11は長尺状に構成でき、長手方向Xに交差する幅方向Yの寸法d2の最大値を3mm以上に構成できる。なお、上記寸法値は塞栓物10の乾燥時(膨潤前)の扁平形状11の状態における値である。換言すれば、塞栓物10が乾燥時に丸められているような扁平形状でない場合には、上記寸法値は扁平でない形状(扁平以外の形状)を扁平形状11にした状態における値を意味する。また、本明細書において長手方向Xに交差する幅方向Yの寸法d2の最大値は、外力を付与していない状態において膨潤前の塞栓物を厚さ方向Zから見た際の扁平形状の幅方向Yにおける寸法の最大値を意味する。
【0025】
塞栓物10は、生理条件下で血液を含む水性液体との接触により膨脹する膨張性材料(高分子材料(吸水ゲル材料)など)からなる細長い繊維状の線体(線状体)である。塞栓物10は、長手方向Xと直交する方向の断面形状が略円形の細長な線状体であり、瘤内へ留置される膨張前の状態においては比較的脆い。なお、塞栓物10の断面形状は特に限定されず、略円形の他、多角形でもよい。
【0026】
ここで、「生理条件」とは、哺乳動物(例えば、ヒト)の体内または体表面における少なくとも1つの環境特性を有する条件を意味する。そのような特性は、等張環境、pH緩衝環境、水性環境、中性付近(約7)のpH、またはそれらの組み合わせを包含する。また、「水性液体」は、例えば、等張液、水;血液、髄液、血漿、血清、ガラス体液、尿などの哺乳動物(例えば、ヒト)の体液を包含する。塞栓物10の外径は、塞栓物装填済みカテーテル20および送達用カテーテル40の内径に収納可能であればよく、これらカテーテルの内径と略同等とすることができる。また、塞栓物10の全長は、特に制限はないが、装填容易性と手技時間の短縮化などを考慮しつつ留置先となる瘤の大きさなどによって適宜決定されてよい。
【0027】
なお、塞栓物10の構成材料は、少なくとも血液のような液体を吸収して膨張し、かつ瘤内に留置された状態でも人体への有害性がない(または極めて低い)材料であれば、特に限定されない。また、塞栓物10は、X線、蛍光X線、超音波、蛍光法、赤外線、紫外線などの確認方法によって生体内の存在位置が確認可能な可視化材料が添加されていてよい。
【0028】
<医療器具セット>
次に、本実施形態に係る医療器具セット100の構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る医療器具セット100は、塞栓物装填済みカテーテル20と、送達用プッシャー30を備えている。
【0029】
〈塞栓物装填済みカテーテル〉
塞栓物装填済みカテーテル20は、内方に装填用ルーメン22が設けられる長尺状のカテーテル本体21と、カテーテル本体21の基端側に設けられる基端ハブ23と、一端が基端ハブ23の基端側と接続されて他端が三方活栓25のポート26と接続される可撓性を有するチューブ24を備えている。
【0030】
カテーテル本体21は、軸方向に沿って先端側の開口部から基端側の開口部にかけて連通する孔(装填用ルーメン22)が形成された管状部材である。カテーテル本体21の延在方向の長さは、適宜規定されるが、少なくとも塞栓物10が収納可能な長さを有していればよい。
【0031】
装填用ルーメン22の内径は、送達用カテーテル40のシースルーメン42の内径と略同等に設計されている。これにより、塞栓物10は、乾燥状態かつ扁平形状11の状態から、丸めることによって装填用ルーメン22に装填することができる。
【0032】
塞栓物装填済みカテーテル20は、主として予め塞栓物10が装填された状態で供されるが、術者などが乾燥状態かつ扁平形状11の状態から塞栓物10を丸めることによってカテーテル本体21内に装填してもよい。塞栓物10の装填方法としては、術者が塞栓物10を把持して塞栓物装填済みカテーテル20の先端接続部27側または基端ハブ23側から挿入することができる。
【0033】
カテーテル本体21は、後述する係合部60によって塞栓物10が収納された状態で送達用カテーテル40のシースハブ43と係合して装着される。この装着状態において、送達用プッシャー30が基端ハブ23から挿入されることにより、装填される塞栓物10は、送達用カテーテル40に向けて押し出される。
【0034】
塞栓物装填済みカテーテル20は、送達用カテーテル40のシース内に挿入させて使用するものではないため、挿入時における生体管腔の曲がり形状に追従可能な可撓性を必要としない。そのため、カテーテル本体21の構成材料は、少なくとも送達用カテーテル40よりも剛性を有し、包装時などに装填される塞栓物10の破損が防止される程度の適度な硬さが得られる材料であれば、特に限定されない。カテーテル本体21の構成材料の一例としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれら二種以上の混合物など)、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンの架橋体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、フッ素系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、芳香族ポリエーテルケトンなどの高分子材料またはこれらの混合物のような樹脂材料、形状記憶合金、ステンレス、タンタル、チタン、プラチナ、金、タングステンのような金属材料を好適に用いることができる。
