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  • 特開-半導体装置の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022153954
(43)【公開日】2022-10-13
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/265 20060101AFI20221005BHJP
【FI】
H01L21/265 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021056747
(22)【出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】霜野 貴也
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 洋平
(57)【要約】
【課題】本明細書は、半導体基板の反りを解消する技術であって、おもて面に半導体素子が形成されているとともに裏面にも機能層を有する半導体装置の製造に適した技術を提供する。
【解決手段】本明細書が開示する製造方法は、半導体基板の裏面に反り解消イオンを注入して反り解消イオンが拡散している拡散層を形成する拡散層形成工程と、拡散層を全て除去する拡散層除去工程を備える。本明細書が開示する製造方法では、反り解消イオンを注入することで半導体基板の反りを解消する。そして、反り解消イオンが注入された層(拡散層)を、全て除去する。それゆえ、半導体基板の裏面に自由に機能層を形成することができるようになる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板のおもて面に半導体素子が形成されている半導体装置の製造方法であり、
前記半導体基板の裏面に反り解消イオンを注入して前記反り解消イオンが拡散している拡散層を形成する拡散層形成工程と、
前記拡散層を全て除去する拡散層除去工程と、
を備えている、製造方法。
【請求項2】
前記拡散層形成工程では、前記半導体素子を形成するために前記おもて面に注入される素子形成イオンの総濃度と同じ濃度の前記反り解消イオンを注入する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記拡散層形成工程では、前記半導体素子を形成するために前記おもて面に注入される素子形成イオンの平均注入深さと同じ深さへ前記反り解消イオンを注入する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記拡散層形成工程では、前記半導体素子を形成するために前記おもて面に注入される素子形成イオンと同じ種類の前記反り解消イオンを注入する、請求項1から3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記拡散層形成工程に先立って実施される工程であって前記半導体素子を保護する保護膜を形成する保護膜形成工程と、
前記拡散層形成工程の後に実施される工程であって前記保護膜を除去する保護膜除去工程と、
を備えている、請求項1から4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記拡散層形成工程では、前記半導体基板を機械式クランプで保持しつつ前記反り解消イオンを注入する、請求項1から5のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、半導体基板のおもて面に半導体素子が形成されている半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板に半導体素子が形成されている半導体装置を製造する過程で半導体基板が反ってしまう現象が生じ得る。特許文献1に、基板の裏面にイオンを注入することで反りを解消する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07-74329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体基板のおもて面に半導体素子を形成するだけでなく、裏面にも半導体素子の機能の一部を担う層(機能層)を形成する場合、反り解消のために裏面に注入したイオンが残っていては邪魔になる。本明細書は、半導体基板の反りを解消する技術であって、おもて面に半導体素子が形成されているとともに裏面にも機能層を有する半導体装置の製造に適した技術を提供する。なお、本明細書が開示する技術は、裏面に機能層を有する半導体装置の製造に好適であるが、裏面に機能層を有しない半導体装置の製造にも活用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する技術は、半導体基板の裏面に反り解消イオンを注入して反り解消イオンが拡散している拡散層を形成する拡散層形成工程と、拡散層を全て除去する拡散層除去工程を備える。なお、「反り解消イオン」との呼称は、後述する半導体素子を形成するために注入されるイオンと区別を付けるための便宜上のものであり、イオンの種類を限定するものではない。
【0006】