【0035】
なお、カテーテル本体21は、塞栓物10の破損防止の観点からシース41よりも剛性を有していればよいため、材料自体を硬質なものにする他、シース41と同材料を採用したときには肉厚を厚くしてキンクし難い形態としてもよい。肉厚を可変した形態の場合、カテーテル本体21の外径がシース41の外径よりも太径となるが、塞栓物装填済みカテーテル20は送達用カテーテル40と係合部60を介して装着されるため、特に問題とはならない。
【0036】
基端ハブ23は、カテーテル本体21の装填用ルーメン22とチューブ24を連通させる挿通路23a(ルーメン)を備え、三方活栓25から流入する流体(プライミング用の生理食塩水など)を、チューブ24を介してカテーテル本体21に流通させる中間部材である。装填用ルーメン22に装填された塞栓物10は、送達用プッシャー30が基端ハブ23の挿通路23aを介して装填用ルーメン22に挿通されることにより、送達用カテーテル40に向けて押し出される。
【0037】
基端ハブ23の構成材料としては、硬質樹脂のような硬質材料であれば、特に限定されない。基端ハブ23の構成材料の一例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレンなどを好適に用いることができる。
【0038】
また、基端ハブ23の基端側の内方には、図示しない止血弁が取り付けられている。止血弁は、例えば弾性部材であるシリコーンゴム、ラテックスゴム、ブチルゴム、イソプレンゴムなどで構成された略楕円形の膜状(円盤状)の弁体を用いてよい。
【0039】
チューブ24は、一端が基端ハブ23の基端側と連結され、他端が三方活栓25のポート26と連結される。チューブ24は、ポート26に連結される図示しないプライミング用シリンジから流出される生理食塩水などの液体が流通する管路である。
【0040】
チューブ24は、操作性を考慮して可撓性を有する樹脂材料であれば、特に限定されない。チューブ24の構成材料の一例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどを好適に用いることができる。
【0041】
三方活栓25は、基端ハブ23の挿通路23aと、チューブ24を介してカテーテル本体21の装填用ルーメン22と連通する。三方活栓25のポート26には、チューブ24の基端側が接続される他、カテーテル本体21の装填用ルーメン22をプライミングするためのプライミング用シリンジを接続することもできる。
【0042】
図6A、
図6Bに示すように、塞栓物装填済みカテーテル20の先端側には、送達用カテーテル40のシースハブ43と接続される先端接続部27が設けられている。先端接続部27には、シースハブ43の基端側に設けられる第1係合部48と係合する第2係合部28が設けられている。本実施形態に係る医療器具セット100において、第1係合部48と第2係合部28は、塞栓物装填済みカテーテル20と送達用カテーテル40との接続状態を維持するための係合部60を構成する。
【0043】
図6A、
図6Bには、係合部60の形態例が示されている。各形態の係合部60において、第1係合部48は雌部として機能し、第2係合部28が雄部として機能する。
【0044】
図6Aに示すように、係合部60は、塞栓物装填済みカテーテル20が送達用カテーテル40に対して外側嵌合する形態としてよい。この形態において、第1係合部48は、シースハブ43の基端側の外周面に周方向に沿って設けられた溝部48aとし、第2係合部28は、カテーテル本体21の先端部の外周面上に固定された別体のスカート部材として設けられ、カテーテル本体21の先端部の外周の少なくとも一部を覆うように設けられた複数の係合爪28aを有する。
図6Bに示すように、係合部60は、第2係合部28の係合爪28aが第1係合部48となる溝部48aと嵌合されることにより、塞栓物装填済みカテーテル20と送達用カテーテル40の接続状態を維持する。塞栓物装填済みカテーテル20と送達用カテーテル40が接続状態となることにより、装填用ルーメン22とシースルーメン42は連通する。
【0045】
なお、係合部60は、塞栓物装填済みカテーテル20と送達用カテーテル40の接続状態が維持される構成であれば、
図6A、
図6Bに示すような嵌合形態に限定されず、例えばねじ込み式のような他の接続構成を採用することもできる。また、係合部60は、塞栓物装填済みカテーテル20と送達用カテーテル40との装着状態を維持するための構成であり、手技中に両者の装着状態が外れることを防止する。しかし、塞栓物装填済みカテーテル20と送達用カテーテル40は、必ずしも係合部60を介して係合させなくてもよい。例えば先端接続部27がシースハブ43に挿入された状態を、塞栓物装填済みカテーテル20と送達用カテーテル40との装着状態としてもよい。
【0046】
装填用ルーメン22とシースルーメン42の内径は略同等に構成しているため、係合部60による塞栓物装填済みカテーテル20と送達用カテーテル40の接続状態において、先端当接部27bの開口部と連通先端部43bの基端側の開口部との段差(クリアランス)を限りなくゼロにすることができる。そのため、送達用プッシャー30のプッシャー本体31が装填用ルーメン22からシースルーメン42へと挿通される際、塞栓物10は、塞栓物装填済みカテーテル20から送達用カテーテル40の間をスムーズに移動することができる。
【0047】
先端接続部27は、塞栓物装填済みカテーテル20と送達用カテーテル40が接続状態のときに、シースハブ43の内部に設けられた連通拡径部43c内に挿入される挿入部27aを有している。挿入部27aは、塞栓物装填済みカテーテル20と送達用カテーテル40の接続状態において、装填用ルーメン22とシースルーメン42が軸方向で揃うようにシースハブ43に挿入される。これにより、塞栓物10は、装填用ルーメン22からシースハブ43を介して外部に露出されることなく、シースルーメン42へと押し出される。
【0048】
また、挿入部27aは、塞栓物装填済みカテーテル20と送達用カテーテル40の接続状態において、その先端側に連通拡径部43cに設けられたテーパ部43dの内面と当接する先端当接部27bを有している。挿入部27aを連通拡径部43c内に挿入させた際に、先端当接部27bがテーパ部43dと当接することにより、装填用ルーメン22とシースルーメン42は、連通拡径部43cの空間を含む他の空間と交わらないように連通される。そのため、塞栓物10は、塞栓物装填済みカテーテル20から送達用カテーテル40に押し出された際に、シースハブ43の内壁面に突き当たることによる破損(折れ曲がりまたは先端側の潰れ)が防止されると共に、シースハブ43内の他の空間への誤挿入(シースハブ43と接続されるチューブ44への迷入など)が防止され、シースルーメン42へと確実に送出される。
【0049】
〈送達用プッシャー〉
送達用プッシャー30は、基端ハブ23に挿通されてカテーテル本体21に収納された塞栓物10を押し出し、送達用カテーテル40のシースルーメン42を介して瘤内へと送達させるための長尺な棒状部材である。送達用プッシャー30は、棒状のプッシャー本体31と、プッシャー本体31の基端側に設けられて塞栓物10を瘤内に送達する際に術者が把持するハンドル部32を備えている。
【0050】
送達用プッシャー30は、塞栓物装填済みカテーテル20を送達用カテーテル40に装着した状態において、術者によりハンドル部32が把持された状態で所定操作されると、装填用ルーメン22に装填された塞栓物10を、送達用カテーテル40のシースルーメン42を介して瘤内へと押し出す。具体的に、送達用プッシャー30は、塞栓物装填済みカテーテル20および送達用カテーテル40の軸方向に沿って押し出し操作されることにより、塞栓物装填済みカテーテル20に装填された塞栓物10を外部(瘤内)へと押し出す。
【0051】
送達用プッシャー30のプッシャー本体31の本体長は、塞栓物装填済みカテーテル20が送達用カテーテル40に装着された装着状態において、基端ハブ23の挿通路23aの基端から、送達用カテーテル40のシース41の先端開口部41a(シースルーメン42と連通する先端側の開口部)に至るまでの距離よりも長い。そのため、塞栓物装填済みカテーテル20を送達用カテーテル40に装着させた状態で送達用プッシャー30を基端ハブ23から挿入させれば、一度の押し出し操作によって、装填用ルーメン22内に装填された塞栓物10を、挿通路23a→シースハブ43→シースルーメン42の順で通過させてして瘤内に押し出すことができる。
【0052】
図7Aに示すように、ハンドル部32は、先端側に大径傘部32aを有し、大径傘部32aの基端側に延在する小径柄部32bを有する略キノコ型の形状をなしており、ハンドル部32の最大外径となる大径傘部32aの外径寸法は、基端ハブ23の挿通路23aの内径寸法よりも大きく設計されている。これにより、
図7Bに示すように、送達用プッシャー30を塞栓物装填済みカテーテル20に挿入した際に、大径傘部32aが基端ハブ23の挿通路23aに挿入されないため、送達用プッシャー30の挿入長を制限することができる。また、ハンドル部32は、大径傘部32aによって基端ハブ23に入り込むことがないため、送達用プッシャー30により塞栓物10の押し出し操作が終了した際に、塞栓物装填済みカテーテル20の離脱操作に連れて挿入状態のまま同時に引き抜き易く、離脱操作が簡便となる。なお、送達用プッシャー30は、塞栓物装填済みカテーテル20の離脱操作前に、塞栓物装填済みカテーテル20から引き抜いてもよい。
【0053】
なお、ハンドル部32は、塞栓物装填済みカテーテル20に挿入した際に、大径傘部32aが基端ハブ23の基端側と嵌合可能な構成とすることもできる。このような構成とすることにより、塞栓物装填済みカテーテル20の離脱の際に、送達用プッシャー30が塞栓物装填済みカテーテル20から外れることなく確実に引き抜くことができる。
【0054】