本明細書が開示する製造方法では、反り解消イオンを注入することで半導体基板の反りを解消する。そして、反り解消イオンが注入された層(拡散層)を、全て除去する。それゆえ、半導体基板の裏面に自由に機能層を形成することができるようになる。
【0007】
拡散層形成工程では、半導体素子を形成するためにおもて面に注入されるイオン(素子形成イオン)の総濃度と同じ濃度の反り解消イオンを注入するとよい。さらには、おもて面に注入される素子形成イオンの平均注入深さと同じ深さへ反り解消イオンを注入するとよい。さらには、おもて面に注入される素子形成イオンと同じ種類の反り解消イオンを注入するとよい。半導体基板の反りの主因は、素子形成イオンの注入である。それゆえ、素子形成イオンの種類、濃度、平均注入深さの少なくとも1個、可能であれば全部が同じ条件で裏面に反り解消イオンを注入するとよい。おもて面と裏面のイオン注入条件が近いほど、反りが解消できる。「素子形成イオン」とは、半導体素子を形成するために注入するイオンの総称であり、先の「反り解消イオン」と区別するための便宜上の呼称である。「素子形成イオン」との表現は、イオンの種類を限定するものではない。
【0008】
本明細書が開示する技術は、半導体素子を保護する保護膜を形成する保護膜形成工程と、保護膜を除去する保護膜工程をさらに備えていてもよい。保護膜形成工程は、拡散層形成工程に先立って実施される。保護膜除去工程は、拡散層形成工程の後に実施される。半導体基板の裏面に反り解消イオンを注入する拡散層形成工程では、おもて面がイオン注入装置のステージ等に接触するおそれがある。拡散層形成工程に先立って保護膜を形成することで、半導体素子を保護することができる。保護膜は、拡散層を形成した後に除去される。
【0009】
拡散層形成工程では、半導体基板を機械式クランプで保持しつつ反り解消イオンを注入するとよい。反っている半導体基板に対して吸引式クランプを用いると、空気漏れが生じて適切な保持できないおそれがある。機械式クランプであれば、反った半導体基板であっても適切に保持することができる。
【0010】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例の製造方法を説明する図である(1)。
図2】実施例の製造方法を説明する図である(2)。
図3】実施例の製造方法を説明する図である(3)。
図4】実施例の製造方法を説明する図である(4)。
図5】実施例の製造方法を説明する図である(5)。
図6】実施例の製造方法を説明する図である(6)。
図7】実施例の製造方法を説明する図である(7)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して実施例の製造方法を説明する。実施例の製造方法は、炭化珪素基板3に絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar transistor、IGBT)などの半導体素子が形成された半導体装置を製造方法である。
【0013】
(素子形成工程)まず、炭化珪素基板3を機械式のクランプ10に保持し、一方の面に半導体素子を形成するための処理を施す(図1)。なお、説明の便宜上、炭化珪素基板3をSiO基板3と表記し、SiO基板3の両面のうち、半導体素子が形成される面をおもて面3aと称し、その反対側の面を裏面3bと称する。後述するが、SiO基板3の裏面3bには裏面電極が形成される。半導体装置は、SiO基板3のおもて面3aから裏面3bまでを利用するが、半導体素子の主要な構成(トレンチやチャネル層やゲート電極など)が形成される側をおもて面と称する。
【0014】
半導体素子の形成には、各種の成膜、各種のフォトエッチング、各種のイオンの注入などの工程が含まれるが、ここでは素子形成の詳細な説明は割愛する。形成される半導体素子はIGBTに限られないので、本実施例では、SiO基板3において、半導体素子が形成される領域を素子領域4と総称する。また、半導体素子を形成するために注入されるイオンを素子形成イオンと称する。素子形成イオンとしては、ボロン(B)、リン(P)などのイオンが挙げられる。
【0015】
SiO基板3のおもて面3aにイオンを注入すると、SiO基板3が反るという現象が生じる。実施例の製造方法では、反りを解消する工程を含んでいる。反りを解消するために、SiO基板3の裏面3bにイオンを注入する。反りを解消するために注入するイオンを反り解消イオンと称する。
【0016】
(保護膜形成工程)反り解消イオンの注入に先立って、おもて面3aに保護膜5を形成する(図2)。保護膜5は、レジスト膜と呼ばれることがある。次の拡散層形成工程において、SiO基板3を反転させてクランプ10に保持する。このとき、素子が形成されたおもて面3a(素子領域4の表面)がイオン注入装置のステージに接触すると、素子がダメージを受けるおそれがある。保護膜5は、接触のダメージから素子(素子領域4の表面)を保護する。それゆえ、保護膜形成工程は、拡散層形成工程に先立って実施される。保護膜(レジスト膜)の厚みは、3.0[μm]程度が望ましい。
【0017】
(拡散層形成工程)続いて、SiO基板3を反転させてイオン注入装置のクランプ10に保持し直し、裏面3bに反り解消イオンを注入する。SiO基板3の裏面3bの側に、反り解消イオンが拡散した拡散層6が生成される(図3)。なお、反り解消イオンは、例えばアルミニウム(Al)のイオンでもよいし、素子形成イオンと同種のイオンであってもよい。複数種類の素子形成イオンが採用される場合には、それら複数種類の中の1種のイオン、あるいは、数種のイオンを反り解消イオンとして選定してもよい。複数種類の素子形成イオンが採用される場合には、最も高い濃度で注入されるイオンと同種のイオンを反り解消イオンとして選定することも好適である。