プッシャー本体31の構成材料は、塞栓物10が搬送可能な適度な硬さと可撓性が得られる材料であれば、特に限定されない。プッシャー本体31の構成材料の一例としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれら二種以上の混合物など)、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンの架橋体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ETFEなどのフッ素系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、芳香族ポリエーテルケトンなどの高分子材料またはこれらの混合物のような樹脂材料、形状記憶合金、ステンレス、タンタル、チタン、プラチナ、金、タングステンのような金属材料を好適に用いることができる。
【0055】
<デリバリーシステム>
次に、本実施形態に係るデリバリーシステム200について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るデリバリーシステム200は、医療器具セット100に加えて、生体管腔内に留置された状態で塞栓物装填済みカテーテル20が着脱される送達用カテーテル40を備えている。
【0056】
送達用カテーテル40は、例えば生体管腔内に留置可能な既存のカテーテルを利用することもできる。そのため、本実施形態に係るデリバリーシステム200において、医療器具セット100および送達用カテーテル40をセット販売して市場に供給することもできるが、医療器具セット100のみを販売して市場に供給したとしても、既存のカテーテルを送達用カテーテル40として利用することにより、デリバリーシステム200として機能させることができる。
【0057】
〈送達用カテーテル〉
送達用カテーテル40は、例えば軸方向に沿って先端側の開口部から基端側の開口部にかけて連通する孔(シースルーメン42)が形成された長尺な管状部材からなるシース41を備え、生体管腔内に留置されて塞栓物10を瘤内まで送達させるための導入路として機能する。シース41は、その全長に亘って後述する挿通補助部材50の本体51が挿通可能である。従って、シース41の軸方向の長さは、少なくとも挿通補助部材50の本体51よりも短く設定される。なお、シース41の先端部は、
図1、
図2などにおいて直線状に構成しているが、基端側から先端側に向かうにつれてシース41の軸方向から遠ざかるように湾曲させてもよい。これより、術者が挿入部を回転させながら湾曲部の先端の方向を変えることで動脈瘤内における塞栓物10の押出方向がある程度制御できる。
【0058】
シースルーメン42の内径は、
図6Bなどに示すように、装填用ルーメン22の内径と略同等に設計されている。これにより、係合部60による塞栓物装填済みカテーテル20と送達用カテーテル40の接続状態において装填用ルーメン22からシースルーメン42へと塞栓物10をスムーズに移動させることができる。
【0059】
シース41の構成材料は、蛇行や湾曲といった生体管腔の曲がり形状に追従できる程度の可撓性および剛性を有する材料であれば、特に限定されない。シース41の構成材料の一例としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれら二種以上の混合物など)、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンの架橋体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、フッ素系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、芳香族ポリエーテルケトンなどの高分子材料、またはこれらの混合物のような樹脂材料を好適に用いることができる。
【0060】
また、送達用カテーテル40は、シース41の基端側に連結されるシースハブ43と、一端がシースハブ43の基端側と接続されて他端が三方活栓45と接続される可撓性を有するチューブ44を備える。
【0061】
シースハブ43は、シースルーメン42とチューブ44との間、および装填用ルーメン22とシースルーメン42との間を連通させる連通路43aを備え、三方活栓45から流入する流体(プライミング用の生理食塩水など)を、チューブ44を介してシース41に流通させると共に、塞栓物装填済みカテーテル20から押し出された塞栓物10をシースルーメン42内に導くための中間部材である。シースハブ43は、送達用カテーテル40を生体管腔内に留置させる際に挿通補助部材50が挿通される。
【0062】
なお、シースハブ43の構成材料は、上述した基端ハブ23の構成材料として例示した材料と同様のものを用いることができる。
【0063】
連通路43aは、シースルーメン42の径と略同等の内径を有する連通先端部43bと、連通先端部43bから基端方向に延び、かつ、連通先端部43bよりも拡径した内部空間となる連通拡径部43cを備えている。また、連通拡径部43cの連通先端部43bとの接続部分には、連通先端部43bの基端側の開口部から基端方向に拡径したテーパ部43dが設けられている。
【0064】
塞栓物装填済みカテーテル20と送達用カテーテル40の装着状態において、装填用ルーメン22の先端は、連通先端部43bの基端側の開口部と隣接するように挿入される。これにより、塞栓物10は、塞栓物装填済みカテーテル20から送達用カテーテル40に押し出された際に、外部に露出されることなく装填用ルーメン22からシースルーメン42へと送出することができる。
【0065】
また、挿入部27aの挿入状態は、装填用ルーメン22とシースルーメン42が軸方向で揃うようにテーパ部43dの内面と先端当接部27bが当接するようにするのが好ましい。これにより、挿入部27aの先端と連通先端部43bの基端側の開口部とが軸方向に沿って連続するため、押し出された塞栓物10がシースハブ43の内壁面に突き当たることによる破損(折れ曲がりまたは先端側の潰れ)が防止されると共に、装填用ルーメン22とシースルーメン42が連通拡径部43c内の空間と交わらないように連通されることによりシースハブ43内の他の空間に誤挿入(シースハブ43と接続されるチューブ44への迷入など)されることが防止される。
【0066】
また、シースハブ43の基端側には、
図6A、
図6Bに示すように、塞栓物装填済みカテーテル20の先端接続部27に設けられた第2係合部28と係合する第1係合部48が設けられている。
【0067】
第1係合部48は、一例として上述した第2係合部28の係合爪28aが嵌合される溝部48aで構成されてよい。溝部48aは、
図6Aにおいてシースハブ43の基端側における外周面の周方向に沿って設けられている。
【0068】
チューブ44は、一端がシースハブ43の基端側と連結され、他端が三方活栓45のポート46と連結される。チューブ44は、ポート46に連結される図示しないプライミング用シリンジから流出される生理食塩水などの液体が流通する管路である。なお、チューブ44の構成材料は、上述したチューブ24の構成材料として例示した材料と同様のものを用いることができる。
【0069】
三方活栓45は、シースハブ43の連通路43aと、チューブ44を介してシース41のシースルーメン42と連通する。三方活栓45のポート46には、チューブ44の基端側が接続される他、シース41のシースルーメン42をプライミングするためのプライミング用シリンジ、造影剤または薬剤などを注入する液剤投入用シリンジを接続することもできる。
【0070】
また、シースハブ43の基端側の内方には、止血弁47が取り付けられている。止血弁47は、例えば弾性部材であるシリコーンゴム、ラテックスゴム、ブチルゴム、イソプレンゴムなどで構成された略楕円形の膜状(円盤状)の弁体を用いてよい。塞栓物装填済みカテーテル20が送達用カテーテル40に装着された場合、挿入部27aは、少なくとも先端当接部27bが止血弁47を通過して連通拡径部43c内へと挿入されることとなる。
【0071】
ここで、本実施形態に係るデリバリーシステム200を構成する各デバイスの寸法例について説明する。なお、以下に示される数値は一例であって、これらに限定されるものではない。
【0072】
本実施形態に係るデリバリーシステム200において、送達用カテーテル40を外径5Frサイズ(内径1.5mm)のカテーテルとし、適用される術式を腹部大動脈瘤(AAA)のステントグラフト内挿術に対するエンドリーク塞栓術とした場合、塞栓物10の減少形状12の状態での外径を0.4~1.5mm(好ましくは1.3mm程度)、塞栓物装填済みカテーテル20の内径を送達用カテーテル40の内径と同等の1.0~1.8mm(好ましくは1.5mm程度)とすることができる。また、塞栓物装填済みカテーテル20のカテーテル本体21の本体長は30~105cm(好ましくは42cm程度)、送達用カテーテル40のシース41の本体長は39~90cm(好ましくは70cm程度)、送達用プッシャー30のプッシャー本体31の本体長は79~205cm(好ましくは119cm程度)とすることができる。
【0073】
<塞栓物デリバリー医療システム>
次に、本実施形態に係る塞栓物デリバリー医療システム300の構成について説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る塞栓物デリバリー医療システム300は、デリバリーシステム200に加えて、生体管腔内に送達用カテーテル40を送達させる挿通補助部材50を備えている。
【0074】
〈挿通補助部材〉
挿通補助部材50は、本体51の軸方向に沿って先端側から基端側にかけて挿通するガイドワイヤルーメン52が形成され、事前に生体管腔内に挿通されたガイドワイヤに沿って送達用カテーテル40を瘤内まで送達させる際の挿入を補助するための補助具である。
【0075】
挿通補助部材50は、生体管腔内に送達用カテーテル40を挿入する際の折れ曲がりなどを防ぐため、送達用カテーテル40に挿入して組み付けられる。また、ガイドワイヤルーメン52は、送達用カテーテル40のシースルーメン42よりも内径が小さい。このため、送達用カテーテル40を瘤内に送達させる際に、送達用カテーテル40のガイドワイヤに対する軸ずれを小さくでき、より送達が容易になる。