【0018】
反り解消イオンは、深さ0.5[μm]程度、濃度は4.0x1017[cm―3]程度で注入される。反り解消イオンは、深さ3[μm]以内、濃度は1.0x1016[cm―3]から1.0x1019[cm―3]の間であるとよい。あるいは、拡散層形成工程では、半導体素子を形成するためにおもて面3aに注入される素子形成イオンの総濃度と同じ濃度の反り解消イオンを注入してもよい。さらには、半導体素子を形成するためにおもて面3aに注入される素子形成イオンの平均注入深さと同じ深さへ反り解消イオンを注入するようにしてもよい。
【0019】
素子形成イオンと同種のイオン、同じ深さへの注入、同じ総濃度で反り解消イオンを裏面3bへ注入することで、おもて面3aへの素子形成イオンの注入で生じたSiO基板3の反りを解消することができる。なお、素子形成イオンと同種のイオン、同じ深さへの注入、同じ総濃度のうちの少なくとも1個の条件が成立するだけでも、ある程度の反り解消効果を得ることができる。
【0020】
反り解消イオンを注入する前に、反ったSiO基板3を反転させてクランプ10で保持し直す。基板の保持装置には、吸引式クランプがあるが、基板が反っていると吸引口と基板との間に隙間が生じ、適切に保持できない可能性がある。反ったSiO基板3を反転させて保持し直すには、機械式のクランプ10を用いることが好ましい。
【0021】
(保護膜除去工程)続いて、再びSiO基板3を反転させてクランプ10で保持し直し、保護膜5を除去する(図4)。保護膜5の除去にはアッシングと呼ばれる手法、あるいは、HSOやHを洗浄溶液に用いるSPM(sulfuric-acid and hydrogen-peroxide mixture)洗浄が採用される。アッシングには、光励起アッシングと、プラズマアッシングがあるが、いずれの方法を採用してもよい。
【0022】
SPM洗浄は、基板表面の有機物や金属を除去するのに好適であるが、異物が残ってしまう(汚染物の再付着)という課題がある。そのため、SPM洗浄の後、異物を除去するためにAPM(ammonium hydrogen-peroxide mixture)洗浄を行うとよい。
【0023】
(おもて面への表面電極生成工程)続いて、活性化アニール、層間絶縁膜形成、コンタクトホールの形成を経て、おもて面3aへ表面電極7を形成する(図5)。
【0024】
(拡散層除去工程)再び、SiO基板3を反転させてクランプ10で保持し直し、裏面3bを研磨し、反り解消イオンが拡散している拡散層6を除去する(図6)。拡散層除去工程では、拡散層6を完全に除去するため、SiO基板3の裏面3bに対して拡散層6の厚みを上回る厚みを研磨で除去する。本実施例の場合、拡散層6は、例えば0.5[μm]程度の厚みがある。この厚みに対して、例えば250[μm]程度の厚みを研磨にて除去する。別言すれば、拡散層6の厚みの100倍以上、好ましくは500倍以上の厚みを研磨により裏面3bから除去する。図では、理解を助けるため、厚みをデフォルメして描いてある。
【0025】
(裏面電極形成工程)裏面3bから拡散層6を完全に除去した後、裏面電極8を形成する(図7)。最後に、SiO基板3をクランプ10から外し、SiO基板3に形成された複数の半導体素子を切り分け(ダイシングとダイピッキング)、半導体装置が完成する。
【0026】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。本明細書が開示した製造方法は、様々な半導体装置の製造に適用することができるが、特に、おもて面に半導体素子が形成されており、裏面に電極が形成されている半導体装置の製造に適している。そのような半導体装置は、おもて面と裏面の間に電流が流れる。反り解消イオンがSiO基板3の裏面3bに残っていると、電流の流れ方に影響をおよぼすおそれがある。本明細書が開示する製造方法では、反り解消イオンが拡散した拡散層を完全に除去する。それゆえ、おもて面から裏面の間に流れる電流に反り解消イオンが影響を及ぼすことがない。
【0027】
素子形成に必要な全ての工程が終わってから拡散層形成工程を実施してもよく、また、素子形成に必要な工程の一部を実施してから拡散層形成工程を実施し、その後に素子形成工程の残部を実施してもよい。
【0028】
レジスト膜の代わりに、酸化膜、カーボン膜、金属膜を保護膜として採用してもよい。
【0029】
本明細書において、「おもて面」/「裏面」との表現は、半導体基板の2個の面を区別するための便宜上の呼称である。「おもて面」、「裏面」をそれぞれ、「第1主面」、「第2主面」と言い換えてもよい。第2主面は、1主面の反対側の面である。
【0030】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0031】
3:炭化珪素基板(SiO基板) 3a:おもて面 3b:裏面 4:素子領域 5:保護膜 6:拡散層 7:表面電極 8:裏面電極 10:クランプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7