【0076】
挿通補助部材50の構成材料は、送達用カテーテル40よりも硬質で可撓性を有する材料であれば、特に限定されない。挿通補助部材50の構成材料の一例としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFEなどのフッ素系樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドのような樹脂材料、形状記憶合金、ステンレス、タンタル、チタン、プラチナ、金、タングステンのような金属材料を好適に用いることができる。
【0077】
[動作]
次に、
図8A~
図8Eを適宜参照しながら、本実施形態に係る塞栓物デリバリー医療システム300の動作について説明する。ここでは、塞栓物デリバリー医療システム300を、腹部大動脈瘤(AAA)のステントグラフト内挿術に対するエンドリーク塞栓術に適用した際の動作例について説明する。
【0078】
まず、術前の準備工程として、術者は、送達用カテーテル40のシースルーメン42と塞栓物装填済みカテーテル20の装填用ルーメン22に対してプライミングを行う。術者は、装填用ルーメン22に塞栓物10の扁平形状11を丸めて減少形状12として収納した状態でプライミングを行う。塞栓物10は使用時に先立って装填用ルーメン22に収納されていてもよいし、術者が使用時に塞栓物10を減少形状12にして装填用ルーメン22に収納するようにしてもよい。
【0079】
次に、術者は、
図8Aに示すように、ガイドワイヤーGWを挿入した送達用カテーテル40のシース41を、穿刺部位となる患者の肢体からイントロデューサーなどを介して経皮的に生体管腔へと挿入し、送達用カテーテル40の先端開口部41aを腹部大動脈瘤まで送達させる。先端開口部41aが瘤内まで送達されると、術者はガイドワイヤーGWを抜去する。なお、送達用カテーテル40は、ガイドワイヤーGWを挿通補助部材50に挿入し、ガイドワイヤーGWと挿通補助部材50を送達用カテーテル40に挿入した状態で動脈瘤患部まで送達させてもよい。
【0080】
次に、術者は、
図8Bに示すように、イントロデューサーを介してステントグラフトSGを圧縮挿入したカテーテル(ステントグラフトデバイス)を生体管腔内に挿入し、予め動脈瘤内に挿入したガイドワイヤを用いて動脈瘤患部まで移動させる。その後、患部にてカテーテルからステントグラフトSGを展開し留置する。これにより、
図8Bに示すように、送達用カテーテル40は、ステントグラフトSGの脚部と血管壁との間を介して、送達用カテーテル40の先端部がステントグラフトSGと動脈瘤の血管壁との間、すなわち動脈瘤内に挿入され、先端開口部41aが瘤内に位置した状態で生体管腔内に留置される。
【0081】
次に、術者は、
図6Bに示すように、塞栓物装填済みカテーテル20を送達用カテーテル40に装着する。これにより、装填用ルーメン22とシースルーメン42が連通するようになる。
【0082】
次に、術者は、ハンドル部32を把持した状態でプッシャー本体31の先端を基端ハブ23の基端側から装填用ルーメン22に挿入する。次に、術者は、基端ハブ23から挿入された送達用プッシャー30の先端を塞栓物装填済みカテーテル20内に装填された塞栓物10の基端と当接させ、押し出し操作によって塞栓物10を送達用カテーテル40のシースルーメン42へと押し出して移動させる。
【0083】
次に、術者は、
図8Cに示すように、基端ハブ23から挿入された送達用プッシャー30を押し出し操作してシースルーメン42から塞栓物10を瘤内へと押し出す。塞栓物10はシースルーメン42から瘤内に押し出される際に展開して、丸められて幅方向Yの寸法d2が小さくなっていた減少形状12から扁平形状11または扁平形状11に近い形状に展開する。その後、術者は、空になった塞栓物装填済みカテーテル20を送達用プッシャー30と共に、送達用カテーテル40から離脱させる。送達用プッシャー30は、塞栓物装填済みカテーテル20に挿入した状態で送達用カテーテル40から離脱させることができる。これにより、瘤内に対する塞栓物10の1回目の挿入動作が完了する。なお、挿入動作において、送達用プッシャー30は、塞栓物装填済みカテーテル20の離脱操作前に、塞栓物装填済みカテーテル20から引き抜いてもよい。このような塞栓物装填済みカテーテル20を送達用カテーテル40と接続し、送達用プッシャー30を用いて塞栓物10を押し出し、塞栓物装填済みカテーテル20を送達用カテーテル40から離脱させる一連の塞栓物留置動作を、瘤内に塞栓物10が必要量だけ装填されるまで繰り返す。なお、必要量は、患者のCTデータを基に動脈瘤の体積を計算し、その値から当該動脈瘤に展開した場合のステントグラフトSGの体積分を引いた値として算出する。
【0084】
動脈瘤内に必要量の塞栓物10の留置が完了すると、術者は、
図8Dに示すように送達用カテーテル40を瘤内及び生体管腔から引き抜く。この際、塞栓物装填済みカテーテル20が送達用カテーテル40に装着され、かつ、送達用プッシャー30が送達用カテーテル40に挿入された状態で、送達用カテーテル40を瘤内及び生体管腔から引き抜いてもよい。また、送達用カテーテル40を瘤内及び生体管腔から引き抜く前に、送達用カテーテル40から塞栓物装填済みカテーテル20を離脱させつつ、送達用プッシャー30を送達用カテーテル40から引き抜いてもよい。また、送達用カテーテル40を瘤内及び生体管腔から引き抜く前に、送達用プッシャー30を送達用カテーテル40および塞栓物装填済みカテーテル20から引き抜いた後に、送達用カテーテル40から塞栓物装填済みカテーテル20を離脱させてもよい。なお、いずれの場合でも、塞栓物10の留置後のバルーンによるステントグラフトSGの追加拡張や造影操作などのために、イントロデューサーは生体管腔内に留置したままにする。
【0085】
その後、動脈瘤内に留置された塞栓物10は、
図9Eに示すように瘤内の血液などの液体と接触して徐々に膨潤し、完全に膨脹した塞栓物10が動脈瘤内面とステントグラフト外面との間の空間を埋めて瘤内が閉塞される。これにより、動脈瘤は、破裂が防止されることとなる。
【0086】
[改変例]
なお、上述した実施形態は、下記のような構成に改変することもできる。
図9、
図10、
図11、
図12、
図13、
図14は変形例に係る塞栓物10a、10b、10c、10d、10e、10fを示す図である。
【0087】
第1実施形態において塞栓物10は、塞栓物装填済みカテーテル20の装填用ルーメン22や送達用カテーテル40のシースルーメン42に収納されていない状態において平坦な形状に構成すると説明した。ただし、送達用カテーテル40のシースルーメン42から取り出した際の幅方向Yの寸法d2が装填用ルーメン22等に収納した際の減少形状12の幅方向Yの寸法よりも大きくなれば、展開した際の塞栓物の扁平形状は
図3に示す平坦な形状に限定されない。
【0088】
塞栓物10aは、
図3に示す平坦な扁平形状11以外にも
図9の塞栓物10aの扁平形状11aに示すように、厚さ方向Zの厚さが一様でなく、厚さ方向Zの寸法d3が幅方向Yの
図9における右端から左端にかけて単調に増加するように構成してもよい。すなわち、塞栓物10aは一方の面を反対側の面に対して傾斜させて厚さ方向Zの寸法d3が変化するように構成してもよい。また、塞栓物10bは、
図10に示すように扁平形状11bの表面に凸凹を設けるように構成してもよい。また、扁平形状は、上述した厚さ方向Zの寸法の範囲内であったり、材料の物性によって減少形状12に変形しやすければ、塞栓物10cの扁平形状11cの表面を
図11に示すようにジグザグのような不規則な形状に構成してもよい。
【0089】
また、塞栓物には
図12における塞栓物10dに示すように長手方向Xに沿うように延在し、丸める等の操作によって扁平形状11の寸法d2が減少する幅方向Yにワイヤー部材13を一以上配置し、ワイヤー部材13を扁平形状11と一体的に構成してもよい。このように構成することによって、装填用ルーメン22などの形状に合わせて塞栓物10dを丸めた形状にしやすくすることができる。
【0090】
また、塞栓物10eは、
図13に示すようにワイヤー部材13eが長手方向Xではなく、長手方向Xと交差する方向、具体的には長手方向Xに対して鋭角のように一定の角度変位した方向に延在させてもよい。
図13ではワイヤー部材13eが延在する方向と交差する方向にワイヤー部材13eを複数並べて配置しているが、ワイヤー部材13eは扁平形状11に一つ配置するように構成してもよい。なお、ワイヤー部材13、13eと一体化する扁平形状11は第1実施形態と同様に構成しているが、上記以外にも例えば
図9に示す扁平形状11aをワイヤー部材13、13eのいずれかと一体的に構成してもよい。
【0091】
さらに、塞栓物10fは、
図14に示すように扁平形状11fの外表面において厚さ方向Zに挿通する比較的小さな孔部14を複数設けるように構成してもよい。孔部14は、
図14において長手方向Xおよび幅方向Yに沿うように複数並べて配置している。ただし、孔部の個数は
図14に限定されず、長手方向Xおよび幅方向Yの少なくともいずれかにおいて一列でもよく、孔部が複数並べて配置される場合に孔部の並ぶ方向は長手方向Xまたは幅方向Y以外の方向でもよく、孔部の配置はランダムでもよい。また、孔部14は
図14において厚さ方向Zから平面視した際に矩形に構成しているが、扁平形状を減少形状にし易ければ、孔部の形状は矩形に限定されず、多角形や円形等のように矩形以外の形状であってもよい。
【0092】
以上説明したように本実施形態に係る塞栓物装填済みカテーテル20は、先端が開口し、かつ、塞栓物10、10a、10b、10c、10d、10e、10f(以下、10等と称する)を装填可能な装填用ルーメン22を含むカテーテル本体21を備える。塞栓物10等は、長尺かつ膨潤可能な扁平形状11、11a、11b、11c、11f(以下、11等と称する)を備える。扁平形状11等は、扁平形状11等の長手方向Xと交差する幅方向Yの寸法d2を減少させることによって装填用ルーメン22に収納され、かつ、装填用ルーメン22から取り出した際に扁平形状11等に戻るまたは扁平形状11等に近づくよう変形可能に構成している。扁平形状11等は、長手方向Xに交差する幅方向Yの寸法d2の最大値を3mm以上に構成している。
【0093】
また、塞栓物10は、長尺かつ膨潤可能な扁平形状11等を備える。扁平形状11等は、外力を付与することによって扁平形状11等における長手方向Xと交差する幅方向Yの寸法d2が減らされた減少形状12に変形可能であって、外力から解放することによって扁平形状11等に戻るまたは扁平形状11等に近づくように変形可能に構成している。扁平形状11等は、長手方向Xに交差する幅方向Yの寸法d2の最大値を3mm以上に構成している。
【0094】
通常、EVARに使用される送達用カテーテルは5~6Frである場合が多い。また、膨潤する塞栓物の径は送達用カテーテルのサイズから、大動脈瘤内に挿入する際において1.3~1.5mm程度になり得る。しかし、大動脈瘤内に位置する分枝血管である下腸間膜動脈(IMA)や腰動脈(LA)は3~5mm程度の径となりうるため、塞栓物の挿入直後から膨潤初期にはIMAやLAが塞栓物の径よりも太いことから、塞栓物が分枝血管に侵入して遠位塞栓を生じさせる虞がある。
【0095】
これに対して、本実施形態および変形例に係る塞栓物10等を収納した塞栓物装填済みカテーテル20および塞栓物10等は、塞栓物装填済みカテーテル20の装填用ルーメン22から取り出した際に減少形状12が扁平形状11等に戻るように変形する。そのため、装填用ルーメン22から押し出された際の塞栓物10等の幅方向Yの寸法d2は分枝血管と同等または分枝血管よりも太くなる。これにより、塞栓物10等の挿入直後または塞栓物10等の膨潤前であっても、瘤から通じる分枝血管に塞栓物10等を侵入しにくくでき、遠位塞栓を生じさせるリスクを回避することができる。また、塞栓物10等は外力を付与しない状態において扁平形状11等の幅方向Yの寸法d2を減少形状12よりも大きく構成することによって、塞栓物装填済みカテーテル20の装填用ルーメン22の直径等の寸法値よりも幅方向Yの寸法d2が大きい塞栓物10等を瘤内に到達させることができる。
【0096】
また、扁平形状11等は丸めた状態において装填用ルーメン22に収納可能に構成している。そのため、扁平形状11等のままでは装填用ルーメン22に収納できない寸法の塞栓物10を丸めることによって装填用ルーメン22に収納することができる。また、塞栓物10等は厚さ方向Zの寸法を薄くすれば送達用プッシャー30で押し出す際に強度が足りなくなり得るものの、上記のように丸めることによって、押し出し時の塞栓物10の強度を比較的高い状態に維持できる。
【0097】
また、変形例に係る塞栓物10aは、一方の面を反対側の面に対して傾斜させ、塞栓物10bは、扁平形状11bの表面に凹凸形状を設け、塞栓物10fは厚さ方向Zに挿通する孔部14を設けるように構成している。このように構成することによって、凹凸形状を利用して扁平形状11a、11b、11fを丸めるなどの操作によって減少形状12に変形させ易くして装填用ルーメン22に収納することができる。
【0098】
また、変形例に係る塞栓物10d、10eの扁平形状11は、ワイヤー部材13、13eと一体に構成している。ワイヤー部材13は扁平形状11の長手方向Xに沿い、ワイヤー部材13eは長手方向Xと交差して延在するように構成している。このように構成することによって、ワイヤー部材13、13eを起点に扁平形状11を丸める等の操作で減少形状12に変形させ易くすることができる。
【0099】
また、塞栓物10等は、長手方向Xおよび幅方向Yに交差する厚さ方向Zの寸法を0.5mm以下に構成している。このように構成することによって、扁平形状11等を減少形状12に変形させ易くして塞栓物装填済みカテーテル20の装填用ルーメン22に収納することができる。
【0100】
また、塞栓物10等の長手方向Xの寸法d1は5~100cmに構成している。このように構成することによって、瘤内を満たすために必要な塞栓物10等の挿入操作の手間を抑えつつ、ステントグラフト内挿術におけるエンドリークを防止することができる。
【0101】
本発明は上述した実施形態にのみ限定されず、特許請求の範囲において種々の変更が可能である。第1実施形態では塞栓物10の扁平形状は丸めた状態で塞栓物装填済みカテーテル20の装填用ルーメン22に収納可能であると説明した。しかし、塞栓物を生体管腔に運びやすくできれば塞栓物を装填用ルーメンに収納する際の形状は丸める場合に限定されない。扁平形状は丸める以外にも例えば蛇腹などのように折りたたむことによって幅方向Yの寸法d2が減少した減少形状にして装填用ルーメン22に収納するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0102】
10、10a、10b、10c、10d、10e、10f 塞栓物、
11、11a、11b、11c、11f 扁平形状、
12 減少形状、
13、13e ワイヤー部材、
20 塞栓物装填済みカテーテル、
22 装填用ルーメン、
d1 寸法(塞栓物の長手方向における寸法)、
d2 寸法(塞栓物の幅方向における寸法)、
d3 寸法(塞栓物の厚さ方向における寸法)、
X 長手方向、
Y 幅方向、
Z 厚さ方向。